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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】採便器
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20231211BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G01N1/04 G
G01N1/04 J
G01N33/48 G
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022571377
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046534
(87)【国際公開番号】W WO2022138447
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2020213817
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162478
【氏名又は名称】ミナリスメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 庸正
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-059052(JP,A)
【文献】特開2009-276311(JP,A)
【文献】米国特許第04735905(US,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2016-0001613(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒部及び、前記棒部の端部近傍に、軸方向傾斜溝を有する採便部を備える採便棒と、
前記採便棒を収容すると共に、該採便棒を収容する際に前記採便部が通過する位置に、便を擦切る擦切り部を備える容器本体と、
を含む採便器。
【請求項2】
前記採便棒の棒部がネジ部を有し、
前記容器本体が、前記ネジ部と螺合するネジ穴を備える、
請求項1記載の採便器。
【請求項3】
前記採便棒が、前記棒部の他端基部に前記ネジ部を備える、請求項2記載の採便器。
【請求項4】
前記容器本体へ前記採便棒を1.5回転以上螺入したときの、前記採便棒の挿入距離と、前記軸方向傾斜溝の軸方向の一端から他端までの距離との比が、1:1である、請求項1~3のいずれか記載の採便器。
【請求項5】
前記軸方向傾斜溝を複数備える、請求項1~4のいずれか記載の採便器。
【請求項6】
前記軸方向傾斜溝の溝深さが、前記棒部の先端側から基端側に向かって浅くなる、請求項1~5のいずれか記載の採便器。
【請求項7】
前記軸方向傾斜溝が、前記棒部の外周に沿って、3°以上4°以下のらせん構造となっている、請求項1~6のいずれか記載の採便器。
【請求項8】
前記容器本体が、前記採便部を前記擦切り部へ導く筒状ガイド部を備え、前記筒状ガイド部が、前記擦切り部側の端部の内壁に突出部材を備える、請求項1~7のいずれか記載の採便器。
【請求項9】
前記棒部が、一定の径を有する丸棒部であり、前記丸棒部が、先端側から基端側に向かって、半球部、円周状凹部、及び上円盤部を順次備える、請求項1~のいずれか記載の採便器。
【請求項10】
前記半球部が研磨表面を有する、請求項9記載の採便器。
【請求項11】
前記円周状凹部が、1つ又は複数のリブを備える、請求項9又は10記載の採便器。
【請求項12】
前記棒部が、前記半球部と前記円周状凹部との間に、下円盤部を備える、請求項9~11のいずれか記載の採便器。
【請求項13】
前記下円盤部の軸方向の厚みが0.5mm以上1.5mm以下である、請求項12記載の採便器。
【請求項14】
前記丸棒部が、その基端側に、切欠きを有する縮径段差部を備える、請求項9~13のいずれか記載の採便器。
【請求項15】
孔径が前記丸棒部の径以下まで縮径して形成される第2の擦切り部をさらに備える、請求項9~14のいずれか記載の採便器。
【請求項16】
前記容器本体が、容器外枠及び前記容器外枠の内部に嵌合される嵌合体を含み、
前記嵌合体が、その底部に嵌合可能なポリエチレン(PE)素材又はエラストマー素材のセパレータを含み、
前記セパレータが、前記第2の擦切り部を備える、請求項15記載の採便器。
【請求項17】
前記容器本体が、前記採便部を前記擦切り部へ導く筒状ガイド部を備え、前記筒状ガイド部が、前記擦切り部側の端部の内壁に突出部材を備える、請求項9~16のいずれか記載の採便器。
【請求項18】
前記突出部材と前記丸棒部との間に隙間を有する、請求項17記載の採便器。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか記載の採便器を使用して採便する、採便方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採便器、詳しくは、採便量のバラツキを低減した、定量性に優れた採便器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む動物から排泄される糞便中のヘモグロビンを検査する、所謂、便潜血検査は、大腸など下部消化管の腫瘍等の種々の疾患の診断に非常に有用であることから、臨床検査においてしばしば用いられている。前記臨床検査では、定量的に糞便を採取し、適切な緩衝液に懸濁させる必要があり、これを簡便で衛生的かつ精確な手段によって達成し、かつ採便後に衛生的に保存及び輸送を可能にするために種々の採便器が開発され、数多く報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、採便棒と容器本体と該容器本体の内部に嵌合される嵌合体とを具備した採便器であって、前記採便棒は、一側に把持部を有し、他側に棒部を有するとともに、該棒部の先端付近に採便部が設けられており、前記容器本体は、一側に嵌合体を嵌入するための開口部と他側に底部を有し、容器本体の下方部分と嵌合体の下方との間の空間には糞便溶解液が収容される糞便溶解液収容部が形成されており、前記嵌合体は、採便棒の棒部を挿入することができる筒状ガイド部と、該筒状ガイド部に設けられた過剰な便を除去するための第1の擦切孔と、該第1の擦切孔の下方に、過剰な便を更に除去するための第2の擦切孔とを有し、第1の擦切孔の上端に隣接した筒状ガイド部に集便検知領域が形成されている採便器が開示されている。しかしながら、特許文献1には、後述する採便部の軸方向傾斜溝は開示されていない。
【0004】
また、特許文献2には、一端が開口するとともに他端が閉塞していて培地を収容可能である略筒形の容器と、容器開口端に着脱可能に装着されるキャップと、キャップに一体的に固定された採便体とを有してなる採便管において、該採便体の表面に複数条の凹溝が形成されており、採便体の表面に形成される複数条の凹溝が採便体の軸方向に対して所定角度傾斜した方向にスパイラル状に形成されていることを特徴とする採便管が開示されている。しかしながら、特許文献2には、後述する、便を擦切る擦切り部は開示されていない。
【0005】
その他、特許文献3には、容器本体と、一側に把持部を有し、他側に、その先端付近に採便部が設けられている棒部を有する採便棒とからなり、前記容器本体は、前記採便棒の採便部が挿通される開口部と、内部に乾燥剤が封入されており、前記開口部から挿入された、便検体を保持した採便部が乾燥剤と接触することにより、採便部に保持された便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体を乾燥剤中で保存する便収容室とを具備する採便器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2010/067534
【文献】特開2009-276311
【文献】WO2017/104132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
糞便検体中に含まれる抗原に対する抗原抗体反応を利用した検査の場合には、検査対象便の性状にかかわらず一定量の採便量を確保することが要求され、かつ、糞便検体緩衝液中の便濃度を一定にすることが必要とされるが、以上の採便器を用いて、定量的な検査を実施することは困難であった。
そこで、本開示は、採便量のバラツキを低減した、定量性に優れた採便器を提供する。さらに、本開示は、採便量のバラツキを低減した、定量性に優れた採便方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明には様々な実施形態が含まれる。実施形態の例を以下に挙げる。本発明は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態は、単独で又は組み合わせて、実施することが可能である。
【0009】
実施形態1は、棒部及び、前記棒部の端部近傍に、軸方向傾斜溝を有する採便部を備えた採便棒と、前記採便棒を収容すると共に、該採便棒を収容する際に前記採便部が通過する位置に、便を擦切る擦切り部を備える容器本体と、を備えることを少なくとも含む。
【0010】
前記実施形態1では、前記採便棒に付着した過剰な便は、前記擦切り部おいて擦切られて除去される。更には、採便時の軸方向傾斜溝への便の入り込みが不十分であり、前記軸方向傾斜溝に隙間が生じてしまった場合であっても、前記擦切り部により過剰な便が擦切られて除去される際に、前記便が軸方向傾斜溝に押し込まれることにより、すべての採便溝に便をいきわたらせることができる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0011】
前記実施形態1では、採便棒を採便容器に収容する際に、採便部が回転せずに擦切り部を通過してもよく、採便部が回転しながら擦切り部を通過してもよい。また、前記実施形態1では、容器本体が複数の部材に分離可能であってもよい。前記複数の部材としては、例えば、容器外枠及び前記容器外枠の内部に嵌合される嵌合体であってよい。容器本体が複数の部材に分離可能である場合、前記擦切り部及び後述する筒状ガイド部は、前記複数の部材のうちの1つの部材にまとめて設置されていてもよく、前記複数の部材に分かれて配置されていてもよい。
【0012】
実施形態2は、前記実施形態1の採便器において、前記採便棒の棒部がネジ部を有し、前記容器本体が、前記ネジ部と螺合するネジ穴を備えることを少なくとも含む。
【0013】
一般に、採便棒の採便部を便に押し当てる際、採便部をどの方向から便に押し当てても採便できるようにするためには、採便部の全周360°に採便溝を設ける必要がある。しかしながら、採便溝を360°配置したとしても、採便棒を一方向のみから便に押し当てた場合には、採便棒の該一方向の採便溝のみでしか採便することができず、採便はできるものの、採便量にはバラツキが生じる。そこで、採便棒を一方向のみから便に押し当てた場合であっても、採便部の全周360°に配置されたすべての採便溝に便をいきわたらせる機能や、便が採便溝に入り込みやすい構造や、さらに、強制的に採便溝に便を埋め込む機能等が必要と考えられる。
【0014】
前記実施形態2では、前記採便棒と前記容器本体とが螺合するよう構成されている。前記実施形態2では、前記採便棒を一方向のみから便に押し当ててしまった場合であっても、その後に前記採便棒を容器本体に収容した際、前記擦切り部により擦切られて除去された過剰な便が、前記螺合により生じる前記採便部の回転に合わせて、軸方向傾斜溝に押し込まれることにより、すべての採便溝に便をいきわたらせることができる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0015】
実施形態3は、前記実施形態2の採便器において、前記採便棒が、前記棒部の他端基部に前記ネジ部を備えることを少なくとも含む。また、前記実施形態3では、採便実施者が採便時に採便棒を把持しやすくするために、採便棒に把持部が備えられていてもよい。
【0016】
実施形態4は、前記実施形態1~3の採便器において、前記容器本体へ前記採便棒を1.5回転以上螺入したときの、前記採便棒の挿入距離と、前記軸方向傾斜溝の軸方向の一端から他端までの距離との比が、1:1であることを少なくとも含む。前記実施形態4では、軸方向傾斜溝の軸方向の距離と、前記軸方向傾斜溝が設けられた採便部が、容器本体の擦切り部を通過する際の回転回数とを適切に設定している。そのため、前記採便棒の回転に合わせて、便が前記軸方向傾斜溝に入り込みやすくなる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0017】
実施形態5は、前記実施形態1~4の採便器において、前記軸方向傾斜溝を複数備えることを少なくとも含む。
【0018】
実施形態6は、前記実施形態1~5の採便器において、前記軸方向傾斜溝の溝深さが、前記棒部の先端側から基端側に向かって浅くなることを少なくとも含む。ここで、前記棒部の先端側とは、前記棒部の両端のうち、端部近傍に採便部を備える方の端側である。また、前記棒部の基端側とは、前記棒部の両端のうち、端部近傍に採便部を備える方とは逆の端側であり、例えば前記実施形態3においては、ネジ部を備える側の端側である。前記実施形態6では、前記軸方向傾斜溝の溝深さが、前記棒部の先端側から基端側に向かって浅くなることにより、前記採便棒の回転に合わせて、便が前記軸方向傾斜溝に入り込みやすくなる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0019】
実施形態7は、前記実施形態1~6の採便器において、前記棒部の外周に沿って、3°以上4°以下のらせん構造となっていることを少なくとも含む。前記実施形態4では、前記らせん構造が、3°以上4°以下のらせん構造となっていることにより、前記採便棒の回転に合わせて、便が前記軸方向傾斜溝に入り込みやすくなる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0020】
実施形態8は、前記実施形態1~7の採便器において、前記容器本体が、前記採便部を前記擦切り部へ導く筒状ガイド部を備え、前記筒状ガイド部が、前記擦切り部側の端部の内壁に突出部材を備えることを少なくとも含む。前記実施形態8では、前記採便棒は筒状ガイド部への挿入時、回転しながら上から下に向かって挿入される。その際、前記採便部に付着した過剰な便は前記擦切り部で除去される。この除去された過剰な便は、筒状ガイド部の前記擦切り部側の端部と擦切り部との境に残ることとなるが、この残った便は、前記採便棒の回転に伴い前記突出部材の側面に集積する。ここで、更に前記採便棒が回転することによって、最終的に、前記突出部材により、前記採便棒の前記軸方向傾斜溝に便が強制的に押し入れられる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0021】
実施形態9は、前記実施形態1~8の採便器において、前記棒部が一定の径を有する丸棒部であり、前記丸棒部が、先端側から基端側に向かって、半球部、円周状凹部、及び上円盤部を順次備えることを少なくとも含む。ここで、前記棒部の先端側とは、前記棒部の両端のうち、端部近傍に採便部を備える方の端側である。また、前記棒部の基端側とは、前記棒部の両端のうち、端部近傍に採便部を備える方とは逆の端側であり、例えば前記実施形態3においては、ネジ部を備える側の端側である。前記実施形態9では、前記円周状凹部は、前記軸方向傾斜溝と同様に便を収容するスペースとなる。また、前記円周状凹部は、前記採便器の製作時、凹部の深さ及び採便棒軸方向の厚みを調整することにより、採取したい便の量を調整することにも使用できる。更に、採便棒側面に付着した便の一部が前記凹部に引っかかることにより、便が採便後から前記採便棒を容器本体に収容するまでの間に、採取した便が脱落することが防止される。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0022】
実施形態10は、前記実施形態9の採便器において、前記半球部が研磨表面を有することを少なくとも含む。前記実施形態10では、半球部が研磨表面を有することにより、前記採便棒の先端に余分な便が付着することが防がれる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0023】
実施形態11は、前記実施形態9又は10の採便器において、前記円周状凹部が、1つ又は複数のリブを備えることを少なくとも含む。前記実施形態11では、前記リブは、前記擦切り部又は後述する第2の擦切り部が、前記円周状凹部にくい込むことを防止する。それにより、前記リブは、前記円周状凹部に収容された便が減ることを防止する。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0024】
実施形態12は、前記実施形態9~11の採便器において、前記棒部が、前記半球部と前記円周状凹部との間に、下円盤部を備えることを少なくとも含む。
【0025】
実施形態13は、前記実施形態12の採便器において、前記下円盤部の軸方向の厚みが0.5mm以上1.5mm以下であることを少なくとも含む。
【0026】
実施形態14は、前記実施形態9~13の採便器において、前記突出部材と前記丸棒部との間に隙間を有することを少なくとも含む。前記実施形態14では、前記隙間を有することにより発生する表面張力により、前記軸方向傾斜溝に、軟便又は水様便が自然に収容される。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0027】
実施形態15は、前記実施形態9~14の採便器において、前記丸棒部が、その基端側に、切欠きを有する縮径段差部を備えることを少なくとも含む。前記切欠きの軸方向エッジで筒状ガイド部の内壁に付着した便を削ぎ落とすことにより、削ぎ落された便は、筒状ガイド部の前記擦切り部側の端部と擦切り部との境へと脱落する。その後、脱落した便は、擦切り部で除去された過剰な便とともに、前記採便棒の回転に合わせて軸方向傾斜溝に押し込まれる便として使用される。又は、脱落した便は、擦切り部で除去された過剰な便とともに、前記筒状ガイド部の前記擦切り部側の端部の内壁の前記突出部材により、前記採便棒の前記軸方向傾斜溝に強制的に押し入れられる便として使用される。これにより、前記擦切り部で除去される便が少ない場合においても、前記突出部材により前記軸方向傾斜溝に押し入れられる便を十分量準備することができる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0028】
実施形態16は、前記実施形態9~15の採便器において、孔径が前記丸棒部の径以下まで縮径して形成される、第2の擦切り部をさらに備えることを少なくとも含む。前記実施形態16では、仮に、前記容器本体の前記擦切り部における過剰な便の除去が不十分であったとしても、前記第2の擦切り部の孔径は前記丸棒部の径以下まで縮径しているため、前記第2の擦切り部により過剰な便の除去が十分に行われる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0029】
実施形態17は、前記実施形態16の採便器において、前記容器本体が、容器外枠及び前記容器外枠の内部に嵌合される嵌合体を含み、前記嵌合体が、その底部に嵌合可能なポリエチレン(PE)素材又はエラストマー素材のセパレータを含み、前記セパレータが、前記第2の擦切り部を備えることを少なくとも含む。ポリプロピレン(PP)素材等と比較して柔らかいPE素材又はエラストマー素材を使用することにより、孔径が前記丸棒部の径以下まで縮径して形成された前記第2の擦切り部への、前記採便棒の挿通性を維持しながら、過剰な便を除去する機能を高めることができる。その結果、採便量のバラツキが低減される。
【0030】
実施形態18は、採便方法であって、前記実施形態1~17の採便器を使用して採便することを少なくとも含む。前記実施形態1~17の採便器を使用することにより、採便量のバラツキを低減した、定量性に優れた採便が可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、採便量のバラツキを低減した、定量性に優れた採便器が提供される。また、本開示によれば、採便量のバラツキを低減した、定量性に優れた採便方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】採便棒の採便部を示す図である。
図2】採便器における便の擦切り部の縦断面の斜視図である。
図3】突出部材による便充填機能の説明図である。
図4】水分含有率が高い便でも採取可能な機能の説明図である。
図5】採便棒の一部(採便部先端)のみで便を採取した場合の、先端部の便が移動する様子を示す説明図である。
図6】切欠きを有する縮径段差部による、筒状ガイド部の内壁の便を削ぎ落とす機能を示す説明図である。
図7】第2の擦切り部を備えた、取り外し可能なセパレータを示す図である。
図8】左;採便棒全体、右;採便棒の丸棒部をそれぞれ示す図である。
図9】円周状凹部にリブが設けられている、採便棒の棒部を示す図である。
図10】採便器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態である、採便棒と、容器外枠及び前記容器外枠の内部に嵌合される嵌合体とを含む容器本体と、糞便溶解液収容部と、を備えた「糞便溶解液タイプ」の採便器について、図面を参照しながら説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態は、単独で又は組み合わせて、実施することが可能である。
【0034】
図1(中央)は、採便棒(10)の採便部(17)の正面図である。図1(左)は、採便棒(10)の先端側に設けられた採便部(17)に円周状に配置された4つの縦長の軸方向傾斜溝(17a)のうちの1つの縦断面図である。図1(右)は、採便部(17)の先端側から基端側に向かうそれぞれ3つの横断面図である。図1には、採便棒(10)の先端側の採便部(17)に設けられた、円周状に配置された4つの縦長軸方向傾斜溝(17a)が示されている。4つの縦長軸方向傾斜溝(17a)が、それぞれ、A(先端側)からB(基端側)に向かって、採便棒(10)の外周に沿ったらせん状に配設されており、採便棒(10)の回転に合わせて便が4つの縦長の軸方向傾斜溝(17a)に押し込まれやすい形状となっている。また、縦断面図(左)に示されているように、軸方向傾斜溝(17a)の溝深さが、先端側(17b)から基端側(17c)に向かって浅くなっている。
【0035】
また図1には、採便棒(10)の採便部(17)の直下には、採便棒(10)の先端から順次半球部(13)、下円盤部(14)、便を保持する円周状凹部(15)、及び上円盤部(16)が示されている。
【0036】
図2は、採便器の筒状ガイド部(22)における便の擦切り部(23)の縦断面の斜視図である。採便棒(図示せず)は筒状ガイド部(22)への挿入時、回転しながら上から下に向かって挿入される。採便部において採取された採便棒外周部に付着した便は、最終的に突出部材(24)で、採便棒の4つの縦長の軸方向傾斜溝(17a)に便を強制的に押し入れることができる。採便棒の回転方向としては、右回りでもよく、左回りでもよい。なお、図2に示された実施形態においては、採便棒の回転方向は右回りである。また、突出部材の形状としては、特に制限はないが、例えば、採便棒の回転方向に沿って、筒状ガイド部の内壁から採便棒へ向かって、傾斜しながら突出する構造であってもよく、採便棒の回転方向に沿って、筒状ガイド部の内壁から採便棒へ向かって、階段状に突出する構造であってもよい。また、前記突出部材の形状としては、特に制限はないが、例えば、採便棒の軸方向に沿って、筒状ガイド部の内壁から採便棒へ向かって、擦切り部側ほど突出した構造であってもよく、採便棒の軸方向に沿って、筒状ガイド部の内壁から採便棒へ向かって、擦切り部の他側ほど突出した構造であってもよく、筒状ガイド部の内壁から採便棒へ向かって、前記採便棒と略平行に突出した構造であってもよい。上記の、採便棒の回転方向における突出部材の形状、及び、採便棒の軸方向における突出部材の形状については、自由に組み合わせることが可能である。なお、図2に示された実施形態においては、突出部材の形状は、採便棒の回転方向に沿って、筒状ガイド部の内壁から採便棒へ向かって、傾斜しながら突出する構造であると共に、採便棒の軸方向に沿って、筒状ガイド部の内壁から採便棒へ向かって、擦切り部の他側ほど突出した構造である。
【0037】
図3は、突出部材(24)による便充填機能を示す。採便棒(10)の先端付近に付着した便(F)は、採便棒(10)を挿入するに従い、擦切り部(23)で除去される。この除去された過剰な便は、筒状ガイド部(22)の前記擦切り部側の端部と擦切り部(23)との境に残ることとなるが、この残った便は、採便棒(10)の回転に伴い突出部材(24)の側面に集積する。ここで、更に採便棒(10)が回転することによって、最終的に、突出部材(24)により、採便棒(10)の円周状に配置された4つの縦長軸方向傾斜溝(17a)に便が充填される。
【0038】
図4は、軟便や水様便(W) 等の、水分含有率が高い便でも採取可能な機能を示す。突出部材(24)と採便棒(10)の間に少しの隙間が設けられ、表面張力が作用しやすい構造となっている。突出部材(24)と採便棒(10)との間に少しの隙間を設けることにより、水分含有率が高いため形状が不安定な軟便や、水分含有率が高いため形状を保てず液状となった水様便等の、水分含有率が高い便が、表面張力により自然に縦長の軸方向傾斜溝(17a)に充填される。
【0039】
図5は、採便棒(10)の一部(採便部先端)のみで便(F)を採取した場合の、先端部の便(F)が移動する様子を示す。図5の左から順次、便(F)が擦切り部(23)に接触して引っ張られる様子、採便棒(10)の先端の、研磨表面を有する半球部(13)の摩擦係数が少ないため、採便棒(10)の挿入と共に便(F)が半球部(13)から離れる様子、便が筒状ガイド部(22)の前記擦切り部側の端部と擦切り部(23)との境に残る様子、採便棒(10)の先端部の円周状凹部(15)に便が収容される様子をそれぞれ示す。
【0040】
図6(左)は、採便棒(10)に設けられた切欠きを有する縮径段差部(18)による、切欠きの軸方向エッジ(18a)で筒状ガイド部(22)の内壁の便を削ぎ落とす機能を示す。切欠きの軸方向エッジ(18a)で筒状ガイド部(22)の内壁に付着した便(F')を削ぎ落とすことにより、削ぎ落された便は、筒状ガイド部(22)の前記擦切り部側の端部と擦切り部との境へと脱落する。その後、脱落した便は、擦切り部で除去された過剰な便とともに、縦長軸方向傾斜溝(17a)に押し込まれる便として使用される。図6(右)は縮径段差部(18)の切欠きの軸方向エッジ(18a)を示す。
【0041】
図7は、第2の擦切り部(28)を備えた、取り外し可能なPE製又はエラストマー製のセパレータ(27)を示す。図7(左上)は、容器外枠(図示せず)に嵌合されるPP製の嵌合体(21)縦断面図である。図7(左下)は、第2の擦切り部(28)を備えた、取り外し可能なPE製又はエラストマー製のセパレータ(27)の縦断面図である。図7(中)は、PP製の嵌合体(21)底部に、取り外し可能なPE製又はエラストマーのセパレータ(27)を嵌合させたときの要部拡大図である。図7(右上)は、PP製の嵌合体(21)の斜視図である。図7(右下)は、取り外し可能なPE製又はエラストマー製のセパレータ(27)の斜視図である。PP素材等と比較して柔らかいPE素材又はエラストマー素材を使用することにより、孔径が採便棒の棒部(12)の径以下まで縮径して形成された前記第2の擦切り部(28)への、前記採便棒の挿通性を維持しながら、過剰な便を除去する機能を高めることができる。セパレータのためのエラストマー素材としては、特に制限はないが、例えば、天然ゴム、合成ゴム、樹脂系エラストマーであってよい。
【0042】
図8(左)は採便棒全体を、図8(右)は採便棒の丸棒部を、それぞれ示す図である。図8に示されるように、一実施形態の採便器における採便棒(10)は、一側に把持部(11)を有し、他側に棒部(12)を有するとともに、棒部の先端付近に軸方向傾斜溝(17a)を備えた採便部(17)が設けられていてよい。採便棒(10)の棒部(12)の基端には容器本体(図示せず)に対して螺入するためのネジ部(19)を備えてられていてもよい。棒部(12)は、断面が円である一定の径を有す丸棒部が好ましいが、断面が円に近い正多角形であってよい。なお、以降はすべて丸棒部(12)と表記する。
【0043】
一実施形態の採便棒(10)の先端は、図1及び図8に示すように、丸棒部(12)の先端から基端側に向かって、半球部(13)、便を保持するための円周状凹部(15)、上円盤部(16)、及び採便部(17)が順次設けられていてもよい。他の一実施形態では、半球部(13)と円周状凹部(15)との間に、下円盤部(14)が設けられていてもよい。また、下円盤部(14)の軸方向の厚みの下限としては、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1.0mm以上、1.1mm以上、1.2mm以上、1.3mm以上、1.4mm以上、1.5mm以上、1.6mm以上、1.7mm以上、1.8mm以上、1.9mm以上又は2.0mm以上であってよい。また、下円盤部(14)の軸方向の厚みの上限としては、特に限定されないが、例えば、1.0mm以下、1.1mm以下、1.2mm以下、1.3mm以下、1.4mm以下、1.5mm以下、1.6mm以下、1.7mm以下、1.8mm以下、1.9mm以下、2.0mm以下、2.1mm以下、2.2mm以下、2.3mm以下、2.4mm以下、2.5mm以下、2.6mm以下、2.7mm以下、2.8mm以下、2.9mm以下又は3.0mm以下であってよい。上記の上限及び下限の数値は自由に組み合わせることが可能である。下円盤部(14)の軸方向の厚みとしては、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上3.0mm以下、0.5mm以上1.5mm以下、1.0mm以上2.0mm以下、1.5mm以上2.5mm以下又は2.0mm以上3.0mm以下であってよい。また、半球部(13)が研磨表面を有していてもよい。また、円周状凹部(15)には、リブが設けられていてもよい。リブの形状としては、特に限定はないが、例えば、図9に示すように、円周状凹部(15)の円周の一部分のみ凹部を形成させない形状であってもよいし、リブを軸方向に延設した形状であってもてもよい。リブの数としては、特に限定はないが、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個であってよい。図9には、円周状凹部(15)に、4個のリブ(15a)が90°ごとに設けられている採便棒の棒部(12)が示されている。
【0044】
一実施形態では、採便棒(10)の採便部(17)には、前記採便棒(10)の回転に合わせて便が押し込まれやすい軸方向傾斜溝(17a)が設けられ、この軸方向傾斜溝(17a)は、先端部から基端部に向かって、採便棒(10)の外周に沿ったらせん構造となっていてもよい。軸方向傾斜溝(17a)の数としては、特に制限はないが、例えば、1本、2本、3本、4本、5本、6本、7本又は8本であってよい。なお、図1に示された実施形態においては、4本の軸方向傾斜溝(17a)を有する採便部(17)が図示されている。また、軸方向傾斜溝(17a)の軸方向の一端から他端までの距離の下限としては、特に制限はないが、例えば、1.0mm以上、1.1mm以上、1.2mm以上、1.3mm以上、1.4mm以上、1.5mm以上、1.6mm以上、1.7mm以上、1.8mm以上、1.9mm以上、2.0mm以上、2.1mm以上、2.2mm以上、2.3mm以上、2.4mm以上、2.5mm以上、2.6mm以上、2.7mm以上、2.8mm以上、2.9mm以上、3.0mm以上、3.1mm以上、3.2mm以上、3.3mm以上、3.4mm以上、3.5mm以上、3.6mm以上、3.7mm以上、3.8mm以上、3.9mm以上又は4.0mm以上であってよい。また、軸方向傾斜溝(17a)の軸方向の一端から他端までの距離の上限としては、特に制限はないが、例えば、2.0mm以下、2.1mm以下、2.2mm以下、2.3mm以下、2.4mm以下、2.5mm以下、2.6mm以下、2.7mm以下、2.8mm以下、2.9mm以下、3.0mm以下、3.1mm以下、3.2mm以下、3.3mm以下、3.4mm以下、3.5mm以下、3.6mm以下、3.7mm以下、3.8mm以下、3.9mm以下、4.0mm以下、4.1mm以下、4.2mm以下、4.3mm以下、4.4mm以下、4.5mm以下、4.6mm以下、4.7mm以下、4.8mm以下、4.9mm以下又は5.0mm以下であってよい。上記の上限及び下限の数値は自由に組み合わせることが可能である。軸方向傾斜溝(17a)の軸方向の一端
から他端までの距離としては、特に制限はないが、例えば、1.0mm以上5.0mm以下、1.0mm以上2.5mm以下、1.5mm以上3.0mm以下、2.0mm以上3.5mm以下又は2.5mm以上4.0mm以下であってよい。
【0045】
一実施形態では、軸方向傾斜溝(17a)の溝深さが、先端側(17b)から基端側(17c)に向かって浅くなっていてもよい。軸方向傾斜溝(17a)の深さの下限としては、特に制限はないが、例えば、0.10mm以上、0.11mm以上、0.12mm以上、0.13mm以上、0.14mm以上、0.15mm以上、0.16mm以上、0.17mm以上、0.18mm以上、0.19mm以上、0.20mm以上、0.21mm以上、0.22mm以上、0.23mm以上、0.24mm以上、0.25mm以上、0.26mm以上、0.27mm以上、0.28mm以上、0.29mm以上、0.30mm以上、0.31mm以上、0.32mm以上、0.33mm以上、0.34mm以上、0.35mm以上、0.36mm以上、0.37mm以上、0.38mm以上、0.39mm以上又は0.40mm以上であってよい。また、軸方向傾斜溝(17a)の深さの上限としては、特に制限はないが、例えば、0.30mm以下、0.31mm以下、0.32mm以下、0.33mm以下、0.34mm以下、0.35mm以下、0.36mm以下、0.37mm以下、0.38mm以下、0.39mm以下、0.40mm以下、0.41mm以下、0.42mm以下、0.43mm以下、0.44mm以下、0.45mm以下、0.46mm以下、0.47mm以下、0.48mm以下、0.49mm以下又は0.50mm以下であってよい。上記の上限及び下限の数値は自由に組み合わせることが可能である。軸方向傾斜溝(17a)の深さとしては、特に制限はないが、例えば、0.10mm以上0.50mm以下、0.10mm以上0.20mm以下、0.20mm以上0.30mm以下、0.30mm以上0.40mm以下又は0.40mm以上0.50mm以下であってよい。
また、この場合の溝の浅い部分と深い部分との差の下限としては、特に制限はないが、例えば、0.01mm以上、0.02mm以上、0.03mm以上、0.04mm以上、0.05mm以上、0.06mm以上、0.07mm以上、0.08mm以上、0.09mm以上又は0.10mm以上であってよい。また、溝の浅い部分と深い部分との差の上限としては、特に制限はないが、例えば、0.11mm以下、0.12mm以下、0.13mm以下、0.14mm以下、0.15mm以下、0.16mm以下、0.17mm以下、0.18mm以下、0.19mm以下又は0.20mm以下であってよい。上記の上限及び下限の数値は自由に組み合わせることが可能である。溝の浅い部分と深い部分との差としては、特に制限はないが、例えば、0.01mm以上0.20mm以下、0.01mm以上0.10mm以下又は0.01mm以上0.05mm以下であってよい。
【0046】
一実施形態では、軸方向傾斜溝(17a)の、先端側(A)から基端側(B)に向かって、採便棒(10)の外周に沿ったらせん構造としては、前記丸棒部(12)の先端側(A)から基端側(B)に向かって、右回りでもよく、左回りでもよいが、前述の採便棒の回転方向と同じ方向であることが好ましい。また、前記らせんの角度の下限としては、特に制限はないが、例えば、1°以上、2°以上、3°以上、4°以上、5°以上、6°以上又は7°以上であってよい。また、前記らせんの角度の上限としては、特に制限はないが、例えば、3°以下、4°以下、5°以下、6°以下、7°以下、8°以下、9°以下又は10°以下であってよい。上記の上限及び下限の数値は自由に組み合わせることが可能である。前記らせんの角度としては、特に制限はないが、例えば、1°以上10°以下、1°以上2°以下、2°以上3°以下、3°以上4°以下、4°以上5°以下、5°以上6°以下又は6°以上7°以下のらせん構造であってよい。
【0047】
一実施形態では、便を採便器中心部に削ぎ落す機能を付与するために、採便棒(10)の丸棒部(12)の基端側に、切欠きを有する縮径段差部(18)を設けてもよい。切欠きを有する縮径段差部(18)の数としては、特に制限はないが、例えば、1個、2個、3個又は4個であってよい。
【0048】
一実施形態の採便棒(10)の一側に設けられる把持部(11)は、採便操作前においては糞便溶解液の、また、採便操作後においては糞便溶解液に便が懸濁された糞便溶液の液漏れと飛び散りを防止するために採便器のキャップ部材として機能する形状、例えば把持部(11)下端をフランジ形状やスカート形状としてもよく、採便時に把持しやすいよう適切な表面加工を施してもよい。また、キャップ部材として把持部(11)を備えた採便棒(10)に液密機能を付与するため、採便棒(10)の丸棒部(12)の基端に設けられたネジ部(19)により、採便棒(10)を嵌合体(21)に対して螺入して液密状態で装着してもよい。また、前記嵌合体(21)へ前記採便棒(10)を螺入する際の回転ピッチとしては、特に制限はないが、例えば、採便棒(10)を1回転以上、1.5回転以上、2回転以上、2.5回転以上、3回転以上、3.5回転以上、4回転以上、4.5回転以上、又は5回転以上螺入したときの、前記採便棒(10)の挿入距離と、前記軸方向傾斜溝(17a)の基端側(17c)から先端側(17b)までの距離との比が、1:1となるピッチとしてもよい。また、この場合の前記軸方向傾斜溝(17a)の基端側(17c)から先端側(17b)までの距離は、前述した軸方向傾斜溝(17a)の軸方向の一端から他端までの距離であってよい。
【0049】
前記軸方向傾斜溝(17a)の基端側(17c)、上円盤部(16)又は下円盤部(14)における、前記丸棒部(12)の直径の下限については、特に制限はないが、例えば、1.0mm以上、1.1mm以上、1.2mm以上、1.3mm以上、1.4mm以上、1.5mm以上、1.6mm以上、1.7mm以上、1.8mm以上、1.9mm以上又は2.0mm以上であってよい。また、前記軸方向傾斜溝(17a)の基端側(17c)、上円盤部(16)又は下円盤部(14)における、前記丸棒部(12)の直径の上限については、特に制限はないが、例えば、2.0mm以下、2.1mm以下、2.2mm以下、2.3mm以下、2.4mm以下、2.5mm以下、2.6mm以下、2.7mm以下、2.8mm以下、2.9mm以下又は3.0mm以下であってよい。上記の上限及び下限の数値は自由に組み合わせることが可能である。前記軸方向傾斜溝(17a)の基端側(17c)、上円盤部(16)又は下円盤部(14)における、前記丸棒部(12)の直径については、特に制限はないが、例えば、1.0mm以上3.0mm以下、1.0mm以上2.0mm以下、1.5mm以上2.5mm以下又は2.0mm以上~3.0mm以下であってよい。
【0050】
一実施形態の採便棒(10)の棒部の長さとしては、丸棒部(12)の先端付近の採便部(17)が嵌合体(21)又はセパレータ(27)に設けられた第2の擦切り部(28)を通過する長さであってよい。また、後述する糞便溶解液収容部(29)に糞便溶解液が収容されている場合、採便棒(10)の棒部の長さとしては、採便棒(10)の丸棒部(12)の先端付近の採便部(17)が、擦切り部(23)及び第2の擦切り部(28)を挿通し、糞便溶解液に浸漬する長さであってよい。採便棒(10)の材質としては、特に制限はないが、例えば、低密度PE、ABS樹脂等であってよい。
【0051】
図10(左)は、採便棒と、容器外枠及び前記容器外枠の内部に嵌合される嵌合体とを含む容器本体と、容器本体に嵌入された嵌合体と糞便溶解液収容部と、を備えた「糞便溶解液タイプ」の採便器の縦断面図である。また、図10(右)は、擦切り部及び第二の擦切り部の周辺についての要部拡大図である。
【0052】
一実施形態の容器本体(20)としては、複数の部材に分離可能であってもよい。容器本体が複数の部材に分離可能である場合、前記筒状ガイド部(22)及び前記擦切り部(23)は、前記複数の部材のうちの1つの部材にまとめて設置されていてもよく、前記複数の部材に分かれて配置されていてもよい。前記複数の部材としては、その数や種類に特に制限はないが、例えば、容器外枠(25)及び容器外枠の内部に嵌合される嵌合体(21)であってよく、その場合、筒状ガイド部(22)及び擦切り部(23)は、前記嵌合体(21)に配置されていてもよい。容器外枠(25)としては、一側に嵌合体(21)を嵌入するための開口部と他側に底部を有する有底筒状容器であれば特に制限はないが、例えば、断面が正方形、長方形、長円形、円形等の有底筒状容器であってよい。また、糞便溶液吸引ノズル先端を確実にピアス部に誘導し、サンプリングを確実に実行するため、容器本体(20)の底部を、ピアス部を備えた凹底(30)、特に底部に向かって狭くなるテーパー形状凹底としてもよい。前記ピアス部を備えた凹底(30)は、糞便溶液吸引ノズル先端により、穿孔可能な強度又は構造であってよい。また、容器外枠(25)の下方部分と嵌合体(21)の下方との間に形成された糞便溶解液収容部(29)に、糞便溶解液をあらかじめ収容しておいてもよい。
【0053】
一実施形態の容器本体(20)の材質としては、特に制限はないが、例えば、PP、PE、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の可撓性樹脂であってよい。また、糞便溶解液としては、採便棒の採便部で採取された便を懸濁できる溶液であれば特に制限はないが、例えば、脱イオン水、蒸留水、緩衝液等の水性媒体であってよい。緩衝液としては、特に制限はないが、例えば、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、アンモニア緩衝液、酢酸緩衝液、乳酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、グリシン緩衝液、グッドの緩衝液であってよい。
【0054】
一実施形態の容器外枠(25)の内部に嵌合される嵌合体(21)としては、容器本体(20)の内部を上方と下方の糞便溶解液収容部(29)とに液密に遮断することができ、採便棒(10)の丸棒部(12)を挿入することができる筒状ガイド部(22)が設けられていてよい。筒状ガイド部(22)の内部には、丸棒部(12)の挿入方向に向け、徐々に縮径する縮径部(逆テーパー構造)が一部又は全部に設けられていてもよい。また、筒状ガイド部(22)の前記縮径部の下端には、過剰な便を除去するための擦切り部(23)が設けられていてよい。筒状ガイド部(22)の擦切り部(23)のさらに下方には、細円筒部(26)、セパレータ(27)に設けられた第2の擦切り部(28)が順次設けられていてよい。
【0055】
一実施形態では、筒状ガイド部(22)の縮径部の下部(筒状ガイド部の前記擦切り部側の端部)の内壁に、突出部材(24)が設けられていてもよい。また、一実施形態では、突出部材(24)と丸棒部(10)との間には、前述のとおり、所定の隙間が設けられていてもよい。
【0056】
一実施形態では、採便棒(10)により採取された便は、擦切り部(23)と第2の擦切り部(28)を通じて、余分な便が除去された後、糞便溶解液収容部(29)に収容されている糞便溶解液に懸濁され、糞便溶液を与える。第2の擦切り部(28)は、擦切り部(23)とともに嵌合体(21)に設けられていてもよいが、嵌合体(21)の底部に嵌合可能なPE製又はエラストマー製のセパレータ(27)として構成されていてもよい。
【0057】
一実施形態の嵌合体(21)の形成材料としては、特に制限はないが、液密シール性、容器外枠(25)への挿着、擦切り部(23)や第2の擦切り部(28)への採便棒(10)の挿通性などを考慮して、例えば、PE、PP、ポリエステル、軟質ポリ塩化ビニル、オレフィン系エラストマーなどの軟質の可撓性樹脂であってよい。
【0058】
前述した一実施形態の採便器を使用した、一実施形態の採便方法について例示する。採便器から採便棒(10)を取り外し、採便棒(10)の採便部(17)を便の中に突き刺すか、便の表面を擦り付けて採便する。次いで、正立状態の容器本体(20)に嵌合体(21)の筒状ガイド部(22)を介して採便棒(10)の丸棒部(12)を挿入し、採便棒(10)の把持部(11)をねじ込み、採便棒(10)の棒部基端部に設けられたネジ部(19)と嵌合体上部に設けられたネジ穴を螺合させて容器本体(20)を密封するとともに、採便棒(10)の採便部(17)を、擦切り部(23)及び第2の擦切り部(28)に挿通させ、糞便溶解液収容部(29)にあらかじめ収容された糞便溶解液に浸漬する。
【0059】
以上、本発明の一実施形態である、「糞便溶解液タイプ」の採便器(特許文献1参照)について説明したが、他の一実施形態として、例えば、特許文献3に記載されているような「糞便乾燥剤タイプ」の採便器に適用することができる。すなわち、一実施形態では、前述した容器本体の糞便溶解液収容部を、乾燥剤収容部としてもよい。その場合、採便棒の採便部に付着した、採便後の便検体と、乾燥剤収容室中の乾燥剤とを接触させて便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体を乾燥剤中で保存した後、乾燥状態の便検体が保存された乾燥剤に水性媒体を添加して、水性媒体中に便検体中の成分を溶解させ、水性媒体中に溶解された便検体中の成分を測定してもよい。前記乾燥剤としては、便検体を乾燥させることができれば特に制限はないが、例えば、シリカゲルや酸化アルミニウムであってよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示により、大腸癌検診等に有用な採便器及び採便方法が提供される。
【符号の説明】
【0061】
10・・・採便棒
11・・・採便棒の把持部
12・・・採便棒の棒部
13・・・半球部
14・・・下円盤部
15・・・円周状凹部
15a・・円周状凹部に設けられたリブ
16・・・上円盤部
17・・・採便棒の採便部
17a・・軸方向傾斜溝
17b・・軸方向傾斜溝の先端側
17c・・軸方向傾斜溝の基端側
18・・・切欠きを有する縮径段差部
18a・・縮径段差部の切欠きの軸方向エッジ
19・・・採便棒の棒部基端のネジ部
20・・・容器本体
21・・・嵌合体
22・・・筒状ガイド部
23・・・擦切り部
24・・・突出部材
25・・・容器外枠
26・・・細円筒部
27・・・セパレータ
28・・・第2の擦切り部
29・・・糞便溶解液収容部
30・・・ピアス部を備えた凹底
F ・・・採便部に付着した過剰な便
F’・・・筒状ガイド部の内壁に付着した便
W ・・・軟便や水様便
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10