(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】ブロー成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/56 20060101AFI20231208BHJP
B29C 49/42 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B29C49/56
B29C49/42
(21)【出願番号】P 2022543986
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2021030353
(87)【国際公開番号】W WO2022039218
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2020139119
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】堀篭 浩
(72)【発明者】
【氏名】竹花 大三郎
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-234824(JP,A)
【文献】米国特許第06544026(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第01533103(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形装置であって、
前記プリフォームを収容する一対のブロー割型を開閉可能に支持する一対の型締板と、
前記一対の型締板を開閉方向に駆動させ、型閉時に前記型締板に型締力を加える直動機構と、
前記ブロー割型の型閉位置で前記型締板の下端側と干渉し、前記型締板の型開方向への動きを規制するロック部材と、を備え
、
前記直動機構は、前記型締板の高さ方向の中心よりも上側で、かつ前記ブロー割型の下側の型開き量と上側の型開き量が均衡する位置よりも上側の位置で前記型締板に型締力を加える
ブロー成形装置。
【請求項2】
有底筒状のプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形装置であって、
前記プリフォームを収容する一対のブロー割型を開閉可能に支持する一対の型締板と、
前記一対の型締板を開閉方向に駆動させ、型閉時に前記型締板に型締力を加える直動機構と、
前記ブロー割型の型閉位置で前記型締板の下端側と干渉し、前記型締板の型開方向への動きを規制するロック部材と、を備え、
前記直動機構は、前記型締板の高さ方向の中心よりも上側の位置で、かつ前記ブロー割型の上側の型開き量が閾値以下となる位置で前記型締板に型締力を加える
ブロー成形装置。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記型締板の下側に配置され、上下方向に進退可能である
請求項1
または請求項2に記載のブロー成形装置。
【請求項4】
前記ロック部材は、前記ロック部材の上方向への動き
を型閉方向の力に変換する傾斜面を有する
請求項3に記載のブロー成形装置。
【請求項5】
前記プリフォームは、前記ブロー割型に上側から収容される
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のブロー成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂製容器の製造方法の1つとして、延伸ブロー成形法が知られている。延伸ブロー成形法では、容器形状に対応する割型(ブロー型)内に配置したプリフォームを容器の縦方向に延伸しつつ、プリフォームに吹き込んだ気体の圧力でプリフォームを横方向に膨張させて容器の形状に賦形する。
【0003】
上記の延伸ブロー成形法では、製造される容器の美的外観や寸法精度を向上させるために、ブロー成形時には気体の圧力に抗してブロー割型の型締状態を継続的に維持することが求められる。
【0004】
ブロー成形装置では、ブロー割型を固定した型締板を油圧ピストンで押圧することでブロー割型に型締力が負荷される。型締板に対する油圧ピストンの位置は固定されているが、型締板に固定されるブロー割型やブロー割型内の成形空間は、製造する容器の仕様に応じて種々変化する。つまり、型締板に対する(型締板に投影される)容器の位置や寸法は容器ごとに大きく変動しうる。そのため、型締板において油圧ピストンによる型締力の作用点とブローエアによる型開力の作用点の位置が大きくずれると、型締板が撓んでブロー割型の上下端が型開きしやすくなってしまう。
【0005】
上記の対策として、例えば、型締板の板厚を大きくして剛性を向上させることや、複数の油圧シリンダを設けることが考えられる。しかし、上記の対策を講じると、ブロー成形装置のコストが大幅に増加してしまい好ましくない。また、型締板に対する油圧シリンダの位置を都度調整する構成とすると、その調整作業が非常に煩雑となる。
【0006】
また、特許文献1には、ブロー割型の開閉方向と直交方向に開閉し、型閉じされたブロー割型の側面を外側から挟み込んで拘束する型開き防止機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の型開き防止機構は、ブロー割型の側方に型開き防止機構の駆動装置が配置されるので、装置構成も大型化してしまう。しかも、特許文献1の型開き防止機構はブロー割型に固定する構造であるため、ブロー割型を交換する毎に脱着作業が必要となる。
【0009】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、省スペースかつ比較的安価な構成で、煩雑な調整作業を要さずに多様なブロー割型の型開きを抑制できるブロー成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様であるブロー成形装置は、有底筒状のプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造する。ブロー成形装置は、プリフォームを収容する一対のブロー割型を開閉可能に支持する一対の型締板と、一対の型締板を開閉方向に駆動させ、型閉時に型締板に型締力を加える直動機構と、ブロー割型の型閉位置で型締板の下端側と干渉し、型締板の型開方向への動きを規制するロック部材と、を備える。直動機構は、型締板の高さ方向の中心よりも上側で、かつブロー割型の下側の型開き量と上側の型開き量が均衡する位置よりも上側の位置で型締板に型締力を加える。
また、本発明の他の態様であるブロー成形装置は、有底筒状のプリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造する。ブロー成形装置は、プリフォームを収容する一対のブロー割型を開閉可能に支持する一対の型締板と、一対の型締板を開閉方向に駆動させ、型閉時に型締板に型締力を加える直動機構と、ブロー割型の型閉位置で型締板の下端側と干渉し、型締板の型開方向への動きを規制するロック部材と、を備える。直動機構は、型締板の高さ方向の中心よりも上側の位置で、かつブロー割型の上側の型開き量が閾値以下となる位置で型締板に型締力を加える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、省スペースかつ比較的安価な構成で、煩雑な調整作業を要さずに多様なブロー割型の型開きを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】型開状態のブロー成形部の構成例を示す正面図である。
【
図3】型閉状態のブロー成形部の構成例を示す正面図である。
【
図4】(a)は非ロック状態のロック部を示す側面図であり、(b)はロック状態のロック部を示す側面図である。
【
図5】ロック状態におけるロック部の拡大図である。
【
図6】容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図7】ブローキャビティ割型における型開き量とピストン高さのシミュレーションの一例を示すグラフである。
【
図8】(A)~(C)はブロー成形装置の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0014】
図1は、本実施形態のブロー成形装置20の構成を模式的に示す図である。本実施形態のブロー成形装置20は、プリフォーム11を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して容器をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0015】
図1に示すブロー成形装置20は、射出成形部21と、温度調整部22と、ブロー成形部23と、取り出し部24と、搬送機構26とを備える。射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23および取り出し部24は、搬送機構26を中心として所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0016】
(搬送機構26)
搬送機構26は、
図1の紙面垂直方向の軸を中心に回転する回転板(不図示)を備える。回転板には、プリフォームまたは樹脂製容器(以下、単に容器と称する)の首部を保持するネック型(
図1では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構26は、回転板を回転させることで、ネック型で首部が保持されたプリフォーム(または容器)を、射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23、取り出し部24の順に搬送する。なお、搬送機構26は、回転板を昇降させることもでき、射出成形部21におけるプリフォームの型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0017】
(射出成形部21)
射出成形部21は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、プリフォームを製造する。射出成形部21には、プリフォーム11の原材料である樹脂材料を供給する射出装置25が接続されている。
【0018】
射出成形部21においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構26のネック型とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置25から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部21でプリフォームが製造される。
ここで、プリフォームの全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォームの開口側の端部には、首部が形成されている。
【0019】
また、容器およびプリフォームの材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器の用途に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0020】
なお、射出成形部21の型開きをしたときにも、搬送機構26のネック型は開放されずにそのままプリフォームを保持して搬送する。射出成形部21で同時に成形されるプリフォームの数(すなわち、ブロー成形装置20で同時に成形できる容器の数)は、適宜設定できる。
【0021】
(温度調整部22)
温度調整部22は、プリフォームを収容可能なキャビティ型(温調ポットや加熱ポット)を含む、温度調整用の金型ユニットを有する。
温度調整部22は、射出成形部21で製造されたプリフォームの均温化や偏温除去を行い、プリフォームの温度をブロー成形に適した温度(例えば約90℃~105℃)かつ賦形される容器形状に適した温度分布を備えるように調整する。また、温度調整部22は、射出成形後の高温状態のプリフォームを冷却する機能も担う。
【0022】
(ブロー成形部23)
ブロー成形部23は、温度調整部22で温度調整されたプリフォームに対して延伸ブロー成形を行い、容器を製造する。
【0023】
図2は、型開状態のブロー成形部23の構成例を示す正面図であり、
図3は、型閉状態のブロー成形部23の構成例を示す正面図である。
【0024】
ブロー成形部23は、ブローキャビティ割型31と、型締板32と、直動機構33と、ロック部34とをそれぞれ一対ずつ備える。ブローキャビティ割型31、型締板32、直動機構33は、機台30の上に設置され、ロック部34は機台30の下側に設置されている。
【0025】
なお、ブロー成形部23は、いずれも図示を省略するが、延伸ロッドを有する縦軸延伸部材と、ブローコアを有するエア導入部材と、底型とをさらに備えている。エア導入部材は、ブローキャビティ割型31の型閉位置の上側に配置され、プリフォーム内に挿入される(またはエア導入部材はプリフォーム上面と当接する)。底型は、容器の底面形状を規定する金型であって、ブローキャビティ割型31の型閉位置の下側に昇降可能に配置される。
【0026】
一対のブローキャビティ割型31は、容器の形状を規定する成形空間(キャビティ)を備えた型材である。ブローキャビティ割型31は、
図2、
図3の上下方向(Z方向)に沿ったパーティング面31aで分割され、
図2、
図3の左右方向(Y方向)に開閉可能に構成される。ブローキャビティ割型31は、
図3の型閉状態において、プリフォーム(不図示)を所定形状にブロー成形するためのブローキャビティを形成する。
【0027】
一対の型締板32は、ブローキャビティ割型31を隔てて互いの第1面32aが対向するように配置される。型締板32の第1面32aには、それぞれブローキャビティ割型31の背面31b(パーティング面31aと反対側の面)が固定される。なお、型締板32に固定されるブローキャビティ割型31は、製造する容器に応じて交換可能である。
【0028】
型締板32の下側(好ましくは下端)には、ブローキャビティ割型31の背面側を下側から保持するとともに、Y方向に沿って機台30の上面を摺動または転動する移動部35が取り付けられている。なお、移動部35は、含油鋼材やリニアガイド、ローラー等で構成される。
【0029】
また、型締板32において、第1面32aとは反対側の第2面32bには直動機構33の後述する直動部33a(例えばピストン)が接続されている。これにより、直動機構33からの駆動力は型締板32を介してブローキャビティ割型31に伝達される。
【0030】
直動機構33は、直動部33aと駆動部33bを有し、駆動部33bの動力により直動部33aを進退させるアクチュエータである。直動機構33は、例えば、ピストンおよびシリンダを有する油圧アクチュエータまたは空圧アクチュエータ、あるいは、リンク機構(またはボールねじ機構)および電動モータを有する電動アクチュエータとして構成されてもよい。なお、図示の直動機構33は、直動部33aとしてのピストン、駆動部33bとしてのシリンダを有する油圧アクチュエータである。
【0031】
直動機構33の本体部33cは機台30の上に固定され、直動部33aおよび駆動部33bをZ方向の所定高さに固定する。直動機構33は、駆動部33bの制御により直動部33aをY方向に直線運動させて、型締板32をY方向に駆動させる。直動機構33は、
図3の型閉状態においては、ブローキャビティ割型31を型閉方向に加圧することで型締めを行う。直動機構33による型締力は、ブロー圧力に対して型開きを防止できる程度の大きさに設定される。
【0032】
ここで、
図4に示すように、型締板32における直動部33aの高さ方向(Z方向)の取付位置は、型締板32の第2面32b(XZ平面)の中心位置Sよりも上側に設定される(
図4参照)。通常、ブロー成形装置20は、汎用性を考慮しつつも成形用途(成形される容器の寸法や種類)毎に機械仕様が最適化された複数の機種(ラインナップ)が設けられる。そして、従来は、機種毎に型締板32と直動部33aの位置関係が異なるように(使い分けて)設計していた。例えば、小型容器が多く成形される機種では型締板32における直動部33aの取付位置を上側に、大型容器が多く成形される機種では型締板32における直動部33aの取付位置を中央付近に、各々設けていた。しかし、本発明では、後述するロック部34を設けることで、成形用途に関わらず、例えば、大型容器の成形に対応する機種においても、型締板32における直動部33aの取付位置を中心位置Sよりも上側とすることが可能となる。
【0033】
好ましくは、直動部33aの高さ方向の取付位置は、ブローキャビティ割型31の下側の型開き量と上側の型開き量が均衡する位置(後述する
図7のP1)よりも上側に設定される。また、好ましくは、直動部33aの高さ方向の取付位置は、ブローキャビティ割型31の上側の型開き量が閾値(後述する
図7のTh)以下となる位置に設定されてもよい。型開き量の閾値は容器の仕様によって決定され、特に限定するものではないが、例えば、0.15mm以下、好ましくは0.1mm以下に設定される。
【0034】
上記のように、直動部33aを型締板32の上側に寄せて配置することで、直動部33aからの型締力がブローキャビティ割型31の上側で強く作用する。これにより、本実施形態ではブローキャビティ割型31の上側での型開きを効果的に抑制することができる。
【0035】
次に、一対のロック部34について説明する。
図4(a)は、非ロック状態のロック部34を示す側面図であり、
図4(b)は、ロック状態のロック部34を示す側面図である。また、
図5は、ロック状態におけるロック部34の拡大図である。
【0036】
一対のロック部34は、Y方向において型閉状態の型締板32と対応する位置にそれぞれ配置されている。一対のロック部34は、型閉状態の一対の型締板32をそれぞれ外側から保持する機能を担う。なお、一対のロック部34の構成はいずれも同様であるため、以下の説明では一方の構成を説明し、他方の重複説明は省略する。
【0037】
ロック部34は、ロックバー41と、支持体42と、エアシリンダや油圧シリンダ、電動モータ等の駆動部材43と、固定部材(連結部材、スペーサ部材)45と、を有する。
【0038】
ロックバー41は、Z方向に延長するストッパー部材であって、Z方向に進退可能に機台30に挿通されている。1つのロック部34において、ロックバー41はX方向に間隔を空けて少なくとも1つ以上、好ましくは2つ以上配置され、それぞれのロックバー41の下端側は支持体42に固定されている。なお、ロックバー41はロック部材の一例である。
【0039】
図4(a)に示す非ロック状態では、ロックバー41は機台30の上面よりも下側に退避する。非ロック状態ではロックバー41は移動部35(または型締板32の下端)と干渉せず、型締板32はY方向に移動可能である。一方、
図4(b)、
図5に示すロック状態では、ロックバー41は機台30の上面よりも上側に突出する。これにより、ロック状態のロックバー41は移動部35(または型締板32の下端)と当接し、これにより型締板32の型開方向の移動はロックバー41によって規制される。
【0040】
また、
図5に示すように、ロックバー41の上端部には、上側に向けて幅が狭まるように傾斜したくさび状の傾斜面41aが形成されている。ロックバー41の傾斜面41aは、ロック状態のときに移動部35(または型締板32の下端)に臨む内向きの位置に形成されている。そのため、ロックバー41を上側に移動させると、ロックバー41の傾斜面41aに押圧されて移動部35(または型締板32の下端)には上側および型閉方向への反力が生じる。これにより、移動部35(または型締板32の下端)を介して型締板32およびブローキャビティ割型31の下端側はより強く固定される。
【0041】
ロックバー41の傾斜面41aの角度、およびロック状態時に傾斜面41aと当接する移動部または型締板32の下端の傾斜面の角度(テーパー角)は、上側への反力より型開閉方向の反力(水平方向の働く力)を大きくするために、例えば、5°~10°に設定されてもよい。また、ブローキャビティ割型31の停止位置のずれやブローキャビティ割型31の熱膨張が発生したときの緩衝のために、ロックバー41や移動部35または型締板32の下端に傾斜面を設け、ブロー成形部23での融通性を高めてもよい。
【0042】
支持体42は、
図4(a)、(b)に示すように、X方向に延長し、少なくとも1本以上、例えば2本のロックバー41の下端を受ける部材(すなわち、ロックバー41の下端と連結される部材)である。また、支持体42において2本のロックバー41の間には、駆動部材43の駆動ロッド44の先端が接続されている。
【0043】
駆動部材43は、固定部材45を介して機台30の下側に取り付けられている。駆動部材43は、上向きに配置されてZ方向に延びる駆動ロッド44を進退させる。これにより、駆動ロッド44に接続された支持体42を介してロックバー41をZ方向に進退させることができる。
【0044】
固定部材45は駆動部材43を機台30の下方に固定(連結)するための部材である。固定部材45は、例えば、機台30の下面に固定されて垂下する複数のロッド状部材と、複数のロッド状部材の下端(末端)に固定される板状部材とで構成される。板状部材の下面側に駆動部材43が固定される。また、固定部材45は、駆動部材43と機台30の下面との間に、駆動ロッド44のストロークの空間を設けるためにも配置される。例えば、固定部材45のZ方向の寸法は、駆動ロッド44のストロークと支持体42のZ方向の寸法の和に基づいて決定される。
【0045】
(取り出し部24)
図1に戻って、取り出し部24は、ブロー成形部23で製造された容器の首部をネック型から開放し、容器をブロー成形装置20の外部へ取り出すように構成されている。
【0046】
(ブロー成形方法の説明)
次に、本実施形態のブロー成形装置20によるブロー成形方法について説明する。
図6は、ブロー成形方法の工程を示すフローチャートの一例である。
【0047】
(ステップS101:射出成形工程)
まず、射出成形部21において、射出キャビティ型、射出コア型および搬送機構26のネック型で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置25から樹脂を射出し、プリフォームが製造される。
その後、搬送機構26の回転板が所定角度回転し、ネック型に保持されたプリフォームが射出成形時の保有熱を含んだ状態で温度調整部22に搬送される。
【0048】
(ステップS102:温度調整工程)
続いて、温度調整部22において、温度調整用の金型ユニットにプリフォームが収容され、プリフォームの温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。具体的には、温度調整部22において、高熱のプリフォームの冷却と、温度分布の調整(均温化や偏温除去等)が行われる。その後、搬送機構26の回転板が所定角度回転し、ネック型に保持された温度調整後のプリフォームが、ブロー成形部23に搬送される。
【0049】
(ステップS103:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部23において、容器のブロー成形が行われる。
まず、直動機構33の直動部33aを駆動させて型締板32を移動させることでブローキャビティ割型31が型閉じし、搬送されたプリフォームは型空間に収容される。ブローキャビティ割型31が型閉じされた後に、直動部33aを所定の圧力まで昇圧してブローキャビティ割型31を型締めし、ロック部34の駆動部材43を動作させてロックバー41を上昇させる。これにより、ロック部34がロック状態となり、型締板32およびブローキャビティ割型31の型開方向の移動はロックバー41によって規制される。
【0050】
その後、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォームの首部にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッド(縦軸延伸部材)を降下させてプリフォームの底部を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォームを横軸延伸する。これにより、プリフォームは、ブローキャビティ割型31の型空間に密着するように膨張して賦形され、容器にブロー成形される。なお、底型は、ブローキャビティ割型31の型閉前はプリフォームの底部と接触しない下方の位置で待機させ、型閉前または型閉後に成形位置まで素早く上昇させる。
【0051】
上記のブロー成形の際には、直動機構33は、型締板32を介してブローキャビティ割型31を型閉方向に加圧することで型締めを行う。直動機構33の直動部33aは型締板32の上側に寄せて配置されているので、ブローキャビティ割型31の上側には直動部33aからの型締力が強く作用する。そのため、ブローキャビティ割型31の上側は直動部33aからの型締力で型閉状態が維持され、ブローエアの圧力による型開きが抑制される。
【0052】
また、上記のブロー成形の際には、型締板32の下端側はロック部34のロックバー41と干渉し、型開方向の動きが規制される。そのため、ブローキャビティ割型31の下側にブローエアの圧力による型開方向の力が作用しても、ロック部34からの反力によって型閉状態が維持される。これにより、ブローキャビティ割型31の下側においても、ブローエアの圧力による型開きが抑制される。
【0053】
(ステップS104:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ロック部34の駆動部材43を動作させてロックバー41を下降させることでロック部34が非ロック状態となり、型締板32およびブローキャビティ割型31が移動可能となる。その後、直動機構33の直動部33aを駆動させて型締板32を移動させることでブローキャビティ割型31が型開きされる。これにより、ブロー成形部23から容器が移動可能となる。
続いて、搬送機構26の回転板が所定角度回転し、容器が取り出し部24に搬送される。取り出し部24において、容器の首部がネック型から開放され、容器がブロー成形装置20の外部へ取り出される。
【0054】
以上で、容器の製造方法における1つの成形サイクルが終了する。その後、搬送機構26の回転板を所定角度回転させることで、上記のS101からS104の各工程が繰り返される。なお、ブロー成形装置20の運転時には、1工程ずつの時間差を有する4組分の容器の製造が並列に実行される。
【0055】
また、ブロー成形装置20の構造上、射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の各時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0056】
以下、本実施形態のブロー成形装置20の効果を説明する。
本実施形態のブロー成形部23は、ブローキャビティ割型31の型閉位置で型締板32の下端側と干渉し、型締板32の型開方向への動きを規制するロック部34を有する。これにより、型締時の型締板32は高さ方向において直動機構33の直動部33aとロック部34の上下2か所で支持されるので、ブロー成形時の上側の型開きと下側の型開きをいずれも抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、ブロー成形時の上側の型開きと下側の型開きを抑制するために型締板32の板厚の増加や直動機構(油圧シリンダなど)の増加をしなくて済む。したがって、ブロー成形装置20の製造コストを抑制できる。
【0058】
また、本実施形態のロック部34は、型閉位置が同じであれば異なるブローキャビティ割型31に交換されてもそのまま使用できる。したがって、本実施形態によれば、煩雑な調整作業を要さずに多様なブローキャビティ割型31の型開きを抑制できる。
【0059】
また、本実施形態のロック部34は、型締板32の下側に配置されるため、型締板32や直動機構33が載置される機台30に取り付けることができ、ロック部34のロックバー41を進退させるスペースの確保も容易である。例えば、型締板32の側方にロック機構を配置するとロック機構のスペース分だけ装置の面積が大きくなり、型締板32の上方にロック機構を配置するとプリフォームの搬送機構等との干渉を避ける必要が生じてしまう。そのため、本実施形態のように、ロック部34を型締板32の下側に配置することで、装置の省スペース化を実現できる。
【0060】
本実施形態では、ブローキャビティ割型31の下側の型開きをロック部34で抑制するので、直動機構33の直動部33aによって下側の型開きを抑制しなくても済む。つまり、直動機構33の直動部33aの位置を設定する際に、下側の型開き量は考慮せずに上側の型開き量を考慮すれば足りる。
【0061】
図7は、ブローキャビティ割型31における型開き量とピストン高さ(直動部33aの高さ)のシミュレーションの一例を示すグラフである。
【0062】
図7の縦軸は、ブローキャビティ割型31の型開き量であり、
図7の横軸は、型締板32における直動部33aの高さである。
図7の横軸では、直動部33aが標準位置(例えば中心位置)に取り付けられている状態をゼロとし、標準位置よりも型締板32の上側に移動するほど値が大きくなるものとする。また、曲線C1は、型締板32の上方位置にブローキャビティ割型31の成形空間が集中する容器(例えば小型容器)をブロー成形した場合の、ブローキャビティ割型31の上側の型開きを示す。曲線C2は、型締板32のより下方位置までブローキャビティ割型31の成形空間が延在する容器(例えば中~大型容器)をブロー成形した場合の、ブローキャビティ割型31の下側の型開きを示す。
【0063】
曲線C1に示すように、型締板32の上方位置に成形空間が存在する場合、ブローキャビティ割型31の上側の型開きは、直動部33aの位置が型締板32の上側になるほど小さくなる。一方で、曲線C2に示すように、型締板32のより下方位置まで成形空間が延在する場合、ブローキャビティ割型31の下側の型開きは、直動部33aの位置が型締板32の上側になるほど大きくなる。直動部33aからの型締力で上側の型開きと下側の型開きを同時に最小化しようとする場合、直動部33aの位置は、曲線C1、C2が交差して下側の型開き量と上側の型開き量が均衡するP1に設定される。ただし、直動部33aの位置をP1に設定した場合、上側の型開き量と下側の型開き量はいずれも閾値Thよりも高い値となる。
【0064】
本実施形態の構成では、ブローキャビティ割型31の下側の型開きをロック部34で抑制するので、直動機構33の直動部33aは専らブローキャビティ割型31の上側の型開きを抑制すればよい。したがって、本実施形態の構成によれば、直動機構33の直動部33aの位置を曲線C1と閾値Thの交点であるP2まで上側に寄せることができる。以上のように、ロック部34を設けたことに起因して、ブローキャビティ割型31の上側の型開きをより小さくすることが可能になる。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0066】
上記実施形態ではブロー成形装置の一例として、ホットパリソン式の4ステーション型の装置構成を説明した。しかし、本発明のブロー成形装置は上記実施形態に限定されず、例えば
図8(A)~(C)に示すように、4ステーション型以外のブロー成形装置に適用してもよい。なお、
図8に示すブロー成形装置20a~20cにおいて、上記実施形態と同様の構成については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0067】
図8(A)は、2ステーション型のブロー成形装置20aの構成を模式的に示す図である。ブロー成形装置20aは、射出成形部21と、ブロー成形部23と、搬送機構26とを備える。射出成形部21およびブロー成形部23は、搬送機構26の回転板51の周方向において180度回転した位置に配置されている。また、射出成形部21には射出装置25が接続されている。さらに、ブロー成形装置20aは、ブロー成形部23の型締方向と直交する方向に進退可能な容器取り出し機構52を有している。
【0068】
ブロー成形装置20aでは、射出成形部21で射出されたプリフォームが回転板51によりブロー成形部23に搬送される。ブロー成形部23ではプリフォームがブロー成形されて容器が製造される。ブロー成形部23の型開後に、容器取り出し機構52の容器保持部(不図示)がブロー割型の間に挿入され、製造された容器がネック型から離脱して容器保持部に受け渡される。これにより、容器取り出し機構52で容器を取り出すことができる。
【0069】
図8(B)は、3ステーション型のブロー成形装置20bの構成を模式的に示す図である。
図8(B)のブロー成形装置20bは、
図1のブロー成形装置20から温度調整部22を除いたものに相当する。
【0070】
ブロー成形装置20bは、射出成形部21と、ブロー成形部23と、取り出し部24と、搬送機構26とを備える。射出成形部21、ブロー成形部23、取り出し部24は、搬送機構26の回転板51の周方向において120度回転した位置に配置されている。また、射出成形部21には射出装置25が接続されている。ブロー成形装置20bでは、回転板51の回転により、ネック型で保持されたプリフォームまたは容器が、射出成形部21、ブロー成形部23、取り出し部24の順に搬送されることで、容器の製造が行われる。
【0071】
図8(C)は、6ステーション型のブロー成形装置20cの構成を模式的に示す図である。ブロー成形装置20cは、例えば剥離容器や装飾容器に適した多層構造のプリフォームを製造するととともに、当該プリフォームをブロー成形して容器を製造するものである。ブロー成形装置20cは、射出成形部21(第1の射出成形部)と、温度調整部22(第2の温度調整部)との間に、第1の温度調整部21aと、第2の射出成形部21bとをさらに有する点で、
図1のブロー成形装置20と相違する。
【0072】
ブロー成形装置20cにおいて、第1の射出成形部21、第1の温度調整部21a、第2の射出成形部21b、第2の温度調整部22、ブロー成形部23、取り出し部24は、搬送機構26の回転板51の周方向において60度回転した位置に配置されている。
【0073】
第1の射出成形部21は、射出装置25に接続され、プリフォームの内層(または外層)を射出成形する。第1の温度調整部21aは、第1の射出成形部21で成形されたプリフォームを冷却するとともに温度分布を調整する。第2の射出成形部21bは、射出装置25aに接続され、プリフォームの外層(または内層)を射出成形して多層構造のプリフォームを製造する。第2の温度調整部22、ブロー成形部23、取り出し部24の動作は、
図1のブロー成形装置20と同様である。
なお、ブロー成形装置20cにおいて、第1の射出成形部21と第2の射出成形部21bの間の第1の温度調整部21aを省略し、5ステーション型のブロー成形装置(不図示)としてもよい。
【0074】
図8(A)~(C)に示すブロー成形装置においても、ロック部34を有するブロー成形部23を適用することで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、本発明のブロー成形装置は、ホットパリソン式の装置に限定されず、冷却されたプリフォームを再加熱してブロー成形を行うコールドパリソン式のブロー成形装置にも適用できる。
【0076】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
20,20a,20b,20c…ブロー成形装置、21…射出成形部、22…温度調整部、23…ブロー成形部、30…機台、31…ブローキャビティ割型、32…型締板、33…直動機構、33a…直動部、34…ロック部、35…移動部、41…ロックバー、41a…傾斜面、43…駆動部材