(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】有価元素の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20231211BHJP
C22B 5/04 20060101ALI20231211BHJP
C22B 5/10 20060101ALI20231211BHJP
C22B 23/02 20060101ALI20231211BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B5/04
C22B5/10
C22B23/02
H01M10/54
(21)【出願番号】P 2020161073
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019225023
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 昌麟
(72)【発明者】
【氏名】對馬 卓
(72)【発明者】
【氏名】浦田 健太郎
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193424(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080266(WO,A1)
【文献】特表2019-502826(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107012332(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0235775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
C22B 5/10
C22B 5/04
C22B 23/02
H01M 10/54
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池からの回収物、還元剤、及びフラックスを混合する混合工程と、混合物を加熱して還元処理する還元工程と、
還元した混合物を冷却して金属を酸化物から選別する選別工程とを有する有価元素の回収方法において、
前記混合工程を、混合物に含まれる有価元素と化合している酸素量をO[mol/kg]、前記混合物中に含まれる還元剤の含有量をR[mol/kg]とした場合、以下の式(1)が成立するように、
かつ、
前記混合物中に含まれるAl
2O
3に対するSiO
2の濃度[wt%]の比x、Al
2O
3に対するCaOの濃度[wt%]の比yが、以下の式(2)~式(5)を満たすように行い、
前記還元工程を、温度をT [℃]
(ただし、T≧1400℃)、前記混合物を加熱する時間をt[min]とした場合、以下の式(6)が成立するように行う
ことを特徴とする有価元素の回収方法。
O/R≦0.97 ・・・(1)
x≧0.118 ・・・(2)
y≧-0.12×x+0.0755(0.118≦x≦0.375の場合)・・・(3)
y≧0.031(x>0.375の場合) ・・・(4)
y≦-x+0.6 ・・・(5)
T+5×t≧1490 ・・・(6)
但し、x=混合物中のSiO
2濃度[wt%]÷混合物中のAl
2O
3濃度[wt%]
y=混合物中のCaO濃度[wt%]÷混合物中のAl
2O
3濃度[wt%]
【請求項2】
前記還元剤として、炭素質還元剤、金属Al、または金属Siの少なくとも1種類以上を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の有価元素の回収方法。
【請求項3】
前記還元剤として、粒度75μm以下の積算体積が65%以上に調整されたものを用いる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の有価元素の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Al2O3やCoOX,NiOX含む酸化物からCoやNiといった有価元素を回収する有価元素の回収技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境規制が厳しくなる中、今後再生可能エネルギーは増加すると考えられており、自動車燃費向上に向けた電動化が進む中で、二次電池はますます重要性を増していくと考えられている。例えば、現在使用されている二次電池はリチウムイオンバッテリ(LIB)やニッケル水素電池(Ni-MH)が主流であり、これらの二次電池については今後も需要増が予想される。
【0003】
ここで、LIBやNi-MHなどの二次電池にはCoやNiなどのレアメタル(有価金属)、さらにはLiの酸化物などの有価元素(以降では、有価金属と有価な金属酸化物などを合わせて有価元素と呼称する)が使用されている。 例えば、LIB(lithium-ion rechargeable battery)の製造に不可欠とされるコバルトやニッケルについては、資源が世界的に遍在化しているなどの問題があり、資源枯渇のリスクが指摘されている。また、コバルトについても、鉱山での不当な労働実態が取り沙汰されており、採掘のみでは需要を十分に満たせない可能性がある。
【0004】
これらの観点から、コバルトやニッケルなどのレアメタルのリサイクル技術が注目されている。ただ、現行は湿式の溶媒抽出が中心であり、コスト的な問題から大量処理技術確立に至っていない。そこで、コバルトやニッケルを使用するLIBから、安価に、且つ、効率良く有価金属を回収する技術が要望されている。製鉄プロセスで利用される高温精錬技術(以下、乾式精錬技術)は、比較的安価な処理が可能で、社会的な再資源化の課題に応えるためにも、また自動車や電気機器などさまざまな産業分野で利用が可能であるという面でも技術の確立が急務であると考えられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、二次電池の製造過程で発生するアルカリ金属を含む金属酸化物から効率よく有価金属を回収するアルカリ金属を含む金属酸化物からの有価金属の回収方法が記載されている。上述した特許文献1の有価金属の回収方法は、二次電池の製造過程で発生するアルカリ金属を含む金属酸化物に、還元剤及び造滓剤を加えて溶融し、還元されて沈降する有価金属を回収するものとなっている。
【0006】
また、特許文献2には、使用済みリチウム2次電池から有価金属を簡便に収率よく回収する方法が記載されている。上述した特許文献2の有価金属の回収方法は、使用済みリチウム2次電池を焙焼して焙焼物を得る工程、該焙焼物を粉砕して粉砕物を得る工程、該粉砕物を篩い分けして篩下として1次有価金属濃縮物を得る工程、および該1次有価金属濃縮物をカルシウム化合物と混合し、次に溶融し、これにより生成するスラグを除去して、メタルを2次有価金属濃縮物として回収する工程からなるものとなっている。
【0007】
また、特許文献3には、リチウムイオン電池等の廃電池を乾式処理する際に、コバルト等の有価金属の回収率を向上し、かつ回収コストを低減できる方法が記載されている。上述した特許文献3の有価金属の回収方法は、アルミニウムと鉄を含む廃電池を焙焼して予備酸化処理を行う予備酸化工程ST20と、予備酸化工程ST20後の廃電池を熔融して熔融物を得る熔融工程ST21と、熔融物から、酸化アルミニウムを含む第1のスラグを分離して回収する第1のスラグ分離工程ST22と、第1のスラグ分離工程後の熔融物である第1の合金に酸化処理を行う第2酸化工程ST23と、第2酸化工程ST23後の第1の合金から、鉄を含む第2のスラグを分離して回収する第2のスラグ分離工程ST24とを経て、鉄とコバルトの分離性能に優れ、鉄の含有量が少ない第2の合金を得る方法において、第2のスラグを2回目以降の熔融工程ST21bを促進するために添加するフラックスとして再利用するものとなっている。
【0008】
また、特許文献4には、リチウムイオンバッテリーから金属を回収するためのリサイクル方法が記載されている。上述した特許文献4のリサイクル方法は、アルミニウム及び炭
素を含んでいるリチウムイオンバッテリーからコバルトを回収する方法であって、O2を注入する手段を備えた浴炉を準備する工程と、スラグ形成剤としてのCaO及びリチウムイオンバッテリーを含む冶金装入原料を準備する工程と、酸素を注入するとともに前記冶金装入原料を前記炉へ供給し、これによって少なくとも一部の前記コバルトが還元され、そして金属相中に集められる工程と、湯出しによって前記金属相中から前記スラグを分離する工程を含み、前記方法は、前記冶金装入原料の質量%で表したときに153質量%-3.5(Al%+0.6C%)[Al%及びC%は前記バッテリー中のアルミニウム及び炭素の質量%を表す]と等しい若しくはこれを超えるリチウムイオンバッテリーのフラクションを供給することで自己発生条件(autogeneous conditions)で操作されることを特徴とするものとなっている。 また、特許文献5には、廃二次電池を物理分別し、分離負極材と分離正極材とに分離してなる分離工程と、該分離工程により分離された正極材又は分離負極材から有価金属を回収する工程とを含み、廃二次電池から有価金属を回収する有価金属の回収システムが記載されている。上述した特許文献5の有価金属の回収システムは、廃二次電池を物理分別し、分離負極材と分離正極材とに分離してなる分離工程と、該分離工程により分離された正極材又は分離負極材から有価金属を回収する工程とを含むものとなっている。
【0009】
さらに、特許文献6には、廃電池中に含まれる有価金属を回収する工程において、工程中で生じる硫黄分を低減する方法が記載されている。上述した特許文献6の方法は、コバルト又はニッケルの少なくとも1種の有価金属を含む廃電池又は工程屑からの前記有価金属の回収方法であって、(1)予備焙焼処理、粉砕処理及び篩分け処理を経て、前記有価金属の1次濃縮物を得る1次濃縮工程、(2)前記1次濃縮物を硫酸で溶解処理し、該溶解液を2次濃縮物として得る2次濃縮工程、(3)前記2次濃縮物をアルカリ金属の水溶液を添加し水酸化処理後、酸化焙焼処理及び水洗処理により低硫黄化処理し、前記有価金属の3次濃縮物を得る3次濃縮工程、及び(4)前記3次濃縮物を熔融し、前記有価金属を回収する4次濃縮工程、を含むものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-226619号公報
【文献】特開平10-158751号公報
【文献】特開2012-224877号公報
【文献】特表2013-506048号公報
【文献】国際公開第2000-025382号公報
【文献】特開2016-037661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1の技術は、二次電池の製造工程で発生したLi,Mn,Co,Ni,Feを含む酸化物の原料から有価金属を合金として回収する技術であるが、この酸化物の原料にはAlがそもそも含まれておらず、Alが含まれた酸化物から合金回収する場合には適用することはできない。つまり、原料中にAl(Al2O3)が含まれている場合は、原料が高融点となるため、溶融することができなくなり、有価金属を合金として回収することが困難になる場合がある。
【0012】
また、特許文献2の技術は、CaO/Al2O3量が記載されているが、CaO添加量が多く、Al2O3に対するCaOの量が多いため、生産性が低く、コストを圧迫する可能性があり、Al2O3が多く含まれた場合の合金回収を含んでいない。また、適正な還元剤比の記載も無い。
また、特許文献3の技術は、粒状金属鉄を得るために必要な還元剤比も記載されていない。
【0013】
また、特許文献4の技術は、特許文献2の場合と同様に、適正な還元剤比が書かれていない上、SiO2,CaO添加量が多く、SiO2/Al2O3、並びにCaO/Al2O3の値が高くなっている。そのため、生産性が低くコストを圧迫する可能性があり、Al2O3が多く含まれた場合の合金回収が含まれていない。
また、特許文献5の技術は、原料中にAl2O3が含まれておらず、Alが含まれた酸化物か
ら合金回収する場合には適用することはできない。
【0014】
さらに、特許文献6の技術は、焼却、破砕、篩分け後の篩下からCu,Cを除いた残渣をC(コークス)あるいはAlにて還元する方法であるが、還元剤として100%コークスを使用した場合、C/A(CaO/Al2O3)やS/A(SiO2/Al2O3)が2.7程度の値となりフラックス量が多すぎるし、還元剤にAlを用いた場合でも、C+A(SiO2+CaO)=1.72程度となり、この場合もフラックス量が多すぎる。そのため、特許文献6の技術でも、生産性が低く、コストを圧迫する可能性がある。
【0015】
つまり、上述した特許文献1~特許文献6の技術は、二次電池の回収物を溶融させつつ還元させて有価金属を回収するものであり、回収物を溶融させるためにフラックスを添加するものとなっている。ただ、回収物がAl2O3を含むスラグである場合、溶融に向けてフラックスを添加する場合であっても、フラックスの添加量が多すぎると、混合物中の回収対象であるCoやNiの量が減り、直接的に生産性を悪化させる。そのため、CoやNiの合金の回収は可能であるものの、生産性が悪化する結果となり、コストを圧迫して乾式精錬の特徴である比較的安価という長所が消されてしまう懸念があった。
【0016】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、Al2O3を含む回収物からCo、Ni、さらにはLiの酸化物などの有価元素を安価に且つ高収率で回収する有価元素の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の有価元素の回収方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の有価元素の回収方法は、二次電池からの回収物、還元剤、及びフラックスを混合する混合工程と、混合物を加熱して還元処理する還元工程と、還元した混合物を冷却して金属を酸化物から選別する選別工程とを有する有価元素の回収方法において、前記混合工程を、混合物に含まれる有価元素と化合している酸素量をO[mol/kg]、前記混合物中に含まれる還元剤の含有量をR[mol/kg]とした場合、以下の式(1)が成立するように、かつ、前記混合物中に含まれるAl2O3に対するSiO2の濃度[wt%]の比x、Al2O3に対するCaOの濃度[wt%]の比yが、以下の式(2)~式(5)を満たすように行い、前記還元工程を、温度をT[℃](ただし、T≧1400℃)、前記混合物を加熱する時間をt[min]とした場合、以下の式(6)が成立するように行うことを特徴とする。
【0018】
O/R≦0.97 ・・・(1)
x≧0.118 ・・・(2)
y≧-0.12×x+0.0755(0.118≦x≦0.375の場合)・・・(3)
y≧0.031(x>0.375の場合) ・・・(4)
y≦-x+0.6 ・・・(5)
T+5×t≧1490 ・・・(6)
但し、x=混合物中のSiO2濃度[wt%]÷混合物中のAl2O3濃度[wt%]
y=混合物中のCaO濃度[wt%]÷混合物中のAl2O3濃度[wt%]
好ましくは、前記還元剤として、炭素質還元剤、金属Al、または金属Siの少なくとも1種類以上を用いるとよい。
【0019】
好ましくは、前記還元剤として、粒度75μm以下の積算体積が65%以上に調整されたものを用いるとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有価元素の回収方法によれば、Al2O3を含む回収物からCo、Ni、さらにはLiの酸化物などの有価元素を安価に且つ高収率で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】O/Rの値と、混合物の加熱温度とがそれぞれ異なる場合に有価元素の回収結果がどのように変動するかを示した図である。
【
図2】S/Aの値と、C/Aの値とがそれぞれ異なる場合に有価元素の回収結果がどのように変動するかを示した図である。
【
図3】加熱温度及び加熱時間から得られるパラメータと歩留まりとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る有価元素の回収方法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態の有価元素の回収方法は、使用済み二次電池の回収物から還元反応を利用して有価金属を単体金属や合金の状態で回収するものとなっている。また、本実施形態の有価元素の回収方法は、上述した還元反応を利用して、Liなどの酸化物を、有価な金属酸化物として回収するものとなっている。つまり、本発明の回収方法は、単体金属や合金だけでなく、金属酸化物をも回収対象としており、金属酸化物を含む有価元素を回収対象とするものとなっている。
【0023】
具体的には、本実施形態の回収方法は、二次電池に対して、例えば、加熱、破砕、篩別、磁選の処理を加えることで得られる有価元素を含む回収物を回収対象としている。そして、二次電池からの回収物、還元剤、及びフラックスを混合する混合工程と、混合物を加熱して還元処理する還元工程と、を行うことで、混合物から金属と酸化物とを分離し、冷却後金属を酸化物から選別して回収するものとなっている。
【0024】
また、本実施形態の回収方法は、回収物に還元剤を混合する際は、混合物中で有価元素(有価金属)と化合している酸素量をO[mol/kg]、混合物中に含まれる還元剤の還元剤含有量をR[mol/kg]とした場合、式(1)が成立するようにし、かつ、混合物中に含まれるAl2O3に対するSiO2の濃度[wt%]の比x、Al2O3に対するCaOの濃度[wt%]の比yが以下の式(2)~式(5)を満たすように、回収物に還元剤を混合して有価元素を回収するものであり、還元剤が混合された回収物を加熱する際は、混合物を加熱する加熱温度をT[℃]、混合物を加熱する時間をt[min]とした場合、以下の式(6)が成立するように、回収物を加熱することを特徴とする。
【0025】
次に、本実施形態の回収方法に用いられる回収物や還元剤、またこれらを用いて行われる各工程の内容について詳しく説明する。
上述した回収方法の実施対象である回収物は、ニッケル及びコバルト、さらにはLiの酸化物などの有価元素を含む二次電池を、例えば、加熱、破砕、篩別等することで得られるものである。すなわち、二次電池には正極材にコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムなどが用いられる場合があり、Li,Mn,Co,Niなどの有価元素が含まれている。また、二次電池には銅などの金属が用いられている場合もあるため、二次電池に対して例えば加熱、破砕、篩別等を適宜行って、Li,Mn,Co,Niなどの有価元素が回収されやすくされた回収物を作製する。
【0026】
具体的に例示すると、回収物に対してまず加熱を行って、セパレータなどとして二次電池に含まれる合成樹脂等の可燃材料を燃焼させる。このようにすれば余計な合成樹脂等が焼失し、Li,Mn,Co,Ni,Fe,Cuなどの金属が酸化物ないし金属の状態で残るため、有価元素が回収しやすくなる。
なお、Li,Mn,Co,Ni,Fe,Cuなどの酸化物ないし金属は大きな塊となっている場合もあるため、適宜、破砕や選別を行って後述する還元剤と反応しやすいように粒度調整すると好ましい。また、Co、Ni、及びFeなどのように磁石に磁着する金属の場合は、適宜磁選を行えば、磁着しない金属を有価金属ではない金属の酸化物やゴミ類として取り除くことができるので、有価元素の回収効率を高めることも可能となる。
【0027】
還元剤は、自らが酸化されることで、酸化物中の有価元素の中でも、CoやNiなどの有価金属に結合した酸素を取り除く目的で回収物に混合される。還元剤は、小径の粒子状(粉状)に形成されており、同様に小径の粒子状(粉状)に形成された回収物と均質に混合された上で、所望の温度まで加熱されることで、還元反応を起こすようになっている。還元反応が発生すると、回収物中に含まれる有価金属の酸化物が還元剤と反応し、有価金属の酸化物が単体の金属または合金に還元される。
【0028】
本発明の還元剤には、さまざまな還元剤を用いることができるが、例えば瀝青炭や褐炭などの石炭、木炭、竹炭などの炭素系の還元剤を好適に使用することができる。炭素系の還元剤は還元反応による反応生成物が二酸化炭素や一酸化炭素であるため、反応生成物を回収物中から容易に取り除くことができ、有価元素を単体の金属または合金として回収しやすくなるためである。
【0029】
上述した還元剤に炭素を用いる場合、回収物に対する還元剤の混合比率には好適な範囲が存在している。つまり、混合物中で有価元素と化合している酸素量をO[mol/kg]、還元剤含有量をR[mol/kg]とした場合、以下の式(1)の関係を満足するのが好ましい。
すなわち、式(1)の関係は、酸素量O[mol/kg]を還元剤含有量R[mol/kg]で除した比率(O/R)について、以下のような関係を規定したものとなっている。
【0030】
0<O/R≦0.97 ・・・(1)
上述した比率(O/R)が高すぎる場合、還元しようとする有価金属に化合した酸素量に対して、還元剤が少ないため、還元不足となって有価金属に化合した酸素を十分に還元できなくなる。そのため、ニッケルやコバルトなどの有価金属を全て金属化できず、有価元素(有価金属)の回収効率が低下してしまう。
【0031】
また、比率(O/R)が低すぎる場合、ニッケルやコバルトなどの有価金属は十分に金属化されるが、酸素量に対して還元剤が過剰となるため、還元剤が反応後も残ってしまう。このように残った還元剤は回収目的の金属の凝集を妨げるため、還元後の有価金属の粒子が微細なものとなり、後述する磁選での効率を著しく低下させ、有価元素(有価金属)の回収効率(回収歩留り)を低下させてしまう。
【0032】
そのため、上述した比率(O/R)については、0<O/R≦0.97とされるのが良く、好ましくは0.46≦O/R≦0.97、より好ましくは0.53≦O/R≦0.97とされるのが良い。
本発明の有価元素の回収方法は、上述した還元剤を回収物に混合すると共に混合物を加熱して還元し、還元後の混合物を溶融状態にするものとなっている。このような溶融を行うことで、有価元素の中でも有価金属を、単体金属や合金の状態で、酸化物から分別することが容易になる。上述した還元後の混合物を溶融状態にさせるには、以降に示す回収物の組成が重要となる。
【0033】
具体的には、上述した回収物には、Al2O3、SiO2、CaOなどの酸化物が含まれており、これらの中でもAl2O3が存在すると、混合物を溶融状態にすることが困難になる。
そこで、本発明の有価元素の回収方法では、混合物中のAl2O3に対するSiO2の濃度[wt%]の比x、Al2O3に対するCaOの濃度[wt%]の比yが以下の式(2)~式(5)を満たすように、回収物あるいは混合物の組成を調整する。
【0034】
x≧0.118 ・・・(2)
y≧-0.12×x+0.0755(0.118≦x≦0.375の場合)・・・(3)
y≧0.031(x>0.375の場合) ・・・(4)
y≦-x+0.6 ・・・(5)
但し、x=混合物中のSiO2濃度[wt%]÷混合物中のAl2O3濃度[wt%]
y=混合物中のCaO濃度[wt%]÷混合物中のAl2O3濃度[wt%]
上述した式(2)~式(5)は、SiO2及びCaOなどで構成される回収物中に、溶融を抑制するAl2O3がどの程度含まれるかを混合物中でのSiO2- Al2O3間およびCaO- Al2O3間の濃度比x,yで示したものであり、実験より導かれるものである。なお、式(2)~式(5)の根拠については、後ほど実験例を用いて説明する。
【0035】
上述した式(2)~式(5)が成立しない場合であっても、回収物としてAl2O3、SiO2、CaOなどの組成が異なるものがある場合は、回収物を組成が異なるものに切り替えるか、組成が異なるものを一部混合して用いることで、式(2)~式(5)を満足するようにすることができる。
また、回収物としてAl2O3、SiO2、CaOなどの組成が異なるものを用意できない場合には、必要に応じてAl2O3、SiO2、CaOなどの酸化物、あるいはこれらを含むフラックスなどを回収物に適量添加することで、式(2)~式(5)を満足するようにすることもできる。
【0036】
上述した本実施形態の有価元素の回収方法によれば、Al2O3を含む回収物からCoやNiといった有価金属(有価元素)を安価に且つ効率よく回収することができる。
上述した回収物に還元剤を式(1)の関係が成立するように混合すると共に、式(2)~式(5)の関係を満足するように混合物の組成を調整すると、加熱により混合物を溶融状態とすることが可能となる。ただ、混合物を溶融状態にできたとしても、冷却後に磁選で回収する際に回収率、つまり歩留まりが良好になるかどうかは別問題となる。
【0037】
というのも、磁選により磁着物と非磁着物とを確実に分離する場合には、磁着物や非磁着物の粒度が重要になる。例えば、コバルトなどの酸化物中の酸素量に対してグラファイトなどの還元剤の量が多すぎる状態(O/Rが非常に小さい状態)で混合物を還元すると、コバルトなどが還元されてメタル化するが、還元剤の量が元々酸素量より過剰なので、反応に使われなかった還元剤が回収物中に残留する。還元剤であるグラファイトなどが回収物中に存在していると金属の凝集が阻害されるため、残留している還元剤により金属同士の凝集が阻害される。その結果、溶融してあまり時間が経っていない場合などでは回収物は数十μm以下の粒径とされた極めて微細なメタルが含まれた状態で回収される。
【0038】
ところが、このように粒径が数十μm以下、正確には粒径が1mm以下のメタルは、磁選の際に分離が困難であり、良好な磁選効率で回収することができず、メタルの回収率が大きく低下してしまう。
そこで、本発明の有価元素の回収方法では、メタルの凝集をより進め、粒径が1mmを超える粒子まで成長させてからメタルを回収している。具体的には、加熱温度が高く、加熱時間が長いほど、メタルの凝集は進行する。そこで、本発明では、加熱温度をT[℃]、加熱時間をt[min]とした場合に、式(6)の関係が成立するように加熱を行うことで、有価金属(有価元素)を高歩留まりで回収可能としている。
【0039】
また、上述した式(1)~式(6)の関係を満足することで、有価元素の中でも、有価金属を単体金属や合金として効率よく回収できる。その一方で、CoやNiなどの有価金属を取り除いた後の混合物には、有価なLiなどの酸化物が高濃度で含まれている。そのため、還元後の混合物をそのまま、あるいは適宜化学処理を行うことで、Li酸化物などの有価元素も回収することが可能となる。
【実施例】
【0040】
次に、実施例及び比較例を用いて、本発明の有価元素の回収方法が有する作用効果について詳しく説明する。
実施例及び比較例は、リチウムイオンバッテリ(LIB)の廃電池に対して焼却、粉砕、篩分を行い、篩下に分別されたものを回収物として、有価元素の回収を行うと共に、回収率の算出を行ったものである。より詳しくは、実施例及び比較例は、以下の実験1~実験3に従って行った。
「実験1」
実験1の実施例及び比較例は、回収物に混合する還元剤に粉末状石炭を用いたものとなっている。なお、この粉末状石炭には、瀝青炭をボールミルにて粉砕し、レーザー回折・散乱法による粒度が75μm以下となるものの積算体積が65%以上に調整されたものを用いている。この混合物については、高周波にてグラファイト坩堝(内径40mmφ)を加熱し、坩堝からの輻射加熱により混合物(塊成物)を加熱した。また、坩堝内にR熱電対を設置し、R熱電対にて坩堝内の温度を監視した。なお、坩堝内はArなどの不活性ガスあるいはN2ガスを充填した不活性な雰囲気に保持し、坩堝内の混合物へ直接雰囲気ガスを吹き付けないように配慮した。
【0041】
また、混合物の加熱は、所定の加熱温度(1300℃、1350℃、1375℃、1400℃)のいずれかに加熱するものとし、約100℃/minの昇温速度で昇温し、所定の加熱温度に到達した後は所定の加熱温度のまま6分間に亘って坩堝内を加熱状態に保持した。
上述した実施例及び比較例については、加熱後の混合物から得られた1mm以上の有価金属を対象として、回収の歩留(回収率)を算出した。具体的には、この回収率は、「回収された有価金属の総重量」を、「混合物中に最初から含まれていたCo、Ni、Mn、Cu、及びFeの重量の総和」で除した比率であり、算出された比率を百分率で表したものである。
【0042】
つまり、上述した回収率を算出するには、まず「回収された有価金属の総重量」を求めることが必要となる。
すなわち、加熱後の混合物から得られた反応生成物に対し粉砕後、磁選を行う。この磁選において磁着側に選別された反応生成物を、1mmの目開きで篩分けし、篩上に残った反応生成物の重量を秤量することにより、上述した「回収された有価金属の総重量」を求めることができる。なお、本実施例においては磁選により回収を行ったが、回収方法は磁選
に限らず、他の一般的な回収技術を採用することが可能である。
【0043】
一方、「混合物中に最初から含まれていたCo、Ni、Mn、Cu、及びFeの重量の総和」を求める場合には、加熱前の混合物について、混合物の原料すべてについて原則として分析を行う。つまり、混合物が回収物と還元剤とで構成される場合は回収物と還元剤とのそれぞれについてICP(誘導結合プラズマ発光分析法)で分析を行う。また、混合物が回収物と還元剤とに加えてフラックスなどを含む場合や、複数種の回収物を混合して用いる場合には、フラックスについてもICP分析を行ったり、すべての回収物についてICP分析を行ったりする。
【0044】
このようにしてICPで分析を行い、混合物の原料中に含まれるCo、Ni、Mn、Cu、及びFeの定量分析を行い、混合物中に最初から含まれていたCo、Ni、Mn、Cu、及びFeの濃度(重量)を求める。このようにして求められた混合物中に最初から含まれていたCo、Ni、Mn、Cu、及びFeの重量を、電子天秤で秤量した混合物の重量で除して、混合物中のCo、Ni、Mn、Cu、及びFeの重量濃度(重量割合)を算出する。
【0045】
最後に、算出された混合物中のCo、Ni、Mn、Cu、及びFeの重量濃度に、坩堝に投入された混合物重量を乗じて、坩堝中の混合物に含まれるCo、Ni、Mn、Cu、及びFeの各重量を算出し、算出された各重量の和を「回収された有価金属の総重量」として求めた。
このようにして求められた「混合物中に最初から含まれていたCo、Ni、Mn、Cu、及びFeの重量の総和」で、上述した「回収された有価金属の総重量」を除したものの百分率が、回収率(歩留まり)である。
【0046】
なお、下記の実験1,2については、回収率(歩留り)が0%より大きい場合を合格として、0%<歩留まり<80%となる条件を「△」で示し、歩留り≧80%となる条件を「○」で示した。また、1mm以上の金属が全く得られない条件を不合格とし、「×」で示した。また、下記の実験3については、回収率(歩留り)が80%より小さい場合を不合格として、0%<歩留り<80%となる条件を「×」で示し、歩留り≧80%となる条件を合格として「○」で示した。
【0047】
実験1に関する実験結果を表1に示す。
【0048】
【0049】
上述した表1の「O/R」の欄を見ると、混合物中で有価金属と化合している酸素量をO[mol/kg]、混合物中に含まれる還元剤の還元剤含有量をR[mol/kg]とした場合、O/Rの値が0.14~0.97の場合は回収率の評価が「○」または「△」となり、O/Rの値が1.03より大きい場合は回収率の評価が「×」となることがわかる。
また、表1の「温度」の欄を見ると、加熱温度が1400℃の場合は回収率の評価が「○」または「△」となり、加熱温度が1300℃、1350℃、または1375℃の場合は回収率の評価が「×」となることがわかる。
【0050】
なお、表1の「O/R」及び「温度」の結果を、横軸に「O/R」の値、縦軸に「温度」の値をとって、グラフ上に「○」、「△」、及び「×」の結果をプロットすると、
図1として示すことができる。
すなわち、
図1に示すように、回収率の評価が「○」または「△」となるのは、加熱温度が1400℃以上であって、「O/R」の値が0.14~0.97となる場合に限られることが理解できる。
【0051】
表1及び
図1の結果から、上述したO/Rを0.14~0.97、より好ましくはO/Rを0.56~0.97とすることで、良好な歩留まりで有価金属を回収することが可能となると判断される。
「実験2」
実験2は、上述した混合物中のSiO
2濃度[wt%]を混合物中のAl
2O
3濃度[wt%]で除した比率x(=S/A)と、混合物中のCaO濃度[wt%]を混合物中のAl
2O
3濃度[wt%]で除した比率y(=C/A)とが、歩留まりに与える影響を調査したものである。
【0052】
実験2に関する実験結果を表2に示す。
【0053】
【0054】
実施例は、混合物中でのAl2O3の濃度が16.0wt%~17.3wt%、SiO2の濃度が2.0wt%~6.3wt%、CaOの濃度が0.5wt%~2.6wt%となる組成についてのものである。この実施例の濃度を上述した比率x及び比率yを用いて示すと、混合物中のSiO2濃度[wt%]を混合物中のAl2O3濃度[wt%]で除した比率x(=S/A)が0.118~0.390になり、且つ混合物中のCaO濃度[wt%]を混合物中のAl2O3濃度[wt%]で除した比率y(=C/A)が0.031~0.163になる結果となる。
【0055】
また、比較例は、混合物中でのAl
2O
3の濃度が16.7wt%~17.7wt%、SiO
2の濃度が0.6wt%~3.4wt%、CaOの濃度が0.5wt%~3.7wt%となる組成についてのものである。この比較例の濃度は、実施例と同様に比率x及び比率yを用いて示すと、比率x(=S/A)が0.036~0.201になり、且つ比率y(=C/A)が0.031~0.155の結果となる。
さらに、表1と同様に表2の「S/A」及び「C/A」と回収率との関係をわかりやすくする
ために、横軸に「S/A」の値、縦軸に「C/A」の値をとって、グラフ上に「○」、「△」、及び「×」の結果をプロットすると、
図2のような結果となる。
【0056】
図2に示すように、回収率の評価が○または△となるのは、図中にグレーで網掛けされた部分である。この網掛けされた部分は、(I)~(IV)の4つの境界線から構成されている。この4つの境界線を数式で示すと、以下の式(2)~式(5)の関係が得られる。
x≧0.118 ・・・(2)
y≧-0.12×x+0.0755(0.118≦x≦0.375の場合)・・・(3)
y≧0.031(x>0.375の場合) ・・・(4)
y≦-x+0.6 ・・・(5)
以上のことから、式(2)~式(5)の関係を満足するような、x(=S/A)及びy(=C/A)であれば、回収率の評価が「○」または「△」となり、Al
2O
3を含む回収物からCoやNiといった有価金属を安価に且つ効率よく回収することが可能となる。
【0057】
なお、上述したようにS/A (SiO2/Al2O3)及びC/A (CaO/Al2O3)を規定するのは、次のような理由による。すなわち、使用済み二次電池には、還元され金属になるCo,Ni以外にも、酸化物としてスラグになる成分としてAl2O3,MnOX, Li,F等が含まれており、回収物は複雑な組成となる。ここで、回収物から回収目的のCo,Niなどの有価金属を得るためには、メタル並びに酸化物をいずれも溶融状態とする必要がある。
【0058】
そこで、本発明の有価元素の回収方法では、S/A及びC/Aを上記した範囲にコントロールすることで、スラグ溶融性を確保して、有価金属を安価に且つ効率よく回収可能としている。
つまり、メタル/スラグを良好に分離可能となるように、式(2)~式(4)の関係を設定する。また、フラックスを入れ過ぎると、生産性が低下しコストを圧迫するため、生産性を保持して経済性を保つために、式(5)のように(C+S)/A≦0.6となるよう添加量の上限を設定した。
「実験3」
上述した加熱温度、式(1)~式(5)などを満足した場合、Co,Niなどの有価金属を、メタルや酸化物として分離することができる。ただ、本発明の有価元素の回収方法は、有価金属を金属の塊として回収することを目的としている。言い換えれば、粒径が小さすぎて金属の塊とはならないようなもの、例えば目開き1mmで篩下となるような微細な有価金属が得られても、有価金属が金属の塊として回収できたことにはならない。このような微細な金属の粒子は磁選を用いても回収することが困難であり、良好な磁選効率で回収することができず、メタルの回収率が大きく低下させてしまう。
【0059】
そこで、本発明の有価元素の回収方法では、微細な金属の粒子をより凝集させ、粒径が1mmを超える粒子まで成長させてからメタルとして回収している。粒径1mmを超える粒子として回収するのであれば、良好な磁選効率を維持することができるからである。なお、加熱温度を高くし、加熱時間を長く取れば取るほど、メタルを凝集させることができる。
【0060】
具体的には、本発明では、加熱温度をT[℃]、加熱時間をt[min]とした場合に、式(6)の関係が成立するように加熱を行うことで、有価元素を高歩留まりで回収可能としている。この式(6)の関係式は、経験的に導かれるものであり、実際のデータを満足させることを出願人は確認している。
T+5×t≧1490 ・・・(6)
上述した式(6)の関係(加熱温度T[℃]と加熱時間t[min]との関係)は実験3の結果から導かれる。
【0061】
すなわち、表3に示すように、実験No.1~No.7の7つのサンプルについて、加熱温度T[℃]を1373℃~1548℃の範囲で変化させると共に、加熱時間t[min]を1.2min~23.0minの範囲で変化させて、回収物から有価金属を回収する場合の歩留まりを計測する。
【0062】
【0063】
上述した実験No.1~No.7のサンプルについて、式(6)の左辺に相当するパラメータ(温度・時間のパラメータ)、すなわち「T+5×t」のパラメータを計算すると、比較例である実験No.1~No.4は1395.9~1488.3となり、実施例である実験No.5~No.7は1491.5~1574.1となる。パラメータが1395.9~1488.3の比較例はいずれも「×」の評価となり、パラメータが1491.5~1574.1の実施例はいずれも「○」の評価となった。
【0064】
また、表1や表2と同様に表3の「温度・時間のパラメータ」と「歩留まり」の関係をわかりやすくするために、横軸に「温度・時間のパラメータ」の値、縦軸に「歩留まり」の値をとって、グラフ上に「○」及び「×」の結果をプロットすると、
図3のような結果となる。
図3に示すように、「温度・時間のパラメータ」に対して、「歩留まり」は直線的な変化(線形変化)を示す。ここで、パラメータが1488.3の実験No.4が79.7%の歩留まりになるのに対して、パラメータが1491.5の実験No.5が85.5%の歩留まりになる。このことから、パラメータを1490以上、好ましくは1520以上とすることで、80%以上、好ましくは90%以上の「歩留まり」を得ることが可能になると考えられる。
【0065】
また、有価金属の回収率に優れる実施例(実験No.5~No.7)は、CoやNiなどの有価金属を取り除いた後の混合物に、有価なLiなどの酸化物を高濃度で含んでいる。そのため、還元後の混合物をそのまま、あるいは適宜化学処理を行うことで、Li酸化物などの有価元素も効率よく回収できることを出願人は確認している。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。