(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】熱交換器および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F28F 9/02 20060101AFI20231208BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20231208BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20231208BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F28F9/02 301D
F25B39/04 C
F28D1/053 A
F25B39/02 C
(21)【出願番号】P 2022529249
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022105
(87)【国際公開番号】W WO2021245877
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 篤史
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】梁池 悟
(72)【発明者】
【氏名】森田 敦
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-121092(JP,A)
【文献】実開平05-096773(JP,U)
【文献】特開2002-372340(JP,A)
【文献】特開2016-205744(JP,A)
【文献】特開2019-060512(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087235(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 99/00
F28D 1/00 - 13/00
F25B 39/00 - 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が管内を流れる複数の伝熱管が高さ方向に並んで配置され、前記冷媒と空気とを熱交換する熱交換部と、
複数の前記伝熱管の一端が接続され、前記空気が流れる方向に、風上列および風下列の2列に並んだ前記熱交換部の間で前記冷媒を流通させる折り返し部と、
各列の前記熱交換部における前記伝熱管の他端が接続され、前記伝熱管に前記冷媒を分配または合流させる複数の分配合流部と
を備える熱交換器であって、
前記熱交換部の複数の前記伝熱管は、前記高さ方向の上側から順に、主熱交換部、前記主熱交換部より前記伝熱管の数が少ない第1補助熱交換部および前記第1補助熱交換部以下の前記伝熱管の数となる第2補助熱交換部のグループに分かれ、
凝縮器として機能するときに、流入した前記冷媒が、前記風下列の前記主熱交換部、前記風上列の前記主熱交換部、前記風上列の前記第1補助熱交換部、前記風下列の前記第1補助熱交換部、前記風下列の前記第2補助熱交換部および前記風上列の前記第2補助熱交換部の順に流れて流出し、
前記主熱交換部は、前記分配合流部からの前記冷媒の分配経路により、前記伝熱管がさらに複数の組に分割され
、
前記主熱交換部は、前記空気が多く通過する前記組の前記伝熱管の数が、他の組の前記伝熱管の数よりも少ない熱交換器。
【請求項2】
前記風上列の前記熱交換部と前記風下列の前記熱交換部とにおける前記伝熱管の数が同じである請求項1
に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記折り返し部は、前記風上列の前記熱交換部における前記主熱交換部の前記伝熱管と前記風下列の前記熱交換部における前記主熱交換部の前記伝熱管とを、それぞれ1対1で接続する請求項1
または請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記分配合流部は、板状部材を複数積層した積層分配器を有する請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記伝熱管は、断面が扁平形状を有し、前記冷媒が流れる流路を内部に有する扁平伝熱管である請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
少なくとも凝縮器に、請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の熱交換器を有する冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記熱交換器の前記熱交換部における前記伝熱管が、前記主熱交換部の前記伝熱管の数>前記第1補助熱交換部の前記伝熱管の数>前記第2補助熱交換部の前記伝熱管の数の関係を有し、
前記熱交換器が蒸発器として機能するときに、前記風上列の前記第2補助熱交換部から流入する冷媒の温度が、前記熱交換部に流入する前記空気の温度より高い温度とする請求項
6に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記熱交換部の空気の通過方向とファンの回転軸の方向が同じ向きに配置され、前記熱交換部に前記空気を通過させる送風機を備え、
前記ファンの回転中心との距離が最も近い前記組における前記伝熱管の数が、他の組の前記伝熱管の数よりも少ない請求項
6または請求項
7に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、熱交換器および冷凍サイクル装置に関するものである。特に、冷媒の分配を行いながら熱交換を行う熱交換器などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷媒量削減および熱交換器の高性能化をはかるため、空気調和装置用の熱交換器において、伝熱管の細管化が進められている。伝熱管の細管化が進む中で、冷媒の圧力損失増加を抑制するために、熱交換器は、パス数(分岐数)が増加する。このような多分岐分配に対応するために、ヘッダ型の冷媒分配器を用いた熱交換器が開発されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッダ型の冷媒分配器は、慣性力によって上部側にガス冷媒が偏る。このため、熱交換器が蒸発器として動作するときの蒸発器性能が低下しやすい傾向にある。そこで、蒸発器の性能を低下させないために、熱交換器が蒸発器として動作する際に、熱交換器において段数が多い熱交換器のセクションにおいて、冷媒の流れ方向と通風方向とが対向するような対向流の流れにする。一方で、熱交換器が凝縮器として動作する場合には、熱交換器内の冷媒の流れが、蒸発器として動作するときとは逆になる。このため、熱交換器が凝縮器として動作する場合には、冷媒の流れ方向と通風方向とが並行して流れる並行流の流れになる。並行流の場合、対向流の場合に比べると、冷媒と空気との温度差を確保することができないため、凝縮性能が鈍化する。
【0005】
そこで、上記のような課題を解決し、熱交換性能を改善することができる熱交換器および冷凍サイクル装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示に係る熱交換器は、冷媒が管内を流れる複数の伝熱管が高さ方向に並んで配置され、冷媒と空気とを熱交換する熱交換部と、複数の伝熱管の一端が接続され、空気が流れる方向に、風上列および風下列の2列に並んだ熱交換部の間で冷媒を流通させる折り返し部と、各列の熱交換部における伝熱管の他端が接続され、伝熱管に冷媒を分配または合流させる複数の分配合流部とを備える熱交換器であって、熱交換部の複数の伝熱管は、高さ方向の上側から順に、主熱交換部、主熱交換部より伝熱管の数が少ない第1補助熱交換部および第1補助熱交換部以下の伝熱管の数となる第2補助熱交換部のグループに分かれ、凝縮器として機能するときに、流入した冷媒が、風下列の主熱交換部、風上列の主熱交換部、風上列の第1補助熱交換部、風下列の第1補助熱交換部、風下列の第2補助熱交換部および風上列の第2補助熱交換部の順に流れて流出し、主熱交換部は、分配合流部からの冷媒の分配経路により、伝熱管がさらに複数の組に分割され、主熱交換部は、空気が多く通過する組の伝熱管の数が、他の組の伝熱管の数よりも少ないものである。
【0007】
また、この開示に係る冷凍サイクル装置は、少なくとも凝縮器に、上記の熱交換器を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
この開示によれば、熱交換器が凝縮器となるときに、主熱交換部における冷媒の流れと熱交換器を通過する空気の流れとが、主熱交換部における冷媒の上流側と空気の下流側とが熱交換し、主熱交換部における冷媒の下流側と空気の上流側とが熱交換することで、対向する流れとする。このため、熱交換器の冷媒流路全体にわたって、冷媒と空気との間で熱交換を有効に行うことができる温度差を保って熱交換を行うことができ、熱交換器の伝熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る空気調和装置の構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る熱交換器1の構成の概略を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る熱交換器1における熱交換部10の各部を説明する図である。
【
図4】実施の形態1に係る熱交換器1が凝縮器として機能する場合の熱交換器1における空気および冷媒の温度変化の概略を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る熱交換器1が蒸発器として機能する場合の熱交換器1における空気および冷媒の温度変化の概略を示す図である。
【
図6】実施の形態2に係る熱交換器1が蒸発器として機能する場合の熱交換器1における空気および冷媒の温度変化の概略を示す図である。
【
図7】実施の形態3に係る熱交換器1における扁平伝熱管14の配分について説明する図である。
【
図8】実施の形態4に係る熱交換器1の構成の概略を示す図である。
【
図9】実施の形態4に係る積層分配器17の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態に係る熱交換器および冷凍サイクル装置について、図面などを参照しながら説明する。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。また、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。さらに、断面図では、視認性に鑑みて、一部の図および機器において、ハッチングを省略している。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。特に、構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、図における上方を「上」とし、下方を「下」として説明する。また、圧力および温度の高低については、特に絶対的な値との関係で高低が定まっているものではなく、装置などにおける状態、動作などにおいて相対的に定まるものとする。また、添字で区別などしている複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、添字などを省略して記載する場合がある。
【0011】
実施の形態1.
<空気調和装置の構成>
図1は、実施の形態1に係る空気調和装置の構成を示す図である。ここでは、実施の形態1の熱交換器を有する冷凍サイクル装置の一例として、空気調和装置について説明する。
【0012】
図1に示すように、実施の形態1の空気調和装置は、室外機200、室内機100および2本の冷媒配管300を有する。そして、室外機200が有する圧縮機210、四方弁220および室外熱交換器230と室内機100が有する室内熱交換器110および膨張弁120が、冷媒配管300により配管接続され、冷媒回路を構成する。ここで、実施の形態1の空気調和装置は、1台の室外機200と1台の室内機100が配管接続されているものとする。ただし、接続台数は、これに限定するものではない。
【0013】
室内機100は、室内熱交換器110および膨張弁120の他に、室内送風機130を有する。絞り装置などの膨張弁120は、冷媒を減圧して膨張させる。膨張弁120は、たとえば、電子式膨張弁などで構成した場合は、制御装置(図示せず)などの指示に基づいて開度調整を行う。また、室内熱交換器110は、空調対象空間である室内の空気と冷媒との熱交換を行う。たとえば、暖房運転時においては、室内熱交換器110は、凝縮器として機能し、冷媒を凝縮して液化させる。また、冷房運転時においては、室内熱交換器110は、蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。室内送風機130は、室内熱交換器110に室内の空気を通過させ、室内熱交換器110を通過させた空気を室内に供給する。
【0014】
実施の形態1の室外機200は、冷媒回路を構成する機器として、圧縮機210、四方弁220、室外熱交換器230およびアキュムレータ240を有する。また、室外機200は、室外送風機250を有する。圧縮機210は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。圧縮機210は、たとえば、スクロール型圧縮機、レシプロ型圧縮機またはベーン型圧縮機などである。また、特に限定するものではないが、圧縮機210は、たとえば、インバータ回路などにより、運転周波数を任意に変化させることにより、圧縮機210の容量を変化させることができる。
【0015】
流路切替装置となる四方弁220は、たとえば、冷房運転時と暖房運転時とによって冷媒の流れを切り換える弁である。四方弁220は、暖房運転が行われる際、圧縮機210の吐出側と室内熱交換器110とを接続するとともに、圧縮機210の吸引側と室外熱交換器230と接続する。また、四方弁220は、冷房運転が行われる際、圧縮機210の吐出側と室外熱交換器230とを接続するとともに、圧縮機210の吸引側を室内熱交換器110と接続する。ここで、は、四方弁220を用いた場合について例示しているが、流路切替装置はこれに限定されるものではない。たとえば、複数の二方弁などを組み合わせて流路切替装置としてもよい。また、アキュムレータ240は、圧縮機210の吸入側に設置される。アキュムレータ240は、ガス状の冷媒(以下、ガス冷媒という)を通過させ、液状の冷媒(以下、液冷媒という)を溜める。
【0016】
室外熱交換器230は、冷媒と室外の空気との熱交換を行う。室外熱交換器230にとっては、冷媒は、熱交換媒体となる流体となる。ここで、実施の形態1の室外熱交換器230は、暖房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。一方、冷房運転時においては、凝縮器および過冷却器として機能し、冷媒を凝縮して液化させ、過冷却を行う。そして、実施の形態1の室外熱交換器230は、後述するように、熱交換部分となる熱交換部10を含む熱交換器1を有する。熱交換器1の詳細については、後述する。また、室外送風機250は、駆動により、室外機200外部からの空気を室外熱交換器230に通過させ、室外機200内から流出させる空気の流れを形成する。
【0017】
<空気調和装置の動作>
次に、空気調和装置の各機器の動作について、冷媒の流れに基づいて説明する。まず、暖房運転における冷媒回路の各機器の動作を、冷媒の流れに基づいて説明する。
図1の実線矢印は、暖房運転における冷媒の流れを示している。圧縮機210により圧縮されて吐出した高温および高圧のガス冷媒は、四方弁220を通過し、室内熱交換器110に流入する。ガス冷媒は、室内熱交換器110を通過中に、たとえば、空調対象空間の空気と熱交換することで凝縮し、液化する。凝縮し、液化した冷媒は、膨張弁120を通過する。冷媒は、膨張弁120を通過する際、減圧される。膨張弁120で減圧されて気液二相状態となった冷媒は、室外熱交換器230を通過する。室外熱交換器230において、室外送風機250から送られた室外の空気と熱交換することで蒸発し、ガス化した冷媒は、四方弁220およびアキュムレータ240を通過して、再度、圧縮機210に吸入される。以上のようにして、空気調和装置の冷媒が循環し、暖房に係る空気調和を行う。
【0018】
次に、冷房運転について説明する。
図1の点線矢印は、冷房運転における冷媒の流れを示している。圧縮機210により圧縮されて吐出した高温および高圧のガス冷媒は、四方弁220を通過し、室外熱交換器230に流入する。そして、冷媒は、室外熱交換器230を通過して、室外送風機250が供給する室外の空気と熱交換することで凝縮し、液化する。液化した冷媒は、膨張弁120を通過する。ここで、冷媒は、膨張弁120を通過する際、減圧され、気液二相状態となる。膨張弁120で減圧されて気液二相状態となった冷媒は、室内熱交換器110を通過する。そして、室内熱交換器110において、たとえば、空調対象空間の空気と熱交換することで蒸発し、ガス化した冷媒は、四方弁220を通過して、再度、圧縮機210に吸入される。以上のようにして空気調和装置の冷媒が循環し、冷房に係る空気調和を行う。
【0019】
<熱交換器1の構成>
図2は、実施の形態1に係る熱交換器1の構成の概略を示す図である。また、
図3は、実施の形態1に係る熱交換器1における熱交換部10の各部を説明する図である。ここで、実施の形態1に係る熱交換器1は、室外熱交換器230が有するものとする。ただし、これに限定するものではなく、室内熱交換器110が有していてもよい。熱交換器1は、パラレル配管形となるコルゲートフィンチューブ型の熱交換器である。熱交換器1は、分配合流部となる2本の分配ヘッダ11(分配ヘッダ11Aおよび分配ヘッダ11B)、折り返し部となる折り返しヘッダ13並びに複数の扁平伝熱管14および複数のコルゲートフィン15を有する熱交換部10を備える。
【0020】
実施の形態1の熱交換器1は、2本の分配ヘッダ11と折り返しヘッダ13とが左右に分かれて配置される。
図3では、折り返しヘッダ13が右側に位置し、2本の分配ヘッダ11が、折り返しヘッダ13よりも左側の位置に配置されている。ただし、分配ヘッダ11と折り返しヘッダ13との位置関係が逆であってもよい。以下の説明では、
図2および
図3における上下の方向を高さ方向とする。また、分配ヘッダ11と折り返しヘッダ13とが配置される左右の方向を水平方向とする。そして、奥行きの方向が、室外送風機250によって、
図2における点線矢印で示す空気が流れる方向となる。
【0021】
そして、
図3に示すように、2本の分配ヘッダ11と折り返しヘッダ13との間には、分配ヘッダ11と折り返しヘッダ13とに対して垂直となり、互いに平行となるように扁平面を対向させた複数の扁平伝熱管14が高さ方向に並んで配置される。実施の形態1の熱交換器1では、複数の扁平伝熱管14の群が、前後方向となる奥行き方向に、2列に並んで配置される。1つの列における扁平伝熱管14の群は、1本の分配ヘッダ11に接続される。それぞれの扁平伝熱管14は、冷媒の流路となる。実施の形態1の熱交換器は、各列の群における扁平伝熱管14の数は同じであるものとする。扁平伝熱管14の数が同じであることで、扁平伝熱管14の間隔を同じにし、空気の通過を妨げない。また、熱交換器1の製造を簡単にすることができる。ここで、2列の扁平伝熱管14のうち、熱交換器1における空気の通過方向に対して、上流となる風上側の列を風上列とし、下流となる風下側の列を風下列とする。ここでは、扁平伝熱管14が2列に並んだ例について説明する。
【0022】
分配合流部の機器となる分配ヘッダ11は、それぞれ、冷凍サイクル装置を構成する他の装置と配管接続され、熱交換媒体となる流体である冷媒が流入出し、冷媒を分岐して分配または合流させる冷媒分配器となる管である。ここでは、分配ヘッダ11は円筒形とするが、形状については特に限定するものではない。分配ヘッダ11は、それぞれ、外部からの冷媒が流入出する冷媒出入口管12(冷媒出入口管12Aおよび冷媒出入口管12B)を有する。熱交換器1が凝縮器となる場合には、冷媒は、冷媒出入口管12Aから流入し、冷媒出入口管12Bから流出する。逆に、熱交換器1が蒸発器となる場合には、冷媒は、冷媒出入口管12Bから流入し、冷媒出入口管12Aから流出する。ここで、分配ヘッダ11の内部は、複数の仕切り板(図示せず)によって仕切られ、複数の空間に分かれている。分配ヘッダ11の内部を複数の空間に分けることにより、熱交換器1を複数の領域に分けることができる。ここで、領域とは扁平伝熱管14内の冷媒の流れる方向が同じ方向である扁平伝熱管14のグループのことをいうものとする。仕切り板が分配ヘッダ11内を仕切ることで、複数本の扁平伝熱管14がグループとなって一つの領域ができる。実施の形態1における領域については後述する。そして、接続配管16は、分配ヘッダ11内で分かれている空間の間を外部から接続する配管である。ここで、接続配管16は、分配ヘッダ11内の空間の間を1対1で接続するだけでなく、一方を分岐などして、分配ヘッダ11内の1つの空間に対して複数の空間を接続することもできる。
【0023】
また、折り返しヘッダ13は、一方の列における扁平伝熱管14の群から流入する冷媒を合流させ、他方の列における扁平伝熱管14の群に分岐して流出させる橋渡し(ブリッジ)としての役割を果たすヘッダである。折り返しヘッダ13の内部においても、少なくとも分配ヘッダ11内の仕切り板の位置に合わせた位置には仕切り板(図示せず)が設置され、複数の空間に分かれている。ここで、たとえば、折り返しヘッダ13の内部において、各扁平伝熱管14に対応させて仕切り板を設置してもよい。特に、後述する風上列の主熱交換部10Aと風下列の主熱交換部10Aとの間は、1対1で対応する空間に分けるようにしてもよい。このとき、折り返しヘッダ13内では、冷媒は、合流および分岐はしない。また、風上列の熱交換部10における扁平伝熱管14と風下列の熱交換部10における扁平伝熱管14とを1対1で対応させる場合には、扁平伝熱管14の間を個別に接続管などで接続することもできる。
【0024】
扁平伝熱管14は、断面が扁平形状を有し、空気の流通方向である奥行き方向に沿った扁平形状の長手側における外側面が平面状であり、当該長手方向に直交する短手側における外側面が曲面状である伝熱管である。実施の形態1の扁平伝熱管14は、管の内部において、冷媒の流路となる複数の穴を有する多穴扁平伝熱管である。実施の形態1において、扁平伝熱管14の穴は、分配ヘッダ11と折り返しヘッダ13との間の流路となるため、水平方向を向いて形成されている。そして、前述したように、扁平伝熱管14は、長手側における外側面が対向して、高さ方向に等間隔に配列される。実施の形態1の熱交換部10を製造する際、各扁平伝熱管14は、分配ヘッダ11と折り返しヘッダ13とが有する挿入穴(図示せず)に挿し込まれ、ろう付けされ、接合される。ろう付けのろう材は、たとえば、アルミニウムを含むろう材が使用される。これにより、分配ヘッダ11と折り返しヘッダ13と各扁平伝熱管14の内部とが連通する。
【0025】
また、配列された扁平伝熱管14の互いに対向する扁平面間には、コルゲートフィン15が配列される。コルゲートフィン15は、冷媒と外気との伝熱面積を広げるために配列される。コルゲートフィン15は、板材に対してコルゲート加工が行われ、山折りおよび谷折りを繰返すつづら折りにより、折り曲げられて波形状に、蛇腹となって形成される。ここで、波形状に形成されてできた凹凸による折り曲げ部分は、波形状の頂部となる。実施の形態1において、コルゲートフィン15の頂部は、高さ方向にわたって並んでいる。コルゲートフィン15は、波形状の頂部と扁平伝熱管14の扁平面とが面接触している。そして、接触部分は、ろう材によってろう付けされ、接合される。コルゲートフィン15の板材は、たとえば、アルミニウム合金を材質とする。そして、板材表面には、ろう材層が被覆される。被覆されたろう材層は、たとえば、アルミシリコン系のアルミニウムを含むろう材を基本とする。
【0026】
実施の形態1における熱交換器1の熱交換部10において、熱交換部10が凝縮器として使用される場合は、高温および高圧の冷媒が扁平伝熱管14の管内の冷媒流路を流れる。また、熱交換部10が蒸発器として使用される場合は、低温および低圧の冷媒が扁平伝熱管14の管内の冷媒流路を流れる。
【0027】
ここで、前述した領域について説明する。実施の形態1では、分配ヘッダ11および折り返しヘッダ13の内部に設置された仕切り板によって、風上列および風下列における扁平伝熱管14は、それぞれ、主熱交換部10A、第1補助熱交換部10Bおよび第2補助熱交換部10Cの領域に分かれる。最も上側の領域が主熱交換部10Aとなり、下側に向かって、第1補助熱交換部10Bおよび第2補助熱交換部10Cの順となる。そして、実施の形態1の熱交換器1の各領域においてグループとなる扁平伝熱管14の数は、主熱交換部10A>第1補助熱交換部10B≧第2補助熱交換部10Cの関係にある。
【0028】
図4は、実施の形態1に係る熱交換器1が凝縮器として機能する場合の熱交換器1における空気および冷媒の温度変化の概略を示す図である。実線が冷媒の温度を示し、点線が空気の温度を示す(以下、同じ)。前述した
図2において、熱交換部10に示す矢印は、熱交換器1が凝縮器の場合における熱交換部10における冷媒の流れを示す。熱交換器1が凝縮器の場合、冷媒は、冷媒出入口管12Aから分配ヘッダ11Aに流入する。分配ヘッダ11Aに流入した冷媒は、風下列の主熱交換部10Aに属する風下列の扁平伝熱管14を通過する。扁平伝熱管14は、管内を通過する冷媒と管外を通過する外部の空気である外気との間で熱交換を行う。このとき、冷媒は、扁平伝熱管14を通過する間に、外気に対して放熱する。以下、熱交換器1が凝縮器の場合に、冷媒は、扁平伝熱管14を通過する間に、外気に対して放熱することは、どの領域においても同様である。
【0029】
冷媒は、折り返しヘッダ13で折り返され、風上列の主熱交換部10Aに属する風上列の扁平伝熱管14を通過する。風上列の扁平伝熱管14を通過して熱交換された冷媒は、分配ヘッダ11Bに流入する。分配ヘッダ11Bに流入した冷媒は、接続配管16を通って、分配ヘッダ11Bの別の空間に流入する。そして、風上列の第1補助熱交換部10Bに属する風上列の扁平伝熱管14を通過し、折り返しヘッダ13で折り返されて、風下列の第1補助熱交換部10Bを通過して、分配ヘッダ11Aに流入する。
【0030】
分配ヘッダ11Aに流入した冷媒は、接続配管16を通って、分配ヘッダ11Aの別の空間に流入する。そして、風下列の第2補助熱交換部10Cに属する風下列の扁平伝熱管14を通過し、折り返しヘッダ13で折り返されて、風上列の第2補助熱交換部10Cを通過して、分配ヘッダ11Bに流入する。以上の順番に流れて凝縮した冷媒は、冷媒出入口管12Bから流出する。したがって、実施の形態1の熱交換器1が凝縮器の場合は、主熱交換部10Aにおいて、空気の流れに対して対向流となる冷媒の流れになる。対向流は、冷媒の流れにおいて下流側となる冷媒と空気の流れにおいて上流側となる空気および冷媒の流れにおいて上流側となる冷媒と空気の流れにおいて下流側となる空気とが熱交換する流れである。
【0031】
図4に示すように、空気の流れにおいて風下列の扁平伝熱管14においては、熱交換が行われていない冷媒と風上列の扁平伝熱管14において熱交換された空気との熱交換となる。一方、空気の流れにおいて風上列の扁平伝熱管14においては、風下列の扁平伝熱管14において熱交換された冷媒と熱交換が行われていない空気との熱交換となる。したがって、風上列の扁平伝熱管14および風下列の扁平伝熱管14の両方で、冷媒と空気との間で熱交換を有効に行うことができる温度差を保つことができる。
【0032】
図5は、実施の形態1に係る熱交換器1が蒸発器として機能する場合の熱交換器1における空気および冷媒の温度変化の概略を示す図である。熱交換器1が蒸発器の場合、冷媒は、冷媒出入口管12Bから分配ヘッダ11Bに流入する。分配ヘッダ11Bに流入した冷媒は、風上列の第2補助熱交換部10Cに属する風上列の扁平伝熱管14を通過する。扁平伝熱管14は、管内を通過する冷媒と管外を通過する外部の空気である外気との間で熱交換を行う。このとき、冷媒は、扁平伝熱管14を通過する間に、外気に対して吸熱する。以下、熱交換器1が蒸発器の場合に、冷媒は、扁平伝熱管14を通過する間に、外気に対して吸熱することは、どの領域においても同様である。
【0033】
冷媒は、折り返しヘッダ13で折り返され、風下列の第2補助熱交換部10Cに属する風下列の扁平伝熱管14を通過する。風下列の扁平伝熱管14を通過して熱交換された冷媒は、分配ヘッダ11Aに流入する。分配ヘッダ11Aに流入した冷媒は、接続配管16を通って、分配ヘッダ11Aの別の空間に流入する。そして、風下列の第1補助熱交換部10Bに属する風下列の扁平伝熱管14を通過し、折り返しヘッダ13で折り返されて、風上列の第1補助熱交換部10Bを通過して、分配ヘッダ11Bに流入する。
【0034】
分配ヘッダ11Bに流入した冷媒は、接続配管16を通って、分配ヘッダ11Bの別の空間に流入する。そして、風上列の主熱交換部10Aに属する風上列の扁平伝熱管14を通過し、折り返しヘッダ13で折り返されて、風下列の主熱交換部10Aを通過して、分配ヘッダ11Aに流入する。以上の順番に流れて蒸発した冷媒は、冷媒出入口管12Aから流出する。したがって、実施の形態1の熱交換器1が蒸発器の場合は、主熱交換部10Aにおいて、空気の流れに対して並行流となる冷媒の流れになる。並行流は、冷媒の流れにおいて上流側となる冷媒と空気の流れにおいて上流側となる空気および冷媒の流れにおいて下流側となる冷媒と空気の流れにおいて下流側となる空気とが熱交換する流れである。
【0035】
熱交換器1が蒸発器の場合は、主熱交換部10Aにおいて空気の流れと冷媒の流れとの関係は並行流になる。しかしながら、冷媒は、扁平伝熱管14の数が少なく、流路面積が少ない第2補助熱交換部10Cを先に通過してから主熱交換部10Aに流入する。このため、圧力損失が生じるなどして、冷媒は、主熱交換部10Aを通過する段階では温度が低下する。したがって、主熱交換部10Aを通過する冷媒は、熱交換器1を通過する空気との間で有効な熱交換を行うことができる温度差を有する。これにより、熱交換器1は、蒸発器としての熱交換性能の低下を防ぎ、蒸発器としての性能を維持することができる。
【0036】
以上のように、実施の形態1の空気調和装置の室外熱交換器230となる熱交換器1によれば、熱交換器1が凝縮器となるときに、主熱交換部10Aにおける冷媒の流れと熱交換器1を通過する空気の流れとが対向流となるような冷媒の流れとする。このため、熱交換器1の冷媒流路全体にわたって、冷媒と空気との間で熱交換を有効に行うことができる温度差を保って熱交換を行うことができ、熱交換器1の伝熱性能を向上させることができる。
【0037】
一方、熱交換器1が蒸発器となるときは、主熱交換部10Aにおける冷媒の流れと熱交換器1を通過する空気の流れとが並行流となるが、第2補助熱交換部10Cにおいて冷媒に圧力損失が生じ、温度が低下した冷媒が主熱交換部10Aに流入する。このため、主熱交換部10Aを通過する冷媒は、熱交換器1を通過する空気との間で有効な熱交換を行うことができる温度差を有し、熱交換器1は、蒸発器としての性能を維持することができる。
【0038】
実施の形態1の熱交換器1において、2列の扁平伝熱管14の数を同じにしたので、扁平伝熱管14の間隔を同じにして空気を通過させることができる。また、折り返しヘッダ13内で、冷媒を合流および分岐させず、2列の扁平伝熱管14を1対1で対応させることで、折り返しヘッダ13内における冷媒の偏りを防ぐことができる。
【0039】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係る熱交換器1が蒸発器として機能する場合の熱交換器1における空気および冷媒の温度変化の概略を示す図である。ここで、実施の形態2の空気調和装置および熱交換器1は、実施の形態1で説明した空気調和装置および熱交換器1の構成と同じである。ただし、実施の形態2の熱交換器1の各領域においてグループとなる扁平伝熱管14の数は、特に、主熱交換部10A>第1補助熱交換部10B>第2補助熱交換部10Cであるものとする。
【0040】
熱交換器1が蒸発器となる場合、冷媒は、冷媒出入口管12Bから分配ヘッダ11Bに流入し、熱交換器1の最下段に位置する領域である風上列の第2補助熱交換部10Cに属する風上列の扁平伝熱管14を通過する。このとき、空気調和装置においては、
図6に示すように、風上列の熱交換部10を通過する空気の温度よりも高い温度の冷媒が風上列の第2補助熱交換部10Cに流入するように、冷媒回路の冷媒を循環させる。実施の形態2の空気調和装置が有する熱交換器1において、最下段に位置する風上列の第2補助熱交換部10Cを通過する冷媒は、空気の温度よりも高い温度となるため、室外機200の室外熱交換器230である熱交換器1の下部に溜まるドレン水が凍結しない。このため、根氷などが熱交換器1における空気の通過を妨げず、熱交換効率を維持することができる。
【0041】
実施の形態3.
図7は、実施の形態3に係る熱交換器1における扁平伝熱管14の配分について説明する図である。実施の形態3の熱交換器1は、主熱交換部10Aに属する扁平伝熱管14が、分配ヘッダ11および折り返しヘッダ13内の仕切り板によって、分配経路が異なる複数の組にさらに分割されているものとする。そして、各組における扁平伝熱管14の数は、均等な数でなくてもよく、異なる数としてもよい。
【0042】
たとえば、熱交換器1における空気の通過方向と回転軸の方向が同じであるサイドフローのファンを有する送風機の場合に、少なくとも、送風機の回転中心に最も近い組の扁平伝熱管14の数が、他の組の扁平伝熱管14の数よりも少なくなる組の配置にする。基本的に、送風機の回転中心における空気の風速が速くなる。このため、扁平伝熱管14の数を少なくし、熱負荷の高い扁平伝熱管14の冷媒流量を多くすることで、熱交換器1における熱交換器性能を高めることができる。
【0043】
実施の形態4.
図8は、実施の形態4に係る熱交換器1の構成の概略を示す図である。
図8において、
図2と同じ符号を付している部材などについては、実施の形態1で説明したことと同様の部材などである。実施の形態4の熱交換器1は、風上列の主熱交換部10Aに属する扁平伝熱管14については、分配ヘッダ11Bの代わりに、組毎に積層分配器17で接続する。そして、積層分配器17は、熱交換器1が蒸発器となるときに、風上列の第1補助熱交換部10B、分配ヘッダ11Bおよび接続配管16を通過して流入した冷媒を分配する。また、積層分配器17は、熱交換器1が蒸発器となるときには、主熱交換部10Aを通過した冷媒を合流させる。
【0044】
図9は、実施の形態4に係る積層分配器17の構成の一例を示す図である。積層分配器17は、流路となる貫通孔または貫通溝などを有する複数の板状部材であるプレート17Aが、複数積層されて製造された分配器である。プレート17Aは、流路溝17Bおよび流路孔17Cを有する。流路溝17Bは、冷媒が通過する溝である。また、流路孔17Cは、隣接するプレート17Aと連通し、冷媒を通過させる貫通孔である。ここで、積層分配器17については、
図9の構成に限定するものではない。
【0045】
領域の広い主熱交換部10Aにおいて、積層分配器17により冷媒を分配するようにしたことで、気液二相の冷媒のうち、気相の冷媒が上側の扁平伝熱管14に多く通過するなどの冷媒の偏りを抑制して分配することができる。このため、熱交換の効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
前述した実施の形態1では、熱交換器1を、室外機200の室外熱交換器230に用いたが、これに限定するものではない。室内機100の室内熱交換器110に用いてもよいし、室外熱交換器230および室内熱交換器110の両方に用いてもよい。
【0047】
前述した実施の形態1は、空気調和装置について説明したが、たとえば、冷蔵装置、冷凍装置、給湯装置のように、他の冷凍サイクル装置にも適用することができる。
【0048】
また、前述した実施の形態1~実施の形態4では、熱交換部10が扁平伝熱管14を用いたコルゲートフィンチューブ型の熱交換器1であるとしたが、たとえば、円管などの伝熱管を用いて熱交換を行う熱交換部10を有する熱交換器1でもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 熱交換器、10 熱交換部、10A 主熱交換部、10B 第1補助熱交換部、10C 第2補助熱交換部、11,11A,11B 分配ヘッダ、12,12A,12B 冷媒出入口管、13 折り返しヘッダ、14 扁平伝熱管、15 コルゲートフィン、16 接続配管、17 積層分配器、17A プレート、17B 流路溝、17C 流路孔、100 室内機、110 室内熱交換器、120 膨張弁、130 室内送風機、200 室外機、210 圧縮機、220 四方弁、230 室外熱交換器、240 アキュムレータ、250 室外送風機、300 冷媒配管。