(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】絶縁膜、電池セル、電池及び電気機器
(51)【国際特許分類】
H01M 50/591 20210101AFI20231208BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20231208BHJP
H01M 50/202 20210101ALI20231208BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20231208BHJP
H01M 50/24 20210101ALI20231208BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20231208BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20231208BHJP
【FI】
H01M50/591
H01M50/588
H01M50/202 501S
H01M50/209
H01M50/24
H01M50/103
H01M50/15
(21)【出願番号】P 2023519937
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 CN2021074158
(87)【国際公開番号】W WO2022160181
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-03-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】葛 ▲銷▼明
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 若岩
(72)【発明者】
【氏名】王 毅恒
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-33668(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092775(WO,A1)
【文献】特開2011-181485(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035395(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107706326(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
H01M 50/10-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池アセンブリを包囲するための絶縁膜であって、
前記絶縁膜は、底部被覆領域、N個の側面被覆領域及びNペアの接着領域を含み、Nは2よりも大きい整数であり、
前記底部被覆領域は、N個の辺を有し、前記N個の側面被覆領域は、それぞれ前記N個の辺において前記底部被覆領域に接続され、それぞれ前記N個の辺に沿って前記底部被覆領域に曲げることができ、
前記Nペアの接着領域のうちの各ペアの接着領域は、前記N個の側面被覆領域のうち隣接する2つの側面被覆領域の間に位置し、前記隣接する2つの側面被覆領域にそれぞれ接続され、各ペアの接着領域は、前記N個の側面被覆領域が前記底部被覆領域に曲げる時、各ペアの接着領域の同じ側の表面の接着によって前記底部被覆領域と前記N個の側面被覆領域が前記電池アセンブリを包囲する空間を形成するようにするために用いら
れ、
各ペアの接着領域は、各ペアの接着領域の同じ側の表面に接着するように、それぞれ側面被覆領域との接続辺に沿って曲げることができ、
Nは4であり、前記絶縁膜は、長方体形の電池アセンブリを包囲するために用いられ、
前記底部被覆領域と4つの側面被覆領域はいずれも四角形であり、前記絶縁膜の展開状態は十字形であり、
前記絶縁膜の展開状態において、各ペアの接着領域はL形を呈し、
各ペアの接着領域のうちの第1接着領域の幅は第2接着領域の幅よりも大きく、各ペアの接着領域が接着された後、前記第2接着領域と隣接する側面被覆領域に曲げることができ、前記第1接着領域のうち前記第2接着領域に接着しない部分は、前記第2接着領域と隣接する側面被覆領域に接着するために用いられる、絶縁膜。
【請求項2】
前記第1接着領域の幅は、前記第2接着領域と隣接する側面被覆領域の幅の二分の一よりも小さい、請求項
1に記載の絶縁膜。
【請求項3】
前記絶縁膜の材料は防水材料である、請求項1
又は2に記載の絶縁膜。
【請求項4】
前記電池アセンブリは電池セルである、請求項
1~3のいずれか一項に記載の絶縁膜。
【請求項5】
前記電池アセンブリは、隣接する複数の電池セルを含む電池セル群である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の絶縁膜。
【請求項6】
電池セルであって、
請求項
1~4のいずれか一項に記載の絶縁膜が包囲されている、電池セル。
【請求項7】
前記電池セルは、底壁、2つの広い側壁、2つの狭い側壁及びカバープレートを含む長方体形であり、
前記広い側壁の面積は前記狭い側壁の面積よりも大きく、前記絶縁膜の底部被覆領域は、前記底壁を被覆し、前記絶縁膜の4つの側面被覆領域は、2つの広い側面被覆領域と2つの狭い側面被覆領域を含み、
前記広い側面被覆領域の面積は前記狭い側面被覆領域の面積よりも大きく、前記2つの広い側面被覆領域は、前記2つの広い側壁をそれぞれ被覆し、前記2つの狭い側面被覆領域は、前記2つの狭い側壁をそれぞれ被覆し、前記絶縁膜の4ペアの接着領域のうちの各ペアの接着領域のうちの、広い側面被覆領域と隣接する第1接着領域の幅は、狭い側面被覆領域と隣接する第2接着領域の幅よりも大きく、各ペアの接着領域は、前記電池セルに向かう側の表面に接着した後、隣接する狭い側面被覆領域に曲げ、前記第1接着領域のうち前記第2接着領域に接着しない部分は、隣接する狭い側面被覆領域に接着されている、請求項
6に記載の電池セル。
【請求項8】
電池であって、
請求項
6又は
7に記載の電池セルを含む、電池。
【請求項9】
電気機器であって、
電気エネルギーを提供するための、請求項
8に記載の電池を含む、電気機器。
【請求項10】
電池セルを製造する方法であって、
電池セルを提供することと、
請求項
1~4のいずれか一項に記載の絶縁膜を提供することと、
前記絶縁膜を用いて前記電池セルを包囲することと、
を含む、電池セルを製造する方法。
【請求項11】
電池セルを製造する機器であって、
電池セルを提供し、請求項
1~4のいずれか一項に記載の絶縁膜を提供するための提供モジュールと、
前記絶縁膜を用いて前記電池セルを包囲するための包囲モジュールと、
を含む、電池セルを製造する機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池技術分野に関し、特に絶縁膜、電池セル、電池、電気機器、電池セルを製造する方法及び機器である。
【背景技術】
【0002】
環境汚染がますます深刻になるに伴い、新エネルギー産業は、ますます注目を集めており、リチウム電池は、多くの電子製品、エネルギー貯蔵製品及び電気自動車の重要な構成部分として、その性能が関連製品の普及や使用に直接影響を与えている。リチウム電池の外装材料に応じて分類すると、リチウム電池は主に、金属ケース電池セルとソフトパック電池セルの2種類に分けられている。
【0003】
金属ケース電池セルについては、金属ケースを外部と絶縁隔離させるために、通常、金属ケースに絶縁膜を包囲する必要がある。
【0004】
ところが、現在の絶縁膜は、電池セルを包囲する時に包囲領域に対する密閉包囲を実現することができないおそれがあり、従来の絶縁膜は、電池セルを包囲した後、通常、水が浸透するという問題があるため、絶縁膜の防水性が低くなることを招く。
【発明の概要】
【0005】
本願は、包囲領域に対する密閉包囲を実現することができる絶縁膜、電池セル、電池、電気機器、電池セルを製造する方法及び機器を提供する。
【0006】
第1態様によれば、電池アセンブリを包囲するための絶縁膜を提供しており、前記絶縁膜は、底部被覆領域、N個の側面被覆領域及びNペアの接着領域を含み、Nは2よりも大きい整数であり、前記底部被覆領域は、N個の辺を有し、前記N個の側面被覆領域は、それぞれ前記N個の辺において前記底部被覆領域に接続され、それぞれ前記N個の辺に沿って前記底部被覆領域に曲げることができ、前記Nペアの接着領域のうちの各ペアの接着領域は、前記N個の側面被覆領域のうち隣接する2つの側面被覆領域の間に位置し、前記隣接する2つの側面被覆領域にそれぞれ接続され、各ペアの接着領域は、前記N個の側面被覆領域が前記底部被覆領域に曲げる時、各ペアの接着領域の同じ側の表面の接着によって前記底部被覆領域と前記N個の側面被覆領域が前記電池アセンブリを包囲するための空間を形成するようにするために用いられる。
【0007】
本願の実施例にかかる技術的解決手段において、各ペアの接着領域が平坦に接着され、接着が不十分な部分はなく、接着領域の内部がさらに折り畳むこともないため、包囲領域に対する密閉包囲を実現することができることで、絶縁隔離性能と防水性能を向上させることができる。
【0008】
一可能な実施形態において、各ペアの接着領域は、各ペアの接着領域の同じ側の表面に接着するように、それぞれ側面被覆領域との接続辺に沿って曲げることができる。接続辺に沿って曲げることで、接着領域の内部でさらに曲げることなく、各ペアの接着領域の同じ側の表面の接着を実現することができるため、密閉効果を保証することができる。
【0009】
一可能な実施形態において、Nは4であり、前記絶縁膜は、長方体形の電池アセンブリを包囲するために用いられる。
【0010】
一可能な実施形態において、前記底部被覆領域と4つの側面被覆領域はいずれも四角形であり、前記絶縁膜の展開状態は十字形である。
【0011】
一可能な実施形態において、前記絶縁膜の展開状態において、各ペアの接着領域はL形を呈する。
【0012】
一可能な実施形態において、各ペアの接着領域のうちの第1接着領域の幅は第2接着領域の幅よりも大きく、各ペアの接着領域が接着された後、前記第2接着領域と隣接する側面被覆領域に曲げることができ、前記第1接着領域のうち前記第2接着領域に接着しない部分は、前記第2接着領域と隣接する側面被覆領域に接着するために用いられる。このようにして、各ペアの接着領域が上向きに傾けることなく、後続の組立を容易にするとともに包囲効果を保証する。
【0013】
一可能な実施形態において、前記第1接着領域の幅は、前記第2接着領域と隣接する側面被覆領域の幅の二分の一よりも小さい。このようにして、各ペアの接着領域が側面被覆領域に接着した後、側面被覆領域の中央にある一部の領域が露出し、即ち、接着領域に被覆されず、側面被覆領域の中央にある露出領域は、電池セルを固定する側板との接着に用いることができ、接着領域に対して、側面被覆領域の中央にある露出領域と側板との接着の固定効果がより優れている。
【0014】
一可能な実施形態において、前記絶縁膜の材料は防水材料である。このようにして、電池アセンブリは、前記絶縁膜が包囲された後、電池アセンブリの防水性能を向上させることができる。
【0015】
一可能な実施形態において、前記電池アセンブリは電池セルである。
【0016】
一可能な実施形態において、前記電池アセンブリは、隣接する複数の電池セルを含む電池セル群である。即ち、隣接する複数の電池セル全体に上記絶縁膜が包囲されている。例えば、2つの電池セルを1セットとして、1つの絶縁膜が包囲される。このようにして、包囲の複雑さを低減し、組立の効率を向上させることができる。
【0017】
第2態様によれば、上記第1態様又は第1態様の任意の可能な実施形態における絶縁膜が包囲されている電池セルを提供する。
【0018】
一可能な実施形態において、Nは4であり、前記電池セルは、底壁、2つの広い側壁、2つの狭い側壁及びカバープレートを含む長方体形であり、前記絶縁膜の底部被覆領域は、前記底壁を被覆し、前記絶縁膜の4つの側面被覆領域は、2つの広い側面被覆領域と2つの狭い側面被覆領域を含み、前記2つの広い側面被覆領域は、前記2つの広い側壁をそれぞれ被覆し、前記2つの狭い側面被覆領域は、前記2つの狭い側壁をそれぞれ被覆し、前記絶縁膜の4ペアの接着領域のうちの各ペアの接着領域のうちの、広い側面被覆領域と隣接する第1接着領域の幅は、狭い側面被覆領域と隣接する第2接着領域の幅よりも大きく、各ペアの接着領域は前記電池セルに向かう側の表面に接着した後、隣接する狭い側面被覆領域に曲げ、前記第1接着領域のうち前記第2接着領域に接着しない部分は、隣接する狭い側面被覆領域に接着されている。
【0019】
第3態様によれば、上記第2態様又は第2態様の任意の可能な実施形態における電池セルを含む電池を提供する。
【0020】
第4態様によれば、電気エネルギーを提供するための、上記第3態様の電池を含む電気機器を提供する。
【0021】
第5態様によれば、電池セルを提供することと、上記第1態様又は第1態様の任意の可能な実施形態における絶縁膜を提供することと、前記絶縁膜を用いて前記電池セルを包囲することと、を含む電池セルを製造する方法を提供する。
【0022】
第6態様によれば、上記第5態様の方法を実行するモジュールを含む電池セルを製造する機器を提供する。
【0023】
本願の実施例にかかる技術的解決手段をより明らかに説明するために、以下に本願の実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明される図面は、本願の幾つかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、図面に応じて他の図面を得ることもできる。
【0024】
図面において、図面は、実際のスケールで描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本願の一実施例が開示する車両の模式図である。
【
図2】本願の一実施例が開示する電池の模式図である。
【
図3】本願の一実施例が開示する電池セルの模式図である。
【
図4】本願の一実施例が開示する絶縁膜の模式図である。
【
図5】本願の一実施例が開示する絶縁膜のサイズの模式図である。
【
図6】本願の一実施例が開示する絶縁膜の包囲状態の模式図である。
【
図7】本願の一実施例が開示する絶縁膜の包囲状態の模式図である。
【
図8】本願の一実施例が開示する絶縁膜の包囲状態の模式図である。
【
図9】本願の一実施例が開示する絶縁膜の包囲状態の模式図である。
【
図10】本願の一実施例が開示する電池セルを製造する方法の模式的フローチャートである。
【
図11】本願の一実施例が開示する電池セルを製造する機器の模式的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面及び実施例に合わせて本願の実施形態をさらに詳しく説明する。下記実施例の詳しい説明や図面は、例示的に本願の原理を説明しているが、本願の範囲を制限することができず、即ち本願は、説明される実施例に限定するものではない。
【0027】
本願の説明において、説明すべきことは、別途説明がない限り、使用される全ての技術と科学用語は、当業者に通常理解される意味と同じである。使用される用語は、具体的な実施例を説明するためのものに過ぎず、本願を制限するものではない。本願の明細書、特許請求の範囲及び上記の図面における用語「含む」、「有する」及びそれらの任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図する。「複数」の意味は、2つ以上であることを指す。「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」などの用語で指示される方向又は位置関係は、本願を説明し、説明を簡略化するためのものに過ぎず、示された装置又は素子が特定の方向を有し、特定の方向で構成して操作しなければならないことを指示又は暗示しないため、本願に対する制限として理解すべきではない。また、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、説明するためのものに過ぎず、相対重要性を指示又は暗示すると理解すべきではない。「垂直」は、厳密には垂直ではなく、許容誤差範囲内である。「平行」は、厳密には平行ではなく、許容誤差範囲内である。
【0028】
本願で言及される「実施例」は、実施例で説明される特定の特徴、構造又は特性と組み合わせて本願の少なくとも1つの実施例に含まれ得ることを意味する。明細書における様々な場所での当該句の出現は、必ずしも全てが同じ実施例を指しているわけではなく、他の実施例と互いに排他的である独立又は代替な実施例でもない。当業者によって明示的及び暗黙的に理解すべきことは、本願で説明される実施例が他の実施例と組み合わせることができる。
【0029】
以下の説明に現れている方向の単語はいずれも、図に示される方向であり、本願の具体的な構造を限定するものではない。本願の説明において、また説明すべきことは、別途明確な規定や限定がない限り、「取付」、「連結」、「接続」という用語は、広く理解する必要がある。例えば、固定するように接続されてもよく、着脱可能に接続されてもよく、又は一体的に接続されてもよい。直接連結してもよく、中間仲介部材によって間接的に連結してもよく、2つの素子内の連通であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて、本願における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0030】
本願の実施例にかかる絶縁膜は、電池アセンブリを包囲するために用いることができる。当該絶縁膜は、当該電池アセンブリの絶縁隔離と防水に使用されるように、絶縁と防水の材料であってもよい。当該電池アセンブリは、電池セル、又は、隣接する複数の電池セルにより形成された電池セル群などの電池セルにより形成されたアセンブリであってもよく、この場合、隣接する複数の電池セル全体に本願の実施例にかかる絶縁膜が包囲されている。以下、説明を容易にするために、電池セルを例として説明するが、本願の実施例は、これに対して限定されない。
【0031】
異なる電力需要を満たすために、電池は、複数の電池セルを含んでもよく、複数の電池セルの間は、直列接続又は並列接続又は混合接続であってもよく、混合接続は、直列接続と並列接続の混合を指す。電池は、電池パックとも呼ばれてもよい。選択可能に、複数の電池セルは、まず直列接続又は並列接続又は混合接続により電池モジュールを構成し、複数の電池モジュールがさらに直列接続又は並列接続又は混合接続により電池を構成してもよい。即ち、複数の電池セルは、直接電池を構成してもよく、まず電池モジュールを構成し、電池モジュールがさらに電池を構成してもよい。電池は、さらに電気機器に設置され、電気機器に電気エネルギーを提供する。
【0032】
電池セルは、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、リチウム硫黄電池、ナトリウムリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池又はマグネシウムイオン電池などを含んでもよく、本願の実施例は、これに対して限定されない。
【0033】
電池セルを外部と絶縁隔離させるために、通常、電池セルに絶縁膜を包囲する必要がある。包囲される絶縁膜は、絶縁及び防水の目的を同時に実現することができる。ところが、現在の絶縁膜は、電池セルを包囲する時に包囲領域に対する密閉包囲を実現することができないおそれがあり、絶縁膜の防水性能が低くなることを招く。例えば、現在の電池セルは、絶縁膜を包囲する時、一方、接着面の厚さが一致しない場合(例えば、接着面の一部が一層で、別の部分が二層である)、即ち接着面が平坦でない場合が生じるおそれがあり、接着効果に影響を与えるおそれがあり、他方、接着後の領域内部に再度曲げるおそれがあり、接着効果に影響を与えるおそれもあるため、包囲領域に対する密閉包囲を実現することができない。
【0034】
これらに鑑み、本願の実施例は、絶縁膜を提供しており、電池セルを包囲する時に各ペアの接着領域が平坦に接着され、接着が不十分な部分はなく、接着領域の内部がさらに折り畳むこともないため、包囲領域に対する密閉包囲を実現することができることで、絶縁隔離性能と防水性能を向上させることができる。
【0035】
本願の実施例で説明される技術的解決手段はいずれも、携帯電話、ポータブルデバイス、ノートパソコン、バッテリーカー、電気玩具、電動工具、電気車両、船舶、及び飛行機、ロケット、スペースシャトル、宇宙シャトルなどを含む宇宙船など、電池を使用する様々な装置に適用される。説明を簡潔化するために、下記実施例はいずれも、電動車両を例にとって説明する。
【0036】
例えば、
図1に示すように、本願の一実施例にかかる車両1の構成模式図である。車両1は、燃料自動車、ガソリン自動車又は新エネルギー自動車であってもよく、新エネルギー自動車は、純粋な電気自動車、ハイブリッド車両又は拡張範囲車両などであってもよい。車両1の内部には、モータ104、コントローラ103及び電池100が設置されてもよく、コントローラ103は、電池100がモータ104に電力を供給するように制御するために用いられる。例えば、車両1の底部又は車両前部又は車両後部に電池100が設置されてもよい。電池100は、車両1に電力を提供することができる。例えば、電池100は、車両1の操作電源として、車両1の回路システムに用いられる。例えば、車両1の起動、ナビゲーション及び走行時の作動電力需要に用いられる。本願の別の実施例において、電池100は、車両1の操作電源としてだけでなく、車両1の駆動電源として、燃料や天然ガスを代替又は部分的に代替して車両1に駆動力を提供することができる。
【0037】
様々な使用電力需要を満たすために、電池100は、複数の電池セルを含んでもよい。例えば、
図2に示すように、本願の一実施例にかかる電池100の構成模式図である。電池100は、複数の電池セル10を含んでもよい。電池100は、筐体11をさらに含んでもよく、筐体11の内部は中空構造であり、複数の電池セル10は、筐体11内に収容されている。例えば、複数の電池セル10は、互いに並列接続又は直列接続又は混合接続により組み合わせた後に筐体11内に配置されている。
【0038】
選択可能に、電池100は、その他の構造を含んでもよく、ここでその説明を省略する。例えば、当該電池100は、並列接続又は直列接続又は混合接続など、複数の電池セル10の間の電気的接続を実現するための合流部品をさらに含んでもよい。具体的には、合流部品は、電池セル10の電極端子との接続によって電池セル10の間の電気的接続を実現することができる。さらに、合流部品は、溶接によって電池セル10の電極端子に固定することができる。複数の電池セル10の電気エネルギーはさらに、導電機構によって筐体を通過して導出することができる。選択可能に、導電機構は、合流部品に属してもよい。
【0039】
異なる電力需要に応じて、電池セル10の数は、任意の値に設定されてもよい。比較的大きい容量又は電力を実現するように、複数の電池セル10は、直列接続、並列接続又は混合接続によって接続してもよい。各電池100に含まれている電池セル10の数が多い可能性があるため、取り付けしやすくするために、電池セル10をグループに設置することができ、各グループの電池セル10が電池モジュールを構成する。電池モジュールに含まれている電池セル10の数が限定されず、必要に応じて設定することができる。電池100は、複数の電池モジュールを含んでもよく、これらの電池モジュールは、直列接続、並列接続又は混合接続によって接続してもよい。
【0040】
図3は、本願の一実施例にかかる電池セル10の模式図を示す。
図3は、電池セル10が長方体形である例をとって説明するが、本願の実施例は、これに対して限定されず、即ち、電池セルは他の形状であってもよい。
【0041】
図3に示すように、電池セル10は、底壁111、2つの広い側壁112、2つの狭い側壁113及びカバープレート114という6つの壁を有する。6つの壁で形成されたチャンバー内に電池セルの電極アセンブリ及び電解質などが設置されている。カバープレート114には、それぞれ正電極端子と負電極端子である2つの電極端子115が設置され、電極端子115は、電極アセンブリに電気的に接続される。
【0042】
図4は、本願の実施例にかかる絶縁膜20の模式図を示す。
図4に示すように、絶縁膜20は、底部被覆領域21、N個の側面被覆領域221~224及びNペアの接着領域231~238を含む。Nは2よりも大きい整数である。
図4においてNが4である例をとるが、本願の実施例は、これに対して限定されない。具体的には、Nが4である場合、絶縁膜20は、長方体形の電池アセンブリを包囲するために用いられ、例えば
図3に示される電池セル10である。Nが4ではない場合、絶縁膜20は、N角柱形の電池アセンブリを包囲するために用いられる。選択可能に、
図3に示される電池セル10を包囲する場合、側面被覆領域221、223は広い側面被覆領域であり、側面被覆領域222、224は狭い側面被覆領域である。
【0043】
前記底部被覆領域21は、N個の辺211~214を有し、前記N個の側面被覆領域221~224は、それぞれ前記N個の辺211~214において前記底部被覆領域21に接続され、それぞれ前記N個の辺211~214に沿って前記底部被覆領域21に曲げることができる。即ち、N個の側面被覆領域221~224は、底部被覆領域21を取り囲み、各側面被覆領域は、底部被覆領域21と接続する辺に沿って曲げることができる。
図4に示すように、側面被覆領域221は、辺211に沿って曲げることができ、側面被覆領域222は、辺212に沿って曲げることができ、側面被覆領域223は、辺213に沿って曲げることができ、側面被覆領域224は、辺214に沿って曲げることができる。
【0044】
前記Nペアの接着領域231~238のうちの各ペアの接着領域は、前記N個の側面被覆領域221~224のうち隣接する2つの側面被覆領域の間に位置し、前記隣接する2つの側面被覆領域にそれぞれ接続され、各ペアの接着領域は、前記N個の側面被覆領域221~224が前記底部被覆領域21に曲げる時、各ペアの接着領域の同じ側の表面の接着によって前記底部被覆領域21と前記N個の側面被覆領域221~224が前記電池アセンブリを包囲する空間を形成するようにするために用いられる。
【0045】
図4に示すように、一ペアの接着領域231~232は、側面被覆領域221と側面被覆領域222との間に位置し、接着領域231は、側面被覆領域221に接続され、接着領域232は、側面被覆領域222に接続される。一ペアの接着領域233~234は、側面被覆領域222と側面被覆領域223との間に位置し、接着領域233は、側面被覆領域222に接続され、接着領域234は、側面被覆領域223に接続される。一ペアの接着領域235~236は、側面被覆領域223と側面被覆領域224との間に位置し、接着領域235は、側面被覆領域223に接続され、接着領域236は、側面被覆領域224に接続される。一ペアの接着領域237~238は、側面被覆領域224と側面被覆領域221との間に位置し、接着領域237は、側面被覆領域224に接続され、接着領域238は、側面被覆領域221に接続される。
【0046】
側面被覆領域221~224が底部被覆領域21に曲げる時、接着領域231は、接着領域232の同じ側の表面(電池アセンブリに向かう側)に接着し、類似的には、接着領域233は、接着領域234に接着し、接着領域235は、接着領域236に接着し、接着領域237は、接着領域238に接着することで、底部被覆領域21及び側面被覆領域221~224が電池アセンブリを包囲する空間を形成する。
【0047】
選択可能に、Nが4である場合、底部被覆領域21と4つの側面被覆領域221~224はいずれも四角形であり、絶縁膜20の展開状態は十字形である。選択可能に、絶縁膜20の展開状態において、各ペアの接着領域はL形を呈する。
図4に示すように、接着領域231と接着領域232がL形を形成し、接着領域233と接着領域234がL形を形成し、接着領域235と接着領域236がL形を形成し、接着領域237と接着領域238がL形を形成する。
【0048】
選択可能に、一例として、包囲される長方体形の電池セルの長さがL、高さがH、幅がTである場合、
図5における絶縁膜20の各部分のサイズは、表1のサイズを用いることができる。
【0049】
【0050】
選択可能に、各ペアの接着領域の同じ側の表面に接着するように、各ペアの接着領域は、それぞれ側面被覆領域との接続辺に沿って曲げることができる。例えば、接着領域231は、辺241に沿って曲げることができ、接着領域232は、辺242に沿って曲げることができ、接着領域233は、辺243に沿って曲げることができ、接着領域234は、辺244に沿って曲げることができ、接着領域235は、辺245に沿って曲げることができ、接着領域236は、辺246に沿って曲げることができ、接着領域237は、辺247に沿って曲げることができ、接着領域238は、辺248に沿って曲げることができる。
【0051】
図3に示される電池セルを含む例をとって、
図6は、包囲前の模式図であり、
図7は、各ペアの接着領域が接着した後の模式図である。
図7に示すように、各ペアの接着領域が接着した後、包囲領域の1つの稜部分の密閉を実現することができる。各稜部分の密閉境界の一ペアの接着領域が平坦に接着され、接着が不十分である部分がないため、包囲領域に対する密閉包囲を実現することができる。
【0052】
選択可能に、本願の一実施例において、各ペアの接着領域のうちの第1接着領域の幅は第2接着領域の幅よりも大きく、各ペアの接着領域が接着した後、前記第2接着領域と隣接する側面被覆領域に曲げることができ、前記第1接着領域のうち前記第2接着領域に接着しない部分は、前記第2接着領域と隣接する側面被覆領域に接着するために用いられる。
【0053】
例えば、接着領域231と接着領域232に対して、接着領域231の幅は接着領域232の幅よりも大きく、即ち、接着領域231は第1接着領域であり、接着領域232は第2接着領域である。
図7に示すように、接着領域231は、接着領域232に接着した後、側面被覆領域222に曲げることができ、接着領域231の幅が接着領域232の幅よりも大きいため、接着領域231のうちの一部の領域が接着領域232に接着されず、当該一部の領域は、側面被覆領域222にさらに接着するために用いられることで、接着領域231と接着領域232が上向きに傾けることはない。他のペアの接着領域は、これに類似しており、さらに接着した後の模式図は、
図8に示されている。
【0054】
本願の実施例において、各ペアの接着領域が接着した後に、その全体が側面被覆領域に曲げており、接着領域の内部が折り畳むことはないため、密閉効果を保証することができる。例えば、接着領域の内部がさらに折り畳む場合、折り目の接着がゆるむことを招くおそれがあるため、密閉効果に影響を与える。
【0055】
選択可能に、本願の一実施例において、前記第1接着領域の幅は、前記第2接着領域と隣接する側面被覆領域の幅の二分の一よりも小さい。例えば、
図5において、fはd/2よりも小さい。
【0056】
依然として接着領域231が第1接着領域、接着領域232が第2接着領域である例をとって、接着領域231の幅は、側面被覆領域222の幅の二分の一よりも小さい。
図8に示すように、この場合、接着領域231は、接着領域232に接着した後、側面被覆領域222にさらに接着した後、側面被覆領域222の中央にある一部の領域が露出し、即ち、接着領域231と接着領域232に被覆されない。側面被覆領域222の中央にある露出領域は、電池セルを固定する側板との接着に用いることができ、接着領域231に対して、側面被覆領域222の中央にある露出領域と側板との接着の固定効果がより優れている。
【0057】
選択可能に、本願の一実施例において、側面被覆領域の高さは、電池セルの高さ以上であってもよい。側面被覆領域の高さが電池セルの高さよりも高い場合、よりも高い部分は電池セルのカバープレートに曲げるとともに電池セルのカバープレートの表面に接着することができる。
【0058】
図8に示すように、側面被覆領域221~224の高さは、電池セル10の高さよりも高い。よりも高い部分はさらに、電池セル10のカバープレート114に曲げるとともに電池セル10のカバープレート114の表面に接着するため、
図9に示される包囲状態を得る。
【0059】
本願の実施例にかかる技術的解決手段において、すべての接着領域が平坦に接着され、接着が不十分な部分はなく、接着領域の内部がさらに折り畳むこともないため、包囲領域に対する密閉包囲を実現することができることで、絶縁隔離性能と防水性能を向上させることができる。
【0060】
本願の一実施例は、上記絶縁膜20が包囲されている電池セルをさらに提供する。例えば、当該電池セルは、上記電池セル10であってもよい。この場合、絶縁膜20の底部被覆領域21は、電池セル10の底壁111を被覆し、絶縁膜20の4つの側面被覆領域は、2つの広い側面被覆領域221、223及び2つの狭い側面被覆領域222、224を含み、2つの広い側面被覆領域221、223は、2つの広い側壁112をそれぞれ被覆し、2つの狭い側面被覆領域222、224は、2つの狭い側壁113をそれぞれ被覆し、絶縁膜20の4ペアの接着領域のうちの各ペアの接着領域のうちの、広い側面被覆領域と隣接する第1接着領域の幅は、狭い側面被覆領域と隣接する第2接着領域の幅よりも大きく、各ペアの接着領域は、前記電池セルに向かう側の表面に接着した後、隣接する狭い側面被覆領域に曲げ、前記第1接着領域のうち前記第2接着領域に接着しない部分は、隣接する狭い側面被覆領域に接着される。電池セル10に絶縁膜20が包囲された後の状態は
図9を参照してもよい。
【0061】
以下、
図6~
図9に合わせて、絶縁膜20を用いて電池セル10を包囲するプロセスを説明する。
【0062】
電池セル10を絶縁膜20に配置し、絶縁膜20の底部被覆領域21は、電池セル10の底壁111を被覆し、
図6に示される状態を得る。
【0063】
底部被覆領域21の辺に沿って電池セル10に向かって側面被覆領域を曲げる。例えば、まず広い側面被覆領域221、223を曲げ、次に2つの狭い側面被覆領域222、224を曲げ、同時に接着領域と側面被覆領域との接続辺に沿って接着領域を曲げることで、各ペアの接着領域の、電池セル10に向かう側の表面を接着させ、
図7に示される状態を得る。
【0064】
各ペアの接着領域全体を隣接する狭い側面被覆領域に曲げるとともに、隣接する狭い側面被覆領域に接着し、
図8に示される状態を得る。
【0065】
電池セル10に近接するカバープレート114の方向に各領域の、カバープレート114から突出した部分を曲げ、それらをカバープレート114の表面に接着させ、
図9に示される最終的な包囲状態を得る。
【0066】
理解すべきことは、本願の実施例において、絶縁膜20における曲げるための辺は、絶縁膜20を曲げる前に事前に描画してもよく、例えば標識線又は弱点領域などの実体状態を形成してもよいが、曲げる前に絶縁膜20に対して如何なる形式の処理も行わず、曲げるプロセスにのみ仮想の曲げ線に従って対応する曲げを行い、最終的に包囲状態を形成してもよい。
【0067】
また理解すべきことは、本願の各実施例における関連部分は、相互参照することができ、簡潔化のためにその説明を省略する。
【0068】
本願の一実施例は、上記実施例における絶縁膜20が包囲されている電池セル10を含み得る電池をさらに提供する。
【0069】
本願の一実施例は、上記実施例における電池を含み得る電気機器をさらに提供する。選択可能に、電気機器は、車両、船舶又は宇宙船などであってもよいが、本願の実施例は、これに対して限定されない。
【0070】
図10は、本願の一実施例にかかる電池セルを製造する方法300の模式的フローチャートを示す。
図10に示すように、当該方法300は、電池セル10を提供する310と、絶縁膜20を提供する320と、絶縁膜20を用いて電池セル10を包囲する330と、を含んでもよい。
【0071】
図11は、本願の一実施例にかかる電池セルを製造する機器400の模式的ブロック図を示す。
図11に示すように、当該機器400は、提供モジュール410と包囲モジュール420を含んでもよい。
【0072】
提供モジュール410は、電池セル10を提供するとともに、絶縁膜20を提供するために用いられ、包囲モジュール420は、前記絶縁膜20を用いて前記電池セル10を包囲するために用いられる。
【0073】
上記方法300及び機器400において、詳しく説明していない部分については、上記各実施例を参照することができ、簡潔化のためにその説明を省略する。
【0074】
好ましい実施例を参照して本願を説明しているが、本願の範囲から逸脱することなく、それに対して様々な変更を行うことができるとともに、等価物でその中の部材を置き換えることができる。特に、構造上の矛盾がない限り、各実施例で言及される各技術的特徴は、いずれも任意に組み合わせることができる。本願は、明細書に開示される特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲内にある全ての技術的解決手段を含む。
【符号の説明】
【0075】
21 底部被覆領域
211、212、213、214 辺
221、222、223、224 側面被覆領域
231、232、233、234、235、236、237、238 接着領域