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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】蛍光インク及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/32 20140101AFI20231211BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231211BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20231211BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20231211BHJP
【FI】
C09D11/32
B41J2/01 501
B41M5/00 110
B41M5/00 120
C09D11/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020084838
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178919
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石井 竜
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-075889(JP,A)
【文献】特開2016-035047(JP,A)
【文献】特開2002-309143(JP,A)
【文献】特開2016-016563(JP,A)
【文献】特開2016-065138(JP,A)
【文献】特開2002-356632(JP,A)
【文献】特開2004-067785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/32
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光顔料、界面活性剤、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、
蛍光顔料として蛍光染料で着色された樹脂を含有し、
界面活性剤としてシリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種類を含有し、
蛍光インクの総質量中における界面活性剤の総含有量が0.2%~2.0%であり、
静的表面張力が27mN/m以下である蛍光インク。
但し、上記の蛍光インクは、ポリオキシアルキレンナフチルエーテルを含有するインクを除く。
【請求項2】
印刷メディアの着色に用いる請求項1に記載の蛍光インク。
【請求項3】
印刷メディアがインク非吸収性、及びインク難吸収性から選択される印刷メディアである請求項2に記載の蛍光インク。
【請求項4】
請求項1に記載の蛍光インクを、印刷メディアに付着させることにより画像を形成する画像形成方法。
【請求項5】
請求項1に記載の蛍光インクの液滴をインクジェットプリンタから吐出して、印刷メディアに付着させることにより、印刷を行う印刷方法。
【請求項6】
印刷メディアがインク非吸収性、及びインク難吸収性から選択される印刷メディアである請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項7】
印刷メディアがインク非吸収性、及びインク難吸収性から選択される印刷メディアである請求項5に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難吸収性基材上で優れた画質を得ることが可能なインクジェット記録用蛍光インク並びにその蛍光インクを用いるインクジェット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は、印刷方法として代表的な方法の1つである。そして、インクジェット印刷はオフセット印刷の様に版を必要とせず、小型化、高速化が容易であるため、産業用途として利用が進んでいる。特に、カタログ等に使用されるコート紙では、印刷画像の見た目が大きな影響を及ぼす。このことから、鮮明で、かつ付加価値の高い特徴的な画像を得られるインクが強く求められている。
【0003】
インクジェット記録方法によってカラー画像を形成する場合、少なくともブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクの4色のインクをインクセットとして用いるのが一般的である。より高画質な画像を得るために、オレンジインク、グリーンインク、レッドインク等の特色をインクセットとして用いる場合もある。
更に、特色の1つとして、蛍光色を有するインクを用いて印刷を行い、より高精細な印刷物を得る手法が知られている。
【0004】
インクジェット印刷は、インクの液滴を吐出して記録メディアに付着させてドットを形成する。そして、このドットの集合体によって画像を形成する。このドット形状の真円度が高い程、良好な印刷画像が得られるとされている。
例えば、ドット形状の真円度が低く、様々な形に歪んでしまうと、細かい文字等の画像を印刷した際に画像が潰れてしまい、印刷状態が極めて劣化するといった問題が生じる。特に、インクジェット適性が低いコート紙等では、ドットの歪みが顕著に発生する。このことから、ドット形状の真円度が高い印刷画像が得られるインクが強く求められている。
【0005】
特許文献1には蛍光染料、透明固体微粒子等を含有する蛍光インクが開示されている
特許文献2には染料を樹脂に着色させた分散体や、
特許文献3には樹脂中に油性染料微粒子を含有する着色微粒子が開示されている。
特許文献4~8には顔料、蛍光染料で染着又は染色された樹脂微粒子等を含むインクジェット記録用インクが開示されている。
【0006】
【文献】特開平10-46072号公報
【文献】特開2008-255241号公報
【文献】特開2008-214592号公報
【文献】特開2008-063546号公報
【文献】特開2008-231211号公報
【文献】特開2009-067858号公報
【文献】特開2009-155488号公報
【文献】特開2009-209183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は印刷メディア(好ましくはインク非吸収性、及びインク難吸収性の印刷メディア)、それらの中でもコート紙上に画像を印刷したとき、真円度の高いドット形状が得られる蛍光インク及びこれを用いたインクジェット印刷方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、蛍光インクの静的表面張力を27mN/m以下とすることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の[1]~[10]に関する。
【0009】
[1]
蛍光顔料、界面活性剤、水溶性有機溶剤、及び水を含有し、静的表面張力が27mN/m以下である蛍光インク。
但し、上記の蛍光インクは、ポリオキシアルキレンナフチルエーテルを含有するインクを除く。
[2]
上記の蛍光顔料が、蛍光染料で着色された樹脂である上記[1]に記載の蛍光インク。
[3]
上記の蛍光インクの静的表面張力から、動的表面張力を除した値が0.7以上0.9以下である上記[1]に記載の蛍光インク。
[4]
上記の界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選択される、少なくとも1種類の界面活性剤を含有する上記[1]に記載の蛍光インク。
[5]
印刷メディアの着色に用いる上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の蛍光インク。
[6]
印刷メディアがインク非吸収性、及びインク難吸収性から選択される印刷メディアである上記[5]に記載の蛍光インク。
[7]
上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の蛍光インクを、印刷メディアに付着させることにより画像を形成する画像形成方法。
[8]
上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の蛍光インクの液滴をインクジェットプリンタから吐出して、印刷メディアに付着させることにより、印刷を行う印刷方法。
[9]
印刷メディアがインク非吸収性、及びインク難吸収性から選択される印刷メディアである上記[7]に記載の画像形成方法。
[10]
印刷メディアがインク非吸収性、及びインク難吸収性から選択される印刷メディアである上記[8]に記載の印刷方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により記録メディア(好ましくは難吸収性の記録メディア)、中でもコート紙上に画像を印刷したとき、真円度の高いドット形状が得られる蛍光インク及びこれを用いたインクジェット印刷方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「C.I.」とは、カラーインデックスの略語である。また、本明細書中、「%」及び「部」数については、特に断りのない限り、いずれも質量基準で記載する。
【0012】
上記の蛍光顔料は、蛍光を呈する顔料、又は蛍光染料により着色された樹脂(好ましくは透明樹脂)が挙げられる。これらの中では蛍光染料により着色された樹脂が鮮明性に優れるため好ましい。
蛍光染料としては公知の染料を使用する事が可能である。そのような染料としては、例えば、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドイエロー7、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドブラック2等の酸性染料;C.I.ベーシックレッド1、C.I.ベーシックイエロー9、C.I.べ-シックイエロー44、C.I.べーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット7、C.I.べ-シックバイオレット10、C.I.べ-シックバイオレット11、C.I.べ-シックブルー45等の塩基性染料等が挙げられる。
【0013】
樹脂としては特に制限はなく、染料の色相に影響を与えない程度に透明であれば、公知の樹脂をいずれも使用できる。その一例としては、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、及び、これらの樹脂から選択される2種類以上の複合樹脂(例えば、スチレン-(メタ)アクリル樹脂等)の樹脂が挙げられる。これらの中では透明性に優れ、蛍光染料により着色されたときでも染料の色相に影響を与えないため(メタ)アクリル樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。
【0014】
蛍光染料により着色された樹脂は公知の方法で合成もできるし、市販品として入手もできる。市販品の一例としては、例えば、SINLOIHI COLOR BASE SF-5017 Pink、SINLOIHI COLOR BASE SF-5014 Orange(シンロイヒ株式会社製)等が挙げられる。
【0015】
蛍光インクの総質量中における着色剤の総含有量は通常1%~25%、好ましくは5%~20%、より好ましくは5%~15%である。
このような含有量とすることにより、記録画像の色濃度、及び吐出性の両方を良好にすることができる。
【0016】
上記の界面活性剤はシリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種類を含有する。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、具体例としては、BYK-345、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-3455(ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0017】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルかるボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付与物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシ歩き連エーテルポリマー化合物等が挙げられ、具体例としては、Zonyl TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、(DuPont社製);Capstone FS-30、FS-31、FS-3100(Chemours社製);PF-151N、PF-154N(オムノバ社製);F-114、F-410、 F-444、EXP.TF-2066、EXP.TF-2148、EXP.TF-2149、F-430、F-477、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558.F-559、F-561、F-562、R-40、R-41、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-77、EXP.TF-1540、EXP.TF-1760(DIC株式会社製);BYK-3440、BYK-3441等(ビックケミー社製)が挙げられる。
【0018】
蛍光インクの総質量中における界面活性剤の総含有量は特に制限されず、蛍光インクの静的表面張力を27mN/m以下となるように調整できる量が必要である。
界面活性剤の種類等により、静的表面張力を下げる能力は異なる。このため、蛍光インクの総質量中における、界面活性剤の総含有量を一概に決めることは極めて困難である。その目安としては通常0.05%~2.0%、好ましくは0.05%~1.0%である。
また、静的表面張力から動的表面張力を除した数値が0.7以上0.9以下、好ましくは0.8以上0.9以下となるように調整する事が好ましい。本明細書において、この数値は各表面張力の測定値から算出される。算出された数値の小数点以下2桁目を四捨五入して、上記の数値とする。
上記の様に各数値を調整する事で、インク非吸収性、インク難吸収性の印刷メディアに印刷した際、真円度の高いドット形状とすることができる。
静的表面張力の下限は特に限定されない。その目安としては通常5mN/m以上、好ましくは10mN/m以上、より好ましくは15mN/m以上、さらに好ましくは20mN/m以上、特に好ましくは24mN/m以上である。
また、上記インクの動的表面張力を測定し、静的表面張力から、動的表面張力を除した値が0.7以上0.9以下であることが好ましい。
上記インクの表面張力は、界面活性剤で調整することができる。界面活性剤としては、一般に、静的/動的表面張力の両方を低下させる作用を有するもの;静的表面張力の低下作用が大きく、動的表面張力の低下作用が小さいもの、の2種類が知られている。上記インクの静的表面張力、及び動的表面張力は、これらの界面活性剤を使い分けることにより調整することができる。
【0019】
上記の蛍光インクは、本発明により奏する効果を阻害しない範囲で有機溶剤、消泡剤、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、高分子化合物、水分散性樹脂等のインク調整剤を、必要に応じて含有できる。
【0020】
上記の有機溶剤としてはインクから分離しなければ特に制限されないが、水溶性有機溶剤が好ましい。その具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(好ましくは分子量400、800、1540、又はそれ以上のもの)、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のC3-C9ポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル(好ましくはC3-C10のモノ、ジ又はトリエチレングリコールエーテル、及びC4-C13のモノ、ジ又はトリプロピレングリコールエーテルよりなる群から選択されるグリコールエーテル);1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等の、C5-C9アルカンジオール;γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド等;等が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記のうち、水溶性有機溶剤としては、イソプロパノール、1,2-プロピレングリコール、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、グリセリン、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、及び2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等が好ましい。
また、水溶性ではない有機溶剤も、例えば層分離等を生じない範囲で使用しても良い。そのような有機溶剤としては、ヒドロキシ基とアシロキシ基を有するC8-16(好ましくはC8-12)アルキルが挙げられる。その具体例としては、例えばテキサノールが挙げられる。
【0022】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系、シリカ鉱物油系、オレフィン系、アセチレン系等が挙げられる。市販の消泡剤で入手可能なものとして、例えば、いずれも信越化学工業株式会社製のサーフィノール DF37、DF58、DF110D、DF220、MD-20;オルフィン SK-14が挙げられる。これらの消泡剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
防黴剤の具体例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。
【0024】
防腐剤の例としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系又は無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム又は安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製、商品名プロクセル GXL(S)やプロクセル XL-2(S)等が挙げられる。
【0025】
pH調整剤としては、調製されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを所定の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0026】
キレート試薬の具体例としては、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム又はウラシル二酢酸ナトリウム等があげられる。
【0027】
防錆剤の具体例としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール又はジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等があげられる。
【0028】
水溶性紫外線吸収剤の例としては、例えばスルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物又はトリアジン系化合物が挙げられる。
【0029】
水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン又はポリイミン等があげられる。
【0030】
水分散性樹脂は、常温で被膜化することによりインク組成物中の着色剤を被記録材に定着させる働きを有する。水分散性樹脂に使用される樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂等が挙げられる。
水分散性樹脂は、例えば、連続相としての水中に分散された樹脂エマルションの状態で使用される。
樹脂エマルションの中には、市販品として入手できるものもある。その具体例としては、例えば、スーパーフレックス126、150、170、210、420、470、820、830、860、890(ウレタン系樹脂エマルション、第一工業製薬株式会社製);ハイドランHW-350、HW-178、HW-163、HW-171、AP-20、AP-30、AP-40F、WLS-201、WLS-210(ウレタン系樹脂エマルション、DIC株式会社製);0569、0850Z、2108(スチレン-ブタジエン系樹脂エマルション、JSR株式会社製);AE980、AE981A、AE982、AE986B、AE104(アクリル系樹脂エマルション、株式会社イーテック製);等が挙げられる。
水分散性樹脂を使用するとき、上記インク組成物の総質量中における水分散性樹脂の含有量は、固形分換算で通常0.5~20%、好ましくは1~15%である。この範囲よりも少ないときは、被記録材に対して十分な定着性を得ることが困難となり、多いときは、インクジェット記録におけるインク液滴の正常な吐出が阻害される恐れがある。
【0031】
酸化防止剤の例としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。上記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類又は複素環類等が挙げられる。
【0032】
上記蛍光インク組成物をインクジェット記録に用いるときは、蛍光インク組成物に必要な成分以外の固体状の夾雑物を、例えばろ過分離することにより除去することが好ましい。ろ過分離の方法としては、公知のいずれかの方法を適宜用いることができる。例えば、ガラスろ紙GC-50(保留径子径0.5μm、アドバンテック製)、ガラス濾紙GA-100(保留粒子径1.0μm、アドバンテック製)といった濾紙を使用し、吸引濾過をする方法等が挙げられる。これらのガラス濾紙は、単独で使用しても良い。また、濾過の効率を上げる目的等により、2枚以上の濾紙を重ねて使用しても良い。
【0033】
上記蛍光インク組成物は、各種の記録において使用することができる。例えば、筆記具用、水性印刷、情報記録、捺染等に好適であり、インクジェット記録に用いることが特に好ましい。
【0034】
上記インクジェット記録方法は、上記インク組成物、又は上記インクセットの各インク組成物をインクとして用い、該インクの液滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行う方法である。記録の際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
インクジェットプリンタは、公知のいずれの記録方式を用いることができる。例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式);電気信号を音響ビームに変えインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等が挙げられる。
なお、上記インクジェット記録方法には、無色透明のインクを用いることにより、着色剤の定着性を向上させる方式等も含まれる。
産業用インクジェットプリンタは、印刷速度を高速にする目的で、ラインヘッド型のインクジェットプリンタの構成で、シングルパスでの印刷も好ましく行われる。上記インクにより、そのような印刷条件においても、適切な真円状のドット径となる印刷画像を得ることができる。
【0036】
上記着色体は、上記インク組成物又はそれを含むインクセットにより着色された物質を意味し、好ましくはインクジェットプリンタを用いるインクジェット記録方法によって着色された被記録材が挙げられる。該被記録材としては特に制限はないが、例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。これらの中では、情報伝達用シートが好ましい。
記録用シートは、インク受容層を有するものと、有さないものとに大別することができる。
インク受容層は、カチオン系ポリマーを基材に含浸あるいは塗工する方法;又は、多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等の無機微粒子を、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に基材に塗工する方法等により設けられる。
基材としては紙、合成紙、フィルム等が使用できる。
インク受容層を有する情報伝達用シートは、通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙等と呼ばれる。
【0037】
インク受容層を有さない記録用シートとしてはグラビア印刷、オフセット印刷等の用途に用いられるコート紙、アート紙等の各種の用紙;ラベル印刷用途に用いられるキャストコート紙;OHPシート;プラスチックフィルム等が挙げられる。その代表的な市販品の例としては、王子製紙株式会社製 商品名:OKトップコート+、ミラーコート・プラチナ;日本製紙株式会社製 商品名:オーロラコート;三菱製紙株式会社製 商品名:パールコート等が挙げられる。また、ここでいうプラスチックとは、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等がある。
【0038】
インク受容層を有しない情報伝達用シートを被記録材として用いるときは、着色剤の定着性等を向上させる目的で、被記録材に対して表面改質処理を施すことも好ましく行われる。
【0039】
表面改質の方法としてはコロナ放電処理、プラズマ処理及びフレーム処理から選択される、少なくとも1つの処理を行うことが好ましい。これらの処理としては、公知の方法を用いることができる。また、これらの処理に基づく表面改質の効果は、経時的に減弱することが一般的に知られている。このため、記録用シートに表面改質を行ったときは、速やかにインクジェット記録を行うことが好ましい。
記録シートに対する表面改質は、望みの効果が得られるように処理の回数;処理の時間;及び、印可する電圧;等を適宜調整して行うことができる。表面改質の状態は公知の方法で接触角を測定するなどし、改質の状態を確認することができる。
【0040】
上記インクジェット記録方法は、上記インクセットの各インクを含有する容器を有するインクジェットプリンタを使用して、記録を行う方法である。
【0041】
特に断りのない限り、上記した全ての成分は、必要に応じて、そのうちの1種類のみを;また、2種類以上を同時に使用することができる。
また、上記した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等においても同様である。
【0042】
本発明によれば、コート紙上においても適切なドット形状を維持し、高画質な画像を得る事が出来る蛍光インク及びこれを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
【実施例
【0043】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、濾過分離の操作を行ったときは、濾紙としてガラス濾紙GC-50とガラス濾紙GA-100を適宜単独又は併用し、吸引ろ過を行った。
静的表面張力の測定には、CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用いた。
動的表面張力の測定には、SITA Science line t60/2(英弘精機株式会社製)を用いた。
【0044】
下記表1中の略号等は、以下の意味を有する。
SF-5017:シンロイヒ株式会社製、製品名SINLOIHI COLOR BASE SF-5017 Pink(アクリル樹脂着色蛍光顔料分散液、固形分含有量30%)。
PG:プロピレングリコール。
GL-3:青木油脂株式会社製、製品名ブラウノンGL-3、グリセリンのポリオキシエチレン付加物、エチレンオキシ付加モル数3。
1,2-HD:1,2-ヘキサンジオール。
TEA:トリエタノールアミン。
Tex:テキサノール。
BYK-349:ビックケミー社製、商品名BYK-349。
BYK-3455:ビックケミー社製、商品名BYK-3455。
FS-31:Chemours社製、商品名Capstone FS-31。
SF465:日信化学工業株式会社製、商品名サーフィノール 465。
SF440:日信化学工業株式会社製、商品名サーフィノール 440。
水:イオン交換水。
【0045】
【表1】
【0046】
[ドット真円度評価試験]
インクジェットヘッドKJ4B-QA(京セラ株式会社製)を用いて、OKトップコート+(王子製紙株式会社製)に5%刻みで階調印刷を行い、試験片を得た。
得られた試験片を乾燥させた後、20%濃度部分を画像評価装置(QEA社製 商品名PIAS-II)にて観察し、ドットの真円度を測定した。結果を下記表2に示す。なお本測定において、真円度は1に近いほど真円状であり、良好なドット形状を示すことを意味する。
下記表2中の略語は、以下の意味を表す。
静的:静的表面張力の測定値。
動的:動的表面張力の測定値。
静的/動的:静的表面張力の測定値を、動的表面張力の測定値で除した値。
【0047】
【表2】
【0048】
上記表2から分かる通り、各実施例のインクにより得られたドットは、各比較例のインクにより得られたドットより真円度が1により近い事が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の蛍光インクにより得られたドットは、真円度が1に近く、高精細な印刷画像が得られる。このため、本発明の蛍光インクは各種の印刷用、特にインクジェット印刷用として極めて有用である。