(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】ろ過装置及びろ過システム
(51)【国際特許分類】
B01D 35/06 20060101AFI20231211BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20231211BHJP
C02F 11/15 20190101ALI20231211BHJP
B01D 61/56 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B01D35/06 T
C02F11/121
C02F11/15
B01D61/56
(21)【出願番号】P 2023533704
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2022041153
(87)【国際公開番号】W WO2023080199
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/040863
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022027233
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】大森 一樹
(72)【発明者】
【氏名】薄井 正祥
(72)【発明者】
【氏名】谷 孝一
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 彰人
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04468306(US,A)
【文献】特開2002-023583(JP,A)
【文献】米国特許第04755305(US,A)
【文献】特開2015-202481(JP,A)
【文献】特開昭61-161108(JP,A)
【文献】特開昭61-018410(JP,A)
【文献】特表2006-506223(JP,A)
【文献】特開2017-056397(JP,A)
【文献】特開昭62-183860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04;35/08-37/08
C02F 1/46-1/48,11/00-11/20
B03C 3/00-11/00
B01D 57/02、61/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相異なる電荷を帯びている粒子と液体とを含むスラリーが、供給ラインにより供給されるろ室と、
前記ろ室の両側面に、相対向して設けられ、前記スラリー中の粒子と液体とを電界作用によって分離物として分離するカソード電極又はアノード電極を備えた第1電極群又は第2電極群の
電極群と、
前記電極群の極性が異なる場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有し、
前記電極群の極性が同極性である場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有すると共に、当該電極群の極性と異なる極性の電極をろ室内に配置し、
前記第1電極群、前記第2電極群に対して、前記ろ室と相対向して設けられ、前記分離物を排出する第1排出室及び第2排出室とを備える
ろ過装置。
【請求項2】
ろ室と排出室との間の電極群は
ろ室側から排出室側にいくに従って、
排出室側の電位の絶対値は、ろ室側の電位の絶対値よりも大きな勾配を有する
請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
ろ室、第1排出室、又は第2排出室の内部の少なくとも一か所に加振部材を備える
請求項1に記載のろ過装置
【請求項4】
前記ろ過装置からなるユニットを一単位のモジュールとし、
前記ろ過装置ユニットからなるモジュールを連結チャンバーで複数連結してなる、
請求項1に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記ろ過装置からなるユニット一単位のモジュールとし、
前記ろ過装置ユニットからなるモジュールを連結する際、
第1排出室又は第2排出室のいずれか一方を共用化してなる、
請求項1に記載のろ過装置。
【請求項6】
帯電した粒子と液体が混合されたスラリーを貯留する貯留槽と、
内部に複数のカソード電極と複数のアノード電極とが設けられた密閉容器を有し、前記密閉容器の内部で前記スラリーの固液分離を連続して行うろ過装置と、
前記貯留槽から前記密閉容器の内部に前記スラリーを継続的に供給する供給ラインと、
前記密閉容器の内部から前記スラリーの一部を抜き取り、前記貯留槽に継続的に循環させる循環ラインと、
前記循環ラインに設けられ、前記循環ラインを流れる前記スラリーの単位時間当たりの循環量を、前記供給ラインを流れる前記スラリーの単位時間当たりの供給量よりも少なく調整する定量ポンプと、
を備えるろ過システム。
【請求項7】
前記供給ラインは、前記密閉容器の一側面側に接続され、前記密閉容器内にスラリーを供給すると共に、
前記循環ラインは、前記密閉容器の一側面側と対向する側面側から前記スラリーを抜き取っている
請求項6に記載のろ過システム。
【請求項8】
前記ろ過装置は、
相異なる電荷を帯びている粒子と液体とを含むスラリーが、供給ラインにより供給されるろ室と、
前記ろ室の両側面に、相対向して設けられ、
前記スラリー中の粒子と液体とを電界作用によって分離物として分離するカソード電極又はアノード電極を備えた第1電極群又は第2電極群の電極群と、
前記電極群の極性が異なる場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有し、
前記電極群の極性が同極性である場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有すると共に、当該電極群の極性と異なる極性の電極をろ室内に配置し、
前記第1電極群、前記第2電極群に対して、前記ろ室と相対向して設けられ、前記分離物を排出する第1排出室及び第2排出室とを備える、
請求項6に記載のろ過システム。
【請求項9】
前記第1排出室に接続する第1排出ラインと、
前記第2排出室に接続する第2排出ラインと、
を備え、
前記循環ライン又は前記第1排出ライン又は前記第2排出ラインの少なくとも一つに、ガス抜き弁が設けられている
請求項8に記載のろ過システム。
【請求項10】
ろ室、第1排出室、又は第2排出室の内部の少なくとも一か所に加振部材を備える
請求項6に記載のろ過システム。
【請求項11】
前記ろ過装置は、
相異なる電荷を帯びている粒子と液体とを含むスラリーが、供給ラインにより供給されるろ室と、
前記ろ室の両側面に、相対向して設けられ、前記スラリー中の粒子と液体とを電界作用によって分離物として分離するカソード電極又はアノード電極を備えた第1電極群又は第2電極群の電極群と、
前記電極群の極性が異なる場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有し、
前記電極群の極性が同極性である場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有すると共に、当該電極群の極性と異なる極性の電極をろ室内に配置し、
前記第1電極群、前記第2電極群に対して、前記ろ室と相対向して設けられ、前記分離物を排出する第1排出室及び第2排出室とを備えて、ろ過装置ユニットとし、
前記ろ過装置ユニットを一単位のモジュールとし、
前記ろ過装置ユニットからなるモジュールを連結チャンバーで複数連結してなる、
請求項6に記載のろ過システム。
【請求項12】
前記ろ過装置は、
相異なる電荷を帯びている粒子と液体とを含むスラリーが、供給ラインにより供給されるろ室と、
ろ室の両側面に、相対向して設けられ、前記スラリー中の粒子と液体とを電界作用によって分離物として分離するカソード電極又はアノード電極を備えた第1電極群又は第2電極群の電極群と、
前記電極群の極性が異なる場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有し、
前記電極群の極性が同極性である場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有すると共に、当該電極群の極性と異なる極性の電極をろ室内に配置し、
前記第1電極群、前記第2電極群に対して、前記ろ室と相対向して設けられ、前記分離物を排出する第1排出室及び第2排出室とを備えて、ろ過装置ユニットとし、
前記ろ過装置ユニットからなるモジュールを連結する際、前記第1排出室又は前記第2排出室のいずれか一方を共用化してなる、
請求項6に記載のろ過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ろ過装置及びろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献のろ過装置は、複数の孔が設けられたろ材を備える。スラリーをろ材に堆積させ、スラリーにろ過圧力をかけると、スラリーに含まれる液体がろ材の孔を通過する。そして、ろ材上には、含液率が例えば20%から30%の濃縮物が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献のろ過装置によれば、ろ材上に残った濃縮物を回収するため、スラリーの供給を停止しなければならない。つまり、脱液処理がいわゆるバッチ処理となり、スラリーを連続して供給して脱液処理を行うことができない。
【0005】
本開示は、脱液処理を連続で行うことができるろ過装置及びろ過システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面のろ過装置は、相異なる電荷を帯びている粒子と液体とを、含むスラリーが、供給ラインにより供給されるろ室と、ろ室の両側面に、相対向して設けられ、前記スラリー中の粒子と液体とを電界作用によって分離物として分離するカソード電極又はアノード電極を備えた第1電極群又は第2電極群電極群と、前記電極群の極性が異なる場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有し、前記電極群の極性が同極性である場合、当該電極群を構成する電極が細孔を有すると共に、当該電極群の極性と異なる極性の電極をろ室内に配置し、前記第1電極群、前記第2電極群に対して、前記ろ室と相対向して設けられ、前記分離物を排出する第1排出室及び第2排出室とを備える。
【0007】
本開示の一側面のろ過システムは、帯電した粒子と液体が混合されたスラリーを貯留する貯留槽と、内部に複数のカソード電極と複数のアノード電極とが設けられた密閉容器を有し、前記密閉容器の内部で前記スラリーの固液分離を連続して行うろ過装置と、前記貯留槽から前記密閉容器の内部に前記スラリーを継続的に供給する供給ラインと、
前記密閉容器の内部から前記スラリーの一部を抜き取り、前記貯留槽に継続的に循環させる循環ラインと、前記循環ラインに設けられ、前記循環ラインを流れる前記スラリーの単位時間当たりの循環量を、前記供給ラインを流れる前記スラリーの単位時間当たりの供給量よりも少なく調整する定量ポンプと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、スラリーを連続して脱液処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1のろ過装置を模式的に示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態1のろ過装置であって、連続排出の運転方法が行われている場合を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態1のろ過装置であって、パーシャル排出の運転方法が行われている場合を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態1のろ過装置であって、残留するスラリーを排出する場合を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態1のろ過装置であって粒子濃度を説明する図面である。
【
図6】
図6は、変形例1のろ過装置を示す模式図である。
【
図7】
図7は、変形例2のろ過装置を示す模式図である。
【
図8】
図8は、変形例3のろ過装置を示す模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態2のろ過装置を模式的に示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態3のろ過装置を模式的に示す模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態3のろ過装置の電気的等価回路図である。
【
図12】
図12は、実施形態4のろ過装置を模式的に示す模式図である。
【
図13】
図13は、実施形態5のろ過装置を模式的に示す模式図である。
【
図14】
図14は、実施形態6のろ過装置を模式的に示す模式図である。
【
図15A】
図15Aは、ろ室、実施形態6の第1排出室及び第2排出室5の内部に振動部材を設置した概略図である。
【
図15B】
図15Bは、ろ室、実施形態6の第1排出室及び第2排出室5の内部に振動部材を設置した概略図である。
【
図15C】
図15Cは、実施形態6のろ過装置のスイッチングボックスの運転タイムチャートである。
【
図16】
図16は、実施形態7のろ過システムを模式的に示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態7のろ過装置を模式的に示す模式図である。
【
図18】
図18は、実施形態8のろ過システムを模式的に示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態8のろ過システムにおける固液分離の使用方法を示す模式図である。
【
図20】
図20は、実施形態8のろ過システムにおける逆洗浄の使用方法を示す模式図である。
【
図21】
図21は、実施形態8のろ過システムにおける洗浄の使用方法を示す模式図である。
【
図22】
図22は、実施形態9のろ過システムを模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、実施形態10のろ過システムを模式的に示す図である。
【
図24】
図24は、実施形態11のろ過システムを模式的に示す図である。
【
図25B】
図25Bは、実施形態12の変形例のろ過システムを模式的に示す図である。
【
図26】
図26は、実施形態13のろ過システムを模式的に示す図である。
【
図27】
図27は、実施形態14のろ過システムを模式的に示す図である。
【
図28】
図28は、実施形態7のろ過装
置を模式的に示す模式図である。
【
図29】
図29は、実施形態13のろ過装
置を模式的に示す模式図である。
【
図30】
図30は、実施形態14のろ過装
置を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のろ過装置を模式的に示す模式図である。
図2は、実施形態1のろ過装置であって、連続排出の運転方法が行われている場合を示す模式図である。
図3は、実施形態1のろ過装置であって、パーシャル排出の運転方法が行われている場合を示す模式図である。
図4は、実施形態1のろ過装置であって、残留するスラリーを排出する場合を示す模式図である。
図5は、実施形態1のろ過装置であって粒子濃度を説明する図面である。
図6は、変形例1のろ過装置を示す模式図である。
図7は、変形例2のろ過装置を示す模式図である。
図8は、変形例3のろ過装置を示す模式図である。
【0012】
実施形態に係るろ過装置1は、液体中に粒子42が分散されたスラリー40から、粒子42を分離する装置である。ろ過装置1は、例えばライフサイエンス分野や、下水処理、排水処理分野等に適用できる。例えばライフサイエンス分野では、培養細胞、微細藻類、細菌、バクテリア、ウイルス等の微生物体培養を行うバイオ産業や、培養微生物体が体外、体内に生産する酵素、タンパク質、多糖類、脂質等の利用、応用分野であるバイオ創薬や化粧品業界、又は、醸造、発酵、搾汁、飲料等を扱うビバレッジ産業に適用できる。下水処理、排水処理分野では、難ろ過性の微細バイオマス水系スラリーで、バイオマス粒子の分離に適用できる。あるいは、ろ過装置1は、表面帯電した微粒子が電気的反発作用で高分散したコロイド粒子系スラリーで、コロイド微粒子の濃縮回収用途に適用できる。
【0013】
図1に示すように、ろ過装置1は、密閉容器2と、密閉容器2の内部に配置された複数の電極10と、電極10に所定の電位を供給する複数の電源20と、を備える。
【0014】
密閉容器2の内部には、密閉空間Sが設けられている。密閉容器2は、鉛直方向(以下、上下方向と呼ぶ)に延在する筒状の側壁2aと、側壁2aの上部を閉塞する上壁2bと、側壁2aの下部を閉塞する下壁2cと、を有している。密閉空間Sの内部には、複数の電極10が配置されている。電極10は、鉛直方向と直交する水平方向に延在し、密閉空間Sを上下方向に区分けしている。これにより、密閉空間Sは、密閉空間Sの上下方向の中央部に位置するろ室3と、ろ室3の上方に位置する第1排出室4と、ろ室3の下方に位置する第2排出室5と、の3つに区分けられている。
【0015】
密閉容器2の側壁2aには、供給口3a、第1排出口4a、及び第2排出口5aが設けられている。供給口3a、第1排出口4a、及び第2排出口5aは、それぞれ、密閉空間Sと密閉容器2の外部空間とを連通している。
【0016】
供給口3aは、ろ室3の一側面側に設けられている。供給口3aには、供給ライン102の一端が接続している。供給ライン102の他端は、貯留槽101に接続している。貯留槽101内のスラリー40は、供給ライン102を介して密閉容器2に供給される。供給ライン102には、供給ポンプ104が設けられている。供給ポンプ104は、供給ライン102内のスラリー40をろ室3の方に加圧している。また、密閉空間Sが密閉されている。よって、供給ポンプ104の加圧力は、密閉空間Sのスラリー40に対してろ過圧力として作用する。供給ライン102には、バルブ105が設けられている。
【0017】
第1排出口4aは、第1排出室4に設けられている。第1排出口4aには、第1排出ライン4bが接続している。第1排出ライン4bには、流量を調整するための第1バルブ4gが設けられている。第1排出ライン4bの下流側には、図示しない圧力調整弁が設けられている。
【0018】
第2排出口5aは、第2排出室5に設けられている。第2排出口5aには、第2排出ライン5bが接続している。第2排出ライン5bには、流量を調整するための第2バルブ5gが設けられている。第2排出ライン5bの下流側には、図示しない圧力調整弁が設けられている。
【0019】
以上から、密閉空間Sのろ室3にスラリー40が供給される。また、スラリー40は、ろ室3で分岐して第1排出室4又は第2排出室5に流入する。そのほか、密閉容器2の側壁2aには、連通口6が設けられている。連通口6は、ろ室3と供給ライン6aとを連通している。また、供給ライン6aにはバルブ6bが設けられている。このバルブ6bは常時閉じており、ろ室3内に気体や液体などを外部から供給する場合にのみ開放する。
【0020】
電極10は、上下方向に貫通する複数の孔10aが設けられている。スラリー40(液体と粒子42)は、電極10の孔10aを通じて、密閉空間Sを上下方向に移動する。
【0021】
電極10の表面には、図示しない電食防止層が設けられている。この電食防止層としては、例えば絶縁被覆層や導電性貴金属層などがある。電食防止層の材料としては、例えばチタン、アルミニウム、マグネシウム、タンタルなどが挙げられる。導電性貴金属層の材料としては、例えば白金、金、パラジウム等が挙げられる。電食防止層の厚みは、絶縁被覆層の場合は、例えば5μmから30μm程度、より好ましくは5μmから10μm程度が好ましい。また、白金、金、パラジウム等の導電性貴金属層の厚み は、例えば0.5μmから10μm程度、より好ましくは1μmから5μm程度が好ましい。この電食防止層によれば、電極10の表面の腐食が抑制される。また、電極10は、絶縁被膜層を有しているため、スラリー40を構成する液体と接しない。この結果、電極10に電位が供給されても、電極10の表面と液体との間で、電気分解が発生し難い。
【0022】
複数の電極10は、複数のカソード電極と、複数のアノード電極と、を備える。複数のカソード電極は、ろ室3と第1排出室4との間に介在している。言い換えると、複数のカソード電極は、ろ室3と第1排出室4とを仕切っている。本実施形態では、カソード電極は2つである。以下、複数のカソード電極のうち、ろ室3の近い方から順に、カソード第1電極11、カソード第2電極12、と称する。
【0023】
複数のアノード電極は、ろ室3と第2排出室5との間に介在している。言い換えると、複数のアノード電極は、ろ室3と第2排出室5とを仕切っている。本実施形態では、アノード電極は2つである。以下、複数のアノード電極のうち、ろ室3に近い方から順に、アノード第1電極13、アノード第2電極14と称する。
【0024】
カソード第1電極11は、ろ室3を挟んで、アノード第1電極13と対向している。カソード第1電極11とアノード第1電極13との間隔D1は、スラリー40中の粒子42をアノード第1電極13の方に移動させることができる間隔であり、例えば0.1mm以上100mm以下、より好ましくは0.1mm以上10mm以下である。
【0025】
カソード第1電極11とカソード第2電極12との間隔D2は、特に限定されないが、例えば0.1mm以上20mm以下、より好ましくは0.1mm以上2mm以下である。なお、カソード第1電極11とカソード第2電極12との間隔D2が小さいほど、カソード第1電極11とカソード第2電極12の間で発生するカソード電界Ec(
図2参照)の力が強くなる。
【0026】
アノード第1電極13とアノード第2電極14との間隔D3は、特に限定されないが、例えば0.1mm以上20mm以下、より好ましくは0.1mm以上2mm以下である。また、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間隔D3が小さいほどアノード第1電極13とアノード第2電極14の間で発生するアノード電界Ea(
図2参照)の力が強くなる。
【0027】
カソード第1電極11の孔11a及びカソード第2電極12の孔12aは、ろ室3と第1排出室4とを連通させている。カソード第1電極11の孔11aの孔径d1は、0.5μm 以上500μm以下、例えば70μm程度である。カソード第2電極12の孔12aの孔径d2は、0.5nm以上1000nm以下、例えば100nm程度である。なお、孔11a、12aの孔径d1、d2は、同一でなくてもよい。
【0028】
アノード第1電極13の孔13a及びアノード第2電極14の孔14aは、ろ室3と第2排出室5とを連通させている。アノード第1電極13の孔13aの孔径d3とアノード第2電極14の孔14aの孔径d4は、例えば0.1μm以上5000μm以下、より好ましくは100μm以上1000μm以下である。なお、孔13a、14aの孔径d3、d4は同一でなくてもよい。
【0029】
電源20は、電極10に電位を供給する装置である。電源20の数は、電極10と同数(本実施形態で4つ)である。電源20は、2つのカソード電極と接続する2つのカソード電源(カソード第1電源21、カソード第2電源22)と、2つのアノード電極と接続する2つのアノード電源(アノード第1電源23、アノード第2電源24)と、を備える。
【0030】
カソード第1電源21は、カソード第1電極11にカソード第1電位V1を供給する。カソード第1電源21の第1端子21aは、電気配線30により基準電位GNDに接続している。基準電位GNDは、例えばグランド電位であり、本開示において特に限定されない。カソード第1電源21の第2端子21bは、電気配線31によりカソード第1電極11に接続している。
【0031】
カソード第2電源22は、カソード第2電極12にカソード第2電位V2を供給する。カソード第2電源22の第1端子22aは、電気配線32によりカソード第1電極11に接続している。カソード第2電源22の第2端子22bは、電気配線33によりカソード第2電極12に接続している。
【0032】
アノード第1電源23は、アノード第1電極13にアノード第1電位V11を供給する。アノード第1電源23の第1端子23aは、電気配線34により基準電位GNDに接続されている。アノード第1電源23の第2端子23bは、電気配線35によりアノード第1電極13に接続している。
【0033】
アノード第2電源24は、アノード第2電極14にアノード第2電位V12を供給する。アノード第2電源24の第1端子24aは、電気配線36によりアノード第1電極13に接続している。アノード第2電源24の第2端子24bは、電気配線37によりアノード第2電極14に接続している。
【0034】
なお、各電源20から供給されるカソード電位(カソード第1電位V1、カソード第2電位V2)及びアノード電位(アノード第1電位V11、アノード第2電位V12)は、一定でなく変更できる。
【0035】
次に、ろ過装置1のろ過の対象となるスラリー40について説明する。スラリー40は、例えば懸濁体であり、液体と粒子42とが混ざった混合物である。粒子42は、表面が帯電したものが対象となる。また、粒子42の粒径は特に限定されない。粒子42の粒径が例えば1nm以上5000μm以下の粒子なども、ろ過対象とすることができる。
【0036】
次に、
図2を参照しながら、ろ過装置1の運転方法について説明する。なお、本実施形態で挙げるスラリー40は、液体として水を含んだものを例としてあげる。また、粒子42は、マイナスに帯電している。水分子41はプラスに帯電し、スラリー40全体として電気的に平衡状態となっている。
【0037】
ろ過装置1の運転方法に関し、まず、供給ポンプ104を駆動し、スラリー40をろ室3に供給する。供給ポンプ104は継続して駆動させ、スラリー40の供給を連続して行う。また、供給ポンプ104による圧力は、密閉空間Sの圧力(ゲージ圧)が例えば0.005MPa以上0.5MPa以下、好ましくは0.02MPa以上0.1MPa以下など、大気圧よりも高くなるように設定する。
【0038】
第1排出ライン4b及び第2排出ライン5bの下流側の圧力を、図示しない圧力調整弁により、大気圧と略等しく調整する。これにより、密閉空間Sには、供給口3a(ろ室3)から第1排出室4及び第2排出室5に向かう圧力(以下、ろ過圧力と称する)が作用する。
【0039】
カソード第1電源21からカソード第1電極11に供給されるカソード第1電位V1を-20Vとする。カソード第2電源22からカソード第2電極12に供給するカソード第2電位V2を-30Vとする。つまり、カソード電源は、粒子42の極性(マイナス)と同じ極性のカソード電位(V1、V2)をカソード電極に供給する。また、ろ室3から離隔するに従ってカソード電源から供給されるカソード電位の絶対値が大きい(V2>V1)。
【0040】
アノード第1電源23からアノード第1電極13に供給されるアノード第1電位V11を+20Vに設定する。アノード第2電源24からアノード第2電極14に供給するアノード第2電位V12を+30Vに設定する。つまり、アノード電源は、粒子42の極性(マイナス)と異なる極性のアノード電位(V11、V12)をアノード電極に供給する。また、ろ室3から離隔するに従ってアノード電源から供給されるアノード電位の絶対値が大きい(V12>V11)。
【0041】
上記した運転方法によれば、ろ室3にスラリー40が供給されると、スラリー40に含まれる粒子42は、同じ極性に帯電するカソード第1電極11から斥力を受ける(
図2の矢印A1参照)。また、粒子42は、異なる極性に帯電するアノード第1電極13から引力を受ける(
図2の矢印B1参照)。これにより、ろ室3にある粒子42は、アノード第1電極13の方に移動する。また、粒子42は、重力により下方(アノード第1電極13側)に移動する。以上から、ろ室3に流入した多くの粒子42は、アノード第1電極13の近傍かつ上方に分布する。
【0042】
そして、アノード第1電極13の近傍かつ上方にあるスラリー40(粒子42の濃度が高いスラリー40)は、ろ過圧力によってアノード第1電極13の孔13aとアノード第2電極14との孔14aを通過し、第2排出室5に移動する(
図2の矢印F1参照)。また、スラリー40は、アノード第1電極13とアノード第2電極14とを 通過する過程で、水の割合が減少し、かつ粒子42の割合が増加し、濃縮物44となる。以下、詳細を説明する。
【0043】
アノード第1電極13とアノード第2電極14の間に、アノード電界Eaが発生している。このアノード電界Eaは、見かけ上の挙動がプラスに帯電した水分子(以下、「プラスに帯電した水分子」ともいう)41を、アノード第2電極14からアノード第1電極13の方に押し戻す力を発揮する。つまり、見かけ上の挙動がプラスに帯電した水分子41は、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間を通過する際、アノード電界Eaから斥力を受ける(
図2の矢印A2参照)。
【0044】
以上から、プラスに帯電した水分子41は、単にろ過圧力を受けて第2排出室5に移動する場合の移動速度よりも減速する。このため、アノード第1電極13とアノード第2電極14の間を通過する単位時間当たりの水の量が減少する。この結果、第2排出室5に移動したスラリー40に含まれる水の割合は、アノード第1電極13の近傍かつ上方にあるスラリー40と比べて小さくなる。
【0045】
また、アノード第1電極13とアノード第2電極14の間のアノード電界Eaは、マイナスに帯電した粒子42を、アノード第1電極13からアノード第2電極14の方に引き込む引力を発揮する(
図2の矢印B2参照)。つまり、粒子42は、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間を通過する際に電界から引力を受ける。これにより、粒子42は、単にろ過圧力を受けて第2排出室5に移動する場合の移動速度よりも加速する。以上から、アノード第1電極13とアノード第2電極14の間を通過する単位時間当たりの粒子42の量が増加する。このため、第2排出室5に移動したスラリー40に含まれる単位容積当たりの粒子42の割合は、アノード第1電極13の近傍かつ上方にあるスラリー40と比べて高くなる。
【0046】
このように、スラリー40は、アノード第1電極13とアノード第2電極14の間を通過する過程で粒子42の濃度が高くなり、濃縮物44となる。そして、濃縮物44は、ろ過圧力により、第2排出口5aを通過して第2排出ライン5bから排出される。
【0047】
一方で、ろ室3においてカソード第1電極11の近傍かつ下方には、粒子42の濃度が低いスラリー40が滞留する。このスラリー40は、ろ過圧力によりカソード第1電極11の孔11aと、カソード第2電極12の孔12aを通過し、第1排出室4に移動する(
図2の矢印F3参照)。
【0048】
ここで、カソード第1電極11とカソード第2電極12の間には、カソード電界Ecが発生している。カソード電界Ecは、マイナスに帯電した粒子42がろ室3から第1排出室4に移動することを抑制する斥力を発揮する。このため、粒子42が第1排出室4に移動しないように抑制される。
【0049】
また、カソード第1電極11とカソード第2電極12の間に発生するカソード電界Ecは、プラスに帯電した水分子41をろ室3から第1排出室4の方に引き込む力を発揮している。プラスに帯電した水分子41は第1排出室の方に引き込まれる、という電気浸透流が生じる(
図2の矢印F4参照)。このため、ろ室3の水は、単にろ過圧力を受けて第1排出室4に移動する場合の移動速度よりも加速する。よって、ろ室3から第1排出室4に移動する水の単位時間当たりの量が増加する。
【0050】
そして、第1排出室4に移動した水(ろ液45)は、ろ過圧力により水が第1排出口4aから排出される。
【0051】
なお、上記したように、スラリー40に含まれる水の多くが第1排出室4の方に移動する。つまり、単位時間当たりでろ室3から第1排出室4又は第2排出室5に移動する容積は、第1排出室4の方が大きい。よって、第1バルブ4gと第2バルブ5gにより、第1排出口4aと第2排出口5aから排出する流量を例えば9:1(例えば10倍濃縮)に設定し、第1排出口4aから多くの水を排出するよう に調整する。これにより、第1排出口4aからは、多くの水がろ液45 として連続して排出される。また、第2排出口5aからは、濃縮物44が連続して排出される。
ここで、本実施形態では、流量を例えば9:1(例えば10倍濃縮)に設定しているが、定量ポンプの流量を調整することで、流量を例えば2:1(例えば3倍濃縮)などに適宜設定することもできる。
【0052】
以上から、
図5に示すように、カソード第1電極11が発揮する斥力と、カソード第1電極11とカソード第2電極12との間で発生するカソード電界Ecによって、多くの粒子42が第1排出室4への移動が妨げられる。このため、カソード第1電極11を境に粒子濃度が大きく変化する(
図5の矢印αを参照。)。つまり、カソード第1電極11を超えて第1排出室4に移動すると、粒子濃度が大きく低減する。
【0053】
一方で、アノード第1電極13が発揮する引力と、及びアノード第1電極13とアノード第2電極14の間で発生するアノード 電界Ea によって、多くの粒子42は、第2排出室5の方に引き込まれるという、電気泳動が生じる。このため、アノード第1電極13を境に粒子濃度が大きく変化する(
図5の矢印βを参照)。つまり、アノード第1電極13を超えて第2排出室5に移動すると、粒子濃度が大きく増加する。
【0054】
よって、本実施形態のろ過装置1によれば、例えば粒子濃度が約2%のスラリー40をろ室3に供給すると、粒子濃度0.02%程度の水(ろ液45)が第1排出口4aから排出され、粒子濃度6%程度の濃縮物44が第2排出口5aから排出されるようになる。結果として本実施形態においては99%以上の粒子除去率を発揮できる。
【0055】
以上、ろ過装置1の運転方法の一例を説明したが、上記したろ過装置1の運転方法は、第2排出室5から濃縮物44を連続して排出する方法である。言い換えると、上記した運転方法は、アノード電極(23,24)の間に発生するアノード 電界Eaの力が密閉空間Sのろ過圧力よりも小さくなるように、アノード電極(23,24)に供給するアノード電位(アノード第1電位V11、アノード第2電位V12)に設定した場合の例である。
しかしながら、実施形態1のろ過装置1の使用方法はこれに限定されない。
【0056】
次に、濃縮物44を間欠的に排出する使用方法について説明する。なお、以下において、濃縮物44を間欠的に排出することを、パーシャル排出と称する場合がある。また、上記した濃縮物44を連続して排出することを、連続排出と称する場合がある。
【0057】
パーシャル排出による運転方法は、
図3に示したアノード第1電位V11とアノード第2電位V12の値を調整し、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間に発生するアノード 電界Ea の力をろ過圧力よりも大きくする。なお、カソード第1電位V1とカソード第2電位V2は、連続排出の運転時と同じ電位とする。
【0058】
これによれば、
図3に示すように、ろ室3の水(水分子41)は、ろ過圧力によりアノード第1電極13の孔13aを通過するものの、アノード電界Eaの力により、第2排出室5への移動が規制される。粒子42は、アノード第2電極14の引力により引き寄せられ、アノード第2電極14に吸着した状態となる。よって、水と粒子42は第2排出室5に移動せず、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間は、粒子42と水が滞留した状態となる。また、この状態を継続すると、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間に滞留する粒子42が増加し、スラリー40の粒子42の濃度が次第に高くなる。なお、ろ室3にある水は、カソード第1電極11とカソード第2電極12を通過して第1排出口4aからろ液45として 排出される。
【0059】
そして、一定時間経過後、アノード第1電位V11とアノード第2電位V12の値を連続排出の運転時と同じとなるように変更する。これにより、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間に滞留した粒子42と水が第2排出室5に移動し、粒子42の濃度が高い濃縮物44が生成される。そして、濃縮物44は、ろ過圧力により第2排出口5aから排出される。
【0060】
また、一定量の濃縮物44を排出したら、再度、アノード第1電位V11とアノード第2電位V12の値を大きくし、第2排出室5への移動を規制する。このように、アノード第1電位V11とアノード第2電位V12を変えるとことで、濃縮物44の排出が間欠的となる。また、濃縮物44は、連続排出時よりも含水率が低い(粒子濃度が6%よりも高くなる)。
【0061】
次にろ過装置1によるろ過後、ろ室3及び第2排出室5に残ったスラリー40の除去方法について説明する。
図4に示すように、供給ライン102の図示しないバルブと、第1排出ライン4bの第1バルブ4gを閉じる。また、第2排出ライン5bの第2バルブ5gと、供給ライン6aのバルブ6bを開く。そして、供給ライン6aに圧縮空気を送り、連通口6からろ室3内に圧縮空気を供給する。これによれば、圧縮空気は、ろ室3内から、アノード第1電極13の孔13aとアノード第2電極14との孔14aを通過し、第2排出室5に移動する。そして、第2排出口5aから外部空間に排出される。ろ室3及び第2排出室5に残ったスラリー40は、圧縮空気に同伴して第2排出口5aから外部空間に排出される。これにより、ろ室3及び第2排出室5に残ったスラリー40が全量回収される。なお、本実施形態では、圧縮空気を供給した例を挙げているが、液体を供給してもよい。また、圧縮気体、液体の供給の仕方は、数回に分けておこなってもよく、特に限定されない。
【0062】
以上、実施形態1のろ過装置1は、ろ室3、第1排出室4、及び第2排出室5を有する密閉容器2と、帯電した粒子42と液体が混合したスラリー40を供給する供給ライン102と、供給ライン102とろ室3を連通する供給口3aと、液体を第1排出室4から排出する第1排出口4aと、スラリー40から液体が分離した濃縮物44を第2排出室5から排出する第2排出口5aと、粒子42及び液体が通過可能な複数の孔10aが設けられた複数の電極10と、を備える。複数の電極10は、ろ室3と第1排出室4とを仕切る複数のカソード電極と、ろ室3と第2排出室5とを仕切る複数のアノード電極と、を有する。複数のカソード電極は、カソード第1電極11と、カソード第1電極11よりも第1排出室4寄りに配置されたカソード第2電極12と、を有する。複数のアノード電極は、ろ室3を挟んでカソード第1電極11と対向するアノード第1電極13と、アノード第1電極13よりも第2排出室5寄りに配置されたアノード第2電極14と、を有する。カソード第1電極11には、粒子の極性と同じ極性のカソード第1電位V1が供給される。カソード第2電極12には、粒子の極性と同じ極性のカソード第2電位V2が供給される。カソード第2電位V2の絶対値は、カソード第1電位V1の絶対値よりも大きい。アノード第1電極13には、粒子の極性と異なる極性のアノード第1電位V11が供給される。アノード第2電極14には、粒子の極性と異なる極性のアノード第2電位V12が供給される。アノード第2電位V12の絶対値は、アノード第1電位V11の絶対値よりも大きい。
【0063】
本実施形態のろ過装置によれば、濃縮物44は、ろ室3に残らず、第2排出口5aから排出される。このため、スラリー40の脱液処理を連続して行うことができる。また、濃縮物44がろ室3に堆積しない。つまり、ろ室3に濃縮物44を堆積させるためのスペースが不要となる。よって、ろ室3の小型化(密閉容器2の小型化)を図れる。また、密閉容器2から濃縮物44を 排出するための特段の操作が不要となる。
【0064】
また、実施形態1のろ過装置1は、鉛直方向の上方から第1排出室4、ろ室3、第2排出室5の順で配置される。
【0065】
これによれば、粒子42は、重力により第2排出室5に移動し、第1排出室4の方に移動し難くなる。よって、第1排出口4aから回収されるろ液45が清澄となる。
【0066】
また、実施形態1のろ過装置1の電極10の表面には、電食防止層が設けられている。
【0067】
これによれば、電極10の電蝕が回避される。また、電気分解が発生し難いため、消費電力の低減を図れる。
【0068】
また、実施形態1のろ過装置1の運転方法は、複数のアノード電極の間に発生するアノード 電界Ea の力を密閉空間Sのろ過圧力よりも小さくなるように、複数のアノード電極に供給するアノード電位(アノード第1電位V11、アノード第2電位V12)に設定する。
【0069】
これによれば、濃縮物44を連続して排出することができる。
【0070】
また、実施形態1のろ過装置1の運転方法は、複数のアノード電極の間に発生するアノード 電界Ea の力が密閉空間Sのろ過圧力よりも大きくした後、アノード 電界Ea の力が密閉空間Sのろ過圧力よりも小さくなるように、複数のアノード電極に供給する第3電位(アノード第1電位V11、アノード第2電位V12)を変更する。
【0071】
これによれば、濃縮物44のパーシャル排出を行うことができる。
【0072】
以上、実施形態1について説明したが、本開示は、実施形態で説明したものに限定されない。例えば、実施形態1の電極10は、電食防止層を有しているが、本開示は、電食防止層を有していない電極を使用してもよい。また、実施形態1のろ過装置1は、供給ライン102の内部にあるスラリー40をろ室3の方に押し出す供給ポンプ104を備えているが、本開示は、ろ過装置以外の装置のポンプによりスラリー40が供給されるようになっていてもよい。つまり、ろ過装置自体がポンプを備えていなくてもよい。又は、実施形態では、供給口3a側からろ過圧力を付与しているが、供給口3a側と第1排出口4a側との差圧、及び供給口3a側と第2排出口5aとの差圧によりろ過圧力を付与してもよい。
【0073】
また、実施形態1のろ過装置1は、複数のカソード電極に電位を供給する複数のカソード電源と、複数のアノード電極に電位を供給する複数のアノード電源と、を備えているが、本開示は、ろ過装置以外の装置の電源により電位が供給されるようになっていてもよい。つまり、ろ過装置自体が電源自体を備えていなくてもよい。
【0074】
また、実施形態1の密閉容器2は、上から順に第1排出室4、ろ室3、第2排出室5という並び順となっているが、本開示は、
図6を示すように、上から順に第2排出室5、ろ室3、第1排出室4という並び方をしていてもよい。
図7を示すように、第1排出室4とろ室3と第2排出室5が水平方向に並んでいてもよい。
図8を示すように、第1排出室4とろ室3と第2排出室5が斜め方向に並んでいてもよい。なお、
図7及び
図8の変形例の場合はスラリー40の供給口3aは底部側となる。
また、ろ室3、第1排出室4、及び第2排出室5に対して設けられる供給口3a、第1排出口4a、及び第2排出口5aの位置(各部屋に設けられた開口部の向き)に関し、本開示においては、水平方向、上下方向、斜め方向等、適宜設定してよい。
【0075】
(実施形態2)
図9は、実施形態2のろ過装置を模式的に示す模式図である。
図9に示すように、実施形態2のろ過装置1Aは、カソード第1電極11とカソード第2電極12との間に配置されたろ材7を備えている点で、実施形態1のろ過装置1と相違する。また、実施形態2のろ過装置1Aは、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間に配置された誘電体8を備える点で、実施形態1のろ過装置1と相違する。以下、相違点に絞って説明する。
【0076】
ろ材7は、水平方向に延在している。ろ材7には、上下方向に貫通する孔7aが複数設けられている。孔7aの径は、カソード第1電極11の孔11aの孔径d1やカソード第2電極12の孔12aの孔径d2よりも小さい。なお、
図9においては、作図の関係上略同一としている。なお、ろ材7の孔7aの径は、粒子42の径の約4~20倍となっていればよい。
【0077】
誘電体8は、絶縁材料から成り、水平方向に延在している。この誘電体8によれば、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間に作用するアノード 電界Ea の力が大きくなる。誘電体8には、上下方向に貫通する孔8aが設けられている。孔8aの径 は、粒子42が通過できる大きさであり、例えば1000nm以上4000nm以下 である。誘電体8として、ろ紙などのろ材を用いてもよい。
【0078】
以上、実施形態2のろ過装置1Aは、複数のカソード電極(カソード第1電極11とカソード第2電極12)との間にろ材7が設けられている。
【0079】
これによれば、
図9に示すように、複数のカソード電極(カソード第1電極11とカソード第2電極12)との間にろ材7が設けられているので、粒子42は、ろ材7の孔7aを通過することができず、第1排出室4に移動できない。よって、粒子42を含んでいない清澄なろ
液45が第1排出室4内に回収される。また、ろ材7によってもカソード第1電極11とカソード第2電極12との間に発生するアノード 電界Eaの力が実施形態1の場合よりも大きくなる。よって、粒子42は、さらに第1排出室4に移動し難くなる。さらには、第1排出室4に移動する水の単位時間当たりの量が増加し、ろ過の処理時間を短縮できる。
【0080】
また、実施形態2のろ過装置1Aにおいて、複数のアノード電極(アノード第1電極13、アノード第2電極14)の間には、複数の孔8aが設けられた誘電体8が設けられている。
【0081】
これによれば、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間に作用するアノード 電界Eaの力が実施形態1の場合よりも大きくなり、第2排出室5に移動する水分子41の移動量が低減する。つまり、濃縮物44の含水率が低減する。その結果、濃縮物44の濃縮率が増加する。
【0082】
これによれば、粒子42が誘電体8の孔8aを通過して第2排出室5の方に移動可能となる。
【0083】
以上、実施形態2について説明したが、本開示のろ過装置は、ろ材7と誘電体8のうちいずれか一方のみを備えていてもよいが、より好ましくはろ材7を設けるのが望ましい。
【0084】
(実施形態3)
図10は、実施形態3のろ過装置を模式的に示す模式図である。
図11は、実施形態3のろ過装置の電気的等価回路図である。実施形態3のろ過装置1Bは、ブリーダ抵抗50と第1電気配線51と第2電気配線52を備える点で、実施形態1のろ過装置1と相違する。
【0085】
ブリーダ抵抗50は電気的負荷である。カソード第2電極12に他端が接続された第1電気配線51の一端はブリーダ抵抗50に接続している。第1電気配線51の他端は、カソード第2電極12に接続している。つまり、第1電気配線51の他端は、複数のカソード電極のうち最もろ室3から離隔したカソード第2電極12と接続している。
【0086】
アノード第2電極14に他端が接続された第2電気配線52の一端は、ブリーダ抵抗50に接続している。第2電気配線52の他端は、アノード第2電極14に接続している。つまり、第2電気配線52の他端は、複数のアノード電極のうちろ室3から最も離隔したアノード第2電極14と接続する。
【0087】
図11に示すように、ろ過装置1Bにおいて、カソード第1電極11とアノード第1電極13との間に、抵抗成分R0と容量成分C0が並列に接続される。抵抗成分R0と容量成分C0は、カソード第1電極11とアノード第1電極13との間に入り込む液体と粒子42により等価的に表される成分である。
【0088】
カソード第1電極11とカソード第2電極12との間に、抵抗成分R1と容量成分C1が並列に接続される。抵抗成分R1と容量成分C1は、カソード第1電極11とカソード第2電極12との間に入り込む液体と粒子42により等価的に表される成分である。
【0089】
アノード第1電極13とアノード第2電極14との間に、抵抗成分R2と容量成分C2が並列に接続される。抵抗成分R2と容量成分C2は、アノード第1電極13とアノード第2電極14との間に入り込む液体と粒子42により等価的に表される成分である。
【0090】
実施形態3によれば、複数の電極10と、複数の電源20と、電気配線30~37は、ブリーダ抵抗50と第1電気配線51と第2電気配線52により、閉ループ回路となる。なお、ブリーダ抵抗50と第1電気配線51と第2電気配線52を備えていない実施形態1のろ過装置1と実施形態2のろ過装置1Aにおいては、最も電位が大きいカソード第2電極12とアノード第2電極14から、スラリー40に含まれる液体に電流が漏れ、消費電力増大につながる可能性がある。一方、実施形態3によれば、カソード第2電極12とアノード第2電極14から生じる漏れ電流は、第1電気配線51又は第2電気配線52に流れる。また、第1電気配線51と第2電気配線52とを直接接続するとショートするため、ブリーダ抵抗50を第1電気配線51と第2電気配線52との間に配置している。
【0091】
以上、実施形態3のろ過装置1Bは、ブリーダ抵抗50と、一端がブリーダ抵抗50と接続する第1電気配線51と、一端がブリーダ抵抗50と接続する第2電気配線52と、を有する。第1電気配線51の他端は、複数のカソード電極のうちろ室3から最も離隔する電極10と接続する。第2電気配線52の他端は、複数のアノード電極のうちろ室3から最も離隔する電極10と接続する。
【0092】
実施形態3のろ過装置1Bによれば、ブリーダ抵抗50と第1電気配線51と第2電気配線52を備えているので、液体への電流の漏れを回避でき、消費電力の低減を図れる。
【0093】
(実施形態4)
図12は、実施形態4のろ過装置を模式的に示す模式図である。実施形態4のろ過装置1Cは、2つの中和電極60(第1中和電極61、第2中和電極62)と、中和電極の電位を供給する中和電源63と、を備えている点で、実施形態1のろ過装置1と相違する。
【0094】
第1中和電極61は、第1排出室4に配置されている。第1中和電極61は、密閉容器2の上壁2bに沿って水平方向に延在している。第1中和電極61は、第2電極と対向している。第2中和電極62は、第2排出室5に配置されている。第2中和電極62は、密閉容器2の下壁2cに沿って水平方向に延在している。第2中和電極62は、第3電極 と対向している。中和電源63は、電気配線64により第2中和電極62と接続し、第2中和電極62に粒子と異なる極性の電位(プラスの電位)を供給している。中和電源63は、電気配線65により第1中和電極61と接続している。
【0095】
次に実施形態4のろ過装置の使用方法について説明する。ろ過装置1Cのろ過時、マイナスに帯電した粒子42は、アノード第2電極14に引き寄せられてアノード第2電極14に吸着する可能性がある。なお、アノード第1電極13は、アノード第2電極14よりも引力が小さいため、アノード第1電極13に粒子42が吸着している可能性は低い。
【0096】
このような状況において、中和電源63は、第2中和電極62に対し、粒子42と異なる極性の電位であり、絶対値がアノード第2電極14の電位よりも大きな電位V10を供給する。例えば、アノード第2電極14のアノード第2電位V12はプラス30Vであるため、第2中和電極62にプラス40Vの電位を供給する。これにより、アノード第2電極14に吸着している粒子42は、より大きな引力(
図12の矢印H、Iを参照)を発揮する第2中和電極62に引き寄せられ、第2中和電極62に吸着する。この後、第2中和電極62への電位供給を停止する。これによれば、第2中和電極62に吸着した粒子42は、ろ過圧力により、第2排出口5aに方に移動して排出される。また、中和電源63は、第2中和電極62にプラス40Vの電位を供給する際、第1中和電極61から電子が供給される。
【0097】
以上、実施形態4の第2排出室5に配置される中和電極(第2中和電極62)と、粒子42の極性と異なる極性の中和電位(V10)を中和電極(第2中和電極62)に供給する中和電源63と、を備える。中和電位(V10)の絶対値は、複数のアノード電極のうちろ室3から最も離隔する電極(アノード第2電位V12)に供給される電位の絶対値よりも大きい(V10>V12)。
【0098】
これによれば、アノード第2電極14から粒子42を容易に剥離する。よって、粒子42が密閉空間Sに残る可能性が低く、粒子42を確実に回収できる。以上、実施形態4について説明したが、本開示は、第2中和電極62と中和電源63とのみを備え、第1中和電極61を備えていなくてもよい。
【0099】
(実施形態5)
図13は、実施形態5のろ過装置を模式的に示す模式図である。
図13に示すように、実施形態5のろ過装置1Dは、カソード電極及びアノード電極がそれぞれ3つとなっている点で、実施形態1のろ過装置と相違する。また、実施形態5のろ過装置1Dは、電極の増加に対応し、電源20も増加している点で、実施形態1のろ過装置と相違する。また、実施形態5のろ過装置1Dは、ブリーダ抵抗50及び中和電極60を備える点で、実施形態1のろ過装置1と相違する。以下、相違点について説明するが、ブリーダ抵抗50及び中和電極60については実施形態3、実施形態4で説明したため、説明を省略する。
【0100】
カソード電極は、ろ室3側から順に配置された、カソード第1電極11、カソード第2電極12、カソード第3電極15を備える。アノード電極は、ろ室3側から順に配置された、アノード第1電極13とアノード第2電極14と、アノード第3電極16と、を備える。
【0101】
電源20は、カソード電源(カソード第1電源21、カソード第2電源22、カソード第3電源25)と、アノード電源(アノード第1電源23、アノード第2電源24、アノード第3電源26)を備える。カソード第1電源21は、カソード第1電極11にカソード第1電位V1を供給する。カソード第2電源22は、カソード第2電極12にカソード第2電位V2を供給する。カソード第3電源25は、カソード第3電極15にカソード第3電位V3を供給する。アノード第1電源23は、アノード第1電極13にアノード第1電位V11を供給する。アノード第2電源24は、アノード第2電極14にアノード第2電位V12を供給する。アノード第3電源26は、アノード第3電極16にアノード第3電位V13を供給する。
【0102】
次に、ろ過装置1Cの運転時、電源20から電極10に供給する電位について説明する。カソード第1電源21からカソード第1電極11に供給されるカソード第1電位V1を-20Vに設定する。カソード第2電源22からカソード第2電極12に供給するカソード第2電位V2を-30Vに設定する。カソード第3電源25からカソード第3電極15に供給するカソード第3電位V3を-40Vに設定する。
【0103】
これによれば、カソード第1電極11とカソード第2電極12との間と、カソード第2電極12とカソード第3電極15との間にカソード電界Ecが発生する。この2つのカソード電界Ecは、粒子42に対し斥力を発揮する。よって、粒子42は実施形態1よりも第1排出室4の方に移動し難く、実施形態1よりも更に清澄なろ液45を回収できる。
【0104】
また、2つのカソード電界Ecにより、ろ室3から第1排出室4に移動する水の単位時間当たりの量は、実施形態1のろ過装置1よりも増加する。よって、相対的に第2排出室5に移動する水が低減し、濃縮物44の含水率が低減する。
【0105】
また、実施形態5のろ過装置1Dにおいて、アノード第1電源23からアノード第1電極13に供給されるアノード第1電位V11を+20Vに設定する。アノード第2電源24からアノード第2電極14に供給するアノード第2電位V12を+30Vに設定する。アノード第3電源26からアノード第3電極16に供給するアノード第3電位V13を+40Vに設定する。
【0106】
これによれば、粒子42は、アノード第1電極13、アノード第2電極14、アノード第3電極16と次第に引き寄せられ、第2排出室5に移動する。また、アノード第1電極13とアノード第2電極14の間と、アノード第2電極14とアノード第3電極16の間にアノード電界Eaが発生する。
【0107】
また、2つのアノード電界Eaによれば、ろ室3から第2排出室5に移動する水(プラスに帯電した水分子41)は大きな斥力を受け、第2排出室5への移動速度が大きく減速する。よって、単位時間当たりで第2排出室5に移動する水が低減し、濃縮物44の含水率が低減する。また、実施形態5によれば、パーシャル排出の運転の場合において、水がろ室3から第2排出室5に移動することを確実に抑制される。
【0108】
実施形態5のろ過装置1Dによれば、電極10の数が増加しており、濃縮物44の含水率を低減させることができる。なお、実施形態5のろ過装置1Dにおいて、複数の電極10の間にろ材7や誘電体8をさらに設けてもよい。また、実施形態5においては、ろ室3と第1排出室4の間に配置される電極10が3つとなっているが、4つ以上であってもよい。同様に、ろ室3と第2排出室5の間に配置される電極10が3つとなっているが、4つ以上であってもよい。この際、複数のカソード電極に与えるカソード電位及び複数のアノード電極に与えるアノード電位は、ろ室3から離隔する距離が大きくなるにつれて電位の絶対値が大きくなるようにするに設定する必要がある。また、電極10が増加している実施形態5を説明したが、本開示は、電極10を増加させた場合、ブリーダ抵抗50及び中和電極60が必須となるわけでなく、ブリーダ抵抗50及び中和電極60を備えていなくてもよい。
【0109】
(実施形態6)
図14は、実施形態6のろ過装置を模式的に示す模式図である。
図15A、15Bはろ室、実施形態6の第1排出室及び第2排出室5の内部に振動部材を設置した概略図である。
図14に示すように、実施形態6のろ過装置1Eは、ろ室3、第1排出室4、又は第2排出室5の内
部に各々加振部材200(200A、200B、200C)を配置している。なお、加振部材200は少なくとも一か所に備えていればよい。
なお、本実施形態の説明においては、アノード電極の電極構成を4つとしている。
【0110】
加振部材200は、内部の液体である水分子41、粒子42を振動させるものであればいずれでもよい。加振部材200としては、例えば圧電振動子などを例示できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
図15A、
図15Bに示すように、電界ろ過においては、強い凝集性を示す粒子42を含むスラリー40の場合には、ろ室3内及び第1アノード電極13-1、第2アノード電極13-2、第3アノード電極13-3、第4アノード電極13-4間に粒子42の滞留や付着が発生し、粒子42の回収率の低下傾向があるが、加振部材200を設けることにより、これらが解消される。
【0111】
また、加振部材200を設置することで、粒子42の付着を防止することができるので、第1アノード電極13-1、第2アノード電極13-2、第3アノード電極13-3、第4アノード電極13-4に印加する電圧を、全体的に低くすることができる。
すなわち、従来においては、粒子の分離を向上させるために、例えば第1アノード電極13-1に10V、第2アノード電極13-2に20V、第3アノード電極13-3に30V、第4アノード電極13-4に40Vと印加していたものを、第1アノード電極13-1に5V、第2アノード電極13-2に10V、第3アノード電極13-3に20V、第4アノード電極13-4に40Vと印加電圧を半分とすることができ、全体的に印加電圧を低下させることができる。この結果、ろ過装置の消費電力の大幅低減を図ると共に、電気分解も抑制すること、さらには発熱も抑制することができる。
特に、分離対象物として、生物体の分離を行う場合には、発熱低減効果は大きいものとなる。
【0112】
〈試験例〉
圧電振動子による加振機能及びスイッチング機能によるろ過性能向上の確認を行った。
加振試験の評価サンプルとして、電界ろ過において高い凝集性を示す微粒子であるコロイダルシリカ粒径450nmを選択した。
図14に示すように、ろ室3、第1排出室4、第2排出室5の内部の三か所に加振部材200である圧電振動子200A、200B,200Cを設置した。
以下に示すように、加振機能付加によるろ室3内での付着性改善とろ過性能向上にも有効であることが確認できた。
【0113】
圧電振動子を設置しない「加振無し」の場合、運転開始30分後からろ液45に濁りが発生し、僅かながらろ過差圧0.01MPaが発生した。
【0114】
ろ室3、第1排出室4、第2排出室5の内部の三か所に、圧電振動子200A、200B,200Cを設置した「加振有り」の場合、運転開始から終了まで50分間に亘ってろ液状態、ろ過圧力に変動無く安定して運転することができた。
【0115】
その結果を「表1」に示す
【0116】
【表1】
ここで、「表1」におけるこの終始は、供給固形物粒子重量を100%とした収支であり、加振有の場合には、ろ液45の清澄性を維持でき、高い分離効率保持できた。
【0117】
次に、「加振有り」において、スイッチング機能を追加した場合について、説明する。
図15Aは、ろ室、第1排出室及び第2排出室5の内部に振動部材を設置した概略図である。なお、本実施形態では、説明の便宜上、ろ室3側から第1アノード電極13-1、第2アノード電極13-2、第3アノード電極13-3、第4アノード電極13-4としている。
図15Aに基づいて、濃縮物45側の電界において、圧電振動子に順次ON/OFFスイッチング機能の追加した試験例を説明する。
本試験例では、濃縮側(+)の第1アノード電源201-1、第2アノード電源201-2、第3アノード電源201-3に、マイコン制御リレーを装着して順次ON/OFFのスイッチングモード運転を可能とした。(+)電極間に滞留した(-)帯電の濃縮粒子を順次電界OFFにすることで解放するタイミングを設けて排出させ堆積を防止するようにしている。
【0118】
濃縮側(+)の電源(第1アノード電源201-1、第2アノード電源201-2、第3アノード電源201-3)に、マイコン制御リレーを装着して順次ON/OFFのスイッチングモード運転を可能とした。
(+)電極間に滞留した(-)帯電の濃縮粒子を順次電界OFFにすることで解放するタイミングを設けて排出させ、微粒子の堆積を防止した。
【0119】
順次オンオフを繰り返すことの作用・効果について、説明する。
本試験例の粒子42はマイナス側に帯電しているとする。
電極間において、電位差があっても、10Vの電位差の場合では、少し粒子42が電極に付着する。
【0120】
各第1~第4アノード電極13-1~13-4は、各々第1アノード電源201-1、第2アノード電源201-2、第3アノード電源201-3に接続されている。
例えば第1アノード電極13-1の電位を+20Vとし、第2電極13-2の電位を+30Vとし、第3電極13-3の電位を+40Vとし、第4電極13-4の電位を+50Vとする。
【0121】
ろ室3内の第1電極13-1は、+20Vを常時印加しているので、ろ室3内のスラリー40中の粒子42は第1アノード電極13-1側に引き寄せられる。
このような場合、第2アノード電極13-2~第4アノード電極13-4において、第1アノード電極13-1~第3アノード電極13-3のスイッチングのON-OFFを順次繰り返す。
【0122】
第2アノード電極13-2に印加している+30VのスイッチボックスをOFFとすると、
図15Bに示すように、第1アノード電極13-2の電位+20Vとなる。この際、同時にリレー202-1Aとリレー202-1Bを相互に切り替えておく。
通常、第2アノード電極13-2をONとして、第2アノード電極13-2に+30Vを印加すると、第3アノード電極13-3(+40V)との電位差は+10Vとなる。
この際、スイッチングにより第2アノード電極13-2をOFFとすると、第1アノード電極13-1側と導通して、第2アノード電極13-2の電位が+20Vとなる。この結果、第3アノード電極13-3は通常+40Vであるので、第2アノード電極がOFFのときの第3アノード電極13-3との電位差は、常時ONのときの電位差+10Vに対して、電位差が+20Vと倍になる。
本実施形態では粒子42がマイナス帯電なので、第3電極13-3側に引き寄せられる粒子引き寄せ効果が増大する。
【0123】
同様にして、第3アノード電極13-3に印加している+40VのスイッチボックスをOFFとすると、第2アノード電極13-2の電位+30Vとなる。この際、同時にリレー202-2Aとリレー202-2Bを相互に切り替えておく。この結果、第4アノード電極13-4は通常+50Vであるのが、第3アノード電極がOFFのときの第4アノード電極13-4との電位差は、常時ONのときの電位差+10Vに対して、電位差が+20Vと倍になる。
【0124】
図15Cは、実施形態6のろ過装置のスイッチングボックスの運転タイムチャートである。
図15Cに示すように、第1アノード電極13-1には常に電圧が印加されている。
第2アノード電極13-2~第
4アノー
ド電極13-4は2秒ONとして1秒OFFを繰り返すようにしている。なお、このスイッチング時間は適宜変更することができる。
【0125】
このスイッチングの結果を「表2」に示す
【0126】
【0127】
「表2」に示すように、スイッチング有りとすることで、濃縮回収率の向上を図ることができた。
【0128】
(実施形態7)
図16は、実施形態7のろ過システムを模式的に示す図である。ろ過システム100は、ろ過装置1にスラリー40を供給して固液分離を行い、濃縮物44とろ液45を回収するシステムである。また、ろ過装置1による固液分離は、バッチ処理でなく連続処理である。よって、ろ過システム100において、スラリー40の供給を継続して行い、濃縮物44とろ液45の回収も継続して行うことができる装置である。
【0129】
なお、本実施形態のろ過システム100は、例えばライフサイエンス分野や、下水処理、排水処理分野等に適用できる。ライフサイエンス分野では、例えば培養細胞、微細藻類、細菌、バクテリア、ウイルス等の微生物体培養を行うバイオ産業や、培養微生物体が体外、体内に生産する酵素、タンパク質、多糖類、脂質等の利用、応用分野であるバイオ創薬や化粧品業界、又は、醸造、発酵、搾汁、飲料等を扱うビバレッジ産業に適用できる。下水処理、排水処理分野では、難ろ過性の微細バイオマス水系スラリーで、バイオマス粒子の分離に適用できる。あるいは、ろ過システム100は、表面帯電した微粒子が電気的反発作用で高分散したコロイド粒子系スラリーで、コロイド微粒子の濃縮回収用途に適用できる。
【0130】
一般に粒子はマイナス(-)に帯電しているものが多いが、逆にプラス(+)に帯電しているものもある。このプラス(+)に帯電している粒子の例示としては、例えば酸化チタン、コロイダルアルミナなどが挙げられる。
また、粒子によっては、pHによって帯電状態が変化するものもある。
また、液体の水分子41は、この水分子41に分散されている粒子42がマイナス(-)に帯電している場合、粒子42を分散させている液体の水分子41は見かけ上プラス(+)に挙動する。
これに対して、液体の水分子41に分散されている粒子がプラス(+)に帯電している場合、粒子42を分散させている液体の水分子41は見かけ上マイナス(-)に挙動する。
【0131】
図16に示すように、ろ過システム100は、ろ過装置1と、貯留槽101と、供給ライン102と、循環ライン103と、第1排出ライン4bと、第1排出槽4dと、第2排出ライン5bと、第2排出槽5dと、を備えている。
【0132】
貯留槽101は、スラリー40を貯留している。貯留槽101の上部には、開口部101aが設けられている。よって、開口部101aから貯留槽101内にスラリー40を供給したり、スラリー40に含まれるガスが開口部101aから大気中に放出したりする。スラリー40は、例えば懸濁体であり、液体と粒子42とが混ざった混合物である。粒子42は、表面が帯電したものが対象となる。また、粒子42の粒径は特に限定されない。粒子42の粒径が例えば1nm以上5000μm以下の粒子なども、ろ過対象とすることができる。
【0133】
供給ライン102は、ろ過装置1の密閉容器2と貯留槽101を接続する配管である。供給ライン102には、供給ポンプ104とバルブ105が設けられている。供給ポンプ104は、貯留槽101からスラリー40を吸引し、密閉容器2にスラリーを送り出している。また、供給ポンプ104は、単位時間当たりの流量(供給量)を一定量とすることができる定量ポンプである。よって、供給ライン102を流れるスラリー40は、供給ポンプ104によって、単位時間当たりの流量(供給量)が所定量に調整されている。バルブ105は、供給ライン102を開閉する弁である。
【0134】
循環ライン103は、密閉容器2と貯留槽101とを接続する配管である。循環ライン103には、循環ポンプ106が設けられている。循環ポンプ106は、密閉容器2からスラリー40を吸引し、貯留槽101にスラリーを送り出している。また、循環ポンプ106は、単位時間当たりの流量(供給量)を一定量とすることができる定量ポンプである。そして、循環ポンプ106によって、密閉容器2から抜き出されるスラリー40の単位時間当たりの流量(循環量)が、密閉容器2に供給されるスラリー40の単位時間当たりの流量(供給量)よりも小さくなるように調整されている。
【0135】
第1排出ライン4bは、密閉容器2からろ液45を排出するための配管である。第1排出ライン4bには、ろ液45の流量を調整する定量ポンプ4cが設けられている。第1排出ライン4bにより排出されたろ液45は、第1排出槽4dに貯留される。第1排出槽4dの上部には開口部4eが設けられている。
【0136】
第2排出ライン5bは、密閉容器2から濃縮物44を排出するための配管である。第2排出ライン5bには、濃縮物44の流量を調整する定量ポンプ5cが設けられている。第2排出ライン5bから排出された濃縮物44は、第2排出槽5dに貯留される。第2排出槽5dの上部には開口部5eが設けられている。
【0137】
図17は、実施形態7のろ過装置を模式的に示す模式図である。
図17に示すように、ろ過装置1Fは、密閉容器2と、密閉容器2の内部に配置された複数の電極10と、電極10に所定の電位を供給する複数の電源20と、を備える。
【0138】
密閉容器2の内部は、密閉空間Sとなっている。密閉容器2は、鉛直方向(上下方向)に延在する筒状の側壁2aと、側壁2aの上部を閉塞する上壁2bと、側壁2aの下部を閉塞する下壁2cと、を有している。密閉空間Sには、複数の電極10が配置されている。電極10は、鉛直方向(上下方向)に延在している。また、複数の電極10は、互いに平行となっている。そして、電極10は、密閉空間Sを鉛直方向と直交する方向(水平方向)に区分けするように配置されている。よって、密閉空間Sは、ろ過装置1Fの中央部に位置するろ室3と、ろ室3の左側に位置する第1排出室4と、ろ室3の右側に位置する第2排出室5と、の3つに区分けられている。
【0139】
密閉容器2には、供給口3a、第1排出口4a、第2排出口5a、及び取り出し口116が設けられている。供給口3a、第1排出口4a、第2排出口5a、及び取り出し口116は、それぞれ、密閉空間Sと密閉容器2の外部空間とを連通している。
【0140】
供給口3aは、ろ室3に設けられている。また、供給口3aは、下壁2cに設けられ、供給ライン102と接続している。これにより、ろ室3に供給ライン102からスラリー40が供給される。また、供給ポンプ104は、供給ライン102内のスラリー40をろ室3の方に加圧している。また、密閉空間Sが密閉されている。よって、供給ポンプ104の加圧力は、密閉空間Sのスラリー40に対してろ過圧力として作用する。
【0141】
第1排出口4aは、第1排出室4に設けられている。また、第1排出口4aは、側壁2aの上部に設けられ、第1排出ライン4bと接続している。第2排出口5aは、第2排出室5に設けられている。第1排出口4aは、側壁2aの上部に設けられ、第2排出ライン5bと接続している。取り出し口116は、ろ室3に設けられている。取り出し口116は、上壁2bに設けられ、循環ライン103と接続している。
【0142】
ろ過装置1Fによる固液分離の詳細は上述したように、密閉空間Sでは、スラリー40はろ液45と濃縮物44とに分離する。ろ液45が第1排出室4に流入し、濃縮物44が第2排出室5に流入する。また、ろ過装置1Fでは、固液分離の際、電極10が印加される。よって、電極10が発熱し、スラリー40が加熱される。また、水の電気分解が起こることで電極10の周りにガス47が発生する。ガス47は、浮力により密閉空間Sの上部に移動する。
【0143】
次に、ろ過装置1Fで固液分離を行う場合、
図16に示すろ過システム100の使用方法を説明する。
図16に示すように、ろ過装置1で固液分離をするに際しては、供給ポンプ104、循環ポンプ106、定量ポンプ4c、及び定量ポンプ5cが駆動する。これにより、貯留槽101からろ室3にスラリー40が供給される。また、ろ室3の上部(
取り出し口116の近傍)側にあるスラリー40は、排出されて貯留槽101へ流れる。第1排出室4の上部(第1排出口4aの近傍)側にあるろ液45は、第1排出槽4dに流れる。第2排出室5の上部(第2排出口5aの近傍)側にある濃縮物44は、第2排出槽5dに流れる。
【0144】
また、密閉空間S内においてろ室3の上部に溜まるガス47は、循環ライン103に流れるスラリー40に同伴し、ろ室3から排出される。よって、ガス47を含むスラリー40aは、循環ライン103により貯留槽101側に移動し、貯留槽101に貯留されたスラリー40の上部開放側でガス47が放散する。そして、ガス47を含むスラリー40a中に同伴されたガス47は、貯留槽101の開口部101aを通過して大気中に放出される。また、スラリー40は、ガス47を放出した後、貯留槽101内で次第に下側に移動する。そして、供給ライン102を通過して密閉容器2に戻るようになる。なお、ガスの発生要因としては、水に電気を流すと、水が電気分解され、その結果水素(H2)と酸素(O2)とが生成されることによる。
【0145】
以上から、循環ライン103により抜き取られたガス47を含むスラリー40aは、循環ライン103を通過している場合や貯留槽101に貯留している場合に放熱して冷却される(常温になる)。よって、抜き取られたスラリー40の温度が上昇しないように抑制される。
【0146】
一方で、循環ライン103により抜き取られず密閉空間Sに滞留するスラリー40は、供給ライン102から供給された新規のスラリー40により冷却される。ここで、本実施形態では、循環ライン103により密閉空間Sのスラリー40が抜き取られている。これにより、循環ライン103によって抜き取られていない場合に比べ新規のスラリー40の供給量が増えている。よって、密閉空間Sに滞留しているスラリー40は、大量の新規のスラリー40により冷却され、温度が上昇しないように抑制される。
【0147】
また、第1排出室4の上部に溜まるガス47は、第1排出ライン4bに流れるろ液45に同伴し、第1排出室43から排出される。そして、ガス47を含むろ液45aは、第1排出槽4dに移動し、第1排出槽4dの開口部4eからガス47が大気中に放出される。
【0148】
同様に、第2排出室5の上部に溜まるガスは、第2排出ライン5bに流れる濃縮物44に同伴し、第2排出室5から排出される。そして、ガス47を含む濃縮物44aは、第2排出槽5dに移動し、第2排出槽5dの開口部5eからガス47が大気中に放出される。
【0149】
以上から、本実施形態のろ過システム100によれば、スラリー40を貯留槽101から連続してろ室3に供給して脱液処理を行うことができると共に、スラリー40の温度上昇が抑制される。また、密閉容器2内のガス47が除去される。
【0150】
図17に示すように、実施形態7のろ過装置1Fは、
図1に示す実施形態1のろ過装置1を縦置きとしたものである(前述した
図7の変形例である)。
図17に示すように、実施形態7のろ過システム100のろ過装置1Fの供給ライン103の供給口3aは、密閉容器2のろ室3の底部側近傍に接続され、密閉容器内にスラリー40を供給すると共に、循環ライン103は密閉容器
2のろ室3の上部側近傍から、ろ室3を通過したろ過されないガス47を含むスラリー40aを抜き取るようにしている。
その他の構成は実施形態1のろ過装置1と同一であるので、その説明は省略する。
【0151】
なお、ろ過装置を横置きとした場合においては、密閉容器2のろ室3の一側面(左側面)側に接続され、前記密閉容器内にスラリー40を供給すると共に、循環ライン103は、前記密閉容器2のろ室3の一側面側と対向する側面(右側面)側から前記スラリー40を抜き取るようにしてもよい。
【0152】
以上、実施形態7のろ過システム100は、
図16、
図17に示すように、帯電した粒子42と液体が混合されたスラリー40を貯留する貯留槽101と、内部に複数のカソード電極11、12(10)と複数のアノード電極13、14(10)が設けられた密閉容器2を有し、密閉容器2の内部でスラリー40の固液分離を連続して行うろ過装置1と、貯留槽101から密閉容器2の内部にスラリー40を継続的に供給する供給ライン102と、密閉容器2の内部からスラリー40の一部を抜き取り、貯留槽101に継続的に循環させる循環ライン103と、循環ライン103に設けられ、循環ライン103を流れるスラリー40の単位時間当たりの循環量を、供給ライン102を流れるスラリー40の単位時間当たりの供給量よりも少なく調整する定量ポンプ(循環ポンプ106)と、を備える。
【0153】
実施形態7のろ過システム100では、循環ライン103により、密閉容器2からスラリー40の一部が抜き取られる。ガス47は、この抜き取られるスラリー40に同伴して密閉容器2の外部に排出される。これにより、脱液処理を連続で行うことができる。
また、密閉容器2の内部からガス47が除去される。また、循環ライン103により抜き取られたスラリー40は、貯留槽101に循環して放熱する。一方で、密閉容器2の内部に残ったスラリー40には、多くのスラリー40が供給され冷却する。よって、スラリー40の温度上昇が抑制される。
【0154】
また、実施形態7のろ過装置1Fは、
図16、
図17に示すように、ろ室3、第1排出室4、及び第2排出室5を有する密閉容器2と、供給ライン102とろ室3を連通する供給口3aと、液体を第1排出室4から排出する第1排出口4aと、スラリー40から液体が分離した濃縮物44を第2排出室5から排出する第2排出口5aと、粒子42及び液体が通過可能な複数の孔10aが設けられた複数の電極10と、を備える。
複数の電極10は、ろ室3と第1排出室4とを仕切る複数のカソード電極と、ろ室3と第2排出室5とを仕切る複数のアノード電極と、を有する。複数のカソード電極は、カソード第1電極11と、カソード第1電極11よりも第1排出室4寄りに配置されたカソード第2電極12と、を有する。複数のアノード電極は、ろ室3を挟んでカソード第1電極11と対向するアノード第1電極13と、アノード第1電極13よりも第2排出室5寄りに配置されたアノード第2電極14と、を有する。カソード第1電極11には、粒子の極性と同じ極性のカソード第1電位V1が供給される。カソード第2電極12には、粒子の極性と同じ極性のカソード第2電位V2が供給される。カソード第2電位V2の絶対値は、カソード第1電位V1の絶対値よりも大きい。アノード第1電極13には、粒子の極性と異なる極性のアノード第1電位V11が供給される。アノード第2電極14には、粒子の極性と異なる極性のアノード第2電位V12が供給される。アノード第2電位V12の絶対値は、アノード第1電位V11の絶対値よりも大きい。
【0155】
本実施形態のろ過装置1Fによれば、濃縮物44は、第2排出口5aから排出される。このため、スラリー40の脱液処理を連続して行うことができる。また、濃縮物44がろ室3に滞留しない。つまり、ろ室3に濃縮物44を滞留させるためのスペースが不要となる。よって、ろ室3の小型化(密閉容器2の小型化)を図れる。
【0156】
また、実施形態7の循環ライン103は、密閉容器2の上部からスラリー40を抜き取っている。より詳細には、ろ室3、第1排出室4、及び第2排出室5は、水平方向に配置されている。密閉容器2は、ろ室3の上部と循環ライン103とを連通する取り出し口116を有している。また、第1排出口4aは、第1排出室4の上部から液体(ろ液45)を排出している。同様に第2排出口5aは、第2排出室5の上部から前記液体を排出している。
【0157】
ガス47は、密閉容器2(ろ室3と第1排出室4と第2排出室5)の内部上側に溜まる。よって、前記構成によれば、取り出し口116と第1排出口4aと第2排出口5aから多くのガス47をスラリー40、濃縮物44、ろ液45に各々同伴させることで、ろ過装置1からガス47を抜き取ることができる。
【0158】
ろ過装置は、
図17に示すように、相異なる電荷を帯びている粒子(+)42と液体(水分子(-)41)とを、含むスラリー40が、供給ライン102により供給されるろ室3と、ろ室3の両側面に、相対向して設けられ、スラリー40中の粒子42と液体(水分子41)とを電界作用によって分離物として分離するカソード電極11,12を備えた第1電極群10A又はアノード電極13,14を備えた第2電極群10Bと、第1電極群10A、第2電極群10Bに対して、ろ室3と相対向して設けられ、分離物を排出する第1排出室4及び第2排出室5と、を備える。
なお、本実施形態では、分離物としては、第1排出室4にろ室3のスラリー40から分離されるろ液45であり、第2排出室5にろ室3のスラリー40から分離される濃縮物44である。
【0159】
以上、実施形態7のろ過システム100によれば、スラリー40を連続して脱液処理することができると共に、電気分解によってろ室3内に発生したガス47が除去され、密閉容器S内で発生するガスが滞留してしまうことが防止される。
【0160】
(実施形態8)<洗浄の実施形態>
図18は、実施形態8のろ過システムを模式的に示す図である。
図18に示すように、実施形態8では、ろ過システム100に代えてろ過システム100Aを備える点で、実施形態7と相違する。また、実施形態8のろ過システム100Aは、コンプレッサ110、洗浄水槽111、洗浄排水ライン120と、ガス抜き弁(122、132、142)を備えている点で、実施形態7と相違する。また、実施形態8のろ過システム100Aは、供給ポンプ104を備えていない点を実施形態7のろ過システム100と相違する。以下、相違点に絞って説明する。
【0161】
ろ過システム100Aの密閉容器2には、第1逆洗口4fと、第2逆洗口5fと、が設けられている。第1逆洗口4fは、密閉容器2の外部空間と第1排出室4とを連通している。第2逆洗口5fは、密閉容器2の外部空間と第2排出室5とを連通している。また、第1逆洗口4fと第2逆洗口5fは、密閉容器2の上下方向の中央部に位置している。
【0162】
コンプレッサ110は、圧縮された空気を吐出する装置である。コンプレッサ110から吐出された圧縮空気は、第1ライン110aにより貯留槽101に送られたり、又は第2ライン110bにより洗浄水槽111に送られたりする。実施形態8において、貯留槽101は、上部が閉じた密閉型の容器である。なお、第1排出槽4d及び第2排出槽5dも密閉型の容器となっている。コンプレッサ110から貯留槽101に圧縮空気が供給されると、貯留槽101のスラリー40が加圧され、供給ライン102に流れる。この結果、スラリー40が密閉容器2(ろ室3)に移動する。
なお、コンプレッサ110の代わりとしては、例えばガスボンベなどの加圧手段を用いるようにしても良い。
【0163】
洗浄水槽111は、ろ過装置1を洗浄するための洗浄水を貯留している。洗浄水は、例えばイオン交換水や蒸留水、純水、清澄ろ液(共液)などが挙げられるが、本開示では特に限定されない。洗浄水槽111の流出口は、逆洗浄ライン112と洗浄ライン113とに接続している。逆洗浄ライン112は、途中で分岐し、分岐した一端が第1逆洗口4fに接続し、分岐した他端が第2逆洗口5fに接続している。洗浄ライン113は、供給ライン102に接続している。
【0164】
洗浄水槽111は、上部が閉じた密閉型の容器である。コンプレッサ110から洗浄水槽111に圧縮空気が供給されると、洗浄水が加圧され、逆洗浄ライン112又は洗浄ライン113に流れる。また、逆洗浄ライン112には、逆洗浄ライン112による流路を開閉するバルブ112aが設けられている。洗浄ライン113には、洗浄ライン113による流路を開閉するバルブ113aが設けられている。
【0165】
洗浄排水ライン120は、一端が循環ライン103(詳細には取り出し口116とバルブ103aとの間)に接続し、他端がろ液タンク150に接続している。洗浄排水ライン120には、洗浄排水ライン120を開閉するバルブ120aが設けられている。
【0166】
第1ガス抜き弁122は、循環ライン103を流れるガス47を抜き出し、大気中に放出する弁である。本実施形態の第1ガス抜き弁122の配管121は、循環ライン103と洗浄排水ライン120との合流点に接続している。また、ガス47と同伴して第1ガス抜き弁122の方に流れたスラリー40は、ろ液タンク150に排出される。
【0167】
第2ガス抜き弁132は、第1排出ライン4bを流れるガス47を抜き出し、大気中に放出する弁である。また、ガス47と同伴して第2ガス抜き弁132の配管131を流れてきたろ液45は、ろ液タンク150に排出される。
【0168】
第3ガス抜き弁142は、第2排出ライン5bを流れるガス47を抜き出し、大気中に放出する弁である。また、ガス47と同伴して第3ガス抜き弁142の配管141を流れてきた濃縮物44は、ろ液タンク150に排出される。
【0169】
ろ液タンク150は、洗浄排水ライン120、配管121、131、141を流れる流体を回収する槽である。
次に実施形態8のろ過システム100Aの使用方法について説明する。
【0170】
図19に示すように、実施形態8のろ過システムにおける固液分離の使用方法を示す模式図である。
図19に示すように、ろ過装置1でスラリー40を固液分離する場合、バルブ105、103a、133、143を開く。一方、バルブ112a、113a、120aを閉じる。コンプレッサ110を駆動し、貯留槽101に圧縮空気を供給する(矢印A1参照)。これにより、貯留槽101のスラリー40は、供給ライン102を通過し、密閉容器2のろ室3に移動する(矢印A2参照)。
【0171】
ろ過装置1による固液分離によりろ液45は、第1排出室4に移動する。濃縮物44は第2排出室5に移動する。また、ろ室3の上部に位置するスラリー40は、取り出し口116から循環ライン103に移動する(矢印A3参照)。また、ろ室3の上部に滞留するガス47はスラリー40と同伴して循環ライン103に流れる。
【0172】
循環ライン103を移動するガス47は、第1ガス抜き弁122から大気中に排出される(矢印A4参照)。第1ガス抜き弁122の方に流れたスラリー40は、ろ液タンク150に回収される。また、循環ライン103を移動するスラリー40は、貯留槽101に循環される(矢印A5参照)。そして、スラリー40は、貯留槽101に貯留されたスラリー40の上部に堆積される。スラリー40は、密閉容器2内で吸収した熱を放熱し、冷却される。冷却後、再び、供給ライン102を移動し、ろ室3に供給される。そして、ろ室3内にあるスラリー40は、供給された新規のスラリー40により冷却される。
【0173】
また、第1排出室4に移動したろ液45は、第1排出口4aから排出され、第1排出ライン4bを流れる(矢印B1参照)。また、第1排出室4の上部にあるガス47は、ろ液45と同伴し、第1排出ライン4bに流れる。そして、ガス47は、第2ガス抜き弁132から大気中に放出される(矢印B2参照)。また、第2ガス抜き弁132の方に流れたろ液45は、ろ液タンク150に回収される。第1排出ライン4bを流れるろ液45は、第1排出槽4dに回収される(矢印B3参照)。
【0174】
第2排出室5に移動した濃縮物44は、第2排出口5aから排出され、第2排出ライン5bを流れる(矢印C1参照)。また、第2排出室5の上部にあるガス47は、濃縮物44と同伴し、第2排出ライン5bに流れる。そして、ガス47は、第3ガス抜き弁142から大気中に放出される(矢印C2を参照)。第3ガス抜き弁142の方に流れた濃縮物44は、ろ液タンク150に回収される。そして、第2排出ライン5bを流れる濃縮物44は、第2排出槽5dに回収される(矢印C3参照)。
【0175】
以上、実施形態8のろ過システム100Aによれば、ガス抜き弁(122、132、142)からガス47が放出される。また、スラリー40の温度上昇が回避される。
【0176】
図20は、実施形態8のろ過システムにおける逆洗浄の使用方法を示す模式図である。
図20に示すように、ろ過装置1Aを逆洗浄する場合、バルブ113a、105、133、143、及び103aを閉じる。バルブ112a、120aを開く。コンプレッサ110を駆動させ、洗浄水槽111に圧縮空気を供給する(矢印E1参照)。洗浄水槽111の洗浄水は、逆洗浄ライン112を流れ、第1逆洗口4fを通過して第1排出室4に流れ込む(矢印E2参照)。また、洗浄水は、第2逆洗口5fを通過して第2排出室5に流れ込む(矢印E3参照)。そして、第1排出室4と第2排出室5の洗浄水は、電極10の開口を通過してろ室3に流れる。これにより、電極10に付着したスラリー40のが洗い流される。そして、ろ室3に流れた洗浄水は、取り出し口116を通過して循環ライン103に流れる(矢印E4参照)。そして、洗浄水は、洗浄排水ライン120を通過してろ液タンク150に回収される(矢印E5参照)。
【0177】
図21は、実施形態8のろ過システムにおける洗浄の使用方法を示す模式図である。次にろ過システム100Aによる洗浄の使用方法を説明する。ろ過装置1の洗浄の場合、バルブ112a、105、133、143、及び103aを閉じる。バルブ113a、120aを開く。コンプレッサ110を駆動させ、洗浄水槽111に圧縮空気を供給する(矢印F1参照)。洗浄水槽111の洗浄水は、洗浄ライン113を流れ、供給口3aを通過してろ室3に流れ込む(矢印F2参照)。そして、洗浄水は、ろ室3から第1排出室4や第2排出室5に流れ、取り出し口116からが排出される(矢印F3参照)。そして、洗浄水は、洗浄排水ライン120を通過してろ液タンク150に回収される(矢印F4参照)。なお、逆洗浄の際、バルブ113aを開き、供給口3aから洗浄水を供給するようにしてもよい。
【0178】
(実施形態9)
図22は、実施形態
9のろ過システムを模式的に示す図である。実施形態9のろ過システム100Bは、供給ポンプ104を備えていない点で実施形態7と相違する。また、実施形態9のろ過システム100Bは、貯留槽101が密閉されている点で、実施形態7と相違する。また、実施形態9のろ過システム100Bは、貯留槽101に圧力調整弁101bが設けられている点で、実施形態7と相違する。また、実施形態9のろ過システム100Bは、エアコンプレッサ110を備えている点で、実施形態7と相違する。
【0179】
実施形態9のろ過システム100Bの使用方法について説明する。コンプレッサ110を駆動すると、貯留槽101に圧縮空気が供給される(矢印G1参照)。また、密閉空間Sのうちろ室3の上部に溜まるガス47は、スラリー40に同伴し、循環ライン103を通過して貯留槽101内で放散される(矢印G2参照)。このため、貯留槽101の圧力は、大気圧よりも上昇する。よって、コンプレッサ110の圧縮空気の供給量を、実施形態8の場合よりも少なく設定することができる。具体的には、コンプレッサ110により供給する圧力は、貯留槽101の内圧力が0.02MPa~0.2MPaと成る程度であり、微加圧である。
【0180】
また、ろ室3の上部に溜まるガス47が継続して貯留槽101内に供給される。よって、貯留槽101の内圧は、次第に上昇する。そして、貯留槽101の内圧が所定値以上となった場合、圧力調整弁101bが作動する。よって、貯留槽101内のガス47が貯留槽101外に排出される(矢印G3参照)。これにより、貯留槽101が破損することを回避できる。また、コンプレッサ110の圧縮空気の供給量を調整するための制御を不要とすることができる。
【0181】
なお、実施形態9のろ過システム100Bにおいても、第1排出室4の上部に溜まるガスは、第1排出ライン4bに流れるろ液45に同伴し、第1排出槽4dに移動し、第1排出槽4dの開口部4eから大気中に放出される。第2排出室5の上部に溜まるガスは、第2排出ライン5bに流れる濃縮物44に同伴し、第2排出槽5dに移動し、第2排出槽5dの開口部5eから大気中に放出される。
【0182】
なお、実施形態9のろ過システム100Bでは、貯留槽101の微加圧を供給するため、コンプレッサ110を用いた例を挙げたが、本開示は、これに限定されない。例えば、貯留槽101をろ過装置1よりも上方に配置し、貯留槽101内のスラリー40を水頭圧によりろ過装置1に供給してもよい。
【0183】
以上、各実施形態について説明したが、本開示は、上記した例に限定されない。例えば、本開示は、電極を利用したろ過装置であればよく、各実施形態で示したろ過装置以外のろ過装置であってもよい。また、実施形態の電極10は、上下方向に延在しているが、上下方向に傾斜するように配置してもよい。また、取り出し口116は、上壁2bに設けられているが、側壁2aの上部の方にもうけてもよい。一方、第1排出口4a及び第2排出口5aは、側壁2aの上部でなく、上壁2bの方に設けてもよい。このような変形例であっても、密閉容器2内のガス47を取り出し口116、第1排出口4a、及び第2排出口5aから排出させることができるからである。
【0184】
(実施形態10)
図23は、実施形態10のろ過システムを模式的に示す図である。実施形態10のろ過システム100Cは、
図23に示すように、ろ室3の加圧状態を一定に保持するために、
圧力調整ライン128を設置し、圧力調整ライン128に背圧弁(圧力調整弁)129を設置している。この背圧弁129は、例えば0.05MPaに設定し、それ以上となると圧力を逃がす機能を備えている。これにより、定圧ろ過を保持している。
ここで、理想的なろ過システムの流量を想定すると、
供給ライン102で供給するスラリー40を定量ポンプ104で例えば「3」の流量を供給すると仮定する。この際、例えばろ液45の排出量を「1」、濃縮物44の排出量「1」とし、循環の流量を「1」とすることで、バランスするのが理想的である。しかしながら、実際の運転条件は、種々の要因によりこの理想的なバランスで維持することはできない。
【0185】
そこで、加圧状態を一定とするために、プラスα(例えば流量「0.3」~「0.5」)の条件で運転するようにしている。例えば、流量「3.5」でスラリー40を定量ポンプ104で供給しようとする場合、背圧弁129を設けた圧力調整ライン128において、圧力が0.05MPa以上となると、スラリー40を貯留槽101に戻すようにしている。
【0186】
このように、本実施形態では、循環ライン103からのスラリー40の流量「1」を出すように、加圧状態を一定に保つために、圧力調整ライン128に背圧弁129を設置し、この背圧弁129の動作により、定圧ろ過を保持することができる。この結果、連続してスラリー40からの分離物(ろ液45、濃縮物44)の分離を安定して行うことができる。この圧力調整ライン128と背圧弁129との設置は、本発明の他の実施形態に適用することで、定圧ろ過を確実に保持することができるので、好ましい。
【0187】
(実施形態11)
図24は、実施形態11のろ過システムを模式的に示す図である。実施形態11のろ過システム100Dは、
図24に示すように、ろ室3、第1排出室4、又は第2排出室5の内部の少なくとも一か所に加振部材200を備えるものである。
実施形態11のろ過システム100Dは、電界ろ過においては、強い凝集性を示す粒子42を含むスラリー40を分離場合、ろ室3内及び第1アノード電極13-1、第2アノード電極13-2、第3アノード電極13-3、第4アノード電極13-4間に粒子42の滞留や付着が発生し、粒子42の回収率の低下傾向があるが、加振部材200を設けることにより、これらが解消される。詳細は、実施形態6で説明しているので、その説明は省略する。
【0188】
(実施形態12)
図25Aは、実施形態12のろ過システムを模式的に示す図である。実施形態12のろ過システム100E-1は、
図25Aに示すように、粒子42と、粒子42の電荷(+)と異なる電荷(-)を帯びている媒体(水分子41)とを含むスラリー40が供給されるろ室3と、ろ室3の両側面に対向して設けられ、スラリー40中の粒子42と媒体(水分子41)とを電気的に分離する第1分離電極群10Aと第2分離電極群10Bと、第1分離電極群10Aと第2分離電極群10Bのろ室と反対側に設けられ、分離物(媒体(水分子41)、粒子42)を排出するカソード側第1排出室4とアノード側第2排出室5と、を備えた、ろ過装置ユニットを一単位のモジュールとし、ろ過装置ユニット160(160-1,160-2…)からなるモジュールを連結する際、連結チャンバー161を用いて複数連結している。
【0189】
本実施形態によれば、連結チャンバー161を基準として、モジュールのろ過装置ユニット160(160-1,160-2…)の連結を順次折り返してろ過装置群を構築することで、処理能力の向上(ろ過面積拡大)を図り、分離物(ろ液45、濃縮物44)の排出量の増大化を図ることができる。
【0190】
図25Bは、実施形態12の変形例のろ過システムを模式的に示す図である。実施形態12の変形例のろ過システム100E-2は、
図25Aで用いた連結用の連結チャンバー161を用いず、第1排出室4又は第2排出室5のいずれか一方を共用化している。
本実施形態では、第2排出室5を共用している。
なお、さらに連結する場合には、ろ過装置ユニット160-2の隣にろ過装置ユニット160-3(図示せず)を設け、第1排出室4を共用とするようにすればよい。
【0191】
本実施形態のろ過システム100E-2の変形例によれば、ろ過システム100E-1で用いた連結チャンバー161を用いることなく、第1排出室4又は第2排出室5のいずれか一方を用いて共用化している。この結果、ろ過装置の処理量を増大しても、ろ過装置全体の容量を削減することができる。また、連結チャンバー161と第1排出室4又は第2排出室5のいずれか一方を削減することができるので、ろ過装置の部品点数の省力化を図ることができる。
【0192】
(実施形態13)
図26は、実施形態13のろ過システムを模式的に示す図である。
また、
図28は、実施形態7のろ過装
置を模式的に示す模式図であり、
図17と同一である。
図29は、実施形態13のろ過装
置を模式的に示す模式図である。
図31は、実施形態13,14の電源構成を示す回路図であり、
図31Aは並列回路図、
図31Bは直列回路図である。
図26に示すように、実施形態13のろ過システム100Eは、相異なる電荷を帯びている粒子(+)42と液体(水分子(-)41)とを、含むスラリー40が、供給ライン(管)102により供給されるろ室3と、ろ室3の両側面に、相対向して設けられ、スラリー40中の粒子42と液体(水分子41)とを電界作用によって分離する少なくとも2以上のカソード電極又はアノード電極のいずれか一方又は両方を備えた第1電極群10A、第2電極群10Bと、電極群のろ室3と反対側に設けられ、分離物である濃縮物44とろ液45とを排出する第1排出室4および第2排出室5とを備えたろ過装置1Gとしている。
そして、第1電極群10A、第2電極群10Bが、同極性のカソード側とし、電極群を構成する電極が細孔を有すると共に、電極群10A、10Bの極性(-)と異なる極性(+)のアノード側の電極170Aをろ室3内に配置するものである。
【0193】
次に、
図17、
図26、
図27、
図28に基づき、ろ液45の回収増大を図る場合について説明する。
前述したように、
図17に示す実施形態7のろ過装置1Fでは、
図28に示すように、ろ過室3の左右に第1排出室4、第2排出室5を各々設置している。この結果、ろ室3に供給されたスラリー40は、ろ室3を中心として左右に相対向する第1電極群10A(11、12)、第2電極群10B(13、14)における電界作用により分離され、ろ液45は第1排出室4に、濃縮物44は第2排出室5に分離されている。
【0194】
これに対して、実施形態13のろ過装置1Gでは、
図29に示すように、ろ過室3内にソリッド状のアノード電極を配置し、ろ室3の左右に、カソード電極として相対向する第1電極群10A(11、12)、第1電極群10B(11、12)を各々設置している。この結果、ろ室3に供給されたスラリー40中の水分子41はろ室3を中心として左右に相対向する第1電極群10A(11、12)、第1電極群10A(11、12)における電界作用により分離され、左右に設置している第1排出室4、4内にろ液45が分離される。
【0195】
これにより、実施形態13のろ過装置1Gは、ろ液45を排出するポートである第1排出室4、4を左右に設置するようにしているので、
図28に示す実施形態7のろ過装置1Fに較べてろ液45の回収量を倍増させることができる。
【0196】
(実施形態14)
図27は、実施形態14のろ過システムを模式的に示す図である。
図30は、実施形態14のろ過装
置を模式的に示す模式図である。
図27に示すように、実施形態14のろ過システム100Fは、相異なる電荷を帯びている粒子(+)42と液体(水分子(-)41)とを、含むスラリー40が、供給ライン(管)102により供給されるろ室3と、ろ室3の両側面に、相対向して設けられ、スラリー40中の粒子42と液体(水分子41)とを電界作用によって分離する少なくとも2以上のカソード電極又はアノード電極のいずれか一方又は両方を備えた第1電極群10A、第2電極群10Bと、電極群のろ室3と反対側に設けられ、分離物である濃縮物44を排出する第1排出室4及び第2排出室5とを備えており、第1電極群10A、第2電極群10Bが、同極性のアノード側であり、電極群を構成する電極が細孔を有すると共に、電極群の極性(-)と異なる極性(+)のカソード側の電極170Bをろ室3内に配置するものである。
【0197】
これにより、濃縮物44を排出するポートである第2排出室5、5を左右に設置するようにしているので、濃縮物44の回収率を倍増させることができる。
【0198】
実施形態14ろ過装置1Hでは、
図30に示すように、ろ過室3内にカソード電極を配置し、ろ室3の左右に、アノード電極として相対向する第1電極群10A(13、14)、第1電極群10B(13、14)を各々設置している。この結果、ろ室3に供給されたスラリー40中の粒子42はろ室3を中心として左右に相対向するアノード電極からなる第1電極群10A(13、14)、第1電極群10A(13、14)における電界作用により分離され、左右に設置している第2排出室5、5内に濃縮物44が分離される。
【0199】
これにより、実施形態14のろ過装置1Hは、濃縮物44を排出するポートである第2排出室5、5を左右に設置するようにしているので、
図28に示す実施形態7のろ過装置1Fに較べて、濃縮物44の回収量を倍増させることができる。
【0200】
図28における実施形態7のろ過装置1Fは、供給ライン102によりろ室3内に供給されるスラリー40の粒子の濃度を2%とすると、循環ライン103を介してろ室3から排出される残スラリー40の粒子42の濃度は1.2%であり、第1排出室4から排出されるろ液43の粒子42の濃度は0.01%であり、第2排出室5から排出される濃縮物44の粒子40の濃度は4~6%である。
【0201】
図29に示す実施形態13のろ過装置1Gは、供給ライン102によりろ室3内に供給されるスラリー40の粒子の濃度を2%とすると、循環ライン103を介してろ室3から排出される残スラリー40に濃縮物44が同伴されるので、粒子42の濃度は4~6%でとなり、第1排出室4から排出されるろ液43の粒子42の濃度は0.01%となる。
【0202】
図30に示す実施形態14のろ過装置1Hは、供給ライン102によりろ室3内に供給されるスラリー40の粒子
42の濃度を2%とすると、循環ライン103を介してろ室3から排出される残スラリー40の粒子42の濃度は1%以下、第2排出室5から排出される濃縮物44の粒子4
2の濃度は6%となる。
【0203】
また、実施形態13、14において、ろ室内3に設置する電極は、孔があっても孔が無くとも良く、メッシュ状の電極としても良い。なお、ろ室3内に設置する電極の厚さは、例えば0.05mm~5mm程度とするのが、好ましい。
【0204】
「付記事項」
本実施形態では、以下の構成を含む。
(1)
ろ室、第1排出室、及び第2排出室を内部に有する密閉容器と、
帯電した粒子と液体が混合したスラリーを供給する供給ラインと、
前記供給ラインと前記ろ室を連通する供給口と、
前記液体を前記第1排出室から排出する第1排出口と、
前記スラリーから前記液体が分離した濃縮物を前記第2排出室から排出する第2排出口と、
前記粒子及び前記液体が通過可能な複数の孔が設けられた複数の電極と、
を備え、
前記複数の電極は、
前記ろ室と前記第1排出室とを仕切る複数のカソード電極と、
前記ろ室と前記第2排出室とを仕切る複数のアノード電極と、
を有し、
前記複数のカソード電極は、
カソード第1電極と、
前記カソード第1電極よりも前記第1排出室寄りに配置されたカソード第2電極と、
を有し、
前記複数のアノード電極は、
前記ろ室を挟んで前記カソード第1電極と対向するアノード第1電極と、
前記アノード第1電極よりも前記第2排出室寄りに配置されたアノード第2電極と、
を有し、
前記カソード第1電極には、前記粒子の極性と同じ極性のカソード第1電位が供給され、
前記カソード第2電極には、前記粒子の極性と同じ極性のカソード第2電位が供給され、
前記カソード第2電位の絶対値は、前記カソード第1電位の絶対値よりも大きく、
前記アノード第1電極には、前記粒子の極性と異なる極性のアノード第1電位が供給され、
前記アノード第2電極には、前記粒子の極性と異なる極性のアノード第2電位が供給され、
前記アノード第2電位の絶対値は、前記アノード第1電位の絶対値よりも大きい
ろ過装置。
(2)
前記複数のカソード電極は、3つ以上の電極を有し、
前記複数のカソード電極のそれぞれに供給されるカソード電位の絶対値は、前記ろ室から離隔するにつれて大きい
(1)に記載のろ過装置。
(3)
前記複数のアノード電極は、3つ以上の電極を有し、
前記複数のアノード電極のそれぞれに供給されるアノード電位の絶対値は、前記ろ室から離隔するにつれて大きい
(1)又は(2)に記載のろ過装置。
(4)
前記複数のカソード電極の間に、ろ材が設けられている
(1)又は(2)に記載のろ過装置。
(5)
前記複数のアノード電極の間に、複数の孔が設けられた誘電体が設けられている
(1)又は(2)に記載のろ過装置。
(6)
前記誘電体の前記孔の径は、1000nm以上4000nm以下である
(5)に記載のろ過装置。
(7)
さらに、ブリーダ抵抗を備え、
一端が前記ブリーダ抵抗と接続する第1電気配線と、
一端が前記ブリーダ抵抗と接続する第2電気配線と、
を有し、
前記第1電気配線の他端は、前記複数のカソード電極のうち前記ろ室から最も離隔する前記電極と接続し、
前記第2電気配線の他端は、前記複数のアノード電極のうち前記ろ室から最も離隔する前記電極と接続する
(1)又は(2)に記載のろ過装置。
(8)
前記第1排出室と前記第2排出室に配置される中和電極と、
前記粒子の極性と異なる極性の中和電位を前記中和電極に供給する中和電源と、
を備え、
前記中和電位の絶対値は、前記複数のアノード電極のうち前記ろ室から最も離隔する前記電極に供給されるアノード電位の絶対値よりも大きい
(1)又は(2)に記載のろ過装置。
(9)
前記電極の表面には、電食防止層が設けられている
(1)又は(2)に記載のろ過装置。
(10)
前記供給ラインの内部にある前記スラリーを前記ろ室の方に押し出すポンプ)を備える
(1)又は(2)に記載のろ過装置。
(11)
前記複数のカソード電極にカソード電位を供給する複数のカソード電源と、
前記複数のアノード電極にアノード電位を供給する複数のアノード電源と、
を備える
(1)又は(2)に記載のろ過装置。
(12)
鉛直方向の上方から前記第1排出室、前記ろ室、前記第2排出室の順で配置される
(1)又は(2)に記載のろ過装置。
(13)
前記複数のアノード電極の間に発生する電界の力を前記ろ室のろ過圧力よりも小さくなるように、前記複数のアノード電極に供給するアノード電位を設定する
(1)又は(2)に記載のろ過装置の運転方法。
(14)
前記複数のアノード電極の間に発生する電界の力を前記ろ室のろ過圧力よりも大きくした後、前記電界の力が前記ろ室の過圧力よりも小さくなるように、前記複数のアノード電極に供給するアノード電位を変更する(1)又は(2)に記載のろ過装置の運転方法。
(15)
帯電した粒子と液体が混合されたスラリーを貯留する貯留槽と、
内部に電極が設けられた密閉容器を有し、前記密閉容器の内部で前記スラリーの固液分離を連続して行うろ過装置と、
前記貯留槽から前記密閉容器の内部に前記スラリーを継続的に供給する供給ラインと、
前記密閉容器の内部から前記スラリーの一部を抜き取り、前記貯留槽に継続的に循環させる循環ラインと、
前記循環ラインに設けられ、前記循環ラインを流れる前記スラリーの単位時間当たりの循環量を、前記供給ラインを流れる前記スラリーの単位時間当たりの供給量よりも少なく調整する定量ポンプと、
を備えるろ過システム。
(16)
前記循環ラインは、前記密閉容器の上部から前記スラリーを抜き取っている
(15)に記載のろ過システム。
(17)
前記循環ラインには、ガス抜き弁が設けられている
(15)又は(16)に記載のろ過システム。
(18)
前記ろ過装置は、
ろ室、第1排出室、及び第2排出室を内部に有する前記密閉容器と、
前記供給ラインと前記ろ室を連通する供給口と、
前記液体を前記第1排出室から排出する第1排出口と、
前記スラリーから前記液体が分離した濃縮物を前記第2排出室から排出する第2排出口と、
前記粒子及び前記液体が通過可能な複数の孔が設けられた複数の前記電極と、
を備え、
複数の前記電極は、
前記ろ室と前記第1排出室とを仕切る複数のカソード電極と、
前記ろ室と前記第2排出室とを仕切る複数のアノード電極と、
を有し、
前記複数のカソード電極は、
カソード第1電極と、
前記カソード第1電極よりも前記第1排出室寄りに配置されたカソード第2電極と、
を有し、
前記複数のアノード電極は、
前記ろ室を挟んで前記カソード第1電極と対向するアノード第1電極と、
前記アノード第1電極よりも前記第2排出室寄りに配置されたアノード第2電極と、
を有し、
前記カソード第1電極には、前記粒子の極性と同じ極性のカソード第1電位が供給され、
前記カソード第2電極には、前記粒子の極性と同じ極性のカソード第2電位が供給され、
前記カソード第2電位の絶対値は、前記カソード第1電位の絶対値よりも大きく、
前記アノード第1電極には、前記粒子の極性と異なる極性のアノード第1電位が供給され、
前記アノード第2電極には、前記粒子の極性と異なる極性のアノード第2電位が供給され、
前記アノード第2電位の絶対値は、前記アノード第1電位の絶対値よりも大きい
(15)又は(16)に記載のろ過システム。
(19)
前記ろ室、前記第1排出室、及び前記第2排出室は、水平方向に配置され、
前記密閉容器は、前記ろ室の上部と前記循環ラインとを連通する取り出し口を有している (18)に記載のろ過システム。
(20)
前記第1排出口は、前記第1排出室の上部から前記液体を排出する
(19)に記載のろ過システム。
(21)
前記第2排出口は、前記第2排出室の上部から前記液体を排出する
(19)に記載のろ過システム。
(22)
前記第1排出口に接続する第1排出ラインと、
前記第2排出口に接続する第2排出ラインと、
を備え、
前記第1排出ライン及び前記第2排出ラインには、ガス抜き弁が設けられている
(18)に記載のろ過システム。
(23)
前記複数のカソード電極は、3つ以上の電極を有し、
前記複数のカソード電極のそれぞれに供給されるカソード電位の絶対値は、前記ろ室から離隔するにつれて大きくなる
(18)に記載のろ過システム。
(24)
前記複数のアノード電極は、3つ以上の電極を有し、
前記複数のアノード電極のそれぞれに供給されるアノード電位の絶対値は、前記ろ室から離隔するにつれて大きくなる
(18)に記載のろ過システム。
【符号の説明】
【0205】
1、1A~1H ろ過装置
2 密閉容器
3 ろ室
3a 供給口
4 第1排出室
4a 第1排出口
5 第2排出室
5a 第2排出口
6 連通口
7 ろ材
8 誘電体
10 電極
10a 孔
11 カソード第1電極
12 カソード第2電極
13 アノード第1電極
14 アノード第2電極
15 カソード第3電極
16 アノード第3電極
20 電源
21 カソード第1電源
22 カソード第2電源
23 アノード第1電源
24 アノード第2電源
25 カソード第3電源
26 アノード第3電源
40 スラリー
41 水分子
42 粒子
44 濃縮物
45 ろ液
50 ブリーダ抵抗
51 第1電気配線
52 第2電気配線
60 中和電極
61 第1中和電極
62 第2中和電極
63 中和電源
S 密閉空間
Ea アノード電界
Ec カソード電界
100、100A~G ろ過システム
101 貯留槽
102 供給ライン
103 循環ライン
104 供給ポンプ
106 循環ポンプ
110 コンプレッサ
111 洗浄水槽
116 取り出し口
120 洗浄排水ライン
122 第1ガス抜き弁
128 圧力調整ライン
129 背圧弁
132 第2ガス抜き弁
142 第3ガス抜き弁
101a 開口部
101b 圧力調整弁
160 ろ過装置ユニット
161 連結チャンバー
170A アノード電極
170B カソード電極