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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】紙葉類搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/24 20060101AFI20231211BHJP
   A63F 7/02 20060101ALI20231211BHJP
   B65H 5/22 20060101ALI20231211BHJP
   G07D 11/16 20190101ALI20231211BHJP
【FI】
B65H29/24 A
A63F7/02 352F
B65H5/22 A
G07D11/16
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023188158
(22)【出願日】2023-11-02
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108247
【氏名又は名称】株式会社ジェッター
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100096105
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 広
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】舛本 貴司
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特許第7123453(JP,B1)
【文献】特開2013-60307(JP,A)
【文献】特開2021-195234(JP,A)
【文献】特開2023-114896(JP,A)
【文献】特開2017-186133(JP,A)
【文献】特開2021-106754(JP,A)
【文献】特開2021-91514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/24
A63F 7/02
B65H 5/22
G07D 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトと、
前記ダクトの一端において前記ダクトと連通するように配置された紙葉類収容室と、
前記ダクト内を走行可能なガンズキャリーと、
前記ダクト内において前記紙葉類収容室に向かう方向に空気流を発生させる第一送風機と、
前記ダクト内において前記紙葉類収容室に向かう方向とは逆の方向に空気流を発生させる第二送風機と、
前記紙葉類収容室の手前で前記ダクトから分岐し、前記ガンズキャリーを収容するガンズキャリー収納用ダクトと、
を備え、
前記第一送風機が前記ダクト内に発生させた空気流により前記ダクト内において前記ガンズキャリーを走行させ、前記ガンズキャリーは前記ダクト内に投入された紙葉類を前記紙葉類収容室まで搬送し、
前記ダクトは、前記紙葉類のみが通過可能な第一領域と、前記ガンズキャリーが通過可能な第二領域と、から構成されており、
前記第一領域は前記紙葉類収容室まで延びており、
前記第二領域は前記紙葉類収容室の手前で前記第一領域から分岐し、前記ガンズキャリー収納用ダクトを構成するものである紙葉類搬送装置において、
前記ダクトの前記第一領域は前記ダクトが延びる方向と平行に延びる一対の側壁を有しており、
前記一対の側壁の少なくとも何れか一方には前記紙葉類の走行を停止させる紙葉類ストッパーが形成されており、
前記紙葉類ストッパーは前記第一送風機による空気流のみに押されて走行する紙葉類は停止させ、前記ガンズキャリーにより押されて走行する紙葉類は通過させるものであることを特徴とする紙葉類搬送装置。
【請求項2】
前記紙葉類ストッパーは三角柱の形状をなしており、前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記一対の側壁の一方からの距離が徐々に大きくなる斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項3】
前記紙葉類ストッパーの前記一対の側壁の一方から高さは前記一対の側壁の一方と前記一対の側壁の他方との間の長さの半分を超えることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項4】
前記紙葉類ストッパーは前記ガンズキャリー収納用ダクトの手前に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項5】
前記第一領域は前記第二領域から上下方向に突出しており、
前記紙葉類ストッパーは、前記第二領域から上方に突出している前記第一領域及び前記第二領域から下方に突出している前記第一領域の少なくとも何れか一方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項6】
前記第一領域は前記第二領域から上下方向に突出しており、
前記紙葉類ストッパーは、前記第二領域から上方に突出している前記第一領域の一対の側壁の一方に形成されているとともに、前記第二領域から下方に突出している前記第一領域の一対の側壁の他方に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項7】
前記一対の側壁の他方には前記紙葉類ストッパーと同一形状の第二の紙葉類ストッパーが形成されており、
前記第二の紙葉類ストッパーは前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記紙葉類ストッパーの下流に位置していることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項8】
前記第二の紙葉類ストッパーは三角柱の形状をなしており、前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記一対の側壁の他方からの距離が徐々に大きくなる斜面を有していることを特徴とする請求項7に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項9】
前記第二の紙葉類ストッパーの前記一対の側壁の一方から高さは前記一対の側壁の一方と前記一対の側壁の他方との間の長さの半分を超えることを特徴とする請求項7に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項10】
前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記紙葉類ストッパーの下流に位置する第二の紙葉類ストッパーをさらに備えており、
前記第二の紙葉類ストッパーは前記紙葉類ストッパーと同一形状であることを特徴とする請求項5に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項11】
前記第二領域から上方に突出している前記第一領域の一対の側壁の他方及び前記第二領域から下方に突出している前記第一領域の一対の側壁の一方には前記紙葉類ストッパーと同一形状の第二の紙葉類ストッパーが形成されており、
前記第二の紙葉類ストッパーは前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記紙葉類ストッパーの下流に位置していることを特徴とする請求項6に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項12】
前記紙葉類ストッパーは一対の板材からなり、
前記一対の板材の一方は前記一対の側壁の一方から前記第一領域の長さ方向の中心線に向かって前記第一送風機による空気流の下流方向に斜めに延び、前記一対の板材の他方は前記一対の側壁の他方から前記中心線に向かって前記下流方向に斜めに延び、前記一対の板材の先端は前記中心線上において接しており、
前記一対の板材の各先端は前記中心線に向かうように付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項13】
前記一対の板材はバネ鋼でつくられていることを特徴とする請求項12に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項14】
前記一対の板材には鋭角に折り曲げられた折り曲げ部分が形成されており、前記一対の板材の各々の前記折り曲げ部分は前記中心線上において相互に重なり合っていることを特徴とする請求項12に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項15】
前記紙葉類が前記ダクト内に投入される前において、前記ダクトが延びる方向と平行な方向に延びる折り目を前記紙葉類に付ける形成ユニットを備えていることを特徴とする請求項1乃至14の何れか一項に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項16】
前記形成ユニットは、前記ダクトが延びる方向と直交し、かつ、相互に平行である軸線を有する二つのローラーを備えており、
これら二つのローラーは表面に凹凸を有しており、一方のローラーの凸は他方のローラーの凹に篏合し、前記紙葉類はこれら二つのローラーの間に挟まれることにより前記折り目が付与されることを特徴とする請求項15に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項17】
前記二つのローラーの少なくとも何れか一方には前記軸線と平行に延びる少なくとも一つのスリットが形成されていることを特徴とする請求項16に記載の紙葉類搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト内に空気流を発生させることによりダクト内においてガンズキャリーを走行させ、このガンズキャリーを介してダクト内において紙幣その他の紙葉類を搬送する紙葉類搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような紙葉類搬送装置の一例として特許7123453号公報(特許文献1)に記載されたものがある。
図41は同公報に記載された紙葉類搬送装置100の構造及びその周囲の環境を示す概略図である。
図41に示すように、紙葉類搬送装置100は、紙幣その他の紙葉類をその前面で押すことにより当該紙葉類を搬送するガンズキャリー110(図42参照)と、ガンズキャリー110が走行可能な内部空間を有するダクト120と、ガンズキャリー110が搬送してきた紙葉類を収容する紙幣収容室140と、ダクト120内においてガンズキャリー110を紙幣収容室140に向かう方向X1に走行させる空気流を発生させる第一送風機121aと、ダクト120内においてガンズキャリー110を紙幣収容室141から離れる方向に走行させる空気流を発生させる第二送風機121bと、紙幣収容室140の手前でダクト120から分岐するガンズキャリー収納用ダクト130と、を備えている。
図41に示すように、複数個のパチンコ台20その他の遊戯機器が背中合わせになって(または片側のみに)図41の左右方向に一列に配置されており(図41においては、図を単純化するため、1個のパチンコ台20のみを示す)、パチンコ台20の横には紙幣を投入するための紙幣投入装置21が設置されている。紙幣投入装置21に投入された紙幣の額に応じて遊技媒体(パチンコ玉やメダルなど)が払い出される。
【0003】
ダクト120はパチンコ台20の裏側においてパチンコ台20の配列方向(図41の左右方向)と平行に延びるように設置されている。
図42はガンズキャリー110を正面側から見たときの斜視図、図43はガンズキャリー110を背面側から見たときの斜視図である。
図42及び図43に示すように、ガンズキャリー110は、円柱形状の本体部分110aと、本体部分110aの背面側に本体部分110aと連続して形成された半球形状の後方部分110bと、から構成されている。
ガンズキャリー110は本体部分110aの前面110cにおいて紙幣を押して紙幣を搬送する。本体部分110aの前面110cには円周に沿って同一形状の複数個の突起110dが等間隔に形成されている。相互に隣接する2個の突起110dの間に紙幣を挟み込み、紙幣を保持するようになっている。突起110dは、例えば、半球形状をなしている。
ガンズキャリー110は後方部分110bにおいて第一送風機121aからの空気流(風)を受けることにより前進する。
図44はダクト120の斜視図、図45及び図46は紙幣搬送時におけるガンズキャリー110、紙幣50及びダクト120の相互の位置関係を示す斜視図である。
【0004】
ダクト120は、図44に示すように、第一領域120aと第二領域120bとから構成されている。
第一領域120aは上下に長い長方形形状の縦断面を有しており、その高さは紙幣50の短辺50a(図45参照)が通過できる高さであり、その幅は紙幣50が折り曲がっていたり、あるいは、湾曲している場合であっても、紙幣50が十分に通過できる幅である。
第二領域120bは円形の縦断面を有しており、ガンズキャリー110が通過できる大きさ(半径)に設定されている。
第一領域120aと第二領域120bとは部分的に重なり合っている。具体的には、第一領域120aの高さ方向の中心は第二領域120bの中心と一致しており、第一領域120aは第二領域120bから上下の方向に突出している。
【0005】
図45及び図46に示すように、ガンズキャリー110はその前面110cにおいて紙幣50の短辺50aを押し、ダクト120の内部において紙幣50を搬送する。紙幣50はダクト120の第一領域120aを通過し、ガンズキャリー110はダクト120の第二領域120bを通過する。第一領域120aは紙幣50のみが通過可能であり、ガンズキャリー110は第一領域120aを通過することはできない(正確には、ガンズキャリー110は第二領域120bから上下の方向に突出している第一領域120aの部分を通過することはできない)。
第一送風機121a及び第二送風機121bは何れか一方のみが作動するか、あるいは、双方とも作動しない。双方が同時に作動することはない。第一送風機121aが作動すると、ダクト120の内部に収容されているガンズキャリー110の後方部分110bが風圧を受けて、ガンズキャリー110は紙幣収容室140に向う方向X1に走行する。
【0006】
一方、第二送風機121bが作動すると、ダクト120の内部に収容されているガンズキャリー110の本体部分110aの前面110cが風圧を受けて、ガンズキャリー110は紙幣収容室140から離れる方向X2に走行する。
紙幣50は紙幣投入装置21に挿入され、紙幣投入装置21の内部を通過した後にダクト120の内部に投入される。
図47はダクト120及びダクト120から分岐したガンズキャリー収納用ダクト130の部分的横断面図、図48はガンズキャリー収納用ダクト130側から見たときのダクト120及びガンズキャリー収納用ダクト130の部分的斜視図、図49はダクト120側から見たときのダクト120及びガンズキャリー収納用ダクト130の部分的斜視図である。
【0007】
図47乃至図49に示すように、ダクト120を構成する第一領域120a及び第二領域120bのうち、第一領域120aは紙幣収容室140まで延びており、第二領域120bは紙幣収容室140の手前で第一領域120aから左右何れか(図47においては左側)に分岐している。この分岐した第二領域120bがガンズキャリー収納用ダクト130を構成している。ガンズキャリー収納用ダクト130はその先端において第二送風機121bに接続されている。
図50乃至図54はガンズキャリー収納用ダクト130にガンズキャリー110が収納される状態を示す断面図であり、図55乃至図57はガンズキャリー収納用ダクト130からガンズキャリー110が排出される状態を示す断面図である。
図50に示すように、ガンズキャリー収納用ダクト130の内部には、第二送風機121bの手前において、ガンズキャリー110を停止させる円形状のストッパー130cが嵌め込まれている。
【0008】
紙葉類搬送装置100は以下のように動作する。
パチンコ台20の顧客が紙幣投入装置21に紙幣50を投入すると、紙幣50は紙幣投入装置21によってダクト120の内部に投入される。
紙幣投入装置21には紙幣感知センサー(図示せず)が設けられており、紙幣50がダクト120の内部に投入されると、紙幣感知センサーは紙幣投入を示す紙幣投入信号を中央制御装置(図示せず)に送信する。
紙幣投入信号を受信した中央制御装置は第一送風機121aを作動させる。第一送風機121aが作動を開始すると、ダクト120の内部には紙幣収容室140に向う方向X1の空気流(風)が発生する。ガンズキャリー110は、後方部分110bがこの空気流による風圧を受けることにより、本体部分110aを前にして紙幣収容室140に向う方向X1に走行する。
ガンズキャリー110は、紙幣収容室140に到達するまでの間に、ダクト120に投入された紙幣を前面110cで捕捉する。図51に示すように、ガンズキャリー110がガンズキャリー収納用ダクト130に到達すると、ダクト120の第一領域120a内を走行していた紙幣50は第一領域120aが続く方向にそのまま走行を続ける。すなわち、紙幣50は紙幣収容室140に向かって走行を継続し、最終的には、紙幣収容室140に収容される。
【0009】
これに対して、図52に示すように、ガンズキャリー110は湾曲している第二領域120bにガイドされてガンズキャリー収納用ダクト130の内部に進入する。この際、ガンズキャリー収納用ダクト130に設置されているセンサー131がガンズキャリー110の通過を検知し、中央制御装置に1個目のガンズキャリー通過信号を発信する。ガンズキャリー通過信号を受信した中央制御装置は第一送風機121aの作動を一旦停止する。
その後、図53に示すように、ガンズキャリー110はストッパー130cに当たって停止する。ガンズキャリー110はこの停止位置にそのまま止め置かれる。
その後、図54に示すように、2個目から6個目までの5個のガンズキャリー110が1個目のガンズキャリー110と同様にガンズキャリー収納用ダクト130の内部に収容される(この時点において紙幣収容室140には6枚の紙幣50が収容されている)。
【0010】
この後、中央制御装置は第二送風機121bを作動させる。ストッパー130cには空気流を通す孔が形成されており、第二送風機121bが作動すると、第二送風機121bが発生させた空気流はストッパー130cの孔を通ってガンズキャリー110に風圧を及ぼす。
図55及び図56に示すように、第二送風機121bからの空気流(風)の風圧を受けた6個のガンズキャリー110は一団となってガンズキャリー収納用ダクト130からダクト120を経て第一送風機121aに向かって送り返される。
先頭のガンズキャリー110(6個目のガンズキャリー110としてガンズキャリー収納用ダクト130に収容されたガンズキャリー110)が第一送風機121aに到達すると、センサー(図示せず)がガンズキャリー110の到達を検出し、中央制御装置にガンズキャリー到達信号を送信する。
中央制御装置はガンズキャリー到達信号を受信すると、第二送風機121bの作動を停止する。この時点では、図57に示すように、ガンズキャリー収納用ダクト130にはガンズキャリー110は残っていない。
【0011】
第一送風機121aまで到達した6個のガンズキャリー110は1個ずつ所定の格納スペースに格納される。ガンズキャリー110を紙幣収容室140に向かって送り込むときには、ガンズキャリー110は格納スペースから1個ずつ取り出され、第一送風機121aの空気流による風圧を受けて1個ずつ順番にダクト120の内部を紙幣収容室140に向かって発進して行く。
以上の動作が、紙幣50が紙幣投入装置21に投入されてから、紙幣収容室140に収容されるまでの1サイクルの動作である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第7123453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
紙葉類搬送装置100において、紙幣投入装置21に投入される紙幣50の枚数がそれほど多くはない場合(遊技場がそれほど混んでいない場合)には、紙幣50は一枚ずつ紙幣収容室140に搬送されるが、紙幣投入装置21に投入される紙幣50の枚数が多くなる場合(遊技場が混んでいる場合)には、紙幣50は複数枚、例えば、3枚ずつ一度にダクト120に投入し、紙幣収容室140に搬送することが必要となってくる。
図58及び図59は、一例として、3枚の紙幣50を一度に搬送する場合のダクト120の内部の横断面図である。
図58に示すように、3枚の紙幣50A、50B,50Cがダクト120の第一領域120aに投入されている場合を想定する。紙幣50A、50Cは第一領域120aの一対の側壁の各々に接しており、紙幣50Bは紙幣50A、50Cの間に位置している。
図58に示すように、3枚の紙幣50A、50B,50Cが先端を揃えた状態で横一列に整列している場合にガンズキャリー110が到達すると、3枚の紙幣50A、50B,50Cはガンズキャリー110に一様に押されて搬送される。
【0014】
ガンズキャリー110が到達する前の段階においても、ダクト120の内部には第一送風機121aが発生させた空気流が流れている。第一領域120aの一対の側壁の各々に接している紙幣50A、50Cは各側壁との間に摩擦力が作用しているため空気流によって流されることはないが、中央に位置する紙幣50Bは他の2枚の紙幣50A、50Cと接していないため、あるいは、他の2枚の紙幣50A、50Cと接しているとしても、紙幣50A、50Cとの間の摩擦力は微々たるものであるため、図59に示すように、紙幣50Bは空気流によって紙幣収容室140に向かって流されることがある。
図60はガンズキャリー110が到達する前の段階におけるダクト120の内部の3枚の紙幣50A、50B,50Cの挙動を示す横断面図、図61はガンズキャリー110が到達した後の段階におけるダクト120の内部の3枚の紙幣50A、50B,50Cの挙動を示す横断面図である。
図60に示すように、ガンズキャリー収納用ダクト130の手前で先端が横一列に揃っていた3枚の紙幣50A、50B,50Cのうち、中央に位置していた紙幣50Bのみが空気流の作用を受けて一枚だけ飛び出し、ガンズキャリー収納用ダクト130を越えて第一領域120aに進入した場合を想定する。
【0015】
この後、ガンズキャリー110が2枚の紙幣50A、50Cに到達し、ガンズキャリー110は紙幣50A、50Cを押して前方に走行する。ところが、前方には既に紙幣50Bが存在しているため、ガンズキャリー110に押されて前進してきた2枚の紙幣50A、50Cは紙幣50Bに後方から衝突する(紙幣50Bは必ずしも第一領域120aの中央付近にいるわけではなく、第一領域120aの側壁に接近していることもある)。これが紙幣収容室140の入り口で紙幣詰まりを引き起こす原因になっていた(図61参照)。
このような紙幣詰まりは3枚のみならず3枚以上の紙幣50を搬送するときに共通する問題である(2枚の紙幣50A、50Cを搬送するときには、2枚の紙幣50A、50Cは第一領域120aの一対の側壁の各々に接しているため、紙幣詰まりは起こりにくい)。
本発明は以上のような従来の紙葉類搬送装置における紙幣詰まりの問題点に鑑みてなされたものであり、3枚以上の紙幣その他の紙葉類を搬送するときにおこる紙幣詰まりの発生を阻止することを可能にする紙葉類搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するため、本発明は、ダクト(120)と、前記ダクトの一端において前記ダクトと連通するように配置された紙葉類収容室(140)と、前記ダクト内を走行可能なガンズキャリー(110)と、前記ダクト内において前記紙葉類収容室に向かう方向に空気流を発生させる第一送風機(121a)と、前記ダクト内において前記紙葉類収容室に向かう方向とは逆の方向に空気流を発生させる第二送風機(121b)と、前記紙葉類収容室の手前で前記ダクトから分岐し、前記ガンズキャリーを収容するガンズキャリー収納用ダクト(130)と、を備え、前記第一送風機が前記ダクト内に発生させた空気流により前記ダクト内において前記ガンズキャリーを走行させ、前記ガンズキャリーは前記ダクト内に投入された紙葉類(50)を前記紙葉類収容室まで搬送し、前記ダクトは、前記紙葉類のみが通過可能な第一領域(120a)と、前記ガンズキャリーが通過可能な第二領域(120b)と、から構成されており、前記第一領域は前記紙葉類収容室まで延びており、前記第二領域は前記紙葉類収容室の手前で前記第一領域から分岐し、前記ガンズキャリー収納用ダクトを構成するものである紙葉類搬送装置において、前記ダクトの前記第一領域は前記ダクトが延びる方向と平行に延びる一対の側壁(122A, 122B)を有しており、前記一対の側壁の少なくとも何れか一方には前記紙葉類の走行を停止させる紙葉類ストッパー(125)が形成されており、前記紙葉類ストッパーは前記第一送風機による空気流のみに押されて走行する紙葉類は停止させ、前記ガンズキャリーにより押されて走行する紙葉類は通過させるものであることを特徴とする紙葉類搬送装置を提供する。
【0017】
前記紙葉類ストッパー(125)は三角柱の形状をなしており、前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記一対の側壁の一方からの距離が徐々に大きくなる斜面(125A)を有していることが好ましい。
前記紙葉類ストッパー(125)の前記一対の側壁の一方から高さ(H)は前記一対の側壁の一方と前記一対の側壁の他方との間の長さ(W)の半分を超えることが好ましい。
前記紙葉類ストッパー(125)は前記ガンズキャリー収納用ダクト(130)の手前に設けられていることが好ましい。
前記第一領域(120a)は前記第二領域(120b)から上下方向に突出しており、前記紙葉類ストッパーは、前記第二領域から上方に突出している前記第一領域(120aA)及び前記第二領域から下方に突出している前記第一領域(120aB)の少なくとも何れか一方に形成されていることが好ましい。
前記第一領域(120a)は前記第二領域(120b)から上下方向に突出しており、前記紙葉類ストッパー(125)は、前記第二領域から上方に突出している前記第一領域(120aA)の一対の側壁の一方(122A)に形成されているとともに、前記第二領域から下方に突出している前記第一領域(120aB)の一対の側壁の他方(122B)に形成されていることが好ましい。
【0018】
前記一対の側壁の他方(122B)には前記紙葉類ストッパー(125)と同一形状の第二の紙葉類ストッパー(126)が形成されており、前記第二の紙葉類ストッパー(126)は前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記紙葉類ストッパー(125)の下流に位置していることが好ましい。
前記第二の紙葉類ストッパー(126)は三角柱の形状をなしており、前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記一対の側壁の他方からの距離が徐々に大きくなる斜面を有していることが好ましい。
前記第二の紙葉類ストッパー(126)の前記一対の側壁の一方から高さは前記一対の側壁の一方と前記一対の側壁の他方との間の長さの半分を超えることが好ましい。
前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記紙葉類ストッパーの下流に位置する第二の紙葉類ストッパー(126)をさらに備えており、前記第二の紙葉類ストッパー(126)は前記紙葉類ストッパー(125)と同一形状であることが好ましい。
【0019】
前記第二領域から上方に突出している前記第一領域(120aA)の一対の側壁の他方(122B)及び前記第二領域から下方に突出している前記第一領域(120aB)の一対の側壁の一方(122A)には前記紙葉類ストッパー(125)と同一形状の第二の紙葉類ストッパー(126)が形成されており、前記第二の紙葉類ストッパー(126)は前記第一送風機による空気流が流れる方向において前記紙葉類ストッパー(125)の下流に位置していることが好ましい。
前記紙葉類ストッパー(127)は一対の板材(127A, 127B)からなり、前記一対の板材の一方(127A)は前記一対の側壁の一方(122B)から前記第一領域の長さ方向の中心線(120X)に向かって前記第一送風機(121a)による空気流の下流方向に斜めに延び、前記一対の板材の他方(127B)は前記一対の側壁の他方(122A)から前記中心線(120X)に向かって前記下流方向に斜めに延び、前記一対の板材(127A, 127B)の先端は前記中心線(120X)上において接しており、前記一対の板材(127A, 127B)の各先端は前記中心線(120X)に向かうように付勢されていることが好ましい。
【0020】
前記一対の板材(127A, 127B)はバネ鋼でつくられていることが好ましい。
前記一対の板材(127A, 127B)には鋭角に折り曲げられた折り曲げ部分(128)が形成されており、前記一対の板材(127A, 127B)の各々の前記折り曲げ部分(128)は前記中心線(120X)上において相互に重なり合っていることが好ましい。
前記紙葉類が前記ダクト内に投入される前において、前記ダクトが延びる方向と平行な方向に延びる折り目(53A-53E)を前記紙葉類(50)に付ける形成ユニット(200)を備えていることが好ましい。
前記形成ユニット(200)は、前記ダクトが延びる方向と直交し、かつ、相互に平行である軸線を有する二つのローラー(220A, 220B)を備えており、これら二つのローラー(220A, 220B)は表面に凹凸(221)を有しており、一方のローラーの凸は他方のローラーの凹に篏合し、前記紙葉類はこれら二つのローラーの間に挟まれることにより前記折り目が付与されることが好ましい。
前記二つのローラー(220A, 220B)の少なくとも何れか一方には前記軸線と平行に延びる少なくとも一つのスリット(222)が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る紙葉類搬送装置によれば、複数枚(例えば、3枚)の紙幣を搬送するときに、中央の紙幣(両側の紙幣に挟まれている紙幣)のみが空気流の作用を受けて単独で下流方向に流れたとしても、その紙幣は紙葉類ストッパーに当たって止められ、それ以上は先には進まない。その紙幣が紙葉類ストッパーによって止められている間に、残りの紙幣はガンズキャリーに押されて、紙葉類ストッパーに止められている紙幣に追い付く。その後は、全ての紙幣がガンズキャリーに一様に押されて紙幣収容室まで搬送される。
このように、全ての紙幣を同時に搬送することができるため、単独で前方に流れた紙幣に起因する紙幣詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置に使用されるダクトの縦断面図である。
図2図1に示したダクトの側面図である。
図3図2のA-A線における断面図である。
図4図1に示したダクトの下半分の斜視図である。
図5】第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置における紙葉類ストッパーの機能を示すダクトの横断面図である。
図6】第二の実施形態に係る紙葉類搬送装置に使用されるダクトの縦断面図である。
図7図6に示したダクトの側面図である。
図8図7のB-B線における断面図である。
図9図6に示したダクトの下半分の斜視図である。
図10】第二の実施形態に係る紙葉類搬送装置における第二の紙葉類ストッパーの機能を示すダクトの横断面図である。
図11】第三の紙葉類ストッパーを構成する第一板部材の側面図である。
図12図11に示した第一板部材の平面図である。
図13】第三の実施形態に係る紙葉類搬送装置に使用されるダクトの縦断面図である。
【0023】
図14図13に示したダクトの側面図である。
図15図14のC-C線における断面図である。
図16図13に示したダクトの斜視図である。
図17図13に示したダクトの一部分解図を含む斜視図である。
図18図13に示したダクトを上方から見たときの一部分解図を含む斜視図である。
図19図19(A)は本発明の第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置における形成ユニットの横断面図、図19(B)は水平方向から見たときの形成ユニットの正面図、図19(C)は図19(B)のA-A線における縦断面図である。
図20図19(A)-図19(C)に示した形成ユニットの分解斜視図である。
図21図19(A)-図19(C)に示した形成ユニットの第一紙幣通路及び第二紙幣通路を取り外した場合の形成ユニットの分解斜視図である。
図22図21には示さなかった第一紙幣通路及び第二紙幣通路のみの分解斜視図である。
【0024】
図23】本発明の第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置における一対の形成ローラーの正面図である。
図24図23に示した一対の形成ローラーの斜視図である。
図25】一対の形成ローラーの一方の形成ローラーの横断面図である。
図26】本発明の第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置における第二紙幣通路の斜視図である。
図27図26に示した第二紙幣通路の部分的分解図である。
図28】本発明の第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置における紙幣送り出しローラー及び一対の紙幣押さえ板の斜視図である。
図29】本発明の第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置における形成ユニットの動作を示す断面図である。
図30】本発明の第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置における形成ユニットの動作を示す断面図である。
【0025】
図31】本発明の第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置における形成ユニットの動作を示す断面図である。
図32】本発明の第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置における形成ユニットの動作を示す断面図である。
図33】本発明の第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置における形成ユニットの動作を示す断面図である。
図34図34(A)は一対の形成ローラーによって折り目がつけられた紙幣の正面図、図34(B)は図34(A)に示した紙幣の側面図である。
図35図35(A)及び図35(B)は形成ローラーによって折り目が付けられた紙幣がガンズキャリーに捕捉されるときの状況を示す概略的な斜視図である。
図36】本発明の第五の実施形態に係る紙葉類搬送装置における紙幣収容室及びその周辺の構造を斜め上方から見たときの斜視図である。
図37】本発明の第五の実施形態に係る紙葉類搬送装置における紙幣収容室を取り外したときの構造を水平方向の側方から見たときの斜視図である。
図38図37の部分的拡大図である。
【0026】
図39】本発明の第五の実施形態に係る紙葉類搬送装置における紙幣収容室及びその周辺の構造を上方から見たときの斜視図である。
図40図39の部分的拡大図である。
図41】従来の紙葉類搬送装置の構造及びその周囲の環境を示す概略図である。
図42】従来の紙葉類搬送装置におけるガンズキャリーを正面側から見たときの斜視図である。
図43】従来の紙葉類搬送装置におけるガンズキャリーを背面側から見たときの斜視図である。
図44】従来の紙葉類搬送装置におけるダクトの斜視図である。
図45】従来の紙葉類搬送装置におけるガンズキャリー、紙幣及びダクトの相互の位置関係を示す斜視図である。
図46】従来の紙葉類搬送装置におけるガンズキャリー、紙幣及びダクトの相互の位置関係を示す斜視図である。
【0027】
図47】従来の紙葉類搬送装置におけるダクト及びダクトから分岐したガンズキャリー収納用ダクトの部分的横断面図である。
図48】ガンズキャリー収納用ダクト側から見たときのダクト及びガンズキャリー収納用ダクトの部分的斜視図である。
図49】ダクト側から見たときのダクト及びガンズキャリー収納用ダクトの部分的斜視図である。
図50】ガンズキャリー収納用ダクトにガンズキャリーが収納される状態を示す断面図である。
図51】ガンズキャリー収納用ダクトにガンズキャリーが収納される状態を示す断面図である。
図52】ガンズキャリー収納用ダクトにガンズキャリーが収納される状態を示す断面図である。
【0028】
図53】ガンズキャリー収納用ダクトにガンズキャリーが収納される状態を示す断面図である。
図54】ガンズキャリー収納用ダクトにガンズキャリーが収納される状態を示す断面図である。
図55】ガンズキャリー収納用ダクトからガンズキャリーが排出される状態を示す断面図である。
図56】ガンズキャリー収納用ダクトからガンズキャリーが排出される状態を示す断面図である。
図57】ガンズキャリー収納用ダクトからガンズキャリーが排出される状態を示す断面図である。
図58】3枚の紙幣を一度に搬送する場合のダクトの内部の横断面図である。
図59】3枚の紙幣を一度に搬送する場合のダクトの内部の横断面図である。
図60】ガンズキャリーが到達する前の段階におけるダクトの内部の3枚の紙幣の挙動を示す横断面図である。
図61】ガンズキャリーが到達した後の段階におけるダクトの内部の3枚の紙幣の挙動を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第一の実施形態)
図1は第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置に使用されるダクト120の縦断面図、図2は同ダクト120の側面図、図3図2のA-A線における断面図、図4は同ダクト120の下半分の斜視図である。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置に使用されるダクト120は、空気流によって流された紙幣50Bを止めるための2個の紙葉類ストッパー125を備えている。この点を除いて、本実施形態に係る紙葉類搬送装置は図41乃至図57に示した紙葉類搬送装置100と同様の構造を有している。
図1に示すように、ダクト120の第一領域120aは第二領域120bから上下に突出している。第二領域120bから上方に突出している第一領域120aの部分を上方部分120aA、下方に突出している第一領域120aの部分を下方部分120aBとする。
2個の紙葉類ストッパー125は、上方部分120aAの一対の側壁のうち一方の側壁(図1では左側の側壁)122A上に形成され、さらに、下方部分120aBの一対の側壁のうち他方の側壁(図1では右側の側壁)122B上に形成されている。
【0030】
図3及び図4に示すように、各紙葉類ストッパー125は三角柱の形状をなしており、第一送風機121aによる空気流が流れる方向において側壁122A,122Bからの距離が徐々に大きくなる斜面125Aを有している。
図1に示すように、2個の紙葉類ストッパー125はダクト120の第一領域120aを左右に分ける中心線120Xに関して形状的には左右対称に形成されている。
2個の紙葉類ストッパー125は第二領域120bの中心に関して垂直方向において等距離の位置に形成されており、さらに、2個の紙葉類ストッパー125はガンズキャリー収納用ダクト130の手前の位置においてダクト120に形成されている。
各紙葉類ストッパー125の高さH(水平方向における側壁122A,122Bから紙葉類ストッパー125の頂点までの長さ)は第一領域120aの幅W(水平方向における側壁122Aの内側表面と側壁122Bの内側表面との間の長さ)の半分を超えるように設定されている。
H>W/2
【0031】
例えば、各紙葉類ストッパー125の高さHは第一領域120aの幅Wの60%から80%の間に設定される。
0.6W≦H≦0.8W
図5は紙葉類ストッパー125の機能を示すダクト120の横断面図である。以下、図5を参照して紙葉類ストッパー125の機能を説明する。
前述のように、ダクト120内の3枚の紙幣50A,50B,50Cのうち中央の紙幣50Bのみが空気流の作用を受けて単独で空気流の下流方向に流された場合を想定する。
上下一対の紙葉類ストッパー125はこのように空気流によって流された紙幣50Bを停止させることができる。
紙葉類ストッパー125は第一領域120aの幅Wの半分を超える高さHを有しているため、第一領域120aの幅方向のほぼ中央に位置している紙幣50Bが空気流によって流れても紙幣50Bを確実に止めることができる。
【0032】
紙葉類ストッパー125は第一送風機121aが発生させた空気流のみに押されて流れる紙幣50Bを止めることができるだけであり、ガンズキャリー110に押されて走行する紙幣50はそのまま通過させる。このため、紙幣50Bが紙葉類ストッパー125によって止められている間に、ガンズキャリー110に押された他の紙幣50A,50Cが紙幣50Bに追いつき、3枚の紙幣50A,50B,50Cが揃ってガンズキャリー110に押され、紙幣収容室140まで運ばれることが可能である。具体的には、ガンズキャリー110に押された紙幣50B(及び紙幣50A,50C)は紙葉類ストッパー125の頂点と側壁122Aまたは122Bとの間の空間をすり抜けていく。
なお、ガンズキャリー110は第二領域120bのみを走行するため、ガンズキャリー110が第一領域120aに形成されている紙葉類ストッパー125に干渉することはない。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る紙葉類搬送装置によれば、3枚以上の紙幣を搬送するときに、中央の紙幣(両側の紙幣の間に位置している紙幣)のみが空気流の作用を受けて単独で空気流の下流側に流れることを防止することができ、ひいては、単独で流れた紙幣に後続の紙幣が追い付くことに起因する紙幣詰まりを防止することができる。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置は上記の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置においては、第一領域120aの上方部分120aA及び下方部分120aBのそれぞれに紙葉類ストッパー125が設けられているが、上方部分120aA及び下方部分120aBの何れか一方にのみ紙葉類ストッパー125を設けることも可能である。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置においては、紙葉類ストッパー125は上方部分120aAにおいては側壁122Aに、下方部分120aBにおいては側壁122Bにそれぞれ形成されているが、上下の紙葉類ストッパー125はどちらも側壁122Aまたは側壁122Bに形成することも可能である。
【0034】
本実施形態に係る紙葉類搬送装置においては、紙葉類ストッパー125は三角柱の形状を有するものとして形成されているが、紙葉類ストッパー125の形状はこれには限定されない。
例えば、紙葉類ストッパー125を半球状とすることができる。紙幣50がガンズキャリー110で押されたときに紙葉類ストッパー125を容易に通過できるように、紙葉類ストッパー125は斜面または曲面を有していることが好ましい。
(第二の実施形態)
第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置においては、第一領域120aの上方部分120aA及び下方部分120aBのそれぞれに1個の紙葉類ストッパー125が設けられているが、紙葉類ストッパー125の個数は1には限定されない。複数個の紙葉類ストッパー125を設けることが可能である。
図6は第二の実施形態に係る紙葉類搬送装置に使用されるダクト120の縦断面図、図7は同ダクト120の側面図、図8図7のB-B線における断面図、図9は同ダクト120の下半分の斜視図である。
【0035】
図8及び図9に示すように、第二の実施形態に係る紙葉類搬送装置においては、第一領域120aには紙葉類ストッパー125に加えて第二の紙葉類ストッパー126が設けられている。
図8及び図9に示すように、第一領域120aの下方部分120aBにおいては、紙葉類ストッパー125は側壁122Bに形成されているのに対して、第二の紙葉類ストッパー126は側壁122Aに形成されている。
第二の紙葉類ストッパー126は第一送風機121aによる空気流が流れる方向において紙葉類ストッパー125の下流に位置している。第二の紙葉類ストッパー126は紙葉類ストッパー125と同一形状であり、第一領域120aを左右に分ける第一領域120aの中心線120Xについて形状的には左右対称である。
図6に示すように、第一領域120aの上方部分120aAにおいても、第一領域120aの下方部分120aBと同様に、第二の紙葉類ストッパー126が設けられている。
【0036】
具体的には、上方部分120aAにおいては、紙葉類ストッパー125は側壁122Aに形成されているのに対して、第二の紙葉類ストッパー126は側壁122Bに形成されている。
上方部分120aAにおいて、第二の紙葉類ストッパー126は第一送風機121aによる空気流が流れる方向において紙葉類ストッパー125の下流に位置している。第二の紙葉類ストッパー126は紙葉類ストッパー125と同一形状であり、第一領域120aを左右に分ける第一領域120aの中心線120Xについて形状的には左右対称である。すなわち、紙葉類ストッパー125と第二の紙葉類ストッパー126とは空気流が流れる方向において互い違いに配置されている。
以上のように、第一領域120aの上方部分120aA及び下方部分120aBにおいて、それぞれ紙葉類ストッパー125及び第二の紙葉類ストッパー126が空気流の流れる方向に配置されている。
図10は第二の紙葉類ストッパー126の機能を示すダクト120の横断面図である。以下、図10を参照して第二の紙葉類ストッパー126の機能を説明する。
【0037】
紙葉類ストッパー125は単独でも空気流で流れる紙幣50Bを止める機能を有しているが、紙幣50Bが紙葉類ストッパー125をすり抜けて下流方向に流れる可能性はゼロではない。紙葉類ストッパー125の下流側に第二の紙葉類ストッパー126を設けることにより、紙葉類ストッパー125をすり抜けて下流側に流れてきた紙幣50Bを確実に止めることができる。
なお、3個以上の紙葉類ストッパーを空気流が流れる方向に配置することも可能である。その場合も、各紙葉類ストッパーを互い違いに配置することが好ましい。
(第三の実施形態)
第三の実施形態に係る紙葉類搬送装置においては、第一の実施形態における紙葉類ストッパー125に代えて、可動式紙葉類ストッパー127を用いる。この点を除いて、本実施形態に係る紙葉類搬送装置は第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置と同様の構造を有している。
【0038】
可動式紙葉類ストッパー127は一対の第一板部材127A及び第二板部材127Bからなり、図11は第一板部材127Aの側面図、図12は第一板部材127Aの平面図である。
第一板部材127Aは一枚の薄肉の長方形状の金属製板材からなる。第一板部材127Aをなす金属製板材はバネ鋼でできている。このため、第一板部材127Aは弾力性を有しており、外力が作用すると撓み、外力の作用がなくなると当初の形状に復元する復元性を有している。
第一板部材127Aは表面127aと裏面127bとを有しており、第一板部材127Aには、その長辺の一端(図12の左端)において、表面127aから裏面127bの方向に向かって鋭角に折り曲げられた折り曲げ部分128が形成されており、長辺の他端(図12の右端)の付近には2個の貫通孔129が形成されている。
第二板部材127Bは第一板部材127Aと同一の部材である。
図13は第三の実施形態に係る紙葉類搬送装置に使用されるダクト120であって、可動式紙葉類ストッパー127が取り付けられたダクト120の縦断面図、図14はダクト120の側面図、図15図14のC-C線における断面図、図16はダクト120の斜視図、図17はダクト120の一部分解図を含む斜視図、図18は上方から見たときのダクト120の一部分解図を含む斜視図である。
【0039】
図14及び図16に示すように、ダクト120の第一領域120aの上方部分120aAの両外壁には楔型のブロック132が取り付けられている。楔型のブロック132の傾斜面は紙幣50の搬送方向(空気流が流れる方向)の上流側から下流側に向かって低くなるような傾斜を有しており、ブロック132の前方(紙幣50の搬送方向における前方)には傾斜面の延長方向において上方部分120aAの外壁にスリット状の開口120cが形成されている。スリット状の開口120cは第一板部材127Aが通り抜けることが可能な大きさを有している。
可動式紙葉類ストッパー127をなす一対の第一板部材127A及び127Bは以下のようにしてダクト120に取り付けられる。
第一板部材127Aはその表面127aがブロック132の表面に当接するようにしてブロック132に取り付けられる。第一板部材127Aの裏面127b側には、第一板部材127Aの貫通孔129に合わせて2個の貫通孔が形成されている取り付け用板132Aが配置され、第一板部材127Aは取り付け用板132Aの外側からネジを介してブロック132に固定される。
【0040】
第一板部材127Aはダクト120の側壁122Bから開口120cを介してダクト120の内部に延びるようにブロック132に取り付けられる。第一板部材127Aは、ダクト120の内部においては、空気流が流れる方向の下流方向に中心線120Xに向かって斜めに延びる。
楔型のブロック132の傾斜面の傾斜角と折り曲げ部分128の折り曲げ角とは等しくなるように設定されており、さらに、第一板部材127Aの長さは、第一板部材127Aをブロック132に取り付けたときに、折り曲げ部分128が中心線120X上にあるように設定されている。
第二板部材127Bも第一板部材127Aと同様にしてブロック132に固定的に取り付けられる。すなわち、第一板部材127A及び第二板部材127Bは中心線120Xに関して左右対称に配置される。
このため、図15図17及び図18に示すように、第一板部材127A及び第二板部材127Bの各折り曲げ部分128は中心線120X上において相互に重なり合っている。
【0041】
このように、第一板部材127Aと第二板部材127Bとは中心線120Xを中心としてV字型をなすように配置されており、V字の頂点は空気流が流れる方向の下流側に位置している。第一板部材127Aと第二板部材127BとはV字の頂点である折り曲げ部分128において単に接しているだけであるので、以下に述べるように、相互に接触し、または、相互に分離することが可能である。
第一板部材127Aの折り曲げ部分128と第二板部材127Bの折り曲げ部分128とは3枚の紙幣50A,50B、50Cが搬送されていないときには相互に接している(重なり合っている)が、ガンズキャリー110によって3枚の紙幣50A,50B、50Cが押されてきたときには相互に離れる方向に分かれる。すなわち、第一板部材127A及び第二板部材127Bをバネ鋼でつくることにより、第一板部材127A及び第二板部材127Bには、空気流によって流れてきた1枚の紙幣50Bでは相互に開かないが、ガンズキャリー110に押された3枚の紙幣50A,50B、50Cによっては相互に開くような弾性力が与えられている。
【0042】
可動式紙葉類ストッパー127は以下のように用いられる。
前述のように、ダクト120内の3枚の紙幣50A,50B,50Cのうち中央の紙幣50Bのみが空気流の作用を受けて単独で空気流の下流方向に流されたとした場合、紙幣50Bは、可動式紙葉類ストッパー127によって、具体的には、第一板部材127Aと第二板部材127BがなすV字の頂点の内側において、止められる。
紙幣50Bが可動式紙葉類ストッパー127によって止められている間に、ガンズキャリー110に押された他の二枚の紙幣50A,50Cが先行していた紙幣50Bに追いつく。可動式紙葉類ストッパー127の第一板部材127Aと第二板部材127Bとは各折り曲げ部分128において接しているだけであり、容易に分離可能であるので、3枚の紙幣50A,50B,50Cが揃ってガンズキャリー110に押されれば、紙幣50A,50B,50Cに押される力により、第一板部材127Aと第二板部材127BとはV字の頂点において左右に分かれる。これによって、3枚の紙幣50A,50B,50Cは可動式紙葉類ストッパー127を通過して搬送される。
【0043】
このように、空気流によって流された紙幣50Bは単独では可動式紙葉類ストッパー127に止められるが、ガンズキャリー110に押された3枚の紙幣50A,50B,50Cは可動式紙葉類ストッパー127を通過することが可能である。
このように、可動式紙葉類ストッパー127も第一の実施形態における紙葉類ストッパー125並びに第二の実施形態における紙葉類ストッパー125及び第二の紙葉類ストッパー126と同様の機能を奏する。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置は上記の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
本実施形態においては、可動式紙葉類ストッパー127は第一領域120aの上方部分120aAにのみ設けられているが、下方部分120aBに、あるいは、上方部分120aA及び下方部分120aBの双方に設けることも可能である。
【0044】
また、本実施形態においては、可動式紙葉類ストッパー127はバネ鋼でつくられているため弾力性を有しているが、可動式紙葉類ストッパー127をバネ鋼以外の金属(または樹脂その他の剛性素材)でつくり、第一板部材127Aと第二板部材127Bをバネその他の弾性部材で付勢することにより、上記の機能を発揮させることも可能である。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置における第一板部材127A及び第二板部材127Bにはそれぞれ折り曲げ部分128が設けられているが、折り曲げ部分128を形成しないことも可能である。この場合には、第一板部材127A及び第二板部材127Bの各先端が接触した状態で第一板部材127Aと第二板部材127Bとは閉じられている。空気流によって流された紙幣50Bは単独では第一板部材127A及び第二板部材127Bに止められるが、ガンズキャリー110に押された3枚の紙幣50A,50B,50Cは第一板部材127A及び第二板部材127Bを押し開けて通過することが可能である。
また、第一板部材127A及び第二板部材127Bはともに平板として形成されているが、曲面状の板材とすることも可能である。
【0045】
(第四の実施形態)
図58及び図59に示したように、3枚の紙幣50A,50B,50Cを搬送する際には3枚の紙幣50A,50B,50Cの先端が揃っていることが望ましい。
比較的新しい紙幣であれば、3枚の紙幣50A,50B,50Cの先端を揃えることに大きな困難性はないが、長期間にわたって流通している紙幣の中には折り目が付いているものが多く、このような折り目が付いている紙幣の先端を揃えることは難しい。
このため、第四の実施形態に係る紙葉類搬送装置は、第一乃至第三の実施形態に係る紙葉類搬送装置と比較して、紙幣の折り目を矯正する形成ユニット200を追加的に備えている。形成ユニット200は、後述するように、紙幣50に横方向(紙幣50の長辺50bに平行な方向)に折り目を付ける装置である。
図19(A)は形成ユニット200の横断面図、図19(B)は水平方向から見たときの形成ユニット200の正面図、図19(C)は図19(B)のA-A線における縦断面図である。図20は形成ユニット200の分解斜視図である。
【0046】
図19(A)に示すように、形成ユニット200は紙幣投入装置21(図41参照)とダクト120との間に配置されている。
形成ユニット200は、紙幣投入装置21から搬送されてきた紙幣50を形成ユニット200の内部に取り込む一対の紙幣取り込みローラー210と、紙幣50に紙幣50の長辺50b(図45参照)が延びる方向と平行な方向に折り目を付ける一対の形成ローラー220と、紙幣取り込みローラー210から形成ローラー220に向かって紙幣50が通過するための第一紙幣通路230と、形成ローラー220からダクト120に向かって紙幣50が通過するための第二紙幣通路240と、第二紙幣通路240の出口の手前に配置され、紙幣50をダクト120に送り出す紙幣送り出しローラー250と、紙幣送り出しローラー250に対して紙幣50を押さえ付ける一対の紙幣押さえ板260と、一対の紙幣取り込みローラー210、一対の形成ローラー220及び紙幣送り出しローラー250を駆動する駆動モーター270と,から構成されている。
図21は第一紙幣通路230及び第二紙幣通路240を取り外した場合の形成ユニット200の分解斜視図、図22は第一紙幣通路230及び第二紙幣通路240のみの分解斜視図である。
【0047】
図19(A)、図20及び図21に示すように、一対の紙幣取り込みローラー210は紙幣投入装置21から送り出されてくる紙幣50の進行方向上に配置されており、紙幣投入装置21から送り出されてくる紙幣50を挟み込み、第一紙幣通路230を介して一対の形成ローラー220に紙幣50を送り込む。
図22に示すように、第一紙幣通路230は相互に平行に直立している一対の壁からなり、一対の紙幣取り込みローラー210から送り出された紙幣は第一紙幣通路230を通って一対の形成ローラー220に送られる。
図23は一対の形成ローラー220の正面図、図24は一対の形成ローラー220の斜視図、図25は一対の形成ローラー220の一方のローラーの横断面図である。
一対の形成ローラー220は第一ローラー220Aと第二ローラー220Bとからなり、これらの二つのローラー220A、220Bは軸線が相互に平行になるように、具体的には、どちらの軸線も鉛直方向になるように配置されている。
図21に示すように、第一ローラー220Aはベルト272を介して駆動モーター270により駆動される駆動側ローラーであり、第二ローラー220Bは第一ローラー220Aにより駆動される従動側ローラーである。
【0048】
第一ローラー220A及び第二ローラー220Bの各表面にはそれぞれ断面が三角形形状の複数個の凹凸221が形成されている。各凹凸221は水平面内に位置するように形成されているとともに、二つのローラー220A、220Bの各軸線方向に一定間隔で並列されている。第一ローラー220A及び第二ローラー220Bは二つのローラー220A、220Bの各凹凸221が相互に噛み合うように隣接して配置されている。第一ローラー220Aの凸は第二ローラー220Bの凹に噛み合い、第一ローラー220Aの凹は第二ローラー220Bの凸に噛み合っている。
図23乃至図25に示すように、第二ローラー220Bにはその表面に鉛直方向に延びる4個のスリット222が形成されている。各スリット222は三角形状の横断面を有している。図25に示すように、4個のスリット222は第二ローラー220Bの円周方向において等間隔に(90度の円周角で)設けられている。
図23に示すように、紙幣50は第一ローラー220A及び第二ローラー220Bの各凹凸221の間に挟み込まれた状態で二つのローラー220A、220Bを通過する。これにより、紙幣50には長辺50bに平行(ダクト120が延びる方向またはガンズキャリー110の走行方向に平行)に延びる折り目が付けられる(これについては後述する)。
【0049】
従来のように、ローラーの表面が平面であると、紙幣50を搬送するときに紙幣50がスリップする事象が発生していた。これに対して、一対の形成ローラー220の第二ローラー220Bにはスリット222が形成されている。スリット222を設けることにより、第二ローラー220Bと紙幣50との接触が面ではなく点または線になるため、第二ローラー220Bと紙幣50との間に引っ掛かり(摩擦)が生じ、その結果として、紙幣50の搬送時におけるグリップ力が向上し、紙幣50の搬送時における紙幣50のスリップを防止することができる。
図26は第二紙幣通路240の斜視図、図27は第二紙幣通路240の部分的な分解図である。
図26及び図27に示すように、第二紙幣通路240は、相互に平行に直立し、その間に通路を構成している一対の第一壁部240Aと、一対の第一壁部240Aへの入り口240Bから一対の第一壁部240Aと直交して外側に延びる一対の第二壁部240Cと、からなる。
【0050】
一対の形成ローラー220を通過した紙幣は入り口240Bから一対の第一壁部240Aの間の通路を通り、図19(A)に示すように、ダクト120に向かって送られる。
図28は紙幣送り出しローラー250及び一対の紙幣押さえ板260の斜視図である。
紙幣送り出しローラー250は、図28に示すように、軸線方向に相互に離れて配置された二つの同心の小ローラー250A、250Bからなり、第二紙幣通路240の一対の第一壁部240Aの一方の壁部(ダクト120から遠い方の壁部)は二つの小ローラー250A、250Bの間のスペースに入り込むように延びている。
一対の紙幣押さえ板260の各々は、押さえ板260Aと、バネ260Bとから構成されている。
押さえ板260Aの先端は櫛の歯状に分かれているとともに、紙幣送り出しローラー250の小ローラー250A、250Bの外周形状に合わせて円弧形状に形成されている。先端が円弧形状であることにより、押さえ板260Aの先端は小ローラー250A、250Bの外周に密接することが可能になっている。
【0051】
押さえ板260Aはピン260Cを介して一対の第一壁部240Aの他方の壁部(ダクト120に近い方の壁部)に回動可能に取り付けられている。
押さえ板260Aの後端と一対の第一壁部240Aの他方の壁部との間にはバネ260Bが挟み込まれている。バネ260Bは押さえ板260Aの後端を一対の第一壁部240Aの他方の壁部から離す方向の弾性力を押さえ板260Aに作用させる。このため、ピン260Cを中心として回動可能な各押さえ板260Aはその先端において常に紙幣送り出しローラー250の小ローラー250A、250Bの表面に押さえ付けられている。
図19(B)及び図21に示すように、駆動モーター270はベルト271を介して紙幣送り出しローラー250を駆動するとともに、ベルト272を介して一対の形成ローラー220の第一ローラー220Aを駆動する。一対の紙幣取り込みローラー210の一方のローラー(駆動モーター270に近い方のローラー)は第一ローラー220A及びベルト273を介して駆動モーター270により駆動される。
【0052】
図29乃至図33は本実施形態における形成ユニット200の動作を示す断面図である。以下、図29乃至図33を参照して形成ユニット200の動作を説明する。
図29に示すように、紙幣投入装置21から送られてきた紙幣50は一対の紙幣取り込みローラー210に挟み込まれ、形成ユニット200の内部に取り込まれる。
次いで、図30に示すように、紙幣50は一対の紙幣取り込みローラー210によって第一紙幣通路230の内部を一対の形成ローラー220まで送られる。
図34(A)は一対の形成ローラー220によって折り目がつけられた紙幣50の正面図、図34(B)は図34(A)に示した紙幣50の側面図である。
【0053】
紙幣50は一対の形成ローラー220を構成する第一ローラー220A及び第二ローラー220Bの間を通過する間に二つのローラー220A、220Bのそれぞれの凹凸221から相互に異なる方向に押圧力を受ける。具体的には、第一ローラー220Aは凹凸221のうちの凸によって右から左に向かう方向に紙幣50に押圧力を作用させ、第二ローラー220Bは凹凸221のうちの凸によって左から右に向かう方向に紙幣50に押圧力を作用させる。このように、紙幣50は右から左に向かう押圧力と左から右に向かう押圧力をジグザグに受けることによって、図34(A)及び図34(B)に示すように、紙幣50には横方向(紙幣50の長辺50bに平行な方向)に延びる、例えば、5個の折り目53A乃至53Eが付けられる。
第一ローラー220A及び第二ローラー220Bの凹凸221の間隔を大きくすれば折り目の数は減り、凹凸221の間隔を小さくすれば折り目の数は増える。
一対の形成ローラー220によって折り目53A-53Eを付けられた紙幣50は、図31に示すように、一対の形成ローラー220から第二紙幣通路240を介して紙幣送り出しローラー250に送られる。
【0054】
紙幣送り出しローラー250に送られた紙幣50は、図32に示すように、紙幣送り出しローラー250と一対の紙幣押さえ板260の各押さえ板260Aとの間に挟み込まれ、その状態のままダクト120に向かって送られる。
次いで、図33に示すように、紙幣50はダクト120の第一領域120aの内部に送り込まれる。この後、紙幣50はガンズキャリー110に捕捉され、紙幣収容室14に搬送される。
以上の動作が紙幣投入装置21に投入された紙幣50が形成ユニット200を経てダクト120に送り込まれるまでの1サイクルの動作である。以後、この動作が繰り返される。
図35は形成ローラー220によって折り目53A-53Eが付けられた紙幣50がガンズキャリー110に捕捉されるときの状況を示す概略的な斜視図である。
【0055】
図35(A)に示すように、流通している紙幣50は縦方向(紙幣50の短辺50aに平行な方向)に折り目が付けられていることが多いため、紙幣投入装置21に投入される前の紙幣50には縦方向に折り目51A-51Cが付いているものとする。縦方向に折り目51A-51Cが付いた紙幣50がそのままの状態でダクト120に送り込まれると、走行してきたガンズキャリー110から押されたときに、例えば、折り目51Cを中心として折れてしまい、その結果、紙幣詰まりを起こす原因となっていた。
これに対して、形成ユニット200を設けることにより、縦方向に折り目51A-51Cが付いている紙幣50であっても、一対の形成ローラー220の間を通過することにより、図35(A)に示すように、紙幣50には縦方向の折り目51A-51Cに加えて横方向に延びる折り目(紙幣50の長辺50bに平行な折り目)53A-53Eが付けられる。
【0056】
このように、紙幣50に横方向の折り目53A-53Eを付けることにより、ガンズキャリー110の進行方向、すなわち、紙幣50の長辺50bに平行な方向において紙幣50に作用する外力に対して、紙幣50の剛性が向上する(いわゆる「コシ」が強くなる)。紙幣50に横方向の折り目53A-53Eを付けることによって、縦方向の折り目51A-51Cに起因する紙幣50の脆弱性を相殺することが可能である。
このため、図35(B)に示すように、紙幣50の短辺50aにガンズキャリー110が当たっても、紙幣50の長辺50bに平行な方向の外力(ガンズキャリー110が当たったときの衝撃力)に対する剛性が大きくなっているため、紙幣50が途中で折れ曲がるということはなくなり、3枚の紙幣50A,50B,50Cを同時に搬送する場合にも、それら3枚の紙幣50A,50B,50Cの先端を揃えた状態に維持することが容易になる。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置は上記の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【0057】
例えば、本実施形態における一対の形成ローラー220を構成する第一ローラー220A及び第二ローラー220Bの各表面には断面が三角形形状の凹凸221が形成されているが、凹凸221の形状はこれには限定されない。例えば、三角形断面の凹凸221に代えて、四角形、台形、半円形などの断面を有する凹凸を形成することも可能である。
紙幣50の長辺50bに平行な折り目53A―53Eを付けることができる形状であれば、任意の形状を凹凸221の形状として採用することができる。なお、紙幣50の長辺50bに平行な折り目53A―53Eの数は5に限定されるものではなく、紙幣50の搬送速度、ガンズキャリー110の走行速度、紙幣50の新旧(新札か否か)などに応じて、任意の数を選定することができる。
また、本実施形態のように一組の一対の形成ローラー220のみならず、複数組の一対の形成ローラー220を紙幣50の搬送方向に沿って配置することも可能である。この場合、複数組の一対の形成ローラー220の各対の形成ローラー220に形成される凹凸221のプロファイル(形状、数、間隔など)を相互に異なるものにすることができる。
【0058】
本実施形態に係る紙葉類搬送装置においては、第二ローラー220Bに4個のスリット222が形成されているが、スリット222の個数は4には限定されない。紙幣50の搬送速度などに応じて1以上の任意の数を選択することができる。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置においては、一対の形成ローラー220の一方のローラー(第二ローラー220B)にのみスリット222が形成されているが、一対の形成ローラー220の双方のローラーにスリット222を形成することも可能である。
一対の形成ローラー220の双方のローラー(第一ローラー220A及び第二ローラー220B)にスリット222を形成する場合、第一ローラー220Aに形成するスリットと第二ローラー220Bに形成するスリットとは相互に異なるプロファイル(形状、数、間隔など)とすることが可能である。このように、双方のローラーに形成されるスリットを相互に異なるプロファイルとすることにより、紙幣50に対するグリップ力を大きくすることが可能である。
【0059】
(第五の実施形態)
図36は第五の実施形態に係る紙葉類搬送装置における紙幣収容室140及びその周辺の構造を斜め上方から見たときの斜視図、図37は紙幣収容室140を取り外したときの構造を水平方向から見たときの斜視図、図38図37の部分的拡大図、図39は紙幣収容室140及びその周辺の構造を上方から見たときの平面図、図40図39の部分的拡大図である。
紙幣50はダクト120に投入された後、ガンズキャリー110に捕捉され、紙幣収容室140に搬送される。ガンズキャリー110はガンズキャリー収納用ダクト130に収容されるため、ガンズキャリー収納用ダクト130を通過した後は紙幣50のみが紙幣収容室140に到達する。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置は、紙幣、特に複数枚(例えば、図5及び図10に示した3枚の紙幣50A,50B,50C)を確実に紙幣収容室140に搬送するためにダブルベルトユニットを備えている。
図39及び図40に最もよく示されているように、ダブルベルトユニットは第一ベルトユニット310及び第二ベルトユニット320の2個のベルトユニットから構成されている。
【0060】
ダクト120とガンズキャリー収納用ダクト130との分岐点と第一領域120aの終点との間には紙幣50が通過する紙幣通路330が形成されている。第一ベルトユニット310及び第二ベルトユニット320は、紙幣収容室140の手前において、紙幣通路330の両側にそれぞれ配置されている。
第一ベルトユニット310は、2個のローラー310Aと,2個のローラー310B(図40ではローラー310Aのみ図示、ローラー310Bは図38を参照)と、2個のベルト310Cとからなる(図38参照)。
図38に示すように、2個のローラー310Aは軸を介して連結されており、同期して回転する。同様に、2個のローラー310Bも軸を介して連結されており、同期して回転する。ベルト310Cは1個のローラー310A及び1個のローラー310Bにそれぞれ架け渡されている。2個のベルト310Cの間の間隔は、2個のベルト310Cによって紙幣50を保持できるような長さに、具体的には、紙幣50の短辺50a(図45参照)より短く設定されている。
【0061】
第一ベルトユニット310は紙幣通路330の一方の側(図40では右側)にベルト310Cが位置するように配置されている。
第二ベルトユニット320も、第一ベルトユニット310と同様に、2個のローラー320Aと,2個のローラー320Bと、2個のベルト320Cと、からなる。第二ベルトユニット320の基本的な構造は第一ベルトユニット310と同様である。ただし、2個のベルト320Cの間の間隔は2個のベルト310Cの間の間隔より短く設定されており、かつ、図38に示すように、水平方向から見たときには、2個のベルト320Cはいずれも2個のベルト310Cの間に位置している。
第二ベルトユニット320は第一ベルトユニット310に対向して紙幣通路330の他方の側(図40では左側)に配置されている。
第一ベルトユニット310では2個のローラー310A,310Bの中心を結ぶ中心線が紙幣通路330と平行であるのに対して、第二ベルトユニット320では2個のローラー320A,320Bの中心を結ぶ中心線が紙幣通路330に対して傾斜している。具体的には、ローラー320A(ダクト120とガンズキャリー収納用ダクト130との分岐点により近い方のローラー)は他方のローラー320B(ダクト120とガンズキャリー収納用ダクト130との分岐点から遠い方のローラー)よりも紙幣通路330が延びる方向と直交する方向において第一ベルトユニット310から離れた位置にある。このため、ローラー320Aの位置においてはベルト320Cは第一ベルトユニット310のベルト310Cと同一鉛直面内にはなく、かつ、紙幣通路330からは離れている。一方、ローラー320Bの位置においてはベルト320Cは第一ベルトユニット310のベルト310Cと同一鉛直面内にある。
【0062】
本実施形態に係る紙幣搬送装置においては、ダクト120を通って搬送されてきた紙幣50は第一領域120a(ガンズキャリー収納用ダクト130を通過した後はダクト120は第一領域120aのみから構成される)を通過し、紙幣収容室140に通じている紙幣通路330に放出される。紙幣通路330に放出された紙幣50は、それまでの搬送による慣性力の作用によって紙幣通路330を進行し、ベルト310Cとベルト320Cとの間に挟まれる。
この後、ベルト310Cは時計回りの方向に、ベルト320Cは反時計回りの方向にそれぞれ回転し、紙幣50は二つのベルト310C、320Cの間に挟まれ、紙幣収容室140に向かって搬送され、紙幣収容室140に収容される。
従来の紙葉類搬送装置においては、第二のベルトユニット320は設けられておらず、第一のベルトユニット310のみによって紙幣50を紙幣収容室140まで搬送していた。搬送する紙幣50が1枚であるときは、第一のベルトユニット310だけでも搬送することは可能であったが、搬送する紙幣50が複数枚のときには、ベルト310Cに接する紙幣50のみが搬送され、他の紙幣50は搬送されずに取り残されることがあった。
【0063】
本実施形態に係る紙幣搬送装置によれば、2個のベルトユニット310,320によって複数枚の紙幣50を両側から挟み込むため、1枚の紙幣50も取り残すことなく、全ての紙幣50を確実に紙幣収容室140まで搬送することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 従来の紙葉類搬送装置
110 ガンズキャリー
120 ダクト
130 ガンズキャリー収納用ダクト
140 紙幣収容室
125 紙葉類ストッパー
126 第二の紙葉類ストッパー
127 可動式紙葉類ストッパー
200 形成ユニット
220 形成ローラー
310 第一のベルトユニット
320 第二のベルトユニット
【要約】
【課題】空気流によって複数枚の紙幣を搬送するときに、1枚の紙幣だけが空気流により流れたとしても、その1枚の紙幣を止め、残りの紙幣の到達を待つことを可能にする。
【解決手段】ダクトの第一領域(120a)内において3枚の紙幣(50A, 50B, 50C)を搬送するときに、1枚の紙幣(50B)のみが空気流で流れたとしても、第一領域(120a)の側壁(122B)に形成された紙葉類ストッパー(125)によってその紙幣(50B)を止める。紙幣(50B)が紙葉類ストッパー(125)により止められている間に残りの紙幣(50A, 50C)がガンズキャリーによって押され、紙葉類ストッパー(125)に止められていた紙幣(50B)に追い着き、3枚の紙幣(50A, 50B, 50C)を揃えることができる。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
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図39
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図44
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図49
図50
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図61