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  • 特許-防振装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
F16F13/10 K
F16F13/10 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020170269
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062335
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017304(JP,A)
【文献】特開2014-098445(JP,A)
【文献】特開2009-041740(JP,A)
【文献】特開2006-029591(JP,A)
【文献】特公平06-105095(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、
前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結した弾性体と、
前記第1取付部材内の液室を、前記弾性体を隔壁の一部に有する主液室および副液室に仕切る仕切部材と、を備え、
前記仕切部材は、
前記主液室から前記副液室側に向けて延びる第1オリフィス通路と、
前記副液室から前記主液室側に向けて延びるとともに、前記第1オリフィス通路に接続された第2オリフィス通路と、を備え、
前記第1オリフィス通路は、前記主液室から前記第1取付部材の中心軸線回りに沿う周方向の一方側に向けて延び、
前記第2オリフィス通路は、前記第1オリフィス通路との接続部分から周方向の他方側に向けて延び、
前記仕切部材に、前記第1オリフィス通路と前記第2オリフィス通路との接続部分と、前記副液室と、を直結する短絡通路が形成され
前記仕切部材は、前記主液室および前記副液室それぞれの隔壁の一部をなし、かつ弾性変形可能に設けられたメンブランを備え、
前記短絡通路は、前記副液室のうち、前記第1オリフィス通路および前記第2オリフィス通路により径方向の外側から囲まれ、かつ前記メンブランと対向する部分に、径方向に開口している、防振装置。
【請求項2】
前記短絡通路の流路断面積は、前記第1オリフィス通路と前記第2オリフィス通路との接続部分の流路断面積より小さい、請求項1に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に示されるような、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、第1取付部材と第2取付部材とを連結した弾性体と、第1取付部材内の液室を、弾性体を隔壁の一部に有する主液室および副液室に仕切る仕切部材と、を備え、仕切部材に、主液室と副液室とを連通するオリフィス通路が形成された防振装置が知られている。
そして、防振装置に振動が入力されると、第1取付部材および第2取付部材が、弾性体を弾性変形させながら相対的に変位して、主液室の内圧が変動するのに伴い、オリフィス通路に液体が流通することで、この振動が減衰、吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/051627号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような構成の防振装置では、周波数が同等であっても振幅が変動すると、入力振動を減衰、吸収することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、周波数が同等であれば、振幅が増減しても、入力振動を減衰、吸収することができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結した弾性体と、前記第1取付部材内の液室を、前記弾性体を隔壁の一部に有する主液室および副液室に仕切る仕切部材と、を備え、前記仕切部材は、前記主液室から前記副液室側に向けて延びる第1オリフィス通路と、前記副液室から前記主液室側に向けて延びるとともに、前記第1オリフィス通路に接続された第2オリフィス通路と、を備え、前記第1オリフィス通路は、前記主液室から前記第1取付部材の中心軸線回りに沿う周方向の一方側に向けて延び、前記第2オリフィス通路は、前記第1オリフィス通路との接続部分から周方向の他方側に向けて延び、前記仕切部材に、前記第1オリフィス通路と前記第2オリフィス通路との接続部分と、前記副液室と、を直結する短絡通路が形成されている。
【0007】
本発明の防振装置によれば、第1オリフィス通路が、主液室から周方向の一方側に向けて延び、第2オリフィス通路が、第1オリフィス通路との接続部分から周方向の他方側に向けて延びているので、液体が、主液室および副液室のうちのいずれか一方から他方に向けて、第1オリフィス通路および第2オリフィス通路を流れる際、第1オリフィス通路での流通方向と、第2オリフィス通路での流通方向と、が逆向きになる。したがって、例えば、第1オリフィス通路および第2オリフィス通路が周方向に直結されて、各前記流通方向が同じ向きになっている場合と比べて、入力振動の振幅の増減、つまり第1オリフィス通路および第2オリフィス通路を流れる液体の流速の増減に合わせて、液体の流通抵抗を増減させやすくすることができる。これにより、周波数が同等であれば、振幅が増減しても、第1オリフィス通路および第2オリフィス通路で液柱共振を生じさせ、入力振動を減衰、吸収することができる。
仕切部材に、第1オリフィス通路と第2オリフィス通路との接続部分と、副液室と、を直結する短絡通路が形成されているので、振動入力時に、第1オリフィス通路と第2オリフィス通路との接続部分に到達した液体の一部を、短絡通路を通して副液室に逃がすことが可能になり、この接続部分における液体の滞留が抑えられ、液体が第1オリフィス通路および第2オリフィス通路を円滑に流れることとなり、動ばねを抑えることができる。
第1オリフィス通路、および第2オリフィス通路が、径方向に互いに接続されて配置された場合、防振装置の軸方向のかさ張りを抑えることができる。
【0008】
前記短絡通路の流路断面積は、前記第1オリフィス通路と前記第2オリフィス通路との接続部分の流路断面積より小さくてもよい。
【0009】
この場合、短絡通路の流路断面積が、第1オリフィス通路と第2オリフィス通路との接続部分の流路断面積より小さくなっているので、第1オリフィス通路および第2オリフィス通路の共振周波数等を容易にチューニングすることができる。
【0010】
前記仕切部材は、前記主液室および前記副液室それぞれの隔壁の一部をなし、かつ弾性変形可能に設けられたメンブランを備えてもよい。
【0011】
この場合、仕切部材が、主液室および副液室それぞれの隔壁の一部をなし、かつ弾性変形可能に設けられたメンブランを備えているので、振動入力時に、メンブランを弾性変形させることが可能になり、動ばねを低く抑えることができる。
メンブランが、主液室および副液室それぞれの隔壁の一部をなすように弾性変形可能に設けられていて、例えば、主液室および副液室の双方に連通した収容室内に移動可能に収容された、いわゆるガタメンブランではないので、振動入力時に、メンブランが他の部材に衝突して打音が生ずるのを抑制することができる。
【0012】
前記短絡通路は、前記副液室のうち、前記第1オリフィス通路および前記第2オリフィス通路により径方向の外側から囲まれ、かつ前記メンブランと対向する部分に、径方向に開口してもよい。
【0013】
この場合、短絡通路が、副液室のうち、第1オリフィス通路および第2オリフィス通路により径方向の外側から囲まれ、かつメンブランと対向する部分に、径方向に開口しているので、短絡通路が、例えば副液室の隔壁の一部をなすダイヤフラム等の部材に閉塞されにくくすることが可能になり、液体を短絡通路から副液室に円滑に流入させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周波数が同等であれば、振幅が増減しても、入力振動を減衰、吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る防振装置の縦断面図である。
図2図1の防振装置のII-II線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施形態に係る防振装置を、図1および図2を参照しながら説明する。
防振装置1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材11、および他方に連結される第2取付部材12と、第1取付部材11と第2取付部材12とを連結した弾性体13と、第1取付部材11内の液室14を、弾性体13を隔壁の一部とする主液室15および副液室16に仕切る仕切部材17と、を備えている。
この防振装置1が、例えば自動車のエンジンマウントとして使用される場合、第1取付部材11が振動受部としての車体に連結され、第2取付部材12が振動発生部としてのエンジンに連結される。これにより、エンジンの振動が車体に伝達することが抑えられる。
【0017】
図示の例では、仕切部材17は、液室14を、第1取付部材11の中心軸線Oに沿う軸方向に沿って、主液室15と副液室16とに区画している。
以下、仕切部材17に対して軸方向に沿う主液室15側を上側といい、副液室16側を下側という。防振装置1を軸方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0018】
第1取付部材11は、上側に位置する上筒部11aと、上筒部11aより内径および外径が小さく、かつ下側に位置する下筒部11bと、上筒部11aと下筒部11bとを連結し全周にわたって連続して延びる絞り部11cと、を備えている。下筒部11bの内周面は、被覆ゴムにより覆われている。被覆ゴムは、弾性体13と一体に形成されている。
【0019】
第2取付部材12は、棒状に形成されるとともに、中心軸線Oと同軸に配設されている。第2取付部材12は、第1取付部材11の径方向の内側に配置されている。第2取付部材12における軸方向の中間部に、径方向の外側に向けて突出したフランジ部12aが形成されている。第2取付部材12の上端面に雌ねじ部12bが形成されている。第2取付部材12のうち、フランジ部12aより下側に位置する部分に、下側に向かうに従い、縮径したテーパ部12cが形成されている。フランジ部12aは、第1取付部材11より上側に位置している。第2取付部材12の下端部は、第1取付部材11の上端開口縁より下側に位置している。
【0020】
弾性体13は、環状に形成されるとともに、中心軸線Oと同軸に配設されている。弾性体13は、第1取付部材11の上筒部11aと第2取付部材12のテーパ部12cとを連結している。弾性体13の外周側は、第1取付部材11における上筒部11aおよび絞り部11cの各内周面に一体に加硫接着されている。弾性体13の内周側は、第2取付部材12のテーパ部12cに加硫接着されている。弾性体13は、径方向の外側から内側に向かうに従い、上側に向けて延びている。弾性体13により、第1取付部材11の上端開口部が密閉されている。
弾性体13は、第2取付部材12のフランジ部12aの上面、下面、および外周面を一体に覆うストッパゴム32と一体に形成されている。
【0021】
第1取付部材11の下端部内には、被覆ゴムを介して、筒状のダイヤフラムリング18が液密に嵌合されている。ダイヤフラムリング18の内周面に、ゴム材料等で弾性変形可能に形成されたダイヤフラム19の外周部が加硫接着されている。ダイヤフラムリング18は、第1取付部材11の下端部が径方向の内側に向けて加締められることで、第1取付部材11に固定されている。ダイヤフラム19は、第1取付部材11の下端開口部を密閉している。
ダイヤフラム19および弾性体13により、液体が封入される液室14が第1取付部材11内に画成されている。液室14に封入される液体としては、例えばエチレングリコール、水、若しくはシリコーンオイル等が挙げられる。
【0022】
仕切部材17は、偏平な円盤状に形成されている。仕切部材17は、中心軸線Oと同軸に配設されている。仕切部材17は、第1取付部材11内に嵌合されている。仕切部材17は、第1取付部材11の絞り部11cおよびダイヤフラムリング18により軸方向に挟まれている。仕切部材17によって、第1取付部材11内の液室14が、弾性体13と仕切部材17とにより画成された主液室15と、ダイヤフラム19と仕切部材17とにより画成された副液室16と、に区画されている。ダイヤフラム19は、副液室16内への液体の流入および流出に伴い拡縮変形する。
【0023】
仕切部材17は、主液室15および副液室16それぞれの隔壁の一部をなし、かつ弾性変形可能に設けられたメンブラン31と、主液室15から副液室16側に向けて延びる第1オリフィス通路25と、副液室16から主液室15側に向けて延びるとともに、第1オリフィス通路25に接続された第2オリフィス通路26と、メンブラン31を径方向の外側から囲う上側部材34と、上側部材34内に嵌合された下側部材33と、上側部材34にメンブラン31を固定する環状の固定部材38と、を備えている。
なお、仕切部材17は、上側部材34、下側部材33、および固定部材38のうちの少なくとも1つを有しなくてもよく、上側部材34、下側部材33、および固定部材38は一体に形成されてもよい。
【0024】
メンブラン31は、ゴム材料等により弾性変形可能に形成されている。メンブラン31は、板状に形成されている。メンブラン31は、軸方向から見て例えば円形状を呈する。なお、メンブラン31は、軸方向から見て例えば矩形状等を呈してもよい。メンブラン31は、中心軸線Oと同軸に配設されている。メンブラン31には、軸方向に貫く貫通孔が形成されていない。メンブラン31は、振動の入力に伴う弾性変形時に、液室14内に設けられている他の部材に衝突しないように設けられている。
【0025】
上側部材34は、メンブラン31を径方向の外側から囲う固定筒部34aと、固定筒部34aの下端開口縁から径方向の内側に向けて突出した環状の固定フランジ34bと、固定筒部34aの下端開口縁から径方向の外側に向けて突出した環状の上側フランジ34cと、固定筒部34aから下側に向けて突出した外筒部34dと、外筒部34dの下端開口縁から径方向の外側に向けて突出した下側フランジ34eと、を備えている。
固定筒部34a、固定フランジ34b、上側フランジ34c、外筒部34d、および下側フランジ34eは、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0026】
上側フランジ34cおよび下側フランジ34eの各外周縁は、被覆ゴムを介して下筒部11b内に嵌合されている。固定筒部34aの上端開口縁に固定部材38が載置され、不図示のボルト等によって固定部材38が上側部材34に固定されている。固定部材38および固定フランジ34bによって、メンブラン31の外周縁部が、軸方向に挟まれて固定されている。これにより、メンブラン31は、主液室15の内圧の変動に伴い、外周縁部を固定端として軸方向に弾性変形する。
【0027】
下側部材33は、上側部材34の外筒部34d内に嵌合されている。下側部材33は、環状の底板部33aと、底板部33aの内周縁から上側に向けて突出した内筒部33bと、内筒部33bの上端開口縁から径方向の外側に向けて突出した環状の上板部33dと、を備えている。
底板部33a、内筒部33b、および上板部33dは、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0028】
底板部33aの外周縁は、被覆ゴムを介して下筒部11b内に嵌合されている。底板部33aの上面のうち、外周部は、上側部材34の下側フランジ34eの下面に当接し、内周部は、下側フランジ34eおよび外筒部34dより径方向の内側に位置している。内筒部33bは、外筒部34dの径方向の内側に配設されている。上板部33dの外周縁は、外筒部34d内に嵌合されている。上板部33dの上面は、固定フランジ34bの下面に当接している。
【0029】
第1オリフィス通路25における主液室15側の開口部(以下、第1連通孔という)21は、上側部材34の上側フランジ34cに形成されている。第1連通孔21は、主液室15に軸方向に開口している。なお、第1連通孔21は、主液室15に径方向に開口してもよい。
第2オリフィス通路26における副液室16側の開口部(以下、第2連通孔という)22は、下側部材33の内筒部33bに形成されている。第2連通孔22は、第1連通孔21より径方向の内側に位置している。第2連通孔22および第1連通孔21それぞれの周方向の位置は、互いに同等になっている。図2に示されるように、第1連通孔21および第2連通孔22は、軸方向から見て、上側部材34の外筒部34d、および第2オリフィス通路26を介して径方向で隣り合っている。第2連通孔22は、副液室16に径方向に開口している。なお、第2連通孔22は、副液室16に軸方向に開口してもよい。第2連通孔22は、副液室16のうち、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26により径方向の外側から囲まれ、かつメンブラン31の下面と軸方向で対向する部分に開口している。
【0030】
第1オリフィス通路25は、主液室15から周方向の一方側に向けて延びている。第1オリフィス通路25は、上側部材34における上側フランジ34c、外筒部34d、および下側フランジ34eと、下筒部11bの内周面の被覆ゴムと、により画成されている。第1オリフィス通路25は、中心軸線Oを中心に、180°より大きく360°より小さい角度範囲にわたって設けられている。なお、この角度範囲は、180°以下、360°以下、若しくは360°より大きくてもよい。
第1オリフィス通路25は、メンブラン31より下方に位置している。第1オリフィス通路25は、メンブラン31より径方向の外側に位置している。
【0031】
ここで、上側部材34は、外筒部34dから径方向の外側に向けて突出し、外周縁が下筒部11bの内周面の被覆ゴムに嵌合した外側隔壁34fを備えている。外側隔壁34fは、第1オリフィス通路25の周方向の両端部を画成している。
外筒部34dにおいて、軸方向から見て、外側隔壁34fを周方向に挟む、第1連通孔21の反対側に位置する部分に、径方向に貫く接続孔(接続部分)27が形成されている。接続孔27および第1連通孔21は、軸方向から見て、外側隔壁34fに周方向で隣接している。
接続孔27は、第1オリフィス通路25における周方向の一方側の端部(接続部分)を画成する内面のうち、径方向の内側に位置して径方向の外側を向く内周面に開口している。接続孔27は、第1オリフィス通路25における周方向の一方側の端部と、第2オリフィス通路26と、を径方向に連通している。
【0032】
第2オリフィス通路26は、第1オリフィス通路25との接続部分から周方向の他方側に向けて延びている。第2オリフィス通路26は、第1オリフィス通路25よりも径方向の内側に設けられている。第2オリフィス通路26、およびメンブラン31の外周縁部それぞれの径方向の位置は互いに同等になっている。第2オリフィス通路26は、下側部材33における底板部33aの内周部、内筒部33b、および上板部33dと、上側部材34の外筒部34dと、により画成されている。第2オリフィス通路26は、メンブラン31より下方に位置している。
【0033】
第2オリフィス通路26は、中心軸線Oを中心に、180°より大きく360°より小さい角度範囲にわたって設けられている。なお、この角度範囲は、180°以下、360°以下、若しくは360°より大きくてもよい。第2オリフィス通路26、および第1オリフィス通路25それぞれの前記角度範囲は、互いに同等になっている。なお、第2オリフィス通路26、および第1オリフィス通路25それぞれの前記角度範囲を、互いに異ならせてもよい。
【0034】
ここで、下側部材33は、図2に示されるように、内筒部33bから径方向の外側に向けて突出し、外周縁が上側部材34の外筒部34d内に嵌合した内側隔壁33fを備えている。内側隔壁33fは、第2オリフィス通路26の周方向の両端部を画成している。内側隔壁33fおよび外側隔壁34fそれぞれの周方向の位置は、互いに同等になっている。内側隔壁33fおよび外側隔壁34fは、径方向に連なって設けられている。第2オリフィス通路26、および第1オリフィス通路25それぞれの周方向の位置は、周方向の全長にわたって互いに同等になっている。なお、第2オリフィス通路26、および第1オリフィス通路25それぞれの周方向の位置を互いに異ならせてもよい。
【0035】
第2オリフィス通路26における周方向の一方側の端部(接続部分)を画成する内面のうち、径方向の外側に位置して径方向の内側を向く外周面に、接続孔27が開口している。第2オリフィス通路26における周方向の一方側の端部は、接続孔27を通して第1オリフィス通路25における周方向の一方側の端部に連通している。
第2オリフィス通路26における周方向の他方側の端部を画成する内面のうち、径方向の内側に位置して径方向の外側を向く内周面に、第2連通孔22が開口している。第2オリフィス通路26における周方向の他方側の端部は、第2連通孔22を通して副液室16に連通している。
【0036】
仕切部材17に、第1オリフィス通路25と第2オリフィス通路26との接続部分と、副液室16と、を直結する短絡通路20が形成されている。本実施形態では、短絡通路20は、第2オリフィス通路26における周方向の一方側の端部に開口している。
なお、短絡通路20は、第1オリフィス通路25における周方向の一方側の端部、若しくは接続孔27に開口してもよい。
【0037】
短絡通路20は、第2オリフィス通路26の内面のうち、径方向の内側に位置して径方向の外側を向く内周面に開口している。短絡通路20は、内筒部33bにおいて、接続孔27と径方向で対向し、第2オリフィス通路26における周方向の一方側の端部を画成する部分に形成されている。短絡通路20は、内筒部33bを径方向に貫いている。短絡通路20は、内側隔壁33fを周方向に挟む、第2連通孔22の反対側に設けられている。短絡通路20、および第2連通孔22は、内側隔壁33fに周方向で隣接している。
【0038】
短絡通路20は、副液室16のうち、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26により径方向の外側から囲まれ、かつメンブラン31の下面と軸方向で対向する部分に、径方向に開口している。なお、短絡通路20は、副液室16に軸方向に開口してもよい。短絡通路20の流路長は、第1オリフィス通路25、および第2オリフィス通路26それぞれの流路長より短くなっている。
【0039】
短絡通路20および第2連通孔22それぞれにおける少なくとも一部の軸方向の位置は、互いに同等になっている。短絡通路20における軸方向の大きさは、第2連通孔22における軸方向の大きさより小さく、短絡通路20が位置する軸方向の位置は、第2連通孔22が位置する軸方向の位置に含まれている。
短絡通路20の流路断面積は、例えば1.7mm以上とされ、第1オリフィス通路25、および第2オリフィス通路26それぞれにおける周方向の一方側の端部の各流路断面積、並びに接続孔27の流路断面積より小さくなっている。短絡通路20の流路断面積は、第1連通孔21、および第2連通孔22それぞれの流路断面積より小さくなっている。
【0040】
第1オリフィス通路25の流路長は、第2オリフィス通路26の流路長より長く、第1オリフィス通路25の流路断面積は、第2オリフィス通路26の流路断面積より大きくなっている。第1オリフィス通路25、および第2オリフィス通路26それぞれの流通抵抗は、各通路25、26の共振周波数が、例えばシェイク振動等の周波数となるようにチューニングされている。
なお、第1オリフィス通路25、および第2オリフィス通路26それぞれの流通抵抗を、互いに異ならせてもよいし、互いに同等にしてもよい。
【0041】
次に、以上のように構成された防振装置1の作用について説明する。
【0042】
防振装置1に振動が入力され、第1取付部材11と第2取付部材12とが相対的に変位すると、第1取付部材11および第2取付部材12を互いに連結する弾性体13が弾性変形する。この際、主液室15の内圧が変動し、液体が、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26を通して、主液室15と副液室16との間を往来しつつ、共振することで、振動が減衰、吸収される。また、主液室15の内圧が変動すると、メンブラン31が外周縁部を固定端として軸方向に弾性変形することにより、動ばねが抑えられる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態による防振装置1によれば、第1オリフィス通路25が、主液室15から周方向の一方側に向けて延び、第2オリフィス通路26が、第1オリフィス通路25との接続部分から周方向の他方側に向けて延びているので、液体が、主液室15および副液室16のうちのいずれか一方から他方に向けて、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26を流れる際、第1オリフィス通路25での流通方向と、第2オリフィス通路26での流通方向と、が逆向きになる。したがって、例えば、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26が周方向に直結されて、各前記流通方向が同じ向きになっている場合と比べて、入力振動の振幅の増減、つまり第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26を流れる液体の流速の増減に合わせて、液体の流通抵抗を増減させやすくすることができる。これにより、周波数が同等であれば、振幅が増減しても、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26で液柱共振を生じさせ、入力振動を減衰、吸収することができる。
【0044】
仕切部材17に、第1オリフィス通路25と第2オリフィス通路26との接続部分と、副液室16と、を直結する短絡通路20が形成されているので、振動入力時に、第1オリフィス通路25と第2オリフィス通路26との接続部分に到達した液体の一部を、短絡通路20を通して副液室16に逃がすことが可能になり、この接続部分における液体の滞留が抑えられ、液体が第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26を円滑に流れることとなり、動ばねを抑えることができる。
【0045】
第1オリフィス通路25、および第2オリフィス通路26が、径方向に互いに接続されて配置されているので、防振装置1の軸方向のかさ張りを抑えることができる。
短絡通路20の流路断面積が、第1オリフィス通路25と第2オリフィス通路26との接続部分の流路断面積より小さくなっているので、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26の共振周波数等を容易にチューニングすることができる。
【0046】
仕切部材17が、主液室15および副液室16それぞれの隔壁の一部をなし、かつ弾性変形可能に設けられたメンブラン31を備えているので、振動入力時に、メンブラン31を弾性変形させることが可能になり、動ばねを低く抑えることができる。
特に、微振幅(例えば、0.05mm~0.2mm)振動の入力時に、メンブラン31を弾性変形させることで、動ばねを低く抑えることができ、この振幅より大きい振幅(例えば、0.2mm~1.0mm)の振動が入力されたときには、周波数が同等であれば、振幅が増減しても、液体を、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26を流通させて、入力振動を減衰、吸収することができる。
【0047】
メンブラン31が、主液室15および副液室16それぞれの隔壁の一部をなすように弾性変形可能に設けられていて、例えば、主液室15および副液室16の双方に連通した収容室内に移動可能に収容された、いわゆるガタメンブランではないので、振動入力時に、メンブラン31が他の部材に衝突して打音が生ずるのを抑制することができる。
【0048】
短絡通路20が、副液室16のうち、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26により径方向の外側から囲まれ、かつメンブラン31と対向する部分に、径方向に開口しているので、短絡通路20が、例えば副液室16の隔壁の一部をなすダイヤフラム19等の部材に閉塞されにくくすることが可能になり、液体を短絡通路20から副液室16に円滑に流入させることができる。
【0049】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
第1オリフィス通路25、および第2オリフィス通路26の相対的な位置は、例えば、第2オリフィス通路26を、第1オリフィス通路25よりも径方向の外側に設けたり、第1オリフィス通路25、および第2オリフィス通路26を、軸方向に互いに接続したりする等、適宜変更してもよい。
第1オリフィス通路25、および第2オリフィス通路26の、メンブラン31に対する位置は、例えば軸方向の位置を互いに同等にする等、適宜変更してもよい。
接続孔27は、例えば、第1オリフィス通路25および第2オリフィス通路26のうちの少なくとも一方における周方向の中間部に開口してもよい。
【0051】
前記実施形態では、支持荷重が作用することで主液室15に正圧が作用する圧縮式の防振装置1について説明したが、主液室15が鉛直方向下側に位置し、かつ副液室16が鉛直方向上側に位置するように取り付けられ、支持荷重が作用することで主液室15に負圧が作用する吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
本発明に係る防振装置1は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、車両用のキャビンマウント若しくはブッシュ、または建設機械に搭載された発電機のマウントに適用することも可能であり、或いは、工場などに設置される機械のマウントに適用することも可能である。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 防振装置
11 第1取付部材
12 第2取付部材
13 弾性体
14 液室
15 主液室
16 副液室
17 仕切部材
20 短絡通路
25 第1オリフィス通路
26 第2オリフィス通路
27 接続孔
31 メンブラン
O 中心軸線
図1
図2