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特許7399575インサート成形用金型、インサート成形方法及び容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】インサート成形用金型、インサート成形方法及び容器
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20231211BHJP
   A45D 33/00 20060101ALI20231211BHJP
   A45D 33/18 20060101ALI20231211BHJP
   B29C 45/33 20060101ALI20231211BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20231211BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B29C45/26
A45D33/00 650A
A45D33/18 Z
B29C45/33
B29C33/14
B29C45/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020065064
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160268
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和寿
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-213762(JP,A)
【文献】特開2002-283385(JP,A)
【文献】特開2014-014965(JP,A)
【文献】特開平05-057744(JP,A)
【文献】特開2015-217567(JP,A)
【文献】実開昭63-101515(JP,U)
【文献】特開2004-299333(JP,A)
【文献】特開2003-063586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
A45D 33/00-40/30
B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を構成する、底壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムが固着された容器本体、または、天壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムが固着され、前記容器本体に開閉自在に装着された蓋体を、インサート成形するインサート成形用金型であって、
前記フィルムが内面に配置されるキャビティと、
前記キャビティに金型開閉方向から組み合わされるコアと、
前記コアに設けられ、前記キャビティと前記コアとの間に合成樹脂材料を射出するゲートと、
前記コアに設けられ、前記コアを前記キャビティから離間させる際に前記金型開閉方向に対して傾斜した方向に移動するスライドピンと、
前記スライドピンに設けられ、前記キャビティに前記コアが組み合わされたときに前記キャビティの内面との間で前記フィルムの前記側壁の表面に固着される部分を保持する凸部と、を有することを特徴とする、インサート成形用金型。
【請求項2】
前記側壁に一体に連なるとともに前記天壁との間に肉抜き空間を形成するヒンジ連結部を備えた前記蓋体をインサート成形するものであり、
前記スライドピンが、前記肉抜き空間を形成するための突起部を備え、
前記凸部が前記突起部に設けられている、請求項1に記載のインサート成形用金型。
【請求項3】
前記ゲートが、前記コアの前記ヒンジ連結部を成形する部分に開口している、請求項2に記載のインサート成形用金型。
【請求項4】
前記突起部の前記ゲートを挟んだ両側に、一対の前記凸部が設けられている、請求項3に記載のインサート成形用金型。
【請求項5】
前記キャビティに、前記フィルムの前記底壁の表面または前記天壁の表面に固着される部分を負圧により保持する負圧吸引孔が設けられている、請求項1~4の何れか1項に記載のインサート成形用金型。
【請求項6】
前記容器が、内容物として化粧料を収納するコンパクト容器に用いられるものである、請求項1~5の何れか1項に記載のインサート成形用金型。
【請求項7】
容器を構成する、底壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムが固着された容器本体、または、天壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムが固着され、前記容器本体に開閉自在に装着された蓋体を、インサート成形するインサート成形方法であって、
キャビティと前記キャビティに金型開閉方向から組み合わされるコアとを有し、前記コアが、前記コアを前記キャビティから離間させる際に前記金型開閉方向に対して傾斜した方向に移動するスライドピンを備えた構成のインサート成形用金型を用い、
前記キャビティの内面に前記フィルムをインサートとして配置し、
前記キャビティに前記コアを組み合わせ、前記スライドピンに設けられた凸部と前記キャビティの内面との間で前記フィルムの前記側壁の表面に固着される部分を保持した状態で、ゲートから前記キャビティと前記コアとの間に合成樹脂材料を射出して、前記容器本体または前記蓋体をインサート成形することを特徴とする、インサート成形方法。
【請求項8】
前記側壁に一体に連なるとともに前記天壁との間に肉抜き空間を形成するヒンジ連結部を備えた前記蓋体をインサート成形するために、前記スライドピンが、前記肉抜き空間を形成するための突起部を備え、前記凸部が前記突起部に設けられている構成の前記インサート成形用金型を用いる、請求項7に記載のインサート成形方法。
【請求項9】
前記インサート成形用金型として、前記ゲートが前記ヒンジ連結部を成形する部分に開口しているものを用いる、請求項8に記載のインサート成形方法。
【請求項10】
前記スライドピンとして、前記突起部の前記ゲートを挟んだ両側に、一対の前記凸部が設けられているものを用いる、請求項9に記載のインサート成形方法。
【請求項11】
前記キャビティとして、前記フィルムの前記底壁の表面または前記天壁の表面に固着される部分を負圧により保持する負圧吸引孔を備えているものを用いる、請求項7~10の何れか1項に記載のインサート成形方法。
【請求項12】
前記容器が、内容物として化粧料を収納するコンパクト容器に用いられるものである、請求項7~11の何れか1項に記載のインサート成形方法。
【請求項13】
底壁と側壁とを備えるとともに内容物の収納空間を備えた容器本体と、
天壁と側壁とを備え、前記容器本体に開閉自在に装着された蓋体と、を有する容器であって、
前記容器本体の前記底壁の表面と前記側壁の表面及び前記蓋体の前記天壁の表面と前記側壁の表面の、少なくとも何れか一方に、フィルムが固着されているとともに、表面に前記フィルムが固着された前記側壁の裏面に、前記裏面に対して凹むとともに開口が矩形形状となる凹部が設けられていることを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンパクト容器などの容器に用いられる容器本体または蓋体を、インサート成形によって成形するための、インサート成形用金型、インサート成形方法及びこれにより成形された容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばファンデーション等の化粧料を内容物として収納する扁平型のコンパクト容器などの容器として、容器本体と容器本体に開閉自在に装着された蓋体とを有し、蓋体が、天壁と、側壁と、側壁に一体に連なるとともに天壁との間に肉抜き空間を形成するヒンジ連結部と、を備えた構成のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、上記構成を有する容器において、容器本体の底壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムを固着するとともに蓋体の天壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムを固着した構成のものが知られている。
【0004】
このような容器に用いられる容器本体や蓋体は、従来、キャビティと、キャビティに金型開閉方向から組み合わされるコアとを有する構成のインサート成形用金型を用い、キャビティの内面にフィルムを配置した状態で、ゲートからキャビティとコアとの間に合成樹脂材料を射出するインサート成形によって形成されるのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-113463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のインサート成形用金型では、キャビティに、その内面に開口する負圧吸引孔を設け、負圧吸引孔が発生する負圧によってフィルムをキャビティの内面に保持するようにしていた。
【0007】
しかし、底壁や天壁の表面だけでなく、側壁の表面にもフィルムを固着した構成の容器本体ないし蓋体を形成するためには、キャビティの内面の側面部分にも負圧吸引孔を設ける必要がある。そのため、キャビティに設けられる負圧回路が複雑となり、これによりインサート成形用金型のコストが高くなるという問題があった。
【0008】
また、コアの側面部分にゲートを開口させた構成とした場合には、ゲート付近にフィルムの端部が位置することになるので、負圧吸引孔が生じる負圧ではフィルムを十分に保持することができず、ゲートから射出された合成樹脂材料の流れによってフィルムが捲れてしまう虞があるという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために開発されたものであり、その目的は、表面にフィルムが固着されている容器本体または蓋体を、安価且つ精度よくインサート成形することが可能なインサート成形用金型、インサート成形方法及びこれにより成形された容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のインサート成形用金型は、容器を構成する、底壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムが固着された容器本体、または、天壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムが固着され、前記容器本体に開閉自在に装着された蓋体を、インサート成形するインサート成形用金型であって、前記フィルムが内面に配置されるキャビティと、前記キャビティに金型開閉方向から組み合わされるコアと、前記コアに設けられ、前記キャビティと前記コアとの間に合成樹脂材料を射出するゲートと、前記コアに設けられ、前記コアを前記キャビティから離間させる際に前記金型開閉方向に対して傾斜した方向に移動するスライドピンと、前記スライドピンに設けられ、前記キャビティに前記コアが組み合わされたときに前記キャビティの内面との間で前記フィルムの前記側壁の表面に固着される部分を保持する凸部と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のインサート成形用金型は、上記構成において、前記側壁に一体に連なるとともに前記天壁との間に肉抜き空間を形成するヒンジ連結部を備えた前記蓋体をインサート成形するものであり、前記スライドピンが、前記肉抜き空間を形成するための突起部を備え、前記凸部が前記突起部に設けられているのが好ましい。
【0012】
本発明のインサート成形用金型は、上記構成において、前記ゲートが、前記コアの前記ヒンジ連結部を成形する部分に開口しているのが好ましい。
【0013】
本発明のインサート成形用金型は、上記構成において、前記突起部の前記ゲートを挟んだ両側に、一対の前記凸部が設けられているのが好ましい。
【0014】
本発明のインサート成形用金型は、上記構成において、前記キャビティに、前記フィルムの前記底壁の表面または前記天壁の表面に固着される部分を負圧により保持する負圧吸引孔が設けられているのが好ましい。
【0015】
本発明のインサート成形用金型は、上記構成において、前記容器が、内容物として化粧料を収納するコンパクト容器に用いられるものであるのが好ましい。
【0016】
本発明のインサート成形方法は、容器を構成する、底壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムが固着された容器本体、または、天壁の表面と側壁の表面とに亘ってフィルムが固着され、前記容器本体に開閉自在に装着された蓋体を、インサート成形するインサート成形方法であって、キャビティと前記キャビティに金型開閉方向から組み合わされるコアとを有し、前記コアが、前記コアを前記キャビティから離間させる際に前記金型開閉方向に対して傾斜した方向に移動するスライドピンを備えた構成のインサート成形用金型を用い、前記キャビティの内面に前記フィルムをインサートとして配置し、前記キャビティに前記コアを組み合わせ、前記スライドピンに設けられた凸部と前記キャビティの内面との間で前記フィルムの前記側壁の表面に固着される部分を保持した状態で、ゲートから前記キャビティと前記コアとの間に合成樹脂材料を射出して、前記容器本体または前記蓋体をインサート成形することを特徴とする。
【0017】
本発明のインサート成形方法は、上記構成において、前記側壁に一体に連なるとともに前記天壁との間に肉抜き空間を形成するヒンジ連結部を備えた前記蓋体をインサート成形するために、前記スライドピンが、前記肉抜き空間を形成するための突起部を備え、前記凸部が前記突起部に設けられている構成の前記インサート成形用金型を用いるのが好ましい。
【0018】
本発明のインサート成形方法は、上記構成において、前記インサート成形用金型として、前記ゲートが前記ヒンジ連結部を成形する部分に開口しているものを用いるのが好ましい。
【0019】
本発明のインサート成形方法は、上記構成において、前記スライドピンとして、前記突起部の前記ゲートを挟んだ両側に、一対の前記凸部が設けられているものを用いるのが好ましい。
【0020】
本発明のインサート成形方法は、上記構成において、前記キャビティとして、前記フィルムの前記底壁の表面または前記天壁の表面に固着される部分を負圧により保持する負圧吸引孔を備えているものを用いるのが好ましい。
【0021】
本発明のインサート成形方法は、上記構成において、前記容器が、内容物として化粧料を収納するコンパクト容器に用いられるものであるのが好ましい。
【0022】
本発明の容器は、底壁と側壁とを備えるとともに内容物の収納空間を備えた容器本体と、天壁と側壁とを備え、前記容器本体に開閉自在に装着された蓋体と、を有する容器であって、前記容器本体の前記底壁の表面と前記側壁の表面及び前記蓋体の前記天壁の表面と前記側壁の表面の、少なくとも何れか一方に、フィルムが固着されているとともに、表面に前記フィルムが固着された前記側壁の裏面に、前記裏面に対して凹むとともに開口が矩形形状となる凹部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、表面にフィルムが固着されている容器本体または蓋体を、安価且つ精度よくインサート成形することが可能なインサート成形用金型、インサート成形方法及びこれにより成形された容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態であるインサート成形用金型乃至インサート成形方法により形成された蓋体を有する容器の側面図である。
図2図1に示す蓋体の、一部を切り欠いた底面図である。
図3図2におけるA-A線に沿う断面図である。
図4図1に示す蓋体の、一部を切り欠いた正面図である。
図5】本発明の一実施の形態であるインサート成形用金型の、要部の断面図である。
図6】突出部に設けられた一対の凸部の配置を示す説明図である。
図7】キャビティの内面にフィルムを配置する様子を示す説明図である。
図8】型閉めを開始した状態のインサート成形用金型を示す説明図である。
図9】型閉めの際に、スライドピンがスライドする様子を示す説明図である。
図10】型閉めが完了した状態のインサート成形用金型を示す説明図である。
図11】ゲートからキャビティとコアとの間に合成樹脂材料を射出した状態のインサート成形用金型を示す説明図である。
図12】離型を開始した状態のインサート成形用金型を示す説明図である。
図13】変形例のインサート成形用金型乃至インサート成形方法により形成された蓋体の一部を切り欠いた底面図である。
図14図13におけるB-B線に沿う断面図である。
図15】変形例のインサート成形用金型の、要部の断面図である。
図16】ゲートからキャビティとコアとの間に合成樹脂材料を射出した状態の変形例のインサート成形用金型を示す説明図である。
図17】離型を開始した状態の変形例のインサート成形用金型を示す説明図である。
図18】変形例のインサート成形用金型によりインサート成形される容器本体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施の形態に係るインサート成形用金型、インサート成形方法及び容器について詳細に例示説明する。
【0026】
図1に示す本発明の一実施の形態に係る容器1は、容器本体10と、本発明の一実施の形態に係るインサート成形用金型乃至インサート成形方法により成形された蓋体20とを有するものである。この容器1は、内容物として、例えばファンデーション等の化粧料を収納する用途に用いられる扁平型のコンパクト容器である。蓋体20は容器本体10に開閉自在に装着されており、内容物を使用する際に開くことができる。
【0027】
容器本体10は、底壁11と側壁12とを有する平面視で矩形の皿状となっており、その内部に内容物の収納空間を備えている。容器本体10は、例えばアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)等の合成樹脂製とすることができるが、これに限られない。容器本体10としては、蓋体20の形状乃至大きさ等に対応した、種々の形状乃至大きさ等のものを用いることができる。
【0028】
蓋体20は、例えばアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)等の合成樹脂製である。図2図4に示すように、蓋体20は、天壁21と側壁22とを備えた平面視で矩形の蓋状となっており、蓋体20の一辺における側壁22の下端部分には、ヒンジ連結部23が一体に連ねて設けられている。
【0029】
ヒンジ連結部23は、当該ヒンジ連結部23が連なる側壁22に沿って延びる略円柱状となっている。ヒンジ連結部23の軸方向の長さは、当該ヒンジ連結部23が連なる側壁22の長さよりも短くなっており、ヒンジ連結部23の軸方向中央位置は側壁22の幅方向中央位置と一致している。ヒンジ連結部23の長手方向の両端部には、それぞれ当該端部に開口するとともにヒンジ連結部23の軸方向に沿って延びる一対のヒンジ穴23aが設けられている。図1に示すように、蓋体20は、ヒンジ連結部23のヒンジ穴23aに、容器本体10に支持されたヒンジ軸24が回動自在に挿通されることで、容器本体10に回動自在に連結されている。これにより、蓋体20は、容器本体10に対してヒンジ軸24を中心として回動することで、容器本体10を開閉することができる。なお、蓋体20の開閉方向は上下方向である。
【0030】
図2図3に示すように、蓋体20は天壁21の内面にフック部25を備えており、フック部25が、容器本体10に設けられた係止部(不図示)に係止されることで、容器本体10を閉じた状態に保持されるようになっている。
【0031】
図3に示すように、ヒンジ連結部23は、当該ヒンジ連結部23が連なる側壁22に対して、蓋体20の内方に向けて突出しており、その一部は天壁21の下方に配置されている。これにより、ヒンジ連結部23と天壁21との間には肉抜き空間26が形成されている。
【0032】
図1図3図4に示すように、蓋体20の表面(容器外方を向く面)には、天壁21の表面と側壁22の表面とに亘ってフィルム30が固着されている。フィルム30は、天壁21乃至側壁22よりも厚みが薄いフィルム状となっており、天壁21の表面の全体を覆う天面部分30aと、4つの側壁22の表面を覆う4つの側面部分30bとを有している。
【0033】
フィルム30は、例えばポリスチレン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂製とすることができる。また、フィルム30は、例えば、内面に模様等が印刷されたものや、光沢を有するもの、ラベルなどの、蓋体20を加飾するものとなっている。蓋体20は、フィルム30が固着されることで、その美観が高められている。
【0034】
蓋体20は、フィルム30をインサートとしたインサート成形により形成されたインサート成形品となっている。蓋体20を、フィルム30をインサートとしたインサート成形品とすることで、表面にフィルム30が固着されたた蓋体20を、容易且つ精度よく製造することができる。
【0035】
図2図4に示すように、蓋体20のヒンジ連結部23は、外側を向く面の軸方向中央位置にゲート痕27を有している。ゲート痕27は、蓋体20をインサート成形する際に合成樹脂材料が射出されるゲート部分に生じる痕である。
【0036】
また、図2図4に示すように、ヒンジ連結部23が連なる側壁22の、肉抜き空間26に対向する裏面(内面)には、ゲート痕27が設けられた位置を挟むように一対の凹部28が設けられている。これらの凹部28は、それぞれ側壁22の裏面から表面に向かって凹んでおり、フィルム30の側面部分30bとの間には僅かな間隔が空けられている。
【0037】
上記構成を有する蓋体20は、本発明の一実施の形態であるインサート成形用金型乃至インサート成形方法によって製造することができる。
【0038】
図5に示すように、本発明の一実施の形態であるインサート成形用金型40は、キャビティ41とコア42とを有している。キャビティ41は雌型とも呼ばれるものであり、コア42と対向する側に成形凹部41aを備えている。図5においては、インサート成形用金型40の一部のみを示しているが、成形凹部41aは、蓋体20の外形形状に対応した形状となっている。すなわち、成形凹部41aは、蓋体20の天壁21に対応した天面部分41a1と蓋体20の側壁22に対応した側面部分41a2とを有している。
【0039】
インサート成形の際、成形凹部41aの内面には、インサートとしてフィルム30が配置される。図5には、成形凹部41aの内面にフィルム30を配置した状態を示す。
【0040】
キャビティ41は、天面部分41a1に開口する負圧吸引孔43を備えた構成とすることもできる。負圧吸引孔43は、図示しない負圧ポンプ等の負圧発生源に接続されており、その内部に負圧が供給される。負圧吸引孔43は、インサート成形の際、成形凹部41aの内面にフィルム30が配置されたときに、当該フィルム30の天壁21の表面に固着される天面部分30aを、負圧により成形凹部41aの内面に保持することができる。
【0041】
このように、キャビティ41に負圧吸引孔43を設けた構成とすることで、インサート成形の際に、フィルム30が成形凹部41aの内面に確実に保持されるようにして、蓋体20を精度よくインサート成形することができる。
【0042】
なお、図5においては、キャビティ41に1つの負圧吸引孔43のみが示されているが、キャビティ41に複数の負圧吸引孔43を設けた構成とすることもできる。
【0043】
コア42は、キャビティ41に金型開閉方向(図5において上下方向)から組み合わされる。コア42がキャビティ41に組み合わされると、キャビティ41とコア42との間に、蓋体20に対応した形状の成形空間44が区画形成される。
【0044】
コア42には、コア本体42aにスライド可能に装着されたスライドピン42bが設けられている。スライドピン42bは、蓋体20をインサート成形した後、金型開閉方向に対してアンダーカット状に突出するヒンジ連結部23を、離型可能とするために設けられたものである。
【0045】
スライドピン42bは、ヒンジ連結部23の、金型開閉方向に対してアンダーカット状に突出する部分を成形するための半円筒状の半円筒凹部42b1を備えている。すなわち、半円筒凹部42b1は、コア本体42aに設けられた半円筒凹部42a1とともに、成形空間44のヒンジ連結部23を成形する部分を区画形成する。また、スライドピン42bは、半円筒凹部42b1よりもキャビティ41の側に、肉抜き空間26を形成するための突起部42b2を一体に備えている。
【0046】
なお、コア本体42aの半円筒凹部42a1乃至半円筒凹部42b1の軸心部分には、ヒンジ穴23aを形成するためのピン部材45が、軸方向に移動することで成形空間44の内部に対して出没自在に設けられている。
【0047】
スライドピン42bは、コア本体42aに対して、金型開閉方向(図5において上下方向)に対して傾斜した方向に沿って相対移動自在となっており、コア本体42aに対して上側に相対移動することで、半円筒凹部42b1が半円筒凹部42a1から離れるように、金型開閉方向に垂直な方向に移動するようになっている。また、蓋体20をインサート成形した後、コア42をキャビティ41から離間させて型開きする際に、スライドピン42bは、コア本体42aよりも遅い速度で下方に移動することで、半円筒凹部42b1がヒンジ連結部23から斜め下方に向けて離れるように、金型開閉方向に対して傾斜した方向に移動するようになっている。スライドピン42bのキャビティ41に対する移動方向は、金型開閉方向に垂直な方向に対して、5~10度とするのが好ましい。これにより、ヒンジ連結部23にアンダーカット状に係合する突起部42b2をヒンジ連結部23から離間させて、ヒンジ連結部23を離型させることができる。
【0048】
コア本体42aには、ゲート46が設けられている。本実施の形態では、ゲート46は、コア本体42aのヒンジ連結部23を成形する部分(半円筒凹部42a1)に開口するように設けられている。ゲート46は、図示しない材料供給部に接続されており、インサート成形の際に、キャビティ41とコア42との間の成形空間44に、所定の圧力で合成樹脂材料を射出することができる。インサート成形後の蓋体20のヒンジ連結部23には、このゲート46に対応した部分にゲート痕27が形成される。
【0049】
本実施の形態のインサート成形用金型40では、突起部42b2の、キャビティ41の側面部分41a2を向く側面に、凸部47を一体に設けるようにしている。図6に示すように、本実施の形態では、突起部42b2の、キャビティ41の側面部分41a2を向く側面の、ゲート46を挟んだ両側に、一対の凸部47を設けるようにしている。一対の凸部47は、それぞれ略立方体形状となっており、突起部42b2よりも十分に幅が狭くなっている。
【0050】
コア42がキャビティ41に組み合わされた状態において、それぞれの凸部47の先端は、キャビティ41の側面部分41a2に配置されたフィルム30の側面部分30bに僅かな隙間を介して対向するようになっている。なお、当該隙間は、ゲート46から射出された合成樹脂材料が流通可能な程度の隙間であり、例えば0.3mmとすることができる。
【0051】
したがって、キャビティ41の内面に配置されたフィルム30の側面部分30bは、一対の凸部47により、キャビティ41の内面の側面部分41a2に保持される。例えば、キャビティ41にフィルム30を配置したときに、フィルム30の側面部分30bが、キャビティ41の側面部分41a2における内面から離れるように成形空間44の側に倒れた状態となった場合であっても、型閉めされたときに、フィルム30の側面部分30bは、一対の凸部47によってキャビティ41の側面部分41a2の側に向けて押され、キャビティ41の側面部分41a2における内面に近接した状態に保持される。これにより、インサート成形の際、ゲート46から射出された合成樹脂材料が、キャビティ41の内面とフィルム30の側面部分30bとの間に入り込むことが防止され、よってゲート46から射出された合成樹脂材料の流れによって、フィルム30の側面部分30bの端部が捲れを生じることが防止される。また、キャビティ41に、内面の側面部分41a2に開口する負圧吸引孔を設けることなく、フィルム30の側面部分30bを側面部分41a2に保持することができるので、キャビティ41の負圧回路の構成を簡素化して、このインサート成形用金型40のコストを低減することができる。
【0052】
このように、本実施の形態のインサート成形用金型40では、突起部42b2の、キャビティ41の側面部分41a2を向く側面に凸部47を一体に設け、凸部47によりフィルム30の側面部分30bを、キャビティ41の内面の側面部分41a2に保持するようにしたので、キャビティ41に内面の側面部分41a2に開口する負圧吸引孔を設けることを不要としつつ、インサート成形の際、ゲート46から射出された合成樹脂材料の流れによって、フィルム30の側面部分30bの端部が捲れを生じることを確実に防止することができる。したがって、本実施の形態のインサート成形用金型40を用いることで、上記構成の蓋体20を、安価且つ精度よくインサート成形することができる。
【0053】
また、本実施の形態のインサート成形用金型40では、キャビティ41の側面部分41a2に開口する負圧吸引孔を設ける必要がないので、キャビティ41のクーラーを成形空間44の傍に配置することができ、これにより、蓋体20の成形性を高めることができる。
【0054】
さらに、本実施の形態のインサート成形用金型40では、ゲート46を、コア42のヒンジ連結部23を成形する部分に開口させた構成としたので、ヒンジ連結部23を所定の形状に精度よく成形しつつ、ヒンジ連結部23に隣接するフィルム30の側面部分30bの端部に捲れが生じることを防止して、上記構成の蓋体20を、さらに精度よくインサート成形することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態のインサート成形用金型40では、突起部42b2のゲート46を挟んだ両側に、一対の凸部47を設けるようにしたので、ゲート46の両側部分でフィルム30の側面部分30bがキャビティ41に内面の側面部分41a2に保持されるようにして、インサート成形の際、ゲート46から射出された合成樹脂材料の流れによって、フィルム30の側面部分30bの端部が捲れを生じることを、さらに確実に防止することができる。これにより、上記構成の蓋体20を、さらに精度よくインサート成形することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態のインサート成形用金型40では、キャビティ41の天面部分41a1に負圧吸引孔43を設けるようにしたので、キャビティ41の内面に配置されたフィルム30が、天面部分30aにおいてもキャビティ41の内面に確実に保持されるようにして、上記構成の蓋体20を、さらに精度よくインサート成形することができる。
【0057】
次に、本実施の形態のインサート成形用金型40を用いて蓋体20をインサート成形により成形する方法(本実施の形態のインサート成形方法)について説明する。
【0058】
まず、図7に示すように、インサート成形用金型40を、コア42がキャビティ41から離間した開状態とし、この状態でキャビティ41の成形凹部41aの内面にフィルム30をインサートとして配置する。このとき、フィルム30は、成形凹部41aの天面部分41a1に開口する負圧吸引孔43により天面部分30aが吸引されて、成形凹部41aの内面に保持される。
【0059】
コア42がキャビティ41から離間した開状態においては、スライドピン42bは、コア本体42aに対して上方にスライド移動した状態となっている。これにより、突起部42b2及び凸部47は、それぞれコア42がキャビティ41に組み合わされた状態よりも、キャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2に対して、図7中で左側により離れて配置されている。
【0060】
次に、図8に示すように、型閉めを開始して、キャビティ41に対してコア42をキャビティ41に接近するように金型開閉方向に沿って相対移動させる。図8においては、スライドピン42bは、キャビティ41に接近する側のストローク端に位置している。この状態においても、スライドピン42bがコア本体42aに対して上方に相対移動した状態となっているので、凸部47は、キャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2に配置されたフィルム30の側面部分30bに対して、図8中で左側に十分に離れて配置されている。したがって、型閉めの際に、凸部47がフィルム30の側面部分30bの端部に引っ掛かりを生じることが確実に防止される。
【0061】
図8に示す状態から、さらに型閉めが進行すると、スライドピン42bはコア本体42aよりも遅い速度で上方に移動するそして、図9に示すように、スライドピン42bは、コア本体42aに対して、金型開閉方向に対して傾斜した方向にスライドすることで、コア本体42aがキャビティ41に接近するのに伴い、突起部42b2がキャビティ41に対して斜めに接近するように金型開閉方向に対して傾斜した方向に移動する。これにより、突起部42b2及び凸部47は、キャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2に配置されたフィルム30の側面部分30bに斜め下方から接近するように、金型開閉方向に対して傾斜した方向に移動する。
【0062】
そして、図10に示すように、コア本体42aがストローク端位置に達して型閉めが完了し、コア42がキャビティ41に組み合わされた状態となると、突起部42b2に設けられた凸部47がキャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2に配置されたフィルム30の側面部分30bに僅かな隙間を空けて対向する。これにより、フィルム30の側面部分30bは、凸部47とキャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2との間で保持された状態となる。このとき、コア本体42aの上面とスライドピン42bの上面は同一面の状態となり、また、半円筒凹部42a1と半円筒凹部42b1とが組み合わされて、キャビティ41とコア42との間に、所定の形状の成形空間44が形成される。
【0063】
型閉めが完了したならば、図11に示すように、ゲート46からキャビティ41とコア42との間の成形空間44に、所定の圧力で合成樹脂材料50を射出して、フィルム30をインサートとした蓋体20のインサート成形を行う。このとき、フィルム30の側面部分30bは、凸部47とキャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2との間で保持されているので、ゲート46から射出された合成樹脂材料50の流れによって端部に捲れが生じることが防止される。
【0064】
このように、本実施の形態のインサート成形方法では、インサート成形の際に、フィルム30の側面部分30bを、凸部47とキャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2との間で保持するようにしたので、キャビティ41に内面の側面部分41a2に開口する負圧吸引孔を設けることを不要としつつ、インサート成形の際、ゲート46から射出された合成樹脂材料50の流れによって、フィルム30の側面部分30bの端部が捲れを生じることを確実に防止することができる。したがって、本実施の形態のインサート成形方法によれば、上記構成の蓋体20を、安価且つ精度よくインサート成形することができる。
【0065】
また、本実施の形態のインサート成形方法では、コア42のヒンジ連結部23を成形する部分に開口するゲート46から合成樹脂材料50を射出するようにしている。これにより、ヒンジ連結部23を所定の形状に精度よく成形しつつ、ヒンジ連結部23に隣接するフィルム30の側面部分30bの端部に捲れが生じることを防止して、上記構成の蓋体20を、さらに精度よくインサート成形することができる。
【0066】
さらに、本実施の形態のインサート成形方法では、一対の凸部47により、ゲート46の両側部分でフィルム30の側面部分30bをキャビティ41に内面の側面部分41a2に保持するようにしている。これにより、インサート成形の際、ゲート46から射出された合成樹脂材料50の流れによって、フィルム30の側面部分30bの端部が捲れを生じることを、さらに確実に防止されるようにして、上記構成の蓋体20を、さらに精度よくインサート成形することができる。
【0067】
さらに、本実施の形態のインサート成形方法では、キャビティ41の天面部分41a1に設けた負圧吸引孔43により、キャビティ41の内面に配置されたフィルム30を、天面部分30aにおいてもキャビティ41の内面に確実に保持されるようにしている。これにより、上記構成の蓋体20を、さらに精度よくインサート成形することができる。
【0068】
インサート成形が完了したならば、図12に示すように、離型を開始し、コア本体42aを金型開閉方向にキャビティ41から離れる方向に移動させるとともにスライドピン42bをコア本体42aよりも遅い速度で下方に移動させる。これにより、突起部42b2及び凸部47が、キャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2から斜め下方に向けて離れるように金型開閉方向に対して傾斜した方向に移動し、凸部47の凹部28への係合が解除されるとともに突起部42b2のヒンジ連結部23へのアンダーカット状の係合が解除されて、インサート成形によりフィルム30が表面に一体に固着された蓋体20をインサート成形用金型40から取り出すことができる。
【0069】
上記の本実施の形態のインサート成形方法で形成された蓋体20を、ヒンジ軸24を用いて容器本体10に装着することで、容器1が完成する。
【0070】
図13は、変形例のインサート成形用金型乃至インサート成形方法により形成された蓋体の一部を切り欠いた底面図であり、図14は、図13におけるB-B線に沿う断面図である。また、図15は、変形例のインサート成形用金型の、要部の断面図であり、図16は、ゲートからキャビティとコアとの間に合成樹脂材料を射出した状態の変形例のインサート成形用金型を示す説明図であり、図17は、離型を開始した状態の変形例のインサート成形用金型を示す説明図である。なお、図13図17においては、前述した部材に対応する部材に、同一の符号を付してある。
【0071】
図5に示すインサート成形用金型40乃至これを用いたインサート成形方法では、図2図4に示すように、天壁21の全体が合成樹脂材料により板状に形成され、その表面の全体にフィルム30が固着された構成の蓋体20をインサート成形するものとされているが、本実施の形態のインサート成形用金型40乃至これを用いたインサート成形方法は、図13図14に示すように、天壁21が側壁22に沿う環状の枠体に形成されるとともに、天壁21の表面に固着されたフィルム30によって天壁21の内側に設けられた矩形の開口21aが閉塞された構成の蓋体20をインサート成形するために用いることもできる。当該蓋体20においては、天壁21が、フィルム30のみで形成された部分を有するので、蓋体20を、天壁21の全体が合成樹脂材料により形成された構成とした場合に比べて、蓋体20に使用される合成樹脂材料の量を減らして、蓋体20を軽量化することができるとともに環境負荷を低減することができる。
【0072】
なお、蓋体20の内面に露出するフィルム30の内面にアルミ蒸着層を設けて、これを鏡60として使用する構成とすることもできる。
【0073】
このような蓋体20をインサート成形するための変形例のインサート成形用金型40は、図15に示すように、スライドピン42bの上面に、開口21aを形成するためのスペーサ体42b3が一体に設けられ、型閉めが完了した状態においてスペーサ体42b3はキャビティ41の内面に配置されたフィルム30の天面部分30aに当接している。また、コア本体42aも、型閉めが完了した状態においてキャビティ41の内面に配置されたフィルム30の天面部分30aに当接するように構成されている。
【0074】
このような構成の変形例のインサート成形用金型40においても、型閉めが完了した後、図16に示すように、ゲート46からキャビティ41とコア42との間の成形空間44に、所定の圧力で合成樹脂材料50を射出することで、天壁21に開口21aを備えるとともに当該開口21aを閉塞するフィルム30が天壁21の表面に固着された構成の蓋体20のインサート成形により製造することができる。また、このとき、フィルム30の側面部分30bは、凸部47とキャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2との間で保持されているので、ゲート46から射出された合成樹脂材料50の流れによって端部に捲れが生じることが防止される。
【0075】
また、インサート成形が完了した後には、図17に示すように、離型を開始し、コア本体42aを金型開閉方向にキャビティ41から離れる方向に移動させるとともにスライドピン42bをコア本体42aよりも遅い速度で下方に移動させる。これにより、突起部42b2及び凸部47が、キャビティ41の成形凹部41aの側面部分41a2から斜め下方に向けて離れるように金型開閉方向に対して傾斜した方向に移動し、凸部47の凹部28への係合が解除されるとともに突起部42b2のヒンジ連結部23へのアンダーカット状の係合が解除されて、蓋体20をインサート成形用金型40から取り出すことができる。この変形例においても、スライドピン42bのキャビティ41に対する移動方向は、金型開閉方向に垂直な方向に対して、5~10度とするのが好ましい。
【0076】
このように、スライドピン42bに設けられたスペーサ体42b3は、離型の際に、キャビティ41に対して斜め下方に移動するので、フィルム30の開口21aから露出する裏面にスライドピン42bが擦れを生じることがない。したがって、離型の際にフィルム30の裏面がスペーサ体42b3により傷つけられることを防止することができる。特に、フィルム30の開口21aに露出する裏面に、アルミ蒸着による鏡60を設けた構成とした場合に、鏡60がスペーサ体42b3により傷つけられることを防止することができる。
【0077】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0078】
例えば、前記実施の形態において、容器1を、容器本体10及び蓋体20が、それぞれ平面視で矩形形状となるものとしたが、これらの形状は、例えば平面視で略円形のものとするなど、その形状は種々変更可能である。
【0079】
また、前記実施の形態では、本実施の形態のインサート成形用金型40乃至インサート成形方法によって、容器1の蓋体20をインサート成形する場合を示したが、本実施の形態のインサート成形用金型乃至インサート成形方法によって、底壁11の表面及び側壁12の表面に亘ってフィルム30が固着された構成の容器本体10をインサート成形するようにしてもよい。この場合においても、容器本体10は、底壁11の全体が合成樹脂材料により板状に形成され、その表面の全体にフィルム30が固着された構成としてもよく、例えば図18に示すように、底壁11が側壁12に沿う環状の枠体に形成されるとともに、底壁11の表面に固着されたフィルム30によって底壁11の内側に設けられた矩形の開口12aが閉塞された構成としてもよい。
【0080】
また、容器本体10及び蓋体20を構成する合成樹脂材料は、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂に限らず、インサート成形が可能なものであれば、他の合成樹脂材料製としてもよい。
【0081】
さらに、前記実施の形態においては、容器1を、内容物としてファンデーション等の化粧料を収納するコンパクト容器としたが、これに限らず、内容物として種々のものを収納する用途に用いられるものとすることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 容器
10 容器本体
11 底壁
12 側壁
12a 開口
20 蓋体
21 天壁
21a 開口
22 側壁
23 ヒンジ連結部
23a ヒンジ穴
24 ヒンジ軸
25 フック部
26 肉抜き空間
27 ゲート痕
28 凹部
30 フィルム
30a 天面部分
30b 側面部分
40 インサート成形用金型
41 キャビティ
41a 成形凹部
41a1 天面部分
41a2 側面部分
42 コア
42a コア本体
42a1 半円筒凹部
42b スライドピン
42b1 半円筒凹部
42b2 突起部
42b3 スペーサ体
43 負圧吸引孔
44 成形空間
45 ピン部材
46 ゲート
47 凸部
50 合成樹脂材料
60 鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18