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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/07 20060101AFI20231211BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20231211BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231211BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C09J183/07
C09J183/05
C09J11/06
C09J11/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019214556
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021084957
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】宮田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高梨 正則
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勲
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/033979(WO,A1)
【文献】特開2011-026523(JP,A)
【文献】特開平04-246466(JP,A)
【文献】特開2019-151695(JP,A)
【文献】特開2012-184350(JP,A)
【文献】特表2007-514796(JP,A)
【文献】特開昭60-168614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 183/07
C09J 183/05
C09J 11/06
C09J 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、分子中に2個以上有するポリオルガノシロキサン(但し、(D)を除く);
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を、分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン(但し、(D)を除く);
(C)白金系触媒;
(D)脂肪族不飽和炭化水素基、エポキシ基、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、及びケイ素原子に結合した水素原子から選ばれる接着性付与官能基を2個以上有する、ケイ素系接着性付与剤(但し、ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に2個以上有する場合は、エポキシ基、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、及びケイ素原子に結合した水素原子から選択される1種以上の基を有し、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に3個以上有する場合は、エステル結合を有するか、又はエポキシ基、アルコキシ基、及び、脂肪族不飽和基から選択される1種以上の基を有する)
及び
(E)バナジウム濃度が10~50質量%である、バナジウム化合物;
を含み、
(A)成分100質量部に対する(E)成分の含有量が、0.005~10質量部であり、
組成物の全量に対する(C)成分の含有量が触媒量であり、
(E)成分が、バナジウムアルコキシド化合物及びバナジウムキレート化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、
付加硬化型シリコーン接着剤組成物。
【請求項2】
(A)成分が、両末端がRSiO1/2単位で封鎖され、中間単位がR SiO2/2単位である直鎖状ポリオルガノシロキサン(ここで、RはR又はRであり、Rは、アルケニル基であり、Rは、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基であり、分子中に2個以上のRを含有する)を含む、請求項記載の付加硬化型シリコーン接着剤組成物。
【請求項3】
(D)成分が、下記(D1)~(D4):
(D1)ケイ素原子に結合した水素原子と、ケイ素原子に結合した下記式(I):
【化7】

で示される基及びエポキシ基含有基からなる群より選択される1種以上とを有する有機ケイ素化合物、
(D2)Si(OR基と、エポキシ基含有基及び脂肪族不飽和炭化水素基からなる群より選択される1種以上とを有する有機ケイ素化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物
(D3)Si(OR基を2個以上有する有機ケイ素化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物(但し、(D1)、(D2)及び(D4)を除く)、並びに
(D4)(R4-pSi(ORで示されるアルコキシシラン化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物
(上記各式中、Qは、ケイ素原子とエステル結合の間に2個以上の炭素原子を有する炭素鎖を形成する、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し;Qは、酸素原子と側鎖のケイ素原子の間に3個以上の炭素原子を有する炭素鎖を形成する、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し;Rは、炭素数1~4のアルキル基又は2-メトキシエチル基を表し;Rは、炭素数1~3のアルキル基を表し;nは、1~3の整数であり;pは、2~4の整数である)
からなる群より選択される、少なくとも1種である、請求項1又は2記載の付加硬化型シリコーン接着剤組成物。
【請求項4】
更に、(F1)無機フィラー又は(F1)無機フィラーと(F2)表面処理剤との組合せを含む、請求項1~のいずれか一項記載の付加硬化型シリコーン接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
付加硬化型のシリコーン接着剤組成物は、室温で硬化して各種被着体に対する接着性を発現する。特許文献1、2には、基材への接着性を向上させるために、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物又は有機アルミニウム化合物を添加した、付加反応型のシリコーン組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-76394号公報
【文献】特開2013-60493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の環境意識の変化により、付加硬化型シリコーン接着剤組成物の硬化条件を低温かつ短時間とする要求が高まっている。更に、そのような硬化条件で、アルミニウム、アルミダイキャスト等の金属、及びPPS、PBT、PETのようなエンジニアリングプラスチックを付加硬化型シリコーン接着剤組成物で接着させる要求が高まっている。
【0005】
このような要求に対して、特許文献1及び2に記載されたシリコーン組成物は、低温かつ短時間の硬化条件では、アルミニウム、アルミダイキャスト等の金属及びPPS、PBT、PETのようなエンジニアリングプラスチックの両者に対する接着性が十分でないという問題があった。
【0006】
本発明は、低温かつ短時間の硬化条件で硬化するとともに、様々な基材に対する接着性に優れる、付加硬化型シリコーン接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、特定量のバナジウム化合物と、アルケニル基含有ポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、白金触媒、ケイ素系接着付与剤とを併用することで、様々な基材に対する接着性を発現し得る、付加型シリコーン接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[5]に関する。
[1](A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、分子中に2個以上有するポリオルガノシロキサン(但し、(D)を除く);
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を、分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン(但し、(D)を除く);
(C)白金系触媒;
(D)脂肪族不飽和炭化水素基、エポキシ基、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、及びケイ素原子に結合した水素原子から選ばれる接着性付与官能基を2個以上有する、ケイ素系接着性付与剤(但し、ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に2個以上有する場合は、エポキシ基、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、及びケイ素原子に結合した水素原子から選択される1種以上の基を有し、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に3個以上有する場合は、エステル結合を有するか、又はエポキシ基、アルコキシ基、及び、脂肪族不飽和基から選択される1種以上の基を有する);並びに
(E)バナジウム含有量が10~50質量%である、バナジウム化合物;
を含み、
(A)成分100質量部に対する(E)成分の含有量が、0.005~10質量部であり、
組成物の全量に対する(C)成分の含有量が触媒量である、
付加硬化型シリコーン接着剤組成物。
[2](E)成分が、バナジウムオキシド化合物及びバナジウムキレート化合物からなる群より選択される、少なくとも1種である、[1]の付加硬化型シリコーン接着剤組成物。
[3](A)成分が、両末端がRSiO1/2単位で封鎖され、中間単位がR SiO2/2単位である直鎖状ポリオルガノシロキサン(ここで、RはR又はRであり、Rは、アルケニル基であり、Rは、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基であり、分子中に2個以上のRを含有する)を含む、[1]又は[2]の付加硬化型シリコーン接着剤組成物。
[4](D)成分が、下記(D1)~(D4):
(D1)ケイ素原子に結合した水素原子と、ケイ素原子に結合した下記式(I):
【化1】

で示される側鎖及びエポキシ基含有基からなる群より選択される1種以上とを有する有機ケイ素化合物、
(D2)Si(OR基と、エポキシ基含有基及び脂肪族不飽和炭化水素基からなる群より選択される1種以上とを有する有機ケイ素化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物
(D3)Si(OR基を2個以上有する有機ケイ素化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物(但し、(D1)、(D2)及び(D4)を除く)、並びに
(D4)(R4-pSi(ORで示されるアルコキシシラン化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物
(上記各式中、Qは、ケイ素原子とエステル結合の間に2個以上の炭素原子を有する炭素鎖を形成する、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し;Qは、酸素原子と側鎖のケイ素原子の間に3個以上の炭素原子を有する炭素鎖を形成する、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し;Rは、炭素数1~4のアルキル基又は2-メトキシエチル基を表し;Rは、炭素数1~3のアルキル基を表し;nは、1~3の整数であり;pは、2~4の整数である)
からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかの付加硬化型シリコーン接着剤組成物。
[5]更に、(F1)無機フィラー又は(F1)無機フィラーと(F2)表面処理剤との組合せを含む、[1]~[4]のいずれかの付加硬化型シリコーン接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、低温かつ短時間の硬化条件で硬化するとともに、様々な基材に対する接着性に優れる、付加硬化型シリコーン接着剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[用語の定義]
シロキサン化合物の構造単位を、以下のような略号によって記載することがある(以下、これらの構造単位をそれぞれ「M単位」「D単位」等ということがある)。
:Si(CH1/2
:SiH(CH1/2
Vi:(CH=CH)(CHSiO1/2
:Si(CH2/2
:SiH(CH)O2/2
Vi:Si(CH=CH)(CH)O2/2
Ph2:Si(C2/2
:Si(CH)O3/2
:SiO4/2(四官能性)
【0011】
本明細書において、「低温かつ短時間の硬化条件」とは、50℃から100℃の温度、かつ30分の時間の硬化条件をいう。
【0012】
本明細書において、基の具体例は以下のとおりである。
1価の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルケニル基が挙げられる。脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基としては、アルケニル基以外の前記1価の炭化水素基が挙げられる。
アルケニル基は、炭素原子数2~6の直鎖又は分岐状の基であり、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基及び5-ヘキセニル基等が挙げられる。
アルキル基は、炭素原子数1~18の直鎖又は分岐状の基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基及びオクタデシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基は、炭素原子数3~20の単環又は多環の基であり、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
アリール基は、炭素原子数6~20の単環又は多環の基を含む芳香族基であり、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基は、アリール基で置換されたアルキル基であり、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等が挙げられる。
アルキレン基は、炭素原子数1~18の直鎖又は分岐状の基であり、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、2-メチルエチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルキレン基は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン;シアノ基等で置換されていてもよい。ハロゲンで置換された基としては、クロロメチル基、クロロフェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられ、シアノ基で置換された基としては2-シアノエチル基等が挙げられる。
【0013】
本明細書において、「(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、分子中に2個以上有するポリオルガノシロキサン」を「(A)成分」ともいう。「(C)白金系触媒」等についても同様である。
【0014】
[付加硬化型シリコーン接着剤組成物]
付加硬化型シリコーン接着剤組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、分子中に2個以上有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン(但し、(D)を除く);
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を、分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン(但し、(D)を除く);
(C)白金系触媒;
(D)脂肪族不飽和炭化水素基、エポキシ基、ケイ素原子に結合したアルコキシ基及びケイ素原子に結合した水素原子から選ばれる接着性付与官能基を2個以上有する、ケイ素系接着性付与剤(但し、ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に2個以上有する場合は、エポキシ基、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、及びケイ素原子に結合した水素原子から選択される1種以上の基を有し、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に3個以上有する場合は、エステル結合を有するか、又はエポキシ基、アルコキシ基、及び、脂肪族不飽和基から選択される1種以上の基を有する);並びに
(E)バナジウム含有量が10~50質量%である、バナジウム化合物;
を含み、
(A)成分100質量部に対する(E)成分の含有量が、0.005~10質量部であり、組成物の全量に対する(C)成分の含有量が触媒量である。
【0015】
組成物は、少なくとも低温かつ短時間の硬化条件で、様々な基材、特に金属(アルミニウム、アルミダイキャスト等)、及びエンジニアリングプラスチック(ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等)に対する優れた接着性を達成できる。組成物は、50℃から100℃の温度、かつ15分から30分の時間の硬化条件においても、様々な基材に対する優れた接着性を達成できることが好ましい。また、組成物は、室温(23℃)、かつ24時間以内の硬化時間においても、様々な基材に対する優れた接着性を達成できることが好ましい。また、組成物は、金属とエンジニアリングプラスチックとの接着のような、異種材料の接着性に優れる。更に、組成物は、100℃で30分の硬化時間で、様々な基材(特に、アルミニウムのダイキャスト、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂))に対する優れた接着性を達成できる。
【0016】
<(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、分子中に2個以上有するポリオルガノシロキサン>
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を、分子中に2個以上有するポリオルガノシロキサン(以下、「(A)アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン」ともいう。)は、組成物において、ベースポリマーとなる成分である。(A)成分のアルケニル基と(B)成分のヒドロシリル基(Si-H基)との付加反応により、組成物の硬化物において、網状構造が形成される。(A)成分は、(B)成分と一緒に、前記網状構造を形成することができるものであれば、特に限定されない。(A)成分は、代表的には、一般式(I):
(R(RSiO(4-a-b)/2 (I)
(式中、
は、アルケニル基であり;
は、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基であり;
aは、1~3の整数であり;
bは、0~2の整数であり、ただし、a+bは1~3である)
で示されるアルケニル基含有シロキサン単位を、分子中に2個以上有する。(A)におけるケイ素原子に結合したアルケニル基の数は、分子中に、2~100個であることが好ましく、2~50個であることがより好ましい。
【0017】
は、合成が容易であり、また硬化前の組成物の流動性や、硬化後の組成物の耐熱性を損ねないという点から、ビニル基であることが好ましい。aは、合成が容易である点から、1であることが好ましい。Rは、合成が容易であって、機械的強度及び硬化前の流動性などの特性のバランスが優れているという点から、メチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、硬化前のシリコーン接着剤組成物を基材に塗布する際に、流動性・チクソ性を制御できる観点から、メチル基のみを有するポリオルガノシロキサンとフェニル基及びメチル基を有するポリシロキサンを併用することができる。
【0018】
(A)成分中の他のシロキサン単位のケイ素原子に結合した有機基としては、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基が挙げられる。前記有機基は、Rと同様の理由から、メチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0019】
は、(A)成分の分子鎖の末端又は途中のいずれに存在してもよく、その両方に存在してもよい。
【0020】
(A)成分のシロキサン骨格は、直鎖状又は分岐状であることができる。即ち、(A)成分は、(A1)直鎖状のポリオルガノシロキサン又は(A2)分岐状のポリオルガノシロキサンであることができる。
【0021】
(A1)直鎖状のポリオルガノシロキサンとしては、両末端がRSiO1/2単位で封鎖され、中間単位がR SiO2/2単位である直鎖状ポリオルガノシロキサン(ここで、RはR又はRであり、Rは、アルケニル基であり、Rは、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基であり、分子中に2個以上のRを含有する)が挙げられる。(A1)成分におけるRSiO1/2単位は、R SiO1/2単位、R SiO1/2単位又はR SiO1/2単位であることが好ましく、R SiO1/2単位であることが特に好ましい。
【0022】
(A2)分岐状のポリオルガノシロキサンとしては、必須の単位としてSiO4/2単位とRSiO1/2単位を含み、並びに任意の単位としてRSiO2/2単位及び/又はRSiO3/2単位を含む、分岐状のポリオルガノシロキサンが挙げられる。ここで、RはR又はRであるが、R中、1分子あたり2個以上がRである。硬化反応において架橋点となるように、R中、1分子あたり少なくとも3個のRがRであり、残余がRであることが好ましい。組成物の硬化物が、優れた機械的強度を有する観点から、RSiO1/2単位とSiO4/2単位の比率は、モル比として、1:0.8~1:3の範囲の、常温で固体ないし粘稠な半固体の樹脂状のものが好ましい。
【0023】
(A2)成分において、Rは、RSiO1/2単位のRとして存在してもよく、RSiO単位又はRSiO3/2単位のRとして存在してもよい。室温で速い硬化が得られる観点から、RSiO1/2単位の一部又は全部が、R SiO1/2単位であることが好ましい。
【0024】
(A)成分の粘度は、23℃において、0.1~500Pa・sであることが好ましく、0.5~300Pa・sであることがより好ましく、1.0~200Pa・sであることが特に好ましい。(A)成分の粘度が前記の範囲であると、効率的に様々な基材に対する接着性をより高めることができ、未硬化状態の組成物が、良好な流動性を示して、注型やポッティングの際に優れた作業性を示し、硬化後の組成物が、優れた機械的強度、及び適度の弾性と硬さを示す。また、室温でも接着性をより高める点から、(A)成分の粘度は高いことが好ましい。ここで、(A)成分が、2種以上の組合せである場合、(A)成分の粘度とは、混合されたアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンの粘度を意味する。本明細書において、粘度は、JIS K 6249に準拠して、回転粘度計を用いて、スピンドル番号及び回転数を適宜設定し、23℃の条件で測定した値である。
【0025】
(A)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。例えば、(A)成分は、2種以上の(A1)直鎖状のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンであってもよく、1種以上の(A1)直鎖状のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンと1種以上の(A2)分岐状のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとの混合物であってもよい。
【0026】
(A)成分としては、2種以上の(A1’)両末端がR SiO1/2単位で封鎖され、中間単位がR SiO2/2単位であり、23℃における粘度が、0.1~500Pa・sである直鎖状ポリオルガノシロキサンの組合せ(上記各式中、Rは、R又はRであり、Rは、アルケニル基であり、Rは、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基であり、分子中に2個以上のRを含有する)であることが好ましい。また、(A)成分としては、両末端がMvi単位(ジメチルビニルシロキサン単位)で閉塞され、中間単位がD単位(ジメチルシロキサン単位)のみからなる直鎖状のポリオルガノシロキサン、及び、両末端がMvi単位(ジメチルビニルシロキサン単位)で閉塞され、中間単位がD単位(ジメチルシロキサン単位)及びDPh2単位(ジフェニルシロキサン単位)のみからなる直鎖状のポリオルガノシロキサンの組み合わせであることが特に好ましい。
【0027】
(A)成分は、(D)成分に該当する成分ではない。具体的には、(A)成分は、ケイ素に結合するアルケニル基以外の接着付与性官能基を有さないことが好ましい。また、(A)成分は、エポキシ基、ケイ素に結合するアルコキシ基、及び、ケイ素に結合する水素原子から選択される1種以上の基を有さないことが特に好ましい。
【0028】
<(B)ケイ素原子に結合した水素原子を、分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン>
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を、分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン(但し、(D)を除く)(以下、「(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン」ともいう。)は、(A)成分の架橋剤として機能するものである。(B)成分は、(A)成分と一緒に、前記した網状構造を形成することができるものであれば、特に限定されない。
【0029】
(B)成分は、代表的には、一般式(II):
(RSiO(4-c-d)/2 (II)
(式中、
は、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基を表し;
cは、0~2の整数であり;
dは、1~3の整数であり、ただし、c+dは1~3の整数である)
で示される単位を分子中に3個以上有する。
【0030】
は、合成が容易である点から、メチル基であることが好ましい。また、dは、合成が容易である点から、1であることが好ましい。
【0031】
合成が容易である点から、(B)成分は、3個以上のシロキサン単位を有することが好ましい。また、硬化温度に加熱しても揮発せず、かつ流動性に優れて(A)成分と混合しやすい点から、(B)成分のシロキサン単位の数は、6~200個であることが好ましく、10~150個であることが特に好ましい。
【0032】
(B)成分におけるシロキサン骨格は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。
【0033】
(B)成分は、(B1)両末端が、それぞれ独立して、R SiO1/2単位で閉塞され、中間単位がR SiO2/2単位のみからなる、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び、(B2)R SiO1/2単位とSiO4/2単位のみからなる、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(上記各式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基であるが、ただし、Rのうち、少なくとも3つは水素原子である)であることが好ましい。(B1)成分及び(B2)成分の場合において、R SiO1/2単位としては、HR SiO1/2単位及びR SiO1/2単位が挙げられ、R SiO2/2単位としては、HRSiO2/2単位及びR SiO2/2単位(上記各式中、Rは、脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基である)が挙げられる。(B1)成分の場合において、ケイ素原子に結合する水素原子は、末端に存在していても、中間単位に存在していてもよいが、中間単位に存在することが好ましい。
【0034】
(B)成分としては、(B1-1)両末端がM単位(トリメチルシロキサン単位)で閉塞され、中間単位がD単位(メチルハイドロジェンシロキサン単位)のみからなる直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン、(B1-2)両末端がM単位(トリメチルシロキサン単位)で閉塞され、中間単位がD単位(ジメチルシロキサン単位)及びD単位(メチルハイドロジェンシロキサン単位)のみからなり、ジメチルシロキサン単位1モルに対して、メチルハイドロジェンシロキサン単位が0.1~2.0モルである直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン、並びに、(B2-1)M単位(ジメチルハイドロジェンシロキサン単位)及びQ単位(SiO2/2単位)のみからなるポリメチルハイドロジェンシロキサンが特に好ましい。
(B)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0035】
(B)成分は、(D)成分に該当する成分ではない。具体的には、(B)成分は、エステル結合を有さないか、又は、ケイ素に結合する水素原子以外の接着付与性官能基を有さないことが好ましい。また、(B)成分は、エステル結合を有さないか、又は、エポキシ基、アルコキシ基、及び、脂肪族不飽和基から選択される1種以上の基を有さないことが好ましい。
【0036】
<(C)白金系触媒>
(C)白金系触媒は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のヒドロシリル基との間の付加反応を促進させ、また同様の付加反応によって、架橋重合体のシロキサン網状構造に、ケイ素に結合する水素原子を有する(D)成分を導入するための触媒である。
【0037】
(C)成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールの反応生成物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体、白金-ケトン錯体、白金-ホスフィン錯体のような白金化合物等が挙げられる。これらのうち、触媒活性が良好な点から、白金-ビニルシロキサン錯体が好ましく、室温において短時間に硬化して接着性を発現することから、カールステッド錯体、白金-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン錯体(白金-メチルビニルシロキサンダイマー錯体)、又はアシュリー錯体、白金-2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(白金-メチルビニルシロキサンテトラマー錯体)が特に好ましい。
(C)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0038】
<(D)ケイ素系接着性付与剤>
(D)ケイ素系接着性付与剤(以下、「接着性付与剤」ともいう。)は、脂肪族不飽和炭化水素基、エポキシ基、ケイ素原子に結合したアルコキシ基及びケイ素原子に結合した水素原子から選ばれる接着性付与官能基を2個以上有するが、但し、ケイ素原子に結合したアルケニル基を分子中に2個以上有する場合は、エポキシ基、ケイ素原子に結合したアルコキシ基、及びケイ素原子に結合した水素原子から選択される1種以上の基を有し、ケイ素原子に結合した水素原子を分子中に3個以上有する場合は、エステル結合を有するか、又はエポキシ基、アルコキシ基、及び、脂肪族不飽和基から選択される1種以上の基を有する。
【0039】
ケイ素原子に結合した水素原子は、組成物の硬化のための付加反応の際に、(A)成分と付加反応する基である。この反応によって、架橋したシロキサン構造に接着性付与剤を導入できる。
一つのケイ素原子に結合した水素原子の数は、1~3個であることができる。合成が容易である点から、一つのケイ素原子に結合する水素原子の数は、1~2個であることが好ましく、1個であることが特に好ましい。また、(D)成分がケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する場合、別個のケイ素原子に結合していることが特に好ましい。
【0040】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基は、(D)成分中のケイ素原子に結合したアルコキシ基同士の加水分解・縮合反応に寄与する基である。この反応によって、架橋したシロキサン構造に接着付与剤を導入できる。
アルコキシ基は、良好な接着性を与える点から、メトキシ基及びエトキシ基であることが好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
一つのケイ素原子に結合するアルコキシ基の数は、1~3個であることができる。一つのケイ素原子に結合したアルコキシ基の数は、2~3個であることが特に好ましい。また、(D)成分がケイ素原子に結合したアルコキシ基を有する場合、(D)成分は、1個以上のモノオルガノジアルコキシシリル基又はトリアルコキシ基を有することが好ましく、2個以上のモノオルガノジアルコキシシリル基又はトリアルコキシ基を有することが特に好ましい。
【0041】
エポキシ基は、接着性をより発現する基である。合成が容易で、加水分解性がなく、優れた接着性を示す点から、エポキシ基含有基は、3-グリシドキシプロピル基のような、エーテル酸素原子を含む脂肪族エポキシ基含有基;及び、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基のような、脂環式エポキシ基含有基等が好ましい。
【0042】
脂肪族不飽和炭化水素基は、組成物の硬化のための付加反応の際に、(B)成分と付加反応する基である。この反応によって、架橋したシロキサン構造に接着性付与剤を導入できる。脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル、アリル、3-ブテニル等のアルケニル基が挙げられ、合成及び取扱いが容易なことから、ビニル基であることが好ましい。
【0043】
脂肪族不飽和炭化水素基は、ケイ素原子に直接結合していてもよく、不飽和炭化水素基含有基としてケイ素原子に結合していてもよい。不飽和炭化水素基含有基としては、3-アクリロキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基のように、不飽和アシロキシ基で置換された炭素原子3個以上の基が挙げられる。不飽和炭化水素基含有基、合成及び取扱いが容易なことから、3-メタクリロキシプロピル基等であることが好ましい。
【0044】
(D)成分は、同種の接着性付与官能基を2個以上有してもよく、異なる種類の接着性付与官能基を2個以上有してもよい。例えば、(D)成分は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を2種有していてもよく、(D)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を1種と、エポキシ基を1種とを有してもよい。
【0045】
(D)成分が、エポキシ基含有基と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基(例えば、後述するOR基)とを有する場合、これらは同一のケイ素原子に結合していてもよく、別のケイ素原子に結合していてもよい。
【0046】
このような(D)成分として、下記(D1)成分~(D4)成分からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(D1)ケイ素原子に結合した水素原子と、ケイ素原子に結合した下記式(I):
【化2】

で示される側鎖及びエポキシ基含有基からなる群より選択される1種以上とを有する有機ケイ素化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物
(D2)Si(OR基と、エポキシ基含有基及び脂肪族不飽和炭化水素基からなる群より選択される1種以上とを有する有機ケイ素化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物
(D3)Si(OR基を2個以上有する有機ケイ素化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物(但し、(D1)、(D2)及び(D4)を除く)、並びに
(D4)(R4-pSi(ORで示されるアルコキシシラン化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物
(上記各式中、Q、Q、R、R、n及びpは、前記のとおりである。)
【0047】
(D)成分がSi(OR基を有する場合は、(D)成分は、複数のSi(OR基が縮合することにより、部分加水分解縮合物となる場合がある。
(D)成分は、組成物に様々な基材に対する接着性を付与する成分である。また、組成物が(D)成分を含むことにより、様々な基材に対する室温における接着性が付与される。(D1)成分、(D2)成分、(D3)成分及び(D4)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0048】
<<(D1)成分>>
(D1)成分は、組成物の硬化のための付加反応の際に、(A)成分との付加反応によって、架橋したシロキサン構造に導入され、式(I)で示される側鎖が接着性を発現する部分として、組成物の室温における接着性の向上に寄与する成分である。また、(D1)成分が、式(I)で示される側鎖を有する場合、当該側鎖に存在するアルコキシ基は、(D2)成分、(D3)成分及び/又は(D4)成分のアルコキシ基との共加水分解・縮合反応により、(D2)成分、(D3)成分及び/又は(D4)成分をシロキサン骨格に導入するにも寄与する。
【0049】
は、合成及び取扱いが容易である点から、エチレン基及び2-メチルエチレン基が好ましい。Qは、合成及び取扱いが容易なことから、トリメチレン基であることが好ましい。Rは、良好な接着性を与え、かつ加水分解によって生じるアルコールが揮発しやすい点から、メチル基及びエチル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0050】
(D1)成分において、ケイ素原子に結合した水素原子と式(I)で示される側鎖とは、合成が容易である点から、別個のケイ素原子に結合していることが好ましい。したがって、(D1)成分の骨格は、鎖状、分岐状又は環状シロキサン骨格を形成していることが好ましく、特定の化合物を制御よく合成し、精製しうる点から、環状シロキサン骨格であることが特に好ましい。(D1)成分に含まれるSi-H結合の数は、1個以上の任意の数である。(D1)成分が環状骨格を有するシロキサン化合物である場合、(D1)成分に含まれるSi-H結合の数は、2個又は3個であることが好ましい。
【0051】
(D1)成分としては、下記の化合物が挙げられる。
【0052】
【化3】
【0053】
<<(D2)成分>>
(D2)成分は、組成物の室温における接着性、特にプラスチックに対する接着性の向上に寄与する成分である。(D2)成分中のケイ素原子に結合したアルコキシ基は、(D1)成分、(D3)成分及び/又は(D4)成分のケイ素原子に結合したアルコキシ基との加水分解・縮合反応によって、架橋したシロキサン構造に導入される。また、(D2)成分中のエポキシ基が接着性を発現する。
【0054】
、n及びエポキシ基含有基は、(D1)成分で述べたとおりである。脂肪族不飽和炭化水素基は、(D)成分で述べたとおりである。OR基とエポキシ基含有基とは、同一のケイ素原子に結合していてもよく、別のケイ素原子に結合していてもよい。
【0055】
(D2)成分としては、Si(OR基とエポキシ基含有基とを有する有機ケイ素化合物及びSi(OR基と脂肪族不飽和炭化水素基とを有する有機ケイ素化合物、Si(OR基とエポキシ基含有基と脂肪族不飽和炭化水素基とを有する有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0056】
Si(OR基とエポキシ基含有基とを有する有機ケイ素化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシランのような3-グリシドキシプロピル基含有アルコキシシラン類;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランのような2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基含有アルコキシシラン類;nが2以上のこれらシラン類の部分加水分解縮合物などが挙げられる。
【0057】
Si(OR基と脂肪族不飽和炭化水素基とを有する有機ケイ素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、メチルビニルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メチルアリルジメトキシシランのようなアルケニルアルコキシシラン類及び/又はその部分加水分解縮合物;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシランのような(メタ)アクリロキシプロピル(メチル)ジ-及び(メタ)アクリロキシプロピルトリ-アルコキシシラン類及び/又はその部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【0058】
Si(OR基とエポキシ基含有基と脂肪族不飽和炭化水素基とを有する有機ケイ素化合物としては、鎖状又は環状メチルシロキサンのメチル基の一部が、トリメトキシシロキシ基又は2-(トリメトキシシリル)エチル基と、上記のエポキシ基含有基とで置き換えられた炭素/ケイ素両官能性シロキサンなどが挙げられる。
【0059】
<<(D3)成分>>
(D3)成分は、Si(OR基を2個以上の有する有機ケイ素化合物である。(D3)成分は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基と、(D1)成分、(D2)成分及び/又は(D4)成分分子のケイ素原子に結合したアルコキシ基との加水分解・縮合反応に寄与する基である。この反応よって、架橋したシロキサン構造に(D3)成分を導入される。そして、残存するアルコキシ基が、接着性を発現する部分として、組成物の室温における接着性、特に金属に対する接着性の向上に寄与する成分である。
【0060】
及びnは、(D1)成分で述べたとおりである。
【0061】
(D3)成分としては、下記の化合物が挙げられる。
【化4】

【化5】
【0062】
<<(D4)成分>>
(D4)成分は、組成物の室温における金属への接着性を、さらに向上させる成分である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基のような、直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、プロピル基であることが好ましい。また、加水分解性に優れる、毒性が低くなる点から、(D4)成分は、テトラアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物であることが好ましい。
【0063】
<<好ましい態様>>
(D)成分は、(D1)成分、(D2)成分及び(D4)成分の組合せを含むことが好ましい。
【0064】
<(E)バナジウム含有量が10~50質量%である、バナジウム化合物>
(E)バナジウム含有量が10~50質量%であるバナジウム化合物(以下、「(E)バナジウム化合物」ともいう。)は、接着性を高める成分である。組成物が(A)成分~(D)成分に加えて、(E)成分を含むことで、組成物中に含有される(D)成分(接着向上剤)の加水分解速度を速めることができ、低温かつ短時間の硬化条件で接着発現をし得る。これにより、組成物は、アルミニウム、アルミダイキャスト等の金属、及びPPS、PBT、PET等のエンジニアリングプラスチックの両者へ十分な接着性を発現し得る。
【0065】
(E)バナジウム化合物は、バナジウム含有量が10~50質量%である。(E)バナジウム化合物において、バナジウム含有量が10質量%未満であると加水分解性が遅いために、接着特性に効果を示さなくなる傾向があり、50質量%を超えると加水分解が速すぎるために、熱安定性及び保管安定性が悪くなる傾向がある。(E)バナジウム化合物に含まれるバナジウムの価数は、特に限定されず、2価、3価、4価、5価等が挙げられる。(E)バナジウム化合物に含まれるバナジウムの価数は、3価、4価及び5価であることが好ましい。
【0066】
(E)バナジウム化合物は、1つ又は2つのオキソ配位子(=O)を有するバナジウム化合物であることが好ましい。オキソ配位子を有するバナジウム化合物は、V=O部分を有する。また、(E)バナジウム化合物は、オキソ配位子(=O)を1つ以上と、ヒドロキシ基、アルコキシ基、トリオルガノシロキシ基及びキレート配位子(例えば、-OCR=CR-COR基)からなる群より選択される少なくとも1つの配位子とを有するバナジウム化合物であることがより好ましい。
【0067】
キレート配位子を形成し得るキレート試薬の具体例としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸t-ブチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸(2-メタクリロキシエチル)、3-オキソ-4,4-ジメチルヘキサン酸メチル、3-オキソ-4,4,4-トリフルオロブタン酸エチルなどのβ-ケトエステル;アセチルアセトン、2,2,4,4-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオンなどのβ-ジケトン;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどのβ-ジエステル;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、スチレングリコール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、ピナコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,12-ドデカンジオール、ジエチレングリコール、グリセロール、カテコール等の2価または多価アルコール類;等があげられる。前記キレート配位子の中でも、入手が容易である観点と、バナジウムキレート化合物の安定性が良好である観点から、β-ジケトン又はβ-ケトエステルが好ましく、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルが特に好ましい。キレート配位子が2個以上存在する場合、キレート配位子は1種又は2種の組み合わせであってもよい。
【0068】
(E)成分は、バナジウムアルコキシド化合物及びバナジウムキレート化合物からなる群より選択される1種以上であることが更に好ましい。ここで、バナジウムアルコキシド化合物は、オキソ配位子(=O)を1つと、アルコキシ基を3つと有するトリアルコキシオキソバナジウム化合物であることが好ましい。バナジウムキレート化合物は、キレート配位子を有するバナジウム化合物であり、オキソ配位子(=O)を1つと、キレート配位子を2つとを有するバナジウムキレート化合物であることが好ましい。
【0069】
(E)成分の具体例としては、トリエトキシオキソバナジウム、トリプロポキシオキソバナジウム、トリイソプロポキシオキソバナジウム、トリブトキシオキソバナジウム、トリイソブトキシオキソバナジウム、トリフェノキシオキソバナジウム、オルトバナジン酸トリ(シクロヘキシル)等のトリアルコキシオキソバナジウム化合物;バナジン酸トリス(トリメチルシリル)等のバナジン酸トリス(トリオルガノシリル)化合物;オキソビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム、オキソビス(エチルアセトアセテート)バナジウム、ビス(マルトラト)オキソバナジウム、ビス(エチルマルトラト)オキソバナジウム等のバナジウムキレート化合物が挙げられる。(E)成分は、トリエトキシオキソバナジウム、トリプロポキシオキソバナジウム、トリイソプロポキシオキソバナジウム、トリブトキシオキソバナジウム、トリイソブトキシオキソバナジウム、オキソビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム、オキソビス(エチルアセトアセテート)バナジウムであることが特に好ましい。
(E)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0070】
<(F)更なる成分>
組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(F)更なる成分を含むことができる。このような成分として、(F1)無機フィラー、(F2)表面処理剤、(F3)水、(F4)各種の添加剤等が挙げられる。(F)更なる成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0071】
<<(F1)無機フィラー>>
組成物が(F1)無機フィラーを含むことで、組成物の硬化物に、高い機械的強度が付与される。(F1)無機フィラーとしては、煙霧質シリカ、焼成シリカ、シリカエアロゲル、沈殿シリカ、及び煙霧質酸化チタンのような補強性フィラー;並びにけいそう土、粉砕シリカ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、タルク、及び酸化第二鉄のような非補強性フィラーが挙げられ、押出し作業性と、組成物の硬化物に要求される物性に応じて選択される。(F1)無機フィラーは、表面処理剤で予め処理されていてもよい。このような表面処理剤としては、後述する(F2)表面処理剤が挙げられる。(F1)無機フィラーとしては、補強性フィラーが好ましく、煙霧質シリカ、焼成シリカ、シリカエアロゲル及び沈殿シリカ等のシリカがより好ましく、煙霧質シリカが特に好ましい。(F1)無機フィラーは、後述する無機顔料の機能を有するものであってもよい。このような無機顔料の機能を有する無機フィラーとしては、酸化チタン等が挙げられる。
【0072】
(F1)無機フィラーのBET比表面積は、50~500m/gであることが好ましく、80~400m/gであることがより好ましく、100~300m/gであることが特に好ましい。
【0073】
<<(F2)表面処理剤>>
(F2)表面処理剤は、(F1)無機フィラーの表面処理剤として機能する。よって、組成物が(F2)表面処理剤を含む場合、組成物は(F1)無機フィラーと(F2)表面処理剤との組合せを含むことが好ましい。組成物が(F1)無機フィラーと(F2)表面処理剤との組合せを含む場合、(F1)無機フィラーは、組成物中で(F2)表面処理剤によって表面処理される。(F2)としては、オルガノシラザン、オルガノアルコキシシラン、オルガノハロシラン、シロキサンオリゴマー類が挙げられる。
【0074】
オルガノシラザンは、シラザン結合(Si-N)を有するオルガノシラザン化合物であれば特に限定されず、ヘキサメチルジシラザン等のアルキルシラザン;1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン等のアルケニル基含有アルキルシラザン;及び、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン等のケイ素原子に直接結合した水素原子を持つアルキルシラザン等が挙げられる。
オルガノアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
オルガノハロシランとしては、トリメチルクロロシラン等が挙げられる。
シロキサンオリゴマー類としては、α,ω-シラノール基含有ジメチルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基含有メチルフェニルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基含有メチルビニルシロキサンオリゴマー等のシロキサンオリゴマー等が挙げられる。
【0075】
(F1)無機フィラーの表面処理によって、(A)~(E)との相溶性が増加し、得られる組成物の接着性及び室温での速硬化性が高まる観点から、(F2)表面処理剤は、ヘキサメチルジシラザン等のアルキルシラザンが好ましい。
【0076】
<<(F3)水>>
(F3)水は、オルガノシラザンを加水分解して、オルガノシラザンが(F1)無機フィラーの表面処理剤としての機能を発揮させる成分である。よって、(F2)表面処理剤がオルガノシラザンである場合、組成物は(F3)水を含むことが好ましい。(F3)水としては、例えば、市水、上水、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられる。
【0077】
<<(F4)各種の添加剤>>
組成物は、目的に応じて、更に、反応抑制剤、有機溶媒、無機顔料、有機顔料、チクソトロピー性付与剤、押出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線防止剤、防かび剤、耐熱性向上剤、難燃化剤等の(F4)各種の添加剤を含むことができる。(F4)各種の添加剤は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。なお、用途によっては、組成物を、トルエン、キシレンのような有機溶媒に溶解ないし分散させてもよい。
【0078】
<<反応抑制剤>>
反応抑制剤としては、マレイン酸ジアリル等の分子中に極性基を有する有機化合物;アセチレンアルコール類やその誘導体等の不飽和結合を有する有機化合物;等が挙げられる。反応抑制剤は、組成物の硬化反応速度を抑制して、取扱いの作業性、及び接着性の発現と硬化速度とのバランスの向上にも寄与する。
【0079】
<<他の接着性付与剤>>
組成物は、(C)の触媒能を阻害しない範囲で、さらに他の接着性付与剤(但し、他の接着性付与剤は、(D)接着性付与剤を含まない。以下同じ。)を含むことができる。組成物が、更に、他の接着性付与剤を含むことで、接着強さをより高めることができる。
【0080】
他の接着性付与剤としては、金属アルコキシド類(但し、バナジウムアルコキシド化合物を含まない)及び金属キレート類(但し、バナジウムキレート化合物を含まない)等が挙げられる。
【0081】
金属アルコキシド類としては、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリプロポキシド、アルミニウムトリブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド;チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトライソプロペニルオキシドのようなチタンアルコキシド;n-プロピルジルコネート、n-ブチルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド等が挙げられる。
【0082】
金属キレート類としては、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、ジブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等のジルコニウムキレート、アルミニウムキレート、チタンキレートが挙げられる。なお、ジルコニウムキレートは、分子中に1つ以上のキレート配位子(例えば、C、C等)を有する限り、アルコキシ基を有していてもよい。
【0083】
[含有量]
組成物中の各成分の含有量は以下のとおりである。
(A)成分の含有量は、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の合計100質量部に対し、10~5,000質量部であることが好ましく、50~4,000質量部であることがより好ましく、100~3,000質量部であることが特に好ましい。このような範囲であると、室温において接着性を効率的に高めることができる。また、組成物中の(A)成分の含有率は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
【0084】
(B)成分の含有量は、(A)成分のアルケニル基の個数Viに対する、(B)成分のケイ素原子に結合した水素原子の個数Hの比(H/Vi)が、0.1以上3.5未満であるような量が好ましく、0.2~2.5であるような量がより好ましく、0.3~2.0であるような量が特に好ましい。組成物におけるH/Viが、0.1以上であると、硬化物の機械的強度が優れ、3.5未満であると、組成物の各種部材に対する接着性が向上する。
【0085】
(C)成分の含有量は、組成物の全量に対して、触媒量である。具体的には、(C)成分の含有量は、組成物の合計100重量部に対して、白金金属原子換算で0.1~1,000重量ppmであることが好ましく、0.5~200重量ppmであることが特に好ましい。(C)成分の含有量が前記範囲であると、室温での速硬化性が十分である。
【0086】
組成物が、(D1)成分、(D2)成分及び/又は(D3)成分を含む場合、(D1)成分、(D2)成分及び/又は(D3)成分の合計量は、(A)成分の100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、0.5~10質量部であることが特に好ましい。この範囲にあると、室温における接着性が充分であり、かつ、硬化後の組成物の機械的強度や柔軟性が向上する。また、組成物が、(D4)成分を含む場合、(D4)成分の含有量は、室温における金属への優れた接着性を付与することから、(A)成分の100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。なお、良好な接着性を得るために、(D)成分中、重量比で(D1)成分~(D4)成分の一方が他方の0.05~20倍の範囲であることが好ましい。また、(D)成分が(D1)成分~(D4)成分からなる群より選択される3種又は4種の混合物である場合、それぞれが(D)成分の5質量%以上配合されていることが好ましい。
【0087】
(E)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、0.005~10質量部である。(E)成分の含有量が、(A)成分の100質量部に対して、0.005未満であると、他の接着性付与剤中に存在するアルコキシ基との反応が少ないため、室温でも速やかに硬化するものの、そのような組成物は様々な基材に対して安定的に優れた接着発現を示さない。また、(E)成分の含有量が、(A)成分の100質量部に対して、10質量部を超えると、他の接着性付与剤中に存在するアルコキシ基との反応点が多くなり、系内で他の接着性付与剤と縮重合してしまう。これにより、(E)成分が基材との接着に寄与しなくなり、そのような組成物は、様々な基材に対する接着性が劣る。(E)成分の含有量は、(A)成分の100質量部に対して、0.07~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることが特に好ましい。このような範囲であれば、効率的に、様々な基材に対する接着性を向上させることができる。
【0088】
(F1)無機フィラーの含有量は、(A)成分の100質量部に対して、0.1~60質量部であることが好ましく、1~45質量部であることが特に好ましい。このような含有量であれば、押出し作業性に優れ、及び、得られる硬化物が機械的強度に優れる。
【0089】
(F2)表面処理剤の含有量は、(F1)無機フィラーの100重量部に対して、0.1~50重量部であることが好ましく、1~30重量部であることが特に好ましい。このような範囲であれば、(F2)表面処理剤による(F1)無機フィラーの表面処理の効果がより高まる。また、(F2)表面処理剤の含有量は、(F1)無機フィラーの比表面積を考慮して決定できる。
【0090】
組成物が(F2)表面処理剤としてオルガノシラザンを含む場合、(F3)水の含有量は、オルガノシラザン100質量部に対して、5.0~100質量部であることが好ましく、10.0~60.0質量部であることが特に好ましい。(F3)水の含有量が、オルガノシラザン100質量部に対して、5.0質量部以上である場合は、オルガノシラザンを十分に加水分解反応させることができ、(F1)無機フィラーの表面処理の効果に優れ、100質量部以下である場合、添加した量に対する、表面処理の効果が効率的である。
【0091】
(F1)成分~(F3)成分以外の(F)更なる成分の含有量は、組成物の使用目的を損なわないかぎり特に限定されない。
【0092】
(組成物の製造方法)
組成物は、必須成分である(A)成分~(E)成分及び任意成分である(F)他の成分を、万能混練機、ニーダーなどの混合手段によって均一に混練して製造することができる。また、組成物が(F1)無機フィラー及び(F2)表面処理剤としてのオルガノシラザンを含む場合、オルガノシラザンによる(F1)無機フィラーの表面処理の効率がより高まるため、組成物の製造方法は、(A)成分に、(F2)表面処理剤としてのオルガノシラザン及び(F3)水を加えて混合した後に、(F1)無機フィラーを加えて混合する工程を含むことが好ましい。この場合、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の添加順番は、任意であるが、前記(F1)を加えて混合する工程の後に、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を加えて混合することが好ましい。
【0093】
(組成物の好ましい態様)
安定に長期間貯蔵するために、(B)成分及び(D)成分に対して、(C)成分及び(E)成分が別の容器になるように、適宜、2個の容器に配分して保存しておき、使用直前に混合して使用に供してもよい。この場合の組成物は、第1部分及び第2部分からなる組成物であって、組成物は(A)成分~(E)成分を含み、第1部分が(C)成分及び(E)成分を含み、第2部分が(B)成分及び(D)成分を含み、(A)成分は、それぞれ独立に、第1部分及び/又は第2部分に含まれる。
【0094】
(接着方法)
組成物は、接着すべき部位に注入、滴下、流延、注型、容器からの押出しなどの方法により、又はトランスファー成形や射出成形による一体成形によって、接着対象物に付着させ、室温(例えば、23℃)で放置して、硬化させることにより、同時に接着対象物に接着させることができる。また、より高温で硬化させた場合であっても、接着性及び柔軟性に優れた組成物の硬化物を得ることができる。また、より高温で硬化させる場合は、室温よりも短時間で硬化させることができ、作業効率の向上を図ることができる。加熱条件は、組成物が適用される部材の耐熱温度に合わせて適宜調整することができ、硬化時間を決めることができる。例えば、室温(23℃)超110℃以下の熱を、1分~2週間、好ましくは5分~72時間の範囲で加えることができる。加熱温度は、操作性の観点から、40~120℃であることが好ましく、50~110℃であることが特に好ましい。加熱時間は、硬化工程の簡便さの観点から、5分~72時間であることが好ましく、5分~24時間であることが特に好ましい。また、室温で硬化させる場合、硬化時間は、1週間以下であることが好ましく、72時間以下であることがより好ましく、生産上の利点から24時間以下が特に好ましい。
【0095】
接着対象物の材質は、特に限定されず、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、鉄、銅等の金属又はそれらの合金(例えば、アルミニウムダイキャスト)、及び、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、ポリカーボネート樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂)、PPS(ポリフェニレンスルフィド樹脂)等のポリマー等が挙げられる。組成物は、アルミニウム、アルミダイキャスト等の金属と、PBT、PPS、PET等のエンジニアリングプラスチックとの組合せのような、異種材料への接着性に優れる。
【0096】
(用途)
組成物は、自動車用及び電気電子用の部品の実装又は封止、半導体又は汎用プラスチックの接着等に用いることができる。具体的には、組成物は、自動車用部品用のシーリング材又はポッティング材等に用いることができる。
【実施例
【0097】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例において、部は質量部を示し、粘度は23℃における粘度を示す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0098】
(使用成分)
実施例及び比較例にて用いた成分は、以下のとおりである。
(A)アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン
(A-1):Mviviで示され、粘度が12Pa・sである、直鎖状の両末端ビニルジメチルポリシロキサン
(A-2):両末端がMvi単位であり、中間単位がD単位及びDPh2単位であり、フェニル基の含有量が5mol%であり、粘度が3Pa・sである、直鎖状のフェニル含有両末端ビニルジメチルポリシロキサン
【0099】
(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
(B-1):両末端がM単位であり、中間単位がD単位及びD単位である、直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン(有効水素量8.61mmol/g、粘度15~50mPa・s)
【0100】
(C)白金触媒
(C-1):アシュリーの触媒(白金-メチルビニルシロキサンテトラマー錯体)白金原子換算1.8質量%
【0101】
(D)接着性付与剤
(D-1):接着プロモータA:式:
【化6】

で示される環状シロキサン
(D-2):接着プロモータB:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(D-3):接着プロモータC:テトラ-n-プロポキシシラン
【0102】
(E)バナジウム化合物
(E-1):VO(OiPr) (日亜化学株式会社製、製品名バナジウムオキシイソプロポシキド)、有効成分99質量%、バナジウム含有量20.4質量%
(E-2):VO(OEt) (日亜化学株式会社製、製品名バナジウムオキシエトキシド)、有効成分98質量%、バナジウム含有量24.7質量%
(E-3):VO(OnPr) (日亜化学株式会社製、製品名バナジウムオキシノルマルプロポキシド)、有効成分97質量%、バナジウム含有量20.3質量%
(E-4):VO(OnBu) (日亜化学株式会社製、製品名バナジウムオキシノルマルブトキシド)、有効成分97質量%、バナジウム含有量17.4質量%
(E-5):VO(OiBu) (日亜化学株式会社製、製品名バナジウムオキシイソブトキシド)、有効成分97質量%、バナジウム含有量17.3質量%
(E-6):バナジルアセチルアセトナート (東京化成工業株式会社製、製品名ビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(IV)オキシド)、有効成分95質量%、バナジウム含有量19.2質量%
(E-6)バナジルアセチルアセトナートは、粉体であるため、トルエンの過飽和液を作製した。表における、(E-6)バナジルアセチルアセトナートの含有量は、前記トルエンの過飽和液の加熱減量値より固形分濃度を算出することにより求めた。
【0103】
(F)その他の成分
(F1)無機フィラー
(F1-1):ヘキサメチルジシラザンで表面処理したシリカ(BET比表面積200m/gの乾式シリカをヘキサメチルジシラザンで表面処理したシリカであり、表面処理後した後の炭素量を測定したところ、炭素量は3.5質量%であった。)
(F1-2):石英粉(クリスタライト VX-S、株式会社龍森製)
(F1-3):二酸化チタン(タイペークA-100、石原産業株式製)
(F1-4):乾式シリカ(アエロジル200、BET比表面積200m/g、日本アエロジル株式会社製)
(F2)表面処理剤
(F2-1):ヘキサメチルジシラザン
(F2-2):ビニルジシラザン
(F3)水
(F3-1):市水
(H)その他の成分
(H-1):ジルコニウム化合物:(n-CO)Zr(C) トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル株式会社製、ZC-540)、有効成分45質量%、金属含有量10.2質量%
【0104】
実施例1
(1)ベースポリマー(1)の調製
表1に示す組成で、(A-1)中の80質量%となる量の(A-1)直鎖状の両末端ビニルジメチルポリシロキサン、(F1-2)石英粉、及び(F1-3)二酸化チタンを万能混練機に移して、室温(23℃)で10分間撹拌した。(F2)表面処理剤、(F3)水、及び(F1-1)ヘキサメチルジシラザンで表面処理したシリカを加えて、室温で60分間撹拌し、150℃で2時間撹拌し、150℃2時間減圧下に撹拌した。50℃以下まで冷却して、30分間撹拌した。(A-1)中の20質量%となる(A-1)直鎖状の両末端ビニルジメチルポリシロキサンを加えて、30分間撹拌した。(A-2)直鎖状のフェニル含有両末端ビニルジメチルポリシロキサンを加え、ベースポリマーの全重量に対して白金量が100ppmとなる量の(C-1)アシュリーの触媒(白金-メチルビニルシロキサンテトラマー錯体)を加えて、30分間減圧下に撹拌した。得られた混合物をろ過(150メッシュ)することにより、ベースポリマー(1)を調製した。
(2)付加硬化型シリコーン接着剤組成物の調製
表2~表4に示す組成で、各成分を混合し、10分間すばやく減圧混練することにより、脱泡を行って、付加硬化型シリコーン接着剤組成物を調製した。なお、組成物におけるH/Viは、2であった。
【0105】
実施例2~8、比較例1~5
実施例1に準じる手順により、付加硬化型シリコーン接着剤組成物を調製した。実施例1を含めて、各実施例及び比較例の配合比を、表2~4に示す。
【0106】
実施例9~10
実施例1に準じる手順により、表5に示す組成にて、ベースポリマー(2)を調製し、表6に示す組成で、付加硬化型シリコーン接着剤組成物を調製した。実施例9~10の配合比を、表6に示す。
【0107】
(評価方法)
<せん断接着強さ>
せん断接着強さの評価には、次のような方法を用いた。シリコーン接着剤組成物を一方の試験片端部に塗布して均一に延ばした後、幅方向に25mm、長さ方向に10mmの接着面になるようにもう一方の試験片端部を貼り合わせて、試験片を得た。治具で固定した状態で硬化条件の温度に調整されたオーブン内に試験片を置いて、硬化条件の時間硬化させた。試験片の温度が室温(23℃)に戻った後、準備した試験片を引張り試験機により引張速度10mm/minにて測定し、「引張せん断接着強さ」(MPa)とした。試験の詳細については、JIS K 6249に従った。
<凝集破壊率>
凝集破壊率は、せん断接着強さ試験において、対面する被着体の界面で剥離せずに、シリコーン層が破壊される割合である。凝集破壊率が100%であることは、接着強度(接着性)が十分に維持されていることを示している。上記の「せん断接着強さ」の記載に従ってせん断接着強さを測定した後、各種被着体に接着したシリコーン層の面積を塗布面積で割った値を凝集破壊率(面積%)とした。試験の詳細については、JIS K 6249に従う。
【0108】
結果を表1~表6にまとめる。表2及び表4の硬化条件は、100℃、30分であり、表3及び表6の硬化条件は、50℃、30分である。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
【表6】
【0115】
表における略語は以下のとおりである。
アルミニウム:A1050P(JIS H 4000):アルミニウム純度が99.5%以上である純アルミニウム
アルミダイキャスト:ADC-12(JIS H 5302:2006):Al-Si-Cu系合金
PPS:ポリフェニレンスルフィド樹脂(東ソー製、サスティール GS-40%)
PBT:ポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリプラスチックス製、ジュラネックス2002)
【0116】
表から明らかなように、実施例のシリコーン接着剤組成物は、100℃又は50℃で30分間の硬化条件で、硬化するとともに、様々な基材に対する優れた接着性を示した。
【0117】
比較例1及び5の組成物は、(E)を含まない。また、比較例2の組成物は、(A)成分100質量部に対する(E)の含有量が10質量部を超える。そのため、比較例1~2及び5の組成物は、様々な基材に対する接着性が劣っていた。
比較例3~4の組成物は、(E)の代わりに、Zr化合物を含む。そのため、比較例3の組成物は、アルミニウムダイキャスト及びアルミニウムに対する接着性が劣っていた。また、比較例4の組成物は、アルミニウムダイキャスト及びPPSに対する接着性が劣っていた。