(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】電飾用テープ
(51)【国際特許分類】
F21S 4/24 20160101AFI20231211BHJP
G09F 13/20 20060101ALI20231211BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20231211BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20231211BHJP
F21Y 103/10 20160101ALN20231211BHJP
F21Y 113/13 20160101ALN20231211BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231211BHJP
【FI】
F21S4/24
G09F13/20 Z
H01L33/00 L
H01L33/62
F21Y103:10
F21Y113:13
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019131909
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修
(72)【発明者】
【氏名】林 寛之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】上杉 隆
(72)【発明者】
【氏名】薩摩 英希
(72)【発明者】
【氏名】辻本 和久
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-259025(JP,A)
【文献】特開2019-079714(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064549(WO,A1)
【文献】特開2011-090849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 4/24
H01L 33/62
H01L 33/00
G09F 13/20
F21Y 103/10
F21Y 113/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性布帛からなる陽極電源テープおよび導電性布帛からなる陰極電源テープを平行に配し、前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープ上に並列に実装された複数のLED部品と、少なくとも1つのLED制御ICとで構成され
た電飾用テープであって、
前記電飾用テープの全長が900mm以上であり、隣り合う前記LED部品間の平均距離d(mm)が10~40mmであり、且つ、
前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの表面抵抗値の平均値ρ
s(Ω/sq.)、前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの幅の平均値W(mm)、前記LED部品の個数n(個)、隣り合うLED部品間の平均距離d(mm)について、下記の数式1で得られるRの値が75以下であることを特徴とする電飾用テープ。
【数1】
【請求項2】
前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの表面抵抗値ρ
sが0.001Ω/sq.~0.025Ω/sq.であることを特徴とする、請求項1に記載の電飾用テープ。
【請求項3】
前記導電性布帛が、非導電性繊維からなる布帛に金属皮膜が形成されたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の電飾用テープ。
【請求項4】
前記LED部品が、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から選ばれる少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電飾用テープ。
【請求項5】
前記LED制御ICに接続された、信号用導電部材を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電飾用テープ。
【請求項6】
前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの、前記LED部品が実装された面とは反対側の面に、補強基材が積層されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の電飾用テープ。
【請求項7】
前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの表面の少なくとも一部に、防水性樹脂皮膜が形成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電飾用テープ。
【請求項8】
前記補強基材の表面の少なくとも一部に、防水性樹脂皮膜が形成されていることを特徴とする、請求項
6に記載の電飾用テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電飾用テープに関する。詳しくは、複数のLED部品が実装された柔軟性に優れる電飾用テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電飾用テープとしては、フィルム状のフレキシブル基板上に形成された回路にLEDが実装された帯状フレキシブル発光体(特許文献1)などが知られている。しかしながら、フィルム状の基材を使用しているためその柔軟性は不十分であった。また、この電飾用テープを衣料などの対象物に固定する際には接着剤を用いる必要があるため、更に柔軟性を損なうという問題があった。
【0003】
特許文献2には、非導電糸が配列する経糸群内に、導電糸からなる1本または複数本を組にした2組の経糸が所定の間隔で配列し、これが導線となってLEDに接続されるLED実装テープが開示されている。この構成では、導電糸の表面抵抗値が大きいことによって電圧降下の問題がある。導電糸を複数本の組にしても、各々の導電糸が十分に接触していないと表面抵抗値を下げる効果は見込めない。その結果、複数個のLEDを並列で接続した場合には、電源から遠いLEDでは電圧が不足し発光しないという問題が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-117516号公報
【文献】国際公開第2015/174135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数のLED部品を並列に接続した場合であっても、電源から遠い末端のLED部品まで十分な電圧を供給できるために、複数のLED部品を確実に発光させることのできる電飾用テープを提供するものである。さらに本発明の電飾用テープは優れた柔軟性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の表面抵抗値と幅を有する導電性布帛によって形成された電源テープを用いることで電圧降下を低減させ、並列に複数個実装されたLED部品を所望の輝度で発光させることが可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明の電飾用テープは、導電性布帛からなる陽極電源テープおよび導電性布帛からなる陰極電源テープを平行に配し、前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープ上に並列に実装された複数のLED部品と、少なくとも1つのLED制御ICとで構成され
た電飾用テープであって、前記電飾用テープの全長が900mm以上であり、隣り合う前記LED部品間の平均距離d(mm)が10~40mmであり、且つ、前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの表面抵抗値の平均値ρ
s(Ω/sq.)、前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの幅の平均値W(mm)、前記LED部品の個数n(個)、隣り合うLED部品間の平均距離d(mm)について、下記の数式1で得られるRの値が75以下であることを特徴とする電飾用テープである。
【数1】
【0008】
この数式1で得られるRの値が75以下である電飾用テープにおいては、実装された複数のLED部品を全て所望の輝度で発光させることができる。また、この電飾用テープは柔軟であり、屈曲耐久性に優れる。陽極電源テープと陰極電源テープが導電性布帛からなるため、通常の縫製手段によって衣料などに固定することが可能となる。
【0009】
前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの表面抵抗値の平均値ρsが0.001Ω/sq.~0.025Ω/sq.であることが好ましい。これによれば、電飾用テープの幅を抑えることができる。
【0010】
前記導電性布帛が、非導電性繊維からなる布帛に金属皮膜が形成されたものであることが好ましい。これによれば、より屈曲耐久性に優れた電飾用テープを得ることができる.
【0011】
前記LED部品が、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から選ばれる少なくとも1つ以上を含むことが好ましい。前記LED制御ICに接続された、信号用導電部材を備えることが好ましい。これによれば、多色発光を自在に制御することの可能な電飾用テープを得ることができる。
【0012】
前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの、前記LED部品が実装された面とは反対側の面に、補強基材が積層されていることが好ましい。これによれば、より強度の高い電飾用テープを得ることができる。
【0013】
前記陽極電源テープおよび前記陰極電源テープの表面の少なくとも一部に、防水性樹脂皮膜が形成されていることが好ましい。また、前記補強基材の表面の少なくとも一部に、防水性樹脂皮膜が形成されていることが好ましい。これによれば、耐水性にも優れ、汗などの液体に起因する漏電や短絡を抑えることが可能な電飾用テープを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、並列に実装された複数個のLED部品の全てを確実に発光させることが可能であり、柔軟性に優れた電飾用テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の電飾用テープの一例を示す図である。
【
図3】本発明の電飾用テープの別の例を示す図である。
【
図4】本発明におけるLED部品の一例を示す図である。
【
図5】本発明の電飾テープの更に別の例における断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1と
図2を参照しながら本発明の電飾用テープ1について説明する。本発明の電飾用テープ1は、導電性布帛からなる1対の電源テープ2を備えている。電源テープ2は陽極電源テープ21と陰極電源テープ22とで1対となっている。電源テープ2を構成する導電性布帛は、導電糸を製織あるいは製編してなる布帛であってもよい。また、導電性布帛は、非導電性繊維からなる布帛に導電性を付与して得られたものであってもよい。導電性を付与する方法としては、所謂導電性ペーストを布帛全面に付与する方法や、金属めっき、蒸着、スパッタリングなどにより金属皮膜を形成する方法が挙げられる。高い導通性が得られることおよび導電性布帛製造の容易さとから、非導電性繊維からなる布帛に金属めっきにて金属皮膜を形成して得られた導電性布帛であることが好ましい。
【0017】
電源テープ2としての導電性布帛を構成する導電糸としては、金属線などが用いられる。その他に、非導電性ポリマーからなる糸に導電性の皮膜を形成した糸を用いることもできる。金属線としては、銅線、銀線、アルミニウム線、スチール線、クロム線などであることができる。導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロールなどのポリマーが例示される。
【0018】
非導電性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリルなどのポリマーが挙げられる。導電性の皮膜形成方法としては、導電性ペースト、導電性ポリマー、金属などで被覆する方法が挙げられる。導電性ペーストとしては、金属粒子やカーボン粒子を含有する樹脂組成物が挙げられる。導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられ、皮膜の形成方法としてコーティング法、浸漬法、スプレー法などが挙げられる。金属の皮膜形成方法は金属めっき、蒸着、スパッタリングなどの方法が用いられる。導電性ペーストに含有される金属粒子、金属皮膜形成に用いられる金属種としては、銅、銀、金、ニッケル、スズなどが挙げられる。
【0019】
非導電性繊維としては、上記非導電性ポリマーからなる繊維が挙げられる。この非導電性繊維を用いて製織あるいは製編によって布帛となし、これに導電性を付与するために導電性ペースト、導電性ポリマー、金属などの皮膜を形成することができる。導電性ペーストとしては、金属粒子やカーボン粒子を含有する樹脂組成物が挙げられる。導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロールなどが挙げられ、皮膜の形成方法としてコーティング法、浸漬法、スプレー法などが挙げられる。金属の皮膜形成方法は前述の金属めっき、蒸着、スパッタリングなどの方法が用いられる。導電性ペーストに含有される金属粒子および金属皮膜形成に用いられる金属種としては、銅、銀、金、ニッケル、スズなどが挙げられる。
【0020】
本発明で電源テープ2の表面抵抗値ρsは0.001Ω/sq.以上0.025Ω/sq.以下であることが好ましい。電源テープ2の表面抵抗値ρsが0.025Ω/sq.以下であれば、より多くのLED部品を実装しその全てを所望の輝度で発光させることができる。また、電飾用テープ1の幅を抑えることができる。さらに、電飾用テープ1の長さを長くできる。尚、電源テープ2の表面抵抗値ρsは、陽極電源テープ21の表面抵抗値と陰極電源テープ22の表面抵抗値との平均値として得られる。陽極電源テープ21の表面抵抗値と陰極電源テープ22の表面抵抗値とは異なっていてもよいが、特段の理由がなければ同じであることが好ましい。
【0021】
上記導電性布帛を電源テープ2の形状とするには、裁断などの方法が用いられる。電源テープ2の形状は、一定の幅Wを持った帯状であることができる。実装するLED部品3の形状や端子の位置によって長辺部に適宜凸部や凹部を有する形状であってもよいし、曲線形状であってもよい。ただし、陽極電源テープ21と陰極電源テープ22とは、互いに一定の間隔をおいて平行に配されることが必要である。その理由は、電源テープ2上に実装されるLED部品3に電気的に接続される必要があるためである。尚、電源テープ2の幅Wは、陽極電源テープ21の幅WAと陰極電源テープ22の幅WCとの平均値として得られる。陽極電源テープ21の幅WAと陰極電源テープ22の幅WCとは同じであってもよいし、異なっていてもよいが、特段の理由がなければ同じであることが好ましい。電源テープ2の幅Wは、2mm~20mmであることが好ましい。幅Wがこの範囲であれば、電飾用テープ1の幅が広くなり過ぎない。したがって、衣装に縫合した場合その外観を損なうことがなく、着心地への影響を小さくできる。
【0022】
前記電源テープ2上には、
図1に示すように複数個のLED部品3が並列に実装される。LED部品3としては赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子などが挙げられる。これらの発光素子から選ばれる少なくとも1つであってもよいし、また、複数の発光素子をマウントしたLEDパッケージであってもよい。陽極電源テープ21にLED部品3の陽極端子、陰極電源テープ22にLED部品3の陰極端子が接続される。電源テープ2にLED部品3を接続する手段としては、例えば銅電線などのリード線を用いて接続することができる。接続にははんだや導電性接着剤などを用いることができる。
【0023】
複数のLED部品3が実装される間隔は、全て同一としてもよいし、異なる間隔で配置されていてもよい。LED部品3が等間隔で配置された場合には、まとまりのある、規則的な発光表現が可能となる。衣料に縫合した際の部位によって、LED部品3の実装間隔を変えた場合には、各々発光表現を変化させて制御することも可能となる。LED部品3の実装間隔は10mm~40mmであることが好ましい。また、実装間隔は汎用性の観点からは等間隔であることが好ましい。
【0024】
本発明の電飾用テープ1には、少なくとも1つのLED制御IC4が実装される。LED制御IC4は、LED部品3の点灯、消灯および発光の強度(輝度)や色合いを調整する機能を担う。LED制御IC4としては、いわゆるLEDドライバICや、バイポーラトランジスタからなるTTL(Transistor Transistor Logic) 汎用ロジックICや、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタからなるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)汎用ロジックICを用いることができる。消費電流が小さく、ノイズに強いという点でCMOS型のLED制御IC4が好ましい。また、ロジックICに定電流回路のようなアナログICを組み合わせたICを用いることもできる。
【0025】
CMOS型のLED制御IC4の動作電圧は製品により異なるが、現在多くの製品が3.3V、もしくは5.0Vに標準化されている。LED発光素子の制御用として用いる場合には、青色発光素子の駆動電圧に少なくとも3.0Vが必要となり、入力電圧は高い方が有利である。したがって、CMOS型のLED制御IC4の入力電圧が5.0Vの製品を用いることが好ましい。
【0026】
本発明の電飾用テープ1においては、前記陽極電源テープ21および前記陰極電源テープ22の表面抵抗値の平均値ρ
s(Ω/sq.)、前記陽極電極テープ21および前記陰極電極テープ22の幅の平均値W(mm)、前記LED部品3の個数n(個)、隣り合うLED部品3間の平均距離d(mm)について、下記の数式2で得られるRの値が75以下であることが肝要である。
【数2】
【0027】
LED制御IC4の動作電圧の下限は、基準電圧(例えば5.0V)の70%として設計されたものが利用できる。そのようなLED制御IC4はサイズも小さく、本発明の電飾用テープ1に実装するのに好適である。基準電圧を5.0Vとした場合には入力電圧下限は3.5Vと見積もることができる。つまり電圧降下が1.5V以内であればLED制御IC4は正常に動作可能である。また、一般的なLED部品3を十分な輝度で発光させるために必要な電流量は、0.02A程度であり、それ以上の電流を流しても消費電力が増大するものの、見た目の明るさ変わらない。
【0028】
上記数式1で得られるRの値は、電飾用テープ1に並列に実装されたn個のLED部品3の両末端に位置するLED部品3の間における電源テープ2の全抵抗値に比例する量である。つまり、1個目のLED部品3とn個目のLED部品3との間の陽極電源テープ21および陰極電源テープ22の抵抗値の和に比例している。このRの値が、LED制御IC4が正常動作できる程度の電圧降下分を、LED部品3を最大輝度で発光させるために必要な電流量で除した値以下であれば、全てのLED部品3を最大輝度で発光させることが可能となる。
【0029】
本発明の電飾用テープ1の全長は少なくとも900mm以上であることが好ましい。電飾用テープ1を衣装に装着する場合、腰部に発光制御装置や電源装置を格納し、それらに電飾用テープ1の一方の端部を接続して用いた際、身体の末端(手足の先や首周辺)まで到達できる長さであることが好ましいためである。
【0030】
LED制御IC4は、本発明の電飾用テープ1において1つのみ実装されていても良い。この場合、複数のLED部品3を全て同一の発光動作にて制御することができる。本発明の電飾用テープ1の別の態様として、
図3に示すように各々のLED部品3に対応するように、n個のLED部品3に対しn個のLED制御IC4が実装されていてもよい。この場合には、複数のLED部品3を個々に発光制御できるため、複雑な発光表現が可能となる。
【0031】
複数のLED制御IC4で個々のLED部品3の発光制御を行う際には、各LED制御IC4に制御用の信号を入力できるようにする。そのため、
図3に示すように信号用導電部材5が配置される。信号用導電部材5は、
図3に示すように陽極電源テープ21と陰極電源テープ22の間に配されていてもよい。信号用電源部材5は、電源テープ2と同様に導電性布帛によって構成されていてもよい。信号用導電部材5は、1本または複数本の導電糸の束であることもできるし、絶縁性樹脂で被覆された金属線であることもできる。信号用導電部材5はLED制御IC4の信号入力端子および信号出力端子に接続される。LED制御IC4は、信号用導電部材5から入力される信号に基づいて各LED部品3の発光動作を制御する。
【0032】
さらにLED部品3として、
図4に示すような赤色発光素子6R、緑色発光素子6G、青色発光素子6Bとこれを制御するLED制御IC4とが一体となったシリアルフルカラーLEDパッケージを用いることもできる。シリアルフルカラーLEDパッケージを用いた電飾用テープ1であれば、多様な色遣い、複雑な発光パターンを駆使した発光表現が可能となる。
【0033】
本発明の電飾用テープ1の別の態様として、
図5に示すように前記陽極電源テープ21および前記陰極電源テープ22の、前記LED部品3が実装された面とは反対側の面に、補強基材7が積層されていてもよい。これによれば、電飾用テープ1の強度を高めることができる。補強基材7と電源テープ2は、接着層8を介して積層されていてもよい。接着層8としては通常用いられる接着剤やホットメルト樹脂などが用いられる。補強基材7としては、繊維からなる布帛が挙げられる。布帛を構成する繊維としては、合成繊維(ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル等)、半合成繊維(アセテート、トリアセテート等)、再生繊維(レーヨン、キュプラ等)、天然繊維(綿、麻、羊毛、絹等)等、特に限定されないが、強度や耐薬品性などの観点から合成繊維が好ましい。特に好ましい合成繊維としてはポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。糸の形態としてはモノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、紡績糸、カバーリング糸等であってもよい。布帛の形態としては、織物(平織、綾織、朱子織等)、編物(丸編、経編等)、不織布が挙げられ、特に限定されない。補強基材7としては、柔軟な樹脂フィルムを用いることもできる。樹脂フィルムの材料としてはポリウレタン樹脂やシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0034】
前記陽極電源テープ21および前記陰極電源テープ22の表面の少なくとも一部に、防水性樹脂皮膜を形成することができる。防水性樹脂皮膜を形成する樹脂材料としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エステル系ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。皮膜形成方法としては、これら樹脂材料を含有する処理液を作製して電源テープ2に含浸、スプレーなどの方法で付与する方法が挙げられる。薄く成型した樹脂皮膜をラミネート法などによって積層する方法も採用できる。
【0035】
前記補強基材7に対し、その表面の少なくとも一部に防水性樹脂皮膜を形成することができる。防水性樹脂皮膜を形成する樹脂材料や皮膜形成方法は上記と同様である。これらによれば電飾用テープ1の防水性を高めることが可能となり、汗などの液体による漏電や短絡を防ぐことができる。
【0036】
本発明の電飾用テープ1では、陽極電源テープ21と陰極電源テープ22の間をバイパスするコンデンサーが実装されていてもよい。これによれば、電源に起因するノイズ成分を低減することができる。その結果、発光のちらつきや明るさの増減、発光動作のばらつきなどが解消される。
【実施例】
【0037】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
【0038】
[実施例1]
<導電性布帛の作製>
ポリエステル平織物(経糸:ポリエステル加工糸33dtex、緯糸:ポリエステル加工糸69dtex、織密度:経189本/25.4mm、緯120本/25.4mm)に銅メッキを行い銅皮膜を形成した。その後、銅皮膜上に銀めっきを行い銀皮膜が形成された導電性布帛を得た。得られた導電性布帛の原子吸光分析による金属被覆量は銅:100g/m2、銀:5g/m2であった。株式会社三菱ケミカルアナリテック製抵抗率計ロレスタMCP-T360により測定された導電性布帛の表面抵抗値は0.005Ω/sq.であった。
【0039】
<電源テープの作製>
上記導電性布帛の一方の面に離型性保護フィルムとしてPET75-RC611(日栄化工株式会社製)を貼り合わせた。次に導電性布帛の他方の面にウレタン系ホットメルトシート:エセランSHM120(シーダム株式会社製、厚み30μm)を熱圧着して貼り合わせ接着層を形成した。熱圧着にはエアー駆動式全自動転写用プレスHP-4536A-12(株式会社ハシマ製)を用い、熱圧着条件は130℃、0.5MPa、30秒間とした。次に炭酸ガスレーザを用いてカットし、接着層付きの電源テープと信号用導電部材を得た。それぞれのサイズは、陽極電源テープおよび陰極電源テープとして幅7.5mmで長さ900mm、信号用導電部材として幅1.6mmで長さ900mmとした。
【0040】
<回路層の形成>
補強基材としてポリエステルオーガンジーKK2040(宇仁繊維株式会社製)を用い、その一方の面に防水性樹脂皮膜として、厚みが30μmのポリウレタンシート:シルクロンES85(大倉工業株式会社製)を熱圧着で積層した。次に、防水性樹脂皮膜上に前記電源テープと信号用電極部材を重ね、熱圧着して固定し、その後離型性保護フィルムを剥離して取り除いた。信号用電極部材の両側に陽極電源テープおよび陰極電源テープを0.7mmの間隔をあけて平行に配置した。さらにその上に防水性樹脂皮膜としてシルクロンES85を重ね、熱圧着した。この防水性樹脂皮膜には、LED部品を実装するための開口部が設けてある。
【0041】
<部品の実装>
防水性樹脂皮膜に形成された開口部から露出している電源テープおよび信号用導電部材の表面に、3.5mm×3.7mmのシリアルフルカラーLEDパッケージ:SK6805(SHENZHEN LED COLOR OPTOELECTRONIC社製)と3.2mm×1.6mmの0.1μFチップコンデンサー:C1206C104K5RACTU(KEMET社製)を接合した。接合材料として銀ペースト:PE873(デュポンエレクトロニクスマテリアル社製)を用い、熱風循環乾燥炉で80℃にて30分間加温し接合した。シリアルフルカラーLEDパッケージは15mm間隔で並列接続となるように、全部で60個実装した。また、シリアルフルカラーLEDパッケージの信号入力端子および信号出力端子を信号用導電部材に接続している。
【0042】
ここでシリアルフルカラーLEDパッケージ:SK6805は、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子とこれを制御するLED制御ICとを搭載し一体化されている。SK6805の駆動電圧範囲は+5.0V~+3.5Vである。
【0043】
<発光状態の確認>
得られた電飾用テープの一方の端部に直流安定化電源:P4LE18-10(松定プレシジョン株式会社製)を接続して5.0Vを印加した。信号用導電部材の一方の端部には発光制御用の信号電圧源:Arduino Uno(Arduino社製)を接続して5V-0Vの矩形パルス電圧信号を入力し、電飾用テープの他方の端部に実装された末端LED部品(最も電源から遠いLED部品)の発光状態を確認した。電飾用テープに実装された全LEDパッケージを最大輝度で全てを白色に発光させた状態として、末端のLED部品の発光色について、国際照明委員会CIEが定めている色度座標を測定した。測定には1.5インチ積分球:FOIS-1(オーシャンオプティクス社製)と発光測定用ファイバマルチチャンネル分光システム:FLAME-S(オーシャンオプティクス社製)を用いた。末端LEDパッケージのCIE色度座標が、x=0.250~0.400且つy=0.250~0.400の範囲にあれば、発光状態は良好であると判定した。結果を表1に示す。
【0044】
<屈曲耐久性の評価>
得られた電飾用テープについて、小型卓上屈曲耐久試験機:TCDM111LH(ユアサシステム機器株式会社製)を用いて屈曲耐久性試験を行った。屈曲耐久性試験の条件は、屈曲半径を2mm、屈曲速度を100rpm、屈曲角度を±135°とし、試料の一方の端部に50gの荷重を負荷して屈曲回数を10,000回とした。屈曲前の両端の抵抗値に対し、屈曲回数10,000回後の抵抗値を測定してその増加率を算出した。抵抗値の増加率が100%未満であれば屈曲耐久性が良好であると判定した。結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
補強基材を用いずに電源テープと信号用導電部材5を防水性樹脂皮膜シルクロンES85に熱圧着で積層したこと、陽極電源テープおよび陰極電源テープを幅4.0mmとしたこと、さらにLED部品の実装間隔を30mmとし個数を30個としたこと以外は実施例1と同様にして電飾用テープを得た。数式1で得られるRの値、発光状態と屈曲耐久性を評価し表1に示す。
【0046】
[実施例3]
金属被覆量を銅:250g/m2、銀:5g/m2とし表面抵抗値が0.002Ω/sq.である導電性布帛を用いて電源テープとしたこと、陽極電源テープおよび陰極電源テープを幅3.0mmとしたこと、LED部品実装において接合材料をはんだペースト:SB6-HLGQ-20(株式会社ニホンゲンマ製)としたこと以外は実施例1と同様にして電飾用テープを得た。評価の結果を表1に示す。
【0047】
[実施例4]
金属被覆量を銅:35g/m2、銀:5g/m2とし表面抵抗値が0.015Ω/sq.である導電性布帛を用いて電源テープとしたこと、陽極電源テープおよび陰極電源テープを幅20.0mmとしたこと、LED部品実装においてシリアルフルカラーLEDパッケージ:SK6805と0.1μFチップコンデンサー:C1206C104K5RACTUとを、6.0mm×8.0mmの耐熱ガラスエポキシ製サブマウント上に搭載した状態で電源テープ上に実装したこと以外は実施例1と同様にして電飾用テープを得た。評価の結果を表1に示す。
【0048】
[実施例5]
金属被覆量を銅:15g/m2、銀:5g/m2とし表面抵抗値が0.030Ω/sq.である導電性布帛を用いて電源テープとしたこと、陽極電源テープおよび陰極電源テープを幅23.0mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電飾用テープを得た。評価の結果を表1に示す。
【0049】
[実施例6]
金属被覆量を銅:1020g/m2、銀:5g/m2とし表面抵抗値が0.0005Ω/sq.である導電性布帛を用いて電源テープとしたこと、陽極電源テープおよび陰極電源テープを幅3.0mmとしたこと以外は実施例1と同様にして電飾用テープを得た。評価の結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1]
陽極電源テープおよび陰極電源テープを幅20.0mmとしたこと以外は実施例5と同様にして電飾用テープを得た。評価結果を表1に示す。
【0051】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の電飾用テープは、パフォーマンス衣装やサイネージ用のテキスタイル、旗などに取り付けて電飾として用いることができる。柔軟性と屈曲耐久性を備える為、衣装やテキスタイルに取り付けた際に、衣装やテキスタイルの風合いを損なうことなく、耐久性も高い。通常の縫製手段によって繊維製品などに縫合が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1:電飾用テープ
2:電源テープ
21:陽極電源テープ
22:陰極電源テープ
3:LED部品
4:LED制御IC
5:信号用導電部材
6R:赤色発光素子
6G:緑色発光素子
6B:青色発光素子
7:補強基材
8:接着層
WA:陽極電源テープの幅
WC:陰極電源テープの幅