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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20231211BHJP
   F16H 57/028 20120101ALI20231211BHJP
【FI】
F16H57/04 G
F16H57/028
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023529732
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2022021496
(87)【国際公開番号】W WO2022270214
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2021105244
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】太田 雄介
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-8901(JP,A)
【文献】特開2008-267465(JP,A)
【文献】実開昭62-173226(JP,U)
【文献】特開2019-15192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングを覆う部分を有するカバリングと、を有し、
径方向視において前記熱交換器は前記カバリングとオーバーラップしない部分を有し、
径方向視において前記熱交換器は前記カバリングとオーバーラップする部分を有する、ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記ハウジングは前記動力伝達機構を収容するギアケースを有し、
前記カバリングは前記ギアケースを覆う部分を有し、
前記熱交換器は前記ギアケースに取り付けられており、
径方向視において前記カバリングは前記動力伝達機構とオーバーラップする部分を有する、ユニット。
【請求項3】
熱交換器と、
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングを覆う部分を有するカバリングと、を有し、
前記ハウジングは前記動力伝達機構を収容するギアケースを有し、
径方向視において前記熱交換器は前記カバリングとオーバーラップしない部分を有し、
径方向視において前記カバリングは前記ギアケースとオーバーラップする部分を有し、
軸方向視及び径方向視の双方において前記熱交換器は前記ギアケースとオーバーラップする部分を有する、ユニット。
【請求項4】
請求項2において、
前記ハウジングはモータを収容するモータケースを有し、
径方向視において前記カバリングは前記モータケースとオーバーラップする部分を有する、ユニット。
【請求項5】
請求項3において、
前記ハウジングはモータを収容するモータケースを有し、
径方向視において前記カバリングは前記モータケースとオーバーラップする部分を有する、ユニット。
【請求項6】
請求項1又は請求項2において、
軸方向視及び径方向視の双方において前記熱交換器は前記ハウジングとオーバーラップする部分を有する、ユニット。
【請求項7】
請求項3において、
前記ハウジングはモータを収容するモータケースを有し、
前記熱交換器は前記モータケースとオーバーラップしない、ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるユニットは、モータおよび動力伝達機構を収容するハウジングを有する。特許文献1は、モータから発生するノイズを低減するために、防音材としてカバリングを設けることを開示している。特許文献2は、カバリングをハウジングの外側に設けることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-50385号公報
【文献】特開2008-267465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータおよび動力伝達機構の回転要素が回転することで、ハウジングには熱が発生する。ハウジングをカバリングで覆った場合、熱がこもりやすくなる。
【0005】
ハウジングにおいて、熱対策とノイズ対策の両立を図ることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様におけるユニットは、
熱交換器と、
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングを覆う部分を有するカバリングと、を有し、
径方向視において前記熱交換器は前記カバリングとオフセットする部分を有し、
径方向視において前記熱交換器は前記カバリングとオーバーラップする部分を有する。
【0007】
本発明のある態様におけるユニットは、
熱交換器と、
動力伝達機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングを覆う部分を有するカバリングと、を有し、
径方向視において前記熱交換器は前記カバリングとオフセットする部分を有し、
径方向視において前記カバリングは前記動力伝達機構とオーバーラップする部分を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、熱対策とノイズ対策の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、車両に搭載されるユニットを説明するスケルトン図である。
図2図2は、ユニットの外観図である。
図3図3は、ユニットの断面模式図である。
図4図4は、遊星減速ギア周りの拡大図である。
図5図5は、モータケースを、第2ケース部材を取り外した状態で上方から見た図である。
図6図6は、ユニットにおける冷却水の流れを説明する図である。
図7図7は、デフケースによるオイルの掻き上げを説明する図である。
図8図8は、ハウジングを覆うカバリングを示す図である。
図9図9は、図8を回転軸方向から見た図である。
図10図10は、オイルクーラ周りの拡大図である。
図11図11は、回転軸の径方向から視た傾斜部を示す図である。
図12図12は、ギアケースの傾斜部へのカバリングの巻き付けの一例を示す図である。
図13図13は、変形例1に係る開口部の一例を示す図である。
図14図14は、変形例1に係る開口部の別の例を示す図である。
図15図15は、変形例2に係る開口部の一例を示す図である。
図16図16は、変形例2に係る開口部の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本明細書における用語の定義を説明する。
「ユニット」は、「モータユニット」、「動力伝達装置」等とも呼ばれる。モータユニットは、少なくともモータを有するユニットである。動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達装置は、例えば、歯車機構及び/又は差動歯車機構である。モータ及び動力伝達機構を有する装置であるユニットは、モータユニット及び動力伝達装置の双方の概念に属する。
【0011】
「ハウジング」は、モータ、ギア、インバータを収容するものである。ハウジングは1つ以上のケースから構成される。
【0012】
「3in1」とは、モータを収容するモータケースの一部と、インバータを収容するインバータケースの一部とが、一体形成された形式を意味する。たとえば、カバーとケースが1つのケースを構成する場合、「3in1」では、モータを収容するケースとインバータを収容するケースが一体に形成されている。
【0013】
「モータ」は、電動機機能及び/又は発電機機能を有する回転電機である。
【0014】
第1要素(部品、部分等)に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の下流に接続された第2要素(部品、部分等)、第1要素(部品、部分等)の上流に接続された第2要素(部品、部分等)と述べた場合、第1要素と第2要素とが動力伝達可能に接続されていることを意味する。動力の入力側が上流となり、動力の出力側が下流となる。また、第1要素と第2要素は、他の要素(クラッチ、他の歯車機構等)を介して接続されていても良い。
【0015】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0016】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0017】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0018】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
【0019】
「軸方向」とは、ユニットを構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、ユニットを構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0020】
遊星歯車機構の回転要素(例えば、サンギア、キャリア、リングギア等)が他の要素と「固定されている」とは、直接固定されていても良いし、別部材を介して固定されていても良い。
【0021】
「回転方向の下流側」とは、車両前進時における回転方向または車両後進時における回転方向の下流側を意味する。頻度の多い車両前進時における回転方向の下流側にすることが好適である。遊星歯車機構における回転方向の下流側とは、ピニオンギアの公転方向の下流側を意味する。
【0022】
「キャッチタンク」は、オイルが導入されるタンク(コンテナ)の機能を有する要素(部品、部分等)である。タンクの外側からタンクにオイルが供給されることを、「キャッチ」と表現している。キャッチタンクは、たとえばハウジングの少なくとも一部を利用して設けられるか、ハウジングと別体で設けられる。キャッチタンクとハウジングとを一体形成することにより、部品点数削減に寄与する。
【0023】
「クーラント」は冷媒であり、熱交換媒体の一種である。たとえば、「クーラント」は、液体(冷却水等)、気体(空気等)等である。クーラントはオイルを含む概念であるが、本明細書においてオイルとクーラントとが併記されている場合は、クーラントはオイルとは異なる材料で構成されていることを意味する。
【0024】
「熱交換部」は、異なる2つの熱交換媒体(冷媒)間で熱交換を行う要素(部品、部分等)である。2つの熱交換媒体の組合せは、たとえば、オイルと冷却水、冷却水と空気、空気とオイル等がある。熱交換部は、例えば、熱交換器(オイルクーラ)、クーラントの流れる流路、ヒートパイプ、等がある。本件では、熱交換部として、熱交換器(オイルクーラ)を用いると好適である。熱交換器を用いることにより、熱交換効率の向上に寄与することができる。
【0025】
熱交換器(オイルクーラ)は、ハウジングと別体の部品である。熱交換器では、例えば、オイルと冷却水の熱交換が行われる。
【0026】
「車室」は、車両において乗員が乗り込む部屋を意味する。
【0027】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、車両に搭載されるユニットを説明するスケルトン図である。
図2は、ユニットの外観図である。
図3は、ユニットの断面模式図である。図3は、インバータケースを取り除いた状態を示している。
図4は、遊星減速ギア周りの拡大図である。
図5は、モータケースを、第2ケース部材を取り外した状態で上方から見た図である。
図6は、ユニットにおける冷却水の循環システムを示す図である。
図7は、ギアケースのキャッチタンクを説明する図である。
【0028】
図1に示すように、ユニット1は、3in1ユニットとして、モータ2と、モータ2が出力した動力を車両の駆動輪K、Kに伝達する動力伝達機構3と、モータ2の電力変換装置であるインバータ7(図2参照)を有する。
【0029】
実施の形態では、図1に示すように、ユニット1は、動力伝達機構3として、遊星減速ギア4(減速歯車機構、遊星歯車機構)、差動機構5(差動歯車機構)および出力軸であるドライブシャフトDA、DBを有する。
ユニット1では、モータ2の回転軸X回りの出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。ドライブシャフトDA、DBの軸線は、モータ2の回転軸Xと同軸であり、差動機構5はモータ2と同軸である。
【0030】
ユニット1では、モータ2の出力回転が、遊星減速ギア4で減速されて差動機構5に入力された後、ドライブシャフトDA、DBを介して、ユニット1が搭載された車両の左右の駆動輪K、Kに伝達される。
ここで、遊星減速ギア4は、モータ2の下流に接続されている。差動機構5は、遊星減速ギア4を介してモータ2の下流に接続されている。ドライブシャフトDA、DBは、差動機構5の下流に接続されている。
【0031】
図2に示すように、ユニット1は、3in1タイプのハウジングとして、モータ2、動力伝達機構3およびインバータ7を収容するハウジングHSを有する。ハウジングHSは、1つ以上のケースから構成される。ハウジングHSは、例えば、モータ2を収容するモータケース10と、動力伝達機構3を収容するギアケース14と、インバータ7を収容するインバータケース17と、を有する。回転軸X方向におけるモータケース10の一端側に、ギアケース14が接合されている。ユニット1を車両に搭載した状態における、モータケース10の重力方向上方にインバータケース17が接合されている。
【0032】
インバータ7は、平滑コンデンサ、パワー半導体素子、ドライバ基板等を備えた電子部品である。インバータ7は、不図示の配線によってモータケース10内のモータ2と電気的に接続されている。
インバータケース17内には、インバータ7を冷却する冷却水CL(図6参照)が通流する冷却路CP2が形成されている。
【0033】
モータ2は、軸方向視において、差動機構5(差動歯車機構)とオーバーラップする部分を有する(図3参照)。ここで、「軸方向視において」とは、回転軸X方向から視て、という意味である。なお、「径方向視において」とは、回転軸X方向の径方向から視て、という意味である。
軸方向視において、モータ2は遊星減速ギア4(減速歯車機構)にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、遊星減速ギア4(減速歯車機構)は差動機構5(差動歯車機構)にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、遊星減速ギア4(減速歯車機構)はモータ2にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、差動機構5(差動歯車機構)は遊星減速ギア4(減速歯車機構)にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、差動機構5(差動歯車機構)はモータ2にオーバーラップする部分を有する。
軸方向視において、モータ2は差動機構5(差動歯車機構)とオーバーラップする部分を有する。
【0034】
図3に示すように、モータケース10は、第1ケース部材11と、第1ケース部材11に外挿される第2ケース部材12と、第1ケース部材11の一端に接合されるカバー部材13を有する。第1ケース部材11は、円筒状の支持壁部111と、支持壁部111の一端111aに設けられたフランジ状の接合部112と、を有している。
支持壁部111はモータ2の回転軸Xに沿わせた向きで設けられている。支持壁部111の内側には、モータ2が収容される。
【0035】
第2ケース部材12は、円筒状の周壁部121と、周壁部121の一端121aに設けられたフランジ状の接合部122と、周壁部121の他端121bに設けられたフランジ状の接合部123と、を有している。
第2ケース部材12の周壁部121は、第1ケース部材11の支持壁部111に外挿可能な内径で形成されている。
第1ケース部材11と第2ケース部材12は、第1ケース部材11の支持壁部111に、第2ケース部材12の周壁部121を外挿して互いに組み付けられている。
【0036】
周壁部121の一端121a側の接合部122は、回転軸X方向から、第1ケース部材11の接合部112に当接している。これら接合部122、112は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0037】
図5に示すように、第1ケース部材11の支持壁部111の外周には、突起111bが設けられている。突起111bは回転軸Xを間隔を空けて囲む1つの壁である。支持壁部111において突起111bは、回転軸X方向の一端から他端に向かって位相をずらして螺旋状に設けられている。突起111bは、支持壁部111の全周に亘って、支持壁部111の外周を取り巻いている。
【0038】
図3に示すように、第1ケース部材11の支持壁部111に、第2ケース部材12の周壁部121が外挿される。この状態において周壁部121の内周は、支持壁部111の螺旋状の突起111bの外周に当接しているため、周壁部121と支持壁部111の間には空間が形成される。この空間は、回転軸Xを間隔をあけて囲むと共に、回転軸X方向に連続する螺旋状に形成される。この螺旋状の空間によって、クーラントである冷却水CL(図6参照)が通流する冷却路CP1が形成される。なお、図6では螺旋状の冷却路CP1を、簡略化して直線状に示している。
【0039】
第1ケース部材11の支持壁部111の外周では、突起111bが設けられた領域の両側に、リング溝111c、111cが形成されている。リング溝111c、111cには、シールリング113、113が外嵌して取り付けられている。
これらシールリング113は、支持壁部111に外挿された周壁部121の内周に圧接して、支持壁部111の外周と、周壁部121の内周との間の隙間を封止する。
【0040】
第2ケース部材12の他端121bには、内径側に延びる壁部120(カバー)が設けられている。壁部120は、回転軸Xに直交する向きで設けられている。壁部120の回転軸Xと交差する領域に、ドライブシャフトDAが挿通する開口120aが開口している。
【0041】
壁部120の、モータ2側(図中、右側)の面に、開口120aを囲み、モータ2側に延びる筒状のモータ支持部125が設けられている。
モータ支持部125は、後記するコイルエンド253bの内側に挿入されている。モータ支持部125は、ロータコア21の端部21bに回転軸X方向の隙間をあけて対向している。モータ支持部125の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部125で支持されている。
【0042】
壁部120の、差動機構5側(図中、左側)の面に、差動機構5側に延びる筒壁部126が設けられている。筒壁部126は、開口120aを囲む筒状であり、筒壁部126の内周には、ベアリングB2が支持されている。ベアリングB2は、後記するデフケース50の筒壁部61を支持する。
【0043】
カバー部材13は、回転軸Xに直交する壁部130と、接合部132とを有する。
第1ケース部材11から見てカバー部材13は、差動機構5とは反対側(図中、右側)に位置している。カバー部材13の接合部132は、第1ケース部材11の接合部112に回転軸X方向から接合されている。カバー部材13と第1ケース部材11は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。この状態において第1ケース部材11は、支持壁部111の接合部122側(図中、右側)の開口が、カバー部材13で塞がれている。
【0044】
カバー部材13では、壁部130の中央部に、ドライブシャフトDAの挿通孔130aが設けられている。
挿通孔130aの内周には、リップシールRSが設けられている。リップシールRSは、図示しないリップ部をドライブシャフトDAの外周に弾発的に接触させている。挿通孔130aの内周と、ドライブシャフトDAの外周との隙間が、リップシールRSにより封止されている。
壁部130における第1ケース部材11側(図中、左側)の面には、挿通孔130aを囲む周壁部131が設けられている。周壁部131の内周には、ドライブシャフトDAがベアリングB4を介して支持されている。
【0045】
接合部132の内径側には、モータ支持部135および接続壁136が設けられている。モータ支持部135は、周壁部131から見てモータ2側(図中、左側)に設けられている。モータ支持部135は、回転軸Xを間隔を空けて囲む筒状を成している。
モータ支持部135の外周には、円筒状の接続壁136が接続されている。接続壁136は、壁部130側(図中、右側)の周壁部131よりも大きい外径で形成されている。接続壁136は、回転軸Xに沿う向きで設けられており、モータ2から離れる方向に延びている。接続壁136は、モータ支持部135と接合部132とを接続している。
【0046】
モータ支持部135の内側を、モータシャフト20の一端20a側が、モータ2側から周壁部131側に貫通している。
モータ支持部135の内周には、ベアリングB1が支持されている。モータシャフト20の外周が、ベアリングB1を介してモータ支持部135で支持されている。
ベアリングB1と隣り合う位置には、リップシールRSが設けられている。
【0047】
接続壁136の内周に、油孔136a、136bが開口している。接続壁136で囲まれた空間(内部空間Sc)に、油孔136aからオイルOLが流入する。内部空間Scに流入したオイルOLは、油孔136bから排出される。リップシールRSは、接続壁136内のオイルOLのモータ2側への流入を阻止するために設けられている。
【0048】
ギアケース14は、周壁部141と、周壁部141におけるモータケース10側の端部に設けられたフランジ状の接合部142と、を有している。周壁部141における接合部142と対向側(図中、左側)の端部には、後記するベアリングB2の支持部145が設けられている。周壁部141は、接合部142に接続する筒壁部141aと、支持部145に接続する傾斜部141c(傾斜面)と、これら筒壁部141aと傾斜部141cとを接続する接続壁部141bとを有する。筒壁部141aと接続壁部141bは、接合部142から段階的に縮径して傾斜部141cに接続する。傾斜部141cは、接続壁部141bから支持部145に向かって内径側に傾斜する。周壁部141の内側に、動力伝達機構3である遊星減速ギア4と差動機構5が収容される。
【0049】
ギアケース14は、モータケース10から見て差動機構5側(図中、左側)に位置している。ギアケース14の接合部142は、モータケース10の第2ケース部材12の接合部123に、回転軸X方向から接合されている。ギアケース14と第2ケース部材12は、ボルト(図示せず)で互いに連結されている。
【0050】
接合されたモータケース10およびギアケース14の内部に形成される空間は、第2ケース部材12の壁部120(カバー)によって、2つに区画される。壁部120のモータケース10側がモータ2を収容するモータ室Saであり、ギアケース14側が動力伝達機構3を収容するギア室Sbである。カバーである壁部120は、ハウジングHSの内部において、モータ2と差動機構5に挟まれる。
【0051】
カバーは、ハウジングHS内に収容された部分を有するものであれば良く、壁部120のように、全体がハウジングHSに収容されていても良い。また、カバーは、たとえば、第2ケース部材12とは別体としても良い。この場合、カバーは、モータケース10とギアケース14で挟んで固定しても良い。なお、カバーの一部がハウジングHS外に露出しても良い。
【0052】
モータ2は、円筒状のモータシャフト20と、モータシャフト20に外挿された円筒状のロータコア21と、ロータコア21の外周を間隔を空けて囲むステータコア25とを、有する。
【0053】
モータシャフト20では、ロータコア21の両側に、ベアリングB1、B1が外挿されて固定されている。
ロータコア21から見てモータシャフト20の一端20a側(図中、右側)に位置するベアリングB1は、カバー部材13のモータ支持部135の内周に支持されている。他端20b側(図中、左側)に位置するベアリングB1は、第2ケース部材12の円筒状のモータ支持部125の内周に支持されている。
【0054】
モータ支持部135、125は、後記するコイルエンド253a、253bの内径側で、ロータコア21の一方の端部21aと他方の端部21bに、回転軸X方向の隙間をあけて対向して配置されている。
【0055】
ロータコア21は、複数の珪素鋼板を積層して形成したものである。珪素鋼板の各々は、モータシャフト20との相対回転が規制された状態で、モータシャフト20に外挿されている。
モータシャフト20の回転軸X方向から見て、珪素鋼板はリング状を成している。珪素鋼板の外周側では、図示しないN極とS極の磁石が、回転軸X周りの周方向に交互に設けられている。
【0056】
ロータコア21の外周を囲むステータコア25は、複数の電磁鋼板を積層して形成したものである。ステータコア25は、第1ケース部材11の円筒状の支持壁部111の内周に固定されている。
電磁鋼板の各々は、支持壁部111の内周に固定されたリング状のヨーク部251と、ヨーク部251の内周からロータコア21側に突出するティース部252と、を有している。
【0057】
本実施形態では、巻線253を、複数のティース部252に跨がって分布巻きした構成のステータコア25を採用している。ステータコア25は、回転軸X方向に突出するコイルエンド253a、253bの分だけ、ロータコア21よりも回転軸X方向の長さが長くなっている。
【0058】
なお、ロータコア21側に突出する複数のティース部252の各々に、巻線を集中巻きした構成のステータコアを採用しても良い。
【0059】
第2ケース部材12の壁部120(モータ支持部125)には、開口120aが設けられている。モータシャフト20の他端20b側は、開口120aを差動機構5側(図中、左側)に貫通して、ギアケース14内に位置している。
モータシャフト20の他端20bは、ギアケース14の内側で、後記するサイドギア54Aに、回転軸X方向の隙間をあけて対向している。
【0060】
モータシャフト20と壁部120の開口120aの間にはリップシールRSが挿入されている。
ギアケース14の内径側には、遊星減速ギア4と差動機構5を潤滑するためのオイルOLが封入されている。
リップシールRSは、ギアケース14内のオイルOLがモータケース10内に流入することを阻止するために設けられている。
【0061】
図4に示すように、モータシャフト20の、ギアケース14内に位置する領域に遊星減速ギア4のサンギア41がスプライン嵌合している。
【0062】
サンギア41の外周には歯部41aが形成されており、歯部41aには段付きピニオンギア43の大径歯車部431が噛合している。
【0063】
段付きピニオンギア43は、サンギア41に噛合する大径歯車部431(ラージピニオン)と、大径歯車部431よりも小径の小径歯車部432(スモールピニオン)とを有している。
大径歯車部431と小径歯車部432は、回転軸Xに平行な軸線X1方向に並んで配置された、一体のギア部品である。
【0064】
小径歯車部432の外周は、リングギア42の内周に噛合している。リングギア42は、回転軸Xを間隔を空けて囲むリング状を成している。リングギア42の外周には、係合歯が設けられ、係合歯が接続壁部141bの内周に設けられた歯部146aにスプライン嵌合している。リングギア42は、回転軸X回りの回転が規制されている。
【0065】
大径歯車部431および小径歯車部432の内径側をピニオン軸44が貫通している。段付きピニオンギア43は、ピニオン軸44の外周にニードルベアリングNB、NBを介して回転可能に支持されている。
【0066】
図3に示すように、差動機構5は、入力要素であるデフケース50(デファレンシャルケース)と、出力要素であるドライブシャフトDA、DB(出力軸)、差動要素である差動歯車セットを有する。詳細な説明は省略するが、デフケース50は、回転軸方向に組み付けられた2つのケース部材から構成しても良い。
【0067】
デフケース50は、遊星減速ギア4の段付きピニオンギア43を支持するキャリアとしても機能する。段付きピニオンギア43は、ピニオン軸44を介して、デフケース50に回転可能に支持されている。図7に示すように、3つの段付きピニオンギア43は、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて配置されている。
【0068】
図3に示すように、デフケース50内には、差動歯車セットとして、傘歯車式のデファレンシャルギアであるピニオンメートギア52と、サイドギア54A、54Bが設けられている。ピニオンメートギア52は、ピニオンメートシャフト51に支持されている。
ピニオンメートシャフト51は、回転軸X上に配置された中心部材510と、中心部材510の外径側に連結されたシャフト部材511を有する。図示は省略するが、複数のシャフト部材511が回転軸X周りの周方向に等間隔で設けられている。シャフト部材511は、デフケース50の径方向に延びる支持孔69に挿通され、支持されている。
【0069】
ピニオンメートギア52は、シャフト部材511の各々に1つずつ外挿され、回転可能に支持されている。
【0070】
デフケース50では、回転軸X方向における中心部材510の一方側にサイドギア54Aが位置し、他方側にサイドギア54Bが位置する。サイドギア54A、54Bは、それぞれデフケース50に回転可能に支持される。
サイドギア54Aは、回転軸X方向における一方側から、ピニオンメートギア52に噛合している。サイドギア54Bは、回転軸X方向における他方側から、ピニオンメートギア52に噛合している。
【0071】
デフケース50の一端側(図中、右側)の中央部には、開口60と、開口60を囲み、モータケース10側に延びる筒壁部61が設けられている。筒壁部61の外周は、ベアリングB2を介して、第2ケース部材12の壁部120に支持されている。
【0072】
デフケース50の内部には、開口60を挿通したドライブシャフトDAが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフトDAは、カバー部材13の壁部130の挿通孔130aを貫通し、モータ2のモータシャフト20と、遊星減速ギア4のサンギア41の内径側を回転軸X方向に横切って設けられている。
【0073】
図3に示すように、デフケース50の他端側(図中、左側)の中央部には、貫通孔65と、貫通孔65を囲む筒壁部66が形成されている。筒壁部66に、ベアリングB2が外挿されている。筒壁部66に外挿されたベアリングB2は、ギアケース14の支持部145で保持されている。デフケース50の筒壁部66は、ベアリングB2を介して、ギアケース14で回転可能に支持されている。
【0074】
支持部145には、ギアケース14の開口部145aを貫通したドライブシャフトDBが、回転軸X方向から挿入されている。ドライブシャフトDBは、支持部145で回転可能に支持されている。筒壁部66は、ドライブシャフトDBの外周を支持する軸支持部として機能する。
開口部145aの内周には、リップシールRSが固定されている。リップシールRSの図示しないリップ部が、ドライブシャフトDBに外挿されたサイドギア54Bの筒壁部540の外周に弾発的に接触している。
これにより、サイドギア54Bの筒壁部540の外周と開口部145aの内周との隙間が封止されている。
【0075】
デフケース50の内部では、ドライブシャフトDA、DBの先端部が、回転軸X方向に間隔を空けて対向している。
ドライブシャフトDA、DBの先端部の外周に、デフケース50に支持されたサイドギア54A、54Bがスプライン嵌合している。サイドギア54A、54BとドライブシャフトDA、DBとが、回転軸X周りに一体回転可能に連結されている。
【0076】
この状態においてサイドギア54A、54Bは、回転軸X方向で間隔をあけて、対向配置されている。サイドギア54A、54Bの間に、ピニオンメートシャフト51の中心部材510が位置している。
ピニオンメートギア52は、回転軸X方向の一方側に位置するサイドギア54Aおよび他方側に位置するサイドギア54Bに、互いの歯部を噛合させた状態で組み付けられている。
【0077】
図4に示すように、デフケース50の一端側(図中、右側)の、開口60の外径側に、ピニオン軸44の一端44a側の支持孔62が形成されている。デフケース50の他端側(図中、左側)には、ピニオン軸44の他端44b側の支持孔68が形成されている。
【0078】
支持孔62、68は、回転軸X方向にオーバーラップする位置に形成される。支持孔62、68は、それぞれ、段付きピニオンギア43を配置する位置に合わせて、回転軸X周りの周方向に間隔を空けて形成される。ピニオン軸44の一端44aが支持孔62に挿入され、他端44bが支持孔68に挿入される。ピニオン軸44は、他端44bが支持孔68に圧入されることで、ピニオン軸44はデフケース50に対して相対回転不能に固定されている。ピニオン軸44に外挿された段付きピニオンギア43は、回転軸Xに平行な軸線X1回りに回転可能に支持されている。
【0079】
図示は省略するが、ギアケース14の内部には、潤滑用のオイルOLが貯留されている。デフケース50が回転軸X回りに回転すると、オイルOLがデフケース50によって掻き上げられる。
詳細な説明は省略するが、デフケース50、ピニオン軸44等には、デフケース50に掻き上げられたオイルOLを導入するための油路、油孔等が設けられている。これによって、ベアリングB2、ニードルベアリングNB等の回転部材にオイルOLが導入されやすくなっている。
【0080】
また、図7に示すように、ギアケース14内の、デフケース50の上部に、キャッチタンク15が設けられている。キャッチタンク15は、回転軸Xと直交する鉛直線VLを挟んだ一方側(図中、左側)に位置している。キャッチタンク15と、デフケース50の収容部140とは、連通口147を介して連通している。デフケース50によって掻き上げられて飛散したオイルOLの一部は、連通口147からキャッチタンク15内に流入して捕集される。
【0081】
ユニット1を搭載した車両の前進走行時に、モータケース10側から見てデフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。図4に示すように、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、ギアケース14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43の大径歯車部431は、図7に示すように、軸線X1回りを時計回り方向に自転しながら、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに公転する。
【0082】
キャッチタンク15は、鉛直線VLを挟んだ左側、すなわちデフケース50の回転方向における下流側に位置している。これにより、回転軸X回りに回転するデフケース50で掻き上げられたオイルOLの多くが、キャッチタンク15内に流入できるようになっている。
図3に示すように、キャッチタンク15は、油路151aを介して、リップシールRSとベアリングB2との間の空間Rxに接続している。また、キャッチタンク15は、不図示の油路、配管等を介して、オイルクーラ83(図6参照)に接続している。オイルクーラ83は、不図示の配管、油路等を介して、接続壁136に形成された油孔136a(図3参照)に接続している。
【0083】
ギアケース14の周壁部141には、油孔Haが形成されている。油孔Haは、不図示の配管を介して、内部空間Scに形成された油孔136bと接続している。油孔136bを介して内部空間Scから排出されたオイルOLは、油孔Haから再びギア室Sb内部に供給される。
【0084】
図6に示すように、ユニット1には、冷却水CLの循環システム80が設けられている。循環システム80は、前記したモータケース10の冷却路CP1とインバータケース17の冷却路CP2との間で、冷却水CLを循環させる。循環システム80は、さらに、冷却路CP1と冷却路CP2の間に、オイルクーラ83、ウォーターポンプWPおよびラジエータ82を備えており、これらは冷却水CLが通流する配管等で接続されている。
【0085】
ウォーターポンプWPは、冷却水CLを循環システム80内において圧送する。
ラジエータ82は、冷却水CLの熱を放熱して冷却する装置である。
【0086】
オイルクーラ83は、冷却水CLと、オイルOLとの熱交換を行う熱交換器である。オイルクーラ83には、ギアケース14のギア室Sb内に設けられたキャッチタンク15で捕集されたオイルOLが導入される。オイルOLは、冷却水CLとの熱交換により冷却される。冷却されたオイルOLは、モータケース10の油孔136aから内部空間Scに供給される。なお、オイルクーラ83に供給するオイルOLは、キャッチタンク15で捕集されたオイルOLに限定されず、ハウジングHSに適宜設けた別の油路から供給しても良い。また、オイルクーラ83から排出されたオイルOLを、内部空間Scとは別の箇所に供給しても良い。
【0087】
冷却水CLは、インバータケース17内の冷却路CP2およびモータケース10内の冷却路CP1を通流した後に、オイルクーラ83に供給される。冷却水CLは、オイルクーラ83においてオイルOLとの熱交換が行われた後に、ラジエータ82で冷却され、再びインバータケース17の冷却路CP2に供給される。
【0088】
かかる構成のユニット1の作用を説明する。
図1に示すように、ユニット1では、モータ2の出力回転の伝達経路に沿って、遊星減速ギア4と、差動機構5と、ドライブシャフトDA、DBと、が設けられている。
【0089】
図3に示すように、モータ2が駆動されて、ロータコア21が回転軸X回りに回転すると、ロータコア21と一体に回転するモータシャフト20を介して、遊星減速ギア4のサンギア41に回転が入力される。
【0090】
遊星減速ギア4では、サンギア41が、モータ2の出力回転の入力部となっており、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、入力された回転の出力部となっている。
【0091】
図4に示すように、サンギア41が入力された回転で回転軸X回りに回転すると、段付きピニオンギア43(大径歯車部431、小径歯車部432)が、サンギア41側から入力される回転で、軸線X1回りに回転する。
ここで、段付きピニオンギア43の小径歯車部432は、ギアケース14の内周に固定されたリングギア42に噛合している。そのため、段付きピニオンギア43は、軸線X1回りに自転しながら、回転軸X周りに公転する。
【0092】
ここで、段付きピニオンギア43では、小径歯車部432の外径が大径歯車部431の外径よりも小さくなっている。
これにより、段付きピニオンギア43を支持するデフケース50が、モータ2側から入力された回転よりも低い回転速度で回転軸X回りに回転する。
そのため、遊星減速ギア4のサンギア41に入力された回転は、段付きピニオンギア43により、大きく減速されたのちに、デフケース50(差動機構5)に出力される。
【0093】
図3に示すように、デフケース50が入力された回転で回転軸X回りに回転することにより、デフケース50内で、ピニオンメートギア52と噛合するドライブシャフトDA、DBが回転軸X回りに回転する。これによりユニット1が搭載された車両の左右の駆動輪K、K(図1参照)が、伝達された回転駆動力で回転する。
【0094】
図3に示すように、ギア室Sbの内部には、潤滑および冷却用のオイルOLが貯留される。ギア室Sbにおいては、モータ2の出力回転の伝達時に、貯留されたオイルOLが、回転軸X回りに回転するデフケース50により掻き上げられる。
図3および図4に示すように、掻き上げられたオイルOLにより、サンギア41と大径歯車部431との噛合部と、小径歯車部432とリングギア42との噛合部と、ピニオンメートギア52とサイドギア54A、54Bとの噛合部とが潤滑される。また、オイルOLとの熱交換によってこれらの噛合部が冷却される。
【0095】
図7に示すように、デフケース50は、回転軸X周りの反時計回り方向CCWに回転する。
ギアケース14の上部には、キャッチタンク15が設けられている。キャッチタンク15は、デフケース50の回転方向における下流側に位置しており、デフケース50で掻き上げられたオイルOLの一部が、キャッチタンク15内に流入する。
【0096】
図3に示すように、キャッチタンク15に流入したオイルOLの一部は、油路151aを介して、リップシールRSとベアリングB2との間の空間Rxに供給され、ベアリングB2を潤滑する。キャッチタンク15に流入したオイルOLの一部は、不図示の配管を介してオイルクーラ83(図6参照)に導入され、冷却される。冷却されたオイルOLは、油孔136aを介して、接続壁136に形成された内部空間Sc(図3参照)に供給される。内部空間Scに供給されたオイルOLは、ベアリングB4を潤滑し、油孔136bから排出される。油孔136bから排出されたオイルOLは、不図示の配管等を介して、油孔Haからギア室Sb内に供給される。
【0097】
図8は、ハウジングHSを覆うカバリング90を示す図である。
図9は、図8を回転軸X方向から見た図である。
図10は、オイルクーラ83周りの拡大図である。
図11は、回転軸Xの径方向から視た傾斜部141cを示す図である。
図8図11では、ハウジングHSの形状は簡略化して示している。
図11では、二点鎖線で囲った領域の拡大図を下方に示している。拡大図では、オイルクーラ83とカバリング90の位置関係をわかりやすくするために、傾斜部141cのカバリング90に覆われた領域をクロスハッチングで示している。また、オイルクーラ83の各部は輪郭のみを破線で示し、導入部835aおよび排出部835bについてはハッチングを付して示している。
【0098】
図8に示すように、ユニット1のハウジングHSを、ノイズ対策のために、別体の部品であるカバリング90で覆うことができる。ノイズ対策とは、たとえば、ユニット1の各種部品(たとえば、動力伝達機構3、モータ2等)にて発生し、外部に漏れるノイズを減らす対策を意味する。ノイズは、音または電磁ノイズである。
【0099】
カバリング90は、ノイズを減少する機能(たとえば、防音機能、吸音機能、遮音機能等)を有する材料から構成することができる。カバリング90に適用可能な材料は、例えば、有機材料、金属材料等である。音の減少効果を高める場合は、有機材料を含む材料が好適である。電磁ノイズの減少効果を高める場合は金属材料を含む材料が好適である。
【0100】
有機材料の中で、例えば、ウレタン、ゴム、ポリエチレン等は、音の減少効果が高く、特に好適な材料である。
【0101】
金属材料の中で特に好適な材料は、電磁ノイズの減少効果をより高めることから、ハウジングHSを構成する材料より、比導電率/比透磁率が高い材料、及び/又は、比導電率×比透磁率が高い材料である。たとえば、ハウジングHSの材料がアルミニウムを主成分とする材料の場合は、カバリング90に適用する金属材料は、金、銀、銅を含む材料であることが好ましい。
【0102】
カバリング90には、異なる材料を積層する、及び/又は、異なる材料を混合したものを用いることができる。たとえば、金属材料と有機材料を積層したカバリング90としたり、有機材料に金属を含む粒子(金属粒子、合金粒子等)を混合した材料をカバリング90としたりすると、音及び電磁ノイズの対策となり好適である。
【0103】
音漏れの減少効果を高めるために、カバリング90を、多孔質構造を有するものとすることができる。
【0104】
カバリング90でハウジングHSを覆うにあたり、耐久性向上のため防水効果のある材料を用いることができる。金属材料は防水効果を有する。有機材料のうち防水効果があるものは、例えば、ゴム、ポリエチレン等がある。
【0105】
図8では、カバリング90を破線で示している。カバリング90は、ハウジングHSの外表面に沿って配置される。カバリング90は、たとえば、ハウジングHSの外表面に沿う程度の柔軟性を有する材料を用いたシートを、ハウジングHSの外表面に巻き付けることで構成することできる。
【0106】
ハウジングHSの全体を覆うカバリング90は、回転軸X方向および回転軸Xの径方向視において、動力伝達機構3およびモータ2にオーバーラップしている。これにより、ハウジングHSのノイズ対策に寄与する。
【0107】
なお、カバリング90は、ハウジングHS全体を覆うものに限定されず、たとえば、ギアケース14またはモータケース10のみを覆っても良い。あるいは、カバリング90は、ギアケース14およびモータケース10を覆い、インバータケース17をカバリング90から露出させても良い。
【0108】
ハウジングHSは、モータ2および動力伝達機構3を構成する部品の回転によって、熱が発生しやすい。ハウジングHSはカバリング90で覆われているため、熱がこもりやすい。そのため、ハウジングHSの熱対策を行うことが望ましい。
【0109】
実施の形態では、熱対策として、ユニット1に、熱交換部であるオイルクーラ83を設ける。オイルクーラ83は、前記したように、冷却水CL(図6参照)との熱交換により、オイルOLを冷却する熱交換器である。オイルクーラ83が、ハウジングHS内に貯留されるオイルOLを冷却する。これによって、オイルOLと、モータ2および動力伝達機構3を構成する部品との熱交換の効率が向上し、ハウジングHSの温度上昇が低減される。
【0110】
図8に示すように、オイルクーラ83は、ギアケース14の傾斜部141cの上部に配置されている。傾斜部141cは、モータケース10側からドライブシャフトDB側に向かって縮径する円錐台形状である。傾斜部141cの周囲のスペースは、ユニット1のモータケース10等の周囲のスペースと比べて大きい。実施の形態では、オイルクーラ83を傾斜部141c周りのスペースに配置する。
【0111】
オイルクーラ83は、ハウジングHSを覆うカバリング90から露出して設けられている。
図9に示すように、オイルクーラ83は、本体部831を備える。図示は省略するが、本体部831の内部には、冷却水CLの流路とオイルOLの流路が設けられ、冷却水CLとオイルOLとの熱交換が行われる。図10に示すように、本体部831は、傾斜部141cの壁面とは離間して設けられている。
【0112】
本体部831の鉛直線方向(重力方向)の上方には、冷却水CLの導入部833aと排出部833bが設けられている。導入部833aおよび排出部833bは、本体部831に連結するパイプ等で構成することができる。導入部833aは、不図示の配管等を介してモータケース10の冷却路CP1(図6参照)に接続する。排出部833bは、不図示の配管等を介してラジエータ82に接続する(図6参照)。
【0113】
図10に示すように、本体部831の鉛直線方向下方には、オイルOLの導入部835aと排出部835bが設けられている。導入部835aおよび排出部835bは、本体部831に連結するパイプ等で構成することができる。導入部835aおよび排出部835bは、本体部831から鉛直線方向下方に延びて、ギアケース14の傾斜部141cに接続する。
【0114】
図10に示すように、ギアケース14の傾斜部141cには、孔部141d、141eが設けられている。図10では、孔部141d、141eをわかりやすくするために、ギアケース14を断面で示している。孔部141d、141eは、たとえば、傾斜部141cの壁面を回転軸Xの径方向に貫通して形成される。
【0115】
カバリング90には、開口部91、92が設けられている。開口部91、92は、カバリング90を貫通する矩形の孔(ホール)として形成される。図11に示すように、回転軸Xの径方向視において、開口部91は、孔部141dとオーバーラップし、開口部92は、孔部141eとオーバーラップする。開口部91、92の開口面積は孔部141d、141eの開口面積より大きいため、回転軸Xの径方向視において、開口部91、92の一部が孔部141d、141eにオーバーラップしている。開口部91、92によって、孔部141d、141eはカバリング90から露出している。なお、開口部91、92の開口面積は、孔部141d、141eの開口面積と同じであっても良い。この場合は、回転軸Xの径方向視において、開口部91、92の全体が孔部141d、141eにオーバーラップする。
【0116】
図10に示すように、オイルクーラ83の導入部835aの先端は、カバリング90から露出した孔部141dを挿通して、ギア室Sb内部に挿入される。オイルクーラ83の排出部835bの先端は、カバリング90から露出した孔部141eを挿通して、ギア室Sb内部に挿入される。なお、図示は省略するが、孔部141e、141eには、オイル漏れを防止するシールリングを設けても良い。
【0117】
導入部835aは、不図示の油路、配管等を介してギアケース14内部のキャッチタンク15(図6参照)に接続している。排出部835bは、不図示の油路、配管等を介して、接続壁136に形成された油孔136a(図3参照)に接続している。
【0118】
図9に示すように、ギアケース14の傾斜部141cに取り付けられたオイルクーラ83は、回転軸X方向から視てハウジングHSにオーバーラップしている。このようにオイルクーラ83を配置することで、オイルクーラ83が、ハウジングHSから回転軸Xの径方向に突出する高さを低減することができる。これによって、ユニット1全体のダウンサイジングに寄与する。
【0119】
図8に示すように、回転軸X方向から視て、動力伝達機構3の差動機構5(差動歯車機構)は、モータ2とオーバーラップする部分を有している。オイルクーラ83は、モータ2の軸心である回転軸Xを通り、かつ鉛直線方向に直交する水平面S(図9参照)よりも上方に位置している。また、図8に示すように、オイルクーラ83は、差動機構5の鉛直線方向上方に位置する。
【0120】
モータ2と差動機構5が同軸に配置されたユニット1においては、鉛直線方向下方よりも鉛直線方向上方のレイアウト制約が緩くなっている。レイアウト制約の緩いユニット1の鉛直線方向上方にオイルクーラ83を配置することで、オイルクーラ83のサイズを大きくして表面積を確保することができる。熱交換器であるオイルクーラ83は、表面積が大きいほど熱交換率は高くなる傾向にある。
【0121】
図9に示すように、ユニット1を車両に搭載すると、ユニット1が配置された空間SPの上方には、車室VRが配置される。図8に示すように、ユニット1のハウジングHSは、オイルクーラ83の導入部835a用の開口部91、排出部835b用の開口部92に対応する領域を除いた部分は、カバリング90に覆われている。すなわち、オイルクーラ83をユニット1の鉛直線方向上方に配置した場合でも、オイルクーラ83周辺のカバリング90の面積を確保して、車室VRに漏れるノイズを低減することができる。
【0122】
図11に示すように、回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83の本体部831は、カバリング90にオーバーラップしている。すなわち、オイルクーラ83はカバリング90から露出した状態であるが、ハウジングHSの、回転軸Xの径方向視においてオイルクーラ83にオーバーラップする部分は、カバリング90に覆われている。これによって、傾斜部141cをカバリング90で覆うことによるノイズ対策と、オイルクーラ83をカバリング90から露出させる熱対策とを両立させることができる。
【0123】
カバリング90の開口部91、92において、傾斜部141cはカバリング90に覆われず、外部に露出している。すなわち、回転軸Xの径方向から視て、オイルクーラ83は、開口部91、92において、カバリング90とオーバーラップせず、オフセットする部分を有する。
【0124】
オイルクーラ83は、このカバリング90とオフセットする部分に、傾斜部141cに接続する導入部835aおよび排出部835bを設けている。オイルクーラ83の傾斜部141cと接続する部分がカバリング90とオフセットすることによって、オイルクーラ83がカバリング90から露出する面積を増やすことができる。オイルクーラ83の露出面積が増えることで、オイルクーラ83と、周囲の空気Air(図9参照)との熱交換効率が向上するため、ハウジングHSの熱対策に寄与する。また、本体部831は傾斜部141cから離間しているため、本体部831がギアケース14で発生する熱の影響を受けることが低減される。
【0125】
さらに、オイルクーラ83の導入部835aおよび排出部835bは、回転軸Xの径方向視において、カバリング90の開口部91、92とオーバーラップしている。すなわち、回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83の傾斜部141cと接続する部分が、カバリング90に囲まれている。カバリング90から露出する導入部835aおよび排出部835bを囲むようにカバリング90が配置されることによって、ハウジングHSからのノイズ漏れが低減され、ノイズ対策に寄与する。
【0126】
図12は、ギアケース14の傾斜部141cへのカバリング90の巻き付けの一例を示す図である。
図12に示すように、傾斜部141cは、ギアケース14の回転軸X方向における位置AP1からAP2の範囲を占める円錐台形状の部分である。傾斜部141cは、位置AP1からAP2に向かって拡径している。この円錐台形状の傾斜部141cを覆うカバリング90として、図12の下方に示す、環状扇形(annular sector)のシート90Aを用いることができる。
【0127】
シート90Aは、円弧状の内縁90cと、内縁90cの同心円状に形成された外縁90dを有する。カバリング90の円弧中心Oに対する周方向の一端90aと、他端90bにおいて、内縁90cと外縁90dが接続されている。
【0128】
内縁90cの円弧長さは、位置AP1における傾斜部141cの外径に対応し、外縁90dの円弧長さは位置AP2における傾斜部141cの外径に対応する。円弧中心Oの径方向における、内縁90cから外縁90dまでの長さL1は、傾斜部141cの位置AP1からAP2までの傾斜面の長さL10に対応する。
【0129】
シート90Aの一端90aには、凹部904と、切欠きN1、N2が設けられている。凹部904は一端90aの径方向中心に設けられている。切欠きN1、N2は、凹部904を間隔を空けて挟む形で設けられている。シート90Aの他端90bの径方向中心には、凸部903が設けられている。
【0130】
切欠きN1、N2は、矩形を成す四辺の中の一辺が欠けたミッシングパートである。切欠きN1、N2は、シート90Aを傾斜部141cに巻き付けた際に、カバリング90の開口部91、92(図11参照)を形成する部分である。
【0131】
図12に示すように、シート90Aを傾斜部141cに巻き付ける際は、内縁90cを、傾斜部141cの位置AP1に合わせ、外縁90dを傾斜部141cの位置AP2に合わせる。
一端90aの切欠きN1、N2を、傾斜部141cの孔部141d、141eに合わせて、シート90Aを傾斜部141cの回転軸X周りの周方向に巻き付ける。傾斜部141cの回転軸Xの径方向における位置P1において、シート90Aの他端90bを一端90aに当接させて固定する。他端90bを一端90aに当接させる際に、凸部903を凹部904に挿入して固定する。
【0132】
他端90bが一端90aに当接すると、切欠きN1、N2の欠けた一辺が他端90bによって補われ、矩形のホールである開口部91、92が形成される。
【0133】
切欠きN1、N2を予めシート90Aに形成しておくことで、巻き付け後に孔部141d、孔部141eの位置に合わせて開口部91、92を形成する必要が無い。また、切欠きN1、N2を孔部141d、141eに位置合わせして巻き付けを行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0134】
なお、カバリング90は、シート状のものをハウジングHSに巻き付ける態様に限定されない。カバリング90は、たとえば、直方体形状のボックスとし、内部にハウジングHSを収容しても良い。
【0135】
ユニット1は、車両の走行風を受けにくい車両後方側に配置されることがある。図9に示すように、車両には、ユニット1の配置された空間SPと車室VRを連通する通気口VPが設けられている。
【0136】
車室VRにおいて空調装置を駆動する、または車室VRの窓を開けることによって、車室VR内の空気Airが通気口VPから排出され、空間SPに流入する。車室VR内の空気Airは、外気温に合わせた温度調整がなされる。例えば、外気温が高い時には、車両において冷房が使用され、または窓が開けられる。また、例えば、外気温が低い時には暖房が使用される。
【0137】
外気温に応じて温度調整された空気Airが空間SPに流入すると、空間SPに配置されたハウジングHSと熱交換を行う。これによって、走行風を受けにくい車両の後方側においても、ハウジングHSを適正温度に近づける方向で熱交換を行うことができる。さらに、ハウジングHSに取り付けられたオイルクーラ83も、空気Airとの熱交換を行うことができる。オイルクーラ83はユニット1の鉛直線方向上方に配置されているため、通気口VPに近く、空気Airとの熱交換が行われやすい。
なお、車室VR内の空気Airが、空間SPに流入しやすいように、ファン等を設けても良い。
【0138】
以上の通り、実施の形態にかかるユニット1は、以下の構成を有する。
(1)ユニット1は、
オイルクーラ83(熱交換器)と、
動力伝達機構3を収容するハウジングHSと、
ハウジングHSを覆う部分を有するカバリング90と、を有する。
回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83はカバリング90とオフセットする部分を有する。
回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83はカバリング90とオーバーラップする部分を有する。
【0139】
これによって、ハウジングHSにおける熱対策とノイズ対策の両立を図ることができる。
回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83は、カバリング90の開口部91、92と重なる部分おいて、カバリング90から径方向にオフセットした位置に本体部831を有している。オイルクーラ83にカバリング90とオフセットする部分である本体部831を設けることで、オイルクーラ83のカバリング90から露出する部分が増える。露出する部分が増えることで、オイルクーラ83が、空気Airとの熱交換で冷却される空冷効率が向上する。オイルクーラ83の空冷効率の向上は、オイルクーラ83でのオイルOLと冷却水CLと熱交換効率の向上に寄与するので、最終的にハウジングHSの熱対策に寄与する。
【0140】
回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83は、開口部91、92の領域を除いて、カバリング90にオーバーラップしている。オイルクーラ83とオーバーラップしてカバリング90を設けることで、ハウジングHSを覆うカバリング90の面積を増加させることができ、ハウジングHSのノイズ対策に寄与する。ハウジングHSをカバリング90で覆うことによるノイズ対策と、オイルクーラ83を設けることによる熱対策とを両立できる。
【0141】
(2)ハウジングHSは動力伝達機構3を収容するギアケース14を有する。
カバリング90はギアケース14を覆う部分を有する。
オイルクーラ83はギアケース14に取り付けられている。
回転軸Xの径方向視において、カバリング90は動力伝達機構3とオーバーラップする部分を有する。
【0142】
オイルクーラ83をギアケース14に取り付けることによって、ギアケース14とオイルクーラ83との距離が近くなる。これによって、ギアケース14内のオイルOLをオイルクーラ83に導入するための油路、パイプ等を短くすることができる。
また、回転軸Xの径方向視において、カバリング90が動力伝達機構3とオーバーラップすることによって、動力伝達機構3から発生するノイズの対策に寄与する。
【0143】
(3、4)ユニット1は、オイルクーラ83と、
動力伝達機構3を収容するハウジングHSと、
ハウジングHSを覆う部分を有するカバリング90と、を有する。
回転軸Xの径方向視においてオイルクーラ83はカバリング90とオフセットする部分を有する。
回転軸Xの径方向視においてカバリング90は動力伝達機構3とオーバーラップする部分を有する。
【0144】
オイルクーラ83をギアケース14に取り付けることによって、ギアケース14とオイルクーラ83との距離が近くなる。これによって、ギアケース14内のオイルOLをオイルクーラ83に導入するための油路、パイプ等を短くすることができる。
また、回転軸Xの径方向視において、カバリング90が動力伝達機構3とオーバーラップすることによって、動力伝達機構3から発生するノイズの対策に寄与する。
【0145】
回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83は、カバリング90の開口部91、92に囲まれた部分において、カバリング90とオフセットしている。オイルクーラ83にカバリング90とオフセットする部分である本体部831を設けることで、オイルクーラ83のカバリング90から露出する部分が増える。露出する部分が増えることで、オイルクーラ83が、空気Airとの熱交換で冷却される空冷効率が向上する。オイルクーラ83の空冷効率が向上することで、ハウジングHSの熱対策に寄与する。
【0146】
(5)ハウジングHSはモータ2を収容するモータケース10を有する。
回転軸Xの径方向視において、カバリング90はモータケース10とオーバーラップする部分を有する。
【0147】
カバリング90とオフセットする部分を有するオイルクーラ83を、ギアケース14側に配置する。これによって、モータケース10を覆うカバリング90の面積を増やすことができ、モータケース10側のノイズ対策に寄与する。例えば、モータケース10側を覆うカバリング90の面積を、ギアケース14側を覆うカバリング90の面積よりも大きくすると好適である。
【0148】
(6)回転軸X方向視および回転軸Xの径方向視の双方において、オイルクーラ83は、ハウジングHSとオーバーラップする部分を有する。
【0149】
オイルクーラ83を、ギアケース14の傾斜部141cに取り付けることで、オイルクーラ83は、回転軸X方向視と、回転軸Xの径方向視の双方において、ハウジングHSとオーバーラップする部分を有する。
回転軸X方向においてギアケース14は、モータケース10から離れるにつれて、外径が小さくなる形状に形成されている。オイルクーラ83を上記のように配置すると、オイルクーラ83を、ハウジングHSの径方向と軸方向に大きく突出させずに済むので、ユニット1の寸法の縮小に寄与する。
【0150】
<変形例1>
図13は、変形例1に係る開口部91Aの一例を示す図である。
図14は、変形例1に係る開口部91Aの別の例を示す図である。
図13および図14は、回転軸X(図11参照)の径方向から視た図である。図13および図14では、わかりやすくするために、カバリング90にはクロスハッチングを付し、オイルクーラ83は輪郭のみを示している。
前記した実施の形態では、カバリング90の開口部91、92(図11参照)を、カバリング90を貫通するホール(孔)としたが、これに限定されない。開口部は、ホール(孔)に加えて、ミッシングパート(欠けた部分)を含む概念である。
図13および図14に、ミッシングパートである開口部91Aの例を示している。図13および図14は簡略化した図であり、オイルクーラ83は、導入部835aの枠線のみを示している。
【0151】
ミッシングパートは、ホールのうち一方向が欠けた形状を意味する。図13に示すように、ミッシングパートである開口部91Aは、オイルクーラ83の導入部835aの3辺側を囲うような形状である。また、図14に示すように、導入部835aが円形、楕円形等の曲線を有する形状の場合は、導入部835aの円周と接する4角形(図中破線)を描いた場合において、その3辺側を囲うような形状となる。
なお、図13および図14では、開口部91の変形例として開口部91Aを示しているが、開口部92(図11参照)にも変形例1は適用可能である。
【0152】
<変形例2>
図15は、変形例2に係る開口部93の一例を示す図である。
図16は、変形例2に係る開口部93の別の例を示す図である。
前記した実施の形態では、オイルクーラ83の本体部831は傾斜部141cの壁面から離間させ、導入部835aおよび排出部835bを介してギアケース14内部に接続する例を説明した(図10参照)。これに限定されず、本体部831を傾斜部141cの壁面に直接取り付けることも可能である。その場合も、オイルクーラ83を、カバリング90の開口部にオーバーラップするように設けることで、オイルクーラ83の露出面積を増やすことができる。
【0153】
図15および図16は、変形例2として、オイルクーラ83とカバリング90の開口部93のオーバーラップの態様を示した図である。図15および図16は、それぞれ、回転軸X(図11参照)の径方向から視た図である。図15および図16では、わかりやすくするために、カバリング90にはクロスハッチングを付し、オイルクーラ83は輪郭のみを示している。
【0154】
図15に示すように、オーバーラップの一態様として、カバリング90の開口部93を、回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83の外周を囲むように設けることができる。図16に示すように、オーバーラップの別の態様として、カバリング90の開口部93を、回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83の外周に囲まれるように設けることができる。
なお、カバリング90の開口部93を、回転軸Xの径方向視において、オイルクーラ83の外周と重なるように設けても良い。
【0155】
なお、開口部93は矩形に限定されず、円形、楕円形等としても良い。この場合、開口部93とオイルクーラ83のオーバーラップの態様として、以下の例がある。
・開口部93の円周が、オイルクーラ83の外周を囲む。
・開口部93の円周が、オイルクーラ83の外周に一部重なる。
・開口部93の円周が、オイルクーラ83の外周に囲まれる。
【0156】
前記した実施の形態では、オイルクーラ83にギアケース14のキャッチタンク15(図3参照)で捕集されたオイルOLが導入される例を説明したが、これに限定されない。オイルクーラ83には、ギアケース14の他の箇所で集められたオイルOLを導入しても良い。また、オイルクーラ83に、モータケース10内のオイルOLを導入しても良い。
【0157】
また、オイルクーラ83が排出したオイルOLが接続壁136の内部空間Scに導入される例を説明したが、これに限定されない。オイルクーラ83が排出したオイルOLは再びギアケース14内に供給しても良く、モータケース10のモータ室Sa内に供給しても良い。
【0158】
本発明のある態様において、動力伝達機構3は、例えば、歯車機構、環状機構等を有する。
歯車機構は、例えば、減速歯車機構、増速歯車機構、差動歯車機構(差動機構)等を有する。
減速歯車機構及び増速歯車機構は、例えば、遊星歯車機構、平行歯車機構等を有する。
環状機構は、例えば、無端環状部品等を有する。
無端環状部品等は、例えば、チェーンスプロケット、ベルトとプーリ等を有する。
【0159】
差動機構5は、例えば、傘歯車式のデファレンシャルギア、遊星歯車式のデファレンシャルギア等である。
差動機構5は、入力要素であるデファレンシャルケースと、出力要素である2つの出力軸と、差動要素である差動歯車セットと、を有する。
傘歯車式のデファレンシャルギアにおいて、差動歯車セットは傘歯車を有する。
遊星歯車式のデファレンシャルギアにおいて、差動歯車セットは遊星歯車を有する。
【0160】
ユニット1は、デファレンシャルケースと一体回転するギアを有する。
例えば、平行歯車機構のうちのファイナルギア(デフリングギア)は、デファレンシャルケースと一体に回転する。例えば、遊星歯車機構のキャリアとデファレンシャルケースとが接続している場合、ピニオンギアがデファレンシャルケースと一体に回転(公転)する。
【0161】
例えば、モータ2の下流に減速歯車機構が接続されている。減速歯車機構の下流に差動歯車機構が接続されている。即ち、モータ2の下流には、減速歯車機構を介して差動歯車機構が接続されている。なお、減速歯車機構に替えて増速歯車機構としても良い。
シングルピニオン型の遊星歯車機構は、例えば、サンギアを入力要素とし、リングギアを固定要素とし、キャリアを出力要素とすることができる。
ダブルピニオン型の遊星歯車機構は、例えば、サンギアを入力要素とし、リングギアを出力要素とし、キャリアを固定要素とすることができる。
シングルピニオン型又はダブルピニオン型の遊星歯車機構のピニオンギアは、例えば、ステップドピニオンギア、ノンステップドピニオンギア等を用いることができる。
ステップドピニオンギアは、ラージピニオンおよびとスモールピニオンとを有する。例えば、ラージピニオンをサンギアに噛合させると好適である。例えば、スモールピニオンをリングギアに嵌合させると好適である。
ノンステップドピニオンギアは、ステップドピニオンギアではない形式である。
【0162】
本実施形態では、本発明のある態様におけるユニット1を車両に搭載する例を説明したが、この態様に限定されない。本発明は、車両以外にも適用することができる。また、本実施形態において複数の実施例、変形例が記載されている場合は、これらを任意に組み合わせても良い。
【0163】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0164】
1 :ユニット
3 :動力伝達機構
10 :モータケース
14 :ギアケース
83 :オイルクーラ(熱交換器)
90 :カバリング
HS :ハウジング
X :回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16