(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】圧搾装置及び圧搾方法
(51)【国際特許分類】
A23N 1/00 20060101AFI20231211BHJP
A23N 17/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
A23N1/00 A
A23N17/00 Z
(21)【出願番号】P 2023110134
(22)【出願日】2023-07-04
【審査請求日】2023-07-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516096140
【氏名又は名称】株式会社テクモア
(74)【代理人】
【識別番号】100165135
【氏名又は名称】百武 幸子
(72)【発明者】
【氏名】稲田 勝雄
(72)【発明者】
【氏名】篠原 英二
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107149152(CN,A)
【文献】中国実用新案第206371824(CN,U)
【文献】中国実用新案第214015867(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0096492(KR,A)
【文献】特開平01-320977(JP,A)
【文献】特開2022-022591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 1/00
A23N 17/00
A23N 15/00
A47J 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧搾物を収容し、全側周壁と底面に小孔が穿設された内容器と、該内容器を内部に設置する外容器と、前記内容器の前記被圧搾物を押圧する押圧機構と、から構成され、
前記押圧機構は、モーターと、前記モーターを制御する制御装置と、前記モーターによって加圧板を昇降させるジャッキと、前記被圧搾物に接して押圧する押込板と、前記加圧板と前記押込板との間に設置され前記押込板を押圧するバネと、を備え、
前記バネの撓み量が所定の値になると、前記モーターの電源が切れて、前記モーターの駆動による電動加圧がなくなり、前記バネによるバネ加圧によって押圧されて前記バネの撓み量が前記所定の値とは異なる別の所定の値になると再び前記モーターの駆動による電動加圧となり、前記バネの撓み量が再び前記所定の値になると前記モーターの電源が切れ、再び前記バネの撓み量が前記別の所定の値になるまで、前記バネ加圧によって前記押込板が押圧される動作を含むことを特徴とする圧搾装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の圧搾装置を使用した圧搾方法であって、
蒸された野菜又は果物の製品に使用する部分と、該製品に使用しない部分に分ける工程と、
前記製品に使用しない部分を第1のフィルターに入れ、前記圧搾装置の前記内容器に設置して圧搾する第1の圧搾工程と、
前記第1の圧搾工程で前記第1のフィルターに残る固形状の第1の残渣と、前記第1のフィルターと前記内容器を通った搾り汁を含んだ固形物質とに分離する第1の分離工程と、
を含むことを特徴とする圧搾方法。
【請求項3】
請求項
2に記載の圧搾方法において、第1の圧搾工程において、第1の残渣の水分含有率が40%以下になることを特徴とする圧搾方法。
【請求項4】
請求項
2に記載の圧搾方法において、第1の分離工程の後、さらに、
前記搾り汁を含んだ固形物質を第2のフィルターに入れ、前記圧搾装置の前記内容器に設置して圧搾する第2の圧搾工程と、
前記第2の圧搾工程で前記第2のフィルターに残るペースト状の第2の残渣と、前記第2のフィルターと前記内容器を通った搾り汁に分離する第2の分離工程と、
を含むことを特徴とする圧搾方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の圧搾方法であって、前記野菜はさつま芋、前記製品は干し芋であり、前記第1の残渣は飼料であり、前記第2の残渣はさつま芋ペーストであり、前記第2のフィルターを通った搾り汁は、さつま芋搾り汁であることを特徴とする圧搾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧搾装置及び圧搾方法に関する。特に製品に使用しない部分から新たな製品を生産できる圧搾装置及び圧搾方法に関する
【背景技術】
【0002】
干し芋を製造する際に、さつま芋を蒸した後、剥皮され、干し芋に使用しない皮付近の部分は廃棄されてきた。近年、販売される干し芋は、形状が良いものが好まれ、少しでも形状が整っていない部分、傷んでいる黒い部分、蒸して硬くなった白い部分、皮付近の部分や皮は削られ、廃棄される部分が増えている。製品(干し芋)に使用しない部分(規格外のさつま芋やさつま芋の皮及び皮付近の部分)は、有効に活用できる部分があっても廃棄されている。他の野菜や果物、例えば南瓜や栗のペーストを作る際にも、皮付近の部分が廃棄されている。
【0003】
国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)では目標12に掲げる「つくる責任つかう責任」の中のターゲットとして廃棄物の管理や削減といった内容が盛り込まれている。また、国内法においても食品ロスの削減の推進に関する法律が施行されている。資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成するとともに、食品ロスを含み、すべての消費による廃棄物の削減に取り組むことが必要であるとして定められている。干し芋等の製品の製造において、製品に使用しないで廃棄される部分の量は年々増える傾向があるため、有効的な削減や再利用が望まれている。また、そのような部分を削減、再利用するための装置や方法が必要である。
【0004】
さつま芋を蒸した後の製品に使用しない部分は、多くの水分が含まれ、大量であるため、長く常温保存することが難しい。そのため、その部分の水分量と質量を調整して圧搾し、常温保存できる製品にすることが好ましい。圧搾には、手動式やモーター駆動、油圧駆動、空気圧駆動など様々な方法が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には「芋焼酎もろみを予備ろ過し、ろ過物を圧搾ろ過してもろみ液部ともろみ固形部に固液分離する圧搾ろ過機」(段落「0013」)が開示されている。予備ろ過によって得られたろ過物を市販の空気圧搾機構つきの圧搾ろ過機を用いてもろみ液部と、もろみ固形部に分離している。また、特許文献2には、糖化された紅芋を麻袋に入れて、圧搾機などで圧縮する方法が開示されている。圧縮の程度は、通常6~14Mpaであり、得られた搾り汁液は、適宜、フィルター、中空糸膜でのろ過や遠心分離機にかけて、微細な浮遊物を除去することが開示されている(段落「0032」)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-278762号公報
【文献】特開2006-246836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2では、圧搾ろ過によって得られた搾り汁液や固形残渣を使用するものであるが、製品に使用しない部分を有効活用することは行われていない。製品に使用しない部分は廃棄物となり得るため、その部分を活用して新たな製品を製造することが望まれる。製品に使用しない部分を圧搾ろ過することによって、新たな製品を製造するためには、その製品の保存性を高めるために、残渣の水分量を調整する必要がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み、製品に使用しない部分を圧搾ろ過することにより、新たな製品を製造することができる圧搾装置及び圧搾方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、被圧搾物を収容し、全側周壁と底面に小孔が穿設された内容器と、該内容器を内部に設置する外容器と、前記内容器の前記被圧搾物を押圧する押圧機構と、から構成され、前記押圧機構は、モーターと、前記モーターを制御する制御装置と、前記モーターによって加圧板を昇降させるジャッキと、前記被圧搾物に接して押圧する押込板と、前記加圧板と前記押込板との間に設置され前記押込板を押圧するバネと、を備え、前記バネの撓み量が所定の値になると、前記モーターの電源が切れて、前記モーターの駆動による電動加圧がなくなり、前記バネによるバネ加圧によって押圧されて前記バネの撓み量が前記所定の値とは異なる別の所定の値になると再び前記モーターの駆動による電動加圧となり、前記バネの撓み量が再び前記所定の値になると前記モーターの電源が切れ、再び前記バネの撓み量が前記別の所定の値になるまで、前記バネ加圧によって前記押込板が押圧される動作を含むことを特徴とする圧搾装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の圧搾装置を使用した圧搾方法であって、蒸された野菜又は果物の製品に使用する部分と、該製品に使用しない部分に分ける工程と、前記製品に使用しない部分を第1のフィルターに入れ、前記圧搾装置の前記内容器に設置して圧搾する第1の圧搾工程と、前記第1の圧搾工程で前記第1のフィルターに残る固形状の第1の残渣と、前記第1のフィルターと前記内容器を通った搾り汁を含んだ固形物質とに分離する第1の分離工程と、を含むことを特徴とする圧搾方法である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の圧搾方法において、第1の圧搾工程において、第1の残渣の水分含有率が40%以下になることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の圧搾方法において、第1の分離工程の後、さらに、前記搾り汁を含んだ固形物質を第2のフィルターに入れ、前記圧搾装置の前記内容器に設置して圧搾する第2の圧搾工程と、前記第2の圧搾工程で前記第2のフィルターに残るペースト状の第2の残渣と、前記第2のフィルターと前記内容器を通った搾り汁に分離する第2の分離工程と、を含むことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の圧搾方法であって、前記野菜はさつま芋、前記製品は干し芋であり、前記第1の残渣は飼料であり、前記第2の残渣はさつま芋ペーストであり、前記第2のフィルターを通った搾り汁は、さつま芋搾り汁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧搾装置及び圧搾方法によると、製品に使用しない部分を圧搾ろ過することにより、新たな製品を製造することができる。それにより、廃棄物を減らすことができ、新たな製品として有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である圧搾装置の概要を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態である圧搾装置の正面説明図である。
【
図5】
図2の圧搾装置の押圧機構を示す説明図である。
【
図6】
図2の圧搾装置の制御装置の操作盤を示す模式図である。
【
図7】
図2の圧搾装置の制御方法を示すグラフである。
【
図8】
図2の圧搾装置の押圧機構におけるバネのたわみを示す説明図である。
【
図9】本発明の一実施形態である第1の圧搾方法の流れを表す説明図である。
【
図10】蒸されたさつま芋の製品に使用しない部分を示す模式図である。
【
図14】本発明の一実施形態である第2の圧搾方法の流れを表す説明図である。
【
図15】(A)は第2の分離工程を示す模式図、(B)は第2の残渣を示す模式図である。
【
図16】(A)は第2の残渣のさつま芋ペーストの写真であり、(B)は第2のフィルターを通ったさつま芋搾り汁の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下実施例と記す)を、図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、共通する部分には同一の符号を付しており、同一符号の部分に対して重複した説明を省略する。
【0013】
[圧搾装置1の構成]
本発明の一実施例に係る圧搾装置1の構成について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例である圧搾装置1の概要を示す模式図である。
図2~4は、それぞれ圧搾装置1の正面説明図、側面説明図、平面説明図である。
図5は、圧搾装置1の押圧機構を示す説明図であり、
図6は圧搾装置1の制御装置20の操作盤を示す説明図である。
図2~5の説明図において、実際には外部からはカバーや扉で視認できない内容器や押圧機構等も示している。
【0014】
図1に示すように、本実施例の圧搾装置1は、被圧搾物30,31を収容した内容器14と、内容器14を内部に設置する外容器10と、内容器14の被圧搾物を押圧する押圧機構と、から構成される。押圧機構は、モーター12と、モーターを制御する制御装置20と、モーター12によって加圧板17を昇降させるジャッキ13と、被圧搾物に接して押圧する押込板15と、加圧板17と押込板15との間に設置され、押込板15を押圧するバネ18と、から構成される。
【0015】
〔内容器14〕
内容器14は、圧搾された物を通すため、周壁と底面に小孔が多数穿設されており、強度に優れた容器を使用する。本実施例では、孔が均一に穿設されているスチール製のパンチングメタルで側面と底面が構成されている内容器14を使用する。内容器14の材質は、本実施例の材質に限定されず、周壁と底面に小孔が多数穿設されており強度があればいかなる材質でもよい。
【0016】
図1の矢印に示すように、内容器14に被圧搾物30,31を入れる際には、外容器10から内容器14を取り出して被圧搾物30,31を中に入れ、圧搾の際には内容器14を外容器10に収納する。また、圧搾後の残渣32,33を取り出す際にも外容器10から内容器14を取り出す。このように内容器14は外容器10に複数回、出し入れするため、内容器14に取っ手140を付けることが好ましい。また、内容器14の形状と寸法は、外容器10に出し入れしやすい形状や寸法であることが好ましい。本実施例の内容器14は、円筒形で外容器10内に余裕を持って設置できる寸法で構成されている。
【0017】
〔外容器10〕
外容器10は、内容器14を設置でき、内容器14の上に押圧機構を備えることができる寸法で、強度に優れた材質(例えばステンレス鋼材)で構成されている。外容器10の形状は本実施例では、底面、右側面、左側面、前面、背面、上面からなる直方体である。
図2~4に示す圧搾装置1では、外容器10の前面の扉11を省略して示しているが、前面に扉11を付けることが好ましい。扉11を付けることで、圧搾時には扉11を閉めて、外部からの埃や虫等を防ぐことができる。なお、扉11と、底面の間には空隙を設けることが好ましい。空隙があることで、圧搾中の扉11を閉めた状態でも、搾り汁又は搾り汁を含んだ固形物質を外容器10の外側に出すことができ、圧搾の状態を確かめながら、それらを回収することができる。
【0018】
図2、3に示すように、外容器10の底面の前面の外側に向けて、内容器14を通った搾り汁又は搾り汁を含んだ固形物質を受け止めやすいように、傾斜部19が形成されている。
図2に示すように、傾斜部19は、袋を設置しやすいように、逆ハの字型に形成されており、そこに袋を設置することで、搾り汁等を受け止めやすくなる。
【0019】
また、外容器10の下面は設置面(地面)に直接、設置されず、所定の高さで設置されることが好ましい。外容器10の下面を所定の高さにすることで、搾り汁等を受け止めやすくなる。本実施例では、
図3、
図4に示すように外容器10の下面の床110を厚くして、その下にキャスター111を4隅に備えている。それにより、外容器10の底面を所定の高さに保持でき、かつ外容器10を容易に移動させることができる。
【0020】
〔押圧機構〕
内容器14の被圧搾物を押圧する押圧機構は外容器10の上方に設置される。モーター12は、いかなるモーターでもよいが、本実施例では減速機を組み合わせて一体化したギヤードモーターを使用する。ギヤードモーターを使用することで、圧搾装置1の小型化と軽量化を図ることができる。モーター12は、回転の機械的変位量を電気信号に変換するロータリーエンコーダ120を介して制御装置20に接続されている。制御装置20は、モーターの起動、停止、回転速度(高速、低速)等を制御する。
【0021】
モーター12は、ジャッキ13に接続されている。ジャッキ13は、油圧式ジャッキやスクリュージャッキ等、いかなるジャッキでもよいが、本実施例では、スクリュージャッキを使用する。スクリュージャッキ13により、ねじ130を回転させて昇降させ、加圧板17を昇降させることができる。
図5に示すように、加圧板17の下方に被圧搾物に接して押圧する押込板15が設置されており、加圧板17と押込板15との間にバネ18が備えられている。本実施例では、
図4に示すようにバネ18が6個、備えられている。バネ18は汚れが付かないように円筒状のカバー16で覆われている。バネ18は、いかなるバネでもよいが、例えばシリコンクロム鋼製の高撓み用強力バネが使用される。
【0022】
モーター12が起動すると、スクリュージャッキ13のねじ130が加圧板17を押圧し、バネ18を介して押込板15を押圧し、押込板15が被圧搾物に接して押圧する。モーター12を停止した場合でも、バネ18の弾性力により、押込板15が被圧搾物に接して押圧する。このように、本実施例の押圧機構では、スクリュージャッキ13による電動の押圧と、バネ18による弾性力の押圧が併用され、被圧搾物が圧搾される。
【0023】
図6は、制御装置20の操作盤を示す模式図である。
図6に示すように、操作盤には、操作を示すモニターと、「運転」「停止」「原点復帰」「非常停止」のボタンが付いている。本実施例では、プログラム化した制御方法で自動運転を行うため、上記のボタンのみがついているが、手動運転で行う場合には、
図6に示すように、「自動運転」、「手動運転」、「低速」、「高速」、「下降低荷重」、「下降高荷重」等の細かい操作を行うことができるような操作盤を構成してもよい。
【0024】
[圧搾装置1の動作]
次に本実施例の圧搾装置1の動作について、
図7と
図8を参照して説明する。
図7は、圧搾装置1の制御方法を示すグラフであり、
図8は圧搾装置1の押圧機構におけるバネ18のたわみを示す説明図である。
図7のグラフにおいて、縦軸が垂直方向のストローク(行程)を示し、横方向は運転時間(圧搾時間)を示す。実線曲線は押込板15のグラフを表し、2点鎖線曲線は加圧板17のグラフを表す。なお、本実施例で説明する圧搾装置1の動作は、被圧搾物がさつま芋の場合であり、後述する第1の圧搾方法、第2の圧搾方法に適するように設定された動作である。圧搾装置1の動作は、本実施例の動作に限定されず、扱う野菜又は果物や製造する製品によって、適宜変更可能である。
【0025】
本実施例では、前述のように圧搾装置1の自動運転を行う。制御装置20の操作盤の「運転」のボタンを押すと、押込板15が原点(ストローク20mm)から内容器14の上面(100mm)に達するまでの準備段階で、モーター12(スクリュージャッキ13)が高速かつ、無荷重の状態で運転を行う。1分が経過し、ストロークが100mmに達すると、押込板15が内容器14の上面(被圧搾物)に達するため、モーター12を低速、低荷重(12.6kN)の状態で圧搾する。このとき、モーター12の駆動による電動加圧とバネ18による加圧が交互に行われている。
【0026】
より具体的には、
図7と
図8に示すように、バネの撓み量が1.6mm(LS2の状態、12.6kN)になると、モーター12の駆動を停止させて、バネだけで押圧させる。すなわち、電源が切れて、モーター12の駆動による電動加圧がなくなり、バネ18による加圧によって押込板15が押圧される。このとき、バネ撓み量が1.6mm(LS2の状態)から0.8mm(LS1の状態、6.3kN)まで戻される。バネ18によるバネ加圧が終わると再びモーター12の電動加圧になり、バネ撓み量が再び1.6mm(LS2の状態)になると、電源が切れ、再びバネ18の撓みが0.8mm(LS1の状態)になるまで、バネ加圧によって押込板15が押圧される。このような圧搾をストロークが200mmに達するまで繰り返し(5分を経過するまで)行う。
【0027】
5分が経過し、ストロークが200mmに達すると、モーター12を低速、高荷重(75.4kN)の状態で圧搾する。
図7と
図8に示すように、バネの撓み量が9.6mm(LS4の状態、75.4kN)になると、電源が切れて、モーター12の駆動による電動加圧がなくなり、バネ18によるバネ加圧によって押込板15が押圧される。このとき、バネ撓み量が9.6mm(LS4の状態)から7.7mm(LS3の状態、60.4kN)まで戻される。バネ18による加圧が終わると再びモーター12の電動加圧になり、バネ撓み量が再び9.6mm(LS4の状態)になると、電源が切れ、再びバネ18の撓みが7.7mm(LS3の状態)になるまで、バネ加圧によって押込板15が押圧される。このような圧搾をストロークが360mmに達するまで(35分を経過するまで)繰り返し行う。
【0028】
運転開始から35分が経過し、ストロークが360mmに達すると、スクリュージャッキ13が元の位置に戻るように、高速かつ、無荷重の状態の運転を行う。運転開始から40分が経過し、押込板15が原点(ストローク20mm)に戻ると運転が終了する。以上のように、本実施例の圧搾装置1ではモーター12の駆動とバネ18による電動加圧とモーターの駆動を停止させてバネ18だけによるバネ加圧が交互に行われている。それにより、モーター12の長時間駆動による過負荷を防ぐことができ、高温での焼損を防止することができる。また、バネ19による加圧を使用することで、モーター12の負荷を減らすことができるため、小型のモーターを使用することができる。さらに、電動加圧とバネ加圧を交互に繰り返して、被圧搾物を押圧することにより、電動の勢いのある圧搾だけではなく、バネによる穏やかな圧搾を繰り返し行うことができる。このように異なる種類の圧力が被圧搾物に作用することで、圧搾を効果的に行うことができる。
【0029】
[第1の圧搾方法]
次に、圧搾方法(第1の圧搾方法)を
図9~
図13を用いて説明する。
図9は、第1の圧搾方法の流れを表す説明図である。
図10は、蒸されたさつま芋の製品に使用しない部分を示す模式図である。
図11は、第1の圧搾工程を示す模式図、
図12は、第1の分離工程を示す模式図、
図13は、第1の残渣を示す模式図である。本実施例においては、野菜又は果物の一例としてさつま芋、製品の一例として干し芋を説明するが、本発明の方法はさつま芋、干し芋に限定されず、他の野菜又は果物や製品にも使用することができる。以下、
図9に示す各ステップ(工程)に沿って説明する。
【0030】
[ステップS11:準備工程]
まず、蒸されたさつま芋を剥皮し、干し芋に使用する部分と、干し芋に使用しない部分30に分けられる。分ける作業は機械で分けられてもよいし、手動で分けられてもよい。
図10に示すように、干し芋に使用しない部分(規格外のさつま芋、さつま芋の皮及び皮付近の部分)30は、袋に入れて保管される。さつま芋の皮及び皮付近の部分は多量の水分を含むため、長く常温保存することが難しいため、できるだけ早期に圧搾する必要がある。製品として販売される干し芋は、形状が良いものが好まれ、少しでも形状が整っていない部分、傷んでいる黒い部分、蒸して硬くなった白い部分、皮付近の部分や皮は削られる傾向にある。干し芋に使用しないさつま芋の皮及び皮付近の部分は、蒸したさつま芋1kgにつき約300gであり、1日に800kg程になることもあり、その部分が有効に使用されることが望まれる。
【0031】
[ステップS12:第1の圧搾工程]
次に干し芋に使用しない部分30を第1のフィルター41に入れ、圧搾装置1又は市販の圧搾装置の内容器14の中に設置して圧搾する。本実施例では、第1のフィルターは、目開き1mmの野菜用網(樹脂製ネット)であり、その中に干し芋に使用しない部分30を入れる。このような目開きの第1のフィルター(以下、網と記す)41を使用することにより、網41を通らないさつま芋の皮や硬い部分を、圧搾後に残渣として網41内に残すことができる。また、網41は、本実施例の目開き1mmの網に限定されず、さつま芋の皮や硬い部分を網内に残すことができれば、いかなる網でもよい。圧搾装置1を使用する場合の圧搾は、前述の圧搾装置1の動作で説明した通り、圧搾装置1の運転を開始し、モーター12の駆動による電動加圧とバネ18によるバネ加圧を交互に35分間実施する。市販の圧搾装置を使用する場合には、モーター12の長時間駆動による過負荷を防ぐことができるような圧搾装置を使用して圧搾する。
図11に示すように、圧搾中に、網41と内容器14を通った搾り汁を含んだ固形物質31が外容器10の外側に流れ、外に設置した回収袋40に回収される。
【0032】
[ステップS13:第1の分離工程]
圧搾工程の後、第1の圧搾工程で網41に残る固形状の第1の残渣32と、網41と内容器14を通った搾り汁を含んだ固形物質31とに分離する。
図12に示すように、分離工程は、圧搾装置1の扉11を開けて行われる。分離工程は、機械で分けられてもよいし、手動で分けられてもよい。本実施例では、手動で分けられる。網41と内容器14を通った搾り汁を含んだ固形物質31の一部が外容器10の外側に流れるが、外容器10内や内容器14の側面、底面にも多く付いているため、それらの固形物質31も取って回収袋40に回収する。また、内容器14内の網41に残った第1の残渣32を網41に入った状態で取りだす(
図13参照)。
【0033】
[ステップS14:飼料(第1の残渣)の完成]
最初の状態(圧搾前の状態)の被圧搾物の水分量は66%であったが、第1の残渣32の水分量は40%に減っていた。また、第1の残渣32の質量は、最初の状態(圧搾前の状態)を100%とすると、39%に減っていた。このように、第1の残渣32は、水分量と質量が減り、常温保存が可能で、かつ場所を取らずに保管できる。第1の残渣32は、皮付近の栄養が豊富な部分であるため、飼料として再利用することができる。第1の残渣32を常温保存するためには飼料の水分量を40%まで減らすような圧搾が好ましい。本実施例では第1の残渣32の水分量が40%のため、その値を満たしているが、さらに10%まで減らすことが好ましい。また、保管の観点から、できるだけ嵩張らないことが好ましく、本実施例のように質量を大幅に減少させるような圧搾が好ましい。以上のように、本発明の圧搾方法により、本来廃棄していた干し芋に使用しない部分を飼料として有効に活用することができる。
【0034】
[第2の圧搾方法]
第1の圧搾方法の後に、本発明の圧搾装置1を使用して、圧搾する方法(第2の圧搾方法)を、
図14~16を用いて説明する。
図14は、第2の圧搾方法の流れを表す説明図である。
図15(A)は第2の分離工程を示す模式図、(B)は第2の残渣を示す模式図である。
図16(A)は第2の残渣のさつま芋ペーストの写真であり、(B)は第2のフィルターを通ったさつま芋搾り汁の写真である。以下、
図14に示す各ステップ(工程)に沿って説明する。
【0035】
[ステップS21:第2の圧搾工程]
第1の分離工程の後に取り出した搾り汁を含んだ固形物質31を第2のフィルター(ろ過シート)42に入れ、圧搾装置1又は市販の圧搾装置の内容器14の中に設置して圧搾する。第2のフィルターは、第1のフィルターよりも目が細かいフィルターを使用する。本実施例では通気度が2500cm3/(cm2・min)のフィルターを使用する。第2のフィルターは、本実施例の通気度のフィルターに限定されず、圧搾後にペースト状の物を残すことができれば、いかなるフィルターでもよい。圧搾装置1を使用する場合の圧搾は、第1の圧搾方法と同様に、圧搾装置1の運転を開始し、モーター12の駆動による電動加圧とバネ18によるバネ加圧を交互に35分間実施する。市販の圧搾装置を使用する場合には、モーター12の長時間駆動による過負荷を防ぐことができる圧搾装置を使用して圧搾する。圧搾中に、第2のフィルター42と内容器14を通った搾り汁34が外容器10の外側に流れ、外に設置した回収箱に回収される。このとき、第2のフィルター42を通らないさつま芋のペーストを、圧搾後に残渣として第2のフィルター42内に残すことができる。
【0036】
[ステップS22:第2の分離工程]
次に第2の圧搾工程で第2のフィルター42に残るさつま芋のペースト(第2の残渣)33と、第2のフィルター42と内容器14を通った搾り汁34に分離する。
図15(A)に示すように、第1の分離工程と同様に第2の分離工程は、圧搾装置1の扉11を開けて行われる。分離工程は、機械で分けられてもよいし、手動で分けられてもよい。本実施例では、手動で分けられる。内容器14内の第2のフィルター42に残ったさつま芋のペースト(第2の残渣)33を第2のフィルター42に入った状態で取りだす(
図15(B)参照)。
【0037】
[ステップS23:さつま芋のペースト(第2の残渣)の完成]
図16(A)の写真に示すように、さつま芋のペーストが完成する。さつま芋のペースト(第2の残渣)33の水分量は、第2の圧搾前の搾り汁を含んだ固形物質31の水分量は66%であったが、36.7%に減っていた。また、さつま芋のペースト(第2の残渣)33の質量は、最初の状態(圧搾前の状態)の質量を100%とすると、53.7%に減っていた。このように、さつま芋のペースト33は、水分量と質量が減り、保管が容易になり、更に皮付近の栄養豊富な部分であるため、さつま芋のペーストとして菓子等で再利用することができる。
【0038】
[ステップS24:さつま芋搾り汁の完成]
第2のフィルター42と内容器14を通った搾り汁34は回収箱50に回収され、
図16(B)の写真に示すように、さつま芋搾り汁が完成する。搾り汁34はさつま芋の栄養分が詰まったさつま芋搾り汁34であり、糖度は33~38%であり、そのままジュースとして飲むことができる。また、さつま芋搾り汁34は料理の材料として使用することもできる。以上のように、第2の圧搾方法により、さつま芋のペーストと、さつま芋搾り汁を製造することができる。
【0039】
以上説明した様に、本発明の圧搾装置及び圧搾方法によると、製品に使用しない部分を圧搾ろ過することにより、新たな製品(飼料、さつま芋ペースト、さつま芋搾り汁)を製造することができる。それにより、本来、捨てられていた廃棄物を減らすことができ、新たな製品として有効に活用することができる。
【0040】
なお、上述した実施例の圧搾装置及び圧搾方法は一例であり、その構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 圧搾装置
10 外容器
11 扉
12 モーター
13 ジャッキ
14 内容器
15 押込板
16 カバー
17 加圧板
18 バネ
19 傾斜部
20 制御装置
30,31 被圧搾物
32,33 残渣
34 搾り汁
40 回収袋
41 第1のフィルター(網)
42 第2のフィルター
50 回収箱
110 床
111 キャスター
120 ロータリーエンコーダ
130 ねじ
140 取っ手
【要約】
【課題】製品に使用しない部分を圧搾ろ過することにより、新たな製品を製造することができる圧搾装置及び圧搾方法を提供する。
【解決手段】圧搾装置1は、被圧搾物を収容し、全側周壁と底面に小孔が多数穿設された内容器14と、内容器14を内部に設置する外容器10と、内容器14の被圧搾物を押圧する押圧機構と、から構成され、押圧機構は、モーター12と、モーター12を制御する制御装置と、モーター12によって加圧板17を昇降させるジャッキ13と、被圧搾物に接して押圧する押込板15と、加圧板17と押込板15との間に設置され押込板15を押圧するバネ18と、を備え、モーター12の駆動とバネ18による押圧の動作により、被圧搾物を圧搾する。
【選択図】
図2