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特許7399613冷却壁、ガス化炉、ガス化複合発電設備及び冷却壁の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】冷却壁、ガス化炉、ガス化複合発電設備及び冷却壁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F23M 5/08 20060101AFI20231211BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20231211BHJP
   F01K 23/14 20060101ALI20231211BHJP
   F23D 14/78 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
F23M5/08 A
F02C6/00 E
F01K23/14
F23D14/78 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018212150
(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2020079660
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小永吉 勇汰
(72)【発明者】
【氏名】豊丸 誠
(72)【発明者】
【氏名】室矢 健吾
(72)【発明者】
【氏名】中馬 文広
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146027(JP,A)
【文献】特開2017-155971(JP,A)
【文献】特開2014-152988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23M 5/08
F02C 6/00
F01K 23/14
F23D 14/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却媒体が流れる複数の冷却管の軸中心が並んで形成された壁面と、
前記壁面の一部に形成され、バーナが挿入され設置可能な開口部と、
を備え、
前記開口部を形成する前記複数の冷却管は、それぞれ直線形状部分と湾曲形状部分を有し、
前記直線形状部分の軸方向に延長した第1仮想軸が前記開口部と重なり合う第1冷却管と、
前記直線形状部分の軸方向に延長した第2仮想軸が前記開口部の外周よりも径方向外側に位置する第2冷却管と、
を有し、
前記第1冷却管の前記湾曲形状部分は、前記開口部の外周面に沿って、所定間隔以下で前記壁面から直交する方向に離隔して湾曲を形成して配置され、
前記第2冷却管の前記湾曲形状部分は、前記壁面と直交する方向に前記第1冷却管と離隔して湾曲を形成して配置されていて、
前記第1冷却管の前記湾曲形状部分は、前記所定間隔を前記第1冷却管の直径と同一長さのピッチ分として、前記壁面から直交する方向に離隔して配置される冷却壁。
【請求項2】
前記複数の冷却管の間にはフィンが配置され、
前記壁面は筒状に形成され、
前記壁面に対して内側では、前記バーナにより燃焼ガスが生成される請求項1に記載の冷却壁。
【請求項3】
前記壁面は筒状に形成され、
複数本の前記第2冷却管の前記湾曲形状部分が、前記第1冷却管に対して前記壁面の径方向外側に配置されている請求項1又は2に記載の冷却壁。
【請求項4】
前記開口部の周囲における前記壁面に対して内側に設置され、耐火材を有する密閉部を更に備える請求項1から3のいずれか1項に記載の冷却壁。
【請求項5】
前記開口部の周囲における前記壁面に対して外側に設置され、前記壁面の外側と前記バーナに接続した密閉容器を更に備え、前記密閉容器内部に耐火材が充填されている請求項1から4のいずれか1項に記載の冷却壁。
【請求項6】
前記密閉容器内の前記耐火材は、前記バーナの周囲に設置されたバーナ用冷却管から離隔して前記密閉容器を着脱可能に配置されている請求項5に記載の冷却壁。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の冷却壁を備えるガス化炉。
【請求項8】
炭素含有固体燃料を燃焼、ガス化することで生成ガスを生成する、請求項1から6のいずれか1項に記載の冷却壁を備えるガス化炉設備と、
前記ガス化炉設備で生成した生成ガスの少なくとも一部を燃焼させることで回転駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンから排出されたタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、
前記ガスタービン及び/又は前記蒸気タービンの回転駆動に連結された発電機と、
を備えているガス化複合発電設備。
【請求項9】
内部に冷却媒体が流れる複数の冷却管の軸中心を並べて壁面を形成するステップと、
バーナが挿入され設置可能な開口部を、それぞれ直線形状部分と湾曲形状部分を有する複数の冷却管によって形成するステップと、
を備え、
前記開口部を形成するステップは、
前記直線形状部分の軸方向に延長した第1仮想軸が前記開口部と重なり合う第1冷却管を、前記第1冷却管の前記湾曲形状部分が、前記開口部の外周面に沿って、所定間隔以下で前記壁面から直交する方向に離隔して湾曲を形成するように配置するステップと、
前記直線形状部分の軸方向に延長した第2仮想軸が前記開口部の外周よりも径方向外側に位置する第2冷却管を、前記第2冷却管の前記湾曲形状部分は、前記壁面と直交する方向に前記第1冷却管と離隔して湾曲を形成するように配置するステップと、
を有し、
前記第1冷却管を配置するステップは、前記第1冷却管の前記湾曲形状部分は、前記所定間隔を前記第1冷却管の直径と同一長さのピッチ分として、前記壁面から直交する方向に離隔して配置される冷却壁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却壁、ガス化炉、ガス化複合発電設備及び冷却壁の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス化炉設備として、石炭等の炭素含有固体燃料をガス化炉内に供給し、炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化することで、可燃性ガスを生成する炭素含有燃料ガス化設備(石炭ガス化設備)が知られている。
【0003】
例えばガス化炉は、内部に供給された石炭を粉砕した微粉炭である微粉燃料(炭素含有固体燃料)及びチャー(石炭の未反応分及び灰分)を酸化剤(空気、酸素)により部分燃焼させることでガス化させ、可燃性ガスを生成する。ガス化炉は、圧力容器と、圧力容器の内部に設けられるガス化炉壁とを有している。
【0004】
ガス化炉壁の内部の空間において、鉛直方向の下方側(つまり、生成ガスの流通方向の上流側)から順に、コンバスタ部、ディフューザ部、リダクタ部が形成されている。コンバスタ部におけるガス化炉壁には、複数のバーナが挿入されて配置されている。
【0005】
ガス化炉壁は、例えば、下記の特許文献1でも開示されているように、内部に水等の冷却媒体が流通する複数の冷却管(炉壁管)によって壁状に構成されており、バーナは、バーナ用冷却管によって取り囲まれて設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-152988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガス化炉壁は、複数の炉壁管(冷却管)の間に配置された金属板で構成されたフィンを有する。炉壁管とフィンは互いに溶接によって接合される(この構成は、メンブレン構造とも呼ばれる。)。これにより、ガス化炉壁の炉壁管内へと有効に伝熱させてガス化炉壁よりも外側への伝熱が低減し、ガス化炉壁よりも内側の内部空間の気密性が保たれる。また、2本の炉壁管の間のフィン幅は、炉壁管内への伝熱性から上限値(所定値)以下とされ、フィンの焼損が防止される。
【0008】
コンバスタ部におけるガス化炉壁には、バーナが挿入される開口部が、バーナの設置箇所に合わせて複数形成される。各開口部は、炉壁管の一部を炉外側に向かい周方向にも湾曲することによって形成されている。なお、開口部以外の領域では、炉壁管は、通常、直管のまま配置される。従来、開口部の周囲に配置される複数本の炉壁管は、上述したフィン幅が上限値を超えないように、かつ、複数本の炉壁管によって末広がりとなった略円錐台(立体)形状を形成するように、それぞれ管曲げ加工されて湾曲されている。
【0009】
また、バーナと炉壁管の間の隙間を小さくするため、湾曲に形成された炉壁管が配置されると共に、ガス化炉壁よりも炉外側にシールボックスが設置されることによって、内部空間からのガスの漏洩が防止される。さらに、シールボックス内部には、耐火材が充填される。
【0010】
上述した従来の開口部の周囲に配置される複数の炉壁管は、バーナ挿入用の開口部を形成するため、ガス化炉壁の壁面よりも炉外側に湾曲されて配置される。ここで、壁面とは、複数の炉壁管の直線状部分によって構成される面である。バーナの中心軸に近い炉壁管ほど、ガス化炉壁の壁面から遠い位置まで湾曲されており、複数の炉壁管は略円錐台形状でバーナを囲んでいる。略円錐台形状内部のバーナは、炉内部空間の高温ガスに曝される部分であり、かつ、バーナの先端はガス化炉壁の壁面部分よりも炉内部空間側へ突出して設置される。そのため、炉壁管とは別にバーナの周囲に筒形状を有するバーナ用冷却管が螺旋状に巻き付けられた状態で設置されており、冷却管は、バーナの高温化を防止している。
【0011】
また、略円錐台形状を形成する炉壁管の形状は複雑であり、かつ、バーナ外周との密着性を確保するための加工精度が要求される。さらに、シールボックス内部の耐火材が保たれるように、炉壁管を精度良く配置する必要がある。この点からも炉壁管は相応の加工精度が要求され、作業工数が増加するという問題がある。
【0012】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、炉壁内に配置されて炉内部の高温ガスに曝される部分を低減し、かつ、開口部構造を簡素化することが可能な冷却壁、ガス化炉、ガス化複合発電設備及び冷却壁の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の第1態様に係る冷却壁は、内部に冷却媒体が流れる複数の冷却管の軸中心が並んで形成された壁面と、前記壁面の一部に形成され、バーナが挿入され設置可能な開口部とを備え、前記開口部を形成する前記複数の冷却管は、それぞれ直線形状部分と湾曲形状部分を有し、前記直線形状部分の軸方向に延長した第1仮想軸が前記開口部と重なり合う第1冷却管と、前記直線形状部分の軸方向に延長した第2仮想軸が前記開口部外周よりも径方向外側に位置する第2冷却管とを有し、前記第1冷却管の前記湾曲形状部分は、前記開口部の外周面に沿って、前記壁面に沿った面内に湾曲を形成して配置され、又は、所定間隔以下で前記壁面から直交する方向に離隔して湾曲を形成して配置され、前記第2冷却管の前記湾曲形状部分は、前記壁面と直交する方向に前記第1冷却管と離隔して湾曲を形成して配置されている。
【0014】
これにより、第1冷却管の湾曲形状を複雑な形状とすることなく、壁面に沿って複数の第1冷却管に取り囲まれるように開口部を形成できる。そして、バーナは、壁面内に配置された第1冷却管を境にして、開口部に挿入して設置される。また、第2冷却管は湾曲形状を複雑な形状とすることなく、第1冷却管との干渉を回避できる。そのため、冷却管の湾曲された部分が壁面から突出して略円錐台状に配置された従来の構成と比べて、開口部構造を簡素化することが可能となる。
【0015】
上記第1態様において、前記第1冷却管の前記湾曲形状部分は、前記所定間隔を前記第1冷却管の直径と同一長さのピッチ分以下として、前記壁面から直交する方向に離隔して配置されてもよい。
【0016】
この構成によれば、第1冷却管の湾曲形状部分を壁面から離隔して配置することで、複数の第1冷却管の間に設けたフィンの間隔を所定間隔以上に広げずに第1冷却管が配置しやすくなるので、第1冷却管の伝熱量の減少を抑制できる。
【0017】
上記第1態様において、前記複数の冷却管の間にはフィンが配置され、前記壁面は筒状に形成され、前記壁面に対して内側では、前記バーナにより燃焼ガスが生成されてもよい。
【0018】
この構成によれば、複数の冷却管の間には、フィンが配置されて、壁面は筒状に形成されている。壁面の炉内側には、バーナにより燃焼ガスが生成される。そのため、冷却管の湾曲形状された部分が壁面から突出して略円錐台状に配置された従来の構成と比べて、バーナが高温の燃焼ガスに曝される部分が低減される。
【0019】
上記第1態様において、複数本の前記第1冷却管の前記湾曲形状部分が、前記壁面に沿った面内に配置されてもよい。
【0020】
この構成によれば、複数本の第1冷却管が壁面に沿った面内に配置され、簡易に開口部が形成される。
【0021】
上記第1態様において、複数本の前記第2冷却管の前記湾曲形状部分が、前記第1冷却管に対して前記壁面の径方向外側に配置されてもよい。
【0022】
この構成によれば、複数本の第2冷却管が複数の第1冷却管よりも壁面の径方向外側に配置されることから、簡易に開口部が形成される。
【0023】
上記第1態様において、前記開口部の周囲における前記壁面に対して内側に設置され、耐火材を有する密閉部を更に備えてもよい。
【0024】
この構成によれば、密閉部が耐火材を有し、開口部の周囲における壁面の内側に設置されることから、冷却壁における熱伝達を低下させることで、冷却管の間に設けるフィン幅の制約が低減されて、平面曲げ構造とすることができて簡易に開口部が形成される。
【0025】
上記第1態様において、前記開口部の周囲における前記壁面に対して外側に設置され、前記壁面の外側と前記バーナに接続した密閉容器を更に備え、前記密閉容器内部に耐火材が充填されてもよい。
【0026】
この構成によれば、密閉容器内に耐火材が充填され、密閉容器が開口部の周囲における壁面の炉外側とバーナの間に設置されることから、壁面の炉内側の空間からの燃焼ガスの漏洩を防止する。
【0027】
上記第1態様において、前記密閉容器内の前記耐火材は、前記バーナの周囲に設置されたバーナ用冷却管から離隔して前記密閉容器を着脱可能に配置されてもよい。
【0028】
この構成によれば、密閉容器内の耐火材がバーナ用冷却管と密着せず離隔して配置されることから、耐火材からバーナ用冷却管を取り外す際の交換を容易にすることができる。
【0029】
本発明の第2態様に係るガス化炉は、上記第1態様の冷却壁を備える。
【0030】
本発明の第3態様に係るガス化複合発電設備は、炭素含有固体燃料を燃焼、ガス化することで生成ガスを生成する、上記第1態様の前記冷却壁を備えるガス化炉設備と、前記ガス化炉設備で生成した生成ガスの少なくとも一部を燃焼させることで回転駆動するガスタービンと、前記ガスタービンから排出されたタービン排ガスを導入する排熱回収ボイラで生成した蒸気により回転駆動する蒸気タービンと、前記ガスタービン及び/又は前記蒸気タービンの回転駆動に連結された発電機とを備える。
【0031】
本発明の第4態様に係る冷却壁の製造方法は、内部に冷却媒体が流れる複数の冷却管の軸中心を並べて壁面を形成するステップと、バーナが挿入され設置可能な開口部を、それぞれ直線形状部分と湾曲形状部分を有する複数の冷却管によって形成するステップとを備え、前記開口部を形成するステップは、前記直線形状部分の軸方向に延長した第1仮想軸が前記開口部と重なり合う第1冷却管を、前記第1冷却管の前記湾曲形状部分が、前記開口部の外周面に沿って、前記壁面に沿った面内に湾曲を形成するように配置し、又は、所定間隔以下で前記壁面から直交する方向に離隔して湾曲を形成するように配置するステップと、前記直線形状部分の軸方向に延長した第2仮想軸が前記開口部外周よりも径方向外側に位置する第2冷却管を、前記第2冷却管の前記湾曲形状部分は、前記壁面と直交する方向に前記第1冷却管と離隔して湾曲を形成するように配置するステップとを有する。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、炉壁内に配置されて炉内部の高温ガスに曝される部分を低減し、かつ、開口部構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係るガス化炉壁を示す縦断面図であり、バーナが設置されているガス化炉壁の開口部を示している。
図2】本発明の一実施形態に係るガス化炉壁を示す横断面図であり、バーナが設置されているガス化炉壁の開口部を示している。
図3】本発明の一実施形態に係るガス化炉壁を示す正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備の概略構成である。
図5】本発明の一実施形態に係るガス化炉を示す概略構成図である。
図6】本発明の一実施形態に係るガス化炉壁の変形例を示す縦断面図であり、バーナが設置されているガス化炉壁の開口部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図4には、本実施形態に係るガス化炉設備を適用した石炭ガス化複合発電設備の概略構成図を示す。
なお、以下においては、上方及び下方の表現を用いて説明した各構成要素の位置関係は、各々鉛直上方側、鉛直下方側を示すものである。
【0035】
本実施形態に係るガス化炉設備14が適用される石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)1は、空気を酸化剤として用いており、ガス化炉設備14において、燃料から可燃性ガス(生成ガス)を生成する空気燃焼方式を採用している。そして、石炭ガス化複合発電設備1は、ガス化炉設備14で生成した生成ガスを、ガス精製設備26で精製して燃料ガスとした後、ガスタービン17に供給して発電を行っている。すなわち、実施形態1の石炭ガス化複合発電設備1は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備となっている。ガス化炉設備14に供給する燃料としては、例えば、石炭等の炭素含有固体燃料が用いられる。
【0036】
石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)1は、図4に示すように、給炭設備21と、ガス化炉設備14と、チャー回収設備25と、ガス精製設備26と、ガスタービン17と、蒸気タービン18と、発電機19と、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20とを備えている。
【0037】
給炭設備21は、原炭として炭素含有固体燃料である石炭が供給され、石炭を石炭ミル(図示略)などで粉砕することで、細かい粒子状に粉砕した微粉炭を製造する。給炭設備21で製造された微粉炭は、給炭ライン21a出口で後述する空気分離設備42にから供給される搬送用イナートガスとしての窒素ガスによって加圧されて、ガス化炉設備14へ向けて供給される。イナートガスとは、酸素含有率が約5体積%以下の不活性ガスであり、窒素ガスや二酸化炭素ガスやアルゴンガスなどが代表例であるが、必ずしも約5%以下に制限されるものではない。
【0038】
ガス化炉設備14は、給炭設備21で製造された微粉炭が供給されると共に、チャー回収設備25で回収されたチャー(石炭の未反応分と灰分)が戻されて再利用可能に供給されている。
【0039】
また、ガス化炉設備14には、ガスタービン17(圧縮機61)からの圧縮空気供給ライン41が接続されており、ガスタービン17で圧縮された圧縮空気の一部が昇圧機68で所定圧力に昇圧されてガス化炉101に供給可能となっている。空気分離設備42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43によって空気分離設備42とガス化炉設備14とが接続されている。そして、この第1窒素供給ライン43には、給炭設備21からの給炭ライン21aが接続されている。また、第1窒素供給ライン43から分岐する第2窒素供給ライン45もガス化炉設備14に接続されており、この第2窒素供給ライン45には、チャー回収設備25からのチャー戻しライン46が接続されている。さらに、空気分離設備42は、酸素供給ライン47によって、圧縮空気供給ライン41と接続されている。そして、空気分離設備42によって分離された窒素は、第1窒素供給ライン43及び第2窒素供給ライン45を流通することで、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用される。また、空気分離設備42によって分離された酸素は、酸素供給ライン47及び圧縮空気供給ライン41を流通することで、ガス化炉設備14において酸化剤として利用される。
【0040】
ガス化炉設備14は、例えば、2段噴流床形式のガス化炉101(図5参照)を備えている。ガス化炉設備14は、内部に供給された石炭(微粉炭)及びチャーを酸化剤(空気、酸素)により部分燃焼させることでガス化させ生成ガスとする。なお、ガス化炉設備14は、微粉炭に混入した異物(スラグ)を除去する異物除去設備48が設けられている。そして、このガス化炉設備14には、チャー回収設備25に向けて生成ガスを供給する生成ガスライン49が接続されており、チャーを含む生成ガスが排出可能となっている。この場合、図5に示すように、生成ガスライン49にシンガスクーラ102(ガス冷却器)を設けることで、生成ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収設備25に供給してもよい。
【0041】
チャー回収設備25は、集塵設備51と供給ホッパ52とを備えている。この場合、集塵設備51は、1つ又は複数のサイクロンやポーラスフィルタにより構成され、ガス化炉設備14で生成された生成ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された生成ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製設備26に送られる。供給ホッパ52は、集塵設備51で生成ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵設備51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
【0042】
ガス精製設備26は、チャー回収設備25によりチャーが分離された生成ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製設備26は、生成ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン17に供給する。なお、チャーが分離された生成ガス中にはまだ硫黄分(H2Sなど)が含まれているため、このガス精製設備26では、アミン吸収液などによって硫黄分を除去回収して、有効利用する。
【0043】
ガスタービン17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を備えており、圧縮機61とタービン63とは、回転軸64により連結されている。燃焼器62には、圧縮機61からの圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製設備26からの燃料ガス供給ライン66が接続され、また、タービン63に向かって延びる燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン17は、圧縮機61からガス化炉設備14に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。したがって、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気の一部とガス精製設備26から供給された燃料ガスの少なくとも一部とを混合して燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、発生させた燃焼ガスをタービン63へ向けて供給する。そして、タービン63は、供給された燃焼ガスにより回転軸64を回転駆動させることで発電機19を回転駆動させる。
【0044】
蒸気タービン18は、ガスタービン17の回転軸64に連結されるタービン69を備えており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17(タービン63)からの排ガスライン70が接続されており、給水とタービン63の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そして、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられると共に蒸気回収ライン72が設けられ、蒸気回収ライン72に復水器73が設けられている。また、排熱回収ボイラ20で生成する蒸気には、ガス化炉101のシンガスクーラ102で生成ガスと熱交換して生成された蒸気を含んでもよい。したがって、蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が回転駆動し、回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。
【0045】
そして、排熱回収ボイラ20の出口から煙突75までには、ガス浄化設備74を備えている。
【0046】
ここで、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1の作動について説明する。
【0047】
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備1において、給炭設備21に原炭(石炭)が供給されると、石炭は、給炭設備21において細かい粒子状に粉砕されることで微粉炭となる。給炭設備21で製造された微粉炭は、空気分離設備42から供給される窒素により第1窒素供給ライン43を流通してガス化炉設備14に供給される。また、後述するチャー回収設備25で回収されたチャーが、空気分離設備42から供給される窒素により第2窒素供給ライン45を流通してガス化炉設備14に供給される。さらに、後述するガスタービン17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離設備42から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン41を通してガス化炉設備14に供給される。
【0048】
ガス化炉設備14では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、生成ガスを生成する。そして、この生成ガスは、ガス化炉設備14から生成ガスライン49を通って排出され、チャー回収設備25に送られる。
【0049】
このチャー回収設備25にて、生成ガスは、まず、集塵設備51に供給されることで、生成ガスに含有する微粒のチャーが分離される。そして、チャーが分離された生成ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製設備26に送られる。一方、生成ガスから分離した微粒のチャーは、供給ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通ってガス化炉設備14に戻されてリサイクルされる。
【0050】
チャー回収設備25によりチャーが分離された生成ガスは、ガス精製設備26にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給する。この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製設備26から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスによりタービン63を回転駆動することで、回転軸64を介して圧縮機61及び発電機19を回転駆動する。このようにして、ガスタービン17は発電を行うことができる。
【0051】
そして、排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17におけるタービン63から排出された排ガスと給水とで熱交換を行うことにより蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン18に供給する。蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を回転駆動することで、回転軸64を介して発電機19を回転駆動し、発電を行うことができる。
なお、ガスタービン17と蒸気タービン18は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動してもよい。
【0052】
その後、ガス浄化設備74では排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排気ガスが煙突75から大気へ放出される。
【0053】
以下に、本実施形態に係るガス化炉について、図面を参照して説明する。図5には、本実施形態に係るガス化炉の概略構成図を示す。本実施形態に係るバーナは、図5に示されているガス化炉101等に設けられる。
【0054】
ガス化炉101は、鉛直方向に延びて形成されており、鉛直方向の下方側に微粉炭及び酸素が供給され、部分燃焼させてガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通している。ガス化炉101は、圧力容器110と、圧力容器110の内部に設けられるガス化炉壁(冷却壁)111とを有している。そして、ガス化炉101は、圧力容器110とガス化炉壁111との間の空間にアニュラス部115を形成している。また、ガス化炉101は、ガス化炉壁111の内部の空間において、鉛直方向の下方側(つまり、生成ガスの流通方向の上流側)から順に、コンバスタ部116、ディフューザ部117、リダクタ部118を形成している。
【0055】
圧力容器110は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、上端部にガス排出口121が形成される一方、下端部(底部)にスラグホッパ122が形成されている。ガス化炉壁111は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、その壁面が圧力容器110の内面と対向して設けられている。本実施形態では圧力容器110は円筒形状で、ガス化炉壁111のディフューザ部117も円筒形状に形成されている。そして、ガス化炉壁111は、図示しない支持部材により圧力容器110内面に連結されている。
【0056】
ガス化炉壁111は、圧力容器110の内部を内部空間154と外部空間156に分離する。ガス化炉壁111は、後述するが、横断面形状がコンバスタ部116とリダクタ部118との間のディフューザ部117で変化する形状とされている。ガス化炉壁111は、鉛直上方側となるその上端部が、圧力容器110のガス排出口121に接続され、鉛直下方側となるその下端部が圧力容器110の底部と隙間を空けて設けられている。そして、圧力容器110の底部に形成されるスラグホッパ122には、貯留水が溜められており、ガス化炉壁111の下端部が貯留水に浸水することで、ガス化炉壁111の内外を封止している。ガス化炉壁111には、バーナ126、127が挿入され、内部空間154にシンガスクーラ102が配置されている。ガス化炉壁111の構造については後述する。
【0057】
アニュラス部115は、圧力容器110の内側とガス化炉壁111の外側に形成された空間、つまり外部空間156であり、空気分離設備で分離された不活性ガスである窒素が、図示しない窒素供給ラインを通って供給される。このため、アニュラス部115は、窒素が充満する空間となる。なお、このアニュラス部115の鉛直方向の上部付近には、ガス化炉101内を均圧にするための図示しない炉壁内均圧管が設けられている。炉壁内均圧管は、ガス化炉壁111の内外を連通して設けられ、ガス化炉壁111の内部(コンバスタ部116、ディフューザ部117及びリダクタ部118)と外部(アニュラス部115)との圧力差が所定圧力以内となるように略均圧にされている。
【0058】
コンバスタ部116は、微粉炭及びチャーと空気とを一部燃焼させる空間となっており、コンバスタ部116におけるガス化炉壁111には、複数のバーナ126からなる燃焼装置が配置されている。コンバスタ部116で微粉炭及びチャーの一部を燃焼した高温の燃焼ガスは、ディフューザ部117を通過してリダクタ部118に流入する。
【0059】
リダクタ部118は、ガス化反応に必要な高温状態に維持されコンバスタ部116からの燃焼ガスに微粉炭を供給し部分燃焼させて、微粉炭を揮発分(一酸化炭素、水素、低級炭化水素等)へと分解してガス化されて生成ガスを生成する空間となっており、リダクタ部118におけるガス化炉壁111には、複数のバーナ127からなる燃焼装置が配置されている。
【0060】
シンガスクーラ102は、ガス化炉壁111の内部に設けられると共に、リダクタ部118のバーナ127の鉛直方向の上方側に設けられている。シンガスクーラ102は熱交換器であり、ガス化炉壁111の鉛直方向の下方側(生成ガスの流通方向の上流側)から順に、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134が配置されている。これらのシンガスクーラ102は、リダクタ部118において生成された生成ガスと熱交換を行うことで、生成ガスを冷却する。また、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134は、図に記載されたその数量を限定するものではない。
【0061】
ここで、上述のガス化炉101の動作について説明する。
ガス化炉101において、リダクタ部118のバーナ127により窒素と微粉炭が投入されて点火されると共に、コンバスタ部116のバーナ126により微粉炭及びチャーと圧縮空気(酸素)が投入されて点火される。すると、コンバスタ部116では、微粉炭とチャーの燃焼により高温燃焼ガスが発生する。また、コンバスタ部116では、微粉炭とチャーの燃焼により高温ガス中で溶融スラグが生成され、この溶融スラグがガス化炉壁111へ付着すると共に、炉底へ落下し、最終的にスラグホッパ122内の貯水へ排出される。そして、コンバスタ部116で発生した高温燃焼ガスは、ディフューザ部117を通ってリダクタ部118に上昇する。このリダクタ部118では、ガス化反応に必要な高温状態に維持されて、微粉炭が高温燃焼ガスと混合し、高温の還元雰囲気において微粉炭を部分燃焼させてガス化反応が行われ、生成ガスが生成される。ガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通する。
【0062】
バーナ126は、コンバスタ部116の周囲に複数設けられており、図1図3にはそのうちの1つのバーナ126が示されている。ガス化炉壁111は、複数の炉壁管9が並んで筒状になるように構成され、複数の炉壁管9の直線形状部分の中心軸が周方向に並んで配置される位置を壁面111Sとしている。バーナ126は、ガス化炉壁111に形成された開口部11に挿通され設置されている。ガス化炉壁111は、上下方向に延在して平行に設けられた複数の炉壁管(冷却管)9と、隣り合う炉壁管9同士を接続するフィン10とから構成されている。炉壁管9内には冷却水が流れるようになっている。ガス化炉壁111に形成される開口部11は、炉壁管9の一部を湾曲させることによって形成されている。
【0063】
具体的には、開口部11に相当する領域に炉壁管9が配置されないように、炉壁管9の一部分である第1炉壁管9Aをバーナ126の径方向外側方向に壁面111Sの位置に沿うように湾曲して形成されている。隣り合う第1炉壁管9Aも順次湾曲して形成されることにより、図3に示したような開口部11が形成される。
【0064】
バーナ126は、炉壁外から炉壁内にわたって配置されるバーナ本体5と、このバーナ本体5の周りに巻回されたバーナ用冷却管7とを備えている。
バーナ本体5内には、微粉炭などの微粉燃料や空気(一次空気や二次空気)が流通し、バーナ本体5から供給された微粉燃料及び空気によって炉壁内にて火炎が形成され燃焼ガスが発生する。
【0065】
バーナ用冷却管7は、内部に冷却水(冷却媒体)が流通する。バーナ用冷却管7は、伝熱性を得るためにバーナ本体5の外周面に沿ってバーナ本体5を取り囲むように配置されている。バーナ用冷却管7の設置領域は、バーナ本体5の先端5aからガス化炉壁111側にかけて、より具体的にはバーナ本体5の先端5aから開口部11近傍でかつ開口部11よりも炉壁外側に入った位置にかけて設けられている。
【0066】
上記構成によるバーナ126は、以下のように使用される。
図示しない供給源から微粉燃料及び空気がバーナ本体5内に供給され、バーナ本体5内で所定の空気比にて調整され混合された混合気がバーナ本体5の先端5aから噴出される。バーナ本体5から噴出された混合気は、炉壁内にて、既に形成されている燃料領域に投入され、所望の燃焼状態が維持される。
炉壁内に形成された火炎による燃焼熱からバーナ本体5を保護するため、バーナ用冷却管7内に冷却水が流される。冷却水は図示しない冷却水源からバーナ用冷却管7に供給され、バーナ本体5の先端5a側から基端5b側へと流通される。
【0067】
次に、本実施形態に係るガス化炉壁111の開口部構造について説明する。
【0068】
ガス化炉壁111に形成される開口部11は、上述したとおり、炉壁管9の一部を湾曲させることによって形成されている。具体的には、開口部11に相当する位置の炉壁管9の一部分をバーナ126の側方に湾曲して形成させる。隣り合う炉壁管9も順次湾曲して形成させることにより、図3に示したような開口部11が形成される。
【0069】
複数の炉壁管9は、ガス化炉壁111の筒状の内径が一定の領域では、直線状部分が互いに平行になるように鉛直上下方向に配置されて、ガス化炉壁111を構成する。ガス化炉壁111は、鉛直上下方向に対して垂直方向に切断した横断面が例えば円環形状である。
【0070】
ガス化炉壁111を構成する複数の炉壁管9のうち、開口部11付近の複数の炉壁管9には、直線形状部分と湾曲形状部分がある。この湾曲形状部分は、直線形状部分が軸方向に延長した仮想軸(第1仮想軸)が開口部11に重なり合う第1炉壁管(第1冷却管)9Aがある。これらの第1炉壁管9Aは、バーナ126が挿入して設置可能とする開口部11を形成するため、第1炉壁管9Aは、直線形状部分の軸方向に対して湾曲した湾曲形状となっている。開口部11は、複数の湾曲形状部分の第1炉壁管9Aの外周面に沿って順次に湾曲して取り囲まれるように形成される。
【0071】
直線形状部分の軸方向に延長した仮想軸が開口部11に重なり合う第1炉壁管9Aの数は、開口部11の大きさや炉壁管9の直径、ピッチ等によって異なる。複数本の第1炉壁管9Aは、湾曲形状部分が炉壁管9に沿った壁面内に配置される。第1炉壁管9Aは、平面曲げ構造で形成される。これにより、第1炉壁管9Aの湾曲形状を複雑な形状とすることなく、複数の炉壁管9が取り囲むように簡易に開口部11が形成される。
【0072】
複数の第1炉壁管9Aには、直線形状部分の軸方向に延長した第1仮想軸が開口部11の中心軸に最も近い位置と重なり合う第1炉壁管9A-1がある。この第1炉壁管9A-1の湾曲形状部分が、バーナ126の外周面に最も近い位置で、バーナ126の最外周面に沿って設置されるように開口部11を形成する。直線形状部分の軸方向に延長した仮想軸が開口部11の中心軸から2番目に近い位置で重なり合う第1炉壁管9A-2は、湾曲形状部分が、上述したバーナ126の外周面に最も近い位置で開口部11を形成する第1炉壁管9A-1よりもバーナ126中心軸から径方向外側に離間しており、バーナ126の最外周面に沿って設置された第1炉壁管9A-1に隣接して設置される。
【0073】
直線形状部分の軸方向に延長した仮想軸が開口部11に相当する領域を通過する第1炉壁管9A(例えば第1炉壁管9A-3,9A-4)は、順次、バーナ126の径方向外側において、中心側の第1炉壁管9A-2,9A-3に隣接して配置される。これらの第1炉壁管9Aは、いずれもバーナ126の最外周面の形状に沿って設置され、例えば、第1炉壁管9Aの湾曲形状部分の一部と合致する仮想円の中心が、バーナ126の最外周面に接する仮想円と同じ中心となるように設置されてもよい。
【0074】
さらに、第1炉壁管9Aの湾曲形状部分は、複数の炉壁管9の直線形状部分の中心軸が並んで配置される位置となる壁面111Sに沿った面内に配置される。そのため、バーナ126は、壁面111Sに沿って配置された第1炉壁管9Aを境にして、炉内側と炉外側に配置される。そして、バーナ126は、バーナ本体5の先端5aから、バーナ126と壁面111Sが交差する位置までの間の領域が炉の内部空間に配置される。したがって、炉壁管9の湾曲形状部分が壁面111Sから炉外側へと突出して略円錐台状に配置された従来の構成と比べて、ガス化炉101の内部空間に配置されたバーナ本体5が高温の燃焼ガスに曝される部分が低減される。
【0075】
なお、図6に示すように、第1炉壁管9Aの湾曲形状部分は、ガス化炉壁111の壁面111Sに沿って配置される場合に限定されず、壁面111Sから所定距離以下で離隔して筒状のガス化炉壁111の径方向に拡がるように、径方向外側に配置されてもよい。この場合、所定距離は、壁面111Sと湾曲形状部分との間のピッチとして、第1炉壁管9Aの直径と同一長さ以下である。すなわち、第1炉壁管9Aの湾曲形状部分は、所定距離として、第1炉壁管9Aの直径と同一長さのピッチ分以下で壁面111Sから離隔して径方向外側に配置されてもよい。
【0076】
上述した変形例では、第1炉壁管9Aの湾曲形状部分は、壁面111Sから離隔して筒状のガス化炉壁111の径方向に拡がるように、径方向外側に配置される。これにより、複数の第1炉壁管9Aの間に設けたフィン10の間を所定間隔以上に広げることなく、第1炉壁管9Aを配置しやすくできるので、第1炉壁管9Aの伝熱量の減少を抑制できる。
【0077】
ガス化炉壁111を構成する複数の炉壁管9には、直線形状部分の軸方向に延長した仮想軸が開口部11に相当する領域の外周よりも外径側(径方向に外側)で重なり合うものがある。これらの炉壁管9のうち開口部11の近傍で重なり合う第2炉壁管9Bは、直線形状部分に延長させるのみで配置しようとすると、上述した第1炉壁管9Aと干渉する。したがって、第2炉壁管9Bは、直線形状部分の軸方向に対して開口部11の外径側に湾曲した湾曲形状を有する。第1炉壁管9Aの湾曲形状部分は壁面111Sに沿って配置され、第2炉壁管9Bの湾曲形状部分は第1炉壁管9Aよりも炉外側に配置されて、第1炉壁管9Aと第2炉壁管9Bの干渉が回避される。
【0078】
第2炉壁管9Bの数は、第1炉壁管9Aの数や湾曲形状等に応じて異なる。複数本の第2炉壁管9Bは、湾曲形状部分が第1炉壁管9Aの湾曲形状部分に対して壁面111Sの外径側(炉外側)の面内に配置される。第2炉壁管9Bは、平面曲げ構造で形成される。これにより、第2炉壁管9Bの湾曲形状を複雑な形状とすることなく、簡易に開口部11が形成される。
【0079】
第2炉壁管9Bは、湾曲形状部分が、ガス化炉壁111の壁面111Sに対して第1炉壁管9Aよりも炉外側において、第1炉壁管9Aに沿って配置される。これにより、第2炉壁管9Bは、第1炉壁管9Aとの干渉を回避できる。
【0080】
湾曲形状部分において、2本の第1炉壁管9Aの間、又は、2本の第2炉壁管9Bの間には、金属板によるフィン10が配置される。直線形状部分において、2本の炉壁管9の間については、同様にフィン10が配置される。一方、その直線形状部分の延長上における湾曲形状部分において、1本の第1炉壁管9Aと、その第1炉壁管9Aに隣接する1本の第2炉壁管9Bの間については、フィン10の設置を不要としてもよい。
【0081】
開口部11の周囲における壁面111Sの炉内側には、耐火材による密閉部16が設置される。これにより、開口部11の周囲において、ガス化炉壁111における熱伝達を低下させることができる。このため、炉壁管9,第1炉壁管9A及び第2炉壁管9Bの間に設けるフィン10幅の伝熱特性からの制約が低減されて、壁面111Sに沿った面内に炉壁管9が配置され、簡易に開口部11が形成される。
【0082】
また、耐火材による密閉部16は、フィン10が配置されない部分があった場合でも、内部空間からのガスの漏洩を防止することができる。耐火材としては、例えばアルミナ系やSiC系が好適に用いられる。
耐火材による密閉部16は開口部11の周囲に限らず、例えばコンバスタ部116の壁面111Sの炉内側全周面にわたり、耐火材による密閉部16を設置してもよい。
【0083】
炉壁外側には、炉壁管9によって形成された開口部11を覆うようにシールボックス(密閉容器)13が設けられている。シールボックス13は、例えばステンレス製である。シールボックス13内には、耐火材15が充填されている。耐火材15としては、例えばアルミナ系やSiC系が好適に用いられる。
【0084】
これにより、開口部11の周囲において、内部空間からのガスの漏洩を防止し、ガス化炉壁111の外側に向かう熱伝達量を低下させることができる。また、これらシールボックス13及び耐火材15により、加圧された炉壁内の圧力を維持すると共に、バーナ126と開口部11との隙間からガス化炉壁111の外へと漏出しようとする輻射熱やスラグ類が更に外部へと漏出しないようになっている。
【0085】
シールボックス13内部に充填される耐火材15は、バーナ本体5の周囲に設置されたバーナ用冷却管7と密着せずに、バーナ用冷却管7から離隔して隙間を設けて配置されることが望ましい。これにより、耐火材15からバーナ用冷却管7を取り外す際のバーナ用冷却管7のみを着脱可能として容易に交換することができる。
【0086】
上述した本実施形態に係る開口部11は、以下のように形成される。
【0087】
まず、第1炉壁管9A及び第2炉壁管9Bを所定の形状を有するように平面曲げ加工して湾曲形状部分を形成する。本実施形態では、炉壁管9を形成するための配管を立体形状で湾曲加工する必要がない。
【0088】
複数の炉壁管9は、図3に示すように、ガス化炉壁111の筒状の内径が一定の領域では、直線状部分が互いに平行になるように配置される。ガス化炉壁111が、鉛直上下方向に対して垂直方向に切断した横断面が例えば円環形状である場合、複数の炉壁管9は、直線形状部分が円環形状に配置される。
【0089】
複数の炉壁管9のうち、直線形状部分の軸方向に延長した仮想軸が開口部11に該当する領域と重なり合う第1炉壁管9Aは、湾曲形状部分が、バーナ126の最外周面を取り囲むように、バーナ126が設置可能に挿通された開口部11を形成する。第1炉壁管9Aのうち、直線形状部分の軸方向に延長した仮想軸が開口部11の中心軸に最も近い位置で配置される第1炉壁管9A-1が、バーナ126の最外周面に最も近い位置で、バーナ126の外周面に沿って設置される。
【0090】
このとき、第1炉壁管9A-1の湾曲形状部分は、複数の炉壁管9の直線形状部分によって構成される壁面111Sに沿った面内に配置される。なお、図6に示すように、第1炉壁管9Aの湾曲形状部分は、第1炉壁管9Aの直径と同一長さのピッチ分以下で壁面111Sから離隔して筒状のガス化炉壁111の径方向外側に拡がるように配置される場合もある。
【0091】
次に、直線形状部分の軸方向に延長した仮想軸が開口部11に重なり合う領域の中心軸から2番目に近い位置を通過する第1炉壁管9A-2が、上述したバーナ126の外周面に最も近い位置に配置された第1炉壁管9A-1よりも開口部11の径方向外側で、第1炉壁管9A-1に沿って設置される。また、この第1炉壁管9A-2についても、複数の炉壁管9の直線形状部分によって構成される壁面111Sに沿った面内、又は、第1炉壁管9Aの直径と同一長さのピッチ分以下で壁面111Sから離隔して筒状のガス化炉壁111の径方向外側に拡がるように配置される。
【0092】
このようにして、直線形状部分の軸方向に延長した仮想軸が開口部11に相当する領域と重なり合う第1炉壁管9Aは、順次、バーナ126の外周面の径方向外側において、中心軸側の第1炉壁管9Aに隣接して配置される。これらの第1炉壁管9Aは、いずれもバーナ126の外周面に沿って、例えば、第1炉壁管9Aの湾曲形状部分の一部と合致する仮想円の中心が、バーナ126の外周面に接する仮想円と同じ中心となるように設置されてもよい。
【0093】
また、複数の炉壁管9のうち、直線形状部分の軸方向に延長した仮想軸が開口部11に相当する領域よりも径方向外側と重なり合う第2炉壁管9Bを配置する。これらの炉壁管9のうち開口部11の近傍を通過する第2炉壁管9Bは、第1炉壁管9Aと干渉しないように、湾曲形状部分の炉内側に壁面111Sに沿って第1炉壁管9Aが配置されるように設置される。このとき、第2炉壁管9Bは、湾曲形状部分が、ガス化炉壁111の壁面111Sに対して第1炉壁管9Aよりも炉外側において、第1炉壁管9Aに沿って配置される。これにより第1炉壁管9Aと第2炉壁管9Bの干渉が回避される。
【0094】
また、複数の第1炉壁管9Aの間や複数の第2炉壁管9Bの間には、フィン10が溶接によって第1炉壁管9A又は第2炉壁管9Bに対して接合される。
【0095】
上述したとおり、第1炉壁管9Aと第2炉壁管9Bを配置することによって、開口部11が形成される。開口部11には、後でバーナ本体5とバーナ用冷却管7を開口部11内に設置できるようにする。バーナ用冷却管7は、ガス化炉壁111の設置現場とは別の場所で円筒形状に製作され、ガス化炉壁111の設置現場では、取り付け作業が行われる。
【0096】
次に、開口部11の周囲における壁面111Sの炉内側において、耐火材による密閉部16を設置する。また、開口部11の周囲における壁面111Sの外側において、シールボックス13を設置する。シールボックス13が所定の位置に設置されたのち、シールボックス13の内部には、バーナ用冷却管7を設置し、耐火材15が充填される。密閉部16の耐火材や、シールボックス13の耐火材15は、例えば、現場において型枠やシールボックス13内に流し込まれることによって充填され、硬化される。そして、バーナ本体5がバーナ用冷却管7の内部に挿入されて、バーナ126がガス化炉壁111に設置される。
【0097】
以上、本実施形態によれば、従来の構成と異なり、開口部11の周囲に炉壁管9の湾曲形状部分が略円錐台状に配置されず、直線形状部分で構成される壁面111Sに沿った面上に、第1炉壁管9Aの湾曲形状部分が配置される。その結果、ガス化炉壁111の内部空間へ突出するバーナ126の周囲に第1炉壁管9Aが配置されるので、従来の略円錐台状の配置と比較して、火炎に曝される範囲が狭くなる。そのため、バーナ本体5の外周面に沿って設置される円筒状のバーナ用冷却管7の長さも低減できる。バーナ用冷却管7の長さが短くできると、配管の巻き数が低減される。バーナ本体5とバーナ用冷却管7の間は、密着性の管理が要求され、精度の高いバーナ用冷却管7を形成する必要がある。螺旋状の配管の巻き数が少ないことで、バーナ用冷却管7の製作に必要な作業が簡易化され、作業工数が低減する。
【0098】
また、上述したとおり、ガス化炉壁111の内部空間へ突出するバーナ本体5及びバーナ用冷却管7において、火炎に曝される範囲が狭くなるため、従来の構成に比べて、バーナ用冷却管7のメタル表面温度が低下する。さらに、バーナ用冷却管7の長さが短くなるため、冷却水の圧力損失も低減されてバーナ用冷却管7の使用寿命が向上する。
【0099】
なお、上記実施形態では、微粉炭から可燃性ガスを生成する石炭ガス化炉を備えたIGCCを一例として説明したが、本発明のガス化炉設備は、例えば間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ等のバイオマス燃料など、他の炭素含有固体燃料をガス化するものにも適用可能である。また、本発明のガス化炉設備は、発電用に限らず、所望の化学物質を得る化学プラント用ガス化炉にも適用可能である。
さらに、本発明の冷却壁は、一般的なボイラの火炉壁としても適用可能である。
【0100】
また、上述した実施形態では、燃料として石炭を使用したが、高品位炭や低品位炭など他の炭素含有固体燃料であっても適用可能であり、また、石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
【0101】
なお、本実施形態はガス化炉101として、タワー型ガス化炉について説明してきたが、ガス化炉101はクロスオーバー型ガス化炉でも、ガス化炉101内の各機器の鉛直上下方向を生成ガスのガス流れ方向を合わせるように置き換えることで、同様に実施が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 :石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)
5 :バーナ本体
5a :先端
5b :基端
7 :バーナ用冷却管
9 :炉壁管(冷却管)
9A,9A-1,9A-2,9A-3 :第1炉壁管(第1冷却管)
9B :第2炉壁管(第2冷却管)
10 :フィン
11 :開口部
13 :シールボックス
14 :ガス化炉設備
15 :耐火材
16 :密閉部
17 :ガスタービン
18 :蒸気タービン
19 :発電機
20 :排熱回収ボイラ
21 :給炭設備
21a :給炭ライン
25 :チャー回収設備
26 :ガス精製設備
42 :空気分離設備
48 :異物除去設備
51 :集塵設備
52 :供給ホッパ
61 :圧縮機
62 :燃焼器
63 :タービン
64 :回転軸
68 :昇圧機
69 :タービン
73 :復水器
74 :ガス浄化設備
75 :煙突
101 :ガス化炉
102 :シンガスクーラ(熱交換器)
110 :圧力容器
111 :ガス化炉壁(冷却壁)
111S :壁面
115 :アニュラス部
116 :コンバスタ部
117 :ディフューザ部
118 :リダクタ部
121 :ガス排出口
122 :スラグホッパ
126,127 :バーナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6