(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】軒天換気構造体及び軒天換気部材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20231211BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20231211BHJP
E04B 9/02 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
E04B1/70 E
E04B1/94 G
E04B9/02 300
(21)【出願番号】P 2021173611
(22)【出願日】2021-10-25
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592114080
【氏名又は名称】株式会社ハウゼコ
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(72)【発明者】
【氏名】神戸 睦史
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-031640(JP,A)
【文献】実開昭64-029441(JP,U)
【文献】特開2013-044086(JP,A)
【文献】特許第7262158(JP,B1)
【文献】特開2018-044341(JP,A)
【文献】特開2018-053704(JP,A)
【文献】特開2006-144496(JP,A)
【文献】特開2014-156704(JP,A)
【文献】特開2009-102806(JP,A)
【文献】特開2019-065533(JP,A)
【文献】特開2021-017704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/70
E04B 1/94
E04B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁材と破風下地材との間の部分に設置する軒天換気構造体であって、
前記外壁材の内方側に対して垂直方向に延びる第1垂直部と、前記第1垂直部の上端側に接続され、外方に向かって水平方向に延びる第1水平部と、前記第1水平部の外方側に接続され、前記外壁材の上端部の外方側に対して垂直下方に延びる第2垂直部と、前記第2垂直部の下端側に接続され、外方に向かって水平方向に延びると共に長手方向に所定間隔で複数の開口が形成された第2水平部と、前記第2水平部の外方側に接続され、前記破風下地材の内方側に対して垂直上方に延びる第3垂直部と、前記第3垂直部から外方に向かって延びると共に前記破風下地材の下面を被覆する外方片とからなる軒天部材と、
前記第2垂直部の内面と前記第3垂直部の内面との間に取り付けられ、前記長手方向に延びる棒形状を有し、通気機能を有する通気部材とを備えた、軒天換気構造体。
【請求項2】
前記軒天部材は、金属板を折り曲げて形成され、前記外方片は、前記第2水平部の外方端部から連続して水平方向に延びて折り返し、前記第3垂直部の下端部に連続する、請求項1記載の軒天換気構造体。
【請求項3】
前記通気部材は、前記第2垂直部の内面と前記第3垂直部の内面との間に装着され、前記第2水平部から上方に離れた位置に通気孔が形成された通気部品を少なくとも1つ備える、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の軒天換気構造体。
【請求項4】
熱膨張材
が、前記通気部品の内部であって前記開口と前記通気孔との間に配置される、請求項3記載の軒天換気構造体。
【請求項5】
前記通気部材は、前記第2垂直部の内面と前記第3垂直部の内面との間に装着され、短手方向断面が多角形形状を有すると共に下方面から上方面へ貫通する複数の通気路を有する通気部品を少なくとも1つ備える、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の軒天換気構造体。
【請求項6】
熱膨張材
が、前記第1水平部の上面に配置される、請求項5記載の軒天換気構造体。
【請求項7】
家屋の自然換気に用いられる軒天換気部材であって、
垂直方向に延びる第1垂直部と、第1垂直部の上端側に一方端部側が接続されて水平方向に延びる第1水平部と、第1水平部の他方端部側に上端側が接続されて垂直下方に延びる第2垂直部と、第2垂直部の下端側に一方端部側が接続されて前記第1垂直部から離れる側に水平方向に延びると共に長手方向に所定間隔で複数の開口が形成された第2水平部と、前記第2水平部の他方端部側に接続され、垂直上方に延びる第3垂直部と、前記第3垂直部から前記第2水平部の延び方向と同じ方向に延びる外方片とからなる軒天部材と、
前記第2垂直部の内面と前記第3垂直部の内面との間に取り付けられ、前記長手方向に延びる棒形状を有し、通気機能を有する通気部材とを備える、軒天換気部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は軒天換気構造体及び軒天換気部材に関し、特に外壁材と破風下地材との間に設置する軒天換気構造体及び軒天換気部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軒天に設置される軒天換気構造体として、特許文献1に示すものが存在している。
【0003】
図9は、特許文献1に示す従来の軒天換気構造体の断面模式図であり、
図10は、
図9に示した軒天換気構造体の軒天部分への取付状態を示した概略端面図である。
【0004】
まず、
図9を参照して、軒天換気構造体90は、鋼板のプレス加工によって形成された軒天部材60と、軒天部材60内に取り付けられた合成樹脂よりなる換気部材70とから構成されており、軒天部材60と通気性能及び防水性能を発揮する換気部材70とを一体化したものである。
【0005】
軒天部材60は、長尺形状に形成され、垂直方向に延びる第1垂直部61と、第1垂直部61の上端側に接続され、外方(
図9において左側)に向かって水平方向に延びる第1水平部62と、第1水平部62の外方側に接続され、垂直下方に延びる第2垂直部63と、第2垂直部63の下方側に接続され、外方に向かって水平方向に延びると共に長手方向(
図9の紙面の貫通方向)に所定間隔で複数の開口65が形成された第2水平部64と、第2水平部64の外方側に接続され、垂直上方に延びる第3垂直部66とから構成されている。尚、第1垂直部61の下端部は外方側に折り返されて折り返し片67を構成する。又、第3垂直部66の上端部は内方側に折り曲げられて折り曲げ片68を構成し、軒天部材60の端部から挿入された換気部材70の上方への抜け止め効果を発揮する。
【0006】
換気部材70は、幅方向(
図9の左右方向)の断面が台形形状の多角形形状を有する共に長手方向に延びる棒形状に形成されており、軒天部材60の第2垂直部63の内面と第3垂直部66の内面との間に取付けられると共に、その下方面は軒天部材60の第2水平部64の内面に当接している。換気部材70は各々が凹凸断面形状を有する合成樹脂シートを複数積層した状態で熱融着によって相互に接続して一体化されたものよりなり、一方側面(下方面)から他方側面(上方面)へ貫通する通気孔75が多数形成されているものである。これによって、換気部材70は通気孔75を介しての通気を可能にすると共に、通気孔75を介しての雨水や虫等の侵入を阻止する通気性能及び防水性能を発揮するものとなる。
【0007】
次に、
図10を参照して、軒天換気構造体90は、妻壁下地材80の外面に長手方向(
図10の紙面の貫通方向)に所定間隔で取り付けられた複数の胴縁81の上端部に当接させた第1垂直部61を介してビス止めにより固定される。胴縁81に固定された軒天換気構造体90の第1垂直部61、第1水平部62及び第2垂直部63で構成される空間には妻壁材82が挿入され、軒天換気構造体90の設置状態は安定したものとなっている。
【0008】
こうして軒天換気構造体90に対して妻壁材82が取り付けられた状態で、垂木83の外方側に破風下地材84を設置して破風85を取り付ける。
【0009】
このようにすると、妻壁材82の上端部と破風85の下端部との間のスペースとなる軒天部分が軒天換気構造体90によって完全に塞がれた状態となる。尚、軒天換気構造体90の換気部材70は上述のように水は通しにくく、通気性は高いものであるから、通気状態にあっては、
図10の矢印で示されているように、小屋裏空間86等の建物内の空気は換気部材70の通気孔75及び軒天部材60の開口65の各々を経由して、外方側へと移動する。外部の空気が建物内に侵入する状況の場合には、図の矢印と反対の流れになる。又、換気部材70が組み込まれているため雨水の侵入を確実に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に示す上述のような従来の軒天換気構造体90は、近辺の火災時に軒天換気構造体90が熱により変形して破風85と軒天換気構造体90との間に隙間が生じ、その隙間を介して熱せられた外気や炎が小屋裏空間86等に入り込む虞があるものであった。すなわち、延焼の防止のような防火性能までもを備えるものではなかった。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、防火性能が向上する軒天換気構造体及び軒天換気部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、外壁材と破風下地材との間の部分に設置する軒天換気構造体であって、外壁材の内方側に対して垂直方向に延びる第1垂直部と、第1垂直部の上端側に接続され、外方に向かって水平方向に延びる第1水平部と、第1水平部の外方側に接続され、外壁材の上端部の外方側に対して垂直下方に延びる第2垂直部と、第2垂直部の下端側に接続され、外方に向かって水平方向に延びると共に長手方向に所定間隔で複数の開口が形成された第2水平部と、第2水平部の外方側に接続され、破風下地材の内方側に対して垂直上方に延びる第3垂直部と、第3垂直部から外方に向かって延びると共に破風下地材の下面を被覆する外方片とからなる軒天部材と、第2垂直部の内面と第3垂直部の内面との間に取り付けられ、長手方向に延びる棒形状を有し、通気機能を有する通気部材とを備えたものである。
【0014】
このようにすると、軒天部材と破風下地材との隙間ができにくくなる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、軒天部材は、金属板を折り曲げて形成され、外方片は、第2水平部の外方端部から連続して水平方向に延びて折り返し、第3垂直部の下端部に連続するものである。
【0016】
このように構成すると、外方片が第2水平部の延長上に形成される。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の発明の構成において、通気部材は、第2垂直部の内面と第3垂直部の内面との間に装着され、第2水平部から上方に離れた位置に通気孔が形成された通気部品を少なくとも1つ備えるものである。
【0018】
このように構成すると、軒先換気構造体の防水性能を調節することができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、熱膨張材が、通気部品の内部であって開口と通気孔との間に配置されるものである。
【0020】
このように構成すると、開口と通気孔との間の空間にて熱膨張材が膨張する。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の発明の構成において、通気部材は、第2垂直部の内面と第3垂直部の内面との間に装着され、短手方向断面が多角形形状を有すると共に下方面から上方面へ貫通する複数の通気路を有する通気部品を少なくとも1つ備えるものである。
【0022】
このように構成すると、軒先換気構造体の防水性能を調節することができる。
【0023】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成において、熱膨張材が、第1水平部の上面に配置されるものである。
【0024】
このように構成すると、通気路の上端側で熱膨張材が膨張する。
【0025】
請求項7記載の発明は、家屋の自然換気に用いられる軒天換気部材であって、垂直方向に延びる第1垂直部と、第1垂直部の上端側に一方端部側が接続されて水平方向に延びる第1水平部と、第1水平部の他方端部側に上端側が接続されて垂直下方に延びる第2垂直部と、第2垂直部の下端側に一方端部側が接続されて第1垂直部から離れる側に水平方向に延びると共に長手方向に所定間隔で複数の開口が形成された第2水平部と、第2水平部の他方端部側に接続され、垂直上方に延びる第3垂直部と、第3垂直部から第2水平部の延び方向と同じ方向に延びる外方片とからなる軒天部材と、第2垂直部の内面と第3垂直部の内面との間に取り付けられ、長手方向に延びる棒形状を有し、通気機能を有する通気部材とを備えるものである。
【0026】
このように構成すると、外方片により、軒天部材が被覆できる範囲が増える。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、軒天部材と破風下地材との隙間ができにくくなるので、防火性能が向上する。
【0028】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、外方片が第2水平部の延長上に形成されるので、外方片の形成が容易となる。
【0029】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の発明の効果に加えて、軒先換気構造体の防水性能を調節することができるので、信頼性が向上する。
【0030】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、開口と通気孔との間の空間にて熱膨張材が膨張するので、防火性能が更に向上する。
【0031】
請求項5記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の発明の効果に加えて、軒先換気構造体の防水性能を調節することができるので、信頼性が向上する。
【0032】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の効果に加えて、通気路の上端側で熱膨張材が膨張するので、防火性能が更に向上する。
【0033】
請求項7記載の発明は、外方片により、軒天部材が被覆できる範囲が増えるので、隙間ができにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による軒天換気部材の斜視図である。
【
図2】
図1で示したII-IIラインの拡大断面図である。
【
図3】
図2で示した通気部材を構成する第1の通気部品、第2の通気部品及び第3の通気部品の外観形状を概略的に示す拡大斜視図である。
【
図4】
図1で示した軒天換気部材を妻側の軒天部分に取り付けて軒天換気構造体を構築する取付工程を示す納まり図である。
【
図5】
図4で示した軒天換気構造体の火災時の状態を示す側面模式図である。
【
図6】
図1で示した軒天換気部材を軒先、又は、片流れ棟側の軒天部分に取り付けて軒天換気構造体を構築した状態を示す納まり図であって、
図4の(2)に対応した図である。
【
図7】この発明の第2の実施の形態による軒天換気部材の拡大断面図であって、第1の実施の形態による
図2に対応した図、及び、通気部材の外観形状を示した斜視図である。
【
図8】
図7で示した軒天換気部材を備える軒天換気構造体の火災時の状態を示す側面模式図であって、第1の実施の形態による
図5に対応した図である。
【
図9】特許文献1に示す従来の軒天換気構造体の断面模式図である。
【
図10】
図9に示した軒天換気構造体の軒天部分への取付状態を示した概略端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、この発明の第1の実施の形態による軒天換気部材の斜視図であり、
図2は、
図1で示したII-IIラインの拡大断面図であり、
図3は、
図2で示した通気部材を構成する第1の通気部品、第2の通気部品及び第3の通気部品の外観形状を概略的に示す拡大斜視図である。
【0036】
まず、
図1及び
図2の各々を参照して、軒天換気部材1は、板厚0.35mmの鋼板を折り曲げて形成した軒天部材10と、板厚0.35mmの鋼板を折り曲げて形成した通気部材20とを備えるものである。
【0037】
軒天部材10は、長さ1820mmの長尺形状に形成され、垂直方向に延びる第1垂直部11と、第1垂直部11の上端側に一方端部側が接続されて水平方向に延びる第1水平部12と、第1水平部12の他方端部側に上端側が接続されて垂直下方に延びる第2垂直部13と、第2垂直部13の下端側に一方端部側が接続されて第1垂直部11から離れる側に水平方向に延びると共に長手方向に所定間隔で複数の開口15が形成された第2水平部14と、第2水平部14の外方端部から連続して水平方向に延びて折り返し、第2水平部14の延び方向と同じ方向に延びる外方片17と、外方片17に下端部が連続し、垂直上方に延びる第3垂直部16とからなる。尚、第3垂直部16は外方片17を介して、第2水平部14の他方端部側に接続されている。又、第3垂直部16の上端部は内方側に折り曲げられて折り曲げ片18を更に構成し、通気部材20の上方への抜け止め効果を発揮する。
【0038】
このように構成すると、外方片17が第2水平部14の延長上に形成されるので、板金加工上、外方片17の形成が容易となる。
【0039】
通気部材20は、軒天部材10の長さとほぼ同一の長さで長手方向に延びる棒形状を有し、第2垂直部13の内面と第3垂直部16の内面との間に接着剤や両面テープ等を用いて固定した状態で装着され、通気機能を有するものである。
【0040】
このように構成したことによる効果は後述する。
【0041】
次に、
図3も併せて参照して、通気部材20は、第1の通気部品21と、第2の通気部品22と、第3の通気部品23とを備えるものである。
【0042】
第1の通気部品21は、軒天部材10の長さとほぼ同一の長さで長手方向に延び、第2垂直部13の内面と第3垂直部16の内面との間に挿入自在な棒形状に形成され、短手方向断面が略逆U字形状を有し、一対の側壁部24a及び24bと上面部25とを備える。尚、上面部25には第1の通気部品21の内方(下方)へ切り起こしてなる通気孔26が、長手方向に所定間隔で複数形成されている。又、一方側の側壁部24bの内面には帯状の熱膨張材27が取り付けられている。
【0043】
第2の通気部品22の基本的な形状は、第1の通気部品21と同様である。すなわち、第2の通気部品22は、軒天部材10の長さとほぼ同一の長さで長手方向に延び、第2垂直部13の内面と第3垂直部16の内面との間に挿入自在な棒形状に形成され、短手方向断面が略逆U字形状を有し、一対の側壁部28a及び28bと上面部29とを備え、上面部29には第2の通気部品22の内方(下方)へ切り起こしてなる通気孔30が、長手方向に所定間隔で複数形成されている。
【0044】
第3の通気部品23は、軒天部材10の長さとほぼ同一の長さで長手方向に延び、第2垂直部13の内面と第3垂直部16の内面との間に挿入自在な棒形状に形成され、短手方向断面が略逆J字形状を有し、一方側の第1の側壁部31と、他方側の第2の側壁部32と、上面部33とを備え、上面部33には第3の通気部品23の内方(下方)へ切り起こしてなる通気孔34が、長手方向に所定間隔で複数形成されている。第2の側壁部32の高さは、一方側の側壁部24a、一方側の側壁部28a及び第1の側壁部31の各々の高さの合計とほぼ同一である。
【0045】
軒天部材10への取り付けに当たっては、第1の通気部品21を最下に配置して、第2の通気部品22を第1の通気部品21の上面部25に、第2の側壁部32が側壁部24bと側壁部28bとの外面を覆うようにして第3の通気部品23を第2の通気部品22の上面部29にそれぞれ重ねて通気部材20を構成し、第2垂直部13の内面と第3垂直部16の内面との間に挿入して第2水平部14の内面に第1の通気部品21を載置した状態で通気部材20を固定する。
【0046】
すると、第1の通気部品21の通気孔26は上面部25に形成されているから、通気部材20は、第2水平部14から上方に離れた位置に通気孔26が形成された第1の通気部品21を備えるものとなる。このように構成すると、後述する軒先換気構造体の防水性能を調節することができるので、信頼性が向上する。尚、第2の通気部品22の通気孔30及び第3の通気部品23の通気孔34も第2水平部14から上方に離れた位置に形成されているため、第2の通気部品22及び第3の通気部品23も第1の通気部品21と同様の作用効果を奏する。そしてこれらが協働することで、通気部材20は通気性能と防水性能を発揮する。
【0047】
又、側壁部24bの内面に取り付けられている熱膨張材27は、第1の通気部品21の内部であって開口15と通気孔26との間に配置されるものとなる。このように構成すると、開口15と通気孔26との間の空間にて熱膨張材27が膨張するので、防火性能が更に向上する。
【0048】
図4は、
図1で示した軒天換気部材を妻側の軒天部分に取り付けて軒天換気構造体を構築する取付工程を示す納まり図である。
【0049】
まず、
図4の(1)を参照して、妻側の軒天部分においては、外壁下地材50及び外壁下地材50の外面において長手方向(
図4を貫通する方向)に所定間隔で取り付けられた複数の胴縁51と、小屋裏空間56の上方に配置された垂木53と、垂木53の上に取り付けられた屋根下地材57及び屋根材58とが設置されている。
【0050】
このような状態において、まず、胴縁51の上端部外方側に、軒天換気部材1の第1垂直部11が当接するように軒天換気部材1を配置し、軒天換気部材1を屋根材58の勾配に沿わせた状態でビス止めして、胴縁51に固定する。
【0051】
次に、外壁材52を、胴縁51に固定された軒天換気部材1の第1垂直部11、第1水平部12及び第2垂直部13で構成される空間に挿入するように、軒天換気部材1の下方から上方に移動させる。このようにして外壁材52を軒天換気部材1の第1垂直部11及び第2垂直部13に挟ませて、軒天換気部材1の設置状態を安定させる。
【0052】
次に、
図4の(2)を参照して、軒天換気部材1の外方片17の上面と屋根下地材57の下面との間に木材よりなる破風下地材54を設置する。この時、破風下地材54の外方面が外方片17の外方端部と面一になるように調整する。例えば、破風下地材54の厚みが外方片17の幅を超える場合は外方片17の幅に合わせて破風下地材54を一部切除し、破風下地材54の厚みが外方片17の幅未満の場合は外方片17の外方端部に破風下地材の外方面を合わせて、又は、他の下地材を追加して破風下地材54に厚みを足して、破風下地材54の設置位置を調整する。このように構成すると、破風下地材54の調整がし易く、施工が容易なものとなる。
【0053】
破風下地材54の調整が済んだら、外方片17の下面から破風下地材54に向かってビスを打ち、破風下地材54と外方片17とをビス止めにて固定する。このようにすると、破風下地材54の下面全域が外方片17に覆われる。このように構成したことによる効果は後述する。
【0054】
最後に、釘等を用いて、金属系や窯業系の耐火性を有する素材よりなる破風55を、下端部が破風下地材54の下面よりも下方に位置するように配置して破風下地材54に固定して軒天換気部材1の取付工程を完了し、開口15及び通気部材20を経由して図の矢印のように軒天部分の外方と小屋裏空間56との間で空気の往来を可能とする通気経路38を備える軒天換気構造体2を構築する。このように破風55を配置すると、開口15の下方にて破風55が水切りとして機能するので、軒天換気部材1の内部に雨水が侵入しにくくなる。
【0055】
このような外壁材52と破風下地材54との間の部分に設置する軒天換気構造体2は、外壁材52の内方側に対して垂直方向に延びる第1垂直部11と、第1垂直部11の上端側に接続され、外方に向かって水平方向に延びる第1水平部12と、第1水平部12の外方側に接続され、外壁材52の上端部の外方側に対して垂直下方に延びる第2垂直部13と、第2垂直部13の下端側に接続され、外方に向かって水平方向に延びると共に長手方向に所定間隔で複数の開口15が形成された第2水平部14と、第2水平部14の外方側に接続され、破風下地材54の内方側に対して垂直上方に延びる第3垂直部16と、第2水平部14の外方端部から連続して水平方向に延びて折り返し、第3垂直部16の下端部に連続して、第3垂直部16から外方に向かって延びると共に破風下地材54の下面を被覆する外方片17とからなる軒天部材10と、第2垂直部13の内面と第3垂直部16の内面との間に脱着自在に装着され、長手方向に延びる棒形状を有し、通気機能を有する通気部材20とを備えたものである。
【0056】
このように構成すると、軒天部材10と破風下地材54との隙間ができにくくなるので、軒天換気部材1及び軒天換気構造体2の防火性能が向上する。又、外方片17により、軒天部材10が被覆できる範囲が増えるので、隙間ができにくくなり、軒天換気部材1及び軒天換気構造体2の防火性能が向上する。この防火性能について、より具体的に説明すると以下の通りである。
【0057】
図5は、
図4で示した軒天換気構造体の火災時の状態を示す側面模式図である。
【0058】
図を参照して、破風下地材54には軒天換気部材1の軒天部材10が、外方片17により破風下地材54の下面が覆われ軒天部材10と破風下地材54とに隙間ができにくくなるように固定されており、軒天換気構造体2の近辺にて火災が発生した場合においても、木材であって燃えやすい破風下地材54が外方片17(軒天部材10)に被覆されて露出しにくい。又、熱により軒天部材10が変形しても、外方片17を介して軒天部材10と破風下地材54との固定状態は維持される。したがって、軒天部材10と破風下地材54とに隙間が生じにくく、図の左側の矢印で示すように、隙間から高温の外気や炎が屋内に侵入する事態が発生しにくくなっている。よって、軒天換気部材1及び軒天換気構造体2の防火性能が向上する。
【0059】
又、軒天換気構造体2の周辺温度が所定温度に達すると、第1の通気部品21の内部にて熱膨張材27が発泡し、開口15と通気孔26との空間を埋めるように膨張する。すなわち、熱膨張材27により通気経路38が閉塞され、図の右側の矢印で示すように外気が軒天換気部材1の外方にて遮断されるので、軒天換気部材1及び軒天換気構造体2の防火性能が更に向上する。
【0060】
図6は、
図1で示した軒天換気部材を軒先、又は、片流れ棟側の軒天部分に取り付けて軒天換気構造体を構築した状態を示す納まり図であって、
図4の(2)に対応した図である。
【0061】
まず、
図6の(1)を参照して、軒天換気構造体3は、軒天換気部材1を軒先の軒天部分に取り付けたものよりなる。又、
図6の(2)を参照して、軒天換気構造体4は、軒天換気部材1を片流れ棟側の軒天部分に取り付けたものよりなる。尚、他の構成要素は軒天換気構造体2と同様であるため、ここでの説明は繰り返さない。
【0062】
このように構成すると、外方片17により軒天部材10と破風下地材54との隙間ができにくくなるので、軒天換気構造体3及び軒天換気構造体4の防火性能が向上する。
【0063】
図7は、この発明の第2の実施の形態による軒天換気部材の拡大断面図であって、第1の実施の形態による
図2に対応した図、及び、通気部材の外観形状を示した斜視図である。
【0064】
まず、
図7の(1)を参照して、軒天換気部材6は、第1の実施の形態による軒天換気部材1における通気部材20を、通気部材40に置き換えると共に、熱膨張材の位置を変更したものよりなる。尚、他の構成要素は第1の実施の形態による軒天換気部材1と同様であるため、ここでの説明は繰り返さない。
【0065】
通気部材40は、第2垂直部13の内面と第3垂直部16の内面との間に挿入して、接着剤や両面テープ等を用いて固定した状態で装着され、短手方向断面が台形形状を有すると共に軒天部材10の長さとほぼ同一の長さで長手方向に延びる棒形状に形成された通気部品41を備える。このように構成すると、後述する軒先換気構造体の防水性能を調節することができるので、信頼性が向上する。
【0066】
次に、
図7の(2)も併せて参照して、通気部品41は、各々が凹凸断面形状を有する合成樹脂シートを複数積層した状態で熱融着によって相互に接続して一体化されたものよりなり、一方側面(下方面43)から他方側面(上方面44)へ貫通する複数の通気路45を有する。
【0067】
尚、通気部材40の下方面43は第2水平部14の内面に当接状態となっている。又、熱膨張材47は、第1水平部12の上面に配置されるものである。
【0068】
このように構成したことによる効果は後述する。
【0069】
図8は、
図7で示した軒天換気部材を備える軒天換気構造体の火災時の状態を示す側面模式図であって、第1の実施の形態による
図5に対応した図である。
【0070】
図を参照して、軒天換気構造体7は、第1の実施の形態による軒天換気構造体2における軒天換気部材1を、軒天換気部材6に置き換えたものよりなる。尚、他の構成要素は第1の実施の形態による軒天換気構造体2と同様であるため、ここでの説明は繰り返さない。
【0071】
軒天換気部材6の取付工程が完了し、開口15及び通気部材40を経由する通気経路48を備えた軒天換気構造体7において近辺で火災が発生した場合、図の左側の矢印で示すように、軒天部材10と破風下地材54との隙間から高温の外気や炎が屋内に侵入する事態が発生しにくいので、軒天換気部材6及び軒天換気構造体7の防火性能が向上する。
【0072】
又、軒天換気構造体7の周辺温度が所定温度に達すると、熱膨張材47が発泡して通気路45の上端側で熱膨張材47が膨張する。そして熱膨張材47により通気部材40の上方面44が覆われて通気路45の上端が塞がれる。すなわち、熱膨張材47により通気経路48が閉塞され、図の右側の矢印で示すように、外気が小屋裏空間56に到達する前に遮断されるので、軒天換気部材6及び軒天換気構造体7の防火性能が更に向上する。
【0073】
尚、上記の各実施の形態では、外方片は第2水平部の外方端部から連続して水平方向に延びて折り返し、第3垂直部の下端部に連続するものであったが、第3垂直部から第2水平部の延び方向に延びるものであれば、第3垂直部のどの部分から延びるものであってもよい。このように構成すると、軒天部材と破風下地材との隙間ができにくくなるので、防火性能が向上する。
【0074】
又、上記の各実施の形態では、外方片は折り返して形成されていたが、一枚の平板状に形成されていてもよく、他の形状に形成されていてもよい。
【0075】
更に、上記の各実施の形態では、外方片は破風下地材の下面全域を覆うものであったが、破風下地材の下面の一部を覆うものであってもよい。
【0076】
更に、上記の第1の実施の形態では、通気部材は3つの通気部品を備えるものであったが、第2垂直部の内面と第3垂直部の内面との間に取り付けられ、第2水平部から上方に離れた位置に通気孔が形成された通気部品を少なくとも1つ備えるものであればよい。
【0077】
更に、上記の第1の実施の形態では、通気部材は3つの通気部品を重ねるものであったが、2つ又は4つ以上の通気部品を重ねるものであってもよい。
【0078】
更に、上記の第1の実施の形態では、通気部品の各々は特定形状に形成されていたが、他の形状に形成されていてもよい。
【0079】
更に、上記の第1の実施の形態では、熱膨張材は一方側の側壁部に取り付けられて第1の通気部品の内部に配置されていたが、他方側の側壁部に取り付けられたり、第2の通気部品又は第3の通気部品の内部に配置されたり等、開口と通気孔との間に配置されていればよい。又、通気経路を閉塞できるように、例えば第3の通気部品の通気孔を上方から塞げるように配置してもよい。
【0080】
更に、上記の第1の実施の形態では、通気孔の各々は切り起こしにより形成されていたが、単なる長角孔等、他の形状で形成されてもよい。
【0081】
更に、上記の第2の実施の形態では、通気部材は短手方向断面が多角形形状を有すると共に下方面から上方面へ貫通する複数の通気路を有する通気部品を1つ備えるものであったが、同様の通気部品を複数備えるものであってもよい。
【0082】
更に、上記の第2の実施の形態では、通気部品は特定形状に形成されていたが、短手方向断面において他の多角形形状に形成されていてもよい。
【0083】
更に、上記の第2の実施の形態では、熱膨張材は第1水平部の上面に配置されていたが、通気経路を閉塞できるように、例えば第2水平部と通気部品の下方面との間に空間を設け、その空間内に配置されてもよい。
【0084】
更に、上記の各実施の形態では、通気部品は第2垂直部の内面と第3垂直部の内面との間に挿入され、接着剤等にて固定して装着されるものであったが、第2垂直部の内面と第3垂直部の内面との間に取り付けられていれば、他の方法で取り付けられていてもよく、又、脱着自在であってもよい。
【0085】
更に、上記の各実施の形態では、第3垂直部の上端部に折り曲げ片が更に構成されていたが、無くてもよい。
【0086】
更に、上記の第2の実施の形態では、軒天換気部材の取付及び軒天換気構造体の構築は妻側の軒天部分にて行われていたが、軒先及び片流れ棟側等、他の部分にて行われてもよい。
【0087】
更に、上記の各実施の形態では、軒天部材は鋼板を折り曲げて形成されていたが、他の金属板を折り曲げて形成してもよく、他の素材により形成されていてもよい。
【0088】
更に、上記の第1の実施の形態では、軒天部材及び通気部材の板厚は0.35mmに設定されていたが、他の厚みでもよい。
【0089】
更に、上記の各実施の形態では、軒天部材及び通気部材の各々は所定寸法及び所定素材により形成されていたが、他の寸法及び素材により形成されてもよい。
【0090】
更に、上記の各実施の形態では、外方片は破風下地材の下面を覆って破風下地材に固定されるものであったが、破風の下面を覆って破風に固定されるものであってもよい。このように構成しても、軒天部材と破風とに隙間ができにくくなり、木材よりなる破風下地材が露出しにくくなるから軒天換気部材及び軒天換気構造体の防火性能が向上する。
【符号の説明】
【0091】
1…軒天換気部材
2…軒天換気構造体
3…軒天換気構造体
4…軒天換気構造体
6…軒天換気部材
7…軒天換気構造体
10…軒天部材
11…第1垂直部
12…第1水平部
13…第2垂直部
14…第2水平部
15…開口
16…第3垂直部
17…外方片
20…通気部材
21…第1の通気部品
22…第2の通気部品
23…第3の通気部品
26…通気孔
27…熱膨張材
30…通気孔
34…通気孔
40…通気部材
41…通気部品
43…下方面
44…上方面
45…通気路
47…熱膨張材
52…外壁材
54…破風下地材
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。