IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 原田工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-低背型複合アンテナ装置 図1
  • 特許-低背型複合アンテナ装置 図2
  • 特許-低背型複合アンテナ装置 図3
  • 特許-低背型複合アンテナ装置 図4
  • 特許-低背型複合アンテナ装置 図5
  • 特許-低背型複合アンテナ装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】低背型複合アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20231211BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20231211BHJP
   H01Q 5/335 20150101ALI20231211BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H01Q21/28
H01Q5/335
H01Q1/22 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021201565
(22)【出願日】2021-12-13
(65)【公開番号】P2023087267
(43)【公開日】2023-06-23
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【弁理士】
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋延
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/153179(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 21/28
H01Q 5/335
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の低背型複合アンテナ装置であって、該低背型複合アンテナ装置は、
車両に固定され長手方向が車両進行方向を向くベースプレートと、
前記ベースプレート上に配置され、第1エレメント用給電部及び第2エレメント用給電部を有する回路基板と、
前記ベースプレートに嵌合し、長手方向が車両進行方向を向く稜線部と稜線部の両側から延在する側面部とを有し車両進行方向の正面から見て断面形状が山形のアンテナカバーと、
前記アンテナカバーに収容され、車両進行方向の左右の一方に配置されると共に、車両進行方向正面から見てベースプレートに対して傾斜するように配置され、上端辺が稜線部近傍に配置され、回路基板の第1エレメント用給電部に接続され第1周波数帯用のアンテナとして機能する板状の第1エレメントと、
前記アンテナカバーに収容され、車両進行方向の左右の他方に配置されると共に、上端辺が第1エレメントとは間隔を設けて稜線部近傍に配置され、稜線部からベースプレートに向かって第1エレメントに対向配置され、回路基板の第2エレメント用給電部に接続され第1周波数帯とは異なる第2周波数帯用のアンテナとして機能する板状の第2エレメントと、
を具備することを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第1エレメント及び第2エレメントは、少なくとも上部が車両進行方向の正面から見てハの字形状に配置されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第1エレメント及び/又は第2エレメントは、少なくとも上部がアンテナカバーの側面部に沿って配置されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第2エレメントは、車両進行方向の正面から見てS字形状に屈曲されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第1エレメント及び/又は第2エレメントは、上端辺がアンテナカバーの稜線部近傍で対向するように屈曲されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第1エレメントはベースプレートに対して傾斜するように配置され、第2エレメントはベースプレートに対して垂直に配置されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第2エレメントは、車両進行方向の前後のうちベースプレートが車両に固定される位置に近い側に配置されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第2エレメントは、稜線部から第2エレメント用給電部に向かってテーパー形状を有するボウタイアンテナからなることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置であって、さらに、
前記第1エレメントと第1エレメント用給電部との間に接続されるコイルであって、第1エレメントとコイルの直列回路により第3周波数帯用の共振アンテナとして機能するように調整される、コイルを具備することを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項の何れかに記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第1エレメントは、車両進行方向の左右の一方に配置されると共に、さらに車両進行方向の左右の他方の一部にも配置されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項11】
請求項10に記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第1エレメントの車両進行方向の左右の一方に配置される部分と他方の一部に配置される部分とは、稜線部側で一体的になるように、車両進行方向の正面から見て断面形状が山形となるように形成されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の低背型複合アンテナ装置において、前記第2エレメントは、車両進行方向の左右の他方の一部にも配置される第1エレメントが存在しない位置に配置されることを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【請求項13】
請求項11に記載の低背型複合アンテナ装置であって、さらに、
前記第1エレメントと第1エレメント用給電部との間に接続されるコイルであって、第1エレメントとコイルの直列回路により第3周波数帯用の共振アンテナとして機能するように調整される、コイルを具備し、
前記コイルは、稜線部側で一体的になるように車両進行方向の正面から見て断面形状が山形となるように形成される第1エレメントの下方に配置される、
ことを特徴とする低背型複合アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低背型複合アンテナ装置に関し、特に、車両用の低背型複合アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両には種々のアンテナ装置が搭載されるが、そのようなアンテナ装置として、例えばAM放送及びFM放送が受信可能なAM/FMラジオ用アンテナがある。AM/FMラジオ用アンテナとしては、一般的にロッドアンテナが使用される。ロッドアンテナは、螺線形状の導体からなるエレメント(ヘリカルエレメント)をカバーで被覆したエレメント部とエレメント部を取り付けるためのベース部からなる。
【0003】
このロッドアンテナは、車体に取り付けた際に、エレメント部が車体から大きく突出するため、車両の美観やデザインを損ね、車庫入れや洗車時に破損するおそれがあり、また車外に露出して取り付けられるためエレメント部が盗難に遭うおそれもある。
【0004】
このような問題から、アンテナ装置全体の高さをロッドアンテナより低くすると共に、エレメントをアンテナケースに収容して車外への露出から守り、アンテナ装着後の車両全体のデザインを考慮してアンテナケースをフカヒレ形状(シャークフィン形状)で構成した低背型アンテナ装置が提案されている。このような低背型アンテナ装置は、法規制等との兼ね合いから、高さが70mm以下で、長手方向の長さが200mm前後であるものが多い。
【0005】
しかしながら、このような低背型アンテナ装置には、70mm以下の低姿勢とすることによるアンテナの導体損失(エレメント長の短縮)の影響で放射効率が低下しやすくなり、感度劣化の原因となるという問題がある。さらに、近来では車両にはTELアンテナやGPSアンテナ、車車間・路車間通信用のV2Xアンテナ等、種々のアンテナを車載する複合アンテナ装置とする必要がある。しかしながら、低背型アンテナ装置の内部空間は狭いため、このような複数のアンテナ間の距離が十分に取れず、アンテナ送受信特性が悪化してしまう課題があった。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1では、板状の第2アンテナを第1アンテナの上方に配置すると共に、第1アンテナは、第2アンテナに発生する第1アンテナの周波数帯の定在波の電圧最大点を避けて配置されるアンテナ装置が開示されている。これにより、アンテナ利得の低下を抑制しつつ小型化を図ることが可能なアンテナ装置としている。
【0007】
また、特許文献2では、左右に配置される容量装荷素子の間にDTTB素子が配置され、DTTB素子の給電部にFM波帯をトラップするトラップ回路が接続されるアンテナ装置が開示されている。これにより、FM波帯との干渉を防止しつつアンテナ装置の前後方向の小型化を図ることが可能なアンテナ装置としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】再表2017/141635号公報
【文献】特開2019-012960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、アンテナ装置のさらなる小型化が求められる中、近年では、例えばTELアンテナのさらなる広帯域化が求められTELアンテナが大型化しており、アンテナ送受信特性を確保しながら狭い内部空間へ配置することが可能なアンテナ装置の開発が望まれていた。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、アンテナ送受信特性を確保しながら小型化が可能な低背型複合アンテナ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による低背型複合アンテナ装置は、車両に固定され長手方向が車両進行方向を向くベースプレートと、ベースプレート上に配置され、第1エレメント用給電部及び第2エレメント用給電部を有する回路基板と、ベースプレートに嵌合し、長手方向が車両進行方向を向く稜線部と稜線部の両側から延在する側面部とを有し車両進行方向の正面から見て断面形状が山形のアンテナカバーと、アンテナカバーに収容され、車両進行方向の左右の一方に配置されると共に、車両進行方向正面から見てベースプレートに対して傾斜するように配置され、上端辺が稜線部近傍に配置され、回路基板の第1エレメント用給電部に接続され第1周波数帯用のアンテナとして機能する板状の第1エレメントと、アンテナカバーに収容され、車両進行方向の左右の他方に配置されると共に、上端辺が第1エレメントとは間隔を設けて稜線部近傍に配置され、稜線部からベースプレートに向かって第1エレメントに対向配置され、回路基板の第2エレメント用給電部に接続され第1周波数帯とは異なる第2周波数帯用のアンテナとして機能する板状の第2エレメントと、を具備するものである。
【0012】
ここで、第1エレメント及び第2エレメントは、少なくとも上部が車両進行方向の正面から見てハの字形状に配置されるものであれば良い。
【0013】
また、第1エレメント及び/又は第2エレメントは、少なくとも上部がアンテナカバーの側面部に沿って配置されるものであれば良い。
【0014】
また、第2エレメントは、車両進行方向の正面から見てS字形状に屈曲されるものであれば良い。
【0015】
また、第1エレメント及び/又は第2エレメントは、上端辺がアンテナカバーの稜線部近傍で対向するように屈曲されるものであれば良い。
【0016】
また、第1エレメントはベースプレートに対して傾斜するように配置され、第2エレメントはベースプレートに対して垂直に配置されるものであっても良い。
【0017】
また、第2エレメントは、車両進行方向の前後のうちベースプレートが車両に固定される位置に近い側に配置されるものであれば良い。
【0018】
また、第2エレメントは、稜線部から第2エレメント用給電部に向かってテーパー形状を有するボウタイアンテナからなるものであれば良い。
【0019】
さらに、第1エレメントと第1エレメント用給電部との間に接続されるコイルであって、第1エレメントとコイルの直列回路により第3周波数帯用の共振アンテナとして機能するように調整される、コイルを具備するものであっても良い。
【0020】
また、第1エレメントは、車両進行方向の左右の一方に配置されると共に、さらに車両進行方向の左右の他方の一部にも配置されるものであっても良い。
【0021】
また、第1エレメントの車両進行方向の左右の一方に配置される部分と他方の一部に配置される部分とは、稜線部側で一体的になるように、車両進行方向の正面から見て断面形状が山形となるように形成されるものであれば良い。
【0022】
また、第2エレメントは、車両進行方向の左右の他方の一部にも配置される第1エレメントが存在しない位置に配置されるものであれば良い。
【0023】
さらに、第1エレメントと第1エレメント用給電部との間に接続されるコイルであって、第1エレメントとコイルの直列回路により第3周波数帯用の共振アンテナとして機能するように調整される、コイルを具備し、コイルは、車両進行方向の左右の他方の一部にも配置される第1エレメントが存在する位置の下方に配置されるものであっても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の低背型複合アンテナ装置には、アンテナ送受信特性を確保しながら小型化が可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の低背型複合アンテナ装置を説明するための概略図である。
図2図2は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第1エレメント及び第2エレメントの対向配置の他の例を説明するための概略正面図である。
図3図3は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第1エレメント及び第2エレメントの稜線部近傍の形状の他の例を説明するための概略正面図である。
図4図4は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第2エレメントの他の側面形状の例を説明するための概略側面図である。
図5図5は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第1エレメント及び第2エレメントの配置位置の他の例を説明するための概略上面図である。
図6図6は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第1エレメントの他の例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の低背型複合アンテナ装置を説明するための概略図であり、図1(a)は側面図であり、図1(b)は上面図であり、図1(c)は正面図である。なお、低背型複合アンテナ装置の内部を説明するために、一部断面図とした。図示の通り、本発明の低背型複合アンテナ装置は、ベースプレート10と、回路基板20と、アンテナカバー30と、第1エレメント40と、第2エレメント50とを具備するものである。なお、図1(a)及び図1(b)に示される例では、図面上、左側が車両進行方向である。
【0027】
ベースプレート10は、車両に固定されるものである。ベースプレート10は、長手方向が車両進行方向を向くように車両に配置される。ベースプレート10は、具体的には、例えば樹脂等の絶縁体で形成される所謂樹脂ベースであっても良いし、金属等の導電体で形成される所謂金属ベースであっても良い。また、ベースプレート10は、樹脂と金属のコンポジットベースであっても良い。ベースプレート10には、例えばねじボス11が設けられている。車両のルーフ等に設けられた孔にねじボス11が挿入され、例えば車両室内からナットを用いてルーフ等を挟み込むようにしてベースプレート10がルーフに固定される。ねじボス11には、例えば車両内部とアンテナ装置とを接続する電源ケーブルや信号ケーブル等が挿通される。また、ベースプレート10は、後述のアンテナカバー30により覆われるように構成されている。
【0028】
回路基板20は、ベースプレート10上に配置され、第1エレメント用給電部21及び第2エレメント用給電部22を有するものである。回路基板20には、適宜アンプ回路やフィルタ回路等が設けられ、信号を送受信可能に構成されている。なお、図示例では1枚の回路基板20上に第1エレメント用給電部21及び第2エレメント用給電部22を有する例を示したが、本発明はこれに限定されず、2枚の回路基板を用いてそれぞれ給電部を用いても勿論良い。
【0029】
アンテナカバー30は、ベースプレート10に嵌合するものである。図示例では、アンテナカバー30は、低背型複合アンテナ装置の外形を画定するものである。なお、本発明の低背型複合アンテナ装置はこれに限定されず、例えば、アンテナカバー30がインナーカバーとアウターカバーとからなるものであっても良い。即ち、2重カバーであっても良い。この場合、インナーカバーが回路基板20や後述の第1エレメント40や第2エレメント50を内側に収容するものであり、アウターカバーが外形を画定するものとなる。図1(c)に示されるように、アンテナカバー30は、長手方向が車両進行方向を向く稜線部31と稜線部31の両側から延在する側面部32とを有し、車両進行方向の正面から見て断面形状が山形となるような形状を有している。
【0030】
第1エレメント40は、アンテナカバー30に収容されるものである。第1エレメント40は、回路基板20の第1エレメント用給電部21に接続され第1周波数帯用のアンテナとして機能する板状のものである。第1エレメント40は、車両進行方向の左右の一方に配置されている。具体的には、図1(b)に示されるように、第1エレメント40は、車両進行方向の左側に配置されている。また、図1(c)に示されるように、第1エレメント40は、車両進行方向正面から見てベースプレート10に対して傾斜するように配置されている。具体的には、上端辺41から傾斜面が下方に向かって外側に傾斜するように延在している。そして、第1エレメント40は、上端辺41が稜線部31近傍に配置されている。
【0031】
ここで、第1エレメント40は、所謂容量装荷アンテナエレメントであれば良い。具体的には、第1周波数帯とはAM周波数帯であれば良い。AM周波数帯では、第1エレメント40は、容量アンテナとして機能する。図示例のような容量装荷アンテナエレメントである第1エレメント40は、ベースプレート10に対して高さ方向に間隔を設けて配置されるものであり、給電線25により第1エレメント用給電部21に接続されれば良い。このような第1エレメント40を傾斜するように配置することにより、アンテナ容量を増やすことが可能となる。なお、第1エレメント40は、その長手方向が車両進行方向を向いている。即ち、第1エレメント40の板状の面方向が車両進行方向を向いている。第1エレメント40は、適宜絶縁性のホルダ等によりベースプレートの上で固定されれば良い。また、ホルダ等を用いず、例えばアンテナカバー30の内側面に固定されるように構成されても良い。
【0032】
また、第1エレメント40のエレメント長が第1周波数帯に対応する長さを有するものであっても良い。この場合、第1周波数帯は例えばDTV周波数帯であれば良い。DTV周波数帯では、第1エレメント40は共振アンテナとして機能するものであれば良い。
【0033】
そして、第2エレメント50も、アンテナカバー30に収容されるものである。第2エレメント50は、回路基板20の第2エレメント用給電部22に接続され第1周波数帯とは異なる第2周波数帯用のアンテナとして機能する板状のものである。第2エレメント50は、車両進行方向の左右の他方に配置されている。具体的には、図1(b)に示されるように、第2エレメント50は、車両進行方向の右側に配置されている。なお、本発明はこれに限定されず、第1エレメント40と第2エレメント50は、左右逆に配置されるものであっても良い。また、第2エレメント50は、上端辺51が第1エレメント40とは間隔を設けて稜線部31近傍に配置されている。そして、第2エレメント50は、稜線部31からベースプレート10に向かって第1エレメント40に対向配置されている。ここで、対向配置とは、第1エレメント40及び第2エレメント50の長手方向がそれぞれ車両進行方向を向いて配置されていることを意味する。即ち、第1エレメント40及び第2エレメント50の板状の面方向が、車両進行方向を向いていれば良い。したがって、面同士が平行な面である必要は必ずしもない。第2エレメント50は、適宜絶縁性のホルダ等によりベースプレートの上で固定されれば良い。また、ホルダ等を用いず、例えばアンテナカバー30の内側面に固定されるように構成されても良い。
【0034】
また、図1(a)及び図1(b)に示されるように、第2エレメント50は、第1エレメント40に対して車両進行方向前側にずらして配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。第1エレメント40及び第2エレメント50は、前側が揃うように配置されても良いし、第1エレメント40のほうを第2エレメント50に対して前側にずらして配置されても良い。
【0035】
ここで、第2エレメント50は、例えば広帯域アンテナであれば良い。具体的には、第2周波数帯とはTEL用周波数帯であれば良い。図1(c)に示される例では、第2エレメント50は、車両進行方向の正面から見てS字形状に屈曲されている。このように屈曲させることで、傾斜するように配置される第1エレメント40と相まって、第2エレメント50を上部から下方に向かって第1エレメント40から離れる方向に遠ざけていくことが可能となり、よりエレメント間の距離を離すことが可能となると共に、第2エレメント50のエレメント長を長くすることが可能となる。これにより、狭い空間であっても、第1エレメント40との相互干渉の影響を抑えつつより低い周波数帯まで対応可能となる。
【0036】
ここで、第2エレメント50の側面形状についてより具体的に説明する。再度図1を参照すると、図1(a)に示される通り、第2エレメント50は、稜線部31から第2エレメント用給電部22に向かってテーパー形状を有するボウタイアンテナからなる。図示例では、車両進行方向前側が末広がりな形状を有するものを示した。このような形状とすることで、広帯域化が可能である。また、角を作らず曲線形状とすることで、意図しない共振等を抑えることが可能である。
【0037】
さらに、図1(c)に示されるように、第1エレメント40及び第2エレメント50は、上部が車両進行方向の正面から見てハの字形状に配置されている。具体的には、第1エレメント40のベースプレート10に対して傾斜するように配置されている部分と、これに対向する第2エレメント50の部分が、ハの字形状に配置されている。図示例の第2エレメント50は、S字形状に屈曲されているため、少なくとも上部のみが第1エレメント40とハの字形状となるように形成されている。しかしながら、本発明はS字形状に限定されず、第2エレメント50は、ハの字形状に配置された上部から下部へは垂直に延在するように形成されても良い。
【0038】
また、図1(c)に示されるように、第1エレメント40及び第2エレメント50は、少なくとも上部がアンテナカバー30の側面部32に沿って配置されている。このように、アンテナカバー30の側面部32に沿って配置させることで、第1エレメント40及び第2エレメント50の相互干渉の影響を抑えつつ、狭い空間を有効に用いることが可能となる。なお、本発明はこれに限定されず、第1エレメント40又は第2エレメント50の何れかが側面部32に沿って配置されるように構成されるものであっても良い。
【0039】
ここで、図1(c)の稜線部31近傍を参照すると、第1エレメント40及び第2エレメント50は、上端辺41,51がアンテナカバー30の稜線部31近傍で対向するように屈曲されている。即ち、上端辺41,51のところで容量結合させている。稜線部31近傍で上端辺41,51を近付け対向するように配置することで、第2エレメント50から見ると第1エレメント40の影響を受け、結果として第2エレメント50のエレメント長が長くなったように作用する。即ち、所望のTEL用周波数帯を送受信可能なエレメント長を短くすることが可能となるため、より狭い空間であっても十分なエレメント長のエレメントを配置することが可能となる。なお、第1エレメント40から見ると第2エレメント50の影響は少ない。
【0040】
また、図示例では、第1エレメント40と第1エレメント用給電部21との間に接続されるコイル60を有する例を示した。第1エレメント40とコイル60の直列回路により第3周波数帯用の共振アンテナとして機能するように調整されている。具体的には、第3周波数帯とはFM周波数帯であれば良い。例えば、FM周波数帯で第1エレメント40とコイル60の直列回路が共振アンテナとして機能するように、コイル60のインダクタが適宜選択される。
【0041】
そして、図示の通り、コイル60は、その軸方向がベースプレート10に平行且つ第1エレメント40の長手方向に平行となるように配置されている。このように配置されることで、例えば車種によりコイル60の長さ(巻き数)が変わった場合であっても、コイル60が横向きに配置されているため、横方向へ長さが変わるのみであり、回路基板20からの距離が変わることはない。したがって、コイル60の長さを調整してもアンテナ受信特性の変化も少ないものとなる。なお、本発明はこれに限定されず、コイル60は、第1エレメント40の長手方向に対して直交する方向(上下方向)に配置されても良い。
【0042】
また、図1(b)に示されるように、第2エレメント50は、第1エレメント40に対して車両進行方向前側に対向配置されているが、第2エレメント50の車両進行方向の後側の空きスペースにコイル60が配置されている。これにより、空きスペースを有効に活用すると共に、第2エレメント50に対するコイル60の影響を低減させている。なお、第2エレメント50に対するコイル60の影響を低減できれば、コイル60は、第1エレメント40に対して車両進行方向の前側や前後中央の何れに配置されても良い。
【0043】
本発明の低背型複合アンテナ装置では、このように第1エレメント40及び第2エレメント50を車両進行方向の左右に配置することが可能となった。したがって、アンテナ送受信特性を確保しながら小型化が可能となった。
【0044】
さらに、第1エレメント40及び第2エレメント50の車両進行方向の正面から見た配置については、上述の図示例には限定されない。図2は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第1エレメント及び第2エレメントの対向配置の他の例を説明するための概略正面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では、第1エレメント40と第2エレメント50とを主に示し、他のものは図示を省略した。また、第1エレメント40及び第2エレメント50は、上述の通り、適宜絶縁性のホルダ等によりベースプレートの上で固定されれば良い。また、第1エレメント40は給電線25により回路基板の第1エレメント用給電部に接続されれば良い。図1(c)に示される例では、上部がハの字形状に配置される第1エレメント40及び第2エレメント50を示した。図2に示される例では、第1エレメント40がベースプレートに対して傾斜するように配置される一方、第2エレメント50がベースプレートに対して垂直に配置される例を示した。このように、アンテナカバー30の内部空間の空きスペースに応じて、一方のエレメント、例えば第2エレメント50を垂直に配置したものであっても良い。
【0045】
このように構成されても、第1エレメント40が傾斜するように配置されていることから、第2エレメント50は、上部から下方に向かって第1エレメント40から離れる方向に遠ざけられることになる。アンテナカバー30の内部空間の空きスペースに応じて、適宜第1エレメント40との相互干渉の影響を抑えることが可能となる。なお、図示例とは反対に、例えば第1エレメント40をベースプレートに対して垂直に配置する一方、第2エレメント50をベースプレートに対して傾斜するように配置しても良い。
【0046】
また、図1(c)では、第1エレメント40及び第2エレメントの上端辺41,51がアンテナカバー30の稜線部31近傍で対向するように屈曲される例を示したが、本発明はこれに限定されない。図3は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第1エレメント及び第2エレメントの稜線部近傍の形状の他の例を説明するための概略正面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では、第1エレメント40と第2エレメント50とを主に示し、他のものは図示を省略した。図3に示される例では、第1エレメント40の上端辺41が第2エレメント50側に屈曲される一方、第2エレメント50の上端辺51は第1エレメント40側に屈曲されていない例を示した。第1エレメント40の上端辺41が、車両進行方向の左右の中心を越えて第2エレメント50側に延在している。このように、第1エレメント40及び第2エレメント50の上端辺41,51は、一方のみが屈曲されるものであっても良い。なお、図示例では第1エレメント40の上端辺41が屈曲され第2エレメント50側に延在する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1エレメント40の上端辺41は屈曲されず、第2エレメント50の上端辺51が屈曲され第1エレメント40側に延在するように構成されても良い。
【0047】
また、図4に、第2エレメント50の他の側面形状の例を示す。図4は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第2エレメントの他の側面形状の例を説明するための概略側面図であり、図4(a)が他の例であり、図4(b)がさらに他の例である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図1(a)に示される例では、車両進行方向前側に末広がりに延在する形状としていたが、図4(a)に示される例では、車両進行方向前後に末広がりな形状を有するボウタイアンテナを示した。第2エレメント50を配置するアンテナカバー30の内部空間の空きスペースや所望の周波数帯に応じて、このように種々のボウタイアンテナ形状とすることが可能である。
【0048】
また、本発明の低背型複合アンテナ装置の第2エレメントは、図4(b)に示されるように、単なる方形状のものであっても良い。図4(b)に示されるものは、図2に示されるように、第2エレメント50がベースプレートに対して垂直な例を示した。所望の周波数帯や帯域幅に応じて、種々のエレメント形状が適用可能である。
【0049】
次に、第1エレメント40及び第2エレメント50の配置位置について、より具体的に説明する。図1を再度参照すると、図1(b)に示される通り、第2エレメント50は、第1エレメント40に対して車両進行方向前側に対向配置されている。例えば第2エレメント50がTEL用周波数帯として機能するものの場合、周波数帯が高いため安定したグラウンド上に配置されることが好ましい。車両用の低背型複合アンテナ装置では、ねじボス11を用いてベースプレート10が車両のルーフに固定される。この車両に固定される位置が、最も安定したグラウンドとなる。したがって、第2エレメント50は、車両進行方向の前後のうちベースプレート10が車両に固定される位置に近い側に配置されることが好ましい。図1(b)の例では、ねじボス11が、第1エレメント40の車両進行方向の前側に位置するため、第2エレメント50は、第1エレメント40に対して車両進行方向の前側の側方で対向配置されている。
【0050】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、図5に示されるように配置されても良い。図5は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第1エレメント及び第2エレメントの配置位置の他の例を説明するための概略上面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図5に示される例は、例えばベースプレート10の車両進行方向後側も車両のルーフに接地される構造である。この場合には、第2エレメント50は、第1エレメント40に対して車両進行方向の後側の側方で第1エレメント40に対向配置されても良い。ベースプレート10の後側が接地されているので、後側であっても安定したグラウンドとなっているためである。
【0051】
次に、本発明の低背型複合アンテナ装置の第1エレメントの他の例について説明する。図6は、本発明の低背型複合アンテナ装置の第1エレメントの他の例を説明するための概略図であり、図6(a)が上面図であり、図6(b)が車両進行方向の後側から見た斜視図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では第1エレメント40と第2エレメント50とを主に示し、他のものは図示を省略した。図示の通り、第1エレメント40は、車両進行方向の左右の一方に配置されると共に、さらに車両進行方向の左右の他方の一部にも配置されている。具体的には、第1エレメント40は、車両進行方向の左側に配置されると共に、車両進行方向の右側の一部にも配置されている。即ち、第1エレメント40は、参照符号40aで示されるように、一部が車両進行方向の右側にまで延在している。図6(b)に示されるように、第1エレメント40の車両進行方向の左側に配置される部分と右側の一部に配置される部分40aとは、稜線部31側で一体的になるように、車両進行方向の正面から見て断面形状が山形となるように形成されている。本発明の低背型複合アンテナ装置では、このように第1エレメント40の一部を右側にまで延在するように構成することで、第1エレメント40のアンテナ容量をさらに大きくすることも可能である。
【0052】
そして、図6に示されるように、第2エレメント50は、車両進行方向の右側の一部にも配置される第1エレメント40aが存在しない位置の車両進行方向の右側に配置されることになる。したがって、第1エレメント40と第2エレメント50とを、各々のエレメントのアンテナ送受信特性の優先度に応じて、アンテナ容量やエレメント長を種々調整することで狭い空間の中で効率良く配置することが可能となる。
【0053】
また、第3周波数帯に対応するようにコイル60を用いた例では、図6(b)に示されるように、コイル60は、稜線部31側で一体的になるように車両進行方向の正面から見て断面形状が山形となるように形成される第1エレメント40の下方に配置されれば良い。これにより、第2エレメント50に対するコイル60の影響も低減させている。なお、第2エレメント50に対するコイル60の影響を低減できれば、コイル60は、第1エレメント40に対して車両進行方向の前側や前後中央の何れに配置されても良い。なお、図示例ではコイル60は、第1エレメント40の長手方向に対して直交する方向(上下方向)に配置される例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、コイルの軸方向がベースプレートに平行且つ第1エレメントの長手方向に平行となるように配置されるものであっても良い。
【0054】
なお、本発明の低背型複合アンテナ装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
10 ベースプレート
11 ねじボス
20 回路基板
21 第1エレメント用給電部
22 第2エレメント用給電部
25 給電線
30 アンテナカバー
31 稜線部
32 側面部
40 第1エレメント
41 上端辺
50 第2エレメント
51 上端辺
60 コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6