(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】試料を加熱または冷却する装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/44 20060101AFI20231211BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231211BHJP
C12M 1/02 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G01N1/44
C12M1/00 A
C12M1/02 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076134
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2018548113の分割
【原出願日】2017-03-09
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518318299
【氏名又は名称】セル・セラピー・カタパルト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Cell Therapy Catapult Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ミルネ,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ナンスキーヴィル,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】クリーシー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ラム,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ラットレッジ,ルパート
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-518129(JP,A)
【文献】国際公開第2015/092080(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0281886(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0104485(US,A1)
【文献】米国特許第05616268(US,A)
【文献】特開2004-103480(JP,A)
【文献】特開2007-061245(JP,A)
【文献】特開2006-177930(JP,A)
【文献】国際公開第2004/102088(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00~ 1/44
C12M 1/00~ 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の試料を加熱または冷却する装置であって、前記装置は、
第1の部材に熱的に接続された少なくとも1つの加熱または冷却要素と、
第2の部材に熱的に接続された少なくとも1つの加熱または冷却要素と、
前記試料が前記装置上に配置されたときに試料に力を加える手段と、
を備え、
前記第1の部材は前記試料と前記第1の部材に熱的に接続された前記少なくとも1つの加熱または冷却要素との間に位置し、
前記第2の部材は前記試料と前記第2の部材に熱的に接続された前記少なくとも1つの加熱または冷却要素との間に位置し、
前記第1の部材および前記第2の部材はそれぞれ、試料接触面を有すると共に、互いに 対して独立して移動可能であり、
前記第1の部材は、
前記装置内の第1の平面内に設けられ、
前記力の動作下で前記第1の平面に対して垂直に移動
して前記1つまたは複数の試料の第1の表面に接触するように構成され、前記第2の部材は、
前記装置内の第2の平面内に設けられ、
前記力の動作下で前記第2の平面に対して垂直に移動
して、前記1つまたは複数の試料の第2の表面に接触する
、装置。
【請求項2】
前記第1の部材及び前記第2の部材はプレートである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の部材及び前記第2の部材は、使用中に、加熱または冷却要素から熱エネルギーを伝達するように動作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の平面及び前記第2の平面は互いに平行である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の部材および前記第2の部材は、使用中に、前記1つまたは複数の試料の温度を低下させるか、または前記1つまたは複数の試料の温度を上昇させるために、前記1つまたは複数の試料から、または前記1つまたは複数の試料へ熱エネルギーを伝導するために動作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記1つまたは複数の試料を時間的および/または空間的に差動的に加熱または冷却するように動作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の部材および前記第2の部材は、使用中に、加熱または冷却プロセス中に、前記1つまたは複数の試料を攪拌するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の部材および前記第2の部材は、前記1つまたは複数の試料を攪拌するために振動するように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
使用中に、前記部材、および/または前記1つまたは複数の試料、および/または前記1つまたは複数の試料が含まれる容器の1つまたは複数の特性を監視するために動作可能な1つまたは複数のセンサを更に備える、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数のセンサは、使用中に、1つまたは複数の前記部材、前記1つまたは複数の試料、または前記1つまたは複数の試料内の少なくとも1つまたは複数の領域、前記1つまたは複数の試料が含まれる前記容器、または前記容器内の少なくとも1つまたは複数の領域の温度を監視するために動作可能な温度センサを含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
使用中に、監視された前記1つまたは複数の特性に応じた加熱または冷却プロファイルを調整するために動作可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
使用中に、監視された前記1つまたは複数の特性に応じて前記攪拌を調整するために動作可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記力によって前記試料が前記第1の部材および前記第2の部材に押し付けられる、請求項
1に記載の装置。
【請求項14】
前記装置のハウジングに取り付けられた制御電子機器と制御画面を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
容器内に含まれる1つまたは複数の試料を加熱または冷却する方法であって、前記方法は、
前記容器を少なくとも1つの加熱または冷却要素に熱的に接続された第1の部材と、少なくとも1つの加熱または冷却要素に熱的に接続された第2の部材とに接触させることであって、
前記第1の部材は前記試料と前記第1の部材に熱的に接続された前記少なくとも1つの加熱または冷却要素との間に位置し、前記第2の部材は前記試料と前記第2の部材に熱的に接続された前記少なくとも1つの加熱または冷却要素との間に位置し、前記
容器と接触する前記第1の部材および前記第2の部材は、前記容器に熱エネルギー源を提供して前記容器に含まれる前記試料を加熱するか、または前記容器から熱エネルギーを伝達して前記容器に含まれるサンプルを冷却し、前記第1の部材および前記第2の部材は互いに独立して移動可能であり、前記第1の部材は、第1の平面内に設けられ、
付勢手段の動作下で前記第1の平面に対して垂直に移動
して前記容器の第1の表面に接触して、前記第2の部材は、第2の平面内に設けられ、
付勢手段の動作下で前記第2の平面に対して垂直に移動
して前記容器の第2の表面に接触することと、
前記
第1の部材および/または前記
第2の部材で容器を加熱または冷却することと、
を備える、方法。
【請求項16】
前記第1の部材および前記第2の部材はプレートであり、
各プレートに、または各プレートから伝達される熱エネルギーを独立して制御することによって、前記試料を空間的または時間的に差動的に加熱または冷却することをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数の試料を攪拌することをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記
第1の部材、前記第2の部材、および/または前記1つまたは複数の試料、および/または前記1つまたは複数の試料が含まれる前記容器の1つまたは複数の特性を監視することをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項19】
監視された特性に応じて、加熱/冷却プロファイルを調整すること、および/または前記試料を攪拌することを含む、請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を加熱または冷却する装置および/または方法の改良に関し、特に、袋または他の容器内に封入された試料を加熱、解凍、冷却および/または冷凍する装置および/または方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料は慣行的に、袋または他の容器内に保存され、しばしば冷蔵または冷凍されて保存
期間を維持または改善する。このような冷蔵または冷凍試料は、しばしば使用前に解凍または加熱が必要であり、安全かつ効率的な方法で解凍または加熱を行うことが通常望ましい。更に、場合によっては、例えば試料が生物学的材料または食品を含む場合、加熱/解凍の間および/または後に、試料がいかなる形でも汚染されないことを確実にしながら、試料の最高温度を一定の値よりも低く保つ必要があり得る。典型的な場合、冷凍試料が極低温袋またはバイアル内の生物学的材料を含む場合、試料はいかなる形でも汚染されず、通常試料の温度が、試料が回復不能に破損する可能性がある37℃を超えないことが重要である。
【0003】
試料の加熱/解凍は、典型的には、試料袋または容器を、一般に水の融点を超える温度に保たれた水(または他の流体)に入れることができる湯煎中で実施することができる。このように水(または他の流体)を使用することにより、温度が選択された値を超えないようにする有効な手段が提供される。しかし、このように試料を解凍すると、袋/容器が水没される水(または流体)の無菌性に関する問題が生じ、試料の汚染が問題となる可能性がある。
【0004】
試料を加熱/解凍する「乾式」システムは、水(または他の流体)ベースのシステムと比較して無菌性および安全性の利点を提供する。しかし、乾式システムでは、試料を加熱すべき最高温度を超えないで、試料を解凍するのに十分なパワーを加えることは特徴的に困難である。更に、袋内に含まれる試料を冷凍する場合、冷凍時に袋が曲がる可能性がある。平面加熱要素を含む当技術分野の乾式システムは、冷凍中に屈曲が生じた場合、袋全体にわたって均一な加熱プロファイルを提供しない。
【0005】
同様に、試料を安全かつ効率的に冷却または冷凍する手段を提供する必要がある。ある例において、これは、封入された試料の温度が試料全体にわたって同じ速度で減少することを保証することを含むことができ、同時に試料がいかなる形でも汚染されないことを確実にする。試料が極低温袋またはバイアル内の生物学的材料を含むか、または袋または可撓性容器内の食品を含む例示的な場合において、試料がいかなる形でも汚染されていないことが重要であり、試料が冷蔵されるかまたは冷凍された場合に高温/低温スポットを生成しないように、試料全体の一定の温度プロファイルを保つことが有利である。
【0006】
公知の冷蔵または冷凍システムは、典型的には、上記のような「乾式」システムに制約される。しかし、説明したように、特に可撓性袋内の試料を冷凍する場合に、プロセス中に袋が曲がることがあるので、平面加熱/冷却要素を備えた乾式システムを使用して試料全体にわたって一定の温度プロファイルを維持することは特徴的に困難である。
【0007】
本発明の目的は、従来技術の装置に関連する問題を克服するかまたは少なくとも部分的に緩和する、試料を加熱または冷却する改良された装置を提供することである。
【0008】
従来技術の方法に関連する問題を克服するか、または少なくとも部分的に緩和する、試料を加熱または冷却する改良された方法を提供することも本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2010/281886号明細書
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、1つまたは複数の試料を加熱および/または冷却するために使用できる複数の部材を備えた、1つまたは複数の試料を加熱または冷却する装置が提供され、複数の部材の各々は、試料接触面と付勢手段とを備え、使用の際、各部材は付勢され、好ましくは、前記付勢手段の動作下で、静止位置に向けて弾性的に付勢され、また試料接触面に対する力の適用のもとで、前記付勢に対して残りの部材の各々に関して独立して移動できる。
【0011】
このようにして、本発明の装置は、部材と接触する1つまたは複数の試料、または加熱あるいは冷却される試料が貯蔵されている袋あるいは容器、の形状に一致する複数の独立して移動可能な部材上に接触面を提供する手段を提供する。このようにして、本発明の装置は、従来の乾式システムに関連する問題に対処する均一な加熱または冷却プロファイルを提供する「乾式」システムを提供する。
【0012】
本明細書を通じて使用される場合、用語「加熱する(heat)」、「加熱された(heated)」および「加熱すること(heating)」は、熱エネルギーの試料への適用をカバーすることを意図する。特に、試料の加熱への言及は、試料または試料の一部に少なくとも1,2,3,5,10,20,30,40,50,100,200,250または275℃の温度上昇をもたらすことがある。加熱された試料は、固体試料、例えば、冷凍試料または部分的に冷凍された試料であってもよい(例えば、少なくとも5,10,20,30,40,50,60,70,80または90%の氷分率を含む)。氷分率は、液体の水ではなく氷として存在する試料中の水の量または割合である。あるいは、試料は、例えば生物学的材料を含む液体または溶液であってもよい。固体または液体試料は、凍結保護添加剤(例えば、ジメチルスルホキシド、グリセロール、エチレングリコール、糖およびポリマー、単独または混合物として)を含み得る冷凍保存試料であり得る。
【0013】
「加熱」には、試料の解凍が含まれる。本明細書で使用される「解凍する(thaw)」または「解凍(thawing)」という用語は、氷を液体の水に変換するプロセスを指す。用語「解凍(thawing)」は、代わりに、「解凍(melting)」と呼ぶことができる。試料の解凍は、解凍温度でまたは解凍温度より前に起こってもよく、完全解凍は融点で起こる。従って、試料を解凍すると、試料中の氷が水に変換されることになる。
【0014】
本発明では、熱を生成するために当該技術分野で知られている任意の方法を用いて試料を加熱することができる。具体的な方法については後述する。
【0015】
同様に、本明細書を通して使用する場合、用語「冷却する(cool)」、「冷却された(cooled)」および「冷却(cooling)」は、試料からの熱エネルギーの除去/伝導をカバーすることを意図している。特に、試料の冷却に言及すると、試料または試料の一部の温度が少なくとも1,2,3,5,10,20,30,40,50,100,200,250または275℃低下することがある。「冷却(cooling)」とは、試料の冷凍を含み、「冷凍(freezing)」とは液体の水の氷への相転移を指す。
【0016】
特に、水溶液(例えば、生物学的材料を含む)は冷凍、例えば冷凍保存されてもよい。冷凍保存のために、水溶液は、典型的には、単独または混合物としてジメチルスルホキシド、グリセロール、エチレングリコール、糖およびポリマーなどの凍結保護添加剤と共に、増殖培地(塩、糖など)を含むことができる。生物学的材料は、溶液中の細胞懸濁液、組織またはタンパク質の形態であってもよい。食品材料では、水溶液は、糖、タンパク質、脂肪などを含むことができる。水溶液の初期冷凍中に氷が形成され、システムから水が除去される。冷凍保存剤の存在下では、存在する任意の細胞を含むシステムの残りは氷結晶形成から除外され、冷凍濃縮されて残留未冷凍部分となる場合がある。温度が低下するにつれて、更に多くの氷が形成され、ガラス転移温度または共晶温度で凝固するまで、残留未冷凍部分がますます濃縮される。初期冷凍とガラス転移温度との間の全ての温度にお
いて、結晶氷および残留未冷凍部分の二相系が存在する。従って、本発明の装置は、試料を冷凍保存するために使用することができ、これは、試料を冷却することに関連して含まれる。
【0017】
試料、容器、または部材あるいはその一部の温度は、以下で更に議論するように、少なくとも1つの温度センサまたは当技術分野で周知の任意の他の方法を用いて測定または決定することができる。従って、初期温度と、部材/試料への、または部材/試料からの熱の伝達後の温度を測定することによって、温度の増減を検出することができる。
【0018】
装置は、1つまたは複数の試料(1つまたは複数の固体または液体試料)、例えば、1つまたは複数の冷凍または冷蔵試料を加熱する(例えば解凍する)ために使用できてもよい。代替的または追加的に、装置は、1つまたは複数の試料を冷却するために使用できてもよい。従って、装置は、1つまたは複数の試料を冷凍するための冷凍装置として使用されてもよく、あるいは1つまたは複数の試料を冷凍保存するために使用されてもよい。装置は試料の加熱および冷却の両方をできることが可能であり、装置内に含まれる部材の少なくとも一部(例えば、複数の部材の)が加熱に関連し、装置内に含まれる部材の少なくとも異なる部分が冷却に関連する。例えば、装置の部材の少なくとも10,20,30,40、または50%は、試料の加熱に関連しているかまたは加熱することができ、および/または部材の少なくとも10,20,30,40または50%は、試料の冷却に関連しているかまたは冷却することができる。あるいは、複数の部材のうちの1つまたは複数の部材は(例えば、部材の少なくとも10,20,30,40または50%)、試料の加熱および冷却の両方を異なる回数行うことができる、すなわち、加熱および冷却機能は、時間的に分離している。
【0019】
上記のように、装置は、少なくとも1つの試料(1つまたは複数の試料)を加熱および/または冷却することができる。本発明の装置によって加熱および/または冷却され得る試料の数は、試料(および試料が含まれる容器)のサイズ、部材の数、装置内に存在する部材によって提供される接触面領域、ならびに加熱および/または冷却が可能な部材の割合に依存する。一般に、試料容器が複数の部材によって提供される表面積よりも小さい場合、複数の試料を本発明の装置内で同時に加熱および/または冷却することができる。特に、少なくとも1個,2個,3個,4個,5個,6個,7個,8個,9個または10個の試料を同時に加熱または冷却することが可能であり得る。以下に更に説明するように、各試料に適用される温度は、同じであっても異なっていてもよく、各試料間で時間の経過と共にまたは空間的に変化してもよい。
【0020】
本明細書で使用される「複数の部材」とは、使用において試料を加熱および/または冷却することができる2つ以上の部材、好ましくは部材のアレイを指す。複数の部材内の部材の数は、加熱または冷却が望まれる試料容器のサイズおよび/または数に依存し得る。しかし、特に、少なくとも10,50,100,200,500,1000,2000,3000,5000,7000、または10000個の部材が存在し得る。
【0021】
当業者であれば、使用において複数の部材が試料を加熱および/または冷却することが可能であるために、部材の全てが試料に熱を伝え、および/または試料から熱を取り去る必要はないことを理解されよう。従って、装置内に存在する複数の部材の部材の一部またはグループだけが、試料に熱を伝え、および/または試料から熱を取り去ることができてもよい。特に、複数の部材の少なくとも5,10,15,20,30,40,50,60,70,80,90または99%は、試料に熱を伝え、および/または試料から熱を伝えることができてもよい(例えば、熱源または冷却要素または冷却剤に熱的に接続されていてもよい)。あるいは、使用において複数の部材の全てが、試料に熱を伝え、および/または試料から熱を伝えることができてもよい。本明細書で言及する加熱部材は、使用において試料に熱を伝えることができる部材である(例えば、熱源に熱的に接続され得る)。本明細書で言及する冷却部材は、試料から熱を伝えることができる部材である(例えば、冷却材または冷却要素に熱的に接続され得る)。
【0022】
更に、当業者であれば、使用において複数の部材の全てが1つまたは複数の試料と接触するわけではないことを理解されよう。従って、特に、複数の部材の少なくとも一部またはグループは、使用において試料または試料容器と接触してもよく、例えば、複数の部材の少なくとも5,10,20,30,40,50,60,70,80または90%が試料と接触してもよい。
【0023】
更に、本発明の装置は、部材を個別のサブセットまたはグループに物理的に分割する手段を備えていてもよい。例えば、本発明の装置は、付勢手段を備えていない他の部材様構造体を有していてもよい。このような構造体は、複数の部材のうちの1つまたは複数と同様のまたは同じ形状および/またはサイズであってもよい。更に、典型的には、部材様構造体は試料を加熱または冷却することができない。このような部材様構造体によって、複数の部材を部材のグループに分けることができ、以下に詳細に説明するように、例えば装置の別個の領域が、試料を差動的に加熱または冷却できてもよい部材のグループを含むことを可能にしてもよい。本発明の装置は、加熱/冷却部材のサブセットまたはグループの周りに、フレームを形成するように構成することができる1つまたは複数のフレーム部材を備えることができる。フレーム部材は、作動位置と非作動位置との間で移動可能な分割部材とすることができる。分割部材は、加熱/冷却部材のサブセットまたはグループと残りの部分との間に配置され、動作位置と非動作位置との間の移動のために、加熱/冷却部材に対して昇降することができる。
【0024】
従って、装置が1つまたは複数の試料を加熱するために使用できるとき、1つまたは複数の部材は試料を加熱することができる。特に、1つまたは複数の部材は、熱源から熱エネルギーを伝えるために使用できてもよい。この実施形態では、2つ以上の熱源を使用することができ、例えば2、3、4、5、6、7、8または9個より多い熱源を使用することができる。各熱源は、試料の別個の部分および/または異なる試料を順番に加熱することができる、別々のまたは別個の部材グループを加熱することができる。一態様では、部材ごとに、すなわち各部材に対して1つの熱源を使用することができる。本発明の特定の一実施形態では、全ての部材が熱を伝えることができるが、部材の一部またはグループのみがこの機能を有することも可能である。
【0025】
更に、装置は、使用において、1つまたは複数の部材と熱源との間の熱的接続、例えば熱および/またはエアギャップを伝えることができる材料、を提供するように適合されてもよい。特に、1つまたは複数の部材と熱源(および/または冷熱源)との間にエアギャップが存在してもよい。
【0026】
装置は、一体型熱源を含むことができ、または(または更に)外部熱源を使用することができる。熱源(特に、一体型熱源)は、少なくとも1つの加熱要素、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8または9個の加熱要素を含み、少なくとも1つの加熱要素は、複数の部材のうちの少なくとも1つ、例えば複数の部材のうちの一部またはグループに熱的に接続されてもよい。(本明細書で使用される複数の部材のうちの一部またはグループは、複数の部材の少なくとも5,10,15,20,25,30,40,50,60,70、または80%を指すことができる)。このようにして、少なくとも1つの加熱要素は、前記1つまたは複数の部材に熱を伝えることができ、これは次に試料を加熱することができる。特に、少なくとも1つの加熱要素は、複数の部材の全てに熱的に接続されていてもよい。このようにして、部材の全てに熱が伝えられ、これらは次に試料を加熱することができる。更なる実施形態では、別個の加熱要素を、複数の部材のうちの1つまたは複数の部材内、例えば各部材内に設けることができる。
【0027】
幾つかの実施形態では、加熱要素はセラミック材料を含むことができる。しかしながら、現在好ましい実施形態では、加熱要素は金属材料から形成されてもよい。このような実施形態では、加熱要素は、例えば、アルミニウムまたはケイ素から形成されてもよく、または2つ以上の異なる金属要素の合金であってもよい。
【0028】
幾つかの実施形態では、加熱要素は、例えば主電源などの電源に接続されてもよい。このような実施形態では、加熱要素は、電源からの電流が供給されたときに温度を上昇させるように動作可能であってもよい。加えられる電力は、様々な要因、例えば、加熱される試料サイズ(または冷却される、ここでは後述するような冷却要素が使用される)、加熱が行われる時間長および/または試料の初期温度および試料の所望の温度に依存してもよい。例えば、少なくとも数ワット、例えば、小さな試料を数分間で加熱するために少なくとも1,5または10ワットを使用することができ、より大きい試料には少なくとも50,100,500,1000,2000,2500または3000ワットを使用することができる。幾つかの実施形態では、使用において、電流がそこを通過するとき、加熱要素は抵抗加熱を通じて加熱することができる。あるいは、摩擦、マイクロ波またはRF(高周波交流電界、マイクロ波、電波など)によって、または外部熱源への暴露によって熱を発生させることができる。加熱要素は、上述したように、その熱を複数の部材のうちの少なくとも1つの部材に伝えることができる。
【0029】
1つまたは複数の部材は、1つまたは複数の部材と接触し、特に試料から隔離された加熱液体または気体などの熱源からの熱の伝導によって代替的に加熱されてもよい(すなわち、乾式システムを保持するために)。一実施形態では、加熱された材料(液体または気体)が、前記1つまたは複数の部材を通って、部材の中または隣接して、流れることができる(例えば前記1つまたは複数の部材内(例えば1つまたは複数のチューブ内)。この実施形態では、前記1つまたは複数の部材は加熱された材料の入口および出口を備え、前記加熱された材料が前記1つまたは複数の部材に出入りすることを可能にしてもよい。)1つまたは複数の部材と熱源との間に熱的接続が提供される実施形態では、熱的接続は直接的であってもよい。例えば、直接熱的接続は、1つまたは複数の部材と熱源の直接接触などの物理的接続を含むことができる。直接接触は、1つまたは複数の部材の導電性部分と熱源との直接接触を含むことができる。このような実施形態では、熱エネルギーは、伝導によって熱源から1つまたは複数の部材に直接伝達されてもよい。熱源は、各部材内に収容されていてもよいし、各部材を少なくとも部分的に取り囲んでいてもよい。あるいは、1つまたは複数の部材と熱源との間の熱的接続は、中間要素を介して間接的に行われてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、中間要素は、熱源からの熱エネルギーを複数の部材のうちの1つまたは複数に伝達するために使用できる導電性材料を含むことができる。中間要素は、熱源と複数の部材の1つまたは複数の部材との両方に直接接触してもよい。
【0030】
1つまたは複数の試料を冷却するために装置を使用できる他の実施形態では、1つまたは複数の部材は、前記1つまたは複数の試料の温度を低下させるために、1つまたは複数の試料からの熱エネルギーを、例えば1つまたは複数の冷却要素(例えば、2つ、3つ、4つまたは5つより多い冷却要素)を含んでもよい少なくとも1つの冷熱源に伝えるために使用できてもよい。特に、1つまたは複数の部材は、そこから、冷却された材料、例えば液体または気体、あるいは固体、例えばドライアイスなどの冷熱源への熱の伝導によって冷却されてもよい。冷却された材料は、1つまたは複数の部材と接触していてもよいが、特に、乾式システムを保証し維持するために、試料から、例えば部材の外面から単離されてもよい。従って、冷却された材料は、加熱に関して上述したように、1つまたは複数の部材を通って、部材の中または隣接して流れることができる。この実施形態では、冷却された材料は、液体窒素、二酸化炭素、あるいは家庭用または工業用の冷媒(例えば、冷凍エンジンに接続されている場合)、例えばアンモニアまたはプロパンなどの種々の炭化水素を含むことができる。
【0031】
冷熱源は、装置に一体化していてもよいし、外部にあってもよい。冷熱源は、前述したように冷却された液体、固体または気体であってもよく、または冷却機(例えば蒸発器プレート)から、またはスターリングエンジン(クライオクーラ)またはペルチェクーラまたは装置からの冷却要素などの冷却要素を含んでもよい。幾つかの実施形態では、冷熱源は、複数の部材のうちの少なくとも1つの部材に、または複数の部材のグループまたは部分、例えば各部材に、熱的に接続することができる。このような実施形態では、冷熱源は、熱的に接続された部材から熱エネルギーを伝えるために使用できてもよく、それにより、部材または各部材の温度をそれに従って低下させる。更なる実施形態では、別個の冷熱源、例えば、複数の部材のうちの1つまたは複数の(例えば、それぞれの)部材内に、冷却要素が提供されてもよい。
【0032】
1つまたは複数の部材と冷熱源との間の熱的接続が提供される実施形態では、熱的接続は直接的であり得る。例えば、直接熱的接続は、1つまたは複数の部材および冷熱源の物理的接続、例えば橋台を含むことができる。直接接続は、1つまたは複数の部材の導電性部分を冷熱源と直接接続することを含むことができる。このような実施形態では、熱エネルギーは、伝導によって1つまたは複数の部材から冷熱源に1つまたは複数の部材に直接伝達されてもよい。冷熱源は、各部材内に収容されていてもよいし、または各部材を少なくとも部分的に取り囲んでいてもよい。あるいは、1つまたは複数の部材と冷熱源との間の熱的接続は、中間要素を介して間接的に行われてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、中間要素は、熱エネルギーを複数の部材のうちの少なくとも1つの部材から冷熱源に伝達するために使用できる導電性材料を含むことができる。
【0033】
複数の部材のうちの1つまたは複数の部材は、本明細書に記載されているように、試料を加熱または冷却するために使用できてもよい。
【0034】
上述のように、幾つかの実施形態では、装置は、熱源および/または冷熱源(例えば、加熱要素および/または冷却要素を含む)を備える。幾つかの実施形態では、加熱および/または冷却要素は、平坦な表面を含むことができる。代替の実施形態では、加熱および/または冷却要素は、使用において複数の部材のうちの1つまたは複数の部材が移動できる一連の窪みまたは空洞を含むことができる。特に、加熱および/または冷却要素は、一連の窪みまたは空洞を含み、各窪みまたは空洞は、単一の部材、例えば格子状の構造を受けるために使用できる。
【0035】
使用において複数の部材のうちの1つまたは複数の部材が移動できる一連の窪みまたは空洞を、加熱および/または冷却要素が含む実施形態では、部材または各部材は、窪みまたは空洞内に部分的にのみ収容されてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、部材または各部材の一部のみが窪みまたは空洞内に収容されてもよい。幾つかの実施形態では、窪みまたは空洞内に含まれる部材の部分は、窪みまたは空洞の外側にある部材の部分よりも大きいかまたは等しい。当業者であれば、各部材のより大きい部分が窪みまたは空洞内に存在する場合、部材へのまたは部材からの熱の伝導がより効率的になることを理解されよう。しかし、部材の一部は、試料を載せることができる表面を提供するために窪みまたは空洞の外側になければならない。従って、窪みまたは空洞内に含まれる部材または各部材の部分と、同じ部材の残りの部分、すなわち、窪みまたは空洞内に含まれない部分との比は、例えば1:1~100:1、例えば2:1,3:1,4:1,5:1,6:1,7:1,8:1,9:1,10:1,15:1,20:1,30:1,40:1または50:1から60:1,70:1,80:1または90:1であってもよい。あるいは、部材の
少なくとも50,60,70,80または85%が窪みまたは空洞内に含まれていてもよい。しかしながら、当業者であれば、使用において窪みまたは空洞内に含まれる部材または各部材の部分の、同じ部材の残りの部分に対する比率が変化し得ることを理解されよう。例えば、この比は、部材または各部材が付勢手段によって与えられる付勢に抗して、または付勢と協働して移動すると、変化し得る。
【0036】
更に、より長いまたは長大した長さ(すなわち、窪みまたは空洞の側面と平行な部材の部分を指し、部材の試料接触面を指さない)を有する部材は、熱がそこへまたはそこから伝達されるより大きな表面積を有し得る。従って、状況によっては、部材の長さを長くすることが望ましい場合がある。典型的には、部材は、長さが少なくとも0.2,0.5,1,2,3,4,5,6,7,8,9または10cmであってもよい(部材の窪み/空洞に平行な側面を指す、あるいは、部材の試料接触面に対して垂直である部材の表面を指す場合)。
【0037】
幾つかの実施形態では、使用において装置は、1つまたは複数の部材の少なくとも一部が配置されるフレームまたは外部ケーシングを含むことができる。このような実施形態では、部材または各部材は、使用において装置のフレームまたはケーシング内に部分的にのみ含まれていてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、部材または各部材の一部のみがフレームまたはケーシング内に収容されてもよい。幾つかの実施形態では、フレームまたはケーシング内に収容される部材の部分は、ケーシングまたはフレームの外側にある部材の部分以上である。従って、装置のフレームまたはケーシング内に収容された部材または各部材の部分の、同じ部材の残りの部分、すなわち、装置のフレームまたはケーシング内に含まれていない部分に対する比率は、例えば1:1であってもよいし、2:1であってもよいし、3:1であってもよいし、4:1であってもよいし、5:1であってもよいし、6:1であってもよい。あるいは、少なくとも部材の50,60,70,80または85%がフレームまたはケーシング内に含まれていてもよい。更に、使用において、装置のフレームまたはケーシング内に収容された部材または各部材の部分の、同じ部材の残りの部分に対する比率が変化してもよい。例えば、この比は、部材または各部材が付勢手段によって与えられる付勢に抗して、または付勢と協働して移動すると、変化し得る。
【0038】
特定の実施形態では、複数の部材は、それ自体が静止位置に弾性的に付勢された支持構造体上に配置され、試料接触面に力を加えると前記付勢に抗して移動可能である。支持構造体は、フレームであってもよく、および/または部材が配置される加熱または冷却要素を含んでもよい。支持構造体は、1つまたは複数の付勢手段、例えば典型的には、複数の部材への支持構造体の対向する側または表面上に配置され得る1つまたは複数のバネに接続されてもよい。1つまたは複数の付勢手段、例えばバネは、力の適用(例えば、複数の部材上の試料/試料容器の存在)に応答して支持構造体を移動させることができる。これにより、装置は、複数の部材のみが補償することができるよりも歪んだ試料容器を補償することができる。従って、支持構造体に取り付けられた付勢手段は、装置の全体的な調整を可能にすることができるが、複数の部材は、典型的に、微調整を可能にする。上で示したように、支持構造体は、少なくとも1つの付勢手段、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の付勢手段に取り付けられてもよい。以下で詳細に説明するように、付勢手段は、支持構造体を静止位置に向けて付勢し、支持構造体が力の印加、例えば、複数の部材のうちの少なくとも1つへの試料容器の印加下で、前記1つまたは複数の付勢手段に抗して移動することを可能にする任意の材料から形成することができる。特に、付勢手段は、バネ、発泡体および/またはガス支柱であってもよい。支持構造体に取り付けられた少なくとも1つの付勢手段は同じであってもよいし、異なる付勢手段の組み合わせを用いてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態では、1つまたは複数の部材と熱源または冷熱源、例えば加熱または冷却要素との間の間接熱的接続が、複数の部材のうちの1つまたは複数と熱源または冷熱源(例えば、冷却された材料または加熱/冷却要素)との間で熱エネルギーが伝達されるエアギャップを含むことができる。エアギャップを設けることにより、試料が貯蔵されている袋/容器が熱源または冷熱源(例えば、冷却されたまたは加熱された材料または加熱/冷却要素)に直接接触しないので、試料の過熱(または過冷却)に関する従来の「乾式」システムに関連する問題を抑制することができる。むしろ、熱エネルギーはエアギャップをまたがって伝達され、エネルギーが試料に供給されるか試料から除去される速度をより大きく制御する。幾つかの実施形態では、付勢手段は、対応する部材と熱源または冷熱源(例えば、冷却または加熱された材料または加熱/冷却要素)との間にエアギャップを維持するように動作できる。
【0040】
幾つかの実施形態では、エアギャップは、0.05mm以下、または0.1mm以下、または0.2mm以下、または0.3mm以下、または0.5mm以下であってもよい。幾つかの実施形態では、エアギャップは0.5mmより大きくてもよい。現在の好ましい実施形態では、エアギャップは0.1mm未満である。
【0041】
幾つかの実施形態では、複数の部材をフレーム内に設けることができる。フレームは、熱伝導性材料、例えば、金属材料で形成することができ、複数の部材のうちの1つまたは複数と熱的に接触していてもよい。このような実施形態では、フレームは、部材と外部熱源、冷却材または加熱/冷却要素との間の中間要素として作用することができる。前記複数の部材を含むフレームに取り付けられたヒートパッドを用いて、前記1つまたは複数の部材を加熱することが望ましい場合がある。特に、ヒートパッドのサイズは可能な限り最小限に抑えられて、温度勾配の発生を低減し、一方、複数の部材のうちの前記1つまたは複数を所望の温度に加熱することを可能にする。更に、ヒートパッドが配置されるフレームの厚さが増加すると、温度勾配の発生を低減または防止することができる。他の実施形態では、フレームは、単に部材を特定の構成に保持するために作用することができる。このような実施形態では、部材と外部熱源、冷却材または一体型加熱/冷却要素との間の熱的接続は、直接的であってもよく、または上述したように追加の中間要素またはエアギャップを介して間接的であってもよい。
【0042】
装置が1つまたは複数の試料を加熱するように動作可能な実施形態(例えば、試料が、装置が使用される環境の周囲温度より低い温度、または設定温度未満の温度である場合)において、熱源は、上記のように、ガス分子の放射または対流、あるいはガス分子を介する伝導、あるいは熱源と複数の部材との間の伝導性部材を介する伝導によって、熱エネルギーを複数の部材のうちの1つまたは複数に伝達するように動作可能である。
【0043】
装置が1つまたは複数の試料を冷却するように動作可能な実施形態(例えば、試料が、装置が使用されている環境の周囲温度より高い温度、または設定温度より高い温度である場合)において、1つまたは複数の試料からの熱エネルギーは、ガス分子の放射または対流、あるいはガス分子を介する伝導、あるいは1つまたは複数の試料と複数の部材との間の伝導性部材を介する伝導によって、複数の部材の1つまたは複数に伝達できる。
【0044】
上述のように、複数の部材の各部材は、「試料接触面」を含む。試料接触面は、使用において試料または試料を含む容器と接触することができる各部材の部分である。従って、これは、試料または容器(例えば、試料を含む)に直接接触することができる各部材が、冷却または加熱される部分である。典型的には、試料接触面は、各部材の非取り付け端部、すなわち、装置の他の部分、例えば熱源および/またはフレーム、に直接取り付けられていない、および/または、例えば加熱または冷却要素の、窪み/空洞内に含まれていない(または窪み/空洞に平行である)端部、にあることが分かる。
【0045】
複数の部材のうちの1つまたは複数は、細長構造、例えば実質的に引き延ばされた構造を含むことができる。このような実施形態では、複数の部材のうちの1つまたは複数は、ピン、ロッドまたはバーを備えてもよく、または任意の適切な中空または中実の管状または円筒形の部材であってもよい。このような実施形態では、1つまたは複数の部材の試料接触面は、細長部材の端面などの細長部材の端部の一部を含むことができる。試料接触面は、試料接触面の断面表面積が細長部材より大きな断面積を有するように、1つまたは複数の方向に細長部材から突き出てもよい。
【0046】
部材が細長部材を含む実施形態において、付勢手段は、細長部材内に少なくとも部分的に収容されてもよい。幾つかの実施形態では、付勢手段は、細長部材内に完全に収容されてもよい。例えば、付勢手段は、細長部材内にバネまたは変形可能な弾性部材を備えることができる。他の実施形態では、弾性部材は、細長部材の下に配置され、細長部材とフレームまたは他の支持構造体との間で動作することができる。細長部材が加熱および/または冷却要素の窪みまたは空洞内に配置される場合、弾性部材は、加熱および/または冷却要素のベースと細長部材との間で動作することができる。このような実施形態における弾性要素は、圧縮バネであってもよい。
【0047】
更なる実施形態では、部材の1つまたは複数は、非細長部材を備えることができる。このような実施形態では、複数の部材は、例えば、支持アームまたはフレームなどの支持構造体に接続され得るパッド、キー、ボタン、プレートまたはディスクを備えることができる。支持アームは、例えば、非細長部材の各々を装置に接続することができる細長ポールまたはロッドを備えることができる。支持アームは、例えば、非細長部材を付勢手段、あるいは更なる支持部材またはフレームに接続することができる。支持アームは、関節接合部を含むことができる。支持アームは、一体型付勢手段を備えることができ、支持アームが関節継手を含む実施形態では、関節継手は、例えばバネなどの付勢手段を備えることができる。
【0048】
部材が非細長部材を含む実施形態では、付勢手段は、非細長部材内に少なくとも部分的に収容されてもよい。他の実施形態では、付勢手段は、非細長部材の少なくとも一部に完全に接続されてもよい。例えば、付勢手段は、非細長部材の表面に接続されたバネまたは変形可能な弾性部材を備えていてもよい。このような実施形態では、付勢手段はまた、支持構造体の一部に接続されてもよく、非伸張部材と支持構造体との間の接続部を形成してもよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、部材の1つまたは複数は細長部材と、例えば、パッド、キー、ボタン、プレート、ディスクなどの非細長部材を含むことができる試料接触面とを含むことができる。
【0050】
従って、各部材は、好ましくは、使用において、試料に熱エネルギーを伝える、または試料から熱エネルギーを伝えるために、1つまたは複数の試料または試料容器の一部と接触し得る試料接触面を含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの部材の試料接触面は、セラミック材料を含むことができる。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの部材の試料接触面は、金属材料を含む。このような実施形態では、試料接触面は、例えば、アルミニウムまたはケイ素から形成されてもよく、または2つ以上の異なる金属元素の合金であってもよい。現在の好ましい実施形態では、装置は加熱および/または冷却要素を備え、1つまたは複数の部材の試料接触面は、加熱および/または冷却要素と同じ材料を含む。特に、各々の完全な部材は、試料接触面について上に列挙した材料のいずれかを含むことができる。しかしながら、複数の部材内の異なる部材が、例えば上述した材料からの、異なる材料を含むことが可能である。
【0051】
幾つかの実施形態では、付勢手段は、試料接触面によって画定される容積内の対応する部材内に収容されてもよい。例えば、試料接触面は、使用において付勢手段が見えないように、付勢手段を完全に囲むことができる。
【0052】
各部材の試料接触面は、最大100cm2までの面積を有することができ、例えば、最大90,80,70,60,50,40,30,20,10,5,4,3,2または1cm2まで、あるいは最大5mm2または1mm2まで、例えば、0.5,0.4,0.3,0.2または0.1mm2未満である。特に、本発明では、少なくとも1つの部材の試料接触面は、例えば、0.1mmから0.5mm、1mm、2mm、5mm、1cm、2cm、3cm、4cm、5cm、10cm以上で直径が変化してもよい。特に、部材は、直方体形状であってよく、0.5~1.5cm2、特に約1cm2の試料接触面を有してもよい。
【0053】
部材の試料接触面は、実質的に平坦または平面であってもよく、または三次元構成を含んでもよい。試料接触面が実質的に平坦である実施形態では、表面は、規則的であっても不規則であってもよい任意の多角形を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、試料接触面は、例えば、円形、三角形、正方形、または長方形であってもよい。幾つかの実施形態では、試料接触面は実質的に六角形である。試料接触面が三次元構成を含む実施形態では、表面は、例えば、実質的に球形、半球形、直方体形またはピラミッド形状を含むことができる。幾つかの実施形態では、試料接触面は、湾曲していても、凹状であっても凸状であってもよい。
【0054】
各部材の試料接触面は、同じ構成を含むことができる。他の実施形態では、少なくとも1つの部材の試料接触面は第1の構成を含み、1つまたは複数の更なる部材の試料接触面は第2の構成を含む。
【0055】
幾つかの実施形態では、装置は、使用において、1つまたは複数の試料または試料容器が複数の部材の一部にのみ接触し得るように構成されてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、装置は、1つまたは複数の試料または試料容器が、複数の部材の10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%までと接触し得るように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、装置は、使用において、1つまたは複数の試料または試料容器が、複数の部材のそれぞれに接触し得るように構成することができる。使用において、1つまたは複数の試料または試料容器と接触する部材の数は、試料または容器のサイズおよび形状に依存する。各部材は、試料接触面に力を加えた場合にのみ、前記付勢に抗して可動であってもよい。従って、使用において、1つまたは複数の試料または試料容器が複数の部材の一部にのみ接触する実施形態では、試料または容器と接触する部材のみが前記付勢に抗して移動され、任意の残りの部材は、付勢下で静止位置に保持される。
【0056】
複数の部材は、1つまたは複数のグループに設けられてもよい。単一のグループの部材が提供される実施形態では、部材は例えば、2x1,3x1,2x2,3x3または4x4マトリクスなどの1つまたは2つの方向の少なくとも2つの部材を含むことができる所与の領域を覆うマトリクスに配置されてもよい。幾つかの実施形態では、一方向または両方向に少なくとも5個の部材、または少なくとも10個の部材、または少なくとも20個の部材が存在し得る。上述したように、部材のグループは、部材様構造体、分割部材または他の手段によって互いに分離されることが可能であり、部材様構造体または分割手段は、付勢手段を備えていなくてもよい。
【0057】
幾つかの実施形態では、複数の部材は、平面内に設けられてもよい。このような実施形態では、複数の部材のうちの1つまたは複数、好ましくはそれぞれが、平面に対して垂直
に整列されてもよい。幾つかの実施形態では、使用において、複数の部材は、試料が載置されてもよい単一の水平面内に設けられてもよく、複数の部材の1つまたは複数は垂直に整列されている。このような実施形態では、各部材は、試料の重量の下でその付勢に抗して垂直軸に沿って移動するように動作可能であり得る。複数の部材が単一の水平面内に設けられる実施形態では、1つまたは複数の試料または試料容器は、複数の部材のうちの1つまたは複数上に配置された場合水平に配向され得る。
【0058】
更なる実施形態では、使用において、複数の部材は、試料が、複数の部材のうちの1つまたは複数との当接関係で置かれてもよい単一の垂直平面に設けられてもよく、好ましくは、部材の各々は平面に垂直に水平に整列される。このような実施形態では、各部材は、1つまたは複数の試料容器の試料の複数の部材との当接によってもたらされる力の下で、その付勢に抗して水平軸に沿って移動するように動作可能である。複数の部材が単一の垂直平面内に設けられる実施形態では、1つまたは複数の試料または試料容器は、複数の部材のうちの1つまたは複数上に配置されたときに垂直に配向され得る。
【0059】
幾つかの実施形態では、装置は、上述のように構成されてもよい2つ以上の部材の平面を含み、複数の部材のうちの1つまたは複数は平面に対して垂直に整列して配置される。幾つかの実施形態では、各平面は、部材の別個のグループを含み、各グループからの1つまたは複数の部材は、対応する平面に対して垂直に整列される。
【0060】
部材の2つの実質的な水平面が設けられてもよい。このような実施形態では、使用において、試料が載置される第1の水平面と、試料の対向する面上にそれ自体が載置されてもよい第2の水平面とが設けられてもよい。このようにして、本発明の装置は、試料の2つの対向する面を加熱または冷却する手段を提供する。更なる実施形態では、部材の2つの実質的な垂直平面が設けられてもよい。このような実施形態では、使用において、間に試料が配置されてもよい第1の垂直平面と、第2の垂直平面とが提供され得る。また、この構成は、試料の2つの対向する表面を、異なる向きで加熱または冷却する手段を提供する。部材の平面/グループの配向は、加熱または冷却プロセス中に、1つまたは複数の試料を所定の配向に保つ必要性に応じて選択することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、装置は、使用において、2つ以上の異なる向きで1つまたは複数の試料を加熱または冷却するために使用できるように、2つ以上の構成間で移動可能な部材の2つ以上のグループまたは平面を含むことができる。例えば、装置が部材の2つの平面を含む実施形態では、2つの平面は、必要に応じて水平方向と垂直方向との間で移動可能であってもよい。
【0062】
幾つかの実施形態では、使用において、複数の部材のうちの2つ以上が、1つまたは複数の試料または試料容器が配置されてもよい1つまたは複数の実質的に管状の凹部を形成するように配置され、2つ以上の部材の試料接触面が凹部または各凹部の壁/表面を画定してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、複数の部材のうちの2つ以上を配置して、バイアルまたは他の円筒形容器であってもよい容器をその中に配置することができる実質的に円筒形の凹部を形成することができる。他の実施形態では、凹部は、実質的に三角形、正方形、長方形、または他の多角形の断面を備えることができ、これは試料または試料容器の形状および構成に相補的であっても相補的でなくてもよい。
【0063】
この装置は、使用において、装置に配置された場合、1つまたは複数の試料に追加の力を加える手段を含むことができる。装置は、1つまたは複数の試料の表面に追加の力を加えるように動作可能であってもよい。表面は、複数の部材のうちの1つまたは複数と接触する1つまたは複数の表面に対する1つまたは複数の試料の対向する表面であってもよい。このような実施形態では、装置は、1つまたは複数の試料の表面に力を加えるように動作可能であり、力は、1つまたは複数の部材に対して1つまたは複数の試料を押し付けて、前記1つまたは複数の部材をそれらの付勢に抗して移動させように作用する。この付加的な力は、例えば、1つまたは複数の試料の重量が、複数の部材のうちの1つまたは複数を付勢手段によって与えられる付勢に抗して十分に移動させるほど大きくない場合に、本発明の装置を使用する場合、または、加熱および/または冷却中に、不規則な形状を有する試料を規則的な形状にさせることが望まれる場合、必要とされてもよい。適用される、または適用される必要がある付加的な力は、加熱または冷却される1つまたは複数の試料、および/または付勢手段によって提供される付勢の強度に依存し得る。幾つかの実施形態では、追加の手段は、1Nまで、または例えば少なくとも1N、2.5N、5N、7.5N、10N、15N、20N、25N、30N、40N、50N、75N、100N、または150Nの力を加えるように動作可能であってもよい。
【0064】
付加的な力を加える手段は、その上に実質的に平坦な表面を有するプレートを含むことができる。プレートの実質的に平坦な表面は、使用において、装置上の1つまたは複数の試料と接触して配置され、追加の力を加えることができるように動作可能であってもよい。複数の部材が水平面内の位置にある実施形態では、プレートは、使用において、1つまたは複数の試料の上面に配置され、下向きの力を与える動作が可能であってもよい。下向きの力は、プレート自体の重量によって与えられてもよい。このような実施形態では、プレートは例えば0.1kgまでの重量、または少なくとも0.25kg、0.5kg、0.75kg、1kg、1.5kg、2kg、2.5kg、3kg、4kg、5kg、7.5kg、10kgまたは15kgであってもよい。
【0065】
幾つかの実施形態では、装置は、蓋またはカバーを備えることができる。蓋またはカバーは、複数の部材の1つまたは複数、あるいは部材の1つまたは複数のグループ、あるいは部材の1つまたは複数の平面を覆う位置に移動可能であってもよい。幾つかの実施形態では、蓋またはカバーは、装置の各部材を覆う位置に移動可能であってもよい。幾つかの実施形態では、使用において、蓋またはカバーは、複数の部材のうちの1つまたは複数上にまたは抗して配置された1つまたは複数の試料の表面に接触するように動作可能であり、それにより、追加の力を1つまたは複数の試料に加える手段を含んでもよい。使用において蓋またはカバーによって接触される1つまたは複数の試料の表面は、複数の部材の1つまたは複数と接触する1つまたは複数の表面に対する1つまたは複数の試料の対向する表面であってもよい。
【0066】
蓋またはカバーは、複数の部材の1つまたは複数、あるいは部材の1つまたは複数のグループ、あるいは部材の1つまたは複数の平面を覆う位置と、複数の部材のうちの1つまたは複数が覆われない位置との間で移動可能であってもよい。幾つかの実施形態では、装置は、ヒンジ式に接続された蓋またはカバーを備えることができ、蓋またはカバーは、ヒンジ式接続の周りの回転を通して、装置の残りの部分に対して、特に、複数の部材の1つまたは複数に対して、移動できる。
【0067】
蓋またはカバーは、上述のように、追加の力を1つまたは複数の試料に加える手段を備えることができる。1つまたは複数の試料および/または蓋またはカバーに付加的な力を加える手段は、上記のように1つまたは複数の加熱および/または冷却部材を備えてもよく、または接続されてもよく、そして部材の平面を備えてもよく、または接続されてもよい。
【0068】
あるいは、試料に追加の力を加える手段は、更に試料を加熱または冷却することができてもよい。従って、試料に追加の力を加える手段は、前述したように、少なくとも1つの熱源または冷熱源(例えば、少なくとも1つの加熱または冷却要素)を含むことができる。一実施形態では、追加の力を加える手段は、少なくとも3つの加熱または冷却要素を含むことができ、これらは、手段を横切って、または手段に沿って等間隔に配置することができ、例えば、1つの加熱要素が手段の上部にあり、1つの加熱要素が手段の中央にあり、1つが手段の下部にあってもよい。少なくとも1つの加熱または冷却要素を、例えば(複数の部材上の)装置内の試料の位置に応じて、特定の要素を加熱または冷却するために、差動的に加熱または冷却することが可能であってもよい。
【0069】
装置は、閉鎖位置に蓋またはカバーを積極的に保持する閉鎖機構を含むことができ、つまり、複数の部材の前記少なくとも1つの開放を防止する。これは、閉鎖位置で蓋またはカバーを締め付け得る機械的留め金などのロックであり得る。あるいは、または加えて、閉鎖機構は、蓋またはカバーを閉鎖位置に付勢する力を加えることができる。閉鎖機構は、蓋またはカバーに閉鎖力を加えるための1つまたは複数のバネを含むことができる。1つまたは複数のバネは、任意の適切なタイプのものでよく、1つまたは複数のねじりバネなどの機械的であってもよく、あるいは気体/流体または組み合わせであり得る。例えば、閉鎖機構は、蓋またはカバーに閉鎖力を加える1つまたは複数の気体または油圧支柱を含むことができる。従って、閉鎖機構は、前記1つまたは複数の複数の部材(およびその上に配置された任意の試料容器)に正の下方への力を加えることを可能にしてもよい。特定の実施形態では、閉鎖機構は、試料が所望の温度に達すると、蓋またはカバーを解放する手段を含むことができる。
【0070】
幾つかの実施形態では、装置は、複数の部材の少なくとも1つ、または他の部材または部材のグループのそれぞれから独立して部材の少なくとも1つのグループの動作を制御するように、使用において動作可能であってもよい。例えば、部材が加熱可能な実施形態では、装置は、1つまたは複数の熱源/加熱要素を介して、各部材または部材のグループに伝達される熱エネルギーを独立して制御するように使用において動作可能であってもよい。
【0071】
部材が冷却可能な実施形態では、1つまたは複数の部材または部材のグループの温度を、独立して制御し、1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクション内の熱エネルギーが部材に伝達される程度を制御することができる。例えば、1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクションが別のセクションよりも速く冷却される場合、第1の1つまたは複数のセクションと接触する対応する1つまたは複数の部材の温度は、残りの部材または部材のグループのそれぞれに関して低下してもよい。
【0072】
このようにして、この装置は、使用において加熱または冷却される1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクションを選択する手段を提供することによって、1つまたは複数の試料を空間的に差動的に加熱または冷却する手段を提供し、1つまたは複数のセクションは互いに分離されていてもよい。これは、加熱または冷却プロセスの間に、部材の一部のみが試料と接触するように、1つまたは複数の試料が寸法決めされる実施形態において特に有利である。このような実施形態では、装置は、ユーザが、1つまたは複数の試料と接触している部材または部材のグループのみを加熱/冷却することを選択することを可能にする。
【0073】
装置が部材の2つ以上のグループを含む実施形態では、部材の各グループは、同じレベルまたは異なるように加熱/冷却されるように動作可能であり得る。例えば、部材が2つ以上の平面に配置される実施形態では、各平面は、同じ温度または異なる温度に加熱/冷却されてもよい。このようにして、本発明の装置は、単一の試料の様々な領域を差動的に、または実際に複数の異なる試料のそれぞれを差動的に加熱/冷却する手段を提供する。
【0074】
更なる実施形態では、平面内の部材または部材のグループのそれぞれは、使用において差動的に加熱/冷却することができる。このようにして、装置は、平面間で加熱/冷却プロファイルを変化させる手段を提供する。これは、例えば、装置が1つまたは複数の垂直平面を含み、1つまたは複数の試料が、使用において収容されている容器の所与の端部に移動することができる実施形態において特に有利である。このような実施形態では、1つまたは複数の試料が収容される容器の部分を加熱/冷却することのみが必要であり得る。
【0075】
更なる実施形態では、装置は、使用において、1つまたは複数の試料を時間的に差動的に加熱または冷却するように動作可能であり得る。例えば、部材が試料を加熱可能な実施形態では、装置は、1つまたは複数の熱源/加熱要素を介して、熱エネルギーが各部材または部材のグループに伝達される時期、および程度を独立して制御するように使用において動作可能であってもよい。このようにして、この装置は、異なる時間に1つまたは複数の試料の異なるセクションを加熱する手段を提供する。部材が試料を冷却することができる実施形態では、1つまたは複数の部材または部材のグループの温度を独立して制御して、1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクション内の熱エネルギーが部材に伝達される時期および程度を制御することができる。例えば、1つまたは複数の部材または部材のグループの温度を時間と共に変化させ、1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクション内の熱エネルギーが前記部材に伝達される程度を時間的に変化させることができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、試料の少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つ、または少なくとも9つまたは少なくとも10個の個別領域を加熱または冷却してもよい程度は、独立して選択してもよい。幾つかの実施形態では、試料の少なくとも1個,2個,3個,4個,5個,6個,7個,8個,9個または10個の個別領域を加熱または冷却できる程度は、追加的または代替的に、時間的に変化させることができ、各個別領域の加熱または冷却の時間的変化は、残りの領域とは無関係である。
【0077】
幾つかの実施形態では、装置は、加熱または冷却プロセスの間に、使用において1つまたは複数の試料を攪拌する手段を含むことができる。このような実施形態は、装置が加熱装置として使用される場合に特に有利である。
【0078】
幾つかの実施形態では、装置は、例えば、振動、振とう、攪拌、回転、ローリング、圧搾、変位、突き上げまたは屈曲によって1つまたは複数の試料をかき混ぜるように動作することができる。装置は、特定の周波数および/または振幅で攪拌を行うように動作可能であってもよい(例えば、バイアルについての横方向運動については0.1~10mm、軌道運動については0~4000rpm)。この装置は、特定の時間、例えば少なくとも1秒,2秒,3秒,4秒,5秒,10秒,20秒,30秒,40秒または50秒から少なくとも1分,2分,3分,4分,5分,6分,7分,8分,9分または10分の間の時間で試料を攪拌するように動作可能であってもよい。使用においては、選択される特定の攪拌タイプは、最初に提供される試料のタイプ、すなわち試料中の氷分率、および容器タイプ/容積および/または試料材料の容量に依存する。攪拌タイプは、部材および/または試料の熱伝導率にも依存し得る。代替的にまたは追加的に、容器は、例えば、その容積および形状は、必要とされる攪拌を要求する。特に、試料容器がバイアルまたはチューブである実施形態では、軌道攪拌が採用されてもよく、容器が袋である実施形態では、圧搾、変位、突き上げおよび/または屈曲が採用されてもよい。
【0079】
幾つかの実施形態では、複数の部材の少なくとも1つは、1つまたは複数の試料を攪拌するために使用において動作可能であってもよい。装置が部材の1つまたは複数のグループを含む実施形態では、部材の少なくとも1つのグループを使用して、1つまたは複数の試料を攪拌することができる。装置が部材の1つまたは複数の平面を含む実施形態では、部材の少なくとも1つの平面を使用して、1つまたは複数の試料を攪拌することができる。
【0080】
幾つかの実施形態では、複数の部材のうちの1つまたは複数が、使用において振動して1つまたは複数の試料を攪拌することができる。更なる実施形態では、複数の部材のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数の試料をかき混ぜるために、2つ以上の位置の間で振動するように使用において動作可能であってもよい。幾つかの実施形態では、複数の部材のうちの1つまたは複数は、攪拌手段を備えていてもよい。このような実施形態では、攪拌手段は、1つまたは複数の試料を攪拌するために、対応する1つまたは複数の部材を振動させるために、使用において動作可能であってもよい。
【0081】
一実施形態では、攪拌手段は、バネ緩和攪拌機であってもよく、前記バネ緩和攪拌機は、試料に力を加えることができるが、例えば、試料内に存在する氷分率に応じて力または発生量を減少させることができる。典型的には、冷凍試料が存在する場合、バネ緩和攪拌機は前記試料を攪拌しないことがある。これは、冷凍状態で攪拌することによって損傷を受ける可能性のある袋のような容器に試料が提供される場合に有利であり得る。特定の実施形態では、前記攪拌器は、力制限された振動攪拌器であってもよい。
【0082】
幾つかの実施形態では、複数の部材のそれぞれは、複数の部材のうちの他の部材のそれぞれとは独立して、1つまたは複数の試料を攪拌するように動作可能であり得る。このようにして、この装置は、使用において1つまたは複数の試料を攪拌するのに使用される部材を制御することによって、1つまたは複数の試料を空間的に差動的に攪拌する手段を提供する。従って、各部材には、各部材が使用において試料を独立して攪拌することを保証できる攪拌手段を設けることができる。部材の全てが攪拌手段を含むわけではないが、特に少なくとも10,20,30,40,50,60,70,80または90%の部材が攪拌手段を含むことができ、または、攪拌手段に取り付けられ、攪拌を可能にし、特に、各部材または部材のグループの独立した攪拌を可能にしてもよいことを理解されたい。従って、装置は、少なくとも1つの攪拌手段、例えば、少なくとも2、3、4、5、10、20、30、40、50または100個の攪拌手段を含んでもよい。
【0083】
更なる実施形態では、装置は、加熱可能な複数の部材のうちの1つまたは複数によってもたらされる攪拌を、時間的に制御するように、使用において動作可能であってもよい。例えば、複数の加熱部材のうちの1つまたは複数は、例えば少なくとも30秒ごと、または25秒ごと、または20秒ごと、または15秒ごと、または10秒ごと、または5秒ごと、または4秒ごと、または3秒ごと、または2秒ごと、または1秒ごとに、断続的に1つまたは複数の試料を攪拌するように動作可能であってもよい。攪拌事象間の時間は、一定であっても、変動してもよい。更なる実施形態では、1つまたは複数の加熱可能な加熱部材は、1つまたは複数の要因に応答して、経時的に提供される攪拌を変化させるように動作可能であり得る。例えば、幾つかの実施形態では、加熱可能な複数の部材のうちの1つまたは複数は、試料の物理的特性に応じて、攪拌の各変化の間隔を変化させるように動作可能であってもよい。例えば、装置が(試料を加熱するための)複数の加熱部材を含む実施形態では、試料中に特定の氷分率が存在するときに攪拌を変更することができ、例えば試料が容量中の99,95,90,85,80,75,70,65,60,55,50,45,40,35,30,25,20,15,10または5%未満の氷である場合、または特に、試料における水の99,95,90,85,80,75,70,65,60,55,50,45,40,35,30,25,20,15,10または5%未満が氷である場合に変更してもよい。
【0084】
装置は、1つまたは複数のセンサを更に備えることができる。1つまたは複数のセンサは、部材、および/または試料、および/または試料が含まれる容器、および/または装置内の環境の1つまたは複数の特性を監視するために、使用において動作可能であってもよい。幾つかの実施形態では、装置は、監視された特性に応じて提供される加熱/冷却プロファイルおよび/または攪拌を調整するように、使用において動作可能であり得る。
【0085】
幾つかの実施形態では、1つまたは複数のセンサは、1つまたは複数の部材の温度を監視するように使用において動作可能な温度センサを備えることができる。幾つかの実施形態では、1つまたは複数の温度センサは、試料、または試料内の少なくとも1つまたは複数の領域の温度を監視するように、使用において動作可能であってもよい。更なる実施形態では、1つまたは複数の温度センサは、試料が含まれる容器、または容器内の少なくとも1つまたは複数の領域の温度を監視するように、使用において動作可能であってもよい。例えば、幾つかの実施形態では、1つまたは複数の温度センサは、内部または外部の壁であってもよい容器の壁の少なくとも一部の温度を監視するために、使用において動作可能であってもよい。1つまたは複数の温度センサは、使用において、装置および/または試料および/または容器の1つまたは複数の領域からの赤外線放射を検出するために動作可能な赤外線放射センサを備え、赤外線放射は、該当する部品の温度を示すことができる。一例として、装置が加熱/解凍装置として使用される実施形態では、1つまたは複数の温度センサは、試料が解凍/加熱されるときに、試料または容器の温度の変化を監視するために、使用において動作可能であってもよい。これに応答して、装置は、例えば、低温を有する(試料が加熱される目標温度に対して)と判断された領域での加熱作用または攪拌を増加させることによって、提供される加熱プロファイルおよび/または攪拌を変化させることができ、逆に試料が加熱される目標温度により近い温度を有すると判断された領域、すなわち解凍が最も速かった領域で加熱作用または攪拌を減少させることができる。このような実施形態では、装置は、試料(または試料内の特定の領域)が目標温度に到達したと判断された時点で、1つまたは複数の部材の加熱および/または攪拌作用を止めるために使用において動作可能であってもよい。
【0086】
特定の実施形態では、装置は、少なくとも2個,3個,4個,5個,6個,7個またはそれ以上のセンサ(例えば、温度センサ、特にIRセンサ)を含むことができる。少なくとも1つのセンサは、装置の任意の場所に配置することができるが、特定の実施形態では、装置内に含まれ得る蓋またはカバー上に配置され得る(例えば、特に複数の部材が水平面上に設けられる場合、蓋またはカバーが存在し得る)。代わりにおよび/または更に、少なくとも1つのセンサは、複数の部材の下に配置されてもよい。
【0087】
更なる実施形態では、1つまたは複数のセンサは、構造センサを備えることができる。幾つかの実施形態では、1つまたは複数の構造センサを使用して、試料の氷分率を決定することができる。例えば、装置が加熱/解凍装置として使用される実施形態では、1つまたは複数の構造センサは、解凍/加熱されるときに試料の氷分率の変化を監視するために使用されてもよい。それに応答して、装置は、例えば、高い氷分率を有する領域で加熱作用または攪拌を増加させることによって、または逆に、低い氷分率を有する領域、すなわち解凍が最も速かった領域で加熱作用または攪拌を減少させることによって、提供される加熱プロファイルおよび/または攪拌を変化させるように動作可能であり得る。例えば、試料中に特定の氷分率が存在すると判断される場合、攪拌を変更することができ、例えば試料が容量中の99,95,90,85,80,75,70,65,60,55,50,45,40,35,30,25,20,15,10または5%未満の氷である場合、または特に、試料における水の99,95,90,85,80,75,70,65,60,55,50,45,40,35,30,25,20,15,10または5%未満が氷である場合に変更してもよい。
【0088】
1つの態様では、1つまたは複数のセンサは、試料の加熱後または冷却後、例えば、装置から試料を取り出す直前、の画像化を可能にすることができる。
【0089】
幾つかの実施形態では、装置は2つ以上の異なるタイプのセンサを含む。例えば、装置は、1つまたは複数の温度センサおよび1つまたは複数の構造センサを備えることができる。
【0090】
複数の部材の各々は、付勢手段を備えている。付勢手段は、力の印加下で弾性的に変形可能な弾性材料などの弾性材料(あるいは、伸縮材料または可撓性材料)を備えてもよい。本明細書で使用される用語「弾性」は、力を加えた後に(例えば、圧縮、伸張または曲げられた後)、跳ね返って形状に戻る、例えば、特に、力を加える前と実質的に同じ形状に戻ることができる機能を指す。特に、付勢手段は、変位または変形するために反対の力または抵抗を加える材料を含むことができる。従って、付勢手段は、バネ、例えば、圧縮バネ、または発泡体、弾性材料、ゴムまたはケイ素を含むことができる。典型的には、付勢手段はコイルバネを備えていてもよい。
【0091】
複数の部材は、上述したように、静止位置に向かって弾性的に付勢されている。これは、力が加えられる前の部材の位置を指す。この位置は、各部材内で使用される付勢手段および付勢手段、例えばバネ内に含まれる材料によって決定されてもよい。付勢手段は、一般に、力の適用下で圧縮可能であり、力の除去後にその元の形状(または実質的に元の形状)に戻ることができる材料を含むので、付勢手段は、それが含まれる部材の静止位置を決定し、これは各部材の弾性手段内の弾性(あるいは伸縮)材料の静止位置に対応する。
【0092】
装置内に含まれる複数の部材は、上述のように独立して移動可能である。従って、各部材は、他の全ての部材に対して独立して移動することができる(すなわち、1つの部材または各部材の移動は、別の部材または互いの部材の移動に影響または作用を与えない)。特に、試料または容器が複数の部材の試料接触面上に置かれた場合、これは力を与え、複数の部材のうちの1つまたは複数の独立した移動をもたらす場合がある。従って、力の適用は、特に、試料または試料を含む容器の試料接触面への配置を指す。
【0093】
幾つかの実施形態では、複数の部材のうちの少なくとも1つは、付勢手段によって提供される付勢に抗して対応する部材を移動させることができる程度を制御するために使用できる支持部材を更に備えることができる。このようにして、支持部材は、使用において、各部材と一体型加熱要素または冷却要素または外部の熱源/冷却源との間にエアギャップが常に保持されることを確実にするように使用できる。
【0094】
使用においては、装置は、容器内に収容された1つまたは複数の試料を加熱または冷却するように動作可能であってもよい。本明細書で使用される「容器」は、試料が配置され得る任意の容器であり得る。典型的には、容器は、試料を冷凍するために試料を配置することができる容器であり、従って、典型的には、容器は低温、例えば-196℃(液体窒素の温度)以下の温度で存在することができる。容器は、チューブ、バイアル、プレート、ストロー、または試料を含むことができる任意の他の既知の容器であってもよい。特に、容器は、ネジでキャップされたクライオバイアル、密封クライオバイアル、可撓性袋、多層プレート、マトリクスチューブまたはストローであってもよい。容器は、任意の容量の試料を保持することができ、本発明の本装置は、容器の容積に関係なく使用することができる。当業者は、任意の容器サイズを加熱または冷却する装置を製造できることを理解されよう。しかし、本発明の特定の実施形態では、容器は、少なくとも50μl、100μl、0.2ml、0.3ml、0.4ml、0.5ml、1ml、2ml、5ml、10ml、50ml、100ml、500mlまたは1000mlの容積を有してもよい。更に、上に示したように、容器は任意の材料で作ることができるが、好ましくは低温(例えば、-196℃)で存在することができる材料である。容器の壁は、任意の厚さ、例えば0.5mm、1mm、2mm、3mm、または4mmの厚さであってもよい。特に、容
器が袋である場合、壁の厚さは0.5mm未満であってもよく、例えば400,300,200,100,50,40,30または20μm未満であり得る。
【0095】
容器は、任意の容量の試料を含むことができ、試料でその容積まで満たされても満たされなくてもよい。従って、容器は部分的にしか満たされなくてもよい。この場合、試料は、容器の容積の少なくとも1,5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95または100%の試料を含むことができる。
【0096】
独立して移動可能な部材の構成は、容器の形状に一致するようであり、形状は不規則であってもよい。例えば、装置が、可撓性容器内に収容された冷凍された1つまたは複数の試料を加熱または解凍するために使用される実施形態では、試料の冷凍中に可撓性容器の撓みによって容器は不規則であり得る。
【0097】
装置は、使用において任意のタイプの試料を加熱または冷却するように動作可能であり得る。現在の好ましい実施形態では、装置は、汚染されないままであることが要求される試料を加熱または冷却するように動作可能であり得る。
【0098】
本明細書で使用される「試料」という用語は、任意の試料タイプを指し、特に生物学的材料、例えば細胞試料を含む試料を含む。試料は、例えば生物医薬品、細胞材料、生物学的組織、生物臓器またはその一部、核酸またはポリペプチドもしくはアミノ酸などの材料を含むことができる。
【0099】
幾つかの実施形態では、試料は、例えば包装された食品または包装された飲料または飲料製品などの食品サプリメントまたは栄養製品を含んでもよい食品または飲料または飲料製品を含むことができる。例えば、食品は、肉製品、魚介類、パン、野菜、果物、乳製品、シリアル、ソース、調味料、生地、抽出物、エッセンス、栄養補助食品、ビタミンまたはミネラルサプリメント、ハーブまたは植物抽出物またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。使用において、本発明の装置は、そのような食品を加熱し、予め冷凍された食品を解凍し、そのような食品を冷却し、および/またはそのような食品を冷凍するように動作可能であり得る。
【0100】
試料は、(例えば、氷結晶形成による)冷凍損傷から生物学的材料を保護するために使用される物質である冷凍保護剤を更に含み得る。冷凍保護剤は一般に、細胞内の溶質濃度を増加させることによって機能し、好ましくは細胞に対して毒性ではない(または最小限の毒性を有する)。冷凍保護剤は、試料中の生物学的材料のガラス転移温度を低下させ、氷結晶を形成しないで材料のガラス化を可能にすることができる。冷凍保護剤はまた、生体分子と水素結合を形成する水分子を置換することができ、従って生物学的材料中の水分子を置換することができる。本明細書で使用される試料は、冷凍保護剤、すなわち2つ以上の冷凍保護剤の混合物を含むことができる。典型的な冷凍保護剤にはグリコール類が含まれ、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロール、およびジメチルスルホキシド(DMSO)糖類、例えばトレハロース、スクロースであり、上記のように、これらは分離して(すなわち、単独)、または組み合わせて使用することができる。一般に、試料が冷凍保護剤を含む場合、試料の1~30%は冷凍保護剤であってもよく、例えば1~20%または5~15%である。
【0101】
本明細書に記載される試料は「冷凍」されてもよく、装置は、例えば本発明の方法で、1つまたは複数の試料を解凍するように動作可能であってもよい。「冷凍」試料とは、一般に、試料中の水の少なくとも10,20,30,40,50,60,70,80,90または100%が氷の形態である試料をいう。あるいは、冷凍試料は液体の水を含まない
か、または水の90,80,70,60,50,40,30,20,10または5%未満が液体の水であってもよい。従って、冷凍試料では、幾つかの非冷凍物質(液体の水)が存在し得る(従って、冷凍試料は部分的に冷凍された試料を含む)が、典型的には、非冷凍物質または液体の水は、試料容量の少なくとも90,80,70,60,50,40,30,20,10または5%未満である。
【0102】
試料が冷凍保存試料を含む実施形態では、試料は、-100℃、-90℃、-80℃、-70℃、-60℃、-50℃または40℃以下の初期温度を有してもよい。そのような試料は、本発明の装置または方法を用いて加熱または解凍することができる。他の実施形態では、試料の温度は、例えば本発明の装置または方法によって、少なくとも-200℃、または少なくとも-175℃、または少なくとも-150℃、または少なくとも-125℃、または少なくとも-100℃少なくとも-90℃、または少なくとも-80℃、または少なくとも-70℃、または少なくとも-60℃、または少なくとも-50℃または少なくとも-40℃に低下されてもよい。必要とされる正確な低温は、使用される試料材料および冷凍保護剤ならびに意図される貯蔵期間に依存する。
【0103】
本明細書に記載される部材は、試料または試料容器を周囲温度に、または例えば少なくとも20℃、25℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、50℃、60℃、または70℃に加熱することができてもよい。試料が生物学的材料を含む実施形態では、試料を最大37℃まで加熱することが望ましく、その温度を超えると、材料内の細胞が損傷を受ける可能性がある。あるいは、複数の部材の少なくとも1つは、少なくとも20℃、25℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、50℃、60℃、または70℃まで加熱されてもよい。従って、一態様では、複数の部材のうちの少なくとも1つは、試料が加熱されることが望ましい温度よりも高い温度まで加熱されてもよい。特に、37℃を超えて加熱することが望ましくない生物学的試料に対して、試料が冷凍されている場合、部材は少なくとも70℃、60℃、50℃または40℃に加熱されてもよく、部材の温度は、例えば、残りの氷分率の関数として、試料が解凍すると減少してもよい。あるいは(または追加的に)、試料と接触する少なくとも1つの部材は、解凍が進行するとき、または所望の試料温度に達したときに、試料から離れて機械的に移動してもよい(すなわち、少なくとも1つの部材と試料の接触を除去するため)。更に他の選択肢は、試料または試料容器が、解凍が進行するとき、または所望の試料温度に達したときに、接触する少なくとも1つの部材から離れさせることを可能にする。
【0104】
あるいは、試料を解凍する場合、部材は、試料または試料容器を少なくとも、例えば0℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、10℃、15℃、または周囲温度に加熱するように動作することができる。
【0105】
更なる実施形態では、部材は、使用において、試料または試料容器を所定の温度に最初に加熱または冷却し、次いでその温度で試料または試料容器を所与の時間保持することができる。
【0106】
幾つかの実施形態では、装置は、可撓性膜を追加的に備えることができる。可撓性膜は、複数の部材のうちの1つまたは複数の試料接触面の少なくとも一部の上に配置されてもよい。幾つかの実施形態では、可撓性膜は、複数の部材のそれぞれの上に配置されてもよい。しかし、可撓性膜のサイズは、試料(容器)のサイズ、および試料と接触する複数の部材の面積に基づいて選択されてもよいことが理解されよう。このような実施形態では、可撓性膜は、1つまたは複数の試料または試料容器と複数の部材の1つまたは複数との間に配置されてもよい。幾つかの実施形態では、可撓性膜は、複数の部材のうちの1つまたは複数の試料接触面の周りに成形されてもよい。現在の好ましい実施形態では、可撓性膜は、例えばケイ素、ラテックスゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、メタクリレート系樹脂、EVAなどであってもよい熱伝導性材料を含むことができる。可撓性膜は、任意の汚染物質、または1つまたは複数の試料の一部、または試料容器が、隣接する部材間の任意の空間の間を落下または移動することを防止するのに使用できる。
【0107】
可撓性膜は、例えば、少なくとも20μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、250μm、500μm、1mm、2mm、3mmの厚さを有することができる。可撓性膜の厚さは、膜全体にわたって実質的に等しくてもよい。他の実施形態では、膜の厚さは、膜の特定の点または領域で変化してもよい。
【0108】
特定の実施形態では、装置は、試料の識別、および/または除去の前に試料の加熱/冷却後の画像を可能にする少なくとも1つの撮像システムを含むことができる。従って、装置は、少なくとも1個,2個,3個,4個,5個またはそれ以上の撮像システムを含むことができる。撮像システムは、装置内または装置上の任意の適切な場所に配置してもよく、特に、装置の蓋またはカバーの内部または上に、特に使用において複数の部材に隣接する蓋またはカバーの表面に配置してもよい。撮像システムは、少なくとも1つのバーコードスキャナおよび/またはカメラを備えてもよい。従って、単一の撮像システムは、バーコードスキャナおよびカメラ、またはこれらの部品の選択を含むことができる。当業者であれば、複数の撮像システムが装置内に存在する場合、各撮像システムは同じであってもよく(例えば、同じ部品を含み得る)、または異なってもよい(例えば部品の異なる組み合わせを含み得る)。バーコードスキャナにより、本明細書で定義されるような撮像システムが、スキャナの前に配置されたバーコード、例えば試料容器上および/または可撓性膜上のバーコードの存在を検出することが可能になってもよい。このようなバーコードリーダは市販されている(例えば、Adafruitから)。更に、バーコードリーダは、例えば、画像センサを制御することによって、写真画像を撮影することができるように(すなわち、カメラとして動作するように)、更に変更または制御することが可能である。処理の記録を提供するために、本発明の装置において熱の適用または冷却後に試料の写真画像を得ることが望ましい場合がある。
【0109】
本発明による装置は、少なくとも1つのRFIDモジュールを備えることができる。RFIDモジュールは、試料容器および/または可撓性膜上のRFIDタグの存在を検出することができる。
【0110】
本発明の第2の態様によれば、容器内に含まれる試料を加熱または冷却する方法であって、方法は容器を複数の部材のうちの1つまたは複数と接触させることを備え、前記容器と接触する複数の部材のうちの1つまたは複数が、容器内に収容された試料を加熱するために容器に熱エネルギー源を供給するか、または容器内に収容された試料を冷却するために容器から熱エネルギーを伝えさせ、複数の部材の各々は静止位置に向けて付勢され、前記付勢に抗してある位置に、互いに対して独立して移動できる、方法が提供される。
【0111】
本発明の第2の態様の方法は、本発明の第1の態様による装置を用いて実施することができる。この装置は、本発明の第1の態様の特徴のいずれかまたは全てを所望の通りまたは適切に含むことができる。
【0112】
幾つかの実施形態では、本方法は、容器内に含まれる以前に定義されたような冷凍試料を解凍することを含むことができる。他の実施形態では、この方法は、容器内に含まれる試料を冷凍することを含むことができる。このような実施形態では、方法は、前記容器内に含まれる試料を冷凍保存することを含むことができる。
【0113】
この方法は、以前に定義されたように、生物学的材料、例えば細胞試料を含む試料を加熱または冷却することを含み得る。
【0114】
この方法は、試料が含まれる容器とは異なる温度に試料を加熱または冷却することを含むことができる。例えば、この方法は、容器の内部の温度を第2の低い温度に保ちながら、容器の外壁を第1の温度に加熱することを含むことができる。あるいは、この方法は、容器の内部の温度を第2の高い温度に保ちながら、容器の外壁を第1の温度まで冷却することを含むことができる。
【0115】
生物学的試料を加熱または解凍するために、方法は、容器の外壁を、37℃を超える温度に加熱することを含んでもよく、これは例えば少なくとも40℃、50℃、60℃、または70℃であってもよく、内壁温度を37℃以下に保ちながら行う。このようにして、この方法は、試料に供給される熱エネルギーの増加により試料がより迅速に解凍または加熱されるのを可能にし、同時に、試料が安全な温度(例えば37℃以下)に保たれることを保証してもよく、これを越えると修復不可能な損傷を受ける可能性がある。
【0116】
この方法は更に、部材、および/または試料、および/または試料が収容される容器の1つまたは複数の特性、例えば温度を監視することを含むことができる(特に、1つまたは複数の温度センサを使用)。幾つかの実施形態では、方法は、監視された特性に応じて、提供される加熱/冷却プロファイルおよび/または攪拌を調整することを含むことができる。
【0117】
温度制御部材、および/または試料、および/または試料が含まれる容器の特性は、1つまたは複数のセンサを用いて監視することができる。1つまたは複数のセンサは、1つまたは複数の温度センサを含むことができ、この方法は、1つまたは複数の部材、および/または試料、または試料内の少なくとも1つまたは複数の領域、および/または試料が収容される容器の温度、または容器内の少なくとも1つまたは複数の領域の温度を監視するために、1つまたは複数の温度センサを使用することを含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、方法は、内部または外部の壁であってもよい容器の壁の少なくとも一部の温度を監視するために、1つまたは複数の温度センサを使用することを含むことができる。この方法は、試料と容器の両方の温度を監視することを含むことができる。幾つかの実施形態では、方法は、例えば、低温を有する(試料が加熱される目標温度に対して)と判断された領域での加熱作用または攪拌を増加させることによって、提供される加熱プロファイルおよび/または攪拌を変化させることと、または逆に試料が加熱される目標温度により近い温度を有すると判断された領域、すなわち解凍が最も速かった領域で加熱作用または攪拌を減少させることとを更に含むことができる。
【0118】
更なる実施形態では、この方法は、試料の構造的特徴を監視するために1つまたは複数のセンサを使用することを含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、この方法は、1つまたは複数の構造センサを使用して試料の氷分率を決定することを含むことができる。方法が試料を加熱/解凍することを含む実施形態では、1つまたは複数の構造センサは、解凍/加熱する際の試料の氷分率の変化を監視するために使用されてもよい。方法は、例えば、高い氷分率を有する領域で加熱作用または攪拌を増加させることによって、または逆に、低い氷分率を有する領域、すなわち解凍が最も速かった領域で加熱作用または攪拌を減少させることによって、提供される加熱プロファイルおよび/または攪拌を変化させることを更に含むことができる。例えば、試料中に特定の氷分率が存在すると判断される場合、攪拌を変更することができ、例えば試料が容量中の99,95,90,85,80,75,70,65,60,55,50,45,40,35,30,25,20,15,10または5%未満の氷である場合、または特に、試料における水の99,95,90,85,80,75,70,65,60,55,50,45,40,35,30,25,20,15,10または5%未満が氷である場合に変更してもよい。
【0119】
幾つかの実施形態では、この方法は、2つ以上の異なるタイプのセンサを使用して、試料、試料容器または部材の2つ以上の異なる特性を監視することを含むことができる。
【0120】
複数の部材のそれぞれは、部材の少なくとも一部に力が加えられると、前記付勢に抗して互いに関して独立して移動可能であってもよい。上述したように、容器は、本発明の方法において複数の部材のうちの1つまたは複数と接触する。この点で、容器は、存在する複数の部材の一部にのみに接触することができる。このような実施形態では、容器と接触する部材のみが付勢に抗して残りの部材に対して移動し、残りの部材は静止位置に保持されてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、方法は、容器(試料を含む)が、例えば本発明の装置において存在する部材の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%と接触することを含むことができる。容器と接触する部材の数は、容器自体の大きさおよび部材の数に依存するであろう。試料容器が存在する部材(例えば本発明の装置における)と等しい大きさである場合、この方法は、容器を複数の部材のそれぞれに接触させることを含むことができる。
【0121】
幾つかの実施形態では、本方法は、容器を1つまたは複数の部材の上に置くことによって、複数の部材の1つまたは複数と容器を接触させることを含むことができる。複数の部材は、単一の水平面内に設けられてもよい。このような実施形態では、容器と接触している部材は、容器および/またはそこに収容された試料の重量下で、付勢に抗して動かされる。
【0122】
更なる実施形態では、方法は、容器を1つまたは複数の部材に抗して当接関係に置くことによって、複数の部材の1つまたは複数と容器を接触させることを含むことができる。複数の部材は、幾つかの実施形態では実質的に垂直平面を含むことができる平面内に設けられてもよい。このような実施形態では、容器と接触している部材は、容器の1つまたは複数の部材との当接によって付勢に抗して動かされる。
【0123】
幾つかの実施形態では、方法は、部材の2つ以上の平面間に容器を配置することを含むことができる。例えば、幾つかの実施形態では、この方法は、部材の2つの実質的な水平面の間に容器を配置することを含むことができる。このような実施形態では、方法は、容器を部材の第1の水平面の上に置き、次に実質的に第2の水平面を部材の第1の水平面への容器の対向する表面上に配置することを含むことができる。このようにして、本発明の方法は、試料の2つの対向する面を加熱または冷却する手段を提供する。
【0124】
更なる実施形態では、この方法は、部材の2つの実質的な垂直平面の間に容器を配置することを含むことができる。このような実施形態では、方法は、容器を、部材の第1の垂直平面と部材の第2の垂直平面の両方との当接関係に置くことを含むことができる。再度、この方法で部材の2つの平面の間に容器を配置することによって、本方法は、試料の2つの対向する面を、上に述べたように水平方向の構成とは異なる向きで加熱または冷却する手段を提供する。
【0125】
幾つかの実施形態では、方法は、複数の部材のうちの2つ以上によって形成された実質的に管状の凹部内に容器を配置することを含んでもよく、容器を囲む部材と、2つ以上の部材の試料接触面とが凹部の壁/表面を画定してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、本方法は、実質的に円筒形、三角形、正方形、長方形または他の多角形の断面である凹部内に、容器を配置することを含んでもよく、これは試料または試料容器の形状および構成と相補的であっても、相補的でなくてもよい。
【0126】
幾つかの実施形態では、この方法は、試料の表面上に追加の力を加えることを含むことができる。力は、1つまたは複数の部材がそれらの付勢に抗して移動される程度を増加させるために適用されてもよい。これは、試料にわたって均一な加熱/冷却プロファイルを保証し、および/または加熱または冷却中に試料を成形するために行われてもよい。例えば、このような実施形態では、力が試料に加えられてもよく、試料に既に接触している部材が、それらの付勢に抗して更に押され、それにより、そうでなければ試料の表面と接触しない部材を試料と接触させることを可能にする。これは、部材の水平面または実質的な水平面上で試料を加熱または冷却する実施形態において特に有用であり、試料の重量は、それらの付勢に抗して1つまたは複数の部材を移動させるのに十分ではない。この力は、試料の表面の少なくとも一部に加えられてもよい。好ましい実施形態では、力は、1つまたは複数の部材と接触する試料の対向面に加えられる。方法は、平らなプレートであってもよいプレートなどの更なる部品を使用し、追加の力を加えるために更なる部品を試料の表面上に置くことを含むことができる。方法が、部材の水平面または実質的な水平面上で試料を加熱または冷却することを含むような幾つかの実施形態では、更なる部品の重量は追加の力を提供し得る。あるいは、更なる部品は、試料の表面に抗して所定の位置に更に保持されてもよい。更なる部品は、1つまたは複数の部材に重なる位置に移動可能な蓋またはカバーを備えることができ、この位置にあるときに試料の表面上に追加の力を提供することができる。更なる部品は、1つまたは複数の加熱および/または冷却部材をそれ自体が含むか、またはそれに接続されてもよく、更なる部品が実質的に平らなプレート内にある実施形態において、更なる部品は平面または部材に接続されるか、平面または部材を含むことができる。
【0127】
幾つかの実施形態では、方法は、複数の部材の少なくとも1つ、または他の部材または部材のグループのそれぞれから独立して部材の少なくとも1つのグループの動作を制御することを含むことができる。例えば、方法が試料を加熱または解凍するために部材を使用することを含む実施形態において、方法は、1つまたは複数の熱源/加熱要素を介して、各部材または部材のグループに伝達される熱エネルギーを独立して制御することを含むことができる。
【0128】
方法が試料を冷却することを含む実施形態において、方法は、1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクション内の熱エネルギーが部材に伝達される程度を独立して制御するために、1つまたは複数の部材または部材のグループの温度を制御することを含んでもよい。例えば、1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクションが別のセクションよりも速く冷却される場合、第1の1つまたは複数のセクションと接触する対応する1つまたは複数の部材の温度は、残りの部材または部材のグループのそれぞれに対して低下してもよい。
【0129】
このようにして、本方法は、加熱/冷却される1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクションを選択することによって、1つまたは複数の試料が空間的に差動的に加熱または冷却されることを可能にし、1つまたは複数のセクションは互いに分離していてもよい。これは、加熱または冷却プロセスの間に、部材の一部のみが1つまたは複数の試料と接触するように、1つまたは複数の試料が寸法決めされる実施形態において特に有利である。このような実施形態では、この方法は、1つまたは複数の試料または試料容器と接触している部材または部材のグループのみを加熱/冷却することを選択することを含む。
【0130】
幾つかの実施形態では、この方法は、単一の試料の様々な領域を差動的に、または実際に複数の異なる試料のそれぞれを差動的に加熱または冷却することを含む。これは、例えば、1つまたは複数の試料が収容される容器の部分を加熱/冷却することのみが必要であってもよい実施形態において特に有利である。
【0131】
更なる実施形態では、この方法は、1つまたは複数の試料を時間的に差動的に加熱または冷却することを含むことができる。例えば、方法が試料を加熱することを含む実施形態では、方法は、1つまたは複数の熱源/加熱要素を介して、熱エネルギーが各部材または部材のグループに伝達される時期、および程度を独立して制御することを含むことができる。このようにして、本方法は、異なる時間に1つまたは複数の試料の異なるセクションを加熱する方法を提供する。方法が冷却部材を使用して1つまたは複数の試料を冷却することを含む実施形態において、方法は、1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクション内の熱エネルギーが部材に伝達される時期および程度を独立して制御するために、1つまたは複数の部材または部材のグループの温度を制御することを更に含んでもよい。例えば、この方法は、1つまたは複数の部材または部材のグループの温度を時間と共に変化させ、1つまたは複数の試料の1つまたは複数のセクション内の熱エネルギーが前記部材に伝達される程度を時間的に変化させることを含んでもよい。
【0132】
幾つかの実施形態では、方法は、試料の少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つ、または少なくとも6つ、または少なくとも7つ、または少なくとも8つ、または少なくとも9つまたは少なくとも10個の個別領域を独立して加熱または冷却してもよい程度を制御することを含んでもよい。幾つかの実施形態では、この方法は、試料の少なくとも1個,2個,3個,4個,5個,6個,7個,8個,9個または10個の個別領域が加熱または冷却される程度を時間的に変化させることを含んでもよく、各個別領域の加熱または冷却の時間的変化は残りの領域とは無関係である。
【0133】
幾つかの実施形態では、この方法は、試料を攪拌することを更に含むことができる。試料の攪拌には、例えば、試料を振動、振とう、攪拌、回転、ローリング、圧搾、変位、突き上げ、または屈曲することが含まれてもよい。攪拌は時間的に変化させることができる。例えば、攪拌は、特定の周波数および/または振幅で、および/または特定の期間、例えば少なくとも10秒,20秒,30秒,40秒または50秒から少なくとも1分,2分,3分,4分,5分,6分,7分,8分,9分または10分までの時間行われてもよい。所与の試料について選択される特定の攪拌は、最初に提供される試料、すなわち試料の物理的特性、および容器タイプ/容積および/または試料材料の容量、および場合により容器自体の熱伝導率に依存するであろう。代替的にまたは追加的に、容器は、例えば、その容積および形状は、必要とされる攪拌を要求する。容器がバイアルまたはチューブである幾つかの実施形態では、軌道攪拌が採用されてもよく、容器が袋である他の実施形態では、圧搾、変位、突き上げおよび/または屈曲が採用されてもよい。
【0134】
幾つかの実施形態では、攪拌は空間的に変化させることができる。例えば、試料上の異なるセクションまたは領域は、試料の他のセクションまたは領域に対してより大きいまたはより小さい程度に攪拌されてもよい。
【0135】
幾つかの実施形態では、この方法は、袋または他の可撓性容器内に含まれる試料を加熱または冷却することを含むことができる。このような実施形態では、この方法は、袋または他の可撓性容器を部材の単一平面の上にまたは部材の2つの平面の間に配置することによって、試料を加熱または冷却することを含むことができる。現在の好ましい実施形態では、この方法は、袋または他の可撓性容器内に収容された試料を、部材の2つの水平面の間に容器を置くことによって加熱または冷却することを含む。
【0136】
この方法は、バイアル内に含まれる試料を加熱または冷却することを含み得る。このような実施形態では、この方法は、バイアルを部材の2つの平面の間に置くことによって、試料を加熱または冷却することを含むことができる。現在の好ましい実施形態では、この方法は、バイアル内に含まれる試料を、部材の2つの垂直平面の間に容器を置くことによって、加熱または冷却することを含む。
【0137】
本発明の第3の態様によれば、試料を加熱または解凍するための、本発明の第1の態様による装置の使用が提供される。
【0138】
本発明の第4の態様によれば、試料を冷却または冷凍するための、本発明の第1の態様による装置の使用が提供される。
【0139】
本発明をより明確に理解できるようにするために、添付の図面を参照して、単なる例としてその実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【
図1】本発明による装置の第1の実施形態の一部の断側面図である。
【
図3】
図1および
図2に示された装置の変形例の断側面図である。
【
図4】本発明による装置の第2の実施形態の断側面図である。
【
図5】本発明による装置の第3の実施形態の断側面図である。
【
図6】本発明の装置の更なる実施形態の斜視図である。
【
図7】本発明による装置の更なる実施形態の更なる斜視図である。
【
図9】本発明のプロトタイプ装置を示し、上部および下部温度センサと、装置を汚染から保護するEVAカバーとを含む。
【
図10】
図10A~Dは、組み立ての異なる段階および異なる角度からの、本発明の更に別の実施形態による装置の一連の斜視図である。
【
図11】本発明の一態様による装置の更なる実施形態の一部の斜視図である。
【
図12】本発明による装置に組み込むことができる力制限振動攪拌器を示す。
【
図13】従来技術と比較した本発明の方法の有効性の比較を示すグラフである。
【
図14】従来技術と比較した本発明の方法の有効性の比較を示す更なるグラフである。
【
図15】袋の試料を解凍するために周りの水を汲み上げる下のリザーバから流体が満たされたブラダーを使用するPlasmathermシステム(Barkley)と比較して、冷凍細胞試料を解凍するための本発明のプロトタイプ装置(ベータ袋解凍機と呼ばれる)を使用することの比較を示す。
【
図16】湯煎および本発明のプロトタイプ装置(「Via Thaw」と称される)の両方を用いて10mlおよび20ml容量のT細胞を解凍した結果を示す。2つの容量と2つの装置との間に見られる生細胞回復率に有意差はなかった。
【
図17】本発明のプロトタイプ装置を用いて解凍した肝細胞の細胞生存性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0141】
図1は、本発明の装置2の第1の実施形態の一部を示す。この装置は、一体化された加熱プレート4と、加熱プレート4に対して、それぞれ矢印20,20’、20’’の方向に独立して移動可能な加熱部材6,6’,6’’の形態の一連の部材とを備える加熱装置2を備える。
図1は、加熱装置2の一部のみを示していることを理解されたい。加熱装置2は、任意の数の追加の加熱部材を備えることができる(
図2参照)。
【0142】
加熱部材6,6’,6’’の各々は、それぞれの弾性部材10,10’,10’’の形態の付勢手段を取り囲む試料接触面8,8’、8’’を備え、弾性部材は、それらのそれぞれの部材6,6’,6’’を加熱部材6,6’によって示された位置に付勢する。部材6,6’,6’’の各々は、接触面8,8’、8’’に力が加えられると、この付勢に抗して移動可能であり、力は例えば、対象物を部材6,6’,6’’の上に置くことによって提供されてもよい。これは、加熱部材6’’の位置によって示されている。更に、各加
熱部材6,6’,6’’には、それぞれの加熱部材6,6’,6’’が、弾性部材10,10’,10’’によってもたらされる付勢に抗して移動してもよい程度を制御する支持部材12,12’,12’’が設けられている。これは、加熱部材6,6’,6’’が加熱プレート4から物理的に分離したままであることを保証するためである。
【0143】
使用において加熱プレート4は、ベースプレート14と、加熱部材6,6’,6’’が中に配置される加熱プレート4内に、一連の窪み18,18’,18’’を形成する一連の上方に延びる壁16,16’,16’’,16’’’とを備える。図示されるように、加熱部材6,6’,6’’は、弾性部材10,10’,10’’によってもたらされる付勢に抗して、窪み18,18’,18’’に沿って垂直方向に移動することができる。使用において加熱プレート4内に窪み18,18’,18’’を設けることにより、各加熱部材6,6’,6’’が実質的に加熱プレート4によって取り囲まれ、プレート4から部材6,6’,6’’への熱伝達の速度が増す。
【0144】
図1および
図2は、ベースプレート14と、一連の上方に延びる壁16,16’,16’’,16’’’とを備える加熱プレート4を示す。幾つかの実施形態では、ベースプレート14および上方に延びる壁16,16’,16’’,16’’’は、別個の部品であってもよいが、好ましくは加熱プレート4を形成するために一体的に形成される。加熱プレート4の部品が一体的に形成されている実施形態では、プレート4は、単一の加熱プレート4を形成するための鋳型への押出しまたは所定の材料の堆積によって形成することができる。
【0145】
図1および
図2には示されていないが、加熱プレート4は電源に接続されてもよい。使用において、電源は、加熱プレート4に、または加熱プレート4を介して電流を供給してもよく、続いて抵抗加熱または他の同等の手段によって温度を上昇させてもよい。あるいは、加熱プレート4は、直火などの外部熱源を介して加熱されてもよい。
【0146】
本発明の一連の実施形態の動作上の使用は、
図2~
図5に示されている。異なる実施形態の部品が実質的に同一である場合、同様の参照番号が使用されている。
【0147】
図2は、袋22の形態の可撓性容器内に配置された試料を加熱/解凍するために装置2をどのように使用できるかを示す、
図1に示す加熱装置2の実施形態の断面図である。
【0148】
最終的に袋22内の試料に熱エネルギーを伝達するために、最初に加熱プレート4自体の温度が上昇する。これは、上記のように、加熱プレート4に電流を流すことによって抵抗加熱を介するか、または例えばプレート4を、直火などの外部熱源にさらすことによって達成され得る。加熱プレート4がその周囲の周囲温度に対して上昇した温度になると、プレート4と部材6との間のギャップを越えて各加熱部材6に熱エネルギーが伝達される。これは、ギャップ自体の中の空気分子の伝導または対流によって、または加熱部材6によって後で吸収される熱を放出する加熱プレート4を介して起こり得る。これにより、加熱部材6の温度が上昇し、袋22との接触により、試料を加熱または解凍するために熱エネルギーがその後試料に伝達される。
【0149】
図示されているように、袋22は、試料の冷凍中に袋が撓むことによって形成される場合がある波形の外面を含む。使用において、袋22が加熱部材6にまたがって置かれ、袋22およびその中に含まれる試料の重量は、それぞれの付勢手段(この実施例では
図1に示すように弾性部材を含む)によって提供された付勢に抗して部材6を移動させるのに十分である。各加熱部材6を加熱プレート4に対して独立して移動可能にすることにより、部材6は、袋22の波状の面に一致することができ、袋22の全長に沿って加熱部材6と袋22との接触を確実にすることができる。このようにして、加熱装置2から袋22内の試料への熱伝達を、袋22全体にわたって実質的に均一にすることができる。
【0150】
図3は、本発明の加熱装置2の変形例の動作上の使用を示しており、袋22の形態の可撓性容器内に配置された試料を加熱/解凍するために装置2をどのように使用できるかを示している。
【0151】
図3は、装置2が、1つまたは複数の加熱部材6を覆う蓋またはカバー24の形態で、部材6に追加の力を加える手段を更に備える実施形態を示す。示されているように、使用において、蓋24は、加熱部材6上に下向きに作用する力を増加させるために、試料22の対向面に接触してもよい。このタイプの実施形態は、試料22の重量が加熱部材6内の弾性部材10を十分に加圧するのに十分に大きくなく、結果として加熱部材の多くが試料22の表面の一部と接触しない可能性がある場合に特に有用である。従って、蓋24は、かなりの割合の加熱部材6が使用において試料22と接触するのに十分大きな力を提供するために使用される。
【0152】
図4は、本発明の加熱装置102の第2の実施形態の動作上の使用を示しており、袋122の形態の可撓性容器内に配置された試料を加熱/解凍するために装置102をどのように使用できるかを示している。
【0153】
加熱装置102は、加熱部材106をそれぞれ含む一連の窪みを有する加熱プレート104も含む点で、
図1~
図3に示す装置2と同様である。更に、加熱部材2と同様に、袋122が加熱部材106の上に配置される場合、加熱部材6が加熱プレート4に対して移動可能であるため、袋122の形状に一致するように、加熱部材106は、各々加熱プレート104に対して独立して移動できる。
【0154】
加熱装置102は、二次加熱プレート154も備える点で装置2と異なる。二次加熱プレート154は、加熱部材156をそれぞれ含む一連の窪みも備える点で、加熱プレート104と実質的に同一である。この場合も、加熱部材156は、前記窪み内で移動可能であり、第1の位置に付勢され、部材156自体への力の適用下で、第1の位置から移動可能である。使用において、加熱部材156が、加熱部材106への袋122の対向面と当接関係になるように、加熱プレート154が袋122の上に置かれる。この場合、加熱部材156と袋122の表面との間の当接は、加熱部材156が袋122の対向面の形状に一致するように部材156をそれぞれの付勢に抗して移動させるように作用する。このようにして、装置102は、試料の2つの対向する側面を均一に加熱する手段を提供する。
図4の実施形態の変形例では、二次加熱プレート154は、袋122(または他の任意の試料)に追加の力を加える手段としても作用することができる。
【0155】
図5は、本発明の加熱装置202の第3の実施形態の動作上の使用を示し、バイアル222の形態の容器内に配置された試料を加熱/解凍するために装置202をどのように使用できるかを示す。
【0156】
図4に示す加熱装置102と同様に、装置202は、加熱プレート204,254自体内の個々の窪みに沿って独立して移動可能な複数の加熱部材206,256をそれぞれ含む一対の加熱プレート204,254を備える。加熱装置202は、図示されているように垂直方向に使用され得る点で装置102と異なる。これは、試料が、常に直立したままでなければならないか、または実際に試料自体が一定の向きに留まる必要がある、バイアル222などの容器内にあり得る場合に特に有益である。
【0157】
加熱プレート204,254は、バイアル222を部材206,256の上に置くのではなく、それぞれの加熱部材206,256がバイアル222の表面と当接関係になるという点で、加熱装置102の加熱プレート154と実質的に同一である。加熱部材206,256とバイアル222のそれぞれの表面との間の当接は、加熱部材206,256がバイアル222のそれぞれの表面の形状に一致するように、それらの付勢に抗して部材206,256を移動させるように作用する。このようにして、装置202は、垂直方向に設けられた試料の2つの対向する側面を均一な方法で加熱する手段を提供する。
【0158】
代替の構成では、加熱プレート204,254を、実質的に円筒形の凹部を形成するように構成される2つ以上の部材と置き換えてもよく、この中にバイアル222または他の円筒状容器であってもよい容器を、図示するように2つのプレート204,254の間に配置してもよい。幾つかの実施形態では、形成された凹部は円筒形でなくてもよいが、実質的に三角形、正方形、長方形または他の多角形の断面を備えることができ、これは試料または凹部に配置された試料容器の形状および構成と相補的であっても、相補的でなくてもよい。
【0159】
更に、
図2~
図4、および
図5は、それぞれ袋22,122またはバイアル222内に収容された試料を加熱または冷却することに向けて説明してきたが、これらの図に示された実施形態のいずれも、袋22,122内またはバイアル222内の試料を加熱または冷却するために使用され得ることを理解されたい。例えば、装置が
図2および
図3に示す装置を備える場合、1つまたは複数の試料は、バイアル222から試料の漏出を防止するために、開放端に蓋またはカバーを備えるバイアル222内に収容されてもよい。
図4に示されるような実施形態では、対向する加熱プレート204,254の間に袋を置くことによって、袋22,122内に収容された試料を加熱または冷却するために装置を使用できることを理解されたい。本発明による装置は、任意のタイプの試料を加熱または解凍するために使用され得る。しかし、本発明は、試料が汚染されないままである必要がある場合に特に適している。例えば、試料は、生物学的材料であっても、食品でさえあってもよい。
【0160】
図1~
図5は、本発明による装置2,102,202の実施形態の断面図である。このように、図面は、加熱部材の単一列のみを示している。しかしながら、試料は3次元容器内に含まれることが理解されるべきである。従って、容器全体にわたって均一な熱伝達を提供するために、加熱部材は、加熱部材の平面またはマトリクスを形成する一連の列に設けられてもよい。
【0161】
図6は、本発明の装置の斜視図である。この装置は、一体型の加熱プレート(図示せず)と、加熱部材306の一連の列とを備える加熱装置302を備える。列内の加熱部材306のそれぞれは、加熱プレートに対して独立して移動可能であり、その動作を
図1を参照して上述してきたように、それぞれの弾性部材310の形態の付勢手段を取り囲む試料接触面308を備える。
図6では、幾つかの加熱部材が、説明の目的のためだけに手動で持ち上げられている。
【0162】
加熱プレートは、ベースプレート(図示せず)と、中に加熱部材306が配置された加熱プレート内に一連の窪みを形成する、一連の上方に延びる壁316とを備える。上述したように、加熱部材306は、弾性部材310によって提供される付勢に抗して窪みに沿って垂直方向に移動することができる。加熱プレートに窪みを設けることにより、各加熱部材306が加熱プレートによって実質的に取り囲まれ、使用においてプレートから部材306への熱伝達の速度が増加することが保証される。
【0163】
図1~
図6の装置の幾つかの実施形態では、加熱部材6,6’,6’’,106,206,306に、可撓性の膜を設けてもよく、これは、試料接触面8,8’,8’’を覆ってもよく、使用において部材6,6’,6’’,106,206,306と試料2,122,222との間に配置されて、汚染物質を防いでもよく、および/または試料2,122,222の一部が隣接する加熱部材6,6’,6’’,106,206間の空間の間を落下するまたは移動するのを防止してもよい。この可撓性膜の実施形態は、以下に説明するように、
図7および
図8に示されている。
【0164】
図7および8は、本発明の装置の更なる斜視図である。示された装置は、複数列の加熱部材406を含む加熱装置402である。上述したように、
図7および
図8は、加熱部材406の複数列の上に配置された可撓性膜426の使用を更に示している。可撓性膜426は、好ましくは、例えば、ケイ素、ラテックスゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、メタクリレート系樹脂、EVAなどの熱伝導性材料から形成され、任意の汚染物質、または1つまたは複数の試料の一部、または試料容器が、隣接する部材406間の任意の空間の間を落下または移動することを防止するのに使用できる。可撓性膜は、典型的には、加熱部材406を取り囲むフレームまたは支持構造体に取り付けられる。可撓性膜426はテンションを張っていないため、試料は、シートを介して加熱部材406と間接的に接触し、加熱部材が試料の重量および/または他の加えられた力の下で撓むときに接触を維持することができる。従って、可撓性膜426は、試料の下に窪みまたはボウルタイプの効果を作り出し、そこでは、試料の解凍時に流出または放出される全ての液体が収集される。解凍後、液体は中央に収容されて、膜426全体を装置から持ち上げることができる。
【0165】
図7および
図8はまた、加熱部材406の動作上の使用を示す。具体的には、
図7は、付勢に抗して部材406を移動させるために、追加の力が加えられない静止位置にある加熱部材406を示す(上記のように)。他方、
図8は、人の手によって部材406を押し下げて示されるこの図の試料と接触する加熱部材406が、付勢に抗してどのように移動するかを示している。試料と接触していない加熱部材406は、それらの付勢に抗して移動されない。このようにして、使用において、加熱部材は、全体的に装置402の向きに応じて、加熱部材の上または加熱部材に抗して置かれた試料の形状に一致するように独立して移動可能であり、試料にわたって均一の加熱プロファイルを提供するように示される。
【0166】
図面に示された実施形態は、それぞれ、試料を加熱または解凍するために前記装置を使用する装置および方法を示す。しかしながら、本発明の装置は、加熱および解凍に限定されないことを理解すべきである。むしろ、試料の温度を低下させるために試料から熱エネルギーを除去するように部材を構成することによって、試料を冷却または冷凍するために装置を使用することもできる。試料の冷却にこの装置を使用する場合、加熱プレートを修正して冷熱源を提供することができ、このような実施形態では、これらを冷却プレートと呼ぶことができることを理解されよう。このような特徴は、より一般的には、特に試料を加熱または冷却するために代替的に使用され得る装置において、サーマルプレートまたはサーマル要素と呼ばれ得る。
【0167】
装置2,102,202,302,402は、これらの図に示されているような均一な加熱プロファイルを提供するのではなく、試料を差動的に加熱(または冷却)するための手段を更に備えることができる。例えば、加熱部材6,6’等の各々または実際に加熱部材のグループ/平面は、部材間の温度プロファイルを変えるために独立して制御可能であってもよい。このようにして、試料上の特定の領域を、必要に応じて異なる温度に加熱/冷却することができる。
【0168】
試料の異なる加熱/冷却は、追加的にまたは代替的に、部材にわたる温度プロファイルを時間的に変化させることを含むことができる。このようにして、試料または試料の領域を異なる時間に加熱/冷却することができる。
【0169】
更に、装置2,102,202,302,402は、試料を攪拌する手段を更に備えることができる。例えば、加熱部材6,6’等の各々または実際に加熱部材のグループ/平面は、試料を攪拌するために震動(vibrate)または振動(oscillate)するように動作可能である。このような実施形態は、装置2,102,202,302,402が試料を加熱/解凍するために使用される場合に特に有用である。幾つかの実施形態では、部材6,6’等の移動は、部材間で攪拌プロファイルを変えるために、独立して制御可能であり得る。このようにして、試料上の特定の領域を、必要に応じて異なる程度まで攪拌することができる。試料の攪拌は、更に、時間的に変化させることができる。このようにして、試料または試料の領域は、異なる時間に攪拌され得る。
【0170】
図1~
図3に戻ると、加熱部材6,6’,6’’の支持部材12,12’,12’’は、攪拌手段として機能するか、または攪拌手段を含むことができる。加熱部材6,6’,6’’の攪拌を引き起こすために、それぞれの支持部材12,12’,12’’を垂直に振動させることができる。支持部材12,12’,12’’のこの垂直方向の振動は、それぞれの弾性部材10,10’,10’’を(振動の方向に応じて)圧縮または伸長させることができる。使用において弾性部材10,10’,10’’のこの伸張または圧縮は、支持部材12,12’,12’’の振動運動をそれぞれの加熱部材6,6’,6’’に伝達して、試料の攪拌を引き起こす。
【0171】
別の実施形態では、支持部材12,12’,12’’は、2つ以上の加熱部材6,6’,6’’を支持することができる。例えば、単一の支持部材12,12’,12’’は、窪み18に沿って複数の加熱部材6を支持することができる。このような実施形態では、支持部材12,12’,12’’が攪拌手段としても機能する場合、支持部材12,12’,12’’の振動は、窪み18に沿って各加熱部材6,6’,6’’の振動を引き起こす。このような場合、加熱部材6,6’,6’’の各列が異なる時間または異なる程度で攪拌され得るため、構成は、加熱部材によって提供される攪拌プロファイルを変化させる手段を提供する。
【0172】
更なる実施形態では、窪み18内の加熱部材6,6’,6’’のそれぞれは、試料を異なる程度に攪拌するように動作可能であり得る。窪み18内の加熱部材6,6’,6’’の各々が、単一の支持部材12,12’,12’’によって支持される実施形態では、この差動攪拌は、異なるバネ定数を有する加熱部材6,6’,6’’内の弾性部材10,10’,10’’を提供することによって提供されてもよい。例えば、弾性部材10,10’,10’’の少なくとも1つは、高いバネ定数を有することができ、すなわち、バネ定数が小さい弾性部材よりも大きな圧縮力または伸張力を必要とする。そのような場合、バネ定数がより大きい弾性部材10,10’,10’’を備える加熱部材6,6’,6’’は、支持部材が振動するときに、残りの加熱部材よりも大きく攪拌され、その列内の他の加熱部材、すなわちより低いバネ定数を有する弾性部材を有する加熱部材は、小さく攪拌されることになる。これは、高いバネ定数を有する弾性部材が、支持部材12,12’,12’’の移動時に小さく圧縮/伸長し、それにより、弾性部材の大きな圧縮/伸長のためにエネルギーが散逸する可能性のある低いバネ定数を有する弾性部材よりも、加熱部材6,6’、6にエネルギーをより容易に伝達するためである。このようにして、特定の加熱部材6,6’,6’’は、他の位置/部材よりも高い攪拌効果を有する装置上の位置または個々の部材を定めるために、高いバネ定数を有する弾性部材10,10’,10’’を含むように選択することができる。
【0173】
図9は、本発明の一態様による装置502の実施形態を示す。装置502は、ベース562と、ベースに回動可能に接続された蓋またはカバー564とを含むハウジング560を有する。加熱プレートおよび複数の加熱部材(図示せず)は、電源ユニットおよび制御電子機器(図示せず)と共にベース内に収容される。制御電子機器は、ベースの前壁に取り付けられた制御画面566を含む。
図9は、加熱部材上に配置された可撓性膜526と、膜上の所定位置にある試料袋522を示す。膜は、
図7および
図8に関連して上述した膜426と同様のEVAカバーであってもよい。蓋564は、加熱部材に作用する力を増大させるために蓋を閉じるときに袋522を押圧し、かなりの割合の加熱部材が袋と(間接的に)接触することを保証する天板528を含む。装置502は、ベース内に低部温度制御センサ570を、蓋内に上部温度制御センサ572を組み込む。IR温度センサ574も蓋の中に配置されている。
【0174】
上述した実施形態では、弾性部材10,310は、それぞれの加熱部材306内に配置され、加熱部材を加熱プレート4のベースプレート14から離して保持するために、部材の上壁と支持部材12との間で動作する。
図6に示す実施形態では、弾性部材310は、弾性的に圧縮可能な材料の形態であるが、前述のように、弾性部材は、任意の適切な形状とすることができ、圧縮バネなどのバネを備えることができる。
図10Aから
図10Dは、本発明の一態様による、試料を加熱および/または冷却する装置602の別の実施形態を示す。
図10Aから
図10Dは、組み立ての様々な段階における装置の部品を示す。
【0175】
装置602は、先に説明した実施形態と同様であり、ベースプレート614と、ベースプレートから上方に延びる複数の壁616とを有する加熱/冷却プレート604を有し、加熱/冷却部材606が配置されている加熱/冷却プレート内に一連の窪み618を画定する。直立した壁616は、互いに平行に整列され、窪み618が細長チャネルの形態であり、各チャネルは、列に並んで整列された複数の加熱/冷却部材606を受け入れるように離間されている。加熱/冷却部材606は、上壁676と、下壁678と、一対の対向する側壁680,682とを有する細長略直方体形状である。少なくとも上壁676と側壁680,682の一部とが共に接触面608を画定する。加熱/冷却部材は、直立した壁616に隣接する側壁680,682と整列され、加熱/冷却プレートの直立壁と加熱/冷却部材606との間で熱を伝達する。加熱/冷却部材606の他の側は、チャネルが各列の全ての加熱/冷却部材を通って延びるように開いている。
【0176】
装置602は、弾性部材610が、それぞれの加熱/冷却部材606のベースプレート614と下壁678との間で圧縮状態で作用するコイルバネの形態である点で、前の実施形態と異なる。バネ610の下端部を配置するために、各加熱/冷却部材606の下のベースプレート614には円形の凹部684を設け、バネの上端部を配置するために、各加熱/冷却部材の下壁678に同様の凹部を設けてもよい。あるいは、各加熱/冷却部材のベースプレート614および/または下壁678に突起を設け、その周囲にバネを取り付けてバネの端部を配置することができる。バネ610は、加熱/冷却部材606を静止位置に弾性的に付勢し、各加熱/冷却部材は、バネ力に抗して静止位置から個々に押し下げることができる。細長棒状の支持部材612が各列の全ての加熱/冷却部材を貫通して延在する。使用において、支持部材612は、加熱/冷却部材に対して適切な位置に固定される。この実施形態における支持部材612は、装置602が横または逆さまになった場合に、加熱/冷却部材が脱落することを防止するために使用することができる。支持部材612はまた、加熱/冷却部材606が加熱/冷却プレート604のベースプレート614に直接接触するのを防止するために使用することができる。この場合、加熱/冷却要素の下壁678がベースプレート614に接触することを防止するために、支持部材612は加熱/冷却要素の上壁676によって連結される適切な位置に固定される。しかしながら、幾つかの実施形態では、良好な熱接触が提供されるため、加熱/冷却部材を動作中にベースプレート614に接触させることが有利であり得る。
【0177】
バネ610を配置するための他の配置を採用することができ、バネを加熱/冷却部材の任意の適切な部分と連結できることが理解されよう。バネ610は、限定するものではないが、バネ鋼などの金属を含む任意の適切な材料で作ることができる。代替の実施形態では、バネ610は、加熱/冷却部材606がベースプレート614に連結するのを防止するように構成することができ、この場合、支持部材バー612を省略することができる。例えば、バネ力は、使用において加熱/冷却部材をベースプレート614から離すのに十分であり得るか、またはバネは、加熱/冷却部材がベースプレート614に接触する前に、コイル結束になるように構成され得る。
図10A~
図10Dに示されたものと同様のバネ構成を、本明細書に開示されたいずれかの実施形態の装置に組み込むことができる。
【0178】
弾性的に付勢された個々の加熱/冷却部材6,106,206,306,406,606に加えて、加熱/冷却部材が位置するフレームまたは他の支持構造体は弾性的に支持されてもよい。これにより、装置は、複数の加熱/冷却部材のみが補償することができるよりも歪んだ試料容器を補償することができる。
図11は、これを達成することができる1つの方法を示す。
【0179】
図11は、本発明の一態様による装置702の一部を示し、加熱/冷却部材706が配置される窪みまたは空洞を画定するベースプレート714と、直立した壁718とを有する加熱/冷却要素704を含む。加熱/冷却要素704は、圧縮バネ786(1つのみ示される)によって各角で支持され、力(例えば複数の部材上の試料/試料容器の存在)に応答してバネ786の付勢に抗して下方に撓むことができる。加熱/冷却要素704は、ベースプレート714が傾くことができるように、均一または不均一に撓むことができる。加熱/冷却部材が中に取り付けられている加熱/冷却要素704または他の支持構造体を弾性的に取り付けることによって、装置702が、複数の可動加熱/冷却部材のみで補償することができるよりも歪んだ試料容器を補償することが可能になる。試料袋が非常に歪んでいる使用においては、加熱/冷却要素704は曲げられて個々の加熱/冷却部材に全体的な調整を与え、微調整を可能にし、加熱/冷却部材ができるだけ広い試料の表面積に接触するのを維持することにより、均一な加熱/冷却が可能になる。典型的には、この特徴は、試料袋が歪んだ形で冷凍された冷凍からの袋中の試料を解凍する装置において特に有利であると予想される。
【0180】
付勢手段はバネ786である必要はなく、弾性材料(発泡体)および/またはガスバネなどの任意の適切な形態をとることができ、異なる付勢手段の組み合わせを使用することができる。任意の適切な数の付勢手段、例えば1個,2個,3個,4個,5個,6個,7個,8個,9個または10個の付勢手段を使用することができることも理解されたい。加熱/冷却要素4、714または加熱/冷却要素のための他の支持構造体の同様の弾性取り付けは、本明細書に開示された実施形態のいずれかで使用することができる。
【0181】
図12は、本発明の一態様による装置2,102,202,302,402,502,602,702に組み込むことができる攪拌機888の実施形態を示す。
【0182】
攪拌機888は力制限された攪拌器であり、回転軸894を振動する往復回転運動で駆動するアクチュエータ892が取り付けられた支持フレーム890を含む。軸894の往復振動運動は、コイルバネ896を介して、フレームに摺動可能に取り付けられた一対の攪拌機ピン898に伝えられる。従って、軸894が振動すると、攪拌機ピン898は、直線方向に往復運動する。使用においては、攪拌機は、攪拌機ピン898が、存在する場合には可撓性膜カバーを介して加熱/冷却部材上に配置された試料袋に接触するように配置されてもよい。
【0183】
攪拌機888によって加えられる力は、攪拌機ピンに加えられる力が一定の限界を超える場合に、アームが撓むバネ896によって制限される。例えば試料が冷凍されたことに起因して、攪拌機ピン898の動きに抵抗がある場合、攪拌機ピンが駆動されないように、バネアームが撓む。従って、バネ緩和攪拌機は、試料に力を加えることができるが、試料内に存在する氷分率に応じて力または発生量を減少させることができる。典型的には、冷凍試料が存在する場合、バネ緩和攪拌機は試料を攪拌しない。これは、冷凍状態で攪拌することによって損傷を受ける可能性のある袋のような容器に試料が提供される場合に有利であり得る。代替的な実施形態では、攪拌機ピンは装置の加熱/冷却部材6,106,206,306,406,506,606の少なくとも幾つかに動作可能に接続されて、加熱/冷却部材に、支持される試料を移動させて攪拌させることができる。攪拌機ピンは、例えば加熱/冷却プレート4,104,154,304,354,604,704と、または1つまたは複数の支持部材12,612と、または任意の他の適切な配置によって、接続することができる。
【0184】
本発明の一態様による装置の幾つかの実施形態では、加熱/冷却用の加熱/冷却部材のアレイの中央に試料を配置することが有利であり得る。アレイに存在する加熱/冷却部材の総数に対して試料が小さい場合、試料を置くことができる加熱/冷却部材のサブセットまたはグループのみが露出するように装置を適合させることができる。これを達成するには様々な方法がある。一実施形態では、加熱/冷却部材の全体的なアレイは、動作位置と非動作位置との間で移動可能な1つまたは複数の分割部材によって2つ以上のグループに分割される。この構成は、分割部材が動作位置にある場合、試料を加熱/冷却するのに使用できる加熱/冷却部材のグループまたはサブセットを取り囲むフレームを形成し、一方、分割部材がその非作動位置にある場合、加熱/冷却部材のアレイ全体、または少なくともより大きなグループが露出されるように構成される。例えば、20個の加熱/冷却部材を20列に配置した例えば400個の加熱/冷却部材を有する装置では、アレイの中央に10個の10列に配置された例えば100個の加熱/冷却部材のグループを、昇降可能な1つまたは複数の移動可能な分割部材によって、それらを取り囲む加熱/冷却部材から分離することができる。分割部材を動作位置に持ち上げると、アレイ中央の加熱/冷却部材のグループが、分割部材によって画定されたフレーム内で露出され、グループ上に収容可能な小さい試料を加熱/冷却するのに使用できる。しかし、分割部材を非動作位置に下げると、加熱/冷却部材のアレイ全体が露出され、より大きな試料または複数の試料と共に使用することができる。
【0185】
分割部材は、フレーム部材であってもよく、加熱/冷却部材の支持構造体の一部を形成してもよい。加熱/冷却部材のあるグループのみが露出されている場合、装置はグループ内の加熱/冷却部材のみが加熱/冷却されるように構成することができる。
【0186】
試料が加熱/冷却部材のサブセット上で加熱/冷却される場合、
図7および
図8に関連して上述した膜426などの可撓性膜を、サブセットを囲む持ち上がった分割部材に取り付けることができる。これは、アレイ全体が使用のために露出される場合に必要とされるよりも小さい可撓性膜の使用を可能にする。従って、分割部材は、サブセットに関するフレームを形成する。アレイの1つまたは複数のサブセットおよび/またはアレイ全体の周りにフレームを形成することを可能にする他の可動フレーム構成を設けることができる。
【0187】
本発明の一態様による装置は、試料の識別および/または除去の前に試料の加熱/冷却後の画像を可能にする少なくとも1つの撮像システム(図示せず)を組み込むことができる。このシステムは、存在する場合、正しい可撓性膜の使用を識別するように適合させることもできる。このような撮像システムは、装置内または装置上の任意の適切な場所に配置することができ、特に、装置の蓋またはカバーの内部または上に、特に使用において複数の部材に隣接する蓋またはカバーの表面に配置することができる。撮像システムは、少なくとも1つのバーコードスキャナおよび/またはカメラを備えてもよい。従って、単一の撮像システムは、バーコードスキャナおよびカメラ、またはこれらの部品の選択を含むことができる。当業者であれば、複数の撮像システムが装置内に存在する場合、各撮像システムは同じであってもよく(例えば、同じ部品を含み得る)、または異なってもよい(例えば部品の異なる組み合わせを含み得る)。
【0188】
バーコードスキャナを使用して、スキャナの前に配置されたバーコード、例えば試料容器上および/または可撓性膜上のバーコード、の存在を検出することができる。このようなバーコードリーダは市販されている(例えば、Adafruitから)。更に、バーコードリーダは、例えば、画像センサを制御することによって、写真画像を撮影することができるように(すなわち、カメラとして動作するように)、更に変更または制御することが可能である。培養の記録を提供するために、本発明の装置において熱の適用または冷却後に試料の写真画像を得ることが望ましい場合がある。
【0189】
少なくとも1つのRFIDモジュールもまた、本発明の態様に従って装置に組み込むことができ、撮像システムの有無にかかわらず使用することができる。RFIDモジュールは、試料容器および/または装置と共に使用される可撓性膜上のRFIDタグの存在を検出することができよう。例えば、各膜は、膜のタイプおよび/またはサイズに関する情報を含むRFIDタグと、適切な可撓性膜が使用されていることを調べるために、加熱/冷却部材の上に置かれたときに、可撓性膜上のRFIDタグに照会するために使用されるRFIDモジュールとを有してもよい。加熱/冷却部材のアレイが1つまたは複数のグループに分割可能である実施形態では、加熱/冷却部材のアレイ全体または小さなサブグループが使用されているかどうかに応じて、異なるサイズの可撓性膜を提供することができる。膜のサイズに関する情報をRFIDタグに記録することができ、RFIDモジュールを使用して、適切なサイズの膜が使用されていることを確認することができる。無論、任意の所与の応用の要件に応じて、他の関連情報をRFIDタグに記録することができる。
【0190】
図13および
図14は、本発明の装置を用いて得られた実験結果を示す。示された結果は、37℃の湯煎に冷凍/保存試料を浸漬することを含む従来技術と、解凍装置としての本発明の装置の使用との比較である。両方の場合における解凍された試料は、複数の細胞を含む生物学的試料を含んでいた。
【0191】
図13は、本発明の装置を使用した試料の解凍(「Beta Bag Thawer」)と、37℃の水中の試料の浸漬(「37℃の水」)とを通して回復した細胞の割合を示す。示されるように、それぞれの場合に回復された細胞の割合は、標準誤差内で約75%でほぼ同一であった。
【0192】
図14は、本発明の装置を使用した試料の解凍(「Beta Bag Thawer」)と、37℃の水中の試料の浸漬(「37℃の水」)との後に試料内に存在する増殖細胞の割合を示す。示されているように、試料中に存在する増殖細胞の割合は、それぞれの場合において、標準誤差内で約60~65%でほぼ同一であった。
【0193】
図15は、本発明の装置(「Beta Bag Thawer」)を使用し、Plasmatherm装置(Barkey)を使用して、試料を解凍した後の試料中に存在する増殖細胞の割合を示す。3つの解凍した袋について標準偏差を測定したが、両方の分析のT検定で有意差は認められなかった。
【0194】
図16は、10mlまたは20mlのいずれかの容量のT細胞を解凍するために湯煎と、本発明の装置(「Via Thaw」)を使用することとの間の%生細胞回復率の有意差がないことも同様に示す。各装置で各容量を3回繰り返した。エラーバーは、3つの袋解凍からの標準偏差を表す。細胞は全ての条件において95%より大きい生存性を有した。チュービングの損失のために、20mLの袋と比較して、10mLの袋からより低い回復率が観察された。P値は、10mLのVia Thawについては0.94であり、20mLのVia Thawについては0.22であった。
【0195】
図17は、本発明の装置を用いて解凍したCS50クライオバッグ中で冷凍保存した肝細胞の解凍後24時間の細胞生存性を試験して得られた結果を示す。結果は、少なくとも70%の生存性レベルが得られたことを示す。袋コードB、C、DおよびEを有する4つの試料を試験した。
【0196】
得られた実験結果は、本発明の装置が解凍装置として使用された場合に少なくとも先行技術の浸漬技術と同じくらい有効であることを示している。このような従来技術の技術に対する本発明の主な利点は、装置が「乾式」装置であることであり、従って、試料の浸漬の必要性が除去されたときに試料の汚染の危険性が大幅に低減される。更に、本発明の装置および方法は、浸漬技術を用いた試料のバルク加熱/冷却とは対照的に、試料または試料の特定の領域を高度に選択的に攪拌および加熱/冷却するために使用され得る。
【0197】
上記の実施形態は、単なる例示として記載される。添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0198】
2 加熱装置、加熱部材、試料
4 加熱/冷却プレート、加熱/冷却要素
6 加熱/冷却部材
8 試料接触面
10 弾性部材
12 支持部材
14 ベースプレート
16 壁
18 窪み
20 矢印
22 試料、袋
24 蓋、カバー
102 加熱装置
104 加熱プレート
106 加熱部材
122 袋、試料
154 二次加熱プレート
156 加熱部材
202 加熱装置
204 加熱プレート
206 加熱部材
222 バイアル、試料
254 加熱プレート
256 加熱部材
302 加熱装置
306 加熱部材
308 試料接触面
310 弾性部材
316 壁
402 加熱装置
406 加熱部材
426 可撓性膜
502 装置
522 試料袋
526 可撓性膜
528 天板
560 ハウジング
562 ベース
564 蓋、カバー
566 制御画面
570 低部温度制御センサ
572 上部温度制御センサ
574 IR温度センサ
602 装置
604 加熱/冷却プレート
606 加熱/冷却部材
608 接触面
610 弾性部材、バネ
612 支持部材、支持部材バー
614 ベースプレート
616 壁
618 窪み
676 上壁
678 下壁
680 側壁
682 側壁
684 凹部
702 装置
704 加熱/冷却要素
706 加熱/冷却部材
714 ベースプレート、加熱/冷却要素
718 壁
786 圧縮バネ
888 攪拌機
890 支持フレーム
892 アクチュエータ
894 回転軸
896 コイルバネ
898 攪拌機ピン