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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】転写成形品及びその加飾方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20231211BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
B44C1/17 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020080156
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172057
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 能久
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320158(JP,A)
【文献】特開2002-192540(JP,A)
【文献】特開2006-137475(JP,A)
【文献】特開2003-011595(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097977(WO,A1)
【文献】特開2015-131436(JP,A)
【文献】特開2018-052095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00-59/18
B44C 1/16- 1/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品(10A)の表面に転写箔(20)が転写されてなる加飾部(13)を有する転写成形品であって、
前記加飾部(13)は、成形品(10A)を構成する一部の樹脂が隆起変形して前記加飾部(13)を取り囲むように周設された凸部(14)と、前記転写箔(20)の表面に密集配置された微細な凹線(26)及び凸線(27)から成り且つ前記凸部(14)の内側に配置された微細エンボス加飾(A)とを有して構成され、前記成形品(10A)の表面と前記凸部(14)との高低差δ0が0.02~0.06mmの範囲で形成されていることを特徴とする転写成形品。
【請求項2】
成形品(10A)の表面と凸線(27)の頂部(27a)との高低差(δ1)が0.01~0.025mmの範囲で形成され、前記成形品(10A)の表面と凹線(26)の底部との高低差(δ2)が0.005~0.025mmの範囲で形成されている請求項1記載の転写成形品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の転写成形品の加飾方法であって、
少なくとも、表面に加飾部(13)を形成する微細彫刻部(32)を有して回転可能に支持された鋼材製のロール状刻印(31)と、成形品(10A)を回転自在に保持する回転移動治具と、長帯状の基材フィルム(25)の表面に転写箔(20)を積層し、前記ロール状刻印(31)と前記転写成形品との間に走行可能に設けられた転写シート(20A)と、を用いて行われ
回転する前記ロール状刻印(31)と前記成形品(10A)との間に前記転写シート(20A)を挟み込んだ状態で走行させた際に、
前記微細彫刻部(32)で前記転写箔(20)を加圧することにより前記転写箔(20)の表面に微細エンボス加飾(A)を形成すると同時に、前記ロール状刻印(31)で前記転写シート(20A)を加圧することにより前記微細エンボス加飾(A)が形成された転写箔(20)が前記成形品(10A)の表面に転写されることにより、成形品(10A)の表面に立体的な微細エンボス加飾(A)が形成されることを特徴とする転写成形品の加飾方法。
【請求項4】
微細彫刻部(32)は、幅寸法(W)が0.05~0.50mmからなる多数の凹彫刻線(33)及び凸彫刻線(34)を密集配置して形成すると共に、隣接する前記凹彫刻線(33)と前記凸彫刻線(34)との線間距離(L)が0.05~0.25mmで形成され、且つ前記凹彫刻線(33)と前記凸彫刻線(34)との高低差である深度Dが0.03~0.06mmの範囲で形成されている請求項3記載の転写成形品の加飾方法。
【請求項5】
微細彫刻部(32)の表面全体に窒化処理又はニッケルメッキ処理が行われている請求項3又は4記載の転写成形品の加飾方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細なエンボス加飾が転写された転写成形品及びその加飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール状刻印と、ロール状刻印を加熱するヒーターと、被転写物を回転駆動可能に保持する回転移動治具と、ロール状刻印と回転移動治具との間に配置されて走行可能に設けられた長帯状の転写シートと、転写シートを間欠的に巻き取る巻取りモーターと、走行方向とは逆方向の張力を転写シートに付与可能とされたバックテンションモーターと、を有し、ロール状刻印又は回転移動治具が、被転写物の側面とロール状刻印の外周面との間の接圧を一定に維持しながら互いに接近する方向及び離間する方向に往復移動可能に設けた箔転写装置を使用することにより、被転写物(転写成形品)の表面に転写ムラのない綺麗な転写箔による加飾を行う方法及び転写成形品は周知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-52095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の転写成形品は、成形品の側面に転写箔を転写ムラのない状態で綺麗に転写して加飾するというものではあるが、あくまで平滑で単調な表面仕上りを与えるものに過ぎず、立体的なエンボス加工による加飾を伴うものではなかった。
また転写箔にエンボス加工を加えるには、上記の方法で転写した転写箔の表面に、その後工程においてエンボス加工を行う必要があることから、工程数を抑えてコストの低減を図ることが難しいという問題があった。
更に一部には転写シート自体に熱エンボスを施す方法も行われているが、通常、転写シートを構成する基材フィルムは熱エンボス適性に乏しく、転写シートの表面に微細なテクスチャーを再現することは困難であるため、ごく粗い凹凸からなるエンボスに限定されていた。このため、意匠性に優れ、高級感を付与する微細な加飾は困難であった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、一度の工程で箔転写と微細エンボス加飾とを同時に行うことで工程数を抑えて安価に加飾することができると共に、意匠性に優れ、高級感を与える微細エンボス加飾を備える転写成形品及びその加飾方法を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の第1の主たる手段は、
成形品の表面に転写箔が転写されてなる加飾部を有する転写成形品であって、
加飾部は、成形品を構成する一部の樹脂が変形して加飾部を取り囲むように周設された凸部と、転写箔の表面に密集配置された微細な凹線及び凸線から成り且つ凸部の内側に配置された微細エンボス加飾とを有して構成され、成形品の表面と凸部との高低差δ0が0.02~0.06mmの範囲で形成されていることを特徴とする、と云うものである。
本発明の第1の主たる手段では、成形品の表面に微細エンボス加飾が付与されることで、意匠性に優れ、高級感のある転写成形品とすることができる。また微細エンボス加飾を形成する図柄によっては、見る角度に応じて異なる図柄が出現するホログラムとしての機能を付与することができる。
【0007】
また本発明の他の手段は、本発明の第1の主たる手段に、成形品の表面と凸線の頂部との高低差δ1が0.01~0.025mmの範囲で形成され、成形品の表面と凹線の底部との高低差δ2が0.005~0.025mmの範囲で形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、微細なテクスチャーが再現されて成る微細エンボス加飾とすることができる。
【0008】
また本発明の第2の主たる手段は、
上記いずれかに記載の転写成形品の加飾方法であって、
少なくとも、表面に加飾部を形成する微細彫刻部を有して回転可能に支持された鋼材製のロール状刻印と、成形品を回転自在に保持する回転移動治具と、長帯状の基材フィルムの表面に転写箔を積層し、ロール状刻印と転写成形品との間に走行可能に設けられた転写シートと、を用いて行われ
回転するロール状刻印と成形品との間に転写シートを挟み込んだ状態で走行させた際に、微細彫刻部で転写箔を加圧することにより転写箔の表面に微細エンボス加飾を形成すると同時に、ロール状刻印で転写シートを加圧することにより微細エンボス加飾が形成された転写箔が成形品の表面に転写されることにより、成形品の表面に立体的な微細エンボス加飾が形成されることを特徴とする、と云うものである。
本発明の第2の主たる手段では、成形品の表面に、意匠性に優れ、高級感を与える微細エンボス加飾を付与することができる。
【0009】
また本発明の他の手段は、本発明の第2の主たる手段に、微細彫刻部は、幅寸法Wが0.05~0.50mmからなる多数の凹彫刻線及び凸彫刻線を密集配置して形成すると共に、隣接する凹彫刻線と凸彫刻線との線間距離Lが0.05~0.25mmで形成され、且つ凹彫刻線と凸彫刻線との高低差である深度Dが0.03~0.06mmの範囲で形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、微細エンボス加飾に微細なテクスチャーを再現させることができる。
【0010】
更に本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、微細彫刻部の表面全体に窒化処理又はニッケルメッキ処理が行われている、との手段を加えたものである。
上記手段では、微細彫刻部の剛性を高めることができると共に、転写工程において、微細彫刻部と基材フィルムとの間を剥離させ離型性を高めることがき、転写工程をスムーズに行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、一度の工程で、成形品の表面に箔転写と微細エンボス加飾とを同時に行うことができる。
また意匠性に優れ、高級感を与える微細エンボス加飾を備える転写成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例としての転写成形品を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2】転写箔の基本的構成を示す断面図である。
図3】(a)は微細エンボス加飾の平面図、(b)は微細エンボス加飾の断面図、(c)は微細エンボス加飾の一部を拡大して示す断面図である。
図4】箔転写装置の要部を示す平面図である。
図5】ロール状刻印の一例を示す平面図である。
図6】ロール状刻印側の微細彫刻部と成形品側の微細エンボス加飾との関係を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施例としての転写成形品を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、図2は転写箔の基本的構成を示す断面図、図3の(a)は微細エンボス加飾の平面図、図3の(b)は微細エンボス加飾の断面図、図3の(c)は微細エンボス加飾の一部を拡大して示す断面図である。
図1に一実施例として示す転写成形品10は、容器などの蓋体として使用されるキャップである。転写成形品10は、円板上の頂壁11の外周端に円筒状の側壁12を備えた有頂円筒状の部材であり、側壁12には複数の加飾部13が形成されている。
【0014】
加飾部13は、表面に微細エンボス加飾Aが形成された転写箔20が、転写前の成形品(被転写物)10Aの表面である側壁12上に転写により貼着されることで形成されたものである。
図2に示すように、本実施例に示す転写箔20は、接着層21、蒸着層22、保護着色層23、離型層24が、下層から上層に向かってこの順序で積層されることにより形成されている。尚、最上層に設けた符号25は転写シートを形成する基材フィルムであり、基材フィルム25から剥離した転写箔20が側壁12(成形品10Aの表面)上に転写される。
【0015】
図3(a)に示すように、加飾部13は、転写箔20の上に、微細な多数の線(凹線26及び凸線27)が密集する状態で組み合わされ、所定の模様となるように図案化された微細エンボス加飾Aを有して構成される。図3(b)に示すように、加飾部13の周囲には、転写(ホットスタンプ)した際に溶けた樹脂、すなわち被転写面である成形品10Aの表面(側壁12)を形成する一部の樹脂が、後述するロール状刻印31の外端部によって隆起変形されることで形成される凸部14が周設されている。そして、密集配置された微細な凹線26及び凸線27から構成される微細エンボス加飾Aは、凸部14によって取り囲まれた領域の内側に形成されている。
尚、凸部14によって囲まれた領域内に位置する成形品10Aの表面も、転写した際に溶け、凹線26及び凸線27に合わせて凹凸状に変形し、転写箔20と共に微細エンボス加飾Aの一部を形成している。
【0016】
ここで、図3(b)(c)に示すように、成形品10Aの表面(側壁12)を基準としたときに、成形品10Aの表面と凸部14との高低差δ0は0.02~0.06mmの範囲が好ましい。また成形品10Aの表面と凸線27の頂部27aとの高低差δ1は0.01~0.025mmが好ましく、成形品10Aの表面と凹線26の底部との高低差δ2は0.005~0.025mmが好ましく、したがって凸線27の頂部と凹線26の底部との高低差は0.015~0.050mmの範囲が好ましい。このように、高低差δ0を、高低差δ1及び高低差δ2よりも大きく形成することにより、コントラストとの関係から視覚的な錯覚と相まって、凸部14の内側に密集配置された微細エンボス加飾Aに立体感を付与することが可能となっている。
尚、図3(c)に示すように、凸線27の両側には凸部14同様の隆起形成された頂部27aが形成されるが、両側の頂部27aを含んで凸線27を構成している。
【0017】
図4は本発明の転写成形品の加飾方法に用いる箔転写装置の要部を示す平面図、図5はロール状刻印の一例を示す平面図、図6はロール状刻印側の微細彫刻部と成形品側の微細エンボス加飾との関係を示す部分拡大断面図である。
図4に示すように、箔転写装置30は、主として、回転自在に設けられたロール状刻印31と、成形品10Aを回転駆動可能に保持する回転移動治具(図示せず)と、ロール状刻印31と回転移動治具との間に配置されて走行可能に設けられた長帯状の転写シート20Aと、転写シート20Aを間欠的に巻き取る巻取りモーター(図示せず)、走行方向とは逆方向の張力を転写シート20Aに付与可能とされたバックテンションモーター(図示せず)、成形品10Aの側面12とロール状刻印31の外周面との間に所定の接圧を付与するエアーシリンダー(図示せず)等を有して構成されている。ロール状刻印31又は回転移動治具は、成形品10Aの側面12とロール状刻印31の外周面との間に所定の接圧を掛けながら互いに接近する方向及び離間する方向に往復移動可能に構成されている。
【0018】
転写シート20Aは、PET樹脂などから構成される長帯状の基材フィルム25上に上記構成からなる転写箔20を有する構成であり、離型層24と基材フィルム25との間が剥離可能な状態で積層されている。
【0019】
ロール状刻印31は、例えば鉄又は真鍮などの鋼材で形成された円筒形からなる部材である。ロール状刻印31の外周面には、多数の微細な彫刻線(凹彫刻線33及び凸彫刻線34)を密集する状態で組み合わせて構成された図柄等からなり、版として機能する微細彫刻部32が形成されている。
【0020】
図5に一例として示すロール状刻印31は、外周面の4か箇所に夫々異なる図柄等からなる第1微細彫刻部32A、第2微細彫刻部32B、第3微細彫刻部32C及び第4微細彫刻部32Dを配置した構成である。図5中の、左側の第1微細彫刻部32Aと右側の第2微細彫刻部32Bとは共に2×3ケの異なる図柄を夫々配置した例である。これにより、各成形品10Aの表面には2×3ケの異なる図柄が転写される。
また図5中の、上側の第3微細彫刻部32Cと下側の第4微細彫刻部32Dは共にホログラム効果を備えており、この第3微細彫刻部32C又は第4微細彫刻部32Dで転写を行うと、成形品10Aの表面に見る角度に応じて異なる図柄が現れるようになる。
このように本実施形態では1つのロール状刻印31の4カ所に異なる図柄を配置することにより異なる図柄の加飾が1つのロールで実現できるが、もちろん1種類の図柄のみを1つのロール状刻印31に配置する構成でも構わない。
【0021】
ここで、図6に示すように、微細彫刻部32の図柄を形成する凹彫刻線33及び凸彫刻線34の幅寸法Wは0.05~0.50mmの範囲が好ましく、隣接する凹彫刻線33と凸彫刻線34との線間距離Lは0.05~0.25mmが好ましい。更に前記凹彫刻線33と凸彫刻線34との高低差(凹凸差)である深度Dは0.03~0.06mmの範囲とするものが好ましい。
このような微細彫刻部32は、例えばエッチング加工装置、レーザー加工装置やNC旋盤装置などを用いて彫刻されている。彫刻後の微細彫刻部32の表面全体に、ロール状刻印31が鉄で形成されている場合には窒化処理を、真鍮で形成されている場合にはニッケルメッキ処理を行うと、剛性を高めることができると共に、転写工程において、ロール状刻印31側の微細彫刻部32と基材フィルム25との間を剥離させ離型性を高めることがき、転写工程をスムーズに行うことが可能となる点で好ましい。
【0022】
次に、上記箔転写装置30を用いた転写成形品の加飾方法について説明する。
転写工程では、図示しないヒーターでロール状刻印31の外周面を加熱する。加熱温度は、成形品10Aを形成する樹脂の材質によって異なるが、成形品10AがPP(ポリプロピレン)の場合には微細彫刻部32の表面温度は170~190℃が好ましい。そして、ロール状刻印31と成形品10Aの側面12(表面)との間に走行する転写シート20Aを挟んだ状態で所定の接圧を掛けながら、ロール状刻印31と成形品10Aとを回転させる。すると、微細彫刻部32によって加圧された転写箔20の表面に立体的な図柄からなる微細エンボス加飾Aが刻印される。同時に、転写箔20が基材フィルム25から剥離して成形品10Aの側面12(表面)に転写される。
【0023】
すなわち、密集配置された多数の凹彫刻線33及び凸彫刻線34からなる微細彫刻部32(版)が転写箔20に転写され、転写箔20の表面に密集配置された多数の凹線26及び凸線27から構成されてなる立体的な微細エンボス加飾A(微細なテクスチャー)が刻設される。この際、成形品10Aの側面12(表面)が溶融し、凹線26及び凸線27に合わせて凹凸状に変形して微細エンボス加飾Aの一部を形成する。
尚、ロール状刻印31と成形品10Aと間の接圧は0.2~0.35MPaの範囲が好ましい。
【0024】
このように本発明の加飾方法では、一度の工程で、転写箔20の表面に立体的な図柄からなる微細エンボス加飾Aを行う微細エンボス加工工程と、転写箔20自体を成形品10Aの表面に転写する転写工程とを同時に行うことができるため、工程数を抑えることができ、結果として転写成形品10に対して安価に加飾することが可能となる。
しかも上記のように一度の工程で微細エンボス加工工程と転写工程を行うと、微細凹凸のエッジに対しても転写が行われるようになることから、意匠性を向上させることができる。
更には、上記構成からなる微細彫刻部32(版)を用いて転写箔20を加圧すると、転写箔20の表面に微細なテクスチャーが再現されて成る微細エンボス加飾Aが形成されるため、意匠性に優れた転写成形品10を得ることができる。
【0025】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0026】
例えば、上記実施例では成形品として円筒状の側面の場合を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、楕円状、角筒状その他の形状の側面であってもよい。また成形品の表面は、側面に限定されるものではなく、成形品の天面、底面その他の面であってもよい。
【0027】
尚、転写箔を使用することなく、微細彫刻部(版)を備えたロール状刻印で空押しすることにより成形品の表面に微細エンボス加飾Aを転写し、その後に成形品の表面に蒸着を行うことで、本発明に類似する転写成形品を得ることが可能であるところ、この方法では転写工程と蒸着工程とを分けて行う必要がある。しかし、本発明の加飾方法では一度の工程で転写成形品を加飾でき、簡単且つ低コストで加飾できる点で有効である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、表面に意匠性に優れた立体的な微細エンボス加飾を要する製品の分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0029】
10 : 転写成形品
10A: 成形品
11 : 頂壁
12 : 側壁
13 : 加飾部
14 : 凸部
20 : 転写箔
20A: 転写シート
21 : 接着層
22 : 蒸着層
23 : 保護着色層
24 : 離型層
25 : 基材フィルム
26 : 凹線
27 : 凸線
27a: 凸線の頂部
30 : 箔転写装置
31 : ロール状刻印
32 : 微細彫刻部
32A: 第1微細彫刻部
32B: 第2微細彫刻部
32C: 第3微細彫刻部
32D: 第4微細彫刻部
33 : 凹彫刻線
34 : 凸彫刻線
A : 微細エンボス加飾
D : 深度(凹彫刻線と凸彫刻線との高低差)
L : 凹彫刻線と凸彫刻線との線間距離
W : 凹彫刻線及び凹彫刻線の幅寸法
δ0 : 成形品の表面と凸部との高低差
δ1 : 成形品の表面と凸線の頂部との高低差
δ2 : 成形品の表面と凹線の底部との高低差
図1
図2
図3
図4
図5
図6