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特許7399514分離装置、検出装置、保存装置及びセンサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】分離装置、検出装置、保存装置及びセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20231211BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231211BHJP
   G01N 33/52 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G01N1/10 A
G01N33/48 H
G01N33/52 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022502621
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007516
(87)【国際公開番号】W WO2021171378
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】517358834
【氏名又は名称】Blue Industries株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】久慈 知明
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-502451(JP,A)
【文献】特開2003-194806(JP,A)
【文献】特開2003-254934(JP,A)
【文献】特開2011-133235(JP,A)
【文献】特開2003-135435(JP,A)
【文献】特開平5-34341(JP,A)
【文献】特開2019-74344(JP,A)
【文献】特表2012-529039(JP,A)
【文献】米国特許第5916521(US,A)
【文献】国際公開第2014/64921(WO,A1)
【文献】特開平6-7432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 33/48
G01N 33/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から少なくとも血清または血漿を分離するための分離装置であって、
親水性材料で構成される親水部と、
前記親水部の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタと、
前記分離用フィルタを前記親水部に支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材は、前記分離用フィルタに挿通する複数の突起部を有すること
を特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記親水部は、板状に形成され、前記分離用フィルタから離間する方向に向けて下方に傾斜されて形成されること
を特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項3】
前記親水部は、前記分離用フィルタから離間する方向に向けて延びる溝が形成されること
を特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項4】
前記親水部は、親水性フィルムからなること
を特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項5】
前記親水部は、分離した血清又は血漿を収集するための収集部を有すること
を特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項6】
前記親水部は、分離した血清又は血漿を回収する回収装置を嵌合するための嵌合部を有すること
を特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項7】
筒状に形成される基材を更に備え、
前記基材は、一方側の端部に形成される注入口と、前記注入口とは反対側に形成される回収口と、を有し、
前記親水部は、前記基材の内面に設けられ、
前記分離用フィルタは、前記回収口から離間して前記基材の内部に配置されること
を特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項8】
前記回収口側の前記基材の内面の端部に疎水性材料で構成される疎水部を更に備えること
を特徴とする請求項7記載の分離装置。
【請求項9】
前記回収口側から前記基材の内部の空気を吸引するための吸引部を更に備えること
を特徴とする請求項7記載の分離装置。
【請求項10】
前記注入口側から前記基材の内部に空気を送る送気部を更に備えること
を特徴とする請求項7記載の分離装置。
【請求項11】
開口された注入口を有するとともに、前記分離用フィルタが設けられる基材と、
前記注入口に設けられる蓋部と、を備え、
前記基材は、前記注入口に嵌め込まれるとともに液体状の検体を吸収するための吸収材と、前記吸収材と前記分離用フィルタとの間に設けられる鉤爪部と、を有し、
前記蓋部は、前記吸収材を前記基材の内部に押し出すための押出機構を有すること
を特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項12】
生体物質を検出するための検出装置であって、
生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置と、前記分離装置から分離した血清又は血漿から生体物質を検出する検出部とを備え、
前記分離装置は、
親水性材料で構成される親水部と、
前記親水部の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタと、
前記分離用フィルタを前記親水部に支持する支持部材と、を有し、
前記支持部材は、前記分離用フィルタに挿通する複数の突起部を有し、
前記検出部は、
前記親水部に設けられる、分離した血清又は血漿を浸透させるための浸透層と、
前記浸透層を挟んで前記親水部とは反対側に設けられる、分離した血清又は血漿と発色反応させるための反応層と、を有すること
を特徴とする検出装置。
【請求項13】
前記検出部は、前記反応層を挟んで前記浸透層の反対側に設けられる、透明性フィルムで構成される透明層を有すること
を特徴とする請求項12記載の検出装置。
【請求項14】
前記親水部は、前記分離用フィルタが設けられる第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを有し、
前記反応層は、前記親水部の前記第1主面側に配置されること
を特徴とする請求項12記載の検出装置。
【請求項15】
前記親水部は、前記分離用フィルタが設けられる第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを有し、
前記反応層は、前記親水部の前記第2主面側に配置されること
を特徴とする請求項12記載の検出装置。
【請求項16】
血清又は血漿を保存するための保存装置であって、
生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置と、前記分離装置を収容可能な収容器とを備え、
前記分離装置は、
親水性材料で構成される親水部と、
前記親水部の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタと、
前記分離用フィルタを前記親水部に支持する支持部材と、を有し、
前記支持部材は、前記分離用フィルタに挿通する複数の突起部を有し、
前記収容器は、分離した血清又は血漿を保存するための保存液が収容されること
を特徴とする保存装置。
【請求項17】
生体物質を測定するためのセンサであって、
生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置と、前記分離装置により分離した血清又は血漿から生体物質を測定する測定部とを備え、
前記分離装置は、
親水性材料で構成される親水部と、
前記親水部の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタと、
前記分離用フィルタを前記親水部に支持する支持部材と、を有し、
前記支持部材は、前記分離用フィルタに挿通する複数の突起部を有し、
前記測定部は、分離した血清又は血漿と化学反応させるための反応部と、血清又は血漿と前記反応部との化学反応に基づいて発生する電子又は光を信号に変換する変換部と、有すること
を特徴とするセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液等の生体から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置並びにこれを用いた検出装置、保存装置及びセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の反応物質の存在の有無を検査する技術として、特許文献1の開示技術が提案されている。また、血清又は血漿を分離する技術として、特許文献2の開示技術が提案されている。
【0003】
特許文献1の開示技術は、少なくとも1種類の所定の反応物質の存在の有無を検査する方法であって、上記反応物質と結合する捕捉用アナライトが結合された第1の多孔質メンブレンを設ける工程と、第2の多孔質メンブレンによって形成された底部を有する小室に、検査対象のサンプルと多重検出用アナライトとを入れる工程と、上記少なくとも1種類の反応物質が存在する場合に、上記多重検出用アナライトが上記反応物質と結合するのに十分な時間を経過させる工程と、上記小室の底部を上記第1の多孔質メンブレンと接触させる工程と、上記サンプルを上記両メンブレンに透過させて、上記第1のメンブレン上に担持された捕捉用アナライトに上記反応物質を結合させる工程を含む方法である。
【0004】
特許文献2の開示技術は、人体、排泄物、土壌の何れかから採取した採取物を含む液体から少なくとも血漿又は血清を分離するための分離フィルタにおいて、メンブレンフィルタと、上記メンブレンフィルタの上に積層された分離用フィルタとを備え、上記分離用フィルタは、中空糸、多孔質材料の何れかで構成され、平面視でメンブレンフィルタ上の局所領域上に積層されてなり、そのメンブレンフィルタに対する平面視の境界線は、少なくとも平面視での端部が円弧状とされている分離フィルタである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2005-512090号公報
【文献】特開2019-74344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の開示技術では、サンプルがメンブレンを介して薄葉紙に吸引される。また、特許文献2の開示技術では、分離した血清又は血漿がメンブレンフィルタに吸収されてしまう。このため、これらの開示技術では、分離した血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが難しい、という問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、液体状の検体から血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分離装置は、生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から少なくとも血清または血漿を分離するための分離装置であって、親水性材料で構成される親水部と、前記親水部の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタと、前記分離用フィルタを前記親水部に支持する支持部材と、を備え、前記支持部材は、前記分離用フィルタに挿通する複数の突起部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る検出装置は、生体物質を検出するための検出装置であって、生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置と、前記分離装置から分離した血清又は血漿から生体物質を検出する検出部とを備え、前記分離装置は、親水性材料で構成される親水部と、前記親水部の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタと、前記分離用フィルタを前記親水部に支持する支持部材と、を有し、前記支持部材は、前記分離用フィルタに挿通する複数の突起部を有し、前記検出部は、前記親水部に設けられる、分離した血清又は血漿を浸透させるための浸透層と、前記浸透層を挟んで前記親水部とは反対側に設けられる、分離した血清又は血漿と発色反応させるための反応層と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る保存装置は、血清又は血漿を保存するための保存装置であって、生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置と、前記分離装置を収容可能な収容器とを備え、前記分離装置は、親水性材料で構成される親水部と、前記親水部の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタと、前記分離用フィルタを前記親水部に支持する支持部材と、を有し、前記支持部材は、前記分離用フィルタに挿通する複数の突起部を有し、前記収容器は、分離した血清又は血漿を保存するための保存液が収容されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るセンサは、生体物質を測定するためのセンサであって、生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置と、前記分離装置により分離した血清又は血漿から生体物質を測定する測定部とを備え、前記分離装置は、親水性材料で構成される親水部と、前記親水部の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタと、前記分離用フィルタを前記親水部に支持する支持部材と、を有し、前記支持部材は、前記分離用フィルタに挿通する複数の突起部を有し、前記測定部は、分離した血清又は血漿と化学反応させるための反応部と、血清又は血漿と前記反応部との化学反応に基づいて発生する電子又は光を信号に変換する変換部と、有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体状の検体から血清又は血漿を液体の状態で分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態における分離装置の第1例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態における分離装置の第1例を示す側面図である。
図3図3は、実施形態における分離装置の第1例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。
図4図4は、実施形態における分離装置の第2例を示す図である。
図5図5(a)は、実施形態における分離装置の第3例を示す平面図であり、図5(b)は、図5(a)の5A-5A断面図である
図6】。図6(a)は、実施形態における分離装置の第4例を示す断面図であり、図6(b)は、実施形態における分離装置の第5例を示す断面図である。
図7図7は、実施形態における分離装置の第6例を示す図である。
図8図8は、実施形態における分離装置の第7例を示す図である。
図9図9(a)は、実施形態における分離装置1の第8例を示す側面図であり、図9(b)は、図9(a)の9A-9A断面図である。
図10図10(a)は、実施形態における分離装置1の第9例を示す側面図であり、図10(b)は、実施形態における分離装置1の第9例を示す平面図である。
図11図11は、実施形態における分離装置の第10例を示す図である。
図12図12は、実施形態における分離装置の第10例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。
図13図13は、実施形態における分離装置の第11例を示す図である。
図14図14は、実施形態における分離装置の第11例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。
図15図15は、実施形態における分離装置の第12例を示す図である。
図16図16は、実施形態における分離装置の第12例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。
図17図17は、実施形態における分離装置の第13例を示す図である。
図18図18は、実施形態における分離装置の第13例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図であって、図18(a)は、液体状の検体を注入口に注入した状態を示す図であり、図18(b)は、液体状の検体から血清又は血漿を分離した状態を示す図である。
図19図19は、実施形態における検出装置の第1例を示す図である。
図20図20は、実施形態における検出装置の第2例を示す図である。
図21図21は、実施形態における保存装置の第1例を示す図である。
図22図22は、実施形態における保存装置の第1例の分離装置を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。
図23図23は、実施形態における保存装置の第1例を用いて血清又は血漿を保存するための保存方法を説明するための図である。
図24図24は、実施形態における保存装置の第2例を示す図である。
図25図25は、実施形態におけるセンサの第1例を示す図である。
図26図26は、実施形態におけるセンサの第2例を示す平面図である。
図27図27は、実施形態におけるセンサの第3例を示す平面図である。
図28図28は、実施形態におけるセンサの第4例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態における分離装置、検出装置、保存装置及びセンサの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(分離装置1の実施形態)
図1を参照して、実施形態における分離装置1の第1例について説明する。図1は、実施形態における分離装置1の第1例を示す斜視図である。図2は、実施形態における分離装置1の第1例を示す側面図である。また、各図において、共通する部分については、共通する参照符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0016】
分離装置1は、生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するためのものである。生体から採取される採取物としては、例えば、血液である。このとき、液体状の検体は、血液である。このほか、生体から採取される採取物としては、唾液、涙、汗、糞便、口腔粘膜細胞、鼻腔粘膜細胞等の粘膜細胞であってもよい。このとき、液体状の検体は、唾液、涙、汗であってもよい。
【0017】
また、生体又は土壌から採取される血液等の採取物を、マイクロチューブ等の所定の容器の中で、溶媒に溶解させてpH調整をし、液体状の検体としてもよい。溶媒としては、例えば、酢酸緩衝液(酢酸 + 酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(リン酸 + リン酸ナトリウム)、クエン酸緩衝液(クエン酸 + クエン酸ナトリウム)、クエン酸リン酸緩衝液(クエン酸 + リン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、マッキルベイン緩衝液、純水、スクロースPBSバッファー、界面活性剤入の純水等が用いられる。
【0018】
例えば、がん患者や糖尿病患者等から尿を採取物として採取する場合、溶媒を混ぜて液体状の検体とすることが好ましい。例えば、涙を採取物として採取する場合、涙に含まれるごみ等の不要物を除去した上で、溶媒を混ぜて液体状の検体としてもよい。例えば、土壌を採取物として採取する場合、土壌に含まれる砂粒等の不要物を除去した上で、溶媒を混ぜて液体状の検体としてもよい。例えば、糞便を採取物として採取する場合、溶媒を混ぜて、糞便に含まれる食物繊維等の不要物をろ紙等により除去した上で、液体状の検体としてもよい。
【0019】
以下、液体状の検体として、血液を例に説明する。分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、を備える。分離用フィルタ20には、HUDSON法(化学処理と加熱により、血液等のサンプルに含まれるリボヌクレアーゼを不活性化し、ウイルス粒子等から核酸を抽出する手法)に必要な試薬や、RNase、DNase等の試薬や、バッファー(pH調整材料)など、血液に含まれる血球を分離するために必要な物質が含まれていてもよい。
【0020】
親水部10は、板状に形成される。親水部10は、親水性材料で構成される。親水部10は、親水性フィルムからなり、例えば、スリーエムジャパン株式会社製の9901P等が用いられる。親水部10は、プラスチックやガラス等の基材に、バイオミメティクスを利用した撥水表面構造を付加して、親水性材料としたものであってもよい。親水部10は、金属で構成されてもよい。親水部10は、親水性紙が用いられてもよい。
【0021】
親水部10は、分離用フィルタ20が設けられる第1主面11と、第1主面11の反対側の第2主面12と、第1主面11と第2主面12とを繋ぐ端面13と、を有する。
【0022】
分離用フィルタ20は、中空糸又は多孔質材の何れかで構成される。分離用フィルタ20は、2つ積み重ねられて、親水部10の一部の領域に設けられる。分離用フィルタ20は、板状の親水部10の長手方向における端部に固着される。分離用フィルタ20は、親水部10の一部の領域に、1つ設けられてもよい。分離用フィルタ20は、親水部10の一部の領域に、2つ以上積み重ねられてもよい。
【0023】
分離用フィルタ20は、第1主面21と、第1主面21の反対側の第2主面22と、第1主面21と第2主面22とを繋ぐ端面23と、を有する。第1主面21は、液体状の検体が滴下される面となる。第2主面22は、親水部10の一部の領域に設置される。
【0024】
この分離用フィルタ20を構成する材料の例を以下の表1、表2に示す。ちなみに下記の表1、表2は、具体例の更にその上位概念を記載している。上位概念に含まれるものであれば具体例に限定されるものではなく、他のいかなる材料を適用するようにしてもよい。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
分離用フィルタ20は、凝固防止剤又は生体物質が添加されていてもよい。凝固防止剤は、検体が血液の場合には、EDTA(エチレンジアミン四酢酸) 、ヘパリンナトリウム、クエン酸、シュウ酸、フッ化ナトリウム等である。凝固防止剤を添加することにより、この分離用フィルタ20内の凝固防止剤と混合することで、血液自体の凝固防止が可能となり、ひいては良好な測定が可能となる。
【0028】
中でもフィブリノゲンは血液凝固に関わる物質であり、検出装置の目詰まりや、毛細管現象の妨げとなり、定量的な測定が難しく、微小な血液量での分析が困難である。
【0029】
このため、分離用フィルタ20は、フィブリノゲン除去または凝固防止のために、更に下記の内包物が添加されていてもよい。これにより、フィブリノゲンを吸収又は分解させることができ、血液凝固を防止し、検査を容易にすることができる。
【0030】
この内包物の例としては、多官能アクリルアミドやスルホベタインモノマー等親水性モノマー及びその微粒子、ヒドロキシアパタイト(水産燐灰石) 、PEG系材料(PEG(Polyethylene glycol)、PPL-g-PEG copolymer、PEGが付加されている物質等)が含まれるものであってもよい。また、この内包物の例としては、酸化チタン、金、銀、酸化亜鉛、銅、酸化アルミニウム、酸化チタン等からなる金属ナノ粒子(直径5nm~500μm)、フィブリノゲン分解物質(フィブリノゲン)、プラスミノゲンアクチベータ(PA)、ワルファリン、アセノクマロール、フェニンジオン、抗ビタミンK阻害物質等クマリン誘導体物質、ダビガトラン、アルガトロバン等トロンビン阻害物質、リバーロキサバン、エドキサバン、アビキサバン、フォンダパリヌクス等凝固因子阻害物質、N-メチロールアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸をコモノマーとして用いた親水性モノマーの分散重合により構成される親水性ポリマー微粒子、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N-ビニルピロリドン、ゼオライト、金属錯体(PCP(多孔性金属錯体)、銅フタロシアニン、アゾメチン等)、ポリエステルゲルで構成されていてもよい。
【0031】
また検体がDNA(核酸)の場合には、デオキシリボヌクレアーゼによるDNA分解を防ぐために、DNA分解酵素阻害剤を凝固防止剤として添加するようにしてもよい。また検体がRNA(マイクロRNA、メッセンジャーRNA等)の場合には、リボヌクレアーゼ(エンドリボヌクレアーゼ、エキソリボヌクレアーゼ等)によるRNA分解を防止するために、RNA分解酵素阻害剤を凝固防止剤として添加するようにしてもよい。検体が唾液の場合には、唾液中の粘性のもとになるムチンというタンパク質を分解し、測定を円滑にするために、ムチン分解酵素を凝固防止剤として添加するようにしてもよい。
【0032】
次に、実施形態に係る分離装置1を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法について説明する。図3は、実施形態における分離装置1の第1例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。
【0033】
まずユーザは、被験者から血液を採取し、採取した血液を液体状の検体として分離用フィルタ20の第1主面21に所定量滴下する。この滴下された血液は、図3に示す矢印M方向に向けて、分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて分離用フィルタ20の第2主面22や端面23に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血清又は血漿が分離される。
【0034】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、端面23から親水部10上に流れることとなる。このため、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0035】
液体の状態で取り出された血清又は血漿は、ピペット等の回収装置により回収することができる。
【0036】
本実施形態によれば、親水性材料で構成される親水部10と、親水部10の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタ20と、を備える。これにより、血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、分離用フィルタ20の端面23から親水部10上に流れることとなる。このため、ユーザは、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0037】
図4は、実施形態における分離装置1の第2例を示す図である。
【0038】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、を備える。親水部10は、板状に形成され、分離用フィルタ20から離間する方向に向けて第1主面11が下方に傾斜されて形成される。
【0039】
本実施形態によれば、親水部10は、板状に形成され、分離用フィルタ20から離間する方向に向けて下方に傾斜されて形成される。これにより、分離用フィルタ20の端面23から流れてきた血清又は血漿は、親水部10の傾斜に沿って流れることになる。このため、ユーザは、液体の状態の血清又は血漿を効率良く取り出すことが可能となる。
【0040】
図5(a)は、実施形態における分離装置1の第3例を示す平面図であり、図5(b)は、図5(a)の5A-5A断面図である。図6(a)は、実施形態における分離装置1の第4例を示す断面図であり、図6(b)は、実施形態における分離装置1の第5例を示す断面図である。
【0041】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、を備える。親水部10は、板状に形成され、分離用フィルタ20から離間する方向に向けて延びる複数の溝14が形成される。複数の溝14は、板状の親水部10の長手方向に沿って、互いに平行に配置される。なお、溝14は、複数であってもよいし、1つであってもよい。
【0042】
溝14は、図5(b)に示すように、平坦面となって形成される底面14aと、底面14aから鉛直上方に延びる一対の側面14bとを有する。また、溝14は、図6(a)に示すように、下方に向けて湾曲した湾曲面となって形成される底面14aと、底面14aから鉛直上方に延びる一対の側面14bとを有していてもよい。また、溝14は、図6(b)に示すように、一対の側面14bが下方に向かうにつれて互いに近づくように形成されてもよい。
【0043】
本実施形態によれば、親水部10は、分離用フィルタ20から離間する方向に向けて延びる溝14が形成される。これにより、分離用フィルタ20の端面23から流れてきた血清又は血漿は、溝14に沿って流れることになる。このため、ユーザは、液体の状態の血清又は血漿を効率良く取り出すことが可能となる。
【0044】
図7は、実施形態における分離装置1の第6例を示す図である。
【0045】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、を備える。親水部10は、板状に形成され、分離した血清又は血漿を収集するための収集部15を有する。収集部15は、第1主面11が凹部状に形成される。
【0046】
本実施形態によれば、親水部10は、分離した血清又は血漿を収集するための収集部15を有する。これにより、端面23から流れてきた血清又は血漿は、収集部15に収集されることになる。このため、ユーザは、一度の回収作業で、多くの液体の状態の血清又は血漿を回収することが可能となる。
【0047】
なお、図示は省略するが、親水部10が分離用フィルタ20から離間する方向に向けて下方に傾斜されて形成される場合には、親水部10の下端部側に収集部15が設けられることが好ましい。これにより、親水部10の傾斜に沿って流れる血清又は血漿を、収集部15において収集することができる。このため、ユーザは、液体の状態の血清又は血漿を効率良く取り出すことが可能となる。
【0048】
なお、図示は省略するが、親水部10に溝14が形成される場合には、溝の長手方向の一端部側に分離用フィルタ20が設けられ、長手方向における一端部とは反対側の他端部側に、収集部15が設けられることが好ましい。これにより、溝14に沿って流れる血清又は血漿を、収集部15において収集することができる。このため、ユーザは、液体の状態の血清又は血漿を効率良く取り出すことが可能となる。
【0049】
図8は、実施形態における分離装置1の第7例を示す図である。
【0050】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、を備える。親水部10は、板状に形成され、分離した血清又は血漿を回収する回収装置9を嵌合するための嵌合部16を有する。嵌合部16は、回収装置9の先端部93が嵌合される形状に形成される。嵌合部16は、上方に向けて拡径される拡径部16aと、分離した血清又は血漿を取り込むための開口部16bと、を有する。
【0051】
回収装置9は、血清又は血漿を回収することができるものであって、例えば、ピペット等が用いられる。回収装置9は、先端部93が嵌合部16の拡径部16aに嵌合される。
【0052】
本実施形態によれば、親水部10は、分離した血清又は血漿を回収する回収装置9を嵌合するための嵌合部16を有する。これにより、分離用フィルタ20の端面23から流れてきた血清又は血漿は、開口部16bから嵌合部16の内部に取り込まれる。そして、取り込まれた嵌合部16に嵌合された回収装置9により回収することができる。このため、ユーザは、液体の状態の血清又は血漿を、安定した状態で回収することができ、効率良く回収することが可能となる。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、嵌合部16は、上方に向けて拡径される拡径部16aを有する。これにより、回収装置9の先端部93を嵌合部16の拡径部16aに挿入し易くすることができる。このため、ユーザは、液体の状態の血清又は血漿を回収する作業を、効率良く行うことが可能となる。
【0054】
なお、図示は省略するが、親水部10に収集部15が設けられる場合には、収集部15に嵌合部16が設けられることが好ましい。これにより、収集部15に収集された血清又は血漿を、嵌合部16に嵌め込まれた回収装置9により回収することができる。このため、ユーザは、液体の状態の血清又は血漿を回収する作業を、効率良く行うことが可能となる。
【0055】
図9(a)は、実施形態における分離装置1の第8例を示す側面図であり、図9(b)は、図9(a)の9A-9A断面図である。
【0056】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、支持部材90と、を備える。
【0057】
支持部材90は、分離用フィルタ20を親水部10に支持するものである。支持部材90は、親水部10の第1主面11から上方に突出させて設けられる。支持部材90は、複数(図9中では、20個)の突起部91を備える。支持部材90は、複数の突起部91が親水部10の長手方向及び短手方向に所定の間隔を空けて並べて配置される。
【0058】
突起部91は、例えば、プラスチック製、金属製等で構成される。突起部91は、角柱状に形成される。突起部91は、円柱状、円筒状、各筒状等の形状に形成されてもよい。突起部91は、上下方向に積層された2つの分離用フィルタ20にそれぞれ挿通される。これにより、支持部材90は、分離用フィルタ20を親水部10に支持することができる。
【0059】
本実施形態によれば、分離用フィルタ20を親水部10に支持する支持部材90を更に備える。これにより、分離用フィルタ20を親水部10に対して支持することができる。このため、液体状の検体を分離用フィルタ20に滴下する際に、分離用フィルタ20が親水部10に対してずれるのを防止することができ、ユーザは、効率良く作業を行うことが可能となる。
【0060】
本実施形態によれば、支持部材90は、分離用フィルタ20に挿通される突起部91を有する。これにより、分離用フィルタ20を親水部10に対して支持することができる。このため、液体状の検体を分離用フィルタ20に滴下する際に、分離用フィルタ20が親水部10に対してずれるのを一層防止することができ、ユーザは、効率良く作業を行うことが可能となる。
【0061】
図10(a)は、実施形態における分離装置1の第9例を示す側面図であり、図10(b)は、実施形態における分離装置1の第9例を示す平面図である。
【0062】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、支持部材90と、を備える。
【0063】
支持部材90は、分離用フィルタ20を親水部10に支持するものである。支持部材90は、親水部10の第1主面11から上方に突出させて設けられる。支持部材90は、複数(図10中では、4個)の挟持部92を備える。支持部材90は、挟持部92が平面視において分離用フィルタ20の4つの隅部に配置される。支持部材90は、複数の挟持部92により分離用フィルタ20を挟んで支持するものとなる。
【0064】
挟持部92は、例えば、プラスチック製、金属製等で構成される。挟持部92は、第1主面11から上下方向に延びて形成され、平面視において断面L字状に形成される。挟持部91は、角柱状、円柱状、円筒状、各筒状等の形状に形成されてもよい。複数の挟持部92は、上下方向に積層された2つの分離用フィルタ20を側方から挟んで固定するものとなる。これにより、支持部材90は、分離用フィルタ20を親水部10に支持することができる。
【0065】
本実施形態によれば、分離用フィルタ20を親水部10に支持する支持部材90を更に備える。これにより、分離用フィルタ20を親水部10に対して支持することができる。このため、液体状の検体を分離用フィルタ20に滴下する際に、分離用フィルタ20が親水部10に対してずれるのを防止することができ、ユーザは、効率良く作業を行うことが可能となる。
【0066】
本実施形態によれば、支持部材90は、分離用フィルタ20を挟んで支持する挟持部92を有する。これにより、分離用フィルタ20を親水部10に対して支持することができる。このため、液体状の検体を分離用フィルタ20に滴下する際に、分離用フィルタ20が親水部10に対してずれるのを一層防止することができ、ユーザは、効率良く作業を行うことが可能となる。
【0067】
図11を参照して、実施形態における分離装置1の第10例について説明する。図11は、実施形態における分離装置1の第10例を示す図である。
【0068】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、基材30と、を備える。
【0069】
基材30は、円筒状に形成され、一方側の端部に形成される注入口31と、注入口31とは反対側に形成される回収口32と、を有する。基材30は、例えば、ガラス、プラスチック、金属等が用いられる。
【0070】
分離用フィルタ20は、回収口32から離間して基材30の内部に配置される。第1主面21は、注入口31側に配置され、第2主面22は、回収口32側に配置される。端面23は、親水部10の一部の領域に設けられる。
【0071】
親水部10は、注入口31から回収口32までの内面30aに設けられる。
【0072】
次に、本実施形態に係る分離装置1を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法について説明する。図12は、実施形態における分離装置1の第10例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。
【0073】
まずユーザは、被験者から血液を採取し、採取した血液を液体状の検体として、注入口31から血液を注入する。そして、注入された血液は、分離用フィルタ20の第1主面21に所定量滴下される。この滴下された血液は、図12に示す矢印M方向に向けて、分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて分離用フィルタ20の第2主面22に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0074】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、分離用フィルタ20の第2主面22から親水部10上に流れることとなる。このため、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0075】
その後、予め回収口32の下方側に用意した保管容器8に、液体の状態で取り出された血清又は血漿を収集する。
【0076】
本実施形態によれば、筒状に形成される基材30を更に備え、基材30は、一方側の端部に形成される注入口31と、注入口31とは反対側に形成される回収口32と、を有し、親水部10は、基材30の内面に設けられ、分離用フィルタ20は、回収口32から離間して基材30の内部に配置される。これにより、血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、分離用フィルタ20の第2主面22から親水部10上に流れることとなる。このため、ユーザは、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0077】
また、本実施形態によれば、基材30は、筒状に形成されるため、分離した血清又は血漿が、基材30の外側に漏れるのを防止することができる。このため、血清又は血漿を効率よく収集することができる。
【0078】
図13は、実施形態における分離装置1の第11例を示す図である。
【0079】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、基材30と、疎水部40と、を備える。
【0080】
親水部10は、注入口31から回収口32側の内面30aに設けられる。
【0081】
基材30は、回収口32側の内面30aの端部に、疎水部40が塗布等により設けられる。基材30の内径は、十分に小さく、分離した血清又は血漿が基材30の内部において毛細管現象が展開される程度の径で構成され、例えば7mm以下が好ましい。
【0082】
基材30は、注入口31から回収口32まで、内径がほぼ同一径となって形成される。なお、図示は省略するが、基材30は、内面30aがテーパー状に形成されて、注入口31の内径が、回収口32の内径よりも大きく形成されてもよい。
【0083】
疎水部40は、疎水性材料で構成される。疎水性材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、SU-8、レジスト、フッ素樹脂、疎水性ガラスなどがある。また、表面の親水処理方法としてプラズマ処理、表面凹凸構造をレーザーやエッチング処理で形成することにより、疎水性の機能を疎水部表面に付加させたものが用いられる。
【0084】
次に、実施形態に係る分離装置1を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法について説明する。図14は、実施形態における分離装置1の第11例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。
【0085】
ユーザは、血液を被験者から採取し、採取した血液を液体状の検体として、注入口31から血液を注入する。そして、注入された血液は、分離用フィルタ20の第1主面21に所定量滴下される。この滴下された血液は、図14に示す矢印M方向に向けて分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて分離用フィルタ20の第2主面22に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0086】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、第2主面22から親水部10上に流れることとなる。このため、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0087】
そして、本実施形態では、基材30の回収口32側の内面30aの端部に、疎水性材料で構成される疎水部40を備える。これにより、血清又は血漿と、疎水部40との接触角が大きくなる。このため、血清又は血漿は、基材30の内部における分離用フィルタ20から疎水部40までの間の空間Vに、収集されることとなる。すなわち、血清又は血漿は、回収口32側から基材30の外側に流れ出さないものとなる。
【0088】
本実施形態によれば、回収口32側の基材30の内面30aの端部に、疎水性材料で構成される疎水部40を更に備える。これにより、分離した血清又は血漿が、基材30の内部における分離用フィルタ20から疎水部40までの間の空間Vに、収集される。このため、血清又は血漿を効率よく回収することができる。
【0089】
図15は、実施形態における分離装置1の第12例を示す図である。
【0090】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、基材30と、吸引部50と、を備える。
【0091】
吸引部50は、回収口32側に設けられ、回収口32側から基材30の内部の空気を吸引するためのものである。吸引部50は、回収口32に対して着脱自在である。吸引部50は、基材30の内面30aの親水部10に沿って、分離用フィルタ20から回収口32側に向けて移動可能なピストン等が用いられる。
【0092】
次に、実施形態に係る分離装置1を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法について説明する。図16は、実施形態における分離装置1の第12例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。
【0093】
ユーザは、被験者から血液を採取し、採取した血液を液体状の検体として、血液を容器59に入れておき、容器59内の血液に注入口31を接触させる。そして、分離用フィルタ20近傍に配置された吸引部50を、回収口32側に向けて図中矢印N方向に、基材30の内面30aの親水部10に沿ってスライドさせる。これにより、注入口31から基材30の内部に血液が注入される。そして、注入された血液は、分離用フィルタ20の第1主面21に到達する。到達した血液は、図16に示す矢印M方向に向けて分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて分離用フィルタ20の第2主面22に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0094】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、第2主面22から親水部10上に流れることとなる。このため、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0095】
本実施形態によれば、回収口32側から基材30の内部の空気を吸引するための吸引部50を更に備える。これにより、分離用フィルタ20を流れる血液の毛細管現象が促進され、血液から血清又は血漿をより早く分離させることができる。このため、血清又は血漿をより効率良く取り出すことが可能となる。
【0096】
図17は、実施形態における分離装置1の第13例を示す図である。
【0097】
本実施形態に係る分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、基材30と、送気部60と、を備える。
【0098】
送気部60は、注入口31側に設けられ、注入口31側から基材30の内部の空気を送るためのものである。送気部60は、注入口31に対して着脱自在である。送気部60は、基材30の内面30aの親水部10に沿って、注入口31側から分離用フィルタ20に向けて移動可能なピストン等が用いられる。
【0099】
また、注入口31から分離用フィルタ20までの間の基材30の内部の空間には、透過フィルタ61が設けられる。透過フィルタ61は、液体状の検体及び空気等の気体が透過可能なものであり、例えば、ポリプロピレンを主な構成とするフィルム、ポリエチレンを主な構成とするフィルム、ポリオレフィンを主な構成とするフィルム、多孔質フィルム、PTFEメンブレンフィルム、日東電工株式会社製の超高分子量ポリエチレン多孔質フィルム、日東電工株式会社製のサンマップ(登録商標)、日東電工株式会社製の通気性シート ブレスロン(登録商標)、日東電工株式会社製の通気性粘着テープ ニトスルー(登録商標)、三菱ケミカル株式会社製の透湿性フィルムKTF、三菱ケミカル株式会社製の透湿通気防水フィルムエクセポール(登録商標)、スリーエムジャパン株式会社製の「マイクロポーラスフィルム」、株式会社トクヤマ製の微多孔質フィルム「NFシート」、帝人株式会社製のミライム等が用いられる。
【0100】
次に、実施形態に係る分離装置1を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法について説明する。図18は、実施形態における分離装置1の第13例を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図であって、図18(a)は、液体状の検体を注入口31に注入した状態を示す図であり、図18(b)は、液体状の検体から血清又は血漿を分離した状態を示す図である。
【0101】
ユーザは、被験者から血液を採取し、採取した血液を液体状の検体として、注入口31から血液を注入する。そして、注入された血液は、分離用フィルタ20の第1主面21に所定量滴下される。そして、ユーザは、注入口31側に送気部60を配置する。ユーザは、配置された送気部60を、分離用フィルタ20側に向けて基材30の内面30aに沿ってスライドさせる。これにより、血液は、図18(b)に示す矢印M方向に向けて、分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて第2主面22に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0102】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、第2主面22から親水部10上に流れることとなる。このため、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0103】
その後、予め回収口32の下方側に用意した保管容器8に、液体の状態で取り出された血清又は血漿を収集する。
【0104】
本実施形態によれば、注入口31側から基材30の内部に空気を送る送気部60を更に備える。これにより、分離用フィルタ20を流れる血液の毛細管現象が促進され、血液から血清又は血漿をより早く分離させることができる。このため、血清又は血漿をより効率良く取り出すことが可能となる。
【0105】
本実施形態によれば、注入口31から分離用フィルタ20までの間の基材30の内部の空間に、透過フィルタ61が設けられる。これにより、送気部60により基材30の内部に送られる空気のチリや埃等の不要物を除去することができ、分離用フィルタ20に送られる空気を清浄することができる。このため、血液に不要物が混ざるのを防止することができ、血清又は血漿をより効率よく取り出すことが可能となる。
【0106】
(検出装置100の実施形態)
図19を参照して、実施形態における検出装置100の第1例について説明する。図19は、実施形態における検出装置100の第1例を示す図である。
【0107】
検出装置100は、生体物質を検出するためのものである。検出装置100は、分離装置1と、検出部110とを備える。分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、を備える。
【0108】
親水部10は、板状に形成される。親水部10は、親水性材料で構成される。親水部10は、親水性フィルムからなる。親水部10は、分離用フィルタ20が設けられる第1主面11と、第1主面11とは反対側の第2主面12と、第1主面11と第2主面12とを繋ぐ端面13と、を有する。
【0109】
分離用フィルタ20は、中空糸又は多孔質材の何れかで構成される。分離用フィルタ20は、親水部10の一部の領域に設けられる。
【0110】
分離用フィルタ20は、第1主面21に、吸収材25を有する。吸収材25は、ポリウレタン等の合成樹脂が発泡成形されるスポンジ等が用いられる。分離用フィルタ20は、第2主面22が親水部10の一部の領域に設置される。
【0111】
検出部110は、分離装置1から分離した血清又は血漿から生体物質を検出する。生体物質は、例えば、グルコースである。生体物質は、抗原又は抗体であってもよい。生体物質は、DNAであってもよい。生体物質は、RNAであってもよい。生体物質は、亜硫酸や亜硫酸塩等の無機物であってもよい。生体物質は、エクソソームであってもよい。生体物質は、有機物であってもよい。
【0112】
検出部110は、浸透層120と、反射防止層130と、反応層140と、透明層150と、を備える。
【0113】
浸透層120は、分離した血清又は血漿を浸透させるためのものである。浸透層120は、ポリエステル等の化学繊維、綿、ナノセルロース、ニトロセルロース、金属細線、プラスチックフィルタ、疎水物質、親水物質、ゼオライト等の多孔質物質で構成される。
【0114】
浸透層120は、分離用フィルタ20から離間して親水部10に設けられる。浸透層120は、親水部10の第1主面11に設けられる。
【0115】
反射防止層130は、反応層140のみの色を検出する際に、反射防止層130の両側に設けられる透明層150や浸透層120の色が、反応層140の色と重色や混色するのを防ぎ、検出時に誤った色を検出しないようにするためのものである。反射防止層130は、例えば、酸化チタン、金ナノ粒子、無機粒子、ゼオライト等の多孔質物質で構成される。
【0116】
反射防止層130は、浸透層120を挟んで親水部10の反対側に設けられる。反射防止層130は、浸透層120の上側に積層される。なお、反射防止層130は、省略されてもよい。
【0117】
反応層140は、分離した血清又は血漿と発色反応させるためのものである。反応層140は、浸透層120を挟んで親水部10とは反対側に設けられる。反応層140は、親水部10の第1主面11側に配置される。反応層140は、反射防止層130の上側に積層される。反応層140は、反射防止層130を挟んで浸透層120の反対側に設けられる。
【0118】
反応層140は、例えば、ニトロセルロース、ポリエステル等の化学繊維、綿、ナノセルロース、金属細線、プラスチックフィルタ等で構成される。
【0119】
反応層140は、分離した血清又は血漿と発色反応させるために、抗体、酵素、緩衝液、試薬、DNA、RNA、蛍光物質、Rnace、Dnace、ウィルス、微小金属、触媒、ゼオライト等の多孔質物質、コラーゲン、ペプチド、シュクロース、トレハロース、マルトース等が1以上含まれる。
【0120】
例えば、検出する生体物質がグルコースの場合、反応層140において酵素法による発色反応が生じさせてもよい。反応層140は、グルコースオキシダーゼ等の酵素と、ペルオキシダーゼとが含まれる。これにより、分離装置1により分離された血清又は血漿が、反応層140に含まれるグルコースオキシダーゼと、反応し過酸化水素が発生する。発生した過酸化水素は、反応層140に含まれるペルオキシダーゼと反応し、反応層140が青紫色に発色する。
【0121】
例えば、検出する生体物質が第1の抗原又は抗体の場合、反応層140において、抗体法、サンドイッチ法等の競合法による発色反応を生じさせてもよい。反応層140は、生体物質に含まれる第1の抗原又は抗体と結合する第2の抗原又は抗体が含まれる。これにより、分離装置1により分離された血清又は血漿に含まれる第1の抗原又は抗体が、反応層140に含まれる第2の抗原又は抗体と結合する。その後、標識された抗原又は抗体が含まれている2次抗体溶液を滴下した後、2次抗体溶液に含まれている標識剤を発光させる。発光溶液を滴下すると、反応層が発色する。
【0122】
例えば、検出する生体物質がDNAの場合、反応層140においては、ポリメラーゼチェーン反応(PCR法)による発色反応を生じさせてもよい。反応層140は、試薬が含まれる。この試薬は、例えば、PCR用耐熱性酵素、反応緩衝剤、反応基質 (dNTPs)、PCRプライマー (オリゴヌクレオチド)、蛍光インターカレーター等が含まれる。分離した血清又は血漿に検出したい特定のDNAの配列が含まれる場合、ペルチェ素子等の所定の手段により反応層140を加温することにより、反応層140においてポリメラーゼチェーン反応が発生し、反応層140が蛍光発色する。その発色量を測定することにより、DNAの量を測定することもできる。
【0123】
例えば、検出する生体物質がRNAの場合、反応層140においては、ポリメラーゼチェーン反応(PCR法)による発色反応を生じさせてもよい。反応層140は、逆転写酵素、プライマー等の増幅用試薬が含まれる。分離した血清又は血漿に検出したい特定のRNAの配列が含まれる場合、反応層140に含まれる逆転写酵素により、RNAからcDNAに変換される。その後、ペルチェ素子等の所定の手段により反応層140を加温することにより、増幅用試薬により遺伝子を増幅させ、反応層140においてポリメラーゼチェーン反応が発生し、反応層140が蛍光発色する。その発色量を測定することにより、RNAの量を測定することもできる。
【0124】
例えば、検出する生体物質がDNAの場合、反応層140においては、DETECTR、SHERLOCK法、SHERLOCKv2による発色反応を生じさせてもよい。反応層140は、、CaS酵素、緩衝剤等が含まれる試薬が含まれる。分離した血清又は血漿に検出したい特定のDNAの配列が含まれる場合、ペルチェ素子等の所定の手段により反応層140を加温することにより、反応層140においてポリメラーゼチェーン反応が発生する。その後、特定のDNA配列がある場合、CRISPR酵素が作用し、塩基切断が発生する。塩基切断により、両端に発光物質を有する特定の塩基配列の物質も切断されることにより、反応層140が発光する。その発光量を測定することにより、DNAの量を測定することもできる。
【0125】
例えば、検出する生体物質がRNAの場合、反応層140においては、SHERLOCK法、SHERLOCKv2による発色反応を生じさせてもよい。反応層140は、逆転写酵素、プライマー等の増幅用試薬、CRISPR酵素、ガイドRNAが含まれる。分離した血清又は血漿に検出したい特定のRNAの配列が含まれる場合、反応層140に含まれる逆転写酵素により、RNAからcDNAに変換される。その後、ペルチェ素子等の所定の手段により反応層140を加温することにより、増幅用試薬により遺伝子を増幅させ、反応層140においてポリメラーゼチェーン反応が発生する。その後、特定のRNA配列がある場合、CRISPR酵素が作用し、塩基切断が発生する。塩基切断により、両端に発光物質を有する特定の塩基配列の物質も切断されることにより、反応層140が発光する。その発光量を測定することにより、DNAの量を測定することもできる。
【0126】
例えば、検出する生体物質が亜硫酸や亜硫酸塩の場合、反応層140においてはヨウ素デンプン反応による発色反応を生じさせてもよい。反応層140は、ヨウ素酸カリウム(KIO)とでんぷんが含まれる。分離した血清又は血漿に検出したい亜硫酸や亜硫酸塩が含まれる場合、反応層140におけるヨウ素酸カリウムとでんぷんにより、反応層140が青紫色に発色する。
【0127】
透明層150は、透明性フィルムで構成され、例えば、PET(Polyethyleneterephthalate)が用いられる。透明層150は、ポリカーボネート、ガラス、SU-8、透明レジスト、ポリ塩化ビニリデンフィルム等のフィルム材、ポリイミドフィルム、ゼオライト等の多孔質物質が用いられてもよい。透明層150は、反応層140を挟んで浸透層120の反対側に設けられる。透明層150は、反応層140の上側に積層される。なお、透明層150は、省略されてもよい。
【0128】
次に、検出装置100を用いて液体状の検体から生体物質を検出するための検出方法について説明する。
【0129】
まずユーザは、被験者から血液を採取し、採取した血液を液体状の検体として、吸収材25に所定量滴下する。この滴下された血液は、吸収材25に吸収される。吸収材25により吸収しきれなくなった血液は、分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて分離用フィルタ20の第2主面22や端面23に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0130】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、端面23から親水部10上に流れることとなる。
【0131】
親水部10上を流れる血清又は血漿は、親水部10上に設けられた浸透層120に到達し、浸透層120内に浸透される。浸透層120を有することにより、血清又は血漿は、浸透層120内を均一に浸透することができる。
【0132】
浸透層120に浸透した血清又は血漿は、更に反射防止層130内に浸透する。反射防止層130に浸透した血清又は血漿は、反応層140に到達する。反応層140に到達した血清又は血漿は、反応層140と発色反応することとなる。これにより、検出部110は、血清又は血漿から発色反応を示した生体物質を検出することができる。ユーザは、血清又は血漿と発色反応した反応層140を目視や光学装置により確認することができる。
【0133】
本実施形態によれば、生体物質を検出するための検出装置100であって、生体又は土壌から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置1と、分離装置1から分離した血清又は血漿から生体物質を検出する検出部110とを備え、分離装置1は、親水性材料で構成される親水部10と、親水部10の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタ20と、を有し、検出部110は、親水部10に設けられる、分離した血清又は血漿を浸透させるための浸透層120と、浸透層120を挟んで親水部10とは反対側に設けられる、分離した血清又は血漿と発色反応させるための反応層140と、を有する。
【0134】
これにより、ユーザは、液体状の検体から分離した血清又は血漿から生体物質を確認することができる。このため、目的とする生体物質をより簡便に検出することができる。
【0135】
また、本実施形態によれば、反応層140は、親水部10の第1主面11側に配置される。すなわち、分離用フィルタ20と反応層140とがともに親水部10の第1主面11側に配置されることとなる。これにより、液体状の検体を滴下する面と、反応層140の発色面とが同一の方向になる。このため、ユーザが反応層140を目視する方向や反応層140を確認するための光学装置の方向を、液体状の検体が滴下される方向と、同一にすることができる。その結果、反応層140の目視や光学装置での確認を行いやすくすることができる。
【0136】
加えて、液体状の検体が親水部10の第1主面11から漏れてしまうのを抑制することができる。
【0137】
また、本実施形態によれば、検出部110は、反応層140を挟んで浸透層120の反対側に設けられる、透明性フィルムで構成される透明層150を有する。これにより、透明層150を通して、反応層140における発色反応を確認することができることに加え、血清又は血漿や発色反応した物質等が、反応層140から蒸発してしまうのを防止することができる。このため、生体物質の検出をより高精度に行うことが可能となる。
【0138】
また、本実施形態によれば、反射防止層130を有する。これにより、反応層140の色と重色や混色するのを防ぎ、検出時に誤った色が検出されるのを抑制することができる。
【0139】
また、本実施形態によれば、液体状の検体を吸収するための吸収材25を有する。これにより、吸収材25が吸収できる上限が予め定められていることから、液体状の検体の量を定量化することができる。このため、一定量の液体状の検体から、血清又は血漿を分離することができる。
【0140】
図20は、実施形態における検出装置100の第2例を示す図である。検出装置100は、分離装置1と、検出部110とを備える。分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、を備える。検出部110は、浸透層120と、反射防止層130と、反応層140と、透明層150と、を備える。
【0141】
浸透層120は、分離用フィルタ20から離間して親水部10に設けられる。浸透層120は、親水部10の端面13に設けられる。
【0142】
反射防止層130は、親水部10の第2主面12側に設けられる。反射防止層130は、浸透層120の下側に積層される。なお、反射防止層130は、省略されてもよい。
【0143】
反応層140は、親水部10の第2主面12側に配置される。反応層140は、反射防止層130の下側に積層される。反応層140は、反射防止層130を挟んで浸透層120の反対側に設けられる。
【0144】
透明層150は、反応層140を挟んで浸透層120の反対側に設けられる。透明層150は、反応層140の下側に積層される。透明層150は、反応層140を挟んで反射防止層130の反対側に設けられる。なお、透明層150は、省略されてもよい。
【0145】
次に、検出装置100を用いて液体状の検体から生体物質を検出するための検出方法について説明する。
【0146】
まずユーザは、被験者から血液を採取し、採取した血液を液体状の検体として、吸収材25に所定量滴下する。この滴下された血液は、吸収材25に吸収される。吸収材25により吸収しきれなくなった血液は、分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて分離用フィルタ20の第2主面22や端面23に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0147】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、端面23から親水部10上に流れることとなる。
【0148】
親水部10上を流れる血清又は血漿は、親水部10の端面13に設けられた浸透層120に到達し、浸透層120内に浸透される。
【0149】
浸透層120に浸透した血清又は血漿は、更に反射防止層130内に浸透する。反射防止層130に浸透した血清又は血漿は、反応層140に到達する。反応層140に到達した血清又は血漿は、反応層140と発色反応することとなる。これにより、検出部110は、血清又は血漿から発色反応を示した生体物質を検出することができる。ユーザは、血清又は血漿と発色反応した反応層140を目視や光学装置により確認することができる。
【0150】
本実施形態によれば、反応層140は、親水部10の第2主面12側に配置される。すなわち、分離用フィルタ20が親水部10の第1主面11側に配置され、反応層140が親水部10の第2主面12側に配置されることとなる。これにより、液体状の検体を滴下する面と、反応層140の発色面とが反対の方向になる。このため、ユーザが反応層140を目視する方向や反応層140を確認するための光学装置の方向を、液体状の検体が滴下される方向と、反対にすることができる。その結果、光学装置等の小型化を行うことができる。
【0151】
(保存装置200の実施形態)
図21を参照して、実施形態における保存装置200の第1例について説明する。図21は、実施形態における保存装置200の第1例を示す図である。
【0152】
保存装置200は、血清又は血漿を保存するためのものである。保存装置200は、分離装置1と、収容器210とを備える。分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、基材30と、蓋部70と、を備える。
【0153】
基材30は、外形が直方体状に形成され、内部に直方体状の空間が形成される。基材30は、例えば、プラスチック、金属等で構成される。基材30は、上壁391と、下壁392と、第1側壁393と、第2側壁394と、第3側壁と、第4側壁と、を有する(第3側壁と第4側壁の図示は省略する)。
【0154】
上壁391と下壁392とは、互いに向かい合って配置される。第1側壁393、第2側壁394、第3側壁及び第4側壁は、上壁391と下壁392とを繋ぐ。第1側壁393と第2側壁394とは、互いに向かい合って配置される。また、第3側壁と第4側壁とは、互いに向かい合って配置される。
【0155】
基材30は、開口された注入口31と、注入口31から離間して開口された回収口32とを有する。注入口31は、第1側壁393に設けられる。回収口32は、下壁392に設けられる。基材30は、注入口31に、吸収材25が嵌め込まれて設けられる。基材30は、回収口32に、ゴム等で構成される弁部36が設けられる。基材30は、吸収材25から離間して、内部に分離用フィルタ20が設けられる。
【0156】
基材30は、第2側壁394の内面30aに親水部10が設けられる。なお、基材30は、内面30aの全てに親水部10が設けられてもよい。
【0157】
基材30は、内部に突出された鉤爪部34を有する。鉤爪部34は、注入口31に設けられる吸収材25と、分離用フィルタ20との間に配置される。鉤爪部34は、吸収材25よりも小さく形成される。また、鉤爪部34は、分離用フィルタ20よりも小さく形成される。
【0158】
蓋部70は、注入口31を蓋するためのものである。蓋部70は、注入口31に対して着脱自在である。蓋部70は、第1側壁393をスライド可能に設けられてもよい。蓋部70は、注入口31に設けられた吸収材25を、基材30の内部に押し出すための押出機構71を有する。
【0159】
親水部10は、板状に形成される。親水部10は、親水性材料で構成される。親水部10は、親水性フィルムからなる。
【0160】
分離用フィルタ20は、中空糸又は多孔質材の何れかで構成される。分離用フィルタ20は、親水部10の一部の領域に設けられる。
【0161】
分離用フィルタ20は、第1主面21から離間して吸収材25が設けられる。吸収材25は、ポリウレタン等の合成樹脂が発泡成形されるスポンジ等が用いられる。第2主面22は、親水部10の一部の領域に設置される。
【0162】
収容器210は、分離装置1を収容可能なものである。収容器210は、挿入部220と、保存液230と、温度センサ240と、温度制御部250と、バッテリー260とを有する。
【0163】
挿入部220は、基材30の回収口32に挿入可能なものである。挿入部220は、例えば、針状に形成される。
【0164】
保存液230は、分離した血清又は血漿を保存するためのものである。保存液230は、例えば、EDTA等が用いられる。
【0165】
温度センサ240は、収容器210の内部の温度を検知するものである。温度センサ240は、既知の温度センサを用いればよい。
【0166】
温度制御部250は、収容器210の内部の温度を制御するものである。温度制御部250は、温度センサ240により検知された収容器210の内部の温度に応じて、所定の温度になるように制御される。温度制御部250は、ペルチェ素子や電子回路で構成される。温度制御部250は、ペルチェ素子に電位を印加することにより、加温及び冷却することができる。
【0167】
バッテリー260は、温度センサ240や温度制御部250に電力を供給するものである。
【0168】
次に、保存装置200を用いて血清又は血漿を保存するための保存方法について説明する。図22は、実施形態における保存装置200の第1例の分離装置1を用いて液体状の検体から血清又は血漿を分離する方法を説明するための図である。図23は、実施形態における保存装置200の第1例を用いて血清又は血漿を保存するための保存方法を説明するための図である。
【0169】
図22に示すように、まず第2側壁394が下側になるように分離装置1を設置する。ユーザは、血液を被験者から採取し、採取した血液を液体状の検体として、吸収材25に所定量滴下する。このとき、吸収材25と分離用フィルタ20とは鉤爪部34により離間されている。そして、蓋部70を注入口31に設置し、押出機構71により吸収材25を基材30の内部に向けて押し出す。これにより、血液を吸収した吸収材25が基材30の内部に押し出され、吸収材25に吸収された血液が分離用フィルタ20に到達する。血液は、分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて分離用フィルタ20の第2主面22や端面23に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0170】
親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、端面23から親水部10上に流れることとなる。親水部10上を流れる血清又は血漿は、基材30の内部に収集されることとなる。
【0171】
その後、図23に示すように、分離装置1を収容器210に収容する。収容する際には、基材の回収口32を、収容器210の挿入部220に挿入する。これにより、回収口32に設けられた弁部36を挿入部220が突き破り、基材30の内部に収集された血清又は血漿が保存液230に混合されて、収容器210の内部の保存液230に保存されることとなる。
【0172】
収容器210の内部は、温度センサ240により検知された温度に応じて、温度制御部250により所定の温度に制御されることとなる。
【0173】
本実施形態によれば、血清又は血漿を保存するための保存装置200であって、生体から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置1と、分離装置1を収容可能な収容器210とを備え、分離装置1は、親水性材料で構成される親水部10と、親水部10の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタ20と、を有し、収容器210は、分離した血清又は血漿を保存するための保存液230が収容される。
【0174】
これにより、ユーザは、液体状の検体から分離した血清又は血漿を、そのまま保存液230に保存することができる。このように、分離した血清又は血漿をわざわざ回収して、回収した血清又は血漿を保存容器に移し替える必要がない。このため、血清又は血漿を容易に保存することができる。
【0175】
また、保存装置200に保存した血清又は血漿は、小型であるため、郵送等により送ることができる。このため、液体状の検体を採取した採取機関と、血清又は血漿を分析する分析機関とが、地理的に遠い場合であっても、大型の保存容器を必要とせずに、衛生的に送ることができる。
【0176】
本実施形態によれば、回収口32は、弁部36が設けられ、収容器210は、基材30の回収口32に挿入可能な挿入部220を有する。これにより、回収口32に挿入部220を挿入して、初めて基材30の内部に収集された血清又は血漿が、保存液230内に保存される。これにより、分離した血清又は血漿が、外気に触れることなく、そのまま保存液230で保存液230に保存することができる。このため、血清又は血漿の劣化を防止することが可能となる。
【0177】
本実施形態によれば、分離装置1は、注入口31を蓋するための蓋部70を有し、蓋部70は、注入口31に設けられた液体状の検体を吸収するための吸収材25を、基材30の内部に押し出すための押出機構71を有し、基材30は、吸収材25と分離用フィルタ20との間に、鉤爪部34を有する。これにより、押出機構71を押し出す前の状態において、吸収材25が分離用フィルタ20に接触するのを防止することができる。そして、押出機構71を押し出して吸収材25を分離用フィルタ20に接触させることで、吸収材25に吸収された血液が、分離用フィルタ20に到達するし、血清又は血漿の分離を開始することができる。このため、血清又は血漿の分離を開始する時期を、ユーザ側で制御することが可能となる。
【0178】
また、本実施形態によれば、液体状の検体を吸収するための吸収材25を有する。これにより、吸収材25が吸収できる上限が予め定められていることから、液体状の検体の量を定量化することができる。このため、一定量の液体状の検体から、血清又は血漿を分離することができる。
【0179】
図24は、実施形態における保存装置200の第2例を示す図である。
【0180】
保存装置200は、血清又は血漿を保存するためのものである。保存装置200は、分離装置1と、収容器210とを備える。分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、基材30と、蓋部70と、を備える。
【0181】
基材30は、上壁391に注入口31を有する。
【0182】
かかる場合であっても、保存装置200の第1例と同様の作用効果を発揮させることが可能となる。
【0183】
(センサ300の実施形態)
図25を参照して、実施形態におけるセンサ300の第1例について説明する。図25は、実施形態におけるセンサ300の第1例を示す図である。
【0184】
センサ300は、血清又は血漿を保存するためのものである。センサ300は、分離装置1と、測定部310とを備える。分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、一対の基材30と、スペーサー80と、を備える。
【0185】
基材30は、板状に形成される。基材30は、例えば、プラスチック、金属等で構成される。基材30は、外形が直方体状に形成される。
【0186】
一対の基材30のうち、一方を第1基材30-1とし、他方を第2基材30-2とする。第1基材30-1の端部と第2基材30-2の端部との間に、検体を注入するための注入口31が形成される。第1基材30-1と第2基材30-2との間には、注入口31から離間してスペーサー80が設けられる。スペーサー80が設けられることによって、第1基材30-1と第2基材30-2との間には空間が形成される。第1基材30-1と第2基材30-2との間には、注入口31側に第1空間Pが形成され、分離用フィルタ20を挟んで第1空間Pの反対側に第2空間Qが形成される。
【0187】
第1基材30-1に直交する断面において、第1空間Pの断面積は、第2空間Qの断面積よりも大きくなる。
【0188】
第1基材30-1は、分離用フィルタ20を挟んで第1空間P側と第2空間Q側とに、親水部10が設けられる。第2基材30-2は、分離用フィルタ20を挟んで第1空間P側に、親水部10が設けられる。第1基材30-1における親水部10と第2基材30-2における親水部10とは、向かい合って配置され、互いに離間されて配置される。第1基材30-1における親水部10と第2基材30-2における親水部10との距離は、十分狭く、液体状の検体の毛細管現象が展開される程度の距離で構成される。
【0189】
分離用フィルタ20は、親水部10の一部の領域に設けられる。分離用フィルタ20は、第1基材30-1における親水部10と第2基材30-2における親水部10との間に設けられる。
【0190】
測定部310は、分離装置1により分離した血清又は血漿から生体物質を測定するものである。測定部310は、反応部320と、変換部330と、制御電極340と、温度制御部350を有する。
【0191】
反応部320は、分離した血清又は血漿と化学反応させるためのものである。反応部320は、第1基材30-1と第2基材30-2の間に設けられる。反応部320は、分離用フィルタ20を挟んで注入口31とは反対側に設けられる。反応部320は、例えば、ニトロセルロース、ポリエステル等の化学繊維、綿、ナノセルロース、金属細線、プラスチックフィルタ等で構成される。反応部320は、抗体、酵素、緩衝液、試薬、DNA、RNA、蛍光物質、Rnace、Dnace、ウィルス、微小金属、触媒、ゼオライト等の多孔質物質、コラーゲン、ペプチド、シュクロース、トレハロース、マルトース等が1以上含まれる。反応部320は、分離した血清又は血漿と反応層140との間で生じる化学反応を発生させるものが用いられてもよい。
【0192】
変換部330は、分離した血清又は血漿と反応部320との化学反応に基づいて発生する電子を信号に変換するものである。変換部330は、例えば、作用極、参照極、対極とで構成される。変換部330は、例えば、定電圧法、定電流法、サイクリックボルタンメトリー等により、分離した血清又は血漿と反応部320との化学反応により発生する電子を、電気信号に変換する。測定部310は、変換部330により電子を信号に変換することにより、生体物質の定量的な測定をすることができる。
【0193】
変換部330は、分離した血清又は血漿と反応部320との化学反応に基づいて発生する光を信号に変換するものであってもよい。変換部330は、導波路で構成される。変換部330は、例えば、定電圧法、定電流法、サイクリックボルタンメトリー等により、分離した血清又は血漿と反応部320との化学反応に基づいて発生する光を、電気信号に変換する。測定部310は、変換部330により光を信号に変換することにより、生体物質の定量的な測定をすることができる。
【0194】
変換部330は、第1基材30-1と第2基材30-2の間に設けられる。変換部330は、第1基材30-1とスペーサー80との間に固定される。変換部330は、第2基材30-2とスペーサー80との間に固定されてもよい。変換部330は、分離用フィルタ20を挟んで注入口31とは反対側に設けられる。
【0195】
制御電極340は、温度制御部350に電流及び電圧を付与するものである。制御電極340は、1つ又は複数の電極で構成される。
【0196】
制御電極340は、第1基材30-1と第2基材30-2の間に設けられる。制御電極340は、第2基材30-2とスペーサー80との間に固定される。なお、制御電極340は、第1基材30-1とスペーサー80との間に固定されてもよい。制御電極340は、分離用フィルタ20を挟んで注入口31とは反対側に設けられる。
【0197】
制御電極340は、例えば、交流による電流を付与することにより、ローレンツ力により、反応部320に含まれる微粒子にブラウン運動を発生させ、血清又は血漿と反応部320との反応が促進させることができる。
【0198】
温度制御部350は、第1基材30-1と第2基材30-2との間の空間の温度を制御するものである。温度制御部350は、第1基材30-1と第2基材30-2との間の空間の温度を、制御電極340により所定の温度になるように制御するものである。温度制御部350は、ペルチェ素子や電子回路で構成される。温度制御部350は、制御電極により電位を印加することにより、第1基材30-1と第2基材30-2との間の空間を、加温及び冷却することができる。
【0199】
温度制御部350は、例えば、加温により、反応部320に含まれる微粒子にブラウン運動を発生させ、血清又は血漿と反応部320との反応が促進させることができる。
【0200】
温度制御部350は、第1基材30-1と第2基材30-2の間に設けられる。温度制御部350は、第2基材30-2に固定される。温度制御部350は、第1基材30-1に固定されてもよい。温度制御部350は、分離用フィルタ20を挟んで注入口31とは反対側に設けられる。
【0201】
次に、センサ300を用いて生体物質を測定するための測定方法について説明する。
【0202】
ユーザは、被験者から血液を採取し、採取した血液を液体状の検体として、注入口31から血液を注入する。これにより、注入口31から注入された血液は、第1基材30-1と第2基材30-2との間を、毛細管現象に基づいて分離用フィルタ20に到達する。そして、血液は、分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて第2空間Q側に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0203】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、分離用フィルタ20から親水部10上に流れることとなる。このため、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0204】
分離用フィルタ20により分離した血清又は血漿は、反応部320に到達する。反応部320に到達した血清又は血漿は、反応部320と化学反応することとなる。そして、化学反応により発生する電子又は光を変換部330により信号に変換することにより、測定部310は、血清又は血漿から化学反応を示した生体物質を測定することができる。
【0205】
本実施形態によれば、生体物質を測定するためのセンサであって、生体から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置1と、分離装置1により分離した血清又は血漿から生体物質を測定する測定部310とを備え、前記分離装置1は、親水性材料で構成される親水部10と、親水部10の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタ20と、を有し、測定部310は、分離した血清又は血漿と化学反応させるための反応部320と、血清又は血漿と前記試薬との化学反応に基づいて発生する電子を信号に変換する変換部330と、を有する。
【0206】
本実施形態によれば、生体物質を測定するためのセンサであって、生体から採取される採取物を含む液体状の検体から血清又は血漿を分離するための分離装置1と、分離装置1により分離した血清又は血漿から生体物質を測定する測定部310とを備え、前記分離装置1は、親水性材料で構成される親水部10と、親水部10の一部の領域に設けられるとともに、中空糸又は多孔質材料で構成される分離用フィルタ20と、を有し、測定部310は、分離した血清又は血漿と化学反応させるための反応部320と、血清又は血漿と前記試薬との化学反応に基づいて発生する光を信号に変換する変換部330と、を有する。
【0207】
これにより、ユーザは、液体状の検体から分離した血清又は血漿から生体物質を測定することができる。このため、目的とする生体物質をより簡便に測定することができる。
【0208】
また、本実施形態によれば、第1基材30-1と第2基材30-2との間には、注入口31から離間してスペーサー80が設けられる。これにより、第1基材30-1と第2基材30-2との間の空間を保持することができる。このため、注入口31から注入された液体状の検体が、毛細管現象に基づいて分離用フィルタ20に到達することができる。
【0209】
図26は、実施形態におけるセンサ300の第2例を示す平面図である。
【0210】
センサ300は、分離装置1と、測定部310と、を備える。分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、基材30とを備える。
【0211】
基材30は、板状に形成され、液体状の検体を注入するための注入口31と、注入口31から繋がる溝状の流路37を有する。流路37は、親水部10が設けられる。流路37は、分岐部37aから複数(図示では2つ)の流路37に分岐する。また、分岐部37aから分岐した2つの流路37は、更に分岐部37b及び分岐部37cからそれぞれ2つの流路37に分岐する。分岐部37b及び分岐部37cから分岐した4つの流路37の端部には、測定部310が設けられる。流路37は、注入口31と分岐部37aとの間に、分離用フィルタ20が設けられる。
【0212】
次に、センサ300を用いて生体物質を測定するための測定方法について説明する。
【0213】
ユーザは、被験者から血液を採取し、採取した血液を液体状の検体として、注入口31から血液を注入する。これにより、注入口31から注入された血液は、流路37を介して分離用フィルタ20に到達する。そして、血液は、分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて分岐部37a側に向けて流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0214】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、分離用フィルタ20から親水部10上に流れることとなる。このため、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0215】
分離用フィルタ20により分離した血清又は血漿は、分岐部37aから2つの流路37に分岐される。そして、分岐部37b及び分岐部37cに到達した血清又は血漿は、さらに4つの流路37に分岐され、4つの流路37の端部に設けられた各々の測定部310に到達する。これにより、各々の測定部310は、血清又は血漿から化学反応を示した生体物質を測定することができる。このように、生体物質の測定を、同時に複数行うことができる。各々の測定部310は、同一の生体物質を測定するものであってもよいし、異なる生体物質を測定するものであってもよい。
【0216】
図27は、実施形態におけるセンサ300の第3例を示す平面図である。図28は、実施形態におけるセンサ300の第4例を示す平面図である。
【0217】
センサ300は、分離装置1と、測定部310と、を備える。分離装置1は、親水部10と、分離用フィルタ20と、基材30とを備える。
【0218】
基材30は、平面視円形状の板状に形成される。基材30は、平面視における略中央に液体状の検体を注入するための注入口31と、注入口31から放射状に延びる溝状の4つの流路37を有する。流路37は、親水部10が設けられる。各々の流路37の端部には、測定部310が設けられる。図27に示すように、分離用フィルタ20は、流路37上であって、注入口31と測定部310との間に設けられる。また、図28に示すように、分離用フィルタ20は、各々の流路37への分岐点である注入口31に、設けられてもよい。
【0219】
次に、センサ300を用いて生体物質を測定するための測定方法について説明する。
【0220】
ユーザは、被験者から血液を採取し、採取した血液を液体状の検体として、注入口31から血液を注入する。これにより、注入口31から注入された血液は、分離用フィルタ20に到達する。そして、血液は、分離用フィルタ20内を毛細管現象に基づいて測定部310側に向けて流路37を流れていくこととなる。血液は、分離用フィルタ20を流れることにより、血漿又は血清が分離される。
【0221】
そして、親水部10は、親水性材料で構成される。これにより、親水部10に到達した血清又は血漿は、親水部10に吸収されることなく、分離用フィルタ20から親水部10上に流れることとなる。このため、血清又は血漿を液体の状態で取り出すことが可能となる。
【0222】
分離用フィルタ20により分離した血清又は血漿は、4つの流路37の端部に設けられた測定部310に到達する。これにより、測定部310は、血清又は血漿から化学反応を示した生体物質を測定することができる。
【0223】
以上、この発明の実施形態のいくつかを説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、これらの実施形態は、適宜組み合わせて実施することが可能である。さらに、この発明は、上記いくつかの実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記いくつかの実施形態のそれぞれは、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0224】
1 :分離装置
10 :親水部
11 :第1主面
12 :第2主面
13 :端面
14 :溝
14a :底面
14b :側面
15 :収集部
16 :嵌合部
16a :拡径部
16b :開口部
20 :分離用フィルタ
21 :第1主面
22 :第2主面
23 :端面
25 :吸収材
30 :基材
30a :内面
31 :注入口
32 :回収口
34 :鉤爪部
36 :弁部
37 :流路
391 :上壁
392 :下壁
393 :第1側壁
394 :第2側壁
40 :疎水部
50 :吸引部
51 :透過フィルタ
59 :容器
60 :送気部
61 :透過フィルタ
70 :蓋部
71 :押出機構
80 :スペーサー
90 :支持部材
91 :突起部
92 :挟持部
100 :検出装置
110 :検出部
120 :浸透層
130 :反射防止層
140 :反応層
150 :透明層
200 :保存装置
210 :収容器
220 :挿入部
230 :保存液
240 :温度センサ
250 :温度制御部
260 :バッテリー
300 :センサ
310 :測定部
320 :反応部
330 :変換部
340 :制御電極
350 :温度制御部
8 :保管容器
9 :回収装置
93 :先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
図19
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図25
図26
図27
図28