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特許7399337無触媒脱硝システム、燃焼設備、および脱硝方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】無触媒脱硝システム、燃焼設備、および脱硝方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/00 20060101AFI20231208BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F23J15/00 A
F23G5/50 C
F23G5/50 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023051311
(22)【出願日】2023-03-28
【審査請求日】2023-04-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】新家谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】山本 研二
(72)【発明者】
【氏名】大丸 卓一郎
(72)【発明者】
【氏名】今田 潤司
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 稔彦
(72)【発明者】
【氏名】栗山 修平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 克博
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 芳久
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第212777384(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第110513702(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0063887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 15/00-15/08
B01D 53/56
F23G 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼中の被燃焼物を搬送させる火格子と、前記火格子の上方に配置されて燃焼ガスが上方に向けて流れる流路とを含む燃焼設備において、前記流路に設置され、前記燃焼ガスの流れ方向に対する脱硝剤の吐出角度を調整可能な第1ノズルを含む脱硝剤供給部と、
前記燃焼ガスの温度に関する情報に基づき、前記第1ノズルの前記吐出角度を制御する制御部と、
を備え、
前記流路は、前記燃焼ガスの流れ方向とは交差する方向に沿う水平方向の断面において、上方から見た場合に、第1領域と、前記被燃焼物の搬送方向で前記第1領域よりも下流側に位置した第2領域とを含み、
前記脱硝剤供給部は、前記第1領域に対応して配置された前記第1ノズルと、前記第2領域に対応して配置された第2ノズルとを含み、
前記制御部は、前記第1領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度と、前記第2領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度との温度差に基づき、前記第1ノズルから吐出される前記脱硝剤の量と前記第2ノズルから吐出される前記脱硝剤の量とのうち少なくとも一方を制御する、
触媒脱硝システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記燃焼ガスの温度が所定基準よりも低い場合に、前記燃焼ガスの流れ方向の上流側に向けて前記脱硝剤を吐出するように前記第1ノズルの前記吐出角度を制御し、
前記燃焼ガスの温度が前記所定基準よりも高い場合に、前記燃焼ガスの流れ方向の下流側に向けて前記脱硝剤を吐出するように前記第1ノズルの前記吐出角度を制御する、
請求項1に記載の無触媒脱硝システム。
【請求項3】
前記火格子と、
前記流路と、
請求項1または請求項2に記載の無触媒脱硝システムと、
を備えた燃焼設備。
【請求項4】
燃焼中の被燃焼物を搬送させる火格子と、前記火格子の上方に配置されて燃焼ガスが上方に向けて流れる流路とを含む燃焼設備において燃焼ガスが流れる流路に脱硝剤を吐出する脱硝方法であって、
前記流路は、前記燃焼ガスの流れ方向とは交差する方向に沿う水平方向の断面において、上方から見た場合に、第1領域と、前記被燃焼物の搬送方向で前記第1領域よりも下流側に位置した第2領域とを含み、
前記脱硝方法は、
前記燃焼ガスの流れ方向に対する吐出角度であって第1ノズルから脱硝剤を吐出する吐出角度を、前記燃焼ガスの温度に関する情報に基づき変更し、
前記第1領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度と、前記第2領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度との温度差に基づき、前記第1領域に対応して配置された前記第1ノズルから吐出される前記脱硝剤の量と、前記第2領域に対応して配置された第2ノズルから吐出される前記脱硝剤の量とのうち少なくとも一方を制御する、
ことを含む脱硝方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無触媒脱硝システム、燃焼設備、脱硝方法、および拡張ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボイラ内のガスに対して脱硝剤として尿素水あるいはアンモニア水を使用して脱硝する無触媒脱硝装置が開示されている。この無触媒脱硝装置では、ボイラ内に脱硝剤を吹き込む脱硝剤吹き込みノズルを高さが異なる複数箇所に配設し、ボイラの運転負荷状況に応じて、上記複数の脱硝剤吹き込みノズルのなかから脱硝剤の反応効率が最大となる高さ位置にある脱硝剤吹き込みノズルを求め、求めた脱硝剤吹き込みノズルのみを使用して脱硝剤を吹き込むことで、脱硝効率の低下を防止する。
【0003】
特許文献2には、予め焼却炉で実測された還元剤供給手前位置での排ガス量と焼却炉出口側での窒素酸化物濃度との関係を用いて、求められた排ガス量に対応する窒素酸化物濃度を求め、求められた窒素酸化物濃度および目標値としての窒素酸化物濃度に基づいて脱硝率を求め、予め求められた脱硝率と当該脱硝率を達成するための還元剤の当量比(還元剤/窒素酸化物)との関係を示すデータに基づき還元剤の供給量を決定する燃焼設備が開示されている。この燃焼設備では、供給用ノズルは、排ガスの流れ方向に1~3mの範囲の距離で複数箇所(例えば3か所)に配置され、燃焼負荷に応じて複数の供給用ノズルのなかから使用される供給用ノズルが選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-64291号公報
【文献】特許第6049809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1または特許文献2のように、状況に応じて選択される複数のノズルを配置する場合、複数のノズルを配置すること、または、複数のノズルを配置することに関連した周辺構造の施工が複雑になる場合がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、施工性の向上を図ることができる無触媒脱硝システム、燃焼設備、脱硝方法、および拡張ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る無触媒脱硝システムは、燃焼中の被燃焼物を搬送させる火格子と、前記火格子の上方に配置されて燃焼ガスが上方に向けて流れる流路とを含む燃焼設備において、前記流路に設置されて前記燃焼ガスの流れ方向に対する脱硝剤の吐出角度を調整可能な第1ノズルを含む脱硝剤供給部と、前記燃焼ガスの温度に関する情報に基づいて前記第1ノズルの前記吐出角度を制御する制御部と、を備える。前記流路は、前記燃焼ガスの流れ方向とは交差する方向に沿う水平方向の断面において、上方から見た場合に、第1領域と、前記被燃焼物の搬送方向で前記第1領域よりも下流側に位置した第2領域とを含む。前記脱硝剤供給部は、前記第1領域に対応して配置された前記第1ノズルと、前記第2領域に対応して配置された第2ノズルとを含む。前記制御部は、前記第1領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度と、前記第2領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度との温度差に基づき、前記第1ノズルから吐出される前記脱硝剤の量と前記第2ノズルから吐出される前記脱硝剤の量とのうち少なくとも一方を制御する。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る燃焼設備は、燃焼中の被燃焼物を搬送させる火格子と、前記火格子の上方に配置されて燃焼ガスが上方に向けて流れる流路と、無触媒脱硝システムと、を備える。前記無触媒脱硝システムは、前記流路に設置されて前記燃焼ガスの流れ方向に対する脱硝剤の吐出角度を調整可能な第1ノズルを含む脱硝剤供給部と、前記燃焼ガスの温度に関する情報に基づいて前記第1ノズルの前記吐出角度を制御する制御部と、を備える。前記流路は、前記燃焼ガスの流れ方向とは交差する方向に沿う水平方向の断面において、上方から見た場合に、第1領域と、前記被燃焼物の搬送方向で前記第1領域よりも下流側に位置した第2領域とを含む。前記脱硝剤供給部は、前記第1領域に対応して配置された前記第1ノズルと、前記第2領域に対応して配置された第2ノズルとを含む。前記制御部は、前記第1領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度と、前記第2領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度との温度差に基づき、前記第1ノズルから吐出される前記脱硝剤の量と前記第2ノズルから吐出される前記脱硝剤の量とのうち少なくとも一方を制御する。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示に係る脱硝方法は、燃焼中の被燃焼物を搬送させる火格子と、前記火格子の上方に配置されて燃焼ガスが上方に向けて流れる流路とを含む燃焼設備において、前記流路に脱硝剤を吐出する脱硝方法である。前記流路は、前記燃焼ガスの流れ方向とは交差する方向に沿う水平方向の断面において、上方から見た場合に、第1領域と、前記被燃焼物の搬送方向で前記第1領域よりも下流側に位置した第2領域とを含む。前記脱硝方法は、前記燃焼ガスの流れ方向に対する吐出角度であって第1ノズルから脱硝剤を吐出する吐出角度を、前記燃焼ガスの温度に関する情報に基づき変更し、前記第1領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度と、前記第2領域に関して検出された前記燃焼ガスの温度との温度差に基づき、前記第1領域に対応して配置された前記第1ノズルから吐出される前記脱硝剤の量と、前記第2領域に対応して配置された第2ノズルから吐出される前記脱硝剤の量とのうち少なくとも一方を制御する、ことを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示の無触媒脱硝システム、燃焼設備、脱硝方法、および拡張ノズルによれば、施工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1実施形態の燃焼設備の全体構成を示す図である。
図2図1中のF2線で囲まれた領域を拡大して示す斜視図である。
図3】本開示の第1実施形態のノズルを示す断面図である。
図4】本開示の第1実施形態のノズルを示す断面図である。
図5】本開示の第1実施形態の脱硝に関連する機能構成を示すブロック図である。
図6】本開示の第1実施形態の反応温度と脱硝率との関係を示す図である。
図7】本開示の第1実施形態の吐出角度の制御を説明するための図である。
図8】本開示の第1実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。
図9】本開示の第1実施形態の吐出角度調整の作用効果を説明するための図である。
図10】本開示の第1実施形態の変形例のノズルを示す断面図である。
図11】本開示の第2実施形態の火炉を示す斜視図である。
図12】本開示の第2実施形態の温度検出部の別態様を説明するための図である。
図13】本開示の第2実施形態の赤外画像を説明するための図である。
図14】本開示の第2実施形態の脱硝に関連する機能構成を示すブロック図である。
図15】本開示の第2実施形態の吐出量の制御を説明するための図である。
図16】本開示の第2実施形態の制御の流れを示すフローチャートである。
図17】本開示の第2実施形態の吐出量調整の作用効果を説明するための図である。
図18】本開示の実施形態のコンピュータの構成を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本開示で「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含み得る。また「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含み得る。本開示で「XXまたはYY」とは、XXとYYのうちいずれか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方の場合も含み得る。これは選択的要素が3つ以上の場合も同様である。「XX」および「YY」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。
【0014】
以下に説明する実施形態では、説明の便宜上、後述する炉本体20からホッパ11に向かう側を「前」、その反対方向を「後」と定義する。また、炉本体20からホッパ11に向かう方向を基準として「左」および「右」を定義する。
【0015】
(第1実施形態)
<1.焼却設備の全体構成>
図1は、第1実施形態に係る燃焼設備1の全体構成を示す図である。燃焼設備1は、例えば、都市ごみ、産業廃棄物、またはバイオマスなどを被焼却物Gとする焼却設備である。以下では説明の便宜上、「被焼却物G」を「ごみG」と称する。燃焼設備1は、例えばストーカ炉である。なお、燃焼設備1は、ストーカ炉に限定されず、別タイプの燃焼設備でもよい。本実施形態では、燃焼設備1は、例えば、焼却炉2、排熱回収ボイラ3、減温塔4、集塵装置5、煙道6、煙突7、および制御装置100を備える。
【0016】
焼却炉2は、後述するホッパ11に投入されたごみGを搬送しながら燃焼させる炉である。焼却炉2内でのごみGの燃焼に伴って焼却炉2では排ガスが発生する。発生した排ガスは、焼却炉2の上部に設けられた排熱回収ボイラ3に送られる。排熱回収ボイラ3は、焼却炉2で発生した排ガスと水との間で熱交換を行うことで水を加熱して蒸気を発生させる。排熱回収ボイラ3を通過した排ガスは、減温塔4で冷却された後、集塵装置5に送られる。排ガスは、集塵装置5でススや塵埃が除去された後、煙道6および煙突7を通じて大気中に排出される。
【0017】
<2.焼却炉>
次に、焼却炉2について詳しく説明する。焼却炉2は、例えば、供給機構10、炉本体20、ストーカ30、複数の風箱41、排出シュート42、火炉43、および送風機構50を有する。
【0018】
(供給機構)
供給機構10は、不図示のクレーンによって運ばれたごみGを、一時的に貯留するとともに、後述する炉本体20の処理空間Vに向けて順次供給する機構である。供給機構10は、例えば、ホッパ11と、フィーダ12とを有する。
【0019】
ホッパ11は、炉本体20の内部へごみGを供給するために設けられた貯留部である。ホッパ11には、不図示のクレーンによって運ばれたごみGが投入される。ホッパ11は、ごみGが外部から投入される入口部11aと、供給されるごみGを、後述する炉本体20内の処理空間Vに向けて導く出口部11bとを有する。
【0020】
フィーダ12は、ホッパ11の出口部11bに設けられている。フィーダ12は、ホッパ11の出口部11bの底部に沿う板状であり、ホッパ11の出口部11bの底部に沿って配置されている。フィーダ12は、不図示の押出装置によって駆動され、ホッパ11の内部に堆積したごみGを炉本体20の処理空間Vに向けて押し出す。
【0021】
(炉本体)
炉本体20は、ホッパ11に隣接して設けられ、ごみGを搬送しながら燃焼させる設備である。以下では、燃焼設備1におけるごみGの搬送方向を「搬送方向D」と称する。炉本体20は、搬送方向Dにおける上流側から下流側に向けて、乾燥段20a、燃焼段20b、および後燃焼段20cをこの順に有する。乾燥段20aは、ホッパ11から供給されたごみGを、ストーカ30上での燃焼に先立って乾燥させる領域である。燃焼段20bおよび後燃焼段20cは、乾燥段20aを通過して乾燥した状態のごみGをストーカ30上で燃焼させる領域である。燃焼段20bでは、ごみGから発生する熱分解ガスによる拡散燃焼が起き、輝炎Fが生じる。後燃焼段20cでは、ごみGの拡散燃焼後の固定炭素燃焼が起きるため、輝炎Fは生じない。燃焼段20bおよび後燃焼段20cは、ごみGを燃焼させる処理空間Vの一例である。
【0022】
(ストーカ)
ストーカ30は、複数の火格子31を含む。複数の火格子31は、炉本体20の底面(例えば処理空間Vの底面)となるストーカ面30aを形成している。ストーカ面30aには、供給機構10によってごみGが層状に供給される。ストーカ面30aは、上述した乾燥段20a、燃焼段20b、および後燃焼段20cに亘り設けられている。複数の火格子31は、固定火格子と、可動火格子とを含む。固定火格子は、後述する風箱41の上面に固定されている。可動火格子は、一定の速度で搬送方向Dに沿って往復移動することで、可動火格子と固定火格子の上(ストーカ面30a上)にあるごみGを攪拌混合しながら下流側へ搬送する。
【0023】
(風箱)
風箱41は、ストーカ30の下方に設けられ、ストーカ30を通じて炉本体20の内部に燃焼用の空気を供給する。風箱41は、搬送方向Dに複数配列されている。
【0024】
(排出シュート)
排出シュート42は、燃焼を終えて灰となったごみGを炉本体20よりも下方に位置する灰押出装置へ落下させる装置である。排出シュート42は、炉本体20の炉尻に設けられている。
【0025】
(火炉)
火炉43は、炉本体20の上部から上方に向けて延びている。処理空間V内でごみGが燃焼することで生じた排ガスは、火炉43を通じて排熱回収ボイラ3に送られる。排ガスは、「燃焼ガス」の一例である。火炉43は、「燃焼ガスが流れる流路」の一例である。火炉43については、詳しく後述する。
【0026】
(送風機構)
送風機構50は、炉本体20の内部に空気(例えば燃焼空気)を供給する。送風機構50は、例えば、送風機51、一次空気ライン52、空気予熱器53、二次空気ライン54、およびダンパ55を有する。
【0027】
送風機51は、炉本体20の内部に空気(例えば燃焼空気)を圧送する押込送風機である。送風機51は、例えば、第1送風機51Aと、第2送風機51Bとを含む。第1送風機51Aは、一次空気ライン52および風箱41を通じて炉本体20の内部(例えば処理空間V)に燃焼空気を圧送する。第2送風機51Bは、二次空気ライン54を通じて、火炉43の内部に燃焼空気を圧送する。
【0028】
一次空気ライン52は、第1送風機51Aと風箱41とを接続している。一次空気ライン52の途中には、1つ以上(例えば複数)の一次空気ダンパ55Aが設けられている。一次空気ダンパ55Aは、一次空気ダンパ55Aの開度によって一次空気ライン52を流れる燃焼空気の流量を変更する。空気予熱器53は、第1送風機51Aから圧送される空気を予熱する熱交換器である。例えば、空気予熱器53は、一次空気ライン52の途中に設けられている。
【0029】
二次空気ライン54は、第2送風機51Bと火炉43とを接続している。火炉43内に供給された二次空気は、ストーカ30の上方からごみGに向かう。二次空気ライン54の途中には、1つ以上(例えば複数)の二次空気ダンパ55Bが設けられている。二次空気ダンパ55Bは、二次空気ダンパ55Bの開度によって二次空気ライン54を流れる燃焼空気の流量を変更する。本実施形態では、一次空気ダンパ55Aと二次空気ダンパ55Bとを合わせて「ダンパ55」と称する。
【0030】
<3.排熱回収ボイラ>
次に、排熱回収ボイラ3について説明する。排熱回収ボイラ3は、例えば、ボイラ本体61と、管路62とを含む。ボイラ本体61は、焼却炉2の火炉43に接続されている。ボイラ本体61の内部には、焼却炉2で発生した排ガスが流入する。管路62は、ボイラ本体61の内部を延びている。管路62には、複数の過熱器および複数の減温器が設けられている。管路62の入口部には、給水部から水が供給される。管路62を流れる水の少なくとも一部は、ボイラ本体61の内部で熱交換により加熱され、主蒸気となって外部機器(例えばタービン)に向けて流れる。
【0031】
<4.火炉>
次に、火炉43について詳しく説明する。
図2は、図1中のF2線で囲まれた領域を拡大して示す斜視図である。本実施形態では、火炉43は、例えば、炉壁70、複数のノズル80、および温度検出部90を有する。
【0032】
(炉壁)
炉壁70は、火炉43において排ガスが流れる流路を形成する。炉壁70は、例えば、前壁71、後壁72、左壁73、および右壁74により規定される円筒状に形成され、鉛直方向に延びている。炉壁70は、耐火物により形成されている。
【0033】
(ノズル)
複数のノズル80は、脱硝剤を火炉43内に吐出するノズルである。脱硝剤は、例えば、アンモニアガスであるが、アンモニア水、尿素ガス、または尿素水などでもよい。複数のノズル80は、第1群G1に含まれる複数のノズル81(例えば4つのノズル81A~81D)と、第2群G2に含まれる複数のノズル82(例えば4つのノズル82A~82D)とを含む。以下では、ノズル81A~81Dおよびノズル82A~82Dを区別しない場合、単に「ノズル80」と称する。
【0034】
第1群G1に含まれる複数のノズル81は、火炉43において第1高さH1に配置されている。第1高さH1は、例えば、ある基準面(例えばストーカ面30a)からの高さが9mの位置である。ただし、第1高さH1は、上記具体例の高さに限定されない。ノズル81Aおよびノズル81Bは、火炉43の左壁73に設けられ、左壁73から火炉43内に脱硝剤を吐出する。一方で、ノズル81Cおよびノズル81Dは、火炉43の右壁74に設けられ、右壁74から火炉43内に脱硝剤を吐出する。
【0035】
また別の観点では、ノズル81Aおよびノズル81Cは、上方から見た場合、火炉43の内部空間において中央よりも前側に位置する前部空間FS(図1参照)に対応して配置され、前部空間FSに脱硝剤を吐出する。一方で、ノズル81Bおよびノズル81Dは、上方から見た場合、火炉43の内部空間において中央よりも後側に位置する後部空間BS(図1参照)に対応して配置され、後部空間BSに脱硝剤を吐出する。
【0036】
第2群G2に含まれる複数のノズル82は、火炉43において、第1高さH1とは異なる第2高さH2に配置されている。第2高さH2は、例えば、上記基準面からの高さが11mの位置である。ただし、第2高さH2は、上記具体例の高さに限定されない。ノズル82Aおよびノズル82Bは、火炉43の左壁73に設けられ、左壁73から火炉43内に脱硝剤を吐出する。一方で、ノズル82Cおよびノズル82Dは、火炉43の右壁74に設けられ、右壁74から火炉43内に脱硝剤を吐出する。
【0037】
また別の観点では、ノズル82Aおよびノズル82Cは、上方から見た場合、火炉43の内部空間において前部空間FS(図1参照)に対応して配置され、前部空間FSに脱硝剤を吐出する。一方で、ノズル82Bおよびノズル82Dは、上方から見た場合、火炉43の内部空間において後部空間BS(図1参照)に対応して配置され、後部空間BSに脱硝剤を吐出する。
【0038】
ただし、ノズル80の配置および数は、上記例に限定されない。ノズル80は、少なくとも1つあればよい。本実施形態では、ノズル81A~81Dおよびノズル82A~82Dの各々は、「第1ノズル」の一例である。
【0039】
(温度検出部)
温度検出部90は、火炉43内の温度(排ガスの温度)を検出する温度検出部である。温度検出部90は、例えば、第1温度検出部91と、第2温度検出部92とを含む。第1温度検出部91は、例えば、第1高さH1に設けられた温度検出器(例えば熱電対)であり、第1高さH1における排ガスの温度を検出する。第2温度検出部92は、例えば、第2高さH2に設けられた温度検出器(例えば熱電対)であり、第2高さH2における排ガスの温度を検出する。
【0040】
ただし、第1温度検出部91および第2温度検出部92の配置および数は、上記例に限定されない。例えば、第1温度検出部91および第2温度検出部92は、第1高さH1および第2高さH2とは異なる高さ位置に配置されてもよい。また、第1温度検出部91および第2温度検出部92のいずれか一方は省略されてもよい。また、第1温度検出部91および第2温度検出部92の各々は、熱電対に限られない。第1温度検出部91および第2温度検出部92の各々は、排ガスの温度を検出可能な検出部であればよく、赤外カメラなどでもよい。
【0041】
<5.無触媒脱硝システム>
本実施形態では、燃焼設備1は、無触媒脱硝システム200を備える。無触媒脱硝システム200は、脱硝剤供給部210と、後述するノズル角度制御部110(図5参照)とを含む。
【0042】
脱硝剤供給部210は、例えば、上述したノズル80と、脱硝剤供給ライン211と、圧送機212とを含む。脱硝剤供給ライン211は、各ノズル80に接続されている。圧送機212は、脱硝剤供給ライン211を通じて各ノズル80に接続されている。圧送機212は、脱硝剤供給ライン211を通じて各ノズル80に脱硝剤を圧送する。
【0043】
<6.ノズルの構造>
次に、ノズル80の構造について詳しく説明する。
図3および図4は、ノズル80を示す断面図である。本実施形態では、ノズル80は、排ガスの流れ方向に対する脱硝剤の吐出角度を調整可能な構造を有する。本実施形態では、排ガスの流れ方向は、下方から上方に向かう鉛直方向である。ノズル80は、鉛直方向に対する脱硝剤の吐出角度(すなわち上下方向の角度)を調整可能な構造を有する。ノズル80は、例えば、管部85、静止部86、可動部87、および調整機構88を有する。
【0044】
(管部)
管部85は、炉壁70に固定され、脱硝剤供給ライン211から脱硝剤が供給される。管部85は、例えば、直管により形成され、火炉43の内部に向けて水平方向に直線状に延びている。管部85は、例えば、炉壁70に設けられた穴部70hに通されている。
【0045】
(静止部)
静止部86は、可動部87を回動可能に支持する部分である。静止部86は、管部85と可動部87との間に設けられ、管部85に接続されている。
【0046】
静止部86は、例えば、球状または円筒状の外形を有する。すなわち、鉛直方向に沿う断面(図3に示す断面)で見た場合、静止部86の外形は、第1円弧部86aと、第2円弧部86bとを含む。第1円弧部86aは、静止部86の下端部に位置し、下方に向いて凸となる円弧部である。第2円弧部86bは、静止部86の上端部に位置し、上方に向いて凸となる円弧部である。
【0047】
静止部86は、内部に空間を有する。静止部86の内部は、管部85の内部と連通し、管部85を通過した脱硝剤が流入する。静止部86は、静止部86の内部に流入した脱硝剤を可動部87に向けて通過させる開口部86hを有する。
【0048】
(可動部)
可動部87は、静止部86に回動可能に接続されるとともに、脱硝剤を外部に吐出可能な部分である。可動部87は、ノズル80の先端部に配置され、火炉43の内部に臨む。可動部87は、例えば、水平方向に沿う回動軸87jを介して静止部86に回動可能に接続される。可動部87は、静止部86に対して斜め上方および斜め下方に向けて回動可能である。
【0049】
可動部87は、例えば、静止部86の外面(または内面)に沿う球状または円筒状の外形を有する。すなわち、鉛直方向に沿う断面(図3に示す断面)で見た場合、可動部87の外形は、第3円弧部87aと、第4円弧部87bとを含む。第3円弧部87aは、可動部87の下端部に位置し、下方に向いて凸となる円弧部である。第4円弧部87bは、可動部87の上端部に位置し、上方に向いて凸となる円弧部である。本実施形態では、可動部87の第3円弧部87aが静止部86の第1円弧部86aに沿って摺動するとともに、可動部87の第4円弧部87bが静止部86の第2円弧部86bに沿って摺動することで、可動部87が静止部86に対して斜め上方および斜め下方に向けて回動可能である。このような構成によれば、静止部86と可動部87との接続部が面状にシールされることになり、静止部86と可動部87との接続部から脱硝剤が漏れることが抑制される。
【0050】
可動部87は、内部に空間を有する。可動部87の内部は、静止部86の内部と連通し、静止部86を通過した脱硝剤が流入する。可動部87は、可動部87の内部に流入した脱硝剤を火炉43の内部に向けて(すなわち排ガスに向けて)吐出させる吐出口87hを有する。
【0051】
(調整機構)
調整機構88は、静止部86に対する可動部87の角度(すなわち回動位置)を調整可能な機構である。調整機構88は、例えば、第1ワイヤ88a、第2ワイヤ88b、第1引き込み部88c、および第2引き込み部88dを有する。
【0052】
第1ワイヤ88aは、可動部87の第3円弧部87aに接続されている。第1ワイヤ88aは、例えば、管部85の外周面と炉壁70の穴部70hの内周面との間の隙間を通り、炉壁70の外部まで延びている。
【0053】
第2ワイヤ88bは、可動部87の第4円弧部87bに接続されている。第2ワイヤ88bは、例えば、管部85の外周面と炉壁70の穴部70hの内周面との間の隙間を通り、炉壁70の外部まで延びている。
【0054】
第1引き込み部88cは、第1ワイヤ88aに接続されている。第1引き込み部88cは、例えば、モータのような駆動装置を含む。第1引き込み部88cは、制御装置100から所定の制御指令がない待機状態では、第1ワイヤ88aの保持を開放する。一方で、第1引き込み部88cは、制御装置100から所定の制御指令を受信した場合、第1ワイヤ88aを炉壁70の外部に向けて引き込む。これにより、静止部86に対して可動部87が下方に向けて回動する。その結果、脱硝剤の吐出方向が斜め下方を向く(図4参照)。
【0055】
ここで、炉壁70の穴部70hは、可動部87の回動範囲に穴部70hの内部空間が拡大される拡径部70ha(例えば面取り部)を有する。これにより、可動部87が回動する場合でも、可動部87と炉壁70とが接触することが避けられる。
【0056】
第2引き込み部88dは、第2ワイヤ88bに接続されている。第2引き込み部88dは、例えば、モータのような駆動装置を含む。第2引き込み部88dは、制御装置100から所定の制御指令がない待機状態では、第2ワイヤ88bの保持を開放する。一方で、第2引き込み部88dは、制御装置100から所定の制御指令を受信した場合、第2ワイヤ88bを炉壁70の外部に向けて引き込み。これにより、静止部86に対して可動部87が上方に向けて回動する。その結果、脱硝剤の吐出方向が斜め上方を向く。
【0057】
本実施形態では、静止部86、可動部87、および調整機構88により、拡張ノズル300の一例が形成されている。拡張ノズル300は、例えば、直管状の脱硝剤吐出ノズルが設けられた既設の燃焼設備に追加設置されることで、既設の燃焼設備に脱硝剤の吐出角度を調整可能なノズル80を追加する機能部品である。例えば、管部85は、既設の燃焼設備に設けられた既設ノズルである。拡張ノズル300は、既設ノズルである管部85に接続されることで、脱硝剤の吐出角度を調整可能なノズル80を提供する。
【0058】
<7.制御装置>
次に、制御装置100について説明する。
制御装置100は、燃焼設備1を統括的に制御する。例えば、制御装置100は、炉本体20の処理空間VでのごみGの燃焼制御を行う。制御装置100は、「制御部」の一例である。
【0059】
図5は、脱硝に関連する機能構成を示すブロック図である。制御装置100は、例えば、ノズル角度制御部110を有する。ノズル角度制御部110は、排ガスの温度に関する情報に基づき、ノズル80の吐出角度を制御する。
【0060】
本実施形態では、ノズル角度制御部110は、温度検出部90の検出結果に基づき、複数のノズル80の吐出角度を制御する。例えば、ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91の検出結果に基づき、第1群G1に含まれるノズル81A~81Dの吐出角度を制御する。一方で、ノズル角度制御部110は、第2温度検出部92の検出結果に基づき、第2群G2に含まれるノズル82A~82Dの吐出角度を制御する。
【0061】
なお以下では、第1温度検出部91の検出結果に基づいて第1群G1に含まれるノズル81A~81Dの吐出角度を制御することについて詳しく説明する。第2温度検出部92の検出結果に基づいて第2群G2に含まれるノズル82A~82Dの吐出角度を制御することは、以下の説明において「第1温度検出部91」を「第2温度検出部92」と読み替え、「第1群G1」を「第2群G2」と読み替え、「ノズル81A~81D」を「ノズル82A~82D」と読み替えればよい。
【0062】
図6は、反応温度(排ガス温度)と、脱硝率との関係を示す図である。ここで、還元剤としてアンモニア(または尿素)を活用した無触媒脱硝の反応プロセスは、(1)還元反応によるNOx除去(主反応)と、(2)酸化反応によるNOx生成(副反応)とに大別される。
【0063】
図6に示すように、脱硝率は、例えば950℃付近の反応温度で最大となり、ある温度範囲(以下「所定温度範囲TR」と称する)よりも高くなる場合に脱硝率が低下し、また所定温度範囲TRよりも低くなる場合も脱硝率が低下する。これは、反応温度が低すぎる場合は主反応が進まず、高すぎる場合は副反応が主反応を打ち消してしまうためである。このため、脱硝率を高めるためには、所定温度範囲TRにある排ガスに対して脱硝剤を吐出することが好ましい。
【0064】
図7は、吐出角度の制御を説明するための図である。本実施形態では、ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度(排ガス温度)が所定温度範囲TR内である場合、ノズル80の吐出角度を0度に調整し、脱硝剤を水平に吐出する。
【0065】
ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TRよりも低い場合、静止部86に対して可動部87が下方に向けて回動するように調整機構88を制御し、脱硝剤の吐出方向が斜め下方に向くようにノズル80の吐出角度を制御する。これにより、ノズル80の吐出角度は、排ガスの流れ方向の上流側に向けて脱硝剤を吐出可能なように調整される。例えば、ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TRよりも低い場合、第1温度検出部91により検出された温度が低いほど、脱硝剤の吐出方向がより下方を向くようにノズル80の吐出角度を調整する。
【0066】
本実施形態では、第1温度検出部91により検出された温度と所定温度範囲Tの下限値との差分の大きさに応じてノズル80の吐出角度が調整される。例えば、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TRよりも低い場合、ノズル80の吐出角度は、0度から-45度の角度範囲で調整される。なお、「検出された温度と所定温度範囲Tの下限値との差分の大きさに応じて吐出角度が調整される」とは、図7に示すように上記差分の大きさに線形比例するように吐出角度が調整される場合に限定されず、上記差分の大きさに応じて段階的に(例えば1段または2段のステップ状に)吐出角度が調整される場合も該当し得る。
【0067】
ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TRよりも高い場合、静止部86に対して可動部87が上方に向けて回動するように調整機構88を制御し、脱硝剤の吐出方向が斜め上方を向くようにノズル80の吐出角度を制御する。これにより、ノズル80の吐出角度は、排ガスの流れ方向の下流側に向けて脱硝剤を吐出可能なように調整される。例えば、ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TRよりも高い場合、第1温度検出部91により検出された温度が高いほど、脱硝剤の吐出方向がより上方を向くようにノズル80の吐出角度を調整する。
【0068】
本実施形態では、第1温度検出部91により検出された温度と所定温度範囲Tの上限値との差分の大きさに応じてノズル80の吐出角度が調整される。例えば、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TRよりも高い場合、ノズル80の吐出角度は、0度から+45度の角度範囲で調整される。なお、「検出された温度と所定温度範囲Tの上限値との差分の大きさに応じて吐出角度が調整される」とは、図7に示すように上記差分の大きさに線形比例するように吐出角度が調整される場合に限定されず、上記差分の大きさに応じて段階的に(例えば1段または2段のステップ状に)吐出角度が調整される場合も該当し得る。
【0069】
上述した所定温度範囲TRは、「所定基準」の一例である。なお、「所定基準」は、ある温度範囲に限定されず、所定温度値(例えば950℃)でもよい。すなわち、本開示の説明における「所定温度範囲TR」とは、適宜「所定温度」と読み替えられてよい。
【0070】
以上、第1温度検出部91の検出結果に基づいて第1群G1に含まれるノズル81A~81Dの吐出角度を制御することについて説明した。この制御は、第1群G1に含まれるノズル81A~81Dと、第2群G2に含まれるノズル82A~82Dとで独立して行われる。このため、例えば、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TRよりも高いが、第2温度検出部92により検出された温度が所定温度範囲TRよりも低い場合は、脱硝剤の吐出方向が斜め上方に向くように第1群G1に含まれるノズル81A~81Dの吐出角度が調整されるとともに、脱硝剤の吐出方向が斜め下方に向くように第2群G2に含まれるノズル82A~82Dの吐出角度が調整される。
【0071】
<8.制御の流れ>
次に、制御の流れについて説明する。
図8は、第1群G1に含まれるノズル81A~81Dの吐出角度の調整に関する制御の流れを示すフローチャートである。まず、第1温度検出部91により第1高さH1における排ガスの温度検出が行われる(S101)。
【0072】
次に、ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TR内であるか否かを判定する(S102)。ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TR内である場合(S102:YES)、ノズル80の吐出角度を水平に調整し(S103)、一連の処理を終了する。
【0073】
一方で、ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TR内でない場合(S102:NO)、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TR内よりも高いか否かを判定する(S104)。
【0074】
ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TR内よりも高い場合(S104:YES)、第1温度検出部91により検出された温度に応じてノズル80の吐出角度を斜め上向きに調整し(S105)、一連の処理を終了する。
【0075】
一方で、ノズル角度制御部110は、第1温度検出部91により検出された温度が所定温度範囲TR内よりも低い場合(S104:NO)、第1温度検出部91により検出された温度に応じてノズル80の吐出角度を斜め下向きに調整し(S106)、一連の処理を終了する。
【0076】
以上説明したS101~S106の処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0077】
<9.作用効果>
燃焼設備では、排ガス温度が変動すると、脱硝率が低下する課題がある。この課題に対して、比較例として、垂直高さ方向に複数のノズルを配置し、望ましい高さのノズルを選定してそこから脱硝剤を吹き込む構成について考える。この比較例の構成では、複数のノズルを設置する施工が煩雑になるとともに、脱硝ノズル付近の壁面にはボイラ管が配置される場合が多く、複数のノズルを設置することに応じて多数のボイラ管の曲げが必要になり施工が困難になる。
【0078】
また、上記比較例の構成では、脱硝剤吹込みのためのノズルが多数必要となり、ノズルを使用しない時にも閉塞防止などの目的で少量のガスを投入し続ける必要があるため、ノズルが多いほど用役ガス(蒸気や再循環ガスといった脱硝剤を希釈するためのガス)が多く必要になり、圧送機など設備も大型なものが必要となる。
【0079】
一方で、本実施形態の無触媒脱硝システム200は、排ガスが流れる火炉43に設置されて排ガスの流れ方向に対する脱硝剤の吐出角度を調整可能なノズル80を含む脱硝剤供給部210と、排ガスの温度に関する情報に基づきノズル80の吐出角度を制御するノズル角度制御部110とを有する。このような構成によれば、ノズル80の吐出角度を変更することで、脱硝剤が目標温度(例えば上記所定温度範囲TR)に近い温度で反応できるように脱硝剤を投入することができる。このため、ノズルを高さ方向に複数設置せずとも炉内温度変動に対応できるようになる。また、本実施形態の構成によれば、必要なノズル80の数が少なくなるので、ノズルを使用しない時に流されるガスが少なくて済む。このため、設備の小型化を図ることができる。
【0080】
ごみ焼却炉のような燃焼設備1における無触媒脱硝プロセスでは、脱硝剤投入箇所では燃焼ガスは鉛直上方向に流れ、燃焼ガスの温度は上側ほど低く、下側ほど高くなる。このため、脱硝剤投入箇所における温度が目標温度より高い場合は上向き、目標温度よりも低い場合は下向きの角度で脱硝剤を吹き込むことで、運転状態の変動が大きい状況でも脱硝率を高く保つことができる。
【0081】
図9は、ノズル80の吐出角度を調整することの作用効果を説明するための図であり、ノズル80の吐出角度の調整を行う場合と行わない場合との比較を示すシミュレーション結果である。図9に示すように、ノズル80の吐出角度の調整を行う場合、ノズル80の吐出角度の調整を行わない場合と比べて、脱硝率が向上することが分かる。
【0082】
例えば、図9に示す事例では脱硝剤を高さの異なる2つの高さ位置から吹き込んでおり、平均的な運転状況において、下側(第1高さH1)付近の温度は目標温度に近い一方で、上側(第2高さH2)付近の温度は目標温度より低い。脱硝剤を常に水平方向に吹き込む比較例の構成では、上側(第2高さH2)における脱硝が進まず、NOxを低くすることが難しくなる。これに対して、本実施形態のように上側のノズル80の吐出角度を下向きに調整し、上側(第2高さH2)における反応温度を目標温度に近づけることで脱硝が進み、NOxを低くすることができる。
【0083】
<10.変形例>
次に、第1実施形態の変形例について説明する。
図10は、変形例のノズル80を示す断面図である。本変形例では、火炉43は、ノズル80を保護するための保護設備410を有する。保護設備410は、風箱411、空気供給ライン412、および送風機413を含む。
【0084】
風箱411は、炉壁70に設けられた穴部70hに挿入されている。風箱411は、金属製であり、ノズル80の少なくとも一部を収容している。例えば、風箱411は、ノズル80の静止部86と可動部87との接続部(回動部)を収容している。風箱411は、後述する空気供給ライン412を通じて風箱411の内部に供給された空気を、火炉43の内部に排出するための排出口411hを有する。
【0085】
空気供給ライン412は、風箱411の内部に接続されている。送風機413は、空気供給ライン412を通じて風箱411の内部に接続されている。送風機413は、空気供給ライン412を通じて風箱411の内部に空気を圧送する。空気供給ライン412を通じて風箱411の内部に空気が圧送されることで、火炉43内から風箱411の内部に排ガスが逆流することが抑制される。これにより、風箱411内に収容される部品が高温状態および排ガスに含まれる粉塵などから保護される。これにより、例えば、ノズル80の静止部86と可動部87との接続部(回動部)が固着することが抑制される。
【0086】
本変形例では、調整機構88は、例えば、駆動装置421と、動力伝達機構422とを含む。駆動装置421は、例えば、モータである。動力伝達機構422は、リンクまたは歯車など動力を伝達する機構であり、駆動装置421とノズル80の可動部87とを連結している。これにより、ノズル角度制御部110は、駆動装置421を駆動させることで、静止部86に対して可動部87を回動させることができる。本変形例では、動力伝達機構422は、風箱411内に収容されて保護されている。
【0087】
このような構成によれば、高温および高ばい塵濃度の燃焼ガスと接触する環境でもより安定して運用することができる脱硝剤供給部210を提供することができる。
【0088】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、火炉43の前部空間FSと後部空間BSとで排ガスの流量が異なる場合に、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合(例えば配分割合)を変更する点で、第1実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0089】
詳しく述べると、火炉43の前部空間FSと後部空間BSとでは、排ガスの流量が異なる場合がある。例えば、図1に示すように火炉43の下流側に下方に向けて折り返される流路が存在する場合、火炉43において炉前側は流速が小さく、一方で炉後側は流れが速くなりやすい。この場合、炉前側の流速が小さい領域では、脱硝に必要な脱硝剤の量は少ない。一方で、炉後側の流速が大きい領域では、脱硝に必要な脱硝剤の量が多い。
【0090】
ここで、燃焼が活発であるほど多量の燃焼ガスが発生するため、流速が速い場所では温度が高くなりやすいと考えられる。本実施形態ではこのことを活用して、炉内温度分布(炉前側と炉後側の温度差)の情報から、炉前側/炉後側の流量分布を推定し、脱硝剤の投入量を炉前後の各流量に比例するよう配分する。
【0091】
(ノズル)
図11は、本実施形態の火炉43を示す斜視図である。図11では、図面を見やすくするため、脱硝剤供給ライン211および圧送機212などの図示を省略している。
【0092】
本実施形態では、1つの脱硝剤供給ライン211を流れる脱硝剤は、ノズル81A~81Dに分配して供給される。同様に、1つの脱硝剤供給ライン211を流れる脱硝剤は、ノズル82A~81Dに分配して供給される。本実施形態では、ノズル81A,81C,82A,82Cの各々は、前部空間FS(後述する前部領域FR)に対応して配置されたノズル80であり、「第1ノズル」の一例である。一方で、ノズル81B,81D,82B,82Dの各々は、後部空間BS(後述する後部領域BR)に対応して配置されたノズル80であり、「第2ノズル」の一例である。
【0093】
(温度検出部)
本実施形態では、火炉43は、排ガスの流れ方向とは交差する方向に沿う断面(例えば水平方向の断面)において、前部領域FRと、後部領域BRとを含む。前部領域FRは、上方から見た場合に、前部空間FSと重なる領域である。前部領域FRは、「第1領域」の一例である。後部領域BRは、上方から見た場合に、後部空間BSと重なる領域である。後部領域BRは、「第2領域」の一例である。
【0094】
第1温度検出部91は、第1高さH1に設けられた複数(例えば2つ)の温度検出器91A,91B(前部温度検出器91Aおよび後部温度検出器91B)を含む。温度検出器91A,91Bの各々は、例えば熱電対であり、第1高さH1における排ガスの温度を検出する。前部温度検出器91Aは、前部領域FRに対応して配置され、前部領域FRに関する排ガス温度を検出する。後部温度検出器91Bは、後部領域BRに対応して配置され、後部領域BRに関する排ガス温度を検出する。
【0095】
第2温度検出部92は、第2高さH2に設けられた複数(例えば2つ)の温度検出器92A,92B(前部温度検出器92Aおよび後部温度検出器92B)を含む。温度検出器92A,92Bの各々は、例えば熱電対であり、第2高さH2における排ガスの温度を検出する。前部温度検出器92Aは、前部領域FRに対応して配置され、前部領域FRに関する排ガス温度を検出する。後部温度検出器92Bは、後部領域BRに対応して配置され、後部領域BRに関する排ガス温度を検出する。
【0096】
図12は、本実施形態の温度検出部90の別態様を説明するための図である。別態様の温度検出部90は、火炉43の炉頂部に設置されたカメラ94aを含む第3温度検出部94を有する。カメラ94aは、例えば赤外カメラであり、上方から火炉43の内部を撮影し、火炉43の内部の赤外画像を取得する。
【0097】
図13は、カメラ94aにより撮影される赤外画像IMを説明するための図である。赤外画像IMには、火炉43の前部空間FSに対応する前部領域FRと、火炉43の後部空間BSに対応する後部領域BRとが設定される。第3温度検出部94は、赤外画像IMにおいて、前部領域FRに含まれる輝度値と、後部領域BRに含まれる輝度値とに基づき、前部領域FRの温度(例えば平均温度)と、後部領域BRの温度(例えば平均温度)とを算出する。なお、図12および図13に示す上記別態様の温度検出部90は、図11に示す温度検出部90に代えて/加えて設けられてよい。
【0098】
(脱硝剤供給部)
図14は、第2実施形態の脱硝に関連する機能構成を示すブロック図である。本実施形態では、脱硝剤供給部210の脱硝剤供給ライン211は、第1前部ノズル流量調整部231、第1後部ノズル流量調整部232、第2前部ノズル流量調整部233、および第2後部ノズル流量調整部234を有する。
【0099】
第1前部ノズル流量調整部231は、第1群G1に含まれるノズル81Aおよびノズル81Cに供給される脱硝剤の流量を調整する調整部であり、例えば絞り弁である。第1後部ノズル流量調整部232は、第1群G1に含まれるノズル81Bおよびノズル81Dに供給される脱硝剤の流量を調整する調整部であり、例えば絞り弁である。
【0100】
第2前部ノズル流量調整部233は、第2群G2に含まれるノズル82Aおよびノズル82Cに供給される脱硝剤の流量を調整する調整部であり、例えば絞り弁である。第2後部ノズル流量調整部234は、第2群G2に含まれるノズル82Bおよびノズル82Dに供給される脱硝剤の流量を調整する調整部であり、例えば絞り弁である。
【0101】
(前後供給量調整部)
本実施形態では、制御装置100は、前後供給量調整部120を有する。前後供給量調整部120は、同じ高さ(第1高さH1)に配置された2つの温度検出器91A,91Bにより検出される温度の温度差に基づき、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合(例えば分配割合)を決定する。例えば、前後供給量調整部120は、2つの温度検出器91A,91Bにより検出される温度の温度差が存在する場合、第1前部ノズル流量調整部231と第1後部ノズル流量調整部232とのうち少なくとも一方を制御することで、ノズル81Aおよびノズル81Cから火炉43の前部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量と、ノズル81Bおよびノズル81Dから火炉43の後部空間BSに吐出される脱硝剤の吐出量との供給割合を変更する。
【0102】
例えば、前後供給量調整部120は、前部温度検出器91Aによって検出される温度が後部温度検出器91Bによって検出される温度よりも高い場合、前部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量が後部空間BSに吐出される脱硝剤の吐出量よりも多くなるように、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合を決定する。一方で、前後供給量調整部120は、後部温度検出器91Bによって検出される温度が前部温度検出器91Aによって検出される温度よりも高い場合、後部空間BSに吐出される脱硝剤の吐出量が前部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量よりも多くなるように、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合を決定する。
【0103】
なお以下では、第1温度検出部91の前部温度検出器91Aおよび後部温度検出器91Bの検出結果に基づき、第1群G1に含まれるノズル81A~81Dの吐出量を制御することについて詳しく説明する。第2温度検出部92の前部温度検出器92Aおよび後部温度検出器92Bの検出結果に基づき第2群G2に含まれるノズル82A~82Dの吐出量を制御することは、以下の説明において「第1温度検出部91」を「第2温度検出部92」と読み替え、「前部温度検出器91A」を「前部温度検出器92A」と読み替え、「後部温度検出器91B」を「後部温度検出器92B」と読み替え、「第1前部ノズル流量調整部231」を「第2前部ノズル流量調整部233」と読み替え、「第1後部ノズル流量調整部232」を「第2後部ノズル流量調整部234」と読み替え、「第1群G1」を「第2群G2」と読み替え、「ノズル81A~81D」を「ノズル82A~82D」と読み替えればよい。
【0104】
図15は、吐出量の制御を説明するための図である。本実施形態では、前後供給量調整部120は、後部温度検出器91Bにより検出された温度から前部温度検出器91Aにより検出された温度を減算することで得られる温度差が所定温度差範囲TDR内である場合、ノズル81Aおよびノズル81Cから火炉43の前部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量と、ノズル81Bおよびノズル81Dから火炉43の後部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量とを同じにする。
【0105】
前後供給量調整部120は、上記温度差が所定温度差範囲TDRよりも大きい場合、第1後部ノズル流量調整部232の絞り弁の開度を大きくし、第1前部ノズル流量調整部231の絞り弁の開度を小さくすることで、ノズル81Bおよびノズル81Dから火炉43の後部空間BSに吐出される脱硝剤の吐出量を、ノズル81Aおよびノズル81Cから火炉43の前部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量と比べて多くする。例えば、前後供給量調整部120は、上記温度差が所定温度差範囲TDRよりも大きい場合、上記温度差が大きいほど、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合の差が大きくなるように、上記供給割合を決定する。
【0106】
例えば、上記温度差が所定温度差範囲TDRよりも大きい場合、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合は、上記温度差と所定温度差範囲TDRの上限値との差分の大きさに応じて決定される。なお、「上記温度差と所定温度差範囲TDRの上限値との差分の大きさに応じて決定される」とは、図15に示すように上記差分の大きさに線形比例するように供給割合が調整される場合に限定されず、上記差分の大きさに応じて段階的に(例えば1段または2段のステップ状に)供給割合が調整される場合も該当し得る。
【0107】
前後供給量調整部120は、上記温度差が所定温度差範囲TDRよりも小さい場合、第1前部ノズル流量調整部231の絞り弁の開度を大きくし、第1後部ノズル流量調整部232の絞り弁の開度を小さくすることで、ノズル81Aおよびノズル81Cから火炉43の前部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量を、ノズル81Bおよびノズル81Dから火炉43の後部空間BSに吐出される脱硝剤の吐出量と比べて多くする。例えば、前後供給量調整部120は、上記温度差が所定温度差範囲TDRよりも小さい場合、上記温度差の絶対値が大きいほど、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合の差が大きくなるように、上記供給割合を決定する。
【0108】
例えば、上記温度差が所定温度差範囲TDRよりも小さい場合、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合は、上記温度差と所定温度差範囲TDRの下限値との差分の大きさに応じて決定される。なお、「上記温度差と所定温度差範囲TDRの下限値との差分の大きさに応じて決定される」とは、図15に示すように上記差分の大きさに線形比例するように供給割合が調整される場合に限定されず、上記差分の大きさに応じて段階的に(例えば1段または2段のステップ状に)供給割合が調整される場合も該当し得る。
【0109】
以上、前部温度検出器91Aおよび後部温度検出器91Bの検出結果に基づき、第1群G1に含まれるノズル81A~81Dの吐出量を制御することについて説明した。この制御は、第1群G1に含まれるノズル81A~81Dと、第2群G2に含まれるノズル82A~82Dとで独立して行われる。すなわち、第2群G2に含まれるノズル82A~82Dの吐出量の制御は、前部温度検出器92Aおよび後部温度検出器92Bの検出結果に基づき行われる。
【0110】
上述した所定温度差範囲TDRは、別の観点における「所定基準」の一例である。なお、「所定基準」は、ある温度差範囲に限定されず、温度差がゼロであることでもよい。すなわち、本開示の説明における「所定温度範囲TR」とは、適宜「温度差がゼロ」と読み替えられてよい。
【0111】
なお本実施形態では、火炉43の前部領域FRと後部領域BRとの排ガス流量の違いを反映させるために、前部領域FRに関する温度の検出結果と、後部領域BRに関する温度の検出結果とを直接に用いて脱硝剤の吐出量の制御が行われる。これに代えて、前後供給量調整部120は、前部温度検出器92Aおよび後部温度検出器92Bの検出結果などに基づき、火炉43の前部領域FRと後部領域BRとの排ガス流量の違い(流量分布)を推定し、推定された排ガス流量の違いに基づいて脱硝剤の吐出量の制御を行ってもよい。
【0112】
(制御の流れ)
次に、制御の流れについて説明する。
図16は、第1群G1に含まれるノズル81A~81Dの吐出量の調整に関する制御の流れを示すフローチャートである。まず、第1温度検出部91の前部温度検出器91Aおよび後部温度検出器91Bにより第1高さH1における排ガスの温度検出が行われる(S201)。
【0113】
次に、前後供給量調整部120は、後部温度検出器91Bにより検出された温度から前部温度検出器91Aにより検出された温度を減算することで、火炉43の前後における温度差を算出する(S202)。
【0114】
次に、前後供給量調整部120は、算出された温度差が所定温度差範囲TDR内であるか否かを判定する(S203)。前後供給量調整部120は、上記温度差が所定温度差範囲TDR内である場合(S203:YES)、火炉43の前部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量と、火炉43の後部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量とを同じに調整し(S204)、一連の処理を終了する。
【0115】
一方で、前後供給量調整部120は、上記温度差が所定温度差範囲TDR内でない場合(S203:NO)、上記温度差が所定温度差範囲TDRよりも大きいか否かを判定する(S205)。
【0116】
前後供給量調整部120は、上記温度差が所定温度範囲TRよりも大きい場合(S205:YES)、火炉43の前部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量を減少させるとともに、火炉43の後部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量を増加させ(S206)、一連の処理を終了する。
【0117】
一方で、前後供給量調整部120は、上記温度差が所定温度範囲TRよりも小さい場合(S204:NO)、火炉43の前部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量を増加させるとともに、火炉43の後部空間FSに吐出される脱硝剤の吐出量を減少させ(S207)、一連の処理を終了する。
【0118】
以上説明したS201~S207の処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0119】
(作用効果)
上述したように、燃焼設備における燃焼ガスの流れは、燃焼状態および空気吹き込み条件によって炉前側/炉後側のどちらかに偏ることが多い。流れが速い側は排ガス流量が多く脱硝に必要な脱硝剤の量も多いと考えられ、流れが遅い側には必要な脱硝剤の量は少ない。このため、同一高さの水平面において、排ガス流量が多い側に脱硝剤を多く吹き込むことで、炉内のNOxおよび脱硝剤の濃度比率を一様に近づけることができ、脱硝率を高くすることができる。
【0120】
図17は、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合を調整することの作用効果を説明するための図であり、供給割合を調整する場合と調整しない場合との比較を示すシミュレーション結果である。図17に示すように、火炉43の前後における脱硝剤の供給割合を調整する場合、分配割合を調整しない場合と比べて脱硝率が向上することが分かる。
【0121】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、複数のノズル80は、左壁73および右壁74に代えて、前壁71に設けられてもよい。本開示で「燃焼ガスの温度に関する情報」とは、熱電対の検出結果に限らず、カメラまたは別の検出手段により検出される情報でもよい。
【0122】
図18は、本実施形態に係るコンピュータ1100の構成を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1100は、例えば、プロセッサ1110、メインメモリ1120、ストレージ1130、およびインターフェース1140を備える。
【0123】
上述の制御装置100の各機能部は、コンピュータ1100に実装される。そして、上述した各機能部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムに従って、上述した各機能部が使用する記憶領域をメインメモリ1120に確保する。
【0124】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。また、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0125】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース1140又は通信回線を介してコンピュータ1100に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0126】
<付記>
各実施形態に記載の無触媒脱硝システム、燃焼設備、脱硝方法、および拡張ノズルは、例えば以下のように把握される。
【0127】
(1)第1態様の無触媒脱硝システム200は、燃焼設備1において燃焼ガスが流れる流路(例えば火炉43)に設置され、燃焼ガスの流れ方向に対する脱硝剤の吐出角度を調整可能な第1ノズル(例えばノズル80)を含む脱硝剤供給部210と、燃焼ガスの温度に関する情報に基づき、第1ノズルの吐出角度を制御する制御部(例えば制御装置100)と、を備える。このような構成によれば、ノズル80の吐出角度を変更することで、脱硝剤が目標温度に近い温度で反応できるように脱硝剤を投入することができる。このため、ノズルを高さ方向に複数設置せずとも炉内温度変動に対応できるようになり、施工性の向上を図ることができる。
【0128】
(2)第2態様の無触媒脱硝システム200は、(1)に記載の無触媒脱硝システム200において、制御部(例えば制御装置100)は、燃焼ガスの温度が所定基準よりも低い場合に、燃焼ガスの流れ方向の上流側に向けて脱硝剤を吐出するように第1ノズル(例えばノズル80)の吐出角度を制御し、燃焼ガスの温度が上記所定基準よりも高い場合に、燃焼ガスの流れ方向の下流側に向けて脱硝剤を吐出するように第1ノズル(例えばノズル80)の吐出角度を制御する。このような構成によれば、多くの範囲で脱硝剤が目標温度に近い温度で反応できるように脱硝剤を投入することができる。
【0129】
(3)第3態様の無触媒脱硝システム200は、(1)または(2)に記載の無触媒脱硝システム200において、流路(例えば火炉43)は、燃焼ガスの流れ方向とは交差する方向に沿う断面において、第1領域(例えば前部領域FR)と第2領域(例えば後部領域BR)とを含み、脱硝剤供給部210は、上記第1領域に対応して配置された第1ノズル(例えばノズル81A,81C,82A,82C)と、上記第2領域に対応して配置された第2ノズル(例えばノズル81B,81D,82B,82D)とを含み、制御部(例えば制御装置100)は、上記第1領域に関して検出された燃焼ガスの温度と、上記第2領域に関して検出された燃焼ガスの温度との温度差に基づき、第1ノズルから吐出される脱硝剤の量と第2ノズルから吐出される脱硝剤の量とのうち少なくとも一方を制御する。このような構成によれば、燃焼ガス流量が偏る場合に、燃焼ガスが多い側に脱硝剤を多く吹き込むことができるため、脱硝率を高くすることができる。
【0130】
(4)第4態様の燃焼設備1は、上記流路(例えば火炉43)と、(1)から(3)のいずれか1つに記載音無触媒脱硝システム200とを備える。このような構成によれば、ノズルを高さ方向に複数設置せずとも炉内温度変動に対応できるようになり、施工性の向上を図ることができる。
【0131】
(5)第5態様の脱硝方法は、燃焼設備において燃焼ガスが流れる流路に脱硝剤を吐出する脱硝方法であって、燃焼ガスの流れ方向に対する吐出角度であってノズル80から脱硝剤を吐出する吐出角度を、燃焼ガスの温度に関する情報に基づき変更する。このような構成によれば、ノズルを高さ方向に複数設置せずとも炉内温度変動に対応できるようになり、施工性の向上を図ることができる。
【0132】
(6)第6態様の拡張ノズル300は、燃焼設備1において脱硝剤が供給される管部85に接続可能な静止部86と、静止部86に回動可能に接続され、管部85から静止部86に流入する脱硝剤を外部に吐出可能な吐出口87hを含む可動部87と、静止部86に対する可動部87の角度を調整可能な調整機構88と、を備える。このような構成によれば、既設の燃焼設備に拡張ノズル300を取り付けることで、脱硝剤の吐出角度を調整可能なノズル80を提供することができる。
【符号の説明】
【0133】
1…燃焼設備
43…火炉(流路)
80…ノズル
81A,81C,82A,82C…ノズル(第1ノズル)
81B,81D,82B,82D…ノズル(第2ノズル)
85…管部
86…静止部
87…可動部
88…調整機構
91…第1温度検出部
91A…前部温度検出器
91B…後部温度検出器
92…第2温度検出部
92A…前部温度検出器
92B…後部温度検出器
100…制御装置(制御部)
200…無触媒脱硝システム
210…脱硝剤供給部
300…拡張ノズル
FR…前部領域(第1領域)
BR…後部領域(第2領域)
【要約】
【課題】施工性の向上を図ることができる無触媒脱硝システム、燃焼設備、脱硝方法、および拡張ノズルを提供することを目的とする。
【解決手段】無触媒脱硝システムは、燃焼設備において燃焼ガスが流れる流路に設置されて前記燃焼ガスの流れ方向に対する脱硝剤の吐出角度を調整可能なノズルを含む脱硝剤供給部と、前記燃焼ガスの温度に関する情報に基づき、前記ノズルの前記吐出角度を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18