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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】刃物研ぎ器
(51)【国際特許分類】
   B24B 3/54 20060101AFI20231211BHJP
   B24D 15/08 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B24B3/54
B24D15/08 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023193757
(22)【出願日】2023-11-14
(62)【分割の表示】P 2023193510の分割
【原出願日】2023-11-14
【審査請求日】2023-11-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】横尾 康子
(72)【発明者】
【氏名】藤野 倫
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳
(72)【発明者】
【氏名】月本 拓延
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0207171(US,A1)
【文献】特開平07-124852(JP,A)
【文献】特開2020-196065(JP,A)
【文献】特開2013-233612(JP,A)
【文献】特開2017-104948(JP,A)
【文献】特表2015-504011(JP,A)
【文献】特開2017-226067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24D15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体内に配置された、刃先が波形の刃物である第1刃物を研磨する第1研磨体、刃先が直線状または湾曲状の刃物である第2刃物を研磨する第2研磨体、及び前記第2刃物を研磨する第3研磨体と、を備える刃物研ぎ器であって、
前記第3研磨体は、前記第2研磨体よりも細かい粒度を有し、
前記本体は、底面に、前記本体の長手方向の中央部に幅方向にわたって上面側に向かって凹むように形成された底面凹部を有し、
前記底面凹部は、前記本体の前記幅方向における中央に対して対称に形成され、
前記本体の、前記長手方向の前記中央部における、前記長手方向に対して垂直な断面は、下側に凸のU字状になっており、
前記本体の上面には、
前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第1研磨体に向けてガイドする第1スリットと、
前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第2研磨体に向けてガイドする第2スリットと、
前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第3研磨体に向けてガイドする第3スリットと、が形成され、
前記第1スリット及び前記第1研磨体は、前記中央部に対して前記本体の前記長手方向における一方側に配置され、前記第2スリット、前記第2研磨体、前記第3スリット、及び前記第3研磨体は、前記中央部に対して前記本体の前記長手方向における他方側に配置される、
刃物研ぎ器。
【請求項2】
前記第1研磨体は、2つの板状の砥石からなり、
前記第2研磨体は、2つの円錐台を、それぞれ底面より小さい面積を有する上面で互いに連結した形状の砥石からなり、
前記第3研磨体は、2つの円柱状の砥石からなる、
請求項に記載の刃物研ぎ器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、刃物の刃先を研磨する刃物研ぎ器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された、モータと、モータシャフトに固定された砥石と、スプリングとを備える電動砥石があった。一方で、特許文献2に記載された、モータを有さない刃物研磨具であって、研磨体を支持する支持体と、土台と、支持体と土台との間に位置する弾性部材及びガイド部材を備える構成の刃物研磨具があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭48-73893号公報
【文献】特開2018-122382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、物を大切に使い、ごみを減らすリデュース(Reduce)、使える物を繰り返し使用するリユース(Reuse)、及びごみを資源として再び利用するリサイクル(Recycle)の3つのR(アール)を総称した3Rが提唱されている。上述したように従来の剃刀における刃体カートリッジは樹脂及び金属によって形成されることが多かったが、リサイクルが容易な素材への置き換え(Replace)が求められている。また、国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)における17の目標の中の目標12では、「つくる責任、つかう責任」として、持続可能な生産消費形態を確保することが挙げられており、廃棄物の発生を大幅に削減することなどが求められている。例えば、目標12-5では、2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減することが目標として挙げられている。このような状況のもと、包丁を含む刃物の分野においても、廃棄物の発生を減少させることが求められている。
【0005】
一方で、包丁を研ぐための刃物研ぎ器(刃物研磨具)は、一般家庭に十分に普及しているとは言い難い状況であった。一般家庭に刃物研ぎ器が普及しない原因として、容易かつ安全に使用しづらいという印象があること、及び収納場所に困ること、などがあった。また、従来の比較的コンパクトな刃物研ぎ器は、位置ずれしないように安定して設置することが容易でなく、使用時に本体が動いてしまうことがあった。また、複数種類の刃物を研磨可能な構成のものが少なかった。本発明は、これらの課題のうちの少なくともいずれかを解決しつつ、一般家庭に刃物研ぎ器を普及させることで刃物の長期間にわたり快適に使用可能にすることで、廃棄物の発生を減少させることなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば次のような構成の刃物研ぎ器を提供する。
【0007】
本発明の一の手段は、本体と、
前記本体内に配置された、第1の種類の刃物である第1刃物を研磨する第1研磨体と、を備える刃物研ぎ器であって、
前記本体は、底面に、長手方向の中央部に幅方向にわたって上面側に向かって凹むように形成された底面凹部を有し、
前記本体の、前記長手方向の前記中央部における、前記長手方向に対して垂直な断面は、下側に凸のU字状になっており、
前記本体の上面には、前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第1研磨体に向けてガイドする第1スリットが形成される、
刃物研ぎ器である。
【0008】
上記の刃物研ぎ器によれば、底面凹部を設けた構成とすることでグリップ性が高まり、使用者が位置ずれしないように安定して刃物研ぎ器を把持することができる。そのため、使用時に刃物研ぎ器が刃物をスライドさせる方向などに移動することを抑制でき、安全に使用することができる。このとき、従来の構成であれば、使用者が把持する把持部と、刃先を差し込むスリットとの間に、手がスリット側に滑ることを防止するガード部材が設けられることがあったが、このようなガード部材を設けることなく、十分安全に使用可能な構成になる。上記の刃物研ぎ器は、このようなガード部材が不要であるため、高さ方向のサイズを小さくでき、コンパクトに収納しやすくなる。また、使用者が刃物に与える力が効果的に刃先に与えられることとなるため、研磨対象の刃物を比較的軽い力で研磨することができる。
【0009】
上記の刃物研ぎ器において好ましくは、前記本体内に、前記第1刃物とは異なる種類の第2刃物を研磨する第2研磨体がさらに配置され、
前記本体の上面には、前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第2研磨体に向けてガイドする第2スリットがさらに形成され、
前記第1スリット及び前記第1研磨体は、前記中央部に対して前記本体の前記長手方向における一方側に配置され、前記第2スリット及び前記第2研磨体は、前記中央部に対して前記本体の前記長手方向における他方側に配置される。
【0010】
上記の刃物研ぎ器によれば、第1スリット及び第1研磨体と、第2スリット及び第2研磨体とが中央部に対して一方側と他方側とにバランスよく配置されるため、それぞれの研磨体で異なる種類の刃物を研磨可能にしつつ、コンパクトな構成にすることができる。また、中央部の近傍に重心を位置させる構成にできるため、より位置ずれを起こしづらく、使用時に安定する構成にすることができる。
【0011】
上記の刃物研ぎ器において好ましくは、前記第1刃物は刃先が波形の刃物であり、前記第2刃物は刃先が直線状または湾曲状の刃物である。
【0012】
刃先が波形の刃物を研磨する際には、刃物研ぎ器が特に位置ずれを起こしやすいが、上記の刃物研ぎ器では、使用時にその位置を安定させることができる。また、近年、高級食パンが以前より広く流通するようになり、これに伴い刃先が波形の波刃包丁が使用される頻度が増えているが、このような波刃包丁と、刃先が直線状または湾曲状の刃物との双方を研磨可能な刃物研ぎ器を提供できる。
【0013】
上記の刃物研ぎ器において好ましくは、前記本体内に、前記第2刃物を研磨する第3研磨体がさらに配置され、
前記本体の上面には、前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第3研磨体に向けてガイドする第3スリットがさらに形成され、
前記第3スリット及び前記第3研磨体は、前記中央部に対して前記本体の前記長手方向における前記他方側に配置される。
【0014】
上記の刃物研ぎ器によれば、刃先が直線状または湾曲状の第2刃物を研磨する研磨体として、第2研磨体及び第3研磨体を備える構成としたため、使用頻度がより高い第2刃物を効果的に研磨可能な構成にできる。また、第2刃物を研磨するための第2スリット、第2研磨体、第3スリット、及び第3研磨体が、中央部の他方側に隣接して配置された構成となるため、第2刃物を研磨しやすい構成となる。
【0015】
上記の刃物研ぎ器において好ましくは、前記本体が略直方体である。
【0016】
上記の刃物研ぎ器によれば、よりコンパクトな構成にすることができるため、キッチンの引き出しの中などに収容できるなど、収容しやすい構成となる。
【0017】
上記の刃物研ぎ器において好ましくは、前記底面凹部は、前記本体の前記幅方向における中央に対して対称に形成される。
【0018】
上記の刃物研ぎ器によれば、長手方向における中央部に対して一方側と他方側とに第1研磨体と第2研磨体とをそれぞれ配置する構成にしたときに、どちらの研磨体を使用するときであっても、底面凹部に指を掛けて本体を把持しやすい構成にすることができる。また、利き手にかかわらず本体を把持しやすい構成にすることができる。
【0019】
本発明の一の手段は、本体と、
前記本体内に配置された研磨体と、を備える刃物研ぎ器であって、
前記本体は、底面に、長手方向の中央部に幅方向にわたって上面側に向かって凹むように形成された底面凹部を有し、
前記本体の、前記長手方向の前記中央部における、前記長手方向に対して垂直な断面は、下側に凸のU字状になっており、
前記本体の上面には、前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記研磨体に向けてガイドするスリットが形成され、
前記本体の上面には、上側に向かって突出する部材が設けられていない、
刃物研ぎ器である。
【0020】
上記の刃物研ぎ器によれば、底面凹部を設けた構成とすることでグリップ性が高まり、使用者が位置ずれしないように安定して刃物研ぎ器を把持することができる。そのため、使用時に刃物研ぎ器が刃物をスライドさせる方向などに移動することを抑制でき、安全に使用することができる。このとき、従来の構成であれば、使用者が把持する把持部と、刃先を差し込むスリットとの間に、本体の上面に上側に向かって突出するように形成された、手がスリット側に滑ることを防止するガード部材が設けられることがあったが、このようなガード部材を設けることなく、十分安全に使用可能な構成になる。上記の刃物研ぎ器は、このようなガード部材が不要であるため、高さ方向のサイズを小さくでき、コンパクトに収納しやすくなる。また、使用者が刃物に与える力が効果的に刃先に与えられることとなるため、研磨対象の刃物を比較的軽い力で研磨することができる。
【0021】
本発明の一の手段は、本体と、
前記本体内に配置された、刃先が波形の刃物である第1刃物を研磨する第1研磨体、刃先が直線状または湾曲状の刃物である第2刃物を研磨する第2研磨体、及び前記第2刃物を研磨する第3研磨体と、を備える刃物研ぎ器であって、
前記第3研磨体は、前記第2研磨体よりも細かい粒度を有し、
前記本体は、底面に、前記本体の長手方向の中央部に幅方向にわたって上面側に向かって凹むように形成された底面凹部を有し、
前記底面凹部は、前記本体の前記幅方向における中央に対して対称に形成され、
前記本体の、前記長手方向の前記中央部における、前記長手方向に対して垂直な断面は、下側に凸のU字状になっており、
前記本体の上面には、
前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第1研磨体に向けてガイドする第1スリットと、
前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第2研磨体に向けてガイドする第2スリットと、
前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第3研磨体に向けてガイドする第3スリットと、が形成され、
前記第1スリット及び前記第1研磨体は、前記中央部に対して前記本体の前記長手方向における一方側に配置され、前記第2スリット、前記第2研磨体、前記第3スリット、及び前記第3研磨体は、前記中央部に対して前記本体の前記長手方向における他方側に配置される、
刃物研ぎ器である。
【0022】
上記の刃物研ぎ器において好ましくは、前記第1研磨体は、2つの板状の砥石からなり、
前記第2研磨体は、2つの円錐台を、それぞれ底面より小さい面積を有する上面で互いに連結した形状の砥石からなり、
前記第3研磨体は、2つの円柱状の砥石からなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、刃物研ぎ器の斜視図である。
図2図2は、カバーを取り外した刃物研ぎ器の斜視図である。
図3図3は、カバーを取り外した刃物研ぎ器の斜視図である。
図4図4は、カバーを底面側から見た図である。
図5図5は、刃物研ぎ器の底面図である。
図6図6は、刃物研ぎ器の側面図である。
図7図7は、刃物研ぎ器の斜視図である。
図8図8は、図6のA-Aの位置における刃物研ぎ器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の刃物研ぎ器について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。本明細書では、使用時に刃物研ぎ器1を載置した状態を基準に、鉛直方向の上側及び下側をそれぞれ上側及び下側といい、下側の面を底面または下面、上側の面を上面という。
【0025】
<刃物研ぎ器の構成>
図1及び図2等に示されるように、刃物研ぎ器1は、土台2及びカバー3を備える。刃物研ぎ器1は、土台2とカバー3とが連結されることで本体4となり、その内部に刃物を研磨するための研磨体を複数備える。図1に示されるように、本体4は、丸みを帯びた略直方体状であり、その底面には後述する底面凹部25が形成されている。刃物研ぎ器1は、刃先が波形の刃物である波刃包丁と、刃先が直線状または湾曲状の刃物である両刃包丁とを研磨できる。換言すると、本体4は、刃物研ぎ器1の筐体(ケース)である。
【0026】
<土台2>
土台2は、本体4の一部であって、刃物研ぎ器1の底部を構成する。土台2は、刃物研ぎ器1の各構成要素である、第1研磨体21、第2研磨体22、及び第3研磨体23を支持する。すなわち、第1研磨体21、第2研磨体22、及び第3研磨体23は、土台2及びカバー3から構成された本体4の内部に配置される。土台2は、それぞれ貫通孔である2つのねじ穴24を有し、ねじ穴24に挿通されたねじ24aによってカバー3と連結される。ねじ穴24の内部にはねじ山が形成されていてもよいが、ねじ穴24はねじ山が形成されない貫通孔であってもよい。
【0027】
図1及び図6等に示されるように、土台2は、その底面に、長手方向の中央部に幅方向にわたって上面側に向かって凹むように形成された底面凹部25を有する。底面凹部25は、シームレスな曲面構成である。換言すると、底面凹部25は、角部が丸くなった、緩やかに湾曲する形状で形成されている。図8は、図6のA-Aの位置における、刃物研ぎ器1の断面図である。すなわち図8は、刃物研ぎ器1の長手方向の中央部における、長手方向に対して垂直な面における断面図である。図8に示されるように、土台2の長手方向に対して垂直な断面において、土台2の中央部は下側に凸のU字状になっている。底面凹部25は、土台2の幅方向における中央に対して対称に形成されている。底面凹部25は、使用時に刃物研ぎ器1の本体4が使用者によって上側から把持されたときに使用者の指が掛かるようになることで、使用者が刃物研ぎ器1を安定的に把持できるようにするために形成される。
【0028】
図3に示されるように、土台2は、上面から見た平面視で矩形状である。土台2は、刃物研ぎ器1の長手方向の中央部に対して一方側に第1研磨体21を有し、他方側に第2研磨体22及び第3研磨体23を有する。これらの研磨体は、刃物研ぎ器1の一方側から順に、第1研磨体21、第3研磨体23、第2研磨体22の順に配置される。
【0029】
図5及び図7に示されるように、土台2の底面には、U字状のフック26が設けられる。フック26は、2か所の連結部26aで土台2の底面に回動可能に連結される。連結部26aを回動軸としてフック26を回動させることで、図5に示されたフック26が収納された状態から、図7に示されたフック26が展開した状態にすることができる。フック26が展開した図7の状態では、フック26を、キッチンの壁面に設けられたフック等に掛けて収納することができる。
【0030】
<第1研磨体21、第2研磨体22、第3研磨体23>
第1研磨体21は、図2及び図3に示されるように、第1スリット31の下側に配置される。第1研磨体21は、波刃包丁を研磨するための砥石であって、2つの板状の砥石である第1砥石21aからなる。第1砥石21aは、例えば超硬合金により形成される。第1砥石21aは、それぞれの端面が波刃包丁の刃先に当接し、波刃包丁を研磨することができる。第1研磨体21は、その底部及び側部が、土台2によって挟持されるようにして支持されている。
【0031】
第2研磨体22は、図2及び図3に示されるように、第2スリット32の下側に配置される。第2研磨体22は、両刃包丁を最初に研磨するための砥石であって、2つの円錐台を、それぞれ底面より小さい面積を有する上面で互いに連結した形状の砥石である第2砥石22aからなる。第2砥石22aは、例えばセラミックにより形成される。第2砥石22aは、その側面が両刃包丁の刃先に当接し、両刃包丁を研磨することができる。第2研磨体22は、中心を通る中心軸22bを有しており、この中心軸が土台2により支持されている。
【0032】
第3研磨体23は、図2及び図3に示されるように、第3スリット33の下側に配置される。第3研磨体23は、第2研磨体22で研磨された両刃包丁に対して、仕上げの研磨をするための砥石であり、第2研磨体22よりも細かい粒度を有する砥石である。第3研磨体23は、2つの円柱状の砥石である第3砥石23aからなる。第3砥石23aは、例えばセラミックにより形成される。第3砥石23aは、その側面が両刃包丁の刃先に当接し、両刃包丁を研磨することができる。第3砥石23aは、その側面、及び下端が土台2によって支持されている。
【0033】
<カバー3>
カバー3は、本体4の一部であって、刃物研ぎ器1の上部を構成する。図1及び図2等に示されるように、カバー3の上面には、第1スリット31、第2スリット32、及び第3スリット33が形成される。第1スリット31、第2スリット32、及び第3スリット33は、それぞれ、カバー3の上面から下方に向かって、カバー3の幅方向にわたる溝状に形成される。第1スリット31、第2スリット32、及び第3スリット33は、それぞれ鉛直方向に沿って直線状に形成された溝である。第1スリット31、第2スリット32、及び第3スリット33の下方には、それぞれ土台2によって支持される第1研磨体21、第2研磨体22、及び第3研磨体23が配置される。第1スリット31は、刃物研ぎ器1の長手方向の中央部に対して一方側に位置し、第2スリット32及び第3スリット33は他方側に位置する。これらのスリットは、刃物研ぎ器1の一方側から順に、第1スリット31、第3スリット33、第2スリット32の順に形成される。第1スリット31、第2スリット32、及び第3スリット33は、研磨対象の刃物の刃先を、それぞれ第1研磨体21、第2研磨体22、及び第3研磨体23に向けてガイドする。
【0034】
カバー3の両側の側面3aには、底面凹部25に沿って上側に湾曲するよう形成された湾曲凹部3bが形成される。
【0035】
カバー3には、土台2のねじ穴24に挿通されたねじ24aが挿入される、2つのねじ穴34が形成される。ねじ穴34は、内部にねじ山が形成された雌ねじになっている。
【0036】
図6に示されるように、カバー3の側面3aには、第1スリット31、第2スリット32、及び第3スリット33にそれぞれ隣接するように、使用上の案内表示としてアイコン31a、32a、及び33aが設けられる。アイコン31a、32a、及び33aは、それぞれ隣接する第1スリット31、第2スリット32、及び第3スリット33で研磨対象となる刃物の種類と、研磨する際に研磨対象の刃物をスライドさせる回数の目安とが表示される。アイコン31a~33aは、図6に示されたカバー3の一方の側面3aだけではなく、この側面3aの逆側の側面にも設けられる。アイコン31a~33aが両側面に設けられることで、使用者の利き手にかかわらず、アイコン31a~33aを視認しやすくなる。
【0037】
<刃物研ぎ器1のサイズ>
図6及び図1に示されるように、刃物研ぎ器1の本体4の長手方向の長さL1は135mm、幅方向の長さL2は36mm、鉛直方向の長さ、すなわち高さL3は40mmである。底面凹部25の長手方向の長さL4は74mmであり、鉛直方向の長さ、すなわち高さL5は28mmである。底面凹部25の幅方向における中央の、高さが低くなる位置における高さL6は13mmである。
【0038】
このようなサイズにすることでグリップ性が高まり、使用者が本体4を把持したときに、使用者の指が底面凹部25にある程度回り込み、これによって本体4が倒れづらくなるとともに、使用時に上面から力を加えやすくなる。また、底面凹部25が湾曲した形状であるため、使用者は本体4を感触よく押さえることができる。
【0039】
<刃物研ぎ器1の使用>
刃物研ぎ器1は、上記のとおり、波刃包丁と両刃包丁との研磨に利用可能である。波刃包丁を研磨する際には、使用者はアイコン31a~33a(特にアイコン31a)を見ることで、第1スリット31及び第1研磨体21が、波刃包丁を研磨するためのものであることを認識できる。使用者は、研磨対象の波刃包丁の刃先を第1スリット31から差し込み、第1スリット31によりガイドされながら刃先を第1研磨体21に当接させる。そして、波刃包丁を手前に引くようにスライドさせることで、波刃包丁の刃先を研磨する。使用者は、アイコン31aの案内によって示された回数を目安に、この研磨の動作を繰り返すことができる。このようにして、刃物研ぎ器1を利用した波刃包丁の研磨ができる。
【0040】
一方、両刃包丁を研磨する際には、使用者はアイコン31a~33a(特にアイコン32a及び33a)を見ることで、両刃包丁は、第2スリット32及び第2研磨体22で最初に研磨し、その後、第3スリット33及び第3研磨体23で研磨するべきであることを認識できる。使用者は、まず、研磨対象の両刃包丁の刃先を第2スリット32から差し込み、第2スリット32によりガイドされながら刃先を第2研磨体22に当接させる。そして、両刃包丁を手前に引くようにスライドさせることで、両刃包丁の刃先を研磨する。使用者は、アイコン32aの案内によって示された回数を目安に、第2研磨体22による研磨の動作を繰り返すことができる。さらに使用者は、研磨対象の両刃包丁の刃先を第3スリット33から差し込んで、同様に第3研磨体23によって刃先を研磨する。使用者は、アイコン33aの案内によって示された回数を目安に、第3研磨体23による研磨の動作を繰り返すことができる。このようにして、刃物研ぎ器1を利用した両刃包丁の研磨ができる。
【0041】
<変形例>
上記実施形態の刃物研ぎ器は、以下のような変形例を採用することができる。なお、以下で説明する変形例は本発明を限定的に解釈させるものではなく、具体例として記載されるものである。
【0042】
実施形態では、波刃包丁と両刃包丁とを研磨対象の刃物としていたが、例えば、波刃包丁と片刃包丁とを研磨対象としてもよし、両刃包丁と片刃包丁とを研磨対象としてもよい。この場合、研磨対象となる刃物に適した研磨体を採用する。ただし、一般家庭で利用されることの多い、両刃包丁と波刃包丁とを研磨対象とする実施形態の構成にすることが好ましい。
【0043】
実施形態の刃物研ぎ器1に用いられる研磨体は、実施形態で説明した第1研磨体21、第2研磨体22、及び第3研磨体23に限定されるものではなく、適宜変更することができる。また、実施形態の構成では、波刃包丁には1つの研磨体として第1研磨体21を用い、両刃包丁には2つの研磨体として第2研磨体22及び第3研磨体23を用いたが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、波刃包丁に2以上の研磨体を用いる構成としてもよいし、両刃包丁に1つ、または3以上の研磨体を用いる構成としてもよい。ただし、研磨体をバランスよく配置した実施形態の構成とすることが好ましい。
【0044】
実施形態の刃物研ぎ器1では、モータ等を用いて研磨体を回転駆動する構成は採用していないが、モータ等により研磨体を回転駆動する構成としてもよい。この場合、いずれかの研磨体のみが回転駆動される構成としてもよいし、全ての研磨体が回転駆動される構成としてもよい。
【0045】
<実施形態の特徴>
以上、実施形態、及び変形例を例示して説明した一実施形態の刃物研ぎ器は、以下のような特徴を有する。
【0046】
刃物研ぎ器1は、土台2及びカバー3を含む本体4と、本体4内に配置された、第1の種類の刃物である第1刃物(例えば波刃包丁)を研磨する第1研磨体21とを備える。本体4は、底面に、長手方向の中央部に幅方向にわたって上面側に向かって凹むように形成された底面凹部25を有する。本体4の、長手方向の中央部における、長手方向に対して垂直な断面(図8参照)は、下側に凸のU字状になっている。本体4の上面には、幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を第1研磨体21に向けてガイドする第1スリット31が形成される。
【0047】
このような刃物研ぎ器1によれば、底面凹部25を設けた構成とすることでグリップ性が高まり、使用者が位置ずれしないように安定して刃物研ぎ器1を把持することができる。そのため、使用時に刃物研ぎ器1が刃物をスライドさせる方向に移動することを抑制でき、安全に使用することができる。このとき、従来の構成であれば、使用者が把持する把持部と、刃先を差し込むスリットとの間に、手がスリット側に滑ることを防止するガード部材が設けられることがあったが、このようなガード部材を設けることなく、十分安全に使用可能な構成になる。刃物研ぎ器1では、このようなガード部材が不要であるため、高さ方向のサイズを小さくでき、コンパクトに収納しやすくなる。また、使用者が刃物に与える力が効果的に刃先に与えられることとなるため、研磨対象の刃物を比較的軽い力で研磨することができる。
【0048】
なお、上記の刃物研ぎ器1において、本体4の上面(カバー3の上面)に、上側に突出する部材を設けない構成とすることが好ましい。
【0049】
また、刃物研ぎ器1は、本体4内に、第1刃物(例えば波刃包丁)とは異なる種類の第2刃物(例えば両刃包丁)を研磨する第2研磨体22が配置される。本体4の上面には、幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を第2研磨体22に向けてガイドする第2スリット32がさらに形成される。第1スリット31及び第1研磨体21は、本体4の長手方向の中央部に対して本体4の長手方向における一方側に配置され、第2スリット32及び第2研磨体22は、中央部に対して本体4の長手方向における他方側に配置される。
【0050】
このような刃物研ぎ器1によれば、第1スリット31及び第1研磨体21と、第2スリット32及び第2研磨体22とが中央部に対して一方側と他方側とにバランスよく配置されるため、それぞれの研磨体で異なる種類の刃物を研磨可能にしつつ、コンパクトな構成にすることができる。また、中央部の近傍に重心を位置させる構成にできるため、より位置ずれを起こしづらく、使用時に安定する構成にすることができる。
【0051】
また、刃物研ぎ器1は、第1刃物として刃先が波形の波刃包丁を研磨し、第2刃物として刃先が直線状直線状または湾曲状の刃物(例えば両刃包丁)を研磨するよう構成される。
【0052】
刃先が波形の刃物を研磨する際には、刃物研ぎ器が特に位置ずれを起こしやすいが、上記の刃物研ぎ器1では、使用時にその位置を安定させることができる。また、近年、高級食パンが以前より広く流通するようになり、これに伴い刃先が波形の波刃包丁が使用される頻度が増えているが、このような波刃包丁と、刃先が直線状または湾曲状の刃物との双方を研磨可能な刃物研ぎ器を提供できる。
【0053】
また、刃物研ぎ器1は、本体4内に、第2刃物(例えば両刃包丁)を研磨する第3研磨体23がさらに配置される。本体4の上面には、幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を第3研磨体23に向けてガイドする第3スリット33がさらに形成される。第3スリット33及び第3研磨体23は、本体4の長手方向の中央部に対して本体4の長手方向における他方側に配置される。
【0054】
このような刃物研ぎ器1によれば、刃先が直線状または湾曲状の第2刃物(例えば両刃包丁)を研磨する研磨体として、第2研磨体22及び第3研磨体23を備える構成としたため、使用頻度がより高い第2刃物を効果的に研磨可能な構成にできる。また、第2刃物を研磨するための第2スリット32、第2研磨体22、第3スリット33、及び第3研磨体23が、中央部の他方側に隣接して配置された構成となるため、第2刃物を研磨しやすい構成となる。
【0055】
また、刃物研ぎ器1は、本体4が略直方体であるため、よりコンパクトな構成にすることができ、キッチンの引き出しの中などに収容できるなど、収容しやすい構成となる。
【0056】
また、刃物研ぎ器1において、底面凹部25は、本体4の幅方向における中央に対して対称に形成されている。刃物研ぎ器1は、長手方向における中央部に対して一方側に第1研磨体21が、他方側に第2研磨体22及び第3研磨体23がそれぞれ配置された構成としているため、使用者は一方側を把持して第2研磨体22及び第3研磨体23を使用する場合と、他方側を把持して第1研磨体21を使用する場合とがある。この場合、上記のように、本体4の幅方向における中央に対して対称になるように底面凹部25が形成されることで、どちらの場合であっても底面凹部25に指を掛けて本体4を把持しやすくなる。また、利き手にかかわらず本体4を把持しやすい構成となる。
【0057】
刃物研ぎ器1は、実施形態で示したように、本体4と、本体4内に配置された、刃先が波形の刃物である第1刃物を研磨する第1研磨体21、刃先が直線状または湾曲状の刃物である第2刃物を研磨する第2研磨体22、及び第2刃物を研磨する第3研磨体23と、を備える構成にできる。ここで、第3研磨体23は、第2研磨体22よりも細かい粒度を有する。本体4は、底面に、本体4の長手方向の中央部に幅方向にわたって上面側に向かって凹むように形成された底面凹部25を有する。本体4の、長手方向の中央部における、長手方向に対して垂直な断面(図8参照)は、下側に凸のU字状になっている。本体4の上面には、第1スリット31、第2スリット32、及び第3スリット33を有する。第1スリット31は、幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を第1研磨体21に向けてガイドする。第2スリット32は、幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を第2研磨体22に向けてガイドする。第3スリット33は、幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を第3研磨体23に向けてガイドする。第1スリット31及び第1研磨体21は、本体4の長手方向の中央部に対して本体4の長手方向における一方側に配置され、第2スリット32、第2研磨体22、第3スリット33、及び第3研磨体23は、中央部に対して本体4の長手方向における他方側に配置される。
【0058】
また、上記において、第1研磨体21は2つの板状の第1砥石21aからなり、第2研磨体22は、2つの円錐台を、それぞれ底面より小さい面積を有する上面で互いに連結した形状の第2砥石22aからなり、第3研磨体23は2つの円柱状の第3砥石23aからなる構成にすることができる。
【0059】
包丁研ぎ器1は、上記のような構成及びサイズにすることでコンパクトになり、キッチンの引き出しなどの身近なところに保管することができるため、手軽に包丁を研ぎ直すことができ、これによっていつも切れ味の良い包丁を使うことができる。また、キッチンの引き出しの中に収納でき、キッチンをすっきりさせることができる。また、包丁研ぎ器1は、コンパクトであるにもかかわらず、しっかりと持って安定して包丁などを研ぐことができる。また、包丁研ぎ器1は、コンパクトな構成にしつつ、複数の種類の刃物を研ぐことができる。
【符号の説明】
【0060】
1…刃物研ぎ器
2…土台
21…第1研磨体
22…第2研磨体
23…第3研磨体
24…ねじ穴
24a…ねじ
25…底面凹部
26…フック
3…カバー
31…第1スリット
32…第2スリット
33…第3スリット
31a~33a…アイコン
34…ねじ穴
4…本体
【要約】
【課題】刃物の刃先を研磨する刃物研ぎ器において、安定して使用可能な刃物研ぎ器を提供する。
【解決手段】本体と、前記本体内に配置された、第1の種類の刃物である第1刃物を研磨する第1研磨体と、を備える刃物研ぎ器であって、前記本体は、底面に、長手方向の中央部に幅方向にわたって上面側に向かって凹むように形成された底面凹部を有し、前記本体の、前記長手方向の前記中央部における、前記長手方向に対して垂直な断面は、下側に凸のU字状になっており、前記本体の上面には、前記幅方向にわたる溝状に形成され、刃先を前記第1研磨体に向けてガイドする第1スリットが形成される、刃物研ぎ器とする。
【選択図】図1
図1
図2
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図7
図8