(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ナノ多孔構造を有するコロイドならびに非酵素グルコース感知のためのデバイスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20231211BHJP
G01N 27/333 20060101ALI20231211BHJP
A61B 5/1486 20060101ALI20231211BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20231211BHJP
【FI】
G01N27/416 338
G01N27/333 331C
A61B5/1486
B82Y40/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022126106
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2020533113の分割
【原出願日】2018-12-14
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520202946
【氏名又は名称】ユーエックスエヌ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100232275
【氏名又は名称】和田 宣喜
(72)【発明者】
【氏名】ブー,ハンキル
(72)【発明者】
【氏名】チャン,レ,キュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,セジン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジョンミン
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-068045(JP,A)
【文献】特表2006-500582(JP,A)
【文献】特表2016-527388(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106770567(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
A61B 5/1486
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多くのナノ粒子から形成された不規則形状体の堆積物を含むナノ多孔層であって、
前記不規則形状体の隣接するものは互いに接し、前記不規則形状体の他のものにさらに接し、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークを形成し、
前記不規則形状体の前記隣接するものは、前記不規則形状体の他のものにより画定される他の占有されていない空間に接続する不規則形状体の占有されていない空間を画定し、不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークを形成し、
不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの内側では、前記ナノ粒子の少なくとも一部は互いに隣接し、それらの間に介在するナノ粒子はなく、および、互いに離れており、それらの間には粒子間ナノポアが存在し、
不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの外側では、不規則形状空間の前記3次元相互連結ネットワークは、不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの内側の前記粒子間ナノポアの少なくとも一部に接続され、
不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの内側の前記粒子間ナノポアの少なくとも一部は約0.5nm~約3nmの範囲のサイズのギャップを含み、
不規則形状空間の前記3次元相互連結ネットワークの前記不規則形状空間の少なくとも一部は約100nm~約500nmの範囲のサイズのギャップを含む、ナノ多孔層。
【請求項2】
前記粒子間ナノポアは不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの内側の概ね全体にわたって分布され、不規則形状空間の前記3次元相互連結ネットワークの前記占有されていない空間は前記ナノ多孔層の概ね全体にわたって分布され、前記粒子間ナノポアは不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの内側では、実質的に相互に連結される、請求項1に記載されるナノ多孔層。
【請求項3】
前記ナノ多孔層はその中に有機分子を含まない、または有機分子を、仮にあるとしても、100重量部の前記堆積物に対して0.5重量部より少ない量で含む、請求項1または2に記載のナノ多孔層。
【請求項4】
前記ナノ粒子の少なくとも一部は、約2nm~約5nmの範囲の長さを有する概ね卵形または球形状を有し、前記ナノ多孔層は約100~約2500の粗さ係数を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のナノ多孔層。
【請求項5】
導電性表面を含む基材;および
前記導電性表面上に形成された請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ多孔層を含むグルコース感知電極であって、
前記グルコース感知電極は、グルコース-特異的酵素を含まない、
グルコース感知電極。
【請求項6】
前記基材は、導電性金属層および前記導電性金属層上に形成された導電性炭素層を含み、前記基材は、前記導電性表面を提供する導電性または半導電性材料を含む、請求項5に記載のグルコース感知電極。
【請求項7】
グルコース含有液と接触する前記グルコース感知電極と参照電極の間に0.2-0.45Vのバイアス電圧を印加すると、前記グルコース感知電極は前記ナノ多孔層においてグルコースの酸化を引き起こすように構成され、かつ、グルコースのみの酸化により引き起こされたグルコース-酸化電流と、前記グルコース含有液と前記グルコース感知電極の他の電気化学相互作用により引き起こされたバックグラウンド電流の和である電流を発生させるように構成され、
前記グルコース含有液がグルコースを4-20mM(72-360mg/dL)の濃度で含む場合、定常状態では、前記グルコース-酸化電流は
、10nA/mMcm
2
より高いレベルにある、請求項5または6に記載のグルコース感知電極。
【請求項8】
前記ナノ多孔層上に形成された電解質イオン-ブロッキング層;および
前記電解質イオン-ブロッキング層上に形成された生体適合性層、
をさらに含み、
グルコース、Na
+、K
+、Ca
2+、Cl
-、PO
4
3-およびCO
3
2-を含む液体と接触すると、前記電解質イオン-ブロッキング層は前記液体中に含まれるNa
+、K
+、Ca
2+、Cl
-、PO
4
3-およびCO
3
2-が前記ナノ多孔層に向かって拡散しないように阻止するように構成され、よって、前記電解質イオン-ブロッキング層より上と前記電解質イオン-ブロッキング層より下との間にNa
+、K
+、Ca
2+、Cl
-、PO
4
3-およびCO
3
2-の総計濃度の実質的な不連続性が存在する、請求項5~7のいずれか一項に記載のグルコース感知電極。
【請求項9】
前記電解質イオン-ブロッキング層より下の前記総計濃度は0%より大きく、前記電解質イオン-ブロッキング層より上の前記総計濃度の約10%より低い、請求項8に記載のグルコース感知電極。
【請求項10】
前記電解質イオン-ブロッキング層は、そこを通るNa
+、K
+、Ca
2+、Cl
-、PO
4
3-およびCO
3
2-の移動度を制限するが、そこを通るグルコース分子の移動度を制限しないように構成された多孔性かつ疎水性のポリマー層を含む、請求項8または9に記載のグルコース感知電極。
【請求項11】
前記電解質イオン-ブロッキング層は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、およびポリ(メチルメタクリレート-コ-エチレングリコールジメタクリレート)(PMMA-EG-PMMA)からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のグルコース感知電極。
【請求項12】
単一ボディ;
請求項5に記載のグルコース感知電極を含む、前記単一ボディ上に形成された第1の電極;ならびに
前記単一ボディ上に形成され、前記第1の電極が液体と接触した時に、前記液体に接触するように構成された第2の電極を含む、グルコース感知デバイス。
【請求項13】
前記ナノ多孔層の前記ナノ粒子は、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、および前述の金属の1つ以上の酸化物からなる群より選択される少なくとも1つから製造される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
請求項12または13に記載のデバイスを提供すること;
試験流体が前記第1の電極および前記第2の電極の両方と接触する間、前記第1の電極と前記第2の電極の間にバイアス電圧を印加することであって、これにより、前記グルコース感知電極において前記試験流体中に含まれるグルコースの酸化が引き起こされること;ならびに
前記第1の電極から流れる電流を測定すること;ならびに
前記電流の測定された値を追加のデータと共に、またはなしで処理し、前記試験流体中に含まれるグルコースに対応するグルコースレベルを提供すること
を含む、非酵素グルコース感知の方法。
【請求項15】
界面活性剤および金属イオンを含む液体組成物を提供することであって、前記界面活性剤は、複数の親水性空間を含む逆ミセル相であること;
還元剤を前記液体組成物に添加し、前記金属イオンの少なくとも一部の還元を引き起こし、ナノ粒子を形成させ、これにより、第1のコロイドを提供することであって、前記ナノ粒子の少なくとも一部は前記複数の親水性空間の少なくともいくつかの内側にあり、電位は前記金属イオンの前記少なくとも一部の還元のために印加されない、こと;ならびに 前記界面活性剤を前記第1のコロイドから除去し、第2のコロイドを形成し、前記第2のコロイドが前記界面活性剤を、100重量部の前記ナノ粒子に対して0~2重量部の量で含むように、かつ、前記第2のコロイドが液体中に分散された多くの不規則形状体を含むようにし、前記不規則形状体のそれぞれは多くのナノ粒子を有するナノ粒子クラスターを有すること、
を含む、コロイドを製造する方法であって、
前記不規則形状体は、約2nm~約5nmの範囲の長さを有する概ね卵形または球形状を有する、方法。
【請求項16】
前記界面活性剤のいくつかの分子は前記第1のコロイド中のナノ粒子に結合され、前記界面活性剤を除去することは、酸または塩基を前記第1のコロイドに添加し、前記分子の少なくとも一部を前記ナノ粒子から分離させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記界面活性剤の除去後に、前記方法は、前記第2のコロイド中の前記ナノ粒子の濃度を調整し、コロイド組成物を提供し、前記コロイド組成物中に含まれる前記ナノ粒子が前記コロイド組成物の総重量に対して約0.01wt%~約2wt%の量であるようにすることをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載の方法を実施し、前記第2のコロイドを提供すること;
その後、前記第2のコロイド中の前記ナノ粒子の濃度を調整し、コロイド組成物を提供すること;
前記コロイド組成物を基材上に分配すること;ならびに
前記分配されたコロイド組成物を乾燥に供し、ナノ多孔層を形成させること
を含む、ナノ多孔層を製造する方法であって、
前記ナノ多孔層を形成させるために、前記液体組成物に電位は印加されず、
前記分配されたコロイド組成物を乾燥に供すると、前記分配されたコロイド組成物中に含まれる前記不規則形状体は前記基材上に堆積し、前記不規則形状体の隣接するものは互いに接し、前記不規則形状体の他のものとさらに接し、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークを形成し、
前記不規則形状体の前記隣接するものは、前記不規則形状体の他のものにより画定される他の占有されていない空間に接続する不規則形状の占有されていない空間を画定し、不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークを形成し、
不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークは、前記コロイド組成物の前記不規則形状体を起源とする多くのナノ粒子を含み、
不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの内側では、前記ナノ粒子の少なくとも一部は互いに隣接し、それらの間には介在するナノ粒子はなく、および、互いに離れており、それらの間には粒子間ナノポアが存在し、
不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの外側では、不規則形状空間の前記3次元相互連結ネットワークは、不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの内側の前記粒子間ナノポアの少なくとも一部に接続される、方法。
【請求項19】
前記ナノ粒子の少なくとも一部は、約2nm~約5nmの範囲の長さを有する概ね卵形または球形状を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
不規則形状体の前記3次元相互連結ネットワークの内側の前記粒子間ナノポアの少なくとも一部は約0.5nm~約3nmの範囲のサイズのギャップを含む、請求項18または19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はグルコース感知に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケア社会および産業において、血糖値を感知しモニタリングする技術を改善するために高レベルの関心が存在する。今日では、ほとんどのグルコースセンサは電気化学的方法を使用する。全てではないが、ほとんどの電気化学センサが酵素に基づく電気化学センサを使用する。
【発明の概要】
【0003】
発明の1つの態様は、液体に分散された多くのナノ粒子のクラスターを含むコロイド組成物を提供し、各クラスターは、一緒にクラスター化され、ナノサイズまたはマイクロサイズの長さを有する不規則形状体を形成する多くのナノ粒子を含み、個々のナノ粒子は約2nm~約5nmの直径を有する概ね卵形または球形状の別々のボディを有し、粒子間(interparticular)ギャップは各クラスターの内側の隣接するナノ粒子間で形成され、約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有する。
【0004】
前述のコロイド組成物では、粒子間ギャップは各クラスター中、概ね全体にわたって分布され得る。組成物は界面活性剤を実質的に含まないことができる。液体は水を含むことができ、コロイド組成物は界面活性剤を、その中に含まれる100重量部のナノ粒子に対して2重量部より少ない量で含み得る。コロイド組成物中に含まれるナノ粒子はコロイド組成物の総重量に対して約0.01wt%~約2wt%の量であってもよい。コロイド組成物中に含まれるナノ粒子は、コロイド組成物の総重量に対して、約0.01wt%~約1wt%の量であってもよい。
【0005】
前述のコロイド組成物においてさらに、ナノ粒子は、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、および前述の元素の各々の1つ以上の酸化物からなる群より選択される少なくとも1つから主に製造され得る。ナノ粒子は、白金(Pt)から主に製造され得、粒子間ギャップは各クラスター中、概ね全体にわたって分布され得、コロイド組成物は、界面活性剤を、その中に含まれる100重量部のナノ粒子に対して1重量部より少ない量で含むことができ、コロイド組成物中に含まれるナノ粒子はコロイド組成物の総重量に対して約0.1wt%~約1wt%の量であってもよい。
【0006】
発明の別の態様はナノ多孔層を製造する方法を提供する。方法は前述のコロイド組成物を基材上に分配すること;分配されたコロイド組成物を乾燥に供し、分配された組成物中に含まれるクラスターが基材上で堆積され、また、互い上に積み重ねられるようにし、基材上にナノ多孔層を提供することを含み、ナノ多孔層は、互い上に積み重ねられたクラスターから形成された不規則形状体を含み、不規則形状体は、局部的に一緒にクラスター化された多くのナノ粒子および不規則形状体中のナノ粒子の隣接するものの間で形成された粒子間ギャップを含み、不規則形状体は相互に連結され、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークが提供され、不規則形状空間が不規則形状体の隣接部分の間で形成され、それらはナノサイズまたはマイクロサイズである。
【0007】
前述の方法では、ナノ粒子は、約2nm~約5nmの直径を有する概ね卵形または球形状であってもよい。粒子間ギャップは約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有し得る。不規則形状空間は、相互に連結され得、不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークが提供される。コロイド組成物はあらかじめ決められた量で分配され得、約100~約2500の粗さ係数を有するナノ多孔層が形成される。ナノ多孔層は、界面活性剤を、その中に含まれる100重量部のナノ粒子に対して0.5重量部より少ない量で含み得る。
【0008】
発明の別の態様は、コロイド組成物を製造する方法を提供する。方法は、下記を含む:金属イオン、界面活性剤および溶媒を含む液体組成物を提供することであって、界面活性剤は親水性空間を規定する逆ミセル相であること;還元剤を液体組成物に添加し、金属イオンの還元を引き起こすことであって、金属ナノ粒子および界面活性剤を含む第1のコロイドが形成され、第1のコロイド中では、金属ナノ粒子は、界面活性剤の逆ミセル相と共に分散されること;ならびに、界面活性剤を第1のコロイドから除去し、液体中に分散された多くのクラスターを含む第2のコロイドを提供することであって、各クラスターは一緒にクラスター化され、ナノサイズまたはマイクロサイズの長さを有する不規則形状体を形成する多くのナノ粒子を含むこと。
【0009】
前述の製造方法では、電位は、その中の金属イオンの還元のために液体組成物に印加しないことができる。界面活性剤は、等方性逆ミセル相を形成することができる非イオン性界面活性剤とすることができる。個々のナノ粒子は約2nm~約5nmの直径を有する概ね卵形または球形状の別々のボディを有することができ、粒子間ギャップは各クラスターの内側の隣接ナノ粒子間で形成され、約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有し得る。界面活性剤を除去することはかなりの量の界面活性剤を第1のコロイドから除去し、第2のコロイドが界面活性剤を実質的に含まないようにする。界面活性剤を除去することは、かなりの量の界面活性剤を第1のコロイドから除去し、第2のコロイドが界面活性剤をその中に含まれる100重量部のナノ粒子に対して1重量部より少ない量で含むようにする。
【0010】
前述の製造方法ではさらに、界面活性剤を除去することは下記を含み得る:第1のコロイドを遠心分離すること;ならびに、遠心分離された組成物から底部を収集すること。界面活性剤を除去することは、一連の遠心分離および収集を複数回繰り返すことをさらに含み得る。界面活性剤を除去することは、遠心分離前に、第1のコロイドに酸または塩基を添加することをさらに含み得る。界面活性剤を除去することは、一連の添加、遠心分離および収集を複数回繰り返すことをさらに含み得る。第2のコロイドに含まれるナノ粒子は組成物の総重量に対して約10wt%~約40wt%の量であってもよい。ナノ粒子は、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、および前述の金属の各々の1つ以上の酸化物からなる群より選択される少なくとも1つから主に製造され得る。ナノ粒子は、白金(Pt)から主に製造され得、粒子間ギャップは各クラスター中、概ね全体にわたって分布され得、組成物は界面活性剤を、その中に含まれる100重量部のナノ粒子に対して2重量部より少ない量で含むことができ、組成物中に含まれるナノ粒子は組成物の総重量に対して約0.1wt%~約2wt%の量であってもよい。
【0011】
発明の別の態様は、ナノ多孔層を製造する方法を提供する。この方法は、第2のコロイドを提供するための、コロイド組成物を製造する前述の方法;第2のコロイドを基材上に分配すること;分配させた第2のコロイドを乾燥に供し、分配された組成物中に含まれるクラスターが基材上で堆積され、また、互い上に積み重ねられ、基材上にナノ多孔層を提供するようにすることを含み、ナノ多孔層は、互い上に積み重ねられたクラスターから形成された不規則形状体を含み、不規則形状体は、局部的に一緒にクラスター化された多くのナノ粒子および不規則形状体中のナノ粒子の隣接するものの間で形成された粒子間ギャップを含む。不規則形状体は相互に連結され、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークが提供され、不規則形状空間は不規則形状体の隣接部分の間で形成され、ナノサイズまたはマイクロサイズであり、不規則形状空間は相互に連結され、不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークが提供される。
【0012】
ナノ多孔層を製造する前述の方法では、ナノ粒子は約2nm~約5nmの直径を有する概ね卵形または球形状であり得、粒子間ギャップは約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有する。コロイド組成物はあらかじめ決められた量で分配され得、約100~約2500の粗さ係数を有するナノ多孔層が形成される。ナノ多孔層は、その中に含まれる100重量部のナノ粒子に対して0.1重量部より少ない界面活性剤を含み得る。
【0013】
発明の別の態様は、下記を含むナノ多孔構造を提供し:局部的に一緒にクラスター化された多くのナノ粒子および不規則形状体中のナノ粒子の隣接するものの間で形成された粒子間ギャップを含む不規則形状体、ここで、ナノ粒子は約2nm~約5nmの直径を有する概ね卵形または球形状であり得、粒子間ギャップは、約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有し、不規則形状体は相互に連結され得、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークが提供され、不規則形状空間は不規則形状体の隣接部分の間で形成され、ナノサイズまたはマイクロサイズであり、不規則形状空間は相互に連結され不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークが提供される。
【0014】
前述のナノ多孔構造は、界面活性剤分子を実質的に含まないことができる。前述のナノ多孔構造では、粒子間ギャップは、ナノサイズ有機分子を実質的に含まないことができる。不規則形状体の3次元ネットワークおよび不規則形状のクラスター間ギャップの3次元ネットワークは相補的であってもよく、ナノ多孔構造が形成される。粒子間ギャップは、それら自体で実質的に相互連結され得、さらに、不規則形状のクラスター間ギャップの3次元相互連結ネットワークに連結され得る。ナノ多孔構造は、液体中に分散された不規則形状の別々のクラスターを含む固体-液体コロイドを分配し、分配された固体-液体コロイドを乾燥させることにより形成され得、不規則形状の別々のクラスターは積み重ねることができ、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークおよび不規則形状のクラスター間ギャップの3次元相互連結ネットワークが提供される。不規則形状のクラスター間ギャップは平均クラスター間ギャップ距離を有する。ナノ粒子は、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、および前述の金属の各々の1つ以上の酸化物からなる群より選択される少なくとも1つから製造され得る。ナノ多孔構造は約100~約2500の粗さ係数を有する。
【0015】
発明の別の態様は、下記を含むデバイスを提供する:表面を含む基材;および表面上に形成され、前述のナノ多孔構造を含むナノ多孔層。発明のさらにもう一つの態様は、表面を含む少なくとも1つの導電層;および、表面上に形成され、前述のナノ多孔構造を含むナノ多孔層を含む非酵素グルコース感知電極を提供し、非酵素グルコース感知電極は、グルコース-特異的酵素を含まない。
【0016】
前述のデバイスまたは電極では、少なくとも1つの導電層は、導電性金属層および導電性金属層上に形成された導電性炭素層を含み得る。デバイスまたは電極はナノ多孔層上に形成された生体適合性ポリマー材料を含まない。デバイスまたは電極は、ナノ多孔層上に形成された生体適合性ポリマー材料を含み得る。
【0017】
発明のさらにもう一つの態様は、下記を含む1回限りの使用のグルコース感知デバイスを提供する:試験液を受け取り、保持するように構成されたリザーバ;および、試験液がリザーバ中で保持され得る時に、ナノ多孔層は試験液と接触することができるように、リザーバと共に配列された前述の電極。1回限りの使用のグルコース感知デバイスでは、電極はナノ多孔層上に形成された生体適合性ポリマー材料を含まない。
【0018】
発明のさらにもう一つの態様は、下記を含む連続グルコースモニタリング(CGM)デバイスを提供し:被検体の身体の間質液と接触するように構成された皮下針;および皮下針に接続された電気回路、ここで、皮下針は、電気回路に接続された前述の電極および別の電極を含む。
【0019】
発明のさらにもう一つの態様は、基材および基材上に形成されたナノ多孔層を含む作用電極を含む非酵素グルコース感知デバイスを提供し、作用電極は、グルコース-特異的酵素を含まず、ナノ多孔層は、局部的に一緒にクラスター化された多くのナノ粒子を含む不規則形状体を含み得、粒子間ギャップは、不規則形状体中のナノ粒子の隣接するものの間で形成され得、ナノ粒子は約2nm~約5nmの直径を有する概ね卵形または球形状であり得、粒子間ギャップは、約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有し、不規則形状体は相互に連結され得、ナノ多孔層の概ね全体にわたって延在する不規則形状体の3次元相互連結ネットワークが提供され、不規則形状空間は不規則形状体の隣接する部分間で形成され得、ナノサイズまたはマイクロサイズであり得、不規則形状空間は、相互に連結され得、ナノ多孔層の概ね全体にわたって延在する不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークが提供され、ナノ多孔層は、約0.2V~約0.45Vのそれに適用されたバイアス電圧で、グルコース-特異的酵素なしで、その中でグルコース分子の酸化を引き起こすように構成され得る。
【0020】
前述の非酵素グルコース感知デバイスでは、ナノ多孔層は、界面活性剤分子を実質的に含まないことができ、基材は、導電性または半導電性材料を含む少なくとも1つの導電層を含み得る。粒子間ギャップは、ナノサイズ有機分子を実質的に含まないことができる。不規則形状体の3次元ネットワークおよび不規則形状のクラスター間ギャップの3次元ネットワークは相補的であり得、ナノ多孔層が形成される。粒子間ギャップは、それら自体で実質的に相互連結され得、さらに、不規則形状のクラスター間ギャップの3次元相互連結ネットワークに連結され得る。
【0021】
前述の非酵素グルコース感知デバイスではさらに、ナノ多孔層は、液体中に分散された不規則形状の別々のクラスターを含む固体-液体コロイドを分配し、分配された固体-液体コロイドを乾燥させることにより形成され得、不規則形状の別々のクラスターは積み重ねることができ、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークおよび不規則形状のクラスター間ギャップの3次元相互連結ネットワークが提供される。ナノ粒子は、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、および前述の金属の各々の1つ以上の酸化物からなる群より選択される少なくとも1つから製造され得る。ナノ多孔層は、約100~約2500の粗さ係数を有する。ナノ多孔電極は、ナノ多孔層上に形成され、試験流体中に含まれるマルトースがそこを通過するのを実質的にブロックし、グルコースがそこを通過するのを可能にするように構成されたマルトース-ブロッキング層をさらに含み得る。マルトース-ブロッキング層は、グルコース分子がそこを通過するのを可能にし、マルトース分子がそこを通過するのを効果的にブロッキングする形態のポリ-フェニレンジアミン(ポリ-PD)を含み得る。バイアス電圧は、0.2V~0.45Vの範囲にあるように設定され得る。
【0022】
発明のさらにもう一つの態様は、下記を含む非酵素グルコース感知システムを提供する:前述の非酵素グルコース感知デバイス;対電極;および、作用電極と対電極の間にバイアス電圧を供給するために、作用電極と対電極の間に電気的に接続されたバイアス電圧源。
【0023】
発明のさらにもう一つの態様は、非酵素グルコース感知の方法を提供する。方法は、下記を含む:前述の非酵素グルコース感知デバイスを提供すること;試験流体を作用電極と対電極の両方と接触させながら、作用電極と対電極の間にバイアス電圧を印加することであって、これによりナノ多孔層で試験流体中に含まれるグルコースの酸化が引き起こされること;作用電極からの電流を測定すること;および、電流を追加のデータと共に、またはなしで処理し、試験流体中に含まれるグルコースに対応するグルコースレベルを提供すること。バイアス電圧は、0.2V~0.45Vの範囲にあるように設定され得る。
【0024】
発明の別の態様は、グルコース感知電極を提供し、これは下記を含む:基材;基材上に形成され、グルコース感知電極内でグルコースまたはマルトースに特異的な酵素なしで、グルコースおよびマルトースの両方を酸化することができるナノ多孔性金属層;ナノ多孔性金属層上に形成されたマルトース-ブロッキング層。グルコース感知電極では、マルトース-ブロッキング層はグルコースがそこを通過するのを可能にし、かつ、マルトースがそこを通過してナノ多孔性金属層に向かうのを阻止する多孔度を有し、そのため、0.2-0.45Vのバイアス電圧が、参照電極に対して、ナノ多孔性金属層に印加される場合、および、マルトース-ブロッキング層が、グルコースを4-20mMの濃度で、マルトースを4-20mMの濃度で含む液体と接触する場合、ナノ多孔性金属層におけるグルコースのみの酸化により引き起こされた電流は10nA/mMcm2より高く、さらにナノ多孔性金属層におけるマルトースのみの酸化により引き起こされた電流は5nA/mMcm2より低くなる。
【0025】
前述のグルコース感知電極では、ナノ多孔性金属層はグルコースを酸化することができ、そのため、グルコースのみの酸化により引き起こされた電流は、0.2-0.45Vのバイアス電圧を印加し、グルコースを4-20mMの濃度で含む液体と、その上のマルトース-ブロッキング層なしで接触すると、10nA/mMcm2より高い。ナノ多孔性金属層はさらにマルトースを酸化することができ、そのため、マルトースのみの酸化により引き起こされた電流は、0.2-0.45Vのバイアス電圧を印加し、マルトースを4-20mMの濃度で含む液体と、その上のマルトース-ブロッキング層なしで接触すると、10nA/mMcm2より高い。マルトース-ブロッキング層は、ポリ-フェニレンジアミン(ポリ-PD)を含み、10~40nmの厚さを有し得る。マルトース-ブロッキング層は、ポリ-フェニレンジアミン(ポリ-PD)から本質的に構成され、10nm~35nmの厚さを有し得る。マルトース-ブロッキング層はポリ-フェニレンジアミン(ポ
リ-PD)から構成され、10~40nmの厚さを有し得る。
【0026】
前述のグルコース感知電極では、ナノ多孔性金属層は、局部的に一緒にクラスター化された多くのナノ粒子および不規則形状体中のナノ粒子の隣接するものの間で形成された粒子間ギャップを含む不規則形状体を含み得る。ここで、ナノ粒子は、約2nm~約5nmの直径を有する、概ね卵形または球形状である。粒子間ギャップは約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有し得る。不規則形状体は相互に連結され得、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークが提供される。不規則形状空間は不規則形状体の隣接する部分間で形成され得、ナノサイズまたはマイクロサイズである。不規則形状空間は、相互に連結され得、不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークが提供される。
【0027】
前述のグルコース感知電極は、マルトース-ブロッキング層上に形成された電解質イオン-ブロッキング層および電解質イオンブロッキング層上に形成された生体適合性層をさらに含み得る。電解質イオン-ブロッキング層は、液体中に含まれるNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-が、ナノ多孔性金属層に向かって拡散するのを阻止するように構成され、そのため、電解質イオン-ブロッキング層より上と電解質イオン-ブロッキング層より下との間でNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-の総計濃度の実質的な不連続性が存在する。電解質イオン-ブロッキング層は、グルコース感知電極のコンディショニングが0.2-0.45Vのバイアス電圧の印加を用いて、被検体の体液との接触から30分以内に完了するように、グルコース感知電極のコンディショニングを促進することができる。
【0028】
発明の別の態様は、皮下部および端子部を含む単一の一体型ボディを含む装置を提供し;皮下部は前述のグルコース感知電極および参照電極を含み、その各々は、皮下部が第1の被検体の身体中に皮下挿入されると、第1の被検体の間質液と接触するように曝露されており;端子部は対応デバイスと結合し、グルコース感知電極に電気的に接続された第1の端子および参照電極に電気的に接続された第2の端子を含むように構成されている。
【0029】
発明のさらにもう一つの態様は、前述のグルコース感知電極および参照電極を含む単一の一体型ボディを含む装置を提供し、単一の一体型ボディは、少なくとも一時的に試験流体をその中に保持するように構成されたリザーバをさらに含み、グルコース感知電極および参照電極は単一の一体型ボディ内に配列され、そのため、試験流体がリザーバ内に保持されると、グルコース感知電極および参照電極の各々は試験流体と接触するように構成される。
【0030】
発明のさらなる態様は、グルコース感知電極を製造する方法を提供する。方法は下記を含む:グルコース感知電極内にグルコースまたはマルトースに特異的な酵素なしで、グルコースおよびマルトースの両方を酸化することができるナノ多孔性金属層を提供すること;ポリ-フェニレンジアミン(ポリ-PD)フィルムをナノ多孔性白金層上に形成し、ポリ-PDフィルムはグルコースがそこを通過することを可能にし、マルトースがそこを通過するのをブロックするようにすること。ここで、ポリ-PDフィルムは、グルコースがそこを通過するのを可能にし、マルトースがそこを通過してナノ多孔性金属層に向かうのを阻止する多孔度を有し、そのため、0.2-0.45Vのバイアス電圧が、参照電極に対して、ナノ多孔性金属層に印加される場合、かつ、ポリ-PDフィルムが、グルコースを4-20mMの濃度で、マルトースを4-20mMの濃度で含む液体と接触する場合、ナノ多孔性金属層におけるグルコースのみの酸化により引き起こされた電流は10nA/mMcm2より高く、さらに、ナノ多孔性金属層におけるマルトースのみの酸化により引き起こされた電流は5nA/mMcm2より低い。
【0031】
グルコース感知電極を製造する前述の方法では、ポリ-PDフィルムを形成することは、ナノ多孔性金属層を電気化学重合のための電極として使用して電気化学重合を実施することを含み得る。ポリ-PDフィルムを形成することは、ポリ-PDを含むポリマー層を提供すること、および、ポリマー層が、グルコースがそこを通過するのを可能にするのに十分な多孔度を有し得ず、そのため、ナノ多孔性金属層におけるグルコースのみの酸化により引き起こされた電流は10nA/mMcm2より低くなる場合、ポリマー層の多孔度を調整することを含み得る。多孔度の調整は、ポリマー層が酸性溶液と接触している間に、ポリマー層を少なくとも1つの電気ショックに供することを含み得る。ポリ-PDフィルムを形成することは、ポリ-PDを、フェニレンジアミンをある濃度で含む液体組成物から重合することを含むことができ、濃度が所定の値より高い場合、ポリ-PDフィルムを形成することは、ポリマー層の多孔度の調整をさらに含む。多孔度の調整は、ポリマー層が酸性溶液と接触している間に、ポリマー層を少なくとも1つの電気ショックに供することを含み得る。
【0032】
グルコース感知電極を製造する前述の方法では、ポリ-PDフィルムを形成することは、ポリマー層はグルコースがそこを通過するのを可能にするのに十分な多孔度を有することができ、そのため、ナノ多孔性金属層におけるグルコースのみの酸化により引き起こされた電流が10nA/mMcm2より高いことが予想される場合、ポリマー層のさらなる多孔度の調整なしにポリ-PDを含むポリマー層を提供することを含み得る。ポリ-PDフィルムを形成することは、ポリ-PDを、フェニレンジアミンをある濃度で含む液体組成物から重合することを含むことができ、濃度が所定の値より低い場合、方法は、ポリ-PDフィルムを形成するためのポリマー層の多孔度の調整を含まない。
【0033】
発明の1つの態様はグルコース感知電極を提供し、これは下記を含む:導電性層;導電性層上に形成されたナノ多孔性金属層;ナノ多孔性金属層上に形成された電解質イオン-ブロッキング層;および電解質イオン-ブロッキング層上に形成された生体適合性層。グルコース感知電極はグルコース-特異的酵素を含まない。グルコース、Na+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-を含む液体と接触する場合、電解質イオン-ブロッキング層は、液体中に含まれるNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-がナノ多孔性金属層に向かって拡散するのを阻止するように構成され、そのため、電解質イオン-ブロッキング層より上と電解質イオン-ブロッキング層より下との間でNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-の総計濃度の実質的な不連続性が存在する。
【0034】
前述のグルコース感知電極では、参照電極に対し、0.2-0.45Vのバイアス電圧
をそれに印加する場合、グルコース感知電極は、ナノ多孔性金属層においてグルコースの
酸化を引き起こすように構成され、かつ、グルコース酸化のみにより引き起こされたグル
コース-酸化電流と、液体とグルコース感知電極の他の電気化学相互作用により引き起こ
されたバックグラウンド電流の和である電流を発生させるように構成される。液体がグル
コースを4-20mMの濃度で含む場合(およそ72-360mg/dL)、定常状態で
はグルコース-酸化電流は、10nA/mMcm
2
より高いレベルにある。
【0035】
前述のグルコース感知電極では、電解質イオン-ブロッキング層より下の総計濃度は0%より大きく、電解質イオン-ブロッキング層より上の総計濃度の約10%より低い。電解質イオン-ブロッキング層より下の総計濃度は0%より大きく、電解質イオン-ブロッキング層より上の総計濃度の約5%より低い。電解質イオン-ブロッキング層は、そこを通るNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-の移動度を制限するが、そこを通るグルコース分子の移動度を制限しないように構成される多孔性かつ疎水性のポリマー層を含み得る。
【0036】
前述のグルコース感知電極では、電解質イオン-ブロッキング層は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、およびポリ(メチルメタクリレート-コ-エチレングリコールジメタクリレート)(PMMA-EG-PMMA)からなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。電解質イオン-ブロッキング層は、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートのコポリマー、および、分枝もしくは非分枝C1-C8アルキルメタクリレート、分枝もしくは非分枝C1-C8シクロアルキルメタクリレート、分枝もしくは非分枝C1-C8アルキルアクリレート、分枝もしくは非分枝C1-C8シクロアルキルアクリレート、および分枝もしくは非分枝C1-C8シクロアルキルメタクリレートを含む1つ以上のモノマーの重合から得られるポリマーからなる群より選択される少なくとも1つを含むことができ、1つ以上のモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート
、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートからなる群より選択される。
【0037】
前述のグルコース感知電極では、グルコース感知電極は連続グルコースモニタリング(CGM)電極であってもよく、液体は被検体の体液である。電解質イオン-ブロッキング層はグルコース感知電極のコンディショニングが0.2-0.45Vのバイアス電圧の印加を用いて、被検体の体液との接触から30分以内に完了するように、グルコース感知電極のコンディショニングを促進するように構成される。グルコース感知電極のコンディショニングは、電流の減少速度が第1の所定の値より小さくなった時および/または電流が第2の所定の値より小さいままとなった時に完了したと考えられ得る。
【0038】
グルコース感知電極は、ナノ多孔性金属層と電解質イオン-ブロッキング層の間に挿入
されるマルトース-ブロッキング層をさらに含むことができ、マルトース-ブロッキング
層は、ポリ-フェニレンジアミン(ポリ-PD)を含み得る。マルトース-ブロッキング
層は、グルコースがそこを通過するのを可能にし、かつ、マルトースがそこを通過するの
を実質的にブロックするように構成することができ、そのため、定常状態ではグルコース
-酸化電流は、10nA/mMcm
2
より高いレベルにあるが、一方、マルトースの酸化
のみにより引き起こされたマルトース酸化電流は5nA/mMcm
2
より低い。
【0039】
参照電極は、化学成分の還元が参照電極において起こるか起こらないかに関係なく、グルコース感知電極に印加されるバイアス電圧のための電位の基準レベルを提供するように構成され得る。3-電極電気化学セルでは、参照電極に加えて、対電極が、その中の化学成分の還元のために提供され、一方、2-電極電気化学セルでは、化学成分の還元は参照電極において起こる。
【0040】
前述のグルコース感知電極では、ナノ多孔性金属層は下記を含むことができ:局部的に一緒にクラスター化された多くのナノ粒子および不規則形状体中のナノ粒子の隣接するものの間で形成された粒子間ギャップを含む不規則形状体、ここで、ナノ粒子は、約2nm~約5nmの直径を有する、概ね卵形または球形状であり、粒子間ギャップは約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有する。ここで、不規則形状体は相互に連結され得、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークが提供される。不規則形状空間は不規則形状体の隣接する部分間で形成され得、ナノサイズまたはマイクロサイズであり、不規則形状空間は相互に連結され、不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークが提供される。
【0041】
発明の別の態様は、下記を含むセンサ装置を提供する:皮下部および端子部を含む単一の一体型ボディ;グルコース感知電極および参照電極を含み、その各々は、皮下部が第1の被検体の身体中に皮下挿入されると、第1の被検体の間質液と接触するように曝露されている皮下部;ならびに、対応デバイスと結合し、グルコース感知電極に電気的に接続された第1の端子、および、参照電極に電気的に接続された第2の端子を含むように構成された端子部。グルコース感知電極は、前述のグルコース感知電極の1つ以上の特徴を含み得る。
【0042】
発明の別の態様は、連続グルコースモニタリングの方法を提供する。方法は下記を含む:センサ装置を提供すること;グルコース感知電極の皮下部を第1の被検体の身体中に皮下挿入し、グルコース感知電極および参照電極が第1の被検体の身体の間質液と接触するようにすること;参照電極に対してグルコース感知電極に0.2-0.45Vのバイアス電圧を印加させること;グルコース感知電極から発生した電流を測定すること;皮下部の皮下挿入およびバイアス電圧の印加の後から1時間未満以内での電流の測定により得られた電流値を使用してグルコースレベルを計算すること;ならびに、ディスプレイ上に、約4mM~約20mM(およそ約72mg/dL~約360mg/dL)の範囲内の、第1の被検体のものとして計算したグルコースレベルを提示すること。グルコース感知電極は、前述のグルコース感知電極の1つ以上の特徴を含み得る。
【0043】
発明のさらなる態様は、下記を含むセンサ装置を提供する:基材;基材上に形成された第1の導電性層および第1の導電性層上に形成されたグルコース-酸化層を含む第1の電極(またはグルコース感知電極);基材上に形成され、第1の電極に電気的に接続された第1の端子;基材上に形成された第2の導電性層を含む第2の電極;基材上に形成され、第2の電極に電気的に接続された第2の端子;基材上に形成された第3の導電性層を含む参照電極;および基材上に形成され、参照電極に電気的に接続された第3の端子。
【0044】
センサ装置では、第1の電極がグルコースおよびアスコルビン酸およびアセトアミノフェンを含む液体と接触すると、かつ、第1の電極と参照電極の間に、グルコース-酸化層においてグルコースを酸化するのに十分な第1のバイアス電圧を印加すると、第1の電極のグルコース-酸化層はその中でグルコースならびにアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの少なくとも1つの酸化を引き起こすように構成され、かつ、さらにグルコース-酸化層においてグルコース酸化により引き起こされたグルコース成分およびアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの少なくとも1つの酸化により引き起こされた第1の干渉成分を含む第1の電流を発生させるように構成される。第2の電極は、装置内に、第1の電極が液体と接触した時に、第2の電極もまた同じ液体と接触するように配列される。第2の電極は、その中でグルコースの酸化を引き起こすように構成された層を含まず、そのため、第2のバイアス電圧を第2の電極と参照電極の間に印加すると、第2の電極はその中でアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの少なくとも1つの酸化を引き起こすが、その中でグルコースの酸化を引き起こさないように構成され、かつ、さらに第2の電極においてアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの少なくとも1つの酸化により引き起こされ、グルコースの酸化により引き起こされない第2の干渉成分を含む第2の電流を発生させるように構成される。装置は第1の端子で第1の電流を、第2の端子で第2の電流を提供するように構成される。
【0045】
前述のセンサ装置は、第1の電流を提供する時に、第1の電流と関連して第2の電流を提供するように構成され得る。センサ装置は、第1の電流および第2の電流を同時に発生させるように構成され得る。センサ装置は、第1の電流および第2の電流を、第1の電流および第2の電流を発生させた時間を示す情報と共に提供するように構成され得る。センサ装置は、第2の電流を、第1の電流を提供するときはいつでも第1の電流と一緒に提供するように構成され得る。前述のセンサ装置において、第1の電流は、液体とグルコース感知層の他の電気化学相互作用により引き起こされた第1のバックグラウンド電流をさらに含み得、第2の電流は、液体と第2の電極の他の電気化学相互作用により引き起こされた第2のバックグラウンド電流をさらに含み得る。
【0046】
前述のセンサ装置において、第1のバイアス電圧が0.2V~0.32Vである場合、グルコース-酸化層はグルコースおよびアスコルビン酸を酸化するが、アセトアミノフェンを酸化しないように構成され、第1の干渉成分はアスコルビン酸の酸化により引き起こされ、アセトアミノフェンの酸化によるものではない。第2のバイアス電圧が0.2V~0.32Vである場合、第2の電極はアスコルビン酸を酸化するが、アセトアミノフェンは酸化しないように構成され、第2の干渉成分はアスコルビン酸の酸化により引き起こされ、アセトアミノフェンの酸化によるものではない。前述のセンサ装置において、第1のバイアス電圧が0.34V~0.45Vである場合、グルコース-酸化層はグルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンを酸化するように構成され、第1の干渉成分はアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの酸化により引き起こされる。第2のバイアス電圧が0.34V~0.45Vである場合、第2の電極はアスコルビン酸およびアセトア
ミノフェンを酸化するように構成され、第2の干渉成分はアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの両方の酸化により引き起こされる。
【0047】
前述のセンサ装置において、第1の電極は、グルコース-酸化層上に形成されたポリ-
フェニレンジアミン(ポリ-PD)を含むマルトース-ブロッキング層をさらに含み得る
。4-20mM(およそ72-360mg/dL)の濃度を有するグルコースを含む液体
と接触させると、かつ、バイアス電圧を印加すると、マルトース-ブロッキング層はグル
コースがそこを通過するのを可能にし、かつ、マルトースがそこを通過するのを実質的に
ブロックするように構成され、そのため、定常状態ではグルコース-酸化電流は、10nA/mMcm
2
より高いレベルにあるが、一方、マルトースの酸化のみにより引き起こされたマルトース酸化電流は5nA/mMcm
2
より低い。
【0048】
前述のセンサ装置は、皮下で被検体の体液と接触するように構成された皮下部を含む、連続グルコースモニタリング(CGM)電極モジュールであってもよく、第1、第2および参照電極は皮下部内に形成される。前述のセンサ装置において、グルコース-酸化層は、ナノ多孔性金属層を含むことができ、第1の電極はさらに下記を含み得る:ナノ多孔性金属層上に形成された電解質イオン-ブロッキング層および電解質イオン-ブロッキング層上に形成された生体適合性層。電解質イオン-ブロッキング層は、液体中に含まれるNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-がナノ多孔性金属層に向かって拡散するのを阻止するように構成され得、そのため、電解質イオン-ブロッキング層より上と電解質イオン-ブロッキング層より下との間でNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-の総計濃度の実質的な不連続性が存在する。
【0049】
前述のセンサ装置において、電解質イオン-ブロッキング層は、そこを通るNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-の移動度を制限するが、そこを通るグルコース分子の移動度を制限しないように構成された多孔性かつ疎水性のポリマー層を含むことができ、電解質イオン-ブロッキング層は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、およびポリ(メチルメタクリレート-コ-エチレングリコールジメタクリレート)(PMMA-EG-PMMA)からなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
【0050】
前述のセンサ装置において、電解質イオン-ブロッキング層は、グルコース感知電極のコンディショニングが0.2-0.45Vのバイアス電圧の印加を用いて、被検体の体液との接触から30分以内に完了するように、グルコース感知電極のコンディショニングを促進するように構成され得、グルコース感知電極のコンディショニングは、電流の減少速度が第1の所定の値より小さくなった時、および、電流が第2の所定の値より小さいままとなった時のいずれかまたは両方で、完了したと考えられる。
【0051】
前述のセンサ装置は、血液を受け取るように構成されたリザーバを含む血糖モニタリング(BGM)電極モジュールであり、この場合、血液がリザーバに受け取られると、第1の電極、第2の電極および参照電極は血液と接触するように構成される。第1のバイアス電圧は0.2V~0.45Vであり、第2のバイアス電圧は、第1のバイアス電圧と同じか、または異なる。グルコース-酸化層は、グルコースを酸化するように構成されたナノ多孔性金属材料またはグルコース-特異的酵素を含み得る。グルコース-酸化層は、局部的に一緒にクラスター化された多くのナノ粒子および不規則形状体中のナノ粒子の隣接するものの間で形成された粒子間ギャップを含む不規則形状体を含むことができ、ナノ粒子は、約2nm~約5nmの直径を有する、概ね卵形または球形状であり、粒子間ギャップは約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有する。ここで、不規則形状体は相互に連結され得、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークが提供される。不規則形状空間は不規則形状体の隣接する部分間で形成され得、ナノサイズまたはマイクロサイズであり、不規則形状空間は相互に連結され、不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークが提供される。
【0052】
発明のさらにもう一つの態様は、第1の、第2のおよび第3の端子が配列された端子部をさらに含む前述のセンサ装置;第1の対応端子、第2の対応端子、第3の対応端子、回路網、および回路網に接続された電力を含む対応装置を含むシステムを提供し、対応装置は、端子部と連結する、またはこれに係合するように構成された対応端子部をさらに含む。ここで、第1、第2および第3の対応端子は、センサ装置の端子部および対応装置の対応端子部が連結または係合されると、第1の端子は第1の対応端子に電気的に接続し、第2の端子は第2の対応端子に電気的に接続し、第3の端子は第3の対応端子に電気的に接続するように、対応端子部内に配列される。対応装置の回路網は第1の対応端子と第3の対応端子の間に第1のバイアス電圧を提供するように構成され、対応装置の回路網はさらに第2の対応端子と第3の対応端子の間に第2のバイアス電圧を提供するように構成される。
【0053】
前述のシステムでは、対応装置は、少なくとも1つのプロセッサおよび少なくとも1つのメモリを含む、無線で対にされているコンピューティングデバイスと無線で通信するように構成された無線通信モジュールを含み得る。対応装置は、第1の対応端子で第1の電流、および第2の対応端子で第2の電流を受け取るように構成され得る。対応装置は、第1の電流を伝達する時に第1の電流と一緒に、または関連付けて第2の電流を伝達するように構成され得る。第1の電流は第1のタイムスタンプと共に伝達され得、第2の電流は第2のタイムスタンプと共に伝達され得、第1および第2のタイムスタンプは同一の時刻を示す。
【0054】
前述のシステムは、無線で対にされているコンピューティングデバイスの少なくとも1つのプロセッサによりインストールされ、実行可能なソフトウェアをさらに含み得る。実行されると、ソフトウェアは下記を含む方法を実施するように構成される:コンピューティングデバイスの少なくとも1つのメモリに、対応装置から互いに一緒に、または関連付けて受け取られた第1の電流および第2の電流を保存させること;第1の電流および第2の電流を処理して、センサ装置の第1の電極のグルコース-酸化層におけるグルコースの酸化を示す値を提供すること;ならびに、その値またはその対応する情報をコンピューティングデバイスのディスプレイ上に提示させること。
【0055】
前述のシステムでは、第1の電流および第2の電流のいずれかまたは両方は連続信号の形態であってもよく、第1の電流および第2の電流を処理することは、同時に得られた第1の電流および第2の電流の値を処理することを含み得る。ここで、値の処理は、第2の電流を第1の電流から引くことを含み得る。第1の電流および第2の電流は、少なくとも1つのメモリ内に互いに関連させられて保存され得る。前述のシステムは、無線で対にされているコンピューティングデバイスにおいてインストールされ、実行可能なソフトウェアをさらに含み得る。実行されると、ソフトウェアは、対応装置から受け取られた第1の電流および第2の電流を使用して、データ処理を実施し、センサ装置の第1の電極が接触する液体中に含まれるグルコースのレベルを得るように構成される。ここで、ソフトウェアはグルコースのレベルを得るために処理する時に第2の電流を必要とする。
【0056】
前述のシステムでは、対応装置は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのメモリ、および少なくとも1つのメモリに保存され、かつ、少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なソフトウェアをさらに含み得る。実行されると、ソフトウェアは下記を含む方法を実施するように構成される:少なくとも1つのメモリに、センサ装置から互いに一緒に、または関連付けて受け取られた第1の電流および第2の電流を保存させること;ならびに、第1の電流および第2の電流を処理して、センサ装置の第1の電極のグルコース-酸化層におけるグルコースの酸化を示す値を提供すること。ここで、処理は、第2の電流を第1の電流から引くことを含み得る。第1の電流および第2の電流のいずれかまたは両方は連続信号の形態であってもよく、第1の電流および第2の電流を処理することは、同時に得られた第1の電流および第2の電流の値を処理することを含み得る。対応デバイスは、ディスプレイをさらに含むことができ、方法は、その値またはその対応する情報をディスプレイ上に提示させることをさらに含み得る。対応デバイスは、ディスプレイを含むデバイスと無線で対にするように構成された無線通信モジュールをさらに含むことができ、方法は、その値またはその対応する情報を無線で対にされているデバイスのディスプレイ上に提示するために、データを無線で対にされているデバイスに伝達させることをさらに含み得る。
【0057】
発明のさらにもう一つの態様は、電気化学感知の方法を提供する。方法は下記を含む:グルコースを酸化することができるグルコース-酸化層を含む第1の電極、グルコースを酸化することができる層を含まない第2の電極、および参照電極を含むセンサ装置を提供すること;第1の電極、第2の電極および参照電極を、グルコースおよびアスコルビン酸およびアセトアミノフェンを含む液体と接触させること;第1の電極と参照電極の間に、グルコース-酸化層においてグルコースを酸化するのに十分な第1のバイアス電圧を印加させ、グルコースならびにアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの少なくとも1つがグルコース-酸化層において酸化されるようにする、さらに、第1の電流が第1の電極から発生させられるようにすることであって、第1の電流はグルコース酸化により引き起こされたグルコース成分、ならびに、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの少なくとも1つの酸化により引き起こされた第1の干渉成分を含むこと;第2のバイアス電圧を第
2の電極と参照電極の間に印加させ、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの少なくとも1つが第2の電極において酸化されるが、グルコースはその中で酸化されないようにする、さらに、第2の電流が第2の電極から発生させられるようにすることであって、第2の電流は第2の電極においてアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの少なくとも1つの酸化により引き起こされた第2の干渉成分を含む、こと;ならびに、処理のために第1の電流および第2の電流を提供することであって、第1の電流は処理のために提供され、第2の電流もまた、第1の電流と関連付けて提供されること。
【0058】
前述の方法では、第1の電流および第2の電流は同時に、またはグルコースレベルが、実質的にまたはあらかじめ決められた許容レベルを超えて変化しない合理的な期間内に次々と生成され得る。第1の電流は第1の電流の発生時間を示す情報と共に提供することができ、第2の電流は第2の電流の発生時間を示す情報と共に提供され得る。第2の電流は、第1の電流が提供される時はいつでも第1の電流と一緒に提供され得る。前述の方法では、第1のバイアス電圧は0.2V~0.32Vで印加され、これにより、グルコース-酸化層はグルコースおよびアスコルビン酸を酸化するが、アセトアミノフェンを酸化せず、この場合、第1の干渉成分はアスコルビン酸の酸化により引き起こされ、アセトアミノフェンの酸化によるものではなく;第2のバイアス電圧は0.2V~0.32Vで印加され、これにより、第2の電極はアスコルビン酸を酸化するが、アセトアミノフェンを酸化せず、この場合、第2の干渉成分はアスコルビン酸の酸化により引き起こされ、アセトアミノフェンの酸化によるものではない。別の場合では、第1のバイアス電圧は0.34V~0.45Vで印加され、これにより、グルコース-酸化層は、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンを酸化し、この場合、第1の干渉成分はアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの酸化により引き起こされ;第2のバイアス電圧は0.34V~0.45Vで印加され、これにより、第2の電極は、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンを酸化し、この場合、第2の干渉成分はアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの両方の酸化により引き起こされる。
【0059】
前述の方法では、センサ装置は、グルコース-酸化層上に形成され、ポリ-フェニレンジアミン(ポリ-PD)を含むマルトース-ブロッキング層をさらに含み得る。センサ装置は、皮下で被検体の体液と接触するように構成された皮下部を含む、連続グルコースモニタリング(CGM)電極モジュールであってもよく、第1、第2および参照電極は皮下部内で形成され、第1の電極、第2の電極および参照電極を液体と接触させることは、皮下部を被検体の身体中に皮下挿入することを含み得る。グルコース-酸化層は、ナノ多孔性金属層を含むことができ、第1の電極はさらに下記を含み得る:ナノ多孔性金属層上に形成された電解質イオン-ブロッキング層および電解質イオン-ブロッキング層上に形成された生体適合性層。電解質イオン-ブロッキング層は液体中に含まれるNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-がナノ多孔性金属層に向かって拡散するのを阻止し、そのため、電解質イオン-ブロッキング層より上と電解質イオン-ブロッキング層より下との間でNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-の総計濃度の実質的な不連続性が存在する。
【0060】
前述の方法では、センサ装置はリザーバを含む血糖モニタリング(BGM)電極モジュールであり、第1の電極、第2の電極および参照電極を液体と接触させることは、血液試料をリザーバ中に提供することを含み得る。グルコース-酸化層は、局部的に一緒にクラスター化された多くのナノ粒子および不規則形状体中のナノ粒子の隣接するものの間で形成された粒子間ギャップを含む不規則形状体を含むことができ、ナノ粒子は、約2nm~約5nmの直径を有する、概ね卵形または球形状であり、粒子間ギャップは約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有する。不規則形状体は相互に連結され得、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークが提供される。不規則形状空間は不規則形状体の隣接する部分間で形成され得、ナノサイズまたはマイクロサイズであり、不規則形状空間は、相互に連結され得、不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークが提供される。
【0061】
前述の方法では、センサ装置は、第1の電極に電気的に接続された第1の端子、第2の電極に電気的に接続された第2の端子、および参照電極に電気的に接続された第3の端子をさらに含み得る。センサ装置は、第1の、第2のおよび第3の端子が配列された端子部をさらに含むことができ、第1のバイアス電圧および第2のバイアス電圧を印加させることは、第1の対応端子、第2の対応端子、第3の対応端子、回路網、および回路網に接続された電力を含む対応デバイスと連結することを含み得る。対応装置は、センサ装置の端子部と連結または係合させるために対応端子部をさらに含み得る。第1、第2および第3の対応端子は対応端子部内に、センサ装置の端子部および対応装置の対応端子部が連結または係合されると、第1の端子は第1の対応端子に電気的に接続し、第2の端子は第2の対応端子に電気的に接続し、第3の端子は第3の対応端子に電気的に接続するように配列され得る。対応装置の回路網は第1の対応端子と第3の対応端子の間に第1のバイアス電圧を提供することができ;対応装置の回路網は第2の対応端子と第3の対応端子の間に第2のバイアス電圧を提供し得る。
【0062】
発明のさらにもう一つの態様は、グルコースレベルを提供または決定する方法を提供する。方法は下記を含む:少なくとも1つのメモリ内で保存され、センサ装置または別のデバイスで提供される少なくとも1つのプロセッサにより実行可能なソフトウェアを提供すること;少なくとも1つのプロセッサを用いて、ソフトウェアを実行して、第1の電流および第2の電流を処理し、センサ装置の第1の電極のグルコース-酸化層におけるグルコースの酸化を示す値を提供すること;ならびにその値またはその対応する情報を、センサ装置、他のデバイスまたはさらに別のデバイスで提供されるディスプレイ上に提示させること。
【0063】
前述の方法では、少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサは他のデバイスにおいて提供される。方法はさらに下記を含み得る:第1の電流および第2の電流を他のデバイスに伝達すること;ならびに、実行前に、少なくとも1つのメモリに、互いに一緒に、または関連付けて受け取られる第1の電流および第2の電流を保存させること。前述の方法では、第1の電流は第1のタイムスタンプと共に伝達され、第2の電流は第2のタイムスタンプと共に伝達され、第1および第2のタイムスタンプは同一の時刻を示す。前述の方法では、第1の電流および第2の電流のいずれかまたは両方は連続信号の形態であってもよく、第1の電流および第2の電流を処理することは、同時に得られた第1の電流および第2の電流の値を処理することを含み得る。前述の方法では、処理は、第2の電流を第1の電流から引くことを含み得る。
【0064】
発明のさらにもう一つの態様は、下記を含むセンサ装置を提供し:ナノ多孔性金属層を含む作用電極;および参照電極;および作用電極と参照電極の間に印加されるバイアス電圧、ここで、グルコース-特異的酵素は作用電極において存在しない。
【0065】
センサ装置では、ナノ多孔性金属層は、局部的に一緒にクラスター化された多くのナノ粒子および不規則形状体中のナノ粒子の隣接するものの間で形成された粒子間ギャップを含む不規則形状体を含み、ナノ粒子は、約2nm~約5nmの直径を有する、概ね卵形または球形状であり、粒子間ギャップは約0.5nm~約2nmの粒子間ギャップ距離を有する。不規則形状体は相互に連結され得、不規則形状体の3次元相互連結ネットワークが提供される。不規則形状空間は不規則形状体の隣接部分の間で形成され、ナノサイズまたはマイクロサイズであり、不規則形状空間は相互に連結され、不規則形状空間の3次元相互連結ネットワークが提供される。センサ装置では、バイアス電圧はナノ多孔性金属層でグルコースの酸化を引き起こすのに十分であるが、ナノ多孔性金属層でアセトアミノフェンの酸化を引き起こすには十分ではないように設定され、バイアス電圧は約0.20V~約0.32Vの範囲内で設定される。
【0066】
センサ装置は、皮下で被検体の体液と接触するように構成された皮下部を含む連続グルコースモニタリング(CGM)電極モジュールを含むことができ、作用電極および参照電極は皮下部内で形成される。作用電極は、下記をさらに含み得る:ナノ多孔性金属層上に形成された電解質イオン-ブロッキング層;および電解質イオン-ブロッキング層上に形成された生体適合性層。電解質イオン-ブロッキング層は、液体中に含まれるNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-がナノ多孔性金属層に向かって拡散するのを阻止するように構成され得、そのため、電解質イオン-ブロッキング層より上と電解質イオン-ブロッキング層より下との間でNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-の総計濃度の実質的な不連続性が存在する。電解質イオン-ブロッキング層は、作用電極のコンディショニングがバイアス電圧の印加を用いて、被検体の体液と接触してから30分以内に完了するように、作用電極のコンディショニングを促進するように構成され得る。
【0067】
前述のセンサ装置は、ポリ-フェニレンジアミン(ポリ-PD)を含み、ナノ多孔性金
属層と電解質イオン-ブロッキング層の間に挿入されるマルトース-ブロッキング層をさ
らに含み得る。4-20mM(およそ72-360mg/dL)の濃度を有するマルトー
スおよびグルコースを含む液体と接触させ、かつ、バイアス電圧を印加すると、マルトー
ス-ブロッキング層はグルコースがそこを通過するのを可能にし、かつ、マルトースがそ
こを通過するのを実質的にブロックするように構成され、そのため、定常状態ではグルコ
ース-酸化電流は、10nA/mMcm
2
より高いレベルにあるが、一方、マルトースの酸化のみにより引き起こされたマルトース酸化電流は5nA/mMcm
2
より低い。
【0068】
発明のさらにもう一つの態様は、グルコース感知の方法を提供する。方法は下記を含む
:前述のセンサ装置の1つを提供すること;ならびに、作用電極(またはグルコース感知
電極)と参照電極の間に約0.20V~約0.32Vの範囲内でバイアス電圧を印加する
こと。ここで、バイアス電圧の印加はナノ多孔性金属層におけるグルコースの酸化を引き
起こし、そのため、グルコース酸化のみにより引き起こされたグルコース-酸化電流は10nA/mMcm
2
より高いレベルにあり、一方、バイアス電圧の印加はナノ多孔性金属層においてアセトアミノフェンの十分な酸化を引き起こず、そのため、ナノ多孔性金属層におけるアセトアミノフェン酸化により引き起こされたアセトアミノフェン酸化電流は5nA/mMcm
2
より低い。
【0069】
特許または出願ファイルはカラーで実行済みの図面を含む。カラー図面を有するこの特許または特許出願公開のコピーは、要求および必要な料金の支払いに応じて局から提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】発明の実施形態による概念電気化学グルコース感知システムを示す。
【
図2】一実施形態による酵素グルコース感知システムのための作用電極を示す。
【
図3】一実施形態による非酵素感知システムのためのナノ多孔層を含む作用電極を示す。
【
図5A】一実施形態によるナノ多孔層のクラスター化形態を示す。
【
図5B】一実施形態によるクラスターのTEM写真画像である。
【
図5D】一実施形態による、その上面からとったナノ多孔層のSEM写真画像である。
【
図6A】一実施形態によるクラスター化ナノ多孔層を製造するためのフローチャートである。
【
図6B】別の実施形態によるクラスター化ナノ多孔層を製造するためのフローチャートである。
【
図7】異なる相を示す界面活性剤の状態図例である。
【
図8】一実施形態による逆ミセル相およびナノ粒子-界面活性剤コロイドを示す。
【
図9】一実施形態によるナノ粒子クラスターのTEM写真画像を含む。
【
図10A】一実施形態によるナノ多孔層の非クラスター化形態を示す。
【
図10B】一実施形態による金属表面上に形成されたナノ多孔層の非クラスター化形態のTEM写真画像である。
【
図11】一実施形態による非クラスター化ナノ多孔層を製造するためのフローチャートである。
【
図12】一実施形態による六角形ナノ構造を製造するためのフローチャートである。
【
図13A】一実施形態による六角形配列の形成を示す。
【
図13B】液晶相の六角形配列を用いた金属の堆積を示す。
【
図14】一実施形態により調製したナノ粒子-界面活性剤コロイドのための粒子サイズ分布を示す。
【
図15】一実施形態により調製したクラスターコロイドのための粒子サイズ分布を示す。
【
図16A】それぞれ、実施形態による電極ベースおよび非酵素グルコース感知作用電極の断面を示す。
【
図16B】それぞれ、実施形態による電極ベースおよび非酵素グルコース感知作用電極の断面を示す。
【
図17A】実施形態によるグルコース感知作用電極のSEM写真である。
【
図17B】実施形態によるグルコース感知作用電極のSEM写真である。
【
図17C】実施形態によるグルコース感知作用電極のSEM写真である。
【
図18】実施形態によるPBS中のグルコースおよび他の材料の酸化により発生した電流のプロファイルである。
【
図19】実施形態によるヒト血清中のグルコースおよび他の材料の酸化により発生した電流のプロファイルである。
【
図21】一実施形態によるマルトース-ブロッキング層を含む非酵素作用電極を示す。
【
図22】実施形態によるフェニレンジアミンのサイクリックボルタンメトリー電気化学重合中の酸化電圧の走査を示す。
【
図23】一実施形態による多孔性ポリマー層の多孔度を調整するための電気ショック処理のためのクロノアンペロメトリーセットアップを示す。
【
図24】一実施形態によるマルトース-ブロッキング層を製造するためのフローチャートである。
【
図25】実施形態によるマルトース-ブロッキング層を有するグルコース感知電極を用いてモニタした電流を示し、この場合、電流信号は、黒色および白色では容易にわからないので、カラーで提示される。
【
図26】実施形態によるマルトース-ブロッキング層を有するグルコース感知電極を用いてモニタした電流を示し、この場合、電流信号は、黒色および白色では容易にわからないので、カラーで提示される。
【
図27】実施形態によるマルトース-ブロッキング層を有するグルコース感知電極を用いてモニタした電流を示し、この場合、電流信号は、黒色および白色では容易にわからないので、カラーで提示される。
【
図28】実施形態によるマルトース-ブロッキング層を有するグルコース感知電極を用いてモニタした電流を示し、この場合、電流信号は、黒色および白色では容易にわからないので、カラーで提示される。
【
図29】実施形態によるマルトース-ブロッキング層を有するグルコース感知電極を用いてモニタした電流を示し、この場合、電流信号は、黒色および白色では容易にわからないので、カラーで提示される。
【
図30】実施形態によるマルトース-ブロッキング層を有するグルコース感知電極を用いてモニタした電流を示し、この場合、電流信号は、黒色および白色では容易にわからないので、カラーで提示される。
【
図32】一実施形態による電解質イオン-ブロッキング層の厚さにわたる電解質濃度降下を示す。
【
図33】一実施形態によるCGM電極ユニットを示す。
【
図34】一実施形態によるCGM電極ユニットを作製するためのフローチャートである。
【
図35】
図33のCGM電極を作製する様々な段階での中間生成物の上面図および断面図を示し、この場合、各断面は線3501について取られ、矢印方向で見たものである。
【
図36】
図33のCGM電極を作製する様々な段階での中間生成物の上面図および断面図を示し、この場合、各断面は線3501について取られ、矢印方向で見たものである。
【
図37】
図33のCGM電極を作製する様々な段階での中間生成物の上面図および断面図を示し、この場合、各断面は線3501について取られ、矢印方向で見たものである。
【
図38A】それぞれ、実施形態によるナノ多孔層を形成させた後の中間生成物および機能層を有するCGM作用電極の断面を示す。
【
図38B】それぞれ、実施形態によるナノ多孔層を形成させた後の中間生成物および機能層を有するCGM作用電極の断面を示す。
【
図39】実施形態による使い捨てグルコース感知カートリッジを示す。
【
図40】一実施形態による2-電極グルコース感知システムを示す。
【
図41】一実施形態による2-電極グルコース感知システムのためのCGM電極ユニットを示す。
【
図42A】一実施形態によるグルコースの酸化により発生した電流のプロファイルであり、この場合、作用電極は電解質イオン-ブロッキング層を含まない。
【
図43】一実施形態によるグルコースの酸化により発生した電流のプロファイルであり、この場合、作用電極は電解質イオン-ブロッキング層を含む。
【
図44】電解質イオン-ブロッキング層ありおよびなしの作用電極をコンディショニングするための時間の比較である。
【
図45A】一実施形態によるポテンシオスタットの写真である。
【
図45B】一実施形態によるポテンシオスタットの写真である。
【
図45C】一実施形態によるポテンシオスタットの写真である。
【
図46】一実施形態による非酵素CGM電極モジュールを用いたラットのグルコースレベルのCGMモニタリングを示すグラフである。
【
図47】一実施形態による非酵素CGM電極モジュールのためのクラークエラーグリッドである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
ここで開示される対象物について、以下、いくつかの特定の実施形態および実施例の観点から、添付の図面を参照してより詳細に記載し、説明する。ここでは、発明の実施形態のいくつかが示されるが、全てではない。全体を通じて、同様の数字は同様の要素または部分を示す。ここで開示される対象物は多くの異なる形態で具体化することができるが、本明細書で明記される特定の実施形態に制限されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が適用可能な法的必要条件を満たすように提供される。実際、ここで開示される対象物の多くの改変および他の実施形態は、ここで開示される対象物が関連する分野の当業者であれば思いつくであろう。そのため、ここで開示される対象物は、開示される特定の実施形態に制限されるものではなく、改変および他の実施形態は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることが理解されるべきである。
【0072】
電気化学グルコース感知システム
電気化学グルコース検出
電気化学グルコース感知は、電解質溶液中のグルコース濃度を測定する。
図1は概念的に、試験流体または電解質溶液102中のグルコース濃度を検出するための電気化学グルコース感知システム101を示す。システム101は作用または感知電極103、対電極105および参照電極106を含み、それらはポテンシオスタット104に接続され、かつ、試験流体102と接触している。実施形態では、ポテンシオスタットは、電圧源109および電流センサ108として機能するための電気回路網を含む。電圧源109は、作用電極103および対電極105での酸化還元反応を駆動するバイアス電圧を提供する。ポテンシオスタットは、参照電極106に対して作用電極103でバイアス電圧を維持するためのオペアンプ107などの電気回路網をさらに含む。電流センサ108は、試験流体102中に含まれるグルコースが関与する酸化還元反応により発生する電流を検出する。
【0073】
酵素グルコース感知電極
全てではないが、ほとんどの電気化学グルコース感知システムはグルコース分子の検出のためにグルコース-特異的酵素を利用する。
図2は酵素グルコース感知システムのための作用電極103E、すなわち、酵素グルコース感知電極を示す。「グルコース感知電極」および「作用電極」という用語は本開示において同じ意味で使用される。酵素作用電極103Eは、導電層110および酵素層111を含む。任意で、酵素作用電極103Eは、
図2におけるように、酵素層111上に少なくとも1つの機能層112を含み得る。あるいは、示されていないが、少なくとも1つの機能層が、酵素層111と導電層110の間に配置され得る。酵素層111はグルコース-特異的酵素分子115を含み、その分子は、固定具113によりその中で維持される。グルコース分子がグルコース-特異的酵素と接触すると、酵素はグルコースのグルコノラクトンへの酸化を触媒する。グルコース酸化由来の電子は、最終的に導電層110に移され、電気化学感知システム101の電気回
路において電流が発生する。
【0074】
グルコースオキシダーゼ
いくつかの酵素グルコース感知システムでは、酵素作用電極103Eはグルコースオキシダーゼ(GOx)を含む。グルコースオキシダーゼ115は電子を、酵素の近くにとどまる分子酸素に移動させ、分子酸素は過酸化水素に還元される。システムにおいて適正なバイアス電圧が印加されると、導電層110は過酸化水素を酸化し、それから電子を引き出し、これにより、試験流体102中のグルコース濃度を示す電流が発生する。
【0075】
グルコースデヒドロゲナーゼ
他の酵素グルコース感知システムでは、酵素作用電極103Eはグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含む。グルコースオキシダーゼとは異なり、グルコースデヒドロゲナーゼは酸素を使用せず、代わりに、電子を電子メディエーターと呼ばれる他の隣接する化学成分へ移動させ、これは次いで、グルコース酸化からの電子を導電層110へ移動させる。電子メディエーターは、酵素層111に含めることができる。あるいは、電子メディエーターは、酵素層111と導電層110の間の別個の層で(図示せず)提供することができる。グルコースデヒドロゲナーゼはグルコースオキシダーゼを超える感度といういくつかの利点を有するが、この酵素はマルトースならびにグルコースを酸化し、これにより、グルコース濃度の正確な感知が妨げられる。
【0076】
非酵素グルコース感知電極
非酵素電気化学グルコース感知システムは、グルコースを検出するために、グルコース-特異的酵素またはどの酵素も使用しない。代わりに、非酵素グルコース感知システムは、グルコース-特異的酵素なしでグルコースを検出する非酵素作用電極を有する。実施形態では、非酵素作用電極は、中レベルのバイアス電圧でグルコース分子の酸化を可能にする少なくとも1つのグルコース酸化層を含む。一般に、バイアス電圧が高いほど、少なくとも1つのグルコース酸化層でグルコース酸化が起こる可能性が高くなる。しかしながら、高いバイアス電圧では、他の化学成分もまた酸化されるので、バイアス電圧には制限がある。よって、非酵素電気化学グルコース感知は、試験流体に含まれる他の化学成分の酸化を引き起こさないバイアス電圧で、グルコースを酸化する材料に依存する。
【0077】
非酵素グルコース感知電極のためのナノ多孔層
図3は、導電性層110およびナノ多孔性グルコース酸化層(またはナノ多孔層)117を含む非酵素作用電極(簡単に「作用電極」)103NEを示す。実施形態では、ナノ多孔層117は、中バイアス電圧でグルコースの酸化を引き起こす、可能にするまたは促進するためのナノ多孔性内部構造を含む。グルコース酸化が起こる場合、導電層110はグルコース酸化から電子を取り出し、電流が電気回路において発生する。電流は電流センサ108により検出することができ、システムのハードウェアおよびソフトウェアにより解釈することができる。任意で、作用電極103NEは少なくとも1つの機能層112を、ナノ多孔層117上に、またはナノ多孔層117と導電層110の間に含み得る(図示せず)。
【0078】
導電層-材料
バイアス電圧を用いると、
図2および3の導電層110はグルコース酸化から電子を取り出し、それらを電流センサ108へ移動させる。実施形態では、導電層110は少なくとも1つの導電性材料を含み、またはこれから製造され、システム101の電気回路に接続される。いくつかの実施形態では、小規模の導電層110を仮定すると、半導電性材料が導電性材料の代わりに使用され得る。導電層の材料についての非限定的な例としては、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ステンレス鋼、ケイ素(アモルファス、多結晶および単結晶)、導電炭素材料、例えばグラファイト、グラフェン、フルオレン、カーボンナノチューブが挙げられる。実施形態では、導電層110はグルコース酸化層117のナノ多孔性内部構造を含まない。
【0079】
導電層-構造
実施形態では、導電層110は均質材料の単一層から形成され得る。別の場合では、導電層110は異なる材料から製造された複数の副層を含み得る。いくつかの実施形態では、導電層110は上面副層および上面副層下の1つ以上の副層を含む。実施形態では、上面副層は銀、銅、アルミニウムまたは銀、銅またはアルミニウムよりも酸化する傾向が大きな他の導電材料を含まない。上面副層は、他の副層(複数可)よりも導電性が低い可能性がある。いくつかの実施形態では、導電層110は導電炭素層を上面副層として、および、銀層を炭素層下の別の副層として含む。導電層110は、特定例に大きく依存して変動する可能性がある厚さを有する。いくつかの実施形態では、導電層110は省略することができ、ナノ多孔層は、導電性ワイヤまたは接続を介して直接電流センサに接続される。
【0080】
対電極
バイアス電圧を用いると、化学成分の還元が対電極105で起こる。実施形態では、対電極105は少なくとも1つの導電性または半導電性材料を含み、システム101の電気回路に接続される。実施形態では、対電極105は、均質材料の単一層または異なる材料から製造された複数の層から形成され得る。導電層110のための導電または半導電材料もまた、対電極105において使用され得るが、特定のシステムでは、同じでない材料が導電層110および対電極105において使用される。
参照電極
【0081】
参照電極106は、感知電極103と参照電極の間でバイアス電圧を維持することにより、電気化学感知システムにおいて安定性を提供する。その結果、グルコース酸化は、対電極105での還元が感知電極103での酸化と同じ速度ではない場合であっても、感知電極103で継続することができる。いくつかの実施形態では、対電極105は省略することができ、参照電極106は対電極および参照電極の2重機能を果たし得る。実施形態では、参照電極106は、均質材料の単一層または異なる材料から製造された複数の層から形成され得る。導電層110のための導電または半導電材料もまた参照電極105において使用され得るが、特定のシステムでは、同じでない材料が導電層110および参照電極106において使用される。いくつかの実施形態では、参照電極106は導電または半導電材料層上に塩層を含み得る。例えば、塩層は塩化銀(AgCl)から製造され、またはこれを含む。
【0082】
電流センサ
電流センサ108は作用電極103から流れる電流を測定する。電流センサ108は、特定の時間点で流れる電流をアンペロメトリーにより検出し得る。別の場合では、電流センサ108は電量電荷-測定デバイスであってもよい。
【0083】
試験流体
実施形態では、試験流体はヒトまたは動物の生物流体であるが、それに限定されない。いくつかの実施形態では、試験流体は、生物流体および生物流体に添加された少なくとも1つの追加の物質を含む液体混合物である。生物流体は、例えば、血液、間質液、脳脊髄液、リンパ液または尿を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、試験流体は実験のために調製された非生物学的液体を含む。
【0084】
バイアス電圧
作用電極103NEと参照電極106の間に印加されるバイアス電圧は0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45または0.46Vであり、または約それらである。実施形態では、印加されるバイアス電圧は、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つの電圧値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、約0.20V~約0.30V、約0.30V~約0.40V、約0.28V~約0.40V、約0.30V~約0.38V、約0.28V~約0.36V、などであってもよい。
【0085】
ナノ多孔層
ナノ多孔層
作用電極103NEのためのナノ多孔層117はナノサイズ内部構造、例えば空洞、空間および開口(集合的に「ナノ細孔」または「ナノポア」)を含む。実施形態では、ナノ多孔層117のナノポアはグルコースの酸化を可能にし、または促進し、グルコース濃度はグルコース酸化により引き起こされた電流に基づき測定することができる。発明のいずれの態様も、いずれの理論または信念にも縛られないが、グルコース分子がナノポアに入り、電極の非多孔性表面上でよりも、ナノ多孔層117内でよりしばしば、かつ、より長い時間、内表面と接触すると、グルコース酸化が起こると考えられる。
【0086】
酵素なし、かつ、電子メディエーターなし
ナノ多孔層117を組み込むと、作用電極103NEには、ナノ多孔層117の固体材料よりも、より複雑な作製プロセスを必要とし、より安定ではないグルコース-特異的酵素を提供しないことができる。さらに、酵素感知電極103NEは、異なる材料間での電子移動を促進する電子メディエーターなしで動作することができる。実施形態では、作用電極103NEは酵素も電子メディエーターも含まない。
【0087】
ナノ多孔層のための材料
いくつかの実施形態では、ナノ多孔層117は白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ジルコニウム(Zr)、イリジウム(Ir)、または前述の元素の酸化物から製造され、またはこれを含むが、それに限定されない。他の実施形態では、ナノ多孔層117は、Pt-Ir、Pt-Ru、Pt-Pdを含む、前の文で列挙される2つ以上の金属元素の合金材料から製造され、またはこれを含むが、それに限定されない。
【0088】
規定される粗さ係数
粗さ係数または凹凸度は、物体の実表面積対幾何表面積の比である。ここで、幾何表面積は、物体内の内表面を考慮せずに平面上に投影された物体の投影面積を示す。実表面積は内表面を考慮した表面の総面積を示す。
図4について説明すると、例えば、ナノ多孔層117が高さまたは深さ118および上面長方形119を有する長方形ブロックである場合、ナノ多孔層の投影面積または幾何表面積は、外側に曝露されている上面長方形の面積である。ナノ多孔層の実表面積は、例えば、実表面上でのプロトン吸着から電流を検出するよく知られたサイクリックボルタンメトリー技術を使用して、電気化学的に測定され得る。
【0089】
ナノ多孔層の粗さ係数
粗さ係数値はナノ多孔層117内の内部細孔の総量を示す。ナノ多孔層117の粗さ係数は、グルコース酸化についてのナノ多孔層117の感度と関連し得る。一般に粗さ係数が高いほど、より多くのグルコース酸化が起こり得る。ナノ多孔層117の粗さ係数は100、200、300、400、500、600、700、800、900、100、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400もしくは2500または約それらである。実施形態では、粗さ係数は、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つの粗さ係数値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、約100~約2500、約750~約1250、または約850~約1150であってもよい。
【0090】
ナノ多孔層の厚さ
粗さ係数値は、その単位体積でのナノ多孔性材料の多孔度または密度のレベルを示さないが、その値は内部細孔の総量を示し得る。よって、ナノ多孔性材料の多孔度のレベルによって、実施形態では、ナノ多孔層の厚さは、粗さ係数についての標的値を達成するように調整され得る。実施形態では、ナノ多孔層117の厚さは、約0.03、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10μmであってもよい。いくつかの実施形態では、厚さは、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つの厚さ値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、約0.05μm(50nm)~約10μm、約0.5μm~約8μm、または約2μm~約7μmであってもよい。
【0091】
形態
ナノ多孔層117は、各特定の製造において異なる内部形態を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ多孔層117は、一緒に堆積され、それら自体の間でナノポア(粒子間ナノポア)を形成するナノ粒子を含むことができ、またはそれらから製造され得る。他の実施形態では、ナノ多孔層117は、クラスター内で粒子間ナノポアを形成する一緒に堆積されたナノ粒子のクラスターおよびまた、クラスター間の空間(クラスター間ギャップまたは空間)を含むことができ、またはそれらから製造され得る。他の実施形態では、ナノ多孔層117は、その中にナノポアを含む六角形構造などの特定の形状のナノ構造の反復を含むことができ、またはそれらから製造され得る。また、各特定の製造では、ナノ多孔層117は単位体積あたり異なるレベルの多孔度および異なる粗さ係数値を有し得る。
【0092】
ナノ多孔層の製造
ナノ多孔層117は、金属イオンおよび界面活性剤を含む液体組成物を使用して調製され得る。実施形態では、ナノ多孔層の異なる形態は界面活性剤の異なる相を使用して形成され得る。界面活性剤のミセル相、逆ミセル相、液晶相または別の相が、特定の形態のナノ多孔層を生成させるのに使用され得る。これらの異なる相では、金属イオンは界面活性剤の親水性部分に隣接して整列され、または局部的に濃縮される。液体組成物中の局在金属イオンは表面上で還元および堆積のための追加のプロセスに供せられ、異なる形態を有するナノ多孔層117が提供される。
【0093】
クラスター化ナノ多孔層
クラスター化形態
図5Aは、基材129上の、クラスター化形態120を有するナノ多孔層の垂直断面を示す。ナノサイズの現実では、基材129の上面は図示されるように直線ではない可能性があり、凹凸であってもよい。クラスター化形態120では、多くのナノ粒子121が一緒になり、不規則形状のクラスター125を形成する。説明のために、異なる陰影または網掛けが異なるクラスター125において使用される。これらの不規則形状のクラスター125は不規則に積み重ねられ、ナノ多孔層が形成される。
図5Bは、それらが堆積してナノ多孔層を形成させる前のいくつかのクラスター125の透過型電子顕微鏡(TEM)写真画像である。
図5Cは
図5Bの丸で囲まれた部分のズームイン画像である。
図5Dは、ナノ多孔層の上面からとったクラスター化形態を有するナノ多孔層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真画像である。
【0094】
クラスター化形態の細孔および空間
不規則形状のクラスター125の不規則な積み重ねを用いると、隣接するクラスターはそれらの間にクラスター間ギャップまたは空間127を形成する。これらのクラスター間ギャップ127はナノサイズであり、およびマイクロサイズであってもよい。この開示では、ナノサイズは、1nmより大きく、かつ、100nmより小さいことを意味し、マイクロサイズは100nmより大きく、かつ100μmより小さいことを意味する。各クラスター125は概球状または卵形ナノ粒子121を含み、またはこれから製造される。各クラスターでは、個々のナノ粒子は、一般に互いに離れており、それらの間で小さなギャップ123を形成する。小さなギャップはナノサイズであり、粒子間ナノポア123と呼ばれる。実施形態では、粒子間ナノポアはクラスター全体にわたって見いだされる。実施形態では、粒子間ナノポアは各クラスター内で相互に連結された、またはネットワーク化されたチャネルを形成する。
図5Aおよび5Dは、各クラスター125内のこれらの粒子間ナノポア123を示す。
【0095】
クラスター間ギャップ/空間の形成
実施形態では、クラスター化形態を生成させるために、不規則形状のクラスター125が最初に液体の懸濁液として調製される。次いで、懸濁液が基材129上に分配され、これが乾燥に供せられる。液体が乾くにつれ、クラスターが基材上に、および、他のクラスター上に自然に堆積される。乾燥の間、外力はクラスターに適用され得ない。したがって、クラスターは堆積するにつれ詰まることはない。クラスターが堆積し、他のクラスター上に積み重なるにつれ、各クラスターは基材表面または隣接するクラスターと接触し得る。乾燥の完了後に、クラスターは隣り合うまたは隣接するクラスターと接する、または接触する。堆積されたクラスターは、接合点または接触を介して相互に連結され、または統合される。個々のクラスターの不規則形状のために、不規則形状のギャップおよび空間が隣接するクラスター間で形成され、この場合、ギャップおよび空間は、堆積されたクラスターの表面および外形が不規則形状のギャップおよび空間により囲まれているかのように、堆積されたクラスターの不規則形状を規定する。不規則形状のギャップおよび空間は、クラスター間ギャップまたは空間127と呼ばれる。
【0096】
クラスターおよびクラスター間ギャップの分布
実施形態では、不規則形状のクラスター体125が、ナノ多孔層117のクラスター化形態120の全体にわたって分布される。不規則形状のクラスター体125は接合点を介して相互に連結され、これは、これらのクラスター体はそれら自体と接触し、ナノ多孔層117の概ね全体にわたってクラスター体の3次元ネットワークを形成することを意味する。クラスター間ギャップ127は、不規則形状のクラスター体の表面を規定し、それを取り囲み、それら自体と相互に連結され、ナノ多孔層117全体にわたって3次元の相互に連結された、またはネットワーク化されたチャネルが形成される。クラスター間ギャップおよび空間127は、ナノ多孔層117全体にわたって上面から(図示せず)底面まで(基材129上またはこれの直上)よく分布される。不規則形状のクラスター化体の3次元ネットワークおよび不規則形状のギャップの3次元ネットワークは3次元的に相補的であり、高度にネットワーク化された3次元メッシュ構造が形成される。クラスター体およびチャネルの3次元ネットワークは、粒子間ギャップおよび空間がナノ多孔層117全体にわたって一緒にネットワーク化されていることを除き、スポンジの3次元内部形状に類似する可能性がある。
【0097】
ナノ粒子および粒子間ナノポアの分布
各クラスターは多くのナノ粒子121と粒子間ナノポア123で形成されると仮定すると、ナノ粒子121および粒子間ナノポア123はナノ多孔層117の概ね全体にわたって分布される。したがって、粒子間ナノポア123は各クラスター内で相互に連結され、および、クラスター間の接合点内の粒子間ナノポアを介して、かつ、ナノ多孔層117全体にわたって相互に連結されるクラスター間ギャップ127を介して、ナノ多孔層117の概ね全体にわたる他のクラスターの粒子間ナノポアと相互に連結される。
【0098】
グルコースの拡散のためのクラスター間ギャップ/空間
実施形態では、クラスター間ギャップ127の相互連結は、ナノ多孔層117内でグル
コース分子(0.7-0.8nmの長さ)の拡散のためのネットワーク化チャネルを提供
する。グルコース酸化はマイクロサイズ空間内よりも、ナノサイズ粒子間ナノポア内で主
に起こることが理解される。クラスター間ギャップ127が、ナノ多孔層117全体にわ
たってネットワーク化される、または相互に連結されるにつれ、グルコース分子のサイズ
を考慮すると大規模であるクラスター間空間を介して、グルコース分子はナノ多孔層117内のほとんどどこにでも到達することができる。また、クラスター間ギャップ127は粒子間ナノポア123にうまく相互連結されるので、ナノ多孔層117内のどこかの粒子間ナノポア123はグルコース酸化のために曝露され、かつ開かれている可能性がある。したがって、クラスター間ギャップの3次元の相互に連結された、またはネットワーク化されたチャネルは、クラスター間ギャップで形成されたそのような相互に連結されたチャネルを有さないナノ多孔層よりも、より多くのグルコース酸化、すなわち、グルコース酸化のより強い信号(より高い電流)を提供することができる。
【0099】
2つの型の粒子および2つの型の細孔
記載されるように、クラスター化形態120は、2つの異なる型の細孔を規定する2つの異なる型の粒子を含む。粒子の観点から、1つはナノ粒子121であり、もう1つは、ナノ粒子121から作られたクラスター125である。細孔の観点から、1つはクラスター125内のナノ粒子121間の粒子間ナノポア123であり、もう1つはクラスター125間のクラスター間ギャップ127である。
【0100】
ナノ粒子のクラスター
図5BのTEM写真画像は不規則形状のクラスターを示す。各クラスター内のナノ粒子121の数は大きく変動する可能性があり、それに応じてクラスター125のサイズが変動し得る。クラスター化形態では、いくつかのクラスター125はナノサイズであり(100nmより小さい)、他のものはマイクロサイズ(100nm~100μm)である。クラスター125は約20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600、620、640、660、680または700nmの長さまたは直径を有する。実施形態では、クラスター125の長さまたは直径は、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つの長さまたは直径値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、約20nm~約300nm、または約60nm~約240nmであってもよい。クラスター125は、約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、280または300nmの平均直径または長さを有し得る。実施形態では、クラスター125の平均直径は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約100nm~約220nmであってもよい。
【0101】
ナノ粒子
図5CのTEM写真画像は単一クラスター内のナノ粒子を示す。クラスター内のナノ粒子121は分離しており、概ね球状(ボール様)または卵形(卵様)形状であるが、それに限定されない。ナノ粒子121は約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、または6.5の直径を有する。実施形態では、直径は、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つの直径値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、約2nm~約5nmであってもよい。ナノ粒子121は約2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75または4.0の平均直径を有し得る。実施形態では、ナノ粒子121の平均直径は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約2.5nm~約4.0nm、約2.75nm~約3.75nm、または約2.25nm~約3.5nmであってもよい。実施形態では、2-5nmの平均直径を有するナノ粒子が、ナノ多孔層117全体にわたって見いだされる。
【0102】
粒子間ナノポア
図5CのTEM写真画像はまた、クラスター内のナノ粒子間の粒子間ナノポアを示す。
粒子間ナノポアは、クラスター内でネットワーク化され、かつ、相互に連結される。粒子
間ギャップまたはナノポア123は同じクラスター内の2つの直接隣接するナノ粒子間の
粒子間ギャップ距離を有する。粒子間ギャップ距離は約0.25、0.5、0.75、1
.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0または4
.5nmである。実施形態では、粒子間ギャップ距離は、直前の文で列挙される任意の2
つの数字(2つの距離値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、約0.5n
m~約4.5nm、または約1.5nm~約4.0nmであってもよい。粒子間ナノポア
123は約0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25
、2.5、2.75、3.0または3.5nmの平均粒子間ギャップ距離を有し得る。実
施形態では、ナノポア123の平均粒子間ギャップ距離は、直前の文で列挙される任意の
2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約0.75nm~約1.5
nm、または約1.0nm~約2.5n
mであってもよい。実施形態では、1-2.5nmの平均粒子間ギャップ距離を有する粒子間ナノポア123が、ナノ多孔層117全体にわたって見いだされる。
【0103】
クラスター間ギャップ/空間
図5DのSEM写真画像は、ナノ多孔層の上面から見ることができるネットワーク化クラスター間ギャップの開口を示す。3次元形状は
図5Dの二次元画像においてよく提示されていないが、ナノ多孔層の上面は、積み重ねられたクラスターにより形成された谷および丘を含む。ナノ多孔層の内側では、谷および丘はクラスター間ギャップを形成する。クラスター間ギャップまたは空間は不規則形状である。クラスター間ギャップ127はナノサイズ~マイクロサイズである。クラスター間ギャップ127は、約25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675または700nmのクラスター間ギャップ距離を有する。実施形態では、クラスター間ギャップ距離は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約100nm~約1000nmであってもよい。クラスター間ギャップ127は、約100、150、200、250、300、350、400、450または500nmの平均クラスター間ギャップ距離を有する。実施形態では、平均クラスター間ギャップ距離は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約150nm~約400nmであってもよい。
【0104】
クラスター化ナノ多孔層の製造
全体のプロセス
実施形態では、クラスター化形態を有するナノ多孔層は、界面活性剤の等方性逆ミセル相(または「逆ミセル相」)を使用して調製され得る。
図6Aについて説明すると、工程601では、水性液体組成物が金属イオン源および逆ミセル相の界面活性剤を用いて調製される。金属イオンは、個々の逆ミセルの親水性空間内で局部的に濃縮される。その後、工程603で、還元剤が逆ミセル相に添加され、界面活性剤を含む液体組成物中に分散された金属ナノ粒子が形成される(「ナノ粒子コロイド」または「ナノ粒子-界面活性剤コロイド」)。その後、工程605で、界面活性剤がナノ粒子-界面活性剤コロイドから除去され、液体中に分散されたナノ粒子クラスター(「クラスターコロイド」または「クラスター-液体コロイド」)が収集される。任意で工程607で、収集されたクラスターコロイドは非界面活性剤液体と混合される。工程609で、クラスターコロイドは、例えば、印刷技術により、電気めっきの使用なしで、表面上に分配される。その後、工程611で、液体は乾燥され、表面129上にナノ多孔層117が形成される。
【0105】
界面活性剤
界面活性剤は単一分子内に親水性頭部(または親水性部分)および疎水性尾部(疎水性部分)を有する両親媒性有機化合物である。界面活性剤は、濃度および温度によって、水中で異なる構造または相を形成し得る。
図7は、異なる相を示す界面活性剤の状態図例であり、ミセル相131、六角形相133、ラメラ相135、および2ミセル相137が含まれる。
【0106】
等方性逆ミセル相の調製
工程601で、等方性逆ミセル相は、界面活性剤、金属イオンおよび水を含む水性液体組成物を用いて調製される。
図8の概念的説明におけるように、逆ミセル相は界面活性剤分子により形成された逆ミセル141を含む。各逆ミセル141は、親水性コアから放射状に延びる疎水性尾部により囲まれた親水性コア143を含む。親水性コア143は液体組成物の親水性成分、すなわち、水および金属イオンを封入する。よって、金属イオンは逆ミセルの親水性コア143内で局部的に濃縮される。
【0107】
界面活性剤例
界面活性剤は、処理のための合理的な条件下で等方性逆ミセル相を形成することができるものから選択される。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤が使用されるが、それに限定されない。界面活性剤の非限定的な例としては、アルキルベンゼンスルホネート、アルキル-ポリグリコシド、硫酸アルキル、カルボキシレート、カルボン酸エステル、セトマクロゴール1000TM、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドDEA、コカミドMEA、デシルグルコシド、デシルポリグルコース、ココアンホジ酢酸二ナトリウム、エトキシル化脂肪族アルコール、モノステアリン酸グリセロール、脂肪酸のグリコールエステル、IGEPAL CA-630TM、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、マルトシド、モノラウリン、マイコスブチリン、ナフタレンスルホネート、ナローレンジ(narrow-range)エトキシレート、ノニデットP-40TM、ノノキシノール-9、ノノキシノール、NP-40TM、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-オクチルβ-D-チオグルコピラノシド、オクチルグルコシド、オレイルアルコール、PEG-10ヒマワリグリセリド、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリドカノール、ポロクサマー、ポロクサマー407、ポリエトキシル化獣脂アミン、ポリエチレングリコールエステル、ポリグリセロールポリリシノレート、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン界面活性剤、ポリソルベート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ソルビタン、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ステアリルアルコール、サーファクチン、硫酸化アルカノールアミド、スルホネート、トリトンX-100(商標)、およびTween80(商標)が挙げられる。関連分野における当業者であれば、合理的な条件を構成するものは何かを認識するであろう。
【0108】
逆ミセル相のための条件
界面活性剤を選択した後、その濃度および温度を調整し、等方性逆ミセル相を形成させる。界面活性剤の濃度および温度は界面活性剤の状態図に関連して決定され得る。状態図が入手不可能である場合、公知の試験室技術および手順を使用する、適切な濃度および温度を見いだすためのいくつかの実験が、必要となる可能性がある。例えば、トリトンX-100(商標)が界面活性剤のために使用される場合、10-60wt%の濃度、および40-80℃の温度は逆ミセル相を提供し得る。
【0109】
金属イオン源
ナノ多孔層のための金属または合金に対応する1つ以上の金属イオンが、液体組成物に対して選択される。金属イオンはイオン性金属を含む化合物、例えば酸、塩基または塩の形態で添加される。金属源化合物の非限定的な例としては、H2PtCl6、H2Pt(OH)6、H2PtCl2(OH)4、H2Pt(SO4)(OH)4、PtCl4、K2PtCl6、PdCl2、およびTiCl4が挙げられる。
【0110】
金属イオンの濃度
金属イオンの濃度もまた、最良の性能のために調整される。濃度が低すぎる場合、ナノ粒子は形成され得ない。濃度が高すぎる場合、界面活性剤の逆ミセル相の形成または安定性が影響される可能性がある。金属イオンの濃度は約0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.012、0.014、0.016、0.018、0.02、0.022、0.024、0.026、0.028、0.03、0.032、0.034、0.036、0.038、0.04、0.042、0.044、0.046、0.048、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095または0.1Mである。実施形態では、濃度は、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つのモル濃度値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、約0.01~約0.03M、約0.02~0.03M、などであってもよい。適切な濃度範囲内では、濃度のレベルがナノ粒子の形成の速度に影響することが観察されている。
【0111】
めっき浴とは異なる
工程601で調製された逆ミセル相は電気めっきのためのめっき浴組成物とは異なる。めっき浴とは異なり、金属キレート剤が必要でない可能性がある。
【0112】
ナノ粒子の形成
工程603で、還元剤が逆ミセル相の水性液体組成物に混合される。還元剤が逆ミセル141の親水性コア143に入ると、親水性コア143内で.金属イオンを金属原子に還元する。金属イオンは親水性コア143内で局部的に濃縮されるので、最初は、金属原子は親水性コア143内に残る。各親水性コア143内の金属原子は一緒に凝固し、成長して金属ナノ粒子を形成する。1つの金属ナノ粒子が1つの逆ミセルから成長することができるが、それに限定されない。結果的に得られた金属ナノ粒子は一般に荷電されておらず、すなわち、中性である。しかしながら、いくつかのナノ粒子は、それらの表面上にわずかに正電荷を持つことができる。これまで、電気は金属ナノ粒子を形成するために適用されていない。
【0113】
ナノ粒子コロイド
ナノ粒子は液体中に分散され、ナノ粒子コロイドが提供される。
図8は結果的に得られたナノ粒子コロイドを概念的に示す。金属イオンの還元およびナノ粒子の成長の過程では、いくつかの逆ミセルが破れ、または崩壊し、したがってそれらの崩壊逆ミセルからのナノ粒子が疎水性空間中に分散され得る。それらのナノ粒子151のいくつかは、結果的に得られたコロイド組成物中、逆ミセルの親水性コアの外側に自由に浮くことができる。いくつかの他のナノ粒子153は逆ミセルの親水性コアの外側で界面活性剤分子の親水性頭部により取り囲まれ、または結合され得る。いくつかのナノ粒子155は、逆ミセル141の内側に残る。全体として、結果的に得られたナノ粒子コロイド中では、固体ナノ粒子151、153、155は逆ミセル141、水および界面活性剤分子を含む液体組成物中に分散される。ナノ粒子151、153、155はナノ粒子コロイド組成物中で互いに著しく分離されるので、ナノ粒子が集まり、成長してより大きな粒子となる可能性は低い。
【0114】
還元剤
還元剤は1つ以上の電子をナノ粒子コロイド内に含まれる金属イオンに供与することができる化学成分である。還元剤は、逆ミセルの親水性コアに入るために親水性化合物である。親水性還元剤の非限定的な例としては、アスコルビン酸、酢酸、ホルムアルデヒド、クエン酸、ヒドロキシルアミン、次亜リン酸塩、などが挙げられる。
【0115】
還元剤の量
親水性還元剤はナノ粒子コロイドに、その中に含まれる金属イオンを還元するのに十分な量で添加される。いくつかの実施形態では、還元剤は、ナノ粒子コロイドに含まれる総金属イオンを還元するための化学量論量よりも実質的に多い過剰量で添加される。ここで、「よりも実質的に多い」は20、40、60、80、100、120、140、160、180、200、250、300または400%だけより多いことを意味する。
【0116】
攪拌
還元剤を添加する間および/またはその後、混合物は攪拌され得、還元剤の分布が促進される。攪拌は還元剤が逆ミセルの親水性空間に入るのを促進することができる。したがって、親水性空間内で金属イオンを完全に還元するための時間が低減され得る。攪拌は連続して、または断続的に実施され得る。実施形態では、攪拌は1時間~10時間の期間の間実施される。
【0117】
界面活性剤を除去し、クラスターを形成すること
工程605で、界面活性剤が、ナノ粒子コロイド組成物から実質的に除去され、ナノ粒子のクラスターが形成される。ナノ粒子コロイドにおいては、界面活性剤は個々のナノ粒子を安定化することができ、したがって、ナノ粒子は、かなりの量の界面活性剤が存在する場合、一緒にクラスター化することはできない。界面活性剤をナノ粒子から除去するために、ナノ粒子コロイドは遠心分離に供せられる。遠心分離後、ほとんどのナノ粒子は底部に沈降し、界面活性剤分子は上清中および底部に存在することができる。上清はナノ粒子のほとんどを含む底部から分離される。実施形態では、液体が分離されたナノ粒子に添加され得、収集された底部内の界面活性剤が希釈される。ナノ粒子に添加される液体は水または水溶液であってもよく、それは酸性または塩基性溶液であってもよいが、それらに限定されない。遠心分離、底部収集、および液体添加は複数回繰り返すことができ、界面活性剤が実質的に除去されたナノ粒子が収集される。
【0118】
界面活性剤とナノ粒子の間の化学結合
界面活性剤によって、いくつかのナノ粒子は、いくつかの界面活性剤分子の親水性頭部との強い化学結合を有する。負電荷を持つ親水性頭部を有する界面活性剤分子は、ナノ粒子表面と配位結合を形成し得る。また、界面活性剤分子が、電子が豊富な親水性頭部を有する場合(たとえ、それらが荷電されていなくても)、それらはナノ粒子表面と配位結合を形成し得る。そのような界面活性剤が使用される場合、ナノ粒子コロイドから界面活性剤を除去するために、化学結合が破壊されなければならない。
【0119】
化学結合の破壊
いくつかの実施形態では、酸性または塩基性溶液が、
図6Bの
工程603でのナノ粒子
形成後、かつ、工程604で
の遠心分離前に、ナノ粒子-界面活性剤コロイドに添加され
る。添加される溶液の酸または塩基は、界面活性剤とナノ粒子の間の配位結合を破壊する
化学反応を引き起こし、ナノ粒子が自由になる。例えば、酸由来のプロトンは負電荷を持
つまたは電子が豊富な界面活性剤頭部と結合することができ、ナノ粒子が自由になる。そ
の後の遠心分離および底部の収集は界面活性剤分子から自由になったナノ粒子を分離する
。実施形態では、酸性または塩基性溶液の添加は、遠心分離前少なくとも1回実施され得
る。いくつかの実施形態では、酸性または塩基性溶液の添加は、各遠心分離前に実施され
得る。実施形態では、酸および塩基は、遠心分離後、水または他の溶媒で洗浄され得る。
【0120】
酸性または塩基性溶液
実施形態では、界面活性剤を考慮して酸または塩基は選択され、そのため、界面活性剤分子はナノ粒子から効果的に脱離される。実施形態では、酸性溶液は約3より低いpH値を有するが、それに限定されない。例えば、酸性溶液のための酸の非限定的な例としては、HCl、HNO3、H2SO4、HClO4、などが挙げられる。実施形態では、塩基性溶液は約10より高いpH値を有するが、それに限定されない。例えば、塩基性溶液のための塩基の非限定的な例としてはNaOH、KOH、Ca(OH)2、などが挙げられる。
【0121】
クラスターコロイド
界面活性剤を除去し、ナノ粒子を収集するプロセス後、またはそのプロセスにおいて、ナノ粒子は一緒にクラスター化し、または凝集してナノ粒子のクラスターを形成する傾向がある。液体中では、クラスターは分散され、クラスターコロイドが形成される。各クラスターは、互いに相互作用する金属ナノ粒子を含み、および、これから製造され、より大きなボディが形成される。クラスター内の個々のナノ粒子は電気的に中性である可能性が最も高い。発明はいずれの理論または信念にも縛られないが、プロトン、水酸化物および他の荷電電解質はナノ粒子表面に結合され得る、およびこれらの電解質の隣接ナノ粒子とのイオン性相互作用が隣接するナノ粒子を一緒に維持し、クラスターを形成させることができると考えられる。実のところ、界面活性剤分子は実質的に除去されたが、クラスターコロイドの液体は、前の調製工程で使用された金属イオン源および酸性または塩基性溶液に由来する十分な量の電解質を含む。
【0122】
クラスターおよびナノ粒子
図9は、クラスターコロイドの希釈試料からのナノ粒子クラスターのTEM写真画像を提供する。
図9の画像のうちの2つはまた、
図5Bおよび5Cにおいて見られる。これらの画像では、クラスターは規則形状を有しておらず、約30~約500nmの長さである。クラスター内のナノ粒子121は分離しており、概ね球状または卵形であり、約2-3nmの直径を有する。隣接するまたは隣り合うナノ粒子121間には、約1-2nmのギャップ距離を有する粒子間ギャップ125が存在する。これらの粒子間ナノポア125は、クラスター化ナノ多孔層を有するグルコース感知電極におけるグルコース酸化に主に関係する。
【0123】
遠心分離
遠心分離は3000~5000rpmの回転速度で実施され得る。遠心分離は、3~15分の期間の間続いてもよい。遠心分離後、上清は除去され、ナノ粒子を含む底部が収集される。液体が収集された底部に添加され、その中に含まれる界面活性剤が希釈される。遠心分離、底部収集および液体添加は複数回、例えば、3回以上繰り返すことができる。
【0124】
実質的に除去された界面活性剤
遠心分離の複数回処理を用いると、界面活性剤は実質的に除去される。結果的に得られたクラスターコロイドでは、界面活性剤の濃度は著しく低いものとなるが、完全には除去され得ない。最初は、逆ミセル相は約10~約60wtの界面活性剤を含む。結果的に得られたクラスターコロイドは界面活性剤を全く含まないことができる。実際には、結果的に得られたクラスターコロイドは界面活性剤を実質的に含まない。結果的に得られたクラスターコロイドまたは底部の最終収集物中の残りの界面活性剤は、ナノ粒子100重量部に対して0.0001重量部より大きく、かつ、ナノ粒子100重量部に対して約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4または2.6重量部より小さい可能性がある。実施形態では、残りの界面活性剤は、ナノ粒子100重量部に対して、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4または0.5重量部より小さい量であり得る。
【0125】
クラスターコロイド中のナノ粒子の濃度
遠心分離の複数回処理後、底部の最終収集物中のナノ粒子の総量(クラスターの一部および遊離ナノ粒子として)は、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40wt%であり得る。実施形態では、濃度は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約20~約30wt%、約15~25%、などであってもよい。
【0126】
クラスターコロイドの保存
クラスターは、クラスターコロイド中に、例えば、1週間または1ヶ月より長い長期間、処理なしで分散される。クラスターコロイドは、調製後、その後の処理前しばらくの間、容器内で保存され得る。調製されるとすぐに、クラスターコロイドは、他のものによる、または他の場所での処理のために販売および輸送に供せられ得る。長期間コロイド特性を維持するために、ナノ粒子の濃度は底部の最終収集後調整され得る。実施形態では、底部の最終収集のクラスターコロイドは容器内で、濃度を調整して、または調整せずに保存または輸送され得る。
【0127】
分配のための濃度の調整
工程607で、収集されたクラスターコロイドは溶媒で希釈して、または希釈なしで、しばらくの間保存され得る。希釈は、その後の処理、例えば、分配のために、クラスターコロイド中のクラスターの濃度を調整するためのものであってもよい。溶媒は水または有機化合物であってもよい。1つ以上の添加化合物が添加され得る。希釈により、ナノ粒子またはクラスターの濃度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3,2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14または15wt%に調整される。実施形態では、ナノ粒子またはクラスターの濃度は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約0.5~約2wt%、約1~3wt%、などであってもよい。希釈後、残りの界面活性剤は、約0.1、0.2、0.4、0.6、0.81、1.2、1.4、1.6、1.8または2wt%未満となり得る。
【0128】
クラスターコロイドの分配
工程609で、クラスターコロイドは、ナノ多孔層を生成するために、基材129上に分配され、その間、そのコロイド特性は維持される。クラスターコロイドを分配するために、様々な分配技術が利用され得る。分配は、分配されたクラスターコロイドのある一定の厚さを形成するように、またはその後の乾燥後に、結果的に得られるナノ多孔層の適切な厚さを提供するように制御され得る。別の場合では、分配は、結果的に得られるナノ多孔層の適切な粗さ係数値を提供するように制御され得る。
【0129】
下層の基材
クラスターコロイドは、任意の材料で製造された基材上に適用され得る。グルコース感知電極のための実施形態では、クラスターコロイドは、上記のように、導電層110のための導電または半導電表面上に適用され得る。いくつかの実施形態では、基材は2つ以上の導電層を含む。
【0130】
クラスター化ナノ多孔層を形成させるための液体の乾燥
工程611で、分配されたクラスターコロイドは液体を乾燥させるための条件に供せられる。分配されると、ナノ粒子クラスターは液体内に浮かび、水平に、かつ垂直に自由に移動する。液体が乾くにつれ、クラスターコロイドの高さが減少する。液体が乾き続けると、クラスターは隣接するクラスターと、下層の基材129とクラスターコロイドの上面の間で垂直に、かつ、水平に接触するようになる。クラスターの移動度は著しく制限されるようになる。しばらく後に、液体レベルは、上面に、またはその近くに位置するクラスターよりも低くなる。乾燥が完了するとすぐに、ナノ粒子クラスターは基材129上に堆積し、
図5Aに図示されるように、クラスター化形態120を有するナノ多孔層が形成される。
【0131】
ナノ多孔層の厚さ
結果的に得られたナノ多孔層は約0.4、0.6、0.8、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30μmの厚さを有する。実施形態では、厚さは、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約1μm~約10nmであってもよい。
【0132】
ナノ多孔層洗浄なし
結果的に得られたナノ多孔層は、水または他の液体による洗浄を必要としない。実施形態では、クラスター化形態の結果的に得られたナノ多孔層は、乾燥後、水または他の液体で全く洗浄されない。実施形態では、ナノ多孔層は、ナノ多孔層上に層を追加するためのその後の処理の場合を除き、液体との接触に供されない。
【0133】
収率-金属の回収
過剰量の還元剤がナノ粒子コロイドに添加される場合、その中のほとんどの金属イオン
は還元され、金属原子が形成され、それは凝固し、ナノ粒子を形成する。界面活性剤を除
去するその後の処理はまた、クラスター内のほとんどのナノ粒子を収集する。よって、前
述のプロセスに添加されるほとんどの金属イオンは、最終的にナノ粒子のクラスターの形
態で収集され、堆積され、結果的に得られるナノ多孔層117となる。実施形態では、入
力された金属イオンの89、90、91、92、93、94、95、96、97または98%超が、ナノ粒子クラスターの形態で、分配前に収集される。
【0134】
大量生産
ナノ多孔層117は、クラスターコロイドを基材129上に印刷することにより大量生産することができる。クラスターコロイドの印刷は1または2秒しかかからない。液体の乾燥はより長い時間かかる可能性があるが、乾燥のためには大きな空間が必要であるだけである。実施形態では、多くの別々の基材が提供され、印刷は、別々の基材の各々上で実施され得る。次いで、各印刷された基材は乾燥され、ナノ多孔層が形成される。あるいは、複数のエリアがクラスターコロイドで、単一基材上で印刷され、単一基材はその後、複数の小片に切断され得、各々が印刷エリアを含む。単一基材は切断前に乾燥され得る。
【0135】
電気めっきなしまたは電気の適用なし
プロセスを通して、電気めっきは、ナノ多孔層のためのクラスター化形態を形成するために利用されない。さらに、電気はナノ多孔層が形成される基材129に適用されない。
【0136】
非クラスター化ナノ多孔層
非クラスター化形態
図10Aは、ナノ多孔層117についての非クラスター化形態161を示す。クラスター化形態120と同様に、非クラスター化形態161は、ナノ粒子121および隣接するまたは隣り合うナノ粒子121間で形成された粒子間ナノポア123の両方を含む。ナノ粒子121および粒子間ナノポア123の記載は、一般に非クラスター化形態161に当てはまる。
図10Bは金属表面上に形成されたナノ多孔層の非クラスター化形態のTEM写真画像であり、この中で、暗い部分は金属表面の一部である。TEM写真画像におけるナノ粒子および粒子間細孔は
図10Aの図示におけるものと同様である。
【0137】
クラスターなしおよびクラスター間ギャップなし
クラスター化形態120とは異なり、非クラスター化形態161はクラスター123またはクラスター間ギャップ127を含まない。非クラスター化形態を生成させるために、ナノ粒子は電気めっきにより、電気めっき前にクラスターを調製せずに基材129上に堆積される。その結果、結果的に得られる構造、すなわち、非クラスター化形態161では、クラスターもクラスター間ギャップも形成されない。したがって、非クラスター化形態161はクラスター123またはクラスター間ギャップ127由来の、クラスター化形態の特性を有さない。
【0138】
非クラスター化形態の空洞
クラスター間ギャップは存在しないが、非クラスター化形態161は、粒子間ナノポア123より著しく大きい内部空洞133を含み得る。内部空洞133は電気めっきの過程中に形成され得、というのもナノ粒子は必ずしも、すぐ下に位置する表面上に順次積み重ねられるとは限らないからである。内部空洞133は不規則形状で、不規則サイズである。内部空洞133はナノ多孔層117全体にわたって見いだされ得る。
【0139】
クラスター間ギャップまたは空間と区別される空洞
非クラスター化形態の空洞133は、クラスター化形態120のクラスター間ギャップ127と区別される。空洞133は、電気めっきとナノ粒子の堆積が基材129の表面で同じ速度でないために、形成される。空洞133は、ナノ粒子121の1つまたは複数のクラスター125を取り囲まず、または規定しない。むしろ、各空洞133は、ナノ粒子121の凝集体または集合体により取り囲まれ、または規定される。空洞133は粒子間ナノポア123により相互に連結される可能性があるが、空洞133自体は、ナノ多孔層117全体にわたってまたはそのいくらかの実質的な部分にわたって相互に連結されない。さらに、空洞133は、クラスター間ギャップ127(クラスター化形態におけるより高い粗さ係数)と同じ多さの体積のナノ多孔層117(非クラスター化形態におけるより低い粗さ係数)を占有しない。
【0140】
ナノ粒子で実質的に被覆された基材
図10Aおよび10Bについて説明すると、基材129の上面はナノ粒子121で実質的に被覆される。いくつかの実施形態では、実質的な内部空間は基材129の上または直上に形成されないが、それに限定されない。
【0141】
クラスター化および非クラスター化形態の比較
全体として、クラスター化形態120は非クラスター化形態161よりもずっと密度が低い。同じ厚さでは、クラスター化形態120は、非クラスター化形態161より高い粗さ係数を有し、したがって、同じ粗さ係数を生成させるために、クラスター化形態120は、非クラスター化形態より薄くすることができる。また、クラスターの不規則形状を仮定すると、クラスター化形態120のクラスター間ギャップ127はナノ多孔層117の概ね全体にわたって相互に連結されるが、非クラスター化形態161の内部空洞133はクラスター間ギャップ127と同じようには連結されない。したがって、クラスター123内の粒子間ナノポア125は、クラスター化形態120内のクラスター間ギャップ127のネットワークに連結されるが、非クラスター化形態161内にはクラスター間ギャップがなく、粒子間ナノポア125は、クラスター化形態120におけるようには、連結され得ない。
【0142】
非クラスター化ナノ多孔層の製造-電気めっき
全体のプロセス
非クラスター化形態を有するナノ多孔層は電気めっきを用いて調製され得る。
図11について説明すると、工程1101で、めっき浴は金属イオンおよび逆ミセル相の界面活性剤を含むように調製される。その後、工程1103で、ナノ多孔層を非クラスター化形態で堆積させるためにめっき浴中で電気めっきが実施される。工程1105で、結果的に得られたナノ多孔層が洗浄され、そこから界面活性剤が除去される。
【0143】
めっき浴の調製
工程1101で、めっき浴は電気めっきなしでクラスター化ナノ多孔層を製造するための
図6Aの工程601の逆ミセル相と同様である。めっき浴は、クラスター化ナノ多孔層の製造と同様に、逆ミセル相の界面活性剤および金属イオン源材料を含む。
図6Aの工程601の界面活性剤および金属イオン源材料に関する記載は全て、
図11の工程1101に適用可能である。しかしながら、工程1101のめっき浴は工程601の逆ミセル相と同一ではない。1つの重要な違いは、めっき浴は、次の工程での電気めっきを考慮して、いくつかの追加の材料を必要とする可能性があることであるかもしれない。自然に還元され得る多くの金属源化合物について、めっき浴は、金属イオンを電気めっき中および前に自然に還元されないように維持するために、キレート剤を必要とする可能性がある。対照的に、工程601の逆ミセル相においてはそのようなキレート剤は必要とされない可能性がある。
【0144】
電気めっき
工程1103で、金属イオンを含む逆ミセル相の水性液体組成物において電気めっきが実施される。液体組成物を含むめっき浴では、カソードおよびアノード電極が沈められ、電源に接続される。カソード電極とアノード電極の間でDC電圧が印加されると、カソード電極は電子を水性液体組成物に供給する。電子は、カソード電極から逆ミセルのすぐ近くの親水性空間にジャンプし、親水性空間の内側で、正電荷を持つ金属イオンを金属原子に還元することができる。金属原子は一緒になり、金属粒子を形成し、これはカソード電極表面上に堆積され得る。その過程で、逆ミセルは破裂し得る。カソード電極に供給された電子は堆積されたナノ粒子を通って移動し、堆積されたナノ粒子の外面で利用できるようになる。次いで、電子は、すぐ近くの金属イオンを還元するのに利用できるようになり、金属ナノ粒子が形成され、すでに堆積されたナノ粒子上に堆積される。
【0145】
電気めっきのための時間
電気めっきが、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60分間実施され、100~800の粗さ係数を有するナノ多孔層が得られる。実施形態では、電気めっきのための時間は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約10~約30分であってもよい。実施形態では、電気めっきのための時間は100以上の粗さ係数を有するナノ多孔層を得るために制御される。
【0146】
次々の層および空洞の形成
電気めっきによる還元では、カソード電極に隣接するナノ粒子が、カソードの表面上に最初に堆積される。次いで、追加のナノ粒子が、前に堆積されたナノ粒子121上に堆積する。したがって、ナノ粒子は一般に、カソード電極上で次々の層で堆積する。しかしながら、ナノ粒子の堆積はカソード表面およびナノ粒子の前に堆積された層を通して同じ速度では起こり得ないので、内部空洞133が結果的に得られたナノ多孔層内で形成され得る。ナノ粒子の堆積は、空間上、水平にまたは横方向に成長することができ、そこでは、ナノ粒子は堆積されず、いくつかの空洞133は、その上に形成されたナノ粒子で封入され得る。空洞133は最終的に、粒子間ナノポア125を介して相互に連結され得るが、マイクロサイズチャネルは、空洞133を相互連絡するために、ナノ多孔層117全体にわたってまたはその実質的な部分において形成されない。
【0147】
一緒に堆積された界面活性剤
電気めっきの過程では、これらのナノ粒子を封入する逆ミセルは破裂する可能性があり、ナノ粒子はカソード電極上で堆積される。破裂した逆ミセル由来のかなりの量の界面活性剤分子がカソード電極上にナノ粒子と共に堆積される。電気めっきの過程では、界面活性剤分子はナノ粒子表面に結合する可能性があり、ナノ粒子-界面活性剤分子複合体が一緒に堆積され得る。界面活性剤分子は、結果的に得られたナノ構造中のナノ粒子間に挿入またはトラップされ得る。
【0148】
残りの界面活性剤および効果
ナノ粒子と一緒に堆積された界面活性剤分子は、ナノ粒子間のギャップおよび空間、すなわち、粒子間細孔を占有し得る。これらの界面活性剤分子は、グルコース酸化に関与するナノポアおよびナノ粒子表面を効果的にブロックする可能性がある。さらに、界面活性剤分子は金属表面上で分解する可能性があり、これはナノ粒子表面を汚染する可能性がある。全体として、グルコース酸化の感度は、ナノ多孔層中に残っている界面活性剤により影響され得る。
【0149】
洗浄
工程1105で、結果的に得られたナノ多孔層は水または他の液体で洗浄され、そこから界面活性剤分子が除去される。しかしながら、洗浄は界面活性剤分子を実質的に除去するには有効ではなく、というのも、多くの界面活性剤分子が隣接するナノ粒子間にトラップされ、また、洗浄液はある一定のレベルにしか到達できないからである。
【0150】
ナノ粒子コロイドなし
電気めっき法では、金属イオンを還元して、ナノ粒子を形成させるために還元剤は添加されない。電気めっきの過程中に、ナノ粒子は、カソード電極表面の隣または近くにある逆ミセルの親水性空間内で形成され得る。次いで、ナノ粒子はカソード電極上に堆積される可能性がある。しかしながら、ナノ粒子は、液体組成物全体を通して逆ミセルの親水性空間では形成されない。したがって、
図8に図示されるように、ナノ粒子コロイドは形成されない。
【0151】
クラスターなし、およびクラスターコロイドなし
電気めっき法では、ナノ粒子を形成させた後、界面活性剤を除去するための工程はない。むしろ、界面活性剤およびナノ粒子は、電気めっきのプロセス中に一緒に堆積される。したがって、プロセスのいずれの段階でもクラスターは形成されず、クラスターコロイドも形成されない。
【0152】
収率-金属の回収
電気めっき完了時に、めっき浴はかなりの量の金属イオンを含む。よって、電気めっき法での金属の回収は、クラスター化ナノ多孔層のためのプロセスにおけるように過剰量の還元剤を添加することによる還元ほど高くない可能性がある。
【0153】
液晶相を使用したナノ多孔層の製造
ナノ多孔性金属層は、界面活性剤の液晶相から作製され得る。
図12について説明すると、工程1201で、水性液体組成物が金属イオンおよび液晶相の、例えば、六角形配列の界面活性剤を含むように調製される。その後、工程1203で、水性液体組成物はナノ多孔層を堆積するために電気めっきに供せられ、この場合、金属原子は液晶相を鋳型として使用して堆積される。工程1205で、界面活性剤は堆積された六角形ナノ構造から除去される。
図13Aは六角形配列の形成を示す。
図13Bは液晶相の六角形配列を使用した金属の堆積を示す。
【0154】
マルトース-ブロッキング層
マルトース
マルトースは、
図20に図示されるように、2つのグルコース単位からなる二糖である。マルトースは、ヒトまたは動物の血液または他の体液中に存在し得る。試験流体中のマルトースの存在は、酵素および非酵素グルコース感知システムの両方において、グルコースレベルの正確な感知に干渉し得る。
【0155】
酵素グルコース感知におけるマルトースの干渉
酵素グルコース感知システムにおいて使用されるいくつかの酵素はマルトースならびにグルコースを酸化する。したがって、マルトースが試験流体中に存在する場合、酵素グルコース感知システムは、マルトースのためにグルコースレベルの不正確な読み取り値を有し得る。不正確な読み取り値がインスリン注入を制御または調整するために使用されると、その結果は重篤なものになる可能性がある。
【0156】
非酵素グルコース感知におけるマルトースの干渉
作用電極103NEのナノ多孔層117は、グルコースの感知と同じバイアス電圧でマルトースを酸化することができる。
図20に図示されるように、約1.4-1.6nmの長さを用いると、マルトース分子はナノ多孔層117の粒子間ナノポア123に入ることができ、そこで、グルコースと共に酸化され得る。実施例9.11および
図18により、マルトースは、PBS中で、グルコースおよび他の干渉化学成分と共に検出することができることが確認される。また、実施例10.9および
図19により、マルトースは、血清中でグルコースおよび他の干渉化学成分と共に検出することができることが確認される。
【0157】
マルトース-ブロッキング層を有する非酵素作用電極
図21について説明すると、作用電極103NEは、ナノ多孔層117およびナノ多孔層117上のマルトース-ブロッキングまたはマルトース-スクリーニング層301を含む。実施形態では、ナノ多孔層117は、クラスター化形態を含むか、または非クラスター化形態を含むかに関係なく、マルトースおよびグルコースの両方を酸化することができる。マルトース-ブロッキング層301は下にあるナノ多孔層117と接触することができ、または、介在層により分離され得る。作用電極103NEはまた、追加の機能層112をマルトース-ブロッキング層301上で含み得る。別の場合では、追加の機能層112はマルトース-ブロッキング層301とナノ多孔層117の間に挿入され得る。
【0158】
マルトースの選択的ブロッキング
マルトース-ブロッキング層301は、マルトース分子がそこを通過する、またはそこを突き抜けるのを効果的に、または実質的にブロック、または阻止する一方、グルコース分子がそこを通過するのを可能にする。マルトース-ブロッキング層301を用いると、試験流体中に含まれるマルトース分子は、全く、またはグルコース感知を妨害するのに有意の濃度で、その下にあるナノ多孔層117に到達することができない。マルトース-ブロッキング層301の選択的マルトースブロッキング効果を考えると、ナノ多孔層117が、グルコース酸化に対するのと同じバイアス電圧でマルトースを酸化することができたとしても、試験流体中のマルトースの存在がグルコース感知に影響する可能性は低い。加えて、マルトース-ブロッキング層301は、マルトースより大きい試験流体の他の分子および成分を効果的にブロックまたは阻止する。
【0159】
バイアス電圧
非酵素グルコース感知システムでは、マルトース-ブロッキング層301の追加は、グルコース感知のためのバイアス電圧の増加または減少を必要としない。
【0160】
多孔性ポリマー層
実施形態では、マルトース-ブロッキング層301は、グルコースは通過することができるが、マルトースは通過できない多孔性ポリマー材料から製造され、またはこれを含む。多孔性ポリマー材料は、ポリ(m-フェニレンジアミン)(ポリ-mPD)、ポリ(o-フェニレンジアミン)(ポリ-oPD)、およびポリ(p-フェニレンジアミン)(ポリ-pPD)を含む、少なくとも1つのポリ-フェニレンジアミン(ポリ-PD)を含有する。
【0161】
ナノサイズ化された厚さ
マルトース-ブロッキング層301は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40nmまたは約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40nmの厚さを有する。記載を通して、マルトース-ブロッキング層の厚さは、厚さ変動の上10%および下10%を除くポリマー層の平均厚さを示す。実施形態では、厚さは、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つの厚さ値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、約15nm~約35nm、約17nm~約33nm、約18nm~約32nm、約20nm~約30nm、約21nm~約29nm、約22nm~約28nm、などであってもよい。
【0162】
多孔度のレベル
実施形態では、マルトース-ブロッキング層301はグルコース分子がその厚さを通過するのを可能にするが、マルトース分子がそこを通過するのを効果的にブロッキングする多孔度を有する。グルコースを通過させ、マルトースが通過しないようにブロックする目標を達成するために、マルトース-ブロッキング層の全体多孔度は、望ましいレベルに調整される必要がある。マルトース-ブロッキング層301の全体多孔度は層の密度(または細孔およびチャネルを含む内部形態)および厚さに関連する。マルトース-ブロッキング層のための材料の濃度およびマルトース-ブロッキング層を形成する方法は、密度と関連する可能性がある。これらのパラメータを使用して全体多孔度を調整することにいくらか成功しているが、多孔度のレベルは一般に、材料の濃度および層を形成する方法を用いて規定または記載され得ないことが見出されている。マルトース-ブロッキング層の厚さはまた、全体多孔度に関連するが、それは特定の多孔度または体積あたりの多孔度に依存する。よって、多孔度のレベルは、異なる様式で規定される必要がある。
【0163】
マルトース-ブロッキング層なしでの、グルコースおよびマルトースについての感度(電
流密度)
グルコースモニタリングについて、定常状態で、4-20mMのグルコース濃度(ヒト
体液中の典型的なグルコースレベル)を有する試験流体中で0.2-0.45Vのバイア
ス電圧の印加を用いると、試験流体と接触するナノ多孔層117(すなわち、マルトース
-ブロッキング層なし)は、グルコースについての最小電流密度(感度)である10nA/mMcm
2
より高いレベルでグルコース-酸化電流(グルコースのみの酸化により引き起こされた電流)を発生させる必要がある。実施形態によれば、マルトース-ブロッキング層なしで、同じナノ多孔層117は、マルトースを4-20mMの濃度(上記グルコース濃度と同じ)で含む試験流体において、0.2-0.45Vのバイアス電圧の印加を用いて定常状態で、同様のレベルの電流(すなわち、10nA/mMcm2より高い)は発生させるであろう。
【0164】
グルコースおよびマルトースの電流密度によるマルトース-ブロッキング層の多孔度
実施形態によれば、マルトースブロッキング層301は、グルコースがそこを通って移
動するのを可能にするための多孔度を有し、そのため、グルコース酸化電流は、グルコー
スに対する最小電流密度より依然として高い。したがって、0.2-0.45Vのバイア
ス電圧を、4-20mMのグルコース濃度を有する試験流体中で印加すると、定常状態で
は、マルトースブロッキング層301を有する作用電極103NEは、グルコース-酸化
電流を、グルコースについての最小電流密度(感度)である10nA/mMcm
2
より高いレベルで発生させる。他方、マルトースブロッキング層301はマルトースがそこを通過しないように効果的にブロックする多孔度を有し、そのため、4-20mMのマルトース濃度を有する試験流体において0.2-0.45Vのバイアス電圧を印加すると、定常状態では、マルトースのみにより引き起こされた電流(マルトース-酸化電流)は、マルトース-ブロッキング層を用いた場合のマルトースについての最大電流密度である5nA/mMcm
2
より低いレベルにある。
【0165】
電気化学重合
マルトース-ブロッキング層301のための多孔性ポリマー材料はナノ多孔層117上に、電気化学重合(電解重合)によりサイクリックボルタンメトリー技術を使用して形成され得る。実施形態では、ナノ多孔層を含む作用電極が、サイクリックボルタンメトリー電気化学重合のために、モノマーを含む反応混合物溶液に浸される。作用電極と参照電極の間にモノマーの酸化電圧の範囲内で、バイアス電圧を印加することにより、重合が起こり、ポリマー層がナノ多孔層上に形成される。フェニレンジアミンの重合についてのさらなる詳細は、“Electropolymerization of O-Phenylenediamine on Pt-Electrode from Aqueous Acidic Solution: Kinetic, Mechanism, Electrochemical Studies and Characterization of the Polymer Obtained”, Sayyah et al, Journal of Applied Polymer Science, Vol. 112, 6号, 3695-3706 (2009),および“Electropolymerization of P-Phenylenediamine on Pt-Electrode from Aqueous Acidic Solution: Kinetics, Mechanism, Electrochemical Studies, and Characterization of the Polymer Obtained”, Sayyah et al, Journal of Applied Polymer Science, Vol. 117, 2号, 943-952 (2010)において開示され、その各々はこれにより、参照により本明細書に組み込まれる。
【0166】
酸化電圧の印加
バイアス電圧は、サイクリックボルタンメトリー中に変化させることができる。例えば、バイアス電圧は、最初の時間セグメントの間酸化電圧範囲内で徐々に増加させることができ、次いで、次の時間セグメントの間酸化電圧範囲内で徐々に減少させることができるが、それに限定されない。フェニレンジアミンについては、バイアス電圧は0.5V~1.0Vで印加される。
図22は、フェニレンジアミンのサイクリックボルタンメトリー電気化学重合中の、バイアス電圧の走査の一例を示す。
【0167】
バイアス電圧走査速度
以下で記載されるモノマーの濃度と一緒に、酸化電圧範囲の下限と上限の間でのバイアス電圧の走査速度は、結果的に得られるポリマー層の多孔度および厚さに関連し得る。実施形態では、走査速度は約0.5、1、2、4、6、8、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、350または400mV/秒である。実施形態では、走査速度は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約5mV/秒~約200mV/秒であってもよい。
【0168】
モノマーの濃度
モノマーの濃度は、約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.2、4.4、4.6、4.8、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8、9.0、9.2、9.4、9.6、9.8または10mMである。実施形態では、モノマーの濃度は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約0.05mM~約0.8mM、約1.0mM~約5.0mM、などであってもよい。前述の濃度は、3種のフェニレンジアミンに適用可能である。
【0169】
モノマー濃度を考慮した多孔度
反応混合物溶液中のモノマーの濃度は、結果的に得られるマルトース-ブロッキング層
の多孔度に関連する。
図24のマルトース-ブロッキング層を製造するためのフローチャ
ートでは、モノマー濃度は最初に工程2401で決定され、重合は工程2403で実施さ
れる。実施形態では、約0.7mM、約0.6mM、または約0.5mM未満のモノマー
濃度は、マルトース-ブロッキング層に対し望ましいレベルの全体多孔度を提供し得る。
実施形態では、モノマー濃度が約0.7mM、約0.8mM、約0.9mM、約1.0m
M、約1.1mM、または約1.2mMを超えると、結果的に得られるポリマー層はグル
コースがそこを通過するのを可能にする十分な多孔度を有さず、すなわち
、グルコースについての最小電流密度(感度)
である10nA/mMcm
2
より低いレベルでグルコース-酸化電流を発生させる。工程2405で、結果的に得られたポリマー層は、工程2405でその多孔度を調整するための処理に供せられる。
【0170】
多孔度を調整するための電気ショック
ポリマー層302の全体多孔度が望ましいレベルにない場合、ポリマー層は、多孔度の調整のためにさらに処理され得る。例えば、ポリマー層は電気ショックに供せられ得る。実施形態では、電気ショックは、
図23で示されるクロノアンペロメトリー設定を用いてポリマー層302に適用され得、この場合、電気ショック電極309およびナノ多孔層117上に形成されたポリマー層302が電解質溶液311中に沈められる。電圧源305およびスイッチ307が基材303と電気ショック電極309の間に接続される。スイッチ307の動作により、電流が多孔性ポリマー層302を通って流れ、形態変化を引き起こし、これにより、ポリマー層302の多孔度が増加する。その結果、ポリマー層302は、グルコースがその厚さを通過するのを可能にし、かつ、マルトースがそこを通過しないように効果的にブロックする望ましいレベルの多孔度を有するマルトース-ブロッキング層301になる。
【0171】
酸性溶液
電気ショックのための電解質溶液は、約2、3または4未満のpHを有する酸性溶液であってもよいが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、酸性溶液は少なくとも1つの酸を含み得る。酸性溶液のための酸の非限定的な例としては、リン酸(H3PO4)、硝酸(HNO3)、塩素酸(HCl)、ギ酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、炭酸、スルホン酸、などが挙げられる。
【0172】
電気ショックのための波形
電位は様々な波形で印加され得る。実施形態では、電位はACまたはDCで印加される。実施形態では、電位は多重パルスまたは単一パルスで印加される。実施形態では、電位は電圧信号の他の形状で印加され得る。
【0173】
電気ショックのための電位
ポリマー層302に印加される電位は、約0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0Vである。実施形態では、最大電圧は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約0.5~約2.5V、約1.0~約2.0V、などであってもよい。
【0174】
電気ショックのための期間
電位を印加する期間は、約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4または4.5秒の間である。実施形態では、期間は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約0.5~約2.5秒、約1.0および約2.0秒などであってもよい。
【0175】
酵素感知にも適用可能なマルトース-ブロッキング層
実施形態では、マルトース-ブロッキング層301は、酵素グルコース感知システムに適用され得る。
図2に戻って説明すると、マルトース-ブロッキング層301は、追加の機能層112として、酵素層111上に追加することができ、マルトースはブロックされ、グルコースはそこを通過することができる。
【0176】
CGM作用電極
CGMシステム
連続グルコースモニタリング(CGM)システムは、生物流体中に含まれるグルコースレベルの測定のための、被検体の生物流体とインビボで接触するグルコース感知電極を含む。実際には、CGM電極は、長期間、例えば数日、1週間、数週間または数ヶ月にわたり、測定のために、被検体の身体に挿入され、または埋め込まれる。
【0177】
非酵素CGM作用電極
図31は、一実施形態による非酵素CGM作用電極501の断面を示す。図示されるCGM作用電極501は、ベース503、導電層110、ナノ多孔層117、マルトース-ブロッキング層301、電解質イオン-ブロッキング層505、および生体適合性層507を含む積層構造を有する。
【0178】
電極ベース
ベース、ベース基材または電極ベース503は、CGM作用電極501の積層構造のための支持体を提供する。実施形態では、ベース503は電気絶縁層であり、限定はされないが、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(pHEMA)および他の生体適合性ポリマーなどの材料から製造されてもよく、またはこれを含み得る。実施形態では、ベース503は、電気絶縁の、かつ、生体適合性材料の可撓性フィルムの形態であってもよい。ベース503は約30μm~約200μmの範囲の厚さを有するが、それに限定されない。ベース503はCMG感知電極501のための任意的な層であり、いくつかの実施形態では省略され得る。
【0179】
導電層
導電層110は、それらの間の介在層と共に、またはそれなしで、ベース503上に配置され得る。実施形態では、導電層110は、ベース503上で導電または半導電材料を印刷または分配することにより形成されるが、それに限定されない。CGM作用電極501では、導電層110は約100nm~100μmの範囲の厚さを有し得るが、それに限定されない。いくつかの実施形態では、導電層119は導電または半導電材料の2つ以上の副層を含み得る。ベース503が省略された実施形態では、導電層119は、その上の積層構造のための支持体として機能し得る。
【0180】
ナノ多孔層
ナノ多孔層117は導電層110上に形成され得る。CGM作用電極501では、ナノ多孔層117は約500nm~約10μmの範囲の厚さを有するが、それに限定されない。ナノ多孔層117はクラスター化形態、非クラスター化形態、六角形ナノ構造または他のナノ多孔性形態の少なくとも1つを有し得る。
【0181】
マルトース-ブロッキング層
マルトース-ブロッキング層301はナノ多孔層117上に形成することができ、マルトース分子が下にあるナノ多孔層117に到達するのをブロックするが、グルコース分子がそこを通過するのを可能にする。実施形態では、マルトース-ブロッキング層301は、グルコース分子を通過させ、かつ、マルトース分子を通過させないために、ナノサイズ細孔を有するポリ-PDなどのポリマー材料を含む。マルトース-ブロッキング層は約5nm~約40nmの範囲の厚さを有し得るが、それに限定されない。マルトース-ブロッキング層301はCMG感知電極501のための任意的な層であり、いくつかの実施形態では省略され得る。
【0182】
電解質イオン-ブロッキング層(電極コンディショニング増強/促進層)
電解質イオン-ブロッキング層505は、小さな電解質イオン、例えばNa+、K+、Ca2+、Cl-、PO4
3-およびCO3
2-がそこを通過する、または、下にあるナノ多孔層117に向かって拡散するのを効果的に制限または阻止する。後述するように、電解質イオン-ブロッキング層505はCGM作用電極のコンディショニングを増強し、作用電極コンディショニング増強または促進層とも呼ばれる。電解質イオン-ブロッキング層505は多孔性であり、そのため、グルコース分子は自由にそこを通過することができる。実行される場合、電解質イオン-ブロッキング層505は、試験流体中に含まれる水を吸収することにより、直ちに膨潤しないように疎水性である。電解質イオン-ブロッキング層505は約0.1μm~約10μmの範囲の厚さを有し得るが、それに限定されない。
【0183】
電解質イオン-ブロッキング層のための材料
電解質イオン-ブロッキング層505は、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、およびポリ(メチルメタクリレート-コ-エチレングリコールジメタクリレート)(PMMA-EG-PMMA)の少なくとも1つを含むことができ、またはそれらから製造され得る。また、電解質イオン-ブロッキング層505は、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートのコポリマー、および、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートを含む1つ以上のモノマーの重合から得られるポリマーから形成することができ、または、それらを追加的に含むことができる。
【0184】
生体適合性層
CGMセンサが被検体の身体内に埋め込まれ、または挿入されると、生体適合性または生物学的保護層507は被検体の組織および体液と接する。生体適合性層507は、被検体の組織に対して毒性ではなく、被検体の身体による免疫拒絶を引き起こさない少なくとも1つの生体適合性材料を含む。また、生体適合性層507の少なくとも1つの材料は、グルコース濃度の感知がそれ自体の存在により著しく損なわれないように、体液がそこを通過して、下にあるナノ多孔層117に到達するのを可能にしなければならない。生体適合性層507は約5μm~約30μMの範囲の厚さを有し得るが、それに限定されない。
【0185】
生体適合性層のための材料
生体適合性層507は、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド-コプロピレンオキシド)(PEO-PPO)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(スルホン)(PS)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エーテル-ウレタン)(PU)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、エチレン-コ-ビニルアセテート(EVA)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(エチレン)(PE)、ポリエチレングリコール、およびポリヒドロキシエチルメタクリレート(pHEMA)の少なくとも1つを含むことができ、またはそれらから製造され得る。
【0186】
改変
CGM作用電極501は1つ以上の追加の機能層を含み得るが、
図31には示されない。いくつかの実施形態では、マルトース-ブロッキング層301、電解質イオン-ブロッキング層505および生体適合性層507の1つ以上は省略され得る。他の実施形態では、マルトース-ブロッキング層301、電解質イオンブロッキング層505および生体適合性層507の2つ以上は組み合わせて1つの層にすることができ、またはそれらの位置を変更することができる。
【0187】
酵素層なし
CGM作用電極501は、グルコース-特異的酵素を含む酵素層を含まない。CGM作用電極501は層のいずれにおいてもそのような酵素を含まない。
【0188】
酸素取り込み層なし
CGM作用電極501は、グルコースの酸化のためにグルコースオキシダーゼが使用される場合に分子酸素を収集し、供給するために必要とされるであろう酸素取り込み材料または層を含まない。
【0189】
電子伝達体なし
CGM作用電極501は、グルコースデヒドロゲナーゼがグルコースの酸化のために使用される場合、電子を移動させるために必要とされるであろう電子伝達材料を含まない。
【0190】
CGM作用電極またはシステムのコンディショニング
電流の過渡信号
CGM作用電極を使用する電気化学セルを、バイアス電圧の印加を用いて作製すると、CGM作用電極は電流を発生させる。CGM作用電極からの電流は、CGM作用電極におけるバックグラウンドノイズとグルコース酸化由来の電流の和を表す。最初に、電流は過渡挙動を示す。
図25-30に示されるように、最初は、電流はグルコース酸化のみにより引き起こされたものと比べて非常に高く、急速に減少する。その後、減少速度は落ちる。最終的に、電流はあるレベル、すなわち、定常状態で落ち着くが、インビボでは、電流は、許容範囲内で少し変動する可能性がある。
【0191】
グルコース感知のための電流
正確なグルコース感知では、電流は、電気化学セルおよび/またはCGM作用電極が定常状態にある時に、測定されなければならない。言い換えれば、CGM作用電極からの電流は、グルコース濃度が変化しない場合、時間と共にあまり変化してはならない(すなわち、最初の減少後、あるレベルで落ち着く)。さらに、正確なグルコース感知のためには、バックグラウンド電流(ノイズ)は、グルコース酸化のみにより引き起こされた電流に比べあまり高すぎてはいけない。言い換えれば、総電流はグルコース酸化のみに由来の電流に比べあまり高すぎてはいけない。
【0192】
CGM作用電極または電気化学セルのコンディショニング
CGM作用電極は、グルコース感知前にコンディショニングを必要とする。ここで、コンディショニングは、正確なグルコース感知のためにCGM作用電極を安定化するプロセスを示す。CGM作用電極のコンディショニングが完了すると、そこからの電流はあるレベルで落ち着くはずであり、グルコース由来の電流にくらべあまり高すぎてはいけない。正確なグルコースレベルを提供するために、CGMシステムは、コンディショニングが終了した後に測定された電流を使用しなければならない。CGM作用電極のコンディショニングは長い時間がかかる可能性がある。市販の酵素CGM作用電極は、コンディショニングのために数時間~数日必要とする。
【0193】
望ましい電流変化速度
インビボでのグルコース酸化由来の電流が約数十ナノアンペアであると仮定すると、正確なグルコース感知のためには、CGM作用電極からの電流の減少速度は、例えば、1分あたり20nA(ナノアンペア)より小さくなければならない。基準点を提供するために、望ましい電流変化速度は、1分あたり20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2nAまたはそれ未満の点であるべきである。実施形態では、電流変化速度はより短いまたは長い期間で決定され得る。
【0194】
電流の望ましいレベル
インビボでのグルコース酸化由来の電流は典型的に数十ナノアンペアである。総電流の望ましいレベルは、測定精度、信号処理能力、データ処理能力、などを含む様々な因子によって変化し得る。これらの因子はさらに発展させられるので、望ましいレベルは増加する可能性がある。にもかかわらず、インビボでのグルコース酸化由来の電流が約数十ナノアンペアと仮定すると、正確なグルコース感知のために、CGM作用電極からの電流は、例えば、500nAより小さくなければならない。基準点を提供するために、望ましい電流は、500、490、480、470、460、450、440、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110もしくは100nAまたはそれ未満の点であるべきである。
【0195】
コンディショニングの完了
CGMシステムは、そのCGM作用電極またはその電気化学セルのコンディショニングが完了したことを決定する。CGMシステムは、電流変化速度が所定の値、例えば、以上で明記される望ましい電流変化または減少速度である、またはそれ未満である、またはそれにとどまる時に、コンディショニングの完了を決定し得る。CGMシステムは、総電流変化が、あらかじめ決められた時間の間、所定の値、例えば、以上で明記される望ましい電流レベルまたはそれ未満のままである時にコンディショニングの完了を決定する。CGMシステムは、電流変化速度が、その所定の値またはそれ未満であり、またはそれにとどまる時、さらに、総電流変化が、あらかじめ決められた時間の間、その所定の値またはそれ未満のままである時に、例えば、電流変化速度が5nA/分未満であり、かつ、総電流が1分間400nA未満でとどまる時に、コンディショニングの完了を決定し得る。
【0196】
コンディショニングの完了の通知
CGMシステムは、そのユーザーにコンディショニングの完了を通知することができる。グルコース酸化のための電気化学セルを形成すると、または形成後しばらくして、CGMシステムは、そのCGM作用電極からの電流をモニタリングし始めることができる。電流がコンディショニングの完了のための1つ以上の要件を満たした時に、CGMシステムは、コンディショニングの完了を通知するために、そのユーザーに通知を提供することができる。通知は、音、振動、光または情報表示を含む任意の形態であってもよい。加えてまたは別の場合では、CGMシステムは、コンディショニングの完了前にグルコースレベルを示す情報を提供することができない。
【0197】
CGM作用電極のコンディショニングのための時間の低減
小さな電解質イオンの濃度不連続
ヒト体液は、かなりの量の、Na
+、K
+、Ca
2+、Cl
-、PO
4
3-およびCO
3
2-の電解質イオンを含む。実施形態では、前記電解質イオン-ブロッキング層505はNa
+、K
+、Ca
2+、Cl
-、PO
4
3-およびCO
3
2-の電解質イオンがそこを通過するのを制限または阻止する。その結果、電解質イオン-ブロッキング層505より上と同じ層より下の間では、これらの電解質イオンの濃度は著しく異なる。
図32は概念的に、電解質イオン-ブロッキング層505の両側での濃度不連続を示す。電解質イオン-ブロッキング層505があると、小さな電解質イオンの総計濃度は、ナノ多孔層117において、生体適合性層507におけるよりも著しく小さくなる。電解質イオン-ブロッキング層505がないと、ナノ多孔層117中の小さな電解質イオンの総計濃度は、生体適合性層507におけるものと同様となるであろう。
【0198】
電解質イオン-ブロッキング層下での小さな電解質イオンの濃度
実施形態では、電解質イオン-ブロッキング層505より下の電解質イオンの総計濃度は0%より大きいが、電解質イオン-ブロッキング層505より上の同じ電解質イオンの総計濃度の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20%より低い。電解質イオン-ブロッキング層505より下の総計濃度は、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つの%値)を選択することにより形成される範囲内であってもよい。
図32において示されるように、例えば、ヒト間質体液中の電解質イオンの総計濃度(すなわち、電解質イオン-ブロッキング層505より上)は約0.1M以上であり;対照的に、電解質イオン-ブロッキング層505より下の電解質イオンの総計濃度は約0.01M以下である。電解質イオン-ブロッキング層505より下の電解質イオンの総計濃度は、ナノ多孔層117の二重層容量を測定し、測定値を、Ionic Strength-Controlled Virtual Area of Mesoporous Platinum Electrode, Boo et al, J. AM. CHEM. Soc. 2004, 126, 4524-4525において詳細に記載されるように、Gouy-Chapman式に適用することにより得ることができる。
【0199】
ナノ多孔層におけるイオン平衡の加速
記載されるように、イオン-ブロッキング層505は、電解質イオン-ブロッキング層505より上と同じ層の下の間で、小さな電解質イオンの総計濃度の実質的な不連続を確立し、または生成させる。小さな電解質イオンの低い濃度は著しく、CGM作用電極501のコンディショニング、特にナノ多孔層117のコンディショニングに優れている。発明のいずれの態様もいずれの理論または信念に縛られないが、小さな電解質イオンの低い濃度は、マイクロサイズ構造および表面などのより大きなスケールでは起こらないであろうナノ多孔層117のナノサイズ構造および表面におけるイオン平衡を加速することができる。イオン平衡がナノ多孔層117において加速されるにつれ、ナノ多孔層117のナノ構造の内側でイオン平衡または定常状態に到達するための時間は、電解質イオン-ブロッキング層505なしでのより高い濃度でよりも、電解質イオン-ブロッキング層505の存在により、電解質イオンのより低い濃度で、より短くなるであろう。
【0200】
コンディショニングのための著しくより短い時間
ナノ多孔層117におけるイオン平衡の加速を用いると、電解質イオン-ブロッキング層505は、
図31の非酵素CGM作用電極501のコンディショニングを著しく増強し、促進し、すなわち、望ましい電流および/または望ましい電流変化速度、すなわち、定常状態に到達するための時間を短くする。実施形態によれば、電解質イオン-ブロッキング層505を有する非酵素CGM作用電極505を用いる場合、電解質イオン-ブロッキング層505を有さない同じ非酵素CGM作用電極を使用する場合と比較して、コンディショニングの完了のために少しの時間が必要とされる。
【0201】
コンディショニング時間
望ましい電流変化速度が5nA/分以下である場合、電解質イオン-ブロッキング層505を有さない非酵素CGM作用電極は、電解質イオンを0.1M以上で含む血清中で約3時間かかり;対照的に、電解質イオン-ブロッキング層505を有する非酵素CGM作用電極は、同じ血清中で、約1時間30分、1時間25分、1時間20分、1時間15分、1時間10分、1時間5分、1時間、55分、50分、45分、40分、35分、または30分以下かかる。望ましい電流変化速度が3nA/分以下である場合、電解質イオン-ブロッキング層505を有さない非酵素CGM作用電極は、電解質イオンを0.1M以上で含む血清中で5時間超かかり;対照的に、電解質イオン-ブロッキング層505を有する非酵素CGM作用電極は、同じ血清中で、約1時間30分、1時間25分、1時間20分、1時間15分、1時間10分、1時間5分、1時間、55分、50分、45分、40分、35分、30分、25分、15分または10分以下かかる。望ましい電流変化速度が2nA/分以下である場合、電解質イオン-ブロッキング層505を有さない非酵素CGM作用電極は、電解質イオンを0.1M以上で含む血清中で5時間または10時間超かかり;対照的に、電解質イオン-ブロッキング層505を有する非酵素CGM作用電極は、同じ血清中で、約1時間30分、1時間25分、1時間20分、1時間15分、1時間10分、1時間5分、1時間、55分、50分、45分、40分、35分、30分、25分、15分または10分以下かかる。
【0202】
予想外の結果
適正なコンディショニングがないと、CGM作用電極は、正確なグルコースレベルに対する電流を提供することができない。コンディショニングのための時間の低減は、CGM作用電極を開発し、製造する際の非常に重要な実施上の配慮点である。これは、CGM作用電極の適正なコンディショニングには、数十分ではないとしたら、数時間かかる可能性があるからであり、かつ、人々は、電極を彼らの身体に挿入した直後に彼らのグルコースレベルを知りたいと思う傾向があるためである。後で記載する実施例を参照すると、CGM作用電極のコンディショニングのための時間は、他の条件はすべて同じままで、電解質イオン-ブロッキング層505を含めるだけで、約3、5または10時間から30分未満に低減される。これは非常に重要な改善であり、予想外に高い成果である。
【0203】
電解質イオン-ブロッキング層の詳細
非酵素CGM作用電極の電解質イオン-ブロッキング層505は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、およびポリ(メチルメタクリレート-コ-エチレングリコールジメタクリレート)(PMMA-EG-PMMA)を含む少なくとも1つの多孔性の疎水性ポリマーを含み、またはこれから製造される。多孔性の疎水性ポリマーの追加の例としては、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートのコポリマー、および、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、などを含む1つ以上のモノマーの重合から得られるポリマーが挙げられる。これらのポリマーについての平均分子量は、約5,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、110,000、120,000、130,000、140,000、150,000、160,000、170,000、180,000、190,000、200,000、210,000、220,000、230,000、240,000、250,000、260,000、270,000、280,000、290,000、300,000、310,000、320,000、330,000、340,000、350,000、360,000、370,000、380,000、390,000または400,000である。実施形態では、分子量は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内であってもよい。電解質イオン-ブロッキング層は約0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10μmの厚さを有し得る。実施形態では、厚さは、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つの厚さ値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、約2~約5μm、約1~約3μmの範囲、などであってもよい。
【0204】
イオン濃度降下は酵素グルコース感知電極において何の効果も有さない
酵素CGMシステムでは、CGM作用電極は、グルコース分子の酸化のためのグルコース-特異的酵素を含む。酵素CGM作用電極は機能層の下で電解質イオンの濃度を効果的に降下させることができる多孔性の疎水性材料を含有する機能層を含み得る。しかしながら、酵素CGMシステムでは、機能層による濃度降下は、ナノサイズ表面または構造におけるイオン平衡に関するCGM電極のコンディショニングのための時間の低減を提供することができない。これは、酵素CGMシステムはグルコース分子を酸化するために酵素を使用し、グルコース酸化のためにナノ多孔層を必要としないためである。したがって、多孔性の疎水性層が酵素CGM作用電極に含められていたとしても、そのような層はその厚さを横切って電解質イオン濃度の不連続を引き起こしたとしても、さらに酵素CGM作用電極のコンディショニングのための時間のいくらかの低減が存在したとしても、そのような低減は、電解質イオンブロッキング層505およびナノ多孔層117の両方を有する非酵素CGM作用電極501におけるコンディショニングのための時間の低減に等しくはならないであろう。
【0205】
CGM皮下電極モジュール
CGM電極ユニット
実施形態では、CGMシステムは、被検体の体液と皮下接触する電極ユニットまたはモジュールを含む。電極ユニットは、被検体の身体中に挿入されると体液と接触する、1つ以上の電極を収容する単一ボディを含み得る。単一ボディは可撓性であり得る。
【0206】
CGM電極ユニットの構成
図33は一実施形態によるCGM電極ユニット701を示す。CGM電極ユニット701は、皮下部703および接触端子部705を含む。皮下部703は、被検体の身体に挿入するためのものであり、体液と皮下接触するために、絶縁層707を通って形成された開口を介して曝露されている作用電極501、対電極105および参照電極106を含む。接触端子部705は、被検体の身体の外側にとどまるため、かつ、対応デバイスと係合し、または接続するためのものである。接触端子部703は、絶縁層707の下で、それぞれ、作用電極501、対電極105および参照電極106に電気的に接続されている作用電極端子501T、対電極端子105Tおよび参照電極端子106Tを含む。ここで、作用電極501、対電極105および参照電極106の各々は本開示で記載される特徴および特性を有し得るが、それに限定されない。
【0207】
CGM電極ユニットの作製
図34は、一実施形態により、CGM電極ユニット701を作製するためのフローチャートである。工程3401で、電気絶縁、可撓性フィルムが、ベースまたは電極ベース503(
図31においても示される)のために提供される。その後、工程3403で、導電層が、
図35において示されるように、あらかじめ決められた形状110R、110Wおよび110Cでベース503上に形成される。その後、工程3405として、絶縁フィルム707が導電層上に適用され、
図36におけるように導電層の部分またはエリアが選択的に曝露される。その後、工程3407で、中間生成物が切断され、
図37において示される形状が提供される。工程3409で、ナノ多孔層117が、作用電極501のために曝露エリア上に形成される。その後、3411で、1つ以上の機能層がナノ多孔層117上に形成され、
図31におけるように、非酵素CGM作用電極501の積層構成が提供される。さらに、塩層が、参照電極106のための曝露エリア上に形成され得る。実施形態では、工程3407での中間生成物の切断は、工程3409または3411後に実施され得る。
【0208】
導電層-複数の導電素子
図35は、一実施形態による工程3403後の中間生成物の上面図および線3501についての矢印方向で見たその断面を提供する。図示されるように、ベース503上に形成された導電層は、あらかじめ決められた形状の3つの別個の素子110C、110Wおよび110R、すなわち、対電極のための導電層素子110C、作用電極のための導電層素子110W、および参照電極のための導電層素子110Rを有する。導電層素子110C、110Wおよび110Rの各々は、接触端子のために確保された導電部分(
図33の接触端子部705における)、電極のために確保された導電部分(
図33の皮下部703における)、および2つの導電部分間の導電接続を含む。
【0209】
導電層の製造
導電層は導電性材料の単一層であってもよく、または異なる導電材料の複数の副層から形成されてもよい。実施形態では、対電極のための導電層素子110Cおよび作用電極のための導電層素子110Wのいずれかまたは両方は、少なくとも2つの副層、例えば、銀層および銀層上の導電炭素層で形成される。実施形態では、参照電極のための導電層素子110Rが、単一層、例えば銀層で形成される。導電層110またはその副層は、導電インクをベース503上または上方に印刷し、その後乾燥させることにより形成され得る。別の副層上に形成される副層もまた、その副層のための導電材料を印刷することにより形成され得る。
図35の導電層素子110W、110Cおよび110Rはすべて単一層であり;しかしながら、代替物を示す目的のために、
図36-38では、導電層素子110Wおよび110Cは2副層構成、すなわち、銀層1603上方に炭素層1605を有する(
図16Aも参照されたい)。
【0210】
絶縁フィルム
図36は、一実施形態による絶縁フィルムを配置した後の中間生成物を示す。絶縁フィルム707は、対電極105、作用電極501および参照電極106のために確保された導電部分を曝露させるために、
図33の皮下部703に開口を有して事前に切断され得る。絶縁フィルム707は
図33の接触端子部705を被覆せず、したがって、導電層素子110C、110Wおよび110R(それぞれ、105T、501Tおよび106Tとなる)の各々の端子部を曝露させる。導電層素子110C、110Wおよび110Rの導電接続は絶縁フィルム707で被覆される。接着剤層(図示されず)がベースフィルム503と絶縁フィルム707の間に挿入され得る。絶縁フィルム707は接着剤コートフィルムであってもよい。
【0211】
切断
工程3407で、
図36の中間生成物は切断に供せられ、絶縁フィルム707およびベース503の不必要な部分が、例えば、ダイカッティングにより除去される。
図37は結果的に得られた生成物を示し、この場合、接触端子部705(CGM電極ユニット701の近位端部分)は皮下部703(CGM電極ユニット701の遠位端部分)より広い。実施形態では、遠位部分は、線3501に沿った方向で、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0mmの幅を有する。実施形態では、幅は、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約1.0mm~約1.5mmであってもよい。実施形態では、CGM電極ユニット701は、その遠位端と近位端の間の方向で約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30mmの長さを有する。実施形態では、長さは、直前の文で列挙される任意の2つの数字を選択することにより形成される範囲内、例えば、約10mm~約20mmであってもよい。
【0212】
ナノ多孔層の形成
工程3409で、ナノ多孔層117が作用電極のために曝露された導電層素子110W上に形成される。
図38Aは、ナノ多孔層117を形成した後の、線3501についての矢印方向の中間生成物の断面を示す。実施形態では、ナノ多孔層117が、液体中に分散されたナノ粒子クラスターを含むクラスターコロイドを導電層110上に分配し、そこから液体を乾燥させることにより形成される。別の場合では、ナノ多孔層117の別の形態は、本明細書で開示される異なる方法を用いて形成され得る。いくつかの実施形態では、工程3407での切断は、ナノ多孔層117の形成後に実施され得る。
【0213】
作用電極のための機能層(複数可)
ナノ多孔層117の形成後に、1つ以上の機能層がナノ多孔層117上に形成され、図
31におけるように非酵素CGM作用電極501が提供される。マルトースブロッキング
層301はナノ多孔層117上に形成され得るが、それに限定されない。電解質イオン-
ブロッキング層505は、結果的に得られる
CGM作用電極501のコンディショニング
の改善のためにナノ多孔層117上に形成され得るが、それに限定されない。さらに、生
体適合性層507はナノ多孔層117上に、より特定的には電解質イオン-ブロッキング
層505上に形成され得るが、それに限定されない。
図38Bは、電解質イオン-ブロッ
キング層505および生体適合性層507を含むCGM作用電極501の断面を示す。
【0214】
参照電極および対電極
実施形態では、塩層、例えば、AgClは参照電極106のために曝露された導電層素子110R上に形成され得る。塩層の形成は、導電層素子110Rを形成した後いつでも実施され得る。実施形態では、対電極105は、導電層素子110C上で追加の処理を必要としない可能性がある。
【0215】
CGM電極ユニットの皮下挿入
実施形態では、CGM電極ユニット701の皮下部703(遠位部分)は、当技術分野で知られているまたは将来開発されるであろう挿入ツールを使用して、または使用せずに、被検体の身体中に皮下挿入される。適正な皮下挿入を用いると、皮下部703の作用電極501、参照電極106および対電極105は被検体の間質体液と接触し、一方、CGM電極ユニット701の端子部705は、被検体の身体の外側にとどまる。
【0216】
対応デバイス
その後、実施形態では、端子部705は、作用電極端子501T、対電極端子105Tおよび参照電極端子106Tに対応する対応ポートまたは端子を含む対応デバイス(図示されず)と係合され、または接続される。実施形態では、対応デバイスは、連続モニタリンググルコースモジュールのために、
図1の電気化学セルを、CGM電極ユニット701と一緒に完成させる電気回路をさらに含む。いくつかの実施形態では、電気化学セルを完成させるための電気回路に加えて、対応デバイスは、グルコースレベルを表す標準化数に変換するために電気化学セルから得られた電流を含むデータを処理するための、少なくとも1つのプロセッサを含み得る。いくつかの実施形態では、対応デバイスは、スマートフォンまたはコンピューティングデバイスなどの別の無線デバイスにデータを無線で送るための無線モジュールを含む。
【0217】
BGM使い捨てストリップ
単一時点デバイス
グルコース感知はインビトロで単一時点で実施され得る。単一時点グルコース感知システムは、試験流体、最も一般的には血液中のグルコースレベルを測定する。したがって、システムは血糖モニタリング(BGM)システムと呼ばれる。BGMシステムは1回使用の使い捨てカートリッジまたはストリップを含む。
【0218】
使い捨てカートリッジ
図39は、実施形態による単一時点グルコース感知システムのための、BGM使い捨てカートリッジ901および感知モジュール911を示す。使い捨てカートリッジ901は、試験流体リザーバ903、対電極105、参照電極106、および電極105、106および905のための構造支持体を提供するベース907上に形成されたカートリッジ作用電極905を含む。電気接続(図示せず)が、電極とコネクタ909の間でベース907を介して形成される。
【0219】
感知モジュール
実施形態では、使い捨てカートリッジ901は、感知モジュール911とコネクタ909を介して電気的におよび/または機械的に結合するように設計される。感知モジュール911は、電圧源109および電流センサ108のための電気回路網(図示せず)を含み得る。使い捨てカートリッジ901が感知モジュール911に適正に接続されると、電極105、106および905は、
図1におけるように、感知モジュール911の回路に接続される。
【0220】
作用電極
一実施形態による作用電極905は、導電層110およびナノ多孔層117を含む。作用電極905は、試験流体中に含まれる細胞、脂質および大分子を濾過し、スクリーニングするために、フィルタ層913をさらに含む。実施形態では、フィルタ層913は、織布、綿または、血液の細胞、脂質および他の大きな成分をスクリーニングすることができるが、グルコースがそこを通過するのを可能にする他の材料から製造され得、またはこれを含み得る。
【0221】
作用電極は含まない
実施形態では、作用電極905はグルコース-特異的酵素を含まない。さらに、作用電極905は界面活性剤および酵素グルコース感知において必要となる可能性がある電子伝達体を含まない。さらに、作用電極905がインビトロデバイスであると仮定すると、これは、生体適合性層も必要としない。
【0222】
作用電極の較正
作用電極からの電流
実施形態によれば、ナノ多孔性グルコース-酸化層を有する非酵素作用電極は、試験液中に含まれるグルコースの酸化により引き起こされた電流を発生させる。実際には、非酵素作用電極からの電流は1)グルコース酸化のみにより引き起こされた電流(グルコース-酸化電流)、2)試験流体が干渉化学成分を含む場合、そのような干渉化学成分により引き起こされた電流、および3)電気化学セルと試験流体に含まれる他の化学成分の間の相互作用により引き起こされた電流を含む。
【0223】
体液中のグルコースレベル
健康な個体における正常グルコースレベルは4.0~6.0mM(72~108mg/dL)である。糖尿病患者を考慮すると、グルコースレベルは4.0~20mM(72~360mg/dL)の範囲である可能性がある。
【0224】
グルコース-酸化電流
実施形態では、4.0-20mMのグルコースを含む試験流体中での定常状態では(コ
ンディショニング後)、約0.2V~約0.45Vのバイアス電圧を印加すると、グルコ
ース酸化のみに由来する電流(グルコース-酸化電流)は10nA/mMcm
2
より高いレベルにある。4.0-20Mmのグルコース濃度範囲では、ナノ多孔性グルコース-酸化層(よって、非酵素作用電極)は、試験流体中に含まれる1mMのグルコースに対し、約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5または6.0nAのグルコース-酸化電流を発生させる。実施形態では、試験流体中に含まれる1mMのグルコース由来のグルコース-酸化電流は、直前の文における任意の2つの数字により形成される範囲内、例えば、約1.5nA~2.5nAであってもよい。したがって、4.0-20mMのグルコース濃度範囲では、非酵素作用電極からのグルコース-酸化電流は約2.0nA(4.0×0.5)~約120nA(20×6.0)となり得る。実施形態では、グルコース-酸化電流は約2.0、4.0、8.0、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118は120Naとなり得る。実施形態では、試験流体中に含まれる4.0-20mMのグルコース由来のグルコース-酸化電流は、直前の文における任意の2つの数字により形成される範囲内、例えば、約1.5nA~2.5nAであってもよい。
【0225】
電流およびグルコース濃度の較正
実施形態では、試験流体中の同じグルコース濃度について、グルコース-酸化電流はあるナノ多孔性グルコース-酸化層と別のものとで、それらの特定の製造条件によって、異なっている可能性がある。また、特定のナノ多孔性グルコース-酸化層では、グルコース-酸化電流は一般にグルコース濃度と線形的に相関するが、濃度または電流範囲全体にわたってそのように線形ではない可能性がある。実施形態では、同じ条件を使用して製造されるナノ多孔性グルコース-酸化層の各バッチについて、1つ以上のナノ多孔性グルコース-酸化層が試験され、グルコース-酸化電流とグルコース濃度の間の相関プロファイルが特定のバッチについて決定される。同じバッチからのナノ多孔性グルコース-酸化層を使用したグルコース感知またはモニタリングのプロセスの後半で、相関プロファイルが、試験流体中のグルコースレベルを計算または決定する際に使用される。
【0226】
第2の作用電極
アスコルビン酸
アスコルビン酸はビタミンCとして知られており、人体において重要な役割を果たす。
アスコルビン酸は酸化傾向があり、低い酸化電位で容易に酸化される。アスコルビン酸は体液からのグルコース感知に干渉する可能性がある。
【0227】
現在のところアスコルビン酸をブロックするために使用可能な層はない
アスコルビン酸が負電荷を持つと仮定すると、負電荷を持つ層がアスコルビン酸を撃退するがグルコースを通過させるために提案されている。しかしながら、今までのところアスコルビン酸をブロックするグルコース感知電極は市販されていない。
【0228】
2つの作用電極
実施形態では、グルコースセンサまたは感知システムは、
図1の作用電極103に加えて、少なくとも1つの追加の作用電極を含む。
図40は、概念的に2-作用電極グルコース感知システム4101を示す。このシステムでは、第1の作用電極4103A、第2の作用電極4103B、対電極105および参照電極106がポテンシオスタット4104に接続され、これは、2つの作用電極4103Aおよび4103Bのための、オペアンプ4107Aおよび4107B、電流センサ4108Aおよび4108B、ならびに電圧源4109Aおよび4109Bとして機能するための電気回路網を含む。
【0229】
2-作用電極システムの動作
実施形態では、グルコースおよびアスコルビン酸の両方の酸化が第1の作用電極4103Aで起こる。したがって、第1の作用電極4103Aからの電流は、試験流体102中のグルコースとアスコルビン酸の総計濃度を表す。他方、第2の作用電極4103Bでは、アスコルビン酸の酸化が起こるが、グルコースの酸化は起こらない。したがって、第2の作用電極4103Bからの電流は、同じ試験流体102中のアスコルビン酸の濃度のみを表す。2つの電流値間の差は、試験流体102中に含まれるグルコースの濃度またはレベルを表す。
【0230】
第1の作用電極(グルコース作用電極)
いくつかの実施形態では、第1の作用電極(グルコース作用電極)4103Aは、
図3におけるように、導電層110上にナノ多孔層117を含む。ナノ多孔層117はクラスター化ナノ多孔構造を含み得るが、それに限定されない。他の実施形態では、第1の作用電極4103Aは、
図2におけるように、
図3のナノ多孔層117の代わりに、グルコースを酸化するためのグルコース-特異的酵素を含む酵素層を含み得る。どちらの実施形態においても、第1の作用電極4103Aは、負電荷を持つ膜またはアスコルビン酸がそこを通過するのを阻止するための任意の他の膜を含まない。
【0231】
第2の作用電極(非グルコース作用電極)
第2の作用電極(非グルコース作用電極)4103Bは導電層110を含むが、グルコースの酸化を効果的に引き起こすためのいずれの層または特徴も含まない。実施形態では、第2の作用電極4103Bは、グルコースを酸化するための、ナノ多孔層117もグルコース-特異的酵素も含まない。しかしながら、アスコルビン酸の酸化は導電層110で起こる。実施形態では、導電層110は銀層上に形成された導電炭素層を含むが、それに限定されない。
【0232】
2つの電極のための同じバイアス電圧
実施形態では、同じバイアス電圧が、第1および第2の作用電極4103Aおよび4103Bの両方に、参照電極106に対して印加される。これは、アスコルビン酸の大体同じレベルの酸化が第1および第2の作用電極4103Aおよび4103Bの両方で起こるようにする環境を提供するためである。アスコルビン酸について同じレベルの酸化が第1および第2の作用電極4103Aおよび4103Bの各々で起こると仮定すれば、第1の作用電極4103Aからの電流と第2の作用電極4103Bからの電流の間の差は、第1の作用電極4103Aでのグルコースの酸化を表すはずである。
【0233】
追加の化学成分の干渉の対処
2-電極システム4101は1を超える化学成分の干渉に対処するために使用することができる。実施形態では、バイアス電圧を調整することにより、第1の作用電極4103Aは、グルコースおよびアスコルビン酸だけでなく、追加の干渉化学成分、例えばアセトアミノフェンも酸化することができる。同様に、第2の作用電極4103Bは、アスコルビン酸だけでなく、同時に追加の干渉化学成分も酸化する。ここで、第1および第2の作用電極のどちらも、追加の干渉化学成分を阻止するための膜を含まない。そうして、第1の作用電極4103Aからの電流はグルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの酸化を表し、第2の作用電極4103Bからの電流はアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの酸化を表す。電流間の差はグルコースの酸化を表し、アセトアミノフェンおよびアスコルビン酸の干渉が取り消される。
【0234】
バイアス電圧
実施形態では、0.2-0.45Vの範囲のいずれのバイアス電圧値も、干渉に対処するために使用することができる。いくつかの実施形態では、0.2-0.32Vの範囲内のバイアス電圧値は、下記でより詳細に記載されるように、そのバイアス電圧範囲では、アセトアミノフェンはナノ多孔性金属層内で酸化され得ないと仮定すると、アスコルビン酸のみの干渉に対処するために使用することができる。
【0235】
異なるバイアス電圧
実施形態では、2-電極システム4101は、第1および第2の作用電極に対して異なるバイアス電圧を採用することができる。例えば、第1のバイアス電圧は第1の作用電極4103Aに印加され、第2のバイアス電圧は第2の作用電極4103Bに印加される。異なるバイアス電圧を用いると、第2の作用電極4103Bでのアスコルビン酸の酸化に由来する電流は第1の作用電極4103Aでのアスコルビン酸の酸化による電流成分と同じまたは等価ではないものとすることができる。よって、グルコース酸化由来の電流は、2つの電極からの電流間の単純な差ではない可能性がある。しかしながら、実施形態では、2-電極システム4101は、異なるバイアス電圧、第1および第2の作用電極4103Aおよび4103Bからの電流値、異なるバイアス電圧でのアスコルビン酸の酸化電位を示すデータ、などを用いて、正確なグルコース濃度を計算するための、ハードウェアおよびソフトウェアを有し、またはこれに接続される。
【0236】
同時検出
いくつかの実施形態では、第1の作用電極4103Aからの電流の検出および第2の作用電極4103Bからの電流の検出は同じ時に、同時に、並行して、または付随して起こる。他の実施形態では、1つの電流センサまたは2つの電流センサのいずれかを用いて、検出は該当する化学成分の濃度変動が時間ギャップにわたって無視できる限り、異なる時間に、時間ギャップを有して起こり得る。当業者であれば、どのくらいの長さの時間ギャップが、不正確となるリスクがそれほどなく、可能となるか認識するであろう。例えば、時間ギャップは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10秒未満であり、あるいは時間ギャップは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10分未満である。
【0237】
干渉化学物質の濃度の記録
実施形態では、2-電極システム4101は、第1および第2の作用電極4103Aおよび4103Bからの電流値を保存する、および/または電流値から得られたグルコースおよびアスコルビン酸の個々の濃度を保存するように構成されたハードウェアおよびソフトウェア(図示せず)を含み、またはこれに接続される。アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの両方の酸化が第2の作用電極4103Bで起こるいくつかの実施形態では、ハードウェアおよびソフトウェアは、グルコースの濃度ならびにアスコルビン酸およびアセトアミノフェンの総計濃度を保存するように構成される。
【0238】
CGMに適用可能
2-電極システム4101は、インビボグルコース感知のためにCGM電極ユニットに組み入れられ得る。
図41は第1および第2の作用電極4103Aおよび4103Bを含むCGM電極ユニット4201を示し、それらは、それぞれ第1および第2の作用電極端子4103ATおよび4103BTに接続されている。
【0239】
BGMに適用可能
2-電極システム4101は、インビトログルコース感知のためのBGM使い捨てカートリッジまたはストリップに組み入れられ得る。実施形態では、
図39の使い捨てカートリッジ901は2つの作用電極を含み得る。そのような実施形態では、カートリッジ作用電極905は第1の作用電極4103Aとして働く。第2の作用電極4103Bは、試験流体と接触するためにベース907に付加され得る。さらに、対応する感知モジュール911は、BGM使い捨てカートリッジから第1および第2の作用電極からの信号を受信するための回路網を含み得る。
【0240】
第1および第2の作用電極は一緒に動作しなければならない
2-電極システム4101では、試験流体中のグルコースレベルを得るために、2つの電流値が存在しなければならない:1つは第1の作用電極4103Aからであり、もう1つは第2の作用電極4103Bからである。CGMでは、第1および第2の作用電極4103Aおよび4103Bの各々は、グルコースレベルを提供するために、連続して、または繰り返して動作しなければならない。したがって、システムは、様々な理由で時折使用される予備の感知電極を有するいずれの電気化学感知システムとも区別される。
【0241】
アセトアミノフェンによる干渉
アセトアミノフェン
アセトアミノフェンは最も一般的に使用される処方箋なしで購入できる医薬品の1つである。さらに、アセトアミノフェンは、併用薬物中で、有効活性成分として広く使用される。
【0242】
よく認識される問題
アセトアミノフェンの人気を考えると、薬物は、彼らの血糖値を検出する必要もある患者により摂取され得る可能性がある。多くのグルコース感知デバイスが、医療専門家ではなく、患者自身によって使用されることを考慮すると、アセトアミノフェンにより引き起こされた不正確な読み取り値は重大な結果につながる可能性がある。電気化学グルコース感知についての業界はこの問題を知っており、その解決に関心を示してきた。
【0243】
良い解決策なし
この問題を解決するために多くの試みがなされてきた。しかしながら、これまで、どの解決策も、業界に採用するように納得させることができなかった。アセトアミノフェンが電極に到達しないように選択的にスクリーニングするために採用された膜はない。よって、長年にわたっているが満たされていない要求が存在する。
【0244】
良い解決策なしについての説明
市販の電気化学グルコース感知技術はこの問題に全く、簡単に対処することができない。これは、少なくとも一部は、電気化学グルコース感知システムが技術的に非常に複雑であるためである。作用電極は積層構成要素を有し、その各々はそれ自体の機能を有し、他の構成要素に干渉しない。他の構成要素の機能および作用電極の全体性能に影響を与えずに、アセトアミノフェンが関与するこの問題に対処する解決策を見いだすことは困難であろう。技術の複雑さに加えて、この業界における厳密な規制承認プロセスを考慮すると、市場発売のためのこのような製品の開発は非常に費用がかかる。したがって、いったん、実用的な製品が認可され、市場で発売されると、認可された製品の働く構成要素のいずれにも大きな変更を加えることは困難であろう。
【0245】
アセトアミノフェンに対処する非酵素グルコース感知システム
実施形態では、非酵素電気化学グルコース感知システムはグルコースを選択的に酸化し、同時に、この結果のための追加の膜を導入することなく、アセトアミノフェンを酸化しない。
図3および31に戻って説明すると、作用電極103NE、501は導電層110およびナノ多孔層117を含む。作用電極は、ナノ多孔層117上に1つ以上の追加の機能層を含み得る。
【0246】
アセトアミノフェンスクリーニング膜なし
実施形態では、作用電極103NEは、ナノ多孔層117上に、アセトアミノフェンを選択的にスクリーニングし、撃退し、またはブロックするが、グルコースがそこを通過するのを可能にするように設計された膜、フィルムまたは層を含まない。よって、作用電極103NEが、アセトアミノフェンを含む試験流体に接触する場合、グルコースおよびアセトアミノフェンの両方がナノ多孔層117に接触し、その中の、酸化のためのナノサイズ細孔に入ることができる。
【0247】
グルコースおよびアセトアミノフェンの酸化のためのバイアス電圧
実施形態によるグルコース感知システムでは、グルコースは、ナノ多孔層117において、約0.2V~約0.45Vのバイアス電圧で酸化される。他方、アセトアミノフェンは、0.33、0.34、0.35または0.36Vを超えるバイアス電圧で酸化される。バイアス電圧は、グルコースの酸化を引き起こし、かつ、同時に、アセトアミノフェンの酸化を回避するように調整され得る。
【0248】
グルコースの選択的酸化およびアセトアミノフェンの酸化なしのためのバイアス電圧
実施形態では、参照電極106に対して導電層110に印加されるバイアス電圧は、どちらもナノ多孔層117と接触した時に、グルコースの酸化を引き起こすがアセトアミノフェンの酸化を引き起こさないように設定される。グルコースの選択的酸化およびアセトアミノフェンの選択的非酸化のために、実施形態では、バイアス電圧は、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31または0.32V、または約それらで設定される。実施形態では、バイアス電圧は、直前の文で列挙される任意の2つの数字(2つの電圧値)を選択することにより形成される範囲内、例えば、0.28V~0.30V、約0.27V~約0.31V、0.26V~0.30V、約0.28V~約0.32V、などであってもよい。実施形態では、バイアス電圧は0.30、0.31または0.32Vより低い。
【0249】
酵素感知電極におけるバイアス電圧
対比のために、酵素グルコースセンサは、0.5-0.6Vの範囲のバイアス電圧を印加する。酵素感知センサでは、このバイアス電圧は、その感知電極または他の場所でグルコースの酸化を引き起こさない。むしろ、グルコース-特異的酵素はグルコース分子を酸化し、これにより電子伝達体に対して電子が発生し、それは導電層でバイアス電圧により酸化される。よって、バイアス電圧は酵素電極において電子伝達体の酸化を引き起こすことになる。
【0250】
実施例
ここで、発明の様々な態様および特徴について、実施例および実験と関連付けて、さらに説明する。
【0251】
逆ミセル相の調製
実施例1.1
白金水溶液を、0.500g(0.965mmol)の塩化白金酸六水和物H2PtCl6・6H2O(Sigma-Aldrich製)を24.5gの精製水に攪拌しながら溶解することにより調製した。25gの界面活性剤、トリトンX-100(商標)(Sigma-Aldrich製)を白金水溶液に添加し、界面活性剤および白金イオンを含む水性組成物を提供した。水性組成物中の白金イオンの濃度は約0.02Mであった。逆ミセル相を水性組成物中で、攪拌しながら、温度を70°に調整することにより調製した。
【0252】
実施例1.2
逆ミセル相を、PtCl4・6H2Oを、H2PtCl6・6H2Oの代わりに、水性組成物中で約0.02Mの白金イオン濃度を提供する量で使用することを除き、実施例1.1を繰り返すことにより調製する。
【0253】
実施例1.3
逆ミセル相を、H2PtCl2(OH)4を、H2PtCl6・6H2Oの代わりに、水性組成物中で約0.02Mの白金イオン濃度を提供する量で使用することを除き、実施例1.1を繰り返すことにより調製する。
【0254】
実施例1.4
逆ミセル相を、H2Pt(SO4)(OH)4・6H2Oを、H2PtCl6・6H2Oの代わりに、水性組成物中で約0.02Mの白金イオン濃度を提供する量で使用することを除き、実施例1.1を繰り返すことにより調製する。
【0255】
実施例1.5
逆ミセル相を、TiCl4・6H2Oを、H2PtCl6・6H2Oの代わりに、水性組成物中で約0.02Mのチタンイオン濃度を提供する量で使用することを除き、実施例1.1を繰り返すことにより調製する。
【0256】
実施例1.6
逆ミセル相を、NP-40TMを界面活性剤として、トリトンX-100の代わりに使用し、水性組成物中で約0.02Mの白金イオン濃度を提供することを除き、かつ、さらに、界面活性剤の量および温度を界面活性剤の逆ミセル相を達成するように調整することを除き、実施例1.1を繰り返すことにより調製する。
【0257】
実施例1.7
逆ミセル相を、ポリソルベート80を界面活性剤として、トリトンX-100の代わりに使用し、水性組成物中で約0.02Mの白金イオン濃度を提供することを除きかつ、さらに、界面活性剤の量および温度を特定の界面活性剤の逆ミセル相を達成するように調整することを除き、実施例1.1を繰り返すことにより調製する。
【0258】
実施例1.8
逆ミセル相を、イソセテス-20を界面活性剤として、トリトンX-100の代わりに使用し、水性組成物中で約0.02Mの白金イオン濃度を提供することを除き、かつ、さらに、界面活性剤の量および温度を特定の界面活性剤の逆ミセル相を達成するように調整することを除き、実施例1.1を繰り返すことにより調製する。
【0259】
実施例1.9
逆ミセル相を、ポロクサマー407を界面活性剤として、トリトンX-100の代わりに使用し、水性組成物中で約0.02Mの白金イオン濃度を提供することを除き、かつ、さらに、界面活性剤の量および温度を特定の界面活性剤の逆ミセル相を達成するように調整することを除き、実施例1.1を繰り返すことにより調製する。
【0260】
実施例1.10
逆ミセル相を、モノラウリンを界面活性剤として、トリトンX-100の代わりに使用し、水性組成物中で約0.02Mの白金イオン濃度を提供することを除き、かつ、さらに、界面活性剤の量および温度を特定の界面活性剤の逆ミセル相を達成するように調整することを除き、実施例1.1を繰り返すことにより調製する。
【0261】
還元剤の調製
実施例2.1
還元剤水溶液を、30g(0.170mol)のアスコルビン酸を還元剤として250mlの精製水に攪拌しながら添加することにより、調製した。還元剤溶液を70℃まで加熱した。還元剤水溶液中でのアスコルビン酸の濃度を0.6Mとした。これは実施例1.1から1.10までの金属イオンの濃度の60倍に等しい。
【0262】
実施例2.2
還元剤水溶液を、ホルムアルデヒドを還元剤としてアスコルビン酸の代わりに使用することを除き、実施例2.1を繰り返すことにより調製した。ホルムアルデヒドの量を還元剤水溶液中で約0.6Mのその濃度を提供するように調整する。
【0263】
実施例2.3
還元剤水溶液を、酢酸を還元剤としてアスコルビン酸の代わりに使用することを除き、実施例2.1を繰り返すことにより調製した。酢酸の量を、還元剤水溶液中で約0.6Mのその濃度を提供するように調整する。
【0264】
実施例2.4
還元剤水溶液を、次亜リン酸塩を還元剤としてアスコルビン酸の代わりに使用することを除き、実施例2.1を繰り返すことにより調製した。次亜リン酸塩の量を、還元剤水溶液中で約0.6Mのその濃度を提供するように調整する。
【0265】
ナノ粒子コロイドの形成
実施例3.1
実施例2.1で調製した還元剤水溶液を、逆ミセル相を調製した直後に、実施例1.1の水性組成物に70℃で添加した。結果的に得られた液体組成物中で、白金イオンの濃度は約0.0028Mであり、アスコルビン酸の濃度は約0.50Mであった。結果的に得られた液体組成物を、約4時間70℃で連続して攪拌した。黒色白金コロイドを得た。
【0266】
実施例3.2-3.10
実施例3.1を、実施例1.1で調製した逆ミセル相の代わりに、実施例1.2-1.10で調製した逆ミセル相を使用して繰り返す。これは、それぞれ、実施例3.2-3.10の金属コロイドを提供する。
【0267】
ナノ粒子コロイドの粒子サイズ分析
実施例4.1
Korea Polymer Testing and Research Institute(KOPTRI)は、動的光散乱粒子サイズ分析を、実施例3.1から得られた白金コロイドについて、Photal Otsuka Electronicsのゼータ電位&粒子サイズ分析計ELS-Z2を用いて実施した。分析では、実施例3.1白金コロイドの試料を精製水中に分散させ、25℃で1.3328の屈折率、0.8878cpの粘度、および78.3の比誘電率を有した。
【0268】
図14は、実施例3.1から得られたコロイドについての粒子サイズ分布を示す。粒子直径は主に約9nm~約14nmである。このサイズ分布は逆ミセルを表すと解釈される。サイズ分布は、ほとんどの白金ナノ粒子が逆ミセルの内側に含まれ、または包含されていると解釈される1-5nmの直径サイズを示さない。同様の結果が実施例1.1、2.1および3.1による実験の複数の実行から得られた。
【0269】
実施例4.2-4.10
実施例4.1の分析を、実施例3.2-3.10において調製された各コロイドを、実施例3.1で調製されたコロイドの代わりに使用して繰り返す。実施例3.2-3.10において調製されたコロイドの各々についての粒子サイズ分布が得られる。
【0270】
界面活性剤の除去
実施例5.1
50mlの0.3MのHCl水溶液を60mlの、実施例3.1で調製した白金コロイドに添加した。酸が添加された白金コロイドを10分間、3800rpmで遠心分離した。その後、透明な上清を廃棄し、黒色底部を収集した。HCl水溶液の添加、遠心分離および黒色底部の収集のシーケンスをさらに4回繰り返し、界面活性剤を除去し、白金コロイドを得た。
【0271】
その後、結果的に得られた白金コロイドを精製水で洗浄し、HClを除去した。50mlの精製水を収集された白金コロイドに添加した。水が添加された白金コロイドを10分間、3800rpmで遠心分離した。次いで、透明な上清を廃棄し、黒色底部を収集した。精製水の添加、遠心分離および黒色底部の収集のシーケンスをさらに4回繰り返し、HClを除去し、HClで洗浄された白金コロイドを得た。
【0272】
実施例5.2-5.10
実施例5.1を、実施例3.2-3.10から得られたナノ粒子コロイドを、実施例3.1で調製したナノ粒子コロイドの代わりに使用して繰り返し、それぞれ、実施例5.2-5.10のコロイドを収集する。
【0273】
実施例5.11
実施例5.1を、HCl水溶液の代わりに0.3MのHNO3水溶液を使用して繰り返す。
【0274】
実施例5.12
実施例5.1を、HCl水溶液の代わりに0.3MのNaOH水溶液を使用して繰り返す。
【0275】
クラスターコロイドの粒子サイズ分析
実施例6.1
Korea Polymer Testing and Research Institute(KOPTRI)は、実施例4.1と同様に、動的光散乱粒子サイズ分析を、実施例5.1から得られた白金コロイドについて、Photal Otsuka Electronicsのゼータ電位&粒子サイズ分析計ELS-Z2を用いて実施した。分析では、実施例5.1コロイドの試料を水中に分散させ、25℃で1.3328の屈折率、0.8878cpの粘度、および78.3の比誘電率を有した。
【0276】
図15は、実施例5.1から得られたコロイドについての粒子サイズ分布を示す。粒子直径は主に約60nm~約200nmである。このサイズ分布は、ナノ粒子から形成された不規則形状のクラスターを表すと解釈される。実施例4.1における粒子サイズが主に約9nm~約14nm(逆ミセルのサイズであって、クラスターのサイズではない)であることを考慮すると、クラスターは実施例5.1のプロセスで形成されたことが理解され、この場合、界面活性剤分子が、酸性溶液の添加により白金ナノ粒子から脱離され、界面活性剤が遠心分離および底部の収集により除去された。同様の結果が、実施例1.1、2.1、3.1および5.1による実験の複数の実行から得られた。
【0277】
実施例6.2-6.10
実施例6.1を、実施例3.2-3.10において調製された各コロイドを、実施例3.1で調製されたコロイドの代わりに使用して繰り返す。実施例3.2-3.10において調製された各コロイドについての粒子サイズ分布が得られる。
【0278】
白金の回収-収率
実施例7
実施例5.1で得られたクラスターコロイドを乾燥に供した。コロイドの乾燥重量は0.143gであった。実施例5.1において結果的に得られたコロイドを60mlの、実施例3.1で調製したナノ粒子コロイド(これは0.188gを含んだ)から調製した。全体のプロセスでは、白金の収率は76.1%であった。
【0279】
クラスター化ナノ多孔層を用いた電極の製造
実施例8.1-電極ベース
図16Aにおいて示されるように、銀層1603および導電炭素層1605をポリイミド製の基材1601上に形成させた。銀層1603を、銀粒子を含む銀インクを印刷することにより約20μmの厚さで形成させた。導電炭素層1605を、炭素粒子を含む炭素インクを印刷することにより約20μmの厚さで形成させた。ポリイミド絶縁フィルム1602を基材1601上、銀層1603および導電炭素層1605の周りに積層させ、電極ベース1606を提供した。
【0280】
実施例8.2-ナノ多孔層の形成
実施例5.1で得られたクラスターコロイドを60mg/mlの濃度に希釈した。マイクロシリンジを使用して、0.2μLの希釈クラスターコロイドを、電極ベース1606の導電炭素層上に滴下した。その上にコロイドを滴下した電極ベースを60℃のオーブンに30分間入れ、
図16Bにおいて示されるように白金ナノ多孔層1609を含む電極1607を形成させた。
【0281】
実施例8.3-粗さ係数
ポテンシオスタット104としてCH Instruments Inc.製の電気化学分析計CHI660を使用して、かつ、実施例8.2において調製した電極1607を作用電極103として、白金ワイヤを対電極105として、Ag/AgCl(3M KCl)を参照電極106として使用して、
図1の電気化学セルを調製した。電極1607の銀層1603をポテンシオスタット104に接続させた。試験流体102の代わりに、1MのH
2SO
4水溶液を
図1の電気化学セルに添加した。
【0282】
サイクリックボルタンメトリーを、-0.2V~+1.2Vの電位掃引を用いて実施した。サイクリックボルタンメトリーを使用して白金ナノ多孔層の表面に吸着されたプロトンの量を測定することにより、白金ナノ多孔層の実表面積を得た。白金ナノ多孔層の上面面積(幾何学的面積)を測定した。実表面積を幾何学的面積で割ることにより粗さ係数を計算した。実施例8.2から得られたナノ多孔層の粗さ係数は1147であった。
【0283】
実施例8.4-実施例8.1-8.2の繰り返し
実施例8.1を複数回繰り返し、追加の電極ベースを調製した。実施例8.2を、追加の電極ベースを使用して複数回繰り返し、白金ナノ多孔層1609を含む追加の電極1607を調製した。
【0284】
実施例8.5-実施例8.3の繰り返し
実施例8.3を、実施例8.4で調製された5つの電極1607のために繰り返した。
ナノ多孔層の粗さ係数値は1187、1171、1143、1190および1119であった。
【0285】
実施例8.6-SEM写真
図17Aは、実施例8.4から得られた電極1607の上面から撮ったSEM写真である。より暗い中心部は導電炭素層のエリアを表す。
図17Bは、上から順に、白金ナノ多孔層1609、炭素導電層1605および銀層1603を示す、電極1607の断面のSEM写真である。
図17Cは、実施例8.4で調製された別の電極1607の3つのSEM写真を含む。これらの3つの写真は上面から異なる倍率で撮られたものである。
【0286】
PBS中でのグルコースの感知
実施例9.1-グルコースおよび他の試験材料の溶液の調製
Sigma-Aldrichから購入したD-(+)-グルコース粉末を精製水に溶解し、1Mグルコース原液を調製した。Sigma-Aldrichから購入したアスコルビン酸を精製水に溶解し、0.05Mアスコルビン酸水溶液を調製した。Sigma-Aldrichから購入したアセトアミノフェンを精製水に溶解し、0.05Mアセトアミノフェン水溶液を調製した。Sigma-Aldrichから購入したマルトースを精製水に溶解し、0.5Mマルトース水溶液を調製した。
【0287】
実施例9.2-PBSの調製
精製水中に0.1MのNaH2PO4および0.15MのNaClを含む500ml水溶液を調製した。精製水中に0.1MのNa2HPO4および0.15MのNaClを含む500ml水溶液を調製した。2つの水溶液を混合し、1Lの、pH7.4のストックリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を調製した。
【0288】
実施例9.3-PBS中でのグルコース感知システムの調製
実施例9.2で調製したPBS 20mlをビーカーに入れ、その中で、PBSの温度を37℃で維持した。CH Instruments Inc.製の電気化学分析計CHI660をポテンシオスタット104として使用して、かつ、実施例8.4で調製した電極1607を作用電極103として、白金ワイヤを対電極105として、およびAg/AgCl(3M KCl)を参照電極106として使用して、
図1の電気化学セルを調製した。電極1607の銀層1603をポテンシオスタット104に接続した。電極をPBS中に浸し、電気化学分析計に電気的に接続させた。
【0289】
実施例9.4-電流の測定
実施例9.3で調製されたシステムでは、0.4Vのバイアス電圧を、作用電極103(電極1607)と参照電極106の間に印加した。バイアス電圧を印加すると、作用電極103からの電流を連続して測定した。そこにいずれの物質も添加せずに、PBS中でグルコース感知システムをコンディショニングするために、電気化学セルを12分間維持した。その後、0.087μAの電流値を、PBS中に含まれているグルコースなしに対して取得した。
図18は、下記実施例9.5-9.11について電気化学セルから得られた電流プロファイルを示す。
図18では、「AA」はアスコルビン酸を表し、「AP」はアセトアミノフェンを表す。
【0290】
実施例9.5-PBS中の1mMのグルコースの感知
グルコース感知システムのコンディショニング後、実施例9.1で調製したグルコース原液20μlを実施例9.3のPBSに添加し、1mMのグルコースを含むPBSを生成させた。添加直後に、グルコースを添加したPBSを3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、0.54μAの電流値を、PBS中の1mMのグルコースに対して取得した。
【0291】
実施例9.6-PBS中の3mMのグルコースの感知
実施例9.5において電流が安定した後、実施例9.1で調製したグルコース原液40μlを実施例9.4から得られたPBSに添加し、総グルコース3mMを含むPBSを生成させた。添加直後に、グルコースを添加したPBSを3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、1.19μAの電流値を、PBS中の3mMのグルコースに対して取得した。
【0292】
実施例9.7-PBS中の6mMのグルコースの感知
実施例9.6において電流が安定した後、実施例9.1で調製したグルコース原液60μlを実施例9.5から得られたPBSに添加し、総グルコース6mMを含むPBSを生成させた。添加直後に、グルコースを添加したPBSを3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、2.09μAの電流値を、PBS中の6mMのグルコースに対して取得した。
【0293】
実施例9.8-PBS中の10mMのグルコースの感知
実施例9.7において電流が安定した後、実施例9.1で調製したグルコース原液80μlを実施例9.6から得られたPBSに添加し、総グルコース10mMを含むPBSを生成させた。添加直後に、グルコースを添加したPBSを3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、2.89μAの電流値を、PBS中の10mMのグルコースに対して取得した。
【0294】
実施例9.9-PBS中の0.11mMのアスコルビン酸の感知
実施例9.8において電流が安定した後、実施例9.1で調製したアスコルビン酸水溶液44μlを実施例9.7から得られたPBSに添加し、0.11mMのアスコルビン酸(AA)を含むPBSを生成させた。添加直後に、アスコルビン酸を添加したPBSを3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、2.93μAの電流値を、PBS中の10mMのグルコースおよび0.11mMのアスコルビン酸の和に対して取得した。
【0295】
実施例9.10-PBS中の0.17mMのアセトアミノフェンの感知
実施例9.9において電流が安定した後、実施例9.1で調製したアセトアミノフェン水溶液68μlを実施例9.8から得られたPBSに添加し、0.17mMのアセトアミノフェン(AP)を含むPBSを生成させた。添加直後に、アセトアミノフェンを添加したPBSを3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、3.21μAの電流値を、PBS中の10mMのグルコース、0.11mMのアスコルビン酸および0.17mMのアセトアミノフェンの和に対して取得した。
【0296】
実施例9.11-PBS中の13.9mMのマルトースの感知
実施例9.10において電流が安定した後、実施例9.1で調製したマルトース水溶液556μlを実施例9.9から得られたPBSに添加し、13.9mMのマルトースを含むPBSを生成させた。添加直後に、マルトースを添加したPBSを3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、4.74μAの電流値を、PBS中の10mMのグルコース、0.11mMのアスコルビン酸、0.17mMのアセトアミノフェンおよび13.9mMのマルトースの和に対して取得した。
【0297】
実施例9.12-グルコースレベル式
実施例9.5-9.11では、電流値はPBS中のグルコースの濃度を表し、これに対応する。同様の実験を、同じように調製されたグルコース感知システムについて、同じおよび他のグルコース濃度を使用してさらに多くの回数実施し、電流値および対応するグルコース濃度のデータを得る。PBS中でのグルコース濃度と電流値の間の相関が、データを処理することにより得られる。グルコース濃度を、相関および実施例9.5-9.11から得られた電流値を用いて計算する。
【0298】
血清中のグルコースの感知
実施例10.1-血清中でのグルコース感知システムの調製
ヒト血清をSigma-Aldrichから購入した。血清中のグルコース含量を、YSIを使用して測定した。血清はその中に5.8mMのグルコースを含んだと決定し、それは血糖値104mg/dlに対応する。10mlの血清をビーカーに入れ、その中では、血清の温度を37℃で維持した。電気化学セルを、実施例8.4で調製した1つの電極1607を作用電極103として使用したことを除き、かつ、さらに、作用電極、参照電極および対電極を血清中に浸したことを除き、実施例9.3と同様に調製した。
【0299】
実施例10.2-血清中でのグルコース感知システムのプレコンディショニング
0.4Vバイアス電圧を実施例10.1で調製した電気化学セルの作用電極103と参照電極106の間に印加した。バイアス電圧を、電気化学システムにおいて、システムのコンディショニングのために3時間超の間維持した。すなわち、バックグラウンド電流が、グルコース酸化を感知するのに十分低くなるまで待った。その後、バイアス電圧をシステムから切断した。
【0300】
実施例10.3-電流の測定
実施例10.2においてバイアス電圧を除去した直後に、同じバイアス電圧をシステムに再印加し、作用電極からの電流の測定を開始した。電気化学セルを1.2時間、グルコース感知システムを血清中で、それにいずれの物質も添加せずに、さらにコンディショニングするために維持した。電流が安定した時に、96nAの電流値を、血清中に元々含まれている5.8mMのグルコースに対して取得した。
図19は、下記実施例10.4-10.9の電気化学セルから測定した電流のプロファイルを示す。
図19では、「AA」はアスコルビン酸を表し、「AP」はアセトアミノフェンを表す。
【0301】
実施例10.4-血清中の10mMのグルコースの感知
グルコース感知システムのコンディショニング後、実施例9.1で調製したグルコース原液42μlを実施例10.2の血清に添加し、総グルコース10mMを含む血清を生成させた。添加直後に、グルコースを添加した血清を3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、110nAの電流値を血清中の10mMのグルコースに対して取得した。
【0302】
実施例10.5-血清中の15mMのグルコースの感知
電流が実施例10.4において安定した後、実施例9.1で調製したグルコース原液50μlを実施例10.3の血清に添加し、総グルコース15mMを含む血清を生成させた。添加直後に、グルコースを添加した血清を3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、132nAの電流値を血清中の15mMのグルコースに対して取得した。
【0303】
実施例10.6-血清中の20mMのグルコースの感知
電流が実施例10.5において安定した後、実施例9.1で調製したグルコース原液50μlを実施例10.4の血清に添加し、総グルコース20mMを含む血清を生成させた。添加直後に、グルコースを添加した血清を3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、159nAの電流値を血清中の20mMのグルコースに対して取得した。
【0304】
実施例10.7-血清中の0.11mMのアスコルビン酸の感知
電流が実施例10.6において安定した後、実施例9.1で調製したアスコルビン酸水溶液22μlを実施例10.5から得られた血清に添加し、0.11mMのアスコルビン酸(AA)を含む血清を生成させた。添加直後に、アスコルビン酸を添加した血清を3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、163nAの電流値を、血清中の20mMのグルコースおよび0.11mMのアスコルビン酸の和に対して取得した。
【0305】
実施例10.8-血清中の0.17mMのアセトアミノフェンの感知
電流が実施例10.7において安定した後、実施例9.1で調製したアセトアミノフェン水溶液34μlを実施例10.6から得られた血清に添加し、0.17mMのアセトアミノフェン(AP)を含む血清を生成させた。添加直後に、アセトアミノフェンを添加した血清を3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、223nAの電流値を、血清中の20mMのグルコース、0.11mMのアスコルビン酸および0.17mMのアセトアミノフェンの和に対して取得した。
【0306】
実施例10.9-血清中の13.9mMのマルトースの感知
電流が実施例10.8において安定した後、実施例9.1で調製したマルトース水溶液278μlを実施例10.7から得られた血清に添加し、13.9mMのマルトースを含む血清を生成させた。添加直後に、マルトースを添加した血清を3-4秒間攪拌すると、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。作用電極からの電流を連続して測定した。電流が安定した時に、231nAの電流値を、血清中の20mMのグルコース、0.11mMのアスコルビン酸、0.17mMのアセトアミノフェンおよび13.9mMのマルトースの和に対して取得した。
【0307】
実施例10.10-グルコースレベル式
実施例10.4-10.9において、電流値は、血清中のグルコースの濃度を表し、これに対応する。同様の実験を、同じように調製されたグルコース感知システムについて、同じおよび他のグルコース濃度を使用してさらに多くの回数実施し、電流値および対応するグルコース濃度のデータを得る。血清中のグルコース濃度と電流値の間の相関が、データを処理することにより得られる。グルコース濃度を相関および実施例10.4-10.9から得られた電流値を用いて計算する。
【0308】
非クラスター化ナノ多孔層
実施例11.1-逆ミセル相からの電気めっき
この開示はこれによって、米国特許第8,343,690号(‘690号特許)の実施例および説明をその全体として本明細書に組み込む。‘690号特許の段6~9に現れる実験は、電気めっきによりナノ多孔層を製造し、グルコース感知のために層を使用するための例として、本明細書に特定的に組み込まれる。
【0309】
実施例11.2-六角形相からの電気めっき
この開示はこれによって、米国特許第7,892,415号(‘415号特許)の開示をその全体として本明細書に組み込む。‘415号特許の段5~6に現れる実験は、電気めっきにより六角形構造ナノ多孔層を製造し、グルコース感知のために層を使用するための例として、本明細書に特定的に組み込まれる。
【0310】
実施例11.3-六角形相からの電気めっき
この開示はこれによって、“Electrochemistry Communications, Vol. 4, 8号, 2002年8月, 610-612ページ”の開示をその全体として本明細書に組み込む。
【0311】
実施例11.4-六角形相からの化学析出
この開示はこれによって、“Science, Vol. 278, 1997年10月31日, 838-840ページ”の開示をその全体として本明細書に組み込む。
【0312】
マルトース-ブロッキング層の製造
実施例12.1-mPD水溶液の調製
Sigma-Aldrichから購入したM-フェニレンジアミン(mPD)を精製水に溶解し、mPDを0.1、0.3、0.5、1.0、2.0および5.0mMで含むmPD水溶液を提供した。
【0313】
実施例12.2-サイクリックボルタンメトリーのための調製
CH Instruments Inc.製の電気化学分析計CHI Multi 1030Cをポテンシオスタット104として使用して、かつ、実施例8.4で調製した電極1607を作用電極103として、白金ワイヤを対電極105として、および、Ag/AgCl(3M KCl)を参照電極106として使用して、電気化学セルを調製した。対電極105および参照電極106を電気的に接続させ、2-電極システムを形成させた。
【0314】
実施例12.3-0.1mM、10mV/秒での電気化学重合
実施例12.2で調製した電気化学セルでは、実施例12.1で調製した0.1mMのmPD水溶液を試験流体102の代わりに添加した。サイクリックボルタンメトリーを、
図22において示されるように、2つの掃引セグメントについて10mV/秒の走査速度で、+0.5V~+1.0Vの電位掃引を用いて実施した。ナノ多孔層117上にポリ-mPDマルトース-ブロッキング層301が得られた。
【0315】
実施例12.4-0.1mM、100mV/秒での電気化学重合
走査速度を100mV/秒としたことを除き、実施例12.3を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。
【0316】
実施例12.5-0.1mM、200mV/秒での電気化学重合
走査速度を200mV/秒としたことを除き、実施例12.3を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。
【0317】
実施例12.6-0.3mM、10mV/秒での電気化学重合
実施例12.1で調製した0.3mMのmPD水溶液を0.1mMのmPD水溶液の代わりに添加したことを除き、実施例12.3を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。
【0318】
実施例12.7-0.3mM、100mV/秒での電気化学重合
走査速度を100mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。
【0319】
実施例12.8-0.3mM、200mV/秒での電気化学重合
走査速度を200mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。
【0320】
実施例12.9-0.5mM、10mV/秒での電気化学重合
実施例12.1で調製した0.5mMのmPD水溶液を0.1mMのmPD水溶液の代わりに添加したことを除き、実施例12.3を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。
【0321】
実施例12.10-0.5mM、100mV/秒での電気化学重合
走査速度を100mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。
【0322】
実施例12.11-0.5mM、200mV/秒での電気化学重合
走査速度を200mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。
【0323】
実施例12.12-1.0mM、10mV/秒での電気化学重合
実施例12.1で調製した1.0mMのmPD水溶液を0.1mMのmPD水溶液の代わりに添加したことを除き、実施例12.3を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。
【0324】
実施例12.13-電気ショック
図23の電気化学セルを、クロノアンペロメトリーのために、実施例12.12で調製したポリ-mPD層を多孔性ポリマー層302として、かつ、1MのH
2SO
4水溶液を電解質溶液として使用して調製した。+0.0V~+1.0の単一パルスを、1.0秒のパルス幅を用いて適用することにより、電気ショックを多孔性ポリマー層302に適用した。
【0325】
実施例12.14-1.0mM、100mV/秒での電気化学重合および電気ショック
走査速度を100mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。その後、ナノ多孔層上に形成されたポリ-mPD層を用いて、実施例12.13を繰り返した。
【0326】
実施例12.15-1.0mM、200mV/秒での電気化学重合および電気ショック
走査速度を200mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。その後、ナノ多孔層上に形成されたポリ-mPD層を用いて、実施例12.13を繰り返した。
【0327】
実施例12.16-2.0mM、10mV/秒での電気化学重合および電気ショック
実施例12.1で調製した2.0mMのmPD水溶液を0.1mMのmPD水溶液の代わりに添加したことを除き、実施例12.3を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。その後、ナノ多孔層上に形成されたポリ-mPD層を用いて、実施例12.13を繰り返した。
【0328】
実施例12.17-2.0mM、100mV/秒での電気化学重合および電気ショック
走査速度を100mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。その後、ナノ多孔層上に形成されたポリ-mPD層を用いて、実施例12.13を繰り返した。
【0329】
実施例12.18-2.0mM、200mV/秒での電気化学重合および電気ショック
走査速度を200mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。その後、ナノ多孔層上に形成されたポリ-mPD層を用いて、実施例12.13を繰り返した。
【0330】
実施例12.19-5.0mM、10mV/秒での電気化学重合および電気ショック
実施例12.1で調製した5.0mMのmPD水溶液を0.1mMのmPD水溶液の代わりに添加したことを除き、実施例12.3を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。その後、ナノ多孔層上に形成されたポリ-mPD層を用いて、実施例12.13を繰り返した。
【0331】
実施例12.20-5.0mM、100mV/秒での電気化学重合および電気ショック
走査速度を100mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。その後、ナノ多孔層上に形成されたポリ-mPD層を用いて、実施例12.13を繰り返した。
【0332】
実施例12.21-5.0mM、200mV/秒での電気化学重合および電気ショック
走査速度を200mV/秒としたことを除き、実施例12.6を繰り返し、これにより、ナノ多孔層117上にポリ-mPD層を形成させた。その後、ナノ多孔層上に形成されたポリ-mPD層を用いて、実施例12.13を繰り返した。
【0333】
マルトースによる干渉なしのグルコースの感知
実施例13.1-血清の調製
ヒト血清をSigma-Aldrichから購入した。血清中のグルコース含量を、YSIを使用して測定した。血清はその中に5.8mMのグルコースを含んだと決定し、それは血糖値104mg/dlに対応する。
【0334】
実施例13.2-血清中でのグルコース感知システムの調製
実施例13.1で調製した血清10mlをビーカーに入れ、その中では、血清の温度を37℃で維持した。作用電極103が、実施例12.3において0.1mMのmPD溶液および10mV/秒の走査速度を使用して調製したナノ多孔層上のポリ-mPDマルトース-ブロッキング層301を含むことを除き、電気化学セルを実施例10.2と同様に調製した。
【0335】
実施例13.1-血清中でのグルコース感知システムの調製
作用電極103は実施例12.3において調製した(0.1mMのmPD溶液および10mV/秒の走査速度を使用して)ナノ多孔層上のポリ-mPDマルトース-ブロッキング層301を含むことを除き、かつ、さらに、作用電極、参照電極および対電極を血清中に浸したことを除き、実施例10.2を繰り返すことにより電気化学セルを調製した。
【0336】
実施例13.2-血清中でのグルコース感知システムのコンディショニング
実施例13.1で調製した電気化学セルシステムでは、バイアス電圧0.4Vを作用電極103と参照電極106の間に印加した。バイアス電圧を3時間超の間、電気化学システムにおいて、システムのプレコンディショニングのために維持した。その後、バイアス電圧をシステムから切断し、再接続させた。バイアス電圧を再印加すると、作用電極からの電流の測定を開始した。電気化学セルを、グルコース感知システムを血清中で、さらにコンディショニングするために維持した。電流が安定した時に、血清中に元々含まれている5.8mMのグルコースに対し96nAの電流値を測定した。
【0337】
実施例13.3-マルトース-ブロッキング層を有する電極(0.1mM、10mV/秒)
実施例13.2で調製されたシステムでは、実施例9.1と同様に調製したグルコース原液を血清に添加し、総グルコース濃度10mMを含む血清を生成させた。その後、グルコース原液をさらに添加して、総グルコース濃度15mMおよび20mMを含む血清を生成させた(添加間で一定の時間間隔を有する)。その後、実施例9.1で調製したアスコルビン酸水溶液を血清に添加し、0.11mMのアスコルビン酸を含む血清を生成させた。その後、実施例9.1で調製したアセトアミノフェン水溶液を結果的に得られた血清に添加し、0.17mMのアセトアミノフェンを含む血清を生成させた。さらにその後、実施例9.1で調製したマルトース水溶液を結果的に得られた血清に添加し、13.9mMのマルトースを含む血清を生成させた。各添加直後に、血清を3-4秒間攪拌し、これにより電流の一時的なピークが引き起こされた。
図25はこの実施例でモニタした電流を赤色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸(AA)およびアセトアミノフェン(AP)の各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。したがって、この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0338】
実施例13.4-マルトース-ブロッキング層を有する電極(0.1mM、100mV/秒)
作用電極103が実施例12.4と同様に調製したマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した(0.1mMのmPD溶液を100mV/秒の走査速度で使用)。
図25は、この実施例でモニタした電流を緑色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0339】
実施例13.5-マルトース-ブロッキング層を有する電極(0.1mM、200mV/秒)
作用電極103が実施例12.5と同様に調製した(0.1mMのmPD溶液を200mV/秒の走査速度で使用)マルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図25は、この実施例でモニタした電流を紫色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0340】
実施例13.6-マルトース-ブロッキング層を有する電極(0.3mM、10mV/秒)
作用電極が実施例12.6で調製された(0.3mMのmPD溶液を10mV/秒の走査速度で使用)マルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図26はこの実施例でモニタした電流を赤色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0341】
実施例13.7-マルトース-ブロッキング層を有する電極(0.3mM、100mV/秒)
作用電極が実施例12.7で調製された(0.3mMのmPD溶液を100mV/秒の走査速度で使用)マルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図26は、この実施例でモニタした電流を緑色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0342】
実施例13.8-マルトース-ブロッキング層を有する電極(0.3mM、200mV/秒)
作用電極が実施例12.8で調製された(0.3mMのmPD溶液を200mV/秒の走査速度で使用)マルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図26は、この実施例でモニタした電流を紫色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0343】
実施例13.9-マルトース-ブロッキング層を有する電極(0.5mM、10mV/秒)
作用電極が実施例12.9で調製された(0.5mMのmPD溶液を10mV/秒の走査速度で使用)マルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図27はこの実施例でモニタした電流を赤色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0344】
実施例13.10-マルトース-ブロッキング層を有する電極(0.5mM、100mV/秒)
作用電極が実施例12.9で調製された(0.5mMのmPD溶液を100mV/秒の走査速度で使用)マルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図27は、この実施例でモニタした電流を緑色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0345】
実施例13.11-マルトース-ブロッキング層を有する電極(0.5mM、200mV/秒)
作用電極が実施例12.11で調製された(0.5mMのmPD溶液を200mV/秒の走査速度で使用)マルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図27は、この実施例でモニタした電流を紫色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0346】
実施例13.12-マルトース-ブロッキング層を有する電極(1.0mM、10mV/秒)
作用電極が実施例12.12で調製され(1.0mMのmPD溶液を10mV/秒の走査速度で使用)、さらに、実施例12.13におけるように電気ショックに供されたマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図28はこの実施例でモニタした電流を赤色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0347】
実施例13.13-マルトース-ブロッキング層を有する電極(1.0mM、100mV/秒)
作用電極が実施例12.14で調製され(1.0mMのmPD溶液を100mV/秒の走査速度で使用)、さらに、実施例12.13におけるように電気ショックを有したマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図28は、この実施例でモニタした電流を緑色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0348】
実施例13.14-マルトース-ブロッキング層を有する電極(1.0mM、200mV/秒)
作用電極が実施例12.15で調製され(1.0mMのmPD溶液を200mV/秒の走査速度で使用)、さらに電気ショックを有したマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図28は、この実施例でモニタした電流を紫色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0349】
実施例13.15-マルトース-ブロッキング層を有する電極(2.0mM、10mV/秒)
作用電極が実施例12.16で調製され(2.0mMのmPD溶液を10mV/秒の走査速度で使用)、さらに、実施例12.15におけるように電気ショックを有したマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図29はこの実施例でモニタした電流を赤色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0350】
実施例13.16-マルトース-ブロッキング層を有する電極(2.0mM、100mV
/秒)
作用電極が実施例12.17で調製され(2.0mMのmPD溶液を100mV/秒の走査速度で使用)、さらに、実施例12.15におけるように電気ショックを有したマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図29は、この実施例でモニタした電流を緑色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0351】
実施例13.17-マルトース-ブロッキング層を有する電極(2.0mM、200mV/秒)
作用電極が実施例12.18で調製され(2.0mMのmPD溶液を200mV/秒の走査速度で使用)、さらに、実施例12.15におけるように電気ショックを有したマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図29は、この実施例でモニタした電流を紫色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0352】
実施例13.18-マルトース-ブロッキング層を有する電極(5.0mM、10mV/
秒)
作用電極が実施例12.19で調製され(5.0mMのmPD溶液を10mV/秒の走査速度で使用)、さらに、実施例12.15におけるように電気ショックを有したマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図30はこの実施例でモニタした電流を赤色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0353】
実施例13.19-マルトース-ブロッキング層を有する電極(5.0mM、100mV/秒)
作用電極が実施例12.20で調製され(5.0mMのmPD溶液を100mV/秒の走査速度で使用)、さらに、実施例12.15におけるように電気ショックを有したマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図30は、この実施例でモニタした電流を緑色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0354】
実施例13.20-マルトース-ブロッキング層を有する電極(5.0mM、200mV/秒)
作用電極が実施例12.21で調製され(5.0mMのmPD溶液を200mV/秒の走査速度で使用)、さらに、実施例12.15におけるように電気ショックを有したマルトース-ブロッキング層を含んだことを除き、実施例13.1-13.3を繰り返した。
図30は、この実施例でモニタした電流を紫色で示す。電流の変化を、グルコース、アスコルビン酸およびアセトアミノフェンの各添加に応じて観察した。しかしながら、マルトースの添加後、攪拌により引き起こされたピーク以外、5nA/mMcm
2を超える電流変化は観察されなかった。この実施例におけるマルトース-ブロッキング層はマルトースを効果的にブロックしたが、グルコースの感知を妨害しなかった。
【0355】
実施例13.21-マルトース-ブロッキング層を有する電極(1.0mM、10mV/秒)
実施例12.12で調製したポリ-mPD層(1.0mMのmPD溶液を10mV/秒の走査速度で使用)を電気ショックに供しないことを除き、実施例13.12を繰り返す。
【0356】
実施例13.22-マルトース-ブロッキング層を有する電極(1.0mM、100mV/秒)
実施例12.14で調製したポリ-mPD層(1.0mMのmPD溶液を100mV/秒の走査速度で使用)を電気ショックに供しないことを除き、実施例13.12を繰り返す。
【0357】
実施例13.23-マルトース-ブロッキング層を有する電極(1.0mM、200mV/秒)
実施例12.15で調製したポリ-mPD層(1.0mMのmPD溶液を200mV/秒の走査速度で使用)を電気ショックに供しないことを除き、実施例13.12を繰り返す。
【0358】
実施例13.24-マルトース-ブロッキング層を有する電極(2.0mM、10mV/秒)
実施例12.16で調製したポリ-mPD層(2.0mMのmPD溶液を10mV/秒の走査速度で使用)を電気ショックに供しないことを除き、実施例13.12を繰り返す。グルコースの各添加に応じて電流の変化は観察されず、これは、ポリ-mPD層がグルコースを効果的にブロックすることを意味する。
【0359】
実施例13.25-マルトース-ブロッキング層を有する電極(2.0mM、100mV/秒)
実施例12.17で調製したポリ-mPD層(2.0mMのmPD溶液を100mV/秒の走査速度で使用)を電気ショックに供しないことを除き、実施例13.12を繰り返す。グルコースの各添加に応じて電流の変化は観察されず、これは、ポリ-mPD層がグルコースを効果的にブロックすることを意味する。
【0360】
実施例13.26-マルトース-ブロッキング層を有する電極(2.0mM、200mV/秒)
実施例12.18で調製したポリ-mPD層(2.0mMのmPD溶液を200mV/秒の走査速度で使用)を電気ショックに供しないことを除き、実施例13.12を繰り返す。グルコースの各添加に応じて電流の変化は観察されず、これは、ポリ-mPD層がグルコースを効果的にブロックすることを意味する。
【0361】
実施例13.27-マルトース-ブロッキング層を有する電極(5.0mM、10mV/
秒)
実施例12.19で調製したポリ-mPD層(5.0mMのmPD溶液を10mV/秒の走査速度で使用)を電気ショックに供しないことを除き、実施例13.12を繰り返す。グルコースの各添加に応じて電流の変化は観察されず、これは、ポリ-mPD層がグルコースを効果的にブロックすることを意味する。
【0362】
実施例13.28-マルトース-ブロッキング層を有する電極(5.0mM、100mV/秒)
実施例12.20で調製したポリ-mPD層(5.0mMのmPD溶液を100mV/秒の走査速度で使用)を電気ショックに供しないことを除き、実施例13.12を繰り返す。グルコースの各添加に応じて電流の変化は観察されず、これは、ポリ-mPD層がグルコースを効果的にブロックすることを意味する。
【0363】
実施例13.29-マルトース-ブロッキング層を有する電極(5.0mM、200mV/秒)
実施例12.21で調製したポリ-mPD層(5.0mMのmPD溶液を200mV/秒の走査速度で使用)を電気ショックに供しないことを除き、実施例13.12を繰り返す。グルコースの各添加に応じて電流の変化は観察されず、これは、ポリ-mPD層がグルコースを効果的にブロックすることを意味する。
【0364】
別の電気ショック
実施例14.1-2パルスでの電気ショック
0.5秒のパルス幅で、0.5秒の間隔を有する2パルスを除き、実施例12.13を繰り返す。
【0365】
実施例14.2-2パルスでの電気ショック
各パルスは+0.0V~+2.0Vであることを除き実施例14.1を繰り返す。
【0366】
実施例14.3-多重パルスでの電気ショック
0.1秒のパルス幅、および2つのパルス間の0.1秒の間隔を有する一連の10のパルスを除き実施例12.13を繰り返す。
【0367】
実施例14.4-多重パルスでの電気ショック
各パルスは+0.0V~+2.0Vであることを除き実施例14.1を繰り返す。
【0368】
実施例14.5-単一傾斜での電気ショック
電位が1秒の期間中に、+0.0Vから+1.0Vに徐々に増加することを除き実施例12.13を繰り返す。
【0369】
実施例14.6-多重傾斜での電気ショック
傾斜電位を5回、2つの傾斜間で0.1の間隔を用いて繰り返すことを除き実施例14.5を繰り返す。
【0370】
実施例14.7-単一傾斜での電気ショック
電位が2秒の期間中に、+0.0Vから+2.0Vに徐々に増加することを除き実施例12.13を繰り返す。
【0371】
実施例14.8-多重傾斜での電気ショック
傾斜電位を5回、2つの傾斜間で0.1の間隔を用いて繰り返すことを除き実施例14.7を繰り返す。
【0372】
作用電極のコンディショニング
実施例15.1-血清中でのグルコース感知システムの調製
血清中でのグルコース感知のための電気化学セルを調製するために、実施例10.2を繰り返した。作用電極103は実施例8.4で調製した電極1607(白金ナノ多孔層1609を含む)の1つであり、電解質イオン-ブロッキング層を含まない。
【0373】
実施例15.2-作用電極のコンディショニング(電解質イオン-ブロッキング層なし)
実施例15.1で調製した電気化学セルでは、0.4Vのバイアス電圧を作用電極103と参照電極106の間に印加した。実施例10.3とは異なり、バイアス電圧を印加するとすぐに、作用電極からの電流を連続して測定した。
図42Aは、電気化学セルから測定した電流プロファイルのプロファイルを示し、この場合、作用電極103は電解質イオン-ブロッキング層を含まない。
図42Aについて説明すると、10,000秒(約3時間)、20,000秒および30,000秒で、電流は依然として、著しい速度で減少する。
図42Bは
図42Aのプロファイルの拡大図であり、実施例9.1と同様に調製したグルコース原液は、作用電極のコンディショニングの完了後にうまく添加されたことを示す。
【0374】
実施例15.3-PMMA電解質イオン-ブロッキング層を有する作用電極の調製
Sigma-Aldrichから購入したPMMA(製品番号445746)をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、2wt% PMMA溶液を得た。マイクロシリンジを使用して、0.2μLのPMMA溶液を、実施例8.4で調製した電極1607の1つの白金ナノ多孔層1609上に滴下した。溶媒がすっかり乾くと、PMMA電解質イオン-ブロッキング層505が白金ナノ多孔層1609上に形成された。
【0375】
実施例15.4-血清中でのグルコース感知システムの調製
実施例15.1で調製したPMMA電解質イオン-ブロッキング層を有する作用電極を作用電極103として使用したことを除き、血清中でのグルコース感知のための電気化学セルを調製するために、実施例10.2を繰り返した。
【0376】
実施例15.5-作用電極のコンディショニング
実施例15.4で調製した電気化学セルにおいて、0.4Vのバイアス電圧を作用電極103と参照電極106の間に印加した。バイアス電圧を印加するとすぐに、作用電極からの電流を連続して測定した。
図43は電気化学セルから測定した電流のプロファイルを示し、この場合、作用電極103は電解質イオン-ブロッキング層を含む。実施例9.1と同様に調製したグルコース原液は作用電極のコンディショニングの完了後にうまく添加された。
図43におけるピークは、各添加後の攪拌を表す。
【0377】
実施例15.6-コンディショニング時間の比較
図44は
図42(実施例15.2)および
図43(実施例15.5)の電流プロファイルを重ね合わせたものである。実施例15.5(電解質イオン-ブロッキング層を含む)の電流は約600秒で落ち着き、安定化し、一方、実施例15.2(電解質イオン-ブロッキング層なし)の電流は同じ時間枠において著しい速度で減少する。
【0378】
実施例15.7-PHEMA層を有する作用電極の調製
Sigma-Aldrichから購入したPHEMA(製品番号529265)をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、2wt% PHEMA溶液を得た。マイクロシリンジを使用して、0.2μLのPHEMA溶液を、実施例8.4で調製した電極1607の1つの白金ナノ多孔層1609上に滴下した。溶媒がすっかり乾くと、PHEMA電解質イオン-ブロッキング層505が白金ナノ多孔層1609上に形成された。
【0379】
実施例15.8-PMMA-EG-PMMA層を有する作用電極の調製
Sigma-Aldrichから購入したPMMA-EG-PMMA(製品番号463183)をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、2wt% PMMA-EG-PMMA溶液を得た。マイクロシリンジを使用して、0.2μLのPMMA-EG-PMMA溶液を、実施例8.4で調製した電極1607の1つの白金ナノ多孔層1609上に滴下した。溶媒がすっかり乾くと、PMMA-EG-PMMA電解質イオン-ブロッキング層505が白金ナノ多孔層1609上に形成された。
【0380】
実施例15.8-グルコース感知システムの調製および血清中でのコンディショニング
実施例15.7および15.8で調製した作用電極を作用電極103として使用したことを除き、実施例15.4を繰り返すことにより、血清中でのグルコース感知のための電気化学セルを調製した。さらに、調製した電気化学セルについて実施例15.5を繰り返した。
【0381】
CGM皮下電極ユニットの製造
実施例16.1-ベース上での導電層の形成
150μmの厚さを有するポリイミドフィルムをベース基材503として使用した。銀層1603をポリイミドフィルム上に印刷し、
図35において示される形状で約20μm厚さの銀導電素子110C、110Wおよび110Rを得た。その後、導電炭素層1605を、約20μmの厚さで銀導電素子110Cおよび110W上に印刷した。銀層導電素子110R上に炭素層を形成しなかった。
【0382】
実施例16.2-絶縁層の配置および切断
50μmの厚さを有するポリイミドフィルムを絶縁層707として使用した。ポリイミドフィルムを、端子部705を曝露させながら
図35の中間生成物を被覆するサイズに切断した。ポリイミドフィルムに穴を開け、作用電極、参照電極および対電極のためのエリアを曝露させるための3つの開口を提供した。その後、事前に切断したポリイミドを、
図36の中間生成物を提供するために、接着剤層がポリイミドベース503と接触するように
図35の中間生成物上に配置した。その後、ポリイミドベース503および導電素子の外側のポリイミド絶縁層707を切断し、
図37の中間生成物を提供した。
【0383】
実施例16.3-クラスター化ナノ多孔層の形成
実施例5.1で得られたクラスターコロイドを、精製水で60mg/mlに希釈した。マイクロシリンジを使用して、0.2μLの希釈クラスターコロイドを、実施例16.2で調製した中間生成物の作用電極501のための1つの開口を通して曝露された炭素層1605上に滴下した。炭素層1605上に滴下されたクラスターコロイドを乾燥させ、クラスター化ナノ多孔層117を提供し、
図38Aの中間生成物が得られた。
【0384】
実施例16.4-電解質イオン-ブロッキング層の形成
Sigma-Aldrichから購入したPMMA(製品番号445746)をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、2wt% PMMA溶液を得た。マイクロシリンジを使用して、0.2μLのPMMA溶液を、実施例16.3で調製した中間生成物のナノ多孔層117上に滴下した。溶媒がすっかり乾くと、PMMA電解質イオン-ブロッキング層505がナノ多孔層117上に形成された。
【0385】
実施例16.5-生体適合性層の形成
生体適合性層(pHEMA)を、
図38Bにおいて示されるように電解質イオン-ブロッキング層505上に形成させると、
図33の非酵素CGM電極ユニットが得られる。
【0386】
実施例16.6-生体適合性層の形成
Sigma-Aldrichから購入したpHEMA(製品番号192066)をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、0.5wt% pHEMA溶液を得た。マイクロシリンジを使用して、1.0μLのpHEMA溶液を、実施例16.4で調製した中間生成物の電解質イオン-ブロッキング層505上に滴下した。溶媒がすっかり乾くと、pHEMA生体適合性層507が
図38Bにおいて示されるように形成され、
図33の非酵素CGM電極ユニット701が得られた。
【0387】
CGM動物試験
実施例17.1-CGM動物試験のための調製
実施例16.6で調製した非酵素CGM電極ユニットを、電極103、105および106がラットの間質液に接触するように、ラットの身体に皮下挿入した。CGM電極ユニット701をUXN Co., Ltd.(本出願の出願人)およびソウル国立大学病院により開発されたUXNポテンシオスタットに接続させた。
図45AはUXNポテンシオスタットの写真である。
図45Bは、CGM電極ユニット701が
図45AのUXNポテンシオスタットに接続されていることを示す写真である。
図45Cは、UXNポテンシオスタットをそのケースと共に示す写真である。UXNポテンシオスタットはコンピュータと無線通信するための無線モジュールを含み、コンピュータにより無線で制御することができる。グルコース溶液を、ラットの血液および間質液中のグルコースレベルの変化を引き起こすためにラットの静脈に注射するために調製した。
【0388】
実施例17.2-ラットのグルコースレベルの連続モニタリング
CGM電極ユニット701の皮下挿入を5日間連続して維持した。第1日に、グルコース溶液をラットに2回注射した。その後の日にちに、グルコース溶液を1日1回注射した。UXNポテンシオスタットは、毎日(最初の)注射後、約1.5時間の期間にわたり、CGM電極ユニット701からの電流を測定した。また、約1.5時間の期間中2-5分毎に、少量のラットの血液をその尾から採取し、Roche Accu-Chek(登録商標)血糖測定器用の試験片に適用した。それは血液中のグルコース濃度を提供した。
【0389】
実施例17.3-ラットのCGM測定値および血糖のプロッティング
図46は、実施例17.2においてUXNポテンシオスタットにより測定されたCGM電極モジュールからの電流を青色で示す。
図46の赤色の点は、Roche Accu Chek(登録商標)血糖測定器から得られた血糖濃度を表す。間質液中のグルコースレベルと血液中のグルコースレベルの間に約10分のタイムラグが存在すると仮定すると、データは赤色の点に対してシフトされた青色信号を時間でシフトすることにより較正された。青色信号の鋭いピークは主に、測定中のラットの身体の動きに由来することが理解される。
図45のグラフに基づき、Roche Accu Chek(登録商標)血糖測定器を使用した血糖濃度と実施例16.6で調製した非酵素CGM電極ユニット701を用いたCGMモニタリングの間には強い相関があると考えられる。
【0390】
実施例17.4-クラークエラーグリッド分析
図47は、
図46のグラフで提示される測定に基づく、実施例16.6で調製した非酵素CGM電極ユニット701に対するクラークエラーグリッドである。このクラークエラーグリッド分析のための基準センサはRoche Accu-Chek(登録商標)血糖測定器である。グリッドは5つの領域を有する。領域Aは基準センサの20%以内の値を含み;領域Bは領域Aの20%の外側にあるが、適正でない治療にはつながらないであろう値を含み;領域Cは潜在的に不必要な治療につながる値を含み;領域Dは低血糖または高血糖症を検出する潜在的に危険な故障を示す値を含み;ならびに、領域Eは高血糖症のための低血糖の治療を混乱させる、およびその逆の値を含む。グリッド下の表で要約されるように、分析は、点の91%超が領域Aおよび領域B内にあったことを示す。
【0391】
特徴の組み合わせ
この開示は、ナノ多孔構造および/またはグルコース感知技術に関連する多くの特徴についての多くの論議および情報を提供する。それらの特徴に関連する多くのデバイス、システムおよび方法を提供することがこの開示の目的である。上記で開示される2つ以上の特徴は、特定の組み合わせが本開示において提示されていなくても組み合わせることができる程度まで、一緒に組み合わせて、デバイス、システムまたは方法を形成することができる。また、本明細書で開示されるそれらの特徴の多くに向けられる特許請求の範囲を追求することがこの開示の目的である。それらの特徴のいくつかは、次のセクションにおいて請求項の形態で提示される。多くの請求項は、1つ以上の他の請求項を参照することにより、引用形式で提示される。出願人は、多重請求項を参照するいくつかの請求項は、互いに矛盾する特徴の組み合わせ(以後「不適正な組み合わせ」)を包含する可能性があることに注目している。しかしながら、出願人は、そのような請求項は依然として、互いに矛盾しない特徴の1つ以上の組み合わせ(以後「適正な組み合わせ」)を包含し得ることを認識している。適正な、および不適正な組み合わせの両方を包含し得る請求項を提示することにより、出願人は、そのまたは発明者の適正な組み合わせの所持を確認し、適正な組み合わせの後の主張について適正な組み合わせへの特定のサポート提供することを意図する。