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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】積層ガラスの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20231211BHJP
   C03C 17/245 20060101ALI20231211BHJP
   B32B 37/06 20060101ALI20231211BHJP
   B32B 37/08 20060101ALI20231211BHJP
   B32B 17/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C23C14/56 D
C03C17/245 A
B32B37/06
B32B37/08
B32B17/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019138901
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021117
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】西森 才将
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】梨木 智剛
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-049876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/56
C03C 17/245
B32B 37/06
B32B 37/08
B32B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するガラス基材を繰り出すように構成される繰出ロールと、
前記出ロールの搬送方向下流側に配置され、前記ガラス基材に機能層を設けて積層ガラスを作製するように構成される成膜加熱ユニットと、
前記成膜加熱ユニットの搬送方向下流側に配置され、前記積層ガラスを冷却するように構成される冷却ユニットと、
前記冷却ユニットの搬送方向下流側に配置され、前記積層ガラスを巻き取るように構成される巻取ロールとを備え、
前記成膜加熱ユニットは、前記積層ガラスを加熱するように構成される加熱部を備え、
前記冷却ユニットは、前記加熱部によって加熱された前記積層ガラスを冷却するときに、少なくとも
第1冷却温度T1で前記積層ガラスに接触する第1冷却ロールと、
前記第1冷却温度T1より低い第2冷却温度T2で前記積層ガラスに接触する第2冷却ロールとを備え
前記加熱部によって加熱された前記積層ガラスの表面温度T0は、200℃以上であり、
前記第1冷却温度T1は、125℃以上であることを特徴とする、積層ガラスの製造装置。
【請求項2】
前記加熱部によって加熱された前記積層ガラスの表面温度T0と、前記第1冷却温度T1と、前記第2冷却温度T2とが、下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする、請求項1に記載の積層ガラスの製造装置。
50℃≦T0-T1<130℃ (1)
80℃≦T1-T2<160℃ (2)
【請求項3】
前記機能層が、金属酸化物からなる透明導電層であり、
前記加熱部が、前記積層ガラスを200℃以上に加熱するように構成されることを特徴
とする、請求項1または2に記載の積層ガラスの製造装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の積層ガラスの製造装置を用いて積層ガラスを製造する方法であり、
前記ガラス基材を前記出ロールから繰り出す工程と、
前記成膜加熱ユニットによって、前記ガラス基材に前記機能層を設けて前記積層ガラスを加熱する工程と、
前記積層ガラスを前記第1冷却ロールと接触させて冷却する第1冷却工程と、
前記積層ガラスを前記第2冷却ロールと接触させて冷却する第2冷却工程と、
前記前記積層ガラスを前記巻取ロールによって巻き取る工程と
を備えることを特徴とする、積層ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ガラスの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの画像表示装置に備えられる光学フィルムのフレキシブル基材として、耐熱性に優れる薄ガラス基材が用いられつつある。具体的には、薄ガラス基材にインジウムスズ酸化物(ITO)などの透明導電層を形成した透明導電性ガラスが、タッチパネルフィルムとして用いられる。
【0003】
このような光学フィルムを量産するための装置として、巻き出しロールと、互いに対向配置されるスパッタおよびヒータと、クーリングドラムと、巻き取りロールとを、薄ガラス基材の搬送方向下流側に向かって順に備えるロール・ツー・ロールスパッタリング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に記載されるロール・ツー・ロールスパッタリング装置では、スパッタにより基材に対して透明導電膜などの機能層をスパッタリングしながら、これを加熱し、その後、クーリングドラムによってこれらを冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-109073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、表面抵抗が低い透明導電層が求められ、そのため、ヒータの加熱温度を高くすることが試案される。
【0007】
しかし、特許文献1に記載のロール・ツー・ロールスパッタリング装置では、高温の薄ガラス基材をクーリングドラムで冷却すると、薄ガラス基材が破損するという不具合がある。
【0008】
本発明は、ガラス基材の破損を抑制できる積層ガラスの製造装置および製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(1)は、可撓性を有するガラス基材を繰り出すように構成される繰出ロールと、前記操出ロールの搬送方向下流側に配置され、前記ガラス基材に機能層を設けて積層ガラスを作製するように構成される成膜加熱ユニットと、前記成膜加熱ユニットの搬送方向下流側に配置され、前記積層ガラスを冷却するように構成される冷却ユニットと、前記冷却ユニットの搬送方向下流側に配置され、前記積層ガラスを巻き取るように構成される巻取ロールとを備え、前記成膜加熱ユニットは、前記積層ガラスを加熱するように構成される加熱部を備え、前記冷却ユニットは、前記加熱部によって加熱された前記積層ガラスを冷却するときに、少なくとも第1冷却温度T1で前記積層ガラスに接触する第1冷却ロールと、前記第1冷却温度T1より低い第2冷却温度T2で前記積層ガラスに接触する第2冷却ロールとを備える、積層ガラスの製造装置を含む。
【0010】
この積層ガラスの製造装置では、積層ガラスが、第1冷却温度T1である第1冷却ロールと、第1冷却温度T1より低い第2冷却温度T2である第2冷却ロールとに順に接触できる。そのため、1つのクーリングドラムが積層ガラスを冷却する特許文献1の装置に比べて、上記した第1冷却ロールおよび第2冷却ロールが積層ガラスが順に冷却するので、積層ガラスの破損、とりわけ、脆弱なガラス基材の破損を抑制できる。
【0011】
本発明[2]は、前記加熱部によって加熱された前記積層ガラスの表面温度T0と、前記第1冷却温度T1と、前記第2冷却温度T2とが、下記式(1)および(2)を満足する、[1]に記載の積層ガラスの製造装置を含む。
【0012】
50℃≦T0-T1<130℃ (1)
80℃≦T1-T2<160℃ (2)
この積層ガラスの製造装置では、成膜加熱ユニットの加熱部によって加熱された積層ガラスの表面温度T0と、第1冷却温度T1と、第2冷却温度T2とが、式(1)および(2)を満足するので、冷却ユニットにおける積層ガラスの破損を有効に抑制できる。
【0013】
本発明[3]は、前記機能層が金属酸化物からなる透明導電層であり、前記加熱部が、前記積層ガラスを200℃以上に加熱するように構成される、[1]または[2]に記載の積層ガラスの製造装置を含む。
【0014】
この積層ガラスの製造装置では、加熱部が、積層ガラスを200℃以上に加熱するように構成されるので、透明導電層の表面抵抗をより一層低減できる。一方、加熱部の設定温度を上記した高温に設定すれば、冷却ユニットにおいて、積層ガラスが破損し易い。しかし、この積層ガラスの製造装置では、第1冷却ロールおよび第2冷却ロールを備えるので、積層ガラス(とりわけ、ガラス基材)の上記した破損を抑制できながら、機能層の表面抵抗を低減できる。
【0015】
本発明[4]は、[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層ガラスの製造装置を用いて積層ガラスを製造する方法であり、前記ガラス基材を前記操出ロールから繰り出す工程と、前記成膜加熱ユニットによって、前記ガラス基材に前記機能層を設けて前記積層ガラスを加熱する工程と、前記積層ガラスを前記第1冷却ロールと接触させて冷却する第1冷却工程と、前記積層ガラスを前記第2冷却ロールと接触させて冷却する第2冷却工程と、前記前記積層ガラスを前記巻取ロールによって巻き取る工程とを備える、積層ガラスの製造方法を含む。
【0016】
この積層ガラスの製造方法では、第1冷却工程で、第1冷却温度T1の第1冷却ロールが積層ガラスに接触し、第2冷却工程で、第2冷却温度T2の第2冷却ロールが積層ガラスに接触する。そのため、上記した第1冷却工程および第2冷却工程を順に実施することにより、積層ガラスの破損、とりわけ、脆弱なガラス基材の破損を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層ガラスの製造装置および製造方法は、ガラス基材の破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の製造装置の一実施形態である搬送成膜装置を示す。
図2図2A図2Dは、図1の搬送成膜装置で搬送されている搬送物の断面図であり、図2Aが、繰出ロールから繰り出される第1保護材およびガラス基材、図2Bが、第1駆動ロールに搬送されるガラス基材、図2Cが、冷却装置に搬送されるガラス基材および透明導電層、図2Dは、巻取ロールに巻き取られる第2保護材、透明導電層およびガラス基材を示す。
図3図3は、図1に示す搬送成膜装置における第1冷却ロールおよび第2冷却ロールと、それらに搬送される透明導電性ガラスとの拡大図である。
図4図4は、図3に示す第1冷却ロールと第2冷却ロールと透明導電性ガラスとの変形例(第1冷却ロールがガラス基材に接触する態様)の拡大図である。
図5図5は、図3に示す第1冷却ロールと第2冷却ロールと透明導電性ガラスとの変形例(第1冷却ロールの回転軸と第2冷却ロールの回転軸とを結ぶ線分に平行して透明導電性ガラスが搬送される態様)の拡大図である。
図6図6は、ガラス基材の屈曲試験で用いられる2つの治具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.搬送成膜装置
本発明の製造装置の一実施形態である搬送成膜装置を、図1図3を参照して、説明する。
【0020】
図1に示す搬送成膜装置10は、ガラス基材1を搬送しながらその厚み方向一方面51に透明導電層(機能層の一例)2(図2C参照)を設けて、透明導電性ガラス(積層ガラスの一例)3を製造する。具体的には、搬送成膜装置10は、ロール状の搬送基材4(後述)から第1保護材5を剥離してガラス基材1単体を搬送させ、次いで、ガラス基材1に透明導電層2を設けて透明導電性ガラス3を製造し、次いで、透明導電性ガラス3に第2保護材6を積層させてロール状に巻回する。
【0021】
搬送成膜装置10は、搬送装置11と、スパッタ装置(成膜加熱ユニットの一例)12と、冷却装置(冷却ユニットの一例)13とを備える。さらに、搬送装置11は、繰出部14と、除電部15と、巻取部16とを備える。また、除電部15は、第1除電部17と、第2除電部18とを備える。搬送成膜装置10は、繰出部14と、第1除電部17と、スパッタ装置12と、冷却装置13と、第2除電部18と、巻取部16とを搬送方向上流側(以下、「上流側」と省略する)から搬送方向下流側(以下、「下流側」と省略する)に向かってこの順で備える。以下、これらを詳述する。
【0022】
繰出部14は、搬送装置11の中で最上流側に配置されている。繰出部14は、長尺な搬送基材4を繰り出す。繰出部14は、繰出ロール21と、第1駆動ロール22と、保護材巻取ロール23と、繰出ケーシング24とを備える。
【0023】
繰出ロール21では、ロール状の搬送基材4がセットされている。すなわち、繰出ロール21の表面(周面)に、搬送方向に長尺な搬送基材4が巻回されている。繰出ロール21は、搬送方向に回転する回転軸を有し、幅方向に延びる円柱部材である。なお、本実施形態において、後述する各種のロール(繰出ロール21、第1~第2駆動ロール(22、40)、保護材巻取ロール23、第1~第4ガイドロール(26、28、31、38)、保護材ガイドロール43、第1~第2冷却ロール(34、35)、巻取ロール41、保護材繰出ロール42、ニップロール44)は、いずれも、搬送方向に回転する回転軸を有し、幅方向(搬送方向および厚み方向に直交する方向)に延びる円柱部材である。
【0024】
繰出ロール21は、外部動力などによって駆動して、図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。
【0025】
第1駆動ロール22は、繰出ロール21の下流側に配置されている。第1駆動ロール22は、ガラス基材1を搬送するための動力が外部から付与されるように構成されている。これによって、第1駆動ロール22は、上記した外部の動力に基づいて、図1に示す矢印方向に回転する。具体的には、第1駆動ロール22の回転軸の端部には、ギヤ(図示せず)が設けられており、ギヤには、第1駆動ロール22を矢印方向に回転させるためのモータ(図示せず)が接続されている。第1駆動ロール22は、モータの駆動力によって回転する。
【0026】
これにより、第1駆動ロール22は、繰出ロール21にセットされた搬送基材4のガラス基材1を第1除電部17に搬送する。
【0027】
また、この第1駆動ロール22は、ニップロール44に隣接して配置される第2駆動ロール40(後述)と異なり、ガラス基材1の厚み方向一方面(接触面)51(図2B参照)と接触している状態において、ガラス基材1の厚み方向他方面(非接触面)52(図2B参照)が、他の搬送部材(ニップロール44など)と接触しないように構成されている。
【0028】
保護材巻取ロール23は、繰出ロール21の近傍に配置される。保護材巻取ロール23は、搬送基材4から第1保護材5を剥離(離間)させるとともに、第1保護材5を巻き取る。保護材巻取ロール23は、外部動力などによって駆動して図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。
【0029】
繰出ケーシング24は、その内部に、繰出ロール21、第1駆動ロール22および保護材巻取ロール23を収容する。繰出ケーシング24は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。具体的には、繰出ケーシング24には、その内部の空気を外部に排出する真空ポンプ(図示せず)が接続されている。なお、本明細書において、真空状態とは、例えば、気圧が0.1Pa以下、好ましくは、1×10-3Pa以下である状態をいう。
【0030】
第1除電部17は、繰出部14の下流側に、繰出部14と隣接するように配置されている。第1除電部17は、ガラス基材1に対して除電する。第1除電部17は、第1除電機25と、第1ガイドロール26と、第1除電ケーシング27とを備える。
【0031】
第1除電機25は、ガラス基材1に帯電した電気を低減させる。第1除電機25は、第1駆動ロール22の下流側かつ第1ガイドロール26の上流側に配置されている。第1除電機25としては、例えば、コロナ放電式除電機、電離放射線式除電機などが挙げられる。
【0032】
第1ガイドロール26は、第1駆動ロール22から第1除電機25を通過して搬送されるガラス基材1を、スパッタ装置12の第2ガイドロール28に案内(ガイド)する。第1ガイドロール26は、第1除電機25の下流側かつ第2ガイドロール28の上流側に配置されている。第1ガイドロール26は、ガラス基材1の搬送に従って回転するフリーロールである。
【0033】
第1除電ケーシング27は、その内部に、第1除電機25および第1ガイドロール26を収容する。第1除電ケーシング27は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。
【0034】
スパッタ装置12は、第1除電部17の下流側に、第1除電部17と隣接するように配置されている。スパッタ装置12は、成膜領域33において、ガラス基材1に対してスパッタリングを実施して、透明導電層2(図2C参照)を形成する。
【0035】
スパッタ装置12は、第2ガイドロール28と、スパッタターゲット29と、加熱機30と、第3ガイドロール31と、スパッタケーシング32とを備える。
【0036】
第2ガイドロール28は、第1ガイドロール26から搬送されるガラス基材1を成膜領域33に案内(ガイド)する。第2ガイドロール28は、第1ガイドロール26の下流側かつスパッタターゲット29の上流側に配置されている。第2ガイドロール28の構成は、第1ガイドロール26の構成と同一である。
【0037】
スパッタターゲット29は、透明導電層2の原材料である。スパッタターゲット29は、第2ガイドロール28の下流側かつ第3ガイドロール31の上流側に、ガラス基材1と間隔を隔てて対向配置されている。スパッタターゲット29は、ガラス基材1の厚み方向一方面51に面する。
【0038】
スパッタターゲット29の材料としては、例えば、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Nb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含む金属酸化物が挙げられる。具体的には、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)などのインジウム含有酸化物、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)などのアンチモン含有酸化物などが挙げられ、好ましくは、インジウム含有酸化物、より好ましくは、ITOが挙げられる。
【0039】
加熱機30は、ガラス基材1やそれから得られる透明導電性ガラス3を加熱する。第2ガイドロール28の下流側かつ第3ガイドロール31の上流側に、ガラス基材1と間隔を隔てて配置されている。また、加熱機30は、ガラス基材1を基準にして、スパッタターゲット29とは反対側に対向配置されている。加熱機30は、ガラス基材1の厚み方向他方面52に面する。
【0040】
加熱機30の加熱方式は、特に限定されず、例えば、熱放射、対流、熱伝導などが挙げられ、好ましくは、熱放射が挙げられる。具体的には、加熱機30としては、赤外線ヒータ、ハロゲンランプヒータ、高周波誘導ヒータ、熱風ヒータ、電熱ヒータなどが挙げられる。加熱機30として、好ましくは、赤外線ヒータ、ハロゲンランプヒータが挙げられる。
【0041】
成膜領域33は、第2ガイドロール28と第3ガイドロール31との搬送方向途中に区画される。成膜領域33には、スパッタターゲット29と、加熱機30とが配置されている。
【0042】
第3ガイドロール31は、成膜されたガラス基材1(具体的には、ガラス基材1および透明導電層2を厚み方向に備える透明導電性ガラス3)(図2C参照)を、冷却装置13の第1冷却ロール34に案内(ガイド)する。第3ガイドロール31は、スパッタターゲット29の下流側かつ第1冷却ロール34(後述)の上流側に配置されている。第3ガイドロール31の構成は、第1ガイドロール26の構成と同一である。
【0043】
スパッタケーシング32は、第2ガイドロール28、スパッタターゲット29、加熱機30および第3ガイドロール31を収容する。スパッタケーシング32は、成膜領域33を含む成膜室を構成する。スパッタケーシング32は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。なお、スパッタ装置12は、図示しないが、スパッタを実施するための他の素子(アノード、カソード、Arガス導入手段など)を備える。スパッタ装置12としては、具体的には、例えば、2極型スパッタ装置、電子サイクロトロン共鳴型スパッタ装置、マグネトロン型スパッタ装置、イオンビーム型スパッタ装置などが挙げられる。
【0044】
冷却装置13は、スパッタ装置12の下流側に、スパッタ装置12と隣接するように配置されている。冷却装置13は、スパッタ装置12で加熱された透明導電性ガラス3を冷却する。冷却装置13は、第1冷却ロール34と、第2冷却ロール35と、冷却ケーシング36とを備える。
【0045】
第1冷却ロール34は、冷却装置13において上流側に配置されている。第2冷却ロール35は、第1冷却ロール34の下流側に配置されている。第1冷却ロール34および第2冷却ロール35は、それぞれ、外部動力などによって駆動して図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。
【0046】
第1冷却ロール34は、例えば、内部に、冷却水などの冷媒が流れる流路を含む。第1冷却ロール34は、透明導電性ガラス3を冷却するときに、第1冷却温度T1で透明導電性ガラス3に接触するように、構成されている。具体的には、第1冷却ロール34の表面温度が、第1冷却温度T1となる。第1冷却温度T1は、後で詳述する。
【0047】
第2冷却ロール35は、例えば、内部に、冷却水などの冷媒が流れる流路を含む。第2冷却ロール35は、透明導電性ガラス3を冷却するときに、第2冷却温度T2で透明導電性ガラス3に接触するように、構成されている。具体的には、第2冷却ロール35の表面温度が、第2冷却温度T2となる。第2冷却温度T2は、第1冷却温度T1とともに後で詳述するが、第1冷却温度T1より低い。
【0048】
冷却ケーシング36は、その内部に、第1冷却ロール34および第2冷却ロール35を収容する。冷却ケーシング36は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。
【0049】
第2除電部18は、冷却装置13の下流側に、冷却装置13と隣接するように配置されている。第2除電部18は、透明導電性ガラス3に対して除電する。第2除電部18は、第2除電機37と、第4ガイドロール38と、第2除電ケーシング39とを備える。
【0050】
第2除電機37は、ガラス基材1に帯電した電気を低減させる。第2除電機37は、第2冷却ロール35の下流側かつ第4ガイドロール38の上流側に配置されている。第2除電機37の構成は、第1除電機25の構成と同一である。
【0051】
第4ガイドロール38は、第2冷却ロール35から第2除電機37を通過して搬送される透明導電性ガラス3を、巻取部16の第2駆動ロール40に案内(ガイド)する。第4ガイドロール38は、第2除電機37の下流側かつ第2駆動ロール40の上流側に配置されている。第4ガイドロール38の構成は、第1ガイドロール26の構成と同一である。
【0052】
第2除電ケーシング39は、その内部に、第2除電機37および第4ガイドロール38を収容する。第2除電ケーシング39は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。
【0053】
巻取部16は、搬送装置11の中で最下流側に配置されており、第2除電機37の下流側に、第2除電機37と隣接するように配置されている。巻取部16は、透明導電性ガラス3を第2保護材6(図2D参照)とともに巻き取る。巻取部16は、第2駆動ロール40と、巻取ロール41と、保護材繰出ロール42と、保護材ガイドロール43と、ニップロール44と、巻取ケーシング45とを備える。
【0054】
第2駆動ロール40は、第4ガイドロール38の下流側かつ巻取ロール41の上流側に配置されている。第2駆動ロール40は、ガラス基材1を含む透明導電性ガラス3を搬送するための動力が外部から付与されるように構成されている。これによって、第2駆動ロール40は、上記した外部の動力に基づいて、図1に示す矢印方向に回転する。これにより、第2駆動ロール40は、透明導電性ガラス3を巻取ロール41に搬送する。
【0055】
第2駆動ロール40は、透明導電性ガラス3の厚み方向一方面53と接触している状態において、第2保護材6の厚み方向他方面54がニップロール44と接触するように構成されている。つまり、第2駆動ロール40およびニップロール44は、ニップ機構を構成する。
【0056】
巻取ロール41は、第2駆動ロール40とニップロール44との間から搬送される透明導電性ガラス3および第2保護材6の積層体7(後述)を巻き取る。巻取ロール41は、外部動力などによって駆動して、図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。
【0057】
保護材繰出ロール42は、巻取ロール41の近傍に配置されている。保護材繰出ロール42では、ロール状の第2保護材6がセットされている。すなわち、保護材繰出ロール42の表面に、搬送方向に長尺な第2保護材6が巻回されている。保護材繰出ロール42は、外部動力などによって駆動して、図1に示す矢印方向に回転するように構成されている。保護材繰出ロール42は、第2保護材6を保護材ガイドロール43に繰り出す。
【0058】
保護材ガイドロール43は、保護材繰出ロール42から繰り出される第2保護材6を、ニップロール44に案内する。保護材ガイドロール43は、保護材繰出ロール42とニップロール44との搬送方向途中に配置されている。
【0059】
ニップロール44は、第2駆動ロール40とともに、第2保護材6を透明導電性ガラス3に積層させる。ニップロール44は、第2駆動ロール40と対向配置されている。ニップロール44は、その表面が透明導電性ガラス3および第2保護材6を第2駆動ロール40の表面とで挟みながらラミネート可能に構成されている。
【0060】
巻取ケーシング45は、その内部に、第2駆動ロール40、巻取ロール41、保護材繰出ロール42、保護材ガイドロール43およびニップロール44を収容する。巻取ケーシング45は、その内部を真空状態に調節するように構成されている。
【0061】
2.透明導電性ガラスの製造方法
搬送成膜装置10を用いて透明導電性ガラス3を製造する方法を説明する。透明導電性ガラス3の製造方法は、搬送基材4を用意する用意工程と、ガラス基材1から第1保護材5を剥離する剥離工程と、ガラス基材1に、透明導電層2を真空下で設ける成膜工程と、透明導電性ガラス3を冷却する冷却工程と、透明導電性ガラス3を巻取ロール41に巻き取る巻取工程とを備える。以下、各工程を詳述する。
【0062】
まず、搬送基材4を繰出ロール21に用意する(用意工程)。具体的には、搬送基材4を用意し、繰出ロール21にセットする。
【0063】
搬送基材4は、保護材付きガラス基材であって、具体的には、ガラス基材1と第1保護材5とを厚み方向他方側に向かって順に備える(図2A参照)。搬送基材4は、搬送方向に長尺であり、ロール状に巻回されている。このようなロール状の搬送基材4は、公知または市販のものを用いることができる。
【0064】
ガラス基材1は、フィルム形状(シート形状を含む)を有し、透明なガラスから形成されている。ガラスとしては、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスなどが挙げられる。
【0065】
ガラス基材1は、可撓性を有する。
【0066】
一方、ガラス基材1の機械強度は、通常低く(脆弱であり)、下記で測定される屈曲試験における破断時の両端部間距離Lが、例えば、15mm以下、または、20mm以下である。
【0067】
図6に示すように、具体的には、ガラス基材1を長さ120mmに切断加工し、これの長手方向両端部を、間隔を対向配置される2つの治具81のそれぞれの引っ掛け部82に引っ掛ける。続いて、2つの治具81を互いにゆっくりと近づけ、ガラス基材1が破断した時における2つの引っ掛け部82間の長さLを、破断時の両端部間距離Lとして得る。
【0068】
ガラス基材1の厚みは、例えば、250μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、150μm以下、さらに好ましくは、100μm以下であり、また、例えば、10μm以上、好ましくは、40μm以上である。
【0069】
このようなガラス基材1は、市販品を用いることができ、例えば、G-leafシリーズ(日本電気硝子社製)などが用いられる。
【0070】
第1保護材5は、ロール状のガラス基材1を繰り出す際に、ガラス基材1同士の接触による破損を防止する。第1保護材5は、フィルム形状を有し、ガラス基材1の厚み方向他方面52に配置されている。
【0071】
第1保護材5としては、例えば、粘着剤付きフィルム、合紙などが挙げられる。
【0072】
粘着剤付きフィルムは、高分子フィルムと粘着剤層とを厚み方向に備える。
【0073】
高分子フィルムとしては、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなど)、ポリカーボネート系フィルム、オレフィン系フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シクロオレフィンフィルムなど)、アクリル系フィルム、ポリエーテルスルフォン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、メラミン系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、セルロース系フィルム、ポリスチレン系フィルムが挙げられる。
【0074】
粘着剤層は、感圧接着剤層であり、例えば、アクリル系粘着剤層、ゴム系粘着剤層、シリコーン系粘着剤層、ポリエステル系粘着剤層、ポリウレタン系粘着剤層、ポリアミド系粘着剤層、エポキシ系粘着剤層、ビニルアルキルエーテル系粘着剤層、フッ素系粘着剤層などが挙げられる。
【0075】
合紙としては、例えば、上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙などが挙げられる。
【0076】
第1保護材5の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0077】
次いで、搬送成膜装置10を作動させる。具体的には、ケーシングの全て(繰出ケーシング24、第1除電ケーシング27、スパッタケーシング32、冷却ケーシング36、第2除電ケーシング39、巻取ケーシング45)を真空にするとともに、駆動ロールの全て(繰出ロール21、第1~第2駆動ロール(22、40)、保護材巻取ロール23、第1~第2冷却ロール(34、35)、巻取ロール41、保護材繰出ロール42)を回転駆動させる。また、除電部15(第1除電機25および第2除電機37)、冷却装置13、スパッタ装置12なども作動させる。これにより、搬送基材4が下流側に搬送されるとともに、剥離工程、成膜工程、冷却工程、および、巻取工程が順に実施される。
【0078】
具体的には、繰出部14において、搬送基材4は、繰出ロール21から繰り出される。その際、第1保護材5がガラス基材1から剥離される(剥離工程)。第1保護材5は、保護材巻取ロール23に巻き取られる。他方、ガラス基材1は、単独で、第1駆動ロール22によって第1除電部17に搬送される(図2B参照)。ガラス基材1の厚み方向一方面51が第1駆動ロール22と接触する状態において、ガラス基材1の厚み方向他方面52(非接触面52)は、他の部材と接触しない。ガラス基材1は、第1駆動ロール22と接触して帯電しても、第1除電部17における第1除電機25の作動によって除電される。
【0079】
続いて、ガラス基材1は、第1ガイドロール26によって、スパッタ装置12に案内される。
【0080】
続いて、スパッタ装置12において、ガラス基材1は、第2ガイドロール28によって、成膜領域33に案内される。成膜領域33では、ガラス基材1に対して、スパッタリングが実施される。スパッタリングとしては、具体的には、2極スパッタリング法、電子サイクロトロン共鳴スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法などが挙げられる。スパッタリング時の気圧(すなわち、成膜領域33の気圧)は、真空であり、好ましくは、1.0Pa未満、より好ましくは、0.5Pa以下である。
【0081】
これにより、成膜領域33において、ガラス基材1の厚み方向一方面51に透明導電層2が成膜されて、ガラス基材1と、透明導電層2とを厚み方向一方側に向かって順に備える透明導電性ガラス3が製造される(図2C参照)(成膜工程)。
【0082】
また、スパッタリングと同時に、透明導電性ガラス3は、加熱機30によって加熱される。これにより、例えば、透明導電層2の材料が金属酸化物か(好ましくは、ITO)である場合には、透明導電層2の成膜と同時に、透明導電層2を結晶化させることができ、その結果、透明導電層2の表面抵抗を低減できる。
【0083】
加熱温度としては、加熱機30の温度として、例えば、300℃以上、好ましくは、400℃以上、より好ましくは、450℃以上であり、また、例えば、800℃以下である。
【0084】
また、透明導電性ガラス3の表面温度T0は、例えば、175℃以上、好ましくは、200℃以上、より好ましくは、250℃以上であり、また、例えば、500℃以下、好ましくは、400℃以下である。なお、透明導電性ガラス3の表面温度T0を、加熱機30の温度に0.6を乗じた値であり、また、実測することもできる。
【0085】
透明導電性ガラス3の表面温度T0が、上記した下限以上であれば、透明導電層2の表面抵抗を有効に低減できる。
【0086】
加熱後の透明導電層2(具体的には、結晶化した透明導電層2)の表面抵抗は、例えば、100Ω/□以下、好ましくは、50Ω/□以下、より好ましくは、40Ω/□以下、さらに好ましくは、30Ω/□以下、とりわけ好ましくは、25Ω/□以下、最も好ましくは、20Ω/□以下であり、また、0Ω/□超過である。表面抵抗は、四端子法により測定される。
【0087】
その後、透明導電性ガラス3は、第3ガイドロール31によって、冷却装置13に案内される。
【0088】
冷却装置13において、透明導電性ガラス3は、第1冷却ロール34および第2冷却ロール35に順に接触して、冷却される(冷却工程)。
【0089】
冷却工程は、第1冷却工程と、第2冷却工程とを順に備える。第1冷却工程では、第1冷却ロール34が透明導電性ガラス3に接触し、続いて、第2冷却工程では、第2冷却ロール35が透明導電性ガラス3に接触する。
【0090】
具体的には、透明導電性ガラス3は、上記した第1冷却温度T1になっている第1冷却ロール34と、第1冷却温度T1より低い第2冷却温度T2になっている第2冷却ロール35とに順に接触して、段階的に冷却される。
【0091】
第1冷却温度T1は、例えば、400℃未満、好ましくは、350℃以下、より好ましくは、300℃未満、さらに好ましくは、250℃以下であり、また、例えば、100℃以上、好ましくは、125℃以上であり、より好ましくは、175℃以上である。
【0092】
第2冷却温度T2は、例えば、100℃未満、好ましくは、95℃以下、より好ましくは、90℃未満、さらに好ましくは、85℃以下である。また、第2冷却温度T2は、例えば、-25℃以上、好ましくは、0℃以上、より好ましくは、25℃以上、さらに好ましくは、50℃以上、とりわけ好ましくは、75℃以上である。
【0093】
また、第1冷却温度T1および第2冷却温度T2は、加熱された透明導電性ガラス3の温度(表面温度)T0とともに、例えば、下記式(1)~(2)を満足し、好ましくは、下記式(3)~(4)を満足し、より好ましくは、下記式(5)~(6)を満足する。
【0094】
30℃≦T0-T1<250℃ (1)
50℃≦T1-T2<200℃ (2)
50℃≦T0-T1<130℃ (3)
80℃≦T1-T2<160℃ (4)
60℃≦T0-T1<120℃ (5)
110℃≦T1-T2<130℃ (6)
また、上記した温度T0~T2は、例えば、温度の差の比に関する下記式(7)を満足し、好ましくは、下記式(8)を満足し、より好ましくは、下記式(9)を満足する。
【0095】
0.25≦(T0-T1)/(T1-T2)<4 (7)
0.5≦(T0-T1)/(T1-T2)<1.75 (8)
0.6≦(T0-T1)/(T1-T2)<1.25 (9)
温度T0~T2が上記した式を満足すれば、冷却装置13における透明導電性ガラス3の破損(とりわけ、クラック)を有効に抑制できる。
【0096】
図3に示すように、第1冷却工程では、透明導電層2が、第1冷却ロール34に直接接触する。また、ガラス基材1は、透明導電層2を介して第1冷却ロール34に隣接するため、透明導電層2と同程度に冷却される。
【0097】
第2冷却工程では、ガラス基材1が、第2冷却ロール35に直接接触する。また、透明導電層2は、ガラス基材1を介して第2冷却ロール35に隣接するため、ガラス基材1と同程度に冷却される。
【0098】
透明導電性ガラス3と、第1冷却ロール34および第2冷却ロール35との接触面積の拡大(ひいては、冷却効率の向上)の観点から、第1冷却ロール34の回転軸と第2冷却ロール35の回転軸とを結ぶ線分を横切るように、透明導電性ガラス3は搬送される。
【0099】
図1に示すように、その後、透明導電性ガラス3は、冷却装置13から第2除電部18に搬送される。
【0100】
図3に示すように、透明導電性ガラス3の厚み方向他方面52(ガラス基材1の厚み方向他方面52)では、第2冷却ロール35との摩擦により、帯電が発生しても、第2除電部18の第2除電機37の作動によって除電される。他方、透明導電性ガラス3の厚み方向一方面53(透明導電層2の厚み方向一方面53)では、透明導電層2が導電性であることから、第1冷却ロール34と摩擦しても、通常、帯電しない。
【0101】
その後、透明導電性ガラス3は、第4ガイドロール38によって、巻取部16に案内される。
【0102】
巻取部16において、第2保護材6は、保護材繰出ロール42から繰り出され、保護材ガイドロール43に案内され、ニップロール44に搬送される。
【0103】
一方、透明導電性ガラス3は、第2保護材6とともに、第2駆動ロール40とニップロール44との間を通過して、透明導電性ガラス3の厚み方向他方面52に第2保護材6がラミネートされる。
【0104】
積層体7の透明導電性ガラス3の厚み方向一方面53が第2駆動ロール40に接触している状態において、積層体7における第2保護材6の厚み方向他方面54(接触面54)は、ニップロール44に接触する(プレスされる)。
【0105】
その後、透明導電性ガラス3は、第2保護材6とともに巻取ロール41に巻き取られる(巻取工程)。具体的には、透明導電性ガラス3と、その厚み方向他方面52(透明導電層2と反対側の表面52)に配置される第2保護材6とを備える積層体7(図2D参照)がロール状に巻回される。積層体7は、第2保護材6、ガラス基材1および透明導電層2を厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0106】
3.透明導電性ガラスの用途
透明導電性ガラス3は、例えば、画像表示装置などの光学装置に用いられる。透明導電性ガラス3を画像表示装置(具体的には、LCDモジュール、有機ELモジュールなどの画像表示素子を有する画像表示装置)に備える場合には、透明導電性ガラス3は、例えば、タッチパネル用基材、反射防止基材などとして用いられ、好ましくは、タッチパネル用基材として用いられる。タッチパネルの形式としては、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などの各種方式が挙げられ、特に静電容量方式のタッチパネルに好適に用いられる。
【0107】
4.一実施形態の作用効果
そして、この搬送成膜装置10では、透明導電性ガラス3が、第1冷却温度T1である第1冷却ロール34と、第1冷却温度T1より低い第2冷却温度T2である第2冷却ロール35とに順に接触できる。そのため、1つのクーリングドラムが透明導電性ガラス3にする特許文献1の装置に比べて、上記した第1冷却ロール34と第2冷却ロール35との接触によって、透明導電性ガラス3の破損、とりわけ、脆弱なガラス基材1の破損を抑制できる。
【0108】
また、スパッタ装置12の加熱機30によって加熱された透明導電性ガラス3の表面温度T0と、第1冷却温度T1と、第2冷却温度T2とが、下記式(3)および(4)を満足すれば、冷却装置13における透明導電性ガラス3の破損を有効に抑制できる。
【0109】
50℃≦T0-T1<130℃ (3)
80℃≦T1-T2<160℃ (4)
加熱機30が、透明導電性ガラス3を200℃以上に加熱するように構成されていれば、透明導電層2の表面抵抗をより一層低減できる。一方、加熱機30の設定温度を上記した高温に設定すれば、冷却装置13において、透明導電性ガラス3が破損し易い。しかし、この搬送成膜装置10では、上記した第1冷却ロール34および第2冷却ロール35を備えるので、透明導電性ガラス3(とりわけ、ガラス基材1)の上記した破損を抑制できながら、透明導電層2の表面抵抗を低減できる。
【0110】
また、この透明導電性ガラス3の製造方法では、第1冷却工程で、第1冷却温度T1の第1冷却ロール34が透明導電性ガラス3に接触し、第2冷却工程で、第2冷却温度T2の第2冷却ロール35が透明導電性ガラス3に接触する。そのため、上記した第1冷却工程および第2冷却工程を順に実施することにより、透明導電性ガラス3の破損、とりわけ、脆弱なガラス基材1の破損を抑制できる。
【0111】
4.変形例
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0112】
図示しないが、搬送成膜装置10は、冷却温度が互いに異なる冷却ロールを3つ以上備えることができる。例えば、冷却装置13が、第1冷却ロール34と、第2冷却ロール35と、図示しない第3冷却ロールとを備える。図示しない第3冷却ロールは、第2冷却ロール35の下流側に配置される。図示しない第3冷却ロールは、第3冷却工程を実施可能である。第3冷却工程において、図示しない第3冷却ロールは、第2冷却温度T2より低い第3冷却温度T3になっている。
【0113】
例えば、図示しないが、第1冷却ロール34が複数であってもよい。複数の第1冷却ロール34の第1冷却温度T1は、同一である。
【0114】
例えば、図示しないが、第2冷却ロール35が複数であってもよい。複数の第2冷却ロール35の第2冷却温度T2は、同一である。
【0115】
図4に示すように、第1冷却工程では、透明導電性ガラス3のガラス基材1は、その厚み方向他方面52が第1冷却ロール34に直接接触する。一方、第2冷却工程では、透明導電性ガラス3の透明導電層2は、その厚み方向一方面53が第2冷却ロール35に直接接触する。
【0116】
また、図5に示すように、透明導電性ガラス3と、第1冷却ロール34の回転軸および第2冷却ロール35の回転軸を結ぶ線分とが、平行するように、透明導電性ガラス3を搬送することもできる。
【0117】
第1冷却ロール34および/または第2冷却ロール35は、外部からの駆動力が入力されず、透明導電性ガラス3の搬送に従って回転するフリーロールであってもよい。
【0118】
図1に示す実施形態では、成膜装置として、スパッタ装置12を例示しているが、例えば、図示しないが、真空蒸着装置、化学蒸着装置などの真空成膜装置などが挙げられる。
【実施例
【0119】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0120】
実施例1
一実施形態で説明した搬送成膜装置10を準備した。第1冷却ロール34の第1冷却温度T1を200℃に設定した。第2冷却ロール35の第2冷却温度T2を80℃に設定した。
【0121】
続いて、ガラス基材1として、厚み50μmのG-leaf(日本電気硝子社製)と、その厚み方向他方面52に配置される第1保護材5とを備える搬送基材4を繰出ロール21にセットした(用意工程)。
【0122】
続いて、剥離工程、成膜工程、第1冷却工程、第2冷却工程、および、巻取工程を順に実施した。
【0123】
成膜工程では、材料がITOであり、厚み130nmである透明導電層2を、ガラス基材1の厚み方向一方面51に形成した。なお、成膜工程では、透明導電性ガラス3を500℃の加熱機30により、300℃に加熱して、表面抵抗を10Ω/□以下にした。
【0124】
実施例2~実施例3
表1に従って、第1冷却ロール34の第1冷却温度T1と、第2冷却ロール35の第2冷却温度T2とを変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
【0125】
実施例4
表1に従って、加熱機30の温度を350℃に変更した以外は、実施例1と同様に処理した。なお、透明導電性ガラス3の表面温度T0は、210℃である。
【0126】
比較例1~比較例2
表1に従って、冷却装置13に、第2冷却ロール35を備えず、第1冷却ロール34を備え、さらに、第1冷却ロール34の第1冷却温度T1を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
【0127】
[評価]
以下の事項を評価した。それらの結果を表1に示す。
【0128】
<ガラス基材の破損等>
各実施例および各比較例のガラス基材1の破損等を以下の基準に従って評価した。
×:冷却装置13においてガラス基材1が破損した。
○:冷却装置13においてガラス基材1がほんのわずかなクラックが見られたが、全体の破損はなかった。
◎:冷却装置13においてガラス基材1がクラックも破損もなかった。
【0129】
<透明導電層の導電性>
各実施例および各比較例の透明導電層2の表面抵抗を、四端子法により測定し、下記の基準に従って、透明導電層2の導電性を評価した。
○:透明導電層2の表面抵抗が、10Ω/□以下であった。
△:透明導電層2の表面抵抗が、10Ω/□超過、100Ω/□以下であった。
×:透明導電層2の表面抵抗が、100Ω/□超過であった。
【0130】
【表1】
【符号の説明】
【0131】
1 ガラス基材
2 透明導電層
3 透明導電性ガラス
10 搬送成膜装置
11 搬送装置
12 スパッタ装置
13 冷却装置
21 繰出ロール
30 加熱機
34 第1冷却ロール
35 第2冷却ロール
41 巻取ロール
T0 積層ガラスの表面温度
T1 第1冷却温度
T2 第2冷却温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6