(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ボルトヘッドキャップ
(51)【国際特許分類】
F16B 37/14 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
F16B37/14 E
(21)【出願番号】P 2020021394
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】392035341
【氏名又は名称】共和ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】寺阪 剛
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-227819(JP,A)
【文献】特開平11-311232(JP,A)
【文献】実開昭57-190797(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0076803(KR,A)
【文献】実開平06-058226(JP,U)
【文献】実開昭62-009719(JP,U)
【文献】米国特許第06053683(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/14
F16B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が閉塞され下端に開口を有し、ボルトヘッドに被覆される防錆用のボルトヘッドキャップであって、
前記ボルトヘッドに被覆される本体部の下に、前記ボルトヘッドの下に位置する座金に被覆される裾部が連設され、
前記本体部と前記裾部が柔軟性を有する材料で形成されるとともに、
前記裾部の下端には、ボルト締結部の表面に当接する下端当接部が形成され、
前記本体部の内周面と前記裾部の内周面の少なくともいずれか一方に、周方向に連続して環状をなし、前記ボルトヘッド又は前記座金の外周面に圧接して変形するリブが形成され、
前記リブが上下に間隔をあけて複数配設され
、
前記リブが、前記本体部の内周面と前記裾部の内周面の双方に形成された
ボルトヘッドキャップ。
【請求項2】
前記リブが縦断面半円形である
請求項
1に記載のボルトヘッドキャップ。
【請求項3】
前記リブが前記内周面のうちの下部寄りに形成された
請求項1
または請求項2に記載のボルトヘッドキャップ。
【請求項4】
前記本体部の内周面が横断面六角形であり、前記裾部の内周面が横断面円形であり、
前記本体部の内径が前記ボルトヘッドの外径よりも、前記裾部の内径が前記座金の外径よりも小さく形成された
請求項1から請求項
3のうちいずれか一項に記載のボルトヘッドキャップ。
【請求項5】
複数の当該ボルトヘッドキャップが、外周面に形成された柔軟性な紐状の連結部によって接続された
請求項1から請求項
4のうちいずれか一項に記載のボルトヘッドキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、締結されたボルトの頭部に被覆して防錆をはかるボルトヘッドキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
上述のようなボルトヘッドキャップとして、上端が閉塞され下端に開口を有し、内周面がボルトヘッドに合わせて横断面六角形に形成されたキャップが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、錆の発生を有効に防止できるように、キャップの内壁に座金付ねじのネックに嵌合する抜け止を凸設したものが開示されている。抜け止が嵌合することによって、外れなくなるというものである。
【0004】
しかし、このキャップの抜け止めは嵌合するものであって、キャップを嵌めても隙間ができ、止水は行えない。
【0005】
防錆目的のものではないが、下記特許文献2には、開口端面付近に内側に突設した環状の保持部が形成されたキャップが開示されている。キャップをボルトヘッドに嵌め込むと、保持部は押しつぶされて変形した部分の摩擦力や、元に戻ろうとする弾性力によってボルトヘッドを締め付け保持する。このため、外れにくいキャップとなる。
【0006】
このキャップの保持部は押しつぶされて変形する保持部を有するものの、変形する部分はボルトヘッドの6個の角部に対応する部分だけである。このため、このキャップでも積極的な止水は行えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平6-58226号公報
【文献】特開2006-64115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、外れにくくできるうえに、積極的に止水を行って防錆効果を高めることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、上端が閉塞され下端に開口を有し、ボルトヘッドに被覆される防錆用のボルトヘッドキャップであって、前記ボルトヘッドに被覆される本体部の下に、前記ボルトヘッドの下に位置する座金に被覆される裾部が連設され、前記本体部と前記裾部が柔軟性を有する材料で形成されるとともに、前記裾部の下端には、ボルト締結部の表面に当接する下端当接部が形成され、前記本体部の内周面と前記裾部の内周面の少なくともいずれか一方に、周方向に連続して環状をなし、前記ボルトヘッド又は前記座金の外周面に圧接して変形するリブが形成され、前記リブが上下に間隔をあけて複数配設され、前記リブが、前記本体部の内周面と前記裾部の内周面の双方に形成されたボルトヘッドキャップである。
【0010】
この構成では、キャップをボルトヘッドに嵌めると全体が柔軟に変形しながら本体部がボルトヘッドを、裾部が座金を覆い、裾部の下端当接部がボルト締結部の表面に当接して、キャップの内側と外側を隔絶する。同時に、上下に間隔をあけて配設された本体部又は裾部の内周面の複数のリブが、対向するボルト又は座金の外周面に圧接して変形し、抜け止めと止水を行う。リブ同士の間隔は並設された各リブの変形を十分に行わせる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、座金を覆い下端当接部を有する裾部を設けたうえに、ボルトヘッドや座金の外周面に圧接して変形する複数本のリブを備えたので、より高い防錆効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図8】ボルトヘッドとボルトヘッドキャップの寸法さを示す側面図。
【
図9】連結部をそなえたボルトヘッドキャップの斜視図。
【
図10】連結部をそなえたボルトヘッドキャップの平面図。
【
図11】他の例に係るボルトヘッドキャップの断面図と底面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0014】
図1に、ボルトヘッドキャップ11(以下、「キャップ」という)の使用状態を示す。この図に示したようにキャップ11は、上端が閉塞され下端に開口を有する構造であり、締結されたボルト12、例えば高力ボルトのボルトヘッド12aと、その下の座金13を被覆してボルト12の防錆を行うものである。
【0015】
キャップ11は、全体がゴムや合成樹脂のような柔軟性を有する材料で構成されている。好適には、シリコーンゴムが用いられる。
【0016】
図2はキャップ11の斜視図、
図3はその平面図、
図4はその片側断面図を示している。
図4の断面部分は、
図3のA-A位置で切断したものである。これらの図に示すようにキャップ11は、六角のボルトヘッド12aに被覆される本体部21を備えている。本体部21は、外周面21aも内周面21bも横断面形状が六角形である。
【0017】
本体部21の下には本体部21よりも径が大きくボルトヘッド12aの下に位置する座金13に被覆される裾部22が連設されている。裾部22は、外周面22aも内周面22bも横断面形状が円形である。
【0018】
本体部21と裾部22は、いずれも被覆対象の全体を被覆できる大きさに形成される。このため、裾部22の下端には、
図1に示したように、ボルト12によって締結された部分であるボルト締結部31の表面31aに当接する下端当接部23が形成されている。
【0019】
このような本体部21の内周面21bと裾部22の内周面22bにリブ25が形成されている。リブ25は、ボルトヘッド12a又は座金13の外周面に圧接して変形するものであり、周方向に連続してエンドレスの環状である。本体部21のリブ25は平面視六角形であるのに対して、裾部22のリブ25は平面視円形に形成される。
【0020】
このリブ25は上下に間隔をあけて複数配設されている。図示例では、2本のリブ25(25a,25b)が形成されている。
【0021】
またリブ25は、内周面21b,22bのうちの下部寄りに形成されている。下部寄りではあるが、下のリブ25bの下には、リブのない空間部21c,22cが形成される。
【0022】
リブ25の断面形状は適宜設定し得るが、図示例では縦断面半円形である。また、すべてのリブ25の大きさ、つまり断面の大きさは同一である。リブ25の大きさと硬さは、被着時にリブ25のほとんど潰れて平らになるように設定するとよい。
【0023】
このような構成のキャップ11は、被着対象のボルトヘッド12aと座金13よりも若干小さめに形成されている。つまり本体部21の内径はボルトヘッド12aの外径よりも、裾部22の内径は座金13の外径よりも小さく形成されている。
【0024】
キャップ11の本体部21や裾部22の大きさと、リブ25の大きさ及び配置について、一例をあげて次に具体的に説明する。
【0025】
図5の(a)に、被着対象のボルトヘッド12aの平面図を、
図5の(b)にボルトヘッド12aと座金13の正面図を示す。
【0026】
M22(d1=22mm)の高力ボルトを例に示すと、ボルトヘッド12aの二面幅Aは36mm、対角距離Bは41.6mm、頭部高さHは14mmである。座金13は、外径Dが44mm、厚さtが6mmである。
【0027】
このようなボルトヘッド12aと座金13に対してキャップ11は、底面図である
図6、
図3のB-B断面図である
図7に示したように、全体の基準肉厚t2は2mmに設定されている。
【0028】
本体部21の二面幅に対応する外径の幅A1は、39.5mm、内径の幅A2は35.5mmである。本体部21の対角距離に対応する内径の幅B2は41mmである。本体部21の内部高さH2は14.5mmである。
【0029】
裾部22の外径D2は47.5mmであり、内径D3は43.5mmである。裾部22の内部高さH3は6mmである。
【0030】
リブ25の大きさと配置は、
図7に示したように、本体部21と裾部22の双方において同じである。つまり、リブ25の幅(直径)wは1mmであり、突出高さhは0.5mmである。2本配設されたリブ25同士の間隔w2は、リブ25の幅wに等しい1mmである。2本のリブ25のうち下のリブ25bより下の前述した空間部21c,22cの高さh1は、リブ25の幅wに等しい1mmである。
【0031】
このように、ボルトヘッド12aの二面幅Aが36mmであるのに対して、本体部21の二面幅に対応する内径の幅A2は35.5mmである。ボルトヘッド12aの対角距離Bが41.6mmであるのに対して、本体部21の対角距離に対応する内径の幅B2は41mmである。また、座金13の外径Dが44mmであるのに対して、裾部22の内径D3は43.5mmである。このようにキャップ11の内周面21b,22bのほうがボルトヘッド12aや座金13の外径よりも若干小さい。
【0032】
一方、ボルトヘッド12aの頭部高さHが14mmであるのに対して本体部21の内部高さH2は14.5mmであって、高さについてはキャップ11のほうがボルトヘッド12aよりも若干大きい。また座金13の厚さtが6mmであるのに対して、裾部22の内部高さH3はそれと同じ6mmである。
【0033】
このため、ボルトヘッド12aと座金13の側面形状にキャップ11の断面形状を重ねると
図8に示したようになる。
図8中、仮想線はキャップ11を示す。
【0034】
上述例のM22以外の大きさのボルト12に使用されるキャップ11の大きさは、硬度を考慮しつつ、上述した寸法に準じて設定される。
【0035】
以上のように構成されたキャップ11は、
図1に示したようにボルトヘッド12aと座金13に被せて使用される。
【0036】
被着させる際には、本体部21の横断面六角形の向きをボルトヘッド12aの向きに合わせて被せる。そしてキャップ11の内部のエアを抜くように、本体部21内の天井面をボルトヘッド12aの上面に押し当て、裾部22の下端当接部23はボルト締結部31の表面31aに押し付ける。
【0037】
このとき、きつめに設定された裾部22と本体部21の内周面22b,21bは対向部位に密着する。同時に裾部22と本体部21の内周面22b,21bに形成されたリブ25は、ボルトヘッド12aと座金13に対する被着によって、座金13又はボルトヘッド12aの外周面に強く当接し、圧縮変形させられる。
図1中、ドットは圧力がかかっている様子を示している。
【0038】
このようにリブ25は強く接することになるが、リブ25の縦断面形状は半円形であるので、被着に際して引っかかったりして損傷するようなことはない。円滑な被着動作が可能であり、圧縮された状態においては周方向全体に均等な密着力を得られる。
【0039】
また、上下に並んだ2本のリブ25のうち下のリブ25bより下には空間部21c,22cが形成されているので、本体部21と裾部22の下端面の形状に不測の変形が生じることを回避できる。換言すれば、本体部21の下端面は座金13の上面に、裾部22の下端面である下端当接部23はボルト締結部31の表面31aに対して確実に面接触させることができる。
【0040】
上下のリブ25同士の間隔は、双方のリブ25が圧縮されて十分に変形することを許容し、対向部位に対する密着性が高められる。しかも、リブ25は本体部21と裾部22の双方に形成されているうえ、内周面21b,22bのうちの下部寄りに形成されているので、リブ25よりも上の広い部位を吸盤のようにボルトヘッド12aや座金13に対して良く密着させることができる。この結果、高い抜け止め性と止水性が得られ、防錆効果を高めることができる。
【0041】
リブ25の本数は2本であるが、前述のようにリブ25同士の間隔などとの協働で対向部位に対する高い密着性が得られ、本体部21や裾部22の内周面21b,22bの広い面積をとらずとも確実な効果が期待できる。
【0042】
このようなキャップ11は単体で使用されるだけではなく、複数を一つのまとまりとして使用できる構成にすることもできる。すなわち
図9、
図10に示したように、複数のキャップ11を、外周面22aに形成された柔軟性な紐状の連結部27によって接続して一群のボルトヘッドキャップ11aとしてもよい。
【0043】
連結部27は、縦断面方形であり、キャップ11と一体成形されている。連結部27の端部は裾部22の外周面22aの一箇所又は相対向する二箇所に接続されている。連結部27の平面視形状は適宜設定し得るが、図示例では、たてよこ等間隔に方形状に配列されるキャップ11を一方の角に位置するキャップ11から、対角線上に位置する他方の角に位置するキャップ11に向けて一筆書き状に連結するように形成される。
【0044】
具体的には、連結部27はボルト締結部31のボルトヘッド12a間隔の違いに対応しやすいように、キャップ11の間隔を変更し得る形状である。この例の連結部27は裾部22の径方向に延びる接続端部27aと、接続端部27aに直交する方向に延びる横線部27bと、横線部27b同士を接続し接続端部27aと平行に延びる縦線部27cを有している。
【0045】
このように連結部27を備えた一群のボルトヘッドキャップ11aは、一部のボルト12が遅れ破壊を起こしてボルトヘッド12aが脱落しても、連結部27でつながれているので、ボルトヘッド12aの落下を防止できる。前述のようにキャップ11は高い抜け止め性を有するので、一つのキャップ11がボルトヘッド12aと一緒に落下したとしても、隣のキャップ11がつられて脱落してしまうことはない。このため防錆効果を維持できる。
【0046】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用できる。
【0047】
たとえば本体部21は内周面21bだけではなく外周面21aも横断面六角形としてもよい。
【0048】
またリブ25は、本体部21のみ又は裾部22のみに形成する構成としてもよい。リブ25の本数は3本以上であってもよい。リブ25の本数を本体部21と裾部22で違えてもよい。この場合、本体部21又は裾部22のリブの本数を複数ではなく1本にしてもよい。
【0049】
裾部22の下端には、外周斜め下に向けて延びるフィンを形成したり、環状のリブを形成したりすることもできる。
【0050】
連結部27の形状は、前述例の形状以外の形状であってもよい。
【0051】
他の例係るキャップ11の断面図である
図11の(a)に示したように、下端当接部23にリブ26を形成してもよい。リブ26は断面半円形であり、その底面視形状は、底面図である
図11の(b)に示したように、下端当接部23と同じ円形である。
【0052】
なお、
図8に示したように、キャップ11の内周面21b,22bのほうがボルトヘッド12aや座金13の外径よりも若干小さい。また、キャップ11の本体部21の内部高さH2はボルトヘッド12aよりも若干大きく、裾部22の内部高さは座金13の厚さと同じであって、前述したようにキャップ11はボルトヘッド12aや座金13、ボルト締結部31の表面31aに対して密着させることができるように形成されている。
【0053】
このような構成のキャップ11では、リブ26がボルト締結部31の表面31aに対する密着性がより良好になる。
【符号の説明】
【0054】
11…ボルトヘッドキャップ
12a…ボルトヘッド
13…座金
21…本体部
22…裾部
21b,22b…内周面
23…下端当接部
25…リブ
27…連結部