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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】植物油からのマイクロ流体抽出方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/04 20060101AFI20231208BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B01D11/04 D
B01J19/00 321
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022519298
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2020077011
(87)【国際公開番号】W WO2021058806
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】19306206.4
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521440585
【氏名又は名称】シャネル・パルファム・ボーテ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・リアック
(72)【発明者】
【氏名】アリックス・トリビオ
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-518754(JP,A)
【文献】国際公開第2010/061598(WO,A1)
【文献】特開2006-281057(JP,A)
【文献】特開2004-358453(JP,A)
【文献】特表平10-507962(JP,A)
【文献】特開2013-116880(JP,A)
【文献】特開2011-032217(JP,A)
【文献】国際公開第2005/012310(WO,A1)
【文献】Weiwei Qin, et al.,A successive laminar flow extraction for plant medicine preparation by microfluidic chip,Microfluidics and Nanofluidics,2019年03月30日,(2019)23:61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/00-12/00
B01J 19/00
A23F 3/00- 5/50
A23L 33/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物油からの目的分子のマイクロ流体抽出方法であって、
- 2つの導入口E1及びE2、2つの排出口S1及びS2並びに主流路を備えるダブル-Y-流路回路を有するマイクロ流体チップ10と、
- 植物油F1を含む第1の容器R1、目的分子を抽出するための溶媒F2を含む第2の容器R2であり、前記抽出溶媒がエタノールであり、前記第1及び第2の容器R1、R2がそれぞれマイクロ流体チップ10の導入口E1及びE2と流体連通している、第1の容器R1、第2の容器R2と、
- 植物油F1及び前記抽出溶媒F2を加圧することができる圧力制御装置100と、
- マイクロ流体チップ10と流体連通しており、トリグリセリドに富む植物油F1が収集される第1の収集器C1と、
- マイクロ流体チップ10と流体連通しており、目的分子に富む抽出溶媒F2が収集される第2の収集器C2と
を含み、
a)2つの流体の界面が、導入口E1及びE2の接合点に位置するように、植物油F1を圧力P1に、抽出溶媒F2を圧力P2に供するために、圧力P1及びP2を制御する工程と、
b)目的分子の抽出を可能にするように、植物油F1と抽出溶媒F2とを主流路で一定時間互いに接触させる工程と、
c)目的分子に富む抽出溶媒F2を収集する工程と、
d)場合により、抽出溶媒F2を蒸発させる工程と、
e)トリグリセリドに富む植物油F1を収集する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
抽出が、室温で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マイクロ流体チップから出る抽出溶媒の流量Q2が、0.01μL/秒から500μL/秒の間となるように、圧力制御装置100が操作される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
マイクロ流体チップから出る植物油の流量Q1が、0.001μL/秒から500μL/秒の間となるように、圧力制御装置100が動作される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
マイクロ流体チップ10が、導入口流路が接合点PJで合流して単一の主流路を形成することを特徴とし、前記流路が、
- 50から500μmの間である幅と、
- 1から800μmの間である深さHと、
- 0.1μLから20μLの間である、接合点PJと分離点PDでのYの2つの排出口流路の分離との間の流路の総容積Vと
を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
マイクロ流体チップ10が、ガラス、熱可塑性プラスチック、シリコン又はポリマーから選ばれる材料で作られている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
圧力制御装置100が、分離点における条件w1=a.w2が満たされるように圧力(P1、P2)の組で操作され、w1及びw2が、マイクロ流体チップの主流路内で流体F1及びF2がそれぞれ占める幅であり、「a」が、0から1の間の正の実数である、請求項1から6いずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ダブル-Y-流路回路を有する少なくともN個のマイクロ流体チップ10が並列に操作され、Nが1から200,000の間の整数である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロフルイディクスの分野に属する条件下で行われる液液抽出の分野に関する。本発明は、特に化粧品分野に用途を有する。
【背景技術】
【0002】
化粧品中の有効成分は、多種多様な役割を担っている。これらにより、例えば、化粧用組成物に保湿性、抗老化性、芳香性、皮膚処理性又は視覚性等の特性を付与することが可能となる。溶液中の有効成分は、使用前に濃縮されていることが望ましい場合が多い。液液抽出又は分子蒸留は、当業者に公知の従来の方法である。
【0003】
分子蒸留は、極めて低い真空圧力下で行う分別蒸留である。実施するのが複雑であり、動作するために多くのエネルギーが必要である。分子蒸留は高温で行われ、気化しやすい分子を単離することができるが、抽出された有効成分の劣化を引き起こす可能性がある。
【0004】
液液抽出は、化学における古典的な分離方法である。第1の液体(ラフィネート)中に含まれる目的分子(又は有効成分、本明細書ではどちらも同じ意味を有する)を、第1の液体と不混和性である第2の液体(抽出溶媒)に移すことによって抽出することからなる。抽出終了時に、目的分子に富む溶媒から形成された抽出物と目的分子が除かれたラフィネートとが収集される。そのため、溶媒中の目的分子の濃度が増加する。
【0005】
従来の液液抽出は、例えば分液漏斗で行われ、その容量は要求されるものに適合している。2種類の液体を分液漏斗で混合し、2つの異なる相が形成されるまで放置し、次いでそれらを分離することができる。
【0006】
しかし、前述の従来の液液抽出は、いくつかの欠点を有する。特に、このような抽出系では、連続抽出が不可能である。実際様々な抽出は、定められた量の、異なる容器、例えば複数の分液漏斗で行われる。次いで抽出は「バッチ」モードで行われるという。したがって、所望の量の濃縮された溶媒を得る前に、複数回の抽出及びデカンテーションが必要である。更に、試薬及び生成物を1つの容器から別の容器に移すのに多大な労力を必要とする。
【0007】
更に、従来の流体-流体抽出(fluid-fluid extraction)に関わる2相間の接触表面積は、前記相が配置される容器の大きさに制限される。同様に、1つの相から別の相への目的分子の拡散は、関わる容積が大きいため制限される。最後に、使用する液体によっては、例えば油性抽出物では、エマルジョンが発生し、分離がいっそう難しくなり、相のデカンテーションの時間が長くなる場合がある。ラフィネートが溶媒に、溶媒がラフィネートに存在することがあるため、濃縮された溶媒及びラフィネートの収集にも悪影響がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、希少及び/又は脆弱である場合がある有効成分を、例えば化粧品業界の要求を満たす十分な量で効率よく抽出するための、新しい方法を見出すことが重要である。また、抽出された有効成分を劣化させないために、室温で実施できる方法を見出すことが重要である。
【0009】
マイクロフルイディクスの分野は、物理学及び化学の最先端領域にある最近の分野であり、例えばマイクロリットル(μL)からフェムトリットル(fL)程度の非常に小さな容積の液体に関与する。このような寸法は、流体力学の複数の制約を容易に満たすことができる。例えば、マイクロ流体系で得られる流れは、レイノルズ数の式が系の寸法に直接依存するため、容易に層流となる。同様に、目的分子の拡散はその対流よりも有利であるが、これはペクレ数の式が、やはり系の寸法に直接依存するためである。
【0010】
マイクロ流体抽出は、寸法が100分の1マイクロメートル(0.01μm)~1ミリメートル(mm)程度の流路内で、2つの流体を接触させることからなる液液抽出方法である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、「ダブル-Y-流路(double-Y-channel)」マイクロ流体チップと呼ばれるものを用いたマイクロ流体抽出方法により、「バッチ」モード又は分子蒸留における従来の方法と同等の濃縮効率で有効成分の連続抽出を行うことが可能となることを予期せず発見した。また、マイクロ流体抽出は室温で行うことができるため、抽出された目的分子の劣化を避けることができるという利点がある。最後に、マイクロ流体抽出は、現在まで使われてきた従来の抽出方法よりも、少ないスペースしか占有せず、少量のエネルギーしか消費しない。
【0012】
本発明はまた、植物油の抽出及び精製に関心を有する。植物油は主に脂肪酸からなり、且つごく一部の不けん化分子からなる。不けん化分子とは、けん化後に水に不溶性であるすべての分子を意味すると理解される。テルペン類、セスキテルペン類、スクアレン類、フィトステロール類、ポリフェノール類、リグナン類及びビタミン類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。しかし、まさに植物油の不けん化画分にこそ、化粧品のための目的の有効成分が存在する。したがって本発明の目的は、植物油、例えばコーヒー油又はチア油からの目的分子のマイクロ流体抽出方法であって、
- 2つの導入口E1及びE2、2つの排出口S1及びS2並びに主流路を備えるダブル-Y-流路回路を有するマイクロ流体チップ10と、
- 植物油F1を含む第1の容器R1、植物油F1と不混和性である、目的分子を抽出するための溶媒F2を含む前記第2の容器R2であり、前記抽出溶媒がエタノールであり、前記第1及び第2の容器R1、R2がそれぞれマイクロ流体チップ10の導入口E1及びE2と流体連通している、第1の容器R1、第2の容器R2と、
- 前記植物油F1及び前記抽出溶媒F2を加圧することができる圧力制御装置100と、
- マイクロ流体チップ10と流体連通しており、トリグリセリドに富む植物油F1が収集される第1の収集器C1と、
- マイクロ流体チップ10と流体連通しており、目的分子に富む抽出溶媒F2が収集される第2の収集器C2と
を含み、
a)、2つの流体の界面が、導入口E1及びE2の接合点に位置するように、液体植物油F1を圧力P1に、抽出溶媒F2を圧力P2に供するために、圧力P1及びP2を制御する工程と、
b)目的分子の抽出を可能にするように、植物油F1と抽出溶媒F2とを主流路で一定時間互いに接触させる工程と、
c)目的分子に富む抽出溶媒F2を収集する工程と、
d)場合により、抽出溶媒F2を蒸発させる工程と、
e)トリグリセリドに富む植物油F1を収集する工程と
を含む、方法である。
【0013】
したがって本発明は、不けん化物である目的分子に富むエタノール抽出物を収集するという利点を提供する。
【0014】
本発明は、得られたエタノール抽出物が目的分子に富むだけでなく、植物油がコーヒー油である特定の場合には、エチルエステル等の新しい分子も含むことができるという第2の利点を提供する。
【0015】
本発明は、第2の排出液が、直接精製され、トリグリセリドに富む油に相当するという第3の利点を提供する。本発明は、酸及び塩基の使用を必要とし、油を加熱するエネルギー集約的工程を含む従来の油精製方法とは異なり、植物油を精製し、マイクロ流体チップから排出液として遊離脂肪酸濃度が低減された脱臭精製油を得ることを可能にする。
【0016】
したがって本発明では、精製油及び有効分子に富むエタノール抽出物を単一工程で抽出することが可能である。このように、2つの排出液は化粧品として関心がもたれる。
【0017】
本発明の方法による抽出は、有利には室温、好ましくは20から30℃の間、より好ましくは22から27℃の間で行うことができる。
【0018】
280℃までの高温で行われる従来の分子蒸留抽出とは異なり、室温で本発明によるマイクロ流体抽出を実施することにより、植物油に有害な熱劣化を回避することが可能となる。同様に、加熱工程が必要な従来の植物油の精製とは異なり、本発明のマイクロ流体抽出を実施することにより、室温で植物油を精製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるマイクロ流体抽出方法を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による矩形状の主流路を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による、主流路が蛇行した形態のマイクロ流体チップを示す図である。
図4】本発明の一実施形態による、ダブル-Y-流路マイクロ流体チップの簡略化した説明図である。
図5】目的分子を有するコーヒー油のHPLCクロマトグラム、本発明の一実施形態による前記油の抽出物のHPLCクロマトグラム、及び従来の分子蒸留法による抽出物のHPLCクロマトグラムを示す図である。
図6】目的分子を示すチア油のHPLCクロマトグラム、本発明の一実施形態による前記油の抽出物のHPLCクロマトグラム、及び従来の分子蒸留法による抽出物のHPLCクロマトグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
マイクロ流体チップ
本発明の方法で使用される「ダブル-Y-流路」マイクロ流体チップは、図1の図によって非限定的な方法で説明される。
【0021】
図1のマイクロ流体チップ10は、「接合点」PJと呼ばれる点で合流して「主流路」と呼ばれる単一の流路を形成する2つの異なる流路によって形成される、2つの導入口E1及びE2を示す。
【0022】
前記主流路は、「分離点」PDにおいて、マイクロ流体チップ10の2つの排出口S1及びS2を形成する2つの新たな異なる流路に分割される。
【0023】
本願では、「流体連通」という用語は、それらが関係する異なる要素間で流体F1又はF2の移送を可能にする接続手段を意味する。
【0024】
2つの導入口E1及びE2は、流体F1及びF2がマイクロ流体チップ10内で循環できるように、それぞれの容器R1及びR2と例えば管を介して流体連通していてもよい。
【0025】
同様に、2つの排出口S1及びS2は、流体F1及びF2をマイクロ流体チップ10から排出できるように、それぞれの収集器C1及びC2と例えば管を介して流体連通していてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、導入口E1は、流体F1を含む第1の容器R1に接続されてもよく、前記流体F1は、植物油、例えばコーヒー油又はチア油である。導入口E2は、第1の流体とは異なる流体F2を含む第2の容器R2に接続されてもよく、前記流体F2は、例えば抽出溶媒である。排出口S1は、マイクロ流体チップを出るときに、目的分子が枯渇した、又は目的分子に富む流体F1を受け取るための第1の収集器C1に接続されてもよい。流体F1が植物油の場合、前記第1の収集器はしたがって、目的分子が枯渇した、脱臭され、遊離脂肪酸の濃度が低減した精製植物油を収集する。排出口S2は、目的分子が枯渇した、又は目的分子に富む流体F2を受け取るために、第2の収集器C2に接続されてもよい。流体F2が抽出溶媒である場合、前記第2の収集器C2はしたがって、目的分子に富む抽出溶媒を収集する。
【0027】
本明細書の以下の部分では、流体F1はコーヒー油又はチア油等の植物油、流体F2は抽出溶媒としてのエタノールとみなされる。
【0028】
主流路は、様々な形状であってもよく、前記主流路の断面は、非限定的な方法で、正方形、円、半円、矩形、菱形、正多角形又は不規則多角形であってもよい。好ましくは、マイクロ流体チップ10の主流路の断面は、矩形状である。
【0029】
図2の図は、深さh、幅l及び総容積Vによって特徴付けられる矩形状の主流路の斜視図を示す。前記主流路の前記総容積は、接合点PJと分離点PDとの間で考慮される。
【0030】
本発明の方法で用いられるマイクロ流体チップの主流路は、50から500μmの間、好ましくは100から300μmの間、及び好ましくは200μmの幅lと、
- 1から800μmの間、好ましくは5から500μmの間、より好ましくは10から200μmの間、更により好ましくは50から150μmの間、及びより具体的には100μmである深さHと、
- 0.1μLから20μLの間、好ましくは0.2μLから10μLの間、より好ましくは0.3から5μLの間、更により好ましくは0.4から1.5μLの間、より具体的には1μLである、接合点PJと分離点PDにおけるYの2つの排出口流路の分離との間の流路の総容積Vとを有することができる。
【0031】
マイクロ流体抽出は、主流路内の流体間の接触表面積を増加させ、したがって目的分子がある液体から別の液体へ拡散することを最適化するという利点を提示する。
【0032】
マイクロ流体チップ10の主流路は、マイクロ流体チップの平面において、同心円状、四角形状、又は菱形状、線状、及び好ましくは蛇行状の一般形状を更に有していてもよい。
【0033】
図3のマイクロ流体チップ10は、非限定的な方法で、マイクロ流体チップ10の平面における一般形状が、蛇行状である主流路の1例を示す。
【0034】
流路の平面における一般形状は、例えば、系が占有するスペースを最適化することができる。
【0035】
本発明の方法による抽出はまた、並列に行うことができるという利点を提示し、つまり、「ダブル-Y-流路」回路を有するN個のマイクロ流体チップは並列動作可能であり、Nは1から200,000の間の整数、好ましくは500から200,000の間、より好ましくは1,000から100,000の間である。
【0036】
複数のマイクロ流体チップが並列している抽出方法は、系の処理能力を大幅に向上させるという利点がある。例えば、並列動作する100,000個のマイクロ流体チップを含む系では、少なくとも16.2kg/時の総処理量(前記総処理量は、目的分子に富む抽出溶媒を抽出する処理量の合計に相当)、すなわち実験室の分子蒸留等の従来の処理に比べて、ほぼ10倍を達成することが可能である。1日に大量の製品を蒸留できる既存の分子蒸留装置があるが、このような装置は極めて大型で高価である。
【0037】
例えば並列動作する100,000個のマイクロ流体チップを含む系はまた、前述の従来の抽出方法に比べ、スペースを節約する。
【0038】
本発明により、有利にはわずか1m2の床面積しか占有せずに、並列動作する100,000個のマイクロ流体チップを接続することが可能となる。
【0039】
本発明の方法に用いられるマイクロ流体チップ10は、熱可塑性樹脂、ガラス、シリコン、シリコーン及び好ましくはPDMS等のポリマーの中から選択される材料で作られてもよい。ガラスは不活性であり、抽出溶媒(エタノール)と反応しないので、特に好ましい。
【0040】
圧力制御装置
本発明によるマイクロ流体チップはまた、圧力制御装置100に接続されている。前記圧力制御装置100は、有利には、マイクロ流体チップ内の流体F1及びF2の流れを制御するために、ミリバールの10分の1単位まで、好ましくは100分の1単位までの圧力を加えることを可能とする。
【0041】
前記圧力制御装置100は、流体F1が圧力P1に供されるように、第1の容器R1及び第1の収集器C1に接続されている。
【0042】
前記圧力制御装置100は、流体F2が圧力P2に供されるように、第2の容器R2及び第2の収集器C2に接続されている。
【0043】
前記圧力制御装置100は、例えば、空気を逃がさない密閉管を用いて、圧力P1及びP2がかかるように容器R1及びR2に接続されている。
【0044】
流体F1及びF2に独立して加えられる圧力は、マイクロ流体チップ10の導入口E1及びE2並びに排出口S1及びS2における前記流体の流量に直接影響を与える。一般に、圧力と流量は、下記数式1に従って直線的に関連する。
【0045】
【数1】
【0046】
Pは、流体が供される圧力であり、例えばミリバール(mbar)で表される。
Qは、流体が流れる速度であり、例えばマイクロリットル/秒(μL/秒)で表される。
Rは、圧力を流量で割ったときの均質係数であり、当業者に公知の方法で実験的に測定することができる。
【0047】
圧力はまた、流路内の流体の位置に直接影響を与える。図4は、ダブル-Y-流路マイクロ流体チップの簡略図を示す。Q1は、流体F1がマイクロ流体チップを通って流れる速度であり、Q2は、流体F2が流れる速度である。w1は、流路を上から見たときに主流路で流体F1が占める幅であり、w2は、流路を上から見たときに主流路で流体F2が占める幅である。
【0048】
流路内での拡散を最適化するために、上から見た流路内で2つの流体F1及びF2が占める幅は、有利には等しい。有利には、次の等式が満たされる:w1=w2
【0049】
更に、下記等式「数式2」は、マイクロ流体チップの主流路内で常に満たされる。
【0050】
【数2】
【0051】
w1及びw2は、上から見たマイクロ流体チップの主流路内で流体F1及びF2がそれぞれ占める幅であり、μ1及びμ2は、流体F1及びF2のそれぞれの動粘度であり、Q1及びQ2は、流体F1及びF2のそれぞれの流量であり、ρ1及びρ2は、流体F1及びF2のそれぞれの密度である。
【0052】
流体F1及びF2が同一の系内で進展する場合、式「数式1」及び「数式2」による等式を組み合わせると、下記式「数式3」による等式となる。
【0053】
【数3】
【0054】
w1及びw2は、上から見たマイクロ流体チップの主流路内で流体F1及びF2がそれぞれ占める幅であり、P1及びP2は、流体F1及びF2が供される圧力である。
【0055】
理想的には、マイクロ流体チップの主流路内の幅w1及びw2は、主流路からの出口で等しく、目的分子に富む流体及び目的分子が枯渇した流体を適切に分離することを保証すべきである。この等式を満たすために、式「数式3」に従うことは、流体F1及びF2にそれぞれ加えられる圧力P1及びP2が等しくなければならないことを含意する。
【0056】
本発明者らは、驚くべきことに、流体F1及びF2に2つの同一の圧力P1及びP2を加えても、上記の理論で期待される効果が得られないことを発見した。実際、本発明者らは、排出口S1で流体F1に流体F2の量が混入するような、接合点PDにおける異なる幅w1及びw2を観察している。
【0057】
この観察は、流体がこうむる圧力損失によって部分的に説明することができる。これらの圧力損失は、関係する流体、流体間及び系の壁との接触、流路の形状並びに流体F1及びF2の流量に大きく依存する。
【0058】
本発明者らは、主流路全体に沿って及び特にマイクロ流体チップの分離点PJにおいて、w1=w2の条件を満たす複数の圧力の組(P1、P2)を発見した。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、圧力制御装置100は、流体F1及びF2がそれぞれ、
P1が65から75mbarの間、
P2が63から73mbarの間
となるように圧力(P1、P2)に供されるように操作され、
又は圧力制御装置100は、流体F1及びF2が、
P1が190から210mbarの間、
P2が186から206mbarの間
となるように圧力(P1、P2)に供されるように操作される。
【0060】
また、本発明の一実施形態によれば、圧力制御装置100は、マイクロ流体チップから出る抽出溶媒の流量が、0.01μL/秒から500μL/秒の間、好ましくは0.1μL/秒から12μL/秒の間、より好ましくは0.5から1μL/秒の間となるように動作される。
【0061】
また、本発明の一実施形態によれば、圧力制御装置100は、マイクロ流体チップから出る植物油の流量が、0.001μL/秒から500μL/秒の間、好ましくは0.005μL/秒から10μL/秒の間、より好ましくは0.005から0.01μL/秒となるように動作される。
【0062】
収集器C2に収集された目的分子に富む溶媒が、排出口S1で得られた精製植物油のラフィネートによって汚染されないことを保証するために、安全マージン「a」が維持される場合がある。
【0063】
安全マージン「a」が維持される場合、圧力制御装置が、分離点において以下の条件w1=a.w2を満たす圧力(P1、P2)の組で動作し、w1及びw2が、マイクロ流体チップ10の主流路内で流体F1及びF2がそれぞれ占める幅であり、aが、0から1の間の正の実数の安全マージンであり、値0及び1が除外される。
【0064】
安全マージンが維持される場合、aは0.85から0.95の間であり、好ましくは、aは0.9である。
【0065】
本発明の一実施形態によれば、圧力制御装置100は、上記で定義された条件を満たすことが可能な市販の圧力制御装置の中から選択される。本発明の圧力制御装置は、例えば、Elvelys company社によって販売されているElveflow圧力制御装置である。
【0066】
植物油
植物油は、所望の目的分子に応じて選択される。植物油は、例えばコーヒー油又はチア油である。
【0067】
本発明の方法で使用される植物油は、30mPa.s超の高い粘性係数を有する。
【0068】
抽出溶媒
本発明では、選択される抽出溶媒は、エタノールである。
【0069】
エタノールは、有利にはバイオベースである。無毒であり、所望の目的分子と可溶化する。マイクロ流体チップの流路内における植物油とエタノールの間の界面はまた、特に安定である。
【0070】
抽出方法
本発明による抽出方法は、ダブル-Y-流路マイクロ流体チップの接合点PJに位置する2つの流体の間の界面を有するように、流体F1及びF2をそれぞれ圧力P1及びP2に供するために、圧力制御装置100を特定の圧力P1、P2の組で操作することからなる第1の工程a)を含むことができる。
【0071】
マイクロ流体チップの特性、主流路の特性、主流路の一般形状、流体F1及びF2の流量に応じて、植物油F1及びエタノール(抽出溶媒)F2を、目的分子を抽出することができる一定時間接触させる。
【0072】
本発明による抽出方法は、目的分子を抽出することができる一定時間、流体を接触させる第2の工程b)を含むことができる。特に、接触時間は、5から300秒の間、好ましくは8から200秒の間、より好ましくは10~100秒、及び更により好ましくは50~70秒である。
【0073】
抽出時間が長いほど、抽出物の質量収率が高くなる可能性がある。質量収率は、導入口E1における植物油F1の初期質量に対する、排出口S2で収集されるエタノール(抽出溶媒)F2中の目的分子を含む抽出物の質量に相当する。
【0074】
質量収率は、選択される植物油に大きく依存する。例えば、植物油がコーヒー油である場合、5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは約15%の質量収率が満たされる。一方、植物油がコーヒー油よりも低い不けん化物濃度を有するチア油の場合、少なくとも1%、好ましくは1.5%の質量収率が満たされる。
【0075】
本発明による抽出方法は、目的分子に富むエタノール(抽出溶媒)が収集され、場合により抽出方法のために再利用される第3の工程c)を含む。
【0076】
本発明による抽出方法では、例えば、精製装置と接続し、抽出方法のためのエタノール(抽出溶媒)を再利用することにより、目的分子を連続的に得ることが可能となる。
【0077】
本発明による方法によって得られるエタノール抽出物は、目的分子に富むだけでなく、抽出中に形成されるエチルエステル等の新しい分子を含んでいる場合もある。
【0078】
本発明による抽出方法は、目的分子に富むエタノール(抽出溶媒)を蒸発させる第4の任意工程d)を含むことができる。
【0079】
また、目的分子に富むエタノール(抽出溶媒)は、目的分子の濃度を高めることを目的とした様々な精製処理に供されることがある。
【0080】
そのため、目的分子はより簡単に収集され、例えば化粧用組成物に組み込まれる。こうして蒸発したエタノール(抽出溶媒)は、有利にはリサイクルして抽出方法で再利用することができる。
【0081】
本発明による抽出方法は、トリグリセリドに富む植物油F1を収集する工程e)を含む。
【0082】
実際、本発明の抽出方法によって排出し、得られた植物油は、トリグリセリドに富む精製油に相当する。
【0083】
こうして得られた精製油は、特に脱臭、漂白され、遊離脂肪酸の濃度が低減されている。
【実施例
【0084】
本実施例による方法
本実施例による抽出方法は、図1に示す装置を含む。前記抽出方法は、圧力制御装置100を含み、前記圧力制御装置100は、植物油F1を含む第1の容器R1、エタノール(抽出溶媒)F2を含む第2の容器R2、目的分子が枯渇した植物油ラフィネートを収集する第1の収集器C1、及び目的分子に富む抽出溶媒の抽出物を収集する第2の収集器C2に接続されている。
【0085】
前記抽出方法は、2つの容器R1及びR2とそれぞれ流体連通している2つの導入口E1及びE2と、2つの収集器C1及びC2と流体連通している2つの排出口S1及びS2とを備えるダブル-Y-流路マイクロ流体チップ10を更に含む。
【0086】
(実施例1)
コーヒー油
実施例1では、圧力制御装置100は、Elvesys company社によって販売されているElveflow型である。植物油F1はコーヒー油であり、目的分子はジテルペン類のエステルであり、抽出溶媒F2はエタノールである。
【0087】
コーヒー植物油を、以下の方法により得る。
- 「未焙煎」コーヒー生豆(アラビカコーヒーノキ(coffea arabica))を、あらかじめ乾燥させる。
- 乾燥した豆を、次いで機械式の一軸バープレス(mechanical single-screw bar press)を用いて圧搾する。
- 4回通過させた後、未精製の油を得る。
- 次いで未精製の油を50μmまでろ過し、ろ過ケーキを除去する。
- 次いで得られた植物油を、本発明に使用する。
【0088】
コーヒー油の粘度は高く、約104mPa-sである。
【0089】
マイクロ流体チップ10の主流路は、矩形状であり蛇行している。流路は、100μmの深さ、200μmの幅を有し、その容積は1μLである。各流体は、半分の容積を共有しており、すなわち0.5μLを占有している。
【0090】
工程a)
圧力制御装置100を、流体F1の流量が、0.01083μL/秒となるように、流体F1が72mbarの圧力P1に供されるように操作する。
【0091】
圧力制御装置100を、流体F2の流量が、0.679μL/秒となるように、流体F2が70mbarの圧力P2に供されるように操作する。
【0092】
工程b)
植物油F1及び抽出溶媒F2を、マイクロ流体チップ内で約45秒の間接触させる。
【0093】
工程c)
目的分子に富むエタノール(抽出溶媒)F2を、マイクロ流体チップ10を出るときに、収集器C2に収集する。
【0094】
工程d)及びe)
本実施例による方法は、目的分子を収集する前にエタノール(抽出溶媒)F2を蒸発させる工程d)を含む。また、精製油を収集する工程e)を含む。
【0095】
結果
実施例1の抽出方法で得られた質量収率は、17.7%である。2580分間連続的に抽出を行った。
【0096】
したがって本発明者らは、驚くべきことに、マイクロ流体チップを用いた液液抽出方法により、従来用いられてきた抽出方法、例えば分子蒸留又はバッチモードでの液液抽出によって得られる抽出収率以上の質量抽出収率を得ることができることを発見した。更に、このようにして得られたエタノール抽出物は、エタノールエステル等の新しい分子を含む。抽出された植物油については、精製されており、そのままで化粧品に使用することができる。
【0097】
(実施例2)
チア油
実施例2では、圧力制御装置100は、Elvesys company社によって販売されているElveflow型である。植物油F1はチア油であり、目的分子はフィトステロール類であり、抽出溶媒F2はエタノールである。
【0098】
チア油を得るための方法は、以下の通りである。
- チアシード(サルビア・ヒスパニカ(Salvia hispanica))を、あらかじめ乾燥させる。
- 乾燥した豆を、機械式の一軸バープレスを用いて圧搾する。
- 3回通過させた後、未精製の油を得る。
- 次いで得られた未精製の油を50μmまでろ過し、ろ過ケーキを除去する。
- 次いで得られた植物油を、本発明の実施に使用する。
【0099】
チア油の粘度は、約35.6mPa-sである。
【0100】
マイクロ流体チップ10の主流路は、矩形状であり蛇行している。流路は、100μmの深さ、200μmの幅を有し、その容積は1μLである。各流体は、半分の容積を共有しており、すなわち0.5μLを占有している。
【0101】
工程a)
圧力制御装置100は、流体F1が519mbarの圧力P1に供されるように操作する。圧力制御装置100は、流体F2が511mbarの圧力P2に供されるように操作する。
【0102】
工程b)
植物油F1及びエタノールF2を、マイクロ流体チップ内で約2.5秒の間接触させる。
【0103】
工程c)
目的分子に富むエタノール(抽出溶媒)F2を、マイクロ流体チップ10を出るときに、収集器C2に収集する。
【0104】
工程d)及びe)
本実施例による方法は、目的分子を収集する前にエタノール(抽出溶媒)F2を蒸発させる工程d)を含む。また、工程e)で精製したチア油を収集する。
【0105】
結果
実施例2の抽出方法で得られた質量収率は、1.61%である。204分間連続的に抽出を行った。
【0106】
したがって本発明者らは、驚くべきことに、マイクロ流体チップを用いた液液抽出方法により、従来用いられてきた抽出方法、例えば分子蒸留又はバッチモードでの液液抽出によって得られる抽出収率以上の質量抽出収率を得ることができることを発見した。抽出された植物油は精製されており、そのままで化粧品に使用することができる。
【0107】
分子蒸留を用いた比較例
実施例1の本発明の方法による抽出結果と、従来の分子蒸留による抽出に従って得られた抽出結果とを比較するために、比較例を行った。
【0108】
図5は、初期油のHPLCクロマトグラムを示す。この例で目的分子は、コーヒー油中の低濃度のジテルペン類のエステルである。
【0109】
分子蒸留は、当業者に公知の以下の手順に従って行われ、筒温度を280℃に設定し、凝縮温度は80℃である。油の流量は、2.10から3mbarの間の圧力で1.2L/時である。
- 系を、約10-3及び10-2mbarの圧力で真空下に置く。
- 蒸留筒を280℃に加熱する。
- 凝縮器を80℃に加熱する。
- 供給タンクに植物油(被抽出流体)を満たし、供給量を1.2L/時に設定する。
【0110】
蒸留筒の壁に約10秒間(10秒から20秒の間)油を掻き込む。目的分子は、蒸留筒の中央に位置する凝縮器で蒸発し再凝縮する。
【0111】
2つの画分を、系によって分離し、2つの異なる容器に収集する。
【0112】
分子蒸留によって得た抽出物のHPLCクロマトグラム(図5)からわかるように、分子蒸留後に得た抽出物により、目的分子の濃度を増加させることが可能となる。
【0113】
本発明による方法によって得られるエタノール抽出物のHPLCクロマトグラムにより、本実施例で議論した2つの抽出方法を比較することが可能となる。
【0114】
本発明による方法によって得られるエタノール抽出物のHPLCクロマトグラムでは、目的分子が分子蒸留よりも効率的に濃縮されていることがわかる。実際、分子蒸留を介する1回目の通過後に得られる収率は、12から15%の間である。したがって、目的分子を完全に抽出し、最終的な(及び最大)25%の収率を得るためには、分子蒸留において2回の通過を行う必要がある。
【0115】
本発明の一実施形態によって実施される抽出はまた、植物油がコーヒー油である場合に、約7分に位置するクロマトグラムのピークによって実証されるように、(潜在的に目的の)新しい分子を明らかにするという利点を有する。
【0116】
このようにHPLCクロマトグラムは、本発明による方法の効率が、大幅に削減された動作コストで、分子蒸留によって得られる非常に良い結果と少なくとも同等であることを明確に実証している。更に、本発明は、分子蒸留では単離できない新しい分子を抽出できるという利点を提供する。
【0117】
実施例2の本発明の方法による抽出結果と、従来の分子蒸留による抽出に従って得られた抽出結果とを比較するために、別の比較例を行った。
【0118】
従来の液/液抽出は、油1部に対してエタノール3部の分液漏斗で実施する。本発明の方法と異なり、分液漏斗での液液抽出は、エタノールと合わさった油によって生成されるエマルジョンの出現という欠点を有する。総抽出収率は、約13%である。しかしながら、この抽出物は、我々が抽出を望まない分子であるトリグリセリドにより多く富む。結果として、従来の液/液抽出で得られる抽出物は、目的分子にあまり富まない。
【0119】
下記表は、比較例2の結果を示す。
【0120】
【表1】
【0121】
分子蒸留により得られた抽出物のHPLCクロマトグラム(図6)からわかるように、分子蒸留後に得られた抽出物は、目的分子の濃度を増加させる。
【0122】
図6で、本発明による方法によって得られるエタノール抽出物のHPLCクロマトグラムにより、本実施例で議論した2つの抽出方法を比較することが可能となる。
【0123】
本発明の一実施形態によって実施される抽出は、約7分に位置するクロマトグラムのピークによって示されるように、新しい分子(エチルエステル)を明らかにするという利点を提示する。
【0124】
このようにHPLCクロマトグラムは、本発明による方法の効率が、大幅に削減された動作コストで、分子蒸留によって得られる非常に良い結果と少なくとも同等であることを明確に実証している。更に、本発明は、分子蒸留では単離できない新しい分子を抽出できるという利点を提示する。最後に本発明により、例えば、脂肪酸含有量を低減しながら油を精製することが可能となる。
【符号の説明】
【0125】
10 マイクロ流体チップ
100 圧力制御装置
F1 第1の流体、例えば抽出溶媒としてのエタノール
F2 第2の流体、例えば植物油
E1 マイクロ流体チップへの流体F1の導入口
E2 マイクロ流体チップへの流体F2の導入口
F1 マイクロ流体チップからの流体F1の排出口
F2 マイクロ流体チップからの流体F2の排出口
R1 流体F1の容器
R2 流体F2の容器
C1 目的分子に富むか又は目的分子が枯渇した、流体F1の収集器
C2 目的分子に富むか又は目的分子が枯渇した、流体F2の収集器
PJ 接合点
PD 分離点
L 主流路の長さ
h 主流路の深さ
l 主流路の幅
Q1 マイクロ流体チップ内の流体F1の流量
Q2 マイクロ流体チップ内の流体F2の流量
w1 主流路で流体F1が占める幅
w2 主流路で流体F2が占める幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6