IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Spiralの特許一覧

<>
  • 特許-飛行体の制御システム 図1
  • 特許-飛行体の制御システム 図2
  • 特許-飛行体の制御システム 図3
  • 特許-飛行体の制御システム 図4
  • 特許-飛行体の制御システム 図5
  • 特許-飛行体の制御システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】飛行体の制御システム
(51)【国際特許分類】
   B64C 13/18 20060101AFI20231211BHJP
   B64C 27/28 20060101ALI20231211BHJP
   B64U 50/19 20230101ALI20231211BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20231211BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B64C13/18 Z
B64C27/28
B64U50/19
B64U10/13
B64D45/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023524093
(86)(22)【出願日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2023006132
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2022028298
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517079593
【氏名又は名称】株式会社Spiral
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 知寛
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 述幸
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113992(JP,A)
【文献】特開2015-113100(JP,A)
【文献】特開2018-116443(JP,A)
【文献】特開2021-062719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0105946(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18
B64C 27/28
B64U 50/19
B64U 10/13
B64D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体の飛行速度を検知する速度センサと、
前記飛行体と構造物との距離である第1距離を取得する距離センサと、
前記飛行体を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
目標距離と前記第1距離との差に基づいて前記飛行体の目標速度を演算する第1演算と、
前記飛行速度と前記目標速度との差に基づいて前記飛行体の目標加速度を演算する第2演算と、
前記目標距離または前記第1距離に基づいて前記第1演算と前記第2演算との重みづけを変更する第3演算と、
を実行し、
前記目標加速度となるまで前記飛行体を加速させ、前記第1距離が前記目標距離となるまで前記飛行体をフィードバック制御する、
飛行体の制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記目標距離または前記第1距離が短いほど、前記第2演算の重み付けを重くする、
請求項1に記載の飛行体の制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記距離センサから取得した距離をなまして前第1距離とする、
請求項1または2に記載の飛行体の制御システム。
【請求項4】
少なくとも前記構造物の位置を表示し、前記目標加速度を矢印の向きと大きさで表示するディスプレイとを、
さらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の飛行体の制御システム。
【請求項5】
前記構造物に配置され、前記飛行体の飛行経路情報を含むマーカーをさらに備え、
前記距離センサは、前記飛行体と前記構造物または前記マーカーとの距離である前記第1距離を取得し、
前記制御部は、前記マーカーを読み取りながら前記飛行体を制御する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の飛行体の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行体の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛行体を制御するために、位置PID制御と、速度PID制御とを用いる制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-113992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、目標位置と飛行体との距離に応じて、位置PID制御と、速度PID制御との重みづけを変更する飛行体の制御システムを開示する。特許文献1は、位置PID制御および速度PID制御のいずれの制御を実行する場合であっても、目標位置と飛行体の位置の差を基準に演算する点を開示する。
【0005】
しかし、屋内で使用する飛行体は、飛行体が発生させる風が構造物に反射し発生する、反射風の影響を考慮する必要がある。したがって、特許文献1の位置PID制御、および速度PID制御を実行した場合、反射風によって飛行体の挙動が乱れるおそれがある。
【0006】
本開示の課題は、屋内に使用する飛行体に適した新規の飛行体の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る飛行体の制御システムは、飛行体の飛行速度を検知する速度センサと、前記飛行体と前記構造物との距離である第1距離を取得する距離センサと、前記飛行体を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、目標距離と前記第1距離との差に基づいて前記飛行体の目標速度を演算する第1演算と、前記飛行速度と前記目標速度との差に基づいて前記飛行体の目標加速度を演算する第2演算と、前記目標距離または前記第1距離に基づいて前記第1演算と前記第2演算との重みづけを変更する第3演算と、を実行する。前記制御装置は、前記目標加速度となるまで前記飛行体を加速させ、前記第1距離が前記目標距離となるまで前記飛行体をフィードバック制御する。
【0008】
この飛行体の制御システムによれば、第2演算は、第1演算によって算出された目標速度を利用する。これによって、反射風によって発生する飛行体の挙動への影響を少なくできる。さらに、飛行体の制御システムは、構造物またはマーカーとの距離に応じて、第1演算と、第2演算との重みづけを変更する。これによって、構造物との距離に応じて反射風の影響度合いを考慮した演算ができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る飛行体の制御システムによれば、屋内に使用する飛行体に適した新規の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態による飛行体の制御システムのシステム図。
図2】本開示の一実施形態による飛行体のシステム図。
図3】本開示の一実施形態によるPID制御の演算ループを示すブロック図。
図4】第3演算に用いるデータテーブルの一例を示す図。
図5】ユーザ端末に表示させる目標位置とベクトルの一例を示す図。
図6】本開示の一実施形態による制御装置が実行する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示すように、飛行体2の制御システム1は、飛行体2の制御装置3と、ユーザ端末4と、サーバ6と、中継装置8と、複数のIDマーカー10と、イニシャルマーカー12と、臨時着陸マーカー14と、リターンマーカー16と、離陸ポート18と、常時着陸ポート20と、臨時着陸ポート22と、を備える。
【0013】
飛行体2は、図2に示すように、少なくともカメラ24と、露光装置26と、レーザ装置(距離センサの一例)28と、速度センサ29と、電池30と、複数のモータ32と、飛行制御部34と、を有する。飛行体2は、この他、飛行体の姿勢や速度を検知するためのジャイロおよび加速度センサなど、複数のセンサを有してもよい。本実施形態では、飛行体2は、モータ32が4つ搭載された無人マルチコプターである。しかし、飛行体2は、既知のマルチコプターであればよい。レーザ装置28は、各マーカーまたは構造物との距離(第1距離の一例)Drを検知する装置である。しかし、距離Drはカメラ24によって検知してもよい。
【0014】
本実施形態の飛行体2の制御システム1は、GPS(Global Positioning System)が使用できない環境において、GPSを使用することなく飛行体2を用いて構造物Xの点検を行うシステムである。構造物Xは、例えばトンネルの壁面や、ビルなどの建築物の壁面である。飛行体2の制御システム1は、構造物Xに配置された、イニシャルマーカー12、IDマーカー10、臨時着陸マーカー14、およびリターンマーカー16(以下明細書において各マーカーと記す)に表示される飛行経路情報を読み取り、飛行体2を制御するシステムである。
【0015】
飛行制御部34は、制御装置3からの指示を取得し、飛行体2を制御するための装置である。飛行制御部34は、実際にはCPU、メモリ、I/Oインターフェース、モータドライバを含むマイクロコンピュータと、Wi-Fi(登録商標)およびBluetooth(登録商標)などの無線通信デバイス、によって構成される。飛行制御部34は、メモリに記憶されるプログラムを用いて、飛行体2の各部の制御を実行する。飛行制御部34に含まれるプログラムは、少なくとも制御装置3から指示を取得する処理と、取得した指示に従って、複数のモータ32を制御することで飛行体2を所望の姿勢や速度となるように制御する処理と、カメラ24による撮像を実行する処理と、カメラ24またはレーザ装置28による距離Drを測定する処理と、露光装置26を作動させる処理と、電池30の電池残量の取得する処理と、を含む。
【0016】
制御装置3は、各マーカーに表示される飛行経路情報を読み取り、飛行制御部34に所望の信号を送信する装置である。図3に示すように、制御装置3は、第1演算と、第2演算と、を実行し、飛行制御部34に指示する目標加速度αを決定する。第1演算は、目標距離Dtと距離Drとの差に基づいて飛行体2の目標速度Vtを演算する演算処理である。第2演算は、第1演算によって算出した目標速度Vtと速度センサ29によって検知した速度Vrとの差に基づいて、飛行体2の目標加速度αを演算する演算処理である。
【0017】
また、制御装置3は、目標距離Dtまたは距離Drに基づいて第1演算と第2演算との重みづけを変更する第3演算と、を実行する。本実施形態の第3演算は、第1演算における各ゲインと、第2演算における各ゲインを、目標距離Dtまたは距離Drに基づいて設定する演算処理である。制御装置3は、第1演算と、第2演算と、第3演算と、を実行し目標加速度αを算出すると、目標加速度αの信号を生成し、飛行制御部34に送信する。飛行制御部34は、目標加速度αとなるように飛行体2を加減速させる。
【0018】
より具体的には、第1演算および第2演算において制御装置3は、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)、微分制御(D制御)を用いたPID制御を用いて目標速度Vt、および目標加速度(操作量)αを演算する。図3における演算ループにおいて、Sとある項がI制御、1/Sとある項がD制御である。PID制御の詳細については一般的なものであればよいため説明を省略する。制御装置3は、第1演算において目標距離Dtと距離Drとの差を速度に変換する係数をかけ合わせ算出された速度制御偏差から目標速度Vtを演算する。制御装置3は、第2演算において第1演算によって算出された目標速度Vtと速度Vrとの差を加速度に変換する係数をかけ合わせて算出された加速度制御偏差から目標加速度αを演算する。このように、制御装置3は、このような演算ループを所定時間ごとに繰り返し、目標加速度αを操作量としたフィードバック制御を実行する。なお、特許文献1の位置PID制御、速度PID制御においては、速度が操作量として開示されているが、本開示の飛行体2の制御システム1では、位置PID制御のループ内に速度PID制御のループが組み込まれ、目標加速度αが操作量である点が異なる。
【0019】
第3演算では、第1演算および第2演算に使用するP制御、I制御、D制御の各ゲインの組み合わせを、距離Dr、またはマーカーから取得した飛行情報に含まれる目標距離Dtから決定する。したがって、第3演算は、実際には第1演算および第2演算よりも前に実行される。図4に示すように、本実施形態の制御装置3は、テーブル50を記憶している。
【0020】
テーブル50は、構造物Xまたは各マーカーとの目標距離Dtまたは距離Drに対応させて、第1演算におけるI制御のゲインPOS_Kp、D制御のゲインPOS_Kd、I制御のゲインPOS_Ki、および第2演算におけるI制御のゲインVEL_Kp、D制御のゲインVEL_Kd、I制御のゲインVEL_Kiが記憶されている。以下明細書において、これらゲインを各ゲインと記す。各ゲインは、目標距離Dtまたは距離Drが小さいほど、第2演算による偏差(制御偏差)の影響が大きくなるように設定されている。言い換えると、制御装置3は、目標距離Dtまたは距離Drが短いほど、第2演算の重み付けを重くする。また、目標距離Dtまたは距離Drが長くなるほど、第2演算による偏差の影響をゼロにするようにしてもよい。この場合、第2演算において目標速度Vrを目標加速度αに変換する係数をかけて目標加速度αを算出してもよい。言い換えると、制御装置3は、第1演算の偏差に応じた制御量は常に演算する。しかし、目標距離Dtまたは距離Drが大きい(長い)場合、制御装置3は、第2演算の偏差に応じた制御量を演算しない場合もある。
【0021】
制御装置3は、目標距離Dtまたは距離Drを取得すると、第3演算において、テーブル50から各ゲインを取得し、第1演算および第2演算に使用する。なお、本実施形態の制御装置3は、テーブル50に目標距離Dtまたは距離Drに対応した各ゲインを記憶させているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、テーブル50に目標距離Dtまたは距離Drに対応した各ゲインにかけ合わせる係数を記憶してもよい。
【0022】
また、本実施形態における距離Drは、レーザ装置28によって取得した距離に対して、相補フィルタ処理を実行したフィルタ処理距離Drfものである。相補フィルタ処理とは、現在の値と過去の値をある割合で混ぜることで値の平滑化をはかる処理である。相補フィルタ処理は、下記の通り計算する。

D1f=D1×C+D1n-1×(1-C)・・・式(1)

ここで、D1は、現在の演算ループを処理する際に取得した距離Drである。D1n-1は、1つ前の演算ループに使用した距離Drである。Cは、フィルタ定数である。フィルタ定数は、目標距離Dtまたは距離Drに対応させてテーブル50に記憶してもよい。
【0023】
なお、第1演算から第3演算は、構造物Xまたは各マーカーと正対する方向(図5のX方向)の目標加速度αを演算する処理である。このため、制御装置3は、これとは別に進行方向(図5のY方向)および高度の演算処理を実行する。
【0024】
そのほか、制御装置3は、離陸ポート18から飛行体2が移動した方向、高度、距離などの飛行履歴を記録する。制御装置3は、実際には演算部36、記憶部38、I/Oインターフェース、を含むマイクロコンピュータと、Wi-Fi(登録商標)およびBluetooth(登録商標)などの無線通信デバイス(図2の通信部40)、で構成される。制御装置3は、記憶部38に記憶されたプログラムを用いて、飛行制御部34へ送信する指示信号を生成し、飛行制御部34に送信する。なお、本実施形態では、制御装置3は、飛行制御部34と別体で設けられ、飛行体2の所望の場所に固定されるとともに飛行制御部34と無線または有線によって電気的に接続される。これによって、既存のマルチコプターに含まれるプログラムを用いて、飛行体2を制御できる。しかし、制御装置3は、飛行制御部34と一体で設けてもよい。
【0025】
ユーザ端末4は、ユーザが各マーカーを組み合わせたフライトプランを作成し記録するためのパーソナルコンピュータである。しかし、ユーザ端末4は、スマートフォン、タブレット端末などの装置であってもよい。フライトプランは、飛行経路上に配置された各マーカーを制御装置3が読み取りながら飛行体2を制御するための情報である。フライトプランには、少なくとも構造物Xとの距離またはマーカーとの目標距離Dtの情報を含む。具体的には、フライトプランにはIDマーカー10に表示される識別情報と、識別情報に対応した飛行経路情報が含まれる。制御装置3は、IDマーカー10の識別情報を読み取ると、次のIDマーカー10の位置などの飛行経路情報を取得できる。制御装置3は、イニシャルマーカー12を読み取ると、中継装置8を介してサーバ6のフライトプランの格納場所にアクセスし、フライトプランをダウンロードする。
【0026】
図5に示すように、制御装置3は、ユーザ端末4のディスプレイ4aに、少なくとも各マーカーの位置または構造物Xの位置を表示し、目標加速度αまたは目標速度Vrを矢印の向きと大きさ(ベクトル)で表示する処理を実行してもよい。図5では、例えば飛行体2の位置と、IDマーカー10と、飛行体2のX方向の目標加速度αとY方向の目標加速度α2と、距離Drが表示されている。このような処理を制御装置3が実行することによって、ユーザは飛行体2の移動方向を視覚的に把握しやすい。
【0027】
サーバ6は、ユーザ端末4とインターネットによって接続され、ユーザ端末4で作成され記録されたフライトプランを格納する。サーバ6は、例えば、インターネット上に配置された記憶装置であるクラウドストレージである。中継装置8は、制御装置3と無線通信によって接続されるとともに、サーバ6とインターネットによって接続され、制御装置3と、サーバ6との間を中継する装置である。本実施形態では、中継装置8は、飛行体2を用いる建設現場などに配置される。
【0028】
IDマーカー10は、構造物Xに複数配置される。一部のIDマーカー10の下には、常時着陸ポート20が配置される。IDマーカー10は、識別情報である数字をARマーカーに変換した画像を表示する。IDマーカー10は、この他、識別情報に関連する情報の文字、または画像の情報を表示する。イニシャルマーカー12は、飛行経路の始点に配置される。イニシャルマーカー12は、制御装置3が、フライトプランを取得するために設けられる。本実施形態では、イニシャルマーカー12は、離陸ポート18の近辺に配置される。
【0029】
臨時着陸マーカー14は、飛行体2に異常が発生した場合、着陸可能な位置である旨を表示する。リターンマーカー16は、飛行体2を離陸位置まで戻す場合に、ユーザが飛行経路上の任意の位置に張り付ける。離陸ポート18は、上記のとおり離陸位置に配置される。常時着陸ポート20は、複数のIDマーカー10のうち一部のIDマーカー10の下に配置される。臨時着陸ポート22は、臨時着陸マーカー14の下に配置される
【0030】
次に図6を用いて、制御装置3による飛行体2の制御手順について説明する。なお、本実施形態では、目標距離Dtに基づいて第1演算と第2演算の重みづけを変更する例について説明する。
【0031】
ステップS1では制御装置3は、イニシャルマーカー12を読み取る。制御装置3は、イニシャルマーカー12を読み取ると、読み取ったイニシャルマーカー12の情報に合ったフライトプランを取得する(ステップS2)。フライトプランを取得した制御装置3は、フライトプランの情報から構造物Xまたは各マーカーとの距離である目標距離Dtを取得し(ステップS3)、ステップS4に処理を進める。
【0032】
ステップS4では制御装置3は、第1演算と第2演算の重みづけを設定する。具体的には、制御装置3は、テーブル50から各ゲインを取得し、第1演算および第2演算を実行するプログラムに代入する。制御装置3は、重みづけを設定すると、飛行体2を離陸させ(ステップS5)、ステップS6に処理を進める。
【0033】
ステップS6では制御装置3は、最初のIDマーカー10(第1マーカーの一例)を読み取る。制御装置3は、IDマーカー10に表示された飛行経路情報に基づいて飛行経路を特定し、次のIDマーカー(第2マーカーの一例)10に向けて飛行し(ステップS7)、ステップS8に処理を進める。
【0034】
ステップS8では制御装置3は、構造物Xとの距離Drを取得する。構造物Xとの距離は、最初のIDマーカー10(第1マーカー)を読み取った際の、IDマーカー10との距離であってもよい。制御装置3は、取得した距離Drに対して相補フィルタ処理を実行し(ステップS9)、演算ループに代入し、ステップS10に処理を進める。
【0035】
ステップS10では制御装置3は、上記の演算ループを用いて目標加速度αを演算し、ステップS11に処理を進める。制御装置3は、目標加速度αを操作量として飛行制御部34に指示を与え、飛行体2を移動させ(ステップS11)、ステップS12に処理を進める。
【0036】
ステップS12では制御装置3は、IDマーカー(第2マーカー)を読み取ったか否か判断する。制御装置3は、IDマーカー(第2マーカー)を読み取ったと判断した場合(ステップS12 YES)、ステップS6に処理を戻し、第2マーカーの次のIDマーカー(第3マーカーの一例)を読み取るための制御に処理を進める。したがって、制御装置3は、2回目のステップS6からステップS12までの処理においては、第1マーカーを第2マーカーと読み替え、第2マーカーを第3マーカーとして読み替えて処理を繰り返す。
【0037】
制御装置3はIDマーカー(第2マーカー)を読み取っていないと判断した場合(ステップS12 NO)、上記演算ループの演算を所定時間毎に繰り返し実行し、目標距離Dtが距離Drに近づくように飛行体2をフィードバック制御する。なお、本開示の飛行体2の制御システム1は、このほか各マーカーのうちIDマーカー10以外のマーカーを読み取った処理も実行するが、距離Drが目標距離Dtとなるように飛行体2を制御する処理は同様であるため説明を省略する。
【0038】
以上説明した通り、本開示の飛行体2の制御システム1によれば、第2演算は、第1演算によって算出された目標速度Vrを利用する。これによって、反射風によって発生する飛行体2の挙動への影響を少なくできる。具体的には、飛行体2と構造物Xとの距離が近いほど、反射風の影響が大きい。このため、飛行体2は構造物Xと近いほど反射風によって構造物Xから離れる方向に押し流される。したがって、目標距離Dtと距離Drに基づいて第1演算のみを実行し目標加速度αを演算した場合、反射風の影響によって飛行体2が構造物Xに近づいては離れるといった挙動を繰り返すハンチング動作を起こす。しかし、第2演算による目標速度Vrと飛行体2の偏差を利用することによって、このハンチング動作が収束しやすい。
【0039】
さらに、飛行体2の制御システム1は、構造物Xまたは各マーカーとの目標距離Dtまたは距離Drに応じて、第1演算と、第2演算との重みづけを変更する。これによって、構造物Xまたは各マーカーとの距離Drに応じて反射風の影響度合いを考慮した演算ができる。具体的には、目標距離Dtまたは距離Drが大きい(長い)場合、反射風の影響はない。しかし、発明者らの知見によれば、第2演算の偏差による制御量が含まれると目標距離Dtに距離Drが近づくにつれて、ハンチング動作を発生させる。したがって、目標距離Dtまたは距離Drが大きくなるにつれて、第2演算の影響を排除することが好ましい。このような観点から、飛行体2の制御システム1は、構造物Xまたは各マーカーとの目標距離Dtまたは距離Drに応じて、第2演算の重みづけをゼロに近づけるようにしている。言い換えると、飛行体2の制御システム1は、構造物Xまたは各マーカーとの目標距離Dtまたは距離Drが近いほど、第2演算の重みづけを重くしている。
【0040】
以上、本開示に係る飛行体の制御システム1によれば、屋内に使用する飛行体に適した新規の飛行体2の制御システム1を提供できる。
【0041】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、複数のIDマーカー10と、イニシャルマーカー12と、臨時着陸マーカー14と、リターンマーカー16と、離陸ポート18と、常時着陸ポート20と、臨時着陸ポート22と、を用いて飛行体2を制御する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。飛行体2を制御する制御システム1であれば、いずれの制御システムであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 :制御システム
2 :飛行体
3 :制御装置
4 :ユーザ端末
6 :サーバ
8 :中継装置
10 :IDマーカー
24 :カメラ
26 :露光装置
28 :レーザ装置(距離センサの一例)
29 :速度センサ
30 :電池
32 :モータ
34 :飛行制御部
36 :演算部
38 :記憶部
40 :通信部
50 :テーブル
【要約】
飛行体の制御システムは、飛行体の飛行速度を検知する速度センサと、前記飛行体と前記構造物との距離である第1距離を取得する距離センサと、前記飛行体を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、目標距離と前記第1距離との差に基づいて前記飛行体の目標速度を演算する第1演算と、前記飛行速度と前記目標速度との差に基づいて前記飛行体の目標加速度を演算する第2演算と、前記目標距離または前記第1距離に基づいて前記第1演算と前記第2演算との重みづけを変更する第3演算と、を実行する。前記制御装置は、前記目標加速度となるまで前記飛行体を加速させ、前記第1距離が前記目標距離となるまで前記飛行体をフィードバック制御する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6