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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】受信装置及び受信装置を備えた飛翔体
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/24 20100101AFI20231211BHJP
   G01S 19/14 20100101ALI20231211BHJP
   F42B 15/01 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G01S19/24
G01S19/14
F42B15/01
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019200188
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021071457
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000176730
【氏名又は名称】三菱プレシジョン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】中山 聡
(72)【発明者】
【氏名】上村 凌平
(72)【発明者】
【氏名】海老沼 拓史
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-275316(JP,A)
【文献】特開2010-139439(JP,A)
【文献】特開2014-001999(JP,A)
【文献】特開2009-153113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
F42B 15/00-15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体に配置される受信装置であって、
所定の繰り返し周期を有する拡散符号により拡散変調された無線信号を受信して、無線信号の信号強度に応じた受信信号を出力するN個の受信部であって、Nは2以上の整数であるN個の受信部のそれぞれが出力する受信信号を入力して、所定の切り換え周期で受信信号を順番に出力する切り換え部であって、前記所定の切り換え周期は、前記所定の繰り返し周期をNで割った商の値以下である、切り換え部と、
前記切り換え部が出力した受信信号を、無線信号を生成するのに使用された搬送波信号により復調する第1復調器と、
前記第1復調器が出力した信号を、前記拡散符号を用いて相関復調する第2復調器と、
を有する受信装置。
【請求項2】
N個のアナログデジタル変換部を有し、
N個の前記アナログデジタル変換部のそれぞれは、N個の前記受信部の中の一の前記受信部が出力するアナログの受信信号を入力し、アナログの受信信号をデジタルの受信信号に変換して、デジタルの受信信号を前記切り換え部へ出力する請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記切り換え部が出力するアナログの受信信号を入力し、アナログの受信信号をデジタルの受信信号に変換して、デジタルの受信信号を前記第1復調器へ出力するアナログデジタル変換部を有する請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記所定の切り換え周期は、前記所定の繰り返し周期をNで割った商の値である請求項1~3の何れか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
所定の繰り返し周期を有する拡散符号により拡散変調された無線信号を受信して、無線信号の信号強度に応じた受信信号を出力するN個の受信部であって、Nは2以上の整数である受信部と、
N個の前記受信部のそれぞれが出力する受信信号を入力して、所定の切り換え周期で受信信号を順番に出力する切り換え部であって、前記所定の切り換え周期は、前記所定の繰り返し周期をNで割った商の値以下である、切り換え部と、
前記切り換え部が出力した受信信号を、無線信号を生成するのに使用された搬送波信号により復調する第1復調器と、
前記第1復調器が出力した信号を、前記拡散符号を用いて相関復調する第2復調器と、
を有する受信装置を備える飛翔体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置及び受信装置を備えた飛翔体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛翔体は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から送信されるGNSS無線信号を受信して、自己の位置及び速度を求めて飛翔体の制御に用いている。
【0003】
GNSS衛星は、航法メッセージ信号に対して拡散符号を用いて直接拡散変調した変調信号を生成し、この変調信号を用いて、所定の周波数の搬送波を変調することにより、GNSS無線信号を生成して放送する。
【0004】
飛翔体は、姿勢制御を行いながら推進していくものの、飛翔体の機体軸回りに回転運動が生じる場合がある。そこで、飛翔体が回転していても、同じGNSS無線信号を受信できるように、飛翔体の機体軸回りに120度の間隔で配置された3つのアンテナを有する受信装置が提案されている(非特許文献1参照)。
【0005】
図1は、従来例の受信装置を説明する図である。受信装置110は、飛翔体の機体軸回りに120度の間隔で配置された3つのアンテナA1~A3を有する。受信装置110は、3つのアンテナA1~A3のそれぞれが受信したGNSS無線信号を捕捉・追尾する回路を有する。
【0006】
受信装置110は、3つのアンテナA1~A3と、3つのRFフロントエンド部111a~111cと、信号処理部112とを備える。信号処理部112は、3つの第1復調器114a~114cと、3つの搬送波レプリカ信号生成部115a~115cと、3つの第2復調器116a~116cと、3つの拡散符号レプリカ信号生成部117a~117cと、3つの相関値積算部118a~118cと、演算部119とを備える。
【0007】
3つのアンテナA1~A3のそれぞれは、GNSS衛星から送信される無線信号を受信し、この無線信号の信号強度に応じたアナログの受信信号を出力する。3つのRFフロントエンド部111a~111cのそれぞれは、アンテナA1~A3が出力する受信信号を入力して、受信信号の周波数をダウンコンバートしたアナログの信号を生成して、このアナログの信号をアナログデジタル変換したデジタルの信号を出力する。
【0008】
信号処理部112における3つの第1復調器114a~114cのそれぞれは、RFフロントエンド部111a~111cから入力したデジタルの信号を、搬送波レプリカ信号生成部115a~115cから入力した搬送波レプリカ信号を用いて復調した第1復調信号を生成する。
【0009】
搬送波レプリカ信号生成部115a~115cは、GNSS無線信号を生成するのに使用された搬送波信号を複製した搬送波レプリカ信号を生成して、第1復調器114a~114cへ出力する。
【0010】
3つの第2復調器116a~116cのそれぞれは、第1復調器114a~114cから入力した第1復調信号を、拡散符号レプリカ信号生成部117a~117cから入力した拡散符号レプリカ信号を用いて復調して第2復調信号を生成する。搬送波レプリカ信号生成部115a~115cは、GNSS衛星の航法メッセージを拡散変調するのに使用された拡散符号を複製した拡散符号レプリカ信号を生成して、第2復調器116a~116cへ出力する。
【0011】
3つの相関値積算部118a~118cのそれぞれは、第2復調器116a~116cから入力した第2復調信号を積分した受信電力信号を生成して、演算部119へ出力する。演算部119は、それぞれのアンテナで同じGNSS無線信号を捕捉・追尾し、測位に使用するアンテナを、受信電力信号の大きさ等の状態に基づいて選択することにより、全方位においてGNSS無線信号の継続した追尾を行う。演算部119は、GNSS無線信号を捕捉・追尾して、飛翔体の位置及び相対速度を求める。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】三菱プレシジョン技報、Vo1.10、pp47-56、2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
受信装置110は、選択するアンテナを切り換えた場合、新たなGNSS無線信号を捕捉・追尾するのに、捕捉・追尾ループが安定するまで1~2秒程の時間を要する場合がある。そのため、飛翔体が機体軸回りに高速で回転して、アンテナを切り換えた時にGNSS無線信号を捕捉・追尾するのに要する時間よりも、飛翔体の回転する周期が短くなると、GNSS無線信号の捕捉・追尾が断続するおそれがある。
【0014】
本明細書では、搭載された飛翔体が回転してもGNSS無線信号を捕捉・追尾可能な受信装置を提案することを課題とする。
【0015】
また、本明細書では、回転してもGNSS無線信号を捕捉・追尾可能な受信装置を備える飛翔体を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書に開示する受信装置によれば、所定の繰り返し周期を有する拡散符号により拡散変調された無線信号を受信して、無線信号の信号強度に応じた受信信号を出力するN個の受信部であって、Nは2以上の整数であるN個の受信部のそれぞれが出力する受信信号を入力して、所定の切り換え周期で受信信号を順番に出力する切り換え部であって、所定の切り換え周期は、所定の繰り返し周期をNで割った商の値以下である、切り換え部と、切り換え部が出力した受信信号を、無線信号を生成するのに使用された搬送波信号により復調する第1復調器と、第1復調器が出力した信号を、拡散符号を用いて相関復調する第2復調器と、を有する。
【0017】
また、本明細書に開示する飛翔体によれば、所定の繰り返し周期を有する拡散符号により拡散変調された無線信号を受信して、無線信号の信号強度に応じた受信信号を出力するN個の受信部であって、Nは2以上の整数である受信部と、N個の受信部のそれぞれが出力する受信信号を入力して、所定の切り換え周期で受信信号を順番に出力する切り換え部であって、所定の切り換え周期は、所定の繰り返し周期をNで割った商の値以下である、切り換え部と、切り換え部が出力した受信信号を、無線信号を生成するのに使用された搬送波信号により復調する第1復調器と、第1復調器が出力した信号を、拡散符号を用いて相関復調する第2復調器と、を有する受信装置を備える。
【発明の効果】
【0018】
上述した本明細書に開示する受信装置によれば、搭載された飛翔体が回転してもGNSS無線信号を捕捉・追尾できる。
【0019】
また、上述した本明細書に開示する飛翔体によれば、回転してもGNSS無線信号を捕捉・追尾できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来例の受信装置を説明する図である。
図2】(A)は、本明細書に開示する受信装置を備える飛翔体を示す図であり、(B)は、受信装置がGNSS衛星から送信されるGNSS無線信号を受信することを説明する図である。
図3】本明細書に開示する受信装置の第1実施形態を説明する図である。
図4】GNSS衛星から放送されるGNSS無線信号を説明する図である。
図5】相関値積算部の動作を説明する図である。
図6】(A)は、本明細書に開示する受信装置の第1実施形態の動作を説明する図であり、(B)は、従来例の受信装置の動作を説明する図である。
図7】本明細書に開示する受信装置の第2実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本明細書で開示する受信装置の好ましい第1実施形態を備えた飛翔体を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0022】
図2(A)は、本明細書に開示する受信装置を備える飛翔体を示す図であり、図2(B)は、受信装置がGNSS衛星から送信されるGNSS無線信号を受信することを説明する図である。図3は、本明細書に開示する受信装置の第1実施形態を説明する図である。
【0023】
図2(A)に示すように、飛翔体1は、3つのアンテナA1~A3を含む受信装置10を備える。3つのアンテナA1~A3は、図2(B)に示すように、飛翔体1の機体軸回りに120度の間隔で配置される。3つのアンテナA1~A3のぞれぞれは、所定の受信範囲S1~S3内において、GNSS衛星20が放送するGNSS無線信号を受信する。隣接する2つのアンテナA1~A3同士は、その受信範囲S1~S3の一部が重なっていることが好ましい。これにより、受信装置10は、飛翔体1の機体軸回りの全方位からのGNSS無線信号を受信可能となる。
【0024】
飛翔体1は、図示しない推進装置により推進力を得て、地上からの打ち上げ後、大気圏外まで飛翔する。飛翔体1は、図示しない制御装置により姿勢制御を行いながら推進していくものの、飛翔体1の機体軸回りに回転運動が生じる場合がある。飛翔体1は、3つのアンテナA1~A3の中の少なくとも1つのアンテナを用いて、同じGNSS無線信号20が放送するGNSS無線信号を受信可能である。
【0025】
図4は、GNSS衛星から放送されるGNSS無線信号を説明する図である。GNSS無線信号は、GNSS衛星の航法メッセージ信号に対して拡散符号を用いて直接拡散変調した変調信号が生成され、この変調信号を用いて、所定の周波数の搬送波を変調することにより生成される。
【0026】
航法メッセージ信号は、GNSS衛星の時刻補正、健康状態、軌道情報(エフェメリスデータ)等の情報を含む。航法メッセージ信号として、例えば、50bpsのビットレートの信号が用いられる。
【0027】
拡散符号として、所定の繰り返し周期を有する疑似雑音コードが用いられる。具体的には、拡散符号として、1.023Mcpsのチップレートを有するGold系列符号が用いられる。この拡散符号の1周期は、1ミリ秒である。Gold系列符号信号の自己相関関数の相関値は、位相のずれがゼロの位置を中心として、位相が1ビット進んだ位置と、位相が1ビット遅れた位置との範囲以外の領域では、ゼロとなる。即ち、Gold系列符号信号の自己相関関数の相関値は、位相のずれが1ビット未満であれば所定の大きさの値が得られるが、位相のずれが1ビット以上であるとゼロとなる。そのため、全てのGNSS衛星は、互いに干渉することなく同一の周波数でGNSS無線信号を送信することができる。
【0028】
GNSS無線信号の搬送波として、例えば1575.42MHzの電波が用いられている。
【0029】
図3に示すように、受信装置10は、3つのアンテナA1~A3と、3つのRFフロントエンド部11a~11cと、信号処理部12とを備える。信号処理部12は、切り換え部13と、第1復調器14と、搬送波レプリカ信号生成部15と、第2復調器16と、拡散符号レプリカ信号生成部17と、相関値積算部18と、演算部19とを備える。信号処理部12は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いて形成される。
【0030】
3つのアンテナA1~A3のそれぞれは、GNSS衛星から送信される無線信号を受信し、この無線信号の信号強度に応じたアナログの受信信号を出力する。3つのアンテナA1~A3のそれぞれの出力した受信信号は、図示しない低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)により増幅されて、RFフロントエンド部11a~11cへ出力される。低雑音増幅器は、アンテナA1~A3で受信した微弱な信号を、例えば100dB程度増幅して、信号処理部12で処理可能な大きさの信号を生成する。
【0031】
3つのRFフロントエンド部11a~11cのそれぞれは、ダウンコンバータDC及びアナログデジタル変換器ADを有する。ダウンコンバータDCは、アンテナA1~A3が出力する受信信号を入力して、受信信号の周波数をダウンコンバートしたアナログの信号を出力する。これにより、1575.42MHzの受信信号は、信号処理部12で処理しやすいように、例えば数~数10MHz程度の中間周波数の信号に変換される。アナログデジタル変換器ADは、中間周波数に変換されたアナログの受信信号を、アナログデジタル変換してデジタルの信号に変換する。信号処理部12は、デジタルの信号を処理するデジタル回路を有する。3つのRFフロントエンド部11a~11cのそれぞれは、デジタルの受信信号を、信号処理部12の切り換え部13へ出力する。受信装置10は、アンテナの数に対応する数のRFフロントエンド部を有する。
【0032】
切り換え部13は、3つのRFフロントエンド部11a~11cのそれぞれが出力する受信信号を入力して、所定の切り換え周期で、3つのRFフロントエンド部11a~11cのそれぞれから入力した受信信号を順番に出力する。この所定の切り換え周期は、拡散符号の繰り返し周期を、アンテナの数(3)で割った商の値以下である。本実施形態では、切り換え部13の所定の切り換え周期は、拡散符号の繰り返し周期(1ミリ秒)を、アンテナの数(3)で割った商の値(約0.33ミリ秒)としている。即ち、切り換え部13は、0.33ミリ秒の周期で、3つのRFフロントエンド部11a~11cのそれぞれから入力した受信信号を順番に切り換えて第1復調器14へ出力する。飛翔体1が機体軸回りに回転する回転速度は、高々1~3回転/秒程度であるので、切り換え部13は、飛翔体1の回転する周期の約1000倍以上の周期で受信信号を切り換えることが可能である。
【0033】
第1復調器14は、切り換え部13から入力した受信信号を、搬送波レプリカ信号生成部15から入力した搬送波レプリカ信号を用いて復調した第1復調信号D1を生成する。搬送波レプリカ信号生成部15は、GNSS無線信号を生成するのに使用された搬送波信号(中間周波数にダウンコーバートされている)を複製した搬送波レプリカ信号を生成して、第1復調器14へ出力する。搬送波レプリカ信号生成部15は、例えばFLL(Frequency Lock Loop)を用いて形成される。
【0034】
第2復調器16は、第1復調器14から入力した第1復調信号D1を、拡散符号レプリカ信号生成部17から入力した拡散符号レプリカ信号を用いて復調(自己相関値を求めることに対応する)して第2復調信号D2を生成する。拡散符号レプリカ信号生成部17は、GNSS衛星の航法メッセージを拡散変調するのに使用された拡散符号を複製した拡散符号レプリカ信号を生成して、第2復調器16へ出力する。拡散符号レプリカ信号生成部17は、例えばDLL(Delay Lock Loop)を用いて形成される。
【0035】
相関値積算部18は、第2復調器16から入力した第2復調信号D2を時間積分した受信電力信号を生成して、演算部19へ出力する。図5は、相関値積算部18の動作を説明する図である。図5に示す例では、相関値積算部18は、第2復調信号D2を時間積分した受信力信号を生成する積算周期として、拡散符号の繰り返し周期(1ミリ秒)を用いている。なお、積算周期は、所望の大きさの受信電力信号を得る観点から、拡散符号の繰り返し周期よりも長くてもよい。ここで、GNSS無線信号は、アンテナA1の受信範囲S1で受信されており、アンテナA2及びアンテナA3では受信されていないとする。
【0036】
GNSS無線信号を受信しているアンテナA1が出力した受信信号に基づいて生成された第2復調信号D2は、捕捉しているGNSS無線信号が含む拡散符号の自己相関関数の相関値となるので所定の大きさの信号強度を有する。従って、相関値積算部18が第2復調信号D2を時間積分した受信電力信号の大きさ(相関値の積分値に対応)は、アンテナA1が出力した受信信号に基づいて生成された第2復調信号D2を積分している間は、時間の経過と共に増大する。
【0037】
一方、GNSS無線信号を受信していないアンテナA2及びアンテナA3が出力した受信信号に基づいて生成された第2復調信号D2は、捕捉しているGNSS無線信号が含む拡散符号を含まないので自己相関関数の相関値はほぼゼロとなり、信号強度もほぼゼロとなる。従って、相関値積算部18が第2復調信号D2を時間積分した電力信号の大きさ(相関値の積分値に対応)は、アンテナA2及びアンテナA3が出力した受信信号に基づいて生成された第2復調信号D2を積分している期間は、変化がない。
【0038】
図5には、仮に、アンテナA1~A3が、積分周期にわたって捕捉しているGNSS無線信号を受信した場合の受信電力を鎖線で示している。この場合、第2復調信号D2は、積分周期にわたって、捕捉しているGNSS無線信号が含む拡散符号の自己相関関数の相関値となるので所定の大きさの信号強度を有する。従って、相関値積算部18が第2復調信号D2を時間積分した受信電力信号の大きさ(相関値の積分値に対応)は、積分周期にわたって、時間の経過と共に増大する。
【0039】
一方、本実施形態の受信装置10では、第2復調信号D2が捕捉しているGNSS無線信号の拡散符号を含む期間が、拡散符号の繰り返し周期よりも短いので(具体的には拡散符号の繰り返し周期をアンテナの数(3)で割った商の値)、受信電力信号の大きさは、鎖線で示される受信電力信号の3分の1以下となる。ここで、受信電力信号は、有効な信号を捕捉している判定できるように、信号捕捉判定閾値以上であることが好ましい。
【0040】
第2復調信号D2が、捕捉しているGNSS無線信号の拡散符号を連続して含む時間は、切り換え部13の切り換え周期によって決定される。飛翔体1の機体軸回りの回転速度より積分周期が十分に短く、例えば100分の1以下であり、積分周期が一定であれば、切り換え部13の切り換え周期を変更しても、積分周期内に積分される受信電力信号の大きさは同じである。なお、切り換え部13の切り換え周期の下限値は、所望される受信電力信号の大きさと、積分期間とに基づいて適宜決定され得るが、通常、中間周波数又は信号処理部の動作周波数の周期(数十ナノ秒~数百ナノ秒)程度である。切り換え部13の切り換え周期の下限値は、例えば、10ナノ秒~100ナノ秒としてもよい。
【0041】
次に、相関値の積分値である受信電力信号の経時変化を、図6(A)を参照して、以下に説明する。図2(B)に示すように、飛翔体1が機体軸回りに1~3回転/秒程度の回転速度で回転しているとする。この場合、相関値積算部18が求める受信電力信号には、図6(A)に示すように、アンテナA1がGNSS無線信号を受信しているアンテナA1の受信信号が支配的な期間と、アンテナA2がGNSS無線信号を受信しているアンテナA2の受信信号が支配的な期間と、アンテナA3がGNSS無線信号を受信しているアンテナA3の受信信号が支配的な期間とが繰り返して現れる。受信電力信号の値は、相関値積算部18の積分周期が適切に選択されることにより、信号捕捉判定閾値以上の大きさが維持される。受信電力信号の大きさは、アンテナA1の受信信号が支配的な期間から、アンテナA2の受信信号が支配的な期間への過渡期間においても、同じGNSS無線信号を捕捉し続けることが可能な大きさである。同様に、受信電力信号の大きさは、アンテナA2の受信信号が支配的な期間から、アンテナA3の受信信号が支配的な期間への過渡期間においても、同じGNSS無線信号を捕捉し続けることが可能な大きさである。更に、受信電力信号の大きさは、アンテナA3の受信信号が支配的な期間から、アンテナA1の受信信号が支配的な期間への過渡期間においても、同じGNSS無線信号を捕捉し続けることが可能な大きさである。また、隣接する2つのアンテナA1~A3同士が、その受信範囲S1~S3の一部が重なっていることにより、過渡期間では、隣接する2つのアンテナA1~A3同士が同じGNSS無線信号を受信することにより、過渡期間以外よりも大きな受信電力信号を得ることも期待できる。
【0042】
一方、図6(B)は、図1に示す従来例の受信装置の動作を説明する図である。図1に示す従来例の受信装置110では、測位に使用するアンテナを演算部にて切り換えた場合、上述したように、新たなGNSS無線信号を捕捉・追尾するのに、捕捉・追尾ループが安定するまで1~2秒程の時間を要する場合がある。そのため、飛翔体が機体軸回りに高速で回転しており、アンテナを切り換えた時にGNSS無線信号を捕捉・追尾するのに要する時間よりも飛翔体が回転する周期が短くなると、GNSS無線信号の捕捉・追尾が断続するおそれがある。従って、一つのアンテナの受信信号が支配的な期間から、他のアンテナの受信信号が支配的な期間への過渡期間において、GNSS無線信号を捕捉・追尾が断続するおそれがある。
【0043】
演算部19は、相関値積算部18から入力した受信電力信号が信号捕捉判定閾値以上であるか否かを判定し、信号捕捉判定閾値以上である場合、受信電力信号が有効であるので、アンテナA1~A3が同じGNSS無線信号を捕捉していると判定する。演算部19は、同じGNSS無線信号を捕捉している状態において、搬送波レプリカ信号生成部15が生成した搬送波レプリカ信号の周波数に基づいて、搬送波のドップラ周波数を求める。演算部19は、搬送波のドップラ周波数に基づいて、GNSS衛星20に対する飛翔体1の相対速度を求める。また、演算部19は、拡散符号レプリカ信号生成部17が生成した拡散符号レプリカ信号の位相に基づいて、GNSS衛星20がGNSS無線信号を送信した時刻と、飛翔体1がGNSS無線信号を受信した時刻との差を求める。演算部19は、航法メッセージを解析して、GNSS衛星20がGNSS無線信号を送信した時刻と、飛翔体1がGNSS無線信号を受信した時刻との差から、擬似距離を求める。演算部19は、4つの異なるGNSS衛星の擬似距離が得られると、GNSS無線信号を受信した時刻の誤差を補正して、飛翔体1の正確な位置を求めることができる。
【0044】
上述した本実施形態の受信装置によれば、搭載された移動物体が回転してもGNSS無線信号を捕捉・追尾できる。これにより、移動物体は、自己の位置及び速度を求めて、安定した制御を実行することができる。また、本実施形態の受信装置によれば、信号処理回路は、一つの受信信号に対して復調及び復調信号を積算する回路を一つ有していればよいので、装置の製造コストを低減できる。
【0045】
次に、本明細書に開示する受信装置の第2実施形態を、図7を参照しながら以下に説明する。第2実施形態について特に説明しない点については、上述の第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0046】
図7は、本明細書に開示する受信装置の第2実施形態を説明する図である。
【0047】
本実施形態の受信装置10は、3つのアンテナA1~A3と信号処理部12との間に、切り換え部13が配置される。切り換え部13は、3つのアンテナA1~A3のそれぞれが出力する受信信号を入力して、所定の切り換え周期で受信信号を順番に出力する。
【0048】
信号処理部12は、RFフロントエンド部11を有しており、切り換え部を有していない点が、上述した第1実施形態と異なる。RFフロントエンド部11は、切り換え部13が出力する受信信号を入力して、受信信号の周波数をダウンコンバートしたアナログの信号を生成して、このアナログの信号をアナログデジタル変換したデジタルの信号を、第1復調器114へ出力する。所定の切り換え周期の下限値は、通常、搬送波の周期程度である。その他の構成は、上述した第1実施形態と同様である。
【0049】
上述した本実施形態の受信装置によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態の受信装置によれば、一つのRFフロントエンド部を有していればよく、装置の製造コストを低減できる。
【0050】
本発明では、上述した実施形態の受信装置及び受信装置を備えた飛翔体は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施形態が有する構成要件は、他の実施形態にも適宜適用することができる。
【0051】
例えば、上述した実施形態では、受信装置は3個のアンテナを有していたが、受信装置が有するアンテナの数は、3個に限定されない。アンテナの数は、2個でもよいし、4個以上であってもよい。N個のアンテナは、飛翔体の機体軸回りに(360/N)度の間隔で配置されることが好ましい。アンテナの数は、切り換え部の切り換え周期の上限値を規定する。即ち、切り換え部13の切り換え周期の上限値は、拡散符号の繰り返し周期をアンテナの数で割った商の値として決定される。この切り換え周期の上限値が小さい程、即ち、アンテナの数が多い程、飛翔体が機体軸回りに回転する回転速度が大きくなっても、複数のアンテナの中の一つ以上でGNSS無線信号を受信可能となる。また、受信装置としては全方位アンテナのようになるため理想形とはなるが、実際にはRF回路が複雑になるため、アンテナの数は多くて5個~10個程度である。
【符号の説明】
【0052】
1 飛翔体
10 受信装置
A1 第1アンテナ
A2 第2アンテナ
A3 第3アンテナ
11、11a~11c RFフロントエンド部
DC ダウンコンバータ
AD アナログデジタル変換器
12 信号処理部
13 切り換え部
14 第1復調器
15 搬送波レプリカ信号生成部
16 第2復調器
17 拡散符号レプリカ信号生成部
18 相関値積分器
19 演算部
A1~A3 アンテナ
20 GNSS衛星
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7