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  • 特許-外壁パネルおよび外壁パネルの施工方法 図1
  • 特許-外壁パネルおよび外壁パネルの施工方法 図2
  • 特許-外壁パネルおよび外壁パネルの施工方法 図3
  • 特許-外壁パネルおよび外壁パネルの施工方法 図4
  • 特許-外壁パネルおよび外壁パネルの施工方法 図5
  • 特許-外壁パネルおよび外壁パネルの施工方法 図6
  • 特許-外壁パネルおよび外壁パネルの施工方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】外壁パネルおよび外壁パネルの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/92 20060101AFI20231211BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20231211BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20231211BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
E04B2/92
E04B2/56 602F
E04F13/08 101Q
E04B1/76 500B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018243991
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105754
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅司
(72)【発明者】
【氏名】松本 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】橘 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 栄紀
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-256736(JP,A)
【文献】特開2001-032422(JP,A)
【文献】特開平11-036495(JP,A)
【文献】特開平07-207792(JP,A)
【文献】特開平04-097049(JP,A)
【文献】特開平04-097050(JP,A)
【文献】特開2012-172333(JP,A)
【文献】特開2016-094790(JP,A)
【文献】特開2019-011647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56-2/70,2/88-2/96
E04F 13/08
E04C 2/26
E04B 1/76,1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の出隅コーナーに取り付けられる外壁パネルであって、
交差する二面を有する外壁面材が上下に複数並べられて下地材で互いに連結されており、
上記二面における各面の集合である各外壁部には、少なくとも当該外壁パネルの高さ位置を調整する調整機能を有し、上記下地材に回転不能に固定されているファスナーが、水平方向に互いに離間して2個以上設けられており、
上記ファスナーが、いずれかのファスナーを支点とし、他のファスナーを力点とし、当該外壁パネルの出隅角を作用点として、当該外壁パネルの出隅角の位置調整が行えるように配置されており、
上記支点となるファスナーが、上記外壁パネルを少なくとも面内で回転可能とした状態で建物躯体に仮固定する構造を備えており、
上記力点となるファスナーが、上記外壁パネルに押し上げ力を作用させて上記外壁パネルを上方向に移動させる構造部および上記外壁パネルに押し下げ力を作用させて上記外壁パネルを下方向に移動させる構造部を備えていることを特徴とする外壁パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁パネルにおいて、上記ファスナーは、各外壁部における上記出隅コーナーの隅柱に対面しない箇所に設けられていることを特徴とする外壁パネル。
【請求項3】
請求項2に記載の外壁パネルにおいて、各外壁部における上記出隅コーナーの隅柱に対面しない位置に上記下地材として縦胴縁を2本以上備えており、上記ファスナーが上記縦胴縁に設けられていることを特徴とする外壁パネル。
【請求項4】
請求項2に記載の外壁パネルにおいて、各外壁部における上記出隅コーナーの隅柱に対面しない位置に上記下地材として縦胴縁を備えるとともに、上記外壁部が交差する箇所に上記下地材として交差部縦胴縁を備えており、上記交差部縦胴縁と上記縦胴縁とに連結された横胴縁に、または当該横胴縁と上記縦胴縁とに上記2個以上のファスナーが設けられていることを特徴とする外壁パネル。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の外壁パネルにおいて、上記ファスナーは、当該外壁パネルを上記建物に固定する固定機能も有することを特徴とする外壁パネル。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の外壁パネルにおいて、上記ファスナーとは別に、当該外壁パネルを上記建物に固定する固定機能を有する固定用ファスナーを備えることを特徴とする外壁パネル。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の外壁パネルにおいて、当該外壁パネルの天端および下端には、上下に配置される他の外壁パネルに係合する係合構造部を有することを特徴とする外壁パネル。
【請求項8】
請求項7に記載の外壁パネルにおいて、上記外壁面材が不燃断熱材を鋼板で挟み込んだ金属サンドイッチパネルからなることを特徴とする外壁パネル。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の外壁パネルを用いた外壁パネルの施工方法であって、建物の出隅コーナーに取り付けようとする外壁パネルについて、既に外壁パネルが取り付けられた階の上階側の床上で、各外壁部の2個以上のファスナーを作業者が操作して、各外壁部における天端の水平出しを行うとともに各外壁部の高さ位置を調整し、この取り付け中の外壁パネルの下端を上記の既に固定された外壁パネルの天端に接合させることを特徴とする外壁パネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の出隅コーナーに取り付けられる外壁パネル、および、この外壁パネルを用いた外壁パネルの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物躯体への取付状態で上下方向に並ぶ複数枚の外壁パネルを、上記建物躯体への取付け用の下地となり、上記外壁パネルの横幅方向に並んでそれぞれ上下方向に延びる複数本の胴縁に、上記建物躯体の外壁パネル取付け箇所とは別の場所で組み付けて下地一体型の外壁パネルユニットとする作業に用いる地組架台であって、自立する地組架台本体と、この地組架台本体にそれぞれ取付けられ、上記外壁パネルユニットのユニット化前の上記複数本の各胴縁を、ユニット化後の配置関係でかつ立ち姿勢として、その下端および上部で位置決め状態に保持する複数の下端固定治具および上側固定治具と、を備える、外壁パネルの地組架台が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-94786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された平板形状の外壁パネルを用いて建物の出隅コーナーの外壁を構築する場合、これら平板形状の外壁パネルを建物の躯体に取り付ける際に交差する外壁パネル同士を接合して出隅頂点部を形成するために屋外からの作業が必要になる。一方、外壁パネルを出隅コーナーに合わせてL字状に予め構成しておくことが考えられる。しかしながら、このようなL字状の外壁パネルとする場合でも、当該外壁パネルの建物躯体への取り付け作業の容易化を図る必要がある。また、上記L字状の外壁パネルを建物の出隅コーナーに取り付けることにおいて、足場を不要にすることが望まれる。
【0005】
この発明は、上記の事情に鑑み、建物の出隅コーナーでの外壁構築作業の容易化を図ることができ、また、足場を不要にし得る外壁パネルおよび外壁施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の外壁パネルは、上記の課題を解決するために、建物の出隅コーナーに取り付けられる外壁パネルであって、交差する二面を有する外壁面材が上下に複数並べられて下地材で互いに連結されており、上記二面における各面の集合である各外壁部には、少なくとも当該外壁パネルの高さ位置を調整する調整機能を有するファスナーが、水平方向に2個以上設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、各外壁部には、当該外壁パネルを建物に固定する固定機能および当該外壁パネルの高さ位置を調整する調整機能を有するファスナーが2個以上設けられているので、各外壁部のこれら2個以上のファスナーを用いて、各外壁部における天端の水平出しを行うとともに各外壁部の高さ位置を調整することが的確に行えるようになる。これにより、建物の出隅コーナーでの外壁構築作業の容易化を図ることができる。
【0008】
上記ファスナーは、各外壁部における上記出隅コーナーの隅柱に対面しない箇所に設けられているのが望ましい。これによれば、上記ファスナーの操作を上記隅柱の干渉を受けることなく行うことができ、外壁パネルの取り付けの作業性を向上できる。
【0009】
各外壁部における上記出隅コーナーの隅柱に対面しない位置に上記下地材として縦胴縁を2本以上備えており、上記ファスナーが上記縦胴縁に設けられていてもよい。
【0010】
或いは、各外壁部における上記出隅コーナーの隅柱に対面しない位置に上記下地材として縦胴縁を備えるとともに、上記外壁部が交差する箇所に上記下地材として交差部縦胴縁を備えており、上記交差部縦胴縁と上記縦胴縁とに連結された横胴縁に、または当該横胴縁と上記縦胴縁とに上記2個以上のファスナーが設けられていてもよい。
【0011】
上記ファスナーは、当該外壁パネルを上記建物に固定する固定機能も有するものでもよい。或いは、上記ファスナーとは別に、当該外壁パネルを上記建物に固定する固定機能を有する固定用ファスナーを備えてもよい。
【0012】
当該外壁パネルの天端および下端に、上下に配置される他の外壁パネルに係合する係合構造部を有していてもよい。このような係合構造部を有する外壁パネルにおいて、上記2個以上のファスナーを用いることで、上下に配置された外壁パネル同士を互いに的確に係合させることができる。このような係合構造部を有する外壁パネルにおいて、上記外壁面材が不燃断熱材を鋼板で挟み込んだ金属サンドイッチパネルからなっていてもよい。
【0013】
また、この発明の外壁パネルの施工方法は、上記の外壁パネルを用いた外壁パネルの施工方法であって、建物の出隅コーナーに取り付けようとする外壁パネルについて、既に外壁パネルが取り付けられた階の上階側の床上で、各外壁部の2個以上のファスナーを作業者が操作して、各外壁部における天端の水平出しを行うとともに各外壁部の高さ位置を調整し、この取り付け中の外壁パネルの下端を上記の既に固定された外壁パネルの天端に接合させることを特徴とする。
【0014】
上記方法であれば、各外壁部の2個以上のファスナーを用いるので、各外壁部における天端の水平出しを行うとともに各外壁部の高さ位置を調整することが的確に行える。これにより、建物の出隅コーナーでの外壁構築作業の容易化を図ることができる。また、上階側の床上での上記ファスナーを用いた取り付け作業となるので、足場を不要にし得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明であれば、建物の出隅コーナーでの外壁構築の容易化を図ることができ、また、足場を不要にし得るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る出隅コーナー用の外壁パネルを示した斜視図である。
図2】同図(A)は図1の外壁パネルにおける外壁面材の上部および下部を示した断面図であり、同図(B)は図1の上下に並ぶ外壁面材の嵌め込み箇所の断面図である。
図3図1の外壁パネルを用いた外壁施工方法を示した概略の斜視図である。
図4図1の外壁パネルと隅柱と床スラブを示した説明図である。
図5図1の外壁パネルに設けられたファスナーを示した斜視図である。
図6図1の外壁パネルがファスナーによって出隅コーナーに取り付けられる工程を示した斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る出隅用の外壁パネルを用いた外壁施工方法を示した概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の出隅コーナー用の外壁パネル5は、交差する二面(直角に交差する場合は直交する二面)を有する略L字形状の外壁面材51を上下に複数枚並べて下地材52で相互に連結された構造を有する。上記外壁パネル5は、例えば、上記下地材52として複数の縦胴縁52aを備えている。これら縦胴縁52aは、角鋼管からなっているが、開放断面形状を有する鋼材が用いられてもよい。
【0018】
上記外壁面材51は、例えば、図2(A)および図2(B)に示すように、不燃断熱材51aを鋼板51b、51cで挟み込んだ金属サンドイッチパネルである。この金属サンドイッチパネルは、2枚の外壁面材51を上下に並べた場合、下段に位置する外壁面材51の上端面に形成された横幅方向に長い2か所の凹部51dに、上段に位置する外壁面材51の下端面に形成された横幅方向に長い2か所の凸部51eが嵌まり込むことにより、上下の外壁面材51が互いに面外方向に位置ずれしないように係合される係合構造部を有する。
【0019】
また、上記外壁パネル5において、上記外壁面材51における上記二面の各面の集合である各外壁部53には、図3にも示すように、当該外壁パネル5を建物100に固定するファスナー6が先付け固定されている。各ファスナー6は、上記外壁パネル5の固定機能および当該外壁パネル5の高さ位置を調整する調整機能を有する。この実施形態では、上記ファスナー6は、各外壁部53において、それぞれ水平方向に2個備えられるが、2個以上備えても構わない。また、上記ファスナー6は、図4にも示すように、各外壁部53における上記出隅コーナーの隅柱101に対面しない(隠れない)箇所に設けられている。
【0020】
なお、上記出隅コーナー用の外壁パネル5の隣には、図示しない平板状の外壁パネルが配置されて互いに接合される。この平板状の外壁パネルと上記外壁パネル5との接合位置(縦目地位置)は、床スラブ側からの目地処理が可能となるように、隅柱101に対面しないで隅柱101から離れた位置となるようにしている。そして、このように、縦目地処理位置が、隅柱101から離れて位置することになると、各外壁部53の左右端側から隅柱101と外壁パネル5の間の空間が見えにくくなり、外壁パネル5の出隅角(出隅頂点部)の位置合わせ(特に鉛直方向)を目視で確認することが難しくなる。また、外壁パネル5の出隅角を直接触ることもできない。
【0021】
そして、上記建物100において、上記隅柱101の下側には下階の床スラブ102が存在しており、この床スラブ102の上側には上階の床スラブ103が存在している。図3に示すように、下側の外壁パネル5は、その上部側が下階の床スラブ102の床面から突き出て設けられており、上記ファスナー6によって上記床スラブ102に固定されている。一方、上側の外壁パネル5は、取り付け途中の段階にあり、その上部側が上階の床スラブ103の床面から突き出て配置される。そして、この上側の外壁パネル5の下端を下側の外壁パネル5の天端に接合させるとともに、当該上側の外壁パネル5を、上記ファスナー6を用いて、上記床スラブ103に固定する作業が行われる。
【0022】
図5および図6に示すように、上記床スラブ102、103の縁端部には、例えば、断面コ字状の鋼材105が設けられており、この鋼材105の上面部にLアングル7が溶接固定されている。また、上記Lアングル7の水平板部における上記ファスナー6が取り付けられる箇所には、台座71が溶接固定されている。そして、上記台座71には、寸切ボルト72がねじ込まれて立てられた状態で溶接により固定されている。
【0023】
上記ファスナー6は、L字状本体部61を備えている。このL字状本体部61は、その縦片部が2本のボルト62によって上記縦胴縁52aに先付け固定することで回転不能にされている。なお、この実施形態では、上記L字状本体部61の上記縦片部と上記縦胴縁52aとの間に、上記Lアングル7の鉛直板部の板厚と同等の板厚を有する板部材67を介在させることで、上記縦片部と上記縦胴縁52aとの間に上記Lアングル7の鉛直板部が嵌るようにしているが、これに限らない。また、上記L字状本体部61の縦片部と横片部とに溶接固定される例えば三角形補強板を設けてもよい。
【0024】
上記L字状本体部61の横片部には、鉛直方向に螺子孔が形成されており(ナット溶接でもよい)、この螺子孔に頭付きの調整ボルト63が螺合されている。この調整ボルト63の下端半球状部が上記台座71の上面に接触する。上記調整ボルト63を締め込むと、上記L字状本体部61が上方向に移動し、外壁パネル5を上方向に移動させることができる。上記調整ボルト63を緩めれば、外壁パネル5は自重によって降下する。
【0025】
また、上記L字状本体部61の上記横片部には、鉛直方向に挿通孔64が形成されており、上記外壁パネル5をクレーンで吊り上げて降ろしていく際に、上記挿通孔64に上記寸切ボルト72を挿通させることができる。また、上記ファスナー6は、上記寸切ボルト72に螺合されるナット65および、上記ナット65と上記挿通孔64の間に介在される座金66を備える。上記ナット65の締め込みによる力は、上記座金66を介して上記L字状本体部61に付与される。すなわち、上記ナット65を締め込むことで外壁パネル5を押し下げる方向の力が付与される。一方、上記ナット65を緩めた状態では、上記調整ボルト63が上記台座71の上面に接触する位置で上記外壁パネル5が静止する。この実施形態では、上記ファスナー6は、上記調整ボルト63による外壁パネル5に対する押し上げ力と、上記ナット65による外壁パネル5に対する押し下げ力とを発生させることによって、当該外壁パネル5を上記建物100に固定する固定機能および当該外壁パネル5の高さ位置を調整する調整機能を有するものとなる。また、この実施形態では、上記ファスナー6は、図5図6に示すように、下地材52の芯に対して、上記調整ボルト63が水平方向にずれていたとしても、縦胴縁52aにファスナー6が回転不能に固定されていることで、外壁パネル5に上記押し上げ力を伝達することができる。
【0026】
図3に示したように、建物100の出隅コーナーに取り付けようとする上側の外壁パネル5については、既に下側の外壁パネル5が取り付けられた階よりも上階の床スラブ103に上記ファスナー6によって固定されることになる。ここで、上側の外壁パネル5がクレーンで吊り上げられて降下され、上記ファスナー6と縦胴縁52aとの間の隙間に上記Lアングル7の鉛直板部を嵌め、上側の外壁パネル5の下端を下側の外壁パネル5の天端に係合させる。
【0027】
上階の床スラブ103上では、例えば、レーザー光による墨出しが行われており、床スラブ103をフロア基準とした上記外壁パネル5の天端の高さ位置が示される。上記床スラブ103で外壁パネル5の固定作業を行う作業者は、上記ファスナー6を操作し、上記外壁パネル5を降下または上昇させることにより、上側の外壁パネル5の天端を上記墨出しの位置に合致させて、上側の外壁パネル5の下端を下側の外壁パネル5の天端に係合させる。このとき、床スラブ103上の他の作業者は、レーザー光による墨出し位置と、上側の外壁パネル5の天端位置とを目視して、上記固定作業を行う作業者に、上記外壁パネル5の降下または上昇の指示を出すこともできる。
【0028】
ここで、外壁パネル5の各外壁部53には、上記のように、当該外壁パネル5を建物100に固定する固定機能および当該外壁パネル5の高さ位置を調整する調整機能を有するファスナー6が水平方向に2個設けられているので、これら2個のファスナー6を用いて、各外壁部53における天端の水平出しを行うとともに各外壁部53の高さ位置を調整することが的確に行える。換言すれば、2個のファスナー6を用い、いずれかを支点とし、他を力点とし、外壁パネル5の出隅角(出隅頂点部)を作用点として、外壁パネル5の出隅角(出隅頂点部)の位置調整(特に鉛直方向)を行うことができる。例えば、各外壁部53における上記2個のファスナー6のうち、まず、隅柱101から遠い側のファスナー6を操作して、当該隅柱101から遠い側で当該外壁パネル5の高さ位置を調整し、次いで、隅柱101に近い側のファスナー6を操作して、当該隅柱101から近い側でも当該外壁パネル5の高さ位置を調整し、当該外壁パネル5の天端を水平に位置させることができる。なお、また、上述の操作とは逆に、近い側のファスナー6を先に操作し、次に隅柱101から遠い側のファスナー6を操作して調整することもできる。各外壁部53にファスナーを1個だけ設けた構成では、このような梃の動作による位置調整を行うことはできない。
【0029】
また、この実施形態では、上記2個以上のファスナー6は、各外壁部53における上記出隅コーナーの隅柱101に対面しない箇所に設けられている。すなわち、上記隅柱101に隠れない操作容易な箇所で上記2個のファスナー6を操作し、また、当該外壁パネル5の天端の水平出しを、上記隅柱101に隠れずに見えている目視可能な範囲の確認で行うことができる。ここに、出隅に用いる上記外壁パネル5が左右2枚の別個の平板パネルを組み付けたものではなく、二面を一体的に有するL字の外壁面材51を用いたものであるため、上記のように目視可能範囲の位置調整でも、外壁パネル5の出隅角(出隅頂点部)の位置調整が可能となる。なお、外壁パネル5における水平方向の調整は、例えば、パネル面に吸盤掴み具を取り付け、作業者がこの吸盤掴み具を掴んで動かすことで修正できる。
【0030】
他の実施形態の外壁パネルを図7に基づいて説明する。この実施形態の外壁パネル5は、上記二面の外壁部53における上記出隅コーナーの隅柱101に対面しない位置に上記下地材52として各々1本の縦胴縁52aを備えるとともに、上記二面の外壁部53が交差する箇所に上記下地材52として1本の交差部縦胴縁52bを備えており、上記交差部縦胴縁52bと上記縦胴縁52aとに、横胴縁54を上側と下側において2本固定している。そして、上側の横胴縁54と上記縦胴縁52aとに上記ファスナー6がそれぞれ1個ずつ設けられている。なお、上記2個のファスナー6が上側の横胴縁54に備えられる態様でもよい。
【0031】
また、実施形態の外壁パネル5の施工方法は、建物の出隅コーナーに取り付けようとする外壁パネル5について、既に外壁パネル5が取り付けられた階の上階側の床(床スラブ103)上で、各外壁部53の2個以上のファスナー6を作業者が操作して、各外壁部53における天端の水平出しを行うとともに各外壁部53の高さ位置を調整し、この取り付け中の外壁パネル5の下端を上記の既に固定された外壁パネル5の天端に接合させる。
【0032】
上記方法であれば、各外壁部53の2個以上のファスナー6を用いるので、各外壁部53における天端の水平出しを行うとともに各外壁部53の高さ位置を調整することが的確に行える。これにより、建物の出隅コーナーでの外壁構築の容易化を図ることができる。また、上階側の床上での上記ファスナー6を用いた取り付け作業となるので、足場を不要にし得る。
【0033】
また、以上の例では、上記外壁パネル5は、その天端および下端に、上下に位置する外壁部53同士が互いに係合するための係合構造部を有する。このような係合構造部を有する外壁パネル5において、上記2個以上のファスナー6を用いることで、上下に配置された外壁面材同士を互いに的確に係合させることができる。このような係合構造部を有する外壁パネル5の外壁面材51としては、金属サンドイッチパネルに限らず、他の構造を有するパネルでもよい。
【0034】
また、上記ファスナー6は、当該外壁パネル5を上記建物100に固定する固定機能および当該外壁パネル5の高さ位置を調整する調整機能を有したが、このようなファスナー6に限らない。上記ファスナー6に替えて当該外壁パネル5の高さ位置を調整する調整機能だけを有するファスナーを用いるとともに、このファスナーとは別に当該外壁パネル5を上記建物100に固定する固定機能を有する固定用ファスナーを設けてもよい。
【0035】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
5 :外壁パネル
6 :ファスナー
7 :Lアングル
51 :外壁面材
51a :不燃断熱材
51b :鋼板
51c :鋼板
51d :凹部(係合構造部)
51e :凸部(係合構造部)
52 :下地材
52a :縦胴縁
52b :交差部縦胴縁
53 :外壁部
54 :横胴縁
61 :L字状本体部
62 :ボルト
63 :調整ボルト
64 :挿通孔
65 :ナット
66 :座金
67 :板部材
71 :台座
72 :寸切ボルト
100 :建物
101 :隅柱
102 :床スラブ
103 :床スラブ
105 :鋼材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7