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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】放射線遮蔽構造
(51)【国際特許分類】
   G21F 3/04 20060101AFI20231211BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G21F3/04
G21F3/00 F
G21F3/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023133518
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207370(JP,A)
【文献】特開2017-207371(JP,A)
【文献】特開平09-297193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3/00- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状に広がりをもって配置される複数個の放射線遮蔽ブロックと、
前記放射線遮蔽ブロックにはめ込まれる放射線遮蔽筒と、を備え、
前記放射線遮蔽ブロックは、第1凹部が設けられる第1面と、第2凹部が設けられる前記第1面に対向する第2面と、第3面と、前記第3面に対向する第4面とを有し、
積み上げられた前記放射線遮蔽ブロック同士は、前記第1面と前記第2面が接するとともに、列状に並べられた前記放射線遮蔽ブロック同士は、前記第3面と前記第4面が接する状態で配置され、
前記放射線遮蔽ブロックは、ブロック容器と、前記ブロック容器に充填される水溶液で構成され、
前記放射線遮蔽筒は、前記第1凹部にはめ込まれるとともに、前記第2凹部にはめ込まれ
前記第3面は第3凹部が設けられるとともに前記第4面は突出嵌合部が設けられ、前記突出嵌合部は、前記第3凹部、前記第1凹部にはめ込まれる放射線遮蔽筒、および前記第2凹部にはめ込まれる放射線遮蔽筒によって画定される嵌合孔にはめ込まれ、
前記突出嵌合部は、前記第1凹部の底面に接続する第1突出面と、前記第2凹部の底面に接続する第2突出面と、を有し、前記第1突出面は第1凸部が設けられ、前記第2突出面は第2凸部が設けられ、
前記放射線遮蔽筒は、前記第1凸部、および前記第2凸部をはめ込むための筒孔が設けられることを特徴とする放射線遮蔽構造。
【請求項2】
前記第1凸部は、前記水溶液を充填/排出するための第1キャップが設けられ、前記第2凸部は、前記水溶液を充填/排出するための第2キャップが設けられることを特徴とする請求項に記載の放射線遮蔽構造。
【請求項3】
前記ブロック容器は第5面と、第6面と、を有し、前記第5面および/または前記第6面は、前記放射線遮蔽ブロックの内圧の変化を吸収するための圧力吸収部が設けられることを特徴とする請求項に記載の放射線遮蔽構造。
【請求項4】
前記圧力吸収部は、前記放射線遮蔽筒が延びる方向と直交する方向に延びる凹凸形状の凹凸形状部を含むことを特徴とする請求項に記載の放射線遮蔽構造。
【請求項5】
面状に広がりをもって配置される複数個の放射線遮蔽ブロックと、
前記放射線遮蔽ブロックにはめ込まれる放射線遮蔽筒と、を備え、
前記放射線遮蔽ブロックは、第1凹部が設けられる第1面と、第2凹部が設けられる前記第1面に対向する第2面と、第3面と、前記第3面に対向する第4面とを有し、
積み上げられた前記放射線遮蔽ブロック同士は、前記第1面と前記第2面が接するとともに、列状に並べられた前記放射線遮蔽ブロック同士は、前記第3面と前記第4面が接する状態で配置され、
前記放射線遮蔽筒は、前記第1凹部にはめ込まれるとともに、前記第2凹部にはめ込まれ
前記放射線遮蔽筒は、角筒容器と、前記角筒容器に充填される水溶液で構成されることを特徴とする放射線遮蔽構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を遮蔽するための壁構造となる放射線遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の国際状況は、軍事的な緊張関係が高まっており、ミサイル攻撃による建物破壊や、場合によっては核を使用した攻撃等がなされるリスクがある。諸外国では、このような軍事攻撃等から身を守るために、シェルターが多数設置されているが、我が国においては、シェルター等の施設はほとんどないのが現状である。一方、我が国では、地震や台風等の自然災害が毎年のように発生するが、これら災害から避難する場所は、市区町村等が準備している自治体内の体育館や公民館等の既存の施設に限られており、災害に特化したシェルターはほとんど用意されていない。
【0003】
緊迫する国際状況に鑑みて、我が国においても、戦争や天変地異等の緊急事態が発生した場合に備えて、放射線遮蔽性能を具備するいわゆる核シェルターの設置要望が高まっている。
【0004】
核シェルターが築造可能となると考えられる放射線遮蔽構造物について、種々の提案がなされている。
【0005】
特許文献1は、列状に並べられた複数の放射線遮蔽ブロックを上下段違いで積み上げた放射線遮蔽体が提案されている。放射線遮蔽ブロックは、隣接する一方の放射線遮蔽ブロックの端面に形成され先端へ向かって幅狭となる凸部と、隣接する並列に配置された他方の前記放射線遮蔽ブロックの端面に形成され、放射線遮蔽ブロックの内側へ向かって幅狭となり凸部と係合する凹部と、を有している。
【0006】
特許文献2は、高機能セラミックコンクリートを、木造建築、又は鉄骨造建築、又は鉄筋コンクリート造建築、または鉄骨鉄筋コンクリート造建築、および/または構造物の外壁材、または内壁材として適合させた放射線遮蔽建築および/または放射線遮蔽構造物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-207371号公報
【文献】特開2013-195416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2で提案されている発明は、ブロック同士の接触部の構造が複雑となるという問題があった。また、複数個のブロックを使用する必要がある。さらに、コンクリートを主原料に使用していることから、ブロックの軽量化が難しい。
【0009】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、施工性に優れ、軽量化が可能となる放射線遮蔽構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための発明は、放射線遮蔽構造であって、面状に広がりをもって配置される複数個の放射線遮蔽ブロックと、放射線遮蔽ブロックにはめ込まれる放射線遮蔽筒と、を備え、放射線遮蔽ブロックは、第1凹部が設けられる第1面と、第2凹部が設けられる第1面に対向する第2面と、第3面と、第3面に対向する第4面とを有し、積み上げられた放射線遮蔽ブロック同士は、第1面と第2面が接するとともに、列状に並べられた放射線遮蔽ブロック同士は、第3面と第4面が接する状態で配置され、放射線遮蔽筒は、第1凹部にはめ込まれるとともに、第2凹部にはめ込まれることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、放射線遮蔽ブロックは、第1凹部が設けられる第1面と、第2凹部が設けられる第1面に対向する第2面とを有しており、積み上げられた放射線遮蔽ブロック同士は、第1面と第2面が接している。また、放射線遮蔽筒は、第1凹部にはめ込まれるとともに、第2凹部にはめ込まれることで、積み上げられた放射線遮蔽ブロック同士の面外方向の変位を拘束できる。また、列状に並べられた放射線遮蔽ブロック同士を、第3面と第4面が接する状態で配置して、放射線遮蔽筒を第2凹部にはめ込んだ後に、積み上げた放射線遮蔽ブロックの第1凹部にはめ込むことで放射線遮蔽構造を築造できる。
【0012】
好ましくは、第3面は第3凹部が設けられるとともに第4面は突出嵌合部が設けられ、突出嵌合部は、第3凹部、第1凹部にはめ込まれる放射線遮蔽筒、および第2凹部にはめ込まれる放射線遮蔽筒によって画定される嵌合孔にはめ込まれることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第3面は第3凹部が設けられるとともに第4面は突出嵌合部が設けられ、突出嵌合部は、第3凹部、第1凹部にはめ込まれる放射線遮蔽筒、および第2凹部にはめ込まれる放射線遮蔽筒によって画定される嵌合孔にはめ込まれるので、放射線遮蔽ブロック間相互の接合関係がより一層強固になる。さらに、接合部は迷路のような複雑な形状となることから、接合部からの放射線の漏洩が抑制される。
【0014】
好ましくは、放射線遮蔽ブロックは、ブロック容器と、ブロック容器に充填される水溶液で構成されることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、放射線遮蔽ブロックは、ブロック容器と、ブロック容器に充填される水溶液で構成されるので、一般に放射線の遮蔽に用いられるコンクリート製のブロックに比べて軽量化を図ることができる。
【0016】
好ましくは、突出嵌合部は、第1凹部の底面に接続する第1突出面と、第2凹部の底面に接続する第2突出面と、を有し、第1突出面は第1凸部が設けられ、第2突出面は第2凸部が設けられ、放射線遮蔽筒は、第1凸部、および第2凸部をはめ込むための筒孔が設けられることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、突出嵌合部は、第1凹部の底面に接続する第1突出面と、第2凹部の底面に接続する第2突出面とを有し、第1突出面は第1凸部が設けられ、第2突出面は第2凸部が設けられ、第1凸部と第2凸部は放射線遮蔽筒に設けられる筒孔にはめ込まれるので、放射線遮蔽ブロックと、放射線遮蔽筒の構造的な一体化を図り得る。また、放射線遮蔽ブロックと、放射線遮蔽筒の相対的な位置関係を一義的に決定し得る。
【0018】
好ましくは、第1凸部は、水溶液を充填/排出するための第1キャップが設けられ、第2凸部は、水溶液を充填/排出するための第2キャップが設けられることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1凸部、第2凸部は、水溶液を充填/排出するための第1キャップ、第2キャップが設けられるので、ブロック容器内に充填されている水溶液を簡単に入れ替えることができる。
【0020】
好ましくは、ブロック容器は第5面と第6面とを有し、第5面および/または第6面は、放射線遮蔽ブロックの内圧の変化を吸収するための圧力吸収部が設けられることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、ブロック容器は第5面と第6面とを有し、第5面および/または第6面は、放射線遮蔽ブロックの内圧の変化を吸収するための圧力吸収部が設けられるので、水溶液の膨張や収縮に起因するブロック容器内の圧力変動を抑制できる。これにより、ブロック容器の耐圧性能の向上を図ることができる。
【0022】
好ましくは、圧力吸収部は、放射線遮蔽筒が延びる方向と直交する方向に延びる凹凸形状の凹凸形状部を含むことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、圧力吸収部は、放射線遮蔽筒が延びる方向と直交する方向に延びる凹凸形状の凹凸形状部を含むので、ブロック容器に凹凸を形成することで、簡単にブロック容器の耐圧性能の向上を図り得る。また、凹凸形状を形成することで、凹凸形状が形成された面の面外剛性を高め得ることができるので、その面の垂れ下がり等の変形を抑制できる。
【0024】
放射線遮蔽筒は、角筒容器と、角筒容器に充填される水溶液で構成されることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、放射線遮蔽筒は、角筒容器と、角筒容器に充填される水溶液で構成されるので、一般に放射線の遮蔽に用いられるコンクリート製のブロックに比べて軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】放射線遮蔽構造の正面図である。ただし、凹凸形状部は省略している。
図2図1のA-A断面図である。ただし、凹凸形状部は省略している。
図3】(a)は、図1のB-B断面図である。(b)は、図1のC-C断面図である。ただし、(a)、(b)とも凹凸形状部は省略している。
図4】(a)は放射線遮蔽ブロックの正面図である。(b)は、同、平面図である。
図5】(a)は、放射線遮蔽筒の平面図である。(b)は、(a)のA-A断面図である。
図6図1のA′-A′部分断面図である。ただし、凹凸形状部は省略している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1~6を参照して本発明の放射線遮蔽構造の実施形態を詳述する。
【0028】
図1~3に示す通り、放射線遮蔽構造1(以後、遮蔽構造1と記す。)は、複数個の放射線遮蔽ブロック10(以後、遮蔽ブロック10と記す。)が面状に広がりをもって配置されており、外縁は枠体60で保持されている。枠体60は、水平枠部材61、62、および鉛直枠部材63、64で構成されている。鉛直枠部材63、64、および水平枠部材61、62が四方に組まれることで、格子状に組まれた遮蔽ブロック10の外縁を保持している。
【0029】
鉛直方向に積み上げられる遮蔽ブロック10同士は、第1面11と第2面12が接し(図2参照)、水平方向に列状に並べられる遮蔽ブロック10同士は、第3面13と第4面14が接しており(図3参照)、これらの複数の遮蔽ブロック10は、格子状に組まれている。
【0030】
本実施形態では、放射線遮蔽構造は建物の外の設置を想定しているが、これに限らず、例えば、建物の内部に設置してもよい。この場合において、水平枠部材は天井に接合してもよいし、鉛直枠部材は、壁面に接合してもよい。さらに、複数の遮蔽構造を組み合わせて、建物の内部に放射線を遮蔽できる空間を創出してもよい。
【0031】
図2に示す通り、水平枠部材61は、溝形の構造部材の内部に第1嵌合凸部65が設けられている。また、水平枠部材61は、ベースプレートBPを介して基礎110に固定されている。アンカーボルトABによってベースプレートBPが基礎110に固定されることで、遮蔽構造1は、安定した起立状態を保ち得る。
【0032】
第1嵌合凸部65は、最下段に位置する遮蔽ブロック10の第1面11に設けられる第1凹部21にはめ込まれている。これにより、最下段に位置する遮蔽ブロック10は、水平枠部材61が延びる方向に列状に整然と並べられ、また、面外方向の変位は拘束される。
【0033】
水平枠部材62は、溝形部材の内部に第2嵌合凸部66が設けられる構造であり、最上段に位置する遮蔽ブロック10の第2面12に面接触している。第2嵌合凸部66は、最上段に位置する遮蔽ブロック10の第2面12に設けられる第2凹部22にはめ込まれている。これにより、最上段に位置する遮蔽ブロック10は、水平枠部材62が延びる方向に列状に整然と並べられ、また、面外方向の移動は拘束される。
【0034】
図3に示す通り、鉛直枠部材63は、溝形部材の内部に第3嵌合凸部67が設けられる構造である。第3嵌合凸部67は、遮蔽ブロック10の第3面13に設けられる第3凹部23にはめ込まれている。
【0035】
鉛直枠部材64は、溝形部材の内部に第4嵌合凹部68が設けられる構造である。第4嵌合凹部68は、遮蔽ブロック10の第4面14に設けられる突出嵌合部24を嵌めこんでいる。
【0036】
図2に示す通り、積み上げられた遮蔽ブロック10同士の第1面11と第2面12が接する状態となることで、第1凹部21と第2凹部22は、協働して空洞部18を画定する。この空洞部18に放射線遮蔽筒40がはめ込まれている。また、放射線遮蔽筒40は空洞部18を貫通しており、一端は、鉛直枠部材63に接続し、他端は、鉛直枠部材64に接続している。
【0037】
図3に示す通り、第3面13と第4面14が接する状態となることで、第4面14に設けられる突出嵌合部24の先端は、第3面13に設けられる第3凹部23の底部に接触する。突出嵌合部24は、第3凹部23に挿入できる形状となっており、かつ、図4(a)に示す通り、第1凹部21の底面21aと同一平面に設けられる第1突出面31と、第2凹部22の底面22aと同一平面に設けられる第2突出面32を有している。したがって、第1突出面31は、第1凹部21にはめ込まれる放射線遮蔽筒40に面接触し、第2突出面32は、第2凹部22にはめ込まれる放射線遮蔽筒40(以後、遮蔽筒40と記す。)に面接触する状態となる。すなわち、突出嵌合部24は、第3凹部23、第1凹部21にはめ込まれる遮蔽筒40、および第2凹部22にはめ込まれる遮蔽筒40によって画定される嵌合孔45にはめ込まれる状態となっている。
【0038】
遮蔽ブロック10は、ブロック容器50と、ブロック容器50に充填される水溶液W1で構成される(図2参照)。ブロック容器50は、第1面11、第2面12、第3面13、第4面14、第5面15、および第6面16から構成される略直方体の容器である(図4(a)、(b)参照)。ブロック容器50の材質は、耐熱性能に優れ、変形しづらい素材であることが好ましい。具体的にはポリカーボネートがあげられる。また、ブロック容器50を透明や半透明な素材とすることで、インテリア性に優れたものとすることができる。
【0039】
ブロック容器50に充填する水溶液W1は、経年変化が少なく、放射線、特に中性子の遮蔽性能に優れたものであることが好ましい。具体的には、ホウ酸水等があげられる。
【0040】
図5(b)に示す通り、遮蔽筒40は、角筒容器55と、角筒容器55に充填される水溶液W2で構成されている。角筒容器55の材質は、ブロック容器50の素材と異なってもよいが、変形しづらい素材であることが好ましい。ブロック容器50と同様のプラスチック系の素材であってもよいが、金属製の素材であってもよい。また角筒容器55に充填される水溶液W2は、ブロック容器50に充填される水溶液W1と同様に、経年変化が少なく、放射線、特に中性子の遮蔽性能に優れたものであることが好ましい。具体的には、ホウ酸水等があげられる。
【0041】
図4(a)、(b)に示す通り、第1突出面31に第1口栓35が、第2突出面32に第2口栓36が設けられている。第1口栓35、第2口栓36は、ブロック容器50に水溶液W1を充填する、あるいはブロック容器50に充填されている水溶液W1を排出するための栓である。図6に示す通り、第1口栓35は、ねじ溝35aが、第2口栓36は、ねじ溝36aが設けられている。また、第1口栓35、第2口栓36を開閉するための、第1キャップ37、第2キャップ38には、ねじ溝35a、36aに対応するねじ溝37a、38aが設けられている。ねじ溝35aと37aを、またねじ溝36aと38aをねじ嵌め、あるいは取り外すことで、第1口栓35、第2口栓36は閉栓、あるいは開放される。
【0042】
第1突出面31は、突出嵌合部24に設けられた面であり、第1凹部21の底面21aの端部から水平に伸びており、第1凹部21の底面21aと同一面上に位置している。第2突出面32は、突出嵌合部24に設けられた面であり、第2凹部22の底面22aの端部から水平に伸びており、第2凹部22の底面22aと同一面上に位置している。第1口栓35は第1突出面31から垂直方向に突出して設けられている。また、第2口栓26は、第2突出面32から垂直方向に突出して設けられている。
【0043】
第1凸部33は、第1口栓35と第1キャップ37で構成され、第2凸部34は、第2口栓36と第2キャップ38で構成される。
【0044】
第5面15、第6面16に凹凸形状部25が設けられている。凹凸形状部25は、第1面11、あるいは第2面12に直交する方向に延びる凹凸形状の部位であり、ブロック容器50の内圧の変化を吸収するために設けられたものである。具体的には、ブロック容器50内の内圧が増加したとき、突出部25aが突出する方向に変形することで圧力の増加を吸収する。また、ブロック容器50内の内圧が減少したとき、陥没部25bが陥没する方向に変形することで圧力の減少を吸収する。さらに、凹凸形状が設けられることによって、第5面15、第6面16の面外方向への垂れさがりを防止できる。
【0045】
図5(a)、(b)に示す通り、遮蔽筒40の角筒容器55は、所定間隔で第1キャップ37、第2キャップ38に対応する筒孔56が設けられている。第1キャップ37、第2キャップ38を角筒容器55に設けられた筒孔56にはめ込むことで(図6参照)、角筒容器55とブロック容器50の相対位置を一義的に決定できる。また、角筒容器55とブロック容器50の構造的な一体化を図ることができる。
【0046】
本実施形態の放射線遮蔽構造についての築造方法を説明する。
【0047】
水平枠部材61をベースプレートBPに固定する。鉛直枠部材63、64を建て込んで水平枠部材61の両端部に接続する。
【0048】
遮蔽ブロック10を水平枠部材61の溝61aの中に落とし込んで列状に並べ、水平枠部材61に面接触させる。このとき、水平枠部材61の内部は、第1面11に面接触するとともに、第5面15、および第6面16の一部と面接触する。さらに、水平枠部材61の内部に設けられた嵌合凸部65が、第1凹部21にはめ込まれるとともに、第1キャップ37は、水平枠部材61の篏合凸部65に設けられた水平枠孔61b(図示略)にはめ込まれる。列状に並べられた最下段の遮蔽ブロック10のうち鉛直枠部材63に接触する遮蔽ブロック10は、第3凹部23が、鉛直枠部材63に設けられた第3嵌合凸部67をはめ込んでいる。また、鉛直枠部材64に接触する遮蔽ブロック10は、突出嵌合部24が、第4嵌合凹部68にはめ込まれている。
【0049】
最下段の遮蔽ブロック10を列状に並べ終えた後に、遮蔽筒40を落とし込んで最下段に位置する遮蔽ブロック10に設けられた第2凹部22にはめ込む。このとき、遮蔽筒40の一端は鉛直枠部材63に設けられる第3篏合凸部67に接触し、他端は鉛直枠部材64に設けられる第4篏合凹部68にはめ込まれる。また、遮蔽ブロック10の第2キャップ38が筒孔56にはめ込まれる。
【0050】
その後さらに遮蔽ブロック10を落とし込んで、最下段の遮蔽ブロック10の上に積み上げて、列状に並べる。最下段の遮蔽ブロック10の第2面12と、積み上げた遮蔽ブロック10の第1面11が面接触するとともに、遮蔽筒40が、積み上げた遮蔽ブロック10の第1凹部21にはめ込まれる。積上げた遮蔽ブロック10の第1キャップ37が、遮蔽筒40の筒孔56にはめ込まれる。また、積み上げられた遮蔽ブロック10のうち、鉛直枠部材63に接触する遮蔽ブロック10に設けられた第3凹部23は、鉛直枠部材63に設けられた第3篏合凸部67をはめ込んでいる。鉛直枠部材64に接触する遮蔽ブロック10に設けられた突出嵌合部24は鉛直枠部材64に設けられる第4篏合凹部68にはめ込まれる。
【0051】
上述した手順を繰り返して、遮蔽ブロック10を最上段まで積み上げる。その後、水平枠部材62を落とし込んで、最上段の遮蔽ブロック10に面接触させるとともに、鉛直枠部材63、64と接続する。このとき、水平枠部材62に設けられる第2嵌合凸部66は、最上段の遮蔽ブロック10に設けられる第2凹部22にはめ込まれるとともに、最上段の遮蔽ブロック10の第2キャップ38は、第2篏合凸部66に設けられた水平枠孔62b(図示略)にはめ込まれる。
【0052】
上述したように、放射線遮蔽構造の築造については、遮蔽ブロック10と遮蔽筒40を交互に積み上げる工程を経ることでほぼ完成させることができる。すなわち、目地の敷設等の工程は不要であり、極めて簡単に築造できる。
【0053】
本実施形態は例示であり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で改変できることは勿論である。例えば、凹凸形状部は第5面、第6面のいずれか一方の面のみに設けてもよい。ブロック容器、遮蔽筒に充填する物質は、必ずしも水溶液でなくてもよい。例えば、放射性遮蔽性能を具備する粒状物質であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る遮蔽構造は、建物の外、内を問わず設置できる。また、ブロック容器を透明、半透明の容器とすることでインテリア性の高い放射線遮蔽壁を構築できることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0055】
1 :遮蔽構造
10 :遮蔽ブロック
11 :第1面
12 :第2面
13 :第3面
14 :第4面
15 :第5面
16 :第6面
21 :第1凹部
21a、22a :底面
22 :第2凹部
23 :第3凹部
24 :突出嵌合部
25 :凹凸形状部
31 :第1突出面
32 :第2突出面
37 :第1キャップ
38 :第2キャップ
40 :遮蔽筒
50 :ブロック容器
55 :角筒容器
56 :筒孔
W1、W2 :水溶液
【要約】
【課題】施工性に優れ、軽量化が可能となる放射線遮蔽構造を提供する。
【解決手段】面状に広がりをもって配置される複数個の放射線遮蔽ブロック10と、放射線遮蔽ブロック10にはめ込まれる放射線遮蔽筒40を備えている。放射線遮蔽ブロック10は、第1凹部21が設けられる第1面11と、第2凹部22が設けられる第1面11に対向する第2面12を有している。積み上げられた放射線遮蔽ブロック10同士は、第1面11と第2面12が接するとともに、列状に並べられた放射線遮蔽ブロック10同士は、第3面と第4面が接する状態で配置されている。放射線遮蔽筒40は、第1凹部21にはめ込まれるとともに、第2凹部22にはめ込まれている。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6