(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】磁気ヒートポンプおよび磁気冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 21/00 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
F25B21/00 A
(21)【出願番号】P 2022527417
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2020021212
(87)【国際公開番号】W WO2021240751
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 敦
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 俊
(72)【発明者】
【氏名】松田 哲也
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032116(JP,A)
【文献】特開2019-032115(JP,A)
【文献】特開2006-112709(JP,A)
【文献】特開2010-196914(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104406325(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気熱量材料から成る少なくとも1つの磁気熱量部材と、
中心軸と、前記中心軸に対する周方向に並んで形成されておりかつ前記少なくとも1つの磁気熱量部材を収容する少なくとも1つの収容室とを有する羽根車と、
前記少なくとも1つの収容室に面し、かつ形状が個別に変化する少なくとも1つの変形部材と、
前記少なくとも1つの磁気熱量部材、前記羽根車、および前記少なくとも1つの変形部材を収容しかつ熱輸送媒体が流通する内部空間と、前記熱輸送媒体が前記内部空間に流入するための第1流入口と、前記周方向において前記第1流入口と間隔を隔てて配置されておりかつ前記熱輸送媒体が前記内部空間から流出するための第1流出口とが形成されている筐体と、
前記周方向において前記第1流入口から前記第1流出口に向かう第1の向きに、前記羽根車、前記少なくとも1つの磁気熱量部材、および前記少なくとも1つの変形部材を一体的に回転させる電動機と、
前記内部空間のうち前記第1の向きにおいて前記第1流入口から前記第1流出口に達する第1領域において、前記第1の向きに沿って強まる磁界を生じさせる磁界発生部とを備え、
前記少なくとも1つの収容室は、前記中心軸に対する径方向の外側を向いて開口しており、
前記少なくとも1つの変形部材の前記形状は、前記回転に伴い個別に変化し、
前記少なくとも1つの収容室の容積は、前記少なくとも1つの変形部材の前記形状の前記変化に伴い個別に増減し、
前記少なくとも1つの収容室が前記第1領域に位置するときの前記容積は、前記少なくとも1つの収容室が前記第1の向きにおいて前記第1流入口よりも後に位置する第2領域に位置するときの前記容積、および前記少なくとも1つの収容室が前記第1の向きにおいて前記第1流出口よりも前に位置する第3領域に位置するときの前記容積よりも大きい、磁気ヒートポンプ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの変形部材は、
前記少なくとも1つの収容室の内部において前記少なくとも1つの磁気熱量部材に対して前記径方向に相対的に移動する移動部を含み、
前記筐体に対する相対的な位置が固定されており、前記回転に伴い前記周方向に移動する前記移動部を前記径方向にガイドするガイド部材をさらに備え、
前記筐体は、前記内部空間に面しかつ前記径方向の内側を向いた第1内周面を有し、
前記少なくとも1つの収容室の容積は、前記少なくとも1つの収容室のうち前記径方向において前記移動部よりも外側に位置する空間の容積であり、
前記移動部が前記第1領域に位置するときの、前記移動部と前記第1内周面との間の前記径方向の距離は、前記移動部が前記第2領域または前記第3領域に位置するときの、前記移動部と前記第1内周面との間の前記径方向の距離よりも長い、請求項1に記載の磁気ヒートポンプ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの変形部材は、
前記少なくとも1つの磁気熱量部材に対して相対的に固定されている固定部と、
前記固定部に接続されている第1端部と、前記移動部に接続されておりかつ前記第1端部とは反対側に位置する第2端部とを有し、前記径方向に弾性変形する第1弾性部とをさらに含み、
前記ガイド部材は、前記径方向の内側を向いた第2内周面を有し、
前記移動部は、前記第1弾性部によって前記ガイド部材の前記第2内周面に押圧されており、
前記ガイド部材の前記第2内周面は、前記第1領域に配置されている第1部分と、前記第2領域に配置されている第2部分と、前記第3領域に配置されている第3部分とを有し、
前記第1部分と前記第1内周面との間の前記径方向の距離は、前記第2部分と前記第1内周面との間の前記径方向の距離および前記第3部分と前記第1内周面との間の前記径方向の距離よりも長い、請求項2に記載の磁気ヒートポンプ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの磁気熱量部材には、前記羽根車の中心軸の延在方向および前記径方向に沿って延びる少なくとも1つのスリットが形成されており、
前記移動部は、前記少なくとも1つの磁気熱量部材の前記少なくとも1つのスリットに挿入されている部分を有している、請求項2または3に記載の磁気ヒートポンプ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの変形部材は、
前記径方向の内側に配置されている内周部分と、
前記径方向において前記内周部分よりも外側に配置されておりかつ前記内周部分に対して弾性変形する外周部分とを含み、
前記少なくとも1つの収容室は、前記少なくとも1つの変形部材によって区画されており、
前記筐体は、前記内部空間に面しかつ前記径方向の内側を向いた内周面を有し、
前記筐体の前記内周面は、前記第1領域に配置されている第4部分と、前記第2領域に配置されている第5部分と、前記第1の向きにおいて前記第3領域に配置されている第6部分とを有し、
前記外周部分は、前記第5部分および前記第6部分の各々と接触するように設けられており、
前記少なくとも1つの変形部材が前記第1領域に位置するときの、前記外周部分の前記径方向の長さは、前記少なくとも1つの変形部材が前記第2領域または前記第3領域に位置するときの、前記外周部分の前記径方向の長さよりも長い、請求項1に記載の磁気ヒートポンプ。
【請求項6】
前記第4部分と前記内周部分との間の前記径方向の距離は、前記第5部分と前記内周部分との間の前記径方向の距離および前記第6部分と前記内周部分との間の前記径方向の距離よりも長い、請求項5に記載の磁気ヒートポンプ。
【請求項7】
前記磁界発生部は、前記磁界の強さを変動するように設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気ヒートポンプ。
【請求項8】
前記筐体は、前記熱輸送媒体が前記内部空間に流入するための第2流入口と、前記周方向において前記第2流入口と間隔を隔てて配置されておりかつ前記熱輸送媒体が前記内部空間から流出するための第2流出口とがさらに形成されており、
前記第2流入口は、前記第1の向きにおいて前記第1流出口よりも前に配置されており、前記第2流出口は、前記第1の向きにおいて前記第2流入口よりも前に配置されており、
前記磁界発生部は、前記第3領域において前記第1の向きに沿って弱まる磁界を生じさせ、
前記少なくとも1つの収容室が
前記第1の向きにおいて前記第2流入口から前記第2流出口に達する第4領域に位置するときの前記容積は、前記少なくとも1つの収容室が前記第2領域に位置するときの前記容積、および前記少なくとも1つの収容室が前記第3領域に位置するときの前記容積よりも大きい、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気ヒートポンプ。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気ヒートポンプと、
前記第1流入口と前記第1流出口との間を接続しておりかつ前記第1流入口および前記第1流出口に対して互いに並列に接続されている第1流路および第2流路と、
前記磁気ヒートポンプが前記第1流路に接続されており前記第2流路に接続されていない第1状態と、前記磁気ヒートポンプが前記第2流路に接続されており前記第1流路に接続されていない第2状態とを切り替える切替部とを備える、磁気冷凍サイクル装置。
【請求項10】
請求項8に記載の磁気ヒートポンプと、
前記第1流入口に接続されている一端と、前記第1流出口に接続されている他端とを有し、前記熱輸送媒体が流れる第1流路と、
前記第2流入口に接続されている一端と、前記第2流出口に接続されている他端とを有し、前記熱輸送媒体が流れる第2流路とを備える、磁気冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記第1流路は、前記熱輸送媒体を貯留する蓄熱タンクを含む、請求項10に記載の磁気冷凍サイクル装置。
【請求項12】
第1磁気ヒートポンプと、
第2磁気ヒートポンプとを備え、
前記第1磁気ヒートポンプおよび前記第2磁気ヒートポンプの各々は、請求項1~8のいずれか1項に記載の磁気ヒートポンプとして構成されており、
前記第1磁気ヒートポンプの前記第1流出口は、前記第2磁気ヒートポンプの前記第1流入口と直列に接続されており、
前記第1磁気ヒートポンプの前記第1流出口から流出する前記熱輸送媒体の単位時間当たりの流量と、前記第2磁気ヒートポンプの前記第1流入口に流入する前記熱輸送媒体の単位時間当たりの流量とが等しくなるように、前記第1磁気ヒートポンプおよび前記第2磁気ヒートポンプの各々の前記回転の速度を制御する制御部をさらに備える、磁気冷凍サイクル装置。
【請求項13】
第1磁気ヒートポンプと、
第2磁気ヒートポンプとを備え、
前記第1磁気ヒートポンプおよび前記第2磁気ヒートポンプの各々は、請求項1~8のいずれか1項に記載の磁気ヒートポンプとして構成されており、
前記第1磁気ヒートポンプの前記第1流出口と、前記第2磁気ヒートポンプの前記第1流入口とを直列に接続する第3流路と、
前記第3流路内に配置されており、前記熱輸送媒体が貯留される貯留部とをさらに備える、磁気冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気ヒートポンプおよび磁気冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境配慮型の冷凍技術として、磁気冷凍技術が知られている。磁気冷凍技術では、磁気熱量材料と呼ばれる物質に断熱状態のまま磁界を印加すると磁気熱量材料の温度が上昇し、磁界を除去すると磁気熱量材料の温度が低下する現象(磁気熱量効果)が利用される。
【0003】
従来、能動磁気再生(AMR)方式の磁気冷凍サイクル装置が知られている(例えば、国際公開第2016/018451号参照)。能動磁気再生(AMR)方式の磁気冷凍サイクル装置は、磁気熱量材料を変動する磁界に曝すことによって生じる磁気熱量効果により熱輸送媒体の加熱および冷却が行われる磁気ヒートポンプと、磁気ヒートポンプの外部に配置されており磁気ヒートポンプに熱輸送媒体を送るポンプとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の主たる目的は、磁気ヒートポンプの外部に配置されたポンプを省力化できまたは当該ポンプを不要とすることができる、磁気ヒートポンプおよび磁気冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る磁気ヒートポンプは、少なくとも1つの磁気熱量部材と、羽根車と、少なくとも1つの変形部材と、筐体と、電動機と、磁界発生部とを備える。少なくとも1つの磁気熱量部材は、磁気熱量材料から成る。羽根車は、中心軸と、中心軸に対する周方向に並んで形成されておりかつ少なくとも1つの磁気熱量部材を収容する少なくとも1つの収容室とを有する。少なくとも1つの変形部材は、少なくとも1つの収容室に面し、かつ形状が個別に変化する。筐体は、少なくとも1つの磁気熱量部材、羽根車、および少なくとも1つの変形部材を収容しかつ熱輸送媒体が流通する内部空間と、熱輸送媒体が内部空間に流入するための第1流入口と、周方向において第1流入口と間隔を隔てて配置されておりかつ熱輸送媒体が内部空間から流出するための第1流出口とが形成されている。電動機は、周方向において第1流入口から第1流出口に向かう第1の向きに、羽根車、少なくとも1つの磁気熱量部材、および少なくとも1つの変形部材を一体的に回転させる。磁界発生部は、内部空間のうち内部空間のうち第1の向きにおいて第1流入口から第1流出口に達する第1領域において、第1の向きに沿って強まる磁界を生じさせる。少なくとも1つの収容室は、中心軸に対する径方向の外側を向いて開口している。少なくとも1つの変形部材の形状は、回転に伴い個別に変化する。少なくとも1つの収容室の容積は、少なくとも1つの変形部材の形状の変化に伴い個別に増減する。少なくとも1つの収容室が第1領域に位置するときの容積は、少なくとも1つの収容室が第1の向きにおいて第1流入口よりも後に位置する第2領域に位置するときの容積、および少なくとも1つの収容室が第1の向きにおいて第1流出口よりも前に位置する第3領域に位置するときの容積よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、磁気ヒートポンプの外部に配置されたポンプを省力化できまたは当該ポンプを不要とすることができる、磁気ヒートポンプおよび磁気冷凍サイクル装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る磁気ヒートポンプを示す断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る磁気ヒートポンプを示す斜視図である。
【
図3】
図1中の矢印IIIーIIIから視た部分断面図である。
【
図4】
図1中の矢印IVーIVから視た部分断面図である。
【
図5】
図3中の矢印VーVから視た部分断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る磁気冷凍サイクル装置を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態2に係る磁気ヒートポンプを示す断面図である。
【
図8】実施の形態2に係る磁気冷凍サイクル装置を示すブロック図である。
【
図9】実施の形態3に係る磁気ヒートポンプを示す断面図である。
【
図10】
図9中の矢印XーXから視た部分断面図である。
【
図11】実施の形態4に係る磁気冷凍サイクル装置を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態5に係る磁気冷凍サイクル装置の一部を示すブロック図である。
【
図13】実施の形態6に係る磁気冷凍サイクル装置の一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0010】
実施の形態1.
<磁気ヒートポンプの構成>
図1および
図2に示されるように、実施の形態1に係る磁気ヒートポンプ100は、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3、筐体4、電動機5、および磁界発生部6を主に備える。
【0011】
図1,
図3および
図4に示されるように、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3、および電動機5のシャフト5Aの一部は、筐体4の内部に収容されている。
図1および
図2に示されるように、電動機5の残部および磁界発生部6は、筐体4の外部に配置されている。複数の磁気熱量部材1、羽根車2、および複数の変形部材3の各々は、電動機5のシャフト5Aに固定されている。電動機5は、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、および複数の変形部材3の各々を、中心軸CA(
図1参照)に対する周方向に沿った一方の向きに回転させる。以下、当該一方の向きを第1の向きAとよぶ。複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3の各回転速度は、互いに等しい。上記回転により、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3と、筐体4との相対的な位置関係は変化する。
図1は、上記変化の中の1つの状態を示す断面図である。なお、
図1において、第1の向きAは反時計回りである。
【0012】
複数の磁気熱量部材1の各々を構成する材料は、磁気熱量材料を含む。磁気熱量材料は、磁気熱量効果を奏する材料であり、例えばガドリニウム(Gd)を含む。
【0013】
複数の磁気熱量部材1の各々には、例えば少なくとも1つのスリット1Aが形成されている。スリット1Aは、上記周方向に並んで配置されており、かつ中心軸CAに対する径方向B(以下、径方向B)および中心軸CAの延在方向C(以下、延在方向C)に沿って延びている。言い換えると、複数の磁気熱量部材1の各々は、上記周方向に互いに対向する1組の面を有している。スリット1Aの上記周方向の間隔は、例えば上記径方向Bの位置によらず一定である。なお、
図1において、複数の磁気熱量部材1のハッチングは、各磁気熱量部材1およびスリット1Aを明確化するために、説明の便宜上付されたものである。
【0014】
複数の磁気熱量部材1の各々には、例えば複数のスリット1Aが形成されている。複数のスリット1Aの各々は、上記周方向に並んで配置されており、かつ上記径方向Bおよび上記延在方向Cに沿って延びている。言い換えると、複数の磁気熱量部材1の各々は、上記周方向に互いに対向する複数組の面を有している。1つの磁気熱量部材1に形成されたスリット1Aの数は、任意の数であればよいが、例えば4である。
【0015】
複数の磁気熱量部材1の各々の表面積は、例えば羽根車2の複数の羽根2Bの各々の表面積よりも大きい。
【0016】
羽根車2は、中心軸CAを有している。羽根車2は、根元部2Aと、複数の羽根2Bとを含む。根元部2Aは、電動機5のシャフト5Aに固定されている。根元部2Aは、環状に形成されており、シャフト5Aに嵌め合わされた内周面を有している。複数の羽根2Bは、上記周方向に互いに間隔を隔てて並んで配置されている。複数の磁気熱量部材1の各々は、複数の羽根2Bのうち上記周方向に隣り合う2つの羽根2B間に配置されている。言い換えると、羽根車2には、上記周方向に並んで形成されておりかつ複数の磁気熱量部材1の各々を収容する複数の収容室2Cが形成されている。複数の収容室2Cの各々は、上記周方向に等間隔に配置されている。収容室2Cの数は、任意の数であればよいが、例えば12である。
【0017】
複数の収容室2の各々の構成は、例えば互いに等しい。複数の収容室2Cの各々は、上記径方向Bの外側を向いている底面と、上記第1の向きAにおいて前側を向いている側面と、上記第1の向きAにおいて後側を向いている側面とを有している。複数の収容室2Cの各々の上記底面は、例えば根元部2Aの外周面により構成されている。各磁気熱量部材1の上記径方向Bの内側に位置する端部は、複数の収容室2Cの各々の上記底面に固定されている。複数の収容室2Cの各々の上記側面は、例えば複数の羽根2Bの各々の側面により構成されている。複数の収容室2Cの各々の上記側面は、例えば上記周方向において複数の磁気熱量部材1の各々と間隔を隔てて配置されている。
【0018】
複数の収容室2Cの各々は、上記径方向Bの外側を向いて開口している。複数の収容室2の各々の上記周方向の間隔は、例えば上記径方向Bの位置によらず一定である。根元部2Aおよび複数の羽根2Bは、例えば一体として形成されている。
【0019】
複数の変形部材3の各々は、収容室2Cに面している。複数の変形部材3の各々は、形状が個別に変化する。複数の変形部材3の各々は、固定部3A、移動部3B、および複数の第1弾性部3Cを含む。
【0020】
固定部3Aは、磁気熱量部材1に対して相対的に移動せず、固定されている。固定部3Aは、複数の磁気熱量部材1および羽根車2とともに上記周方向に回転するが、上記径方向には移動しない。固定部3Aは、例えば複数の収容室2Cの各々の外部に配置されている。固定部3Aは、例えばシャフト5Aに固定されている。
【0021】
移動部3Bは、磁気熱量部材1に対して上記径方向Bに沿って相対的に移動する。移動部3Bは、複数の磁気熱量部材1および羽根車2とともに上記周方向に回転するとともに、上記径方向に移動する。移動部3Bは、複数の収容室2Cの各々の内部に配置されている。
【0022】
図5に示されるように、上記延在方向Cに垂直な断面において、移動部3Bは、例えば上記径方向Bと直交する長手方向と、該長手方向と直交する短手方向とを有している。移動部3Bは、スリット1Aに挿入される複数の部分3B1と、スリット1Aの外部に配置される複数の部分3B2とを有している。複数の部分3B1および複数の部分3B2の各々は、例えば上記延在方向Cの両端で互いに接続されている。なお、複数の部分3B1および複数の部分3B2の各々は、例えば上記延在方向Cの一端で互いに接続されていてもよい。言い換えると、上記径方向Bから視て、移動部3Bの外形状は、櫛形状であってもよい。
【0023】
複数の第1弾性部3Cは、複数の磁気熱量部材1および羽根車2とともに上記周方向に回転するとともに、上記径方向Bに弾性変形する。複数の第1弾性部3Cは、上記延在方向Cにおいて移動部3Bを挟むように配置されている。なお、複数の変形部材3の各々は、少なくとも1つの第1弾性部3Cを含んでいればよい。
【0024】
各第1弾性部3Cは、上記径方向Bにおいて内側に位置する第1端部と、上記径方向Bにおいて外側に位置する第2端部とを有している。第1端部は、固定部3Aに接続されている。第2端部は、移動部3Bに接続されている。
【0025】
複数の変形部材3の各々の固定部3Aは、一体として形成されている。複数の変形部材3の各々の移動部3Bは、個別に移動する。複数の変形部材3の各々の第1弾性部3Cは、個別に弾性変形する。
【0026】
複数の変形部材3の各々は、例えば移動部3Bと第1弾性部3Cの第2端部とを接続する複数の接続部3Dをさらに含む。複数の接続部3Dは、上記延在方向Cにおいて移動部3Bを挟むように配置されている。
【0027】
各接続部3Dは、移動部3Bの上記長手方向および上記短手方向の中心を通り上記延在方向Cに沿ってのびる軸に対する周方向において、移動部3Bに対して相対的に回転できる。上記延在方向Cに垂直な断面において、接続部3Dの形状は、例えば円形状である。接続部3Dは、例えば円柱形状を有している。接続部3Dの外周面3D1は、第1弾性部3Cの第2端部が固定されている部分と、後述するガイド部材7の内周面に接触している部分とを有している。
【0028】
筐体4には、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3、および電動機5のシャフト5Aの一部を収容しかつ熱輸送媒体が流通する内部空間が形成されている。上記内部空間は、例えば円柱形状を有している。なお、熱輸送媒体は、例えば水、またはエタノールなどである。
【0029】
さらに、筐体4には、熱輸送媒体が上記内部空間に流入するための第1流入口P1と、上記周方向において第1流入口P1と間隔を隔てて配置されておりかつ熱輸送媒体が上記内部空間から流出するための第1流出口P2とが形成されている。第1流出口P2は、第1流入口P1よりも上記第1の向きAの前側に配置されている。第1流入口P1は、例えば上記内部空間を挟んで第1流出口P2と対向している。第1流入口P1および第1流出口P2の各々は、例えば上記内部空間においてシャフト5A、根元部2A、および固定部3Aよりも上記径方向Bの外側に位置する空間部分のみを挟むように配置されている。
【0030】
さらに、筐体4には、熱輸送媒体が上記内部空間に流入するための第2流入口P3と、上記周方向において第2流入口P3と間隔を隔てて配置されておりかつ熱輸送媒体が上記内部空間から流出するための第2流出口P4とが形成されている。第2流出口P4は、第2流入口P3よりも上記第1の向きAの前側に配置されている。第2流入口P3は、例えば上記内部空間を挟んで第2流出口P4と対向している。第2流入口P3および第2流出口P4の各々は、例えば上記内部空間においてシャフト5A、根元部2A、および固定部3Aよりも上記径方向Bの外側に位置する空間部分のみを挟むように配置されている。
【0031】
第2流入口P3は、第1流出口P2よりも上記第1の向きAの前側に配置されている。第1流入口P1は、第2流出口P4よりも上記第1の向きAの前側に配置されている。つまり、第1流入口P1、第1流出口P2、第2流入口P3、および第2流出口P4は、上記第1の向きAの後側から前側に向かって上記記載順に並んで配置されている。
【0032】
筐体4は、上記内部空間に面しかつ上記径方向Bの内側を向いた第1内周面4Aを有している。第1内周面4Aには、第1流入口P1、第1流出口P2、第2流入口P3、および第2流出口P4と連なる開口部が形成されている。
【0033】
上記内部空間は、第1領域、第2領域、第3領域および第4領域を有している。第1領域、第2領域、第3領域および第4領域は、互いに連なっている。
【0034】
第1領域は、第1の向きAにおいて第1流入口P1から第1流出口P2に達する。
図1において、第1領域は、中心軸CAと第1流入口P1の上記開口部のうち第1の向きAの後側に位置する部分とを結ぶ仮想線L1と、中心軸CAと第1流出口P2の上記開口部のうち第1の向きAの前側に位置する部分とを結ぶ仮想線L2との間に位置する扇状の空間である。
【0035】
第2領域は、第1の向きAにおいて第1流入口P1よりも後に位置する。第2領域は、上記仮想線L1と、中心軸CAと第2流出口P4の上記開口部のうち第1の向きAの前側に位置する部分とを結ぶ仮想線L4との間に位置する扇状の空間である。第3領域は、第1の向きAにおいて第1流出口P2よりも前に位置する。第3領域は、上記仮想線L2と、中心軸CAと第2流入口P3の上記開口部のうち第1の向きAの後側に位置する部分とを結ぶ仮想線L3との間に位置する扇状の空間である。第4領域は、第1の向きAにおいて第2流入口P3から第2流出口P4に達する。第4領域は、上記仮想線L3と、上記仮想線L4との間に位置する扇状の空間である。上記仮想線L1は、例えば上記仮想線L3と同一直線上に配置される。上記仮想線L2は、例えば上記仮想線L4と同一直線上に配置される。
【0036】
なお、
図3は、上記第1領域の上記径方向Bに沿った部分断面図である。
図4は、上記第2領域の上記径方向に沿った部分断面図である。
【0037】
上記第1領域、上記第2領域、上記第3領域、および上記第4領域の各々には、複数の収容室2Cのうち少なくとも1つの収容室2Cが配置される。
図1に示される状態では、上記第1領域および上記第4領域の各々に4つの収容室2Cが配置され、上記第2領域および上記第3領域の各々に2つの収容室2Cが配置される。
図1に示される状態とは別の状態では、例えば、上記第1領域および上記第4領域の各々に3つの収容室2Cが配置され、上記第2領域および上記第3領域の各々に3つの収容室2Cが配置される。
【0038】
第1内周面4Aにおいて上記第1領域、上記第2領域、上記第3領域、および上記第4領域の各々に面している部分と、中心軸CAとの間の上記径方向Bの距離は、互いに等しい。
【0039】
電動機5は、シャフト5Aと、シャフト5Aを上記第1の向きAに回転させる駆動部とを有している。シャフト5Aの一部は、筐体4の上記内部空間に収容されている。電動機5のうちシャフト5Aの上記一部以外の残部は、筐体4の外部に配置されている。
【0040】
磁界発生部6は、筐体4の外部に配置されている。磁界発生部6は、上記第1領域において第1の向きAに沿って強まる磁界を生じさせる。磁界発生部6は、上記第3領域において第1の向きAに沿って弱まる磁界を生じさせる。磁界発生部6は、例えば上記第1領域のうち第1流出口P2に連なる領域に、上記第1領域のうち第1流入口P1に連なる領域よりも強い磁界を生じさせる。上記第1領域の磁界は、第1の向きAに沿って強まっている。上記第1領域のうち第1流出口P2に連なる領域の磁界は、上記第1領域のうち第1流入口P1に連なる領域の磁界よりも強い。上記第2領域の磁界は、第1の向きAに沿って一定である。上記第4領域の磁界は、第1の向きAに沿って一定である。上記第4領域のうち第2流出口P4に連なる領域の磁界は、第2流入口P3に連なる領域の磁界と同等の強さである。各磁界の向きは、上記延在方向Cに沿っている。
【0041】
磁界発生部6は、上記磁界の強度分布を生じさせ得る限りにおいて、任意の構成を備えていればよいが、例えば永久磁石、電磁石、および超電導磁石のうちの少なくともいずれかを含む。磁界発生部6は、強い磁界を発生させるために、ヨークをさらに含んでいてもよい。磁界発生部6は、強い磁界を発生させるために、ハルバッハ配列された複数の永久磁石を含んでいてもよい。
【0042】
磁気ヒートポンプ100は、ガイド部材7をさらに備えている。ガイド部材7は、筐体4に対する相対的な位置が固定されている。ガイド部材7は、複数の変形部材3が第1の向きAに回転することに伴い上記第1の向きAに移動する移動部3Bを、上記径方向Bにガイドする。
【0043】
図3および
図4に示されるように、ガイド部材7は、上記径方向Bの内側を向いた第2内周面7Aを有している。移動部3Bは、第1弾性部3Cによってガイド部材7の第2内周面7Aに押圧されている。移動部3Bの外周面3B1は、第2内周面7Aと接触している。第2内周面7Aは、固定部3Aの外周面と上記径方向Bに対向している。
【0044】
ガイド部材7の第2内周面7Aは、上記第1領域に配置されている第1面部7A1(第1部分)と、上記第2領域に配置されている第2面部7A2(第2部分)と、上記第3領域に配置されている第3面部7A3(第3部分)と、上記第4領域に配置されている第4面部7A4とを有している。
【0045】
図1に示されるように、第1の向きAにおいて、第2面部7A2の前側に位置する一部は、例えば上記第1領域内の後側に位置する領域に配置されている。第1の向きAにおいて第2面部7A2の前側に位置する一部は、例えば第1流入口P1に面している。第1の向きAにおいて、第3面部7A3の後側に位置する一部は、上記第1領域内の前側に位置する領域に配置されている。第1の向きAにおいて第3面部7A3の後側に位置する一部は、例えば第1流出口P2に面している。
【0046】
第1の向きAにおいて、第3面部7A3の前側に位置する一部は、上記第4領域内の後側に位置する領域に配置されている。第1の向きAにおいて第3面部7A3の前側に位置する一部は、例えば第2流入口P3に面している。第1の向きAにおいて、第2面部7A2の後側に位置する一部は、例えば上記第4領域内の前側に位置する領域に配置されている。第1の向きAにおいて第2面部7A2の後側に位置する一部は、例えば第2流出口P4に面している。
【0047】
上記径方向Bにおいて、第1面部7A1および第4面部7A4は、各磁気熱量部材1の中心よりも内側に配置されている。上記径方向Bにおいて、第2面部7A2および第3面部7A3は、各磁気熱量部材1の中心よりも内側に配置されている。
【0048】
第1面部7A1と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離は、第1面部7A1と根元部2Aの外周面との間の上記径方向Bの距離よりも長い。第2面部7A2と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離は、第2面部7A2と根元部2Aの外周面との間の上記径方向Bの距離よりも短い。第3面部7A3と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離は、第3面部7A3と根元部2Aの外周面との間の上記径方向Bの距離よりも短い。第4面部7A4と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離は、第4面部7A4と根元部2Aの外周面との間の上記径方向Bの距離よりも長い。
【0049】
第1面部7A1と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離は、第2面部7A2と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離および第3面部7A3と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離よりも長い。第2内周面7Aの第1面部7A1と中心軸CAとの間の上記径方向Bの距離は、第2面部7A2と中心軸CAとの間の上記径方向Bの距離および第3面部7A3と中心軸CAとの間の上記径方向Bの距離よりも短い。
【0050】
第4面部7A4と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離は、第2面部7A2と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離および第3面部7A3と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離よりも長い。第2内周面7Aの第4面部7A4と中心軸CAとの間の上記径方向Bの距離は、第2面部7A2と中心軸CAとの間の上記径方向Bの距離および第3面部7A3と中心軸CAとの間の上記径方向Bの距離よりも短い。
【0051】
第1面部7A1と第1内周面4Aとの間の上記径方向の距離は、例えば第4面部7A4と第1内周面4Aとの間の上記径方向の距離と等しい。第2面部7A2と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離は、例えば第3面部7A3と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離と等しい。
【0052】
ガイド部材7の第2内周面7Aは、第2面部7A2と第1面部7A1との間を接続している第5面部、第1面部7A1と第3面部7A3との間を接続している第6面部、第3面部7A3と第4面部7A4との間を接続している第7面部、および第4面部7A4と第2面部7A2との間を接続している第8面部をさらに有している。
【0053】
上記第5面部は、第1の向きAの前側から後側に向かうにつれて、上記径方向Bの外側から内側に向かって傾斜している。上記第6面部は、第1の向きAの前側から後側に向かうにつれて、上記径方向Bの内側から外側に向かって傾斜している。上記第7面部は、第1の向きAの前側から後側に向かうにつれて、上記径方向Bの外側から内側に向かって傾斜している。上記第8面部は、第1の向きAの前側から後側に向かうにつれて、上記径方向Bの内側から外側に向かって傾斜している。
【0054】
上記第5面部は、例えば第1の向きAにおいて上記第1領域内の後側に位置する領域に配置されている。上記第6面部は、例えば第1の向きAにおいて上記第1領域内の前側に位置する領域に配置されている。上記第7面部は、例えば第1の向きAにおいて上記第4領域内の後側に位置する領域に配置されている。上記第8面部は、例えば第1の向きAにおいて上記第4領域内の前側に位置する領域に配置されている。
【0055】
上記第5面部、上記第6面部、上記第7面部、および上記第8面部の各々の上記周方向の一端と他端とが中心軸CAに対して成す中心角は、例えば移動部3Bの上記周方向の一端と他端とが中心軸CAに対して成す中心角よりも小さい。
【0056】
上記第1領域に位置する第1弾性部3Cの上記第1端部と上記第2端部との間の上記径方向Bの長さは、上記第2領域に位置する第1弾性部3Cの上記第1端部と上記第2端部との間の上記径方向Bの長さ、および上記第3領域に位置する第1弾性部3Cの上記第1端部と上記第2端部との間の上記径方向Bの長さよりも短い。
【0057】
実施の形態1に係る磁気ヒートポンプ100では、複数の収容室2Cの各々の容積が、各収容室3C内において移動部3Bよりも上記径方向Bの外側に位置する空間の容積と定義される。複数の収容室2Cの各々の容積は、各収容室2Cが上記第1領域、上記第2領域、上記第3領域、および上記第4領域のいずれに位置しているかによって、変化する。
【0058】
複数の収容室2Cの各々が上記第1領域に位置するときの上記容積は、複数の収容室2Cの各々が上記第2領域に位置するときの上記容積および上記第3領域に位置するときの上記容積よりも大きい。複数の収容室2Cの各々が上記第4領域に位置するときの上記容積は、複数の収容室2Cの各々が上記第2領域に位置するときの上記容積および上記第3領域に位置するときの上記容積よりも大きい。すなわち、複数の収容室2Cの各々の容積は、上記回転に伴い、増減する。
【0059】
複数の収容室2Cの各々が上記第1領域に位置するときの上記容積は、例えば複数の収容室2Cの各々が上記第4領域に位置するときの上記容積と等しい。複数の収容室2Cの各々が上記第2領域に位置するときの上記容積は、例えば複数の収容室2Cの各々が上記第3領域に位置するときの上記容積と等しい。
【0060】
<磁気ヒートポンプの動作>
磁気ヒートポンプ100の動作時に、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3が第1の向きAに回転することにより、筐体4およびガイド部材7に対する複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3の各々の相対的な位置が変化する。さらに、磁気ヒートポンプ100の動作時に、磁界発生部6が上記磁界を生じさせる。
【0061】
収容室2Cが筐体4の上記第2領域に位置するとき、接続部3Dの外周面3D1が第1弾性部3Cによって第2内周面7Aの第2面部7A2に押圧されて、当該収容室2C内において移動部3Bが磁気熱量部材1の上記径方向Bの中心よりも外側に位置決めされる。このときの収容室2Cの上記容積は、比較的小さい。
【0062】
上記回転に伴い、上記第2領域に配置されていた収容室2Cは、上記第1領域に移動する。接続部3Dの外周面3D1は、第2内周面7Aの第5面部にガイドされて、第1面部7A1に達する。接続部3Dの外周面3D1が上記第5面部にガイドされているとき、収容室2Cの上記容積は徐々に大きくなる。つまり、収容室2Cの上記容積は、上記第1領域において第1流入口P1に面した領域にて増加する。これにより、熱輸送媒体HM(
図1参照)が第1流入口P1から収容室2C内に流入する。
【0063】
収容室2Cが筐体4の上記第1領域に配置されたとき、接続部3Dの外周面3D1が第1弾性部3Cによって第1面部7A1に押圧されて、当該収容室2C内において移動部3Bが磁気熱量部材1の上記径方向Bの中心よりも内側に位置決めされる。接続部3Dの外周面3D1が第1面部7A1に押圧されているときの収容室2Cの上記容積は、接続部3Dの外周面3D1が第2面部7A2に押圧されているときの収容室2Cの上記容積より、大きくなる。
【0064】
収容室2C内に流入した熱輸送媒体HMは、接続部3Dの外周面3D1が第1面部7A1に押圧されている間、収容室2C内に保持される。この状態において、収容室2Cは、上記第1領域において第1の向きAに沿って磁界が強まる領域を第1の向きAに沿って移動する。これにより、当該収容室2Cに収容された磁気熱量部材1は発熱し、収容室2C内に保持された熱輸送媒体HMは磁気熱量部材1によって加熱される。
【0065】
上記回転に伴い、上記第1領域に配置されていた収容室2Cは、上記第3領域に移動する。接続部3Dの外周面3D1は、第2内周面7Aの第6面部にガイドされて、第3面部7A3に達する。接続部3Dの外周面3D1が上記第6面部にガイドされているとき、収容室2Cの上記容積は徐々に小さくなる。つまり、収容室2Cの上記容積は、上記第1領域において第1流出口P2に面した領域にて減少する。これにより、上記のように加熱された熱輸送媒体HM(
図1参照)が収容室2C内から第1流出口P2へ流出する。
【0066】
収容室2Cが筐体4の上記第3領域に配置されたとき、接続部3Dの外周面3D1が第1弾性部3Cによって第3面部7A3に押圧されて、当該収容室2C内において移動部3Bが磁気熱量部材1の上記径方向Bの中心よりも外側に位置決めされる。接続部3Dの外周面3D1が第3面部7A3に押圧されているときの収容室2Cの上記容積は、接続部3Dの外周面3D1が第1面部7A1に押圧されているときの収容室2Cの上記容積より、小さくなる。
【0067】
収容室2Cが上記第3領域を第1の向きAに移動することで、該収容室2Cに収容された磁気熱量部材1は第1の向きAに沿って磁界が弱まる領域を第1の向きAに沿って移動する。これにより、磁気熱量部材1は吸熱する。
【0068】
上記回転に伴い、上記第3領域に配置されていた収容室2Cは、上記第4領域に移動する。接続部3Dの外周面3D1は、第2内周面7Aの第7面部にガイドされて、第4面部7A4に達する。接続部3Dの外周面3D1が上記第7面部にガイドされているとき、収容室2Cの上記容積は徐々に大きくなる。つまり、収容室2Cの上記容積は、上記第4領域において第2流入口P3に面した領域にて増加する。これにより、熱輸送媒体HM(
図1参照)が第2流入口P3から収容室2C内に流入する。
【0069】
収容室2Cが筐体4の上記第4領域に配置されたとき、接続部3Dの外周面3D1が第1弾性部3Cによって第4面部7A4に押圧されて、当該収容室2C内において移動部3Bが磁気熱量部材1の上記径方向Bの中心よりも内側に位置決めされる。接続部3Dの外周面3D1が第4面部7A4に押圧されているときの収容室2Cの上記容積は、接続部3Dの外周面3D1が第3面部7A3に押圧されているときの収容室2Cの上記容積より、大きくなる。
【0070】
収容室2C内に流入した熱輸送媒体HMは、接続部3Dの外周面3D1が第4面部7A4に押圧されている間、収容室2C内に保持される。この状態において、収容室2Cは、第1の向きAに沿って磁界が弱まる領域を第1の向きAに沿って移動するため、当該収容室2Cに収容された磁気熱量部材1は吸熱し、収容室2C内に保持された熱輸送媒体HMは磁気熱量部材1によって冷却される。
【0071】
上記回転に伴い、上記第4領域に配置されていた収容室2Cは、上記第2領域に移動する。接続部3Dの外周面3D1は、第2内周面7Aの第8面部にガイドされて、第2面部7A2に達する。接続部3Dの外周面3D1が上記第8面部にガイドされているとき、収容室2Cの上記容積は徐々に小さくなる。つまり、収容室2Cの上記容積は、上記第4領域において第2流出口P4に面した領域にて減少する。これにより、上記のように冷却された熱輸送媒体HM(
図1参照)が収容室2C内から第2流出口P4へ流出する。
【0072】
上述のように、収容室2Cが筐体4の上記第2領域に配置されたとき、接続部3Dの外周面3D1が第1弾性部3Cによって第2面部7A2に押圧されて、当該収容室2C内において移動部3Bが磁気熱量部材1の上記径方向Bの中心よりも外側に位置決めされる。接続部3Dの外周面3D1が第2面部7A2に押圧されているときの収容室2Cの上記容積は、接続部3Dの外周面3D1が第4面部7A4に押圧されているときの収容室2Cの上記容積より、小さくなる。
【0073】
収容室2Cの上記容積が増減する上記サイクルは、上記回転が続く間、繰り返される。これにより、磁気ヒートポンプ100は、第1流入口P1から上記内部空間に熱輸送媒体を取り込み、取り込んだ熱輸送媒体を加熱し、さらに加熱した熱輸送媒体を第1流出口P2から外部へ送り出す。同時に、磁気ヒートポンプ100は、第2流入口P3から上記内部空間に熱輸送媒体を取り込み、取り込んだ熱輸送媒体を冷却し、さらに冷却した熱輸送媒体を第2流出口P4から外部へ送り出す。
【0074】
<磁気冷凍サイクル装置の構成および動作>
図6に示されるように、実施の形態1に係る磁気冷凍サイクル装置200は、磁気ヒートポンプ100と、第1流路21と、第2流路22とを主に備える。磁気冷凍サイクル装置200において、磁気ヒートポンプ100、第1流路21、および第2流路22の内部には、熱輸送媒体が充填されている。
【0075】
第1流路21は、磁気ヒートポンプ100の第1流入口P1に接続されている一端と、磁気ヒートポンプ100の第1流出口P2と接続されている他端とを有している。第1流路21は、例えば第1熱交換器23を含む。磁気ヒートポンプ100にて加熱された熱輸送媒体は、磁気ヒートポンプ100によって第1流出口P2から第1流路21に送り出され、第1熱交換器23において空気などの他の熱輸送媒体と熱交換して、冷却される。第1熱交換器23において冷却された熱輸送媒体は、第1流路21から第1流入口P1を経て磁気ヒートポンプ100に取り込まれる。
【0076】
第2流路22は、磁気ヒートポンプ100の第2流入口P3に接続されている一端と、磁気ヒートポンプ100の第2流出口P4と接続されている他端とを有している。第2流路22は、例えば第2熱交換器24を含む。磁気ヒートポンプ100にて冷却された熱輸送媒体は、磁気ヒートポンプ100によって第2流出口P4から第2流路22に送り出され、第2熱交換器24において空気などの他の熱輸送媒体と熱交換して、加熱される。第2熱交換器24において加熱された熱輸送媒体は、第2流路22から第2流入口P3を経て磁気ヒートポンプ100に取り込まれる。
【0077】
<作用効果>
磁気ヒートポンプ100は、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3、筐体4、電動機5、および磁界発生部6を備える。複数の磁気熱量部材1の各々は、磁気熱量材料から成る。羽根車2は、中心軸CAと、中心軸に対する周方向に並んで形成されておりかつ複数の磁気熱量部材1の各々を収容する複数の収容室2Cとを有する。複数の変形部材3は、複数の収容室2Cの各々に面し、かつ形状が個別に変化する。筐体4は、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、および複数の変形部材3を収容しかつ熱輸送媒体が流通する内部空間と、熱輸送媒体が上記内部空間に流入するための第1流入口P1と、上記周方向において第1流入口P1と間隔を隔てて配置されておりかつ熱輸送媒体が上記内部空間から流出するための第1流出口P2とが形成されている。
【0078】
電動機5は、上記第1の向きAに、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、および複数の変形部材3を一体的に回転させる。磁界発生部6は、上記内部空間のうち上記第1領域に第1の向きAに沿って強まる磁界を生じさせる。
【0079】
複数の収容室2Cは、上記径方向Bの外側を向いて開口している。複数の変形部材3の形状は、回転に伴い個別に変化する。複数の収容室2Cの各々の容積は、複数の変形部材3の各々の形状の変化に伴い個別に増減する。各収容室2Cが上記第1の向きAにおいて第1流入口P1から第1流出口P2に達する上記第1領域に位置するときの容積は、各収容室2Cが上記第1の向きAにおいて第1流入口P1よりも後側に位置する上記第2領域に位置するときの容積、および各収容室2Cが上記第1の向きAにおいて第1流出口P2よりも前側に位置する上記第3領域に位置するときの容積よりも大きい。
【0080】
このような磁気ヒートポンプ100では、熱輸送媒体を送り出すポンプとしての作用と、磁気熱量部材1が曝される磁界の強度を変化させて磁気熱量効果を発現させる作用とが、1つの電動機5の駆動力によって同時に実現される。
【0081】
具体的には、上記回転に伴い各収容室2Cが上記第2領域から上記第1領域に移動するときに、当該収容室2Cの上記容積は増加する。そのため、熱輸送媒体は、第1流入口P1から当該収容室2Cに流入する。
【0082】
さらに、磁気ヒートポンプ100では、上記第1領域内の磁気熱量部材1が発熱し、収容室2C内に保持された熱輸送媒体HMは磁気熱量部材1によって加熱される。
【0083】
さらに、磁気ヒートポンプ100では、上記回転に伴い各収容室2Cが上記第1領域から上記第3領域に移動するときに、当該収容室2Cの上記容積は減少する。そのため、加熱された熱輸送媒体は、当該収容室2Cから第1流出口P2に流出する。
【0084】
その結果、磁気ヒートポンプ100は、磁気熱量効果によって熱輸送媒体を加熱するとともに、加熱した熱輸送媒体を送り出すことができる。そのため、磁気ヒートポンプ100を備える磁気冷凍サイクル装置200では、従来の磁気冷凍サイクル装置において磁気ヒートポンプの外部に配置されたポンプを省力化できまたは当該ポンプを不要とすることができる。
【0085】
磁気ヒートポンプ100において、複数の変形部材3の各々は、各収容室2Cの内部において磁気熱量部材1に対して上記径方向Bに相対的に移動する移動部3Bを含む。磁気ヒートポンプ100は、筐体4に対する相対的な位置が固定されており、上記回転に伴い周方向に移動する移動部3Bを上記径方向Bにガイドするガイド部材7をさらに備える。
【0086】
筐体4は、上記内部空間に面しかつ上記径方向Bの内側を向いた第1内周面4Aを有している。各収容室2Cの容積は、各収容室2Cのうち上記径方向Bにおいて移動部3Bよりも外側に位置する空間の容積である。移動部3Bが上記第1領域に位置するときの、移動部3Bと上記第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離は、移動部3Bが上記第2領域または上記第3領域に位置するときの、移動部3Bと第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離よりも長い。
【0087】
このようにすれば、各移動部3Bが上記回転に伴って上記径方向Bに移動することにより、各収容室2Cの容積の上記増減が実現される。各移動部3Bの上記径方向Bの移動は、電動機5が各移動部3Bに付与する駆動力のみによって実現される。そのため、磁気ヒートポンプ100は、移動部3Bが電動機5以外の駆動源によって与えられる駆動力によって上記径方向Bに移動する場合と比べて、小型化され得る。
【0088】
磁気ヒートポンプ100において、複数の変形部材3の各々は、各磁気熱量部材1に対して相対的に固定されている固定部3Aと、固定部3Aに接続されている第1端部と、移動部に接続されておりかつ第1端部とは反対側に位置する第2端部とを有し、径方向に弾性変形する第1弾性部3Cとをさらに含む。ガイド部材7は、上記径方向Bの内側を向いた第2内周面7Aを有している。移動部3Bは、第1弾性部3Cによってガイド部材7の第2内周面7Aに押圧されている。ガイド部材の第2内周面7Aは、上記第1領域に配置されている第1面部7A1と、上記第2領域に配置されている第2面部7A2と、上記第3領域に配置されている第3面部7A3とを有している。
【0089】
第1面部7A1と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離は、第2面部7A2と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離および第3面部7A3と第1内周面4Aとの間の上記径方向Bの距離よりも長い。
【0090】
このようにすれば、移動部3Bの上記径方向Bの位置が第1弾性部3Cによって定められるため、上記回転に伴う上記容積の増減がより確実に行われる。
【0091】
磁気ヒートポンプ100において、複数の磁気熱量部材1の各々には、上記延在方向Cおよび上記径方向Bに沿って延びる少なくとも1つのスリット1Aが形成されている。各移動部3Bは、スリット1Aに挿入されている部分を有している。
【0092】
少なくとも1つのスリット1Aが形成されている各磁気熱量部材1において熱輸送媒体と接する伝熱面の面積は、スリット1Aが形成されていない各磁気熱量部材1において熱輸送媒体と接する伝熱面の面積よりも、大きくなる。上記伝熱面の面積は、各磁気熱量部材1に形成されたスリット1Aの数が増えるほど、大きくなる。上記伝熱面の面積が大きいほど、各磁気熱量部材1と熱輸送媒体との間での熱が伝わりやすい。
【0093】
磁気ヒートポンプ100では、筐体4が熱輸送媒体が上記内部空間に流入するための第2流入口P3と、上記周方向において第2流入口P3と間隔を隔てて配置されておりかつ熱輸送媒体が上記内部空間から流出するための第2流出口P4とがさらに形成されている。第2流入口P3は、上記第1の向きAにおいて第1流出口P2よりも前側に配置されている。第2流出口P4は、上記第1の向きAにおいて第2流入口P3よりも前側に配置されている。磁界発生部6は、上記第3領域の少なくとも一部に、上記第4領域よりも、強い磁界を生じさせる。上記第1の向きAにおいて第2流入口P3から第2流出口P4に達する上記第4領域に位置するときの容積は、各収容室2Cが上記第1の向きAにおいて第1流入口P1よりも後側に位置する上記第2領域に位置するときの容積、および各収容室2Cが上記第1の向きAにおいて第1流出口P2よりも前側に位置する上記第3領域に位置するときの容積よりも大きい。
【0094】
このようにすれば、磁気ヒートポンプ100では、上記回転に伴い各収容室2Cが上記第3領域から上記第4領域に移動するときに、当該収容室2Cの上記容積は増加する。そのため、熱輸送媒体は、第2流入口P3から当該収容室2Cに流入する。
【0095】
さらに、磁気ヒートポンプ100では、上記第4領域内の磁気熱量部材1が吸熱し、収容室2C内に保持された熱輸送媒体HMは磁気熱量部材1によって冷却される。
【0096】
さらに、磁気ヒートポンプ100では、上記回転に伴い各収容室2Cが上記第4領域から上記第2領域に移動するときに、当該収容室2Cの上記容積は減少する。そのため、冷却された熱輸送媒体は、当該収容室2Cから第2流出口P4に流出する。
【0097】
その結果、磁気ヒートポンプ100は、磁気熱量効果によって熱輸送媒体を加熱するとともに加熱した熱輸送媒体を送り出すことができ、かつ磁気熱量効果によって熱輸送媒体を冷却するとともに冷却した熱輸送媒体を送り出すことができる。そのため、磁気ヒートポンプ100を備える磁気冷凍サイクル装置200では、従来の磁気冷凍サイクル装置において磁気ヒートポンプの外部に配置されたポンプを省力化できまたは当該ポンプを不要とすることができる。
【0098】
磁気冷凍サイクル装置200は、磁気ヒートポンプ100と、第1流路21と、第2流路22とを備える。第1流路21は、磁気ヒートポンプ100の第1流入口P1に接続されている一端と、第1流出口P2に接続されている他端とを有しており、熱輸送媒体が流れる。第2流路22は、第2流入口P3に接続されている一端と、第2流出口P4に接続されている他端とを有しており、熱輸送媒体が流れる。第1流路21は、例えば第1熱交換器23を含む。第2流路22は、例えば第2熱交換器24を含む。
【0099】
磁気冷凍サイクル装置200では、磁気ヒートポンプ100にて加熱された熱輸送媒体が第1熱交換器23において他の熱輸送媒体と熱交換して、冷却される。第1熱交換器23において冷却された熱輸送媒体は、磁気ヒートポンプ100に取り込まれる。さらに、磁気ヒートポンプ100にて冷却された熱輸送媒体が第2熱交換器24において他の熱輸送媒体と熱交換して、加熱される。第2熱交換器24において加熱された熱輸送媒体は、磁気ヒートポンプ100に取り込まれる。磁気冷凍サイクル装置200が駆動している間、上記冷凍サイクルが繰り返される。磁気冷凍サイクル装置200では、磁気ヒートポンプ100が熱輸送媒体を送るためのポンプを兼ねるため、従来の磁気冷凍サイクル装置において磁気ヒートポンプの外部に配置されたポンプを省力化できまたは当該ポンプを不要とすることができる。
【0100】
実施の形態2.
図7に示されるように、実施の形態2に係る磁気ヒートポンプ101は、実施の形態1に係る磁気ヒートポンプ100と基本的に同様の構成を備えるが、筐体4に第2流入口P3および第2流出口P4が形成されていない点で、磁気ヒートポンプ100とは異なる。
【0101】
ガイド部材7の第2内周面7Aは、少なくとも第1面部7A1、第2面部7A2、および第3面部7A3を有していればよい。第2内周面7Aは、例えば第4面部7A4を有していない。この場合には、第2面部7A2および第3面部7A3が一体として形成されていてもよい。
【0102】
電動機5は、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3を、第1の向きAに回転させる。磁界発生部6は、筐体4に対する相対的な位置が可変な永久磁石、電磁石、および超電導磁石の少なくともいずれかを含む。
【0103】
図8に示されるように、実施の形態2に係る磁気冷凍サイクル装置201は、実施の形態1に係る磁気冷凍サイクル装置200と基本的に同様の構成を備えるが、第1流路21および第2流路22に代えて、第1流路31および第2流路32と、切替部としての複数のバルブ33,34,35,36とを備えている点で、磁気冷凍サイクル装置200とは異なる。
【0104】
第1流路31および第2流路32の各々は、第1流入口P1と第1流出口P2との間を接続している。第1流路31および第2流路32は、第1流入口P1および第1流出口P2に対して互いに並列に接続されている。第1流路31は、第1熱交換器23を含む。第2流路32は、第2熱交換器24を含む。
【0105】
具体的には、第1流入口P1には、第1~第3開口部を有する分岐管路29の第1開口部が接続されている。第1流出口P2には、第1~第3開口部を有する分岐管路30の第1開口部が接続されている。分岐管路29の第2開口部は、第1熱交換器23を介して、分岐管路30の第2開口部と直列に接続されている。分岐管路29の第3開口部は、第2熱交換器24を介して、分岐管路30の第3開口部と接続されている。
【0106】
複数のバルブ33,34,35,36は、磁気ヒートポンプ101が第1流路31に接続されており第2流路32に接続されていない第1状態と、磁気ヒートポンプが第2流路32に接続されており第1流路31に接続されていない第2状態とを切り替える。
【0107】
第1流路31は、バルブ33およびバルブ34を含む。バルブ33は、第1流路31において分岐管路29の第2開口部と第1熱交換器23との間に配置されている。バルブ34は、第1流路31において分岐管路30の第2開口部と第1熱交換器23との間に配置されている。バルブ33およびバルブ34は、同時に開放または閉止される。
【0108】
第2流路32は、バルブ35およびバルブ36を含む。バルブ35は、第2流路32において分岐管路29の第3開口部と第2熱交換器24との間に配置されている。バルブ36は、第2流路32において分岐管路30の第3開口部と第2熱交換器24との間に配置されている。バルブ35およびバルブ36は、同時に開放または閉止される。バルブ33およびバルブ34と、バルブ35およびバルブ36とは、交互に開放または閉止される。つまり、バルブ33およびバルブ34が開放されバルブ35およびバルブ36が閉止された状態と、バルブ33およびバルブ34が閉止されバルブ35およびバルブ36が開放された状態とが、交互に切り替えられる。
【0109】
磁気冷凍サイクル装置201の磁気ヒートポンプ101は、磁気冷凍サイクル装置200の磁気ヒートポンプ100と同様に駆動される。
【0110】
バルブ33およびバルブ34が開放され、バルブ35およびバルブ36が閉止された状態では、磁界発生部6は第1の向きAに沿って徐々に強くなる磁界を上記第1領域に形成することにより、磁気ヒートポンプ101において加熱された熱輸送媒体が第1熱交換器23に供給される。
【0111】
その後、バルブ33およびバルブ34が閉止され、バルブ35およびバルブ36が開放された状態が実現される。この状態では、磁界発生部6は第1の向きAに沿って徐々に弱くなる磁界を上記第1領域に形成することにより、磁気ヒートポンプ101において冷却された熱輸送媒体が第2熱交換器24に供給される。
【0112】
電動機5は、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3を第1の向きAに回転させる状態と、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3を第1の向きAとは反対の向きに回転させる状態とを交互に切り替えてもよい。上記切り替えは、各状態における回転数が少なくとも1以上のときに行われる。この場合の磁界発生部6は、上記第1の領域において第1の向きAに沿って強まる磁界のみを形成すればよい。磁界発生部6は、筐体4に対する相対的な位置が固定された永久磁石を含んでいてもよい。この場合、複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3を第1の向きAとは反対の向きに回転させる状態では、第1流出口P2は熱輸送媒体が流入する流入口として作用し、第1流入口P1は熱輸送媒体が流出する流出口として作用する。
【0113】
実施の形態3.
図9および
図10に示されるように、実施の形態3に係る磁気ヒートポンプ102は、実施の形態1に係る磁気ヒートポンプ100と基本的に同様の構成を備えるが、複数の変形部材3に代えて、複数の収容室2Cの各々を区画する複数の変形部材13を備えている点で、磁気ヒートポンプ100とは異なる。
【0114】
図9に示されるように、磁気ヒートポンプ101は、複数の磁気熱量部材11、羽根車12、複数の変形部材13、筐体14、電動機15、および磁界発生部16を主に備える。複数の磁気熱量部材11、羽根車12、複数の変形部材13、筐体14、電動機15、および磁界発生部16の各々は、磁気ヒートポンプ100の複数の磁気熱量部材1、羽根車2、複数の変形部材3、筐体4、電動機5、および磁界発生部6の各々と基本的に同様の構成を備えている。
【0115】
図10に示されるように、複数の磁気熱量部材11の各々には、例えば少なくとも1つのスリット11Aが形成されている。スリット11Aは、例えば上記延在方向Cに並んで配置されており、かつ上記径方向Bおよび上記周方向に沿って延びている。言い換えると、複数の磁気熱量部材11の各々は、上記延在方向Cに互いに対向する1組の面を有している。スリット11Aの上記延在方向Cの間隔は、例えば上記径方向Bの位置によらず一定である。なお、スリット11Aは、スリット1Aと同様に構成されていてもよい。
【0116】
複数の磁気熱量部材11の各々には、例えば複数のスリット11Aが形成されている。複数のスリット11Aの各々は、例えば上記延在方向Cに並んで配置されており、かつ上記径方向Bおよび上記周方向に沿って延びている。言い換えると、複数の磁気熱量部材11の各々は、上記延在方向Cに互いに対向する複数組の面を有している。1つの磁気熱量部材1に形成されたスリット11Aの数は、任意の数であればよい。
【0117】
羽根車12は、中央部12Aと、複数の磁気熱量部材11の各々を収容している複数の収容室12Cを有している。複数の収容室12Cは、複数の変形部材13の各々によって区画されている。言い換えると、複数の変形部材13の各々は、羽根車12の羽根として構成されている。
【0118】
複数の収容室12Cの各々の構成は、例えば互いに等しい。複数の収容室12Cの各々は、上記径方向Bの外側を向いている底面と、上記第1の向きAにおいて前側を向いている側面と、上記第1の向きAにおいて後側を向いている側面とを有している。複数の収容室12Cの各々の上記底面は、例えば中央部12Aの外周面12Bにより構成されている。各磁気熱量部材11の上記径方向Bの内側に位置する端部は、複数の収容室12Cの各々の上記底面に固定されている。複数の収容室12Cの各々の上記側面は、複数の変形部材13の各々の側面により構成されている。複数の収容室12Cの各々の上記側面は、例えば上記周方向において複数の磁気熱量部材11の各々と接している。
【0119】
複数の収容室12Cの各々は、上記径方向Bの外側を向いて開口している。複数の収容室12Cの各々の上記周方向の間隔は、例えば上記径方向Bの内側から外側に向かうにつれて徐々に広がっている。
【0120】
複数の変形部材13は、上記径方向Bの内側に配置されている内周部分13Aと、上記径方向Bにおいて内周部分13Aよりも外側に配置されておりかつ内周部分13Aに対して弾性変形する外周部分13Bとを含む。
【0121】
複数の変形部材13の各々の内周部分13Aは、上記周方向に隣り合う2つの磁気熱量部材11の間に配置されている。各内周部分13Aは、例えば上記周方向に隣り合う2つの磁気熱量部材11に接している。複数の変形部材13の各々の外周部分13Bは、内周部分13Aと接続されている。各外周部分13Bは、上記径方向Bにおいて各磁気熱量部材11よりも外側に配置されている。
【0122】
各変形部材13に外力が加えられていない状態を上記延在方向Cから視たときに、各変形部材13は、例えば、上記径方向に沿った長手方向と、上記周方向に沿った短手方向とを有している。
【0123】
筐体14は、上記内部空間に面しかつ上記径方向Bの内側を向いた第1内周面14Aを有している。磁気ヒートポンプ102では、筐体14の第1内周面14Aが、磁気ヒートポンプ100のガイド部材7の第2内周面7Aと同様の役割を担っている。
【0124】
筐体14の第1内周面14Aは、上記第1領域に配置されている第9面部14A1(第4部分)、上記第2領域に配置されている第10面部14A2(第5部分)、上記第3領域に配置されている第11面部14A3(第6部分)、および上記第4領域に配置されている第12面部14A4を有している。
【0125】
第9面部14A1と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離は、第10面部14A2と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離および第11面部14A3と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離よりも長い。第12面部14A4と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離は、第10面部14A2と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離および第11面部14A3と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離よりも長い。
【0126】
第9面部14A1と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離は、例えば第12面部14A4と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離と等しい。第10面部14A2と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離は、例えば第11面部14A3と内周部分13Aとの間の上記径方向Bの距離と等しい。
【0127】
第9面部14A1と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離LH1は、第10面部14A2と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離LH2および第11面部14A3と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離LH3よりも長い。第12面部14A4と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離は、第10面部14A2と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離および第11面部14A3と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離よりも長い。
【0128】
第9面部14A1と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離は、例えば第12面部14A4と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離と等しい。第10面部14A2と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離は、例えば第11面部14A3と磁気熱量部材11との間の上記径方向Bの距離と等しい。
【0129】
複数の変形部材13の各々の外周部分13Bは、少なくとも第10面部14A2および第11面部14A3の各々と接触するように設けられている。例えば、各変形部材13に外力が加えられていない状態において上記第1の向きAの前側を向く外周部分13Bの面が、第10面部14A2および第11面部14A3の各々と接触する。これにより、上記第2領域および上記第3領域に位置する各収容室12Cは、羽根車12、複数の変形部材13、および筐体14によって気密に封止されている。
【0130】
好ましくは、複数の変形部材13の各々の外周部分13Bは、第9面部14A1および第12面部14A4の各々とも接触するように設けられている。例えば、各変形部材13に外力が加えられていない状態において上記径方向Bの外側を向く外周部分13Bの面が、第9面部14A1および第12面部14A4の各々と接触する。これにより、複数の収容室12Cの各々は、羽根車12、複数の変形部材13、および筐体14によって気密に封止されている。
【0131】
複数の変形部材13の各々が上記第1領域に位置するときの、外周部分13Bの上記径方向Bの長さは、当該変形部材13が上記第2領域に位置するときの外周部分13Bの上記径方向Bの長さ、および当該変形部材13が上記第3領域に位置するときの外周部分13Bの上記径方向Bの長さよりも長い。
【0132】
複数の変形部材13の各々が上記第2領域および上記第3領域に位置するとき、各変形部材3の外周部分13Bは、内周部分13Aに対して屈曲している。複数の変形部材13の各々が上記第1領域および上記第4領域に位置するとき、各変形部材3の外周部分13Bは、例えば内周部分13Aに対して屈曲していない。なお、複数の変形部材13の各々が上記第1領域および上記第4領域に位置するとき、各変形部材3の外周部分13Bは、例えば内周部分13Aに対して屈曲していてもよい。
【0133】
上記延在方向Cから視て、各変形部材13の内周部分13Aと外周部分13Bとが成す角度を、当該変形部材13の屈曲角度とよぶ。上記第1領域に配置された各変形部材13の上記屈曲角度は、上記第2領域に配置された各変形部材13の上記屈曲角度、および上記第3領域に配置された各変形部材13の上記屈曲角度よりも大きい。上記第1領域に配置された各変形部材13の上記屈曲角度は、例えば150度以上180度以下である。上記第2領域に配置された各変形部材13の上記屈曲角度、および上記第3領域に配置された各変形部材13の上記屈曲角度は、例えば80度以上110度以下である。
【0134】
複数の収容室12Cの各々は、上記周方向に隣り合う2つの変形部材13の間に位置し、かつ筐体14の第1内周面14Aよりも上記径方向Bの内側に位置する空間と定義される。複数の収容室12Cの各々の容積は、各収容室12Cが上記第1領域、上記第2領域、上記第3領域、および上記第4領域のいずれに位置しているかによって、変化する。
【0135】
複数の収容室12Cの各々が上記第1領域に位置するときの上記容積は、複数の収容室12Cの各々が上記第2領域に位置するときの上記容積および上記第3領域に位置するときの上記容積よりも大きい。複数の収容室12Cの各々が上記第4領域に位置するときの上記容積は、複数の収容室12Cの各々が上記第2領域に位置するときの上記容積および上記第3領域に位置するときの上記容積よりも大きい。すなわち、複数の収容室12Cの各々の容積は、上記回転に伴い、増減する。
【0136】
複数の収容室12Cの各々が上記第1領域に位置するときの上記容積は、例えば複数の収容室12Cの各々が上記第4領域に位置するときの上記容積と等しい。複数の収容室12Cの各々が上記第2領域に位置するときの上記容積は、例えば複数の収容室12Cの各々が上記第3領域に位置するときの上記容積と等しい。
【0137】
<磁気ヒートポンプの動作>
磁気ヒートポンプ102の動作は、磁気ヒートポンプ100の動作と、基本的に同じである。磁気ヒートポンプ102の動作時に、複数の磁気熱量部材11、羽根車12、複数の変形部材13が第1の向きAに回転することにより、筐体14に対する複数の磁気熱量部材11、羽根車12、複数の変形部材13の各々の相対的な位置が変化する。さらに、磁気ヒートポンプ102の動作時に、磁界発生部16が上記磁界を生じさせる。
【0138】
収容室12Cが筐体14の上記第2領域に位置するとき、当該収容室12Cに面する変形部材13の外周部分13Bは、筐体14の第1内周面14Aの第10面部14A2に接触して外力が加えられることにより、内周部分13Aに対して折り曲げられる。外周部分13Bが第10面部14A2に接触しているときの収容室12Cの上記容積は、比較的小さい。
【0139】
上記回転に伴い、上記第2領域に配置されていた収容室12Cは、上記第1領域に移動する。収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された外周部分13Bが上記第1領域において第1流入口P1に面した領域に達すると、上記外周部分13Bは第10面部14A2と接触しなくなり、上記第2領域において上記外周部分13Bに加えられていた外力は除かれる。これにより、外周部分13Bは内周部分13Aに対して弾性変形して、上記折り曲げられた状態が解消する。
【0140】
これにより収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された外周部分13Bが上記第1領域において第1流入口P1に面した領域に配置されているときの収容室12Cの上記容積は、当該外周部分13Bが第10面部14A2に接触していたときの収容室12Cの上記容積より、大きくなる。つまり、収容室12Cの上記容積は、上記第1領域において第1流入口P1に面した領域にて増加する。さらに、上記第2領域に配置されていた収容室12Cは気密に封止されていたため、上記容積の増加に伴い収容室12C内は負圧となる。その結果、熱輸送媒体HM(
図9参照)が第1流入口P1から収容室12C内に流入する。
【0141】
その後、収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された外周部分13Bは第9面部14A1に接触する。上記外周部分13Bが第9面部14A1に接触しているときの収容室12Cの上記容積は、収容室12Cを挟むように配置されている2つの外周部分13Bが第10面部14A2に接触していたときの収容室12Cの上記容積より、大きくなる。
【0142】
収容室12C内に流入した熱輸送媒体HMは、外周部分13Bは第9面部14A1に接触している間、収容室12C内に保持される。この状態において、収容室12Cは、上記第1領域において第1の向きAに沿って磁界が強まる領域を第1の向きAに沿って移動する。これにより、当該収容室12Cに収容された磁気熱量部材11は発熱し、収容室12C内に保持された熱輸送媒体HMは磁気熱量部材11によって加熱される。
【0143】
上記回転に伴い、上記第1領域に配置されていた収容室12Cは、上記第3領域に移動する。収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された変形部材13の外周部分13Bが上記第3領域に達すると、外周部分13Bは、第11面部14A3と接触し、再び内周部分13Aに対して折り曲げられる。
【0144】
これにより、収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された外周部分13Bが第11面部14A3に接触しているときの収容室12Cの上記容積は、当該外周部分13Bが第9面部14A1に接触していたときの収容室12Cの上記容積より、小さくなる。つまり、収容室12Cの上記容積は、上記第1領域において第1流出口P2に面した領域にて減少する。さらに、上記第1領域に配置されていた収容室12Cは気密に封止されていたため、上記容積の減少に伴い収容室12C内は正圧となる。その結果、熱輸送媒体HM(
図8参照)が収容室12C内から第1流出口P2へ流出する。
【0145】
収容室12Cが上記第3領域を第1の向きAに移動することで、該収容室12Cに収容された磁気熱量部材11は第1の向きAに沿って磁界が弱まる領域を第1の向きAに沿って移動する。これにより、磁気熱量部材11は吸熱する。
【0146】
上記回転に伴い、上記第3領域に配置されていた収容室12Cは、上記第4領域に移動する。収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された外周部分13Bが上記第4領域において第2流入口P3に面した領域に達すると、上記外周部分13Bは第11面部14A3と接触しなくなり、上記第3領域において上記外周部分13Bに加えられていた外力は除かれる。これにより、外周部分13Bは内周部分13Aに対して弾性変形して、上記折り曲げられた状態が解消する。
【0147】
これにより収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された外周部分13Bが上記第4領域において第2流入口P3に面した領域に配置されているときの収容室12Cの上記容積は、当該外周部分13Bが第11面部14A3に接触していたときの収容室12Cの上記容積より、大きくなる。つまり、収容室12Cの上記容積は、上記第4領域において第2流入口P3に面した領域にて増加する。さらに、上記第3領域に配置されていた収容室12Cは気密に封止されていたため、上記容積の増加に伴い収容室12C内は負圧となる。その結果、熱輸送媒体HM(
図8参照)が第2流入口P3から収容室12C内に流入する。
【0148】
その後、収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された外周部分13Bは第12面部14A4に接触する。上記外周部分13Bが第12面部14A4に接触しているときの収容室12Cの上記容積は、収容室12Cを挟むように配置されている2つの外周部分13Bが第11面部14A3に接触していたときの収容室12Cの上記容積より、大きくなる。
【0149】
収容室12Cに流入した熱輸送媒体HMは、外周部分13Bは第12面部14A4に接触している間、収容室12C内に保持される。この状態において、収容室12Cは、第1の向きAに沿って磁界が弱まる領域を第1の向きAに沿って移動するため、当該収容室12Cに収容された磁気熱量部材11は吸熱し、収容室12C内に保持された熱輸送媒体HMは磁気熱量部材11によって冷却される。
【0150】
上記回転に伴い、上記第4領域に配置されていた収容室12Cは、上記第2領域に移動する。収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された変形部材13の外周部分13Bが上記第2領域に達すると、外周部分13Bは第10面部14A2と接触して再び内周部分13Aに対して折り曲げられる。
【0151】
これにより、収容室12Cに対して上記第1の向きAの前側に配置された外周部分13Bが第10面部14A2に接触しているときの収容室12Cの上記容積は、当該外周部分13Bが第12面部14A4に接触していたときの収容室12Cの上記容積より、小さくなる。つまり、収容室12Cの上記容積は、上記第4領域において第2流出口P4に面した領域にて減少する。さらに、上記第4領域に配置されていた収容室12Cは気密に封止されていたため、上記容積の減少に伴い収容室12C内は正圧となる。その結果、熱輸送媒体HM(
図8参照)が収容室12C内から第2流出口P4へ流出する。
【0152】
収容室12Cの上記容積が増減する上記サイクルは、上記回転が続く間、繰り返される。これにより、磁気ヒートポンプ102は、第1流入口P1から上記内部空間に熱輸送媒体を取り込み、取り込んだ熱輸送媒体を加熱し、さらに加熱した熱輸送媒体を第1流出口P2から外部へ送り出す。同時に、磁気ヒートポンプ102は、第2流入口P3から上記内部空間に熱輸送媒体を取り込み、取り込んだ熱輸送媒体を冷却し、さらに冷却した熱輸送媒体を第2流出口P4から外部へ送り出す。
【0153】
磁気ヒートポンプ102を備える磁気冷凍サイクル装置は、磁気ヒートポンプ100を備える磁気冷凍サイクル装置200と同様の構成を備えている。
【0154】
<作用効果>
磁気ヒートポンプ102は、磁気ヒートポンプ100と基本的に同様の構成を備えているため、磁気ヒートポンプ100と同様の効果を奏することができる。さらに、磁気ヒートポンプ102では、複数の変形部材13が磁気ヒートポンプ100における複数の羽根2Bおよび複数の変形部材3の各々と同様の効果を奏し、かつ筐体14が磁気ヒートポンプ100におけるガイド部材7と同様の効果を奏する。そのため、磁気ヒートポンプ102の部品点数は、磁気ヒートポンプ100の部品点数と比べて、削減され得る。
【0155】
なお、磁気ヒートポンプ102では、磁気ヒートポンプ101と同様に、筐体4に第2流入口P3および第2流出口P4が形成されていなくてもよい。この場合、磁気ヒートポンプ102を備える磁気冷凍サイクル装置は、磁気ヒートポンプ101を備える磁気冷凍サイクル装置201と同様の構成を備えていればよい。
【0156】
実施の形態4.
図11に示されるように、実施の形態4に係る磁気冷凍サイクル装置202は、実施の形態1に係る磁気冷凍サイクル装置200と基本的に同様の構成を備えるが、第1流路21が蓄熱タンク25をさらに含んでいる点で、磁気冷凍サイクル装置200とは異なる。
【0157】
蓄熱タンク25は、熱輸送媒体が有する熱エネルギーを蓄えるように構成されている。蓄熱タンク25は、例えば熱輸送媒体を貯留する貯留部と、該貯留部の周囲に配置されており貯留部を保温するための保温部と、熱輸送媒体が上記貯留部に流入または上記貯留部から流出するための4つの流出入口とを有している。
【0158】
第1流路21は、第1熱交換器23、蓄熱タンク25、第1管路21A、第2管路21B、ポンプ26、第1バルブ27、および第2バルブ28を含む。
【0159】
第1管路21Aは、磁気ヒートポンプ100の第1流入口P1および第1流出口P2と蓄熱タンク25の2つの流出入口との間を接続している。第2管路21Bは、蓄熱タンク25の他の2つの流出入口と第1熱交換器23との間を接続している。
【0160】
ポンプ26は、第2管路21Bにおいて蓄熱タンク25から第1熱交換器23に熱輸送媒体を送る。
【0161】
第1バルブ27は、第2管路21Bにおいて蓄熱タンク25と第1熱交換器23との間に配置されており、蓄熱タンク25と第1熱交換器23との間の熱輸送媒体の流れを開放または閉止する。
【0162】
第2バルブ28は、第2管路21Bにおいて蓄熱タンク25に対して第1バルブ27とは反対側に配置されている。第2バルブ28は、第2管路21Bにおいて蓄熱タンク25とポンプ26との間に配置されており、蓄熱タンク25と第1熱交換器23との間の熱輸送媒体の流れを開放または閉止する。第1バルブ27および第2バルブ28は、例えば互いに同時に開放または閉止される。
【0163】
磁気冷凍サイクル装置202において、磁気ヒートポンプ100、第1流路21、および第2流路22の内部には、熱輸送媒体が充填されている。
【0164】
磁気冷凍サイクル装置202の磁気ヒートポンプ100は、磁気冷凍サイクル装置200の磁気ヒートポンプ100と同様に駆動される。磁気冷凍サイクル装置202の第2流路22では、磁気冷凍サイクル装置200の第2流路22と同様に、磁気ヒートポンプ100にて冷却された熱輸送媒体が第2熱交換器24にて他の熱輸送媒体と熱交換する。
【0165】
磁気冷凍サイクル装置202では、磁気ヒートポンプ100が駆動された状態で第1バルブ27および第2バルブ28が閉止されると、磁気ヒートポンプ100において加熱された熱輸送媒体は蓄熱タンク25に貯留される。蓄熱タンク25に貯留された熱輸送媒体は高温に保持される。そのため、蓄熱タンク25の熱輸送媒体の貯留量が多いほど、蓄熱タンク25に蓄えられた熱量は多くなる。
【0166】
その後、磁気ヒートポンプ100が駆動された状態で第1バルブ27および第2バルブ28が開放されると、蓄熱タンク25に貯留されていた熱輸送媒体は第1熱交換器23に流れて、他の熱輸送媒体と熱交換する。
【0167】
このとき第1熱交換器23に流れる熱輸送媒体は、蓄熱タンク25を備えない磁気冷凍サイクル装置200において第1熱交換器23に流れる熱輸送媒体と比べて、高温である。そのため、磁気冷凍サイクル装置202にて第1熱交換器23にて熱交換する2つの熱輸送媒体間の温度差は、磁気冷凍サイクル装置200と比べて大きくなる。例えば、他の熱輸送媒体の温度が比較的高温であるために磁気冷凍サイクル装置200の第1熱交換器23では2つの熱輸送媒体間の熱交換が十分に行われない場合にも、磁気冷凍サイクル装置202では第1熱交換器23にて熱交換する2つの熱輸送媒体間の熱交換が行われ得る。そのため、磁気冷凍サイクル装置202の性能は、磁気冷凍サイクル装置200の性能と比べて、高い。
【0168】
磁気冷凍サイクル装置202では、第2流路22が、蓄熱タンク25、ポンプ26、第1バルブ27、および第2バルブ28を含んでいてもよい。この場合には、磁気ヒートポンプ100が駆動された状態で第1バルブ27および第2バルブ28が閉止されると、磁気ヒートポンプ100において冷却された熱輸送媒体が蓄熱タンク25に貯留される。蓄熱タンク25に貯留された熱輸送媒体は低温に保持される。
【0169】
その後、磁気ヒートポンプ100が駆動された状態で第1バルブ27および第2バルブ28が開放されると、蓄熱タンク25に貯留されていた熱輸送媒体は第2熱交換器24に流れて、他の熱輸送媒体と熱交換する。
【0170】
このとき第1熱交換器23に流れる熱輸送媒体は、蓄熱タンク25を備えない磁気冷凍サイクル装置200において第2熱交換器24に流れる熱輸送媒体と比べて、低温である。そのため、磁気冷凍サイクル装置202にて第2熱交換器24にて熱交換する2つの熱輸送媒体間の温度差は、磁気冷凍サイクル装置200と比べて大きくなる。
【0171】
磁気冷凍サイクル装置202では、第1流路21および第2流路22の少なくともいずれかが蓄熱タンク25、ポンプ26、第1バルブ27、および第2バルブ28を含んでいればよい。第1流路21および第2流路22の両方が蓄熱タンク25、ポンプ26、第1バルブ27、および第2バルブ28を含んでいてもよい。
【0172】
また、磁気冷凍サイクル装置202は、磁気ヒートポンプ100に代えて、磁気ヒートポンプ102を備えていてもよい。
【0173】
実施の形態5.
図12に示されるように、実施の形態5に係る磁気冷凍サイクル装置203は、実施の形態1に係る磁気冷凍サイクル装置200と基本的に同様の構成を備えるが、互いに直列に接続された複数の磁気ヒートポンプ100と、複数の磁気ヒートポンプ100の上記回転を制御する制御部8とを備える点で、磁気冷凍サイクル装置200とは異なる。
【0174】
図12に示される2つの磁気ヒートポンプ100のうち、右側に配置された磁気ヒートポンプ100を第1磁気ヒートポンプ100とよび、左側に配置された磁気ヒートポンプ100を第2磁気ヒートポンプ100とよぶ。
【0175】
第1磁気ヒートポンプ100の第1流出口P2は、第2磁気ヒートポンプ100の第1流入口P1と直列に接続されている。第2磁気ヒートポンプ100の第2流出口P4は、第1磁気ヒートポンプ100の第2流入口P3と直列に接続されている。
【0176】
制御部8は、第1磁気ヒートポンプ100の第1流出口P2から流出する熱輸送媒体の単位時間当たりの流量と、第2磁気ヒートポンプ100の第1流入口P1に流入する熱輸送媒体の単位時間当たりの流量とが等しくなるように、第1磁気ヒートポンプ100および第2磁気ヒートポンプ100の各々の上記第1の向きAへの上記回転の速度を制御する。これにより、第1磁気ヒートポンプ100および第2磁気ヒートポンプ100の各々の上記内部空間内の熱輸送媒体の総量は、経時的に変化せず、一定に保たれる。第1磁気ヒートポンプ100が第2磁気ヒートポンプ100と同一の構成を有している場合には、制御部8は、第1磁気ヒートポンプ100の上記第1の向きAへの上記回転と、第2磁気ヒートポンプ100の上記第1の向きAへの上記回転とを同期する。
【0177】
第1磁気ヒートポンプ100の第1流出口P2から流出する熱輸送媒体の単位時間当たりの流量と、第2磁気ヒートポンプ100の第1流入口P1に流入する熱輸送媒体の単位時間当たりの流量とが異なる場合、第1磁気ヒートポンプ100内の熱輸送媒体と第2磁気ヒートポンプ100内の熱輸送媒体との間に圧力差が生じ、相対的に圧力が高い熱輸送媒体が上記回転を阻害するおそれがある。上記回転が阻害されると、磁気冷凍サイクル装置の性能が低下する。
【0178】
磁気冷凍サイクル装置203では、制御部8によって、第1磁気ヒートポンプ100の第1流出口P2から流出する熱輸送媒体の単位時間当たりの流量と、第2磁気ヒートポンプ100の第1流入口P1に流入する熱輸送媒体の単位時間当たりの流量とが等しい状態が維持される。そのため、磁気冷凍サイクル装置203では、上記回転が阻害されることに伴う性能の低下が抑制されている。
【0179】
実施の形態6.
図13に示されるように、実施の形態6に係る磁気冷凍サイクル装置204は、実施の形態1に係る磁気冷凍サイクル装置200と基本的に同様の構成を備えるが、複数の磁気ヒートポンプ100と、複数の磁気ヒートポンプ100間を直列に接続する第3流路37および第4流路38と、第3流路37および第4流路38に含まれる貯留部39,40を備える点で、磁気冷凍サイクル装置200とは異なる。
【0180】
図13に示される2つの磁気ヒートポンプ100のうち、右側に配置された磁気ヒートポンプ100を第1磁気ヒートポンプ100とよび、左側に配置された磁気ヒートポンプ100を第2磁気ヒートポンプ100とよぶ。
【0181】
第3流路37は、第1磁気ヒートポンプ100の第1流出口P2と、第2磁気ヒートポンプ100の第1流入口P1とを直列に接続している。第4流路38は、第2磁気ヒートポンプ100の第2流出口P4と、第1磁気ヒートポンプ100の第2流入口P3とを直列に接続している。
【0182】
貯留部39は、第3流路37に含まれている。貯留部39は、第3流路37を流れる熱輸送媒体の一部を貯留する。貯留部40は、第4流路38に含まれている。貯留部40は、第4流路38を流れる熱輸送媒体の一部を貯留する。貯留部39および貯留部40の各々に貯留される熱輸送媒体の量は、経時的に変化し得る。
【0183】
第1磁気ヒートポンプ100の第1流出口P2から流出する熱輸送媒体の単位時間当たりの流量、および第2磁気ヒートポンプ100の第1流入口P1に流入する熱輸送媒体の単位時間当たりの流量の少なくともいずれか一方が経時的に変化した場合、第1磁気ヒートポンプ100内の熱輸送媒体と第2磁気ヒートポンプ100内の熱輸送媒体との間に圧力差が生じ、相対的に圧力が高い熱輸送媒体が上記回転を阻害するおそれがある。上記回転が阻害されると、磁気冷凍サイクル装置の性能が低下する。
【0184】
磁気冷凍サイクル装置204では、上記流量差が貯留部39および貯留部40の各々から流出する熱輸送媒体によって削減されるため、第1磁気ヒートポンプ100内の熱輸送媒体と第2磁気ヒートポンプ100内の熱輸送媒体との間に圧力差が生じにくい。そのため、磁気冷凍サイクル装置203では、上記回転が阻害されることに伴う性能の低下が抑制されている。
【0185】
なお、冷凍サイクル装置204は、磁気冷凍サイクル装置203と同様に、制御部8をさらに備えていてもよい。
【0186】
<変形例>
磁気ヒートポンプ100,101において、羽根車2には少なくとも1つの収容室2Cまたは収容室12Cが形成されていればよい。磁気ヒートポンプ100,101は、少なくとも1つの磁気熱量部材1または磁気熱量部材11および少なくとも1つの変形部材3または変形部材13を備えていればよい。
【0187】
磁気ヒートポンプ100において、磁気熱量部材1にはスリット1Aが形成されていなくてもよい。同様に、磁気ヒートポンプ102において、磁気熱量部材11にはスリット11Aが形成されていなくてもよい。磁気熱量部材1および磁気熱量部材11は、磁気熱量材料から成る複数の粒子を含んでいてもよい。磁気熱量部材1および磁気熱量部材11には、複数の微小な隙間が隣り合う粒子間に形成されており、かつ複数の微小な隙間は互いに連なっている。このように互いに連なった複数の微小な隙間は、熱輸送媒体が流れる複数の流路を構成する。そのため、磁気熱量部材1および磁気熱量部材11において熱輸送媒体と接する伝熱面の面積は、磁気熱量部材1および磁気熱量部材11が磁気熱量材料から成る複数の粒子を含んでいない場合と比べて、大きくなる。
【0188】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0189】
1,11 磁気熱量部材、1A,11A スリット、2C,12C 収容室、2,12 羽根車、2A 根元部、2B 羽根、3,13 変形部材、3A 固定部、3B1,3D1,12B 外周面、3B 移動部、3C 第1弾性部、3D 接続部、4,14 筐体、4A,14A 第1内周面、5,15 電動機、5A シャフト、6,16 磁界発生部、7 ガイド部材、7A1 第1面部、7A2 第2面部、7A3 第3面部、7A4 第4面部、7A 第2内周面、8 制御部、12A 中央部、13A 内周部分、13B 外周部分、14A1 第9面部、14A2 第10面部、14A3 第11面部、14A4 第12面部、21,31 第1流路、22,32 第2流路、21A 第1管路、21B 第2管路、23 第1熱交換器、24 第2熱交換器、25 蓄熱タンク、26 ポンプ、27 第1バルブ、28 第2バルブ、29,30 分岐管路、33,34,35,36 バルブ、37 第3流路、38 第4流路、39,40 貯留部、100,101,102 磁気ヒートポンプ、200,201,202,203,204 磁気冷凍サイクル装置、P1 第1流入口、P2 第1流出口、P3 第2流入口、P4 第2流出口。