IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コスモ精機の特許一覧

<>
  • 特許-ダーツ 図1
  • 特許-ダーツ 図2
  • 特許-ダーツ 図3
  • 特許-ダーツ 図4
  • 特許-ダーツ 図5
  • 特許-ダーツ 図6
  • 特許-ダーツ 図7
  • 特許-ダーツ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ダーツ
(51)【国際特許分類】
   A63B 65/02 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
A63B65/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019208365
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021078698
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】506429259
【氏名又は名称】株式会社コスモ精機
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘明
(72)【発明者】
【氏名】松原 正幸
【審査官】目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-103770(JP,U)
【文献】米国特許第05642887(US,A)
【文献】特開2014-239834(JP,A)
【文献】国際公開第2018/236220(WO,A1)
【文献】L-styleのdimpleは良いんじゃないでしょうか!,FC2 [online],日本,2014年05月26日,インターネット:<URL: http://shelterfromthestorm8.blog.fc2.com/blog-entry-278.html>,[検索日 2020.10.23]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 61/00-65/12
A63H 1/00-37/00
F42B 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側からポイントと、バレルと、シャフトと、フライトとを備えるダーツにおいて、
前記フライトは、複数の羽根を備え、
前記羽根は、薄板の平面部と、前記平面部の表面に厚くなるように隆起した網状の補強突条とを備えることを特徴とするダーツ。
【請求項2】
前記羽根は、前記平面部の両面に網状の前記補強突条が形成されていることを特徴とする請求項1記載のダーツ。
【請求項3】
前記補強突条は前記羽根の略全体にわたって形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のダーツ。
【請求項4】
前記シャフトは、後端に挿入部を備え、
前記フライトは、前端に開口を有する中心軸穴を備え、
前記シャフトと前記フライトとは、前記挿入部が前記中心軸穴内に挿入されて連結固定される、キャップ方式より着脱可能に構成され、
前記中心軸穴は、前記フライトの前端から後端まで形成されていることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載のダーツ。
【請求項5】
ダーツのシャフトとキャップ方式により着脱されるダーツ用フライトにおいて、
複数の羽根を備え、
前記羽根は、薄板の平面部と、前記平面部の表面に厚くなるように隆起した網状の補強突条とを備えることを特徴とするダーツ用フライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁などに用意されたダーツの的(ダーツボード)に矢(ダーツ)を投げて刺さった場所による得点を競うスポーツであるダーツにおいて使用される矢(ダーツ)に関する。
【背景技術】
【0002】
ダーツは、的に刺さる先端側からポイント(チップ)、バレル、シャフト、フライトの構成部品を順に接続して構成される。このような従来のダーツとしては、例えば、下記特許文献1~3に開示されたダーツが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-229285号公報
【文献】特許第4350154号公報
【文献】特開2011-110413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダーツ競技においては、一回の順番で3本のダーツを1本ずつ的に投げるが、その際に同じ得点箇所である狭いエリアを狙い投げることがあり、先に刺さっているダーツのフライトと、次に投げられたダーツのポイントやバレル、フライトとが衝突することも多い。このような衝突が繰り返されると、フライトの羽根に亀裂が発生し、さらに、一度発生した亀裂に衝撃が加わる毎に、どんどん亀裂が大きくなって進行してしまう。
【0005】
また、ダーツが的に刺さらずに床に落下した衝撃でも、フライトの羽根に亀裂が発生して破損してしまうことがある。ダーツのフライトは、ダーツの飛行バランスに大きな影響を与えるパーツであり、フライトの羽根に亀裂が入ると、起動が変わり狙い通りの場所に刺さらない場合が少なくない。
【0006】
このとき、フライトの羽根を薄くしたり、フライトの素材として柔らかい素材を採用したりして、羽根に柔軟性を持たせれば、衝突時にフライトの羽根が変形することで、衝突による衝撃力を逃がして、羽根の破損を防ぐことができる。
【0007】
しかし、柔軟性の高い薄い羽根を採用すると、飛行中に羽根が変形したり、高温な環境で羽根が変形してしまったり、また、製造の際の射出成形時の残留応力により羽根がねじれ変形したりして、飛行が安定しなくなるという問題がある。また、薄い羽根に一度亀裂が発生すると、亀裂が大きくなる進行速度が厚い羽根に比べて早くなってしまう。
【0008】
一方、羽根を厚くしたり、フライトの素材として硬い素材を採用したりすることで、羽根に剛性を持たせれば、衝突による羽根の破損を防ぐこともできる。しかし、先に刺さっているダーツの羽根が変形しなくなると、衝突する次のダーツが弾かれ易くなり、狙った場所に刺さらなかったり、的に刺さらずに落下したりするケースが増えてしまう。また、羽根を厚くしたり硬い素材を採用したりすると、羽根の重量が増し、ダーツの後方が重くなることで、飛行時のバランスが悪くなる場合もある。
【0009】
本願発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、フライトの羽根に柔軟性を持たせつつ、羽根の変形による飛行の不安定化を防ぎ、破損し難いダーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係るダーツは、先端側からポイントと、バレルと、シャフトと、フライトとを備えるダーツにおいて、前記フライトは、複数の羽根を備え、前記羽根は、薄板の平面部と、前記平面部の表面に厚くなるように隆起した網状の補強突条とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るダーツによれば、羽根に補強リブを形成することで、フライトの羽根に柔軟性を持たせつつ、羽根の変形による飛行の不安定化を防ぎ、破損もし難い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係るダーツの正面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るシャフト及びフライトの分解正面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るフライトの断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るフライトの斜視図である。
図5図5は、図2のA-A線断面図である。
図6図6は、図2のB-B線断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態の変形例に係るフライトの構成を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態の変形例に係るフライトの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、ダーツ1は、先端側から順に連結設置されたポイント(チップ)10と、バレル20と、シャフト30と、フライト40とを備えており、本実施形態に係るダーツ1は、フライト40をシャフト30の後端に着脱するにあたってキャップ方式を採用している。
【0014】
ポイント10の後端には、雄ねじが形成されており、ポイント10の後端の雄ねじがバレル20先端に形成された雌ねじにねじ込まれることで、ポイント10とバレル20とがダーツ1の軸と同軸に連結固定される。
【0015】
ポイント10の材料としては、ステンレスやチタン等の金属や、ポリアセタール(POM)やポリアミド(PA)等のプラスチックが使用される。バレル20の材料としては、密度の高い金属であるタングステンの他、ステンレスや銅等が使用される。
【0016】
図2に示すように、シャフト30は、先端に形成された雄ねじ31と後端に形成された挿入部35とを備えている。バレル20の後端には雌ねじが形成されており、シャフト30の先端の雄ねじ31がバレル20の後端の雌ねじにねじ込まれることで、バレル20とシャフト30とが連結固定される。
【0017】
シャフト30の挿入部35は、フライト40の後述する中心軸穴46に挿し込まれる部分であり、シャフト30の本体部分よりも細くなっている。挿入部35の根元(前端)付近には、軸回りに周回して形成された凹溝36が形成されている。
【0018】
シャフト30の材料は、ポロプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)等の合成樹脂や、アルミニウム等の金属が用いられる。合成樹脂を用いる場合には、シャフト30は、射出成形によって一体に形成される。
【0019】
図3図6に示すように、フライト40は、軸回りに90°毎に立設する4つの羽根41と、中心軸において前端から後端まで形成された中心軸穴46とを備えている。なお、図3は、フライト40の中心軸を含む面による断面図、図4(a)は、先端側から見たフライト40の斜視図、図4(b)は、後端側から見たフライト40の斜視図である。
【0020】
羽根41は、その外縁に沿って厚く形成された羽根縁43と、羽根41の表面部45から隆起した網状パターンの補強リブ44とを備えている。補強リブ44は、羽根41の両面に形成されている。
【0021】
薄板である羽根41の厚みは、平面部45の厚みが約0.28mm、補強リブ44の形成された部分の厚みが約0.38mm、羽根縁43の部分の厚みが約0.56mmである。
【0022】
このように、羽根縁43と補強リブ44の部分を厚くすることで、平面部45を薄くして羽根41に柔軟性を持たせながらも、羽根縁43と網状の補強リブ44により羽根41を補強し、衝突等で変形しても元の形状に戻る復元力の強い羽根41を軽量に構成することができる。
【0023】
さらに、羽根縁43を厚くすることで、そもそも亀裂が発生し難く、亀裂が発生したとしても、補強リブ44と平面部45とで厚みが交互に変化していることにより衝撃が緩和され、亀裂の進行を抑えることができる。
【0024】
網状の補強リブ44は、ダーツ1の軸と45°で交差する多数の第一突条と、同軸と135°で交差すると共に第一突条と直交する多数の第二突条とから構成され、網目が方形状である。このように、補強リブ44を構成する突条を交差させて網状に形成することで、射出成形時の樹脂の注入をスムーズに行うことができる。
【0025】
中心軸穴46は、フライト40の前端から後端まで徐々に細くなりながら形成されている。中心軸穴46は、フライト40の前端において開口しており、前端に開口47が形成されているが、後端では閉じている。これは、フライト40の製造時に、樹脂はフライト40の軸口端から注入されるが、注入口であるゲートを大きくして、スムーズに樹脂を金型内に注入するためである。もちろん、中心軸穴46の後端が開口していても良い。
【0026】
シャフト30の挿入部35は、開口47から中心軸穴46内に挿入され、シャフト30とフライト40とがキャップ方式により連結される。中心軸穴46の開口47から所定の長さ奥に入った場所には、ダーツ1の軸方向に垂直な径方向内側に突出した突起48が周方向に6箇所形成されている。
【0027】
突起48の位置は、シャフト30とフライト40との連結時に、軸方向において上述したシャフト30の凹溝36に対向する位置であり、突起48の頂点をつなぐ内径は、連結時に相対する挿入部35の外径よりも僅かに小さい。
【0028】
よって、シャフト30とフライト40との連結接続時には、中心軸穴46内に挿入される挿入部35が突起48に接触して中心軸穴46を僅かに広げるように変形させながら、突起48が凹溝36に到達して嵌まることで、シャフト30の挿入部35がフライト40の中心軸穴46から容易に抜けないように、シャフト30とフライト40とが強固に接続される。
【0029】
フライト40の材料は、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)等の合成樹脂が用いられ、フライト40は、射出成形により一体に形成される。本実施形態では、比重0.9のPPを使用している。
【0030】
ここで、シャフト30の挿入部35は、フライト40の軸方向長さの3分の1程度の長さであり、中心軸穴46の前側3分の1の長さまで挿し込まれる。これに対して、本実施形態において、中心軸穴46をフライト40の軸方向全体にわたって形成しているのは、射出成形時のフライト40の変形を抑えるためである。
【0031】
射出成形においては、薄肉部は冷却時間が短く収縮量が小さいのに対して、厚肉部では冷却時間が長く収縮量も大きい。したがって、フライト40の中心軸において中心軸穴46が設けられている部分と、穴の形成されていない部分とが存在し、厚みの大きく異なる部分が存在すると、先に冷却固化した部分に後から固化する部分が引っ張られた結果、フライト40の羽根41にねじれ変形(羽根41が90°をキープできない)が生じたりしてしまうおそれがある。
【0032】
これに対して、中心軸穴46を前端から後端まで全体にわたって形成し、形状を均一化することで、フライト40の中心軸での冷却時間や収縮量の差を抑え、射出成形時のフライト40の変形の発生を防ぐことができる。
【0033】
以上、本実施形態によれば、フライト40の羽根41に、平面部45よりも厚い網状の補強リブ44を設置することで、羽根41を薄くして柔軟性を持たせることができ、フライト40が他のダーツ1と衝突した際の衝撃を吸収させることができる。また、羽根41を薄くすることで、フライト40を軽量化することができる。
【0034】
また、柔軟性のある羽根41であっても、補強リブ44及び羽根縁43により補強されているため、飛行中等の羽根41の不要な変形を防ぎ、飛行を安定させることができる。また、羽根41を薄くしても、網状の補強リブ44の部分は厚くなるため、射出成形時の樹脂の注入をスムーズに行うことができ、さらに、羽根41に亀裂が発生したとしても、亀裂の進行を抑えることができる。
【0035】
続いて、本実施形態の変形例1~4について、図7及び図8を参照しながら説明する。変形例1~4に係るフライト40',40'',40''',40''''は、補強リブ44',44'',44''',44''''の構成が上記実施形態と異なるが、その他の構成は、上記実施形態と同様であるため、異なる部分を中心に説明する。
【0036】
図7(a)は、変形例1に係る補強リブ44'、図7(b)は、変形例2に係る補強リブ44''、図8(a)は、変形例3に係る補強リブ44'''、図8(b)は、変形例4に係る補強リブ44''''の構成を示す。
【0037】
変形例1に係る補強リブ44'は、ダーツ1の軸と平行な第一突条と、同軸に垂直な第二突条とから構成され、網目が方形状である。変形例2に係る補強リブ44''は、ダーツ1の軸と45°で交差する多数の第一突条と、同軸と135°で交差すると共に第一突条と直交する多数の第二突条と、同軸に垂直な第三突条とから構成され、網目が三角形状である。
【0038】
変形例3に係る補強リブ44'''は、ハニカム構造の突条から構成され、網目が六角形状である。変形例4に係る補強リブ44''''は、円弧状の突条から構成され、網目は円弧を組み合わせた形状である。変形例1~4によれば、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0039】
以上、変形例を含めて本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、ダーツを構成する各部材の形状やサイズは適宜変形可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、ダーツを構成する部材であるポイント、バレル、シャフト及びフライトは別体であり、これらを連結固定してダーツを構成したが、構成部材の一部や全部が一体に形成されていても良い。例えば、シャフトとフライトとが射出成形により最初から一体に形成されていても良い。
【0041】
また、上記実施形態では、フライトは4枚の羽根を備えているが、2枚や3枚、5枚以上であっても良い。
【0042】
また、羽根の羽根縁、補強リブ及び平面部の厚みも適宜変更可能であり、羽根縁及び補強リブが平面部よりも厚ければ良い。但し、羽根の周縁部が最も破損し易いため、上記実施形態のように、補強リブよりも羽根縁を厚くするのが望ましい。
【0043】
また、上記実施形態では、羽根縁、補強リブ及び平面部の厚みを全て同じサイズにしているが、場所によって厚みを変えるようにしても良い。例えば、羽根の平面部の厚みについて、後側半分を前側半分より厚くするようにしても良い。
【0044】
また、上記実施形態では、羽根の略全体にわたって、補強リブを設置しているが、全体に設置しなくても良い。例えば、羽根の半分の領域を薄くして補強リブを設置し、残りの半分は羽根を厚くするようにしても良い。
【0045】
但し、羽根を薄くして軽量化及び柔軟性を持たせるためには、羽根の半分以上の領域に網状の補強リブを形成することが望ましく、さらに望ましくは、3分の2以上の領域に補強リブを形成することが望ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、羽根の両面に補強リブを形成しているが、片面だけに形成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 ダーツ
10 ポイント
20 バレル
30 シャフト
31 雄ねじ
35 挿入部
36 凹溝
40 フライト
41 羽根
43 羽根縁
44 補強リブ
45 平面部
46 中心軸穴
47 開口
48 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8