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特許7399367反射型ビーム径可変光学系、レーザ加工ヘッドおよびレーザ加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】反射型ビーム径可変光学系、レーザ加工ヘッドおよびレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20231208BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20231208BHJP
【FI】
B23K26/064 A
B23K26/70
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023553732
(86)(22)【出願日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2023019519
【審査請求日】2023-09-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】藤川 周一
(72)【発明者】
【氏名】熊岡 本敏
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽子
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0325325(US,A1)
【文献】特表平11-501738(JP,A)
【文献】特開平7-154018(JP,A)
【文献】特開2010-135769(JP,A)
【文献】特開2012-137510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/064
B23K 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸外し放物面ミラーの回転主軸の方向と同じ方向に平行光が入射される第1の軸外し放物面ミラーと、
前記第1の軸外し放物面ミラーの焦点に第2の軸外し放物面ミラーの焦点が一致するように配置される第2の軸外し放物面ミラーと、
前記第1の軸外し放物面ミラーおよび前記第2の軸外し放物面ミラーを前記第1の軸外し放物面ミラーの前記回転主軸の方向と異なる方向へ平行移動する第1の可動基台と、を備え、
前記第2の軸外し放物面ミラーから出射される出射光のビーム径を可変にする
ことを特徴とする反射型ビーム径可変光学系。
【請求項2】
前記第2の軸外し放物面ミラーから出射される出射光の光軸を折り曲げる第2の折り曲げミラーと、
前記第2の折り曲げミラーを前記第2の折り曲げミラーのミラー面に平行な方向と異なる方向に平行移動させる第2の可動基台と、を備え、
前記第2の折り曲げミラーから出射される出射光の光軸の位置および方向を一定に維持する
ことを特徴とする請求項1に記載の反射型ビーム径可変光学系。
【請求項3】
前記第1の軸外し放物面ミラーおよび前記第2の軸外し放物面ミラーの何れか一方が凸型の軸外し放物面ミラーである
ことを特徴とする請求項1に記載の反射型ビーム径可変光学系。
【請求項4】
第1の軸外し放物面ミラーと、
前記第1の軸外し放物面ミラーの焦点に第2の軸外し放物面ミラーの焦点が一致するように配置される第2の軸外し放物面ミラーと、
入射する平行光の光軸を、前記第1の軸外し放物面ミラーの回転主軸の方向と同じ方向に折り曲げ、前記第1の軸外し放物面ミラーへ入射させる第1の折り曲げミラーと、
前記第1の折り曲げミラーを前記第1の折り曲げミラーのミラー面に平行な方向と異なる方向へ平行移動する第3の可動基台と、を備え、
前記第2の軸外し放物面ミラーから出射される出射光のビーム径を可変にする
ことを特徴とする反射型ビーム径可変光学系。
【請求項5】
前記第2の軸外し放物面ミラーから出射される出射光の光軸を折り曲げる第2の折り曲げミラーと、
前記第2の折り曲げミラーを前記第2の折り曲げミラーのミラー面に平行な方向と異なる方向に平行移動させる第2の可動基台と、を備え、
前記第2の折り曲げミラーから出射される出射光の光軸の位置および方向を一定に維持する
ことを特徴とする請求項に記載の反射型ビーム径可変光学系。
【請求項6】
前記第1の軸外し放物面ミラーおよび前記第2の軸外し放物面ミラーの何れか一方が凸型の軸外し放物面ミラーである
ことを特徴とする請求項4に記載の反射型ビーム径可変光学系。
【請求項7】
第1の軸外し放物面ミラーの回転主軸の方向と同じ方向に平行光が入射される第1の軸外し放物面ミラーと、
前記第1の軸外し放物面ミラーの焦点に第2の軸外し放物面ミラーの焦点が一致するように配置される第2の軸外し放物面ミラーと、
前記第1の軸外し放物面ミラーおよび前記第2の軸外し放物面ミラーを、
前記第1の軸外し放物面ミラーの回転主軸と前記第2の軸外し放物面ミラーの回転主軸を含む面内において、少なくとも異なる2つの方向へ平行移動させる第4の可動基台と、を備え、
前記第2の軸外し放物面ミラーから出射される出射光のビーム径を可変にする
ことを特徴とする反射型ビーム径可変光学系。
【請求項8】
請求項1からの何れか一つに記載の反射型ビーム径可変光学系と、
前記反射型ビーム径可変光学系から出射される出射光を集光する第1の非球面ミラーと、を備える
ことを特徴とするレーザ加工ヘッド。
【請求項9】
レーザ光を伝送する光ファイバと、
前記光ファイバから出射されたレーザ光を平行光にして、前記反射型ビーム径可変光学系に入射させる第2の非球面ミラーと、を備える
ことを特徴とする請求項に記載のレーザ加工ヘッド。
【請求項10】
前記第1の非球面ミラーおよび前記第2の非球面ミラーは、軸外し放物面ミラーである
ことを特徴とする請求項に記載のレーザ加工ヘッド。
【請求項11】
請求項8に記載のレーザ加工ヘッドを備える
ことを特徴とするレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反射型光学素子を使用してレーザ光のビーム径を可変とする反射型ビーム径可変光学系、レーザ加工ヘッドおよびレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の反射型ビーム径可変光学系は、凸面状の第1の軸外し放物面ミラーと、凹面状の第2の軸外し放物面ミラーとを備え、基本位置においては、第1の軸外し放物面ミラーの回転対称軸と第2の軸外し放物面ミラーの回転対称軸とが一致し、かつ第1の軸外し放物面ミラーの焦点と第2の軸外し放物面ミラーの焦点とが一致するように配設されている。第1の軸外し放物面ミラーへ第1の軸外し放物面ミラーの回転対称軸と平行にレーザ光を入射させると、入射したレーザ光は第1の軸外し放物面ミラーで反射し、発散しながら第2の軸外し放物面ミラーへ入射する。第2の軸外し放物面ミラーを第1の軸外し放物面ミラーからの反射光の光軸に沿って移動させて、第1の軸外し放物面ミラーと第2の軸外し放物面ミラーとの間の距離を変化させることにより、第2の軸外し放物面ミラーから出射されるレーザ光のビーム径を可変としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-502228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、第2の軸外し放物面ミラーから出射されるレーザ光のビーム径を可変にするため、第1の軸外し放物面ミラーと第2の軸外し放物面ミラーとの間の距離を変化させているので、第1の軸外し放物面ミラーの焦点と第2の軸外し放物面ミラーの焦点とを常に一致させることができない。このため、第1の軸外し放物面ミラーの焦点と第2の軸外し放物面ミラーの焦点とが一致していない条件においては、第2の軸外し放物面ミラーから出射されるレーザ光に顕著な収差が発生してしまうという課題があった。
【0005】
更に、第1の軸外し放物面ミラーの焦点と第2の軸外し放物面ミラーの焦点とが一致する条件においては、第1の軸外し放物面ミラーへ平行光で入射したレーザ光は、第2の軸外し放物面ミラーから平行光として出射される。一方、第1の軸外し放物面ミラーと第2の軸外し放物面ミラーとの間の距離を長くした場合、第2の軸外し放物面ミラーから出射されるレーザ光は発散光となる。また、第1の軸外し放物面ミラーと第2の軸外し放物面ミラーとの間の距離を短くした場合、第2の軸外し放物面ミラーから出射されるレーザ光は収束光となる。従って、第1の軸外し放物面ミラーと第2の軸外し放物面ミラーとの間の距離によって、第2の軸外し放物面ミラーから出射されるレーザ光の発散角が変化してしまうという課題もあった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、収差の発生およびビーム発散角の変化を抑制しながら、ビーム径を可変にすることができる反射型ビーム径可変光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示における反射型ビーム径可変光学系は、第1の軸外し放物面ミラーの回転主軸の方向と同じ方向に平行光が入射される第1の軸外し放物面ミラーと、第1の軸外し放物面ミラーの焦点に第2の軸外し放物面ミラーの焦点が一致するように配置される第2の軸外し放物面ミラーと、第1の軸外し放物面ミラーおよび第2の軸外し放物面ミラーを第1の軸外し放物面ミラーの回転主軸の方向と異なる方向へ平行移動する第1の可動基台と、を備え、第2の軸外し放物面ミラーから出射される出射光のビーム径を可変にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の反射型ビーム径可変光学系によれば、収差の発生およびビーム発散角の変化を抑制しながら、ビーム径を可変にすることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図
図2】実施の形態1に係る反射型ビーム径可変光学系において、可動基台を平行移動させた状態を示す模式図
図3】実施の形態2に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図
図4】実施の形態2に係る反射型ビーム径可変光学系において、可動基台を平行移動させた状態を示す模式図
図5】実施の形態3に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図
図6】実施の形態3に係る反射型ビーム径可変光学系において、可動基台を-z方向へ平行移動させた状態を示す模式図
図7】実施の形態4に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図
図8】実施の形態5に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図
図9】実施の形態6に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図
図10】実施の形態7に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図
図11】実施の形態8に係るレーザ加工ヘッドの構成を示す模式図
図12】軟鋼切断時の切断可能な集光点位置の範囲を示す加工裕度表を示す図
図13】実施の形態9に係るレーザ加工ヘッドの構成を示す模式図
図14】実施の形態10に係るレーザ加工ヘッドの構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態に係る反射型ビーム径可変光学系、レーザ加工ヘッドおよびレーザ加工機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において同一または相当する部分については、同一符号を付して説明する。また、反射型ビーム径可変光学系およびレーザ加工ヘッドの向き、方向を明確にするため、各図には、x,y,z方向を示す矢印を付加している。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図である。反射型ビーム径可変光学系は、凹型の第1の軸外し放物面ミラー20と、凹型の第2の軸外し放物面ミラー30と、第1の可動基台としての可動基台40と、を備える。第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30は、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23の位置と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33の位置とを一致させて、可動基台40上に固定されている。可動基台40は、矢印41で示す可動方向に、すなわちz方向に移動自在な機構を備えている。
【0012】
次に動作について説明する。実施の形態1の反射型ビーム径可変光学系へ入射する入射光10は、予め平行化(コリメート)されている。また、平行光である入射光10は、入射光10の光軸11の方向を、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向に一致させて、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する。なお、光軸方向を放物面ミラーの回転主軸の方向に一致させて放物面ミラーへ入射された光線は、原理的には、放物面ミラーの表面で反射し、放物面ミラーの焦点を通過する。従って、入射光10は、第1の軸外し放物面ミラー20によって第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23に集光される。
【0013】
入射光10は、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23で集光された後、発散され、第2の軸外し放物面ミラー30へ入射する。なお、放物面ミラーの焦点を通過した後に、この放物面ミラー自身へ入射する光線は、放物面ミラーの表面で反射し、光軸方向を放物面ミラーの回転主軸の方向に一致させて放物面ミラーから出射される。第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30は、焦点の位置が一致するよう配設されているので、第2の軸外し放物面ミラー30へ発散しながら入射した入射光10は、第2の軸外し放物面ミラー30での反射作用によって平行化され、出射光12の光軸13の方向を第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32の方向に一致させて、第2の軸外し放物面ミラー30を出射する。
【0014】
従って、焦点を一致させて配設された第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30は、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22に、光軸11の方向を一致させて平行化された入射光10に対し、アフォーカル光学系を構成している。
【0015】
ここで、第1の軸外し放物面ミラー20への入射光10の主光線の入射点21から第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23までの距離をf1とし、第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33から第2の軸外し放物面ミラー30への入射光の主光線の入射点31までの距離をf2とすれば、アフォーカル光学系の横倍率βは、次式(1)で与えられる。
β=f2/f1 ・・・(1)
【0016】
従って、入射光10のビーム直径d1と出射光12のビーム直径d2は、次式(2)の関係となる。
d2=β×d1=(f2/f1)×d1 ・・・(2)
【0017】
なお、第1の軸外し放物面ミラー20への入射光10の主光線の入射点21から第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23までの距離は、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点距離f1に相当し、第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33から第2の軸外し放物面ミラー30への入射光の主光線の入射点31までの距離は、第2の軸外し放物面ミラー30の焦点距離f2に相当する。
【0018】
次に出射光12のビーム直径d2の可変方法について説明する。図2は、実施の形態1に係る反射型ビーム径可変光学系において、可動基台40を平行移動させた状態を示す模式図である。なお、入射光10のビーム直径d1、入射光10の光軸11の位置および方向は、図1と同一である。
【0019】
可動基台40を-z方向へ平行移動させているので、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向は変化しない。また、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とが一致した状態が維持される。このため、光軸11の方向が第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向に一致して、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する平行光である入射光10に対し、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成される光学系はアフォーカル光学系が維持される。
【0020】
一方、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30が固定された可動基台40を-z方向へ平行移動することにより、第1の軸外し放物面ミラー20の面上において、入射光10の主光線が入射する入射点21の位置が変化する。この結果、第1の軸外し放物面ミラー20への入射点21から第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23までの焦点距離f1、および第2の軸外し放物面ミラー30への入射点31から第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33までの焦点距離f2が変化する。
【0021】
図2に示すように、可動基台40を-z方向へ平行移動させた場合、図1の状態と比較して焦点距離f1は減少し、焦点距離f2は増加する。従って、式(1)で与えられるアフォーカル光学系の横倍率βが増加し、図1の状態と比較して出射光12のビーム直径d2を増加させることができる。
【0022】
一方、可動基台40を+z方向へ平行移動させれば、図1の状態と比較して焦点距離f1が増加し、焦点距離f2が減少するので、アフォーカル光学系の横倍率βが減少し、図1の状態と比較して出射光12のビーム直径d2を減少させることができる。
【0023】
このように実施の形態1によれば、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30という僅か2個の光学素子のみで、反射型かつ倍率可変のアフォーカル光学系を構成することができる。また、ビーム径の可変には、焦点を一致させた第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を平行移動させるだけでよいので、ビーム径の調整が容易になるばかりでなく、ビーム径を可変にするための駆動機構等も簡易になり、反射型、透過型に依らずビーム径可変光学系の製造コストの低減が可能になり、さらに光学系の信頼性も向上させることができる。なお、可動基台40によって第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を移動する方向は、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向と異なる方向であって、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22に入射光10の光軸11の方向を一致させることができていれば、任意の方向でよい。
【0024】
また、放物面ミラーへ放物面ミラーの回転主軸と平行に入射する入射光線は、必ず放物面ミラーの焦点を通過するという基本的な光学原理に基づく反射型のアフォーカル光学系であるため、アフォーカル光学系の倍率を変化させた際にも、コマ収差、非点収差の発生を効果的に抑制し、高いビーム品質を維持することができる。
【0025】
更にCOレーザに代表される中赤外から遠赤外の波長域、ならびに波長200nm以下の深紫外から極端紫外の波長域では、レーザ光の吸収率が低い透明な硝材に乏しく、透過型のビーム径可変光学系を使用した場合、レーザ光吸収にともなう熱レンズ、熱歪の発生により、ビーム品質も著しく劣化してしまうという課題があった。
【0026】
実施の形態1に示す反射型のビーム径可変光学系を使用すれば、レーザ光の吸収率が高い硝材を軸外し放物面ミラーに使用した場合であっても、レーザ光吸収にともない硝材内部で発生する熱レンズの影響を効果的に抑制し、ビーム品質を維持しながらビーム径の可変が可能になる。
【0027】
また、異物付着等により、放物面ミラー表面へ微小な焼け付き(損傷)等が発生した場合であっても、反射光学素子であるため、レーザ光吸収により硝材内部で発生する局所的な熱レンズの影響を効果的に抑制し、レンズ等を使用した透過型のビーム径可変光学系に比べ、光学素子の損傷耐性が大幅に向上し、ビーム径可変光学系の信頼性を改善することができるという効果もある。
【0028】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図である。実施の形態2では、第2の軸外し放物面ミラー30に負の焦点距離を備えた凸型の軸外し放物面ミラーを使用している。また、実施の形態2においても、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させて配置していることは、実施の形態1と同様である。
【0029】
実施の形態2においても、平行光である入射光10の光軸11の方向を第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向に一致させて、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射させている。光軸11の方向を第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向に一致させて放物面ミラーへ入射した入射光10は、原理的には、第1の軸外し放物面ミラー20の表面で反射して第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23へ向かい集光する。
【0030】
ただし、実施の形態2においては、第1の軸外し放物面ミラー20で反射された入射光10は、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23へ到達する前に、凸型の第2の軸外し放物面ミラー30へ入射し、第2の軸外し放物面ミラー30によって反射する。凸型の放物面ミラーは、凸型の放物面ミラーの焦点に向かい入射した光線を、原理的に凸型の放物面ミラーの回転主軸の方向へ光軸方向を一致させた向きに反射する。
【0031】
実施の形態2においては、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させて配置しており、第1の軸外し放物面ミラー20によって反射された入射光10は、第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33と一致して配置された第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23に向かって集光するので、第2の軸外し放物面ミラー30で反射された出射光12は、第2の軸外し放物面ミラー30により平行化され、第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32の方向へ反射される。すなわち、出射光12の光軸13の方向は、第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32の方向に一致する。
【0032】
実施の形態2の反射型ビーム径可変光学系においても、実施の形態1と同様、平行光である入射光10に対し、平行光である出射光12を出射するので、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30はアフォーカル光学系を構成している。凹型の第2の軸外し放物面ミラー30を使用した実施の形態1のアフォーカル光学系が、光学系内部に集光点を形成するケプラー型のアフォーカル光学系であったのに対し、凸型の第2の軸外し放物面ミラー30を使用する実施の形態2のアフォーカル光学系は、光学系内部に集光点を形成しないガリレオ型のアフォーカル光学系を構成している。
【0033】
ここで、第1の軸外し放物面ミラー20への主光線の入射点21から第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23までの距離をf1とし、第2の軸外し放物面ミラー30への主光線の入射点31から第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33までの距離をf2とすれば、アフォーカル光学系の横倍率βならびに入射光10のビーム直径d1と出射光12のビーム直径d2との関係は、実施の形態1と同じく、各々式(1)、式(2)で与えられる。
【0034】
次に、出射光12のビーム直径d2の可変方法について説明する。図4は、実施の形態2に係る反射型ビーム径可変光学系において、可動基台40を平行移動させた状態を示す模式図である。なお、入射光10のビーム直径d1、入射光10の光軸11の位置および方向は、図3と同一である。
【0035】
図4においては、図3に示す反射型ビーム径可変光学系から、可動基台40を+z方向へ平行移動させているので、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向は変化しない。また、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とも一致した状態が維持される。このため、実施の形態1と同様、光軸11の方向が第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向に一致して第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する平行光である入射光10に対し、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成される光学系はアフォーカル系が維持される。
【0036】
一方、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30が固定された可動基台40を+z方向へ平行移動することにより、第1の軸外し放物面ミラー20の面上において、入射光10の主光線が入射する入射点21の位置が変化する。この結果、第1の軸外し放物面ミラー20への入射点21から第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23までの焦点距離f1、および第2の軸外し放物面ミラー30への入射点31から第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33までの焦点距離f2が変化する。
【0037】
図4に示すように、可動基台40を+z方向に平行移動させた場合、図3の状態と比較して焦点距離f1は増加し、焦点距離f2は減少する。従って、式(1)で与えられるアフォーカル光学系の横倍率βは減少し、図3の状態と比較して出射光12のビーム直径d2を低減させることができる。一方、可動基台40を-z方向へ平行移動させれば、図3の状態と比較して焦点距離f1が減少し、焦点距離f2は増加するので、アフォーカル光学系の横倍率βが増加し、図3の状態と比較して出射光12のビーム直径d2を増加させることができる。
【0038】
なお、実施の形態2に示すように、第2の軸外し放物面ミラー30に凸型の放物面ミラーを使用した場合、幾何学的に第1の軸外し放物面ミラー20への主光線の入射点21から第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23までの焦点距離f1の値が、第2の軸外し放物面ミラー30への主光線の入射点31から第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33までの焦点距離f2の値よりも必ず大きくなる。従って、実施の形態2のように、入射側である第1の軸外し放物面ミラー20に凹型の放物面ミラーを使用し、出射側である第2の軸外し放物面ミラー30に凸型の放物面ミラーを使用する構成においては、アフォーカル光学系の横倍率βは必ず1以下となり、出射光12のビーム直径d2は、入射光10のビーム直径d1より必ず小さくなる。
【0039】
一方、入射側である第1の軸外し放物面ミラー20に凸型の放物面ミラー、出射側である第2の軸外し放物面ミラー30に凹型の放物面ミラーを使用し、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させて配置する構成としても、ビーム径可変のアフォーカル光学系が構成できることは言うまでもない。この場合、アフォーカル光学系の横倍率βは必ず1以上となり、出射光12のビーム直径d2は、入射光10のビーム直径d1より必ず大きくなる。
【0040】
このように実施の形態2によれば、一方の軸外し放物面ミラーに凹型の放物面ミラーを使用し、他方の軸外し放物面ミラーに凸型の放物面ミラーを使用する構成としたので、実施の形態1と同様な効果が得られるばかりでなく、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30に共に凹型の放物面ミラーを使用する場合に比べ、第1の軸外し放物面ミラー20と第2の軸外し放物面ミラー30との間の距離を短くすることができるので、反射型ビーム径可変光学系の小型化が可能になるという効果がある。
【0041】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図である。実施の形態3では、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させるとともに、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とが一致するように、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を配置している。なお、実施の形態3では、平行光である入射光10の光軸11、平行光である出射光12の光軸13、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22、および第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32の何れの方向もx軸に一致するよう配置している。
【0042】
実施の形態3の反射型ビーム径可変光学系は、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させて配置するとともに、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とも一致するよう第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を配置しているので、平行光である入射光10の光軸11と平行光である出射光12の光軸13をx軸に沿って平行に配置することができる。
【0043】
図6は、実施の形態3に係る反射型ビーム径可変光学系において、可動基台40を-z方向へ平行移動させた状態を示す模式図である。ビーム径の可変方法については、実施の形態1および実施の形態2と同様、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させるとともに、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とを一致させた状態を維持しながら、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を平行移動して、入射光10が第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する入射点21の位置を変化させればよい。
【0044】
なお、実施の形態3では、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30として、凹型の放物面ミラーを使用する構成を示しているが、実施の形態2と同じく、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30の何れか一方を凸型の放物面ミラーとしても良い。
【0045】
このように実施の形態3によれば、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させるとともに、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とを一致させて配置しているので、実施の形態1および実施の形態2と同様な効果が得られるばかりでなく、入射光10の光軸11と出射光12の光軸13とが平行となるので、反射型ビーム径可変光学系の設計、設置ならびに角度調整が各段に容易になるという効果がある。
【0046】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図である。実施の形態4においても実施の形態3と同じく、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させるとともに、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とがx方向で一致するよう第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を配設している。
【0047】
実施の形態4の反射型ビーム径可変光学系では、+z方向に入射する平行光である入射光14の光軸15を、平面ミラーからなる第1の折り曲げミラー5によって、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22に平行な-x方向へ90°折り曲げ、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射させている。第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する平行光である入射光10は、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系を通過し、第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32に平行な+x方向へ平行光となって出射する。
【0048】
+x方向へ出射する平行光である出射光12は、平面ミラーからなる第2の折り曲げミラー6により、+z方向へ90°折り曲げられる。ここで第2の折り曲げミラー6は、z方向に移動自在な第2の可動基台70上に固定されている。
【0049】
なお、実施の形態4の反射型ビーム径可変光学系おいては、入射光14は予め平行化された平行光であり、入射光14の光軸15は、一定の位置、方向に固定されている。また、平面ミラーからなる第1の折り曲げミラー5も、固定基台8上で一定の位置、角度に固定されている。
【0050】
第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30が固定されz方向に移動自在な可動基台40と、第2の折り曲げミラー6が固定され同じくz方向に移動自在な第2の可動基台70の可動機構は何れも固定基台8上に設けられており、可動基台40および第2の可動基台70は、固定基台8に対し相対的にz方向へ平行移動する。なお、実施の形態4の反射型ビーム径可変光学系においては、光学系への入射光14の光軸15と出射光16の光軸17とが一致するように第2の可動基台70のz方向位置を設定している。
【0051】
第2の軸外し放物面ミラー30を出射する出射光12のビーム直径d2を変化させるため、可動基台40をz方向へ平行移動させた場合、第2の軸外し放物面ミラー30から出射する出射光12の光軸13の位置もz方向に平行シフトする。第2の軸外し放物面ミラー30から出射する出射光12の光軸13の平行シフト量をΔzとした場合、第2の可動基台70も出射光12の光軸13の平行シフト量Δzに連動し、z方向へΔzだけ平行移動させれば、光学系からの出射光16の光軸17を常に一定の位置、角度(方向)で維持することができる。
【0052】
ここで、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30として、主軸焦点距離25mmの放物面ミラーを使用した構成を想定し、具体例を説明する。
【0053】
第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の横倍率βが1倍となる場合、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する入射光10の光軸11と第2の軸外し放物面ミラー30から出射する出射光12の光軸13との間隔は100mmとなる。
【0054】
アフォーカル光学系の横倍率βを1倍から2倍へ増加させるには、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30が固定された可動基台40を-z方向へ14.65mm平行移動させればよく、この場合、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する入射光10の光軸11と第2の軸外し放物面ミラー30から出射する出射光12の光軸13との間隔は106.07mmとなる。すなわち、横倍率βが1倍の状態を基準とすれば、第2の軸外し放物面ミラー30から出射する出射光12の光軸13の平行シフト量Δzは+z方向に6.07mmとなる。従って、第2の折り曲げミラー6が固定された第2の可動基台70を+z方向へ6.07mm平行移動させれば、第2の折り曲げミラー6によって方向を+z方向へ90°折り曲げられた光学系からの出射光16の光軸17を一定の位置および角度に維持することができる。
【0055】
なお、第2の可動基台70の可動方向71はz方向に限るものではなく、例えば第2の可動基台70の可動方向71をx方向とした場合、第2の可動基台70を-x方向へ6.07mm平行移動させても、第2の折り曲げミラー6から出射する出射光16の光軸17を一定に維持することができる。すなわち、第2の可動基台70の可動方向71が、第2の折り曲げミラー6のミラー面に平行な方向以外であれば、原理的にアフォーカル光学系の倍率変更にともない第2の軸外し放物面ミラー30から出射する出射光12の光軸シフトの影響を補償し、第2の折り曲げミラー6から出射する光学系からの出射光16の光軸17を一定の位置および角度に維持することができる。
【0056】
実施の形態5.
図8は、実施の形態5に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図である。実施の形態4では、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とを一致させるとともに、光学系からの出射光16の光軸17を一定に維持する反射型ビーム径可変光学系を示したが、実施の形態5の反射型ビーム径可変光学系では、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とが一致していない構成において、第2の可動基台70上に固定された第2の折り曲げミラー6を使用し、アフォーカル光学系の倍率に応じ、第2の折り曲げミラー6を適切な位置に設置している。このような構成によれば、第2の軸外し放物面ミラー30を出射する出射光12の光軸シフトの影響を補償し、第2の折り曲げミラー6を出射する光学系からの出射光16の光軸17の位置および方向(角度)を一定に維持することができるので、実施の形態4と同様な効果を得ることができる。
【0057】
更に、波長が100nm以下と極めて短い極端紫外光のように、ミラーの反射率を確保するため高入射角での斜入射が必要となるようなケースでは、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とが成す角度により、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30への入射光の入射角を適切な値へ調整することによって、低収差でのビーム径可変を可能にするとともに、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30から構成されるアフォーカル光学系の光伝送効率を高く維持することができるという効果がある。
【0058】
実施の形態6.
実施の形態1~実施の形態5では、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を同一の可動基台40上に固定し、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を平行移動させることによって、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30から構成されるアフォーカル光学系の倍率を可変とし、出射光12のビーム直径d2を可変とする構成を示したが、ビーム径可変方法はこれに限るものではない。
【0059】
図9は、実施の形態6に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図である。実施の形態6においては、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30は、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させて、固定基台8上に固定されている。一方、第1の折り曲げミラー5は、z方向に移動自在な第3の可動基台80上に固定されている。なお、z方向に移動自在な第3の可動基台80の可動機構は、固定基台8上に設けられており、第3の可動基台80は固定基台8に対し、相対的にz方向へ平行移動する。また、第2の折り曲げミラー6は、z方向に移動自在な第2の可動基台70上に固定されている。
【0060】
実施の形態6の反射型ビーム径可変光学系のように、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を固定基台8上に固定するとともに、第1の折り曲げミラー5が固定された第3の可動基台80を可動方向81(z方向)へ平行移動させることによって、平行光である入射光10の光軸11の方向を第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向と一致させながら、入射光10の主光線が第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する入射点21の位置を変化させても、実施の形態1~実施の形態5と同様に、コマ収差および非点収差の発生を効果的に抑制しながら、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率を変更し、出射光12のビーム直径d2を可変にすることができる。
【0061】
なお、実施の形態6では、第1の折り曲げミラー5が固定された第3の可動基台80をz方向に平行移動させる構成を示したが、平行移動する可動方向81はz方向に限るものではない。第3の可動基台80の可動方向81が第1の折り曲げミラー5のミラー面に平行な方向以外であれば、第3の可動基台80を平行移動しながら、第1の軸外し放物面ミラー20への入射点21の位置を変化させることができるので、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率を変更し、平行光である出射光12のビーム直径d2を可変にすることができる。
【0062】
なお、実施の形態6に示すように、焦点を一致させて配置した第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を固定し、第1の折り曲げミラー5を平行移動することにより、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率を可変にする構成は、図9に示す実施の形態6の構成に限るものではなく、実施の形態2~実施の形態5で示した何れの反射型ビーム径可変光学系へも適用可能であり、実施の形態2~実施の形態5と同様な効果が得られることに加え、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射させる入射光10の位置調整が容易になるという効果もある。
【0063】
実施の形態7.
図10は、実施の形態7に係る反射型ビーム径可変光学系の構成を示す模式図である。実施の形態7の反射型ビーム径可変光学系においては、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を平行移動させるための第4の可動基台60は、矢印61で示す第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32に平行な方向と、矢印62で示す第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22に平行な方向との2方向に対し移動自在な可動機構を備えている。
【0064】
第4の可動基台60を矢印61で示す第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32に平行な方向へ平行移動させた場合、平行光である入射光10の光軸11が第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する入射点21が変化するため、第1の軸外し放物面ミラー20の焦点距離f1および第2の軸外し放物面ミラー30の焦点距離f2が変化し、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率を変更することができる。
【0065】
また、第4の可動基台60を矢印62で示す第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22に平行な方向へ平行移動させた場合、入射光10の光軸11が第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する入射点21は変化しないので、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率は一定に維持される。一方、第4の可動基台60の矢印62の方向への平行移動にともない、出射光12の光軸13は平行移動する。すなわち、第4の可動基台60を矢印62で示す第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22に平行な方向へ平行移動させることによって、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率を一定に維持しながら、出射光12の光軸13の位置調整が可能になる。
【0066】
実施の形態7の反射型ビーム径可変光学系のように、焦点を一致させて配設された第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30を平行移動させるための第4の可動基台60に、少なくとも2つ以上の方向へ平行移動可能な可動機構を設ければ、第4の可動基台60の平行移動によって、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率調整に加え、出射光12の光軸13の位置調整が可能になる。この結果、実施の形態4~実施の形態6で示した反射型ビーム径可変光学系のような第2の折り曲げミラー6または第2の可動基台70を使用することなく、出射光12の光軸13を一定に維持しながらアフォーカル光学系の倍率変更が可能になる。
【0067】
特に、実施の形態7の反射型ビーム径可変光学系で示したように、第4の可動基台60の平行移動方向の1つに、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22に平行な方向を選定すれば、アフォーカル光学系の倍率を一定に維持しながら、出射光12の光軸13の位置を調整することが可能になるので、アフォーカル光学系の倍率と出射光12の光軸13の位置の調整を各々独立に実施することで、光学系の調整が格段に容易なるという効果がある。
【0068】
なお第1の軸外し放物面ミラー20と第2の軸外し放物面ミラー30が、焦点を一致させた状態で固定された第4の可動基台60を平行移動させる方向はこれに限るものではない。第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と、第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32を含む面内において、任意の異なる2方向へ平行移動可能な可動機構を設ければ、第1の軸外し放物面ミラー20と第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の横倍率の変更と、第2の軸外し放物面ミラー30を出射する出射光12の光軸13の位置調整の両方が可能になる。目的とする光学系の構成、光学系周囲の空間的な制限に合せ、適切な2方向を選択すればよい。
【0069】
実施の形態8.
実施の形態1~実施の形態7においては、反射型光学素子を使用し、収差の発生を効果的に抑制しながらビーム径を可変にするこができる反射型ビーム径可変光学系の構成について説明した。実施の形態8からは、反射型ビーム径可変光学系の具体的な実用事例として、レーザ加工機でのレーザ加工に使用するレーザ加工ヘッドの構成について記載する。
【0070】
図11は、実施の形態8に係るレーザ加工ヘッドの構成を示す模式図である。実施の形態8のレーザ加工ヘッドは、図7で示した実施の形態4と同一構成の反射型ビーム径可変光学系を搭載している。平面ミラーからなる第1の折り曲げミラー5へ+z方向に入射する予め平行化された平行光である光学系への入射光14は、第1の折り曲げミラー5、第1の軸外し放物面ミラー20、第2の軸外し放物面ミラー30、第2の折り曲げミラー6より構成される反射型ビーム径可変光学系を通過し+z方向へ平行光として出射する。
【0071】
反射型ビーム径可変光学系から+z方向へ出射した平行光である出射光16は、平面ミラーからなる第3の折り曲げミラー9へ入射し、光軸方向を-x方向へ90°折り曲げ、集光ミラー100へ入射する。集光ミラー100は、-x方向に入射する入射光の光軸方向を+z方向へ90°折り曲げるとともに、+z方向に対して焦点距離f3の集光性能を備えた第1の非球面ミラーである。なお、実施の形態8のレーザ加工ヘッドでは、集光ミラー100には主軸焦点距離がf3/2で、反射焦点距離がf3の90°軸外し放物面ミラーを使用している。集光ミラー100で反射された照射光18は、集光ミラー100から焦点距離f3離れた集光点102に向かい集光される。集光点102近傍に被加工材料を設置すれば、切断、穴あけ、溶接等のレーザ加工を行うことができる。
【0072】
なお、第3の折り曲げミラー9および集光ミラー100は、z方向に移動自在な第5の可動基台110上に固定されている。また、矢印111で示すz方向に移動自在な第5の可動基台110の可動機構は、固定基台8上に設けられており、第5の可動基台110は、固定基台8に対し相対的にz方向へ平行移動する。
【0073】
ビーム直径d1の平行化された平行光である光学系への入射光14は、第1の折り曲げミラー5、第1の軸外し放物面ミラー20、第2の軸外し放物面ミラー30、および第2の折り曲げミラー6から構成される反射型ビーム径可変光学系によって、ビーム直径d2の平行光である光学系からの出射光16へ変換される。ここで、第2の折り曲げミラー6が固定された第2の可動基台70は、反射型ビーム径可変光学系の倍率、すなわち可動基台40のz方向平行移動量に依らず、光学系からの出射光の光軸17が常に一定の位置となるようz方向への平行移動量が調整される。従って、光学系からの出射光16の主光線は、常に集光ミラー100上の一定の位置となる集光ミラー100への入射点101に入射し、照射光18の光軸19も常に一定の位置、方向が維持される。
【0074】
なお、集光点102における集光ビーム直径d3は、集光ミラー100へ入射する入射光のビーム直径d2に反比例する。すなわち、入射光のビーム直径d2が大きくなれば集光ビーム直径d3が減少し、ビーム直径d2が小さくなれば集光ビーム直径d3は増加する。このため、反射型ビーム径可変光学系によって出射光12のビーム直径d2を変化させることにより、集光ビーム直径d3を用途に応じ適切な値へ調整することが可能になる。
【0075】
また、第3の折り曲げミラー9および集光ミラー100が固定された第5の可動基台110は矢印111で示すz方向に移動自在であり、第5の可動基台110をz方向へ平行移動することにより、集光点102の位置もz方向に対し自在に調整することが可能になる。
【0076】
一般にレーザ加工に使用するレーザ光の集光ビーム直径d3が変化した場合、被加工材料に対する最適な集光点の位置も変化する。図12は、軟鋼切断時の切断可能な集光点位置の範囲を示す加工裕度表を示す図である。図12では、板厚9mmの軟鋼切断時の集光ビーム直径に対し切断可能(加工良好)な集光点位置の範囲を実験により求めた加工裕度表を示している。図12中、集光点位置は、被加工材料表面から集光点までの距離を示している。図12では、白地以外のグレーの箇所が、〇の加工良好を示している。図12の加工裕度表からも明らかなように、集光ビーム直径が大きくなるほど、最適な集光点位置は、非加工材料から離れる方向へ変化する。
【0077】
実施の形態8に示すように、第3の折り曲げミラー9および集光ミラー100が固定された第5の可動基台110を設け、第5の可動基台110を集光ミラー100によりレーザ光が集光されるz方向に対し移動自在な構成とし、反射型ビーム径可変光学系の倍率と連動して集光点102を最適な位置へ調整すれば、常に安定かつ良好な加工を維持することができるという効果が得られる。
【0078】
なお、第2の軸外し放物面ミラー30を出射する出射光12は平行化された平行光であり、第2の可動基台70によって、反射型ビーム径可変光学系の倍率に依らず、光学系からの出射光16の主光線が常に集光ミラー100の一定の入射点101へ入射するよう補償されるため、第5の可動基台110の平行移動にともなう第2の軸外し放物面ミラー30から集光点102までの光路長の変化がビーム特性へ与える影響を、最小限に抑えることができる。
【0079】
これまでの反射型のビーム径可変光学系は、特定の倍率に対しては収差の抑制が可能であったものの、倍率変更にともない収差の発生が顕著になっていたため、レーザ加工ヘッドにおいて、反射型光学系とビーム径可変を両立することは困難であった。実施の形態8に示すレーザ加工ヘッドの構成とすれば、収差の発生を効果的に抑制しながら、全反射型と集光ビーム径可変を両立するレーザ加工ヘッドを提供することができる。特に実施の形態8においては、集光ミラー100にも90°軸外し放物面ミラーを使用しているため、非加工物へ照射する照射光18についても収差の発生を効果的に抑制することができる。
【0080】
また、COレーザに代表される中赤外から遠赤外の波長域、ならびに波長200nm以下の深紫外から極端紫外の波長域では、レーザ光の吸収率が低い透明な硝材に乏しく、レンズ等透過型光学素子で構成されたレーザ加工ヘッドを使用した場合、透過型光学素子でのレーザ光吸収にともなう熱レンズ、熱歪の発生により、顕著な焦点シフトが発生するとともに、ビーム品質も著しく劣化し、必要となる加工性能を維持することが困難になるという課題があった。
【0081】
一方、実施の形態8に示すような反射型光学素子で構成されるレーザ加工ヘッドを使用すれば、レーザ光の吸収が高い硝材を反射型光学素子として使用しても、レーザ光吸収に伴い光学素子内部で発生する熱レンズの影響を効果的に抑制し、焦点シフトを抑えながら高い加工性能を安定に維持することができるという格別な効果がある。
【0082】
また、異物付着等により、レーザ加工ヘッドを構成する光学素子の表面へ微小な焼け付き(損傷)が発生した場合であっても、反射型光学素子であるため、レーザ光吸収により光学素子内部で発生する局所的な熱レンズの影響を効果的に抑制し、レンズ等透過型光学素子を使用するレーザ加工ヘッドに比べ、加工安定性を維持しながら、光学素子の損傷耐性、すなわち耐光強度を大幅に増加させ、レーザ加工ヘッドの信頼性を著しく向上させることができる。さらに、レーザ加工ヘッドで使用可能なレーザ出力も増加するため、レーザ加工自体の生産性を大幅に改善できるという効果もある。
【0083】
更に、実施の形態8のレーザ加工ヘッドによれば、反射型光学素子を使用しながらコマ収差および非点収差の発生を効果的に抑制し、集光ビーム径の変更も可能になるので、用途に応じて適切な集光ビーム直径の選択が可能になり、レーザ加工ヘッドの適用分野を効果的に拡大することができる。
【0084】
例えば、切断用途を例にとれば、非加工材料の種類、板厚に応じて最適な集光ビーム直径、集光点の位置は変化する。一般的に板厚が薄い材料の切断では、集光ビーム直径を小さくした方が切断速度の高速化が可能になる。一方、板厚が厚い材料の切断では、溶融物除去の観点から集光ビーム径を大きくした方が切断品質が高い。また、アシストガスに酸素を使用する軟鋼の切断では、一般に集光点の位置を材料外部に設定するのに対し、アシストガスに窒素を使用するステンレス鋼の切断では、集光点を材料内部に設定する。
【0085】
実施の形態8のレーザ加工ヘッドは、第3の折り曲げミラー9および集光ミラー100をz方向に移動自在な第5の可動基台110上に設置しているので、第5の可動基台110をz方向へ平行移動することにより、用途あるいは被加工材料の形状に応じて、集光点102を適切な位置に設定することができる。
【0086】
また、実施の形態8のレーザ加工ヘッドは、主要な光学系部分を反射型光学素子であるミラーで構成しているため、不透明な金属ミラーの適用が可能になる。金属ミラーを使用する場合、ミラー内部に冷却水管を形成し、ミラーの直接水冷が容易になるため、ミラーの冷却性能を効果的に改善することにより、耐光強度の向上が可能になるとともに、ミラーの硝材に石英等誘電体材料を使用する場合に比べ、ミラーの製造コストを安価にできるという効果もある。
【0087】
なお、実施の形態8では、集光ミラー100に90°軸外し放物面ミラーを使用した構成を示したが、集光ミラー100の種類はこれに限るものではなく、例えば光軸を90°折り曲げるように設計した焦点距離f3を備えたトロイダルミラーを使用してもよい。トロイダルミラーは軸外し放物面ミラーと比較した場合、コマ収差の発生が不可避になるものの、製造が容易となり廉価に入手できることに加え、集光ミラー100を設置する際の調整裕度が緩和されるといったメリットがある。
【0088】
また、図11には図示していないが、加工点で発生する蒸散物(ヒューム)または溶融飛散物(スパッタ)によるレーザ加工ヘッド内部の光学素子の汚損を防止するため、集光ミラー100と集光点102との間に保護ガラスを設置してもよいことは言うまでもない。また、レーザ加工のアシストガスまたは被加工物の酸化を防止するシールドガスを供給するため、集光ミラー100と集光点102との間にガスノズルを設置してもよい。
【0089】
実施の形態9.
図13は、実施の形態9に係るレーザ加工ヘッドの構成を示す模式図である。実施の形態9のレーザ加工ヘッドでは、コア直径d0の光ファイバ130を使用してレーザ光源からレーザ加工ヘッドまでレーザ光を伝送している。なお、図13には図示していないが、実施の形態9のレーザ加工ヘッドでは、レーザ光源に波長1070nmのファイバレーザを使用している。
【0090】
光ファイバ130の端部には光ファイバコネクター132が装着されており、光ファイバコネクター132は固定基台8上に固定される。光ファイバ130から出射したレーザ光である光学系への入射光14は、ビーム径を拡大しながら+z方向へ進行し、平行化ミラー120へ入射する。平行化ミラー120は、固定基台8上に固定されており、+z方向に入射する入射光14の光軸方向を-x方向へ90°折り曲げるとともに、-z方向に対して焦点距離f0の集光性能を備えた第2の非球面ミラーである。なお、実施の形態9のレーザ加工ヘッドでは、平行化ミラー120に主軸焦点距離f0/2、反射焦点距離f0の90°軸外し放物面ミラーを使用している。
【0091】
光ファイバコネクター132の出射端面131は、平行化ミラー120の焦点121と一致するよう固定されており、平行化ミラー120で反射されたレーザ光である入射光10は、ビーム直径がd1で一定になるよう平行化(コリメート)され、光軸方向を第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と同一方向である-x方向へ90°折り曲げ、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する。第1の軸外し放物面ミラー20から集光ミラー100までの光学系構成については、実施の形態8のレーザ加工ヘッドと同様である。
【0092】
また、平行化ミラー120により平行化され平行光となったレーザ光(入射光10)の光軸(入射光の光軸11)の方向は、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向に一致しているため、焦点を一致させて配置した第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30は、アフォーカル光学系の条件を満たす。従って、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30が固定された可動基台40を矢印41で示すz方向に平行移動することにより、アフォーカル光学系の倍率を変更し、第2の軸外し放物面ミラー30を出射する出射光12のビーム直径d2を可変にすることができる。
【0093】
第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30がアフォーカル光学系を構成しており、光ファイバ130の出射端面131は平行化ミラーの焦点121の位置に固定されていることから、光ファイバ130の出射端面131と集光ミラー100の焦点と一致する集光点102は光学的に共役となり、光ファイバ130のコア直径d0と集光ビーム直径d3との関係は、次式(3)のようになる。
d3=(f3/f0)×(f1/f2)×d0 ・・・(3)
【0094】
第1の軸外し放物面ミラー20の焦点距離f1および第2の軸外し放物面ミラー30の焦点距離f2は、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30が固定された可動基台40を平行移動することにより変化するため、集光ビーム直径d3を可変とすることができる。
【0095】
実施の形態9に示すレーザ加工ヘッドを使用しても、実施の形態8で示したレーザ加工ヘッドと同様な効果が得られることは言うまでもなく、光ファイバ130を使用してレーザ光源からレーザ加工ヘッドまでレーザ光を伝送する構成に対しても、光ファイバ130を出射する発散光を平行化し平行光にするとともに、平行光となったレーザ光(入射光10)の光軸(入射光の光軸11)を第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と平行に第1の軸外し放物面ミラー20へ入射させることが可能になるので、主要光学系に反射型光学素子を使用した低収差かつ集光ビーム径可変のレーザ加工ヘッドを得ることができる。
【0096】
更に、実施の形態9のレーザ加工ヘッドにおいては、平行化ミラー120にも90°軸外し放物面ミラーを使用し、光ファイバ130の出射端面131を平行化ミラー120の焦点位置に設置しているため、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射する入射光10についても収差の発生を効果的に抑制することができる。
【0097】
なお、実施の形態9においては、レーザ光源にファイバレーザを使用する構成について説明したが、レーザ光源の種類はこれに限るものではない。固体レーザ、半導体レーザ等光ファイバで伝送可能なレーザ光源であれば、同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0098】
また、図示はしていないが、光ファイバコネクター132と平行化ミラー120との間に保護ガラスを設置してもよい。光ファイバコネクター132と平行化ミラー120との間に保護ガラスを設置すれば、光ファイバ130の脱着時に発生するレーザ加工ヘッド内部への粉塵の浸入を効果的に防止することができる。
【0099】
実施の形態10.
図14は、実施の形態10に係るレーザ加工ヘッドの構成を示す模式図である。実施の形態10のレーザ加工ヘッドにおいても、実施の形態9と同様、コア直径d0の光ファイバ130を使用してレーザ光源からレーザ加工ヘッドまでレーザ光を伝送する構成を採用している。また、光ファイバ130を出射したレーザ光である入射光14を、平行化ミラー120を使用して平行光にするとともに、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向へ光軸を折り曲げる構成についても実施の形態9と同様である。
【0100】
実施の形態10のレーザ加工ヘッドでは、実施の形態7において示した反射型ビーム径可変光学系を採用している。第1の軸外し放物面ミラー20の焦点23と第2の軸外し放物面ミラー30の焦点33とを一致させるとともに、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向をx方向に配置し、第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32の方向をz方向に配置している。また、第1の軸外し放物面ミラー20と第2の軸外し放物面ミラー30とは、焦点を一致させ、回転主軸が90°の角度をなした状態で第4の可動基台60上に固定されている。なお、実施の形態10の第4の可動基台60は固定基台8上に設けられており、矢印61で示すz方向と矢印62で示すx方向の2方向に対し、移動自在な機構を備えている。
【0101】
実施の形態10のレーザ加工ヘッドについても、第1の軸外し放物面ミラー20と第2の軸外し放物面ミラー30とを焦点を一致させて配置するとともに、平行化された平行光である入射光10の光軸11を第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向に一致させて第1の軸外し放物面ミラー20へ入射させているので、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30はアフォーカル光学系を構成している。
【0102】
実施の形態10のレーザ加工ヘッドにおいては、第4の可動基台60を矢印61に示すz方向へ平行移動させることにより、第1の軸外し放物面ミラー20へ入射光10が入射する位置を変化させ、アフォーカル光学系の倍率を可変としている。また、第4の可動基台60を矢印61に示すz方向へ平行移動させアフォーカル光学系の倍率を変化させた際には、第4の可動基台60を矢印62に示すx方向へ平行移動させることにより、第2の軸外し放物面ミラー30を出射する出射光12の光軸13が一定の位置に維持されるよう調整する。
【0103】
なお、矢印62で示す第4の可動基台60の平行移動方向は、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22の方向に一致しているため、第4の可動基台60を矢印62に示すx方向へ平行移動させる場合には、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率を一定に維持しながら、出射光12の光軸13の位置調整が可能である。
【0104】
第3の折り曲げミラー9および集光ミラー100は、第2の軸外し放物面ミラー30を出射する出射光12の光軸13と同一方向である矢印111で示すz方向に移動自在な第5の可動基台110上に固定されており、また集光ミラー100による集光方向も、第2の軸外し放物面ミラー30を出射する出射光12の光軸13の方向と一致しているため、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率が変化した場合であっても、照射光18の光軸19を一定に維持しながら、集光点102を最適な位置、高さに調整することが可能である。
【0105】
実施の形態10に示すレーザ加工ヘッドの構成としても、実施の形態8~実施の形態9と同様な効果が得られるばかりでなく、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率が変化した際に発生する光軸シフトの補正に、実施の形態8、実施の形態9のレーザ加工ヘッドで使用していた第2の折り曲げミラー6、第2の可動基台70が不要になるため、レーザ加工ヘッドの構成が簡易になり、レーザ加工ヘッドの製造コストの低減が可能になることに加え、駆動部が減ることからレーザ加工ヘッドのロバスト性、信頼性を向上させることができるという効果もある。
【0106】
なお、実施の形態10においては、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32を90°の角度をなして配置する構成を示したが、第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32が成す角度はこれに限るものではない。第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とを一致させることなく配置すれば、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30が固定された第4の可動基台60に、少なくとも2つ以上の方向へ平行移動可能な可動機構を設ければ、第1の軸外し放物面ミラー20および第2の軸外し放物面ミラー30で構成されるアフォーカル光学系の倍率を変化させながら第2の軸外し放物面ミラー30から出射する出射光12の光軸13の位置を一定に維持することが原理的に可能である。第1の軸外し放物面ミラー20の回転主軸22と第2の軸外し放物面ミラー30の回転主軸32とが成す角度は、光学系構成、空間的な制約等を勘案し、最適な値を選定すればよい。
【0107】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0108】
5 第1の折り曲げミラー、6 第2の折り曲げミラー、8 固定基台、9 第3の折り曲げミラー、10,14 入射光、11,13,15,17,19 光軸、12,16 出射光、18 照射光、20 第1の軸外し放物面ミラー、21,31,101 入射点、22,32 回転主軸、23,33,121 焦点、30 第2の軸外し放物面ミラー、40 可動基台(第1の可動基台)、60 第4の可動基台、70 第2の可動基台、80 第3の可動基台、100 集光ミラー、102 集光点、110 第5の可動基台、120 平行化ミラー、130 光ファイバ、131 出射端面、132 光ファイバコネクター。
【要約】
反射型ビーム径可変光学系は、第1の軸外し放物面ミラー(20)の回転主軸(22)の方向と同じ方向に平行光である入射光(10)が入射される第1の軸外し放物面ミラー(20)と、第1の軸外し放物面ミラー(20)の焦点(23)に第2の軸外し放物面ミラー(30)の焦点(33)が一致するように配置される第2の軸外し放物面ミラー(30)と、第1の軸外し放物面ミラー(20)および第2の軸外し放物面ミラー(30)を回転主軸(22)の方向と異なる方向へ平行移動する可動基台(40)と、を備え、第2の軸外し放物面ミラー(30)から出射される出射光(12)のビーム径を可変にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14