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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/085 20120101AFI20231208BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20231208BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20231208BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B60W30/085
B60W40/02
B60W30/09
G08G1/16 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022560671
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035457
(87)【国際公開番号】W WO2022097387
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2020185024
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田 了太
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-024108(JP,A)
【文献】特開2016-002898(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056374(WO,A1)
【文献】特開2019-026056(JP,A)
【文献】特開2009-053059(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111139(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両制御装置であって、
前記車両に搭載された外界センサから出力された外界情報に基づいて前記車両の周囲の物体を検知して立体物情報を生成する立体物情報生成部と、
前記外界情報に基づいて前記物体を含む対象領域を前後方向と高さ方向にそれぞれ分割した複数の分割領域の情報を生成するとともに前記複数の分割領域のそれぞれに対して前記車両が衝突したときの被害の大きさに応じた被害度を設定する被害度マップ生成部と、
前記被害度に対応する衝突被害度を最小にするように前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記外界センサによって前記物体の前後方向に交差する斜め方向から取得された前記外界情報に基づく前記立体物情報に含まれる前記物体の前面および側面の情報を該前面および該側面にそれぞれ正対する正対前面情報および正対側面情報に変換する変換部と、
前記正対側面情報から前記物体の特徴部分を抽出する特徴抽出部と、を備え、
前記被害度マップ生成部は、前記特徴部分に基づいて前記対象領域を前記前後方向に前記複数の分割領域に分割することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記外界センサは、撮像装置を含み、
前記外界情報は、前記撮像装置によって撮影した前記物体の画像情報を含み、
前記前面および前記側面の情報は、前記斜め方向から撮影した前記物体の前記前面および前記側面の画像情報であり、
前記正対前面情報と前記正対側面情報は、それぞれ、前記前面の正対画像情報と前記側面の正対画像情報であることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記特徴抽出部は、前記正対側面情報から前記物体が存在しない領域を認識してスペースとして規定し、前記スペースと前記複数の分割領域とに基づいて前記物体が存在する前記分割領域を前記車両の一部として設定することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
車両に搭載される車両制御装置であって、
前記車両に搭載された外界センサから出力された外界情報に基づいて前記車両の周囲の物体を検知して立体物情報を生成する立体物情報生成部と、
前記外界情報に基づいて前記物体を含む対象領域を前後方向と高さ方向にそれぞれ分割した複数の分割領域の情報を生成するとともに前記複数の分割領域のそれぞれに対して前記車両が衝突したときの被害の大きさに応じた被害度を設定する被害度マップ生成部と、
前記被害度に対応する衝突被害度を最小にするように前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記車両を含む自車領域を分割した複数の自車分割領域の情報と、該複数の自車分割領域のそれぞれに対して設定された前記物体が衝突したときの被害の大きさに応じた自車被害度と、が記録された自車情報記憶部をさらに備え、
前記走行制御部は、前記被害度と前記自車被害度の積に応じた衝突被害度が最小になるように前記車両の走行を制御することを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
車両に搭載される車両制御装置であって、
前記車両に搭載された外界センサから出力された外界情報に基づいて前記車両の周囲の物体を検知して立体物情報を生成する立体物情報生成部と、
前記外界情報に基づいて前記物体を含む対象領域を前後方向と高さ方向にそれぞれ分割した複数の分割領域の情報を生成するとともに前記複数の分割領域のそれぞれに対して前記車両が衝突したときの被害の大きさに応じた被害度を設定する被害度マップ生成部と、
前記被害度に対応する衝突被害度を最小にするように前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記被害度マップ生成部は、前記車両の外部から送信された前記物体の前記対象領域と前記複数の分割領域と前記被害度とを、前記車両に搭載された通信ユニットを介して取得することを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
車両に搭載される車両制御装置であって、
前記車両に搭載された外界センサから出力された外界情報に基づいて前記車両の周囲の物体を検知して立体物情報を生成する立体物情報生成部と、
前記外界情報に基づいて前記物体を含む対象領域を前後方向と高さ方向にそれぞれ分割した複数の分割領域の情報を生成するとともに前記複数の分割領域のそれぞれに対して前記車両が衝突したときの被害の大きさに応じた被害度を設定する被害度マップ生成部と、
前記被害度に対応する衝突被害度を最小にするように前記車両の走行を制御する走行制御部と、
前記外界センサは、ミリ波レーダ装置を含み、
前記被害度マップ生成部は、前記ミリ波レーダ装置から出力されたレーダの反射強度に基づいてウィンドシールドを含む分割領域を認識し、前記複数の分割領域のうち前記ウィンドシールドを含む分割領域に車両のキャビンに対応する前記被害度を設定することを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自装置を搭載する車両である自車両を制御する車両制御装置に関する発明が知られている(下記特許文献1)。特許文献1に記載された車両制御装置は、障害物検出部と、回避可否判定部と、衝突範囲特定部と、最小被害部位特定部と、進行制御部と、を備える(特許文献1、要約、第0006段落、請求項1等)。
【0003】
前記障害物検出部は、自車両と衝突する可能性がある障害物を検出する。前記回避可否判定部は、前記障害物検出部によって障害物が検出された場合に、自車両の進行を制御することで前記障害物との衝突を回避できるか否かを判定する。前記衝突範囲特定部は、前記回避可否判定部によって前記障害物との衝突を回避できないと判定された場合に、前記障害物における自車両と衝突しうる範囲を特定する。
【0004】
前記最小被害部位特定部は、前記衝突範囲特定部が特定した範囲のうち、自車両と衝突した場合に前記障害物に生じる被害が最も小さい部位を特定する。前記進行制御部は、前記回避可否判定部によって前記障害物との衝突を回避できないと判定された場合に、前記最小被害部位特定部が特定した部位に変形が及ぶように自車両の進行を制御する。
【0005】
この従来の車両制御装置によれば、障害物との衝突を回避できないと判定した場合に、衝突によって障害物に生じる被害が最も小さくなる部位に変形が及ぶように自車両の進行を制御する。これにより、この従来の車両制御装置は、障害物との衝突を回避できない場合に、障害物に生じる被害を最小限に抑えることができる(同、第0013段落等)。
【0006】
さらに、この従来の車両制御装置は、障害物の種別毎に、当該障害物の部位と、当該障害物と自車両とが衝突した場合に生じる被害の大きさとの関係を示すリスク情報を記憶するリスク記憶部を備えている。また、前記障害物検出部は、前記障害物の種別を特定する。さらに、前記最小被害部位特定部は、前記障害物検出部が特定した種別に関連付けられたリスク情報を読み出し、前記衝突範囲特定部が特定した範囲のうち前記リスク情報が示す被害の大きさが最も小さい部位を特定する(同、第0007段落、請求項2)。
【0007】
このような構成により、障害物の種別を用いて衝突によって障害物に生じる被害が最も小さくなる部位を特定することができる。これにより、この従来の車両制御装置は、障害物毎に最適となる制御を行うことができる(同、第0014段落)。なお、リスク情報とは、障害物の部位と、当該障害物と自車両とが衝突した場合に生じる被害の大きさであるリスク値との関係を示す情報である(同、第0021段落、図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-232693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の車両制御装置において、上記障害物検出部は、レーザレーダやカメラなどによって障害物を検出し、検出した障害物の横幅や移動速度に基づいて、セダン、トラック、バスなど、当該障害物の種別を推定する(特許文献1、第0020段落)。しかし、レーザレーダやカメラなどによって、障害物を正面や斜め前方から検出した場合、障害物の横幅や移動速度だけでは、障害物の種別を正確に推定できないおそれがある。
【0010】
本開示は、従来の車両制御装置よりも障害物の種別とリスクを正確に推定することで、より確実に障害物と車両との衝突を回避し、または衝突被害を軽減することが可能な車両制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様は、車両に搭載される車両制御装置であって、前記車両に搭載された外界センサから出力された外界情報に基づいて前記車両の周囲の物体を検知して立体物情報を生成する立体物情報生成部と、前記外界情報に基づいて前記物体を含む対象領域を前後方向と高さ方向にそれぞれ分割した複数の分割領域の情報を生成するとともに前記複数の分割領域のそれぞれに対して前記車両が衝突したときの被害の大きさに応じた被害度を設定する被害度マップ生成部と、前記被害度に対応する衝突被害度を最小にするように前記車両の走行を制御する走行制御部と、を備えることを特徴とする車両制御装置である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の上記一態様によれば、従来の車両制御装置よりも障害物の種別とリスクを正確に推定することで、より確実に障害物と車両との衝突を回避し、または衝突被害を軽減することが可能な車両制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示に係る車両制御装置の実施形態1を示すブロック図。
図2図1の車両制御装置の処理の流れの一例を示すフロー図。
図3図2の視点変換処理の一例を示す概念図。
図4図2の特徴抽出処理の一例を説明する画像図。
図5図2の分割領域を生成する処理の説明図。
図6図2の被害度を設定する処理の詳細を示すフロー図。
図7図6の被害度を設定する処理の一例を説明する対象領域の斜視図。
図8図1のAD地図生成部によって生成された自動運転地図の一例。
図9図1の自動運転判断部による自車両と対向車との衝突位置の算出結果の一例。
図10図1の自動運転判断部による衝突被害度の算出例。
図11図1の自動運転判断部による衝突被害度の算出例。
図12図1の自動運転判断部による衝突被害度の算出例。
図13図1の自動運転判断部による衝突被害度の算出例。
図14】本開示に係る車両制御装置の実施形態2の動作を説明する平面図。
図15】実施形態2に係る車両制御装置の自動運転判断部による算出結果の一例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示に係る車両制御装置の実施形態を説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本開示に係る車両制御装置の実施形態1を示すブロック図である。本実施形態の車両制御装置100は、たとえば、ガソリン車、ハイブリッド車、電気自動車などの車両Vに搭載され、車両Vの走行を制御する電子制御装置(ECU)である。車両制御装置100は、たとえば、車両Vを自律的に走行させる自動運転ECUであり、入出力インタフェース110と、メモリ120と、プロセッサ130と、不揮発性の補助記憶装置140とを備えている。
【0016】
車両制御装置100は、たとえば、立体物情報生成部121と、被害度マップ生成部122と、走行制御部123とを備えている。また、本実施形態において、車両制御装置100は、たとえば、自車情報記憶部124と、AD地図生成部125とを、さらに備えている。また、図1に示す例において、被害度マップ生成部122は、変換部122aと、特徴抽出部122bと、被害度設定部122cとを含む。
【0017】
上記した車両制御装置100の各部は、たとえば、プロセッサ130によって補助記憶装置140に記憶されたプログラムやテーブルをメモリ120にロードして実行することで実現される車両制御装置100の機能ブロックである。
【0018】
車両制御装置100が搭載される車両V(以下、「自車両V」という。)は、たとえば、外界センサV1と、通信ユニットV2と、地図ユニットV3と、車両センサV4と、車両駆動部V5と、ディスプレイV6と、スピーカV7とを備えている。これらの自車両Vの各部と車両制御装置100の入出力インタフェース110とは、たとえば、LAN(Local Area Network)やCAN(Controller Area Network)を介して接続されている。
【0019】
外界センサV1は、自車両Vの周囲の外界情報を取得する。外界センサV1は、たとえば、撮像装置V11を含む。撮像装置V11は、たとえば、単眼カメラまたはステレオカメラを含み、少なくとも自車両Vの前方の立体物の画像を外界情報として車両制御装置100へ出力する。また、外界センサV1は、たとえば、レーダ装置V12を含む。レーダ装置V12は、たとえば、ミリ波レーダ装置またはレーザレーダ装置を含む。レーザレーダ装置は、少なくとも自車両Vの前方の立体物の情報を外界情報として車両制御装置100へ出力する。ミリ波レーダ装置は、たとえば、少なくとも自車両Vの前方の立体物の距離、方向、およびミリ波の反射強度を、外界情報として車両制御装置100へ出力する。
【0020】
通信ユニットV2は、たとえば、自車両Vの外部との間で無線通信を行う無線通信機である。より具体的には、通信ユニットV2は、たとえば、自車両Vと他の車両との間の車車間通信、自車両Vと道路側の通信機器などのインフラストラクチャ設備との路車間通信、自車両Vと基地局との間の無線通信などを行う。通信ユニットV2は、自車両Vの外部から受信した情報を、車両制御装置100へ出力するとともに、車両制御装置100から入力された情報を、自車両Vの外部へ送信する。
【0021】
通信ユニットV2は、たとえば、他の車両の通信ユニットV2から他の車両の位置、速度、車両制御情報を受信して、車両制御装置100へ出力する。また、通信ユニットV2は、たとえば、インフラストラクチャ設備から、交通信号機の情報、交通規制の情報、道路の情報などを受信して、車両制御装置100へ出力する。また、通信ユニットV2は、たとえば、車両制御装置100から出力された自車両Vの位置、速度、車両制御情報を、外部の他の車両やインフラストラクチャ設備へ送信する。
【0022】
地図ユニットV3は、たとえば、全球測位衛星システム(GNSS)の測位衛星から電波を受信するアンテナと、受信した電波に基づいて自車両Vの位置情報を算出するロケータとを含む。また、地図ユニットV3は、記憶装置と、その記憶装置に記憶された地図データベースとを含む。地図ユニットV3は、ロケータによって算出した自車両Vの位置情報と、地図データベースから取得した自車両Vの周辺の道路情報を含む地図情報を、車両制御装置100へ出力する。地図情報は、たとえば、自車両Vの自動運転に必要な道路、標識、地物などの詳細な情報を含んでいる。
【0023】
車両センサV4は、たとえば、エンジンセンサ、操舵角センサ、ステアリングトルクセンサ、ブレーキセンサ、アクセルセンサ、速度センサ、加速度センサなど、自車両Vの各種の情報を取得する各種のセンサを含む。車両センサV4は、たとえば、取得した自車両Vの各種の情報を、地図ユニットV3と車両制御装置100へ出力する。
【0024】
車両駆動部V5は、たとえば、車両制御装置100から入力される制御信号に基づいて、スロットル、ブレーキ、ステアリング、変速機など、自車両Vの各部を自動的に操作する複数のアクチュエータを含む。車両駆動部V5は、たとえば、車両制御装置100から入力される制御信号に基づいて自車両Vの各部を自動的に操作することで、自車両Vの自動運転や運転支援を可能にする。
【0025】
ディスプレイV6は、たとえば、液晶表示装置または有機EL表示装置などを含む。ディスプレイV6は、たとえば、車両制御装置100から入力される画像信号に基づいて、車両センサV4によって取得された自車両Vの各種の情報、それらの情報に基づく自車両Vの運転状態、および、通信ユニットV2を介して受信した通信内容、案内または警告などを表示する。ディスプレイV6は、たとえば、タッチパネルを含み、自車両Vのドライバーが情報を入力する入力装置としても機能する。
【0026】
スピーカV7は、たとえば、車両制御装置100から入力される制御信号に基づいて、音声案内、注意または警報音などを発する。また、スピーカV7は、たとえば、ドライバーの音声を入力して車両制御装置100へ音声信号を出力するマイクとしての機能を有していてもよい。また、スピーカV7とマイクは、それぞれ別に設けられてもよい。
【0027】
以下、図2から図13を参照して、図1に示す車両制御装置100を詳細に説明する。図2は、図1の車両制御装置100の処理の流れの一例を示すフロー図である。
【0028】
車両制御装置100は、たとえば、自車両Vの自動運転または運転支援が開始されると、図2に示す処理を開始して、外界情報を取得する処理P1を実行する。この処理P1において、車両制御装置100は、入出力インタフェース110を介して、外界センサV1から外界情報を取得する。より具体的には、車両制御装置100は、たとえば、撮像装置V11から、外界情報として、自車両Vの前方の画像を取得する。
【0029】
また、車両制御装置100は、外界情報を取得する処理P1において、たとえば、レーダ装置V12から、外界情報として、自車両Vの前方の物体の距離、方向、および反射波の強度を取得する。また、この処理P1において、車両制御装置100は、たとえば、通信ユニットV2を介して、自車両Vの外部の他の車両や、道路側のインフラストラクチャ設備から、自車両Vの周囲の物体の情報を取得してもよい。
【0030】
次に、車両制御装置100は、物体を検知したか否かを判定する処理P2を実行する。この処理P2において、車両制御装置100は、たとえば、立体物情報生成部121により、自車両Vに搭載された外界センサV1から出力され、入出力インタフェース110を介して入力された外界情報を処理して、自車両Vの前方または周囲の物体を検知したか否かを判定する。
【0031】
また、前述の処理P1において、車両制御装置100が通信ユニットV2を介して外部から自車両Vの周囲の物体の情報を取得した場合には、この処理P2において、外部から取得した物体の情報を用いてもよい。この場合、立体物情報生成部121は、外部から取得した物体の情報と、外界センサV1から取得した外界情報とを処理して、自車両Vの前方または周囲の物体を検知したか否かを判定する。
【0032】
処理P2において、立体物情報生成部121は、物体が検知されていない(NO)と判定すると、外界情報を取得する処理P1へ戻り、物体が検知された(YES)と判定すると、次の立体物情報を生成する処理P3を実行する。
【0033】
立体物情報を生成する処理P3において、車両制御装置100は、たとえば、立体物情報生成部121により、前述の処理P1で外界センサV1から取得した外界情報と、自車両Vの外部から取得した物体の情報の少なくとも一方を処理して立体物情報を生成する。ここで、立体物情報は、前の処理P2で検知された物体ごとに生成され、たとえば、物体の大きさ、形状、位置、速度、加速度、姿勢(向き)、画像、ミリ波レーダの反射強度など、各々の物体に固有の情報を含んでいる。
【0034】
次に、車両制御装置100は、たとえば、視点変換処理P4を実行する。この処理P4において、車両制御装置100は、たとえば、変換部122aにより、立体物情報の視点変換を行う。より具体的には、変換部122aは、たとえば、外界センサV1によって物体の前後方向に交差する斜め方向から取得された外界情報に基づく立体物情報に含まれる物体の前面の情報を、その前面に正対する正対前面情報に変換する。また、変換部122aは、たとえば、その立体物情報に含まれる物体の側面の情報を、その側面に正対する正対側面情報に変換する。
【0035】
図3は、図2に示す視点変換処理P4の一例を示す概念図である。図3に示す例において、立体物情報SMは、外界センサV1である撮像装置V11によって、物体である車両の前後方向に交差する斜め方向から取得された外界情報としての画像情報に基づいて生成されている。なお、立体物情報SMは、たとえば、物体の前後方向に平行なX軸と、物体の幅方向に平行なY軸と、物体の高さ方向に平行なZ軸とからなる3次元直交座標系を用い、原点座標Oを基準として表すことができる。
【0036】
視点変換処理P4において、変換部122aは、たとえば、立体物情報SMに含まれる物体の前面の画像情報G1を、その前面に正対する正対前面情報としての前面の正対画像情報RG1に変換する。また、変換部122aは、たとえば、立体物情報SMに含まれる物体の側面の画像情報G2を、その側面に正対する正対側面情報としての側面の正対画像情報RG2に変換する。この視点変換処理P4は、たとえば、画像情報G1,G2を各面の正面から見た仮想的な視点に基づく画像処理である。次に、車両制御装置100は、たとえば、図2に示す特徴抽出処理P5を実行する。
【0037】
図4は、図2に示す特徴抽出処理P5の一例を説明する画像図である。この特徴抽出処理P5において、車両制御装置100は、たとえば、前の処理P4で変換部122aによって生成された物体の正対画像情報RG1,RG2から、図1に示す特徴抽出部122bによって、物体の特徴的な部分である特徴部分を抽出する。より具体的には、検知された物体が車両である場合、特徴抽出部122bは、たとえば、物体の側面の正対画像情報RG2から車輪を特徴部分として抽出する。
【0038】
より詳細には、特徴抽出部122bは、たとえば、物体の側面の正対画像情報RG2に対して画像認識処理を行って、タイヤやホイールの形状、色彩、明度、直径などから車輪を認識する。さらに、特徴抽出部122bは、たとえば、認識した車輪の位置に基づいて、車両である物体の中央部を規定する。より詳細には、特徴抽出部122bは、たとえば、車両の側面の正対画像情報RG2から車両の前輪と後輪を認識し、車両の前後方向(X軸方向)において、前輪の後端の位置XFと後輪の前端の位置XRとの間に位置する車両の部分を、車両の中央部に規定する。
【0039】
また、検知された物体が車両である場合、特徴抽出部122bは、たとえば、物体の正面の正対画像情報RG1からボンネットを特徴部分として抽出する。より詳細には、特徴抽出部122bは、たとえば、物体の前面の正対画像情報RG1に対して画像認識処理を行って、車体と背景の境界線を認識し、ボンネットの傾斜ラインL1を認識する。さらに、特徴抽出部122bは、たとえば、認識したボンネットの傾斜ラインL1と、物体の前面の正対画像情報RG1における幅方向(Y軸方向)の両端との交点P1,P2を特定する。
【0040】
さらに、特徴抽出部122bは、たとえば、特定した交点P1,P2のうち、高さ方向(Z軸方向)における低い位置にある交点P1を選択し、選択した交点P1のZ座標を車両である物体を上部と下部に分割する座標ZCとして設定する。図4に示す例では、高さ方向(Z軸方向)において、座標Z0と座標ZCとの間が車両の下部であり、座標ZCと車両の上端のZ軸座標である座標ZEとの間が車両の上部である。
【0041】
さらに、特徴抽出部122bは、たとえば、物体の側面と前面の正対画像情報RG1,RG2から物体が存在しない領域を認識してスペースSとして規定する。図4に示す例において、物体の側面の正対画像情報RG2には、車両の前後方向(X軸方向)における後端の座標X0と車両の中央部の後端の座標XRとの間で、かつ、車両の高さ方向(Z軸方向)における上部の下端の座標ZCと上端の座標ZEとの間に、スペースSが規定されている。
【0042】
また、図4に示す例において、物体の前面の正対画像情報RG1には、車両の幅方向(Y軸方向)における一端の座標Y0と他端の座標YEとの間で、かつ、車両の高さ方向(Z軸方向)における上端の座標ZEと車両の上部の下端の座標ZCとの間に、スペースSが規定されている。次に、車両制御装置100は、たとえば、図2に示すように、検知した物体が人であるか否かの判定処理P6を実行する。
【0043】
この判定処理P6において、特徴抽出部122bは、たとえば、外界センサV1に含まれる撮像装置V11の画像を用いて画像認識処理を行って、検知した物体が、歩行者、自転車、自動二輪車のいずれかに該当するか否かを判定する。なお、この判定処理P6において、特徴抽出部122bは、たとえば、外界センサV1に含まれるレーダ装置V12の検知結果を用い、物体の大きさ、速度、動作、ミリ波レーダの反射強度などに基づいて、検知した物体が歩行者等に該当するか否かを判定してもよい。
【0044】
判定処理P6において、特徴抽出部122bにより、たとえば、検知した物体が、歩行者、自転車、自動二輪車のいずれにも該当しない、すなわち人に該当しない(NO)、と判定されると、車両制御装置100は、分割領域を生成する処理P7を実行する。一方、判定処理P6において、特徴抽出部122bにより、たとえば、検知した物体が、歩行者、自転車、自動二輪車のいずれかに該当する、すなわち人に該当する(YES)、と判定されると、車両制御装置100は、後述する被害度を設定する処理P8を実行する。
【0045】
図5は、図2に示す分割領域SRを生成する処理P7の説明図である。分割領域SRを生成する処理P7において、車両制御装置100は、たとえば、特徴抽出部122bにより、外界情報に基づいて物体を含む対象領域ORを前後方向(X軸方向)と高さ方向(Z軸方向)にそれぞれ分割した複数の分割領域SRの情報を生成する。この処理P7において、特徴抽出部122bは、たとえば、物体を含む対象領域ORを、さらに幅方向(Y軸方向)においても分割して、複数の分割領域SRを生成する。
【0046】
分割領域SRを生成する処理P7において、特徴抽出部122bは、たとえば、図4に示す前述の特徴抽出処理P5において規定した車両の前後方向(X軸方向)における前輪の後端の位置XFと後輪の前端の位置XRにおいて、対象領域ORを分割する。また、この処理P7において、特徴抽出部122bは、たとえば、図4に示す前述の特徴抽出処理P5において規定した車両の高さ方向(Z軸方向)における上部と下部に分割する座標ZCにおいて、対象領域ORを分割する。
【0047】
さらに、この処理P7において、特徴抽出部122bは、たとえば、図4に示す車両の幅方向(Y軸方向)における一端の座標Y0から他端の座標YEまでの距離の25%の位置の座標YRと75%の位置の座標YLにおいて、対象領域ORを分割する。このような対象領域ORの分割位置は、たとえば、最新の衝突安全性試験に基づいて設定することができ、衝突安全性試験の改定に合わせて変更することが望ましい。
【0048】
以上により、たとえば、物体を含む直方体の対象領域ORは、物体の前後方向に3分割され、物体の幅方向に3分割され、物体の高さ方向に2分割されて、合計18個の分割領域SRに分割される。なお、物体の各方向における対象領域ORの分割数は一例であり、それぞれ2以上に分割されていればよい。また、物体の幅方向においては、対象領域ORを分割しなくてもよい。
【0049】
図5に示す例において、物体を含む対象領域ORは、前述のように、複数の分割領域SRに分割され、たとえば、前後方向:幅方向:高さ方向の各方向に対して、後部:右側:下部、中央部:右側:下部、前部:右側:下部の各領域SR111、SR211、SR311を含む。また、複数の分割領域SRは、たとえば、後部:中央部:下部、中央部:中央部:下部、前部:中央部:下部、後部:左側:下部、中央部:左側:下部、前部:左側:下部の各分割領域SR121、SR221、SR321、SR131、SR231、SR331を含む。
【0050】
さらに、複数の分割領域SRは、たとえば、前後方向:幅方向:高さ方向の各方向に対して、後部:右側:上部、中央部:右側:上部、前部:右側:上部の各領域SR112、SR212、SR312を含む。また、複数の分割領域SRは、たとえば、後部:中央部:上部、中央部:中央部:上部、前部:中央部:上部、後部:左側:上部、中央部:左側:上部、前部:左側:上部の各分割領域SR122、SR222、SR322、SR132、SR232、SR332を含む。分割領域SRを生成する処理P7の終了後、車両制御装置100は、たとえば、被害度を設定する処理P8を実行する。
【0051】
図6は、図2の被害度を設定する処理P8の詳細を示すフロー図である。車両制御装置100は、たとえば、図6に示す処理P8を開始すると、まず、被害度設定部122cにより、物体を含む対象領域ORが複数の分割領域SRを有するか否かを判定する処理P801を実行する。この処理P801において、対象領域ORが分割領域SRを有しない(NO)と判定されると、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cによって、対象領域ORを人(歩行者、自転車、二輪車など)に設定する処理P802を実行し、その後、後述する被害度を設定する処理P814を実行する。
【0052】
一方、上記の処理P801において、たとえば、対象領域ORが分割領域SRを有する(YES)と判定されると、車両制御装置100は、対象領域ORの前部の上部にスペースSを有するか否かを判定する処理P803を実行する。この処理P803において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、対象領域ORの複数の分割領域SRのうち、前部:右側:上部、前部:中央部:上部、前部:左側:上部の各分割領域SR312、SR322、SR332のいずれかにスペースSを有するか否かを判定する。
【0053】
この処理P803において、たとえば、分割領域SR312、SR322、SR332のいずれかに所定のスペースSを有する(YES)と判定されると、車両制御装置100は、前部の上部の分割領域SRをスペースSに設定する処理P804を実行する。この処理P804において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、対象領域ORの複数の分割領域SRのうち、前部:右側:上部、前部:中央部:上部、前部:左側:上部の各分割領域SR312、SR322、SR332をスペースSに設定する。
【0054】
次に、車両制御装置100は、たとえば、前部の下部の分割領域SRをフロント部に設定する処理P805を実行する。この処理P805において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、対象領域ORの複数の分割領域SRのうち、前部:右側:下部、前部:中央部:下部、前部:左側:下部の各分割領域SR311、SR321、SR331を車両のフロント部に設定する。
【0055】
次に、車両制御装置100は、たとえば、対象領域ORの後部の上部にスペースSを有するか否かを判定する処理P806を実行する。この処理P806において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、対象領域ORの複数の分割領域SRのうち、後部:右側:上部、後部:中央部:上部、後部:左側:上部の各分割領域SR112、SR122、SR132のいずれかにスペースSを有するか否かを判定する。
【0056】
この処理P806において、たとえば、分割領域SR112、SR122、SR132のいずれかに所定のスペースSを有しない(NO)と判定されると、車両制御装置100は、後述する残りの分割領域SRをキャビンに設定する処理P809を実行する。
【0057】
一方、上記の処理P806において、たとえば、分割領域SR112、SR122、SR132のいずれかに所定のスペースSを有する(YES)と判定されると、車両制御装置100は、後部の上部の分割領域SRをスペースSに設定する処理P807を実行する。この処理P807において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、対象領域ORの複数の分割領域SRのうち、後部:右側:上部、後部:中央部:上部、後部:左側:上部の各分割領域SR112、SR122、SR132をスペースSに設定する。
【0058】
次に、車両制御装置100は、たとえば、後部の下部の分割領域SRをリア部に設定する処理P808を実行する。この処理P808において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、対象領域ORの複数の分割領域SRのうち、後部:右側:下部、後部:中央部:下部、後部:左側:下部の各分割領域SR111、SR121、SR131を車両のリア部に設定する。
【0059】
次に、車両制御装置100は、たとえば、残りの分割領域SRをキャビンに設定する処理P809を実行する。より詳細には、たとえば、前述の処理P806において、対象領域ORの後部の上部にスペースSを有する(YES)と判定された場合、この処理P809において、車両制御装置100は、次の各分割領域SRをキャビンに設定する。車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、中央部:右側:上部、中央部:中央部:上部、中央部:左側:上部、中央部:右側:下部、中央部:中央部:下部、中央部:左側:下部、の各分割領域SR212、SR222、SR232、SR211、SR221、SR231をキャビンに設定する。その後、車両制御装置100は、後述する被害度を設定する処理P814を実行する。
【0060】
一方、たとえば、前述の処理P806において、対象領域ORの後部の上部にスペースSを有しない(NO)と判定された場合、この処理P809において、車両制御装置100は、上記の各分割領域SRに加えて、次の各分割領域SRをキャビンに設定する。車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、後部:右側:上部、後部:中央部:上部、後部:左側:上部、後部:右側:下部、後部:中央部:下部、後部:左側:下部、の各分割領域SR112、SR122、SR132、SR111、SR121、SR131をキャビンに設定する。その後、車両制御装置100は、後述する被害度を設定する処理P814を実行する。
【0061】
また、前述の処理P803において、たとえば、分割領域SR312、SR322、SR332のいずれにも所定のスペースSを有しない(NO)と判定されると、車両制御装置100は、前部の分割領域SRをキャビンに設定する処理P810を実行する。より詳細には、この処理P810において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、対象領域ORの複数の分割領域SRのうち、前部:右側:下部、前部:中央部:下部、前部:左側:下部、前部:右側:上部、前部:中央部:上部、前部:左側:上部の各分割領域SR311、SR321、SR331、SR312、SR322、SR332をキャビンに設定する。
【0062】
その後、車両制御装置100は、たとえば、外界センサV1に含まれるレーダ装置V12であるミリ波レーダ装置による物体の検知結果に基づいて、物体から所定のしきい値を超える有効な強度の反射波が得られたか否かを判定する処理P811を実行する。この処理P811において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、有効な強度の反射波が得られていない(NO)と判定されると、前述の処理P809を実行する。
【0063】
一方、上記の処理P811において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、有効な強度の反射波が得られた(YES)と判定されると、対象領域ORにウィンドシールドを含む分割領域SRを有するか否かを判定する処理P812を実行する。この処理P812において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、ミリ波レーダ装置よる物体の検知結果を用い、金属よりも反射強度が小さい所定の範囲の反射強度の反射波が得られた分割領域SRを、ウィンドシールドを含む分割領域SRとして認識する。
【0064】
上記の処理P812において、たとえば、中央部:右側:上部および後部:右側:上部、または、中央部:左側:上部および後部:左側:上部の分割領域SRがウィンドシールドを含む(YES)と判定されると、車両制御装置100は前述の処理P809を実行する。一方、上記の処理P812において、中央部:右側:上部および後部:右側:上部、ならびに、中央部:左側:上部および後部:左側:上部の分割領域SRがウィンドシールドを含まない(NO)と判定されると、車両制御装置100は前後方向の中央部および後部の分割領域SRを荷室または荷台に設定する処理P813を実行する。
【0065】
この処理P813において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、複数の分割領域SRのうち、中央部:右側:上部、中央部:中央部:上部、中央部:左側:上部、後部:右側:上部、後部:中央部:上部、後部:左側:上部の各分割領域SR212、SR222、SR232、SR112、SR122、SR132を荷室または荷台に設定する。さらに、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、複数の分割領域SRのうち、中央部:右側:下部、中央部:中央部:下部、中央部:左側:下部、後部:右側:下部、後部:中央部:下部、後部:左側:下部の各分割領域SR211、SR221、SR231、SR111、SR121、SR131を荷室または荷台に設定する。その後、車両制御装置100は、被害度を設定する処理P814を実行する。
【0066】
図7は、図6の被害度を設定する処理P814の一例を説明する対象領域ORの斜視図である。また、以下の表1に、被害度を設定する処理P814に使用されるテーブルの一例を示す。車両は、衝突時の運動エネルギーの大部分を、車体の一部の変形によって吸収する。一般に、車体は、前後方向よりも幅方向において、衝撃に弱く変形が大きくなる。そのため、表1では、クラッシャブルゾーンである車両のフロント部およびリア部よりも、キャビンにおいて被害度が大きくなるように設定されている。
【0067】
【表1】
【0068】
また、一般に、車両の前後方向の衝突では、車両の前面の全体が衝突するフルフラップ衝突よりも、車両の前面の一部が衝突するオフセット衝突の方が、車体の変形が大きくなる。そのため、表1において、フロント部およびリア部は、幅方向における中央部よりも左右両側において、被害度が大きくなるように設定されている。また、表1では、人に対する被害を防止するために、人を含む対象領域ORの被害度が、たとえば車両の被害度の2倍以上で、最大となるように設定されている。
【0069】
より具体的には、図6の処理P801、処理P802を経て、対象領域ORの物体が人に設定された場合、前述の処理P814において、車両制御装置100は、次のように被害度を設定する。車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、表1に従って、人を含む対象領域ORの被害度を「10」に設定する。これにより、図7の左上に示すように、人を含む対象領域ORの全体の被害度が「10」に設定される。
【0070】
また、図6の処理P801~P806、P807~P809を経て、対象領域ORの物体がセダン型の車両に設定された場合、前述の処理P814において、車両制御装置100は、次のように被害度を設定する。車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、表1に従って、図7の上部中央部に示すセダン型の車両を含む対象領域ORの各分割領域SRに対して被害度を設定する。より具体的には、被害度設定部122cは、たとえば、スペースSに設定された後部の上部の分割領域SR112、SR122、SR132と、前部の上部の分割領域SR312、SR322、SR332の被害度を、すべて「1」に設定する。
【0071】
また、被害度設定部122cは、たとえば、セダン型の車両を含む対象領域ORにおいて、フロント部に設定された前部:右側:下部、前部:中央部:下部、前部:左側:下部の分割領域SR311、SR321、SR331の被害度をそれぞれ「3」、「2」、「3」に設定する。同様に、被害度設定部122cは、たとえば、セダン型の車両を含む対象領域ORにおいて、キャビンに設定された中央部:右側:上部、中央部:中央部:上部、中央部:左側:上部の分割領域SR212、SR222、SR232の被害度を、それぞれ「5」に設定する。
【0072】
同様に、被害度設定部122cは、たとえば、セダン型の車両を含む対象領域ORにおいて、キャビンに設定された中央部:右側:下部、中央部:中央部:下部、中央部:左側:下部の分割領域SR211、SR221、SR231の被害度を、それぞれ「4」に設定する。同様に、被害度設定部122cは、たとえば、セダン型の車両を含む対象領域ORにおいて、リア部に設定された後部:右側:下部、後部:中央部:下部、後部:左側:下部の分割領域SR111、SR121、SR131の被害度を、それぞれ「3」、「2」、「3」に設定する。
【0073】
また、図6の処理P801、P803~P806、P809を経て対象領域ORの物体がミニバン型の車両に設定された場合、対象領域ORの後部:右側:上部、後部:中央部:上部、後部:左側:上部の各分割領域SR112、SR122、SR132は、キャビンに設定されている。そのため、処理P814において、車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、図7の右上に示すミニバン型の車両を含む対象領域ORの後部の上部の各分割領域SR112、SR122、SR132の被害度を、表1に従って、それぞれ「5」に設定する。
【0074】
また、図6の処理P801、P803、P810~P812、P809を経て、対象領域ORの物体が、図7の左下に示すバスに設定された場合、前述の処理P814において、車両制御装置100は、次のように被害度を設定する。車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、表1に従って、キャビンに設定された対象領域ORの上部のすべての分割領域SRの被害度を「5」に設定し、キャビンに設定された対象領域ORの下部のすべての分割領域SRの被害度を「4」に設定する。
【0075】
また、図6の処理P801、P803、P810~P813を経て、対象領域ORの物体が、図7の右下に示すトラックに設定された場合、前述の処理P814において、車両制御装置100は、次のように被害度を設定する。車両制御装置100は、たとえば、被害度設定部122cにより、表1に従って、キャビンに設定された対象領域ORの前部の上部のすべての分割領域SRの被害度を「5」に設定する。
【0076】
さらに、被害度設定部122cは、たとえば、荷台に設定された対象領域ORの中央部の上部および後部の上部の分割領域SR212、SR222、SR232、SR112、SR122、SR132の被害度を、表1に従って、それぞれ「2」に設定する。同様に、被害度設定部122cは、荷台に設定された対象領域ORの中央部の下部および後部の下部の分割領域SR211、SR221、SR231、SR111、SR121、SR131の被害度を、表1に従って、それぞれ「4」に設定する。
【0077】
図1に示す自車情報記憶部124には、たとえば、図5に示す対象領域ORと同様に、自車両Vを含む自車領域VORを分割した複数の自車分割領域VSRの情報と、その複数の自車分割領域VSRのそれぞれに対して設定された物体が衝突したときの被害の大きさに応じた自車被害度とが記録される。
【0078】
図1に示すAD地図生成部125は、たとえば、地図ユニットV3の出力である自車両Vの位置情報および自車両Vの周辺の道路情報を含む地図情報と、被害度マップ生成部122から出力された物体の立体物情報を融合させて自車両Vの自動運転地図を生成する。また、AD地図生成部125は、たとえば、自車情報記憶部124、被害度マップ生成部122、地図ユニットV3、車両センサV4などから入力された情報に基づいて、自車両Vの走行予定経路を生成して走行制御部123へ出力する。
【0079】
走行制御部123は、たとえば、自動運転判断部123aと車両制御部123bとを含む。自動運転判断部123aは、たとえば、AD地図生成部125から入力された自動運転地図および走行予定経路と、車両センサV4から入力された自車両Vの各種のセンサ情報とに基づいて、自車両Vの自動運転に必要な車両駆動部V5に対する制御量を算出する。車両制御部123bは、自動運転判断部123aによって算出された車両駆動部V5に対する制御量に基づいて、車両駆動部V5、ディスプレイV6、スピーカV7等を制御して、自車両Vの自動運転または運転支援を行う。
【0080】
以下、本実施形態の車両制御装置100の動作を説明する。本実施形態の車両制御装置100は、前述のように、自車両Vに搭載され、たとえば、外界センサV1、通信ユニットV2、地図ユニットV3、車両センサV4、車両駆動部V5、ディスプレイV6、およびスピーカV7に接続されている。車両制御装置100は、たとえば、走行制御部123によって車両駆動部V5を制御して、自車両Vの自動運転または運転支援を行う。
【0081】
図8は、AD地図生成部125によって生成された自動運転地図の一例である。この例において、自車両Vが片側一車線の道路を前方の交差点へ向けて走行し、対向車OVがその道路の反対車線を反対方向から同じ交差点へ向けて走行している。また、対向車OVは、交差点を右折しようとしている。自車両Vに搭載された車両制御装置100は、たとえば、地図ユニットV3から出力された自車両Vの周辺の地図情報に基づいて、図8に示すような自動運転地図を生成する。
【0082】
また、車両制御装置100は、たとえば、AD地図生成部125により、自車情報記憶部124から、自車両Vの立体物情報、自車領域VOR、複数の自車分割領域VSR、および各々の自車分割領域VSRに設定された被害度を読み込んで、自動運転地図に反映させる。また、車両制御装置100は、たとえば、外界センサV1によって検出された対向車OVの情報に基づいて、立体物情報生成部121によって立体物情報を生成する。さらに、車両制御装置100は、生成した立体物情報に基づいて、たとえば、被害度マップ生成部122により、図3から図7および表1に示すように、対向車OVに対象領域ORと複数の分割領域SRを設定して、各々の分割領域SRに被害度を設定する。
【0083】
車両制御装置100は、たとえば、外界センサV1から入力された対向車OVの情報や、車両センサV4から入力されたセンサ情報に基づいて、自動運転判断部123aにより、図8に示すように、対向車OVと自車両Vの走行経路を推定する。また、自動運転判断部123aは、たとえば、推定した走行経路に基づいて、自車両Vと対向車OVとの衝突の可能性を判定し、衝突の可能性がある場合には、車両駆動部V5の制御によって自車両Vと対向車OVとの衝突が回避可能であるか否かを判定する。
【0084】
自車両Vと対向車OVとの衝突を回避可能であると判定されると、車両制御装置100は、たとえば、車両制御部123bにより車両駆動部V5を制御する。これにより、自車両Vのスロットル、ブレーキ、ステアリング等が自動的に操作され、自車両Vと対向車OVとの衝突が回避される。一方、車両制御装置100は、自車両Vと対向車OVとの衝突が回避不能であると判定されると、たとえば、自動運転判断部123aにより、所定時間経過後の自車両Vと対向車OVの位置を算出して、衝突位置CPを算出する。
【0085】
図9は、自動運転判断部123aによる自車両Vと対向車OVとの衝突位置CPと衝突被害度の算出結果の一例である。図9に示す例において、自車両Vと対向車OVはともに図7の上部中央部に示すセダン型の車両である。また、自車両Vと対向車OVとは、自車両Vの中央部:右側:下部および中央部:右側:上部の自車分割領域VSR211、VSR212と、対向車OVの前部:右側:下部および前部:右側:上部の分割領域SR311、312との間の衝突位置CPでの衝突が予測されている。
【0086】
この場合、衝突位置CPを含む自車両Vの自車分割領域VSR211、VSR212は、それぞれ、キャビン上部右側と、キャビン下部右側であり、表1に示すように、自車被害度は、それぞれ「5」と「4」に設定されている。また、対向車OVの衝突位置CPを含む分割領域SR312、313は、それぞれ、スペースSと、フロント部の右側であり、表1に示すように、被害度は、それぞれ「1」と「3」に設定されている。したがって、図9に示す自車両Vと対向車OVの衝突被害度は、たとえば、自動運転判断部123aによって、図9の表に示すように算出される。
【0087】
自車両Vと対向車OVの衝突被害度は、たとえば、自車両Vの自車分割領域VSRに設定された自車被害度と、対向車OVの分割領域SRに設定された被害度の積に応じた値として求めることができる。なお、図9の表に示す例では、係数が「3」に設定され、自車両Vと対向車OVの分割領域SRを上部と下部に分割して、それぞれ、自車両Vの自車被害度と対向車OVの被害度と係数の積を衝突被害度として算出し、それらの合計を全体の衝突被害度としている。この係数は、自車両Vと衝突する物体の相対速度や重量に応じて設定される数値であり、「3」には限定されない。
【0088】
ここで、車両制御装置100は、たとえば、走行制御部123の自動運転判断部123aにより、自車両Vの自車分割領域VSRおよび対向車OVの分割領域SRに設定された自車被害度および被害度に対応する衝突被害度を最小にするように自車両Vの走行を制御する。より具体的には、走行制御部123は、たとえば、自動運転判断部123aにより、以下の表2に示すように、現在時刻から衝突予測時刻までの間に実現可能な舵角制御と加減速制御の組み合わせに対する衝突被害度をそれぞれ算出する。
【0089】
【表2】
【0090】
表2に示す例において、走行制御部123は、たとえば、自動運転判断部123aにより、舵角維持、右転舵、および左転舵の3種の舵角制御と、車速維持、加速、および減速の3種の加減速制御との組み合わせに対する衝突被害度をそれぞれ算出している。その結果、たとえば、舵角制御を舵角維持とし、加減速制御を減速とする車両制御を行った場合の衝突被害度が、最小の「7」となっている。
【0091】
これは、上記の車両制御により、図9に示す衝突位置CPが、たとえば、自車両Vのフロント部である前部:中央部:下部の自車分割領域VSR321と、対向車OVのフロント部である前部:左側:下部の分割領域SR331との間に変更されることに起因する。この場合、走行制御部123は、たとえば、車両制御部123bによって車両駆動部V5を制御して、衝突被害度が最小になる上記の車両制御を実行する。その結果、自車両Vのフロント部と、対向車OVのフロント部を衝突させて双方のクラッシャブルゾーンに衝撃を吸収させることで、衝突被害を最小限にすることができる。
【0092】
以上のように、本実施形態の車両制御装置100は、車両Vに搭載される制御装置であって、立体物情報生成部121と、被害度マップ生成部122と、走行制御部123とを備えている。立体物情報生成部121は、車両Vに搭載された外界センサV1から出力された外界情報に基づいて、車両Vの周囲の物体を検知して立体物情報を生成する。被害度マップ生成部122は、生成された外界情報に基づいて、物体を含む対象領域ORを前後方向と高さ方向にそれぞれ分割した複数の分割領域SRの情報を生成するとともに、複数の分割領域SRのそれぞれに対して、車両Vが衝突したときの被害の大きさ応じた被害度を設定する。そして、走行制御部123は、分割領域SRに設定された被害度に対応する衝突被害度を最小にするように、車両Vの走行を制御する。
【0093】
このような構成により、本実施形態の車両制御装置100は、外界センサV1によって対向車OVなどの障害物が検知された場合に、外界センサV1から出力された外界情報に基づいて、障害物の立体物情報を生成することができる。さらに、本実施形態の車両制御装置100は、生成された立体物情報に基づいて、障害物を含む対象領域ORを、その障害物の前後方向と高さ方向にそれぞれ分割した複数の分割領域SRの情報を生成し、各々の分割領域SRに対して被害度を設定することができる。これにより、障害物の前後方向と高さ方向に応じて、従来の車両制御装置よりも詳細にリスクを推定することができ、走行制御部123によって障害物との衝突を回避し、または衝突被害度を最小にするように車両Vの走行を制御することができる。
【0094】
また、本実施形態の車両制御装置100は、変換部122aと特徴抽出部122bとをさらに備えている。変換部122aは、外界センサV1によって物体の前後方向に交差する斜め方向から取得された外界情報に基づく立体物情報に含まれる物体の前面および側面の情報を、それらの前面および側面にそれぞれ正対する正対前面情報および正対側面情報に変換する。特徴抽出部122bは、正対側面情報から物体の特徴部分を抽出する。被害度マップ生成部122は、抽出された特徴部分に基づいて対象領域ORを前後方向に複数の分割領域SRに分割する。
【0095】
この構成により、本実施形態の車両制御装置100は、撮像装置V11やレーダ装置V12によって対向車OVなどの物体の外界情報が斜め方向から取得された場合でも、物体の前面と側面にそれぞれ正対する正対前面情報と正対側面情報を得ることができる。さらに、本実施形態の車両制御装置100は、得られた正対前面情報と正対側面情報に基づいて、より正確に物体の特徴部分を抽出することができる。これにより、物体の特徴に応じた複数の分割領域SRをより正確に生成することができ、従来の車両制御装置よりも障害物の種別とリスクをより正確に推定することが可能になる。
【0096】
また、本実施形態の車両制御装置100において、外界センサV1は、撮像装置V11を含み、外界情報は、撮像装置V11によって撮影した物体の画像情報を含む。また、立体物情報に含まれる物体の前面および側面の情報は、斜め方向から撮影した物体の前面および側面の画像情報であり、上記正対前面情報と正対側面情報は、それぞれ、物体の前面の正対画像情報と物体の側面の正対画像情報である。
【0097】
この構成により、本実施形態の車両制御装置100は、撮像装置V11によって対向車OVなどの物体の画像が斜め方向から撮影された場合でも、物体の前面と側面にそれぞれ正対する正対画像情報RG1と正対画像情報RG2を得ることができる。さらに、本実施形態の車両制御装置100は、得られた正対画像情報RG1と正対画像情報RG2に基づいて、より正確に物体の特徴部分を抽出することができる。これにより、物体の特徴に応じた複数の分割領域SRをより正確に生成することができ、従来の車両制御装置よりも障害物の種別とリスクをより正確に推定することが可能になる。
【0098】
また、本実施形態の車両制御装置100は、自車情報記憶部124をさらに備えている。自車情報記憶部124は、車両Vを含む自車領域VORを分割した複数の自車分割領域VSRの情報と、その複数の自車分割領域VSRのそれぞれに対して設定された物体が衝突したときの被害の大きさに応じた自車被害度と、が記録されている。また、走行制御部123は、被害度と自車被害度の積に応じた衝突被害度が最小になるように、車両Vの走行を制御する。
【0099】
この構成により、本実施形態の車両制御装置100は、自車両Vの複数の自車分割領域VSRの各々に設定された自車被害度と、対象領域ORの複数の分割領域SRの各々に設定された被害度とに基づいて、より正確に衝突被害度を推定することが可能になる。したがって、その衝突被害度が最小になるように走行制御部123によって車両Vの走行を制御することで、自車両Vと物体との衝突によるリスクをより低減することが可能になる。
【0100】
また、本実施形態の車両制御装置100において、特徴抽出部122bは、正対側面情報から物体が存在しない領域を認識してスペースSとして規定し、スペースSと複数の分割領域SRとに基づいて物体が存在する分割領域SRを車両Vの一部として設定する。この構成により、図5に示すように、外界センサV1によって検知した車両の種別をより正確に識別して、図7および表1に示すように、車両の種別と部分に応じた被害度を、各々の分割領域SRに設定することが可能になる。
【0101】
また、本実施形態の車両制御装置100において、外界センサV1は、たとえばレーダ装置V12としてミリ波レーダ装置を含む。また、被害度マップ生成部122は、ミリ波レーダ装置から出力されたレーダの反射強度に基づいてウィンドシールドを含む分割領域SRを認識し、複数の分割領域SRのうちウィンドシールドを含む分割領域SRに車両のキャビンに対応する被害度を設定する。この構成により、ミリ波レーダ装置から出力された外界情報に基づいて、対向車OVなどの車両のキャビンを識別することが可能になる。
【0102】
また、本実施形態の車両制御装置100は、セダン型の自車両Vだけでなく、図7に示すような様々な種類の車両に搭載することが可能であり、様々な種類の車両の衝突被害度を、従来の車両制御装置よりも正確に推定することができる。また、図8および図9に示すような対向車OVとの衝突だけでなく、自車両Vの追突時の衝突被害度なども正確に推定することが可能である。以下、図10から図13を参照して、自動運転判断部123aによる衝突被害度の算出例を説明する。
【0103】
図10は、停車中のセダン型の先行車両LVの後部の衝突位置CPに、セダン型の自車両Vの前部が追突した場合を示す。この場合、たとえば、先行車両LVの上部と自車両Vの上部と下部の衝突被害度は、それぞれ「3」と「12」であり、全体の衝突被害度は「15」である。図11は、先行車両LVである停車中のトラックの後部の衝突位置CPに、セダン型の自車両Vの前部が追突した場合を示す。この場合、たとえば、先行車両LVの下部と自車両Vの上部と下部の衝突被害度は、それぞれ「12」と「24」であり、全体の衝突被害度は「36」である。
【0104】
図10に示すように、セダン型の車両がセダン型の車両に追突する場合よりも、図11に示すように、セダン型の車両がトラックに追突する場合の方が、衝突被害度が大きくなっている。その理由は、駆動部品が露出しているトラックの荷台の下部に、トラックよりも全高が低いセダン型の車両が衝突するためである。
【0105】
図12は、先行車両LVである停車中のトラックの後部の衝突位置CPに、トラックである自車両Vの前部が追突した場合を示す。この場合、たとえば、先行車両LVと自車両Vの上部と下部の衝突被害度は、それぞれ「30」と「48」であり、全体の衝突被害度は「78」である。図13は、停車中のセダン型の先行車両LVの後部の衝突位置CPに、トラックである自車両Vの前部が追突した場合を示す。この場合、たとえば、先行車両LVの上部および下部と自車両Vの下部との衝突被害度は、それぞれ「12」と「24」であり、全体の衝突被害度は「36」である。
【0106】
図13に示すように、セダン型の先行車両LVにトラックである自車両Vが追突する場合よりも、図12に示すように、先行車両LVであるトラックの後部に、トラックである自車両Vが追突する場合の方が、衝突被害度が大きくなっている。その理由は、トラックのキャビンは、車体の前方に配置されており、ウィンドシールドは車体の前部の上部に位置するためである。より詳細には、トラックよりも全高が低いセダン型の先行車に後続のトラックが追突する場合は、後続のトラックのウィンドシールドまで衝突の影響が及びにくいため、衝突被害度が比較的に小さくなる。しかし、先行のトラックに後続のトラックが追突する場合は、後続のトラックのウィンドシールドまで衝突の影響が及ぶため、衝突被害度が比較的に大きくなる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来の車両制御装置よりも障害物の種別とリスクを正確に推定し、より確実に障害物と車両Vとの衝突を回避し、または衝突被害を軽減することが可能な車両制御装置100を提供することができる。
【0108】
(実施形態2)
次に、本開示に係る車両制御装置の実施形態2を説明する。本実施形態の車両制御装置100は、被害度マップ生成部122が、自車両Vの外部から送信された物体の情報を、自車両Vに搭載された通信ユニットV2を介して取得する点で、実施形態1の車両制御装置100と異なっている。本実施形態の車両制御装置100のその他の点は、実施形態1の車両制御装置100と同様であるので、同様の部分には同様の符号を付して説明を省略する。
【0109】
図14は、本実施形態の車両制御装置100の動作を説明する平面図である。図1に示す車両制御装置100が搭載された自車両Vは、片側一車線の道路を直進している。その道路に併設された駐車スペースに、2台の駐車車両PV1,PV2が縦列に駐車している。これらの駐車車両PV1,PV2は、図1に示す自車両Vと同様の構成を有し、車両制御装置100が搭載されている。駐車車両PV1,PV2は、駐車中においても、外界センサV1によって駐車車両PV1,PV2の周囲の物体を検知している。
【0110】
図14に示す例において、自車両Vの進行方向における前側に駐車した先頭の駐車車両PV1に搭載された外界センサV1は、道路を横断しようとしている歩行者Pを検知している。この、歩行者Pは、先頭の駐車車両PV1の陰に隠れて、その後方に駐車した駐車車両PV2の外界センサV1と、自車両Vの外界センサV1の死角に位置している。
【0111】
この場合、自車両Vの車両制御装置100は、たとえば、前方の駐車車両PV1の通信ユニットV2から送信された歩行者Pの立体物情報、速度、移動方向などを含む情報を、自車両Vの通信ユニットV2を介して受信する。自車両Vの車両制御装置100は、たとえば被害度マップ生成部122により、通信ユニットV2を介して受信した歩行者Pの立体物情報に基づいて、歩行者Pの対象領域ORおよび被害度を設定する。また、自車両Vの車両制御装置100は、たとえば、通信ユニットV2を介して受信した歩行者Pの速度や移動方向などの情報に基づいて、自動運転判断部123aにより、歩行者Pの歩行経路を推定する。
【0112】
また、車両制御装置100は、たとえば、AD地図生成部125や車両センサV4から入力された情報に基づいて、自動運転判断部123aにより、自車両Vの走行経路を推定する。また、自動運転判断部123aは、たとえば、推定した走行経路に基づいて、自車両Vと歩行者Pとの衝突の可能性を判定し、衝突の可能性がある場合には、車両駆動部V5の制御によって自車両Vと対向車OVとの衝突が回避可能であるか否かを判定する。
【0113】
図15は、自車両Vの車両制御装置100の自動運転判断部123aによる自車両Vと歩行者Pとの衝突位置CPと衝突被害度の算出結果の一例である。車両制御装置100は、たとえば、自動運転判断部123aより、推定した歩行者Pの歩行経路および移動速度と、自車両Vの走行経路および移動速度とに基づいて衝突位置CPを算出する。さらに、車両制御装置100は、算出した衝突位置CPに基づいて、たとえば、被害度マップ生成部122により、図15の表に示すように、衝突被害度を算出する。
【0114】
図15に示す例において、自車両Vはセダン型の車両であり、前部:左側:下部と前部:左側:上部の自車分割領域VSR331、VSR332が、それぞれ、フロント部とスペースSに設定され、被害度がそれぞれ「3」と「1」に設定されている。また、歩行者Pは、対象領域ORの全体の被害度が、たとえば「10」に設定されている。また、係数は、たとえば「3」に設定されている。そのため、自車両Vおよび歩行者Pの上部と下部の衝突被害度は、それぞれ「30」、「90」となり、全体で「120」となる。
【0115】
次に、車両制御装置100は、走行制御部123により、図15に示す自車両Vおよび歩行者Pの被害度に対応する衝突被害度を最小にするように自車両Vの走行を制御する。より具体的には、走行制御部123は、たとえば、自動運転判断部123aにより、以下の表3に示すように、現在時刻から衝突予測時刻までの間に実現可能な舵角制御と加減速制御の組み合わせに対する衝突被害度をそれぞれ算出する。
【0116】
【表3】
【0117】
表3に示す例において、走行制御部123は、たとえば、自動運転判断部123aにより、舵角維持、右転舵、および左転舵の3種の舵角制御と、車速維持、加速、および減速の3種の加減速制御との組み合わせに対する衝突被害度をそれぞれ算出している。その結果、たとえば、舵角制御を舵角維持とし、加減速制御を減速とする車両制御を行った場合の衝突被害度が、最小の「0」となり、衝突回避が可能となっている。この場合、走行制御部123は、たとえば、車両制御部123bによって車両駆動部V5を制御して、衝突被害度が最小になる上記の車両制御を実行する。その結果、自車両Vを歩行者Pの手前で減速させ、歩行者Pとの衝突を回避することができる。
【0118】
以上、図面を用いて本開示に係る車両制御装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【0119】
たとえば、前述の実施形態では、前述の視点変換処理P4において、撮像装置V11によって撮影した物体の画像情報に基づく立体物情報SIに含まれる物体の前面と側面の画像情報G1,G2を、各面に正対する正対画像情報RG1,RG2に変換する例を説明した。しかし、前述の視点変換処理P4において、たとえば、外界センサV1としてレーザレーダを用い、レーザレーダから出力された物体の3次元情報を外界情報として用いてもよい。この場合、変換部122aは、物体の前後方向に交差する斜め方向から取得された外界情報に基づく立体物情報に含まれるその物体の前面および側面の情報を、それらの前面および側面にそれぞれ正対する正対前面情報および正対側面情報に変換することができる。
【0120】
また、前述の実施形態では、外界センサによって検知される物体として、車両や人を例に挙げて説明したが、外界センサによって検知される物体は、たとえば、塀、壁、建造物、信号機、電柱、ガードレール、中央分離帯などの静止物であってもよい。また、前述の実施形態1では、ミリ波レーダの反射強度に基づいてウィンドシールドを含む分割領域を識別したが、撮像装置の画像に基づいてウィンドシールドを含む分割領域を識別してもよい。
【0121】
また、前述の実施形態では、車両制御装置の一部をメモリにロードしたプログラムを実行することで実現される機能ブロック(ソフトウェア)として説明したが、それらの一部または全部を、たとえば、集積回路などのハードウェアによって実現してもよい。また、図1に示す接続関係は、その一部が省略されている場合があり、すべての構成が相互に接続されていてもよい。
【0122】
また、他の車両の車両制御装置によって検知された立体物情報を、自車両の車両制御装置が互いの通信ユニットを介した車車間通信で受信する場合には、対象領域、分割領域、被害度などを、自車両の車両制御装置によって設定してもよい。また、他車両の車両制御装置によって設定された対象領域、分割領域、被害度などを、自車両の車両制御装置によって使用してもよい。
【符号の説明】
【0123】
100 車両制御装置
121 立体物情報生成部
122b 特徴抽出部
122 被害度マップ生成部
123 走行制御部
124 自車情報記憶部
G1 画像情報
G2 画像情報
OR 対象領域
OV 対向車(物体)
P 歩行者(物体)
RG1 正対画像情報(正対前面情報)
RG2 正対画像情報(正対側面情報)
S スペース
SR 分割領域
V 自車両(車両)
V1 外界センサ
V11 撮像装置
V12 レーダ装置(ミリ波レーダ装置)
V2 通信ユニット
VSR 自車分割領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15