(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
H01L21/78 S
(21)【出願番号】P 2019231852
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 健太呂
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512875(JP,A)
【文献】特開2017-079291(JP,A)
【文献】特開2019-029543(JP,A)
【文献】特開2017-112158(JP,A)
【文献】特開2019-176002(JP,A)
【文献】特開2017-050536(JP,A)
【文献】特開2019-212764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の表面側に設定された複数の分割予定ラインにより複数の領域に区画された各領域に複数のバンプが設けられた被加工物の加工方法であって、
流動性を有する硬化性樹脂が供給された台の上面側と対面する様に該被加工物の該表面を下向きにして該被加工物を保持する保持工程と、
該被加工物を下方に移動させて、該被加工物の該表面側を該硬化性樹脂に押し当てることにより、該硬化性樹脂が該バンプと該表面との隙間に入り込み且つ該バンプが該硬化性樹脂に埋まる様に、該被加工物の該表面の全体を該硬化性樹脂で被覆する被覆工程と、
該硬化性樹脂を硬化させて樹脂膜を形成する硬化工程と、
該硬化工程の後、該樹脂膜に吸収される波長を有するレーザービームを各分割予定ラインに沿って該樹脂膜に照射して、各分割予定ライン上の該樹脂膜を除去するレーザービーム照射工程と、
該レーザービーム照射工程の後、該被加工物にプラズマ化したガスを供給して、該樹脂膜をマスクとして各分割予定ラインに沿って該被加工物を個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
を備え
、
該レーザービーム照射工程の前に、該樹脂膜の表面をバイト工具で切削して該樹脂膜を薄化する薄化工程を更に備えることを特徴とする被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバンプが設けられた被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、コンピュータ等の電気機器には、一般的にデバイスチップが搭載されている。デバイスチップを製造するためには、例えば、まず、シリコン等の半導体で形成されたウェーハの表面側に複数の分割予定ラインを格子状に設定し、複数の分割予定ラインで区画される各領域にデバイスを形成する。
【0003】
その後、研削装置を用いてウェーハの裏面側を所定の厚さまで研削してウェーハを薄化した後、切削装置を用いて各分割予定ラインに沿ってウェーハを切削する。これにより、ウェーハは分割予定ラインに沿って分割されて、デバイスチップが製造される。
【0004】
切削装置は、一般的に、円柱状のスピンドルと、スピンドルの一端側に連結される駆動モータと、スピンドルの他端側に装着される円環状の切削ブレードとを含む切削ユニットを有する。切削ブレードとしては、例えば、円環状のアルミニウム基台に形成される電着層で砥粒が固定された、ハブタイプの切削ブレードが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、切削ブレードを用いてウェーハを切削すると、ウェーハの表面側にチッピング、クラック等が形成されやすい。チッピング、クラック等が形成されると、デバイスチップの抗折強度が低下するので、デバイスチップの品質が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、ウェーハを切削ブレードで切削することに代えて、ウェーハに対してプラズマエッチングを施すことによりウェーハを個々のデバイスチップに切断するプラズマダイシング法が開発され、実際に使用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
プラズマダイシング法でウェーハを分割するためには、まず、スピンコーターを用いてウェーハの表面側を感光性有機物質で成るレジスト膜で被覆する。スピンコーターは、例えば、ウェーハを吸引保持する保持面を含むチャックテーブルを備える。チャックテーブルの保持面とは反対側には、駆動モータ等の回転駆動源が連結されている。
【0008】
ウェーハの表面側をレジスト膜で被覆するためには、まず、ウェーハの裏面側を保持面で保持する。そして、回転駆動源でチャックテーブルを回転させた状態で、ウェーハの表面側に感光性有機物質、溶媒等を含む液状のレジスト材料を滴下する。レジスト材料は、遠心力によりウェーハの外周方向へ広がり、ウェーハの表面側を被覆する。その後、レジスト材料を乾燥させると溶媒が蒸発し、ウェーハの表面側がレジスト膜で被覆される。
【0009】
次に、露光装置、現像装置等を用いて、分割予定ライン上に位置するレジスト膜を除去することで、レジスト膜をパターン化する。そして、このレジスト膜をマスクとして用いて、ウェーハに対してプラズマエッチングを施す。これにより、ウェーハは個々のデバイスチップに分割される。
【0010】
ところで、従来、デバイスチップを電気機器に搭載するためには、ワイヤーで互いに接続されたデバイスチップとリード端子とを、リード端子が露出する様に樹脂で封止することで、QFN(Quad Flat No leaded package)等のパッケージを形成する必要があった。しかし、近年、電気機器に搭載されるデバイスチップの小型化、薄型化、軽量化等が求められている。
【0011】
この要求を満たすために、デバイスチップとリード端子とがワイヤーで接続されておらず、デバイスチップの一部が露出している、ウェーハレベルチップサイズパッケージ(Wafer Level Chip Size Package、以下WL-CSP)が開発された。WL-CSPは、QFN等のパッケージに比べて小型化等が可能である。
【0012】
WL-CSP製造用のウェーハでは、ウェーハの表面側に配線層が形成され、この配線層を部分的に覆う様に樹脂膜が形成され、配線層に電気的に接続された複数のバンプ(即ち、突起電極)が、樹脂膜から突出する様に形成されている。WL-CSPを製造する場合にも、ウェーハに対してプラズマエッチングを施して、ウェーハを個々のWL-CSPに分割することが試みられている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2000-87282号公報
【文献】特開2006-114825号公報
【文献】特開2017-103330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、WL-CSP製造用のウェーハに対して、スピンコーターを用いてレジスト膜等の樹脂膜を形成する場合、液状の樹脂材料が遠心力で広がる過程で、ウェーハの外周側への樹脂材料の流れがバンプにより遮られることがある。
【0015】
また、バンプの周囲の隙間には、樹脂材料が回り込み難い。従って、表面側全体を樹脂膜で被覆することが難しい。このような被覆の困難性に伴い、歩留まりが低下するという問題もある。
【0016】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、表面側にバンプが形成されたウェーハに対してプラズマエッチングを施してウェーハを分割する場合に、ウェーハの表面の全体を樹脂膜で覆うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様によれば、被加工物の表面側に設定された複数の分割予定ラインにより複数の領域に区画された各領域に複数のバンプが設けられた被加工物の加工方法であって、流動性を有する硬化性樹脂が供給された台の上面側と対面する様に該被加工物の該表面を下向きにして該被加工物を保持する保持工程と、該被加工物を下方に移動させて、該被加工物の該表面側を該硬化性樹脂に押し当てることにより、該硬化性樹脂が該バンプと該表面との隙間に入り込み且つ該バンプが該硬化性樹脂に埋まる様に、該被加工物の該表面の全体を該硬化性樹脂で被覆する被覆工程と、該硬化性樹脂を硬化させて樹脂膜を形成する硬化工程と、該硬化工程の後、該樹脂膜に吸収される波長を有するレーザービームを各分割予定ラインに沿って該樹脂膜に照射して、各分割予定ライン上の該樹脂膜を除去するレーザービーム照射工程と、該レーザービーム照射工程の後、該被加工物にプラズマ化したガスを供給して、該樹脂膜をマスクとして各分割予定ラインに沿って該被加工物を個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を備え、該レーザービーム照射工程の前に、該樹脂膜の表面をバイト工具で切削して該樹脂膜を薄化する薄化工程を更に備える被加工物の加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係る加工方法の被覆工程では、流動性を有する硬化性樹脂に被加工物の表面側を押し当てることにより、硬化性樹脂がバンプと表面との隙間に入り込み且つバンプが硬化性樹脂に埋まる様に、被加工物の表面の全体を硬化性樹脂で被覆する。
【0020】
この様に、遠心力ではなく、流動性を有する硬化性樹脂に表面側のバンプを押し当てるので、デバイスから突出する態様でバンプが設けられていても、バンプの周囲を含むウェーハの表面側全体を一様な厚さの硬化性樹脂で覆うことができる。
【0021】
この硬化性樹脂を硬化させた樹脂膜をマスクとしてウェーハの表面側に対してプラズマエッチングを施すことにより、ウェーハを個々のデバイスチップに分割する。これにより、スピンコーターを用いてレジスト膜を形成する場合に比べて、歩留まりを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(A)はウェーハの斜視図であり、
図1(B)はウェーハの断面図である。
【
図7】
図7(A)はレーザービーム照射工程を示す図であり、
図7(B)はレーザービーム照射工程後のウェーハ等の断面図であり、
図7(C)は溝近傍の拡大図である。
【
図8】
図8(A)は分割工程を示す図であり、
図8(B)は分割工程後のウェーハ等の断面図であり、
図8(C)はWL-CSPの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態では、WL-CSP製造用のウェーハ(被加工物)11を加工して、WL-CSPを製造する。
図1(A)は、ウェーハ11の斜視図であり、
図1(B)は、ウェーハ11の断面図である。
【0024】
ウェーハ11は、500μmから1000μm程度の厚さを有する円盤状のシリコンウェーハである。なお、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。炭化ケイ素(SiC)等のシリコン以外の半導体材料で形成されたウェーハ11を用いてもよい。
【0025】
ウェーハ11の表面11a側には、格子状に配置された複数の分割予定ライン(ストリート)13が設定されている。複数の分割予定ライン13で区画された各領域には、デバイス15が形成されている。
【0026】
デバイス15の表面11a側の一部は、平坦面15aであり、デバイス15には、平坦面15aから突出する態様で、複数のバンプ(突起電極)15bが固定されている。本実施形態のバンプ15bは略球状であるが、バンプ15bは角柱状、円柱状であってもよい。
【0027】
次に、
図2から
図9を用いて、ウェーハ11からWL-CSPを製造するときのウェーハ11の加工方法について説明する。本実施形態の加工方法では、まず、貼り合わせ装置10(
図2から
図5参照)を用いて、バンプ15bを覆う様にウェーハ11の表面11a側に樹脂膜を形成する。
【0028】
貼り合わせ装置10は、ガラス(フロートガラス、石英ガラス等)で形成された板状の台12を有する。台12の下面12aよりも下方には、紫外線(UV)を発するUVランプ14aが設けられている(
図3から
図5参照)。なお、台12は、UVランプ14aから照射される紫外線を透過させる。
【0029】
台12の上面12bには、上面12bよりも小さい面積を有する円盤状のプラスチック製(例えば、PET製)の薄板14bが固定されている。薄板14bは、後述する硬化性樹脂が上面12bに接触することを防ぐ保護シートとして機能する。なお、薄板14bは、UVランプ14aから照射される紫外線を透過させる。
【0030】
薄板14bの上方には、ノズル16が設けられている。ノズル16は、ノズル移動装置(不図示)に固定されており、ノズル移動装置の動作により、薄板14bの上方に位置する内側領域と、薄板14bの外周よりも外側に位置する外側領域とに移動可能である。
【0031】
ノズル16には、樹脂供給源18が接続されている。樹脂供給源18からノズル16へは、流動性を有する硬化性樹脂が供給される。本実施形態では、硬化性樹脂として紫外線硬化樹脂17(
図2参照)が用いられる。
【0032】
紫外線硬化樹脂17は、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等である。なお、紫外線硬化樹脂17に代えて、熱硬化樹脂や、主剤と硬化剤とを混ぜ合わせることで硬化する自然硬化樹脂が用いられてもよい。
【0033】
薄板14bの上方には、ウェーハ11を保持して搬送するための搬送装置20が設けられている(
図3から
図5参照)。搬送装置20は、金属で形成された円盤状の枠体22を有する。
【0034】
枠体22の下部には、円盤状の凹部22aが形成されている。凹部22aの開口は、枠体22の下面に露出しており、凹部22aの底面は、開口よりも上方に位置している。凹部22aには多孔質セラミックスで形成された円盤状の多孔質プレート24が固定されている。凹部22aの開口側に位置する多孔質プレート24の一面24aは、略平坦であり、枠体22の下面と面一になっている。
【0035】
凹部22aには、複数の第1流路22bが放射状に形成されている。複数の第1流路22bの各々は、枠体22の厚さ方向において枠体22を貫通する第2流路22cの一端に接続している。また、第2流路22cの他端は、エジェクタ等の吸引源26に接続されている。
【0036】
吸引源26を動作させると、第1流路22b及び第2流路22cを介して多孔質プレート24の一面24aには負圧が作用する。これにより、多孔質プレート24の一面24aは、ウェーハ11等を吸引して保持する保持面として機能する。
【0037】
枠体22の上部には、複数のアーム28が接続されており、複数のアーム28は、薄板14bの上方に位置する内側領域と、薄板14bの外周よりも外側に位置する外側領域と間を移動する。
【0038】
次に、貼り合わせ装置10を用いて、バンプ15bを覆う様にウェーハ11の表面11a側に樹脂膜を形成する工程について説明する。
図2は、樹脂供給工程(S10)を示す図である。
【0039】
樹脂供給工程(S10)では、薄板14bの略中央の上部にノズル16を位置付け、ノズル16から薄板14bへ紫外線硬化樹脂17を供給する。例えば、ウェーハ11の直径が300mmである場合に、平坦面15aからの厚さが1mmの樹脂膜を形成するために、70mlの紫外線硬化樹脂17を供給する。紫外線硬化樹脂17は、所定の粘度を有するので、ノズル16の直下近傍において例えばドーム状に堆積する。
【0040】
樹脂供給工程(S10)の後、ウェーハ11を薄板14bと対面する様に、搬送装置20の一面24aで裏面11b側を吸引して保持する(保持工程(S20))。
図3は、保持工程(S20)を示す図である。保持工程(S20)では、ウェーハ11は表面11aが下向きとなり、表面11a側は、台12の上面12b側に位置する紫外線硬化樹脂17と対面する。
【0041】
保持工程(S20)の後、搬送装置20を用いて、ウェーハ11を下方に移動させて、バンプ15bが薄板14bに接触しない様に、ウェーハ11の表面11aを紫外線硬化樹脂17に適度に押し当てる(被覆工程(S30))。
【0042】
このとき、バンプ15bの下端と薄板14bの上面との距離を、1個以上2個以下のバンプ15bの高さに相当する距離とする。例えば、バンプ15bの高さが100μmである場合、バンプ15bの下端と薄板14bの上面とを100μm以上200μm以下だけ離す。
図4は、被覆工程(S30)を示す図である。
【0043】
紫外線硬化樹脂17は、バンプ15bと平坦面15aとの隙間15cに入り込み、且つ、バンプ15bは、紫外線硬化樹脂17に埋まる。これにより、ウェーハ11の表面11aの全体は紫外線硬化樹脂17で被覆される。
【0044】
この様に、本実施形態の被覆工程(S30)では、遠心力ではなく、流動性を有する紫外線硬化樹脂17に表面11a側のバンプ15bを押し当てる。それゆえ、バンプ15bと平坦面15aとの間や、ウェーハ11の表面11a側全体を一様な厚さの紫外線硬化樹脂17で覆うことができる。
【0045】
被覆工程(S30)の後、UVランプ14aから台12及び薄板14bを介して紫外線硬化樹脂17に紫外線を、例えば数秒間、照射することにより、紫外線硬化樹脂17を硬化させる。これにより、ウェーハ11の表面11a側に樹脂膜19を形成する(硬化工程(S40))。
【0046】
図5は、硬化工程(S40)を示す図である。紫外線硬化樹脂17を用いれば、熱硬化樹脂、自然硬化樹脂を用いる場合に比べて、短時間で硬化した樹脂膜19を形成できる点が有利である。
【0047】
その後、搬送装置20を上方に移動させる。樹脂膜19とPET製の薄板14bとの接着力は、樹脂膜19とウェーハ11の表面11a側との接着力に比べて弱い。それゆえ、搬送装置20を上方に移動させれば、ウェーハ11は薄板14bから容易に剥離される。
【0048】
薄板14bからウェーハ11を剥離した後、テープ貼り付け装置(不図示)を用いて、ウェーハ11の裏面11b側に、ウェーハ11よりも大きな径を有する樹脂製の保護テープ21(
図6参照)を貼り付ける。
【0049】
また、保護テープ21の外周部には、金属製の環状のフレーム(不図示)を貼り付けて、ウェーハユニット23を形成する。そして、ウェーハユニット23をバイト切削装置30へ搬送する。
【0050】
バイト切削装置30は、チャックテーブル32を有する。チャックテーブル32の下方には、ボールネジ等から成るテーブル移動機構(不図示)が設けられている。テーブル移動機構を動作させれば、チャックテーブル32は所定の加工送り方向に移動する。
【0051】
チャックテーブル32の上面側には、多孔質セラミックスで形成された円盤状の多孔質プレート(不図示)が固定されている。多孔質プレートには、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
【0052】
吸引源を動作させると、多孔質プレートの上面には負圧が作用するので、多孔質プレート24の上面は、ウェーハユニット23を吸引して保持する保持面として機能する。保持面の上方には、バイト切削ユニット34が設けられている。
【0053】
バイト切削ユニット34は、筒状のスピンドルハウジング34aを有する。スピンドルハウジング34aは、Z軸方向に移動可能なZ軸移動プレート(不図示)に固定されており、このZ軸移動プレートはZ軸移動機構(不図示)に連結されている。
【0054】
スピンドルハウジング34a内には、スピンドル34bの一部が回転可能な態様で収容されている。スピンドル34bの上端部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。一方、スピンドル34bの下端部は、スピンドルハウジング34aの外部に露出している。
【0055】
スピンドル34bの下端部には、円盤状のホイールマウント34cが固定されている。ホイールマウント34cの下面側には、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属で形成された円盤状のバイトホイール36の上面側が装着されている。
【0056】
バイトホイール36の下面側に位置する外周部の一部には、バイト工具38が装着されている。バイト工具38は、バイトホイール36に装着されている略角柱状の基部38aを有する。
【0057】
基部38aのバイトホイール36とは反対側の端部には、ダイヤモンド等で形成された切り刃38bが固定されている。また、バイトホイール36の下面側に位置する外周部の他部には、錘部40が連結されている。
【0058】
錘部40の重心は、バイト切削ユニット34の回転中心に対して、バイト工具38の重心とは点対称な位置に配置されている。錘部40を配置することにより、錘部40が無い場合に比べて、バイト切削ユニット34の回転時のバランスを良好にできる。
【0059】
バイト切削装置30を用いて、樹脂膜19の表面19a側を切削して樹脂膜19を薄化する(薄化工程(S50))。
図6は、薄化工程(S50)を示す図である。薄化工程(S50)では、まず、ウェーハユニット23の保護テープ21側をチャックテーブル32の保持面32aで保持する。
【0060】
これにより、ウェーハユニット23の樹脂膜19が上方に露出される。次いで、回転駆動源を動作させることにより、スピンドル34bを回転中心として、バイト切削ユニット34を回転させ、切り刃38bの下端をバンプ15bの上端の高さよりも僅かに低い位置に調整する。
【0061】
次いで、Z軸方向に直交する加工送り方向(X軸方向)にチャックテーブル32を移動させる。これにより、樹脂膜19とバンプ15bの上部側の一部とが、バイト工具38で切削されて、バンプ15bの上部側が樹脂膜19から露出する。薄化工程(S50)の後、ウェーハユニット23をレーザー加工装置50(
図7(A)参照)へ搬送する。
【0062】
レーザー加工装置50も、バイト切削装置30と同様に、ウェーハユニット23の保護テープ21側を吸引して保持するチャックテーブル(不図示)を有する。チャックテーブルの下方には、チャックテーブルを回転させるθテーブル(不図示)が連結されており、θテーブルの下方には、チャックテーブルを加工送り方向(X軸方向)に移動させるX軸移動機構(不図示)が連結されている。
【0063】
チャックテーブルの上方には、パルス状のレーザービームLを照射する加工ヘッド52が設けられている(
図7(A)参照)。加工ヘッド52から照射されるレーザービームLは、例えば、355nmの波長、200kHzの繰り返し周波数、2.0Wの平均出力及びナノ秒オーダーのパルス幅を有する。
【0064】
355nmは、樹脂膜19に吸収される波長の一例である。レーザービームLを樹脂膜19の一部に照射することにより、樹脂膜19の一部はアブレーション加工されて、除去される。
【0065】
レーザー加工装置50を用いて、レーザービームLを各分割予定ライン13に沿って樹脂膜19に照射して、各分割予定ライン13上の樹脂膜19を除去する(レーザービーム照射工程(S60))。
図7(A)は、レーザービーム照射工程(S60)を示す図である。
【0066】
レーザービーム照射工程(S60)では、まず、レーザー加工装置50のX軸方向と一の分割予定ライン13とが平行になる様にθテーブルでウェーハ11の向きを調整する。そして、一の分割予定ライン13の一端から他端に沿ってレーザービームLを照射して、一の分割予定ライン13上の樹脂膜19を除去する。
【0067】
次いで、加工ヘッド52をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りし、一の分割予定ライン13に対してY軸方向に隣接する他の分割予定ライン13の直上に加工ヘッド52を位置付ける。そして、他の分割予定ライン13の一端から他端に沿ってレーザービームLを照射して、他の分割予定ライン13上の樹脂膜19を除去する。
【0068】
同様にして、X軸方向に平行な全ての分割予定ライン13に沿って樹脂膜19を除去した後、θテーブルを用いてウェーハ11を90度回転させる。そして、同様に、未加工の分割予定ライン13に沿って樹脂膜19を除去する。なお、レーザービーム照射工程(S60)では、分割予定ライン13上にTEG(Test Element Group)やLow-k膜が存在する場合、これも樹脂膜19と併せて除去する。
【0069】
図7(B)は、レーザービーム照射工程(S60)後のウェーハ11等の断面図である。レーザービーム照射工程(S60)により、各分割予定ライン13に沿い且つウェーハ11の表面11aに達する溝19bを、樹脂膜19に形成する。これにより、樹脂膜19はパターン化される。
【0070】
図7(C)は、溝19b近傍の拡大図である。なお、
図7(C)では示していないが、レーザービーム照射工程(S60)では、ウェーハ11の表面11a側が分割予定ライン13に沿って除去されることや、分割予定ライン13に沿って表面11a側に熱変質層が形成されることがある。
【0071】
レーザービーム照射工程(S60)の後、ウェーハユニット23をプラズマエッチング装置54へ搬送する(
図8(A)参照)。本実施形態のプラズマエッチング装置54は、容量結合方式でチャンバー内においてガスをプラズマ化するダイレクトプラズマ型であるが、チャンバー外でプラズマ化したガスをチャンバー(不図示)内へ供給するリモートプラズマ型であってもよい。
【0072】
プラズマエッチング装置54は、金属で形成され且つ接地されているチャンバーを有する。チャンバーには、ウェーハユニット23の搬送経路となるドア部(不図示)が設けられており、ドア部とは異なる位置には、チャンバーの内部を排気するための排気装置(不図示)が接続されている。
【0073】
チャンバー内には、テーブルベース(不図示)が設けられている。テーブルベースには、ウェーハユニット23を保持する静電チャック(不図示)と、静電チャックから電気的に分離され、ブロッキングコンデンサ(不図示)を介して高周波電源(不図示)に接続されたバイアス用電極(不図示)とが設けられている。
【0074】
テーブルベースの上方と、チャンバーの天井部との間には、金属で形成されたメッシュ状のプラズマ拡散部材(不図示)が設けられている。チャンバーの上部には、チャンバーの天井部に略垂直に接続する態様で、ガス供給管(不図示)が設けられている。
【0075】
本実施形態のガス供給管には、SF6を有する第1のガス供給源と、C4F8を有する第2のガス供給源とが接続されているが、使用されるガス種は、この例に限定されるものではない。
【0076】
本実施形態では、パターン化された樹脂膜19をマスクとして、ボッシュ法により、各分割予定ライン13に沿ってウェーハ11を個々のデバイスチップに分割する(分割工程(S70))。
図8(A)は、分割工程(S70)を示す図である。
【0077】
分割工程(S70)では、まず、ウェーハユニット23を静電チャックに搬送し、樹脂膜19が上方に露出し且つ保護テープ21が静電チャックに接触する態様で、ウェーハユニット23を静電チャックで保持する。そして、ドア部を閉じ、排気装置を動作させて、チャンバー内を所定の圧力とする。
【0078】
次に、高周波電源からバイアス用電極に電力を供給した状態で、ガス供給管からチャンバー内にSF6を第1の所定時間、供給する。SF6ガスは、チャンバー内でプラズマ化され、プラズマ化したSF6ガスが、ウェーハ11の表面11a側に供給される。
【0079】
ウェーハ11の表面11a側に供給されるプラズマ化したSF6ガス(即ち、エッチングガスP)は、フッ素イオン、フッ素ラジカル等を含み、このエッチングガスPによりウェーハ11はエッチングされる(エッチング工程)。
【0080】
次いで、第1のガス供給源からSF6ガスの供給を停止し、第2のガス供給源からガス供給管へC4F8ガスを第2の所定時間、供給する。これにより、プラズマ化したC4F8ガスが、ウェーハ11の表面11a側に供給される。プラズマ化したC4F8ガスにより、ウェーハ11の表面11aのエッチング溝(不図示)の側面及び底面は、CF系重合膜で被覆される(被覆工程)。
【0081】
更に、チャンバー内へ供給するガス種を交互に切り替えることにより、エッチング工程と被覆工程とを複数回、繰り返す。分割予定ライン13に沿ってウェーハ11に形成される溝11cによりウェーハ11は分割され、WL-CSP(デバイスチップ)が製造される。
【0082】
図8(B)は、分割工程(S70)後のウェーハ11等の断面図であり、
図8(C)は、WL-CSP25の断面図である。なお、
図9は、ウェーハ11の加工方法のフロー図である。
【0083】
本実施形態では、樹脂膜19をマスクとしてウェーハ11の表面11a側に対してプラズマエッチングを施すことによりウェーハ11を個々のWL-CSP25に分割できるので、スピンコーターを用いてレジスト膜を形成する場合に比べて、歩留まりを改善できる。
【0084】
なお、バンプ15bと平坦面15aとの間に樹脂膜19が無い空間が形成される場合にはWL-CSP25の強度低下が懸念されるが、本実施形態では上述の被覆工程(S30)等を経て樹脂膜19が形成されているので、当該空間が形成され難い。それゆえ、WL-CSP25の強度低下を防止できる。
【0085】
また、バンプ15bと平坦面15aとの間に空間が形成されている場合には、プラズマエッチング中にウェーハ11が加熱されることにより、空間に存在する空気が膨張して、ウェーハ11、樹脂膜19等の破損やひび割れが生じやすくなる。しかし、本実施形態ではバンプ15bと表面11aとの間の空間が形成され難いので、ウェーハ11、樹脂膜19等の破損やひび割れを防止できる。
【0086】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。上述の分割工程(S70)ではボッシュ法を採用したが、エッチングにより除去するウェーハ11の厚さに応じて、被覆工程を省略してエッチング工程だけを行ってもよい。
【符号の説明】
【0087】
11 ウェーハ(被加工物)
11a 表面
11b 裏面
11c 溝
13 分割予定ライン(ストリート)
15 デバイス
15a 平坦面
15b バンプ
15c 隙間
17 紫外線硬化樹脂
19 樹脂膜
19a 表面
19b 溝
21 保護テープ
23 ウェーハユニット
25 WL-CSP
10 貼り合わせ装置
12 台
12a 下面
12b 上面
14a UVランプ
14b 薄板
16 ノズル
18 樹脂供給源
20 搬送装置
22 枠体
22a 凹部
22b 第1流路
22c 第2流路
24 多孔質プレート
24a 一面
26 吸引源
28 アーム
30 バイト切削装置
32 チャックテーブル
32a 保持面
34 バイト切削ユニット
34a スピンドルハウジング
34b スピンドル
34c ホイールマウント
36 バイトホイール
38 バイト工具
38a 基部
38b 切り刃
40 錘部
50 レーザー加工装置
52 加工ヘッド
54 プラズマエッチング装置
L レーザービーム
P エッチングガス