(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】積層体、電極構造体、電池、飛行体、積層体を生産する方法、及び、電極構造体を生産する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/54 20210101AFI20231208BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20231208BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20231208BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
H01M50/54
H01M50/533
H01M50/534
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2023063059
(22)【出願日】2023-04-07
【審査請求日】2023-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 絢太郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 貴也
(72)【発明者】
【氏名】坂田 大成
(72)【発明者】
【氏名】高柳 良基
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/208770(WO,A1)
【文献】特開2022-131562(JP,A)
【文献】特開2023-000600(JP,A)
【文献】特開2012-155974(JP,A)
【文献】特開2013-008564(JP,A)
【文献】特開2021-097020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 4/64-4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のシート材料を備え
る積層体であって、
前記複数のシート材料のそれぞれは、
熱可塑性の樹脂材料を含む支持層と、
前記支持層の両面に形成される第1金属層及び第2金属層と、
を有し、
前記複数のシート材料の一部において、前記複数のシート材料に含まれる複数の前記第1金属層及び複数の前記第2金属層が一体化しており、
前記複数の第1金属層及び前記複数の第2金属層のそれぞれは、各金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する凹凸領域を含
み、
前記積層体は、
前記複数の第1金属層及び前記複数の第2金属層が、溶接により一体化している領域である一体化領域と、
前記一体化領域の端部から離れた領域である平滑領域と、
を有し、
前記平滑領域は、その内部の3箇所における厚さの測定値の最大値及び最小値の差の絶対値が、当該3箇所における厚さの測定値の平均値の5%以下となる領域であり、
前記凹凸領域は、前記一体化領域及び前記平滑領域の間に配される隣接領域に形成される、
積層体。
【請求項2】
前記凹凸領域において
、各金属層は、各金属層の面内方向に沿って並んで配される複数の山部及び少なくとも1つの谷部を含む、
請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前
記一体化領域に含まれる金属の体積に対する、前記一体化領域に含まれる樹脂の体積の割合は、5~50%である、
請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前
記一体化領域に含まれる金属の体積に対する、前記一体化領域に含まれる空隙の体積の割合は、10%以下である、
請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記複数のシート材料は、
前記複数のシート材料の一方の側の最も外側に配された第1シート材料と、
前記複数のシート材料の他方の側の最も外側に配された第2シート材料と、
を有し、
前記積層体は、
前記第1シート材料を支持する第1支持部材と、
前記第2シート材料を支持する第2支持部材と、
をさらに備え、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は金属を含み、
前記複数のシート材料の前記一部において、前記第1支持部材、前記第2支持部材、前記複数の第1金属層及び前記複数の第2金属層が一体化している、
請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記複数のシート材料のそれぞれは、前
記一体化領域の近傍に、各シート材料を貫通する複数の貫通孔が形成された領域を有する、
請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記複数のシート材料のそれぞれに配された第1金属層及び第2金属層を電気的に接続する導電部材をさらに備える、
請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記隣接領域の厚さの最大値は、前記平滑領域の前記3箇所における厚さの測定値の平均値の1.1~1.3倍である、
請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
前記複数のシート材料のそれぞれは、前記一体化領域の近傍に、各シート材料を貫通する複数の貫通孔が形成された領域を有し、
前記一体化領域に含まれる金属の体積に対する、前記一体化領域に含まれる樹脂の体積の割合は、5~50%である、
請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
複数のシート材料の積層方向に略垂直な面における前記凹凸領域の形状は、略同心円上又は略同心多角形状である、
請求項1に記載の積層体。
【請求項11】
前記凹凸領域に配される山の個数は6以上である、
請求項1に記載の積層体。
【請求項12】
第1電極及び第2電極と、
第3電極と、
第1セパレータ及び第2セパレータと、
を備え
る電極構造体であって、
前記第1電極、前記第1セパレータ、前記第3電極、前記第2セパレータ及び前記第2電極が、この順に積層されており、
第1電極及び第2電極のそれぞれは、
集電体と、
前記集電体の少なくとも一方の面に配された活物質層と、
を有し、
前記集電体は、
熱可塑性の樹脂材料を含む支持層と、
前記支持層の両面に形成される第1金属層及び第2金属層と、
を含み、
前記第1電極及び前記第2電極の端部の近傍において、
(i)前記第1電極及び前記第2電極が積層され、(ii)前記第1電極の前記第1金属層及び前記第2金属層、並びに、前記第2電極の前記第1金属層及び前記第2金属層が一体化しており、
前記第1電極の前記第1金属層及び前記第2金属層、並びに、前記第2電極の前記第1金属層及び前記第2金属層のそれぞれは、各金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する凹凸領域を含
み、
積層された前記第1電極及び前記第2電極は、
前記第1電極の前記第1金属層及び前記第2金属層、並びに、前記第2電極の前記第1金属層及び前記第2金属層が、溶接により一体化している領域である一体化領域と、
前記一体化領域の端部から離れた領域である平滑領域と、
を有し、
前記平滑領域は、その内部の3箇所における厚さの測定値の最大値及び最小値の差の絶対値が、当該3箇所における厚さの測定値の平均値の5%以下となる領域であり、
前記凹凸領域は、前記一体化領域及び前記平滑領域の間に配される隣接領域に形成される、
電極構造体。
【請求項13】
第4電極と、
第3セパレータと、
をさらに備え、
前記第1電極、前記第1セパレータ、前記第3電極、前記第2セパレータ、前記第2電極、前記第3セパレータ及び前記第4電極が、この順に積層されており、
前記第1電極、前記第2電極、前記第3電極及び前記第4電極のそれぞれは、
前記集電体と、
前記活物質層と、
を有し、
前記第3電極及び前記第4電極の端部の近傍において、
(i)前記第3電極及び前記第4電極が積層され、(ii)前記第3電極の前記第1金属層及び前記第2金属層、並びに、前記第4電極の前記第1金属層及び前記第2金属層が一体化しており、
前記第3電極の前記第1金属層及び前記第2金属層、並びに、前記第4電極の前記第1金属層及び前記第2金属層のそれぞれは、各金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する
第2の凹凸領域を含
み、
積層された前記第3電極及び前記第4電極は、
前記第3電極の前記第1金属層及び前記第2金属層、並びに、前記第4電極の前記第1金属層及び前記第2金属層が、溶接により一体化している領域である第2の一体化領域と、
前記第2の一体化領域の端部から離れた領域である第2の平滑領域と、
を有し、
前記第2の平滑領域は、その内部の3箇所における厚さの測定値の最大値及び最小値の差の絶対値が、当該3箇所における厚さの測定値の平均値の5%以下となる領域であり、
前記第2の凹凸領域は、前記第2の一体化領域及び前記第2の平滑領域の間に配される第2の隣接領域に形成される、
請求項
12に記載の電極構造体。
【請求項14】
請求項
12に記載の電極構造体と、
前記電極構造体を収容する筐体と、
を備える、電池。
【請求項15】
請求項
14に記載の電池と、
前記電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置と、
を備える、飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、電極構造体、電池、飛行体、積層体を生産する方法、及び、電極構造体を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~2には樹脂及び金属を含む材料の溶接方法が開示されている。特許文献3には貫通孔内に導電材料が配された集電体が開示されている。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 特開2004-130331号公報
(特許文献2) 特開2006-305591号公報
(特許文献3) 特開2019-186204号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様においては、積層体が提供される。上記の積層体は、例えば、積層された複数のシート材料を備える。上記の積層体において、複数のシート材料のそれぞれは、例えば、熱可塑性の樹脂材料を含む支持層を有する。複数のシート材料のそれぞれは、例えば、支持層の両面に形成される第1金属層及び第2金属層を有する。上記の積層体によれば、例えば、複数のシート材料の一部において、複数のシート材料に含まれる複数の第1金属層及び複数の第2金属層が一体化している。上記の積層体において、複数の第1金属層及び複数の第2金属層のそれぞれは、例えば、各金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する凹凸領域を含む。
【0004】
上記の積層体は、凹凸領域において、複数の第1金属層及び複数の第2金属層が一体化されていなくてもよい。上記の積層体において、各金属層は、各金属層の面内方向に沿って並んで配される複数の山部及び少なくとも1つの谷部を含んでもよい。上記の積層体において、凹凸領域は、複数の第1金属層及び複数の第2金属層が一体化している領域である一体化領域に隣接して配されてよい。
【0005】
上記の積層体において、複数の第1金属層及び複数の第2金属層が一体化している領域である一体化領域に含まれる金属の体積に対する、一体化領域に含まれる樹脂の体積の割合は、5~50%であってよい。上記の積層体において、複数の第1金属層及び複数の第2金属層が一体化している領域である一体化領域に含まれる金属の体積に対する、一体化領域に含まれる空隙の体積の割合は、10%以下であってよい。
【0006】
上記の積層体において、複数のシート材料は、複数のシート材料の一方の側の最も外側に配された第1シート材料と、複数のシート材料の他方の側の最も外側に配された第2シート材料とを有してよい。上記の積層体は、第1シート材料を支持する第1支持部材と、第2シート材料を支持する第2支持部材とをさらに備えてよい。上記の積層体において、第1支持部材及び第2支持部材は、金属を含んでよい。複数のシート材料の一部において、第1支持部材、第2支持部材、複数の第1金属層及び複数の第2金属層が一体化していてもよい。
【0007】
上記の積層体において、複数のシート材料のそれぞれは、複数の第1金属層及び複数の第2金属層が一体化している領域である一体化領域の近傍に、各シート材料を貫通する複数の貫通孔が形成された領域を有してよい。上記の積層体は、複数のシート材料のそれぞれに配された第1金属層及び第2金属層を電気的に接続する導電部材をさらに備えてよい。
【0008】
本発明の第2の態様においては、電極構造体が提供される。上記の電極構造体は、例えば、第1電極及び第2電極備える。上記の電極構造体は、例えば、第3電極備える。上記の電極構造体は、例えば、第1セパレータ及び第2セパレータを備える。上記の電極構造体において、例えば、第1電極、第1セパレータ、第3電極、第2セパレータ及び第2電極が、この順に積層されている。上記の電極構造体において、第1電極及び第2電極のそれぞれは、例えば、集電体と、集電体の少なくとも一方の面に配された活物質層とを有する。上記の電極構造体において、集電体は、例えば、熱可塑性の樹脂材料を含む支持層と、支持層の両面に形成される第1金属層及び第2金属層とを含む。上記の電極構造体によれば、例えば、第1電極及び第2電極の端部の近傍において、第1電極の第1金属層及び第2金属層、並びに、第2電極の第1金属層及び第2金属層が一体化している。上記の電極構造体において、第1電極の第1金属層及び第2金属層、並びに、第2電極の第1金属層及び第2金属層のそれぞれは、例えば、各金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する凹凸領域を含む。
【0009】
上記の電極構造体は、第4電極と、第3セパレータとをさらに備えてよい。上記の電極構造体において、第1電極、第1セパレータ、第3電極、第2セパレータ、第2電極、第3セパレータ及び第4電極が、この順に積層されていてもよい。上記の電極構造体において、第1電極、第2電極、第3電極及び第4電極のそれぞれは、集電体と、活物質層とを有してよい。第3電極及び第4電極の端部の近傍において、第3電極の第1金属層及び第2金属層、並びに、第4電極の第1金属層及び第2金属層が一体化していてもよい。第3電極の第1金属層及び第2金属層、並びに、第4電極の第1金属層及び第2金属層のそれぞれは、各金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する凹凸領域を含んでよい。
【0010】
本発明の第3の態様においては、電池が提供される。上記の電池は、例えば、上記の第2の態様の電極構造体の何れかを備える。上記の電池は、例えば、上記の電極構造体を収容する筐体を備える。
【0011】
本発明の第4の態様においては、飛行体が提供される。上記の飛行体は、例えば、上記の第3の態様に係る電池の何れかを備える。上記の飛行体は、例えば、上記の電池に蓄積された電気エネルギーを利用して推進力を発生させる推進力発生装置を備える。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】飛行体100のシステム構成の一例を概略的に示す。
【
図8】積層構造体760の電極の電気的な接続関係の一例を概略的に示す。
【
図9】蓄電セル112の製造方法の一例を概略的に示す。
【
図10】正極220の製造方法の一例を概略的に示す。
【
図11】溶接装置1120を用いた溶接手順の一例を示す。
【
図12】集電体1102に配された複数の貫通孔620の一例を示す
【
図13】集電体1102に配された複数の貫通孔620の一例を示す
【
図14】積層構造体760を作製する手順の一例を示す。
【
図15】正極接続部820の上面図の一例を概略的に示す。
【
図16】正極接続部820の断面の一例を概略的に示す。
【
図17】正極接続部820の断面の一例を概略的に示す。
【
図18】凹凸領域1600を含む正極集電体222の一例を概略的に示す。
【
図20】正極接続部820の断面の他の例を概略的に示す。
【
図21】正極接続部820の断面のさらに他の例を概略的に示す。
【
図22】実施例1の溶接箇所及びその周辺のX線CTの観察結果の一例を示す。
【
図23】観察領域2200のX線CTの観察結果の一例を示す。
【
図24】観察領域2300のX線CTの観察結果の一例を示す。
【
図25】比較例1の溶接箇所及びその周辺の断面のSEM画像の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において例示される一実施形態(本実施形態と称される場合がある。)によれば、積層された複数の溶接対象の一部を溶接することで、積層体を作製する。上記の複数の溶接対象のそれぞれは、樹脂材料を含む支持層と、支持層の両面に形成される第1金属層及び第2金属層とを備える。上記の溶接対象は、シート状の材料(シート材料と称される場合がある。)であってよい。上記の溶接対象は、電池の電極に用いられる集電体であってよい。
【0015】
上記の複数の溶接対象のそれぞれの第1金属層及び第2金属層は、電気的に接続されている。これにより、第1金属層及び第2金属層が、例えば、抵抗溶接により溶接され得る。
【0016】
上記の樹脂材料の種類は特に限定されるものではないが、当該樹脂材料としては、任意の熱可塑性の樹脂材料が用いられ得る。支持層は、実質的に熱可塑性の樹脂材料により構成されていてもよく、支持層は、熱可塑性の樹脂材料であってもよい。
【0017】
支持層の主成分として熱可塑性の樹脂材料が用いられることにより、例えば、積層体が電池の電極として用いられた場合における当該電池の安全性が向上する。より具体的には、上記の電池が熱暴走した場合に、当該熱により当該熱可塑性の樹脂材料が溶断される。その結果、熱暴走が終息し得る。
【0018】
また、熱可塑性の樹脂材料は、当該樹脂材料の温度が上昇すると軟化し、流動性が向上する。これにより、複数の溶接対象の溶接工程において、加熱された溶接対象に圧力が印加されると、第1金属層及び第2金属層の間に配された樹脂材料が容易に移動し、第1金属層及び第2金属層が近接又は接触する。この状態において、第1金属層及び第2金属層にエネルギーが印加されることにより、第1金属層及び第2金属層が一体化する。
【0019】
本実施形態の一例によれば、複数の溶接対象が、下記の手順により溶接される。まず、複数の溶接対象の一部に配された軟化領域にエネルギーを印加する。上述されたとおり、本実施形態の溶接対象の支持層は、例えば、主に熱可塑性の樹脂材料を含む。溶接対象の軟化領域に適切なエネルギーが印加されると、支持層に含まれる熱可塑性の樹脂材料の温度が上昇し、当該樹脂材料が軟化する。
【0020】
次に、溶接対象の軟化領域の少なくとも一部に配された溶接領域を押圧する。これにより、第1金属層及び第2金属層の間に配された支持層の樹脂材料に圧力が印加される。溶接領域の内部に存在する樹脂材料は、軟化しており、適度な流動性を有する。そのため、支持層の樹脂材料に適切な大きさの圧力が印加されると、当該樹脂材料は溶接対象の内部を移動する。
【0021】
第1金属層及び第2金属層を溶接する場合に、第1金属層及び第2金属層に圧力を印加して第1金属層及び第2金属層を近接又は接触させると、第1金属層及び第2金属層の間に配された樹脂材料が溶接箇所の周辺に押し出される。本発明者らは、第1金属層及び第2金属層の厚さ、溶接箇所の周辺に押し出される樹脂材料の体積、当該樹脂材料の粘度又は移動のし易さなどによっては、溶接箇所に配されていた樹脂材料が当該溶接箇所の周辺に押し出されるときに、当該樹脂材料により当該溶接箇所の周辺に配されている第1金属層及び第2金属層が破断される場合のあることを見出した。
【0022】
また、本発明者らは、上記の金属層の破断が発生した場合に、一体化している複数のシート材料の間における電気抵抗の測定値のバラツキが予め定められた閾値よりも大きくなることを見出した。例えば、シート材料A、シート材料B及びシート材料Cの一部が溶接により一体化される場合を考える。上述されたとおり、各シート材料は、樹脂材料を含む支持層と、支持層の両面に形成される第1金属層及び第2金属層とを含む。シート材料A、シート材料B及びシート材料Cは、シート材料Aの第2金属層と、シート材料Bの第1金属層とが接触し、シート材料Bの第2金属層と、シート材料Cの第1金属層とが接触するように積層される。また、積層されたシート材料の一部が、上述された手順に従って溶接される。
【0023】
この場合、シート材料A、シート材料B及びシート材料Cに含まれる第1金属層及び第2金属層が溶接箇所において一体化しており、当該全ての金属層は電気的に接続されている。そのため、複数の金属層の間における電気抵抗のバラツキは十分に小さいと考えられていた。
【0024】
しかしながら、本発明者らは、(i)シート材料Aの第1金属層上の任意の点と、シート材料Aの第2金属層上の任意の点又はシート材料Bの第1金属層上の任意の点との間における電気抵抗、(ii)シート材料Aの第1金属層上の任意の点と、シート材料Bの第2金属層上の任意の点又はシート材料Cの第1金属層上の任意の点との間における電気抵抗、(iii)シート材料Aの第1金属層上の任意の点と、シート材料Cの第2金属層上の任意の点との間における電気抵抗、(iv)シート材料Bの第1金属層上の任意の点と、シート材料Aの第B金属層上の任意の点又はシート材料Cの第1金属層上の任意の点との間における電気抵抗、(v)シート材料Bの第1金属層上の任意の点と、シート材料Cの第2金属層上の任意の点との間における電気抵抗、及び、(vi)シート材料Cの第1金属層上の任意の点と、シート材料Cの第2金属層上の任意の点との間における電気抵抗を測定したところ、当該測定値にバラツキが生じる場合のあることを見出した。その原因は必ずしも明らかではないが、溶接箇所の周辺に配されている第1金属層及び第2金属層の少なくとも一部が破断された結果、当該溶接箇所の周辺における導電パスが複雑になったものと推測される。
【0025】
加えて、本発明者らは、溶接箇所の周辺に、第1金属層及び第2金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する領域(凹凸領域と称される場合がある。)が形成されている場合には、溶接箇所の近傍において積層体に含まれる第1金属層及び第2金属層の半数以上が破断されている場合と比較して、上記のバラツキが小さいことを見出した。第1金属層及び第2金属層に凹凸領域が形成されることで上記のバラツキが小さくなる原因は必ずしも明らかではないが、溶接箇所に配されていた樹脂材料が当該溶接箇所の周辺に押し出されたときに、第1金属層及び第2金属層が移動又は変形することで、第1金属層及び第2金属層の破断が抑制されたものと推測される。
【0026】
上記のバラツキの小さな積層体が得られることにより、例えば、上記の積層体を構成する複数の金属層が、上記の積層型電池の集電体の一部を構成する部材として用いられた場合、上記の積層型電池の各層における電極反応のバラツキも抑制される。その結果、当該積層型電池の寿命特性が向上する。
【0027】
また、本発明者らは、例えば、上記の支持層がポリイミドよりも融点の小さな熱可塑性を主成分として含む場合に、上記の凹凸領域が形成され得ることを見出した。支持層の主成分としては、支持層中の含有量が50質量%を超える成分、支持層中の含有量が51質量%以上である成分などが例示される。さらに、本発明者らは、溶接前の溶接対象の溶接箇所及び/又はその近傍に、支持層、第1金属層及び第2金属層を貫通する1以上の貫通孔が形成されている場合に、上記の凹凸領域が形成され得ることを見出した。
【0028】
上述されたとおり、上記の溶接対象は、例えば、電池の電極に用いられる集電体であり、上記の積層体を生産する方法又は積層された複数の溶接対象を溶接する方法は、電池(特に、二次電池である。)の筐体の内部に配される電極構造体の作製に適用され得る。また、本実施形態によれば、集電体の一部が、アルミニウム箔又は銅箔よりも密度の小さな物質(典型的には、空気又は樹脂材料である。)により形成される。
【0029】
その結果、単位質量当たりのエネルギー密度及び/又は活物質の単位質量あたりの容量に優れた蓄電セルが提供され得る。例えば、本実施形態によれば、単位質量あたりのエネルギー密度が350[Wh/kg-蓄電セル]以上の蓄電セルが提供され得る。また、本実施形態に係る蓄電セルを備えた電池は、単位質量あたりのエネルギー密度が大きいので、飛行体の用途に特に適している。
【0030】
以上のとおり、本実施形態によれば、例えば、充電式電池における重量当たりのエネルギー量を改善することができ、より軽量でより多くの電力を蓄えることができる充電式電池を実現できる。充電式電池は、例えば、災害現場へ持ち込まれ、被災者へのエネルギー供給などに活用され得る。そのため、本実施形態に係る積層体、電極構造体及び電池、並びに、これらの製造方法は、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」又は目標13「気候変動に具体的な対策を」などの達成に貢献できる。
【0031】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0032】
本明細書において、数値範囲が「A~B」と表記される場合、当該表記はA以上B以下を意味する。また、「置換又は非置換」とは、「任意の置換基で置換されている、又は、置換基で置換されていない」ことを意味する。上記の置換基の種類は、明細書中で言及されない限り、特に制限されない。また、上記の置換基の個数は、明細書中で言及されない限り、特に制限されない。
【0033】
(飛行体100の概要)
図1は、飛行体100のシステム構成の一例を概略的に示す。本実施形態において、飛行体100は、蓄電池110と、電力制御回路120と、1又は複数の電動機130と、1又は複数のプロペラ140と、1又は複数のセンサ150と、制御装置160とを備える。本実施形態において、蓄電池110は、1又は複数の蓄電セル112を有する。
【0034】
本実施形態において、飛行体100は、蓄電池110に蓄積された電気エネルギーを利用して飛行する。飛行体100としては、飛行機、飛行船又は風船、気球、ヘリコプター、ドローンなどが例示される。
【0035】
本実施形態において、蓄電池110は、電力制御回路120を介して、外部の充電装置(図示されていない。)から電気エネルギーを受領し、当該電気エネルギーを1以上の蓄電セル112に蓄積する。また、蓄電池110は、電力制御回路120を介して、1以上の蓄電セル112に蓄積された電気エネルギーを電動機130に供給する。
【0036】
本実施形態において、蓄電セル112は、電気エネルギーを蓄積する(蓄電セル112の充電と称される場合がる)。また、蓄電セル112は、蓄積された電気エネルギーを放出する(蓄電セル112の放電と称される場合がある)。蓄電セル112は、二次電池であってよい。
【0037】
蓄電セル112は、全固体電池であってよい。蓄電セル112は、全固体二次電池であってよい。全固体二次電池は、上述された電解液又はゲル電解質を実質的に含まない二次電池であり、例えば、一対の電極と、当該一対の電極の間に配される固体電解質層とを備える。
【0038】
二次電池が電解液又はゲル電解質を実質的に含まないとは、二次電池が電解液又はゲル電解質を含まない場合だけでなく、二次電池が少量の電解液又はゲル電解質を含む場合をも意味する。二次電池の構成材料が電解液又はゲル電解質に含まれる溶媒に溶解する場合であっても、二次電池に含まれる溶媒の量が少なければ、二次電池の構成材料が溶媒に溶解することの電池性能に対する影響が無視し得るからである。
【0039】
一実施形態において、蓄電セル112は、(i)支持電解質塩及び溶媒を含む電解液、及び、(ii)支持電解質塩、有機高分子化合物及び有機溶媒を含むゲル電解質の少なくとも一方を含まない。他の実施形態において、活物質として用いられる有機化合物の質量[kg]に対する、電解液及びゲル電解質の質量[kg]の割合は、5%未満である。
【0040】
二次電池のキャリアイオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。二次電池としては、ナトリウムイオン二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム金属二次電池、リチウム空気二次電池、リチウム硫黄二次電池、マグネシウムイオン二次電池などが例示される。
【0041】
例えば、車両に搭載される二次電池用の活物質としては、単位体積あたりに蓄積できる電荷量の大きな材料が選択されることが多い。一方、本実施形態において、蓄電セル112は飛行体100に搭載される。そのため、蓄電セル112に用いられる活物質は、単位質量あたりに蓄積できる電荷量の大きな材料であることが好ましい。
【0042】
蓄電セル112の質量エネルギー密度は、350[Wh/kg‐蓄電セル]以上であることが好ましく、400Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、500Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、600Wh/kg‐蓄電セル]以上であることがより好ましく、700[Wh/g‐蓄電セル]以上であることがさらに好ましい。これにより、飛行体の電源の用途に特に適した蓄電セルが得られる。
【0043】
蓄電セル112の体積エネルギー密度は、300[Wh/m3‐蓄電セル]以上1200[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよく、400[Wh/m3‐蓄電セル]以上1000[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよい。蓄電セル112が飛行体100の電源の一部として飛行体100に搭載される場合、蓄電セル112の体積エネルギー密度は、600[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよく、800[Wh/m3‐蓄電セル]以下であってもよい。
【0044】
蓄電セル112は、上記の数値範囲内の質量エネルギー密度と、上記の数値範囲内の体積エネルギー密度を有してもよい。これにより、車両の電源に用いることが比較的困難な蓄電セルを、飛行体の電源として利用することができる。蓄電セル112の詳細は後述される。
【0045】
本実施形態において、電力制御回路120は、蓄電池110の電力の入力及び出力を制御する。電力制御回路120は、制御装置160からの命令に基づいて、蓄電池110の電力の入力及び出力を制御してよい。電力制御回路120は、例えば、制御装置160からの制御信号に基づいて動作する複数のスイッチング素子を含む。
【0046】
本実施形態において、電動機130は、電力制御回路120を介して、蓄電池110から電気エネルギーを受領する。電動機130は、蓄電池110から受領した電気エネルギーを利用して、プロペラ140を回転させる。これにより、電動機130は、蓄電セル112に蓄積された電気エネルギーを利用して、飛行体100の推進力を発生させることができる。
【0047】
本実施形態において、センサ150は、飛行体100の位置及び姿勢に関する各種の物理量を測定する。飛行体100の位置及び姿勢に関する各種の物理量を測定するためのセンサとしては、GPS信号受信機、加速度センサ、角加速度センサ、ジャイロセンサなどが例示される。センサ150は、蓄電池110の状態に関する各種の物理量を測定してよい。蓄電池110の状態に関する各種の物理量を測定するためのセンサとしては、温度センサ、電流センサ、電圧センサなどが例示される。
【0048】
本実施形態において、制御装置160は、飛行体100を制御する。制御装置160は、電力制御回路120を制御することで、蓄電池110の電力の入出力を制御してよい。例えば、制御装置160は、蓄電池110の出力電流、出力電圧、入力電流、入力電圧などを制御する。これにより、制御装置160は、飛行体100の位置及び姿勢を制御することができる。制御装置160は、センサ150からの出力に基づいて電力制御回路120を制御することで、飛行体100の位置及び姿勢を制御してよい。
【0049】
蓄電池110は、二次電池の一例であってよい。蓄電セル112は、二次電池の一例であってよい。電動機130は、推進力発生装置の一例であってよい。二次電池は、電池の一例であってよい。
【0050】
(蓄電セル112の概要)
図2は、蓄電セル112の一例を概略的に示す。本実施形態においては、蓄電セル112がコイン型の全固体二次電池である場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明される。しかしながら、蓄電セル112はコイン型の全固体二次電池に限定されないことに留意されたい。
【0051】
(蓄電セル)
本実施形態において、蓄電セル112は、正極ケース212と、負極ケース214と、封止剤216と、金属バネ218とを備える。また、蓄電セル112は、正極220と、セパレータ230と、負極240とを備える。本実施形態において、正極220は、正極集電体222と、正極活物質層224とを有する。本実施形態において、負極240は、負極集電体242と、負極活物質層244とを有する。
【0052】
本実施形態において、蓄電セル112は、正極220と、セパレータ230と、負極240とを有する構造体260を備える。
図2に示されるとおり、正極220、セパレータ230及び負極240はこの順に積層されており、セパレータ230は、正極220及び負極240の間に配される。
【0053】
本実施形態においては、蓄電セル112が、電解液又はゲル電解質を実質的に含まない場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明される。また、本実施形態においては、正極集電体222が(i)導電性材料を含む導電層及び(ii)導電層を支持する支持層を有する場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明される。
【0054】
本実施形態において、正極ケース212及び負極ケース214を組み立てることで、正極ケース212及び負極ケース214の内部に空間が形成される。正極ケース212及び負極ケース214により形成された空間の内部には、金属バネ218、正極220、セパレータ230及び負極240が収容される。正極220、セパレータ230及び負極240は、金属バネ218の反発力により、正極ケース212及び負極ケース214の内部に固定される。
【0055】
正極ケース212及び負極ケース214は、例えば、円盤状の薄板形状を有する導電性の材料により構成される。本実施形態において、封止剤216は、正極ケース212及び負極ケース214の間に形成される隙間を封止する。封止剤216は、絶縁性材料を含む。封止剤216は、正極ケース212及び負極ケース214を絶縁する。
【0056】
(正極)
本実施形態において、正極集電体222は、正極活物質層224を保持する。本実施形態において、正極集電体222は、0.01mΩ~1Ωの電気抵抗を有する。これにより、正極集電体222の製造中に正極集電体222の導電層(導電層の詳細は後述される。)に圧力が印加される前後において、特定の測定条件で当該導電層に電流を印加して測定される電圧の変動が、例えば、100mV未満に抑制される。正極集電体222は、0.01mΩ~333mΩの電気抵抗を有してもよく、0.01mΩ~100mΩの電気抵抗を有してもよい。
【0057】
正極集電体222の密度は、例えば、1.1~2.0g/cm3程度に調整される。これにより、例えば、正極活物質層224に含まれる活物質の主成分が、アントラキノン(密度:1.3g/cm3)、アントラセン(密度:1.25g/cm3)及び/又はナフタレン(密度:1.14g/cm3)である場合、正極集電体222及び正極活物質層224を有する正極220の質量が非常に軽くなり、蓄電セル112の質量エネルギー密度が大きくなる。
【0058】
本実施形態において、正極集電体222の少なくとも一部は、金属よりも密度の小さな材料により形成される。正極集電体222の少なくとも一部は、アルミニウムよりも密度の小さな材料により形成されてもよい。例えば、正極集電体222の少なくとも一部は、樹脂により形成される。これにより、蓄電セル112が軽量化され得る。
【0059】
特に、固体電解質を主成分とするセパレータ230が用いられる場合、固体電解質の種類によっては、セパレータ230の質量が比較的大きくなる。このような場合であっても、正極集電体222の少なくとも一部が樹脂により形成されることにより、蓄電セル112の全体の質量の増加が抑制される。その結果、蓄電セル112の質量当たりの容量、及び、蓄電セル112のエネルギー密度が向上する。
【0060】
例えば、正極集電体222は、導電性材料を含む導電層と、当該導電層を支持する支持層とを備える。導電層及び支持層の詳細は後述される。
【0061】
正極集電体222の形状としては、箔形状(板形状、フィルム形状、シート形状などと称される場合がある)、メッシュ形状、穴あき板形状などが例示される。メッシュ形状及び穴あき板形状は、箔形状の一例であってもよい。正極集電体222の厚さは、特に限定されるものではないが、1~200μmであることが好ましい。正極集電体222の厚さは、6~20μmであってもよく、4~10μmであってもよい。
【0062】
本実施形態において、正極活物質層224は、正極集電体222の少なくとも一方の面に形成される。正極活物質層224の厚さは、正極集電体222の片面あたり1~100μmであってもよく、5~50μmであってもよい。
【0063】
正極活物質層224は、例えば、正極活物質と、結着材料(バインダーと称される場合がある。)とを含む。正極活物質層224は、導電性材料及びイオン伝導性材料の少なくとも一方をさらに含んでよい。正極活物質層224は、正極活物質と、イオン伝導性材料とを含んでもよい。これにより、正極活物質層224の内部に形成されるイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制され得る。
【0064】
一実施形態において、正極活物質層224は、正極集電体222の少なくとも一方の面の上に、正極活物質層224を構成する材料及び溶媒を含むスラリーを塗布し、当該スラリーを乾燥させることで形成される。上記の溶媒としては、各種の溶媒物質又はその混合物が例示される。上記の溶媒物質の種類は特に限定されるものではないが、上記の溶媒物質としては、N-メチルピロリドン(NMP)、水などが例示される。
【0065】
他の実施形態において、正極活物質層224は、正極活物質層224を構成する材料を混合してシート状に成型し、当該シート状の混合物を正極集電体222の少なくとも一方の面に圧着することで形成される。正極活物質として有機化合物が用いられる場合、上記の圧着工程において正極活物質層224に過度の圧力が印加されないように、正極集電体222及び正極活物質層224が圧着されてもよい。
【0066】
例えば、コーターを用いて、正極集電体222の上に正極活物質層224の前駆材料が塗工されるときに、正極活物質層224の前駆材料に印加される圧力が調整される。例えば、コーターによる塗工ギャップが180μm以上となるように設定される。上記の塗工ギャップは200μm以上に設定されてもよい。これにより、正極活物質層224中のイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制される。
【0067】
(正極活物質)
正極活物質層224に含まれる正極活物質としては、例えば、蓄電セル112のキャリアイオンを吸蔵及び放出することができる各種の物質が用いられる。正極活物質は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。これらの正極活物質は単独で用いられてもよく、2種以上の正極活物質が組み合せられてもよい。
【0068】
上述されたとおり、正極220は、正極集電体222と、正極活物質層224とを有する。正極活物質層224の質量は、正極220の全質量の80%以上であってよい。正極活物質の質量は、正極活物質層224の全質量の80%以上であってよい。
【0069】
正極活物質として用いられる無機化合物(無機正極活物質と称される場合がある。)としては、金属酸化物、金属ケイ酸塩、金属リン酸塩、金属ホウ酸塩などが例示される。上記の金属としては、V、Mn、Ni、Coなどの遷移金属が例示される。
【0070】
正極活物質として用いられる有機化合物(有機正極活物質と称される場合がある。)としては、各種の酸化還元活性な化合物が有機正極活物質として用いられる。有機正極活物質としては、共役系高分子、ジスルフィド、キノン、局在型ラジカル、非局在型ラジカルなどが例示される。
【0071】
有機正極活物質は、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機化合物であってもよい。上記の有機化合物が低分子化合物である場合、当該有機化合物の分子量は、例えば、500以下である。上記の有機化合物がポリマー又はオリゴマーである場合、当該有機化合物の分子量は、例えば、5000以下である。
【0072】
(正極活物質以外の材料)
正極活物質層224に含まれる結着材料は、正極活物質層224を構成する材料を結着し、正極220の電極形状を保持する。結着材料としては、例えば、各種の高分子材料が用いられる。上記の高分子材料としては、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体などが例示される。
【0073】
正極活物質として有機正極活物質が用いられる場合、結着材料は、有機正極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する結着材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機正極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0074】
正極活物質層224に含まれる導電性材料は、正極活物質層224の導電率を向上させる。これにより、正極220の抵抗が小さくなる。導電性材料は、電子伝導性を有する材料であれば特に限定されない。導電性材料としては、炭素系材料、金属系材料、導電性高分子材料などが例示される。これらの導電性材料は、単独で用いられてもよく、2種以上の導電助剤が組み合せられてもよい。
【0075】
炭素系材料としては、黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどである)、コークス、非晶質炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが例示される。金属系材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、チタン、ニッケルなどが例示される。導電性高分子材料としては、ポリフェニレン誘導体などが例示される。
【0076】
正極活物質として有機正極活物質が用いられる場合、導電性材料は、有機正極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する導電性材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機正極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0077】
正極活物質層224に含まれる伝導性材料は、正極活物質層224におけるキャリアイオンの伝導性を向上させる。伝導性材料としては、例えば、各種の固体電解質が用いられる。固体電解質としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、高分子固体電解質などが例示される。伝導性材料として、高分子固体電解質が用いられてよい。高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。
【0078】
後述されるとおり、本実施形態において、セパレータ230は、高分子固体電解質を含む。伝導性材料として用いられる高分子固体電解質の種類は、セパレータ230に含まれる高分子固体電解質の種類と同一であってもよく、異なってもよい。
【0079】
正極活物質として有機正極活物質が用いられる場合、伝導性材料は、有機正極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する伝導性材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機正極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0080】
(セパレータ)
本実施形態において、セパレータ230は、正極220及び負極240の間に配され、正極220及び負極240を隔離する。また、セパレータ230は、正極220及び負極240の間におけるキャリアイオンの伝導性を確保する。セパレータ230の厚さは、特に限定されるものではないが、10~50μmであることが好ましい。
【0081】
本実施形態において、セパレータ230は、層状(板状、フィルム状、シート状などと称される場合がある。)の固体電解質(固体電解質層と称される場合がある。)を備える。これにより、固体電解質層が、蓄電セル112のセパレータとして機能する。
【0082】
一実施形態において、セパレータ230として、固体電解質層が用いられる。固体電解質層は、単一の固体電解質層により構成されてもよく、複数の固体電解質層により構成されてもよい。他の実施形態において、セパレータ230として、1又は複数の固体電解質層と、固体電解質以外の材料を含む他の層との積層体が用いられる。他の層は、イオン伝導性を有してよい。他の層としては、複数の貫通孔が形成された樹脂と、当該貫通孔の内部に充填されたイオン伝導性材料とを備える複合材料が例示される。
【0083】
これにより、電解液又はゲル電解質を含まない二次電池が作製され得る。その結果、正極活物質層224及び/又は負極活物質層244が、主な活物質として有機活物質を含む場合であっても、有機活物質が電解液又はゲル電解質の溶媒に溶解することによる電池寿命の減少が抑制され得る。
【0084】
なお、セパレータ230は、上記の実施形態に限定されない。例えば、細孔の内部に固体電解質が配された多孔質材料が、セパレータ230として用いられる。適切な支持材料又は保持材料をゲル電解質又は電解液に浸漬し、当該支持材料又は当該保持材料の内部にゲル電解質又は電解液を浸潤させた後、当該支持材料又は当該保持材料の内部に配された電解質を固化させることで、セパレータ230が作製されてもよい。例えば、ゲル電解質又は電解液を含む支持材料又は保持材料を乾燥させることで、当該支持材料又は当該保持材料の内部に配された電解質が固化する。
【0085】
電解液又はゲル電解質の溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、γ-ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2-ジメトキシメタン、1,3-ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、及び、これらの混合物が例示される。特に、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、及び、エチルメチルカーボネート(EMC)は、電解液又はゲル電解質の溶媒として広く用いられている。
【0086】
(固体電解質層)
本実施形態において、セパレータ230は、高分子固体電解質を主な構成材料として含む固体電解質層を備える。固体電解質層は、例えば、80質量%以上の真正高分子固体電解質を含む。セパレータ230が高分子固体電解質を主な構成材料として含む場合、高圧のプレス工程を経ることなく、セパレータ230と、正極220及び/又は負極240とが接合され得る。
【0087】
固体電解質層は、例えば、平滑な支持板の上に、固体電解質層を構成する材料及び溶媒を含むスラリーを塗布し、当該スラリーを乾燥させることで作製される。上記の溶媒としては、各種の溶媒又はその混合物が例示される。上記の溶媒の種類は特に限定されるものではないが、上記の溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、水、メタノールなどが例示される。
【0088】
固体電解質層を構成する高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。固体電解質層は、実質的に単一高分子固体電解質により構成されてもよく、2以上の種類の高分子固体電解質を含んでよい。
【0089】
(負極)
本実施形態において、負極集電体242は、負極活物質層244を保持する。負極集電体242の材料としては、銅、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金などが例示される。
【0090】
負極集電体242は、導電性樹脂を含んでもよい。負極集電体242は、導電性樹脂であってもよい。一実施形態において、導電性樹脂は、導電性高分子を含む。他の実施形態において、導電性樹脂は、導電性フィラーを含む高分子であってよい。
【0091】
負極集電体242は、正極集電体222と同様の構成を有してもよい。例えば、負極集電体242は、導電性材料を含む導電層と、当該導電層を支持する支持層とを備える。支持層は、金属よりも密度の小さな材料により形成される。支持層は、アルミニウムよりも密度の小さな材料により形成されてもよい。例えば、支持層は、樹脂により形成される。これにより、蓄電セル112が軽量化され得る。
【0092】
負極活物質としてキャリア金属が用いられる場合、当該キャリア金属が集電体の役割を兼ね得る。例えば、蓄電セル112のキャリア金属がリチウムであり、負極活物質がリチウム金属である場合、リチウム金属が集電体として用いられる。この場合、蓄電セル112は、負極集電体242を備えなくてもよい。
【0093】
負極集電体242の形状としては、箔形状(板形状、フィルム形状などと称される場合がある)、メッシュ形状、穴あき板形状などが例示される。メッシュ形状及び穴あき板形状は、箔形状の一例であってもよい。負極集電体242の厚さは、特に限定されるものではないが、1~200μmであってよい。負極集電体242の厚さは、4~20μmであってもよく、6~10μmであってもよい。
【0094】
本実施形態において、負極活物質層244は、負極集電体242の少なくとも一方の面に形成される。負極活物質層244の厚さは、負極集電体242の片面あたり、0~200μmであってもよく、1~100μmであってもよい。
【0095】
負極活物質層244は、例えば、負極活物質と、結着材料(バインダーと称される場合がある。)とを含む。負極活物質層244は、導電性材料及びイオン伝導性材料の少なくとも一方をさらに含んでよい。負極活物質層244は、負極活物質と、イオン伝導性材料とを含んでもよい。これにより、負極活物質層244の内部に形成されるイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制され得る。
【0096】
一実施形態において、負極活物質層244は、負極集電体242の少なくとも一方の面の上に、負極活物質層244を構成する材料及び有機溶媒を含むスラリーを塗布し、当該スラリーを乾燥させることで作製される。上記の溶媒としては、各種の溶媒物質又はその混合物が例示される。上記の溶媒物質の種類は特に限定されるものではないが、上記の溶媒物質としては、N-メチルピロリドン(NMP)、水などが例示される。
【0097】
他の実施形態において、負極活物質層244は、負極活物質層244を構成する材料を混合してシート状に成型し、当該シート状の混合物を負極集電体242の少なくとも一方の面に圧着することで形成される。負極活物質として有機化合物が用いられる場合、上記の圧着工程において負極活物質層244に過度の圧力が印加されないように、負極集電体242及び負極活物質層244が圧着されてもよい。
【0098】
例えば、コーターを用いて、負極集電体242の上に負極活物質層244の前駆材料が塗工されるときに、負極活物質層244の前駆材料に印加される圧力が調整される。例えば、コーターによる塗工ギャップが180μm以上となるように設定される。上記の塗工ギャップは200μm以上に設定されてもよい。これにより、負極活物質層244中のイオン伝導パス及び/又は電子伝導パスの切断が抑制される。
【0099】
(負極活物質)
負極活物質層244に含まれる負極活物質としては、例えば、蓄電セル112のキャリアイオンを吸蔵及び放出することができる各種の物質が用いられる。負極活物質は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。これらの負極活物質は単独で用いられてもよく、2種以上の負極活物質が組み合せられてもよい。例えば、蓄電セル112のキャリアイオンを放出可能な金属箔が、負極活物質層244として用いられる。これにより、蓄電セル112の質量エネルギー密度が向上する。
【0100】
一実施形態において、負極集電体242が、正極集電体222と同様に、導電性材料を含む導電層と、当該導電層を支持する支持層とを備える。この場合、負極活物質層244の質量は、負極240の全質量の80%以上であってよい。負極活物質の質量は、負極活物質層244の全質量の80%以上であってよい。他の実施形態において、負極活物質として、蓄電セル112のキャリアイオンを放出可能な金属(例えば、Li金属である。)が用いられる。この場合、負極活物質層244に含まれる負極活物質のほぼ全体が、当該金属により構成される。また、負極活物質層244が箔形状の上記金属である場合、負極240は負極集電体242を備えなくてもよい。
【0101】
負極活物質として用いられる無機化合物(無機負極活物質と称される場合がある。)としては、(i)キャリア金属及びこれを含む合金、(ii)スズ、シリコン及びこれらを含む合金、(iii)珪素酸化物、(iv)チタン酸化物などが例示される。例えば、蓄電セル112がリチウム二次電池である場合、負極活物質として、金属リチウム、リチウム・チタン酸化物(LTO)などが用いられる。キャリア金属を含まない材料が負極活物質として用いられる場合、当該材料にキャリア金属がプレドープされてよい。
【0102】
負極活物質として用いられる有機化合物(有機負極活物質と称される場合がある。)としては、各種の酸化還元活性な化合物が有機正極活物質として用いられる。有機正極活物質としては、共役系高分子、ジスルフィド、キノン、局在型ラジカル、非局在型ラジカルなどが例示される。
【0103】
有機正極活物質は、分子量が比較的小さく、且つ、多電子授受能を有する有機化合物であってもよい。上記の有機化合物が低分子化合物である場合、当該有機化合物の分子量は、例えば、500以下である。上記の有機化合物がポリマー又はオリゴマーである場合、当該有機化合物の分子量は、例えば、5000以下である。
【0104】
上述されたとおり、負極活物質層244は、箔状のキャリア金属を含んでよい。例えば、負極活物質層244は、リチウム金属箔を含む。これにより、蓄電セル112にキャリア金属が供給される。金属箔の厚さは、1~200μmであってよく、10~100μmであってよく、20~50μmであってよい。金属箔の厚さ及び/又は質量は、正極活物質層224における正極活物質の含有量に応じて決定されてよい。
【0105】
(負極活物質以外の材料)
負極活物質層244に含まれる結着材料は、負極活物質層244を構成する材料を結着し、負極240の電極形状を保持する。結着材料としては、例えば、各種の高分子材料が用いられる。上記の高分子材料としては、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体などが例示される。
【0106】
負極活物質として有機負極活物質が用いられる場合、結着材料は、有機負極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する結着材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機負極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0107】
負極活物質層244に含まれる導電性材料は、負極活物質層244の導電率を向上させる。これにより、負極240の抵抗が小さくなる。導電性材料は、電子伝導性を有する材料であれば特に限定されない。導電性材料としては、炭素系材料、金属系材料、導電性高分子材料などが例示される。これらの導電性材料は、単独で用いられてもよく、2種以上の導電助剤が組み合せられてもよい。
【0108】
炭素系材料としては、黒鉛、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどである)、コークス、非晶質炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが例示される。金属系材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、チタン、ニッケルなどが例示される。導電性高分子材料としては、ポリフェニレン誘導体などが例示される。
【0109】
負極活物質として有機負極活物質が用いられる場合、導電性材料は、有機負極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する結着材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機負極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0110】
負極活物質層244に含まれる伝導性材料は、負極活物質層244におけるキャリアイオンの伝導性を向上させる。伝導性材料としては、例えば、各種の固体電解質が用いられる。固体電解質としては、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、高分子固体電解質などが例示される。伝導性材料として、高分子固体電解質が用いられてよい。高分子固体電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、及び、これらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。
【0111】
上述されたとおり、本実施形態において、セパレータ230は、高分子固体電解質を含む。伝導性材料として用いられる高分子固体電解質の種類は、セパレータ230に含まれる高分子固体電解質の種類と同一であってもよく、異なってもよい。
【0112】
負極活物質として有機負極活物質が用いられる場合、伝導性材料は、有機負極活物質の溶解度が予め定められた値よりも大きな溶媒に溶解する材料であってもよい。上記の溶媒に対する伝導性材料の溶解度は、上記の溶媒に対する有機負極活物質の溶解度と同等以上であってよい。これにより、例えば、蓄電セル112の構成材料を再利用する場合に、蓄電セル112の分解工程が容易になる。
【0113】
正極ケース212は、筐体の一例であってよい。負極ケース214は、筐体の一例であってよい。正極220は、電極の一例であってよい。正極集電体222は、集電体の一例であってよい。正極活物質層224は、活物質層の一例であってよい。負極240は、電極の一例であってよい。負極集電体242は、集電体の一例であってよい。負極活物質層244は、活物質層の一例であってよい。有機活物質は、有機化合物の一例であってよい。有機正極活物質は、有機化合物の一例であってよい。有機負極活物質は、有機化合物の一例であってよい。
【0114】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、蓄電セル112がコイン型二次電池である場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112の種類、構造などは、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、蓄電セル112は、正極、セパレータ及び負極が渦巻状に巻回した巻回電極体を備える円筒型電池であってもよい。さらに他の実施形態において、蓄電セル112は、正極及び負極がセパレータを挟んで交互に積層した積層電極体が、ラミネートで封止されたラミネート型電池であってもよい。さらに他の実施形態において、構造体260が積層された複数の正極220を備え、積層された正極220の一部において、積層された正極220のそれぞれの正極集電体222が一体化していてもよい。構造体260が積層された複数の負極240を備え、積層された負極240の一部において、積層された負極240のそれぞれの負極集電体242が一体化していてもよい。この場合、構造体260は、積層体又は電極構造体の一例であってよい。
【0115】
本実施形態においては、負極240が、負極集電体242及び負極活物質層244を有する場合を例として、蓄電セル112の詳細が説明された。しかしながら、蓄電セル112の負極は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、箔状のキャリア金属が、負極集電体242及び負極活物質層244として機能する。例えば、蓄電セル112がリチウム金属二次電池である場合、金属リチウムが負極として使用され得る。
【0116】
図3は、蓄電セル112の他の例を概略的に示す。
図3に関連して説明される蓄電セル112は、正極ケース212及び負極ケース214により形成された空間の内部に、金属バネ218、正極220、セパレータ230及び負極240に加えて、液体又はゲル状の電解質350が収容される点と、セパレータ230として固体電解質以外の材料が採用され得る点とで、
図2に関連して説明された蓄電セル112と相違する。
図3に関連して説明される蓄電セル112は、上記の相違点を除き、
図2に関連して説明された蓄電セル112と同様の構成を有してよい。
【0117】
液体又はゲル状の電解質350としては、公知の電解液又はゲル電解質が使用され得る。セパレータ230としては、公知のセパレータが使用され得る。
【0118】
図4、
図5及び
図6を用いて、正極集電体222の詳細が説明される。上述されたとおり、負極集電体242も、正極集電体222と同様の構成を有してよい。
図4は、正極集電体222の一例である集電体400の断面図を概略的に示す。
図5は、正極集電体222の一例である集電体500の断面図の一例を概略的に示す。
図6は、正極集電体222の一例である集電体600の断面図の一例を概略的に示す。
【0119】
図4に示されるとおり、集電体400は、支持層420と、導電層442と、導電層444とを備える。本実施形態において、支持層420は、第1平面422と、第2平面424と、側面426とを有する。本実施形態において、導電層442は、支持層420の第1平面422に配される。導電層444は、支持層420の第2平面424に配される。
【0120】
本実施形態において、支持層420は、導電層442及び導電層444を支持する。これにより、導電層442及び導電層444の破損が抑制される。支持層420の密度は、導電層442又は導電層444の密度より小さい。例えば、支持層420は、密度が導電層442又は導電層444の密度よりも小さな材料により構成される。支持層420は、シート状の樹脂材料であってよい。
【0121】
樹脂材料は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。支持層420は、単一の種類の樹脂材料により構成されてもよく、複数の種類の樹脂材料を含んでもよい。上述されたとおり、積層された複数の集電体400の一部が溶接される場合、樹脂材料は、主に熱可塑性樹脂を含む、又は、実質的に熱可塑性樹脂により構成されることが好ましい。これにより、例えば、溶接前に支持層が加熱されることで、支持層の流動性が向上する。また、支持層420が主に熱可塑性樹脂を含む場合又は支持層420が実質的に熱可塑性樹脂により構成される場合、支持層420が主に熱硬化性樹脂を含む場合又は支持層420が実質的に熱硬化性樹脂により構成される場合と比較して、複数の集電体400がしっかりと溶接される。これにより、溶接箇所の強度に優れ、溶接箇所の電気抵抗の小さな積層体が作製され得る。
【0122】
熱可塑性樹脂は、(i)20℃における熱伝導率が0.6W/mK以下であるという特性、(ii)20℃における比熱が2500J/kg・℃以下であるという特性、(iii)20℃における熱収縮率が1%以下であるという特性、(iv)融点が300℃以下であるという特性、及び、(v)20℃における密度が1.9gcm3以下であるという特性からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する樹脂であってよい。これにより、積層された複数の集電体400の一部を溶接により一体化させる場合において、導電層442及び導電層444に上述された凹凸領域が形成されやすくなる。
【0123】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などが例示される。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどが例示される。ポリプロピレンとしては、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CCP)などが例示される。
【0124】
支持層420は、PET、PP及PEからなる群から選択される1以上の種類の樹脂材料により、実質的に構成されてよい。これにより、支持層420が実質的にポリイミド(PIと称される場合がある。)により構成される場合と比較して、積層された複数の集電体400の一部を溶接するときに、導電層442及び導電層444に上述された凹凸領域が形成されやすくなる。その結果、溶接時における導電層442及び/又は導電層444の破断が抑制される。
【0125】
支持層420の導電率は特に限定されるものではないが、支持層420の導電率は、導電層442又は導電層444の導電率より小さくてもよい。支持層420の厚さは特に限定されるものではないが、支持層420の厚さは、導電層442又は導電層444の厚さより大きくてもよい。支持層420の厚さが大きくなると、支持層420の質量も大きくなる。そこで、支持層420がシート状の樹脂材料である場合、当該樹脂材料の厚さは、10μm以下であってもよく、7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0126】
上記の樹脂材料の厚さは、20℃において1μm以上10μm以下であることが好ましい。上記の樹脂材料の厚さは、20℃において1μm以上7μm以下であってもよく、20℃において1μm以上5μm以下であってもよい。
【0127】
本実施形態において、導電層442及び導電層444は、導電性材料を含む。導電性材料は、抵抗率が8.0×10-8[Ω・m]以上の材料であってよい。導電性材料は、金属であってよい。上記の金属としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル又はこれらの合金などが例示される。ステンレススチールとしては、SUS-430、SUS-304などが例示される。導電性材料は、アルミニウムであってもよい。
【0128】
導電層442及び/又は導電層444の厚さ(図中、上下方向の長さとして示される。)は、0.05μm~7μmであってよい。導電層442及び/又は導電層444の厚さは、0.05μm~5μmであってもよく、0.1μm~3μmであってもよく、0.1μm~2μmであってもよく、0.5μm~1μmであってもよい。導電層442及び/又は導電層444の厚さは、0.05μm~4μmであってもよく、0.05μm~3μmであってもよく、0.05μm~2μmであってもよく、0.05μm~1μmであってもよい。導電層442及び/又は導電層444の厚さは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.1μm~1μmであることがさらに好ましい。市販のアルミニウム箔は、比較的薄いアルミニウム箔であっても6~10μmの厚さを有することから、集電体400が5μm以下の厚さを有する導電層442及び/又は導電層444を備えることにより、導電層442及び/又は導電層444として市販のアルミニウム箔が用いられた場合と比較して、蓄電セルの単位質量当たりのエネルギー密度[Wh/kg-蓄電セル]が向上する。
【0129】
導電層442及び/又は導電層444の少なくとも一方は、上記の厚さを有する層状又は箔状のアルミニウムであってよい。層状又は箔状のアルミニウムは、貼り付けにより支持層420の表面に配されてもよく、蒸着法、堆積法などにより支持層420の表面に形成されてもよい。
【0130】
導電層442及び/又は導電層444の厚さが7μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度が向上する。導電層442及び/又は導電層444の厚さが5μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度がさらに向上する。導電層442及び/又は導電層444の厚さが1μm以下である場合、蓄電セル112の質量エネルギー密度が大きく向上する。一般的に、導電層の厚さが0.1μm以下又は0.1μm未満になると、導電層442及び/又は導電層444の厚さが破損しやすくなる。しかしながら、本実施形態に係る導電層442及び導電層444は、支持層420により支持されている。そのため、導電層442及び/又は導電層444の厚さが0.05~0.1μm程度の場合であっても、導電層442及び/又は導電層444の破損が抑制され得る。
【0131】
図5に示されるとおり、集電体500は、支持層420に複数の貫通孔522が形成されている点で、
図4に関連して説明された集電体400と相違する。集電体500は、上記の相違点を除き、集電体400と同様の構成を有してよい。
【0132】
集電体として単なる金属箔を用いた場合、当該集電体に貫通孔を形成しようとすると、当該金属箔が屈曲してしまい、貫通孔を形成することが困難になる場合がある。そのため、特に、金属箔の両面に活物質層が形成される場合には、集電体に貫通孔を形成することが難しい。これに対して、本実施形態によれば、導電層が樹脂シートなどの支持層により支持されているので、集電体に貫通孔を形成しても集電体が比較的屈曲しにくい。
【0133】
本実施形態によれば、複数の貫通孔522の一部に、導電性材料546が充填される。導電性材料546は、導電層442及び導電層444を電気的に接続する。
【0134】
複数の貫通孔522のそれぞれの円相当径(円相当直径と称される場合がある。)は、15μm~150μmであってよい。隣接する2つの貫通孔522の間隔は、30μm~250μmであってよい。
【0135】
貫通孔522の円相当径が15μmよりも小さくなると、貫通孔522の内壁面に、導電層442及び導電層444を電気的に接続するための導電層(内部導電層と称される場合がある。)を形成する場合に、十分な厚さを有する内部導電層を形成することが比較的困難になり得る、又は、十分な厚さを有する内部導電層を形成するための手間が増加し得る。内部導電層の厚さが不十分であると、当該内部導電層の電気抵抗が大きくなり得る。一方、貫通孔522の円相当径が150μmよりも大きくなると、導電層442及び導電層444を支持する支持層420の面積が小さくなる。その結果、集電体500に含まれる導電層442及び導電層444の総量も小さくなり、導電層442及び導電層444の電気抵抗が大きくなり得る。また、貫通孔522の円相当径が150μmよりも大きくなると、集電体500の強度が不足し得る。
【0136】
複数の貫通孔522のそれぞれの円相当径(円相当直径と称される場合がある。)は、15μm~150μmであってもよく、15μm~50μmであってもよく、15~35μmであってもよい。導電性材料546が充填されていない貫通孔522の円相当径は、15μm~50μmであってよく、15~35μmであってもよい。導電性材料546が充填されている貫通孔522の円相当径は、特に限定されない。これにより、導電層442及び導電層444の破断が抑制されつつ、集電体500の計量化が実現され得る。
【0137】
集電体500の一方の面の外形の面積に対する、集電体500の一方の面における複数の貫通孔522の面積の総和の割合は、30%以上であってよい。集電体500の一方の面の外形の面積に対する、集電体500の一方の面における、導電性材料546が充填されていない貫通孔522の面積の総和の割合は、30%以上であってもよい。これにより、導電層442及び導電層444の破断が抑制されつつ、集電体500の計量化が実現され得る。
【0138】
図6に示されるとおり、集電体600は、支持層420、導電層442及び導電層444を貫通する複数の貫通孔620が形成されている点で、
図5に関連して説明された集電体500と相違する。集電体500は、上記の相違点を除き、集電体500と同様の構成を有してよい。例えば、貫通孔620は、導電層442及び導電層444を貫通する点を除き、貫通孔522と同様の構成を有する。
【0139】
本実施形態において、複数の貫通孔620の少なくとも一部の内壁部622の表面には、導電層642が形成されている。導電層642は、導電層442及び導電層444を電気的に接続してよい。
【0140】
本実施形態において、導電層642は、導電性材料を含む。導電性材料は、金属であってよい。上記の金属としては、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル又はこれらの合金などが例示される。ステンレススチールとしては、SUS-430、SUS-304などが例示される。導電性材料は、アルミニウムであってもよい。
【0141】
導電層642は、主成分の異なる複数の層を有してよい。導電層642は、主成分の異なる3以上の層を有してよい。導電層642は、例えば、補助層と、目的層と、保護層とを備える。例えば、貫通孔620の内壁部622の表面にニッケルを主成分とする第1層が形成され、第1層の上に銅を主成分とする第2層が形成され、第2層の上にクロメート被膜が形成される。第1層の厚さは0.1μm程度であってよく、第2層の厚さは1μm程度であってよく、クロメート被膜の厚さは0.3μm程度であってよい。
【0142】
集電体400は、シート材料の一例であってよい。集電体400は、第1シート材料又は第2シート材料の一例であってよい。支持層420は、支持層の一例であってよい。導電層442は、第1金属層及び第2金属層の一方の一例であってよい。導電層444は、第1金属層及び第2金属層の他方の一例であってよい。
【0143】
集電体500は、シート材料の一例であってよい。集電体500は、第1シート材料又は第2シート材料の一例であってよい。導電性材料546は、導電部材の一例であってよい。
【0144】
集電体600は、シート材料の一例であってよい。集電体600は、第1シート材料又は第2シート材料の一例であってよい。内壁部622は、貫通孔の内壁の一例であってよい。導電層642は、導電部材の一例であってよい。
【0145】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、積層された複数の集電体の一部が溶接される場合には、支持層420が、主に熱可塑性樹脂を含む、又は、実質的に熱可塑性樹脂により構成される場合を例として、集電体400、集電体500及び集電体600の詳細が説明された。しかしながら、集電体400、集電体500及び集電体600は、本実施形態に限定されない。
【0146】
他の実施形態において、支持層420の両面に配された導電層442及び導電層444が電気的に接続してされている場合、支持層420は、主に熱硬化性樹脂を含んでもよく、実質的に熱硬化性樹脂により構成されてもよい。特に、集電体500によれば、複数の貫通孔522の少なくとも一部の内部に導電性材料546が充填されている。同様に、集電体600によれば、複数の貫通孔620の少なくとも一部の内部に導電層642が形成される。そのため、単一の集電体に含まれる導電層442及び導電層444が近接又は接触しなくても、溶接により、積層された複数の集電体の一部が一体化し得る。また、溶接前に支持層が加熱されることで、支持層の流動性が低下する。これにより、支持層が溶接箇所の周辺に押し出されることが抑制され、その結果、溶接箇所の周辺の体積膨張が抑制され得る。
【0147】
本実施形態においては、
図4に関連して、支持層420に貫通孔が形成されていない場合を例として、集電体400の詳細が説明された。また、
図5及び
図6に関連して、貫通孔522又は貫通孔620の円相当直径が15μm~150μmである場合を例として、集電体500及び集電体600の詳細が説明された。しかしながら、集電体400、集電体500及び集電体600は、本実施形態に限定されない。
【0148】
他の実施形態において、集電体400、集電体500及び/又は集電体600には、円相当径が30μm~5mmであり、集電体を貫通する1以上の貫通孔が形成されていてもよい。円相当径が30μm~5mmの貫通孔は、例えば、溶接箇所の重心又は当該重心の近傍(略中心と称される場合がある。)に配される。これにより、溶接箇所から押し出される樹脂材料の体積が減少する。その結果、導電層442及び導電層444の破断がさらに抑制される。上記の貫通孔の内壁には、導電層442及び導電層444を電気的に接続する導電層が形成されていてもよい。これにより、複数のシート材料の溶接が促進され得る。
【0149】
集電体500の別実施形態において、円相当径が30μm~5mmである貫通孔は、貫通孔522に代わって、又は、貫通孔522とともに、形成されていてよい。上記の貫通孔の円相当径は、貫通孔522の円相当径よりも大きくてよい。集電体600の別実施形態において、円相当径が30μm~5mmである貫通孔は、貫通孔620に代わって、又は、貫通孔620とともに、形成されていてよい。上記の貫通孔の円相当径は、貫通孔620の円相当径よりも大きくてよい。
【0150】
本実施形態においては、支持層420に形成された貫通孔の内部に配された導電性材料546又は導電層642により、導電層442及び導電層444が電気的に接続される場合を例として、集電体500及び集電体600の詳細が説明された。しかしながら、集電体400、集電体500及び集電体600は、本実施形態に限定されない。他の実施形態において、導電層442及び導電層444は、支持層420の側面の少なくとも一部に配された導電部材により電気的に接続されてよい。
【0151】
図7及び
図8を用いて、電極構造体の他の例である積層構造体760の詳細が説明される。
図7は、積層構造体760の断面の一例を概略的に示す。
図8は、積層構造体760の電極の電気的な接続関係の一例を概略的に示す。
【0152】
図2に関連して説明された実施形態においては、構造体260が、正極220、セパレータ230及び負極240はこの順に積層されている場合を例として、電池の一部構成する構造体(電極構造体と称される場合がある。)の詳細が説明された。しかしながら、電極構造体は、構造体260に限定されない。積層構造体760は、複数の正極220と、複数のセパレータ230と、複数の負極240とを備える点で、構造体260と相違する。積層構造体760は、上記の相違点を除き、構造体260と同様の構成を有してよい。
【0153】
図7に示されるとおり、本実施形態において、積層構造体760は、1以上の正極220と、1以上の負極240と、1以上の正極220のそれぞれ、及び、1以上の負極240のそれぞれの間に配される1以上のセパレータ230とを備える。
図7に示されるとおり、積層構造体760は、複数の正極220と、複数の負極240と、複数の正極220のそれぞれ、及び、複数の負極240のそれぞれの間に配される複数のセパレータ230とを備える。
【0154】
積層構造体760の最も外側に配される正極220を除き、複数の正極220のそれぞれは、正極集電体222の両面に配された正極活物質層224を有する。積層構造体760の最も外側に配される正極220は、正極集電体222の一方の面に配された正極活物質層224を有する。
【0155】
積層構造体760の最も外側に配される負極240を除き、複数の負極240のそれぞれは、負極集電体242の両面に配された負極活物質層244を有する。積層構造体760の最も外側に配される負極240は、負極集電体242の一方の面に配された負極活物質層244を有する。
【0156】
本実施形態において、正極活物質層224は、正極集電体222の一部に配される。例えば、正極集電体222の少なくとも一方の端部の近傍において、正極集電体222の少なくとも一方の面には、正極活物質層224が形成されていない。複数の正極220は、例えば、正極活物質層224が形成されていない側の端部が略同一の方向を向くように、積層される。
【0157】
本実施形態において、負極活物質層244は、負極集電体242の一部に配される。例えば、負極集電体242の少なくとも一方の端部の近傍において、負極集電体242の少なくとも一方の面には、負極活物質層244が形成されていない。複数の負極240は、例えば、負極活物質層244が形成されていない側の端部が略同一の方向を向くように、積層される。
【0158】
図8に示されるとおり、積層構造体760は、複数の正極220のそれぞれを電気的に接続する正極接続部820を備える。本実施形態によれば、正極接続部820は、複数の正極220の一部を挟み込んで支持するリード822及びサブリード824を有する。これにより、複数の正極220の結合箇所の強度が向上する。
【0159】
本実施形態においては、リード822及びサブリード824は、複数の正極220のそれぞれの正極集電体222の端部及び/又は当該端部の近傍を挟み込んで支持する。上述されたとおり、複数の正極220のそれぞれの少なくとも一方の端部の近傍には、正極活物質層224が形成されていない。リード822及びサブリード824は、積層された複数の正極集電体222を挟み込むように配される。なお、他の実施形態において、サブリード824が用いられなくてもよい。
【0160】
正極接続部820において、複数の正極220が溶接により物理的に結合されてよい。例えば、積層された複数の正極集電体222が溶接により物理的に結合されることで、複数の正極集電体222の端部及び/又は端部の近傍が一体化する。これにより、複数の正極220が物理的に結合される。複数の正極集電体222の端部及び/又は端部の近傍において、複数の正極集電体222と、リード822及び/又はサブリード824とが一体化してもよい。例えば、リード822及びサブリード824が金属を含む場合、上記の溶接工程において、複数の正極集電体222のそれぞれに含まれる複数の導電層442及び複数の導電層444と、リード822及びサブリード824とが一体化する。溶接方法としては、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接などが例示される。
【0161】
本実施形態においては、複数の正極220のそれぞれの正極集電体222の端部の近傍に位置する領域(溶接領域と称される場合がある。)が溶接されることで、複数の正極220のそれぞれの正極集電体222が物理的に結合される場合を例として、積層構造体760の詳細が説明される。なお、他の実施形態において、溶接領域は、複数の正極220のそれぞれの正極集電体222の端部を含むように配されてもよい。
【0162】
例えば、
図4、
図5又は
図6に関連して説明されたとおり、複数の正極集電体222のそれぞれは、支持層420と、支持層420の両面に形成される導電層442及び導電層444を有する。導電層442及び導電層444は、例えば、導電性材料546及び/又は導電層642により電気的に接続されている。複数の正極集電体222のそれぞれの間で、支持層420の組成又は材料は、同一であってもよく、異なってもよい。一の正極集電体222の支持層420の組成又は材料と、他の正極集電体222の支持層420の組成又は材料とが、同一であってもよく、異なってもよい。
【0163】
本実施形態において、溶接領域は、例えば、複数の正極集電体222の端部の近傍であって、リード822及びサブリード824に挟み込まれた領域の少なくとも一部に配される。サブリード824の平面寸法は、溶接領域の平面寸法より大きくてよい。リード822の平面寸法は、サブリード824の平面寸法より大きくてよい。
【0164】
リード822は、例えば、板状の導電性材料により構成される。リード822は、金属を含んでもよく、実質的に金属により構成されてもよい。リード822の厚さは、1~300μmであってもよく、5~200μmであることが好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。
【0165】
サブリード824の材質は特に限定されない。サブリード824は、金属を含んでもよく、実質的に金属により構成されてもよい。サブリード824は、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つにより構成される。サブリード824は、ポリプロピレン、ポリイミドなどの樹脂材料により構成されてもよい。サブリード824の厚さは、1~300μmであってもよく、5~200μmであることが好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。
【0166】
同様に、積層構造体760は、複数の負極240のそれぞれを電気的に接続する負極接続部840を備える。本実施形態によれば、負極接続部840は、複数の負極240の一部を挟み込んで支持するリード842及びサブリード844を有する。これにより、複数の負極240の結合箇所の強度が向上する。
【0167】
本実施形態において、リード842及びサブリード844は、複数の負極240のそれぞれの負極集電体242の端部及び/又は当該端部の近傍を挟み込んで支持する。上述されたとおり、複数の負極240のそれぞれの少なくとも一方の端部の近傍には、負極活物質層244が形成されていない。リード842及びサブリード844は、積層された複数の負極集電体242を挟み込むように配される。なお、他の実施形態において、サブリード844が用いられなくてもよい。
【0168】
負極接続部840において、複数の負極240が溶接により物理的に結合されてよい。例えば、積層された複数の負極集電体242が溶接により物理的に結合されることで、複数の負極集電体242の端部及び/又は端部の近傍が一体化する。これにより、複数の負極240が物理的に結合される。複数の負極集電体242の端部及び/又は端部の近傍において、複数の負極集電体242と、リード842及び/又はサブリード844とが一体化してもよい。例えば、リード842及びサブリード844が金属を含む場合、上記の溶接工程において、複数の負極集電体242のそれぞれに含まれる複数の導電層442及び複数の導電層444と、リード842及びサブリード844とが一体化する。溶接方法としては、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接などが例示される。
【0169】
本実施形態によれば、複数の負極240のそれぞれの負極集電体242の端部の近傍に位置する領域(溶接領域と称される場合がある。)が溶接されることで、複数の負極240のそれぞれの負極集電体242が物理的に結合される場合を例として、積層構造体760の詳細が説明される。なお、他の実施形態において、溶接領域は、複数の負極240のそれぞれの負極集電体242の端部を含むように配されてもよい。
【0170】
例えば、
図4、
図5又は
図6に関連して説明されたとおり、複数の負極集電体242のそれぞれは、支持層420と、支持層420の両面に形成される導電層442及び導電層444を有する。導電層442及び導電層444は、例えば、導電性材料546及び/又は導電層642により電気的に接続されている。複数の負極集電体242のそれぞれの間で、支持層420の組成又は材料は、同一であってもよく、異なってもよい。一の負極集電体242の支持層420の組成又は材料と、他の負極集電体242の支持層420の組成又は材料とが、同一であってもよく、異なってもよい。
【0171】
本実施形態において、溶接領域は、例えば、複数の負極集電体242の端部の近傍であって、リード842及びサブリード844に挟み込まれた領域の少なくとも一部に配される。サブリード844の平面寸法は、溶接領域の平面寸法より大きくてよい。リード842の平面寸法は、サブリード844の平面寸法より大きくてよい。
【0172】
リード842は、例えば、板状の導電性材料により構成される。リード842は、金属を含んでもよく、実質的に金属により構成されてもよい。リード842の厚さは、1~300μmであってもよく、5~200μmであることが好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。
【0173】
サブリード844の材質は特に限定されない。サブリード844は、金属を含んでもよく、実質的に金属により構成されてもよい。サブリード844は、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅及びこれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つにより構成される。サブリード844は、ポリプロピレン、ポリイミドなどの樹脂材料により構成されてもよい。サブリード844の厚さは、1~300μmであってもよく、5~200μmであることが好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。
【0174】
リード822は、第1支持部材及び第2支持部材の一方の一例であってよい。サブリード824は、第1支持部材及び第2支持部材の他方の一例であってよい。リード842は、第1支持部材及び第2支持部材の一方の一例であってよい。サブリード844は、第1支持部材及び第2支持部材の他方の一例であってよい。積層構造体760は、電極構造体の一例であってよい。積層構造体760に含まれる複数の正極集電体222は、積層された複数のシート材料の一例であってよい。積層構造体760に含まれる複数の負極集電体242は、積層された複数のシート材料の一例であってよい。
【0175】
正極接続部820において積層された複数の正極集電体222のうち、リード822と接する正極集電体222は、第1シート材料及び第2シート材料の一方の一例であってよい。正極接続部820において積層された複数の正極集電体222のうち、サブリード824と接する正極集電体222は、第1シート材料及び第2シート材料の他方の一例であってよい。
【0176】
負極接続部840において積層された複数の負極集電体242のうち、リード842と接する負極集電体242は、第1シート材料及び第2シート材料の一方の一例であってよい。負極接続部840において積層された複数の負極集電体242のうち、サブリード844と接する負極集電体242は、第1シート材料及び第2シート材料の他方の一例であってよい。
【0177】
積層構造体760に含まれる複数の正極220が、第1電極及び第2電極の一例であり、積層構造体760に含まれる複数の負極240が、第3電極及び第4電極の一例であってよい。積層構造体760に含まれる複数の正極220が、第3電極及び第4電極の一例であり、積層構造体760に含まれる複数の負極240が、第1電極及び第2電極の一例であってもよい。積層構造体760に含まれる複数のセパレータ230のそれぞれは、第1セパレータ、第2セパレータ又は第3セパレータの一例であってよい。
【0178】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、積層構造体760が正極接続部820及び負極接続部840を備える場合を例として、積層構造体760の詳細が説明された。しかしながら、積層構造体760は本実施形態に限定されない。他の実施形態において、積層構造体760は、正極接続部820及び負極接続部840の少なくとも一方を備えてよい。
【0179】
本実施形態においては、正極接続部820において、複数の正極集電体222がリード822及びサブリード824により支持される場合を例として、正極接続部820の詳細が説明された。しかしながら、正極接続部820は本実施形態に限定されない。他の実施形態において、正極接続部820はサブリード824を備えなくてもよい。この場合、複数の正極集電体222はリード822により支持される。
【0180】
本実施形態においては、負極接続部840において、複数の負極集電体242がリード842及びサブリード844により支持される場合を例として、負極接続部840の詳細が説明された。しかしながら、負極接続部840は本実施形態に限定されない。他の実施形態において、負極接続部840はサブリード844を備えなくてもよい。この場合、複数の負極集電体242はリード842により支持される。
【0181】
図9は、蓄電セル112の製造方法の一例を概略的に示す。本実施形態において、積層構造体760を備える蓄電セル112を生産する方法が説明される。本実施形態によれば、まず、ステップ912(ステップがSと省略される場合がある。)において、複数の正極220と、複数の負極240とが準備される。正極220又は負極240を準備する方法の詳細は後述される。また、S914において、複数のセパレータ230が準備される。次に、S920において、正極220、セパレータ230及び負極240がこの順に積層される。これにより、積層構造体760が作製される。
【0182】
次に、S932において、積層構造体760の複数の正極220が電気的に接続される。また、S934において、積層構造体760の複数の負極240が電気的に接続される。その後、S940において、積層構造体760が正極ケース212及び負極ケース214の内部に収容され、蓄電セル112が組み立てられる。
【0183】
S912において準備される複数の正極220が、第1電極及び第2電極の一例であり、S912において準備される複数の負極240が、第3電極及び第4電極の一例であってよい。S912において準備される複数の正極220が、第3電極及び第4電極の一例であり、S912において準備される複数の負極240が、第1電極及び第2電極の一例であってもよい。S914において準備される複数のセパレータ230のそれぞれは、第1セパレータ、第2セパレータ又は第3セパレータの一例であってよい。積層構造体760は、第1電極、第1セパレータ、第3電極、第2セパレータ、第2電極、第3セパレータ及び第4負極がこの順に積層された電極構造体の一例であってよい。
【0184】
図10は、正極220の製造方法の一例を概略的に示す。本実施形態によれば、まず、S1010において、正極集電体222が準備される。次に、S1022において、正極活物質及び溶媒を含む正極スラリーが調整される。次に、S1024において、正極集電体222の表面に正極スラリーが塗布される。また、正極スラリーを乾燥させる。これにより、正極集電体222の表面に正極活物質層224が形成される。
【0185】
次に、S1030において、正極活物質層224及び正極集電体222を固着させる。より具体的には、積層された正極活物質層224及び正極集電体222に圧力を印加することで、正極活物質層224及び正極集電体222を固着させる。
【0186】
一実施形態において、固着工程における圧力は、(i)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗(比抵抗)の変化率が50%以内となるように、又は、(ii)活物質層及び集電体に圧力が印加される前後における集電体の電気抵抗(比抵抗)の差の絶対値が1[Ω]以下となるように、設定又は調整される。固着工程における圧力は、上記の差の絶対値が1[Ω]未満となるように設定又は調整されてもよい。固着工程における圧力は、上記の差の絶対値が500m[Ω]以下となるように設定又は調整されることが好ましく、上記の差の絶対値が100m[Ω]以下となるように設定又は調整されることがさらに好ましい。これにより、集電体の導電層の破断が抑制される。上記の集電体の電気抵抗は、例えば、低抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製、ロレスタ-GX MCP-T700)を用いた4端子4探針方式により測定され得る。
【0187】
他の実施形態において、固着工程における圧力は、(i)圧力が印加された後の集電体の導電層に電流を印加して測定された第2電圧の値から、(ii)圧力が印加される前の集電体の導電層に電流を印加して測定された第1電圧の値を引いた値が、100mV未満となるように設定又は調整される。これにより、集電体の導電層の破断が抑制される。上記の第1電圧及び第2電圧は、例えば、電圧値の測定機能及び出力機能を有する低抵抗率計により測定される。上記の第1電圧及び第2電圧は、例えば、低抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製、ロレスタ-GX MCP-T700)を用いた4端子4探針方式により測定され得る。
【0188】
(複数の電極を物理的に結合する手順)
図11、
図12、
図13及び
図14を用いて、複数の電極を物理的に結合する手順の一例が説明される。例えば、
図8及び
図9に関連して説明されたとおり、積層構造体760の一実施形態によれば、正極接続部820において、複数の正極220が溶接により物理的に結合される。例えば、複数の正極220のそれぞれの正極集電体222が溶接により物理的に結合される。積層構造体760の一実施形態によれば、負極接続部840において、複数の負極240が溶接により物理的に結合される。例えば、複数の負極240のそれぞれの負極集電体242が溶接により物理的に結合される。
【0189】
本実施形態においては、複数の電極を物理的に結合する手順の理解を容易にすることを目的として、溶接装置1120を用いて、2個の正極220の一部を溶接により結合する場合を例として、複数の電極を物理的に結合する手順の詳細が説明される。なお、溶接により結合される電極の個数は、2個に限定されない。他の実施形態において、3個以上の電極が溶接により結合されてよい。
【0190】
また、本実施形態においては、複数の電極を物理的に結合する手順の理解を容易にすることを目的として、一方の正極220が、集電体1102と、集電体1102の少なくとも一方の面に配された正極活物質層224とを備え、他方の正極220が、集電体1104と、集電体1104の少なくとも一方の面に配された正極活物質層224とを備える場合を例として、複数の電極を物理的に結合する手順の詳細が説明される。本実施形態においては、集電体1102及び集電体1104の端部の近傍には、正極活物質層224が形成されていない場合を例として、複数の電極を物理的に結合する手順の詳細が説明される。
【0191】
図11は、溶接装置1120のシステム構成の一例を、集電体1102及び集電体1104の端部及び/又は当該の近傍の一例とともに示す。
図11を用いて、溶接装置1120を用いた溶接手順の一例が説明される。より具体的には、
図11を用いて、溶接装置1120が、集電体1102及び集電体1104の端部及び当該端部の近傍を押圧しながら、集電体1102及び集電体1104の端部の近傍の一部を溶接して、正極接続部820を作製する手順の一例が説明される。
【0192】
(溶接対象)
本実施形態において、溶接処理の対象となる集電体1102及び集電体1104は、
図6に関連して説明された集電体600と同様の構成を有する。
図6に関連して説明されたとおり、集電体600は、支持層420と、支持層420の両面に形成される導電層442及び導電層444を有する。集電体600には、支持層420、導電層442及び導電層444を貫通する複数の貫通孔620が形成されている。貫通孔620の形状は特に限定されない。複数の貫通孔620の少なくとも一部の内壁部622の表面には、導電層442及び導電層444を電気的に接続する導電層642が形成されている。
【0193】
本実施形態において、集電体1102及び集電体1104の支持層420は、熱可塑性の樹脂材料(熱可塑性樹脂と称される場合がある。)を含む。本実施形態において、集電体1102及び集電体1104の支持層420は、実質的に熱可塑性の樹脂材料からなる樹脂層であってよい。集電体1102及び集電体1104の支持層420は、実質的に熱可塑性の樹脂材料からなる絶縁層であってよい。
【0194】
本実施形態によれば、集電体1102及び集電体1104の支持層420にエネルギーが印加されると、支持層420の温度が上昇し、支持層420に含まれる樹脂材料が軟化する。支持層420に含まれる樹脂材料が軟化した状態で集電体1102及び集電体1104に圧力が印加されると、樹脂材料が支持層420の内部を移動し得る。上記のエネルギーは、支持層420及び/又は支持層420に含まれる樹脂材料の温度を上昇させることができるものであればよく、その種類は特に限定されない。上記のエネルギーは、熱エネルギーであってよい。
【0195】
熱可塑性の樹脂材料は、25℃における熱収縮率が1%以下の樹脂材料であってよい。熱可塑性の樹脂材料としては、PE、PET、PAN、PP、PPSなどが例示される。
【0196】
集電体1102及び集電体1104の支持層420の厚さは、0.5μm~20μmであってよい。上記の支持層420の厚さは、1μm~10μmであることが好ましく、2μm~8μmであることがさらに好ましい。
【0197】
本実施形態において、集電体1102及び集電体1104のそれぞれの導電層442及び導電層444は、金属材料を含む。集電体1102及び集電体1104のそれぞれの導電層442及び導電層444は、実質的に金属材料からなる金属層であってよい。実質的に金属材料からなる金属層は、例えば、不可避不純物を含む。導電層442及び導電層444に含まれる金属材料は、金属の単体であってもよく、合金であってもよい。
【0198】
集電体1102及び集電体1104の導電層442及び導電層444の厚さは、0.1μm~10μmであってよい。上記の導電層442及び導電層444の厚さは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.1μm~1μmであることがさらに好ましい。
【0199】
本実施形態において、集電体1102及び集電体1104のそれぞれの導電層442及び導電層444は、電気的に接続されている。これより、溶接装置1120により、集電体1102の導電層442に印加された溶接電流が、集電体1102の導電層442、集電体1104の導電層442及び集電体1104の導電層444を流れる。
【0200】
導電層442及び導電層444は、任意の態様で電気的に接続されてよい。一実施形態において、支持層420の側面426に、導電層442及び導電層444を電気的に接続する導電部材が配される。他の実施形態において、支持層420の内部に、導電層442及び導電層444を電気的に接続する導電部材が配される。
【0201】
本実施形態において、集電体1102の一部には、集電体1102の支持層420、導電層442及び導電層444を貫通する複数の貫通孔620が形成されている。複数の貫通孔620の少なくとも一部は、上述された溶接領域(
図11において、Rwとして表される。)に配される。これにより、支持層420の溶接領域に貫通孔又は溝若しくは凹部が形成されていない場合と比較して、支持層420の溶接領域に存在する樹脂材料の量が減少する。その結果、導電層442及び導電層444の溶接に伴って押しのけられる樹脂材料の量が減少し、溶接に伴う溶接領域の周辺の体積膨張が抑制される。
【0202】
本実施形態によれば、導電層442及び導電層444にも貫通孔620が形成されている。これにより、導電層442及び導電層444の溶接に伴って押しのけられた樹脂材料の一部が、導電層442及び導電層444に配された貫通孔620の内部にも流入し得る。その結果、溶接に伴う溶接領域の周辺の体積膨張が抑制される。なお、この場合、溶接後の溶接領域に樹脂材料が残存する。
【0203】
複数の貫通孔620の少なくとも一部が、溶接領域に隣接する領域(隣接領域と称される場合がある。)に配されてもよい。上述されたとおり、導電層442及び導電層444の溶接に伴って、溶接前に溶接領域に存在した樹脂材料の一部が押しのけられて、隣接領域に向かって移動する。本実施形態によれば、隣接領域に貫通孔620が形成されているので、導電層442及び導電層444の溶接に伴って押しのけられた樹脂材料が、隣接領域に配された貫通孔620の内部に流入することができる。その結果、溶接に伴う溶接領域の周辺の体積膨張が抑制される。
【0204】
複数の貫通孔620の少なくとも一部は、溶接領域及び当該溶接領域に隣接する領域に配されてもよい。これにより、溶接に伴う溶接領域の周辺の体積膨張がさらに抑制される。貫通孔620の詳細は後述される。
【0205】
本実施形態において、複数の貫通孔620の少なくとも一部の内壁部622の表面には、導電層442及び導電層444を電気的に接続する導電層642が配される。導電層642を構成する材料は、導電性を有する物質であればよく、その種類及び構造は特に限定されない。導電層642は、金属材料を含んでよい。導電層642は、実質的に金属材料からなる金属層であってよい。実質的に金属材料からなる金属層は、例えば、不可避不純物を含む。
【0206】
導電層642に含まれる金属材料は、金属の単体であってもよく、合金であってもよい。導電層642に含まれる金属材料は、導電層442及び導電層444の少なくとも一方に含まれる金属材料と同一であってもよく、異なってもよい。上記の金属材料としては、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス及びこれらの合金などが例示される。ステンレスとしては、SUS304、SUS430などが例示される。
【0207】
導電層642は、複数の層を含んでよい。複数の層のそれぞれは、互いに異なる材料により構成されてよい。例えば、導電層642は、導電層442及び導電層444を電気的に接続するための層(目的層と称される場合がある。)と、貫通孔620の内壁部622及び目的層の間に配される補助層とを備えてよい。補助層は、目的層の導電性を補助したり、貫通孔620及び目的層の密着性を向上させたりするために形成される。目的層の表面に、目的層を保護するための保護層が形成されてもよい。保護層としては、クロメート被膜、亜鉛皮膜などが例示される。
【0208】
導電層642は、補助層と、目的層と、保護層とを備えてもよい。例えば、貫通孔620の内壁部622の表面にニッケルを主成分とする第1層が形成され、第1層の上に銅を主成分とする第2層が形成され、第2層の上にクロメート被膜が形成される。第1層の厚さは0.1μm程度であってよく、第2層の厚さは1μm程度であってよく、クロメート被膜の厚さは0.3μm程度であってよい。
【0209】
上述されたとおり、集電体1102及び集電体1104の導電層642の厚さは、0μm超5μm以下であってよい。上記の導電層642の厚さは、0.1μm~3μmであることが好ましく、0.1μm~1μmであることがさらに好ましい。
【0210】
導電層642は、公知の手法により形成される。例えば、導電層642は、無電解メッキ、蒸着又はスパッタリングにより形成される。導電層642は、各種の二次成長法により形成されてもよく、貫通孔620の内壁部622の表面に金属箔が貼り付けられることで形成されてもよい。
【0211】
同様に、集電体1104の一部には、集電体1104の支持層420、導電層442及び導電層444を貫通する複数の貫通孔620が形成されている。複数の貫通孔620の少なくとも一部の内壁部622の表面には、導電層442及び導電層444を電気的に接続する導電層642が配される。集電体1104の導電層642は、集電体1102の導電層642に関連して説明された特徴と同様の特徴を有してよい。
【0212】
(支持部材)
上述されたとおり、本実施形態に係る導電層442及び導電層444は金属薄膜により形成されるので、強度が比較的小さい。そこで、本実施形態によれば、
図8に関連して説明されたリード822及びサブリード824を用いて、集電体1102及び集電体1104を支持する。本実施形態において、リード822及びサブリード824は、積層された集電体1102及び集電体1104を挟み込むように配される。これにより、溶接時における金属薄膜の破断が抑制される。
【0213】
上述されたとおり、リード822としては、導電性の部材が用いられる。リード822は、金属を含んでもよく、実質的に金属により構成されてもよい。一方、サブリード824としては、導電性又は非導電性の部材が用いられる。サブリード824は、金属を含んでもよく、実質的に金属により構成されてもよい。
【0214】
集電体1102及び集電体1104が溶接される前に、リード822及びサブリード824と、積層された集電体1102及び集電体1104とを貫通する貫通孔が形成されてもよい。また、上記の貫通孔の内壁に、リード822と、サブリード824と、集電体1102の導電層442及び導電層444と、集電体1104の導電層442及び導電層444とを電気的に接続する導電層が形成されてもよい。上記の貫通孔の円相当径は、30μm~5mmであってよい。上記の貫通孔の円相当径は、集電体1102及び集電体1104に形成される貫通孔620の円相当径より大きくてもよい。
【0215】
(溶接装置)
本実施形態において、溶接装置1120は、一対の溶接ヘッド1130と、加熱用電源1140と、溶接用電源1150と、コントローラ1160とを備える。本実施形態において、溶接装置1120は、一対の溶接ヘッド1130のそれぞれに電力を供給する一対の加熱用電源1140を備える。本実施形態において、溶接ヘッド1130は、位置調節部1132と、加熱部1134と、溶接部1136とを備える。
【0216】
本実施形態において、溶接ヘッド1130は、溶接対象にエネルギーを印加する。例えば、溶接ヘッド1130は、溶接対象を加熱する。溶接ヘッド1130は、溶接対象を押圧する。これにより、溶接ヘッド1130は、溶接対象に圧力を印加することができる。
【0217】
本実施形態において、位置調節部1132は、溶接ヘッド1130の位置を調節する。例えば、位置調節部1132は、溶接ヘッド1130を溶接対象の溶接領域に移動させる。例えば、位置調節部1132は、溶接ヘッド1130を溶接対象の溶接領域に押し付ける。これにより、溶接ヘッド1130が、溶接対象の溶接領域を押圧する。その結果、溶接対象の溶接領域に圧力が印加される。
【0218】
本実施形態において、加熱部1134は、溶接対象の軟化領域にエネルギーを印加する。これにより、溶接対象の軟化領域が加熱される。本実施形態において、溶接部1136は、溶接対象の溶接領域に電流及び/又は電圧を印加する。これにより、溶接対象の溶接領域が溶接される。
【0219】
本実施形態において、加熱用電源1140は、加熱部1134に電力を供給する。本実施形態において、溶接用電源1150は、位置調節部1132及び溶接部1136に電力を供給する。本実施形態において、コントローラ1160は、溶接装置1120の各部の動作を制御する。
【0220】
(溶接手順)
次に、溶接装置1120を用いて集電体1102及び集電体1104の一部を溶接する手順の一例が説明される。本実施形態によれば、まず、溶接対象となる集電体1102及び集電体1104が準備される。一実施形態において、上述された構造を有する集電体1102及び集電体1104が作製される。他の実施形態において、上述された構造を有する集電体1102及び集電体1104が購入される。
【0221】
次に、集電体1102及び集電体1104を溶接して、集電体1102及び集電体1104の一部が結合された積層体が作製される。より具体的には、まず、集電体1102及び集電体1104が積層される。例えば、集電体1102の第2平面424の側と、集電体1104の第1平面422の側とが接するように、集電体1102及び集電体1104が積層される。
【0222】
一実施形態において、集電体1102の複数の貫通孔620と、集電体1104の複数の貫通孔620とが位置合わせされる。他の実施形態において、集電体1102の複数の貫通孔620と、集電体1104の複数の貫通孔620との位置合わせが実行されない。
【0223】
次に、リード822及びサブリード824を用いて、集電体1102及び集電体1104を補強する。例えば、リード822及びサブリード824が集電体1102及び集電体1104の溶接領域又はその周辺の領域を挟み込むように、集電体1102及び集電体1104と、リード822及びサブリード824とを、溶接装置1120の作業位置に設置する。
【0224】
次に、集電体1102及び集電体1104の溶接領域が決定される。また、積層された集電体1102及び集電体1104の溶接領域を含む領域であって、加熱処理の対象となる領域(例えば、
図11において、Rsとして表される軟化領域である。)が決定される。
【0225】
例えば、溶接装置1120のユーザは、溶接装置1120を操作して、溶接領域及び軟化領域の位置を溶接装置1120に入力する。溶接装置1120のコントローラ1160は、位置調節部1132を制御して、溶接ヘッド1130を、集電体1102及び集電体1104の軟化領域の任意の位置(例えば、溶接領域である。)まで移動させる。溶接装置1120のコントローラ1160は、位置調節部1132を制御して、溶接ヘッド1130を、集電体1102及び集電体1104の軟化領域に接触させる。
【0226】
次に、積層された集電体1102及び集電体1104の溶接領域を含む領域(軟化領域と称される場合がある。)にエネルギーを印加して軟化領域の樹脂材料を軟化させる。例えば、溶接装置1120のコントローラ1160が、加熱用電源1140を制御して、加熱用電源1140から加熱部1134に電力を供給する。これにより、加熱部1134が溶接ヘッド1130の温度を上昇させる。その結果、溶接ヘッド1130から集電体1102及び集電体1104の軟化領域に熱エネルギーが印加される。
【0227】
上述されたとおり、本実施形態において、集電体1102及び集電体1104の支持層420は、熱可塑性樹脂を含む。集電体1102及び集電体1104の軟化領域に熱エネルギーが印加されると、軟化領域に配された熱可塑性樹脂が軟化する。
【0228】
次に、軟化領域の少なくとも一部に配された溶接領域が押圧される。例えば、溶接装置1120のコントローラ1160は、位置調節部1132を制御して、溶接ヘッド1130を溶接領域に押し付ける。
【0229】
例えば、コントローラ1160は、位置調節部1132を制御して、集電体1102及び集電体1104のそれぞれの導電層442及び導電層444を、溶接可能な距離まで近接させる。このとき、導電層442及び導電層444の間に配された熱可塑性樹脂にも圧力が印加される。本実施形態によれば、熱可塑性樹脂は軟化しており適度な流動性を有する。そのため、熱可塑性樹脂に適切な圧力が印加されると、熱可塑性樹脂は、溶接領域の導電層442及び導電層444に形成された貫通孔620の内部、及び/又は、溶接領域の外側に向かって移動する。
【0230】
溶接装置1120のコントローラ1160は、位置調節部1132を制御して、軟化した樹脂材料が、軟化領域及び/又は溶接領域に配された少なくとも一部の貫通孔620の内部に流入するように、積層された集電体1102及び集電体1104に圧力を印加してよい。これにより、溶接に伴う溶接領域の周辺の体積膨張が大きく抑制される。
【0231】
コントローラ1160は、位置調節部1132を制御して、軟化した樹脂材料が、軟化領域及び/又は溶接領域に配された少なくとも一部の貫通孔620の内壁部622の表面に配された導電層642を破断して、貫通孔620の内部に流入するように、積層された集電体1102及び集電体1104に圧力を印加してよい。これにより、溶接に伴う溶接領域の周辺の体積膨張が大きく抑制される。
【0232】
溶接装置1120のコントローラ1160は、位置調節部1132を制御して、集電体1102の導電層442及び導電層444の一部に、各金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する領域(凹凸領域と称される場合がある。)が形成されるように、積層された集電体1102及び集電体1104に圧力を印加してよい。これにより、溶接に伴う導電層442及び導電層444の破断が抑制される。
【0233】
溶接装置1120のコントローラ1160は、位置調節部1132を制御して、集電体1104の導電層442及び導電層444の一部に、各金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する領域(凹凸領域と称される場合がある。)が形成されるように、積層された集電体1102及び集電体1104に圧力を印加してよい。これにより、溶接に伴う導電層442及び導電層444の破断が抑制される。
【0234】
次に、押圧された溶接領域に電流及び/又は電圧が印加される。これにより、集電体1102及び集電体1104のそれぞれの導電層442及び導電層444が溶接される。また、例えば、集電体1102の導電層444と、集電体1104の導電層442とが溶接される。その結果、集電体1102及び集電体1104のそれぞれの導電層442及び導電層444の一部が一体化した積層体が作製される。
【0235】
例えば、溶接装置1120のコントローラ1160は、溶接用電源1150を制御して、溶接用電源1150から溶接部1136に電力を供給する。これにより、押圧された溶接領域に電流及び/又は電圧が印加され、集電体1102及び集電体1104のそれぞれの導電層442及び導電層444に溶接電流が流れる。このとき、溶接装置1120のコントローラ1160は、位置調節部1132及び溶接用電源1150を制御して、溶接領域をさらに押圧しながら、溶接領域に電流及び/又は電圧を印加してもよい。
【0236】
本実施形態によれば、集電体1102及び集電体1104のそれぞれにおいて、導電層442及び導電層444が導電層642により電気的に接続されている。これにより、集電体1102の導電層442及び導電層444、並びに、集電体1104の導電層442及び導電層444に溶接電流が流れる。その結果、溶接領域の少なくとも一部において、4個の導電層が一体化する。
【0237】
これにより、集電体1102及び集電体1104の一方の端部の近傍において、集電体1102の導電層442及び導電層444と、集電体1104の導電層442及び導電層444とが一体化した積層体が作製される。導電層442及び導電層444の一部が一体化した領域(一体化領域と称される場合がある。)に、熱可塑性樹脂が存在していてもよい。一体化領域に空隙が存在していてもよい。これにより、熱可塑性樹脂及び空隙の少なくとも一方が、一体化した金属の内部に分散した積層体が作製される。
【0238】
一体化領域において、導電層442及び導電層444は、溶接前とは異なる形状を有してよい。同様に、支持層420に含まれる熱可塑性樹脂は、溶接前とは異なる形状を有してよい。一体化領域の一部に、溶接前とほぼ同様の形状が維持された導電層442、導電層444及び/又は支持層420が含まれてもよい。
【0239】
リード822が金属により構成されている場合、リード822と、集電体1102の導電層442及び導電層444と、集電体1104の導電層442及び導電層444とが一体化した積層体が作製されてもよい。この場合において、一体化領域は、リード822、導電層442及び導電層444の一部が一体化した領域を示す。同様に、リード822及びサブリード824が金属により構成されている場合、リード822と、集電体1102の導電層442及び導電層444と、集電体1104の導電層442及び導電層444と、サブリード824とが一体化した積層体が作製されてもよい。この場合において、一体化領域は、リード822、導電層442、導電層444及びサブリード824の一部が一体化した領域を示す。
【0240】
上述されたとおり、集電体1102の溶接領域には、複数の貫通孔620が形成されている。同様に、集電体1104の溶接領域には、複数の貫通孔620が形成されている。溶接時には、上記の複数の貫通孔620の一部が、導電層442、導電層444及び/又は導電層642に含まれる金属により充填される。これにより、複数の貫通孔620の一部が消滅したり、複数の貫通孔620の一部の空隙の容積が減少したりする。同様に、溶接時には、複数の貫通孔620の一部が、支持層420に含まれる熱可塑性樹脂により充填される。これにより、複数の貫通孔620の一部が消滅したり、複数の貫通孔620の一部の空隙の容積が減少したりする。その結果、溶接時の条件及び/又は状況によっては、一体化領域に熱可塑性樹脂及び/又は空隙が残存することがある。
【0241】
なお、一体化領域が熱可塑性樹脂を含まなくてもよく、一体化領域が空隙を含まなくてもよい。例えば、溶接時の押圧の程度、及び/又は、溶接電流の大きさを調整することで、一体化領域に熱可塑性樹脂及び/又は空隙を含まない積層体が作製され得る。
【0242】
(一体化領域における樹脂含有率)
一体化領域に存在する金属の体積に対する、一体化領域に存在する樹脂の体積の割合(一体化領域における樹脂含有率と称される場合がある。)は、0%であってもよく、0.1~50%であってもよい。上記の樹脂含有率は、0.1~50%であることが好ましく、1~30%であることがより好ましく、5~20%であることがさらに好ましい。
【0243】
リード822及び/又はサブリード824が金属により構成されており、リード822及び/又はサブリード824と、集電体1102の導電層442及び導電層444と、集電体1104の導電層442及び導電層444とが一体化した積層体が作製された場合、一体化領域における樹脂含有率は、一体化領域に存在する導電層442及び導電層444に由来する金属の体積に対する、一体化領域に存在する樹脂の体積の割合として導出され得る。導電層442、導電層444及び/又は導電層642に由来する金属の体積は、導電層442、導電層444及び/又は導電層642を主に構成する成分(主成分と称される場合がある。)と同一の種類の金属の体積であってよい。
【0244】
例えば、リード822及び/又はサブリード824の主成分と、集電体1102の導電層442及び導電層444の主成分、並びに、集電体1104の導電層442及び導電層444の主成分とが異なる場合、リード822及び/又はサブリード824に由来する金属と、導電層442及び/又は導電層444に由来する金属との境界は、例えば、一体化領域を、一体化された複数の集電体の積層方向(
図11における上下方向である。)に略平行な面で切断して得られる断面を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより決定される。リード822及び/又はサブリード824の主成分と、集電体1102の導電層442、導電層444及び導電層642の主成分、並びに、集電体1104の導電層442、導電層444及び導電層642の主成分とが異なる場合も同様である。
【0245】
例えば、リード822及び/又はサブリード824の主成分と、導電層442及び/又導電層444の主成分とが同一又は類似する場合、一体化領域の断面の観察から上記の境界の位置を決定することが比較的難しいことも考えられる。この場合、上記の境界の位置は、リード822及び/又はサブリード824に由来する金属と、導電層442及び/又は導電層444に由来する金属とが一体化されていない隣接領域におけるリード822及び/又はサブリード824と、導電層442及び/又は導電層444との境界の位置に基づいて推定されてもよい。
【0246】
上記の樹脂含有率は、5~50%であってもよい。上記の樹脂含有率は、5~30%であることが好ましく、5~20%であることがより好ましい。本実施形態によれば、軟化領域及び/又は溶接領域に貫通孔620が形成されている。そのため、軟化領域及び/又は溶接領域に貫通孔620形成されていない場合と比較して、上記の樹脂含有率が大きくなり得る。また、比較的大きな樹脂含有率は、軟化領域及び/又は溶接領域に貫通孔620が形成されていたことを示唆し得る。
【0247】
樹脂含有量が50%を超えると、溶接が不十分であり、溶接部の耐久性が低下する。また、樹脂含有量が50%を超えると、リード822と、サブリード824との間の導電性が低下し、抵抗が増加する。一方、一体化領域に適切な量の樹脂が含まれる場合、当該樹脂は一体化領域の強度担保に寄与し得る。また、この場合、一体化領域に十分な量の導電性材料が含まれることから、一体化領域の導電性が担保される。
【0248】
一体化領域に存在する金属のうち、導電層442、導電層444及び/又は導電層642に由来する金属の体積に対する、一体化領域に存在する樹脂のうち、支持層420に由来する熱可塑性樹脂の体積の割合が、5~50%であってもよい。上記の割合は、10~50%であってもよく、10~40%であってもよく、5~30%であってもよい。上述されたとおり、例えば、リード822及び/又はサブリード824の主成分と、集電体1102の導電層442及び導電層444の主成分、並びに、集電体1104の導電層442及び導電層444の主成分とが異なる場合、走査電子顕微鏡による観察により、一体化領域に存在する金属のうち、導電層442、導電層444及び/又は導電層642に由来する金属の体積が、比較的容易に決定され得る。
【0249】
上述されたとおり、一体化領域における樹脂含有率は、例えば、一体化領域を、一体化された複数の集電体の積層方向(
図11における上下方向である。)に略平行な面で切断して得られる断面を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより決定される。上記の断面(つまり、SEMの観察面である。)は、一体化領域を、一体化された複数の集電体の積層方向(
図11における上下方向である。)に略平行であり、且つ、当該複数の集電体の延伸方向(
図11における左右方向である。)に略垂直な面(
図11において紙面を略垂直に貫通する面である。)で切断して得られる断面であってよい。
【0250】
上記の断面は、一体化領域の略中心を通る面であってよい。一体化領域の略中心は、例えば、一体化された複数の集電体の一方の側(例えば、第1平面422)の表面を目視により観察することにより決定される。上記の表面は、最上面に配された集電体の第1平面422の側の表面であってもよく、最下面に配された集電体の第2平面424の側の表面であってもよい。
【0251】
積層体の断面をSEMを用いて観察するために積層体の一体化領域を切断する段階において、一体化領域の外縁の凡その位置は、例えば、溶接跡を目視で確認することにより決定される。なお、一体化領域の外縁の正確な位置は、例えば、積層体の一体化領域が切断された後、当該断面をSEMで観察することにより決定される。
【0252】
一実施形態によれば、一体化領域の外縁の近傍のSEM画像の倍率が適切に調整されることにより、複数の導電層が一体化している領域と、複数の導電層が単に接触しているだけで一体化していない領域とが、目視により区別され得る。これにより、一体化領域の外縁(端部と称される場合がある。)の位置が決定され得る。
【0253】
他の実施形態によれば、一体化領域の外縁の位置は、複数の集電体の積層方向における積層体の長さ(厚さと称される場合がある。)に基づいて決定される。例えば、一体化領域の端部の近傍においてその厚さが、一体化領域の中心近傍の厚さの平均値の1.1倍となった位置が、一体化領域の端部として決定される。一体化領域の中心近傍の厚さは、例えば、一体化領域の中心近傍のSEM画像における3箇所の位置における厚さを平均することで決定される。測定間隔は、上記の個数の測定値が得られるように適切に設定される。
【0254】
一体化領域の厚さの平均値と比較して1.1倍の厚さを有する位置が複数存在する場合、一体化領域の端部は、当該複数の位置のうち、一体化領域の中心に最も近い位置であってよい。複数の集電体がリード及びサブリードを用いて溶接されている場合、一体化領域の厚さは、リード及びサブリードの距離であってよい。
【0255】
一体化領域における樹脂含有率は、例えば、SEM画像中の金属の面積に対する、SEM画像中の熱可塑性樹脂の面積の割合として導出される。一体化領域における樹脂含有率は、単一の断面において観察位置の異なる複数のSEMのそれぞれを観察して得られる樹脂含有率の平均値として導出されてよい。例えば、まず、5枚のSEM画像のそれぞれに対応する5つの樹脂含有率が導出される。次に、5つの樹脂含有率の測定値のうち最大及び最小の測定値を除いた3つの測定値が平均される。これにより、一体化領域における樹脂含有率が決定される。複数のSEM画像のうちの1つは、一体化領域の略中心の画像であってよい。
【0256】
(一体化領域における空隙率)
一体化領域における金属の体積に対する空隙の体積の割合(一体化領域における空隙率と称される場合がある。)は、0~10%であってよい。一体化領域における空隙率は、0~10%であることが好ましく、0.1~8%であることがより好ましく、0.1~5%であることがさらに好ましい。一体化領域における空隙率は10%を超えてもよいが、空隙率が大きくなると一体化領域の強度及び導電性が低下する。そのため、一体化領域における空隙率は10%以下であることが好ましい。
【0257】
本実施形態によれば、軟化領域及び/又は溶接領域に貫通孔620が形成されている。そのため、軟化領域及び/又は溶接領域に貫通孔620形成されていない場合と比較して、上記の空隙率が大きくなり得る。また、比較的大きな空隙率は、軟化領域及び/又は溶接領域に貫通孔620が形成されていたことを示唆し得る。
【0258】
一体化領域における空隙率は、例えば、一体化領域を、一体化された複数の集電体の積層方向(
図11における上下方向である。)に略平行な面で切断して得られる断面を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより決定される。一体化領域における空隙率は、例えば、一体化領域における樹脂含有率と同様の手順により決定される。
【0259】
上述されたとおり、上記の積層体は、積層構造体760の一部を構成する。
図8に関連して説明されたとおり、積層構造体760は、第1の正極220と、第1のセパレータ230と、第1の負極240と、第2のセパレータ230と、第2の正極220と、第3のセパレータ230と、第2の負極240とが、この順に積層された構造を備える。
【0260】
本実施形態において、集電体1102及び集電体1104の積層体を含む正極接続部820は、集電体1102を含む正極220及び集電体1104を含む正極220の端部の近傍に配される。したがって、本実施形態によれば、2個の正極220が、これらの端部の近傍で一体化される。これにより、複数の集電体のそれぞれにタブが設けられ、複数の集電体のタブが配線により電気的に接続される場合と比較して、蓄電セル112の質量が減少する。その結果、質量エネルギー密度の大きな蓄電セル112が得られる。
【0261】
本実施形態においては、上述された熱可塑性樹脂の軟化処理又は押圧処理が実施される前に、リード822及びサブリード824を用いて、集電体1102及び集電体1104が補強される。これにより、溶接時に印加される圧力による導電層442及び/又は導電層444の破断が抑制される。
【0262】
集電体1102は、シート材料、第1シート材料又は第2シート材料の一例であってよい。集電体1104は、シート材料、第1シート材料又は第2シート材料の一例であってよい。
【0263】
図12及び
図13を用いて、集電体1102に配された複数の貫通孔620の一例が説明される。
図12は、集電体1102の上面図の一例である。
図13は、集電体1102の断面図の一例である。なお、集電体1104に配された複数の貫通孔620は、集電体1102に配された複数の貫通孔620と同様の特徴を有してよい。
【0264】
図12に示されるとおり、本実施形態において、複数の貫通孔620のそれぞれの直径d(例えば、円相当直径である。)は、15μm~150μmであってよい。直径dが15μm未満の場合、熱可塑性樹脂が貫通孔620の内部に流入しにくくなる。また、貫通孔620の体積が小さいので、溶接された積層体の体積膨張率が大きくなる。一方、直径dが150μmを超えると、集電体1102の強度が小さくなり、溶接時に集電体1102が破断しやすくなる。
【0265】
本実施形態において、隣接する2つの貫通孔620の間隔(ピッチと称される場合がある。)Pは、30μm~250μmであってよい。ピッチPが30μm未満の場合、集電体1102の強度が小さくなり、溶接時に集電体1102が破断しやすくなる。また、集電体1102の抵抗が大きくなる。一方、ピッチPが250μmを超えると、溶接領域に存在する熱可塑性樹脂の総量も比較的大きくなり得る。そのため、溶接された積層体の体積膨張率が大きくなり得る。これに対して、溶接領域に適度に貫通孔620が形成されることにより、溶接前に溶接領域に存在する熱可塑性樹脂の総量が減少する。その結果、溶接に伴う隣接領域の体積膨張が抑制され得る。
【0266】
集電体1102の延伸方向の長さTLは、複数の貫通孔620が形成された領域(貫通孔帯と称される場合がある。)の長さHLより大きくてもよく、TL及びHLが略同一であってもよい。集電体1102の延伸方向に略垂直な方向(幅方向と称される場合がある。)の長さTWは、貫通孔帯の幅方向の長さHWより大きくてもよく、TW及びHWが略同一であってもよい。
【0267】
本実施形態において、上述された溶接領域は、貫通孔帯の内部に配される。上述された軟化領域の少なくとも一部は、貫通孔帯の内部に配される。例えば、上述された隣接領域は、貫通孔帯の内部に配される。上述された軟化領域は、貫通孔帯の内部に配されてもよい。
【0268】
軟化領域Rsの大きさは、溶接領域Rwの大きさに基づいて決定されてよい。軟化領域Rsの大きさは、例えば、支持層420の第1平面422又は第2平面424における溶接領域Rwの面積Swに対する、支持層420の第1平面422又は第2平面424における軟化領域Rsの面積Ssの割合が下記の数式(1)により示されるように決定される。これにより、軟化領域Rsの内部に存在する貫通孔620の体積が、溶接領域Rwの内部に存在する熱可塑性樹脂の体積と同様又はそれ以上になる。
(数式1)
Ss/Sw≧(1-εw+εout)/εout
【0269】
数式1において、εwは、溶接領域Rwにおける複数の貫通孔の空隙率を表す。εoutは、軟化領域Rsの溶接領域Rw以外の領域における複数の貫通孔の空隙率を表す。εw及びεoutは、軟化処理の温度における空隙率である。
【0270】
溶接領域Rwにおける複数の貫通孔の空隙率εwは、軟化処理の温度において10%以上であってよい。軟化処理の温度における空隙率εwは、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
【0271】
図13に示されるとおり、貫通孔620の内部には導電層642が形成される。そのため、貫通孔620の内部に形成された空間の直径dvは、貫通孔620の直径dよりも小さい。
【0272】
上述されたとおり、導電層642の厚さHdは、0μm~5μmであってよい。上記の導電層642の厚さHdは、0.1μm~3μmであることが好ましく、0.1μm~1μmであることがさらに好ましい。
【0273】
上述されたとおり、支持層420の厚さhrは、0.5μm~20μmであってよい。上記の支持層420の厚さhrは、1μm~10μmであることが好ましく、2μm~8μmであることがさらに好ましい。
【0274】
上述されたとおり、導電層442及び導電層444の厚さhmは、0.1μm~10μmであってよい。上記の導電層442及び導電層444の厚さhmは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.1μm~1μmであることがさらに好ましい。
【0275】
図14は、複数の正極220のそれぞれの正極集電体222の一部が一体化した積層構造体760を作製する手順の一例を示す。
図11に関連して説明されたように、本実施形態によれば、まず、S1410において、複数の正極220を準備する。次に、S1420において、複数の正極220の正極集電体222の端部を積層する。S1430において、リード822及びサブリード824が積層された正極集電体222の端部を挟み込むように、リード822及びサブリード824を設置する。
【0276】
S1440において、積層された正極集電体222の軟化領域にエネルギーを印加して、正極集電体222の支持層420に含まれる熱可塑性樹脂を軟化させる。S1450において、積層された正極集電体222の溶接領域を押圧して、軟化した熱可塑性樹脂を正極集電体222の貫通孔620の内部に移動させる。S1450において、積層された正極集電体222の溶接領域に溶接電流を印加して、正極集電体222の導電層442及び導電層444を溶接する。
【0277】
図15、
図16、
図17及び
図18を用いて、上述された凹凸領域が形成された正極接続部820の詳細が説明される。本実施形態においては、上述された凹凸領域の理解を容易にすることを目的としてリード822と、3個の正極集電体222と、サブリード824とが溶接により一体化する場合を例として、正極接続部820の詳細が説明される。本実施形態において、リード822及びサブリード824は、積層された3個の正極集電体222を挟むように配される。なお、負極接続部840は、正極接続部820と同様の構成を有してよい。
【0278】
図15は、溶接後の正極接続部820の上面図の一例を概略的に示す。
図15は、正極接続部820の2つの面のうち、サブリード824が配された側の面の一例を概略的に示す。
図16及び
図17は、溶接後の正極接続部820の断面の一例を概略的に示す。
図18は、凹凸領域1600を含む正極集電体222の一例を概略的に示す。図中、xy平面は、正極集電体222の積層方向(図中、z方向である。)に略垂直な平面を示す。
【0279】
図15に示されるとおり、本実施形態において、リード822及びサブリード824は、積層された3個の正極集電体222の端部の近傍において、当該3個の正極集電体222を挟むように配される。サブリード824には、一体化領域1520が形成される。
【0280】
図11に関連して説明されたとおり、リード822及びサブリード824と、3個の正極集電体222とを含む積層体の一部を溶接により一体化させるための工程において、一体化領域1520を含む溶接領域が押圧される。サブリード824は、サブリード824の外縁から一体化領域1520に向かって凹んだ形状を有する。
【0281】
一体化領域1520から十分に離れた領域(平滑領域と称される場合がある。)において、正極集電体222の表面は十分に小さな平面度を有する。平滑領域は、リード822及びサブリード824の両方の端部から十分に離れた領域であって、正極集電体222の表面が十分に小さな平面度を有する領域であってもよい。例えば、平滑領域における正極集電体222の平面度は、支持層420として用いたシート又はフィルムの平面度と、導電層442及び導電層444の製造誤差とを考慮して得られる値に略等しい。
【0282】
一方、一体化領域と、平滑領域との間に配された隣接領域においては、上記の溶接工程において一体化領域から押し出された樹脂材料により、正極集電体222の導電層442及び導電層444に、上述された凹凸領域が形成される。上記の凹凸領域は、上述された一体化領域1520の外部に形成される。凹凸領域は、例えば、一体化領域に隣接して配される。
【0283】
凹凸領域における導電層442の平面度は、平滑領域における導電層442の平面度よりも大きい。凹凸領域における導電層442の平面度に対する、平滑領域における導電層442の平面度の割合は、0.5~0.9であってよく、0.5~0.8であってよく、0.5~0.75であってもよい。上記の割合は、0.7~0.8であってもよい。これにより、リード822と、正極集電体222との剥離が抑制され得る。また、上述されたバラツキが抑制され得る。
【0284】
同様に、凹凸領域における導電層444の平面度は、平滑領域における導電層444の平面度よりも大きい。凹凸領域における導電層444の平面度に対する、平滑領域における導電層444の平面度の割合は、0.5~0.9であってよく、0.5~0.8であってよく、0.5~0.75であってもよい。上記の割合は、0.7~0.8であってもよい。これにより、リード822と、正極集電体222との剥離が抑制され得る。また、上述されたバラツキが抑制され得る。
【0285】
本実施形態においては、サブリード824の寸法は、リード822の寸法よりも小さい。この場合、(i)凹凸領域における導電層442の平面度に対する、平滑領域における導電層442の平面度の割合が0.5~0.9であり、(ii)凹凸領域における導電層444の平面度に対する、平滑領域における導電層444の平面度の割合が0.7~0.8であってよい。
【0286】
導電層442の凹凸領域において、導電層442は、蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する。導電層442の凹凸領域において、導電層442は、導電層442の面内方向に沿って並んで配される複数の山部及び少なくとも1つの谷部を含む。これにより、導電層442の表面に皺が形成される。
【0287】
正極集電体222の積層方向に略垂直な面(図中、xy平面である。)において、導電層442の凹凸領域は、一体化領域1520の端部から単一の方向に向かって延伸してもよく、複数の方向に向かって延伸してもよい。正極集電体222の積層方向に略垂直な面における凹凸領域の形状は、略矩形であってもよく、略円形であってもよく、略扇形であってもよい。正極集電体222の積層方向に略垂直な面における凹凸領域の形状は、略同心円状であってもよく、略同心多角形状であってもよい。
【0288】
一実施形態において、一体化領域1520の略中心1522を含み、正極集電体222の積層方向(図中、z方向である。)に略平行な平面である第1切断面で、導電層442を切断して得られる断面において、導電層442の一部に、蛇腹状の形状又は皺の寄った形状が形成されていてもよい。他の実施形態において、(i)第1切断面で導電層442を切断して得られる断面と、(ii)一体化領域1520の略中心1522を含み、正極集電体222の積層方向(図中、z方向である。)に略平行な平面であって、第1切断面とは異なる平面である第2切断面で、導電層442を切断して得られる断面との両方において、導電層442の一部に、蛇腹状の形状又は皺の寄った形状が形成されていてもよい。
【0289】
同様に、導電層444の凹凸領域において、導電層444は、蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する。導電層444の凹凸領域において、導電層444の面内方向に沿って並んで配される複数の山部及び少なくとも1つの谷部を含む。これにより、導電層444の表面に皺が形成される。
【0290】
正極集電体222の積層方向に略垂直な面(図中、xy平面である。)において、導電層444の凹凸領域は、一体化領域1520の端部から単一の方向に向かって延伸してもよく、複数の方向に向かって延伸してもよい。正極集電体222の積層方向に略垂直な面における凹凸領域の形状は、略矩形であってもよく、略円形であってもよく、略扇形であってもよい。正極集電体222の積層方向に略垂直な面における凹凸領域の形状は、略同心円状であってもよく、略同心多角形状であってもよい。
【0291】
一実施形態において、一体化領域1520の略中心1522を含み、正極集電体222の積層方向(図中、z方向である。)に略平行な平面である第1切断面で、導電層444を切断して得られる断面において、導電層444の一部に、蛇腹状の形状又は皺の寄った形状が形成されていてもよい。他の実施形態において、(i)第1切断面で導電層444を切断して得られる断面と、(ii)一体化領域1520の略中心1522を含み、正極集電体222の積層方向(図中、z方向である。)に略平行な平面であって、第1切断面とは異なる平面である第2切断面で、導電層444を切断して得られる断面との両方において、導電層444の一部に、蛇腹状の形状又は皺の寄った形状が形成されていてもよい。
【0292】
複数の導電層442が上述された凹凸領域を含んでいてもよく、複数の導電層444が上述された凹凸領域を含んでいてもよい。複数の導電層442のそれぞれに形成された凹凸領域の形状は、略同一又は略相似形であってもよく、異なってもよい。複数の導電層444のそれぞれに形成された凹凸領域の形状は、略同一又は略相似形であってもよく、異なってもよい。
【0293】
積層体に含まれる導電層の総数の30%以上の個数の導電層が、上記の凹凸領域を有することが好ましい。積層体に含まれる導電層の総数の80%以上の個数の導電層が、上記の凹凸領域を有してもよい。これにより、上述された導電層間の抵抗のバラツキが大きく抑制される。
【0294】
図16及び
図17は、
図15において点線で囲まれた領域1540のA-A断面の一例を概略的に示す。
図15に示されるとおり、領域1540は、平滑領域の一部と、隣接領域と、一体化領域の一部とを含む。領域1540は、一体化領域1520の略中心1522を含む。
【0295】
図16及び
図17に示されるとおり、本実施形態においては、3個の正極集電体222に含まれる3個の導電層442が、凹凸領域1600を有する。また、3個の正極集電体222に含まれる2個の導電層444が、凹凸領域1600を有する。本実施形態において、リード822に接する導電層444は、凹凸領域1600を有しない。
図16に示されるとおり、本実施形態において、各導電層の凹凸領域1600は、積層体の隣接領域1620の一部において形成される。
【0296】
上述されたとおり、積層体の隣接領域1620は、積層体の一体化領域1520と、積層体の平滑領域1640との間に配される。積層体の隣接領域1620は、積層体の一体化領域1520に隣接して配されてよい。隣接領域1620は、上述された軟化領域の少なくとも一部を含んでよい。
【0297】
一体化領域1520の端部の位置は、上述された手法により決定される。上述されたとおり、平滑領域1640は、一体化領域1520の端部から十分に離れた領域であり、積層された正極集電体222の表面が十分に小さな平面度を有する領域である。平滑領域1640は、溶接工程の前後で形状がほとんど変化していない領域であってよい。
【0298】
特定の領域が平滑領域1640に該当するか否かは、例えば、下記の手順により決定される。まず、一体化領域1520の外側の位置であって、一体化領域1520の略中心1522を通る直線上に配された3箇所の位置(測定位置と称される場合がある。)において、積層された正極集電体222の厚さを測定する。上記の3箇所の測定位置の間隔(測定間隔と称される場合がある。)は、0.1mm以上であることが好ましいが、当該測定間隔は、サンプルの大きさに応じて適切に設定され得る。
【0299】
3個の測定値の最大値及び最小値の差の絶対値が、3個の測定値の平均値の5%以下である場合、当該特定の領域が平滑領域1640であると判定され得る。この場合において、平滑領域1640における積層された正極集電体222の厚さHsは、上記の3個の測定値の平均値であってよい。
【0300】
図17に示されるとおり、本実施形態において、積層体の隣接領域1620における積層された正極集電体222の厚さの最大値Hmaxは、平滑領域1640における積層された正極集電体222の厚さHsよりも大きい。Hmaxの値は、Hsの値の1.0~1.5倍であってもよく、Hsの値の1.1~1.3倍であってもよい。Hmaxの値が上記の数値範囲内である場合、溶接点に過度な圧力が印加されることが抑制される。その結果、溶接の強度が向上する。
【0301】
図18は、
図16及び
図17に示される3個の正極集電体222のうちの1つの断面の一例を概略的に示す。
図18に示されるとおり、上記の正極集電体222の導電層442は、凹凸領域1600を含む。本実施形態において、導電層442の凹凸領域1600は、上記の断面における導電層442の延伸方向(図中、x方向である。)に沿って並んで配される複数の山及び谷を含む。
【0302】
本実施形態においては、上記の正極集電体222の導電層444も、凹凸領域1600を含む。本実施形態において、導電層444の凹凸領域1600は、上記の断面における導電層444の延伸方向(図中、x方向である。)に沿って並んで配される複数の山及び谷を含む。
【0303】
本実施形態において、凹凸領域1600における隣接する山及び谷の長さの最大値Smaxは、平滑領域1640における単一の正極集電体222の厚さHfよりも大きい。Smaxの値は、Hfの値の1.1~2倍であってもよく、Hfの値の1.2~1.5倍であってもよい。
【0304】
本実施形態において、隣接する2つの山の間隔の最大値Fmaxは、10~200μmであってもよく、20~70μmであってもよい。Fmaxの値は、Hfの値の2~20倍であってもよく、Hfの値の3~10倍であってもよい。
【0305】
正極集電体222は、例えば、少なくとも5~7μmの厚さを有する。そのため、SEM画像、X線CT画像などを観察することにより、溶接に伴い形成された凹凸領域と、導電層442及び/又は導電層444の製造時に不可避的に形成される微細な凹凸とが区別され得る。
【0306】
本実施形態において、凹凸領域1600に配される山の個数Nは、2以上であってもよく、3以上であってもよい。山の個数Nは、6以上であることが好ましく、10以上であってもよい。山の個数が大きいほど、溶接の強度が向上する。
【0307】
凹凸領域が形成された導電層442は、凹凸領域を含む第1金属層の一例であってよい。導電層442の延伸方向は、金属層の面内方向の一例であってよい。凹凸領域が形成された導電層444は、凹凸領域を含む第2金属層の一例であってよい。導電層444の延伸方向は、金属層の面内方向の一例であってよい。凹凸領域1600の山は、山部の一例であってよい。凹凸領域1600の谷は、谷部の一例であってよい。
【0308】
図19は、凹凸領域1900の一例を概略的に示す。
図16及び
図17に示される3個の正極集電体222のうちの1つの断面の他の例を概略的に示す。
図19に示されるとおり、上記の正極集電体222の導電層442は、凹凸領域1900を含む。
【0309】
導電層442の凹凸領域1900は、隣接する2つの山の間に谷が含まれない領域を有する点で、
図16~
図18に関連して説明された凹凸領域1600と相違する。また、導電層442の凹凸領域1900は、隣接する2つの谷の間に山が含まれない領域を有する点で、
図16~
図18に関連して説明された凹凸領域1600と相違する。
【0310】
導電層442の凹凸領域1900は、上記の相違点を除き、
図16~
図18に関連して説明された凹凸領域1600と同様の構成を有してよい。例えば、本実施形態において、導電層442の凹凸領域1900は、上記の断面における導電層442の延伸方向(図中、x方向である。)に沿って並んで配される複数の山及び谷を含む。つまり、凹凸領域1900は、山、谷、山がこの順に配される領域を含む。
【0311】
図20は、正極接続部820の断面の他の例を概略的に示す。
図20に関連して説明される正極接続部820は、一体化領域1520及び隣接領域1620の間に、又は、隣接領域1620の一部に、複合化領域2020が配される点で、
図15~
図19に関連して説明された正極接続部820と相違する。
図20に関連して説明される正極接続部820は、上記の相違点を除き、
図15~
図19に関連して説明された正極接続部820と同様の構成を有してよい。
【0312】
積層体の複合化領域2020においては、導電層442及び導電層444の少なくとも一部が、箔状の形状を維持したまま、リード822及び/又はサブリード824の金属と一体化している。例えば、積層体の複合化領域2020において、積層体は、隣接する導電層442及び導電層444の間に、溶接工程においてリード822及び/又はサブリード824の金属が溶融及び凝固して形成された固体2022を有する。
【0313】
図21は、正極接続部820の断面のさらに他の例を概略的に示す。
図21に関連して説明される正極接続部820は、隣接領域1620がサブリード824に覆われる点で、複合化領域2020が配される点で、
図15~
図20に関連して説明された正極接続部820と相違する。
図21に関連して説明される正極接続部820は、上記の相違点を除き、
図15~
図20に関連して説明された正極接続部820と同様の構成を有してよい。
【実施例】
【0314】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0315】
(負極用集電体の作製)
(製造例1)
下記の手順により、6枚の負極用集電体を作製した。まず、負極用集電体の支持層として、PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー#19-F60、厚さ6μm)を準備した。次に、無電解めっきにより、PETフィルムの両面に、厚さが約0.1μmのNi層を形成した。次に、電解めっきにより、PETフィルムの各面のNi層の上に、厚さが0.5μmの銅層を形成した。
【0316】
次に、PETフィルムの一部に、複数の貫通孔を形成した。これにより、貫通孔帯が形成された。各貫通孔の断面形状は円形であり、各貫通孔の平均直径は30μmであった。また、貫通孔のピッチは80μmであった。
【0317】
次に、PETフィルム表面における銅層の作製手順と同様の手順により、貫通孔の内壁に銅層を形成した。銅層の厚さは、0.5μmであった。銅層が形成された後の貫通孔の空間の平均直径は29μmであった。
【0318】
その後、貫通孔帯と、貫通孔内の銅層とが形成されたPETフィルムを切断して、6枚の集電体を作製した。各集電体が、38mm×50mmの長方形の集電部分と、10mm×5mmの長方形のタブ部分とを有するL字型の平面形状を有するように、上記のPETフィルムを切断した。各集電体において、タブ部分の短辺が集電部分の短辺の一方と接するように、上記のPETフィルムを切断した。各集電体において、タブ部分の他の長辺の一方及び集電部分の長辺の一方が同一の直線上に配されるように、上記のPETフィルムを切断した。
【0319】
図12に関連して説明されたように、PETフィルムに形成された貫通孔帯がタブ部分に含まれるように、上記のPETフィルムを切断した。上述されたとおり、各集電体のタブ部分のTLは10mmであり、TWは5mmであった。各集電体のタブ部分には貫通孔帯が形成されており、各集電体のHLは2mmであり、HWは5mmであった。タブ部分の辺のうち集電部分に接する辺から、貫通孔帯までの距離は、6mmであった。タブ部分の辺のうち集電部分に接する辺の反対側の辺から、貫通孔帯までの距離は、2mmであった。
【0320】
これにより、6枚の負極用集電体が得られた。表1に負極用電極の仕様を示す。
【0321】
(製造例2)
複数の貫通孔により構成される貫通孔帯の代わりに、直径が500μmである単一の貫通孔が形成された点を除き、製造例1と同様の手順により、6枚の負極用集電体を作製した。表1に負極用電極の仕様を示す。
【0322】
(製造例3)
負極用集電体の支持層として、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン、厚さ6μm)を用いた点を除き、製造例1と同様の手順により、6枚の負極用集電体を作製した。表1に負極用電極の仕様を示す。
【0323】
(製造例4)
負極用集電体の支持層として、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン製、カプトン、厚さ6μm)を用いた点を除き、製造例2と同様の手順により、6枚の負極用集電体を作製した。表1に負極用電極の仕様を示す。
【0324】
(製造例5)
まず、負極用集電体の支持層として、Cu箔(株式会社アズワン製、型番3-2349-01、厚さ10μm)を準備した。次に、製造例1と同様の手順によりCu箔を切断して、6枚の集電体を作製した。表1に負極用電極の仕様を示す。
【0325】
【0326】
(実施例1)
(リチウムイオン二次電池の作製)
まず、負極用集電体として、製造例1により得られた6枚の集電体を準備した。正極用集電体として、5枚のAl箔(MTI Corporation製、BCAF-15U180、寸法34mm×46mm、厚さ15μm)を準備した。Al箔の平面形状は、34mm×46mmの長方形の集電部分と、10mm×5mmの長方形のタブ部分とを有するL字型であった。
【0327】
負極活物質として、38mm×50mmのLi金属箔(本城金属株式会社製、圧延リチウムフォイル、厚さ20μm)を準備した。正極活物質として、NCM811(日亜化学工業株式会社製)を準備した。セパレータとして、10枚のSW316F(深セン星源材質社製、厚さ10μm)を準備した。セパレータの平面形状は、42mm×54mmの長方形であった。
【0328】
次に、NCM811と、デンカブラック(デンカ株式会社製)と、PVDF(株式会社クレハトレーディング社製 #1100)とを、N-メチルピロリドン(三菱ケミカル株式会社)に添加して、正極活物質のスラリーを作製した。NCM811と、デンカブラックと、PVDFとの質量比は、94:3:3であった。上記のスラリーをAl箔の表面全体に塗布した。上記のスラリーは、Al箔の両面に塗布した。その後、スラリーを乾燥させることで、Al箔の両面に正極活物質層が形成された正極を得た。乾燥後の正極活物質層の厚さは、片面当たり50μmであった。これにより、5枚の正極が得られた。各正極の厚さは、115μmであった。
【0329】
次に、製造例1により得られた集電体の両面に、上記のLi金属箔を貼り付けた。これにより、6枚の負極が得られた。
【0330】
次に、電解液(キシダ化学株式会社製、LBG-00062)を準備した。上記の電解液において、溶媒は、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの混合溶媒であり、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの体積比は、1:3であった。上記の電解液において、電解質であるLiPF6の濃度は、1mol/Lであった。
【0331】
次に、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極をこの順に積層して、電池構造体を作製した。また、厚さ0.1μmのNi層でコーティングされたCu板(株式会社ネッツ製、厚さ100μm)を切断して、負極用のリードを作製した。リードの平面形状は、40mm×15mmの長方形であった。厚さ0.1μmのNi層でコーティングされたCu板(株式会社ネッツ製、厚さ30μm)を切断して、負極用のサブリードを作製した。サブリードの平面形状は、15mm×15mmの正方形であった。同様に、Al板(株式会社ネッツ製、厚さ100μm)を切断して、正極用のリードを作製した。リードの平面形状は、40mm×15mmの長方形であった
【0332】
次に、積層された5枚の正極のタブ部を一体化した。具体的には、まず、5枚の正極のタブ部を積層した後、最上層のタブ部の上に正極用のリードを配置した。これにより、正極側の溶接工程において溶接対象となる積層体が作製された。上述されたとおり、正極の集電体はAl箔であり、正極用のリードはAl板である。
【0333】
溶接装置として、ナゲット径が4mmの溶接ヘッドを備えたリチウムイオン電池積層箔溶接装置(ナグシステム株式会社製)を用いて、上記の5枚のAl箔と、1枚のAl板とを溶接した。これにより、5枚の正極のタブ部が一体化された。
【0334】
次に、積層された6枚の負極のタブ部を一体化した。具体的には、まず、6枚の負極のタブ部を積層した後、負極用のリード及びサブリードの間に、積層された6枚のタブ部を挟み込んだ。これにより、負極側の溶接工程において溶接対象となる積層体が作製された。
【0335】
サブリードの内側の4mm×4mmの領域を軟化領域として設定した。軟化領域の位置は、軟化領域の略中心と、タブ部の略中心とが一致するように設定された。サブリードの内側の2mm×2mmの領域を溶接領域として設定した。溶接領域の位置は、溶接領域の略中心と、軟化領域の略中心とが一致するように設定された。
【0336】
上記の溶接対象(すなわち、サブリード、6枚のタブ部及びリードの積層体である。)を溶接装置の作業領域に配置した。溶接装置としては、ナゲット径が4mmの溶接ヘッドを備えたリチウムイオン電池積層箔溶接装置(ナグシステム株式会社製)を用いた。
【0337】
まず、溶接装置の溶接ヘッドを用いてサブリードの軟化領域を押圧し、サブリードの軟化領域に1.8kNの圧力を印加した。次に、溶接装置の加熱部に電力を供給して軟化領域を加熱した。加熱時における電力の供給条件は、電流1.5kA、電圧3V、印加時間10msであった。加熱部への電力供給を停止した後、溶接装置の溶接部に電力を供給して溶接領域を溶接した。加熱部への電力供給が停止されてから、溶接部への電力供給が開始されるまでの期間の長さは、1msに設定された。溶接時における電力の供給条件は、電流2.5kA、電圧3.5V、印加時間20msであった。これにより、電極構造体が作製された。
【0338】
次に、80mm角のプレートを有するヒータープレートプレス(ラボネクト株式会社製、PCH-100-DAH)を用いて、負極の溶接箇所の圧迫試験を実施した。圧迫試験は、室温で実施した。サブリードの全体に506.625kPaの圧力を印加した。圧力の印加時間は、20秒であった。
【0339】
次に、アルミニウム製のラミネート包装材の内部に、圧迫試験が終了した電極構造体と、上記の電解液とを入れた後、当該ラミネート包装材を封止した。これにより、試験用電池が作製された。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0340】
(実施例2)
溶接箇所の圧迫試験の代わりに、負極の溶接箇所の引張試験が実施された点を除き、実施例1と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0341】
引張試験は、引張圧縮試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、フォーステスターMCT-2150W)を用いて、下記の手順により実施した。まず、引張圧縮試験機のサンプル治具の一方にリードをセットし、当該サンプル治具の他方にタブ部分の根本付近をセットした。次に、引張圧縮試験機を用いて、5N/mm2の力でリード及びタブ部の根本を引っ張った。引張強度を徐々に大きくしていき、変位が試験前から5%ひずみが生じた時点で、引張試験を終了した。
【0342】
(実施例3)
負極用集電体として製造例2により得られた集電体を用いた点を除き、実施例1と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0343】
(実施例4)
負極用集電体として製造例2により得られた集電体を用いた点を除き、実施例2と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0344】
(比較例1)
負極用集電体として製造例3により得られた集電体を用いた点を除き、実施例1と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0345】
(比較例2)
負極用集電体として製造例3により得られた集電体を用いた点を除き、実施例2と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0346】
(比較例3)
負極用集電体として製造例4により得られた集電体を用いた点を除き、実施例1と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0347】
(比較例4)
負極用集電体として製造例4により得られた集電体を用いた点を除き、実施例2と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0348】
(参考例1)
負極用集電体として製造例5により得られた集電体を用いた点を除き、実施例1と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0349】
(参考例2)
負極用集電体として製造例5により得られた集電体を用いた点を除き、実施例2と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。
【0350】
(参考例3)
負極用集電体として製造例5により得られた集電体を用いた点と、溶接箇所の圧迫試験を実施していない点とを除き、実施例1と同様の手順により試験用電池を作製した。試験用電池の仕様を表2に示す。参考例3の試験用電池は、後述されるサイクル試験の基準として用いた。
【0351】
【0352】
(評価)
(サイクル性能)
実施例1~実施例4、比較例1~比較例4及び参考例1~3のそれぞれにおいて作製された試験用電池を用いて、4.2V-2.4Vの条件で各試験用電池のサイクル特性を評価した。具体的には、定電流での充電及び放電を100サイクル繰り返し、充放電時の充電容量、放電容量、電圧値を記録した。サイクル当たりの充電時間は10時間であり、1サイクル当たりの放電時間は2時間であった。充電時の条件は、温度が25℃であり、電流密度が1.53mA/cm2であり、電流値が24mAであった。放電時の条件は、温度が25℃であり、電流密度が7.67mA/cm2であり、電流値が120mAであった。
【0353】
各試験用電池のサイクル試験の結果を表2に示す。表2において、◎は、参考例3の試験用電池の100サイクル経過後の容量維持率を基準値とし、試験用電池が当該基準値の90%以上の性能を有することを示す。〇は、試験用電池が上記の基準値の80%以上90%未満の性能を有することを示す。△は、試験用電池が上記の基準値の70%以上80%未満の性能を有することを示す。×は、試験用電池が上記の基準値の70%未満の性能を有することを示す。
【0354】
(負極の溶接箇所の観察)
実施例1~実施例4、比較例1~比較例4及び参考例1~3のそれぞれにおいて作製された試験用電池の負極の溶接箇所を観察し、上述された凹凸領域の有無を確認した。確認結果を表2に示す。
【0355】
凹凸箇所の有無は、下記の手順に従って確認した。まず、各試験用電池の負極から、当該負極の溶接領域を含むサンプルを切り出した。各サンプルの大きさは、50mm×50mmであり、各サンプルの略中心部分に溶接領域が配されていた。
【0356】
次に、各実施例及び各比較例のサンプルのX-CT観察を実施した。X-CT観察には、BRUKER製のX線顕微鏡(SKYSCAN 1272 CMOS EDITION)を用いた。全ての実施例において、上述された蛇腹形状が観察された。一方、各比較例のサンプルにおいては、上述された蛇腹形状が観察されなかった。そこで、各比較例のサンプルのSEM観察を実施した。まず、クロスセクションポリッシャー(日本電子株式会社製、製品番号IB-09020CP)を用いて、各比較例のサンプルを切断した。各サンプルは、切断面が溶接領域の略中央部分を含むように切断された。次に、切断面をSEMで観察した。
【0357】
図22は、実施例2において作製された負極の溶接個所のX-CTの観察結果を示す。
図22は、リードの側からサンプルを観察し、観察面の深さを適切に調整した場合におけるX-CT画像である。具体的には、リード側を正面として角度をつけてサンプルを観察することで、溶接部分を除きリードが写り込まないように撮像された画像である。
図22の中央近傍の略円形の領域は、溶接領域である。
図22に示されるとおり、本実施例によれば、略円形又は略多角形の複数のしわが、同心円状又は同心多角形状に配されていることがわかる。例えば、観察領域2200においては、複数のしわが、溶接領域に隣接するように形成されている。
【0358】
図23は、
図22に示される観察領域2200の断面のX-CTの観察結果を示す。
図23に示されるとおり、本実施例によれば、リード及びサブリードに挟まれた観察領域2300の内部だけでなく、観察領域2300の外側にも、複数のしわ又は蛇腹形状が形成されていることがわかる。具体的には、観察領域2300の外側に、少なくとも3つの山が観察される。
【0359】
図24は、
図23に示される観察領域2300のX-CTの観察結果を示す。
図23に示されるとおり、本実施例によれば、リード及びサブリードに挟まれた観察領域2300の内部においても、多数のしわ又は蛇腹形状が形成されていることがわかる。
【0360】
図25は、比較例1において作製された負極の溶接個所のSEM画像を示す。
図25は、溶接領域に隣接する隣接領域の断面を示す。
図25に示されるとおり、本比較例によれば、溶接領域から押し出された樹脂材料により負極集電体の両面に形成されていた銅層が破断されていることがわかる。
【0361】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0362】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0363】
100 飛行体、110 蓄電池、112 蓄電セル、120 電力制御回路、130 電動機、140 プロペラ、150 センサ、160 制御装置、212 正極ケース、214 負極ケース、216 封止剤、218 金属バネ、220 正極、222 正極集電体、224 正極活物質層、230 セパレータ、240 負極、242 負極集電体、244 負極活物質層、260 構造体、350 電解質、400 集電体、420 支持層、422 第1平面、424 第2平面、426 側面、442 導電層、444 導電層、500 集電体、522 貫通孔、546 導電性材料、600 集電体、620 貫通孔、622 内壁部、642 導電層、760 積層構造体、820 正極接続部、822 リード、824 サブリード、840 負極接続部、842 リード、844 サブリード、1102 集電体、1104 集電体、1120 溶接装置、1130 溶接ヘッド、1132 位置調節部、1134 加熱部、1136 溶接部、1140 加熱用電源、1150 溶接用電源、1160 コントローラ、1520 一体化領域、1522 略中心、1540 領域、1600 凹凸領域、1620 隣接領域、1640 平滑領域、1900 凹凸領域、2020 複合化領域、2022 固体、2200 観察領域、2300 観察領域
【要約】 (修正有)
【課題】重量当たりのエネルギー量を改善することができ、より軽量でより多くの電力を蓄えることができる充電式電池を実現するための積層体を提供する。
【解決手段】積層された複数のシート材料を備える積層体が提供される。上記の積層体において、複数のシート材料のそれぞれは、熱可塑性の樹脂材料を含む支持層と、支持層の両面に形成される第1金属層及び第2金属層とを有する。複数のシート材料の一部において、複数のシート材料に含まれる複数の第1金属層及び複数の第2金属層が一体化しており、複数の第1金属層及び複数の第2金属層のそれぞれは、各金属層が蛇腹状の形状又は皺の寄った形状を有する凹凸領域を含む。
【選択図】
図11