(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】二重容器及び二重容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20231211BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20231211BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/02 220
B29C49/22
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2019157301
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正昭
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188183(JP,A)
【文献】特開2019-131221(JP,A)
【文献】特開2003-192031(JP,A)
【文献】特開2017-222141(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0043604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B29C 49/22
B29C 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外口部と、該外口部に連なるとともに前記外口部よりも拡径した有底筒状の胴部とを備える外層体と、
筒状の内口部と、該内口部に連なるとともに前記胴部の内面に剥離可能に積層された減容変形自在な収容部とを備える内層体とを有し、
前記外口部と該外口部の内側に配置された前記内口部とで構成される口部が、前記外層体と前記内層体との間に連通する外気導入口を有し、
前記胴部が、縦断面において前記外口部の下端と、該下端に最も近い外面側に突出する湾曲部の頂点との間に亘る肩領域を有し、該肩領域の周方向延伸倍率が1.70以下であり、
前記胴部が上下方向に延びるリブを有し、
前記内層体が、前記リブの上端に対応する高さの部分
と前記外口部の下端に対応する高さの部分とを通って上下方向に延び
且つ前記肩領域の上部に対応する高さの部分で終端する外向き凸条を有することを特徴とする二重容器。
【請求項2】
筒状の外口部と該外口部に連なる延伸部とを備える外プリフォームと、筒状の内口部と該内口部に連なる延伸部とを備えるとともに上下方向に延びる外向き凸条が設けられた内プリフォームとをそれぞれ形成し、前記外プリフォームの内側に前記内プリフォームを組み込んで、前記外口部と該外口部の内側に配置された前記内口部とで構成される口部が、前記外プリフォームと前記内プリフォームとの間に連通する外気導入口を有するプリフォーム組立体を形成するプリフォーム形成工程と、
前記プリフォーム組立体を上下方向に延びる凸条又は凹条がキャビティ形成面に設けられた金型によりブロー成形することにより、前記外口部と該外口部に連なるとともに前記外口部よりも拡径した有底筒状の胴部とを備える外層体と、前記内口部と該内口部に連なるとともに前記胴部の内面に剥離可能に積層された減容変形自在な収容部とを備える内層体とを有し、前記外気導入口が前記外層体と前記内層体との間に連通し、前記胴部が、縦断面において前記外口部の下端と、該下端に最も近い外面側に突出する湾曲部の頂点との間に亘る肩領域を有し、該肩領域の周方向延伸倍率が1.70以下であり、前記胴部が前記キャビティ形成面の前記凸条又は凹条に対応するリブを有し、前記外向き凸条が前記リブの上端に対応する高さの部分
と前記外口部の下端に対応する高さの部分とを通って上下方向に延び
且つ前記肩領域の上部に対応する高さの部分で終端する二重容器とするブロー成形工程とを有することを特徴とする二重容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器及び二重容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油等の食品調味料、飲料、化粧水などの化粧料、シャンプーやリンス、液体石鹸などのトイレタリーを内容液として収納する容器として、外プリフォームの内側に内プリフォームを組み込んだプリフォーム組立体をブロー成形して、筒状の外口部と外口部に連なるとともに外口部よりも拡径した有底筒状の胴部とを備える外層体と、外口部の内側に配置された内口部と内口部に連なるとともに胴部の内面に剥離可能に積層された減容変形自在な収容部とを備える内層体とを有する二重構造に形成された二重容器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記二重容器は、例えば、逆止弁を備えた注出キャップと組み合わされたスクイズ式の注出容器やポンプと組み合わされたポンプ付容器として使用される。この場合、外層体の胴部をスクイズ(圧搾)したりポンプを操作したりすることで内容液を外部に注出することができる一方、内容液の注出後には、外層体に設けた外気導入口から外層体と内層体との間に外気が導入されることで内層体の収容部を減容変形させたまま外層体のみを元の形状に復元させることができる。したがって、上記二重容器によれば、内層体の収容部に収容されている内容液を外気と置換することなく外部に注出することができるので、内層体の内部に収容されている内容液への外気の接触を減らし、当該内容液の劣化や変質等を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の二重容器のように、外プリフォームの内側に内プリフォームを組み込んだプリフォーム組立体をブロー成形して形成される二重容器では、外層体と内層体との間に外気を導入する外気導入口を外口部と内口部とで構成される口部に設けた構成とすると、外気導入口から胴部の肩領域と収容部との間を通って胴部の胴本体領域と収容部との間に至る気道の確保が上手くいかず、内容液を注出した後に胴本体領域と収容部との間にまで外気が導入されず収容部の減容変形が維持されない、又は、外層体の復元が阻害されてしまう傾向がある。特に、肩領域の周方向延伸倍率が1.70以下の低延伸倍率である場合に、その傾向が顕著であった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、口部に設けた外気導入口から胴部の低い周方向延伸倍率の肩領域と収容部との間を通って胴部の胴本体領域と収容部との間に至る気道を確実に確保できるようにする二重容器及び二重容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二重容器は、筒状の外口部と、該外口部に連なるとともに前記外口部よりも拡径した有底筒状の胴部とを備える外層体と、筒状の内口部と、該内口部に連なるとともに前記胴部の内面に剥離可能に積層された減容変形自在な収容部とを備える内層体とを有し、前記外口部と該外口部の内側に配置された前記内口部とで構成される口部が、前記外層体と前記内層体との間に連通する外気導入口を有し、前記胴部が、縦断面において前記外口部の下端と、該下端に最も近い外面側に突出する湾曲部の頂点との間に亘る肩領域を有し、該肩領域の周方向延伸倍率が1.70以下であり、前記胴部が上下方向に延びるリブを有し、前記内層体が、前記リブの上端に対応する高さの部分と前記外口部の下端に対応する高さの部分とを通って上下方向に延び且つ前記肩領域の上部に対応する高さの部分で終端する外向き凸条を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の二重容器の製造方法は、筒状の外口部と該外口部に連なる延伸部とを備える外プリフォームと、筒状の内口部と該内口部に連なる延伸部とを備えるとともに上下方向に延びる外向き凸条が設けられた内プリフォームとをそれぞれ形成し、前記外プリフォームの内側に前記内プリフォームを組み込んで、前記外口部と該外口部の内側に配置された前記内口部とで構成される口部が、前記外プリフォームと前記内プリフォームとの間に連通する外気導入口を有するプリフォーム組立体を形成するプリフォーム形成工程と、前記プリフォーム組立体を上下方向に延びる凸条又は凹条がキャビティ形成面に設けられた金型によりブロー成形することにより、前記外口部と該外口部に連なるとともに前記外口部よりも拡径した有底筒状の胴部とを備える外層体と、前記内口部と該内口部に連なるとともに前記胴部の内面に剥離可能に積層された減容変形自在な収容部とを備える内層体とを有し、前記外気導入口が前記外層体と前記内層体との間に連通し、前記胴部が、縦断面において前記外口部の下端と、該下端に最も近い外面側に突出する湾曲部の頂点との間に亘る肩領域を有し、該肩領域の周方向延伸倍率が1.70以下であり、前記胴部が前記キャビティ形成面の前記凸条又は凹条に対応するリブを有し、前記外向き凸条が前記リブの上端に対応する高さの部分と前記外口部の下端に対応する高さの部分とを通って上下方向に延び且つ前記肩領域の上部に対応する高さの部分で終端する二重容器とするブロー成形工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、口部に設けた外気導入口から胴部の低い周方向延伸倍率の肩領域と収容部との間を通って胴部の胴本体領域と収容部との間に至る気道を確実に確保できるようにする二重容器及び二重容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態である二重容器の半断面図である。
【
図2】
図1に示す二重容器の要部を示す半断面図である。
【
図3】
図1に示す二重容器にブロー成形されるプリフォーム組立体の半断面図である。
【
図4】
図3に示すプリフォーム組立体をブロー成形用の金型に配置した状態を示す断面図である。
【
図5】
図4に示す状態からプリフォーム組立体を二軸延伸ブロー成形により二重容器に成形した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態を例示説明する。
【0014】
図1に示す本発明の一実施の形態である二重容器1は、積層剥離容器やデラミネーション容器(デラミ容器)とも呼ばれる合成樹脂製のものであり、外層体10と内層体20とを有する二重構造となっている。二重容器1は、
図3に示すプリフォーム組立体40を二軸延伸ブロー成形して形成することができる。以下では、二重容器1を、化粧料や食品調味料等の液体を内容物として収容するスクイズ式の注出容器として用いる場合について説明する。
【0015】
図1に示すように、外層体10は二重容器1の外殻を構成する部分であり、外口部11及び胴部12を備えたボトル形状となっている。
【0016】
図2に示すように、外口部11は、中心軸線Oを中心とする円筒状となっている。外口部11の外周面には雄ねじ11aが一体に設けられており、注出口を備えた注出キャップ(不図示)を雄ねじ11aにねじ結合させて外口部11に装着することができるようになっている。
【0017】
なお、上下方向とは、中心軸線Oに沿う方向を意味し、上方とは胴部12から外口部11に向かう方向を意味し、下方とはその反対方向を意味している。径方向とは中心軸線Oに直交する方向、周方向とは中心軸線Oを周回する方向を意味している。縦断面とは、中心軸線Oを含む断面を意味し、横断面とは、中心軸線Oと垂直な断面を意味している。
【0018】
外口部11は、雄ねじ11aに替えて円環状の突起を備えて、注出キャップが打栓によってアンダーカット状に係合することにより装着される構成とすることもできる。
【0019】
外口部11には一対の外気導入口13が設けられている。一対の外気導入口13は、外口部11の軸心を挟んだ両側に互いに対称に配置され、それぞれ周方向に延びる長孔形状に形成されて外口部11を径方向に貫通している。つまり、各々の外気導入口13は、外口部11を貫通する貫通孔で構成されている。各々の外気導入口13は、外層体10と内層体20との間に連通しており、外気導入口13を通して外層体10と内層体20との間に外気を導入することができる。なお、各々の外気導入口13は長孔形状に限らず、真円形状など適宜設計可能である。
【0020】
外口部11の外周面における一対の外気導入口13よりも下方の部分にはシールリング11bが一体に設けられている。シールリング11bは外口部11の全周に亘って延びるフランジ状となっており、外口部11の外周面から径方向外側に向けて突出している。シールリング11bは外口部11に装着された注出キャップとの間に環状のシール部を形成することができる。
【0021】
外口部11の外周面におけるシールリング11bよりも下方の部分にはネックリング11cが一体に設けられている。ネックリング11cは外口部11の全周に亘って延びるフランジ状となっており、外口部11の外周面から径方向外側に向けて突出している。ネックリング11cは、外口部11の下端よりやや上方に設けられている。すなわち、本実施の形態においては、ネックリング11cの直下には二軸延伸ブロー成形時に実質的に延伸されない円筒状の非延伸部が設けられており、この非延伸部で外口部11の下端11dを構成している。このようにネックリング11cの直下に非延伸部を設けることで、ネックリング11cが延伸の影響を受けないようにすることができる。なお、このような非延伸部を設けずに、ネックリング11cで外口部11の下端11dを構成してもよい。
【0022】
図1に示すように、胴部12は外口部11に連なるとともに外口部11よりも拡径した有底筒状に形成されている。なお、胴部12の横断面形状は円形であってもよく、楕円形ないし略矩形であってもよい。
【0023】
胴部12は外口部11に連なる肩領域12aと、肩領域12aに連なる胴本体領域12bとを有している。
【0024】
肩領域12aは、縦断面において外口部11の下端11dと、当該下端11dに最も近い外面側に突出する湾曲部14の頂点14aとの間に亘る領域である。換言すると、肩領域12aは、外口部11の下端11dから湾曲部14の頂点14aまで延びる領域である。湾曲部14の頂点14aとは、湾曲部14において曲率が最大となる点、あるいは湾曲部14において曲率が最大となる円弧部分の中央の点を意味する。
【0025】
肩領域12aの周方向延伸倍率(HSR:Hoop Stretch Ratio)は、1.70以下に設定されている。つまり、肩領域12aの下端である湾曲部14の頂点14aでの周方向延伸倍率が、1.70以下に設定されている。なお、本実施の形態では肩領域12aの下端での周方向延伸倍率は1.68である。本願において、肩領域12aの下端での周方向延伸倍率とは、肩領域12aの下端の外面の周長を外口部11の下端11dの外面の周長で除した値を意味している。後述する各々のリブ15が図示するように肩領域12aの下端を通るように設けられている場合、肩領域12aの下端での周方向延伸倍率は、肩領域12aの下端の外面におけるリブ15の形状に沿った周長を、外口部11の下端11dの外面の周長で除した値である。
【0026】
胴本体領域12bは縦断面において湾曲部14の頂点14aより下方に位置する領域である。胴本体領域12bは可撓性を有しており、スクイズ(圧搾)されることで弾性変形して凹むことができるとともに、弾性力によって凹んだ状態から元の形状に自力で復元することができる。胴本体領域12bをスクイズにより弾性変形可能な構成としたことにより、二重容器1をスクイズ式の注出容器として用いる場合に、内容液の注出操作を容易に行い得るようにすることができるとともに、内容液の注出後に外層体10が元の形状に容易に復元することで外層体10と内層体20との間に一対の外気導入口13を通して外気が確実に導入されるようにして二重容器1としての機能を確実に発揮させることができる。なお、胴本体領域12bの下端は円環状の外周縁の内側が凹んだ形状となっており、当該外周縁を接地させることで二重容器1を正立姿勢で配置することができる。
【0027】
胴本体領域12bの上部は肩領域12aの下端と同程度の径寸法に抑えられ、胴本体領域12bの上部の下端から胴本体領域12bの上下方向中央部にかけて径寸法が徐々に拡大し、胴本体領域12bの下半部は径寸法が略一定となっているが、胴本体領域12bの形状はこれに限らない。
【0028】
本実施の形態においては、外層体10はポリエチレンテレフタレート(PET)製となっている。外層体10をポリエチレンテレフタレート製とすることで、二重容器1を軽量で透明性の高い容器とすることができる。
【0029】
なお、外層体10の材質としては、ポリエチレンテレフタレートに限らず、例えばポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC樹脂)、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP樹脂)などの他の合成樹脂材料を採用することもできる。
【0030】
内層体20は内口部21と内口部21の下端に一体に連なる収容部22とを有している。
【0031】
図2に示すように、内口部21は段付き円筒状をなしており、外口部11の内側に当該外口部11と同軸に配置されている。内口部21は、外口部11の上端に載置される円環状のフランジ21aと、フランジ21aの内周縁から垂下するとともに外口部11の内面に接する円筒状の上筒21bと、上筒21bの下端から下方に向けて縮径する円錐状の傾斜筒21cと、傾斜筒21cの下端から垂下する円筒状の下筒21dとを有している。傾斜筒21cの上端は、一対の外気導入口13の上端よりも上方に位置している。外口部11の内周面と下筒21dの外周面との間には所定の間隔の隙間30が設けられている。
【0032】
上筒21bの外周面が外口部11の内周面に全周に亘って当接することで、外口部11と下筒21dとの間の隙間30は、外口部11ないし内口部21の上端部分において外部に対して閉塞されている。フランジ21aが外口部11の上端に当接することで内口部21は外口部11に対して上下方向に位置決めされている。
【0033】
外口部11と外口部11の内側に配置された内口部21とで二重容器1の口部31が構成され、口部31に設けられた外気導入口13は、外層体10と内層体20との間に連通している。
【0034】
図1~
図2に示すように、収容部22は、内口部21の下筒21dの下端21e、つまり内口部21の下端21eに連なるとともに胴部12の内面に剥離可能に積層されている。内口部21の下端21eとは、外口部11の下端11dに対応する高さの部分を意味している。なお、本願における「剥離」とは、接着状態又は接着力が殆ど介在しない擬似接着状態から外層体10と内層体20とが離れる場合だけでなく、接着力が介在しない密着状態から外層体10と内層体20とが離れる場合も含んでいる。
【0035】
収容部22は、上端付近を除く部分が胴部12よりも薄肉に形成され、胴部12の胴本体領域12bの内面に沿って延びている。収容部22の内部は内容液の収容空間となっており、内口部21を通して収容部22に内容液を充填することができるとともに内口部21を通して収容部22に収容されている内容液を外部に注出することができる。収容部22は、内容液の注出に伴い、胴部12の内面から剥離しつつ減容変形(内容積を減少させるように変形)することができる。このとき、一対の外気導入口13から外層体10と内層体20との間に外気が導入されることで、胴部12のみが元の形状に復元し、収容部22は胴部12の内面から剥離し、減容変形することができる。
【0036】
本実施の形態においては、内層体20はポリエチレンテレフタレート製となっている。内層体20をポリエチレンテレフタレート製とすることで、二重容器1を軽量で透明性の高い容器とすることができる。
【0037】
なお、内層体20の材質としては、ポリエチレンテレフタレートに限らず、例えばポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC樹脂)、シクロオレフィンポリマー樹脂(COP樹脂)、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH樹脂)などの他の合成樹脂材料を採用することもできる。内層体20の材質としてエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂を用いる場合には、バリア性及び柔軟性を考慮して、適切なエチレン含有率のものを採用することができる。また、内層体20は、バリア性を確保するために、例えば一対のポリエチレンテレフタレート層の間にMXナイロン樹脂層などのバリア層を設けた多層構造とすることもできる。
【0038】
一対の外気導入口13から胴部12と収容部22との間に向けた外気の気道を確保し易くするために、内層体20の外面には上下方向に延びる複数の外向き凸条23が一体に設けられている。
【0039】
本実施の形態においては、下筒21dの外面に、8本の板状の外向き凸条23が周方向に等しい間隔を空けて並べて設けられている。なお、外向き凸条23の数は8本に限らず、適宜変更が可能である。また、8本の外向き凸条23は互いに同じ形状と大きさを有しているが、これに限らない。
【0040】
各々の外向き凸条23は、内層体20の外面から径方向に突出するとともに内口部21から収容部22に跨って上下方向に延びている。つまり、各々の外向き凸条23は、外口部11の下端11dに対応する高さの部分を通って上下方向に延びている。また、各々の外向き凸条23は、一対の外気導入口13よりも下方に設けられているが、これに限らず、一対の外気導入口13の高さまで延びていてもよいし、一対の外気導入口13よりも上方まで延びていてもよい。各々の外向き凸条23は肩領域12aの上部に対応する高さの部分で終端している。なお、各々の外向き凸条23の内層体20の外面からの突出高さは、外向き凸条23の下部において下方に向けて徐々に低下しているが、これに限らない。また、各々の外向き凸条23は上下方向に沿って連続して延びているが、これに限らず、例えば、上下方向に対して傾斜する方向に延びていてもよいし、上下方向に断続して延びていてもよい。なお、各々の外向き凸条23は内層体20の外面から径方向に沿って突出しているが、これに限らず、径方向に対して傾斜する方向に突出していてもよい。
【0041】
複数の外向き凸条23を設けることにより、外口部11と下筒21dとの間の隙間30を確実に確保することができる。なお、外向き凸条23の数は複数に限らない。
【0042】
図2に示すように、一対の外気導入口13から胴部12の胴本体領域12bと収容部22との間に向けた外気の気道を確保し易くするために、外層体10の胴部12には上下方向に延びる複数のリブ15が設けられている。
【0043】
本実施の形態においては、外層体10の肩領域12aに、18本のリブ15が周方向に等しい間隔を空けて並べて設けられている。なお、リブ15の数はこれに限らず、適宜変更が可能である。また、18本のリブ15は互いに同じ形状と大きさを有しているが、これに限らない。各々のリブ15は、肩領域12aの上端から肩領域12aの下端である湾曲部14の頂点14aを通って胴本体領域12bの上部まで延びている。各々のリブ15は上面視で径方向に沿って連続して延びているが、これに限らず、例えば、上面視で径方向に対して傾斜する方向に延びていてもよいし、上面視で径方向に断続して延びていてもよい。
【0044】
各々のリブ15は、容器外側から視て凹状をなすように、胴部12が容器内側に局所的に張り出すように湾曲することで形成された凹リブとされている。なお、各々のリブ15は、容器外側から視て凸状をなすように、胴部12が容器外側に局所的に張り出すように湾曲することで形成された凸リブとされてもよい。リブ15とは、このように、胴部12が容器内側又は容器外側に局所的に張り出すように湾曲することで形成された部分を意味している。各々のリブ15は、横断面において径方向内側に向けて幅が漸次狭まるU字状の横断面形状を実質的に全長に亘って有している。なお、リブ15の横断面形状はこれに限らず、適宜変更が可能である。なお、内層体20も、リブ15の形状に沿うように二軸延伸ブロー成形によって延伸されている。
【0045】
複数のリブ15を設けることにより、胴部12における各々のリブ15の部分において、収容部22を外層体10の内面から剥離した後に外層体10の内面に再密着し難くすることができるため、胴部12における気道をより確実に確保することができる。なお、リブ15の数は複数に限らない。
【0046】
このような構成を有する二重容器1は、外口部11に注出キャップが装着されることでスクイズ容器に構成することができる。この場合、注出キャップとしては、例えば、一対の外気導入口13への外気の導入を許容するとともに一対の外気導入口13から外部に向けた外気の流出を阻止する外気用逆止弁と、内容液の注出を許容するとともに収容部22の内部への外気の逆流を阻止する内容液用逆止弁とを備えた構成のものを用いることができる。
【0047】
スクイズ容器に構成された二重容器1では、外層体10の胴部12がスクイズ(圧搾)されると、収容部22が減容変形し、内容液が注出キャップから押し出されて外部に注出される。内容液が注出された後、スクイズを解除すると、胴部12が元の形状に復元し、それに伴い内層体20の収容部22が外層体10の内面から剥離するとともに一対の外気導入口13から外層体10と内層体20との間に外気が導入され、収容部22が減容変形したまま胴部12のみが元の形状に復元する。これにより、収容部22に収容された内容液を外気と置換させることなく注出させることができるので、収容部22に収容された内容液への外気の接触を減らして、その劣化や変質を抑制することができる。
【0048】
ここで、本実施の形態の二重容器1は、肩領域12aが1.70以下の低い周方向延伸倍率を有する特殊な形状を有しているので、一対の外気導入口13から肩領域12aと収容部22との間を通って胴本体領域12bと収容部22との間に至る気道を確保するのが通常よりも難しい。
【0049】
しかし、本実施の形態の二重容器1では、上述したように各々のリブ15の上端が肩領域12aの上端に位置しており、各々の外向き凸条23の下端が肩領域12aの上部に対応する高さの部分に位置している。つまり、本実施の形態の二重容器1では、各々の外向き凸条23が複数のリブ15の上端に対応する高さの部分を通って上下方向に延びている。したがって、複数の外向き凸条23によって確保される外口部11と下筒21dとの間の隙間30を、外層体10と内層体20との剥離後の再密着を抑制して気道を確保する複数のリブ15の上端に連ねることができるので、スクイズされた胴部12が元の形状に復元する際に一対の外気導入口13から外口部11と内口部21との間の部分に導入された外気を胴本体領域12bと収容部22との間の部分にまで確実に導くことができる。
【0050】
なお、このように各々の外向き凸条23が複数のリブ15の上端に対応する高さの部分を通って上下方向に延びている限り、各々のリブ15の上端は肩領域12aの上端に限らず、各々の外向き凸条23の下端は肩領域12aの上部に対応する高さの部分に限らない。例えば、各々のリブ15の上端は肩領域12aの上端よりも下方に位置してもよいし、各々の外向き凸条23の下端は肩領域12aの上部に対応する高さの部分よりも下方に位置してもよい。しかし、ブロー成形時の内層体20の成形性の観点から、各々の外向き凸条23の下端は肩領域12aの上部に対応する高さの部分に位置することが好ましく、このため、各々のリブ15の上端は肩領域12aの上部に位置していることが好ましい。また、各々のリブ15は、肩領域12aの上部から少なくとも胴本体領域12bの上部まで延びていることが好ましい。
【0051】
図3に示すように、プリフォーム組立体40は、外層体10を形成するための合成樹脂製の外プリフォーム50の内側に、内層体20を形成するための合成樹脂製の内プリフォーム60を組み込んだ二重構造となっている。
【0052】
外プリフォーム50は、外層体10と同一の合成樹脂材料を、金型を用いて射出成形することにより外層体10に対応した所定形状に形成されている。本実施の形態では、外プリフォーム50は、外層体10と同様にポリエチレンテレフタレート製である。
【0053】
外プリフォーム50は外層体10の外口部11と同一形状の外口部51を有している。すなわち、外口部51は円筒状に形成され、その外周面には雄ねじ51aが一体に設けられ、それぞれ周方向に延びる長孔形状に形成されて外口部51を径方向に貫通する一対の外気導入口52が外口部51の軸心を挟んだ両側に互いに対称に設けられている。また、外口部51の下端には、底部が半球状となった略試験管状の延伸部53が一体に設けられている。延伸部53の厚みは外口部51の厚みよりも厚くなっている。外口部51には、シールリング51bとネックリング51cが一体に設けられている。
【0054】
内プリフォーム60は、内層体20と同一の合成樹脂材料を、金型を用いて射出成形することにより内層体20に対応した所定形状に形成されている。本実施の形態では、内プリフォーム60は、内層体20と同様にポリエチレンテレフタレート製である。
【0055】
内プリフォーム60は内層体20の内口部21と同一形状の内口部61を有している。すなわち、内口部61は段付き円筒状をなしており、外口部51の内側に当該外口部51と同軸に配置されている。内口部61は、外口部51の上端に載置される円環状のフランジ61aと、フランジ61aの内周縁から垂下するとともに外口部51の内面に接する円筒状の上筒61bと、上筒61bの下端から下方に向けて縮径する円錐状の傾斜筒61cと、傾斜筒61cの下端から垂下する円筒状の下筒61dとを有している。上筒61bの外周面が外口部51の内周面に全周に亘って当接することで、外口部51と下筒61dとの間の隙間70の上端部分が外部に対して閉塞されている。フランジ61aが外口部51の上端に当接することで内口部61は外口部51に対して上下方向に位置決めされている。内口部61の下端には、底部が半球状となった略試験管状の延伸部62が一体に設けられている。延伸部62の外径は内口部61の外径よりも小径となっている。延伸部62の外周面と延伸部53の内周面との間には隙間が設けられ、内プリフォーム60を外プリフォーム50の内部に組み込む際に、延伸部62の外周面と延伸部53の内周面とに傷が付かないようになっている。
【0056】
内プリフォーム60の外面には、複数の外向き凸条23に対応する複数の外向き凸条63が設けられている。すなわち、内プリフォーム60の下筒21dの外面には、8本の板状の外向き凸条63が周方向に等しい間隔を空けて並べて設けられている。各々の外向き凸条63は、内プリフォーム60の外面から径方向に沿って突出するとともに内口部61から延伸部62に跨って上下方向に沿って連続して延びている。つまり、各々の外向き凸条63は、外口部51の下端51dに対応する高さの部分である内口部61の下端61eを通って上下方向に延びている。また、各々の外向き凸条63は、一対の外気導入口52よりも下方に設けられている。各々の外向き凸条63の内プリフォーム60の外面からの突出高さは、外向き凸条63の下部において下方に向けて徐々に低下している。
【0057】
外口部51と外口部51の内側に配置された内口部61とでプリフォーム組立体40の口部71が構成され、口部71に設けられた外気導入口52は、外プリフォーム50と内プリフォーム60との間に連通している。
【0058】
図1に示す二重容器1は、例えば次の要領(本発明の一実施の形態である二重容器の製造方法)で製造することができる。
【0059】
本実施の形態である二重容器の製造方法は、プリフォーム形成工程と、ブロー成形工程とを有している。なお、本実施の形態である二重容器の製造方法は、
図1に示す二重容器1以外の二重容器を製造する場合にも適用可能である。
【0060】
プリフォーム形成工程においては、まず、外プリフォーム50と内プリフォーム60とをそれぞれ形成する。外プリフォーム50は、上述したように、円筒状の外口部51と外口部51に連なる延伸部53とを備えるとともに、外気導入口52を構成するための貫通孔が外口部51に設けられたものである。また、内プリフォーム60は、上述したように、円筒状の内口部61と内口部61に連なる延伸部62とを備えるとともに、上下方向に延びる外向き凸条63が外面に設けられたものである。そして、外プリフォーム50の内側に内プリフォーム60を組み込んで、外プリフォーム50と内プリフォーム60との間に連通する外気導入口52が、外口部51と外口部51の内側に配置された内口部61とで構成される口部71に設けられたプリフォーム組立体40を形成する。
【0061】
プリフォーム形成工程が完了すると、ブロー成形工程が行われる。ブロー成形工程においては、まず、延伸可能な温度に加熱したプリフォーム組立体40を、
図4に示すように、ブロー成形用の金型80に、口部71がキャビティ80aから突出するとともにネックリング51cが金型80の上面に支持されて延伸部53、62がキャビティ80aの内部に位置するようにプリフォーム組立体40をセットする。ここで、金型80のキャビティ形成面80bには、リブ15の外面形状に対応する形状の、上下方向に延びる複数の凸条81が設けられている。そして、このようにプリフォーム組立体40をセットした状態で、図示しない供給装置からプリフォーム組立体40の内部に加圧空気や加圧液体等の加圧媒体を供給する。これにより、
図5に示すように、プリフォーム組立体40の延伸部53、62をキャビティ形成面80bの内面に沿った形状に二軸延伸ブロー成形して、二重容器1を形成することができる。
【0062】
本実施の形態では、当該二軸延伸ブロー成形に上述した凸条81を有する金型80を用いているので、複数のリブ15を有する二重容器1を成形することができる。なお、リブ15を凹リブ状ではなく凸リブ状に設ける場合には、金型80のキャビティ形成面80bに凸条81ではなく、リブ15の外面形状に対応する形状の凹条を設ければよい。
【0063】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0064】
前記実施の形態では、外口部11に一対の外気導入口13を設けるようにしているが、外気導入口13は少なくとも1つ設けられていればよい。
【0065】
前記実施の形態では、外気導入口13は、外口部11に設けられて外口部11を貫通する貫通孔とされているが、これに限らず、例えば、外口部11の上端と内口部21の上端との間に設けられて隙間30を外部に開放する隙間として構成することもできる。
【0066】
外口部11と内口部21は円筒状以外の筒状をなしていてもよい。また、外口部11はシールリング11bもネックリング11cも備えない構成としてもよいし、シールリング11b又はネックリング11cを備えない構成としてもよい。
【0067】
胴部12の形状も、肩領域12aの周方向延伸倍率が1.70以下である限り、種々変更可能である。
【0068】
前記実施の形態では、二重容器1を、注出口を備えた注出キャップが外口部11に装着され、胴部12がスクイズされることで内容液を注出するスクイズ式の注出容器に用いられるものとした場合を示したが、胴部12が容易にスクイズ変形しない所定の剛性を有し、ポンプ式注出具が外口部11に装着されるポンプ付き容器に用いられるものとすることもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 二重容器
10 外層体
11 外口部
11a 雄ねじ
11b シールリング
11c ネックリング
11d 外口部の下端
12 胴部
12a 肩領域
12b 胴本体領域
13 外気導入口
14 湾曲部
14a 湾曲部の頂点
15 リブ
20 内層体
21 内口部
21a フランジ
21b 上筒
21c 傾斜筒
21d 下筒
21e 内口部の下端
22 収容部
23 外向き凸条
30 隙間
31 口部
40 プリフォーム組立体
50 外プリフォーム
51 外口部
51a 雄ねじ
51b シールリング
51c ネックリング
51d 外口部の下端
52 外気導入口
53 延伸部
60 内プリフォーム
61 内口部
61a フランジ
61b 上筒
61c 傾斜筒
61d 下筒
61e 内口部の下端
62 延伸部
63 外向き凸条
70 隙間
71 口部
80 金型
80a キャビティ
80b キャビティ形成面
81 凸条
O 中心軸線