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特許7399456システム、サーバ装置、クライアント装置、バイオセンサ、バイオセンサセット、データ取得装置、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】システム、サーバ装置、クライアント装置、バイオセンサ、バイオセンサセット、データ取得装置、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/483 20060101AFI20231211BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20231211BHJP
   A61C 19/06 20060101ALI20231211BHJP
   G16H 80/00 20180101ALI20231211BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20231211BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G01N33/483 F
G01N27/327
A61C19/06 A
G16H80/00
G16H50/20
G01N33/50 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019202181
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021076437
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的先端研究開発支援事業、「発現マッピング法による細菌叢電気相互作用の追跡と制御基盤の構築」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】岡本 章玄
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016235(JP,A)
【文献】特開2004-354311(JP,A)
【文献】特開2003-159262(JP,A)
【文献】特表2017-517742(JP,A)
【文献】特表2007-513636(JP,A)
【文献】特開2004-065438(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03553525(EP,A1)
【文献】Naradasu Diviya et al,Cariogenicity of Streptococcus mutans UA159 in dental cavity is promoted by biofilm acidification via extracellular electron transfer,第58回歯科基礎医学会学術大会,2016年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
サーバ装置、クライアント装置、及び、データ取得装置を有し、
前記クライアント装置、及び、前記データ取得装置は、インターネットを含むコンピュータネットワークを介して前記サーバ装置とそれぞれ通信可能に構成され、
前記データ取得装置は、電子源と患者のだ液とを含む試験液の電気化学特性と、前記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態とを含む訓練データと、を取得し、前記訓練データを前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は、前記訓練データに含まれる電気化学特性から得られた特徴量と前記進行状態とに基づいて学習を行い、前記特徴量を説明変数とし、前記進行状態を目的変数とする分類器を生成し、
前記クライアント装置は、前記電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を測定し、テストデータを取得し、前記テストデータを前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置は、更に、前記テストデータを前記分類器に適用して、前記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態を予測して、予測の結果を前記クライアント装置に送信し、前記クライアント装置に表示させるよう促
前記電気化学特性は、う蝕、及び/又は、歯周病の原因となる細菌の電子伝達機能による、該細菌の細胞外固体への電子移動を反映したものである、システム。
【請求項2】
前記電気化学特性が、アンペロメトリー法、又は、ボルタンメトリー法により測定される試験液、又は、検体の特性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気化学特性が、アンペロメトリー法により求められる時間と電流応答との関係である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記細菌が、Streptococcus mutans菌、又は、Capnocytophaga ochracea菌である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記サーバ装置が、
前記訓練データを前記データ取得装置から受信する訓練データ受信部と、
前記分類器を生成する分類器生成部と、
前記テストデータを前記クライアント装置から受信するテストデータ受信部と、
前記テストデータを前記分類器に適用して、前記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態を予測する予測部と、
前記予測の結果を前記クライアント装置に返送し、前記クライアント装置に表示するよう促す結果送信部と、を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム
【請求項6】
前記クライアント装置が、
前記電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を測定する検体測定部と、
前記電気化学特性を含むテストデータを前記サーバ装置に送信するテストデータ送信部と、
前記サーバ装置において前記テストデータを前記分類器に適用することで得られた前記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態の予測の結果を、前記サーバ装置から受信する結果受信部と、
前記結果を表示する出力部と、を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム
【請求項7】
前記システムは、更に、
前記検体の電気化学特性を測定するために使用される、前記検体と接触するよう配置された少なくとも2つの電極を有するバイオセンサを有し、
前記クライアント装置が備える前記検体測定部は、前記バイオセンサの前記電極と接続され、前記電極から得られる前記検体の電気化学特性を測定する、請求項6に記載のシステム
【請求項8】
前記バイオセンサは、更に、前記検体を捕捉するための検体捕捉部を有し、
前記検体捕捉部には、予め前記電子源が配置され、前記だ液と接触すると前記電子源と前記だ液とによって検体が生成される、請求項7に記載のシステム
【請求項9】
前記検体捕捉部が前記電子源を含む固体電解質からなる、請求項8に記載のシステム
【請求項10】
前記バイオセンサに、複数の前記電子源が予めそれぞれ配置された、請求項7~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記データ取得装置は、
前記試験液が収容される二次元アレイ状に配置された複数の試験液収容部ごとに、前記試験液と接触するように前記試験液収容部中に配置された少なくとも2つの電極からなる電極部のそれぞれと電気的に接続され、前記電極部から得られる前記試験液の電気化学特性を測定する、訓練データ測定部と、
前記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態の入力を受け付ける操作部と、
前記電気化学特性と、前記進行状態とを含む訓練データをサーバ装置に送信する訓練データ送信部と、を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム
【請求項12】
複数の前記試験液収容部と前記電極部とが、電極付きマルチウェルプレートを構成する、請求項11に記載のシステム
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のシステムを制御するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記訓練データを前記データ取得装置から受信する段階と、
前記分類器を生成する段階と、
前記テストデータを前記クライアント装置から受信する段階と、
前記テストデータを前記分類器に適用して、前記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態を予測する段階と、
前記予測の結果を前記クライアント装置に送信し、前記クライアント装置に表示するよう促す段階と、を実行させるプログラム。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のシステムを制御するためのプログラムであって、
コンピュータに、
前記テストデータを前記サーバ装置に送信する段階と、
前記サーバ装置によって前記テストデータが前記分類器に適用されて得られた前記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態の予測の結果を、前記サーバ装置から受信する段階と、
前記予測の結果を表示する段階と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム、サーバ装置、クライアント装置、バイオセンサ、バイオセンサセット、データ取得装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの処理能力の向上に伴い、大量かつ様々な形式のデータを高速に扱うことが可能になり、ヒトから取得した検体を分析して得た大量のデータをもとに機械学習等の手法により、ヒトの健康状態等を予測するための技術開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「予測対象の生体データと予測モデル構築用の生体データとを取得する生体データ取得手段と、前記予測モデル構築用の生体データに対応する患者が疾病を発症したか否かを表す発症情報を取得する発症情報取得手段と、前記発症情報が前記疾病を発症したことを表す場合、前記予測モデル構築用の生体データのうち、前記疾病を発症した発症時点の基準期間前から前記発症時点までの生体データから、陽性サンプルとなる生体データを抽出し、前記発症時点の前記基準期間前より以前の生体データから、陰性サンプルとなる生体データを抽出するサンプル抽出手段と、前記陽性サンプルを、前記基準期間内に前記疾病を発症するトレーニングデータとして使用し、前記陰性サンプルを、前記基準期間内に前記疾病を発症しないトレーニングデータとして使用することによって、予測モデルを構築する予測モデル構築手段と、前記予測対象の生体データと前記予測モデルとに基づいて、前記予測対象の生体データに対応する患者が、前記疾病を前記基準期間内に発症するか否かを予測する発症予測手段と、を備え、前記サンプル抽出手段は、抽出した前記陽性サンプルとなる生体データに所定の演算を行った結果を前記陽性サンプルとし、前記陰性サンプルとなる生体データに所定の演算を行った結果を前記陰性サンプルとする、疾病発症予測装置。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-16235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された疾病発症予測装置は、いわゆるバイタルサイン等の生体データをもとに疾病の発生を事前に予測することができるものであるが、生体データの取得は一般に煩雑であり、更に、う蝕、及び、歯周病の進行状態の予測に適用することはできなかった。
【0006】
そこで、本発明は、医療機関に通いにくい地域、又は、環境にある被験者にも、より簡便な手法で取得したデータをもとに、う蝕、及び、歯周病の進行状態に係る予測結果を提供できるシステムを提供することを課題とする。
また、本発明は、サーバ装置、クライアント装置、バイオセンサ、バイオセンサセット、データ取得装置、及び、プログラムを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] サーバ装置、クライアント装置、及び、データ取得装置を有し、
上記クライアント装置、及び、上記データ取得装置は、インターネットを含むコンピュータネットワークを介して上記サーバ装置とそれぞれ通信可能に構成され、上記データ取得装置は、電子源と患者のだ液とを含む試験液の電気化学特性と、上記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態とを含む訓練データと、を取得し、上記訓練データを上記サーバ装置に送信し、上記サーバ装置は、上記訓練データに含まれる電気化学特性から得られた特徴量と上記進行状態とに基づいて学習を行い、上記特徴量を説明変数とし、上記進行状態を目的変数とする分類器を生成し、上記クライアント装置は、上記電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を測定し、テストデータを取得し、上記テストデータを上記サーバ装置に送信し、上記サーバ装置は、更に、上記テストデータを上記分類器に適用して、上記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態を予測して、予測の結果を上記クライアント装置に送信し、上記クライアント装置に表示させるよう促す、システム。
[2] 電子源と患者のだ液とを含む試験液の電気化学特性と、上記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態とを含む訓練データをデータ取得装置から受信する訓練データ受信部と、上記電気化学特性から得られた特徴量と上記進行状態とに基づいて学習を行い、上記特徴量を説明変数とし、上記進行状態を目的変数とする分類器を生成する分類器生成部と、上記電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を含むテストデータをクライアント装置から受信するテストデータ受信部と、上記テストデータを上記分類器に適用して、上記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態を予測する予測部と、上記予測の結果をクライアント装置に返送し、クライアント装置に表示するよう促す結果送信部と、を有するサーバ装置。
[3] 電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を測定する検体測定部と、上記電気化学特性を含むテストデータをサーバ装置に送信するテストデータ送信部と、上記サーバ装置において上記テストデータを分類器に適用することで得られた上記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態の予測の結果を、上記サーバ装置から受信する結果受信部と、上記結果を表示する出力部と、を有するクライアント装置であって、上記分類器は、データ取得装置によって取得された、電子源と患者のだ液とを含む試験液の電気化学特性と、上記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態とを含む訓練データにおける上記電気化学特性から得られた特徴量と上記進行状態とに基づいて学習を行い、上記サーバ装置により生成された、上記特徴量を説明変数とし、上記進行状態を目的変数とする分類器である、クライアント装置。
[4] 上記検体測定部は、上記検体と接触するよう配置された少なくとも2つの電極を有するバイオセンサの上記電極と接続され、上記電極から得られる上記検体の電気化学特性を測定する、[3]に記載のクライアント装置。
[5] 上記バイオセンサは、更に、上記検体を捕捉するための検体捕捉部を有し、上記検体捕捉部には、予め上記電子源が配置され、上記だ液と接触すると上記電子源と上記だ液とによって検体が生成される、[4]に記載のクライアント装置。
[6] 上記検体捕捉部が上記電子源を含む固体電解質からなる、[5]に記載のクライアント装置。
[7] 電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を測定するために使用されるバイオセンサであって、上記検体と接触するように配置された少なくとも2つの電極と、予め上記電子源が配置され、上記だ液と接触して上記電子源と上記だ液とによって検体が生成される検体捕捉部と、を有するバイオセンサ。
[8] 複数の上記電子源が予めそれぞれ配置された[7]に記載のバイオセンサを有するバイオセンサセット。
[9] 電子源と患者のだ液とを含む試験液が収容される二次元アレイ状に配置された複数の試験液収容部ごとに、上記試験液と接触するように上記試験液収容部中に配置された少なくとも2つの電極からなる電極部のそれぞれと電気的に接続され、上記電極部から得られる上記試験液の電気化学特性を測定する、訓練データ測定部と、上記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態の入力を受け付ける操作部と、上記電気化学特性と、上記進行状態とを含む訓練データをサーバ装置に送信する訓練データ送信部と、を有するデータ取得装置。
[10] 複数の上記試験液収容部と上記電極部とが、電極付きマルチウェルプレートを構成する[9]に記載のデータ取得装置。
[11] コンピュータに、電子源と患者のだ液とを含む試験液の電気化学特性と、上記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態とを含む訓練データをデータ取得装置から受信する段階と、上記電気化学特性から得られた特徴量と上記進行状態とに基づいて学習を行い、上記特徴量を説明変数とし、上記進行状態を目的変数とする分類器を生成する段階と、上記電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を含むテストデータをクライアント装置から受信する段階と、上記テストデータを上記分類器に適用して、上記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態を予測する段階と、上記予測の結果をクライアント装置に送信し、クライアント装置に表示するよう促す段階と、を実行させるプログラム。
[12]
コンピュータに、電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を含むテストデータをサーバ装置に送信する段階と、上記サーバ装置によって上記テストデータが分類器に適用されて得られた上記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態の予測の結果を、上記サーバ装置から受信する段階と、上記予測の結果を表示する段階と、を実行させるプログラムであって、上記分類器は、データ取得装置によって取得された、電子源と患者のだ液とを含む試験液の電気化学特性と、上記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態とを含む訓練データにおける上記電気化学特性から得られた特徴量と上記進行状態とに基づいて学習を行い、上記サーバ装置により生成された、上記特徴量を説明変数とし、上記進行状態を目的変数とする分類器である、プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医療機関に通いにくい地域、又は、環境にある被験者にも、より簡便な手法で取得したデータをもとに、う蝕、及び、歯周病の進行状態に係る予測結果を提供できるシステムを提供できる。
また、本発明によれば、サーバ装置、クライアント装置、バイオセンサ、バイオセンサセット、データ取得装置、及び、プログラムも提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るシステムの構成例である。
図2】本発明の実施形態に係るデータ取得装置のハードウェア構成図である。
図3】電極付きマルチウェルプレートの分解斜視図である。
図4】電極付マルチウェルプレートの平面図である。
図5】電極付きマルチウェルプレートのウェルの拡大平面図と、その裏面を示す図である。
図6】データ取得装置の機能ブロック図である。
図7】本発明の実施形態に係るサーバ装置のハードウェア構成図である。
図8】サーバ装置の機能ブロック図である。
図9】プログラムに沿って動作するサーバ装置の制御部の動作フローである。
図10】本発明の実施形態に係るクライアント装置のハードウェア構成図である。
図11】バイオセンサの分解斜視図である。
図12】クライアント装置の機能ブロック図である。
図13】プログラムに沿って動作するクライアント装置の制御部の動作フローである。
図14】本発明の実施形態に係るシステムの動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[システム]
図1は、本発明の実施形態に係るシステムの構成例である。システム100は、データ取得装置101、サーバ装置102、及び、クライアント装置103とを有し、データ取得装置101とサーバ装置102、及び、サーバ装置102とクライアント装置103とは、インターネットを含むコンピュータネットワークを介して相互に通信可能に構成されている。
【0013】
〔データ取得装置〕
図2は、本発明の実施形態に係るデータ取得装置101のハードウェア構成図である。データ取得装置101は、プロセッサ201と、記憶デバイス202と、測定モジュール203と、入力デバイス204と、出力デバイス205と、通信モジュール206と、を有する。プロセッサ201、記憶デバイス202、測定モジュール203、入力デバイス204、出力デバイス205、及び、通信モジュール206は、バス207により接続される。プロセッサ201は、データ取得装置101を制御する。記憶デバイス202は、プロセッサ201の作業エリアとなる。また、記憶デバイス202は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的な、又は、一時的な記録媒体である。
【0014】
記憶デバイス202としては、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、及び、SSD(Solid State Drive)等がある。入力デバイス204は、データを入力する。入力デバイス204としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、及び、スキャナ等がある。出力デバイス205は、データを出力する。出力デバイス205としては、例えば、ディスプレイ、及び、プリンタがある。通信モジュール206は、インターネットを含むコンピュータネットワークと接続し、データを送受信する。
【0015】
測定モジュール203は、電子源と患者のだ液とを含む試験液が収容される二次元アレイ状に配置された複数のウェルと、上記ウェル毎に、上記試験液と接触するように上記ウェル内に配置された少なくとも2つの電極とを有する電極付きマルチウェルプレート208と着脱可能であり、かつ、測定時には、上記電極と電気的に接続するための接続端子;測定時の試験液の温度を制御するための温調ブロック;上記2つの電極間の電位等を調整可能なポテンシオ/ガルバノスタット;等を含むユニットである。
【0016】
図3は、電極付きマルチウェルプレート208の分解斜視図であり、図4は、電極付マルチウェルプレートの平面図である。電極付きマルチウェルプレート208は、プレート上部301と、プレート底部308とから構成されている。
プレート上部301は、上部基材302、外壁303、上部表面304(図4参照)、内面305を有する壁306によって構成されている。電極付きマルチウェルプレート208のプレート上部301は円筒状の貫通孔Hを有し、貫通孔Hの側面は壁306の内面305で画定される。プレート上部301は、プレート上部301とともにウェル307を画定するプレート底部308と組み合わされている。
【0017】
プレート底部308は、下部基板309と、下部基板309上に配置された作用電極400、対電極401、及び、参照電極402とを有しており、プレート上部301と組み合わされることで、貫通孔Hの一方の開口が塞がれ、その結果、上部に開口を有する円筒状のウェル307が画定される。
【0018】
電極付きマルチウェルプレート208は、96個のウェルを有するマルチウェルプレートとして構成されているが、本装置に用いられるマルチウェルプレートが有するウェルの個数は上記に制限されず、例えば、6個、24個、96個、384個、1536個、6144個、及び、9600個等であってもよい。また、各ウェルの体積は、10nL~10mLの範囲であることが好ましい。
【0019】
図4に示したとおり、ウェル307は、内面305を有する壁306、作用電極400、対電極401、及び、参照電極402を有する。図4に示すように、壁306の内面305によって円筒形の体積が画定される。この円筒形の部分に試料溶液が収容される。対電極401は、この円筒形体積の底部で、内面305と円形の作用電極400との間の環状の領域内に延びている。ウェルの形状は円筒形であるが、上記に制限されず、例えば四角柱、及び、ハニカム状の多角柱であってもよい。
【0020】
図5は、ウェルの拡大平面図と、その裏面を示す図である。作用電極400、対電極401、及び、参照電極402は、ウェル内のプレート底部に設けられたビアホールによって、作用電極400、対電極401、及び、参照電極402のそれぞれに対応する裏面の配線501、502、503とそれぞれ接続されており、裏面の各配線は、接続端子504、505、506を有しており、上記電極端子を介して測定モジュール203と接続される。
【0021】
図6は、データ取得装置101の機能ブロック図である。データ取得装置101は、制御部601と、操作部602と、出力部603と、訓練データ測定部604と、訓練データ送信部605と、を有する。
制御部601は、プロセッサ201を含んで構成され、データ取得装置101の動作を制御する。訓練データ送信部605は記憶デバイス202に記憶されたプログラムをプロセッサ201に実行させ、制御された通信モジュール206によって実現される機能である。
また、訓練データ送信部605は訓練データ測定部604によって測定された試験液の電気化学特性と、上記試験液に対応する患者の口腔内のう蝕、及び、歯周病の進行状態のデータとを含む訓練データをサーバ装置102に送信する機能である。
【0022】
訓練データ測定部604は、測定モジュール203を含んで構成され、電子源と患者のだ液とを含む試験液を収容する試験液収容部606と、試験液の電気化学特性を測定するための電極部607とを複数有する電極付きマルチウェルプレート208に接続され、試験液の温度、及び、電極間の電位等を制御しながら試験液の電気化学特性を測定する機能である。なお、試験液収容部606は、上記電極付きマルチウェルプレート208のウェル307を含んで構成され、電極部607は、電極付きマルチウェルプレート208の作用電極400、対電極401、参照電極402、配線501~503、及び、接続端子504~506を含んで構成される。
【0023】
なお、電子源は細菌等の電子伝達機能を補助又は促進可能な化合物であり、特に制限されないが、電子源となる物質としては、有機化合物が好ましく、例えば、グルコース、酢酸、及び、乳酸等が挙げられる。
本発明は、細菌の種類によって種々の電子源に対する電気化学的応答が異なることを知見しており、訓練データが、1つのだ液に対して、複数の電子源を添加した複数の試験液の電気化学特性を含む場合、より精度よく予測が可能である。
【0024】
電気化学特性は、アンペロメトリー法、及び、ボルタンメトリー法等により測定される試験液の特性である。
【0025】
本発明者は、う蝕、及び/又は、歯周病の原因となる細菌の口腔内における活動を電気化学的に検知するための研究を鋭意続けてきた。その結果、上記細菌は、う蝕、及び/又は、歯周病を発生させ得る状態では、細胞外(典型的には細胞外固体)に対して電子移動を行い、これによりエネルギーを得ていることを知見している。
【0026】
具体的には、本発明者らは、酸性条件(pH4)で培養したStreptococcus mutans菌と中性条件で培養した同菌とについて、酸化還元反応特異的に染色した切片を透過型電子顕微鏡観察したところ、酸性条件で培養した場合に特異的に細胞壁の表面、及び、内側の細胞膜が染色されていることを見出している。
【0027】
また、歯周病の原因菌としても知られるCapnocytophaga ochracea菌が、嫌気環境下において特異的に電子伝達酵素を発現することも確かめている。
上記はバイオフィルムの形成、バイオフィルム内での代謝、及び、バイオフィルムの酸性化と電流の発生(細胞外固体への電子移動)とが密接な関係を有することを示している。
【0028】
う蝕、及び/又は、歯周病が発生し、又は、進行している場合、上記の細菌は細胞外固体に余剰の電子を移動させてエネルギーを得ているものと推測される。電子源とだ液とを含む試験液の電気化学特性には、上記の電子の移動が反映される。言い換えれば、試験液の電気化学特性と、う蝕、及び、歯周病の進行状態には密接な関係がある。
【0029】
なお、本明細書において、う蝕、及び、歯周病の進行状態とは、う蝕、及び/又は、歯周病(「う蝕等」ともいう。)の発生の有無、並びに、う蝕等が発生している場合、その進行具合を含むものとする。これはだ液を提供した患者(及び、健常者)の口腔内を歯科医師が診療した結果として提供されるデータである。
【0030】
ここで、電子源は細菌等の電子伝達機能を補助又は促進可能な化合物であり、特に制限されないが、電子源となる物質としては、有機化合物が好ましく、例えば、グルコース、酢酸、及び、乳酸等が挙げられる。
本発明は、細菌の種類によって種々の電子源に対する電気化学的応答が異なることを知見しており、訓練データが、1つのだ液に対して、複数の電子源を添加した複数の試験液の電気化学特性を含む場合、より精度よく予測が可能である。
【0031】
また、操作部602は、入力デバイス204を含んで構成され、ユーザ操作を受け付ける。また、出力部603は出力デバイス205を含んで構成され、各種の情報、及び、データを表示等する。
【0032】
データ取得装置101は、電極付きマルチウェルプレート208に収容された多数の試験液の電気化学特性を順次自動で測定できるため、多くの訓練データをより迅速に取得することができる。また、電極付きマルチウェルプレートが96ウェルプレートである場合、縦8個×横12個の配置で2次元アレイ状に並んだウェルのうち、縦の列(1列×8行)に同一の電子源を予め所定量添加しておき、これを最大12種類配置すると、横の行(12列×1行)に同一のだ液を分注するだけで最大12種類の電子源と組み合わせた試験液が調製できる。この場合、最大で8種類のだ液×12種類の電子源のデータをより迅速に測定できる。
【0033】
う蝕、及び、歯周病の原因となる細菌等は、電子源が異なる(例えば、グルコースとラクテート)とその電気化学的応答も異なることを本発明者は知見しており、1種類のだ液に対して、種々の電子源を添加した際の応答を訓練データとすれば、より正確な予測が可能な点で好ましい。
【0034】
なお、訓練データには患者(う蝕、及び/又は、歯周病の発生している者)のデータが含まれていればよいが、健常者(う蝕、及び、歯周病を発生していない者)のデータも含まれることが好ましい。健常者のデータが訓練データに含まれることにより、得られる分類器を用いて、う蝕、及び、歯周病の発生の有無をより高精度に予測できる。
【0035】
[サーバ装置]
図7は、本発明の実施形態に係るサーバ装置102のハードウェア構成図である。
サーバ装置102は、プロセッサ701と、記憶デバイス702と、入力デバイス703と、出力デバイス704と、通信モジュール705と、を有する。プロセッサ701、記憶デバイス702、入力デバイス703、出力デバイス704、及び、通信モジュール705は、バス706により接続される。プロセッサ701は、サーバ装置102を制御する。記憶デバイス702は、プロセッサ701の作業エリアとなる。また、記憶デバイス702は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的な、又は、一時的な記録媒体である。記憶デバイス702としては、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、及び、SSD(Solid State Drive)等がある。入力デバイス703は、データを入力する。入力デバイス703としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、及び、スキャナ等がある。出力デバイス704は、データを出力する。出力デバイス704としては、例えば、ディスプレイ、及び、プリンタがある。通信モジュール705は、インターネットを含むコンピュータネットワークと接続し、データを送受信する。
【0036】
図8は、サーバ装置102の機能ブロック図である。サーバ装置102は、制御部801と、操作部802と、出力部803と、訓練データ受信部804と、分類器生成部805と、テストデータ受信部806と、予測部807と、結果送信部808とを有する。
制御部801は、プロセッサ701を含んで構成され、サーバ装置102の動作を制御する。訓練データ受信部804と、テストデータ受信部806、及び、結果送信部808は、記憶デバイス702に記憶されたプログラムをプロセッサ701に実行させ、制御された通信モジュール705によって実現される機能である。また、分類器生成部805、及び、予測部807は、記憶デバイス702に記憶されたプログラムをプロセッサ701に実行させることにより実現される機能である。
また、操作部802は、入力デバイス703を含んで構成され、ユーザ操作を受け付ける。また、出力部803は出力デバイス704を含んで構成され、各種の情報、及び、データを表示等する。
【0037】
訓練データ受信部804は、電子源と患者のだ液とを含む試験液の電気化学特性と、前記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態とを含む訓練データをデータ取得装置から受信し、記憶デバイス702に格納する。
訓練データは、患者から取得されただ液ごとに、そのだ液が取得された際のその患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態、並びに、そのだ液と電子源とを含む試験液の電気化学特性とが組み合わされた構造を有するデータの複数からなっている。
【0038】
分類器生成部805は、上記訓練データを用いて、電気化学特性から得られた特徴量と上記進行状態とに基づいて学習を行い、上記特徴量を説明変数とし、進行状態を目的変数とする分類器を生成する。分類器を生成する方法としては特に制限されないが、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、デシジョンジャングル、k近傍法、及び、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習アルゴリズムが使用できる。
【0039】
なお、電気化学特性から特徴量を得る方法としては、電気化学特性の実測値(例えば、アンペロメトリー法により求められる時間と電流応答との関係)における所定の量を特徴量とすることを予め定め、訓練データに含まれる上記量を抽出する方法であってもよい。そのような量としては、例えば、アンペロメトリー法により測定される電流値、ボルタンメトリー法により測定される電流量の変化、及び、これらの数値から計算される値(例えば、電流値の微分値、二階微分値、及び、平均値等)等が挙げられる。
また、上記特徴量、又は、電気化学特性の実測値自体を入力層として、多層ニューラルネットワーク等によって生成される特徴量を用いてもよい。
【0040】
テストデータ受信部806は、電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を含むテストデータをインターネットを含むコンピュータネットワークを介してクライアント装置から受信する。テストデータは、被験者のだ液と電子源とを含む検体の電気化学特性を含んでいる。
【0041】
予測部807は、上記テストデータを上記分類器に適用して、被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態の予測の結果を生成する。結果送信部808は、上記予測の結果をクライアント装置に返送し、クライアント装置に表示するよう促す。
【0042】
(サーバ装置の動作)
サーバ装置の制御部801は、プログラムに従って、以下のとおり動作する。
図9は、上記プログラムに沿って動作する制御部801の動作フローである。
【0043】
制御部801は、訓練データ受信部804を制御して、データ取得装置101から訓練データを受信する(ステップS901)。この訓練データには、電子源と患者のだ液とを含む試験液の電気化学特性と、上記患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態とが含まれている。
次に、制御部801は、分類器生成部805を制御して、上記電気化学特性から得られた特徴量と上記進行状況とに基づいて特徴量を説明変数とし、進行状態を目的変数とする分類器を生成する(ステップS902)。
【0044】
次に、制御部801は、テストデータ受信部806を制御して、クライアント装置103からテストデータを受信する(ステップS903)。このテストデータには、訓練データで使用された試験液に含まれるのと同一の電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性が含まれる。
【0045】
次に、制御部801は、予測部807を制御して、分類器にテストデータを適用して、上記被験者のう蝕、及び、歯周病の進行状態を予測し、予測の結果を生成する(ステップS904)。
【0046】
次に、制御部801は、結果送信部808を制御して、クライアント装置103に上記予測の結果を送信し、クライアント装置に上記結果を表示するよう促す(ステップS905)。
上記が、プロセッサ701を含んで構成される制御部801により実行される。
【0047】
本サーバ装置によれば、クライアント装置が遠隔地、例えば、クライアント装置を使用する被験者が、医療機関への受診が困難な地域に住んでいたり、高齢等であるため被験者が医療機関へ受診するのが困難である場合であっても、被験者のだ液に係るテストデータを受信し、被験者の口腔内の健康状態を簡易的に診断するための情報を提供することができる。
【0048】
[クライアント装置]
図10は、本発明の実施形態に係るクライアント装置103のハードウェア構成図である。クライアント装置103は、プロセッサ1001と、記憶デバイス1002と、測定モジュール1003と、入力デバイス1004と、出力デバイス1005と、通信モジュール1006と、を有する。プロセッサ1001、記憶デバイス1002、測定モジュール1003、入力デバイス1004、出力デバイス1005、及び、通信モジュール1006は、バス1007により接続される。プロセッサ1001は、クライアント装置103を制御する。
【0049】
記憶デバイス1002は、プロセッサ1001の作業エリアとなる。また、記憶デバイス1002は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的な、又は、一時的な記録媒体である。記憶デバイス1002としては、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、及び、SSD(Solid State Drive)等がある。入力デバイス1004は、データを入力する。入力デバイス1004としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、及び、スキャナ等がある。出力デバイス1005は、データを出力する。出力デバイス1005としては、例えば、ディスプレイ、及び、プリンタがある。通信モジュール1006は、インターネットを含むコンピュータネットワークと接続し、データを送受信する。
【0050】
クライアント装置103は、測定モジュール1003を有する。測定モジュール1003は、電子源と被験者のだ液とを含む検体が収容され、上記検体に接するように配置された少なくとも2つの電極を有するバイオセンサ1008と接続可能に構成されている。測定モジュール1003は、バイオセンサ1008が有する電極をクライアント装置103に着脱可能に、かつ、電気的に接続するための接続端子;測定時の検体の温度を制御するための温調ブロック;上記2つの電極間の電位等を調整可能なポテンシオ/ガルバノスタットと;を含むユニットである。
【0051】
図11はバイオセンサ1008の分解斜視図である。バイオセンサ1008は、上部基板1101と、下部基板1102と、下部基板1102上に配置された第1電極1103と、第1電極1103の一方端に配置され、上部基板1101と下部基板1102とが積層された状態で、外部に露出する(下部基板1102と比較して、上部基板1101が短く構成されているため)第1接続端子1104と、下部基板1102上に配置された第2電極1105と、第2電極1105の一方端に配置された第2接続端子1106と、を有している。これらの接続端子が測定モジュール1003の接続端子と接続されることで、電気化学測定が実施される。
【0052】
バイオセンサ1008は、上部基板1101は、主面の一部に貫通孔を有しており、その貫通孔と下部基板1102との表面によって領域CELLが区画される。領域CELLの下部基板1102側(領域CELLの底面)には、第1電極1103と第2電極1105とが露出しており、領域CELLに検体を塗布、及び、滴下等することによって、バイオセンサ1008に検体が捕捉され、検体の電気化学特性を測定することができる。
【0053】
なお、領域CELLに予め所定の電子源を含む固体電解質を配置すれば、電子源を含む上記固体電解質に、被験者のだ液を塗布することにより検体が調製できる点で好ましい。
【0054】
なお、上記電子源は、訓練データに含まれる試験液において使用された電子源と同一である。検体に含有される電子源を試験液に含有される電子源と同一であるため、精度の高い予測の結果が得られやすい。
なお、訓練データが、だ液1種類につき、複数種類の電子源をそれぞれ添加して調製された複数の試験液の電気化学特性を含む場合、テストデータも1種類のだ液に対して、複数種類の電子源をそれぞれ添加して調製された複数の検体の電気化学特性を含むことが好ましい。このようにすることで、更に制度の高い予測の結果が得られやすい。
【0055】
同一の被験者から取得された1種類のだ液に対して複数種類の電子源と組み合わせた複数の検体を準備する場合、上記領域CELLにそれぞれ異なる電子源を含む固体電解質を備えるバイオセンサを、電子源の種類に対応して複数準備すればよい(バイオセンサセット)。これらの複数のバイオセンサに同一の被験者から同一時期に採取しただ液をそれぞれ塗布すればよい。
【0056】
バイオセンサ1008における第1電極1103及び第2電極1105は、例えば、公知のフォトリソグラフィ技術、及び、公知の印刷技術等を用いて形成することができる。
なお、バイオセンサ1008は2つの電極を有しているが、上記に制限されず、3つ以上の電極を有していてもよい。
【0057】
図12は、クライアント装置103の機能ブロック図である。クライアント装置103は、制御部1201と、操作部1202と、出力部1203と、検体測定部1204と、テストデータ送信部1205と、結果受信部1206とを有する。
制御部1201は、プロセッサ1001を含んで構成され、クライアント装置103の動作を制御する。テストデータ送信部1205と、結果受信部1206とは記憶デバイス1002に記憶されたプログラムをプロセッサ1001に実行させ、制御された通信モジュール1006によって実現される機能である。テストデータ送信部1205は検体測定部1204によって測定された検体の電気化学特性を含むテストデータをサーバ装置に送信する機能を有する。また、結果受信部1206は、サーバ装置102から送信された被験者の口腔内におけるう蝕、及び、歯周病の進行状態に係る予測の結果を受信し、これを出力部1203を介して出力する機能を有する。
【0058】
検体測定部1204は、測定モジュール1003を含んで構成され、被験者のだ液を捕捉し、検体を保持するための検体捕捉部1207、及び、検体と接するように配置された2つの電極を有する電極部1208とを有するバイオセンサ1008に接続され、検体の温度、及び、電極間の電位等を制御しながら検体の電気化学特性を測定する機能を有する。
【0059】
検体捕捉部1207は、バイオセンサ1008の上部基板1101の有する貫通孔と下部基板1102の表面とによって区画される領域CELLを含んで構成され、電子源と被験者のだ液とを含む検体を捕捉する機能である。また、電極部1208はバイオセンサ1008の第1電極1103と、第1接続端子1104と、第2電極1105と、第2接続端子1106と、を含んで構成され、測定モジュール1003の接続端子と接続されることで、検体の電気化学測定を実施できる機能である。
【0060】
また、操作部1202は、入力デバイス1004を含んで構成され、ユーザ操作を受け付ける。また、出力部1203は出力デバイス1005を含んで構成され、各種の情報、及び、データを表示等する。
【0061】
(クライアント装置の動作)
クライアント装置の制御部1201は、プログラムに従って、以下のとおり動作する。図13は、上記プログラムに沿って動作する制御部1201の動作フローである。
【0062】
制御部1201は、検体測定部1204を制御して得られた、電子源と被験者のだ液とを含む検体の電気化学特性を含むテストデータを、テストデータ送信部1205を制御して、サーバ装置102に送信する(ステップS1301)。
【0063】
次に、制御部1201は、サーバ装置102によってテストデータが分類器に適用されて得られた被験者の口腔内におけるう蝕、及び、歯周病の進行状態の予測の結果を、結果受信部1206を制御して、サーバ装置102から受信する(ステップS1302)。
なお、この分類器は、データ取得装置101によって取得された、上記検体に含まれる電子源と患者のだ液とを含む試験液の電気化学特性と、患者のう蝕、及び、歯周病の進行状態とを含む訓練データにおける電気化学特性から得られた特徴量と進行状態とに基づいて学習を行い、サーバ装置102により生成された、特徴量を説明変数とし、進行状態を目的変数とする分類器である。
【0064】
次に、制御部1201は、サーバ装置102から受信した上記予測の結果を、出力部1203を制御して表示させる(ステップS1303)。
上記が、プロセッサ1001を含んで構成される制御部1201により実行される。
【0065】
(システム全体の動作フロー)
次に、システム100の全体の動作フローを図1図14を用いて説明する。
図14は、システム100の動作フローの一例である。
まず、データ取得装置101の訓練データ測定部604によって、電子源と患者のだ液とを含む試験液(104)の電気化学特性が測定される。また、ユーザ操作、及び、データベースへのアクセス等によって、だ液を提供した患者の、上記だ液を提供した際の口腔内における、う蝕、及び、歯周病(以下「う蝕等」ともいう。)の進行状態の歯科医師による診断結果(105)の入力をデータ取得装置101の操作部802を介して受け付ける。なお、試験液には、健常者から提供されただ液を含んでもよい。すなわち、訓練データ(106)には、健常者のだ液を含む試験液の電気化学特性、及び、う蝕等の進行状態(う蝕等がない)のデータが含まれていてもよい。
【0066】
次に、データ取得装置101は、測定して得られた上記電気化学特性と、受け付けられた診断結果とから、後述する分類器の生成に用いられる訓練データ(106)を生成する(ステップS1401)。
訓練データ(106)は、電気化学特性と診断結果とが組み合わされた検体ごとのベクトルデータを複数含む。
【0067】
次に、データ取得装置101は、サーバ装置102に向けて訓練データ(106)を送信し、サーバ装置102はデータ取得装置101から、訓練データ(106)を受信する(ステップS1402)。サーバ装置102は、受信した訓練データ(106)に含まれる電気化学特性から得られた特徴量と、上記進行状態とに基づいて学習を行い、上記特徴量を説明変数とし、上記進行状態を目的変数とする分類器(107)を生成する(ステップS1403)。
【0068】
次に、クライアント装置103は、テストデータ(108)を取得するため、データ取得装置101で用いられたのと同一の電子源と、被験者のだ液とを含む検体(109)の電気化学特性を測定する。クライアント装置103は、測定して得られた上記電気化学特性から、テストデータ(108)を生成する(ステップS1404)。テストデータ(108)は、検体ごとにまとめられた電気化学特性を含むベクトルデータである。
【0069】
次に、クライアント装置103は、サーバ装置102に向けてテストデータ(108)を送信し、サーバ装置102はクライアント装置103からテストデータ(108)を受信する(ステップS1405)。サーバ装置102は、テストデータ(108)を分類器(107)に適用し(ステップS1406)、分類器(107)の出力として被験者の口腔内におけるう蝕、及び、歯周病の進行状態に係る予測の結果(110)を生成する。
【0070】
次に、サーバ装置102は、クライアント装置103に向けて予測の結果(110)を送信し、クライアント装置103はサーバ装置102から予測の結果(110)を受信する(ステップS1407)。サーバ装置102は、予測の果(110)をクライアント装置103に表示するよう促し、クライアント装置103は予測の結果を出力部1203を制御して表示する。
【0071】
本発明の実施形態に係るシステムによれば、被験者はだ液を提供する、という非侵襲、かつ、簡易な手順だけで、う蝕等の進行状態に係る予測の結果を得ることができる。また、インターネットを含むコンピュータネットワークを介して予測の結果が提供されるため、医療機関に通いにくい地域、又は、環境にある被験者にも、う蝕、及び、歯周病の進行状態に係る予測結果を提供できる。
【0072】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を有するものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
100 :システム
101 :データ取得装置
102 :サーバ装置
103 :クライアント装置
201 :プロセッサ
202 :記憶デバイス
203 :測定モジュール
204 :入力デバイス
205 :出力デバイス
206 :通信モジュール
207 :バス
208 :電極付きマルチウェルプレート
301 :プレート上部
302 :上部基材
303 :外壁
304 :上部表面
305 :内面
306 :壁
307 :ウェル
308 :プレート底部
309 :下部基板
400 :作用電極
401 :対電極
402 :参照電極
501 :配線
502 :配線
503 :配線
504 :接続端子
505 :接続端子
506 :接続端子
601 :制御部
602 :操作部
603 :出力部
604 :訓練データ測定部
605 :訓練データ送信部
606 :試験液収容部
607 :電極部
701 :プロセッサ
702 :記憶デバイス
703 :入力デバイス
704 :出力デバイス
705 :通信モジュール
706 :バス
801 :制御部
802 :操作部
803 :出力部
804 :訓練データ受信部
805 :分類器生成部
806 :テストデータ受信部
807 :予測部
808 :結果送信部
1001 :プロセッサ
1002 :記憶デバイス
1003 :測定モジュール
1004 :入力デバイス
1005 :出力デバイス
1006 :通信モジュール
1007 :バス
1008 :バイオセンサ
1101 :上部基板
1102 :下部基板
1103 :第1電極
1104 :第1接続端子
1105 :第2電極
1106 :第2接続端子
1201 :制御部
1202 :操作部
1203 :出力部
1204 :検体測定部
1205 :テストデータ送信部
1206 :結果受信部
1207 :検体捕捉部
1208 :電極部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14