(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】光治療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
A61N5/06 A
(21)【出願番号】P 2022565493
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2021043695
(87)【国際公開番号】W WO2022114195
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2020198632
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】南條 卓也
(72)【発明者】
【氏名】川▲瀬▼ 悠樹
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/004516(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221284(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒と、
前記鏡筒の内側に設置され、光を照射する光源と、
身体に配置されたマーキングを撮像する複数の撮像部と、
前記複数の撮像部が撮像した複数の画像に含まれる複数のマーキングの画像の間のずれ量を算出するずれ量算出部と、
算出した前記ずれ量に基づいて、前記複数のマーキングの画像を結合する画像結合部と、
結合された前記画像上において、前記光源からの光の照射領域と対応するターゲットの位置を決定するターゲット位置決定部と、
結合された前記マーキングの画像上に前記ターゲットの画像を重ねて表示する表示部と、
を有することを特徴とする光治療装置。
【請求項2】
前記ずれ量算出部は、前記複数のマーキングの画像の中心位置から、前記ずれ量を算出する、請求項1に記載の光治療装置。
【請求項3】
前記複数の撮像部は、前記鏡筒の身体と接触する部分である鏡筒先端部の後方、かつ、前記鏡筒の外側に配置されている、請求項1または2に記載の光治療装置。
【請求項4】
前記マーキングは、前記ターゲットより大きい第1のマーキング、及び、前記第1のマーキングより小さい第2のマーキングを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光治療装置。
【請求項5】
前記ずれ量算出部は、前記第2のマーキングの位置に基づいて、前記第1のマーキングの位置を算出し、前記ずれ量を算出する、請求項4に記載の光治療装置。
【請求項6】
前記ターゲットの位置とマーキングの位置との間のターゲットずれ量を算出するターゲットずれ量算出部をさらに有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光治療装置。
【請求項7】
結合された前記マーキングの画像の位置と、前記ターゲットの画像の位置とが合っているか否かに基づいて、前記照射領域の位置が所定の照射領域の位置となっているか否かを判定する照射位置判定部をさらに有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光治療装置。
【請求項8】
前記照射位置判定部は、前記ターゲットのずれ量に基づいて、前記光源からの光の照射領域の中心の位置と、前記ターゲットの中心の位置とが合っているか否かを判定する、請求項7に記載の光治療装置。
【請求項9】
前記複数の撮像部の前方に設置され、前記光源の照射光を遮光するフィルタをさらに有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光治療装置。
【請求項10】
前記光源の照射光の波長は、マーキングの吸収波長と重複しない、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外光線等の光線を患部に照射して、痛みの緩和等を行う光治療装置が知られている。光照射による治療は、1日に数分以上の光照射を週に複数回繰り返す必要があるため、患者自身が在宅で光照射を行うことが好ましい。しかしながら、背中や腰等、患者が視認できない位置に、自身で装置を押し当て、光照射を行うことは難しい。そこで、治療部位が患者の視認できない位置にある場合であっても、患者自身が治療部位に光照射を容易に行う光治療装置が報告されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、複数のカメラで撮像した画像に基づいて、身体上のマーキングに対して鏡筒先端部を位置合わせする椅子型光治療装置が示されている。しかしながら、患者がモニタを観察しながら位置合わせを精確に行うことは難しく、複数のカメラで得られた画像が適切に結合されない場合、治療部位に光を照射する際の位置合わせが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、治療部位に光照射領域を精確に位置合わせすることが可能な光治療装置を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の実施形態に係る光治療装置は、鏡筒と、鏡筒の内側に設置され、光を照射する光源と、身体に配置されたマーキングを撮像する複数の撮像部と、複数の撮像部が撮像した複数の画像に含まれる複数のマーキングの画像の間のずれ量を算出するずれ量算出部と、算出したずれ量に基づいて、複数のマーキングの画像を結合する画像結合部と、結合された画像上において、光源からの光の照射領域と対応するターゲットの位置を決定するターゲット位置決定部と、結合されたマーキングの画像上にターゲットの画像を重ねて表示する表示部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本開示の実施形態に係る光治療装置において、ずれ量算出部は、複数のマーキングの画像の中心位置から、ずれ量を算出することが好ましい。
【0008】
本開示の実施形態に係る光治療装置において、複数の撮像部は、鏡筒の身体と接触する部分である鏡筒先端部の後方、かつ、鏡筒の外側に配置されていることが好ましい。
【0009】
本開示の実施形態に係る光治療装置において、マーキングは、ターゲットより大きい第1のマーキング、及び、第1のマーキングより小さい第2のマーキングを含むことが好ましい。
【0010】
本開示の実施形態に係る光治療装置において、ずれ量算出部は、第2のマーキングの位置に基づいて、第1のマーキングの位置を算出し、ずれ量を算出することが好ましい。
【0011】
本開示の実施形態に係る光治療装置において、ターゲットの位置とマーキングの位置との間のターゲットずれ量を算出するターゲットずれ量算出部をさらに有することが好ましい。
【0012】
本開示の実施形態に係る光治療装置において、結合されたマーキングの画像の位置と、ターゲットの画像の位置とが合っているか否かに基づいて、照射領域の位置が所定の照射領域の位置となっているか否かを判定する照射位置判定部をさらに有することが好ましい。
【0013】
本開示の実施形態に係る光治療装置において、照射位置判定部は、光源からの光の照射領域の中心の位置と、ターゲットの中心の位置とが合っているか否かを判定することが好ましい。
【0014】
本開示の実施形態に係る光治療装置において、複数の撮像部の前方に設置され、光源の照射光を遮光するフィルタをさらに有することが好ましい。
【0015】
本開示の実施形態に係る光治療装置において、光源の照射光の波長は、マーキングの吸収波長と重複しないことが好ましい。
【0016】
本開示の実施形態に係る光治療装置によれば、治療部位に光照射領域を精確に位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の実施形態に係る光治療装置の構成図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る光治療装置による治療の様子を説明するための概略図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る光治療装置のブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る光治療装置において使用するマーキングの平面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る光治療装置により画像を結合する手順を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態に係る光治療装置において、左右の撮像部で撮像した画像であって、マーキングのずれ量が画面の幅以下の場合の例を示す図である。
【
図7】
図6に示した2つの画像から結合画像を生成する手順を説明するための図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る光治療装置において、左右の撮像部で撮像した画像であって、マーキングのずれ量が画面の幅より大きい場合の例を示す図である。
【
図9】
図8に示した2つの画像から結合画像を生成する手順を説明するための図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る光治療装置において、マーキングの一部が鏡筒と重なる場合において、左右の撮像部で撮像した2つの画像から結合画像を生成する手順を説明するための図である。
【
図11】(a)は、
図10に示した結合画像にターゲットの画像を表示させた場合の画像の例を示し、(b)は結合したマーキングにターゲットの位置を合せた場合の画像の例を示す。
【
図12】本開示の実施形態に係る光治療装置において使用する光の波長とマーキング及び皮膚の吸光度との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る光治療装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0019】
まず、本開示の実施形態に係る光治療装置の構成について説明する。
図1に、本開示の実施形態に係る光治療装置1000の構成図を示す。光治療装置1000は、制御装置100と、光照射部200と、を含む。光照射部200は、患者の患部に光を照射する。制御装置100は、光照射部200と第1配線14により接続されて光照射部200の制御を行う。制御装置100は、光照射部200と無線接続するようにしてもよい。
【0020】
光照射部200は、鏡筒1と、光源2と、撮像部3と、を有する。鏡筒1は、患者方向に向けて突出するように光照射部200の略中央に設けられている。鏡筒1は、鏡筒先端部13を患者の皮膚上の所定の位置に合せて、光線を照射するための部材であり、中空円筒状の金属や樹脂等で構成されている。
図1には、鏡筒1の形状を円筒形とした例を示しているが、このような例には限られず、角柱状等、他の形状とするようにしてもよい。
【0021】
光源2は、鏡筒1の内側に設置され、光を照射する。光源2として、例えば、レーザ、LED、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を用いることができる。光源2は、照射光が円筒状の鏡筒1の中心軸上を通って身体の治療部位に対して照射されるよう配置されている。あるいは、光源2を鏡筒1の外部に設置し、光ファイバ等の導光路を用いて鏡筒1に導光するようにしてもよい。光源2から照射される光は、波長600~12000[nm]の赤外線であってよく、特に皮膚透過性の高い780~2500[nm]の近赤外線を用いることができる。ただし、後述するように、マーキングによるレーザ光の吸収を避けるために、レーザ光の波長を800[nm]とすることが好ましい。
【0022】
撮像部3は、患者の身体に配置されたマーキング10(
図2参照)を撮像する。撮像部3は複数個設けられていることが好ましい。撮像部3を複数個設けることにより、鏡筒1の外周全体を撮像部3で撮像することで、鏡筒1とマーキングの位置合わせをより精確に行うことができる。
図1に示した例では撮像部3を光照射部200に2個設けた例を示している。しかしながら、このような例には限られず、撮像部3を3個以上設けるようにしてもよい。撮像部3により、患者の治療部位、及び光源2からの照射光の照射位置を把握することができる。撮像部3として、CCDカメラやCMOSカメラ等を用いることができる。撮像部3で撮像された映像は表示部16に表示することができる。表示部16は、第2配線15により光照射部200に接続される。あるいは、表示部16と光照射部200とを無線接続するようにしてもよい。
【0023】
撮像部3は鏡筒先端部13よりも後方かつ鏡筒1の外側に設けられていることが好ましい。
図1では、光照射部200上の鏡筒1が接続された面と同一面上であって鏡筒1よりも外側に撮像部3が設けられている。撮像部3は、鏡筒1あるいは鏡筒先端部13の周辺を撮影するように取り付けられている。なお、撮像部3は光照射部200上の鏡筒1が接続された面とは異なる平面上に設けられていてもよく、光照射部200上の任意の面から突出するように配置されていてもよい。
【0024】
撮像部3が鏡筒先端部13よりも後方かつ鏡筒1の外側に設けられていることにより、鏡筒先端部13が身体に接触しないときに撮像部3が患者の身体に接触することがない。また、鏡筒先端部13が身体に接触しているときにのみ、光源2から光を照射するようにすることにより、光源2から照射される照射光、及びその反射光は鏡筒1の外へ漏れないようにすることができる。そのため、鏡筒1の外側に設置された撮像部3に照射野からの反射光が入射することがない。したがって、撮像部3が照射野からの反射光によってハレーションを起こすことを抑制することができる。
【0025】
本開示の実施形態に係る光治療装置1000は、患者が光照射のON/OFFを制御する照射制御用リモコン装置300を備えていてもよい。照射制御用リモコン装置300は、制御装置100と無線通信を行う。照射制御用リモコン装置300は、患者が照射制御用リモコン装置300のスイッチを操作して入力した内容に基づいて、制御装置100に信号を送信する。制御装置100は、受信した信号に基づいて、光照射部200の光源2からの光照射を制御する。これにより、患者は光照射のON/OFFを行うことができ、治療部位以外への誤照射を防止し、安全に光治療を行うことができる。
【0026】
次に、本開示の実施形態に係る光治療装置の具体的な使用方法について説明する。
図2に、本開示の実施形態に係る光治療装置1000による治療の様子を説明するための概略図を示す。まず、病院や診療所において、医師の診断のもと、患者400の光照射を行うべき治療部位が特定される。例えば、光線照射による排尿障害治療においては、膀胱の知覚神経の異常活動を抑制するために、膀胱知覚神経が存在する仙骨孔を狙って、経皮的に光を照射する。適切な治療には、精確に仙骨孔を狙う必要があるため、例えば、触診やX線透視によって、患者400の背部において光を照射すべき仙骨孔の位置が特定される。
【0027】
次に、特定された治療部位に、医師または他の医療従事者がマーキング10を配置する。マーキング10の材料として、インクや貼付シート等を用いることができる。例えば、光照射による排尿障害治療においては、1日に数分~数10分の光照射を週に2回~毎日の頻度で繰り返すことが好ましいため、在宅で患者400自身が光照射を行うことが望ましい。そのため、病院で医師が仙骨孔を特定し、その直上の皮膚に照射位置と照射範囲を示したマーキング10を配置して、患者400は在宅でそのマーキング10に合せて光治療装置1000の鏡筒1を適切な位置に配置し、光照射を行う。
【0028】
患者400は、自宅等において、自ら光治療装置1000を用いて光照射を行う。患者400は、光照射部200を固定させ、自身の体の位置を調整しながら、治療部位に施されたマーキング10の位置を鏡筒1の位置に合せる。治療部位が患者400の背部にあり、自ら視認できない場合、患者400は撮像部3(
図1参照)で撮像された映像を表示部16で見ながら、マーキング10の位置が鏡筒1の位置に合うように自身の体の位置を調整する。例えば、マーキング10の中空円形状の中に鏡筒先端部13が収まるように、自身の体の位置を調整する。その後、照射制御用リモコン装置300を操作して光照射を実行する。
【0029】
鏡筒先端部13が患者400の皮膚に接したときにマーキング10が鏡筒先端部13に隠れてしまうと精確な位置合わせが困難になることから、マーキング10は鏡筒先端部13を避けるような形状であることが好ましい。例えば、マーキング10を鏡筒先端部13の半径よりも大きい半径を有する中空の円形状等とするようにしてもよい。しかしながら、このような例には限られず、マーキングの形状を光源2からの光の照射領域と対応するターゲットの形状に合わせて、他の形状とするようにしてもよい。
【0030】
本開示の実施形態に係る光治療装置は、表示部16に表示されているターゲットに対して、身体上のマーキングを合わせることで精確な位置合わせを実現する光治療装置である。本開示の実施形態に係る光治療装置を用いることにより、患者にとって効果的で使いやすい治療を実現することができる。
【0031】
表示部16には2つ以上のカメラで撮像された映像が結合して表示される。結合する際、身体上のマーキングの大きさ及び位置に基づいて各方向における画像のずれ量を求め、その値に応じて画像の重ね合わせ(スティッチング)を行い、視認性の良い結合画像を表示する。また、位置合わせ用のターゲットとなる印を鏡筒内のビーム照射野の位置に合わせて表示部16に重ねて表示させる。これにより実際のビームの照射位置と身体上のマーキングとを精確に位置合わせすることができる。
【0032】
次に、本開示の実施形態に係る光治療装置の構成について詳細に説明する。
図3に、本開示の実施形態に係る光治療装置1000のブロック図を示す。光治療装置1000は、制御装置100と、光照射部200と、を備える。光照射部200の構成は上述したとおりである。
【0033】
制御装置100は、ずれ量算出部4と、画像結合部5と、ターゲット位置決定部6と、表示部16と、を有する。制御装置100は、さらに、照射位置判定部7と、ターゲットずれ量算出部8と、通信部9と、を有することが好ましい。ずれ量算出部4、画像結合部5、ターゲット位置決定部6、照射位置判定部7、及びターゲットずれ量算出部8は、制御装置100に設けられたCPU等のプロセッサにより記憶部(図示せず)に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。記憶部は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であってよい。表示部16には、液晶表示装置や、有機EL表示装置等を用いることができる。
【0034】
光治療装置1000は、さらに、照射制御用リモコン装置300を備えていることが好ましい。照射制御用リモコン装置300は、通信部301と、入力部302と、制御部303と、を有する。通信部301は、制御装置100の通信部9と無線通信を行い、光照射の制御用のデータ等を送受信する。照射制御用リモコン装置300は、制御装置100と有線接続されていてもよい。入力部302は、患者が光照射をON/OFFするための操作を行うために用いられる。制御部303は、通信部301及び入力部302を制御する。制御部303は、CPUを備えており、記憶部(図示せず)に記憶されたプログラムを実行することにより、照射制御用リモコン装置300を制御する。
【0035】
図4に、本開示の実施形態に係る光治療装置1000において使用するマーキング10の平面図を示す。マーキング10は、その中心の位置を算出し、ターゲットの中心と合せることにより、所望の患部領域に光照射を行うための目印である。マーキング10は、ターゲットより大きい第1のマーキング11、及び、第1のマーキング11より小さい第2のマーキング12を含むことが好ましい。ここで、ターゲットは、鏡筒先端部13の内側であって光源2から光が照射される領域である。第1のマーキング11は鏡筒先端部13の半径よりも大きい半径を有することが好ましい。従って、第1のマーキング11はターゲットより大きいことが好ましい。
【0036】
図4には、マーキング10を構成する第1のマーキング11、及び、第2のマーキング12がともに円形である例を示したが、このような例には限られない。例えば、第1のマーキング11、及び、第2のマーキング12は、楕円形、長方形、正方形、多角形等であってもよい。また、第1のマーキング11と第2のマーキング12が相似形でなくてもよい。例えば、第1のマーキング11を円形とし、第2のマーキング12を正方形とするようにしてもよい。
【0037】
また、第1のマーキング11の形状は、ターゲットの形状と同様の形状であり、鏡筒先端部13より大きいことが好ましい。第1のマーキング11の形状を鏡筒先端部13の形状より大きくすることにより、光照射を行う位置を第1のマーキング11の位置に合せやすくすることができる。
【0038】
図4に示した例では、第2のマーキング12の位置を第1のマーキング11の円上の正十二角形の各頂点の一部に配置する例を示したが、このような例には限られない。例えば、第2のマーキング12の位置を第1のマーキング11の円上の任意の正多角形の各頂点の少なくとも一部に配置するようにすることができる。
【0039】
さらに、第2のマーキング12を第1のマーキング11の正多角形の各頂点の全てに配置する必要はなく、一部の頂点に配置するようにしてもよい。
図4に示した例では、正十二角形の12個の頂点のうち、左側の8個の頂点に配置する例を示している。このように、第2のマーキング12を第1のマーキング11上の一部に配置するのは、第2のマーキングを複数個配置し、そのうち、鏡筒1によって隠れるマーキングの位置が予め判明しているからである。例えば、
図4に示した例では、撮像部3が鏡筒1に対して左側に配置されている場合には、鏡筒1は、マーキング10の右側に映り込み、マーキング10の右側の一部が鏡筒1と重なって視認できなくなる。従って、
図4に示したマーキング10の右側に、さらにもう一つのマーキングを配置した場合は、鏡筒1に対して右側に配置された撮像部3で観察した時に、鏡筒1によって、もう一つのマーキングの左側が隠されるため、第2のマーキングはもう一つのマーキングのうちの第1のマーキングの右側にのみ配置すればよい。
【0040】
第1のマーキング11の全体が鏡筒1と重なることなく、全体を視認できる場合は、第1のマーキング11のみから、中心の位置を算出することができる。しかしながら、鏡筒1を第1のマーキング11へ近づけていくと、第1のマーキング11の一部が鏡筒1と重なることにより、第1のマーキング11の一部が視認できなくなる。そのような場合には、第1のマーキング11のみから中心の位置を算出することができない。そこで、第1のマーキング11の周辺に配置された第2のマーキング12を用いて第1のマーキング11の中心の位置を算出する。例えば、
図4に示すように、正十二角形の頂点となる位置に第2のマーキング12を複数個配置する。正十二角形の頂点に配置された第2のマーキング12と、第1のマーキング11との位置関係は既知であるため、隣接する2つの第2のマーキング12が検出できれば、第1のマーキング11の中心Cの位置を算出することができる。また、隣接する2つの第2のマーキング12の位置から、第1のマーキング11の半径を算出することもできる。以下に、第2のマーキング12の位置から、第1のマーキング11の半径を算出する方法について説明する。
【0041】
第1のマーキング11の半径をR、中心Cから隣接する第2のマーキング12の中心を結ぶ線までの距離をRs、隣接する第2のマーキング12の中心の間の距離をLとする。このとき、隣接する2つの第2のマーキング12の中心の位置から、Lを実測することができる。ここで、半径Rを21mmとしたときに、Rsが23.3mmであることが予め測定されている場合、第1のマーキング11の中心Cと隣接する第2のマーキング12の中心のそれぞれとを結ぶ2つの線のなす角が30度であるため、半径Rは実測値Lから以下の式(1)を用いて算出することができる。
【0042】
【0043】
式(1)は、第2のマーキング12を第1のマーキング11の円上の正十二角形の頂点に配置した場合の例に基づいている。しかしながら、第2のマーキング12の位置から第1のマーキング11の半径を算出する式は、上記の式(1)には限られない。例えば、第2のマーキング12を第1のマーキング11の円上の正十二角形以外の他の正多角形の頂点に配置した場合においても同様に、第2のマーキング12の位置から第1のマーキング11の半径を算出することができる。
【0044】
ずれ量算出部4は、複数の撮像部3が撮像した複数の画像に含まれる複数のマーキングの画像の間のずれ量を算出する。マーキングの検出には、OpenCVに用意されている、ハフ変換を用いて円を検出する関数HoughCircles( )を使用することができる。関数HoughCircles( )を用いることにより、第1のマーキング11の中心の位置が得られる。
【0045】
一方、第1のマーキング11は、撮像部3に近づくと円の一部しか映らなくなり円として検出されなくなる。その場合、関数HoughCircles( )のパラメータを変更して第2のマーキング12を検出する。
【0046】
複数のマーキングの画像の間のずれ量の算出方法は、第1のマーキング11を複数の撮像部3が撮像した複数の画像(例えば、左右の撮像部の画像)で検出できるか否かにより異なる。第1に、左右の撮像部3で撮像した左右両方の画像で第1のマーキング11を検出できる場合は、左右の画像におけるマーキングの画像の間のずれ量は、左右の画像のそれぞれで求めた第1のマーキング11の中心位置の差として求められる。第2に、左右どちらか一方の画像でのみ第1のマーキング11を検出できる場合、または、両方の画像で第2のマーキング12のみ検出できる場合は、マーキングの画像の間のずれ量は、第1のマーキング11の半径に比例するため、予めその比例係数を求め、第1のマーキング11の半径からずれ量を算出することができる。
【0047】
画像結合部5は、算出したずれ量に基づいて、複数のマーキングの画像を結合する。次に、検出したマーキングを用いて画像を結合する手順について説明する。
図5に、本開示の実施形態に係る光治療装置により画像を結合する手順を説明するためのフローチャートを示す。
【0048】
まず、ステップS101において、左右に設けられた撮像部3によって撮像した左右両方の画像から第1のマーキング11の検出を実行する。次に、ステップS102において、左右両方の画像で第1のマーキング11が検出されたか否かを判断する。左右両方の画像で第1のマーキング11が検出された場合は、ステップS103において、左右の画像上の第1のマーキング11の位置から、ずれ量を算出する。次に、ステップS104において、算出したずれ量に基づいて左右の画像を結合する。画像結合の具体的な方法については後述する。
【0049】
一方、ステップS102において、左右両方の画像で第1のマーキング11が検出されなかった場合は、ステップS105において、左右の画像の片方で第1のマーキング11が検出されたか否かを判断する。片方の画像から第1のマーキング11が検出された場合は、ステップS106において、片方の画像の第1のマーキング11の半径から、ずれ量を算出する。次に、ステップS104において、算出したずれ量に基づいて左右の画像を結合する。
【0050】
一方、ステップS105において、左右の画像のいずれも第1のマーキング11が検出されなかった場合は、ステップS107において、第2のマーキング12の検出を実行する。次に、ステップS108において、左右どちらかの画像で第2のマーキング12が検出されたか否かを判断する。左右どちらかの画像で第2のマーキング12が検出された場合は、ステップS109において、上記の式(1)に従って、第2のマーキング12間の距離Lから第1のマーキング11の半径Rを算出する。次に、ステップS110において、片方の画像の第1のマーキング11の半径から、ずれ量を算出する。次に、ステップS104において、算出したずれ量に基づいて左右の画像を結合する。
【0051】
一方、ステップS108において、左右のいずれの画像からも第2のマーキング12が検出されなかった場合は、ステップS111において、1つ前のフレームの画像から求めたずれ量を使用する。次に、ステップS104において、ずれ量に基づいて左右の画像を結合する。
【0052】
次に、2つの画像に含まれるマーキング間のずれ量に基づいて、2つの画像を結合する方法について説明する。ここで、画像の幅とマーキングのずれ量との間の関係に基づいて、画像の結合方法は2通り考えられる。第1の方法は、マーキングのずれ量が画面の幅以下の場合である。
図6に、本開示の実施形態に係る光治療装置において、左右の撮像部3で撮像した画像であって、マーキングのずれ量が画面の幅以下の場合の例を示す。
図6において、左側の撮像部3で撮像した左画像20Lにはマーキング10Lが表示され、右側の撮像部3で撮像した右画像20Rにはマーキング10Rが表示されている。また、マーキング10Lと10Rとの間のずれ量はD、画面のサイズはWである。
図6に示した例では、ずれ量Dは画面の幅W以下である(D≦W)。なお、
図6~
図9においては、説明を分かりやすくするために第2のマーキングの記載を省略しているが、マーキング(10R、10L等)の円上に配置された任意の正多角形の各頂点の少なくとも一部に、
図4と同様に第2のマーキングが配置されている。
【0053】
図7に、
図6に示した2つの画像から結合画像を生成する手順を説明するための図を示す。左右のマーキング10Lと10Rとの間のずれ量が分かっている場合、左右の画像(20L、20R)から、破線22を境にして斜線を施した領域(21L、21R)を削除する。例えば、削除する領域21L及び21Rは、幅(W-D)/2の画像とすることができる。斜線を施した領域(21L、21R)を削除した残りの画像(20L´、20R´)には、マーキング10Lのうち、斜線部分が削除された残りのマーキング10L´と、マーキング10Rのうち、斜線部分が削除された残りのマーキング10R´が表示されている。
【0054】
次に、左右の画像(20L、20R)から、斜線を施した領域(21L、21R)を削除した後の画像(20L´、20R´)を並べて結合した結合画像20´を作成する。このとき、結合画像20´には、一部が削除された残りのマーキング10R´及び10L´が結合されて、マーキング10´が生成される。
【0055】
次に、第2の方法として、マーキングのずれ量が画面の幅より大きい場合について説明する。
図8に、本開示の実施形態に係る光治療装置において、左右の撮像部で撮像した画像であって、マーキングのずれ量が画面の幅より大きい場合の例を示す。
図8において、左側の撮像部3で撮像した左画像20Lにはマーキング10Lが表示されている。一方、右側の撮像部3で撮像した右画像20Rにはマーキング10Rが表示されず、
図8において、点線で示すように画面20Rの外側に存在する。また、マーキング10Lと10Rとの間のずれ量をD、画面のサイズをWとした場合、
図8に示した例では、ずれ量Dは画面の幅Wより大きい(D>W)。
【0056】
図9に、
図8に示した2つの画像から結合画像を生成する手順を説明するための図を示す。左右のマーキング10Lと10Rとの間のずれ量Dが、画像の幅Wより大きい場合は、削除する領域の幅はマイナスとなる。即ち、結合に必要な画像の幅が撮像した画像の幅よりも大きくなるため、結合した画像の中央は何も画像が存在しない領域23になる。
【0057】
次に、画像20Lと20Rの間に画像23を付加して結合させた結合画像20″を生成する。このとき、結合画像20″には、マーキング10L及び10Rが結合されて、マーキング10″が生成される。
【0058】
以上のようにして、左右の画像を結合することにより、結合されたマーキング(10´、10″)を生成し、生成したマーキング(10´、10″)に光照射領域を合せるようにして照射を実行する。
【0059】
次に、2つの撮像部で撮像したマーキングを結合し、結合したマーキングに光照射領域の位置を表すターゲットを重ね合わせる手順について説明する。
図10に、本開示の実施形態に係る光治療装置において、マーキングの一部が鏡筒と重なる場合において、左右の撮像部で撮像した2つの画像から結合画像を生成する手順を説明するための図を示す。
図10の上部には、左側の撮像部3で撮像された左画像20Lと、右側の撮像部3で撮像された右画像20Rが示されている。
【0060】
左画像20Lには、マーキング10Lが表示されている。マーキング10Lは、第1のマーキング11Lと第2のマーキング12Lを含む。左画像20Lには、鏡筒1の左側の一部の画像23Lが映り込んでおり、第1のマーキング11Lの一部が視認できない。この場合は、第2のマーキング12Lを用いて、第1のマーキング11Lの中心の位置、または半径を算出する。
【0061】
右画像20Rには、マーキング10Rが表示されている。マーキング10Rは、第1のマーキング11Rと第2のマーキング12Rを含む。右画像20Rには、鏡筒1の右側の一部の画像23Rが映り込んでおり、第1のマーキング11Rの一部が視認できない。この場合は、第2のマーキング12Rを用いて、第1のマーキング11Rの中心の位置、または半径を算出する。そして、算出された第1のマーキング11R及び11Lのそれぞれの中心の位置、または半径からずれ量を算出する。
【0062】
次に、算出したずれ量から、左画像20Lのうち、破線22Lの右側の領域21Lを削除して、残りの画像20L´を生成する。ここで、削除する領域21Lに鏡筒1の一部の画像23Lを含めるようにし、残りの画像20L´には鏡筒1の一部の画像23Lが含まれないように破線22Lの位置を決めることが好ましい。
【0063】
同様に、算出したずれ量から、右画像20Rうち、破線22Rの左側の領域21Rを削除して、残りの画像20R´を生成する。ここで、削除する領域21Rに鏡筒1の一部の画像23Rを含めるようにし、残りの画像20R´には鏡筒1の一部の画像23Rが含まれないように破線22Rの位置を決めることが好ましい。
【0064】
次に、
図10の下段に示すように、残りの画像20L´及び20R´を結合して結合画像20´を生成する。結合画像20´には、マーキング10Lと10Rが結合されたマーキング10´が表示されている。結合画像20´において、破線22Lと22Rは、破線22の位置で重なる。
【0065】
図10の下段に示した結合画像20´には、鏡筒の位置が表示されないため、このままではマーキング10´を光照射領域に合せることができない。そこで、結合画像20´上において光照射領域に対応する位置にターゲットを重ねて表示する。
図11(a)に、
図10に示した結合画像20´にターゲット24の画像を表示させた場合の画面の例を示す。ターゲット位置決定部6は、結合画像20´上において、光源2からの光の照射領域と対応するターゲット24の位置を決定する。例えば、ターゲット24は、結合画像20´の略中央に表示するようにしてもよい。ただし、このような例には限られない。
図11(a)に示すように、表示部16は、結合されたマーキング10´の画像上にターゲット24の画像を重ねて表示する。
図11(a)においては、
図10に示したように2つの画像から結合されたマーキング10´を作成する段階よりも、鏡筒先端部13を患者の治療部位に近づけている。そのため、
図11(a)においては、
図10におけるよりも撮像部3が治療部位に接近し、
図11(a)において結合画像20´上に表示されるマーキング10´のサイズが
図10に示した場合よりも大きく表示されている。
【0066】
ターゲット24には、光照射領域25、及び照射領域の中心位置を示すマーカ26を重ねて表示することが好ましい。ターゲットずれ量算出部8は、ターゲット24の位置とマーキング10´の位置との間のターゲットずれ量を算出する。このとき、マーキング10´を構成する第1のマーキング(11R、11L)の一部がターゲット24と重なり、全体が表示されないため、第2のマーキング(12R、12L)を用いてマーキング10´の中心の位置を算出することが好ましい。ターゲットずれ量は、算出したマーキング10´の中心の位置とマーカ26の中心の位置との差により算出することができる。
【0067】
照射位置判定部7は、結合されたマーキング10´の画像の位置と、ターゲット24の画像の位置とが合っているか否かに基づいて、光照射領域25の位置が所定の照射領域の位置となっているか否かを判定する。また、照射位置判定部7は、光源2からの光照射領域25の中心の位置と、ターゲット24の中心の位置とが合っているか否かを判定することが好ましい。
図11(b)は、結合したマーキング10´にターゲット24の位置を合せた場合の画像の例を示す。この時、実際のビーム照射位置は鏡筒1内に存在するため外側の撮像部3からは捕捉できない。そのため、マーキング10´と鏡筒1の位置合わせでは、照射ビームの中心にマーキング10´の中心が合致しているかは不明である。しかしながら、ターゲット24と照射ビームの中心位置が合致していれば、ターゲット24とマーキング10´との位置合わせにより所定の照射位置にビームを精確に合わせることが可能となる。
【0068】
ターゲット24とマーキング10´との位置合わせが完了した後、照射制御用リモコン装置300を操作して、光照射を実行する。ターゲット24とマーキング10´との位置合わせが完了したときに、結合画像20´の一部に、位置合わせが完了し、光照射を実行してもよい旨の表示を行うようにしてもよい。例えば、
図11(b)に示すように、結合画像20´の一部に「OK」との表示27を行うようにしてもよい。患者は、結合画像20´に「OK」との表示がなされたことを確認して光照射が可能であることを認識することができる。あるいは、ターゲット24とマーキング10´との位置合わせが完了したときに、結合画像20´の一部に位置合わせが完了し、光照射を実行してもよい旨を照射制御用リモコン装置300や表示部16等から、音声により患者に報知するようにしてもよい。
【0069】
一方、ターゲット24とマーキング10´との位置合わせが完了していない場合には、結合画像20´の一部に、位置合わせが完了しておらず、光照射は実行できない旨の表示を行うようにしてもよい。例えば、結合画像20´の一部に「NG」との表示を行うようにしてもよい。結合画像20´の一部に「NG」との表示がなされている場合には、光照射は実行されないように制御することが好ましい。患者が患部に適切に光照射を行う準備が整っておらず、位置がずれた状態では光照射による所望の効果が得られないからである。
【0070】
また、ターゲット24とマーキング10´との位置合わせが完了していない場合に、患者が照射制御用リモコン装置300を操作して光照射を実行しようとした場合には、警告音等により、警告を行って、患者に位置合わせが完了していないことを認識させることが好ましい。さらに、光照射の照射時間は数分から数十分に及ぶため、光を照射している途中でターゲット24とマーキング10´との位置がずれた場合には、ずれた時点で光照射を停止させるようにしてもよい。
【0071】
以上のようにして、患者は結合したマーキング10´とターゲット24の位置を合せることにより、患部へ精確に光照射を実行することができる。
【0072】
上記の説明において、マーキング(第1のマーキング)を1つのみ用いて位置合わせを行う例について説明したが、マーキング(第1のマーキング)は複数配置するようにしてもよい。例えば、背骨の左右両側に走っている神経に対して、それぞれ1ヶ所ずつ光を照射する場合等、光を照射する箇所が複数ある場合は、それに応じてマーキングの数を調整するようにしてもよい。
【0073】
ここで、患部への光照射の際に鏡筒先端部13と患者の皮膚との間に隙間が生じると光が鏡筒1の外部に漏れ、漏れた光が撮像部3に入射し、表示部16に写し出される画像が視認しにくくなることが考えられる。そこで、複数の撮像部3の前方に設置され、光源2の照射光を遮光するフィルタ(図示せず)をさらに有することが好ましい。フィルタを設けることにより、鏡筒1から漏れた光が撮像部3に到達しても表示部16に表示される画像に対する影響を抑えることができる。
【0074】
上記のように、鏡筒先端部13と患者の皮膚との間に隙間が生じた場合には、鏡筒1から光が漏れ、漏れた光の一部はマーキング10に入射する可能性がある、そのため、光源2の照射光の波長は、マーキング10の吸収波長と重複しないことが好ましい。光源2からの光がマーキング10で吸収されると、マーキング10が配置された皮膚の温度が上がり好ましくないためである。
図12に、本開示の実施形態に係る光治療装置において使用する光の波長と皮膚及びマーキングをした皮膚の吸光度との関係を表すグラフを示す。
図12において、横軸は波長[nm]、縦軸は吸光度を示す。
図12に示すように、マーキングをした皮膚の吸光度31は、可視光の波長帯域で、マーキングをしていない皮膚の吸光度32より大きくなっており、肉眼で視認されやすいことを示している。一方、光治療装置1000の光源2からの光の波長30は、例えば、約800[nm]であり、この波長では皮膚の吸光度32及びマーキングをした皮膚の吸光度31は同等の値を示している。つまり、マーキングによって特異的にこの波長の光が吸収されることはないことを表している。従って、光源2からの光の一部が鏡筒1から漏れてマーキングに照射されたとしても、マーキングが配置された皮膚において温度が上昇するおそれはなく、安全に治療を行うことができる。
【0075】
以上説明したように、本開示の実施形態に係る光治療装置によれば、治療部位に光照射領域を精確に位置合わせすることができる。