(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】自動洗浄機用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/75 20060101AFI20231211BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20231211BHJP
C11D 3/395 20060101ALI20231211BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20231211BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C11D1/75
C11D3/37
C11D3/395
C11D17/08
C11D3/04
(21)【出願番号】P 2020105806
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-204399(JP,A)
【文献】特開昭63-273700(JP,A)
【文献】特開昭63-150393(JP,A)
【文献】特開2009-127018(JP,A)
【文献】特開2017-029519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として下記の(A)~(D)成分を含有するとともに、水を含有することを特徴とする自動洗浄機用液体洗浄剤組成物。
(A)アミンオキサイド型界面活性剤
(B)高分子電解質重合体
(C)アルカリ剤
(D)次亜塩素酸アルカリ金属塩
【請求項2】
上記(A)成分のアミンオキサイド型界面活性剤が、ヘキシルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイドおよびデシルジメチルアミンオキサイドから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の自動洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
上記(C)成分のアルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび珪酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の自動洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
25℃におけるpH(JIS-Z-8802:1984「pH測定法」)が、8~14である請求項1~3のいずれか一項に記載の自動洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食器、ガラス、陶磁器、金属、プラスチック等の硬質表面の洗浄に適する自動洗浄機用液体洗浄剤組成物に関し、さらに詳しくは、再付着防止性能、仕上がり性、スケール生成抑制、保存安定性、洗浄性、漂白性、低泡性、塩素系漂白剤の有効塩素の安定性に優れ、特に洗浄剤組成物の次亜塩素酸アルカリ金属塩の安定性と油汚れの再付着防止性に優れる自動洗浄機用液体洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホテル、レストラン、学校、病院、社会福祉施設、飲食店、給食会社、会社の食堂等において、使用後の食器を効率よく洗浄するため、自動食器洗浄機が広く用いられている。また、食器に限らず、各種製造工場、加工工場等においても、器具や容器、流通に用いられるプラスチックコンテナ等を洗浄するために自動洗浄機が用いられている。
【0003】
上記自動食器洗浄機用の洗浄剤組成物としては、例えば、(A)塩素系の漂白成分、(B)ポリカルボン酸またはその塩、(C)オルト珪酸塩およびメタ珪酸塩から選ばれる1種以上、(D)アルカリ金属水酸化物、並びに(E)水を含有し、炭酸塩の含有量が1質量%以下である食器洗浄機用液体洗浄剤組成物(特許文献1を参照)が開示されている。
【0004】
また、スルホン酸基含有ポリマー(A)と、アルカリ剤(B)と、ポリカルボン酸またはその塩(C)と、塩素系漂白剤(D)を必須成分として含有し、かつ、アミノカルボン酸系キレート剤(E)を含有しないことを特徴とする自動食器洗浄機用液体洗浄剤(特許文献2)が開示されている。
【0005】
さらに、(a)1種または2種以上のアルカリ剤0.5~30重量%と、(b)金属イオン捕捉能を有するアクリル酸および/またはマレイン酸系の高分子物質0.5~30重量%と、(c)次亜塩素酸ナトリウム等の漂白剤0.1~10重量%を含有し、食器類の外観を損ねることのない、洗浄効果、漂白効果に優れた自動食器洗浄器用洗浄組成物(特許文献3を参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012―193227号公報
【文献】特開2013-177507号公報
【文献】特開平8-199194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの洗浄剤組成物は、油脂汚れ、タンパク質汚れ等の乳化、分解に働くアルカリ剤と、スケールの発生を抑制し汚れの分散に働く高分子化合物、および除菌および茶渋汚れ等の漂白に働く塩素系漂白剤からなることから、タンパク質汚れの洗浄性、スケール抑制能および除菌、漂白性には優れるものの、水の硬度やpHによっては、アルカリ剤の、油脂汚れを乳化、分散する性能が充分に発揮されず、いったん除去された油脂汚れが、被洗浄物に再付着する等して、満足のいく洗浄性が得られないという課題がある。
【0008】
そこで、除菌、漂白性に効果を発揮する次亜塩素酸アルカリ金属塩を含有するものであって、しかも、被洗浄物からいったん除去された油脂汚れの再付着を効果的に防止することができ、次亜塩素酸アルカリ金属塩の安定性にも優れるとともに、自動食器洗浄機での使用に際し泡立ちの少ない液体タイプの自動洗浄機用洗浄剤組成物の開発が強く望まれている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、使用する水の液性に限定されることなく、各種汚れに対する洗浄性、除菌性、漂白性、スケール生成抑制、および低泡性に優れており、特に、被洗浄物からいったん除去された油脂汚れの再付着防止性能に優れ、さらには、次亜塩素酸アルカリ金属塩の安定性にも優れた、自動洗浄機用液体洗浄剤組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、有効成分として下記の(A)~(D)成分を含有するとともに、水を含有する自動洗浄機用液体洗浄剤組成物を第1の要旨とする。
(A)アミンオキサイド型界面活性剤
(B)高分子電解質重合体
(C)アルカリ剤
(D)次亜塩素酸アルカリ金属塩
【0011】
また、本発明は、上記(A)成分のアミンオキサイド型界面活性剤が、ヘキシルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイドおよびデシルジメチルアミンオキサイドから選ばれる少なくとも1種である自動洗浄機用液体洗浄剤組成物を第2の要旨とする。
【0012】
さらに、本発明は、上記(C)成分のアルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび珪酸塩から選ばれる少なくとも1種である自動洗浄機用液体洗浄剤組成物を第3の要旨とする。
【0013】
そして、本発明は、25℃におけるpH(JIS-Z-8802:1984「pH測定法」)が、8~14である自動洗浄機用液体洗浄剤組成物を第4の要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明の自動洗浄機用液体洗浄剤組成物(以下「本洗浄剤組成物」ともいう)は、有効成分として、上記(A)~(D)成分を組み合わせた、特殊な組成であるため、各種汚れに対する洗浄性、除菌性、漂白性、スケール生成抑制、低泡性、のいずれの性能についても優れている。
【0015】
しかも、従来の洗浄剤組成物に比べて、被洗浄物からいったん除去された油脂汚れの再付着防止性能に優れ、さらには、次亜塩素酸アルカリ金属塩の安定性にも優れているという特長を備えている。
【0016】
したがって、本洗浄剤組成物は、ガラス、陶磁器、金属、プラスチック等の各種の硬質表面の洗浄用途に適している。また、食器に限らず、各種製造工場、加工工場等においても、器具や容器、流通に用いられるプラスチックコンテナ等を洗浄するための自動洗浄機用途としても使用可能である。このほか食品工場・食品加工工場等のタイル、床等の硬質表面の洗浄、飲料用のガラス瓶・ビール瓶等の容器洗浄、金属表面洗浄等にも好ましく用いることができる。特に、ホテル、レストラン、学校、病院、社会福祉施設、飲食店、給食会社、会社の食堂等に用いるのに好適である。
【0017】
なお、本発明のなかでも、特に、上記(A)成分のアミンオキサイド型界面活性剤が、ヘキシルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイドおよびデシルジメチルアミンオキサイドから選ばれる少なくとも1種であるものは、とりわけ、油汚れの再付着防止性能と低泡性に優れたものとなり、好適である。
【0018】
また、本発明のなかでも、特に、上記(C)成分のアルカリ剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび珪酸塩から選ばれる少なくとも1種であるものは、とりわけ、洗浄性能に優れたものとなり、好適である。
【0019】
そして、本発明のなかでも、特に、25℃におけるpH(JIS-Z-8802:1984「pH測定法」)が、8~14であるものは、とりわけ、本発明の優れた諸性能が、より効果的に発揮されるため、好適である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
まず、本洗浄剤組成物は、(A)アミンオキサイド型界面活性剤、(B)高分子電解質重合体、(C)アルカリ剤、(D)次亜塩素酸アルカリ金属塩、の4つの成分を有効成分として含有するとともに、水を含有するものである。
【0022】
上記(A)成分であるアミンオキサイド型界面活性剤としては、油汚れの再付着防止効果および低泡性のバランスの点から、へキシルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイド、デシルジメチルアミンオキサイド等が好適に用いられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、上記効果の点から、ヘキシルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルアミンオキサイドが、特に好ましい。
【0023】
上記(A)成分のアミンオキサイド型界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、本洗浄剤組成物全体に対して、0.1~10質量%の範囲であることが好ましく、なかでも、0.2~3質量%の範囲であることがより好ましい。すなわち、上記(A)成分の含有量が少なすぎると、油汚れの再付着抑制能が不充分になるおそれがあり、逆に多すぎると、系の安定性が損なわれるおそれがあり、好ましくない。
【0024】
上記(B)成分の高分子電解質重合体としては、スケール生成抑制効果および他の成分とのバランスの点から、例えば、ポリアクリル酸またはそのアルカリ金属塩、メチルビニルエーテルとマレイン酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩、アクリル酸とマレイン酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩、炭素数が5個のオレフィンとマレイン酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸とマレイン酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸とアクリル酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩、アクリル酸と2-ヒドロキシ-3-アリロキシプロパンスルホン酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩等があげられる。なかでも、ポリアクリル酸またはそのアルカリ金属塩、アクリル酸とマレイン酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸とマレイン酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩、スチレンスルホン酸とアクリル酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩が好ましい。上記高分子電解質重合体がアルカリ金属塩である場合、そのアルカリ金属塩は、部分中和物であってもよい。そして、これらは、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記(B)成分の高分子電解質重合体の平均分子量は、スケール生成抑制能の点から、例えばポリアクリル酸またはそのアルカリ金属塩においては1,000~60,000であることが好ましく、より好ましくは2,000~15,000である。また、上記高分子電解質重合体がアクリル酸とマレイン酸の共重合体またはそのアルカリ金属塩である場合には、30,000~150,000であることが好ましく、より好ましくは40,000~80,000である。
【0026】
なお、本発明において、高分子電解質重合体における「平均分子量」は、「重量平均分子量」を意味し、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:Gel permeation chromatography)により測定され換算されたものをいう。
【0027】
そして、上記(B)成分の高分子電解質重合体の含有量は、特に限定されるものではないが、本洗浄剤組成物全体に対して、0.1~20質量%の範囲であることが好ましく、なかでも、他の成分とのバランスから2~15質量%の範囲であることがより好ましい。すなわち、上記(B)成分の含有量が少なすぎると、スケール抑制効果が不充分となるおそれがあり、逆に、多すぎると、系全体の安定性と(D)成分である次亜塩素酸アルカリ金属塩の有効塩素の安定性とが、損なわれるおそれがある。なお、上記(B)成分の高分子電解質重合体の残存モノマー量は、(D)成分の次亜塩素酸アルカリ金属塩の貯蔵安定性の点から0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0028】
さらに、上記(C)成分のアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸塩、炭酸塩等があげられ、なかでも、系全体の安定性と、(D)成分である次亜塩素酸アルカリ金属塩の有効塩素の安定性の点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸塩が好適に用いられる。これらは、それぞれ単独で用いても2種以上を併用してもよいい。そして、いずれも、常用されている液体状、粒状、顆粒状、フレーク状等、各種の形態のものを用いることができる。
【0029】
上記珪酸塩としては、ナトリウム塩またはカリウム塩が好適に使用され、なかでも、SiO2とNa2Oのモル比(SiO2/Na2O)が0.9~4の珪酸ナトリウム水溶液、または、SiO2とK2Oのモル比(SiO2/K2O)が0.4~4の珪酸カリウム水溶液が好適に用いられる。また、これらは、粉状、粒状、結晶状のメタ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム等の無水物、水和物から得ることもできる。
【0030】
そして、上記(C)成分のアルカリ剤の含有量は、特に限定されるものではないが、本洗浄剤組成物全体に対して、0.1~30質量%の範囲であることが好適であり、なかでも、他の成分とのバランスから、1~20質量%の範囲であることがより好ましい。すなわち、上記(C)成分の含有量が少なすぎると、各種汚れに対する洗浄力が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると、系全体の安定性と(D)成分の次亜塩素酸アルカリ金属塩の有効塩素の安定性とが、損なわれるおそれがある。
【0031】
また、上記(D)成分の次亜塩素酸アルカリ金属塩としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムがあげられ、なかでも、常用されている12質量%の次亜塩素酸ナトリウム、6質量%の次亜塩素酸ナトリウム等が好ましく、とりわけ、低食塩濃度の次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
そして、上記(D)成分の次亜塩素酸アルカリ金属塩の含有量も、特に限定されるものではないが、本洗浄剤組成物全体に対し、有効塩素量として0.1~10質量%の範囲であることが好適であり、なかでも、他の成分とのバランスから、1~6質量%の範囲であることがより好ましい。すなわち、上記(D)成分の含有量が少なすぎると、各種色素汚れに対する漂白性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると、系全体の安定性と、次亜塩素酸アルカリ金属塩の有効塩素の安定性が損なわれるおそれがある。
【0033】
なお、上記(A)成分と(D)成分の含有割合である(A)/(D)は、本洗浄剤組成物において、質量基準で、3以下であることが好ましく、なかでも、1以下であることがより好ましい。すなわち、(A)/(D)が大きくなりすぎると、次亜塩素酸アルカリ金属塩の有効塩素の安定性が損なわれるおそれがあるからである。
【0034】
また、上記(B)成分と(D)成分の含有割合である(B)/(D)は、本洗浄剤組成物において、質量基準で、10以下であることが好ましく、なかでも、5以下であることがより好ましい。すなわち、(B)/(D)が大きくなりすぎると、この場合も、次亜塩素酸アルカリ金属塩の有効塩素の安定性が損なわれるおそれがあるからである。
【0035】
さらに、本発明において、上記(A)~(D)成分の合計含有量は、本洗浄組成物全体に対し、10~60質量%となることが好ましい。すなわち、合計含有量が上記の範囲よりも少ないと、洗浄剤組成物がコンパクトなものとならず、大きな保管スペースを要するため好ましくない。また、各種汚れに対しての洗浄力およびスケール生成抑制能も弱くなるおそれがある。一方、合計含有量が上記の範囲よりも多くなると、次亜塩素酸アルカリ金属塩の有効塩素の安定性と、組成物の低温安定性が損なわれるおそれがあり、好ましくない。
【0036】
そして、本洗浄剤組成物は、水によって液体として調製される。上記水としては、純水、イオン交換水、軟水、蒸留水、水道水等があげられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性および貯蔵安定性の点から、水道水、イオン交換水が好ましく用いられる。
【0037】
なお、上記「水」は、本洗浄剤組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、その他の外から加えられる水との総和であり、洗浄剤組成物全体が100質量%となるよう、上記有効成分や適宜添加される他の任意成分を除く残質量%が配合される。
【0038】
上記本洗浄剤組成物に適宜添加される任意成分としては、pH調整剤、香料、金属腐食抑制剤、殺菌剤、消臭剤、帯電防止剤等があげられる。
【0039】
これらの成分を用いて得られる本洗浄剤組成物は、次亜塩素酸アルカリ金属塩(D成分)を含有するものでありながら、有効塩素の安定性が優れているため、次亜塩素酸アルカリ金属塩の除菌性、漂白効果を効率よく発揮することができる。さらに、従来に比べて、液性に左右されることなく、各種汚れに対する洗浄性、スケール生成抑制および低泡性に優れているという特徴を備えている。特に、JIS-Z-8802:1984により測定された25℃におけるpHが8~14のとき、さらに望ましくはpHが11~14のとき、とりわけ、優れた性能を発揮するという特徴を有しており、自動洗浄機用として用いるのに最適である。
【0040】
しかも、本洗浄剤組成物は、従来の洗浄剤組成物に比べて、いったん被洗浄物から除去された油脂汚れの再付着防止性能に優れ、さらには、次亜塩素酸アルカリ金属塩の安定性をより充分に確保することができる。
【0041】
したがって、本洗浄剤組成物はガラス、陶磁器、金属、プラスチック等の硬質表面の洗浄用途に適している。また、食器に限らず、各種製造工場、加工工場等においても、器具や容器、流通に用いられるプラスチックコンテナ等を洗浄するための自動洗浄機用途としても使用可能である。このほか食品工場・食品加工工場等のタイル、床等の硬質表面の洗浄、飲料用のガラス瓶・ビール瓶等の容器洗浄、金属表面洗浄にも好ましく用いることができる。特に、ホテル、レストラン、学校、病院、社会福祉施設、飲食店、給食会社、会社の食堂等に用いるのに好適である。
【0042】
なお、本洗浄剤組成物は、汚れの種類や汚れの量(程度)、洗浄に用いられる水道水の水質等を考慮して、例えば、濃度が0.01~0.5質量%の洗浄剤水溶液として、自動洗浄機に供給することにより、特に食器および調理器具に対して、優れた仕上がり効果を得ることができる。
【実施例】
【0043】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1~42、比較例1~7〕
後記の表1~表11に示す組成の自動洗浄機用液体洗浄剤組成物を調製し、そのpH、次亜塩素酸ナトリウムの安定性、低温安定性、洗浄力、再付着防止性能、スケール生成抑制能および低泡性の7項目について評価した。その結果を後記の表1~表11に併せて示す。なお、各項目の試験方法、評価方法は、後記の通りである。
【0045】
そして、後記の表1~表11において用いた各種成分とその有効純分(質量%)の詳細は、下記の通りであり、表中の数値は、有効純分100質量%に換算して示したものである。また、表中の「水」は、液体洗浄剤組成物を構成する各種成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と外から加えられる水との総和であり、洗浄剤組成物全体が100質量%となるようバランスとして示される。
【0046】
[A成分]
・アミンオキサイド型界面活性剤1:オクチルジメチルアミンオキサイド(純分30%、商品名「ゲナミノックスOC」、クラリアント社製)
・アミンオキサイド型界面活性剤2:ヘキシルジメチルアミンオキサイド(純分30%、試作品)
・アミンオキサイド型界面活性剤3:デシルジメチルアミンオキサイド(純分30%、商品名「ゲナミノックスK-10」、クラリアント社製)
【0047】
[B成分]
・高分子電解質重合体1:ポリアクリル酸ナトリウム(純分45%、平均分子量5,500、商品名「アクアリックYS-100」、日本触媒社製)
・高分子電解質重合体2:ポリアクリル酸(純分48%、平均分子量4,500、商品名「Acusol 445」、DOW CHEMICAL社製)
・高分子電解質重合体3:ポリアクリル酸ナトリウム(純分45%、平均分子量8,000、商品名「Sokalan 30CL」、BASF社製)
・高分子電解質重合体4:ポリアクリル酸ナトリウム(純分43%、平均分子量2,000、商品名「AlonA-210」、東亞合成社製)
・高分子電解質重合体5:アクリルマレイン酸共重合体のナトリウム塩(純分35%、平均分子量40,000、商品名「Acusol 505N」、ROHM&HAAS社製)
・高分子電解質重合体6:アクリル酸-2-ヒドロキシ-3-アリロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(純分50%、平均分子量3,000、商品名「Aqualic GL246」、日本触媒社製)
【0048】
[C成分]
・アルカリ剤1:オルソ珪酸カリウム(純分:35%、商品名「OK-35」、日本化学社製)
・アルカリ剤2:オルソ珪酸ナトリウム(純分:65%、商品名「ネオオルソ65」、広栄化学社製)
【0049】
[D成分]
・次亜塩素酸ナトリウム(商品名「低食塩次亜塩素酸ソーダ」、南海化学社製)
【0050】
[その他の成分]
・コハク酸(商品名「コハク酸」、日本触媒社製)
・ポリオキシアルキレンアルキルエ―テル(商品名「プルラファックLF224」、BASF社製)
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩(純分:40%、商品名「エマール20T」、花王社製)
【0051】
[pH]
・試験方法
JIS-Z-8802:1984に従い、洗浄剤組成物の25℃におけるpHを測定し、下記の評価基準で評価した。
【0052】
・評価基準
A:pHが11以上14以下である。
B:pHが8以上11未満である。
C:pHが8未満である。
【0053】
[次亜塩素酸ナトリウムの安定性]
・試験方法
供試洗浄剤組成物を250mlのポリプロピレン製容器に入れ、38℃にて1ヶ月間保存し、残存する有効塩素を下記の方法で測定し、調製直後の有効塩素を100(%)として、その比率を、有効塩素残存率(%)として求め、次亜塩素酸ナトリウムの安定性を下記の判定基準に従い評価した。
【0054】
・有効塩素測定方法
供試試料3gを200ml三角フラスコに取り、それに10質量%ヨウ化カリウム溶液15ml、(1+1)硫酸10mlを添加し、冷暗所に3分間静置してヨウ素を遊離させた。つぎに0.1Nチオ硫酸ナトリウム規定液でヨウ素の黄色が消失するまで滴定し、次式から算出した。
【0055】
[数1]
有効塩素(%、Clとして)=0.3545×(A/S)
A:0.1Nチオ硫酸ナトリウム規定液の滴定量(ml)
S:サンプル採取量(g)
【0056】
・評価基準
◎:残存率が70%以上である。
〇:残存率が50%以上70%未満である。
△:残存率が30%以上50%未満である。
×:残存率が30%未満である。
【0057】
[低温安定性]
・試験方法
供試洗浄剤組成物を250mlのポリプロピレン製容器に入れ、その液温が24時間で+5℃~-5℃のサイクルを描くように冷却、昇温する運転を100日間連続して行い、結晶析出の有無を、毎日、目視により観察した。そして、下記の評価基準により低温安定性を評価した。
【0058】
・評価基準
◎:100日後も析出が認められなかった。
〇:60日目から99日目の間に析出が認められた。
△:30日目から59日目の間に析出が認められた。
×:29日目までに析出が認められた。
【0059】
[洗浄力]
・試験方法
供試洗浄剤組成物を業務用の自動食器洗浄機(DW-RD61、三洋電機社製)に投入し、下記の運転条件で運転した。そして、下記の被洗浄物である陶器皿を10枚1組として洗浄し、洗浄後の各皿の汚れ除去の程度を目視により観察した。そして、その洗浄性能を後記の評価基準で評価した。なお、汚れとして牛脂、上新粉、カレー、卵黄、茶渋を用意し、それぞれの汚れに対し洗浄性試験を行った。
【0060】
・運転条件
洗剤濃度 :0.1質量%
洗浄温度 :60℃
すすぎ温度 :80℃
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:43秒、すすぎ:15秒)
水道水の硬度:(CaCO3として)70~80mg/L
牛脂汚れ :精製牛脂を用いた。
上新粉汚れ :上新粉25に対し水75を加え、途中かき混ぜながら20分間煮沸し、のり状となったものを用いた。
カレー汚れ :市販のレトルトカレー(ボンカレー〔登録商標〕、大塚製薬社製)を用いた。
卵黄汚れ :卵黄のみをとりわけ、よくかき混ぜて用いた。
茶渋汚れ :粉茶50gを1Lのお湯の中に入れ1時間煮立てたものを用いた。
被洗浄物 :直径 10cmの陶器皿に上記汚れを4g/枚となるように付着させ、常温で1時間乾燥させたものを用いた。また、茶渋汚れについては、陶磁器皿の表面を#180のサンドペーパーで傷をつけ、そこに茶渋汚れ10gをのせ、100℃の乾燥機に入れ、水分を完全に除去したものを用いた。
【0061】
・評価基準
◎:90%以上の汚れ除去。
〇:70%以上90%未満の汚れ除去。
△:50%以上70%未満の汚れ除去。
×:50%未満の汚れ除去。
【0062】
[再付着防止性能]
・試験方法
汚れとしてオイルレッド(スダンIV)で着色したサラダ油30gを、業務用の自動食
器洗浄機(DW-RD61、三洋電機社製)の洗浄タンクに投入し、清浄なメラミン製皿を10枚1組として配置した洗浄ラックを上記自動食器洗浄機内にセットして、供試洗浄剤組成物を用いて、下記の運転条件で運転した後、清浄なメラミン製皿への汚れの付着度合いを目視により確認し、下記の評価基準で評価した。
【0063】
・運転条件
洗剤濃度 :0.1質量%
洗浄温度 :60℃
すすぎ温度 :80℃
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:43秒、すすぎ:15秒)
水道水の硬度:(CaCO3として)70~80mg/L
【0064】
・評価基準
◎:清浄な皿に汚れが全く付着していない。
〇:清浄な皿に汚れが殆ど付着していない。
△:清浄な皿に汚れが付着する。
×:清浄な皿に汚れがかなり付着する。
【0065】
[スケール生成抑性能]
・試験方法
人工硬水(総硬度:CaCO3として250mg/L)を用いて、供試洗浄剤組成物を0.05質量%に希釈し、容量100mlの比色管に50mlを注ぎ、60℃で24時間保持した後、スケールの生成量を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。
【0066】
・評価基準
◎:スケールの生成がなかった。
〇:スケール生成が殆どなかった。
△:スケールの生成があった。
×:スケール付着が著しかった。
【0067】
[低泡性]
・試験方法
供試洗浄剤組成物と充分にかき混ぜた鶏卵(全卵)30gとを業務用の自動食器洗浄機(SD104GS、日本洗浄機社製)に投入し、下記の運転条件で運転した。そして、洗浄液の泡立ち(起泡)を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。
【0068】
・運転条件
洗浄剤濃度 :0.1質量%
洗浄温度 :60℃
すすぎ温度 :80℃
すすぎ水量 :2.2L
洗浄コース :標準洗浄サイクル(洗浄:50秒、すすぎ:10秒)
水道水の硬度:(CaCO3として)60mg/L
タンパク質汚れ:鶏卵(全卵)30g
【0069】
・評価基準
◎:運転時に泡が液面から50mm未満で、かつ運転終了後速やかに泡が消える。
〇:運転時に泡が液面から50mm未満で、かつ運転終了後1分経過以内に泡が消える。
△:運転時に泡が液面から50mm以上であるが、運転終了後1分経過以内に泡が消える。
×:運転直後に、ポンプが泡をかんで、運転困難となる。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
上記の結果から、実施例品はいずれも、上記全ての評価項目において、優れた特性を示すことがわかる。一方、比較例品はいずれも、いくつかの評価項目において「×」を有し、実用上問題となることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、食器、ガラス、陶磁器、金属、プラスチック等の硬質表面の洗浄に適する自動洗浄機用液体洗浄剤組成物において、所望のpHにおいて、再付着防止性能、仕上がり性、スケール生成抑制、保存安定性、洗浄性、漂白性、低泡性、塩素系漂白剤の有効塩素の安定性に優れ、特に洗浄剤組成物の次亜塩素酸アルカリ金属塩の安定性と油汚れの再付着防止性に優れる自動洗浄機用液体洗浄剤組成物として、広く利用することができる。