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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/00 20200101AFI20231208BHJP
【FI】
B62J45/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022531746
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022135
(87)【国際公開番号】W WO2021261275
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2020107879
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川村 昭人
(72)【発明者】
【氏名】金井 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀彦
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/083206(WO,A1)
【文献】特開2007-76550(JP,A)
【文献】特開2007-145132(JP,A)
【文献】国際公開第2013/001712(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 45/00
B62J 40/00
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(40)と、
前記エンジン(40)の出力を利用して発電するとともに前記エンジン(40)のスタータとして利用される発電機(43)と、
前記エンジン(40)および前記発電機(43)を制御する複数の制御ユニット(60)と、
前記複数の制御ユニット(60)に接続されたワイヤハーネス(70)と、
を備え、
前記複数の制御ユニット(60)は、第1制御ユニット(61)および第2制御ユニット(62)を含み、
前記第1制御ユニット(61)は、前記エンジン(40)の燃料噴射および点火を制御し、
前記第2制御ユニット(62)は、前記発電機(43)の発電動作およびエンジンの始動動作を制御し、
前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)は、車幅方向にずれて配置されている、
鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)は、前記車幅方向から見た側面視で互いに重なるように配置されている、
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)は、前記車幅方向から見た側面視で互いに重ならないように配置されている、
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)のうち少なくともいずれか一方は、マフラー(8)よりも上方に配置されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)のうち一方の制御ユニットは、前記エンジン(40)および前記発電機(43)のうち前記一方の制御ユニットの制御対象よりも後方に配置されているとともに、前記ワイヤハーネス(70)に接続されるカプラ(65,67)を有し、
前記カプラ(65,67)は、上下方向よりも前方に傾いた方向に突出している、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)のうち少なくともいずれか一方を車幅方向の外方から覆う車体カバー(6)をさらに備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記エンジン(40)が吸入する空気を濾過するエアクリーナ(46)をさらに備え、
前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)のうち少なくとも一方は、前記エアクリーナ(46)に隣接している、
請求項1または請求項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
前記エンジン(40)の筐体から後方に延びて後輪(5)を支持するアーム部(45)と、
前記エンジン(40)が吸入する空気を濾過するエアクリーナ(46)と、
前記アーム部(45)と前記エアクリーナ(46)とを連結するマウント部(48)と、
をさらに備え、
前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)のうち少なくとも一方は、車幅方向から見て前記マウント部(48)に重なるように配置されている、
請求項1または請求項に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関するものである。
本願は、2020年6月23日に日本に出願された特願2020-107879号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両は、エンジンを制御する制御ユニットを有する。制御ユニットは、クランク角センサや水温センサ、油温センサ、吸気圧センサ等から情報を取得する。制御ユニットは、取得した情報を基に燃料噴射量や噴射時期、点火時期、エンジンと一体的に設けられた発電機等を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-155944号公報
【文献】特開2019-156314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では鞍乗り型車両の高機能化および多機能化による制御ユニットでの情報処理量の増加に伴って、制御ユニットの大型化および発熱量増大の傾向がある。このため、制御ユニットが占有するスペースの拡大、および制御ユニットを効率よく空冷する必要性により、制御ユニットの配置に制限が生じやすい。したがって、制御ユニットの大型化および発熱を抑制することが要求されている。
【0005】
そこで本発明は、制御ユニットの大型化および発熱を抑制できる鞍乗り型車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の第1の態様に係る鞍乗り型車両は、エンジン(40)と、前記エンジン(40)の出力を利用して発電する発電機(43)と、前記エンジン(40)および前記発電機(43)を制御する複数の制御ユニット(60)と、前記複数の制御ユニット(60)に接続されたワイヤハーネス(70)と、を備え、前記複数の制御ユニット(60)は、第1制御ユニット(61)および第2制御ユニット(62)を含み、前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)は、車幅方向にずれて配置されている、ことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、エンジンおよび発電機を単一の制御ユニットによって制御する場合と比較して、各制御ユニットを小型化できるとともに発熱量を抑制できる。よって、制御ユニット全体としての大型化および発熱を抑制できる。
加えて、第1制御ユニットおよび第2制御ユニットが小型化したことで制御ユニットの配置の制限を減らすことができる。このため、第1制御ユニットおよび第2制御ユニットを車幅方向にずらして配置することが可能となる。これにより、複数の制御ユニット、およびそれら制御ユニットに接続されたワイヤハーネスを車幅方向に分散配置して、鞍乗り型車両の左右分布荷重の適正化を図ることができる。
また、第1制御ユニットに対して第2制御ユニットによって前方で走行風を遮られることなく走行風を当てることができる。また、第2制御ユニットに対して第1制御ユニットによって前方で走行風を遮られることなく走行風を当てることができる。したがって、第1制御ユニットおよび第2制御ユニットそれぞれの空冷性能を向上させることができる。
【0008】
(2)上記(1)の鞍乗り型車両において、前記第1制御ユニット(61)は、前記エンジン(40)の燃料噴射および点火を制御し、前記第2制御ユニット(62)は、前記発電機(43)を制御してもよい。
【0009】
この構成によれば、特に情報処理能力を必要とする燃料噴射および点火の制御部分、並びに発電機の制御部分が分割されるので、制御ユニット全体としての大型化および発熱をより確実に抑制できる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)の鞍乗り型車両において、前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)は、前記車幅方向から見た側面視で互いに重なるように配置されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、ワイヤハーネスのうち第1制御ユニットとの接続部から第2制御ユニットとの接続部に亘る部分の配索を容易にすることができる。
【0012】
(4)上記(1)または(2)の鞍乗り型車両において、前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)は、前記車幅方向から見た側面視で互いに重ならないように配置されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、前後方向の重量バランスおよび上下方向の重量バランスの少なくともいずれか一方の確保に、分散配置された第1制御ユニットおよび第2制御ユニットを用いることができる。
【0014】
(5)上記(3)または(4)の鞍乗り型車両において、前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)は、マフラー(8)よりも上方に配置されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、質量が車両の上部寄りに分布してロール方向の慣性モーメントが大きくなるので、走行時の安定性を高めることができる。
【0016】
(6)上記(1)または(2)の鞍乗り型車両において、前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)のうち一方の制御ユニットは、前記エンジン(40)および前記発電機(43)のうち前記一方の制御ユニットの制御対象よりも後方に配置されているとともに、前記ワイヤハーネス(70)に接続されるカプラ(65,67)を有し、前記カプラ(65,67)は、上下方向に対して前方に傾斜した方向に突出していてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1制御ユニットおよび第2制御ユニットの一方のカプラが上下方向に対して前記一方の制御対象側に向くので、ワイヤハーネスのうち第1制御ユニットおよび第2制御ユニットの前記一方と前記一方の制御対象とを接続する部分を短くすることができる。したがって、ワイヤハーネスの材料コストを低減できる。
【0018】
(7)上記(1)または(2)の鞍乗り型車両において、前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)を車幅方向の外方から覆う車体カバー(6)をさらに備えていてもよい。
【0019】
この構成によれば、車体カバーによって第1制御ユニットおよび第2制御ユニットを保護することができる。
【0020】
(8)上記(1)または(2)の鞍乗り型車両において、前記エンジン(40)が吸入する空気を濾過するエアクリーナ(46)をさらに備え、前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)のうち少なくとも一方は、前記エアクリーナ(46)に隣接していてもよい。
【0021】
この構成によれば、エアクリーナの周囲には走行風が集まりやすいので、第1制御ユニットおよび第2制御ユニットのうちエアクリーナに隣接した制御ユニットを効率的に空冷することができる。
【0022】
(9)上記(1)または(2)の鞍乗り型車両において、前記エンジン(40)の筐体から後方に延びて後輪(5)を支持するアーム部(45)と、前記エンジン(40)が吸入する空気を濾過するエアクリーナ(46)と、前記アーム部(45)と前記エアクリーナ(46)とを連結するマウント部(48)と、をさらに備え、前記第1制御ユニット(61)および前記第2制御ユニット(62)のうち少なくとも一方は、車幅方向から見て前記マウント部(48)に重なるように配置されていてもよい。
【0023】
この構成によれば、エアクリーナとアーム部との間のデッドスペースを第1制御ユニットおよび第2制御ユニットのうち少なくとも一方の配置空間として活用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、制御ユニットの大型化および発熱を抑制できる鞍乗り型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
図2】第1実施形態に係る自動二輪車の後部を示す左側面図である。
図3】第1実施形態に係る自動二輪車の電装品の接続を示すブロック図である。
図4】第1実施形態に係るFI-ECUを示す斜視図である。
図5】第1実施形態に係るACG-ECUを示す斜視図である。
図6】第1実施形態に係る自動二輪車の後部を示す平面図である。
図7】第2実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
図8】第2実施形態に係る自動二輪車の後部を示す平面図である。
図9】第3実施形態に係る自動二輪車の後部を示す左側面図である。
図10】第3実施形態に係る自動二輪車の後部を示す平面図である。
図11】第4実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
図12】第4実施形態に係る自動二輪車の後部を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における前後上下左右等の方向は、以下に説明する車両における方向と同一とする。すなわち、上下方向は鉛直方向と一致し、左右方向は車幅方向と一致する。また、以下の説明に用いる図中において、矢印UPは上方、矢印FRは前方、矢印LHは左方をそれぞれ示している。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
図1に示すように、本実施形態の自動二輪車1は、シート7に着座した乗員が足を載せるステップフロア12(低床フロア)を有するスクータ型の鞍乗り型車両である。自動二輪車1は、車体フレーム2と、車体フレーム2に操向可能に支持される前輪3と、車体フレーム2に上下揺動可能に支持されるパワーユニット4と、パワーユニット4に支持される後輪5と、車両の外郭を形成する車体カバー6と、乗員が着座するシート7と、を備える。
【0028】
車体フレーム2は、ヘッドパイプ21と、ダウンフレーム22と、左右一対のロアフレーム23と、左右一対のリヤフレーム24と、クロスフレーム25と、を備える。ヘッドパイプ21は、車体フレーム2の前端に設けられている。ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ21から下方かつ後方へ延びている。一対のロアフレーム23は、ダウンフレーム22の下端部から後方に向けて延びている。各リヤフレーム24は、ロアフレーム23の後端部から後方かつ上方へ延びる第1延在部24aと、第1延在部24aの上端部から後方に延びる第2延在部24bと、を備える。クロスフレーム25は、左右のリヤフレーム24の第1延在部24aを連結している。
【0029】
前輪3は、左右一対のフロントフォーク31の下端部に軸支されている。一対のフロントフォーク31の上端部は、車幅方向に延びるボトムブリッジ32により連結されている。フロントフォーク31は、ボトムブリッジ32に固定されたステアリングステム33を介してヘッドパイプ21に操向可能に支持されている。ステアリングステム33の上部には、操向用のハンドルバー34が取り付けられている。
【0030】
パワーユニット4は、いわゆるユニットスイング式のリヤサスペンションである。パワーユニット4は、ロアフレーム23の後部に支持されている。パワーユニット4は、駆動輪である後輪5を駆動する。パワーユニット4は、車両の駆動源として設けられた内燃機関であるエンジン40と、エンジン40の出力を利用して発電する発電機43と、を備える。
【0031】
エンジン40は、車幅方向に延びるクランクシャフト(不図示)を収容する筐体としてのクランクケース41と、クランクケース41から前方へ突出するシリンダ部42(図2参照)と、を備える。シリンダ部42には、排気管44が接続されている。排気管44は、後輪5の右側方に配置されたマフラー8に接続されている。
【0032】
発電機43は、クランクケース41の内部に収容されている。発電機43は、クランクシャフトの右部に連結されている。発電機43は、クランクシャフトの回転によって発電する。発電機43は、エンジン40のスタータとしても利用される。
【0033】
図2は、第1実施形態に係る自動二輪車の後部を示す左側面図である。なお図2では、車体カバー6を取り外した状態を示している。
図2に示すように、パワーユニット4は、後輪5を支持するアーム部45をさらに備える。アーム部45は、後輪5の左側方に位置している。アーム部45は、クランクケース41(図1参照)の左後部から後方に延びている。アーム部45の後端部は、後輪5を支持している。アーム部45は、中空のケース状に形成されている。アーム部45の内部には、エンジン40で生じた駆動力を後輪5に伝達するベルト式無段変速機が収容されている。
【0034】
パワーユニット4は、アーム部45の上方に配置されたエアクリーナ46をさらに備える。エアクリーナ46は、エンジン40が吸入する空気を濾過する。エアクリーナ46は、フィルタを収容するエアクリーナボックス47を有する。エアクリーナボックス47は、コネクティングチューブを介してスロットルボディ(いずれも不図示)に接続されている。スロットルボディは、吸気菅によってエンジン40のシリンダ部42に接続されている。エアクリーナ46の下方には、アーム部45とエアクリーナ46とを連結するマウント部48が設けられている。マウント部48は、エアクリーナボックス47から下方に延出し、アーム部45に締結されている。
【0035】
図1に示すように、車体カバー6は、複数の外装パネルにより構成されている。車体カバー6は、ヘッドパイプ21およびダウンフレーム22を覆うフロントカバー部51と、ロアフレーム23を覆うロアカバー部52と、リヤフレーム24およびクロスフレーム25を覆うリヤカバー部53と、を備える。フロントカバー部51は、ライダーの脚部を前方から覆うレッグシールドを含む。リヤカバー部53は、シート7の下方でリヤフレーム24およびクロスフレーム25を車幅方向の外方および前方から覆っている。ロアカバー部52は、フロントカバー部51とリヤカバー部53との間に配置されている。ロアカバー部52の上面は、ステップフロア12を構成している。フロントカバー部51とリヤカバー部53との間でステップフロア12の上方の空間は、運転者が車体を跨ぐ際の跨ぎ空間Kとされている。なお、車体カバー6を構成する複数の外装パネルは、上述したカバー部毎に分割されている必要はなく、カバー部の境界を跨るように配置されていてもよい。リヤカバー部53の内側には、ヘルメット等の物品を収容する収納ボックス14(図2参照)が配置されている。収納ボックス14は、上部開口を開閉式のシート7で閉塞される。
【0036】
図3は、第1実施形態に係る自動二輪車の電装品の接続を示すブロック図である。
図3に示すように、自動二輪車1は、複数の制御ユニット60と、ワイヤハーネス70と、を備える。複数の制御ユニット60は、エンジン40および発電機43を制御する。複数の制御ユニット60は、互いに別個に設けられている。複数の制御ユニット60は、エンジン40の燃料噴射および点火を制御するFI(Fuel Injection)-ECU(Electronic Control Unit)61と、発電機43の発電動作およびエンジン始動動作を制御するACG(AC Generator)-ECU62と、を含む。FI-ECU61およびACG-ECU62は、ワイヤハーネス70を介して互いに接続されている。
【0037】
図4は、第1実施形態に係るFI-ECUを示す斜視図である。
図4に示すように、FI-ECU61は、マイコン等を収容する本体部64と、本体部64から突出した単一のカプラ65と、を備える。本体部64は、扁平な直方体状に形成されている。カプラ65は、本体部64から本体部64の厚さ方向に直交する方向に突出している。カプラ65には、ワイヤハーネス70のコネクタが接続される。FI-ECU61は、カプラ65に接続されるワイヤハーネス70を介して受電および各種信号の送受信を行う。
【0038】
図5は、第1実施形態に係るACG-ECUを示す斜視図である。
図5に示すように、ACG-ECU62は、マイコン等を収容する本体部66と、本体部64から突出した一対のカプラ67,68と、を備える。本体部66は、FI-ECU61の本体部64と同様に、扁平な直方体状に形成されている。第1のカプラ67は、本体部66から本体部66の厚さ方向に直交する方向に突出している。第2のカプラ68は、本体部66から第1のカプラ67の突出方向とは反対方向に突出している。カプラ67,68には、ワイヤハーネス70のコネクタが接続される。ACG-ECU62は、第1のカプラ67に接続されるワイヤハーネス70を介して給電および受電を行う。ACG-ECU62は、第2のカプラ68に接続されるワイヤハーネス70を介して、発電機43に係る各種信号(位相角センサの出力等)の送受信を行う。ACG-ECU62の第2のカプラ68は、第1のカプラ67に比べて、ワイヤハーネス70が接続された状態で防水性が高くなるように形成されている。FI-ECU61およびACG-ECU62の配置については後述する。
【0039】
図3に示すように、ワイヤハーネス70は、電装品に接続されている。ワイヤハーネス70は、束ねられた複数の電線と、電線の端部に装着されて電装品に接続されるコネクタと、を備える。ワイヤハーネス70は、FI-ECU61とACG-ECU62とを接続する第1ハーネス71と、発電機43とACG-ECU62とを接続する送電用の第2ハーネス72と、バッテリ77のプラス端子とACG-ECU62とを接続する第3ハーネス73と、FI-ECU61とエンジン40とを接続する第4ハーネス74と、発電機43とACG-ECU62とを接続する通信用の第5ハーネス75と、を含む。これら各ハーネス71~75は、1本または複数本の電線を備えている。なお、バッテリ77のプラス端子およびACG-ECU62は、第3ハーネス73による接続に加えて、ヒューズ78およびスイッチング素子79を介して互いに接続されている。
【0040】
FI-ECU61およびACG-ECU62の配置について詳述する。
図2に示すように、FI-ECU61は、パワーユニット4に固定され、パワーユニット4とともに車体フレーム2に対して上下揺動可能とされている。FI-ECU61は、その制御対象であるエンジン40よりも後方に配置されている。FI-ECU61は、エアクリーナ46に隣接している。FI-ECU61は、本体部64の厚さ方向を上下方向に沿わせた状態で、エアクリーナ46とパワーユニット4のアーム部45との間に配置されている。FI-ECU61は、車幅方向から見た側面視でエアクリーナ46のマウント部48に重なるように配置されている。FI-ECU61は、車両重心Gよりも下方に配置されている(図1参照)。FI-ECU61は、カプラ65が本体部64から上下方向に対して前方に傾斜した方向(図示の例では前方)に突出するように配置されている。
【0041】
図6は、第1実施形態に係る自動二輪車の後部を示す平面図である。なお図6では、車体カバー6のリヤカバー部53、収納ボックス14およびシート7を取り外した状態を示している。
図1および図6に示すように、ACG-ECU62は、その制御対象である発電機43よりも前方に配置されている。ACG-ECU62は、上方から見て一対のリヤフレーム24の第1延在部24aの間に配置され、エンジン40のシリンダ部42に固定されている。ACG-ECU62は、車両重心Gよりも下方に配置されている。ACG-ECU62は、車体カバー6のリヤカバー部53によって前方および車幅方向の外方から覆われている。
【0042】
以上のようにFI-ECU61およびACG-ECU62がそれぞれ配置されたことにより、本実施形態ではFI-ECU61およびACG-ECU62は以下の位置関係を持つ。
FI-ECU61およびACG-ECU62は、車両の車幅中心Cに対して互いに同じ側(左側)に配置されている。FI-ECU61およびACG-ECU62は、上方から見て重なり合わないように、互い車幅方向にずれて配置されている。本実施形態では、FI-ECU61は、ACG-ECU62よりも左方に配置されている。具体的には、FI-ECU61は、その全体がACG-ECU62の重心よりも左方に位置するように配置されている。さらに、FI-ECU61およびACG-ECU62は、側面視で重なり合わないように、互いに前後方向にずれて配置されている。本実施形態では、FI-ECU61は、ACG-ECU62よりも後方に配置されている。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1は、エンジン40および発電機43を制御する複数の制御ユニット60を備える。複数の制御ユニット60のうちFI-ECU61およびACG-ECU62は、車幅方向にずれて配置されている。この構成によれば、エンジンおよび発電機を単一の制御ユニットによって制御する場合と比較して、FI-ECU61およびACG-ECU62それぞれを小型化できるとともに発熱量を抑制できる。よって、制御ユニット60全体としての大型化および発熱を抑制できる。
【0044】
加えて、FI-ECU61およびACG-ECU62が小型化したことでFI-ECU61およびACG-ECU62の配置の制限を減らすことができる。このため、FI-ECU61およびACG-ECU62を車幅方向にずらして配置することが可能となる。これにより、FI-ECU61およびACG-ECU62、並びにそれらFI-ECU61およびACG-ECU62に接続されたワイヤハーネス70を車幅方向に分散配置して、自動二輪車1の左右分布荷重の適正化を図ることができる。
【0045】
また、FI-ECU61に対してACG-ECU62によって前方で走行風を遮られることなく走行風を当てることができる。さらに、ACG-ECU62に対してFI-ECU61によって前方で走行風を遮られることなく走行風を当てることができる。
【0046】
しかも、複数の制御ユニット60のうちFI-ECU61およびACG-ECU62を上記のように配置することで、特に情報処理能力を必要とする燃料噴射および点火の制御部分、並びに発電機43の制御部分が分割されるので、制御ユニット60全体としての大型化および発熱をより確実に抑制できる。
【0047】
FI-ECU61およびACG-ECU62は、側面視で互いに重ならないように配置されている。この構成によれば、前後方向の重量バランスおよび上下方向の重量バランスの確保に、分散配置されたFI-ECU61およびACG-ECU62を用いることができる。
【0048】
FI-ECU61のカプラ65は、上下方向に対して前方に傾斜した方向に突出している。この構成によれば、FI-ECU61のカプラ65が上下方向に対してFI-ECU61の制御対象であるエンジン40側に向くので、ワイヤハーネス70のうちFI-ECU61とエンジン40とを接続する部分を短くすることができる。したがって、ワイヤハーネス70の材料コストを低減できる。
【0049】
ACG-ECU62は、車体カバー6のリヤカバー部53によって車幅方向の外方から覆われているので、ACG-ECU62を保護することができる。
【0050】
FI-ECU61は、エアクリーナ46に隣接している。この構成によれば、エアクリーナ46の周囲には走行風が集まりやすいので、FI-ECU61を効率的に空冷することができる。
【0051】
FI-ECU61は、側面視でエアクリーナ46のマウント部48に重なるように配置されている。この構成によれば、エアクリーナ46とパワーユニット4のアーム部45との間のデッドスペースをFI-ECU61の配置空間として活用することができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、図7および図8を参照して、第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。図8は、第2実施形態に係る自動二輪車の後部を示す平面図である。なお図7では、車体カバー6を取り外した状態を示している。また図8では、車体カバー6のリヤカバー部53、収納ボックス14およびシート7を取り外した状態を示している。
【0053】
第1実施形態ではFI-ECU61およびACG-ECU62が車幅中心Cに対して互いに同じ側(左側)に配置されている。これに対して第2実施形態では、FI-ECU61およびACG-ECU62が車幅中心Cを挟んで互いに反対側に配置されている点で第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0054】
ACG-ECU62は、本体部66の厚さ方向を車幅方向に沿わせた状態で、右側のリヤフレーム24に対して固定されている。ACG-ECU62は、車体カバー6のリヤカバー部53によって車幅方向の外方から覆われる位置に配置されている。ACG-ECU62は、車両重心G(図1参照)よりも上方に配置されている。ACG-ECU62は、マフラー8よりも上方に配置されている。ACG-ECU62は、第1のカプラ67が本体部66から上下方向に対して前方に傾斜した方向(図示の例では前下方)に突出するように配置されている。
【0055】
以上のようにACG-ECU62が配置されたことにより、本実施形態ではFI-ECU61およびACG-ECU62は以下の位置関係を持つ。
FI-ECU61およびACG-ECU62は、車幅中心Cに対して互いに反対側に配置されている。FI-ECU61およびACG-ECU62は、上方から見て互いに重ならないように、車幅方向にずれて配置されている。本実施形態では、FI-ECU61は、ACG-ECU62よりも左方に配置されている。さらに、FI-ECU61およびACG-ECU62は、側面視で重なり合わないように、互いに前後方向および上下方向にずれて配置されている。本実施形態では、ACG-ECU62は、FI-ECU61よりも前方かつ上方に配置されている。
【0056】
以上に説明した第2実施形態の自動二輪車101によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0057】
ACG-ECU62は、マフラー8よりも上方に配置されている。この構成によれば、質量が車両の上部寄りに分布してロール方向の慣性モーメントが大きくなるので、走行時の安定性を高めることができる。
【0058】
ACG-ECU62は、第1のカプラ67が上下方向に対して前方に傾斜した方向に突出するように配置されている。この構成によれば、ACG-ECU62の第1のカプラ67が上下方向に対してACG-ECU62の制御対象である発電機43側に向くので、ワイヤハーネス70のうちACG-ECU62と発電機43とを接続する部分を短くすることができる。したがって、ワイヤハーネス70の材料コストを低減できる。
【0059】
[第3実施形態]
次に、図9および図10を参照して、第3実施形態について説明する。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
図9は、第3実施形態に係る自動二輪車の後部を示す左側面図である。図10は、第3実施形態に係る自動二輪車の後部を示す平面図である。なお図9では、車体カバー6を取り外した状態を示している。また図10では、車体カバー6のリヤカバー部53、収納ボックス14およびシート7を取り外した状態を示している。
【0060】
ACG-ECU62は、パワーユニット4に固定され、パワーユニット4とともに車体フレーム2に上下揺動可能とされている。ACG-ECU62は、エアクリーナ46に隣接している。ACG-ECU62は、エアクリーナボックス47に固定されている。ACG-ECU62は、その厚さ方向を車幅方向に沿わせた状態で、エアクリーナボックス47の車幅方向外方を向く側面に沿って配置されている。ACG-ECU62は、第1のカプラ67が本体部66から上下方向に対して前方に傾斜した方向に突出するように配置されている。
【0061】
以上のようにACG-ECU62が配置されたことにより、本実施形態ではFI-ECU61およびACG-ECU62は以下の位置関係を持つ。
FI-ECU61およびACG-ECU62は、車幅中心Cに対して互いに同じ側(左側)に配置されている。FI-ECU61およびACG-ECU62は、上方から見て重なり合わないように、互いに車幅方向にずれて配置されている。本実施形態では、FI-ECU61は、ACG-ECU62よりも右方に配置されている。さらに、FI-ECU61およびACG-ECU62は、側面視で重なり合わないように、互いに上下方向にずれて配置されている。FI-ECU61およびACG-ECU62は、前後方向に直交するとともに車幅方向に対して交差する方向(本実施形態では右上方)から見て互いに重なるように配置されている。
【0062】
以上に説明した第3実施形態の自動二輪車201によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0063】
ACG-ECU62は、エアクリーナ46に隣接している。この構成によれば、エアクリーナ46の周囲には走行風が集まりやすいので、エアクリーナ46に隣接したFI-ECU61と同様に、ACG-ECU62を効率的に空冷することができる。
【0064】
[第4実施形態]
次に、図11および図12を参照して、第4実施形態について説明する。
図11は、第4実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。図12は、第4実施形態に係る自動二輪車の後部を示す左側面図である。なお図12では、車体カバー6を取り外した状態を示している。
【0065】
第2実施形態では、FI-ECU61およびACG-ECU62が側面視で互いに重ならないように配置されている。これに対して第4実施形態では、FI-ECU61およびACG-ECU62が側面視で互いに重なるように配置されている点で第2実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第2実施形態と同様である。
【0066】
FI-ECU61は、その制御対象であるエンジン40よりも後方に配置されている。FI-ECU61は、左側のリヤフレーム24に対して固定されている。FI-ECU61は、車体カバー6のリヤカバー部53によって車幅方向の外方から覆われる位置に配置されている。FI-ECU61は、車両重心Gよりも上方に配置されている。FI-ECU61は、マフラー8よりも上方に配置されている。
【0067】
以上のようにFI-ECU61が配置されたことにより、本実施形態ではFI-ECU61およびACG-ECU62は以下の位置関係を持つ。
FI-ECU61およびACG-ECU62は、車幅中心(不図示)に対して互いに反対側に配置されている。FI-ECU61およびACG-ECU62は、上方から見て重なり合わないように、互いに車幅方向にずれて配置されている。本実施形態では、FI-ECU61は、ACG-ECU62よりも左方に配置されている。FI-ECU61およびACG-ECU62は、側面視で互いに重なるように配置されている。
【0068】
以上に説明した第4実施形態の自動二輪車301によれば、上述した第2実施形態と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0069】
FI-ECU61およびACG-ECU62は、側面視で互いに重なるように配置されている。この構成によれば、ワイヤハーネス70のうちFI-ECU61との接続部からACG-ECU62との接続部に亘る部分の配索を容易にすることができる。
【0070】
FI-ECU61およびACG-ECU62の両方は、マフラー8よりも上方に配置されている。この構成によれば、質量が車両の上部寄りに分布してロール方向の慣性モーメントが大きくなるので、走行時の安定性を高めることができる。
【0071】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、本発明をスクータ型の鞍乗り型車両に適用した例を示したが、本発明は運転者が車体を跨いで乗車する鞍乗り型車両全般に適用することができる。すわなち、例えばステップフロアおよびユニットスイング式のリヤサスペンションのうち少なくともいずれか一方を有しない構成の自動二輪車や、自動三輪車等に上記実施形態の構成を組み合わせてもよい。
【0072】
また、FI-ECU61とACG-ECU62の配置は上記実施形態における配置に限定されず、FI-ECU61およびACG-ECU62が車幅方向にずれて配置されていればよい。例えば、各実施形態においてFI-ECU61とACG-ECU62とを入れ替えて配置してもよい。
【0073】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、制御ユニットの大型化および発熱を抑制できる鞍乗り型車両を提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
1,101,201,301…自動二輪車(鞍乗り型車両) 5…後輪 6…車体カバー 8…マフラー 40…エンジン 43…発電機 45…アーム部 46…エアクリーナ 48…マウント部 60…制御ユニット 61…FI-ECU(第1制御ユニット) 62…ACG-ECU(第2制御ユニット) 65,67…カプラ 70…ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12