IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-水洗大便器 図1
  • 特許-水洗大便器 図2
  • 特許-水洗大便器 図3
  • 特許-水洗大便器 図4
  • 特許-水洗大便器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
E03D11/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022180145
(22)【出願日】2022-11-10
(62)【分割の表示】P 2017187980の分割
【原出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2023001327
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋式
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】井上 正明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】北村 正樹
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143029(WO,A1)
【文献】特開2009-046835(JP,A)
【文献】特開2013-170364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0267389(US,A1)
【文献】特開2005-098005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/08
E03D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水供給手段から洗浄水を大便器に供給し、大便器のボウル部を洗浄して汚物を排出する水洗大便器において、
ボウル形状の汚物受け面と、内側上端部に略垂直方向に立設したリム部とを備えたボウル部と、
前記ボウル部の下部に設けられた溜水部及び排水管接続口と、
前記リム部の内周面に沿うよう洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有し、
前記リム吐水部は、ボウル部の後方側に設けられ、且つ、前方に向けて吐水し、
前記リム吐水部は、上部に位置する上部吐水口と下部に位置する下部吐水口からなる1つのリム吐水口を備え、
前記上部吐水口は、前記下部吐水口よりも開口面積が小さく構成され、
前記リム吐水部は、前記上部吐水口から吐水された洗浄水はリム部に沿うように進んでリム部の上縁に近接するように広がり、前記下部吐水口から吐水された洗浄水は徐々に汚物受け面に落下し、この洗浄水の汚物受け面に落下する力により、リム部の上縁に近接するように広がる洗浄水を下部に引き下げるようにして、リム部の上部の洗浄水がリム部から飛び出すことがないように構成されている、水洗大便器。
【請求項2】
前記ボウル部の前方側において、前記上部吐水口から吐水された洗浄水はリム部に沿うように進んでリム部の上縁に近接するように広がる、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記ボウル部は前記汚物受け面と前記リム部の間に形成された棚部を備え、前記下部吐水口は前記棚部に沿うように横方向に延設されている、請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記棚部は前記ボウル部の先端位置の横方向の長さがゼロとなるように構成されている、請求項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水をボウル部の上端周縁に形成したリム部に供給し、リム部及びボウル部を洗浄水が旋回することで便器洗浄を行う水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水洗大便器において、洗浄水を便器上端周縁に形成したリム部の内周面に供給し、ボウル部を洗浄水が旋回することで便器洗浄を行う水洗大便器は知られている。(例えば、特許文献1参照)
この特許文献1に記載の水洗大便器では、タンクから供給された洗浄水がリム導水路を経由して、ボウル部の上端周縁に形成したリム部に一側に設けたリム吐水口からリム部に向けて洗浄水を吐水している。そして、このリム吐水口から吐水されたリム洗浄水は、ボウル部に設けられた棚部の上面に落下を抑制されつつリム部を旋回し、この棚部から洗浄水の一部が順次ボウル部に落下することでボウル部を洗浄水が旋回しながら洗浄している。
また、この特許文献1では、棚部に覆いかぶさるようなオーバーハングが形成されていないリム部として構成されている。これによって、スッキリした高いデザイン性と、リム部の清掃容易化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-98005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の水洗大便器においては、節水化の要請が高まり、特許文献1のようにオーバーハングを持たないリム部では、節水化への対応が厳しいという課題があった。具体的には、オーバーハングを持たないためリム部へ供給する洗浄水の流速を高めると、洗浄水が遠心力の作用を受けてリム部から飛び出してしまうため、どうしてもリム部への洗浄水の吐水流速を高めることに限界があり、洗浄水の流速が低く抑えられることで便器洗浄力が低下してしまうことから、この洗浄性能を低下させないために、流量低下を抑えるしかなく節水化への対応が難しかったのである。
また、オーバーハングを持たないリム部にあっては、リム部の上部内側の上縁部まで洗浄水を流すように攻めると、圧力変動等何らかの要因変化で洗浄水のリム部からの飛び出しリスクが増大するため、リム部の上縁部まで攻めることができず、リム部の上縁の汚れが残ってしまうという課題があった。よって、オーバーハングレスのリム部では、リム部の清掃容易化は図れても、リム部の上縁部の汚れ残りが発生するため、清掃回数は逆にオーバーハングがあるリム部からなる水洗大便器よりも増えてしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は従来技術の課題を解決するためになされたものであり、オーバーハングを持たないリム部の構成であっても、高いデザイン性やリム部の清掃容易化という利点を維持しながら、この種の便器では課題であった高い節水性をも実現でき、更にリム部上縁の汚れ付着をも防止して、リム部の清掃回数をも低減できる優れた水洗水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、洗浄水供給手段から洗浄水を大便器に供給し、大便器のボウル部を洗浄して汚物を排出する水洗大便器において、ボウル形状の汚物受け面、及び内側上端部に略垂直方向に立設したリム部を備えたボウル部と、このボウル部の下部に設けられた溜水部、及び排水管接続口と、前記リム部の内周面に沿うよう洗浄水を吐水するリム吐水部と、を備え、前記リム吐水部を構成するリム吐水口は、リム部の上部への洗浄水の単位時間当たりの吐出流量が、リム部の下部への洗浄水の単位時間あたりの吐出流量よりも少なくなるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成された本件発明においては、オーバーハングのないリム部として構成したものであっても、リム部の上部側を旋回する洗浄水は流量が低く抑えられるため旋回に伴う遠心力が作用してもその影響を大きく受け難く、リム部から洗浄水が飛び出すリスクを軽減できることから、リム吐水口からの洗浄水吐出速度を高くすることができ、高い洗浄力を確保することができた。これによって高い節水性能を確保することができるようになったものである。
また、リム部の上部側はボウル部の内部やリム部の下部に比して尿の飛び散りなどによる汚れは少なく、汚れ強度が低いことから、流量を下げ、流速を少し速めるだけでも十分な洗浄性能を維持できたものである。このように、オーバーハングレスのリム部では課題であった高い洗浄性の確保を簡単な構成で実現できたものである。
更に、本件発明では、リム部の上下方向で流量比を変更し、下方側を多くしたことで、下部側の洗浄水は質量が大きくボウル内に落下しやすくなる。本件発明ではこの落下する力を積極的に利用して上方側の洗浄水を下部に引き下げるように作用させた。これによって、吐出流速を高めたことによって発生する洗浄水の飛び出し確実に防止した。更に、リム部からの洗浄水の飛び出しを防止しただけでなく、リム部上縁まで洗浄水を到達させられるようになった。具体的には、少ない流量とすることで遠心力の影響そのおのを低下させた。更に流量を多くした下部側の洗浄水がボウル側に落下する落下力が遠心力に対抗する引き下げる力として上部側の洗浄水に作用させた。これによって、リム部上部の洗浄水がリム部から飛び出すことがなくなり、更にリム部上縁まで洗浄水の到達を図っても、この力によって洗浄水をリム部へ引き戻してくれるためリム部上縁まで洗浄水を容易に到達させることができるようになったものである。オーバーハングを設定したないリム部では課題であった、リム部上縁の洗浄不良をも確実に防止できるようになり、清掃回数を極端に減らすことが可能になったものである。
【0008】
更に本件発明は、前記リム吐水部は、リム部へ単一の吐水口から洗浄水を供給するよう構成されているとともに、リム部の上部側に薄膜水膜を形成するようリム吐水口の上部吐水口の上下方向の長さは幅方向の長さに比して長く、かつその幅方向の長さが上下方向で略均一に構成され、リム部の下部に洗浄水を供給する下部吐水口は、上部吐水口よりリム部の下部側への洗浄水の単位時間あたりの吐出流量が多くなるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成された本件発明においては、リム部の上方に吐水する洗浄水を確実に薄膜化できるようになった。これによって、低質量化によって遠心力による影響を小さくできるのみならず、リム部下部の洗浄水がボウル下部に落下することで発生する遠心力に対抗する引き下げ力の影響を確実なものとできることから、リム部からの洗浄水の飛び出し及び、リム部上縁まで洗浄水を到達させても洗浄水の飛び出し影響を確実に防止でき、更に吐水速度の向上で高い洗浄力をも発揮させることができたものである。
【0010】
更に本件発明においては、上部吐水口と下部吐水口からなるリム吐水口は、正面視でL字状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された本件発明においては、単にリム吐水部を構成するリム吐水口をL字型にするという簡単な構成で、リム部上部に吐水する吐水流量を抑えて下部の流量を大きくすることができるだけでなく、リム部上部への吐水を薄膜状の水膜に形成することが同時に可能となったものである。
【0012】
更に本件発明においては、前記リム部の下部側の大きな流量からなる洗浄水が前記ボウル部下方側に落下することで、前記リム部の上部側の薄膜水膜からなる洗浄水側への移動が抑制するとともに、前記薄膜水膜に作用する遠心力に、リム部下部の大きな流量からなる洗浄水がボウル部下方側に落下する力を対抗させるように前記棚部を形成したことを特徴とする。
【0013】
このように構成された本件発明においては、リム部上方に吐水された洗浄水がリム部から飛び出さないように薄膜化するだけでなく、下部の流量を大きくし、この下部の洗浄水をボウル部に上手に落下させることで、リム部上部の洗浄水を下部に引き下げるように作用させてリム部からの洗浄水の飛び出しと、リム部上縁までの洗浄水の到達を可能にした。更に、本件発明においては、リム部下部の洗浄水のボウル部への落下コントロールを棚部で構成したことで、簡単な構成で狙った作用を実現できたものである。特に、この作用を実現するにはボウル部の形状や棚部の摩擦力や傾斜など様々な手段が考えられるが、水洗大便器は一般に陶器であることから、この微妙な形状を精度良く実現することは非常に困難であった。本件発明においては棚部の幅でそれを実現したことで、寸法精度に緩さのある陶器でも確実に狙った作用を提供できる水洗大便器を提供できたものであり、生産歩留まりを高くできるという実用上優れた効果を奏し得るものである。
【0014】
更に本件発明においては、前記棚部は、前記リム吐水口の近傍に比して遠い位置では水平の棚部幅が小さくなるよう構成され、更に遠い位置では水平の棚部の幅はゼロとなるよう構成されていることを特徴とする。
【0015】
このように棚部を構成するという簡単な構成で、薄膜水膜に対して遠心力に対抗する力を確実に作用させてリム部の上縁まで確実に洗浄することができるとともに、リム部からの洗浄水の飛び出しをも確実に防止できたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水洗大便器によれば、オーバーハングを持たないリム部の構成であっても、高いデザイン性やリム部の清掃容易化という利点を維持しながら、この種の便器では課題であった高い節水性をも実現でき、更にリム部上縁の汚れ付着をも防止して、リム部の清掃回数をも低減できるという実用上優れた効果を奏することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿って見た断面図である。
図3図1のIII-III線に沿って見た断面図(貯水タンクは省略)である。
図4図1のIV-IV線に沿って見た部分断面図である。
図5】第1の吐水口18から吐水された洗浄水の形状変化を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態による水洗大便器を添付図面を参照して説明する。先ず、本発明の実施形態による水洗大便器の基本構造を図1乃至図3により説明する。ここで、図1は本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、図2図1のII-II線に 沿って見た断面図であり、図3図1のIII-III線に沿って見た断面図(貯水タンクは省略)であり、図4図1のIV-IV線に沿って見た部分断面図である。
【0019】
図1乃至図4に示すように、本実施形態による水洗大便器1は、表面に釉薬層が形成された陶器製であり、下部にスカート部2が形成され、上半部のうち前方にボウル部4が形成され、後方上部に導水路6、後方下部にサイホン作用により汚物を排出する排水路8がそれぞれ形成されている。さらに、水洗大便器1の後方上部には、導水路6に連通する、貯水タンク10が設けられている。また、この貯水タンク10内には、排水弁11が設けられており、操作レバー(図示せず)により開閉するようになっている。なお、本発明は、貯水タンクを備えた水洗大便器以外に、水道水の圧力を利用した、例えば、フラッシュバルブを備えたタイプの水洗大便器等にも適用可能である。
【0020】
ボウル部4は、ボウル形状の汚物受け面12と、上縁部を構成するリム部14と、この汚物受け面12とリム部14との間に形成された棚部16を備えている。ここで、リム部14の内側面14aは、上から見て死角になる箇所がないように、棚部16からほぼ垂直方向に延びる平坦面(スムーズな平面)により形成されている。所謂、オーバーハングレスのリム部14として構成されており、これによってスッキリとした高いデザイン性、及びふき取りの良さや汚れのつき難さなどの効果を奏するものである。
【0021】
ボウル部4の汚物受け面5の中央で溜水の水面下となる箇所には排水路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延び、この上昇路8bには下降路(縦管)8cが連続し、下降路8cの下端は、ジョイント(図示せず)を介して排出管(図示せず )に接続されている。
【0022】
また、水洗大便器1のボウル部4の前方から見て左側の後方側には、棚部16上に洗浄水を吐水する第1の吐水口18と、ボウル部4の前方から見て右側の後方側には、棚部16上に洗浄水を吐水する第2の吐水口20が形成され、これらの第1の吐水口18及び第2の吐水口20は、同一方向の旋回流(平面視で反時計回り)を形成するようになっている。
【0023】
更に、水洗大便器1のボウル部4には、ボウル部4の溜水面の位置よりも上方で棚部16よりも下方の位置で且つ前方から見て左側(ボウル部側面)にスリット形状のサイドゼット穴22が形成されている。このサイドゼット穴22から吐水された洗浄水は、排水路8の入口8aに向かって流れ、汚物を効率的に排水路8に押し込むようになっている。
【0024】
導水路6は、便器の前方に向かって、3つの通水路、即ち、第1の吐水口18に洗浄水を供給する第1の通水路24、第2の吐水口20に洗浄水を供給する第2の通水路26、サイドゼット穴22に洗浄水を供給する第3の通水路28に分岐している。なお、サイドゼット穴を形成した場合には、効果的な洗浄が可能であるが、第1の吐水口18及び第2の吐水口20のみから棚部16上に洗浄水を吐水し、このサイドゼット穴を設けないようにしてもよい。
【0025】
次に、図1乃至図4に加えて、図5を参照して、本実施形態による水洗大便器1の第1の吐水口18の詳細構造を説明する。この第1の吐水口18は、本件発明における最大の特徴となる部分であり、第1の吐水口18の形状が略L字状に形成されている。更に、第1の吐水口18は、リム部14に沿う上下方向に延設された上部吐水口18aと、棚部16に沿うように横方向に延設した下部吐水口18bとから構成され、この上部吐水口18aと下部吐水口18bの二つで一つの第1の吐水口18を構成している。なお、本実施例においては、リム部14を構成する陶器に開口を形成する形で第1の吐水口18を構成しているが、上部吐水口18aの位置や形状、また幅方向の寸法精度がリム部14に沿うような薄膜水膜を確実に形成する意味で重要であることから、第1の吐水口18を陶器に組み込むような形で樹脂部品によって形成したり、陶器自体は大開口を開け、内部にあるホースの先端にノズルを設け、このノズルに第1の吐水口を構成するようにしても良い。いずれにしても、寸法精度や位置精度を確保することが重要となる。
また、本実施例では、第1吐水口18のみをL字状に形成したが、第2の吐水口20も同様にL字状に形成することは更に好ましい対応となる。また、第2の吐水口20においてL字状に構成するにあたっても、陶器で構成しても、第2の吐水口20を陶器に組み込むような形で樹脂部品によって形成したり、陶器自体は大開口を開け、内部にあるホースの先端にノズルを設け、このノズルに第2の吐水口20を構成するようにしても良い。
【0026】
更に、上部吐水口18aは、下部吐水口18bより開口面積が小さく構成されており、吐出流量が下部吐水口18bより大幅に少なくなるように構成されている。このように構成された第1の吐水口18から吐水された洗浄水30は、図5に示すように第1の吐水口18から突出された直後は吐水口の形状に沿うようにL字状となるが、リム部14を進むにつれてその形状は表面張力等の作用によって当然崩れていく。しかし、上部吐水口18aから吐水された洗浄水30は薄く吐水されているため、リム部14の上部に沿うように進み、また遠心力の作用等で更に薄くなると同時にリム部14の上縁に近接するように広がっていく。この薄膜水膜30a状の吐水によって、洗浄水30のリム部14からの飛び出しが抑えられ洗い残しの多かったリム部14の上縁に対しても洗浄水30を持っていくことができ高い洗浄性を発揮できる。汚れを取るためのふき取り回数を大幅に低減できるようになった。
【0027】
更に、本件発明においては、薄膜水膜30aによって遠心力影響を低下させて上記効果を奏するようにしているが、これだけの工夫ではなく、確実に洗浄水30がリム部14から飛び出さないように工夫されている。具体的には、下部吐水口18bから吐水された下部洗浄水30bは大きな流量を持って幅方向に吐水されるように構成されているとともに、ここから吐水された下部洗浄水30bを棚部16から除々にボウル部4内に落下させるように構成した。これによって、薄膜水膜30aを構成する上部吐水口18aから吐水されたリム部14の上部に下部吐水口18bから吐水された下部洗浄水30bが表面張力で移動するのを抑制するだけでなく、ボウル部4に落下する力が薄膜水膜30aに対して、薄膜水膜30aが遠心力によってリム部14から飛び出そうとする力に対抗するよう表面張力を利用する形で作用するため、薄膜水膜30aはリム部14から飛び出ることなく、リム部14の上縁に留まりリム部14を綺麗に洗浄することが可能となったものである。
【0028】
また、下部洗浄水30bによる薄膜水膜30aのリム部14からの飛び出しを確実なものとするように本実施例では、棚部16の幅が最適に設計されている。具体的には水洗大便器1の前方に向かうほど棚部16の横方向の長さは短く設計され、洗浄水30に最も多くの遠心力が作用する前方端部の屈曲率が最も大きくなる前端位置を含む前方エリアは棚部14の横方向の長さをゼロとしている。これによって、洗浄水30に遠心力が作用すると棚部14側に圧縮されるように力が作用するが、この圧縮力によって下部洗浄水30bはリム部14の上方側ではなくボウル部4側に広がりやすくなり、この力が同様に薄膜水膜30aをボウル部4方向に引き下げる力として大きく働く。これによってリム部14を綺麗に上縁まで洗浄するようにしても洗浄水30がリム部14から飛び出すことを確実に防止できるように構成しているものである。
【符号の説明】
【0029】
1 水洗大便器
2 スカート部
4 ボウル部
6 導水路
8 排水路
8a 入口
10 貯水タンク
11 排水弁
12 汚物受け面
14 リム部
14a 内側面
16 棚部
18 第1の吐水口
18a 上部吐水口
18b 下部吐水口
20 第2の吐水口
22 サイドセット穴
24 第1の通水路
26 第2の通水路
28 第3の通水路
30 洗浄水
30a 薄膜水膜
30b 下部洗浄水
図1
図2
図3
図4
図5