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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20231211BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20231211BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20231211BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F110:10
F24F140:20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018146812
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020020558
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 槙吾
(72)【発明者】
【氏名】中西 道明
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-173046(JP,A)
【文献】特開平01-302057(JP,A)
【文献】特開平05-087391(JP,A)
【文献】特開平05-141755(JP,A)
【文献】特開2002-340384(JP,A)
【文献】特開2010-048494(JP,A)
【文献】特開2016-070575(JP,A)
【文献】実開昭50-142354(JP,U)
【文献】実開平04-004645(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
室内に空気を吹き出す室内ファンと、
前記冷媒と前記室内ファンにより吹き出される空気とを熱交換する室内熱交換器と、
室内温度を検出する室温検知部と、
前記室内熱交換器における熱交温度を検出する熱交温度検知部と、
外気と前記冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、
前記室内ファンを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、暖房起動時に前記室内ファンから所定の小風量を吹き出す小風量モード及び前記室内ファンから所定の大風量を吹き出す大風量モードを含み、
前記所定の大風量は、前記室内ファンから吹き出す風量の複数段階の設定範囲のうち最も多いレベルの風量を含む一定範囲内の段階のいずれか1つの段階の風量であって、前記所定の小風量から2以上大きい段階の風量であり、
前記制御部は、暖房起動時における前記室内温度が第1温度未満である場合には、前記小風量モードを実行し、次に、前記熱交温度が暖房起動時からの上昇過程において人の皮膚温度に基づいて設定された第2温度から第3温度までの範囲内にあるとき、前記小風量モードに対応する前記所定の小風量から前記大風量モードに対応する前記所定の大風量まで上昇させ、前記大風量モードを実行し、
前記制御部は、さらに、前記熱交温度が暖房起動時からの上昇過程において前記第2温度に到達して以後、前記熱交温度が前記第3温度に達するまでは、前記室内ファンの回転数を減少させないように制御する空気調和機。
【請求項2】
前記第1温度は、8℃~12℃の範囲内に設定される、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記第2温度は、28℃~33℃の範囲内に設定される、請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記第3温度は、36℃~40℃の範囲内に設定される、請求項1乃至の何れか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に示すような空気調和機が知られている。この空気調和機は、暖房起動時に圧縮機構から室内熱交換器に向けて送られる冷媒の圧力が所定の高圧閾値に達するまで、室内ファンを停止させる。これにより、冷媒の圧力が高圧になるまでの時間を短縮させ、冷媒が高温にできるまでの時間を短縮させる。また、この空気調和機は、暖房起動時に、室内熱交換器を通過する冷媒の温度が所定の熱交温度に達するまで、室内ファンを停止させる室内熱交温度制御も選択的に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-261698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような従来の空気調和機により暖房起動時の温風を迅速に提供しようとする場合、暖房起動時に使用者の皮膚温度より低い風が使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせる問題がある。
一方で、このドラフト感を使用者に生じさせることを防ぐために、室内ファンを熱交温度に応じた風量となるように制御する場合には、暖房起動時における室内温度が比較的低いときに、熱交温度も比較的低くなり、室内ファンの風量が低下し、暖房起動時の目標室温への到達時間が比較的長くなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、暖房起動時に使用者の皮膚温度より低い風が使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせにくくしながらも、暖房起動時の目標室温への到達時間を短縮させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、室内に空気を吹き出す室内ファンと、前記冷媒と前記室内ファンにより吹き出される空気とを熱交換する室内熱交換器と、室内温度を検出する室温検知部と、前記室内熱交換器における熱交温度を検出する熱交温度検知部と、外気と前記冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、前記室内ファンを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、暖房起動時に前記室内ファンから所定の小風量を吹き出す小風量モード及び前記室内ファンから所定の大風量を吹き出す大風量モードを含み、前記所定の大風量は、前記室内ファンから吹き出す風量の複数段階の設定範囲のうち最も多いレベルの風量を含む一定範囲内の段階のいずれか1つの段階の風量であって、前記所定の小風量から2以上大きい段階の風量であり、前記制御部は、暖房起動時における上記室内温度が第1温度未満である場合には、前記小風量モードを実行し、次に、前記熱交温度が暖房起動時からの上昇過程において人の皮膚温度に基づいて設定された第2温度から第3温度までの範囲内にあるとき、前記小風量モードに対応する前記所定の小風量から前記大風量モードに対応する前記所定の大風量まで上昇させ、前記大風量モードを実行し、前記制御部は、さらに、前記熱交温度が暖房起動時からの上昇過程において前記第2温度に到達して以後、前記熱交温度が前記第3温度に達するまでは、前記室内ファンの回転数を減少させないように制御することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、制御部は、暖房起動時における室内温度が第1温度未満である場合には、小風量モードを実行し、次に、熱交温度が暖房起動時からの上昇過程において人の皮膚温度に基づいて設定された第2温度から第3温度までの範囲内にあるとき、大風量モードを実行する。これにより、暖房起動時に使用者の皮膚温度より低い風が使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせにくくしながらも、暖房起動時の目標室温への到達時間を短縮させることができる。
このように構成された本発明においては、制御部は、さらに、熱交温度が暖房起動時からの上昇過程において第2温度に到達して以後、熱交温度が第3温度に達するまでは、室内ファンの回転数を減少させないように制御する回転数非減少モードを備える。これにより、熱交温度が暖房起動時からの上昇過程において第2温度に到達して以後は、熱交温度が第2温度未満に低下したとしても、室内ファンにより大風量の供給を維持し、暖房起動時の目標室温への到達時間をより短縮させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記第1温度は、8℃~12℃の範囲内に設定される。
このように構成された本発明においては、室内温度Bが8℃~12℃の範囲内に設定された第1温度未満である場合に、小風量モード、大風量モード等の実行により、暖房起動時に使用者の皮膚温度より低い風が使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせにくくしながらも、暖房起動時の目標室温への到達時間を短縮させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記第2温度は、28℃~33℃の範囲内に設定される。
このように構成された本発明においては、第2温度は、比較的低い室内温度に対応する人の皮膚温度に基づいて設定された、28℃~33℃の範囲内に設定されることができる。これにより、暖房起動時に使用者の皮膚温度より低い風が使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせにくくしながらも、暖房起動時の目標室温への到達時間を短縮させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記第3温度は、36℃~40℃の範囲内に設定される。
このように構成された本発明においては、第3温度は、比較体高い室内温度に対応する人の皮膚温度に基づいて設定された、36℃~40℃の範囲内に設定されることができる。これにより、制御部は、熱交温度が第3温度より大きくなっていない場合に、熱交温度が依然として使用者の想定の皮膚温度の上限を超えるほどには上昇しておらず、大風量モードにより室内温度の上昇をより促進させることができる状態であると判断できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空気調和機によれば、暖房起動時に使用者の皮膚温度より低い風が使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせにくくしながらも、暖房起動時の目標室温への到達時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による空気調和機の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態による空気調和機による暖房起動時の制御内容を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態による空気調和機及び比較例による暖房起動時の風量、室内温度、熱交換器温度と時間との関係をそれぞれ示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態による空気調和機について説明する。
図1は本発明の一実施形態による空気調和機の概略構成図である。
空気調和機1は、室外に設けられる室外機2と、暖房しようとする室内に設けられる室内機4と、室外機2と室内機4を接続して冷媒を循環させる冷媒配管6を備えている。更に、空気調和機1は、室外機2及び室内機4を制御する制御装置8と、使用者が操作するリモコンスイッチ10を備えている。
【0014】
室外機2は、冷媒を圧縮する圧縮機12と、室外熱交換器14と、冷媒を減圧させる膨張弁16と、室外から外気を吸い込む室外ファン18と、を備えている。室外熱交換器14は、室外ファン18によって導入される外気と冷媒とを熱交換させる。
【0015】
室内機4は、冷媒と室内空気とを熱交換させる室内熱交換器20と、室内に熱交換された空気を吹き出す室内ファン22と、室内の室内温度を検知する室温検知部である室内温度センサー24と、室内熱交換器20中の冷媒の温度に基づく熱交温度を検出する熱交温度センサー26とを備えている。この熱交温度センサー26は冷媒配管6の外面に取付けられている。熱交温度センサー26は、室内熱交換器20内において冷媒が主に二相域となる部分の冷媒の温度に対応する熱交温度を検知する。なお、熱交温度と室内機4の吹き出し口の吹出温度とは相関があるため、この熱交温度センサー26に代えて、吹出温度検知センサーを室内機4の吹き出し口に配置し、この吹出温度検知センサーにより検知された吹出温度から、又は、吹出温度から熱交温度を推定して、同様の制御を行ってもよい。
圧縮機12、室内熱交換器20、膨張弁16及び室外熱交換器14は、上述した冷媒配管6により接続され、冷凍サイクルを構成している。
【0016】
上述したリモコンスイッチ10により、使用者は、目標室温を設定できる。ここで、目標室温は、例えば室内中央の目標室温である。
【0017】
制御装置8は、例えば室外機2の圧縮機12、室外ファン18及び膨張弁16、室内機4の室内ファン22、室内温度センサー24、熱交温度センサー26及びリモコンスイッチ10と電気的に接続されている。制御装置8は、基板上に配置されたCPU及びメモリ等を備え、メモリ等に記憶された所定の制御プログラム、リモコンスイッチ10から受信した指令信号等に基づいて、電気的に接続されている機器の制御を行うことができる。
【0018】
制御装置8は、暖房起動時における室内温度Bが10℃(第1温度B1)未満である場合には、室内熱交温度Cが暖房起動時からの上昇過程において人の皮膚温度に基づいて設定された32℃(第2温度C2)から38℃(第3温度C3)までの範囲内にあるとき、室内ファン22を大風量設定に対応する回転数により駆動させる暖房起動時大風量モードを備える。ここで、上述した10℃(第1温度B1)は8℃から12℃の範囲内であればよく、32℃(第2温度C2)は、28℃~33℃の範囲内の温度であればよく、38℃(第3温度C3)は、36℃~40℃の範囲内の温度であればよい。
大風量設定は、室内機4からの吹き出しの風量A(図3参照)の小風量から大風量までの設定範囲のうち、最も多いレベルの風量の段階に設定される。なお、大風量設定は、必ずしも吹き出しうる最高の風量である必要はなく、最も多いレベルの風量を含む一定範囲内の風量で設定されればよい。例えば、大風量設定は、小風量から大風量までの3段階又は5段階の設定範囲のうち、最も多い風量の段階として設定される。大風量設定は、空気調和機1の出力に対応する大風量として設定され、3.5kwの出力に対応する大風量は例えば11[m3/min]であり、5kwの出力に対応する大風量は例えば13[m3/min]である。
【0019】
制御装置8は、さらに、暖房起動時における室内温度Bが10℃(第1温度B1)未満である場合には、室内熱交温度Cが暖房起動時からの上昇過程において32℃(第2温度C2)に達するまでは、室内ファン22を小風量設定に対応する回転数により駆動させる暖房起動時小風量モードを備える。小風量設定は、室内機4からの吹き出しの風量A(図3参照)の小風量から大風量までの設定範囲のうち、最も少ないレベルの風量の段階に設定される。なお、小風量設定は、必ずしも吹き出しうる最低の風量である必要はなく、最も少ないレベルの風量を含む一定範囲内の風量で設定されればよい。例えば、小風量設定は、小風量から大風量までの3段階又は5段階の設定範囲のうち、最も少ない風量の段階として設定される。
制御装置8は、さらに、室内熱交温度Cが暖房起動時からの上昇過程において32℃(第2温度C2)に到達して以後、室内熱交温度Cが38℃(第3温度C3)に達するまでは、室内ファン22の回転数を減少させないように制御する回転数非減少モードを備える。
【0020】
制御装置8は、さらに、室内熱交温度Cが低下する場合には、室内ファン22の回転数を低下させ、且つ、室内熱交温度Cが上昇する場合には、室内ファン22の回転数を上昇させる熱交温度対応風量制御モードを備える。
【0021】
つぎに、図2により、本発明の一実施形態による空気調和機の暖房起動時の制御内容について説明する。図2において、Sは各ステップを示している。
【0022】
図2に示すように、最初に、S1において、使用者がリモコンスイッチ10を操作して暖房の操作指令を制御装置8に送信し、空気調和機1の暖房運転を開始させる。
【0023】
次に、S2に進み、暖房起動時における室内温度Bが10℃(第1温度B1)未満か否かを判定する。室内温度Bが10℃未満でない場合には、居室の室内温度Bが比較的高く、熱交温度対応風量制御モードにより比較的早く室内中央を目標室温まで暖房できる環境であると判断できるので、S8に進み、通常の熱交温度に対応した風量を吹き出す熱交温度対応制御モードを実行する。
制御装置8は、室内温度Bが10℃未満である場合には、居室の室内温度Bが10℃未満の比較的低い温度であり、暖房起動時小風量モード、回転数非減少モード、暖房起動時大風量モード等の実行により、熱交温度対応風量制御モードの実行によるよりも早期に室内中央を目標室温まで暖房できる環境であると判断できるので、S3に進む。
【0024】
次に、S3に進み、制御装置8は、上述した暖房起動時小風量モードを実行する。
次に、S4に進み、室内熱交温度Cが暖房起動時からの上昇過程において人(使用者)の皮膚温度に基づいて設定された32℃(第2温度C2)以上となるか否かを判定する。32℃(第2温度C2)は、室内温度Bが10℃未満であるような低温環境における人の皮膚温度として設定される。
【0025】
室内熱交温度Cが32℃(第2温度C2)以上ではないと判定された場合には、S3に戻り、暖房起動時小風量モードの実行を継続する。
【0026】
S4において、室内熱交温度Cが32℃(第2温度C2)以上であると判定された場合には、S5に進む。
【0027】
S5において、制御装置8は室内熱交温度Cが32℃(第2温度C2)以上と判定された場合には、上述した暖房起動時大風量モードを実行する。
【0028】
次に、S6に進み、制御装置8は暖房起動時大風量モードの実行の開始と並行して、回転数非減少モードを実行する。
この回転数非減少モードを実行することにより、室内熱交温度Cが32℃(第2温度C2)よりも下降したとしても、室内機4から吹き出す風量を大風量A2に維持し、室内温度Bの上昇を促進させ、暖房起動時の目標室温への到達時間をより短縮させる。
【0029】
次に、S7に進み、制御装置8は室内熱交温度Cが暖房起動時からの上昇過程において人の皮膚温度に基づいて設定された38℃(第3温度C3)より高温であるか否かを判定する。38℃(第3温度C3)は、室内温度Bが暖房起動時の温度よりも上昇し且つ目標室温以下であるような環境における人の想定上限の皮膚温度である。
【0030】
制御装置8は、室内熱交温度Cが38℃(第3温度C3)より高温ではない場合、すなわち38℃以下の場合には、室内熱交温度Cが依然として使用者の想定の皮膚温度の上限を超えるほどには上昇しておらず、暖房起動時大風量モードにより室内温度Bの上昇をより促進させることができる状態であると判断できるので、S5に戻る。
制御装置8は、室内熱交温度Cが38℃(第3温度C3)より高温となっていると判定される場合には、S8に進む。S8では、室内熱交温度Cが使用者の想定上限の皮膚温度を超える程度まで上昇しているので、通常の熱交温度対応風量制御モードを実行する。
【0031】
次に、図2及び図3により、本発明の一実施形態による空気調和機及び比較例の空気調和機による暖房起動時の風量、室内温度、熱交換器温度と時間との関係を説明する。
図2のS1において、使用者が空気調和機1の暖房運転を開始させる。空気調和機1の暖房運転の開始時間(開始時刻)は、図3において時間t0により示される。時間t0における室内温度Bは、室内温度B0であり、室内熱交温度Cもほぼ室内温度B0と同じ温度となっている。室内温度B0が10℃未満の比較的低い温度となっている。
【0032】
制御装置8はS3において暖房起動時小風量モードを実行する。時間t1において室内熱交温度Cが所定温度C1まで上昇すると、室内ファン22が起動される。室内ファン22が小風量設定に対応する回転数で回転されるので、室内機4から小風量A1の内気が室内に吹出される。時間t1以後、室内熱交温度Cは引き続き上昇する。制御装置8は、室内熱交温度Cが上昇したとしても、小風量運転を継続し、室内ファン22を小風量設定に対応する回転数に維持する。室内機4からは小風量A1の内気が吹出されるのみであるので、室内の室内温度Bは、時間t1から後述する時間t2まで室内温度B0でありほぼ一定となっている。
【0033】
制御装置8は、S4に進み、室内熱交温度Cが32℃(第2温度C2)以上となるか否かを判定する。室内熱交温度Cが32℃以上でないと判定される場合には、室内熱交温度Cが依然として人の皮膚温度に到達しておらず、仮に風量を増大させてしまうと、使用者の皮膚温度より低い風が暖房時に使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせてしまう可能性があると判断されるので、S3に戻る。
S4において、室内熱交温度Cが32℃以上であると判定された場合には、室内熱交温度Cが使用者の皮膚温度に到達しており、仮に風量を増大させたとしても、使用者の皮膚温度より高い風が暖房時に使用者に当たり、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせにくいと判断されるので、S5に進む。
【0034】
S5において、室内ファン22を小風量設定に対応する回転数a1から大風量設定に対応する回転数a2まで上昇させる。室内ファン22が回転数a2で回転されるので、室内機4から大風量A2の内気が室内に吹出される。時間t2以後、室内熱交温度Cは一旦第2温度C2よりも下降する。
【0035】
S6において、制御装置8は、時間t2以後回転数非減少モードを実行することにより、室内熱交温度Cが暖房起動時からの上昇過程において32℃に到達して以後、室内熱交温度Cが38℃に達するまでは、室内ファン22の回転数を減少させないように制御する。よって、室内熱交温度Cが第2温度C2未満に低下したとしても、制御装置8は、室内ファン22の回転数を下降させず回転数a2に維持する。よって、室内熱交温度Cが第2温度C2よりも下降したとしても、室内機4から吹き出す風量を大風量A2に維持し、室内温度Bの上昇を促進させ、暖房起動時の目標室温への到達時間をより短縮させる。時間t2以後は、室内機4からは大風量A2の内気が継続して吹出されるので、室内の室内温度Bは、時間t2から大きく上昇し、且つ上昇を継続している。このように制御装置8は、暖房起動時大風量モード及び回転数非減少モードを実行した状態で、S7に進む。
【0036】
S7において、時間t3において室内熱交温度Cが38℃より大きくなったと判定された場合、制御装置8は、暖房起動時大風量モード及び回転数非減少モードの実行を終了し、熱交温度対応風量制御モードの実行を開始させる。時間t3において、熱交温度対応風量制御モードにより、室内熱交温度Cに基づき、室内ファン22の回転数が回転数a2からわずかに引き上げられて回転数a3となっている。室内ファン22が回転数a3で回転されるので、室内機4から大風量A3の内気が室内に吹出される。時間t3以後、室内熱交温度Cは、わずかに上昇を継続するものの、変動幅は小さくされ、安定する。時間t3以後、室内熱交温度Cに対応して室内ファン22の回転数は回転数a3でほぼ一定となっている。
【0037】
次に、比較例として、図3を参照して、本発明と同様の条件下(室内温度B0且つ時間t0に暖房運転を開始)で暖房を起動し、暖房起動時から熱交温度対応風量制御モードを実行した場合における暖房起動時からの風量、室内温度、熱交換器温度の時間経過を説明する。
先ず、空気調和機1の暖房運転が開始されると、制御装置8は、熱交温度対応風量制御モードを実行する。空気調和機1の暖房運転の開始時間は、図3において時間t0により示される。時間t0における室内の室内温度Bは、室内温度B0であり、室内熱交温度Cはほぼ室内温度と同じ温度となっている。制御装置8は、暖房の開始準備ができ次第、例えば室内熱交温度Cが所定温度C1まで上昇し次第、時間t1から室内ファン22を起動させ、熱交温度対応風量制御モードを実行する。
【0038】
時間t1以後、熱交温度対応風量制御モードにより、時間t1以後、室内熱交温度Cが上昇するにつれ、室内ファン22の回転数がa1から段階的に上昇されている。これに伴って、室内温度Bも徐々に上昇している。室内熱交温度Cの上昇に対し段階的に室内ファン22の回転数を上昇させているため、時間t1からt2においては室内ファン22の回転数がa1となっている。
比較例において時間t1から時間t3までに室内機4から吹き出される風量の合計は、本実施形態において時間t1から時間t3までに室内機4から吹き出される風量Aの合計に比べて少なくなっている。従って、比較例及び本実施形態とも時間t3において、室内熱交温度Cが第3温度C3近傍となったとしても、比較例の室内温度B3’は、本実施形態における室内温度B3よりも低い値となっている。
【0039】
上述した本発明の一実施形態による空気調和機1によれば、制御装置8は、暖房起動時における室内温度が第1温度未満である場合には、小風量モードを実行し、次に、室内熱交温度Cが暖房起動時からの上昇過程において人の皮膚温度に基づいて設定された第2温度C2から第3温度C3までの範囲内にあるとき、大風量モードを実行する。これにより、暖房起動時に使用者の皮膚温度より低い風が使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせにくくしながらも、暖房起動時の目標室温への到達時間を短縮させることができる。
【0040】
さらに、本発明の一実施形態による空気調和機1によれば、制御装置8は、さらに、室内熱交温度Cが暖房起動時からの上昇過程において第2温度C2に到達して以後、室内熱交温度Cが第3温度C3に達するまでは、室内ファン22の回転数を減少させないように制御する回転数非減少モードを備える。これにより、室内熱交温度Cが暖房起動時からの上昇過程において第2温度C2に到達して以後は、室内熱交温度Cが第2温度C2未満に低下したとしても、室内ファン22により大風量の供給を維持し、暖房起動時の目標室温への到達時間をより短縮させることができる。
【0041】
さらに、本発明の一実施形態による空気調和機1によれば、室内温度Bが8℃~12℃の範囲内に設定された第1温度未満である場合に、小風量モード、大風量モード等の実行により、暖房起動時に使用者の皮膚温度より低い風が使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせにくくしながらも、暖房起動時の目標室温への到達時間を短縮させることができる。
【0042】
さらに、本発明の一実施形態による空気調和機1によれば、第2温度C2は、比較的低い室内温度Bに対応する人の皮膚温度に基づいて設定された、28℃~33℃の範囲内に設定されることができる。これにより、暖房起動時に使用者の皮膚温度より低い風が使用者に当たることにより使用者の体感温度が下がり不快に感じる、いわゆるドラフト感を使用者に生じさせにくくしながらも、暖房起動時の目標室温への到達時間を短縮させることができる。
【0043】
さらに、本発明の一実施形態による空気調和機1によれば、第3温度C3は、比較高い室内温度Bに対応する人の皮膚温度に基づいて設定された、36℃~40℃の範囲内に設定されることができる。これにより、制御装置8は、室内熱交温度Cが第3温度C3より大きくなっていない場合に、室内熱交温度Cが依然として使用者の想定の皮膚温度の上限を超えるほどには上昇しておらず、暖房起動時大風量モードにより室内温度Bの上昇をより促進させることができる状態であると判断できる。
【符号の説明】
【0044】
1 空気調和機
12 圧縮機
14 室外熱交換器
20 室内熱交換器
22 室内ファン
B1 第1温度
C 熱交温度
C2 第2温度
C3 第3温度
図1
図2
図3