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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】クーラント供給装置および工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20231211BHJP
   B05B 1/30 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
B23Q11/10 A
B05B1/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019116352
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021000706
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 晃一
(72)【発明者】
【氏名】志田 忠靖
(72)【発明者】
【氏名】安藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 新平
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03094283(US,A)
【文献】米国特許第05313743(US,A)
【文献】特開2018-183851(JP,A)
【文献】特開2016-132091(JP,A)
【文献】特開平06-091532(JP,A)
【文献】特開平02-311240(JP,A)
【文献】特開2004-041999(JP,A)
【文献】特開2012-000702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00-13/00
B24B 55/02
B05B 3/02
B05B 3/12
B05B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械内のワーク加工領域にクーラントを供給するクーラント供給装置であって、
円筒状に形成され、該円筒状の外周面に前記クーラントを噴出させる噴出口を有する回転ノズルと、
回転ノズルを挿通可能な挿通孔を有して、該挿通孔に挿入された前記回転ノズルを回転自在に支持し、前記クーラントを前記回転ノズルに供給可能に構成される供給装置本体と、を備え、
前記回転ノズルの内部に、該回転ノズルの回転軸線方向に沿ってクーラント流通路が形成され、
前記噴出口からの前記クーラントの噴出方向に一致する方向に、前記噴出口と前記クーラント流通路とを連通するように、前記回転ノズルに導出孔が形成され、
前記供給装置本体が、前記回転ノズルの回転に応じて、前記噴出口を開放する噴出許可範囲と、前記噴出口に対向して該噴出口を閉塞する噴出停止範囲と、を切り替え可能に構成されている、クーラント供給装置。
【請求項2】
前記供給装置本体が、前記噴出口に対向して該噴出口を閉塞可能な対向湾曲壁を有する、請求項1に記載のクーラント供給装置。
【請求項3】
前記回転ノズルが、該回転ノズルの端面に設けられて、前記噴出口からの前記クーラントの噴出方向と同じ方向に沿って形成されている調整溝を有する、請求項1または請求項2に記載のクーラント供給装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクーラント供給装置を備えている、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント供給装置および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
クーラントを供給して加工部位を切削すれば、切削抵抗や摩擦によるワークや工具の発熱を抑えることができる。特許文献1,2には、クーラントの噴出方向を変更可能なクーラント供給装置の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭60-172646号公報
【文献】実開平7-24542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2の構造では、クーラントの噴出をオン・オフできることは容易ではない。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、クーラントの噴出を簡便にオン・オフさせるクーラント供給装置および工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1に、工作機械内のワーク加工領域にクーラントを供給するクーラント供給装置であって、円筒状に形成され、該円筒状の外周面に前記クーラントを噴出させる噴出口を有する回転ノズルと、該回転ノズルを挿通可能な挿通孔を有して、該挿通孔に挿入された前記回転ノズルを回転自在に支持し、前記クーラントを前記回転ノズルに供給可能に構成される供給装置本体と、を備え、前記回転ノズルの内部に、該回転ノズルの回転軸線方向に沿ってクーラント流通路が形成され、前記噴出口からの前記クーラントの噴出方向に一致する方向に、前記噴出口と前記クーラント流通路とを連通するように、前記回転ノズルに導出孔が形成され、前記供給装置本体が、前記回転ノズルの回転に応じて、前記噴出口を開放する噴出許可範囲と、前記噴出口に対向して該噴出口を閉塞する噴出停止範囲と、を切り替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0006】
第2に、前記供給装置本体が、前記噴出口に対向して該噴出口を閉塞可能な対向湾曲壁を有することを特徴とする。
第3に、前記回転ノズルが、該回転ノズルの端面に設けられて、前記噴出口からの前記クーラントの噴出方向と同じ方向に沿って形成されている調整溝を有することを特徴とする。
【0007】
第4に、上記いずれかのクーラント供給装置を備えている工作機械であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以下の効果を得ることができる。
回転ノズルが回転して、クーラントの噴出中に、クーラントの噴出方向を変更可能であるため、クーラント供給装置を例えば主軸の下方に設置できる。そして、回転ノズルが回転して供給装置本体によって噴出口が塞がれると、クーラントの噴出が止まる。よって、クーラントの噴出を簡便にオン・オフできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るクーラント供給装置を搭載した工作機械を示す図である。
図2】クーラント供給装置の外観斜視図である。
図3】クーラント供給装置の分解正面図である。
図4】供給装置本体の右側面図である。
図5図3のV-V線矢視断面図である。
図6図3のVI-VI線矢視断面図である。
図7】クーラントの噴出許可状態を説明する図である。
図8】クーラントの噴出停止状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明のクーラント供給装置10および工作機械1について説明する。図1に示すように、工作機械1は主軸2および刃物台3を備えている。主軸2は、チャックを介して加工対象となるワークWを把持(保持)することができる。ワークWは丸棒状に形成され、主軸2でZ軸回りに回転自在に支持されており、主軸2の後方からワーク加工領域P内に供給される。
【0011】
ワーク加工領域P内において主軸2の例えば下方に、クーラント供給装置10が設置されている。クーラント供給装置10はクーラントタンクに接続されており、クーラントタンクに貯留されたクーラント(切削油ともいう)はポンプで汲み上げられ、クーラント供給装置10を介してワークWに供給される。ワークWは、クーラントがかけられながら、刃物台3に設けた工具4によって所定の形状に加工される。
【0012】
クーラント供給装置10は、供給装置本体20と、回転ノズル40とから構成される。
図2に示すように、供給装置本体20は、例えば略直方体の一角を切り落とした形状であり、矩形状の固定面21を有する。固定面21は、ワーク加工領域Pを区画する壁面に固定される。固定面21は、X軸方向で正面22、背面23に、Y軸方向で上面24、下面25にそれぞれ連なり、Z軸方向で開放面26に対向する。
【0013】
開放面26は例えば段付き形状である。開放面26は、正面側の開放面26aと背面側の開放面26bとからなり、正面側の開放面26aが、背面側の開放面26bよりも低く(固定面21寄り)に配置されている。
図3に示すように、挿通孔31は、固定面21と正面側の開放面26aとの間を貫通して形成される。挿通孔31の内径は、回転ノズル40を挿通可能な大きさである。挿通孔31に回転ノズル40が回転可能に挿入される。
【0014】
挿通孔31の内壁は、背面側の開放面26bまで延びており、回転ノズル40の外周面に対向可能な対向湾曲壁32を形成する。対向湾曲壁32は、正面側の開放面26aと背面側の開放面26bとの間に形成されており、図4に示すように開放面26側から見た開放面26を時計の文字板に見立てると、例えば12時方向から7時方向までの位置に形成されている。この12時方向から7時方向までの範囲(噴出停止範囲S:図4に実線で示す)で回転ノズル40の噴出口51に対向湾曲壁32が対向して噴出口51を閉塞する。
【0015】
一方、同じく開放面26を時計の文字板に見立てた場合、例えば7時方向から12時方向までの範囲(噴出許可範囲V:図4に1点鎖線で示す)では、対向湾曲壁32が噴出口51に対向せず、噴出口51が開放される。
なお、対向湾曲壁32の手前側にも曲面33で形成されているが、この曲面33は、対向湾曲壁32の端から下方に延びており、噴出口51を閉塞しない。
【0016】
図4に示すように、正面側の開放面26aには、上面24の近傍に固定ボルト用孔34が設けられる。固定ボルト用孔34は、挿通孔31と平行に設けられ、正面側の開放面26aと固定面21とを貫通している。背面側の開放面26bには、下面25の近傍に固定ボルト用孔35が設けられる。固定ボルト用孔35は、挿通孔31と平行に設けられており、背面側の開放面26bと固定面21とを貫通している。固定ボルト71を固定ボルト用孔34に挿入し、固定ボルト72を固定ボルト用孔34に挿入して各々の固定ボルト71,72を締めることで、供給装置本体20をワーク加工領域Pの壁面に固定できる。
【0017】
図3に示すように、下面25と挿通孔31との間には、クーラント供給ホース70を設置するためのホース用孔37が貫通して設けられている(図3に破線で示す)。クーラント供給ホース70を下面25からホース用孔37に接続すると、クーラントを挿通孔31内に供給できる。一方、上面24と挿通孔31との間には、抜け留めボルト用孔36が貫通して設けられている(図3に破線で示す)。抜け留めボルト73を上面24から抜け留めボルト用孔36に挿入して抜け留めボルト73の先端が回転ノズル40の小径部47の側壁に接することで、供給装置本体20に対する回転ノズル40の抜けを防止できる。
【0018】
回転ノズル40は、挿通孔31に挿入される基部45と、外周面にクーラントの噴出口51を有する胴部50と、胴部50を挟んで基部45の反対側に位置する先端部55とからなる。
図5に示すように、回転ノズル40は円筒形状であり、回転ノズル40の内部には、回転ノズル40の回転軸線方向(図3に示すZ軸方向と同じ)に沿って、クーラント流通路41が形成されている。クーラント流通路41は、基部45の端から胴部50の内側を経由して先端部55の手前まで達している。クーラント流通路41は、基部45において栓部材60で閉じられている。
【0019】
基部45の外周面には環状溝46が形成され、シール部材(例えばOリング)61が設けられている。これにより、回転ノズル40の外周と挿通孔31の内周との間からのクーラントの漏れを防止する。
【0020】
環状溝46の近傍には、小径部47が形成されている。小径部47はクーラント供給ホース70の先端に対向可能であり、クーラント供給ホース70から供給されたクーラントをクーラント流通路41内に導入されるまでのクーラント貯留室として機能する。小径部47とクーラント流通路41とは、導入孔48で連通する。計4つの導入孔48は例えば所定間隔(例えば90°)で小径部47に穿設されている。小径部47は、抜け留めボルト73の先端も挿入できる。
【0021】
噴出口51は、胴部50の外周面に、回転ノズル40の回転軸線方向(図3に示すZ軸方向と同じ)に沿って例えば2個設けられている。図6に示すように、噴出口51とクーラント流通路41とを連通するように胴部50に導出孔52が形成されている。導出孔52の形成方向が噴出口51からのクーラントの噴出方向に一致する。
【0022】
先端部55は、導出孔52の形成方向に沿って形成された調整溝56を有する。調整溝56に例えばマイナスドライバを配置して調整溝56を回せば、回転ノズル40を供給装置本体20に対して容易に回転できる。調整溝56の形成方向からクーラントの噴出方向を想定可能である。なお、先端部55に、回転ノズル40を回転させるための継手を取り付けてもよい。
【0023】
このように、供給装置本体20では、回転ノズル40の回転に応じて、クーラントの噴出許可範囲Vと噴出停止範囲Sとを切り替え可能である。
詳しくは、図1で説明したような、クーラント供給装置10を主軸2の下方に配置した場合、調整溝56を回して、噴出口51を斜め上方に向かせる。これにより、図7(A)に示すように、クーラントCは、この図7(A)で見た左斜め上方に向けてワークWに供給される。
【0024】
一方、仮に、クーラント供給装置10を主軸2の上方に配置した場合、調整溝56を回して、噴出口51を斜め下方に向かせることもできる。この場合、クーラントCは、図7(B)に示すような左斜め下方に向けてワークWに供給される。
【0025】
これに対し、クーラントCをワークWに供給させない場合、噴出口51が対向湾曲壁32に向くように、調整溝56を回す。具体的には、開放面26を時計の文字板に見立てた場合、調整溝56を、図8(A)に示すように例えば1時方向の位置に配置すると、噴出口51が対向湾曲壁32で閉塞されるため、クーラントCは供給されない。
また、調整溝56を、図8(B)に示すように、例えば5時方向の位置に配置した場合にも、噴出口51が対向湾曲壁32で閉塞されているので、クーラントCは供給されない。
【0026】
このように、回転ノズル40は、回転してクーラントCの噴出方向を変更可能であるため、クーラント供給装置10を主軸2の下方など、ワーク加工領域P内の任意の位置に設置できる。そして、回転ノズル40が回転して供給装置本体20によって噴出口51が塞がれると、クーラントCの噴出が止まる。よって、クーラントCの噴出を簡便にオン・オフできる。
【0027】
調整溝56は、クーラントCの噴出中に回してもよい。この場合、クーラントの噴出中に、クーラントCの噴射方向を変更できる。また、クーラントCの噴出中に、噴出許可範囲Vと噴出停止範囲Sとを切り替えることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ・・・ 工作機械
2 ・・・ 主軸
3 ・・・ 刃物台
4 ・・・ 工具
10 ・・・ クーラント供給装置
20 ・・・ 供給装置本体
21 ・・・ 固定面
22 ・・・ 正面
23 ・・・ 背面
24 ・・・ 上面
25 ・・・ 下面
26 ・・・ 開放面
26a ・・・ 正面側の開放面
26b ・・・ 背面側の開放面
31 ・・・ 挿通孔
32 ・・・ 対向湾曲壁
33 ・・・ 曲面
34 ・・・ 固定ボルト用孔
35 ・・・ 固定ボルト用孔
36 ・・・ 抜け留めボルト用孔
37 ・・・ ホース用孔
40 ・・・ 回転ノズル
41 ・・・ クーラント流通路
45 ・・・ 基部
46 ・・・ 環状溝
47 ・・・ 小径部
48 ・・・ 導入孔
50 ・・・ 胴部
51 ・・・ 噴出口
52 ・・・ 導出孔
55 ・・・ 先端部
56 ・・・ 調整溝
60 ・・・ 栓部材
61 ・・・ シール部材
70 ・・・ クーラント供給ホース
71 ・・・ 固定ボルト
72 ・・・ 固定ボルト
73 ・・・ 抜け留めボルト
W ・・・ ワーク
P ・・・ ワーク加工領域
C ・・・ クーラント
V ・・・ 噴出許可範囲
S ・・・ 噴出停止範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8