(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】静電気耐圧試験装置および静電気耐圧試験方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20231208BHJP
【FI】
G01R31/26 H
(21)【出願番号】P 2022534088
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024800
(87)【国際公開番号】W WO2022004804
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020115582
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 浩平
(72)【発明者】
【氏名】金谷 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】安藤 慎一郎
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-95258(JP,A)
【文献】特開2007-155663(JP,A)
【文献】特開2000-206177(JP,A)
【文献】特開平7-98355(JP,A)
【文献】特公平7-11556(JP,B2)
【文献】特開平4-273076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0067156(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0241508(US,A1)
【文献】特開2018-205151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板上の半導体デバイスの静電気耐圧を測定するための静電気耐圧試験装置であって、
前記半導体デバイスは複数のピンを有しており、前記実装基板には、前記複数のピンとそれぞれ電気的に接続される複数の端子および、導体パターンが設けられており、
前記実装基板が搭載される金属板と、
前記金属板に電圧を印加するための電源と、
前記金属板と前記実装基板との間に配置される絶縁体と、
前記複数の端子および接地配線の間に接続されるスイッチ回路と、
前記スイッチ回路を制御する制御部とを備え、
前記スイッチ回路は、前記複数の端子にそれぞれ対応して設けられ、対応する端子を前記接地配線に接続するように構成された複数の第1のスイッチを含み、
前記制御部は、前記導体パターンに蓄えられた電荷を、前記半導体デバイスを介して前記接地配線に放電するときに、前記複数の第1のスイッチから選択した少なくとも1つの第1のスイッチをオンする、静電気耐圧試験装置。
【請求項2】
前記制御部からの制御信号に従って、前記金属板を、前記電源または前記接地配線に選択的に接続するように構成された第2のスイッチをさらに備え、
前記制御部は、
前記複数の第1のスイッチをオフし、かつ、前記第2のスイッチにより前記金属板を前記電源に接続することにより、前記導体パターンを帯電させ、
前記少なくとも1つの第1のスイッチをオンすることにより、前記導体パターンに蓄えられた電荷を、前記半導体デバイスを介して前記接地配線に放電し、かつ、
前記少なくとも1つの第1のスイッチをオフし、かつ、前記第2のスイッチにより前記金属板を前記接地配線に接続することにより、前記金属板を除電する、請求項1に記載の静電気耐圧試験装置。
【請求項3】
前記複数の第1のスイッチを前記複数の端子にそれぞれ接続するための複数のプローブをさらに備え、
前記複数のプローブの各々は、先端に圧力を受けて摺動するように構成された可動部を有する、請求項1または2に記載の静電気耐圧試験装置。
【請求項4】
前記複数の第1のスイッチの各々は、水銀リレーを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の静電気耐圧試験装置。
【請求項5】
前記半導体デバイスの電気的特性を測定するための測定器と、
前記測定器による前記電気的特性の測定値に基づいて、前記半導体デバイスの故障を判定するように構成された演算器と、
前記制御部からの制御信号に従って、前記スイッチ回路を、前記測定器または前記接地配線に選択的に接続するように構成された第3のスイッチとをさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の静電気耐圧試験装置。
【請求項6】
実装基板上の半導体デバイスの静電気耐圧を測定するための静電気耐圧試験方法であって、
前記半導体デバイスは複数のピンを有しており、前記実装基板には、前記複数のピンとそれぞれ電気的に接続される複数の端子および、導体パターンが設けられており、
前記半導体デバイスに静電気放電を発生させるステップを備え、
前記半導体デバイスに静電気放電を発生させるステップは、
絶縁体を挟んで前記導体パターンに対向配置された金属板に電圧を印加することにより、前記導体パターンを帯電させるステップと、
前記導体パターンに蓄えられた電荷を、前記半導体デバイスを介して接地配線に放電するステップとを含み、
前記放電するステップは、前記複数の端子にそれぞれ対応して設けられ、対応する端子を前記接地配線に接続するように構成された複数の第1のスイッチから選択した少なくとも1つの第1のスイッチをオンするステップを含む、静電気耐圧試験方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1のスイッチをオフし、かつ、前記金属板を前記接地配線に接続することにより、前記金属板を除電するステップをさらに備える、請求項6に記載の静電気耐圧試験方法。
【請求項8】
前記半導体デバイスに静電気放電を発生させるステップは、前記複数の第1のスイッチにそれぞれ対応して設けられた複数のプローブの先端を前記複数の端子に接触させるステップをさらに含む、請求項6または7に記載の静電気耐圧試験方法。
【請求項9】
前記半導体デバイスに静電気放電を発生させるステップの実行前に前記半導体デバイスの第1の電気的特性を測定するステップと、
前記半導体デバイスに静電気放電を発生させるステップの実行後に前記半導体デバイスの第2の電気的特性を測定するステップと、
前記第1の電気的特性および前記第2の電気的特性を比較することにより、前記半導体デバイスの故障を判定するステップとをさらに備える、請求項6から8のいずれか1項に記載の静電気耐圧試験方法。
【請求項10】
前記半導体デバイスに静電気放電を発生させるステップは、前記判定するステップにおいて正常と判定された前記半導体デバイスに再び静電気放電を発生させるステップを含み、
前記再び静電気放電を発生させるステップは、前記金属板に印加する電圧を増加するステップを含む、請求項9に記載の静電気耐圧試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電気耐圧試験装置および静電気耐圧試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路およびディスクリートなどの半導体デバイスの微細化に伴ない、静電気放電によって故障するリスクが高まっている。半導体デバイスを採用するにあたり、静電気放電に対してどの程度の耐圧を有するのかを把握し、その耐圧に合わせて、故障を防ぐための静電気管理が求められる。そのため、すべての半導体デバイスに対して静電気耐圧試験が行なわれている(例えば特開2000-206177号公報(特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の静電気耐圧試験では、半導体デバイスの1つの端子に対して静電気放電を発生させている。しかし、1つの端子に対して静電気放電を発生させても、製造現場で発生する電圧では半導体デバイスが故障しない場合がある。
【0005】
半導体デバイスが実装された基板に設けられた複数のピンにコネクタを挿入する構成においては、半導体デバイスの複数の端子に対して複数のピンの端子がそれぞれ同時に電気的に接触される。このような構成では、複数のピンを介して半導体デバイスに静電気放電が発生するため、1つのピンを介して半導体デバイスに静電気放電が発生する構成と比較して、短時間で大きな電流を半導体デバイスに流すことができる。その結果、半導体デバイスを故障させる可能性が高まる。そのため、1つの端子に静電気放電を発生させる従来の静電気耐圧試験では、製造現場での半導体デバイスの耐圧を正確に測定することができない場合が生じる。
【0006】
本開示はこのような問題点を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、実装基板上の半導体デバイスの静電気耐圧を正確に測定することができる静電気耐圧試験装置および静電気耐圧試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面では、静電気耐圧試験装置は、実装基板上の半導体デバイスの静電気耐圧を測定する。半導体デバイスは複数のピンを有する。実装基板には、複数のピンとそれぞれ電気的に接続される複数の端子および、導体パターンが設けられている。静電気耐圧試験装置は、実装基板が搭載される金属板と、金属板に電圧を印加するための電源と、金属板と実装基板との間に配置される絶縁体と、複数の端子および接地配線の間に接続されるスイッチ回路と、スイッチ回路を制御する制御部とを備える。スイッチ回路は、複数の端子にそれぞれ対応して設けられ、対応する端子を接地配線に接続するように構成された複数の第1のスイッチを含む。制御部は、導体パターンに蓄えられた電荷を、半導体デバイスを介して接地配線に放電するときに、複数の第1のスイッチから選択した少なくとも1つの第1のスイッチをオンする。
【0008】
本開示の別の局面では、静電気耐圧試験方法は、実装基板上の半導体デバイスの静電気耐圧を測定するための静電気耐圧試験方法である。半導体デバイスは複数のピンを有する。実装基板には、複数のピンとそれぞれ電気的に接続される複数の端子および、導体パターンが設けられている。静電気耐圧試験方法は、半導体デバイスに静電気放電を発生させるステップを備える。半導体デバイスに静電気放電を発生させるステップは、絶縁体を挟んで導体パターンに対向配置された金属板に電圧を印加することにより、導体パターンを帯電させるステップと、導体パターンに蓄えられた電荷を、半導体デバイスを介して接地配線に放電するステップとを含む。放電するステップは、複数の端子にそれぞれ対応して設けられ、対応する端子を接地配線に接続するように構成された複数の第1のスイッチから選択した少なくとも1つの第1のスイッチをオンするステップを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、製造現場での半導体デバイスの静電気耐圧を正確に測定することができる静電気耐圧試験装置および静電気耐圧試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置の構成例を概略的に示す図である。
【
図4】
図3に示した半導体装置、スイッチ回路および電力線の配線構成を示す図である。
【
図5】導体パターンを帯電させる工程を説明するための図である。
【
図6】導体パターンの電荷を放電させる工程を説明するための図である。
【
図7】金属板を除電する工程を説明するための図である。
【
図8】半導体デバイスの電気的特性を測定するための測定装置の構成例を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係る静電気耐圧試験方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図10】実施の形態2に係る静電気耐圧試験装置の構成例を概略的に示す図である。
【
図11】実施の形態2に係る静電気耐圧試験方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図12】半導体デバイスの電気的特性を測定する工程を説明するための図である。
【
図13】静電気放電を発生させる工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分について同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0012】
実施の形態1.
(半導体装置の構成例)
最初に、
図1および
図2を用いて、実施の形態1に係る静電気耐圧試験方法の試験対象となる半導体装置の構成例を説明する。
図1は、半導体装置20の一部を拡大した平面図である。
図2は、半導体装置20の断面図である。なお、
図2には、半導体装置20が電気機器に実装される様子が示されている。
【0013】
図1および
図2に示すように、半導体装置20は、実装基板8と、半導体デバイス10とを有する。実装基板8は、導体パターン8aと、導体パターン8a上に積層された絶縁層8bとを含む。導体パターン8aは、平面視において実装基板8の多くの面積を占めており、GNDパターンを構成する。
【0014】
半導体デバイス10は、実装基板8の表面に実装される。半導体デバイス10は、少なくとも1つの半導体素子10eと、封止樹脂10fと、複数のピンとを有する。半導体素子10eは、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)、ダイオードなどによって構成される。
【0015】
複数のピンは、図示しない導電ワイヤによって少なくとも1つの半導体素子10eと電気的に接続される。封止樹脂10fは、少なくとも1つの半導体素子10eと、複数のピンの一部とを封止する。これにより、複数のピンの一部は封止樹脂10fから露出する。複数のピンは、給電用または信号入力用のピン10a~10cと、接地電圧(GND)供給用のGNDピン10dとを含む。
【0016】
実装基板8の表面には、給電用または信号入力用の配線12a~12cと、GND配線12dと、複数の端子9とが形成されている。複数の端子9は、給電用または信号入力用の端子9a~9cと、GND端子9dとを含む。
【0017】
配線12a~12cは、導体パターン8aと電気的に絶縁されている。GND配線12dは、絶縁層8b内に配置されたGND端子9dを介して導体パターン8aと電気的に接続されている。配線12a~12cの第1端部は、半導体デバイス10のピン10a~10cにそれぞれ接続されている。配線12a~12cの第2端部は、端子9a~9cにそれぞれ接続されている。GND配線12dの第1端部は、半導体デバイス10のGNDピン10dに接続されている。GND配線12dの第2端部は、GND端子9dに接続されている。
【0018】
電気機器の製造工程において、半導体装置20は、樹脂などで形成された筐体13の内部に収容される。半導体装置20の端子9a~9cにコネクタ14を挿入することにより、端子9a~9cはコネクタ14を介して他の機器15と電気的に接続される。
【0019】
(静電気放電)
次に、電気機器の製造現場で発生し得る静電気放電について詳細に説明する。
【0020】
電気機器の製造現場においては、半導体装置20を収容する筐体13がGNDに対して帯電することにより、実装基板8内に設けられた導体パターン8a(GNDパターン)が帯電する場合がある。なお、導体パターン8aは、
図2に示すように、GND端子9dおよびGND配線12dを介して、半導体デバイス10のGNDピン10dと電気的に接続されている。
【0021】
製造工程において、導体パターン8aが帯電している状態で半導体デバイス10のピン10aを、コネクタ14を介して他の機器15と電気的に接続する場合を想定する。
【0022】
この場合、半導体デバイス10のピン10aと実装基板8上の端子9aとは電気的に接続されているため、端子9aにコネクタ14を挿入した際、導体パターン8aに蓄えられた電荷が、GNDピン10dから半導体素子10eおよびピン10a、端子9a、コネクタ14ならびに機器15内部の配線を順に経由してGNDに流れ込む。すなわち、導体パターン8aに蓄えられた電荷量に応じた静電気放電が半導体装置20に発生するため、半導体デバイス10が故障するおそれがある。
【0023】
ここで、実装基板の静電気放電を想定したモデルには、基板帯電イベント(Charge Board Event:CBE)がある。CBEとは、帯電した実装基板へのコネクタの挿入または実装基板と金属工具との接触などによって、実装基板に蓄えられた電荷が放電されるモデルである。通常、実装基板は、半導体デバイスと比較して数百倍以上の面積を有する場合が多く、その面積に比例して実装基板に蓄えられる電荷量が大きくなる。
【0024】
実装基板においては、ノイズ対策のために、実装基板の多くの面積を占める導電性のGNDパターンが広く採用されている。半導体デバイスおよび実装基板の各々に蓄えられる電荷の容量を示す静電容量Cは、C=ε(S/D)の関係式に基づいて決定される。ただし、εは比誘電率であり、Sは対向電極の面積であり、Dは対向電極間の距離である。上記のように、GNDパターンは半導体デバイスよりも面積Sが大きいため、実装基板の静電容量Cは半導体デバイスの静電容量Cよりも大きくなる。
【0025】
半導体デバイスおよび実装基板の各々に蓄えられる電荷量Qは、Q=CVの関係式に基づき決定される。ただし、Vは対向電極間に印加される電圧である。上述したように、実装基板は半導体デバイスに比べて静電容量Cが大きいため、印加される電圧Vが互いに等しい場合、実装基板は、半導体デバイスに比べてより多くの電荷量を蓄える。
【0026】
静電気放電のエネルギーWは、W=Q×V/2の関係式に基づいて決定される。半導体デバイスおよび実装基板の印加電圧Vが互いに等しい場合、実装基板は、半導体デバイスに比べて、蓄えられる電荷量Qが大きくなるため、静電気放電のエネルギーWも大きくなる。そのため、
図1および
図2に示す半導体装置20においては、半導体デバイス10単体では静電気放電による故障が発生しないものの、半導体デバイス10を実装基板8に実装することで、半導体デバイス10に静電気放電による故障が発生する可能性がある。したがって、半導体デバイス10を実装基板8に実装した状態でCBEに沿った静電気耐圧試験を行ない、電気機器の製造工程での半導体デバイス10の静電気耐圧を測定することが必要となる。
【0027】
(静電気耐圧試験)
次に、実施の形態1に係る静電気耐圧試験について説明する。最初に、
図3を用いて実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置の構成例を説明する。
【0028】
(1)静電気耐圧試験装置の構成例
図3は、実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置の構成例を概略的に示す図である。
【0029】
図3に示すように、実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置100は、
図1および
図2に示した半導体装置20の静電気耐圧を測定するための装置である。静電気耐圧試験装置100は、スイッチ1、直流電源2、抵抗3、金属板4、絶縁体5、スイッチ回路6、制御部7および電力線21~24を有する。
【0030】
直流電源2は、高電圧側の電力線21および低電圧側の電力線22の間に接続される。電力線22は接地配線で構成される。直流電源2は、電力線21に出力する電圧の大きさを切り替え可能に構成されている。
【0031】
抵抗3は、電力線21および金属板4の間に接続される。スイッチ1は、電力線21,23と抵抗3との間に接続される。スイッチ1には半導体スイッチまたは機械式スイッチを適用することができる。半導体スイッチは、代表的にはIGBTまたはMOSFETなどの半導体スイッチング素子である。機械式スイッチは、例えばリレーなどの開閉器である。スイッチ1は「第2のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0032】
スイッチ1は、制御部7からの制御信号に従って、抵抗3を、電力線21および電力線23のいずれか一方に電気的に接続可能に構成されている。一例として、スイッチ1は、3つの接点1a~1cを有する。接点1a,1bは固定接点であり、接点1cは接点1a,1bと選択的に接続する可動接点である。接点1aは電力線21の第1の端子に接続され、接点1bは電力線23の第1の端子に接続され、接点1cは抵抗3の第1の端子に接続される。電力線21の第2の端子は直流電源2の正極に接続され、電力線23の第2の端子は電力線22に接続され、抵抗3の第2の端子は金属板4に接続される。
【0033】
スイッチ1の接点1cを接点1aに接続することにより、電力線21および抵抗3が電気的に接続されるため、直流電源2から電力線21に供給される電圧を、抵抗3を介して金属板4に印加することができる。一方、スイッチ1の接点1cを接点1bに接続することにより、電力線23および抵抗3が電気的に接続されるため、金属板4に蓄積された電荷を電力線23を介して電力線22に向けて放出することができる。
【0034】
以下の説明では、接点1cを接点1aに接続することを「接点1aをオン(導通)する」とも称し、接点1cを接点1bに接続することを「接点1bをオンする」とも称する。なお、スイッチ1では、接点1aがオンのときに接点1bがオフ(非導通)され、接点1bがオンのときに接点1aがオフされる。
【0035】
絶縁体5は、平板形状を有しており、金属板4上に配置される。半導体装置20は、絶縁体5上に配置される。絶縁体5は、金属板4と導体パターン8aとの電気的絶縁を確保する。金属板4と導体パターン8aとの間に絶縁体5を設けることによって、金属板4と導体パターン8aとを電極としたコンデンサを模擬することができる。そのため、金属板4に電圧を印加したときに、金属板4に電荷を蓄えることができる。なお、絶縁体5の仕様は、試験電圧に応じて決定する必要がある。試験電圧よりも絶縁耐圧が低い絶縁体5を使用した場合、電圧印加中に絶縁体5が絶縁破壊する可能性があるためである。
【0036】
スイッチ回路6は、半導体装置20の端子9および電力線24の間に接続される。電力線24は接地配線で構成される。スイッチ回路6は、複数のスイッチ6a~6cを有する。複数のスイッチ6a~6cは「複数の第1のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0037】
スイッチ6a~6cには、例えば水銀リレーを適用することができる。水銀リレーは、接点部分が水銀で覆われている。他の機械式リレーでは、スイッチのターンオン時に瞬時的に、オンオフを繰り返すバウンスが発生する。水銀は高い粘性を持つため、水銀リレーではバウンスが発生しない。そのため、再現性の高い静電気耐圧試験を行なうことができる。
【0038】
スイッチ6a~6cは、
図2に示すような、半導体デバイス10のピン10a~10cと他の機器15とをコネクタ14を介して電気的に接続したときに発生する静電気放電を再現するために用いられる。具体的には、スイッチ6aは、端子9aおよび電力線24の間に接続される。スイッチ6bは、端子9bおよび電力線24の間に接続される。スイッチ6cは、端子9cおよび電力線24の間に接続される。スイッチ6a~6cの各々は、制御部7からの制御信号に従ってオン(導通)/オフ(非導通)することにより、対応する端子9と電力線24とを電気的に接続/遮断するように構成される。
【0039】
スイッチ6a~6cをオンすることにより、
図2に示した半導体デバイス10のピン10a~10cとコネクタ14との電気的な接続が再現されるため、上述したCBE(基板帯電イベント)による静電気放電を模擬することができる。なお、
図3の例では、スイッチ回路6に含まれるスイッチの数を3としたが、スイッチの数は複数であればよい。
【0040】
制御部7は、スイッチ1およびスイッチ回路6のオンオフを制御する。制御部7は、例えばマイクロコンピュータなどで構成することが可能である。具体的には、制御部7は、CPU(Central Processing Unit)71と、プログラムおよびデータを格納するメモリ72とを備えており、当該プログラムをCPU71が実行することによるソフトウェア処理によって、後述する制御動作を実行することができる。あるいは、当該制御動作の一部または全部について、ソフトウェア処理に代えて、内蔵された専用の電子回路などを用いたハードウェア処理によって実現することも可能である。
【0041】
メモリ72は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、CPU71にて実行されるプログラムを格納することができる。RAMは、CPU71におけるプログラムの実行中に利用されるデータを一時的に格納することができ、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能することができる。
【0042】
制御部7は、スイッチ回路6に含まれる複数のスイッチ6a~6cのオンオフを互いに独立して制御することができる。したがって、制御部7は、複数のスイッチ6a~6cのいずれか1つのスイッチをオンすることができる。あるいは、制御部7は、2以上のスイッチを同時にオンすることができる。すなわち、制御部7は、複数のスイッチ6a~6cのうちの少なくとも1つをオンすることができる。
【0043】
図4は、
図3に示した半導体装置20、スイッチ回路6および電力線24の配線構成を示す図である。
図4に示すように、静電気耐圧試験装置100は、複数のプローブ11a~11cをさらに有する。以下、プローブ11a~11cを総称して単に「プローブ11」と称する場合がある。
【0044】
プローブ11には、例えばスプリングプローブを適用することができる。スプリングプローブは、バネを内蔵する可動部を有しており、先端に圧力がかかると、バネにより可動部が摺動する。この摺動を利用して、プローブ11と端子9との接触を確保することができる。
【0045】
複数のプローブ11a~11cの第1の端子は、複数のスイッチ6a~6cの第1の端子とそれぞれ接続される。複数のスイッチ6a~6cの第2の端子は、電力線24と接続される。複数のプローブ11a~11cの第2の端子は、半導体装置20の複数の端子9a~9cとそれぞれ接続される。なお、
図4の例では、プローブ11の数を3としたが、プローブ11の数はスイッチ回路6のスイッチと同数であればよい。
【0046】
(2)静電気耐圧試験方法
次に、実施の形態1に係る静電気耐圧試験方法を説明する。
【0047】
実施の形態1に係る静電気耐圧試験方法は、
図3に示した静電気耐圧試験装置100においてスイッチ1およびスイッチ回路6のオンオフを制御することにより、実装基板8の導体パターン8aの帯電および、導体パターン8aに蓄積された電荷の放電を実行するように構成される。これにより、CBE(基板帯電イベント)による静電気放電を模擬した静電気耐圧試験を実現する。
【0048】
(2-1)導体パターン8aを帯電させる工程
実施の形態1に係る静電気耐圧試験方法では、CBEによる静電気放電を発生させるために、最初に、実装基板8の導体パターン8aを帯電させる工程が行なわれる。
図5は、導体パターン8aを帯電させる工程を説明するための図である。
【0049】
本工程では、最初に、
図3に示した静電気耐圧試験装置100を初期状態に設定する。初期状態では、スイッチ1の接点1bをオン(すなわち、接点1aをオフ)とし、スイッチ回路6のスイッチ6a~6cをオフとする。次に、初期状態の静電気耐圧試験装置100に対して、試験対象となる半導体装置20をセットする。すなわち、絶縁体5上に実装基板8をセットする。
【0050】
次に、プローブ11a~11cを図示しない駆動部を用いて動作させることにより、
図5に示すように、半導体装置20の端子9a~9cに対し、プローブ11a~11cをそれぞれ接触させる。プローブ11a~11cが接触することにより、端子9a~9cはスイッチ6a~6cの第1の端子とそれぞれ電気的に接続される。ただし、スイッチ6a~6cはいずれもオフ状態であるため、端子9a~9cと電力線24(すなわち、GND)とは電気的に遮断されている。
【0051】
次に、
図5に示すように、スイッチ1の接点1aをオン(すなわち、接点1bをオフ)とする。接点1aがオンされると、図中に矢印で示すように、直流電源2から電力線21に供給される電圧が、スイッチ1および抵抗3を介して金属板4に印加される。これにより、金属板4には正電荷が蓄えられる。なお、
図5の例では金属板4は正電荷を蓄えているが、負電荷を蓄える構成とすることにより実装基板8が負に帯電した状態を再現した試験を行なうことができる。
【0052】
なお、抵抗3は、金属板4に電圧を印加するときの突入電流を制限するために設けられている。抵抗3は数MΩの抵抗値を有する。抵抗3を設置することによって、直流電源2の電流容量を小さくすることができ、結果的に直流電源2の小型化が可能となる。
【0053】
絶縁体5を挟んで金属板4に対向している導体パターン8aは、静電気耐圧試験装置100の初期状態において電気的に中性であるため、正電荷と負電荷とが等量存在している。接点1aがオンされて金属板4に電圧が印加されると、導体パターン8aでは、電荷が流れ出す経路がないため、
図5に示すように分極が発生する。なお、分極は発生するが、導体パターン8aに存在する正電荷と負電荷とは等量のままである。分極によって導体パターン8aの電荷12がGNDに対して電気力線を発生させるため、導体パターン8aがGNDに対して電位を持つことになる。
【0054】
(2-2)導体パターン8aの電荷を放電する工程
次に、導体パターン8aに蓄えられた電荷を放電する工程が行なわれる。本工程では、導体パターン8aに蓄えられた電荷12を、半導体デバイス10を介してGNDに放電させることにより、CBEによる静電気放電を再現する。
図6は、導体パターン8aの電荷12を放電させる工程を説明するための図である。
【0055】
本工程では、スイッチ1の接点1aをオン状態に保ちながら、スイッチ回路6のスイッチ6a~6cの少なくとも1つをオンする。
図6の例では、スイッチ6a~6cを同時にオンしている。スイッチ6aをオンすることにより、端子9a、プローブ11a、スイッチ6aおよび電力線24を介して、半導体デバイス10のピン10aがGNDと電気的に接続される。半導体デバイス10のピン10b,10cも同様に、スイッチ6b,6cをオンすることにより、GNDと電気的に接続される。
【0056】
半導体デバイス10の複数のピン10a~10cが同時にGNDと電気的に接続されることによって、
図6中に矢印で示すように、導体パターン8aとGNDとの間には、半導体デバイス10を経由する電気経路が形成される。この電気経路は、ピン10a~10cからGNDに至る区間で複数の電気経路に分岐される。導体パターン8aに蓄えられた電荷12は、半導体デバイス10に流れ込むと、これら複数の電気経路を通ってGNDに流れ込む。
【0057】
このようにスイッチ回路6を構成する複数のスイッチ6a~6cのうちの2以上のスイッチを同時にオンした場合には、半導体デバイス10のピンとGNDとの間に複数の電気経路が形成されるため、単一のスイッチのみをオンした場合と比較して、導体パターン8aの電荷12の放電経路全体のインピーダンスを低下させることができる。そして、このインピーダンスの低下によって、放電経路に流れる電流が増大することになる。ただし、半導体デバイス10のGNDピン10dは、単一の端子で電流を全て流すため、電流が許容値を超えて増大することによって静電気破壊が発生し得る。
【0058】
なお、放電経路全体のインピーダンスは、スイッチ回路6においてオンするスイッチの数を調整することにより、変更することが可能である。オンするスイッチの数を増やすに従い、放電経路全体のインピーダンスが小さくなる。その結果、放電経路を流れる電流が大きくなる。
図2に示したように、製造現場では、複数の端子9にコネクタ14を挿入するたびに各端子9の接触の仕方が変化する。そのため、端子9への接触の仕方が変化したときの静電気耐圧を測定する必要がある。
【0059】
実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置100によれば、静電気放電の経路をスイッチ回路6により制御するため、複数の端子9a~9cのうちの選択した端子9において静電気放電を発生させることができる。すなわち、スイッチ6a~6cと半導体デバイス10のピン10a~10cとが1対1で対応して接続されているため、選択した端子9のみで静電気放電を発生させることができる。これによると、複数の端子9a~9cにコネクタ14を挿入したときの各端子9の接触の仕方の変化を想定して静電気耐圧を測定することができる。
【0060】
なお、スイッチ回路6ではなく、例えばコネクタ14を使用して静電気耐圧試験を実施した場合には、周囲の環境(湿度など)、コネクタ14を挿入させる速度および挿入の角度、コネクタ14の汚染などの様々な影響を受ける場合がある。そのため、同じ測定条件で静電気耐圧試験を実施しても、再現性のある試験結果を得られないことが懸念される。一方、実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置100は、放電経路の形成にスイッチ回路6を用いるため、上述した周囲の環境などの影響が抑えられ、結果的に再現性の高い静電気耐圧試験を行なうことができる。
【0061】
(2-3)金属板4を除電する工程
静電気放電の終了時には、金属板4を除電する工程が行なわれる。
図7は、金属板4を除電する工程を説明するための図である。
【0062】
本工程では、
図7に示すように、スイッチ回路6のスイッチ6a~6cを全てオフすることにより、半導体デバイス10のピン10a~10cとGNDとを電気的に遮断する。次に、スイッチ1の接点1bをオン(すなわち、接点1aをオフ)とする。
【0063】
接点1bがオンすることにより、金属板4は、抵抗3、電力線23および電力線22を介してGNDと電気的に接続される。金属板4に蓄えられている電荷は、抵抗3、電力線23および電力線22を経由してGNDに流れ込む。金属板4を除電した後、端子9a~9cとの接触を解除するように、プローブ11a~11cを動作させる。これにより、静電気耐圧試験装置100は初期状態に戻る。
【0064】
(半導体デバイスの故障判定方法)
次に、実施の形態1に係る静電気耐圧試験における、半導体デバイス10の故障を判定する方法について説明する。
【0065】
半導体デバイス10の故障判定は、静電気放電の前後において実施される半導体デバイス10の電気的測定の結果に基づいて行なわれる。
図8は、半導体デバイス10の電気的特性を測定するための測定装置の構成例を示す図である。
【0066】
図8に示すように、半導体デバイス10の電気的特性を測定するための測定装置110は、測定器16と、演算器17と、複数のプローブ11a~11dとを有する。プローブ11には、例えばスプリングプローブを適用することができる。
【0067】
複数のプローブ11a~11dの第1の端子は、測定器16に接続される。複数のプローブ11a~11cの第2の端子は、半導体装置20の複数の端子9a~9cとそれぞれ接続される
。プローブ11dの第2の端子は、半導体装置20のGND端子9dと接続される。なお、
図8の例では、プローブ11の数を4としたが、プローブ11の数は複数であればよい。
【0068】
測定器16は、半導体デバイス10の電気的特性を測定するための部位であり、例えば電圧源または電流源を備えたカーブトレーサなどを有する。測定器16は、半導体デバイス10の端子間の電圧および半導体デバイス10に流れる電流を測定可能に構成される。
【0069】
プローブ11a~11dを図示しない駆動部を用いて動作させることにより、
図8に示すように、半導体装置20の端子9a~9dに対し、プローブ11a~11dをそれぞれ接触させる。プローブ11a~11dを接触させることにより、測定器16は、プローブ11a~11dおよび端子9a~9dを介して半導体デバイス10のピン10a~10dと電気的に接続される。
【0070】
演算器17は、測定器16に接続され、測定器16による半導体デバイス10の端子間電圧および電流の測定値を受け付ける。演算器17は、測定値に基づいて、半導体デバイス10が故障しているか否かを判定する。
【0071】
具体的には、静電気放電の実施前および実施後において、測定器16を用いて半導体デバイス10の電気的特性を測定し、実施前後の電気的特性の測定値を演算器17において比較する。半導体デバイス10が静電気放電によって故障した場合、半導体デバイス10の抵抗値が変化する。例えば半導体デバイス10がオープン故障した場合には、半導体デバイス10の抵抗値が増加し、電圧を印加しても電流が流れなくなる。一方、半導体デバイス10がショート故障した場合には、半導体デバイス10の抵抗値が低下し、電圧を印加すると電流が一気に流れる。そのため、静電気耐圧試験の実施前と実施後との間で半導体デバイス10の電気的特性の測定値に変化が確認されれば、半導体デバイス10が故障したと判断することができる。
【0072】
(静電気耐圧試験処理フロー)
図9は、実施の形態1に係る静電気耐圧試験方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0073】
図9に示すように、実施の形態1に係る静電気耐圧試験方法は、静電気放電の発生前の半導体デバイス10の電気的特性を測定する工程、静電気放電を発生させる工程および、静電気放電の発生後の半導体デバイス10の電気的特性を測定する工程を備える。
【0074】
静電気放電の発生前の半導体デバイス10の電気的特性を測定する工程では、
図8に示す測定装置110を用いて、半導体デバイス10の電気的特性(第1の電気的特性)を測定する。
【0075】
具体的には、最初に、ステップS01により、半導体装置20の端子9a~9dに測定器16を接続する。ステップS01では、端子9a~9dに対してプローブ11a~11dをそれぞれ接触させる。
【0076】
次に、ステップS02により、半導体デバイス10の電気的特性を測定する。ステップS02では、スイッチ回路6のスイッチ6a~6cの少なくとも1つおよびスイッチ6dをオンするとともに、測定器16から半導体デバイス10に電圧および/または電流を印加する。測定器16による半導体デバイス10の電気的特性の測定値は演算器17へ送出される。演算器17は、半導体デバイス10の電気的特性の測定値を、初期特性として記憶部に保存する。
【0077】
半導体デバイス10の電気的特性の測定が終了すると、ステップS03により、端子9a~9dとの接触を解除するように、プローブ11a~11dを動作させることにより、端子9a~9dから測定器16を取り外す。
【0078】
次に、静電気放電を発生させる工程では、
図3に示す静電気耐圧試験装置100を用いて、半導体デバイス10にCBE(基板帯電イベント)による静電気放電を発生させる。
【0079】
具体的には、最初に、ステップS04により、初期状態に設定された静電気耐圧試験装置100に対して、試験対象となる半導体装置20をセットする。ステップS04では、絶縁体5上に実装基板8をセットする。なお、静電気耐圧試験装置100は初期状態であるため、スイッチ1の接点1bがオンされている。
【0080】
次に、ステップS05により、プローブ11a~11cを動作させることにより、
図5に示すように、半導体装置20の端子9a~9cに対し、プローブ11a~11cをそれぞれ接触させる。これにより、端子9a~9cはスイッチ回路6のスイッチ6a~6cとそれぞれ電気的に接続される。ただし、スイッチ6a~6cはいずれもオフ状態であるため、端子9a~9cと電力線24(すなわち、GND)とは電気的に遮断されている。
【0081】
次に、ステップS06により、直流電源2から電力線21に供給される電圧を設定する。この電圧は金属板4に印加される電圧となる。
【0082】
直流電源2からの印加電圧が設定されると、ステップS07により、スイッチ1の接点1aをオン(すなわち、接点1bをオフ)とする。接点1aがオンされると、直流電源2から電力線21に供給される電圧が、スイッチ1および抵抗3を介して金属板4に印加される。その結果、
図5に示すように、金属板4には正電荷が蓄えられ、導体パターン8aが帯電する。
【0083】
次に、ステップS08に進み、スイッチ1の接点1aをオン状態に保ちながら、スイッチ回路6のスイッチ6a~6cのうちの少なくとも1つのスイッチをオンする。このとき、2以上のスイッチを同時にオンすることにより、半導体デバイス10のピン10a~10cのうちの2以上のピンが同時にGNDと電気的に接続されるため、導体パターン8aとGNDとの間に半導体デバイス10を経由する複数の電気経路が形成される。導体パターン8aに蓄えられた電荷12は、半導体デバイス10に流れ込むと、これら複数の電気経路を通ってGNDに流れ込む。
【0084】
次に、ステップS09により、スイッチ回路6のスイッチ6a~6cを全てオフすることにより、半導体デバイス10のピン10a~10cとGNDとを電気的に遮断する。さらに、スイッチ1の接点1bをオン(すなわち、接点1aをオフ)とする。接点1bがオンすることにより、金属板4に蓄えられている電荷は、抵抗3、電力線23および電力線22を経由してGNDに流れ込む。
【0085】
金属板4を除電した後、ステップS10により、端子9a~9cとの接触を解除するように、プローブ11a~11cを動作させることにより、端子9a~9cからスイッチ回路6を取り外す。
【0086】
次に、静電気放電の発生後の半導体デバイス10の電気的特性を測定する工程では、再び
図8に示す測定装置110を用いて半導体デバイス10の電気的特性(第2の電気的特性)を測定する。
【0087】
具体的には、最初に、ステップS11にて、半導体装置20の端子9a~9dに測定器16を接続する。ステップS11では、端子9a~9dに対してプローブ11a~11dをそれぞれ接触させる。
【0088】
次に、ステップS12により、半導体デバイス10の電気的特性を測定する。ステップS12の処理はステップS02の処理と同じである。すなわち、スイッチ回路6のスイッチ6a~6cの少なくとも1つおよびスイッチ6dをオンするとともに、測定器16から半導体デバイス10に電圧および/または電流を印加する。
【0089】
演算器17は、測定器16から半導体デバイス10の電気的特性の測定値を取得すると、ステップS13に進み、ステップS12にて取得された電気的特性(第2の電気的特性)の測定値と、ステップS02にて取得された初期特性(第1の電気的特性)とを比較することにより、半導体デバイス10が故障しているか否かを判定する。
【0090】
半導体デバイス10が故障していると判定された場合(S13のYES判定時)、静電気耐圧試験を終了する。一方、半導体デバイス10が故障していない(すなわち、正常)と判定された場合(S13のNO判定時)には、ステップS14に進み、演算器17は、直流電源2からの印加電圧をさらに増加することが可能か否かを判定する。ステップS14では、現在の印加電圧が、直流電源2が出力可能な電圧範囲の上限値に達している場合、印加電圧を増加できないと判定する。印加電圧を増加できない場合(S14のNO判定時)、静電気耐圧試験を終了する。
【0091】
一方、現在の印加電圧が当該上限値に達していなければ(S14のYES判定時)、演算器17は印加電圧を増加可能と判定し、ステップS04に戻り、再び静電気放電を発生させる工程を実行する。本工程では、ステップS06により、印加電圧を現在の電圧値よりも高い電圧値に変更する。そして、ステップS07~S10の処理を実行することにより、半導体デバイス10に静電気放電を発生させる。続いてステップS11~S14の処理を実行することにより、半導体デバイス10の電気的特性を測定し、その測定値と初期特性との比較に基づいて半導体デバイス10の故障の有無を判定する。
【0092】
以上説明したように、実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置および静電気耐圧試験方法によれば、半導体装置20の実装基板8に設けられた複数の端子9で同時に静電気放電を発生させることができるため、複数の端子9にコネクタを挿入するときのように、複数の端子9に同時に金属が接触することにより静電気放電が発生する工程での静電気耐圧を測定することができる。これによると、実装基板8上の半導体デバイス10の静電気耐圧を正確に測定することができる。
【0093】
また、実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置および静電気耐圧試験方法によれば、静電気放電の発生経路をスイッチ回路6によって制御するため、複数の端子9の中から選択した端子9において静電気放電を発生させることができる。これによると、複数の端子9にコネクタを挿入したときの各端子9の接触の仕方の変化を想定して静電気耐圧を測定することができる。
【0094】
さらに、スイッチ回路6における複数のスイッチ6a~6cのオンオフによって静電気放電を発生させるため、周囲の環境の影響を抑制でき、結果的に再現性の高い静電気耐圧試験を実現することができる。
【0095】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、静電気耐圧試験装置100と測定装置110とが別体である構成例について説明したが、静電気耐圧試験装置および測定装置を一体化する構成とすることもできる。この構成では、スイッチを用いて静電気耐圧試験装置および測定装置を選択的に駆動することができる。
【0096】
(静電気耐圧試験装置の構成例)
図10は、実施の形態2に係る静電気耐圧試験装置の構成例を概略的に示す図である。
【0097】
図10に示すように、実施の形態2に係る静電気耐圧試験装置100Aは、
図3に示す実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置100に対して測定器16、演算器17おびスイッチ18を付加するとともに、スイッチ回路6および制御部7をそれぞれ、スイッチ回路6Aおよび制御部7Aに置き換えたものである。静電気耐圧試験装置100Aにおいて測定器16および演算器17は、
図8に示す測定装置110における測定器16および演算器17とそれぞれ同じものであるため、説明は省略する。
【0098】
スイッチ18は、電力線25,26と電力線24との間に接続される。スイッチ18には半導体スイッチまたは機械式スイッチを適用することができる。スイッチ18は「第3のスイッチ」の一実施例に対応する。
【0099】
スイッチ18は、制御部7Aからの制御信号に従って、電力線25を、電力線24および電力線26のいずれか一方に電気的に接続可能に構成されている。一例として、スイッチ18は、3つの接点18a~18cを有する。接点18a,18bは固定接点であり、接点18cは接点18a,18bと選択的に接続する可動接点である。接点18aは電力線25の第1の端子に接続され、接点18aは電力線24の第1の端子に接続され、接点18bは電力線26の第1の端子に接続される。電力線25の第2の端子は、スイッチ回路6Aのスイッチ6a~6cの第1の端子に接続される。電力線26の第2の端子は、測定器16に接続される。
【0100】
スイッチ回路6Aは、半導体装置20の端子9と、電力線25および測定器16との間に接続される。スイッチ回路6Aは、
図3に示すスイッチ回路6にスイッチ6dを追加したものである。スイッチ6dは、GND端子9dおよび測定器16の間に接続される。スイッチ6dには、半導体スイッチまたは機械式スイッチを適用することができる。スイッチ6dは、制御部7Aからの制御信号に従ってオン/オフすることにより、GND端子9dと測定器16との電気的に接続/遮断するように構成される。
【0101】
スイッチ18の接点18cを接点18aに接続することにより、電力線25および電力線24が電気的に接続されるため、
図3に示す静電気耐圧試験装置100を形成することができる。一方、スイッチ18の接点18cを接点18bに接続することにより、電力線25および電力線26が電気的に接続されるため、スイッチ6a~6cを介して半導体装置20の端子9a~9cが測定器16に接続される。これにより、
図8に示す測定装置110を形成することができる。すなわち、静電気耐圧試験装置100Aは、静電気耐圧試験装置100と測定装置110とを切り替え可能に構成されている。
【0102】
以下の説明では、接点18cを接点18aに接続することを「接点18aをオンする」とも称し、接点18cを接点18bに接続することを「接点18bをオンする」とも称する。なお、スイッチ18では、接点18aがオンのときに接点18bがオフされ、接点18bがオンのときに接点18aがオフされる。
【0103】
制御部7Aは、スイッチ1,18およびスイッチ回路6Aのオンオフを制御する。制御部7Aは、例えばマイクロコンピュータなどで構成することが可能である。具体的には、制御部7は、CPU71と、プログラムおよびデータを格納するメモリ72とを備えており、当該プログラムをCPU71が実行することによるソフトウェア処理によって、後述する制御動作を実行することができる。あるいは、当該制御動作の一部または全部について、ソフトウェア処理に代えて、内蔵された専用の電子回路などを用いたハードウェア処理によって実現することも可能である。
【0104】
制御部7Aは、制御部7と同様に、スイッチ回路6に含まれる複数のスイッチ6a~6cのオンオフを互いに独立して制御することができる。したがって、制御部7Aは、複数のスイッチ6a~6cのうちの少なくとも1つのスイッチをオンすることができる。
【0105】
(静電気耐圧試験方法)
次に、
図11から
図13を用いて、実施の形態2に係る静電気耐圧試験方法を説明する。
図11は、実施の形態2に係る静電気耐圧試験方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図11のフローチャートは、
図9に示すフローチャートと比較して、スイッチ18およびスイッチ回路6Aの制御が異なる。
【0106】
図11に示すように、実施の形態2に係る静電気耐圧試験方法は、静電気放電の発生前の半導体デバイス10の電気的特性を測定する工程、静電気放電を発生させる工程および、静電気放電の発生後の半導体デバイス10の電気的特性を測定する工程を備える。
【0107】
静電気放電の発生前の半導体デバイス10の電気的特性を測定する工程では、
図10に示す測定器16および演算器17を用いて、半導体デバイス10の電気的特性(第1の電気的特性)を測定する。
図12は、半導体デバイス10の電気的特性を測定する工程を説明するための図である。
【0108】
具体的には、最初に、ステップS21により、初期状態に設定された静電気耐圧試験装置100Aに対して、試験対象となる半導体装置20をセットする。初期状態では、スイッチ1の接点1bをオン(すなわち、接点1aをオフ)とする。
【0109】
次に、ステップS22により、半導体装置20の端子9a~9dに図示しないプローブを接触させることにより、端子9a~9dとスイッチ回路6Aのスイッチ6a~6dとそれぞれ電気的に接続する。ただし、スイッチ6a~6dはいずれもオフ状態であるため、端子9a~9cと電力線25とは電気的に遮断され、かつ、GND端子9dと測定器16とは電気的に遮断されている。
【0110】
ステップS23により、スイッチ18の接点18bをオン(すなわち、接点18aをオフ)とする。次に、ステップS24により、半導体デバイス10の電気的特性を測定する。ステップS24では、スイッチ回路6Aのスイッチ6a~6cの少なくとも1つおよびスイッチ6dをオンするとともに、測定器16から半導体デバイス10に電圧および/または電流を印加する。測定器16による半導体デバイス10の電気的特性の測定値は演算器17へ送出される。演算器17は、半導体デバイス10の電気的特性の測定値を、初期特性として記憶部に保存する。
【0111】
半導体デバイス10の電気的特性の測定が終了すると、ステップS25により、スイッチ回路6Aのスイッチ6a~6dをすべてオフとする。
【0112】
次に、静電気放電を発生させる工程では、半導体デバイス10にCBE(基板帯電イベント)による静電気放電を発生させる。
図13は、静電気放電を発生させる工程を説明するための図である。
【0113】
具体的には、最初にステップS26により、スイッチ18の接点18aをオン(すなわち、接点18bをオフ)とする。なお、スイッチ1の接点1bはオンのままである。
【0114】
次に、ステップS27により、直流電源2から電力線21に供給される電圧を設定する。この電圧は金属板4に印加される電圧となる。直流電源2からの印加電圧が設定されると、ステップS28により、スイッチ1の接点1aをオン(すなわち、接点1bをオフ)とする。接点1aがオンされると、直流電源2から電力線21に供給される電圧が、スイッチ1および抵抗3を介して金属板4に印加される。
【0115】
次に、ステップS29に進み、スイッチ1の接点1aをオン状態に保ちながら、スイッチ回路6Aのスイッチ6a~6cの少なくとも1つをオンする。なお、スイッチ6dはオフのままである。
図13の例では、スイッチ6a~6cを同時にオンしている。ステップS29では、複数のスイッチ6a~6cのうちの2以上のスイッチを同時にオンすることにより、半導体デバイス10のピン10a~10cのうちの2以上のピンが同時にGNDと電気的に接続されるため、導体パターン8aとGNDとの間に半導体デバイス10を経由する複数の電気経路が形成される。導体パターン8aに蓄えられた電荷12は、半導体デバイス10に流れ込むと、これら複数の電気経路を通ってGNDに流れ込む。
【0116】
次に、ステップS30により、スイッチ回路6Aのスイッチ6a~6cを全てオフすることにより、半導体デバイス10のピン10a~10cとGNDとを電気的に遮断する。さらに、スイッチ1の接点1bをオン(すなわち、接点1aをオフ)とする。接点1bがオンすることにより、金属板4に蓄えられている電荷は、抵抗3、電力線23および電力線22を経由してGNDに流れ込む。
【0117】
次に、静電気放電の発生後の半導体デバイス10の電気的特性を測定する工程では、再び
図10に示す測定器16および演算器17を用いて半導体デバイス10の電気的特性(第2の電気的特性)を測定する。
【0118】
具体的には、最初に、ステップS31により、スイッチ18の接点18bをオン(すなわち、接点18aをオフ)とし、スイッチ1の接点1bをオン(すなわち、接点1aをオフ)とする。なお、スイッチ回路6Aのスイッチ6a~6dはすべてオフとする。
【0119】
次に、ステップS32により、半導体デバイス10の電気的特性(第2の電気的特性)を測定する。ステップS32の処理はステップS24の処理と同じである。すなわち、スイッチ回路6Aのスイッチ6a~6cの少なくとも1つおよびスイッチ6dをオンするとともに、測定器16から半導体デバイス10に電圧および/または電流を印加する。
【0120】
演算器17は、測定器16から半導体デバイス10の電気的特性の測定値を取得すると、ステップS33に進み、ステップS32にて取得された電気的特性(第2の電気的特性)の測定値と、ステップS24にて取得された初期特性(第1の電気的特性)とを比較することにより、半導体デバイス10が故障しているか否かを判定する。
【0121】
半導体デバイス10が故障していると判定された場合(S33のYES判定時)、静電気耐圧試験を終了する。一方、半導体デバイス10が故障していないと判定された場合(S33のNO判定時)には、ステップS34に進み、演算器17は、直流電源2からの印加電圧をさらに増加することが可能か否かを判定する。印加電圧を増加できない場合(S34のNO判定時)、静電気耐圧試験を終了する。
【0122】
一方、印加電圧が増加可能である場合(S34のYES判定時)、ステップS26に戻り、再び静電気放電を発生させる工程を実行する。本工程では、ステップS27により、印加電圧を現在の電圧値よりも高い電圧値に変更する。そして、ステップS28~S30の処理を実行することにより、半導体デバイス10に静電気放電を発生させる。続いてステップS31~S34の処理を実行することにより、半導体デバイス10の電気的特性を測定し、その測定値と初期特性との比較に基づいて半導体デバイス10の故障の有無を判定する。
【0123】
以上説明したように、実施の形態2に係る静電気耐圧試験装置および静電気耐圧試験方法においても、スイッチ回路6Aのスイッチ6a~6cを制御することにより、半導体装置20の実装基板8に設けられた複数の端子9で同時に静電気放電を発生させることができるため、実施の形態1に係る静電気耐圧試験装置および静電気耐圧試験方法と同様の効果を得ることができる。
【0124】
なお、上述した実施の形態および変更例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0125】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
1,6a~6d,18 スイッチ、1a~1c,18a~18c 接点、2 直流電源、3 抵抗、4 金属板、5 絶縁体、6,6A スイッチ回路、7,7A 制御部、8 実装基板、8a 導体パターン、8b 絶縁層、9,9a~9d 端子、10 半導体デバイス、10a~10d ピン、10e 半導体素子、10f 封止樹脂、11,11a~11d プローブ、12 電荷、12a~12c 配線、13 筐体、14 コネクタ、15 機器、16 測定器、17 演算器、20 半導体装置、21~26 電力線、71 CPU、72 メモリ、100,100A 静電気耐圧試験装置、110 測定装置。