(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20231211BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G06F30/13
E04G21/12 105Z
(21)【出願番号】P 2020024825
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-12-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594045791
【氏名又は名称】株式会社ア-キテック
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-045741(JP,A)
【文献】特開2001-209666(JP,A)
【文献】特開平08-161359(JP,A)
【文献】特開2019-139385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に内包される鉄筋の鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を採取する切寸取得手段と、
前記切寸取得手段で採取された切寸を受けて前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸連結情報を編集すると共に、当該切寸連結情報と当該鉄筋線形を紐付ける連結情報作成手段と、
前記鉄筋線形に紐付けられた切寸連結情報を当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の表示の一部と紐付けた集約表示として出力する連結情報表示手段を備え、
前記集約表示は、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を当該鉄筋群の配置に副って集合配置したものであることを特徴とする鉄筋長表示システム。
【請求項2】
躯体に内包される鉄筋の鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を採取する切寸取得手段と、
前記切寸取得手段で採取された切寸を受けて前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸連結情報を編集すると共に、当該切寸連結情報及び一括表示される鉄筋線形の数と当該鉄筋線形を紐付ける連結情報作成手段と、
前記鉄筋線形に紐付けられた切寸連結情報及び一括表示される鉄筋線形の数を当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の表示の一部と紐付けた集約表示として出力する連結情報表示手段を備え、
前記集約表示は、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸及び一括表示される鉄筋線形の数を当該鉄筋群の配置に副って集合配置したものであることを特徴とする鉄筋長表示システム。
【請求項3】
前記連結情報表示手段は、前記集約表示として、前記鉄筋線形の端部に当該鉄筋線形を構成する鉄筋の切寸を連結した一連の文字列を、躯体軸又は鉄筋線形に沿って出力することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の鉄筋長表示システム。
【請求項4】
前記鉄筋線形を形作る鉄筋群を連結する継手の種類及び配置からなる継手データを導く継手設定手段と、
前記継手データに基づき配置された継手が規則に副って配置されているか否かを判定する継手検査手段を備え、
前記連結情報作成手段は、前記判定結果を前記集約表示における切寸間のセパレータに反映する処理を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鉄筋長表示システム。
【請求項5】
コンピュータに、
躯体に内包される鉄筋の鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を採取する切寸取得手段と、
前記切寸取得手段で採取された切寸を受けて前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸連結情報を編集すると共に、当該切寸連結情報と当該鉄筋線形を紐付ける連結情報作成手段と、
前記鉄筋線形に紐付けられた切寸連結情報を当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の表示の一部と紐付けた集約表示として出力する連結情報表示手段を備え、
前記集約表示を、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を当該鉄筋群の配置に副って集合配置したものとして出力する鉄筋長表示システムとして機能させることを特徴とする鉄筋長表示プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
躯体に内包される鉄筋の鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を採取する切寸取得手段と、
前記切寸取得手段で採取された切寸を受けて前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸連結情報を編集すると共に、当該切寸連結情報及び一括表示される鉄筋線形の数と当該鉄筋線形を紐付ける連結情報作成手段と、
前記鉄筋線形に紐付けられた切寸連結情報及び一括表示される鉄筋線形の数を当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の表示の一部と紐付けた集約表示として出力する連結情報表示手段を備え、
前記集約表示を、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸及び一括表示される鉄筋線形の数を当該鉄筋群の配置に副って集合配置したものとして出力する鉄筋長表示システムとして機能させることを特徴とする鉄筋長表示プログラム。
【請求項7】
前記連結情報表示手段は、前記集約表示として、前記鉄筋線形の端部に当該鉄筋線形を構成する鉄筋の切寸を連結した一連の文字列を、躯体軸又は鉄筋線形に沿って出力することを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載の鉄筋長表示プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
前記鉄筋線形を形作る鉄筋群を連結する継手の種類及び配置からなる継手データを導く継手設定手段と、
前記継手データに基づき配置された継手が規則に副って配置されているか否かを判定する継手検査手段を備え、
前記連結情報作成手段は、前記判定結果を前記集約表示における切寸間のセパレータに反映する処理を行う鉄筋長表示システムとして機能させることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の鉄筋長表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを用いて躯体の配筋画像などを編集する配筋設計支援システムにおいて、配筋図に鉄筋長を表示する鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、コンピュータを用いて躯体の配筋設計を支援する装置や、コンピュータに躯体の配筋を支援する機能を与えるプログラムが複数提供され(例えば下記特許文献1参照)、配筋図が比較的容易に作成することができる時代となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄筋製品は3.5mから12.0m(0.5mきざみ)のJIS規格で用意されており、躯体を形作る鉄筋線形長さによっては、当該鉄筋線形を構成する鉄筋群を、継手を介して連結する手法が採られている。
躯体の配筋設計は、先ず机上で計画を立て、紙面又はコンピュータの画面上に表示する手法が採られるが、その際、前記鉄筋群を構成するそれぞれの鉄筋長寸法は、各鉄筋それぞれの中央に、離して表示することとされている。(
図2又は
図4点線内参照)
【0005】
その結果、一個の躯体を構成する鉄筋であるにも拘らず、紙面に出力された配筋図であれば、寸法の確認が必要となる度に視線の移動が必要となり、コンピュータの画面であれば、寸法の確認が必要となる度に数字を視認できる縮尺に応じてスクロールしなければならないという問題があった。
仮に、単に視線移動を少なくする便宜を図るのであれば、数表等にまとめて表示すれば足りるものの、それでは、どの寸法がどの鉄筋かを特定する作業が困難となる。
【0006】
また、一般的に、鉄筋の密度が高い領域では寸法を記入するスペースが不足し、数値の大きさを縮小し、又は空き場所を探して記入することとなるが、その様な事態が度重なれば、当該寸法を持つ鉄筋との視覚的繋がりが希薄となる他、躯体を構成する鉄筋線形との視覚的繋がりも希薄となり、確信を持った寸法の読取が困難になるという問題もある。
更に、従来、鉄筋の寸法は、個別に鉄筋の属性として紐付けられているため、その寸法も鉄筋毎に近接して配置し、又は鉄筋一本毎に管理する方が容易であるが、それが配筋図の読解性及び切寸の視認性をおとしめているという側面もある。
【0007】
一方、鉄筋を連結する継手は、図面においては、鉄筋線形を形作る鉄筋群の連結部に介在する形で表示されるが、採用される継手の種類や配置を確認する際にも、切寸と同様の問題を有している。
殊に、「重ね」又は「圧接」を採用する場合にあっては、鉄筋計算ルールに副った適合領域に配置されていることを確認する必要があるため、その確認に資するだけの配筋図の読解性並びに継手の種類及び配置の視認性を高めることが課題となっている。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、躯体の鉄筋線形を形作る鉄筋群の寸法及び当該鉄筋群を連結する継手の情報を鉄筋線形単位で容易に認識できる鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明による鉄筋長表示システムは、躯体に内包される鉄筋の鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を採取する切寸取得手段と、前記切寸取得手段で採取された切寸を受けて前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸連結情報を編集すると共に、当該切寸連結情報と当該鉄筋線形を紐付ける連結情報作成手段と、前記鉄筋線形に紐付けられた切寸連結情報を当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の一部と紐付けた集約表示として出力する連結情報表示手段を備え、前記集約表示は、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を当該鉄筋群の配置に副って集合配置したものであることを特徴とする。
【0010】
躯体に内包される鉄筋の鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を採取する切寸取得手段と、前記切寸取得手段で採取された切寸を受けて前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸連結情報を編集すると共に、当該切寸連結情報及び一括表示される鉄筋線形の数と当該鉄筋線形を紐付ける連結情報作成手段と、前記鉄筋線形に紐付けられた切寸連結情報及び一括表示される鉄筋線形の数を当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の一部と紐付けた集約表示として出力する連結情報表示手段を備え、前記集約表示は、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸及び一括表示される鉄筋線形の数を当該鉄筋群の配置に副って集合配置したものとして出力する鉄筋長表示システムとして構成することができる。
前記連結情報表示手段は、前記集約表示として、前記鉄筋線形の端部に当該鉄筋線形を構成する鉄筋の切寸を連結した一連の文字列を、躯体軸又は鉄筋線形に沿って出力することを特徴とする
【0011】
前記鉄筋線形を形作る鉄筋群を連結する継手の種類及び配置からなる継手データを導く継手設定手段と、前記継手データに基づき配置された継手が規則に副って配置されているか否かを判定する継手検査手段を備え、前記連結情報作成手段は、前記判定結果を前記集約表示における切寸間のセパレータに反映する処理を行う鉄筋長表示システムとして構成することができる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明による鉄筋長表示プログラムは、コンピュータに、躯体に内包される鉄筋の鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を採取する切寸取得手段と、前記切寸取得手段で採取された切寸を受けて前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸連結情報を編集すると共に、当該切寸連結情報と当該鉄筋線形を紐付ける連結情報作成手段と、前記鉄筋線形に紐付けられた切寸連結情報を当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の一部と紐付けた集約表示として出力する連結情報表示手段を備え、前記集約表示を、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を当該鉄筋群の配置に副って集合配置したものとして出力する鉄筋長表示システムとして機能させることを特徴とする。
【0013】
コンピュータに、躯体に内包される鉄筋の鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を採取する切寸取得手段と、前記切寸取得手段で採取された切寸を受けて前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸連結情報を編集すると共に、当該切寸連結情報及び一括表示される鉄筋線形の数と当該鉄筋線形を紐付ける連結情報作成手段と、前記鉄筋線形に紐付けられた切寸連結情報及び一括表示される鉄筋線形の数を当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の一部と紐付けた集約表示として出力する連結情報表示手段を備え、前記集約表示を、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸及び一括表示される鉄筋線形の数を当該鉄筋群の配置に副って集合配置したものとして出力する鉄筋長表示システムとして機能させる鉄筋長表示プログラムとして構成することができる。
前記連結情報表示手段に、前記集約表示として、前記鉄筋線形の端部に当該鉄筋線形を構成する鉄筋の切寸を連結した一連の文字列を、躯体軸又は鉄筋線形に沿って出力させる鉄筋長表示システムとして機能させる構成を採ることができる。
【0014】
コンピュータに、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群を連結する継手の種類及び配置からなる継手データを導く継手設定手段と、前記継手データに基づき配置された継手が規則に副って配置されているか否かを判定する継手検査手段を備え、前記連結情報作成手段は、前記判定結果を前記集約表示における切寸間のセパレータに反映する処理を行う鉄筋長表示システムとして機能させる前記いずれかに記載の鉄筋長表示プログラムとして構成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムによれば、鉄筋線形と紐づけられた切寸連結情報から、1個の鉄筋線形を構成する鉄筋長を集めて横一列に間断なく表示された鉄筋長文字列(集約表示)を作成するため、鉄筋長の表示位置からより少ない視線の移動で鉄筋線形を構成する鉄筋群の配置及び構成を確認することができる。
また、切寸が散在せず集約された形で整然と並べて表示できるため、当該躯体を構成する鉄筋線形の全様及びその鉄筋構成を一目で把握することができ、設計後における鉄筋の配置確認を容易に行うことができる。
更に、切寸の配置が鉄筋の配置に副っているため、配筋図を観る者にとって、鉄筋線形と鉄筋(切寸)群、及び鉄筋と切寸との対応が理解し易いという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムにより表示される画像の一例を示す説明図及び一部拡大図である。
【
図2】従来の鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムにより表示される画像の一例を示す説明図及び一部拡大図である。
【
図3】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムにより表示される画像の一例を示す説明図及び一部拡大図である。
【
図4】従来の鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムにより表示される画像の一例を示す説明図及び一部拡大図である。
【
図5】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで用いられる情報の構成例を示すブロック図である。
【
図7】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われる文字列表示位置の決定処理の一例を示すフローチャート図である。
【
図8】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われる文字列表示位置の決定処理の一例を示す説明図である。
【
図9】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われる文字列配置処理の一例を示す説明図である。
【
図10】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われる文字列干渉回避処理の一例を示すフローチャート図である。
【
図11】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われる文字列配置処理の一例を示す説明図である。
【
図12】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われる鉄筋長文字列作成処理の一例を示す説明図である。
【
図13】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われるまとめデータ作成処理の一例を示す説明図である。
【
図14】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われるまとめ数検出処理の一例を示す説明図である。
【
図15】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われるまとめ線形検出処理の一例を示す説明図である。
【
図16】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われる表示整理処理の一例を示す説明図である。
【
図17】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われるまとめデータ作成処理の一例を説明する説明図である。
【
図18】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムにおける鉄筋線形及び継手の表示例を示す説明図である。
【
図19】躯体における継手位置の適合区間の一例を示す説明図である。
【
図20】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムにより(A):躯体における継手位置の適合区間をブロック分けする処理の一例を示す説明図、及び(B):表示される画像の一例を示す説明図である。
【
図21】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムにより表示される画像の一例を示す説明図である。
【
図22】本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムで行われるセパレータ色決定処理の一例を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による鉄筋長表示システム及び鉄筋長表示プログラムの実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図5は、本発明の実施形態にかかる鉄筋長表示システムを具備した配筋設計支援装置の機能構成を示したブロック図である。
【0018】
この配筋設計支援装置は、設計仕様に副って入力操作が行なわれる入力手段と、当該入力手段から得た入力情報に基づき躯体の断面リストや軸位置データからなる設計躯体データを作成する設計躯体データ作成手段と、前記設計躯体データを格納する設計躯体情報格納部と、前記設計躯体データ及び鉄筋計算ルールに基づき、当該躯体に配筋されるべき鉄筋の鉄筋線形、当該鉄筋線形を形作る鉄筋の属性、鉄筋のかぶり、定着長、フック爪長さ及び曲げR部等の鉄筋データを作成する配筋計算手段と、前記鉄筋データを格納する鉄筋格納部と、前記設計躯体データから前記鉄筋データ並びに当該鉄筋線形を構成する鉄筋の連結に使用する継手の配置及び種類等の継手データを導くための前記鉄筋計算ルールを格納する鉄筋計算ルール格納部と、前記設計躯体データから3次元躯体表皮データを作成する躯体表皮計算手段と、前記鉄筋データから3次元鉄筋表皮データを作成する鉄筋表皮計算手段と、前記躯体表皮計算手段及び前記鉄筋表皮計算手段で導かれた図形データ(躯体表皮データ及び鉄筋表皮データなど)を所定のファイル形式で格納する図形データ格納部と、前記各格納部から指定された情報を検索するデータ検索手段と、前記データ検索手段により検索された前記図形データを画像化して出力する画像編集手段を備える。
【0019】
この配筋設計支援装置は、コンピュータシステムに、配筋設計支援プログラムをインストールすることによって前記配筋設計支援装置として機能し、前記各種機能手段や各格納部をネットワーク上の複数のコンピュータに配置し連携して動作する分散オブジェクト型として展開することも可能となる。
【実施例1】
【0020】
この例では、前記配筋設計支援装置に鉄筋長表示システムを備える。
前記鉄筋長表示システムは、前記配筋計算手段が出力した鉄筋データから当該躯体に内包される鉄筋線形を取得する配筋検出手段と、前記鉄筋データから鉄筋計算ルールに基づき躯体の鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を算出する切寸取得手段と、切寸取得手段で算出された切寸を受けて前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸連結情報を編集すると共に、当該躯体に内包された鉄筋の鉄筋線形の属性として当該切寸連結情報を紐付ける連結情報作成手段と、前記鉄筋線形に紐付けられた切寸連結情報を当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の表示の一部(先端部)と紐付けた集約表示として出力する連結情報表示手段を備える。
【0021】
ここで、前記切寸は、一連の鉄筋線形を複数の鉄筋が継手を介して連結された一群の鉄筋群に振り分けた際に、当該鉄筋群に含まれる各鉄筋の端点及び各継手等が存在する連結点に挟まれた各線分の寸法であって、アンカ部及びフックを含めたものである。
前記切寸取得手段は、継手設定手段により前記鉄筋データの鉄筋線形並びにそれに含まれる鉄筋の定着長、フック爪長さ、曲げR部等から、一連の鉄筋線形に継手が介在する位置及びその継手の種類を設定する継手設定処理、寸法検出手段により前記鉄筋線形からそれに属する鉄筋の寸法(切寸)を当該鉄筋線形の始点から順に導く単位寸法検出処理を行う。
前記単位寸法検出処理は、例えば、鉄筋線形の全長が13mであれば、線形IDに続いて、鉄筋線形全長13000を4000で3個に割って余り1000を最後に追加し一連の寸法データ“ID,4000,4000,4000,1000” (切寸連結情報)を単位レコードとして保存し、各鉄筋線形の鉄筋線形データと紐づけられたレコード群を形成する(
図6参照(A))。
【0022】
前記切寸連結情報は、前記鉄筋線形データの属性の一つとして、線形を特定する線形座標に続いて連結された構成を採ることもできる。前記線形座標と切寸連結情報は、例えば「TAB」を介在することにより分別することができる。
前記切寸取得手段は、鉄筋データから一本の鉄筋線分(切寸)を抽出し、当該線分の端点上に端点が存在する他の線分、又は当該線分の端点から当該鉄筋の半径の範囲内相当の距離に端点を持つ線分を検索し特定しつつ鉄筋線形を特定する単位寸法検出処理を採用することもできる。
尚、一連の寸法データを含む鉄筋線形データを他の記録媒体に書き込まれたファイルから読み込むこともできる。
【0023】
次に、前記連結情報作成手段は、線形IDに続いて、前記切寸取得手段で導かれた寸法を前記鉄筋線形の始点から順に連結した鉄筋長文字列(1個の鉄筋線形を構成する鉄筋長を集めて切寸連結情報に副って横一列に間断なく表示されたもの。以下「文字列」という。)例えば、“ID 4000-4000-4000-3000”を作成する文字列作成処理を行う(
図12(A)参照)。
【0024】
更に、前記連結情報作成手段は、当該躯体に同じ形態の鉄筋線形が複数並走する状態で内包され、且つ当該図面画像にその一部又は全部が並列に表記されている場合には、“D25 4000-4000-4000-3000 x3”の様に切寸及び本数を一括表示した集約表示としてまとめデータ作成処理を行う構成を採ることも可能である(
図13参照)。
【0025】
前記まとめデータ作成処理は、同じ情報を重ねて表示することに伴う表示の密集を避け、読図の便宜を図ることを目的として、前記文字列に本数を追加して一括表示する鉄筋を抽出する処理であって、まとめデータ作成手段によって行われる。
その際、前記まとめデータ作成手段は、線形IDに続いて、開始距離、終了距離、開始アンカ長及び終了アンカ長を算出し、線形に本数属性がある場合は、その本数を取得し、無い場合は本数(初期値)を一本として処理を行う。
続いて、前記切寸取得手段で導かれた寸法を前記鉄筋線形の始点から順に連結した寸法データ、例えば、“線形ID,180,5030,300,300,2500,4000,4000,2150、本数”という形の鉄筋比較データ(α)mを保存すると共に(
図6(B)参照)、(a)軸上の開始点距離及び終了点距離が同じ、(b)始端アンカ長及び終点アンカ長が同じ、(c)連結個数及び切寸が同じであって且つ同じ順に連結されているという3要件(連結構成)を満足した鉄筋線形群(以下「同線形群」という)を、指定された向きの指定された層の図面画像に表示される鉄筋線形群から検出する処理を行う(
図13及び
図15参照)。
【0026】
尚、
図17(B)の例によれば、鉄筋線形(イ)の開始距離は、P0~SPa、終了距離は、P0~EPaであり、鉄筋線形(ロ)の開始距離は、P0~SPb、終了距離は、P0~EPbである。
また、アンカ長とは、鉄筋の端部に設けられた屈曲部の長さであって、フックの部分を除いた長さである。
例えば、鉄筋線形(イ)の始端アンカ長は、屈曲部の長さであり、鉄筋線形(ロ)の始端アンカ長は無く、終端アンカ長は、屈曲部の長さである。
【0027】
前記まとめデータ作成手段は、まとめデータ作成処理((β)群ループ)として、前記(a)、(b)及び(c)が一定の範囲で満たされているかを判定し(まとめ線形検出処理:(α)群ループ)、前記(a)、(b)及び(c)を満足した鉄筋線形の線形IDのみからなるまとめデータ(β)nを保存する(
図6(C)、
図13乃至
図15参照)。
尚、この例において、前記距離の同一範囲は±50mm、アンカ長、各連結長(切寸)及び連結全長の同一範囲は±2.5mmとする。
【0028】
前記連結情報作成手段は、各まとめデータ(β)nについて、その先頭に記録された線形IDを抽出し、当該線形IDに紐づけられた鉄筋線形(以下「特定線形」という)の鉄筋比較データ(α)mを文字列(集約表示)に記載する鉄筋ID及び寸法データとして採用し、当該寸法データの各寸法間にハイフンを挿入し、更に、まとめ数検出処理として、当該まとめデータ(β)nの合計本数項目から本数mを導き、その最後尾に「×」に続けて追加する文字列作成処理を行う(
図12(A)参照)。
また、前記連結情報作成手段は、図面画像の視認性を高めるために、表示整理処理として、前記特定線形以外の鉄筋IDに係る鉄筋線形の文字列(集約表示)を非表示とする(
図16参照)。
【0029】
前記まとめデータ(β)nは、前記まとめデータ作成手段により、指定された向きなどの与えられた条件に応じて、各躯体及び各躯体に含まれる鉄筋線形の連結構成について作成される。
その際、前記まとめデータ作成手段は、当該躯体に含まれる同じ鉄筋線形を、複数の層に分別してまとめデータ作成処理を行う。
【0030】
前記まとめデータ作成手段は、図面として切取られる向き及び当該向きと直交する複数の層(以下「切取り層」という)について、躯体に含まれる鉄筋の、前記アンカ長を除く本体部分について鉄筋線形及びそれを形作る鉄筋の切寸を導く線形抽出処理と、前記鉄筋線形を構成すべく連結された線分の各節点の上手方向外面からの距離(深度)を導く深度検出処理と、前記深度が浅い順に層を設定する配筋層設定処理を行い、当該切取り層の内部に存在する鉄筋線形のうちでまとめ対象となる鉄筋線形の個数mを検出する。
前記まとめデータ作成手段は、描画対象が梁である場合には、例えば、梁を真上から見る場合は、上筋、宙吊筋又は下筋が描かれる切取り層を設定することができる。
尚、この例において、前記線形抽出処理は、前記配筋検出手段及び切寸取得手段により行われている。
また、前記宙吊筋は、複数の層にわたって重ねて配筋されている場合もある。
【0031】
上記まとめデータ作成処理による貢献は、例えば、以下の通りである。
即ち、鉄筋線形に含まれる継手には、「重ね」、「圧接」及び「機械」があり、「重ね」又は「圧接」を採用する場合には、鉄筋計算ルール等に基づく適合範囲に継手を配置することが求められる。
例えば、隣り合う継手を500mm以上ずらして配置することが求められる。
例として、上筋が2本の同一線形である場合には、各々の始端に位置する切寸として、それぞれ5000mmと5500mmの異なる寸法を使用し、中間に位置する切寸として同じ寸法を使用し、終端に位置する切寸として、それぞれ3500mmと3000mmを使用することで、全長が同じ寸法であり、且つ両者の継手の位置が500mmずつずれた配筋とすることが求められる。
仮に、「重ね」又は「圧接」の継手を使用した鉄筋線形が何十本隣接して配置された場合であっても、2種類の連結構成をまとめて表示すれば足りることとなり、良好な視認性を得ることができる。
【0032】
前記画像編集手段は、前記データ検索手段により検索された前記躯体表皮データ、鉄筋表皮データ又は鉄筋データなどを、前記上筋、宙吊筋又は下筋の層単位で分別し、指定された向きで陰線処理がほどこされた図面画像を作成し必要な説明書き等と共に出力する。
各層の画像は、ユーザーの選択操作により、任意に選択して個別に表示し、又はすべての層の画像を、相互に重ならないようにずらして配置して表示することができる。
また、前記連結情報表示手段は、当該図面画像上に、当該画像に表示されている鉄筋の鉄筋線形に紐付けられた前記一連の集約表示を、当該鉄筋群が形作る鉄筋線形の表示の一部と位置的一体性を与え、又は引き出し線を介して一体性を与えた情報集約表示で出力する。
【0033】
前記連結情報表示手段は、前記鉄筋表皮データ、躯体表皮データ及び鉄筋データに基づき、鉄筋線形の始点Pを通る躯体軸(梁の場合は、当該梁の中央を通る線形又は当該線形を構成する要素である線形)の足APを求め、軸直角方向Vの躯体線(躯体の表皮が形作る外形線)との交点KPを文字列の表示位置の始点として設定する(
図7及び
図8参照)。
これをもって、当該文字列が寸法を表している鉄筋線形の始点がわかり、鉄筋線形と集約表示との一体性が与えられることとなる(
図8)。
前記交点KPは、前記文字列と躯体線の重なりを避けるために、前記鉄筋データから前記文字列と躯体線との干渉(かぶりなど)を検出した場合には、前記連結情報表示手段は、更に、躯体干渉解消手段で文字列の中心線(文字中心線)をV方向に文字高さ分移動する処理を行う(
図9参照)。
【0034】
前記連結情報表示手段は、前記交点KPを文字列の始点とし且つ前記躯体軸を構成する線形又は鉄筋線形と平行な線分を前記連結情報作成手段で作成された文字列の中心線とし、躯体軸が曲線であっても対応できるように、表示する文字列を構成する各文字を、前記文字列の中心線に沿って配置する(
図1、
図3、
図8及び
図9参照)。
前記文字列の複数が表示位置を共有する場合には、複数の文字列が一カ所に重なってしまうので、前記連結情報表示手段は、文字列干渉解消手段により文字列の始点が等しい文字列毎に、前記文字列の中心線をV方向に当該文字列の文字高さ単位でシフトさせる処理を行う(
図10参照)。
【0035】
前記連結情報表示手段は、文字中心線上に文字列の基点SPを設け、文字の中心が並ぶ方向(文字中心線方向)SVに倣って各切寸をつなぐ文字及びセパレータ(ハイフン)を表示する(
図11参照)。
文字列は、最初の文字列(最初の線形寸法)の中心を基点SPに配置し、当該基点SPにおける前記方向SVへ最初の文字列分移動させた新たな基点SPを中心としてセパレータを表示する。
【0036】
以上を切寸個数繰り返し、前記鉄筋線形を形作る鉄筋群の切寸を当該鉄筋群の配置に副って集合配置してなる文字列を完成させる。(
図1及び
図3参照)
以上の処理によれば、前記躯体線及び文字列の中心線が曲線であっても、それらに倣う文字列を表示することができる。
【実施例2】
【0037】
この例は、切寸連結情報に加えて継手に関する情報を集約表示に含めるものである。
この例は、前記鉄筋計算ルールに基づき、各鉄筋線形を構成する鉄筋を連結するに適した継手を導き、圧接と、機械継手又は重ね継手をシンボルの形状(丸や円柱状など)や色で区別し、文字列の寸法間に介在するハイフン等のセパレータに継手情報の機能を与え、当該継手の相違や適不適を色や太さで区別するものである(
図18参照)。
【0038】
これにより、紙に印刷された図面においては、鉄筋線形を構成する切寸の配置を一目で確認できるのみならず、切寸間の連結に用いられる継手を一目で認識し、施工及び確認を行うことができる。
一方、画面上の図面においては、鉄筋線形の切寸の連結位置に継手のシンボルを表示させると共に、文字列の寸法間に継手の種類及び配置の適否を区別できるセパレータを介在することによって、設計値に適合しているかどうかをオペレータが容易に知ることができる。
【0039】
上記要請をみたすべく、この例は、前記切寸取得手段の継手設定処理により導かれた継手の配置が、当該継手の種類に応じて適合区間に配置されているか否かを判定する継手検査手段を備える。
【0040】
以下、前記継手検査手段の主な処理を図面に基づき説明する。
一般的に、継手配置の適合区間は、設計値により梁スパンの両端部4分の1と、当該両端部に挟まれた中間部との区画で示される(
図19参照)。
図19の梁断面図と梁軸から上筋範囲の適合区間を算出する処理の場合は、先ず、すべての梁スパンについて、梁断面図の上半分を切断すると共に、梁軸の適合区間を切断し、適合区間のブロック(以下「適合ブロック」という)を設定する(
図20参照)。
【0041】
次に、前記継手検査手段は、選定された継手が付された連結位置Pが適合ブロックに入っているか否かを判定し、適合ブロックに入っていれば「合格」、適合ブロックに入っていなければ「不合格」の出力を行う。
また、適合ブロックに入っていたとしても、合否境界面から一定距離以内に近接している場合には「注意」の出力を行う。
【0042】
前記継手検査手段の出力は、前記継手表示手段により、図面の鉄筋線形の連結位置に予め定められた象徴シンボルとして表示される。
前記継手表示手段は、前記切寸取得手段による継手設定処理で導かれた継手データに基づいて継手の種類及び配置を導き、例えば、圧接であれば球体、機械継手又は重ね継手であれば円柱を表示する。
その際、球の直径は、例えば、鉄筋線形の太さの1.2倍から3倍程度とする。
一方、円柱の底辺の直径は、球と同様とし、その高さ(長さ)は、機械継手や重ね継手の種類により予め定められた長さとする。
円柱の中心線は、鉄筋線形の「開始距離点=P点-継手長/2」から「終了距離点=P点+継手長/2」までの区間とする(
図18(C)参照)。
【0043】
また、前記継手表示手段は、前記継手検査手段の判定結果を取り込み、当該判定結果を、鉄筋線形の表示における継ぎ手のシンボルに含める処理を行う。
その際、前記継手検査手段の出力は、前記継手表示手段によって表示されたシンボル又は色の相違として表示し、例えば、前記球及び円柱を採用するとすれば、その色を、「合格」は緑、「注意」は黄、「不合格」は赤で表示する。
【0044】
更に、前記継手検査手段の出力は、前記連結情報作成手段により、前記文字列の切寸間を繋ぐハイフン等のセパレータの相違として表示される。
前記連結情報作成手段は、前記文字列を作成する際、前記切寸連結情報に基づいて当該鉄筋線形の切寸構成と共に各継手の位置を検出し、各ブロックにおける継手の位置関係から前記「合格」、「注意」又は「不合格」の判定結果を取り込み、当該判定結果を前記集約表示に含める処理を行う(
図11(B)又は
図12(B)参照)。
【0045】
即ち、前記連結情報作成手段は、線形IDに続いて、前記切寸取得手段で導かれた寸法を前記鉄筋線形の始点から順に連結した鉄筋長文字列を作成する際、例えば、二分割のハイフンで各寸法を連結し、各ハイフンの前半・後半各々の色等をもって、例えば、以下のとおり表現する。
継手の位置が前半・後半いずれも「不合格」である場合には、ハイフンの「前半・後半=赤・赤」で表示し、前半・後半いずれも「合格」である場合には、「前半・後半=緑・緑」、前半・後半ともに「注意」である場合には、「前半・後半=黄・黄」、前半又は後半のみ「不合格」である場合には、「前半・後半=赤・〇又は〇・赤」、前半又は後半のみ「注意」である場合には、「前半・後半=黄・〇又は〇・黄」、前半又は後半のみ「合格」である場合には、「前半・後半=緑・〇又は〇・緑」でハイフンを色分けした鉄筋長文字列を作成する(
図22参照)。
上記の通り作成された鉄筋長文字列は、前記連結情報表示手段により出力される。
【0046】
このように、継手の種類や配置状況に応じた異なる表示を行うことにより、2つの切寸に挟まれた継手の位置が適合範囲に対してどのような位置関係にあるのかを、少ない視線移動で容易に確認することができる。
また、「注意」のシンボルに隣接した切寸は、境界からの長さが減少すれば適合範囲から外れる危険があり、逆に増加すれば適合範囲の中央に、より近づくことを認識することができるためオペレータにとって便宜となる。
【符号の説明】
【0047】
P 始点,V 方向,AP 足,KP 交点,
SP 基点,SV 方向,