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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】有線給電型無人飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64F 3/02 20060101AFI20231211BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20231211BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20231211BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20231211BHJP
   B64U 10/60 20230101ALI20231211BHJP
   B64U 50/34 20230101ALI20231211BHJP
【FI】
B64F3/02
B64C27/08
B64C39/02
B64D27/24
B64U10/60
B64U50/34
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018170115
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020040550
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慎識郎
(72)【発明者】
【氏名】河原 正典
(72)【発明者】
【氏名】中原 康希
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 亘
(72)【発明者】
【氏名】草苅 智
(72)【発明者】
【氏名】阿河 正明
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0184639(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0063029(KR,A)
【文献】特開2015-095995(JP,A)
【文献】特開2016-100960(JP,A)
【文献】特開2017-027355(JP,A)
【文献】特開2016-210229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 3/02
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 27/24
B64B 1/00
B64C 31/06
H02J 3/00- 5/00
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人飛行体に電源を供給する地上電源部と、
前記無人飛行体のモータ及び電子機器へ電力を供給する無人飛行体電源部と、
前記地上電源部と前記無人飛行体電源部とを接続する給電線と、
を備え、
前記地上電源部には、DC/ACインバータ又はAC/ACコンバータが設けられ、
前記地上電源部から前記給電線を介して前記無人飛行体電源部へ供給する供給電力は、周期的な電圧又は電流波形を有する交流電力であって、前記DC/ACインバータ又はAC/ACコンバータにより変換された任意の電圧及び周波数を有する交流電力であり、
前記給電線は、前記供給電力として、前記給電線の長さに対して波長λが十分に長く、集中定数回路で考えられる低周波領域と、集中定数回路で考えられるが前記給電線の周波数特性を考慮しなければならない中周波領域と、定在波の存在を考慮しなければならない高周波領域とに分けたとき、前記低周波領域、前記中周波領域及び前記高周波領域のうち少なくとも前記高周波領域に属する周波数を有する供給電力を給電すること、
を特徴とする有線給電型無人飛行体。
【請求項2】
前記供給電力は、単相交流電力であること、
を特徴とする請求項1に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項3】
前記給電線は単相3線式であること、
を特徴とする請求項2に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項4】
前記供給電力は、三相交流電力であること、
を特徴とする請求項1に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項5】
前記単相交流電力又は前記三相交流電力は、商用電源からの交流電力であること、
を特徴とする請求項2又は4に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項6】
前記三相交流電力は、単相交流電力から変換されていること、
を特徴とする請求項4に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項7】
前記地上電源部には昇圧部が設けられ、
前記商用電源からの交流電力は、前記昇圧部により昇圧され、前記給電線を介して前記無人飛行体電源部に給電されること、
を特徴とする請求項5に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項8】
記無人飛行体電源部には、AC/DCコンバータ、DC/DC及びDC/ACインバータが設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項9】
前記供給電力の出力波形は、スイッチング波形であること、
を特徴とする請求項1に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項10】
前記給電線のカットオフ周波数は、前記スイッチング波形のスイッチング周波数より高いこと、
を特徴とする請求項9に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項11】
前記給電線は、前記スイッチング波形のノイズ除去機能を備えていること、
を特徴とする請求項9に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項12】
イッチング周波数に対応する波長は、前記給電線の長さの1/4であること、
を特徴とする請求項9に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項13】
前記スイッチング波形は、チョッパ回路の出力波形であること、
を特徴とする請求項9に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項14】
前記スイッチング波形は、絶縁型コンバータのトランス出力波形であること、
を特徴とする請求項9に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項15】
前記チョッパ回路又は前記絶縁型コンバータのスイッチング素子は、GaNトランジスタ又はSiCトランジスタからなる素子であること、
を特徴とする請求項13又は14のいずれか1項に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項16】
前記無人飛行体電源部には、平滑回路が設けられていること、
を特徴とする請求項9に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項17】
前記地上電源部は、車載電池を備えていること、
を特徴とする請求項1に記載の有線給電型無人飛行体。
【請求項18】
前記地上電源部は、エンジン発電機を備えていること、
を特徴とする請求項1に記載の有線給電型無人飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の無人ヘリコプターや無人飛行機など、遠隔操作によって飛行する無人飛行体への電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる無人飛行体は、複数の回転翼を備えており、地上での操縦により、空中で3次元的な移動や安定な停止(ホバリング)が可能である。このため、空中での撮影から物の運搬まで幅広く利用されている。
【0003】
無人飛行体は、回転翼を回転させるモータ、電子機器及び電子回路等の電源は、無人飛行体に搭載された電池から電力の供給が行われており、現在一般的に利用されるバッテリーはリチウムイオン電池である。リチウムイオン電池は、小型・軽量でありながら、1セル3.7Vと高出力であることが特徴である。
【0004】
地上に電源を置いて有線で無人飛行体に給電する方式もあり、例えば特許文献1~4に開示されている。地上からの給電は直流であるが、モータは消費電力が大きく、1モータ当たり500~1000Wを供給する必要がある。回転翼のモータはブラシレスモータが使用されている場合が多く、12~24Vの直流電圧が必要である。地上からの給電をモータの直流電圧と同じ電圧にすると、50A以上もの電流が必要となり、給電線が太く、重くなる。無人飛行体は、100~150mの上空を飛行するため、給電線は太さ3mm以上が必要となり、重量は10kgを超えてくる。
【0005】
給電線を細く軽くするために、地上から給電する直流の電圧を高くする方法が提案されている。例えば、特許文献1では、200V以上、例えば360Vの直流電圧を供給しており、特許文献2では、160Vの直流電圧を給電している。
【0006】
特許文献4には、地上から無人飛行体へ送られる電力が交流の場合は、無人飛行体にAC/DCコンバータが必要であると記載されているが、効率については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許文献1:特開2016-74257
特許文献2:WO2014/203593
特許文献3:WO2014/152159
特許文献4:特開2017-013653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
無人飛行体は、長時間の飛行が求められているが、従来の無人飛行体に電池を搭載する方式では、飛行時間は容量の問題から15~25分程度であった。さらに長時間の飛行を行うためには、電池の容量を大きくしなければならず、無人飛行体の重量が重くなるといった課題があった。
【0009】
有線で無人飛行体に給電する方式では、直流電圧で電力を送電するため、送電線での損失が大きいといった課題があった。このため、効率の良い給電が必要とされている。
【0010】
本発明は、長時間飛行可能な無人型飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る有線給電型無人飛行体は、 無人飛行体に電源を供給する地上電源部と、前記無人飛行体のモータ及び電子機器へ電力を供給する無人飛行体電源部と、前記地上電源部と前記無人飛行体電源部とを接続する給電線と、を備え、前記地上電源部から前記給電線を介して前記無人飛行体電源部へ供給する供給電力は、周期的な電圧又は電流波形を有すること、を特徴とする。
【0012】
(2)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記供給電力は、単相交流電力であることが好ましい。
【0013】
(3)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記給電線は単相3線式であることが好ましい。
【0014】
(4)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記供給電力は、三相交流電力であることが好ましい。
【0015】
(5)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記単相交流電力又は前記三相交流電力は、商用電源からの交流電力であることが好ましい。
【0016】
(6)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記三相交流電力は、前記単相交流電力から変換されていることが好ましい。
【0017】
(7)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記地上電源部には昇圧部が設けられ、前記商用電源からの交流電力は、前記昇圧部により昇圧され、給電線を介して前記無人飛行体電源部に給電されることが好ましい。
【0018】
(8)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記地上電源部には、DC/ACインバータ又はAC/ACコンバータが設けられ、前記無人飛行体電源部には、AC/DCコンバータ、DC/DC及びDC/ACインバータが設けられていることが好ましい。
【0019】
(9)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記供給電力の出力波形は、スイッチング波形であることが好ましい。
【0020】
(10)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記給電線のカットオフ周波数は、前記スイッチング波形のスイッチング周波数より高いことが好ましい。
【0021】
(11)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記給電線は、前記スイッチング波形のノイズ除去機能を備えていることが好ましい。
【0022】
(12)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記スイッチング周波数に対応する波長は、前記給電線の長さの1/4であることが好ましい。
【0023】
(13)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記スイッチング波形は、チョッパ回路の出力波形であることが好ましい。
【0024】
(14)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記スイッチング波形は、絶縁型コンバータのトランス出力波形であることが好ましい。
【0025】
(15)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記チョッパ回路又は前記絶縁型コンバータのスイッチング素子は、GaNトランジスタ又はSiCトランジスタからなる素子であることが好ましい。
【0026】
(16)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記無人飛行体電源部には、平滑回路が設けられていることが好ましい。
【0027】
(17)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記地上電源部は、車載電池を備えていることが好ましい。
【0028】
(18)本発明に係る有線給電型無人飛行体において、前記地上電源部は、エンジン発電機を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
(1)本発明の有線給電型無人飛行体は、無人飛行体に電源を供給する地上電源部と、無人飛行体のモータ及び電子機器へ電力を供給する無人飛行体電源部と、地上電源部と無人飛行体電源部を接続する給電線とを備え、地上電源部から給電線を介して無人飛行体電源部へ供給する供給電力は、周期的な電圧又は電流波形を有する。このため、低周波での交流波形は、高電圧とすることにより損失の少ない給電が可能となる。また、高周波での給電は、ノイズの除去を給電線で行うことにより、一般的に使用されているスナバ回路を設ける必要がなく、部品点数を抑えることができる。さらに、電圧又は電流波形の周期は幅広く設定できる。
【0030】
(2)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、供給電力が単相交流電力であることにより、交流電源はトランスにより昇圧が容易である。
【0031】
(3)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、給電線が単相3線式であることにより、単相2線式の2倍の電圧で送電できる。
【0032】
(4)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、供給電力が三相交流電力であることにより、単相交流電力に比べて給電線での損失が少ない。
【0033】
(5)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、単相交流電力又は三相交流電力が商用電源からの交流電力であることにより、電源の利用が容易にできる。
【0034】
(6)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、三相交流電力が単相交流電力から変換されていることにより、単相交流電力は広く使用されているから利用が容易である。
【0035】
(7)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、地上電源部には昇圧部が設けられ、商用電源からの交流電力は、昇圧部により昇圧され、給電線を介して無人飛行体電源部に給電されているため、給電線での損失を抑えることができる。
【0036】
(8)本発明の有線給電型無人飛行体においては、地上電源部には、DC/ACインバータ又はAC/ACコンバータが設けられ、無人飛行体電源部には、AC/DCコンバータ、DC/DC及びDC/ACインバータが設けられている。交流電力は、商用電源に限らず、DC/ACインバータ又はAC/ACコンバータにより、任意の電圧及び周波数に変換でき、効率のよい電源の供給が可能である。また、無人飛行体電源部には、AC/DCコンバータ、DC/DC及びDC/ACインバータが設けられており、無人飛行体に搭載されている制御回路、センサ、モータやカメラ等の搭載機器への最適な電源が供給できる。
【0037】
(9)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、供給電力がスイッチング波形であることにより、AC/DCコンバータやDC/DCコンバータでのスイッチング波形を給電線から供給することで、給電線をコンバータの1部品として利用できる。
【0038】
(10)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、給電線のカットオフ周波数が、スイッチング波形のスイッチング周波数より高いことから、スイッチング波形の減衰量を少なくすることができる。
【0039】
(11)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、給電線が、スイッチング波形のノイズ除去機能を備えていることから、給電線の周波数特性を利用して、スイッチングに伴って発生するノイズを減衰させている。
【0040】
(12)本発明の有線給電型無人飛行体においては、スイッチング周波数に対応する波長は、給電線の長さの1/4である。給電線が長くなるとスイッチング周波数に伴う波長が無視できなくなり、給電線の特性インピーダンスと整合を取らなければならず、このために、スイッチング周波数の波長を、給電線の長さの1/4として整合させている。これにより、給電線がトランスとしての機能を備えることができる。
【0041】
(13)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、スイッチング波形が、チョッパ回路の出力波形であることから、給電線をチッパ回路で生成されたスイッチング波形のノイズ除去用に利用できる。
【0042】
(14)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、スイッチング波形が、絶縁型コンバータのトランス出力波形であることから、トランスを利用することでノイズの発生を抑えることができる。
を特徴とする。
【0043】
(15)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、チョッパ回路又は絶縁型コンバータのスイッチング素子が、GaNトランジスタ又はSiCトランジスタからなる素子であることから、高周波数でのスイッチングが可能となり、小型で効率の良い給電回路とすることができる。
【0044】
(16)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、無人飛行体電源部には、平滑回路が設けられていることから、スイッチング波形を平滑化して、無人飛行体搭載機器への所望の電源に変換できる。
【0045】
(17)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、地上電源部は、車載電池を備えていることから、商用電源が利用できないところでも、EV(Electric Vehicle:電気自動車)やハイブリッド車等の車載電池により無人飛行体を飛行させることができる。
【0046】
(18)本発明の有線給電型無人飛行体によれば、地上電源部は、エンジン発電機を備えていることから、商用電源が利用できないところでも、無人飛行体を飛行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の実施形態に係る有線給電型無人飛行体を説明する概念図である。
図2】有線給電型無人飛行体の電源システムを説明するブロック図である。
図3】低周波領域において単相交流電源40から給電線14に電力を給電する場合のモデル図である。
図4】低周波領域において三相交流電源42から給電線14に電力を給電する場合のモデル図である。
図5】三相交流電力が給電されている場合の負荷の結線状態と、相電圧、相電流の関係を説明する図である。
図6】給電線14を単相3線式にした場合のモデル図である。
図7】銅線抵抗の周波数特性の一例を示す図である。
図8】CVケーブルの周波数特性の一例を示す図である。
図9】給電線14を分布定数線路と見た場合のモデル図である。
図10】分布定数線路モデルの受端(z=0)に負荷インピーダンスZを接続した場合のモデル図である。
図11】分布定数線路モデルの長さに対して、波長がλ/4の場合を示す図である。
図12】商用電源の交流電源を使用した無人飛行体10に関する電源システムのブロック図である。
図13】商用電源が、直接給電線14を介して伝送される場合の給電回路の構成を示す図である。
図14】給電線14での損失を少なくするために、電源供給部22に昇圧部44、無人飛行体電源部24に降圧部46を設けた給電回路の構成を示す図である。
図15】交流電力を単相3線式で送電する場合の給電回路の構成を示す図である。
図16】3相電力を、給電線14を介して送電するための給電回路の構成を示す図である。
図17】給電線14でスイッチング波形を伝送する場合の無人飛行体10に関する電源システムのブロック図である。
図18】DC電源62をチョッパ回路60で、三相交流電源に変換して給電線14に送電する給電回路の構成を示す図である。
図19】降圧型DC/DCコンバータの回路構成を利用して、給電線14での電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。
図20図19(B)で示した電源供給部22の回路における寄生インダクタンス、寄生容量を考慮した等価回路を示す図である。
図21】非同期式昇圧型のDC/DCコンバータの回路構成を利用して、給電線14での電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。
図22】フライバック型DC/DCコンバータの回路構成を利用して、給電線14での電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。
図23】フォワード型DC/DCコンバータの回路構成を利用して、給電線14での電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。
図24】フォワード型DC/DCコンバータの回路構成を利用しているが、トランスTを、給電線14で代用して電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せをする様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0049】
一般にドローンと呼ばれている無人飛行体は、近年、さまざまな用途で使用されて来ている。しかし、一般的な無線ドローンには、電源としてリチウムイオン電池が使用されており、連続飛行時間が20分程度と短く、長時間飛行が必要とされる用途には向かなかった。このため、有線給電方式で長時間飛行を可能にする方式が採用されている。
【0050】
従来の有線給電方式は、給電線を介してDC(直流)電圧を供給している。無人飛行体に搭載されている電子機器は、ほとんどがDC電圧で動作し、交流(AC)電圧を供給してもAC/DC変換する必要があるからである。しかしながら、DC電圧は給電線を介して供給されると損失が大きく、給電線が長くなった場合には、大きな問題となる。
【0051】
無人飛行体での給電線を介するDC電圧の供給は、損失をカバーするため、例えば500V前後の高圧DC電圧を給電する方式が採用されているが、給電線の長さに限界があり、地上電源の位置からから無人飛行体を飛行させる範囲も限定されてしまう。
【0052】
無人飛行体は、飛行高度が制限されており、例えば日本では150m以下である。これは、航空法で、有人ヘリコプターが離着陸以外は、建物の密集地区では300m以上、それ以外の場所では150m以上で飛行しなければならない旨が規定されているためであり、航空機のための航空エリアは、飛行禁止空域とされているためである。このため飛行の高さだけを考えれば150mの給電線でもよいが、地上にある電源供給を行うベースステーションの近傍の飛行に限られてしまう。
【0053】
一方で、無人飛行体を無線で操縦する送信機の電波の送信距離は、2000~3000mであり、水平方向の限界は規制されていないため、理論的には、2000~3000mの給電線も必要とされてくる。例えば、台風や大雨により土砂崩れした堤防の決壊による浸水などは、長時間にわたり広範囲の調査、監視が必要であり、水平方向が2000~3000m程度は、むしろ現実的に要求されている距離、即ち要求されている給電線の長さである。このため、給電線での損失の少ない交流電圧での給電が必須となる。
【0054】
図1は、本発明の実施形態に係る有線給電型無人飛行体を説明する概念図である。無人飛行体10と地上のベースステーション12には給電線14により接続されており、給電線14は、たるみ防止用の巻取部16が設けられている。無人飛行体10に電源を供給する地上電源部と、無人飛行体10のモータ及び電子機器へ電力を供給する無人飛行体電源部と、地上電源部と無人飛行体電源部とを接続する給電線14とを備え、地上電源部から給電線14を介して無人飛行体電源部へ供給する供給電力は、周期的な電圧又は電流波形を有する。地上電源部は、ベースステーション12に設けられており、無人飛行体電源部は、無人飛行体10に設けられている。
【0055】
ベースステーション12は、図1では車を例示的に示しているが、地上電源部を備えるスペースがあれば、屋外でも屋内でもよい。車をベースステーション12とした場合は、車載電池が利用される。また、地上電源部は、エンジン発電機を備えていてもよい。エンジンの回転により交流電力を発電するため、商用電源が利用できないところでも無人飛行体10を飛行させることができる。
【0056】
給電線14を介して無人飛行体電源部へ伝送する周期的な電圧又は電流波形は、単相交流波形、三相交流波形、スイッチング波形である。なお、交流波形は正弦波であり、スイッチング波形は、DC電圧をスイッチング素子によってオン・オフした矩形波又は場合によっては三角波である。単相交流波形により単相交流電力が供給され、三相交流波形により三相交流電力が供給される。また、スイッチング波形によりオン・オフされた電圧又は電流が供給される。
【0057】
本発明において、給電線14でのスイッチング波形の伝送は、各種DC/DCコンバータやAC/DCコンバータの基本回路構成を利用している。スイッチング電源は、ある周波数でDC電圧をスイッチングして安定化電源を構成しているが、このスイッチング電源の基本回路を利用して、無人飛行体10へ有線給電するための給電回路の構成としたことを特徴としている。給電線14を介して伝送されたスイッチング波形は、無人飛行体10で平滑化され、安定化電源により要求される電圧に変換される。
【0058】
単相交流電力又は三相交流電力は、商用電源からの交流電力が使用できる。三相交流電力は単相交流電力から変換してもよい。
【0059】
図2は、有線給電型無人飛行体の電源システムを説明するブロック図である。無人飛行体10には、受信機28、フライト制御部26、ESC(Electric Speed Controller)36、モータ34、機器制御部30、搭載機器32、センサ38と無人飛行体電源部24がある。ベースステーション12には、地上電源部20に電源供給部22があり、給電線14を介して無人飛行体10に電源を供給している。給電線14は、巻取部16で巻き取り可能に構成されており、巻取部16は、ベースステーション12と無人飛行体10との距離に応じて給電線14の長さを調整している。無人飛行体10のフライトと搭載機器32の制御は、地上からのプロポ送信機18により無線で電波の送信によって行わる。また、プロポ送信機18を、有線で給電線14と共に無人飛行体10に接続してもよい。これらの動作は、操縦者がプロポ送信機18により操縦して行われている。
【0060】
無人飛行体10は、4枚羽のクアッドコプター、6枚羽のヘキサコプター、8枚羽のオクトコプタ等があり、プロペラ(羽)は、モータ34により回転される。無人飛行体10のホバリングや、前進後退は、プロペラの回転数を調整して行われる。例えば、前方方向のプロペラの回転数を少なくすると前進する。プロペラ部分の、角度を調整できる機種もある。
【0061】
プロポ(プロポーショナルコントロールシステム)18で、上昇下降や前進後退の操作を行うと、無線で無人飛行体に電波が送信され、無人飛行体10にある受信機28で受信する。受信機28からの命令を受けたフライト制御部26では、傾きや角度、加速度など様々な情報を検知するセンサ38の情報を基にして演算処理を行い、各モータ34にどのような回転をさせるかを決める。センサ38は、ジャイロセンサが多く使用されている。フライト制御部26からの命令を受けたESC36では、命令に応じてモータ34を回転させる。センサ38には、GPS(Global Positioning System)や気圧などの検知を含んでもよい。
【0062】
無人飛行体10は、その飛行目的によって、様々な機器が搭載されている。例えば空撮目的なら、搭載機器32はカメラである。荷物を運搬する目的なら荷台となる。この搭載機器を制御するのが機器制御部30である。搭載機器32がカメラの場合は、カメラで撮影された映像信号が機器制御部30から受信機28を介してプロポ18に送られる。この場合には、受信機28とプロポ18は、送受信可能な機能を備えている。さらに、プロポ18には、映像信号を格納する記憶部が備えられている。勿論、パソコン等と接続して、映像信号を記憶してもよい。送受信の電波は、日本では2.4GHz帯が使用されている。
【0063】
無人飛行体10のモータには、主に三相ブラシレスDCモータ(以下、ブラシレスモータと略す。)が使用されている。ブラシレスモータには、ローターの位置検出用の磁気素子または、光学式のエンコーダが内蔵されている。この位置検出器によりESC36へ信号を送る。モータ巻線は、3相Y結線である。また、ローターには永久磁石が使用され、検出用の磁気素子には、ホールICが使用されている。モータ巻線にはスイッチング素子が接続されており、インバータを構成している。
【0064】
無人飛行体電源部24は、無人飛行体10に搭載されている電気的に動作する全ての装置に電源を供給している。モータ34が、ブラシレスモータなら位相を120度ずらした三相交流電圧又は三相交流電流を供給し、フライト制御部26や機器制御部30は、CPU、論理回路やROM等から構成されているため、論理回路用の電圧が供給される。さらに、受信機28、搭載機器32及びセンサ38にも、それぞれに適合した電圧や電流が供給される。
【0065】
地上電源部20には電源供給部22があり、給電線14を介して無人飛行体10の無人飛行体電源部24へ電源を供給する。給電線14は、巻取部24で長さ調整されて弛みを防止している。無人飛行体電源部24では、この供給電源は一旦DC電圧に変換され、さらに、無人飛行体10の各装置に適合した電圧に変換され、供給される。
【0066】
本発明は、電源供給部22からの供給電力が周期的な電圧又は電流波形を有することを特徴としている。周期的とは、一定の周波数を持った波形の意味である。一般に、周波数を持った波形の伝送は、給電線14の長さに依存した特性インピーダンスを考慮する必要がある。
【0067】
特性インピーダンスは、周波数に依存して変わり、給電線14の長さよりも十分に大きい低周波領域では、波長の影響は受けず、波形が無人飛行体電源部24に同相で到達し、給電線14は、集中定数回路として考えられる。周波数が高くなると、集中定数回路ではあっても、給電線14の周波数特性を考慮しなければならない。さらに周波数が高い高周波領域では、定在波の影響が無視できず、反射波を考慮し、インピーダンス整合を取る必要がある。
【0068】
給電線14の長さは、例えば高さ150mをカバーするだけなら150mでよいが、水平方向の移動を考えると、最長で2000~3000mの長さが必要である。
【0069】
周波数をf、波長をλとすると、光速は3×10m/sだから、f=3×10/λとなる。定在波を考慮し、λ/4でのインピーダンス整合を考えると、給電線14の長さが150mの場合は、f=3×10/(150×4)=500kHzである。給電線14の長さが3000mの場合は、同様な計算で25kHzとなる。
【0070】
従って、給電線14を介した交流送電の場合は、周波数fと給電線14の長さは極めて密接な関係にあり、給電線14の長さに対して波長λが十分に長く、集中定数回路で考えられる低周波領域と、集中定数回路で考えられるが給電線14の周波数特性を考慮しなければならない中周波領域と、定在波の存在を考慮しなければならない高周波領域とに分けて考えなければならない。この周波数に適合した給電をすることにより、効率的な給電を行うことができる。以下に、低周波領域、中周波領域及び高周波領域における周波数と給電線の特性について説明する。
【0071】
低周波領域は、給電線14の長さに対して交流波形の波長が十分に長い場合の周波数領域である。例えば、商用交流電源を送電する場合は、周波数が50又は60Hzであり、周波数を50Hzとすると波長λは6×10mである。給電線14の長さが3000mの場合であっても波長λは十分に長く、給電線14は集中定数回路として考えることができる。
【0072】
図3は、低周波領域において単相交流電源40から給電線14に電力を給電する場合のモデル図である。電源供給部22における単相交流電源40から給電線14を介して無人飛行体電源部24に単相交流電力が給電されている。給電線14の給電線等価抵抗をRとする。単相交流電源40の電圧をV、給電線14に流れる電流をIとすると、損失電力Wlosは次式となる。
los=RI ・・・・(1)
(1)式より、給電線等価抵抗Rは一定であるから、電流Iが小さいほど損失電力は少なくなる。同じ電力Wを給電するなら、W=V・Iであり、電圧が高いほど電流は少なくなるので、給電線14への給電は高電圧ほど電力損失が少なくなる。
【0073】
図4は、低周波領域において三相交流電源42から給電線14に電力を給電する場合のモデル図である。電源供給部22における三相交流電源42から給電線14を介して無人飛行体電源部24に三相交流電力が給電されている。三相交流電源42での給電の場合は、負荷の結線状態、即ち、Y結線かΔ結線かで、負荷の相電圧と相電流が変わる。
【0074】
図5は、三相交流電力が給電されている場合の負荷の結線状態と、相電圧、相電流の関係を説明する図である。図5(A)は、負荷ZがY結線の場合の図である。Y結線では相電流は給電線14に流れる電流Iと同じであるが、相電圧が線間電圧Vの1/31/2となる。図5(B)は、負荷ZがΔ結線の場合の図である。Δ結線では相電圧は給電線14の線間電圧Vと同じであるが、負荷Zに流れる電流Iは、1/31/2となる。従って、三相の場合は、相電力の総和が三相で供給される電力となるから、負荷ZがY結線であっても負荷ZがΔ結線であっても、三相での供給電力は31/2V・Iとなり、単相交流電力の31/2倍の電力が得られる。このため、給電線14へは、単相交流電力よりも三相交流電力を給電した方が有利である。
【0075】
図6は、給電線14を単相3線式にした場合のモデル図である。単相3線式は、中性線を接地して、上下の給電線14に、電源供給部22から単相交流電力を無人飛行体電源部24に供給する方式である。単相3線式の場合は、給電線14に給電線等価抵抗をR、給電線14に流れる電流をI、負荷Zでの電圧をVとすると、単相3線式では3本の上中下の線のうち、中の線には基本的に電流が流れない(打ち消されてゼロとなる)ので、給電線14で失われる損失電力Wlosは、上下の線に負荷が接続できるから、Wlos=2R・Iとなる。また、負荷で消費される電力Wは、W=2V・Iとなる。図3で示した単相2線式の場合に対して、電流Iは2倍となるため、負荷に供給する電力及び給電線での電力損失を単相2線式と同じとすると、単相3線式では給電線等価抵抗Rが1/4となる。
【0076】
給電線14の給電線等価抵抗Rは、給電線14の断面積に反比例するから、単相3線式の給電線14の直径は、単相2線式の場合の半分でよいことになり、軽量化が図れる。
【0077】
低周波領域においては、給電線14の給電線等価抵抗Rを考慮した給電を行なえばよく、主に周波数が50~60Hzでの商用電源について説明したが、まとめると以下のようになる。
(1)電圧は高い方が給電線14での損失電力Wlosが少ない。
(2)単相交流電力より三相交流電力の方が、損失電力Wlosは少ない。
(3)単相交流電力の給電は、単相2線式より単相3線式の方が損失電力Wlosは少なく、給電線の軽量化が図れる。
【0078】
次に、中周波領域での給電について説明する。中周波領域は、電源供給部でのスイッチング周波数fが、給電線14の周波数特性を考慮しなければならない周波数領域を対象としている。スイッチング波形は、DC電圧をスイッチング素子によりオン・オフして生成されている。これにより、スイッチング波形を供給電源としている。
【0079】
例えば給電線14としてCVケーブルを使用したとする。CVケーブルは、導体を架橋橋ポリエチレンで被覆し、その外周をビニルシースで被覆したケーブルである。導体に銅線を使用したとすると、表皮効果等により周波数が高くなると抵抗も高くなる。
【0080】
図7は、銅線抵抗の周波数特性の一例を示す図である。図示した例では、10kHzを超えると、表皮効果や、複数のより線による近接効果により抵抗が高くなる。さらに線間の等価容量も加わり、周波数が高くなるとCVケーブルでの減衰量が大きくなる。
【0081】
図8は、CVケーブルの周波数特性の一例を示す図である。図示した例では、10kHzを超えると減衰量が大きくなっている。中周波領域では、この周波数特性を利用して電源設計を行う。3dB減衰するカットオフ周波数をfとすると、カットオフ周波数fは、スイッチング周波数fよりも高いことが必要とされる。逆の見方をすれば、カットオフ周波数よりも低い周波数をスイッチング周波数領域として、スイッチング周波数fを、スイッチング周波数領域に含まれる周波数で設計することが必要である。
【0082】
図8に示した周波数特性では、100kHzを超えると減衰量は20dB以上となるため、スイッチング波形は立ち上がり・立ち下がりが緩やかになる。これはノイズを除去するには好適である。スイッチング電源は、使用する電子部品や半導体部品を配線パターンで接続して回路を構成しているが、ノイズは、スイッチング素子のオフ時に発生するサージ/リンギング電圧や、配線パターンの寄生インダクタンスとスイッチング素子の寄生容量による共振周波数として発生している。ノイズの共振周波数は、一般のスイッチング電源では、配線パターンは短く、数MHz以上である。従って、周波数特性で減衰量が十分に大きい周波数領域にノイズの周波数が存在することとなり、給電線14の周波数特性をノイズ除去機能として利用することができる。
【0083】
電源供給部は、スイッチング周波数fを高くすることにより、使用するコンデンサのキャパシタ、コイルやトランスのインダクタンスを小さくできるため、電子部品を小型化できる。しかしながら、スイッチング周波数fを高くすれば、波長λが短くなり、給電線14の長さが無視できなくなる。この周波数領域を高周波領域とする。高周波領域での給電線14には、例えばメタルLANケーブルを使用する。
【0084】
高周波領域では、給電線14は集中定数回路理論によって取り扱うことはできないため,電磁界理論もしくは分布定数回路理論の利用が必要である。給電線14での電磁界は様々な電磁界姿態(モード)の重ね合わせとして表現される。給電線14での電圧・電流の進行波・反射波の分布,それにともなう定在波の様子などは、分布定数線路理論による。給電線14に存在する各モードの伝搬定数及び波動インピーダンスを分布定数線路の伝搬定数及び特性インピーダンスに対応させることによって,各モードの波動的な性質を抽出することも可能となる。
【0085】
給電線14に存在可能なモードはいくつかあるが,その中で最も基本的なモードはTEMである。TEMモードとは,電界及び磁界とも電磁波の伝搬方向に垂直な断面内にのみ存在するモードである。TEMモードのカットオフ周波数は0である。言い換えれば,TEMモードが存在可能であるとき,すべての周波数でTEMモードは伝搬可能である。一般に二つ以上の導体が存在するような伝送線路、即ち給電線14においてTEMモードは存在する。
【0086】
図9は、給電線14を分布定数線路と見た場合のモデル図である。図9(A)は、給電線14の分布定数線路モデルを示している。図9(B)は、分布定数線路モデルの一次定数集中定数回路モデルを示している。伝搬方向をz軸の正の方向とするとき,給電線14の微小区間Δzを集中定数により表現したものである。図9のR、L、G,Cは次のように定義される。
R:単位長当たりの直列抵抗
L:単位長当たりの直列インダクタンス
G:単位長当たりの分路コンダクタンス
C:単位長当たりの分路容量
【0087】
このとき,特性インピーダンスZ,伝搬定数γは次式で与えられる。
={(R+jωL)/(G+jωC)}1/2 ・・・(2)
γ={(R+jωL)(G+jωC)}1/2 ・・・・(3)
【0088】
図10は、分布定数線路モデルの受端(z=0)に負荷インピーダンスZを接続した場合のモデル図である。受端(z=0)に負荷インピーダンスZが接続されているとき,受端における反射係数Γは次式で表される。
Γ=(Z-Z)/(Z+Z) ・・・(4)
【0089】
給電線が無損失線路だとすると、実際に負荷Zに伝達される電力Wは、入力電力をWinとして次式で与えられる。
=(1-|Γ|)Win ・・・(5)
【0090】
Γ=0のとき、負荷インピーダンスZは分布定数線路モデルの特性インピーダンスに等しい。このとき、受端において反射が生じず、負荷と分布定数線路モデルは整合がとれているという。受端における反射係数Γが0でない場合(Γ≠0)、伝送線路(給電線14)内には受端から入射端に戻る反射波が存在する.この反射波が入射波と干渉することによって、定在波が発生する。このとき,分布定数線路モデル内における電圧の最小値Vminに対する電圧の最大値Vmaxの比を電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)と呼ぶ。
【0091】
VSWRが1であるとき、分布定数線路モデル内には定在波が生じない。隣り合う最大電圧間もしくは最小電圧間の距離はλ/2であり、最大電圧と最小電圧の間の距離はλ/4である。
【0092】
図11は、分布定数線路モデルの長さに対して、波長がλ/4の場合を示す図である。この場合、入力インピーダンスZinは、Zin=Z /Zとなり、負荷インピーダンスZを逆数に変換する。このとき、電源電圧をVinとすると、負荷の電圧Vと電流Iは以下のようになる。
=Vin・Z/(jZ) ・・・(6)
=Vin/(jZ) ・・・(7)
【0093】
上式より、給電線14の長さが、スイッチング周波数fの波長λの1/4であるときは、インピーダンスが純抵抗となり、給電線14のインピーダンス以上の負荷インピーダンスZを接続したときは、負荷側の電圧が上がる。このため、給電線14により、昇圧トランスを形成することができる。例えば、Z=50ΩでZ=100Ωのとき電圧は2倍となり、Z=50ΩでZ=1000Ωのとき電圧は20倍となる。このとき、ノイズはインピーダンス整合が取れないため、反射波により減衰する。従って、効率の良い電力の供給が可能となる。
【0094】
次に、無人飛行体10に関する電源システムについて説明する。
【0095】
図12は、商用電源の交流電源を使用した無人飛行体10に関する電源システムのブロック図である。地上にある電源供給部22には、商用電源をコンセントで引き込んだ交流電源40と、交流電源40を昇圧する昇圧部44がある。交流電源40は、商用電源が利用できない場合は、ディーゼル発電機等の発電装置を利用してもよい。電源供給部22からの電力は、給電線14を介して無人飛行体10へ伝送される。
【0096】
無人飛行体10には無人飛行体電源部24が備えられている。無人飛行体電源部24においては、給電線14で伝送された電力は、降圧部46で降圧され、整流ブリッジ48と平滑回路50によりDC電圧に変換される。変換されたDC電圧は、DC/DCコンバータ52により、受信機28、フライト制御回路26、機器制御回路30、搭載装置32やセンサ38に対して適合した電圧に変換され、供給される。無人飛行体10のプロペラを回転させるのは、例えば三相ブラシレスDCモータである。三相ブラシレスDCモータは、DC/ACインバータ54により三相に変換されたモータドライブ波形と、ESC36により回転が制御される。三相ブラシレスDCモータによりプロペラが回転するから、三相ブラシレスDCモータの制御により無人飛行体10が操縦される。
【0097】
以下に、交流電源40を使用した給電線14での電力伝送について、実施例を基に説明する。なお、無人飛行体10での回路構成は、無人飛行体電源部24における平滑回路50までの回路を示す。
【0098】
<実施例1>
図13は、商用電源が、直接給電線14を介して伝送される場合の給電回路の構成を示す図である。電源供給部22は、コンセント又はエンジン発電機からの交流電源40である。給電線14に50又は60Hzで100Vの電圧が伝送される。無人飛行体電源部24では、交流を整流する整流ブリッジ48と平滑回路50によりDC電圧に変換される。整流ブリッジ48は、4個のダイオードD、D、D、Dで構成され、平滑回路50は、平滑コンデンサCoが並列に接続されている。
【0099】
<実施例2>
図14は、給電線14での損失を少なくするために、電源供給部22に昇圧部44、無人飛行体電源部24に降圧部46を設けた給電回路の構成を示す図である。昇圧部22には昇圧トランスT、降圧部46には降圧トランスTを使用している。降圧トランスTによって降圧された交流電圧は、整流ブリッジ48と平滑回路50によりDC電圧に変換される。
【0100】
市街地で送電される商用電源は、送電線では電力の損失を抑えるために6600Vで送電されており、一般家庭へはトランスにより電圧が100Vに降圧されて供給されている。また、一般的に電源回路のパワー半導体は、耐圧が現状1kV程度であるが、給電線14での電力損失を抑えるために、1kV以上の交流電圧で給電し、降圧部46で降圧して、パワー半導体が使用できる電圧とすることにより、効率の良い給電が可能となる。例えば、給電線14に供給する電圧を2~3kVとして、降圧部46で1kV以下に降圧する。このような電圧の変換は、交流ではトランスにより容易に実現できる。
【0101】
<実施例3>
図15は、交流電力を単相3線式で送電する場合の給電回路の構成を示す図である。商用電源である交流電源40を、トランスTにより単相3線式に変換している。トランスTの二次側巻線の中央から給電線14を引き出して中性線としている。中性線に対して上下の給電線14は逆位相で100Vの電圧であり、上下の給電線から電圧を取り出せば200Vとなる。図15に示した回路構成では、無人飛行体電源部24で中性線を接地し、電圧は上下の給電線から200Vとして取り出している。単相3線式の場合は、中性線に電流が流れないので、単相2線式の場合に対して、給電線14での電圧降下は1/4に抑えられる。
【0102】
<実施例4>
図16は、3相電力を、給電線14を介して送電するための給電回路の構成を示す図である。図16(A)は、3相電力を、給電線14を介して直接送電する回路構成を示している。電源供給部22には、商用の3相交流電源58が取り込まれ、給電線14を介して送電される。図16(B)は、単相の交流電源40からコンバータ60で三相に変換した回路構成を示している。図16(B)に示したように、3相交流電源58は、単相の交流電源40からコンバータ24により3相に変換してもよく、また、エンジン発電機から発電させてもよい。無人飛行体電源部24では、6個のダイオードD、D、D、D、D、Dで構成された整流ブリッジ48と平滑回路50の平滑コンデンサCにより、三相交流電圧からDC電圧に変換される。三相交流電圧は、3つの交流電圧波形の位相が120度ズレており、単相交流電圧よりも整流ブリッジでの脈流が少なく、効率よくDC電圧に変換できる。
【0103】
次に、スイッチング電源の回路構成を利用にした給電線でのスイッチング波形の伝送について説明する。スイッチング波形は、主に中周波領域及び高周波領域で使用される。
【0104】
図17は、給電線14でスイッチング波形を伝送する場合の無人飛行体10に関する電源システムのブロック図である。電源供給部22では、DC電源62をチョッパ回路60でオン・オフしたスイッチング波形が生成され、生成されたスイッチング波形は給電線に送られる。DC電源62は、交流(AC)を直流(DC)に変換するAC/DCコンバータを使用した電源でもよい。
【0105】
チョッパ回路で生成されたスイッチング波形は、無人飛行体10にある無人飛行体電源部24の平滑化回路50でDC電圧に変換される。変換されたDC電圧は、DC/DCコンバータ52により、受信機28、フライト制御回路26、機器制御回路30、搭載装置32やセンサ38に対して適合した電圧に変換され、供給される。無人飛行体10のプロペラを回転させるのは、例えば三相ブラシレスDCモータであり、DC/ACインバータ54により三相に変換されモータドライブ波形と、ESC36によるモータの制御により、プロペラの回転が制御され、無人飛行体10がDC電源62を使用した給電線14での電力伝送について、実施例を基に説明する。なお、無人飛行体10での回路構成は、無人飛行体電源部24における平滑回路50までの回路を示す。
【0106】
<実施例5>
図18は、DC電源62をチョッパ回路60で、三相交流電源に変換して給電線14に送電する給電回路の構成を示す図である。DC電源62には、入力コンデンサCinが並列に接続されている。チョッパ回路60は、3つのハイサイドスイッチング素子SW,SW,SWと,3つのローサイドスイッチング素子SW,SW,SWとから構成されている。ハイサイドスイッチング素子SWとローサイドスイッチング素子SW、ハイサイドスイッチング素子SWとローサイドスイッチング素子SW、ハイサイドスイッチング素子SWとローサイドスイッチング素子SWとがそれぞれ直列に接続され、それぞれの直列回路は、位相を120度ずらしてハイサイドスイッチング素子とローサイドスイッチング素子をオン・オフする制御が行われる。これにより三相交流波形を生成している。
【0107】
無人飛行体10で使用される電圧は、数10V程度である。EV(Electric Vehicle:電気自動車)の車載電池は、DC電圧が500V前後と高く、このため車載電池からの電圧を直接三相交流波形に変換して給電線14に送ることができる。無人飛行体電源部24では、ダイオードD~Dで構成される三相交流用の整流ブリッジ48と平滑回路50の平滑コンデンサCにより、DC電圧に変換される。
【0108】
スイッチング波形を利用した給電線14での電力の伝送は、各種DC/DCコンバータの回路構成が利用できる。DC/DCコンバータは、DC電圧をスイッチング素子によりスイッチング波形を生成し、平滑化により所望のDC電圧を得る回路構成である。スイッチングは、スイッチング周波数fによりスイッチング素子SWをオン・オフさせる動作であり、電圧の昇圧・降圧ができ、同期式と非同期式がある。
【0109】
以下に、DC電源62を使用した給電線14での電力伝送について、実施例を基に説明する。なお、無人飛行体10での回路構成は、無人飛行体電源部24における平滑回路50までの回路を示す。
【0110】
<実施例6>
図19は、降圧型DC/DCコンバータの回路構成を利用して、給電線14での電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。図19(A)は、非同期式の降圧型DC/DCコンバータの回路構成を利用した場合の構成を示している。DC電源62からのでDC電圧は、スイッチング素子SWによってスイッチング周波数fでオン・オフされる。ここで生成されたスイッチング波形は、給電線14を介して無人飛行体電源部24の平滑回路50に伝送される。平滑回路50は、直列に接続されたインダクタLと並列に接続された平滑コンデンサCとで構成されている。
【0111】
図19(B)は、同期式の降圧型DC/DCコンバータの回路構成を利用した場合の図である。同期式は、チョッパ回路にあるスイッチング素子SWとスイッチング素子SWがスイッチング周波数fに同期してオン・オフされる。平滑回路50は、非同期式と同様である。
【0112】
中周波領域においては、スイッチング周波数fは、給電線14の周波数特性を考慮して設定することが必要である。給電線14は周波数特性を有し、その伝送可能な周波数はカットオフ周波数で限定される。従って、スイッチング周波数fは、給電線14のカットオフ周波数以下であることが必要とされるが、ノイズは、給電線14の周波数特性を生かして、ノイズの周波数が給電線14のカットオフ周波数以上であれば、給電線14で減衰し、給電線14を有効に利用することができる。ノイズの周波数は高く、電源供給部22における回路基板の配線パターンに依存する寄生インダクタンスとESR(等価抵抗)、及びスイッチング素子の寄生容量が主な発生源となる。
【0113】
図20は、図19(B)で示した電源供給部22の回路における寄生インダクタンス、寄生容量を考慮した等価回路を示す図である。スイッチング素子は選択する素子の種類にもよるため、ここではパワーMOSFETとし、ハイサイドスイッチング素子SW及びローサイドスイッチング素子SWをパワーMOSFETとした。
【0114】
寄生要素は、入力コンデンサCinでは寄生インダクタンスLS1とESR(Equivalent Serial Resistance)である。ESRは配線にも存在し、図20ではまとめてESRとした。パワーMOSFETでは、ミラー容量とゲート容量は考慮せず、ボディダイオードと寄生容量を寄生要素とした。ハイサイドスイッチング素子SWでは、ボディダイオードDS1と寄生容量CS1を、ローサイドスイッチング素子SWでは、ボディダイオードDS2と寄生容量CS2を寄生要素として等価回路に示している。
【0115】
配線、レイアウト、ビア等にも寄生インダクタンスが発生するが、図20では配線の寄生インダクタンスLS2、LS3、LS4で示した。
【0116】
ハイサイドスイッチング素子SWとローサイドスイッチング素子SWのオン・オフは、ゲートドライブ信号により制御されるが、ノイズは、主にハイサイドスイッチング素子SWとローサイドスイッチング素子SWがオフする時に発生し易い。ハイサイドスイッチング素子SWがオンになると、DC電源62からハイサイドスイッチング素子SWを通して、ローサイドスイッチング素子SWの還流電流をキャンセルするように電流が流れ込む。
【0117】
ローサイドスイッチング素子SWの電流がゼロになってもローサイドスイッチング素子SWのボディダイオードDS2が有しているリカバリ機能により、蓄積されたキャリアがなくなるまでボディダイオードDS2に逆方向電流が流れる。このリカバリ電流は、入力コンデンサCin、ハイサイドスイッチング素子SWとローサイドスイッチング素子SWで構成されるループに流れる短絡電流iであり、ループに存在する全ての寄生容量にエネルギが蓄積される。
【0118】
このエネルギは、リカバリが働かなくなった瞬間に開放され、このときにループ内の寄生インダクタンスと寄生容量で共振が起き、サージやリンギングとなることにより、ノイズが発生する。ハイサイドスイッチング素子SWはオン状態で導通しているので、ハイサイドスイッチング素子SWの寄生容量CS1は関係なく、高周波リンギングの周波数は、ループの全ての寄生インダクタンスと寄生容量の共振周波数である。
【0119】
ハイサイドスイッチング素子SWとローサイドスイッチング素子SWのオフ時のノイズは一般的に数百MHzであり、高di/dtの電流サージとして入力コンデンサCin、ハイサイドスイッチング素子SWとローサイドスイッチング素子SWの高周波リンギングループを循環する。これによって、入力コンデンサCinにはdi/dtに依存したサージ電圧が発生し、ハイサイドスイッチング素子SWとローサイドスイッチング素子SWには、DC電源62の電圧Vに対応したdV/dtのリンギング電圧が発生する。ループを流れる高周波のリンギング電流は、ループの面積に依存した磁束を発生させ、この磁束が外部へ向かって放射されるため、電磁波として機器の基板のストリップラインやループにおいて電磁誘導を引き起こす。
【0120】
以上説明したように、電源供給部22で発生するノイズは周波数が高く、周波数特性を考慮して給電線14を選択することで十分に減衰させることができる。DC/DCコンバータの回路構成を利用した給電線14でのスイッチング波形の伝送は、他の回路構成でも有効である。
【0121】
図21は、非同期式昇圧型のDC/DCコンバータの回路構成を利用して、給電線14での電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。チョッパ回路60は、インダクタL、ダイオードDとスイッチング素子SWで構成されている。ダイオードDをスイッチング素子として同期式の構成であってもよい。無人飛行体電源部24での平滑回路50は、平滑コンデンサCが並列接続された回路構成である。スイッチング素子SWがオン・オフされ、スイッチング素子SWがオンのときインダクタにエネルギが蓄積され、スイッチング素子SWがオフのときインダクタに蓄積されたエネルギがダイオードDを介して放出されることにより昇圧する。ダイオードDをスイッチング素子SWに代えて同期式としてもよい。昇圧型の給電回路の構成は、使用するDC電源62の電圧が低い場合に有効である。
【0122】
図22は、フライバック型DC/DCコンバータの回路構成を利用して、給電線14での電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。給電回路は、フライバック型DC/DCコンバータ-タの回路構成を利用している。チョッパ回路60は、トランスTとスイッチング素子SWで構成され、DV電源62からのDC電圧をスイッチング素子SWが、トランスTを介してオン・オフしている。トランスTのコアに巻回された一次巻線は、スイッチング素子SWのドレインに接続されている。トランスTの一次側と二次側は、ドットで示したように逆極性としている。トランスTの二次側は給電線14に接続されている。無人飛行体電源部24にある平滑回路50は、直列接続されたダイオードDと、並列接続された平滑コンデンサCから構成されている。
【0123】
スイッチング素子SWのゲートにゲート電圧が印加され、オン状態になると、一次巻線に一次側電流が流れる。一次側電流が流れると、トランスTのコアに磁束が発生し、コアが磁化されてエネルギが蓄積される。このとき、二次側は、給電線14を介して接続されているダイオードDの向きが逆なので二次側の二次側電流は流れない。
【0124】
スイッチング素子SWが、ゲート電圧の遮断によりオフ状態になると、一次側電流は流れず、スイッチング素子SWのスイッチング素子電圧は、DC電源62の電圧が直接印加された状態となる。トランスTのコアに蓄積されたエネルギは開放されて、二次巻線からダイオードDに向かって流れる。エネルギが全て放出されたとき、即ち、二次側電流がゼロになったときに、再びスイッチング素子SWのゲートにゲート電圧が印加されオン状態になる。トランスTの一次巻線と二次巻線は、チョークコイルの機能を備えているため、ノイズが発生しにくい特徴がある。このため、高周波化を目的に、スイッチング素子SWは、GaN-HEMTを用いている。GaN-HEMTは高耐圧で高速化が可能なパワーデバイスであるスイッチング素子SWは、GaNトランジスタの他、SiCトランジスタからなる素子であってもよい。これらの高速パワー半導体は、スイッチング周波数fが1MHz以上可能なものもある。
【0125】
図23は、フォワード型DC/DCコンバータの回路構成を利用して、給電線14での電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。チョッパ回路60は、トランスTとスイッチング素子SWで構成され、DC電源62からのDC電圧を、スイッチング素子SWがトランスを介してオン・オフしている。トランスTのコアに巻回された一次巻線は、スイッチング素子SWのドレインに接続されている。トランスTの一次側と二次側は、ドットで示したように同じ極性である。トランスTの二次側は給電線14に接続されている。無人飛行体電源部24にある平滑回路50は、直列接続されたダイオードDと、並列接続された転流ダイオードD及び平滑コンデンサCから構成されている。
【0126】
スイッチング素子SWのゲートにゲート電圧が印加され、オン状態になると、一次巻線に一次側電流が流れる。一次側電流が流れると、トランスTのコアに磁束が発生し、二次側は、給電線14を介して接続されているダイオードDに二次側電流を流し、平滑コンデンサCに電流を供給する。ゲート電圧の遮断によりオフ状態になると、一次側電流は流れず、トランスTのコアに蓄積されたエネルギは、ダイオードDを介して平滑コンデンサCに電流を供給する。フォワード型は、トランスを片方向のみ励磁する方式であり、フライバック型と同様に、ノイズが発生しにくい特徴がある。
【0127】
図24は、フォワード型DC/DCコンバータの回路構成を利用しているが、トランスTを給電線14で代用して電力伝送を行う場合の給電回路の構成を示す図である。チョッパ回路60にはトランスTが無く、DC電源62とスイッチング素子SWのドレインが給電線14に接続されている。平滑回路50は、図23で示した回路と同様であるが、給電線14の受端に、負荷インピーダンスZを並列に接続している。
【0128】
高周波領域では、スイッチング周波数に対して給電線14の長さが無視できず、例えば、長さ100mの給電線14では、光速を3×10m/sとして、スイッチング周波数fに対応する波長λを給電線14の長さだとすると、スイッチング周波数は、3MHzとなる。給電線14の長さが、インピーダンス整合するλ/4では、波長が4倍となるので、スイッチング周波数fは、750kHzである。給電線14の長さを3000mとしても、λ/4の整合を考えると、スイッチング周波数fは、1MHzである。図24には、給電線14の長さとスイッチング波形のλ/4整合の状態を模式的に示している。
【0129】
前述したように、給電線14の長さとスイッチング波形の波長がλ/4で整合している場合は、負荷での電圧は、DC電源62の電圧に対してZ/Z倍となり、トランスと同様の効果を生じる。従って、フォワード型DC/DCコンバータの回路構成を利用して給電回路を構成した場合、トランスTに代えて給電線14をトランスTとした給電回路の構成ができる。これによってトランスTを無くすことができる。なお、給電線14にエネルギの蓄積が行われる訳ではないので、フライバック型DC/DCコンバータを利用した給電回路ではトランスTを給電線14で代用できない。
【0130】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0131】
f 周波数
スイッチング周波数
λ 波長
V 電圧
I 電流
W 電力
los 損失電力
R 給電線等価抵抗
Γ 反射係数
in 入力インピーダンス
特性インピーダンス
負荷インピーダンス
D,D、D,D、D,D、D ダイオード
平滑コンデンサ
in 入力コンデンサ
T,T,T,T トランス
SW,SW,SW,SW,SW,SW,SW スイッチング素子
L,L インダクタ
10 無人飛行体
12 ベースステーション
14 給電線
16 巻取部
18 プロポ送信機
20 地上電源部
22 電源供給部
24 無人飛行体電源部
26 フライト制御部
28 受信機
30 機器制御部
32 搭載機器
34 モータ
36 ESC
38 センサ
40 単相交流電源
42 三相交流電源
44 昇圧部
46 降圧部
48 整流ブリッジ
50 平滑回路
52 DC/DCコンバータ
54 DC/ACコンバータ
56 昇圧部
58 三相交流電源
60 チョッパ回路
62 DC電源
図1
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