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特許7399379帯駆動装置、転写装置、および画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】帯駆動装置、転写装置、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20231211BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 552
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019197114
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021071551
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青 諭志
(72)【発明者】
【氏名】田中 大輔
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-060347(JP,A)
【文献】特開2006-078612(JP,A)
【文献】特開2001-192107(JP,A)
【文献】特開2015-172636(JP,A)
【文献】特開2003-267580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
13/02
13/14-13/16
15/00
15/02
15/14-15/16
21/16-21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の帯部材と、
前記帯部材を張架するとともに、該帯部材の幅方向に延びる軸を回転軸として回転する回転部材と、
記帯部材に接触し該帯部材の該幅方向への偏倚を抑制する回転接触部材とを備え、
前記回転接触部材は、前記回転部材の回転軸方向に平行に延びる前記帯部材の第1部分と、前記第1部分よりも該帯部材の該幅方向外側であり、前記回転部材の回転軸に向かって曲がる前記帯部材の第2部分と、に跨る位置に配置され、
少なくとも、前記帯部材の前記第1部分に接触して該帯部材を前記回転部材に押し当てる第1接触点と、該第1接触点よりも前記幅方向端部側において該第1接触点よりも前記回転軸との間に大きな角度をもって該帯部材の前記第2部分に接触する第2接触点とを有することを特徴とする帯駆動装置。
【請求項2】
前記回転接触部材が、該回転接触部材の回転軸の周りに回転する、該回転軸の方向に互いに異なる径の部分が存在する回転接触部材であることを特徴とする請求項1に記載の帯駆動装置。
【請求項3】
前記回転接触部材が、該回転接触部材の回転軸の方向の中央の径が両端部の径よりも小径の回転接触部材であることを特徴とする請求項2に記載の帯駆動装置。
【請求項4】
前記回転接触部材が、該回転接触部材の回転軸の方向の中央が窄まる曲面からなる外周面を有する回転接触部材であることを特徴とする請求項3に記載の帯駆動装置。
【請求項5】
前記回転接触部材の回転軸を支える軸受が、前記帯部材への接触を避けた形状を有することを特徴とする請求項2から4のうちのいずれか1項に記載の帯駆動装置。
【請求項6】
記回転部材が、前記帯部材を駆動して該帯部材を循環移動させる回転駆動部材であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の帯駆動装置。
【請求項7】
前記回転接触部材が、前記帯部材の循環移動方向に関し、該帯部材が前記回転部材に接する領域のうちの最下流位置よりも最上流位置に近接した位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の帯駆動部材。
【請求項8】
記回転部材の該帯部材に接触する部分の前記幅方向の長さよりも、該回転部材と共同して前記帯部材の張架を受け持つ第2の回転部材の該帯部材に接触する部分の幅方向の長さの方が長いことを特徴とする請求項1から7のうちのいずれか1項に記載の帯駆動部材。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか1項に記載の帯駆動装置を備え、
前記帯部材が、外周面が記録材に接触し、電圧の印加を受けることで当該記録材上に画像を転写する帯部材であることを特徴とする転写装置。
【請求項10】
記録材を搬送する搬送部と、
トナー像を形成する像形成部と、
前記搬送部によって搬送されてきた記録材上に前記像形成部によって形成されたトナー像を転写する請求項9に記載の転写装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯駆動装置、転写装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の回転部材に張架された環状の帯部材を駆動する装置において、その帯部材が幅方向、すなわち回転部材の回転軸方向に横ずれすることがある。この横ずれを生じさせる力は、主に、複数の回転部材の回転軸が平行ではないことに起因している。この横ずれを抑制するため、帯部材の幅方向両端部を、回転軸に対し斜めの方向に押さえるガイド部材と配置することが提案されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-267580号公報
【文献】特開2005-257863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上掲の特許文献1,2に提案されたガイド部材を配置すると、ガイド部材を配置しないときと比べ、帯部材の横ずれを抑えることができる。
【0005】
しかしながら、上記のガイド部材を配置しても、複数の回転部材の回転軸が平行からさらに大きくずれて横ずれの力が強まると、横ずれを抑えきれないおそれがある。一方、複数の回転部材の回転軸を高精度に平行に配置するのは、コストの上昇を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のガイド部材を配置する場合と比べ、横ずれをさらに強く抑制する帯駆動装置、転写装置、および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
環状の帯部材と、
前記帯部材を張架するとともに、該帯部材の幅方向に延びる軸を回転軸として回転する回転部材と、
記帯部材に接触し該帯部材の該幅方向への偏倚を抑制する回転接触部材とを備え、
前記回転接触部材は、前記回転部材の回転軸方向に平行に延びる前記帯部材の第1部分と、前記第1部分よりも該帯部材の該幅方向外側であり、前記回転部材の回転軸に向かって曲がる前記帯部材の第2部分と、に跨る位置に配置され、
少なくとも、前記帯部材の前記第1部分に接触して該帯部材を前記回転部材に押し当てる第1接触点と、該第1接触点よりも前記幅方向端部側において該第1接触点よりも前記回転軸との間に大きな角度をもって該帯部材の前記第2部分に接触する第2接触点とを有することを特徴とする帯駆動装置である。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記回転接触部材が、該回転接触部材の回転軸の周りに回転する、該回転軸の方向に互いに異なる径の部分が存在する回転接触部材であることを特徴とする請求項1に記載の帯駆動装置である。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記回転接触部材が、該回転接触部材の回転軸の方向の中央の径が両端部の径よりも小径の回転接触部材であることを特徴とする請求項2に記載の帯駆動装置である。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記回転接触部材が、該回転接触部材の回転軸の方向の中央が窄まる曲面からなる外周面を有する回転接触部材であることを特徴とする請求項3に記載の帯駆動装置である。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記回転接触部材の回転軸を支える軸受が、前記帯部材への接触を避けた形状を有することを特徴とする請求項2から4のうちのいずれか1項に記載の帯駆動装置である。
【0012】
請求項6に係る発明は、
記回転部材が、前記帯部材を駆動して該帯部材を循環移動させる回転駆動部材であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の帯駆動装置である。
【0013】
請求項7に係る発明は、
前記回転接触部材が、前記帯部材の循環移動方向に関し、該帯部材が前記回転部材に接する領域のうちの最下流位置よりも最上流位置に近接した位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の帯駆動部材である。
【0014】
請求項8に係る発明は、
記回転部材の該帯部材に接触する部分の前記幅方向の長さよりも、該回転部材と共同して前記帯部材の張架を受け持つ第2の回転部材の該帯部材に接触する部分の幅方向の長さの方が長いことを特徴とする請求項1から7のうちのいずれか1項に記載の帯駆動部材である。
【0016】
請求項に係る発明は、
請求項1から8のうちのいずれか1項に記載の帯駆動装置を備え、
前記帯部材が、外周面が記録材に接触し、電圧の印加を受けることで当該記録材上に画像を転写する帯部材であることを特徴とする転写装置である。
【0018】
請求項10に係る発明は、
記録材を搬送する搬送部と、
トナー像を形成する像形成部と、
前記搬送部によって搬送されてきた記録材上に前記像形成部によって形成されたトナー像を転写する請求項9に記載の転写装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の帯駆動装置、請求項9の転写装置、および請求項10の画像形成装置によれば、上記のガイド部材を配置する場合と比べ、すなわち、例えば平板あるいは単純な円柱形のコロなど、帯部材に接する全ての接触点に関する、回転軸との間の角度が全て同一な接触部材を配置する場合と比べ、横ずれがさらに強く抑制される。
【0020】
請求項1乃至請求項3の帯駆動装置によれば、帯部材と接触部材との間の摩擦が低減される。
【0021】
請求項4の帯駆動装置によれば、連続的な多数の接触点が得られる。
【0022】
請求項5の帯駆動装置によれば、帯部材に傷がつくことが抑えられる。
【0023】
請求項6の帯駆動装置によれば、第1の回転部材が従動の回転部材である場合と比べ、横ずれが強く抑制される。
【0024】
請求項7の帯駆動装置によれば、接触部材が最上流位置よりも最下流位置に近い位置に配置されている場合と比べ、横ずれが強く抑制される。
【0025】
請求項8の帯駆動装置によれば、第2の回転部材の長さが、回転接触部材が配置された側の回転部材と同じかそれよりも短い場合と比べ、横ずれが強く抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図2】二次転写器の構成を模式的に示す側面図である。
図3】二次転写器の構成を模式的に示す上面図である。
図4】接触部材の比較例を示した図(A)と、本実施形態の接触部材の原理説明図(B)である。
図5】接触部材の第1例(A)と第2例(B)を示した図である。
図6】接触部材の第3例(A)と第4例(B)を示した図である。
図7】接触部材の第5例を示した図である。
図8】接触部材の第6例(A)および第7例(B)を示した図である。
図9】接触部材の第8例(C)および第9例(D)を示した図である。
図10】コロ形状の接触部材とその接触部材を支持する支持部材の模式図である。
図11】実験データの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0029】
図1に示す画像形成装置1はいわゆるタンデム方式のカラープリンタであり、この画像形成装置1では記録材として用紙Pが用いられる。なお、記録材としては、用紙P以外にプラスチック紙や封筒も採用され得るが、以下の説明では用紙Pを記録材の代表として用いて説明する。
【0030】
画像形成装置1には、例えばY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色に対応した4つの画像エンジン10Y,10M,10C,10Kが備えられている。また、本実施形態では、各画像エンジン10Y,……,10Kは、いわゆる電子写真方式でトナー画像を形成する。各画像エンジン10Y,……,10Kでは、帯電、露光、現像の各工程を順次に経ることで、各色のトナー画像が各感光体ドラム11Y,11M,11C,11K上に形成される。
【0031】
本実施形態の画像形成装置1では間接転写方式が採用されていて、中間転写ベルト30が備えられている。画像形成装置1には、二次転写器50、定着装置60、および用紙搬送部80も備えられている。
【0032】
中間転写ベルト30は、ベルト支持ロール31~35に架け渡された無端のベルトであり、画像エンジン10Y,10M,10C,10K、および二次転写器50を経由して矢印Aで示す反時計回りに循環移動する。
【0033】
各画像エンジン10Y,……,10Kには、中間転写ベルト30を間に挟んで各感光体ドラム11Y,……,11Kに対向した各位置に一次転写ロール15Y,15M,15C,15Kが配備されている。一次転写ロール15Y,……,15Kは、電圧が印加されることで各感光体ドラム11Y,……,11K上のトナー像を中間転写ベルト30に静電吸引させる。各画像エンジン10Y,……,10Kで形成された各色のトナー画像は、各一次転写ロール15Y,……,15Kによって中間転写ベルト30上に、順次に重ねて転写される。このような転写の結果として中間転写ベルト30上にカラー画像が形成される。中間転写ベルト30は、このカラー画像を保持して移動し、二次転写器50へとカラー画像を搬送する。
【0034】
二次転写器50は、ベルト支持ロール31~35の一つであるバックアップロール34との間に中間転写ベルト30を挟んで位置し、中間転写ベルト30との間に用紙Pを挟んでカラー画像を転写する。
【0035】
用紙Pは、画像形成装置1の下部に設けられた用紙トレイTに積み重なった状態で格納されている。用紙トレイT内の用紙Pは、用紙搬送部80に備えられた繰り出しロール81および捌きロール82によって用紙トレイTから1枚ずつ取り出され、搬送ロール83によって搬送経路Rに沿って矢印Bの向きに搬送される。用紙搬送部80のレジロール84は、中間転写ベルト30によるカラー画像の搬送タイミングに合わせて用紙Pを二次転写器50へと送り込む。
【0036】
二次転写器50は、後で詳述するように、電圧が印加されることで中間転写ベルト30上のカラー画像を用紙Pに転写させる。二次転写器50は、本発明の帯駆動装置の第1実施形態であるとともに、本発明の転写装置の第1実施形態でもある。二次転写器50によってカラー画像が転写された用紙Pは、二次転写器50および用紙搬送部80の搬送ロール83によって定着装置60へと搬送される。
【0037】
画像エンジン10Y,10M,10C,10Kは、本発明にいう像形成部の一例に相当する。また、用紙搬送部80が、本発明にいう搬送部の一例に相当する。
【0038】
定着装置60は、用紙Pに対して加熱および加圧を行うことでカラー画像を用紙Pに定着させる。定着装置60によってカラー画像が定着された用紙Pは、用紙搬送部80が備える送出ロール86によって画像形成装置1の外部へと送り出される。
【0039】
以下、二次転写器50について更に詳細に説明する。
【0040】
図2および図3は、二次転写器の構成を模式的に示す図である。図2には側面図、図3には上面図が示されている。また、図3では、説明の便宜上、二次転写器の内部が透視された状態で構成が示されている。
【0041】
二次転写器50は、転写ロール51と、剥離ロール52と、それらのロールに架け回された無端状の転写ベルト53を備えている。二次転写器50は転写器支持フレーム501に各要素が組み込まれてユニット化されている。転写ロール51および剥離ロール52は回転軸511,521を有し、その回転軸511,521は転写器支持フレーム501によって回転可能に支持されている。転写ロール51と剥離ロール52が、本発明にいう複数の回転部材の一例に相当し、転写ベルト53が、本発明にいう帯部材の一例に相当する。
【0042】
転写ロール51は、転写モータ56によって駆動されて矢印Cで示す右回りに回転し、転写ベルト53を駆動する。転写ベルト53は、適度な伸縮性を有するゴムベルトであり、転写ロール53による駆動力を受けて、図2に矢印Dで示す右回りに循環移動する。
【0043】
転写ロール51は、転写ベルト53の内側から転写ベルト53を中間転写ベルト30に押し当てている。互いに押し当てられた転写ベルト53と中間転写ベルト30との間に用紙Pが送られてくると、用紙Pは、転写ベルト53および中間転写ベルト30に挟まれて循環移動方向に搬送される。また、転写ロール51は不図示の電源に接続されていて、その電源から転写バイアスが転写ロール51に印加される。その転写バイアスの作用により、用紙Pが転写ベルト53と中間転写ベルト30との間を通過する間に、中間転写ベルト30上のカラー画像が用紙P上に転写される。
【0044】
剥離ロール52は、転写ベルト53の移動に追従して回転する、転写ロール51と比べ径の小さな従動ロールである。この剥離ロール52で転写ベルト53の走行方向を急激に曲げることで、その転写ベルト53の上に載った状態にある用紙Pの先端を転写ベルト53から剥離させる。
【0045】
ここで、転写ロール51の、回転軸511を除く転写ベルト53に接する部分の長さL1は、転写ベルト53の幅Wよりも短く、転写ベルトの両端部は、転写ロール51からはみ出して転写ロール51とは非接触となっている。そして、転写ロール51の両端部の各々には、転写ベルト53を転写ロール51に押し当てるように転写ベルト53に接触する接触部材54が配置されている。これらの接触部材54は、転写ベルト53の幅方向(転写ロール51の回転軸511の延びる方向)への、転写ベルト53の横ずれを抑える役割を有する。
【0046】
一方、剥離ロール52の、回転軸521を除く転写ベルト53に接する部分の長さL2は、転写ロール51の長さL1よりも長く、本実施形態では転写ベルトの幅Wと同寸法となっている。
【0047】
接触部材54の詳細、および、転写ロール51と剥離ロール52との長さが違う点に関する作用については、後述する。
【0048】
二次転写器50は、クリーニングブレード55を備えていて、そのクリーニングブレード55の縁が転写ベルト53の外周面に接触している。クリーニングブレード55は転写器支持フレーム501に対して位置が固定されており、転写ベルト53の移動に伴ってクリーニングブレード55の縁が転写ベルト53の外周面を擦る。転写ベルト53に付着したトナーやその他の汚れは、クリーニングブレード55に擦られて転写ベルト53上から除去される。
【0049】
なお、図3では、クリーニングブレード55および転写モータ56については図示を省略している。
【0050】
図4は、接触部材の比較例を示した図(A)と、本実施形態の接触部材の原理説明図(B)である。この図4では、転写ベルト53の幅方向の一方の端部のみを示しているが、もう一方の端部についても同様である。
【0051】
転写ロール51の回転軸511と剥離ロール52の回転軸521とが平行からずれていると、転写ベルト53を、その幅方向(転写ロール51の回転軸511の延びる方向)に移動させる向きの横ずれの力が生じる。幅方向の左右いずれの向きに移動しようとするかは、平行のずれの向きによって異なる。ここでは、この図4に示す端部側に移動する向き(矢印Dの向き)の力が生じているものとする。
【0052】
図4(A)には、比較例としての平板状の接触部材59が示されている。この比較例の接触部材59は、回転軸591の周りに自由回転する、回転軸591の方向に均一の径を有するコロであってもよい。
【0053】
この図4(A)に示すように、接触部材59で、転写ベルト53を、転写ロール51の回転軸511に対し斜めに押さえると、矢印Dの向きに進もうとする転写ベルト53を矢印Eの向きに押し戻す力が働く。この押し戻す向きの力が大きいほど、矢印Dの向きに移動しようとする大きな力に対抗することができる。矢印Dの向きに移動しようとする大きな力に対抗することができるということは、すなわち、転写ロール51と剥離ロール52の平行度が低くてもよいことを意味し、部材の精度や組立の公差を下げ、低コスト化を図ることができることを意味している。
【0054】
この図4(A)に示した比較例の場合、平板状の接触部材59、あるいは均一な径のコロとしての接触部材59で押し戻そうとしている。この形状の接触部材59を用いても、接触部材59を設置しない場合と比べると、大きな力で押し戻すことができ、その分、部材の精度や組立の公差を緩めることができる。
【0055】
ただし、転写ベルト53の、矢印Dの向きに進もうとする力が大きいと、破線で示すように転写ベルト53が転写ロール51から浮き上がるように膨らみ、押し戻す向きの力が削がれることになる。矢印Dの向きに進もうとするさらに大きな力まで対抗することのできる接触部材が望ましい。
【0056】
図4(B)には、接触部材54の形状は図示されていない。接触部材54の具体的な形状については、図5以降に図示する。
【0057】
この図4(B)に示す接触部材54は、転写ベルト53に接触してその転写ベルト53を転写ロール51に押し当てる第1接触点d1と、その第1接触点d1よりも幅方向端部側において、その第1接触点d1よりも回転軸511との間に大きな角度α2をもって転写ベルト53に接触する第2接触点d2とを有する。典型的な一例として、第1接触点d1では、回転軸511との間の角度α1=0°、すなわち、回転軸511と平行な向きに転写ベルト53を押さえる。また、第2接触点d2では、回転軸511との間の角度α2=45°の向きに転写ベルト53を押さえる。こうすることで、図4(A)に点線で示すような転写ベルト53の膨らみが抑えられ、図4(A)に示した平板状の接触部材59と比べ、矢印Dの向きに進もうとするさらに大きな力まで対抗することができる。なお、第1接触点d1における回転軸511との間の角度α1は、0°でなくてもよく、例えばα1=15°など、第2接触点d2における角度α2よりも小さい角度で転写ベルト53を押してもよい。
【0058】
以下、本実施形態における接触部材の各種具体例について説明する。
【0059】
図5は、接触部材の第1例(A)と第2例(B)を示した図である。
【0060】
図5(A)に示す第1例の接触部材54Aは、平板を折り曲げた形状を有する。そして、この接触部材54Aは、その内向きの第1面541が回転軸511と平行であって、かつ第1面541および第2面542が転写ベルト53に接するように配置されている。転写ベルト53は、この接触部材54Aと摺動しながら循環移動する。
【0061】
ここで、転写ベルト53の幅方向の、接触部材54Aから外れた末端部531は、接触部材54Aにより押し曲げられた向きとは逆向きに、すなわち、回転軸511と平行となる向きに曲がっている。転写ベルト53の幅方向の末端部531がこの向きに曲がることによって、転写ベルト53の、接触部材54Aに押さえられた部分の剛性が増し、矢印Dの向きの移動の力に対しさらに強い力で対抗することができる。図2に示すように、本実施形態では、転写ロールの長さL1よりも長い、転写ベルト53の幅Wとほぼ同じ寸法の長さL2の剥離ロール52が備えられている。このため、転写ロール51と同じ長さの剥離ロール52を備えた場合よりも転写ベルト53の幅方向の端部が剥離ロール52によって引っ張られ、転写ベルト53の末端部531が、接触部材54Aにより押し曲げられた向きとは逆向き、すなわち回転軸511に対し平行に近づく向きに強く曲げられることとなり、転写ベルト53の端部の剛性がさらに増すこととなる。この点については、第2例以下の接触部材の全てについて共通であり、重複説明は省略する。
【0062】
また、図5(B)に示す第2例の接触部材54Bは、湾曲面が形成されるように平板を折り曲げた形状を有する。そして、転写ベルト53の幅方向の最も中央寄りの部分が回転軸511と平行であって、その内向きの面の全面が転写ベルト53に接するように配置されている。図5(A)の第1例と同様に、転写ベルト53は、この接触部材54Aと摺動しながら循環移動する。
【0063】
この第2例の接触部材54Bは、図4(B)を参照して説明した第1接触点d1および第2接触点d2を含む、幅方向の位置が連続的に異なる多数の点で転写ロール53に接触している。これにより、転写ベルト54の、接触部材54Bに接触している部分を、狙い通りの形状に維持することができる。
【0064】
これら第1例および第2例の接触部材54A,54Bのように、本発明にいう接触部材は、転写ベルト53が摺動する部材であってもよい。
【0065】
図6は、接触部材の第3例(A)と第4例(B)を示した図である。
【0066】
図6(A)に示す第3例の接触部材54Cは、大径部543と小径部544との2段の径を有し、回転軸545の周りに自由回転するコロである。そして、この接触部材54Cha,この図6(A)に示す通り、転写ベルト53を、大径部543で転写ロール51の回転軸に対し垂直な向きに押さえ、小径部544で斜め内向きに押さえる姿勢に配備される。
【0067】
この図6(A)に示す第3例の接触部材54Cは、転写ベルト53に接触し転写ベルト54の走行にしたがって自由回転する。このため、図5に示した摺動する接触部材54A,54Bと比べ、転写ベルト54の円滑な走行の妨げとなるおそれが小さい。
【0068】
また、図6(B)に示す第4例の接触部材54Dは、第3例の接触部材54Cと同様、回転軸545の周りに自由回転するコロである。この第4例の接触部材54Dは、回転軸545の方向の一方の端部546aが最大径、他方の端部546bが最小径を有し、両端部546a,546bの間に内向きに凹形状の外面となる向きの曲面が形成されている。
【0069】
そして、この接触部材54Dは、その凹曲面を含む外面で、すなわち、図4(B)を参照して説明した第1接触点d1および第2接触点d2を含む、幅方向の位置が連続的に異なる多数の点で、転写ロール53に接触している。これにより、第2例の接触部材54Bと同様、転写ベルト54の、接触部材54Bに接触している部分を、狙い通りの形状に維持することができる。
【0070】
図7は、接触部材の第5例を示した図である。
【0071】
この図7に示す第5例の接触部材54Eは、大径部543と小径部544とからなり、回転軸545を含む平面で断面したときの断面図上でT字形を有し、回転軸545の周りに自由回転するコロである。そして、この接触部材54Eは、図示のように回転軸545が転写ロール51の回転軸511と平行となる姿勢に設置される。小径部545は、転写ベルト53を回転軸511に対し垂直な向きに押さえ、大径部543は、その側面543aで、転写ベルト53を横向きに押さえている。
【0072】
図8は、接触部材の第6例(A)および第7例(B)を示した図である。
【0073】
また、図9は、接触部材の第8例(C)および第9例(D)を示した図である。
【0074】
これらの図8図9に示す第6例~第9例の接触部材54F,・・,54Jは、回転軸545の方向の中央の径が両端部の径よりも小径の、回転軸545の周りに自由回転するコロである。以下、1つずつ説明する。
【0075】
図8(A)に示す第6例の接触部材54Fは、回転軸545の方向の両端部546a,546bが太径、それらの両端部546a,546bに挟まれた中央部547が細径となっている。そして、この接触部材54Fは、図8(A)に示すように、転写ベルト53を、一方の端部546aで転写ロール51の回転軸に対し垂直な向きに押さえ、もう一方の端部546bで斜め内向きに押さえている。
【0076】
図8(B)に示す第7例の接触部材54Gは、回転軸545の方向の両端部546a,546bが、各端縁548a,548bから中央に向かって円錐形状に径を狭め、それらの両端部546a,546bに挟まれた中央部547は細径の円柱形となっている。この接触部材54Gは、図8(B)に示すように、転写ベルト53を、一方の端部546aで転写ロール51に押し当て、もう一方の端部546bで斜め内向きに押さえている。
【0077】
図9(A)に示す第8例の接触部材54Hは、回転軸545の方向の両端縁546a,546bから中央に向かって円錐形状に径を狭め、中央が最も細い径となっている。この接触部材54Hは、図9(A)に示すように、転写ベルト53を、一方の端縁548a寄りの部分で転写ロール51に押し当て、もう一方の端縁548b寄りの部分で斜め内向きに押さえている。
【0078】
図9(B)に示す第9例の接触部材54Jは、回転軸545の方向の中央が窄まる曲面からなる外周面549を有する。この接触部材54Jは、図9(B)に示すように、転写ベルト53を、その外周面549の、回転軸545の方向の全域にわたって押さえている。
【0079】
これら図5図9に示すように、本実施形態における接触部材54として様々な形状の接触部材を採用することができる。
【0080】
次に、接触部材54として自由回転するコロを採用した場合の、軸受けについて説明する。
【0081】
図10は、コロ形状の接触部材とその接触部材を支持する支持部材の模式図である。ここでは、一例として、図8(D)に示した、中央が窄まる曲面からなる外周面549を有する接触部材54Jを示しているが、他の形状のコロであっても同様である。
【0082】
ここには、接触部材54Jを支持する支持部材57が示されている。この支持部材57は、図2図3に示す転写器支持フレーム501に固定されている。この支持部材57は、2本のアーム571,572を有し、接触部材54Jは、これらのアーム571,572を軸受けとして、支持部材57に回転可能に支持されている。
【0083】
前述した通り、転写ベルト53の最端部531は、転写ロール51の回転軸511と平行となる向きに折れ曲がっている。このため、接触部材54Jの、この最端部531に近接した側の軸受けであるアーム572は、ややもすると転写ベルト53の最端部531に接触し、転写ベルト53が傷つくおそれがある。アーム572は、転写ベルト53への接触を避けた形状とする必要がある。
【0084】
次に、図2および図3に戻って、接触部材54の配置場所について説明する。
【0085】
接触部材54は、転写ベルト53を、その転写ベルト53を挟んで対向する部材に押し当てる部材であり、したがって、転写ベルト53の裏側に押し当てられる裏あて部材が必要である。図3において接触部材54を実線で示すように、その裏あて部材として、本実施形態では、転写ロール51を採用している。すなわち、転写ロール51は、転写ベルト53を駆動するロール、すなわち、転写ベルト53に張力を与えているロールである。これにより、点線で接触部材54'を示すように、従動ロールである剥離ロール52側に設置するよりも転写ベルト53の片寄りに関する、より大きな力まで対抗することができる。
【0086】
なお、図3では、点線で示す接触部材54'の全体が剥離ロール52と重なっているように示されているが、この点についての説明は、後述する図11の説明に譲る。
【0087】
また、接触部材54を転写ロール51側に設置する場合において、その接触部材54は、図2に示すように、転写ベルト53の循環移動方向に関し、転写ベルト53が転写ロール51に接する、図2に示す左半分の領域のうちの最下流位置よりも最上流位置に近接した位置に配置することが望ましい。さらに具体的には、本実施形態では、図2に接触部材54"を示したような最下流側ではなく、最上流位置の近傍に配置されている。最上流側の方が、転写ベルト53の張力が大きく、接触部材54を転写ベルト53の張力が大きい箇所に設置したほうが、転写ベルト53の片寄りに関する、より大きな力まで対抗することができるからである。
【0088】
図11は、実験データの一例を示した図である。
【0089】
縦軸は、転写ロール51に回転軸511に対する剥離ロール52の回転軸521の傾き角度である。また、横軸の(A)は、接触部材を設置しない場合、(B),(C)は、図4(A)に示す、回転軸591の方向に均一な径を有する円柱状のコロを設置した場合、(D),(E)は、図8(D)に示す、回転軸545の方向の中央が窄まる曲面からなる外周面549を有するコロを設置した場合である。ここで、(B),(D)は、図2図3に接触部材54'を点線で示した、剥離ロール52側に設置した場合、(C),(E)は、図2図3に接触部材54を実線で示した、転写ロール51側に設置した場合である。剥離ロール52側に接触部材54'を設置するにあたっては、図3に示す長さL1,L2とは逆の長さ、すなわち長さL2の転写ロールと長さL1の剥離ロールを採用している。したがって、この場合、図3に点線で示す接触部材54'の、剥離ロール52に対する位置関係は、図3に実線で示す接触部材54の、転写ロール51に対する位置関係と同等となる。
【0090】
この図11では、(A)~(C)が比較例、(D)と(E)が実施例に相当する。
【0091】
この図11示す通り、回転軸545の方向の中央が窄まる曲面からなる外周面549を有するコロを設置すると、転写ベルト53の横ずれに対し、剥離ロール52の回転軸521の、大きな傾き角度まで対抗するすることができる。また、(D)と(E)を比べると、従動ロールである剥離ロール52側にコロを設置するよりも、駆動ロールである転写ロール51側にコロを設置したほうが、大きな傾き角度まで横ずれを防ぐことができることが分かる。
【0092】
ここでは、図5から図9に様々な形状の接触部材54A,・・,54Hを示したが、本発明にいう接触部材はこれらの形状の接触部材に限定されるものではない。すなわち、本実施形態に即して表現すると、図4(B)に示した通り、少なくとも、転写ベルトに接触して転写ベルトを転写ロールあるいは剥離ロールに押し当てる第1接触点と、その第1接触点よりも転写ベルト53の幅方向端部側においてその第1接触点よりも転写ロールあるいは剥離ロールの回転軸との間に大きな角度をもって転写ベルトに接触する第2接触点とを有する接触部材であればよい。
【符号の説明】
【0093】
1 画像形成装置
10Y,10M,10C,10K 画像エンジン
30 中間転写ベルト
50 二次転写器
51 転写ロール
511 回転軸
52 剥離ロール
521 回転軸
53 転写ベルト
531 最端部
54,54A,・・,54J,54',54" 接触部材
541 内向きの第1面
542 内向きの第2面
543 大径部
544 小径部
545 回転軸
546a,546b 端部
547 中央部
548a,548b 端縁
549 外周面
55 クリーニングブレード
56 転写モータ
57 支持部材
571,572 アーム
59 接触部材
591 回転軸
60 定着装置
80 用紙搬送部
d1 第1接触点
d2 第2接触点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11