IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-データ圧縮装置およびデータ圧縮方法 図1
  • 特許-データ圧縮装置およびデータ圧縮方法 図2
  • 特許-データ圧縮装置およびデータ圧縮方法 図3
  • 特許-データ圧縮装置およびデータ圧縮方法 図4
  • 特許-データ圧縮装置およびデータ圧縮方法 図5
  • 特許-データ圧縮装置およびデータ圧縮方法 図6
  • 特許-データ圧縮装置およびデータ圧縮方法 図7
  • 特許-データ圧縮装置およびデータ圧縮方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】データ圧縮装置およびデータ圧縮方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 7/30 20060101AFI20231211BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20231211BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20231211BHJP
   G06T 9/00 20060101ALI20231211BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H03M7/30 Z
A61B5/055 380
A61B5/055 376
A61B6/03 360T
G06T9/00 200
A61B5/00 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019148761
(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公開番号】P2021034752
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹島 秀則
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0119628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/00-9/00
A61B 5/055
A61B 6/03
G06T 9/00
A61B 5/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データに対して再構成処理を行なうことで再構成データを生成し、前記データに対して圧縮処理を行なうことで生成された圧縮データを復元した復元データに対して前記再構成処理を行なうことで復元再構成データを生成する再構成部と、
前記再構成データと前記復元再構成データとの比較に基づいて、前記データの圧縮率に関するパラメータを決定する決定部と、
を具備するデータ圧縮装置。
【請求項2】
前記再構成部は、前記再構成処理として、画像診断に用いるための本再構成処理よりも処理負荷が少ない仮再構成処理を行なう、請求項1に記載のデータ圧縮装置。
【請求項3】
前記決定部は、異なる複数の圧縮率と、前記複数の圧縮率による圧縮処理が行われることで生成された複数の圧縮データに基づく複数の復元再構成データと前記再構成データとの間のそれぞれの誤差との関係に基づいて、前記データの圧縮率に関するパラメータを決定する、請求項1または請求項2に記載のデータ圧縮装置。
【請求項4】
前記決定部は、決定すべきパラメータとして、前記再構成データと前記復元再構成データとの間の誤差が第1閾値以内かつ前記圧縮処理の圧縮率が第2閾値以上となる圧縮率に関するパラメータを選択する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデータ圧縮装置。
【請求項5】
前記誤差は、L1正則化に基づく誤差またはL2正則化に基づく誤差である、請求項3または請求項4に記載のデータ圧縮装置。
【請求項6】
前記再構成部は、圧縮データを入力データとし、前記圧縮データの元となるデータに対して再構成処理を行なうことで生成される再構成データを正解データとして学習させることで生成された学習済みモデルを、圧縮データに適用することで、前記復元再構成データを生成する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のデータ圧縮装置。
【請求項7】
圧縮データを入力データとし、前記圧縮データの元となるデータを正解データとして学習させることで生成される学習済みモデルを、圧縮データに適用することで、前記復元データを生成する復元部をさらに具備する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のデータ圧縮装置。
【請求項8】
データに対して再構成処理を行なうことで再構成データを生成し、前記データに対して圧縮処理を行なうことで生成された圧縮データを復元した復元データに対して前記再構成処理を行なうことで復元再構成データを生成し、
前記再構成データと前記復元再構成データとの比較に基づいて、前記データの圧縮率に関するパラメータを決定する、データ圧縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、データ圧縮装置、データ圧縮方法および学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医用画像診断機器の高性能化に伴い、医用画像診断装置で取得されたデータ(例えば、生データ)など、取り扱うデータ量が増加している。よって、データを効率的に保管、転送するためにデータを圧縮する必要性が生じている。圧縮の種類としては、可逆圧縮処理と非可逆圧縮処理とが存在するが、データの圧縮効率の観点からは非可逆圧縮処理のほうが好ましい。よって、医用分野においても、JPEG(Joint Photographic Experts Group)やMPEG(Moving Picture Experts Group)などの非可逆圧縮技術の応用が求められている。
【0003】
しかし、生データに対して非可逆圧縮処理を適用した場合、その後の再構成処理により生成される再構成画像は、非可逆圧縮によってどの程度歪みが生じるかが考慮されていない。すなわち、生データと当該生データに基づく再構成画像との関係が考慮されていないため、生データを非可逆圧縮した場合に生じる歪みが、再構成画像にどのような影響を与えるかが分からない。結果として、圧縮率を高められる可能性がある場合でも生データの圧縮率を下げざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-120279号公報
【文献】特開2013-052134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、効率的にデータを圧縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るデータ圧縮装置は、再構成部と決定部とを含む。再構成部は、データに対して再構成処理を行なうことで再構成データを生成し、前記データに対して圧縮処理を行なうことで生成された圧縮データを復元した復元データに対して前記再構成処理を行なうことで復元再構成データを生成する。決定部は、前記再構成データと前記復元再構成データとの比較に基づいて、前記データの圧縮率に関するパラメータを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るデータ圧縮装置を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るデータ圧縮装置の動作例を示すフローチャートである。
図3図3は、再構成画像に関する誤差と生データの圧縮率との関係を示すグラフである。
図4図4は、第2の実施形態に係る学習済みモデルの第1例を示す図である。
図5図5は、第2の実施形態に係る学習済みモデルの第2例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態に係るデータ圧縮装置の動作例を示すフローチャートである。
図7図7は、第3の実施形態に係るデータ圧縮装置の学習時の概念を説明する図である。
図8図8は、第4の実施形態に係る医用画像診断システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わるデータ圧縮装置、データ圧縮方法および学習装置について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。以下、一実施形態について図面を用いて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るデータ圧縮装置について図1のブロック図を参照して説明する。
第1の実施形態に係るデータ圧縮装置1は、処理回路2、入力インタフェース4、通信インタフェース6およびメモリ8を含む。
【0010】
処理回路2は、取得機能21と、圧縮機能22と、復元機能23と、再構成機能24と、決定機能25とを含む。処理回路2は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサを有する。
【0011】
取得機能21は、外部から圧縮対象となるデータを取得する。なお、本実施形態では、圧縮対象のデータとして、外部の医用画像処理装置で収集された、いわゆる生データを想定して説明する。生データの例としては、CT(Computed Tomography)装置であれば検出データまたはサイノグラムデータ、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置であればk空間データが挙げられる。
【0012】
圧縮機能22は、指定された圧縮率で生データを圧縮し、圧縮データを生成する。圧縮率は、本実施形態では、元のデータサイズがどの程度圧縮されたかを示す。つまり、圧縮されることで元のデータサイズよりも圧縮データの方がデータサイズが小さくなる。圧縮率が高いほど、圧縮データのデータサイズが小さくなる。生データを圧縮する方法として、本実施形態では、直交変換、量子化、エントロピー符号化を用いた非可逆圧縮処理を想定するが、これに限らず、非可逆圧縮処理を行なう圧縮方法であればどのような方法を用いてもよい。圧縮率の指定方法としては、例えばデフォルトで設定された値を用いてもよいし、ユーザから指定されてもよいし、後述する決定機能25から指定されてもよい。
【0013】
復元機能23は、圧縮データを伸張し、復元データを生成する。
再構成機能24は、生データを再構成処理し、再構成データを生成する。さらに、再構成機能24は、復元データを再構成処理し、復元再構成データを生成する。なお、生データがスペクトラルCTで取得したデータであれば、物質弁別に関するデータを再構成データおよび復元再構成データとしてもよい。また、T1マップやADC(apparent diffusion coefficient)マップなどの機能画像を再構成データおよび復元再構成データとしてもよい。
【0014】
決定機能25は、再構成データと復元再構成データとの比較に基づいて、データの圧縮率に関するパラメータを決定する。
【0015】
入力インタフェース4は、ユーザからの各種指示や情報入力を受け付ける回路を有する。入力インタフェース4は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスに関する回路を有する。なお、入力インタフェース4が有する回路は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品に関する回路に限定されない。例えば、入力インタフェース4は、データ圧縮装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号をデータ圧縮装置1内の種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路を有していてもよい。
通信インタフェース6は、有線または無線により外部装置とデータのやり取りを実行する。
【0016】
メモリ8は、生データ、再構成データ、復元再構成データなどを格納する。メモリ8は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)、光ディスク等である。また、メモリ8は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0017】
なお、本実施形態に係る圧縮機能22に係る圧縮処理、および復元機能23に係る復元処理は、外部装置により実行されてもよい。この場合は、データ圧縮装置1から生データと圧縮率に関するパラメータ情報を外部装置に送信し、当該外部装置から生データがパラメータ情報に従って圧縮されて復元された復元データをデータ圧縮装置1が受信すればよい。また、最終的に決定された圧縮率に関するパラメータ情報を外部装置に送信し、決定された圧縮率で圧縮された圧縮データを受信すればよい。
【0018】
また、処理回路2における各種機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ8へ記憶されている。処理回路2は、これら各種機能に対応するプログラムをメモリ8から読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路2は、図1の処理回路2内に示された複数の機能等を有することになる。
【0019】
なお、図1においては単一の処理回路2にてこれら各種機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路2を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0020】
次に、第1の実施形態に係るデータ圧縮装置1の動作例について図2のフローチャートを参照して説明する。
ステップS201では、取得機能21により処理回路2が、生データを取得する。
ステップS202では、再構成機能24により処理回路2が、生データに対して再構成処理を行ない、再構成データを生成する。ここでの再構成処理は、仮再構成処理を用いても良い。仮再構成処理とは、実際の画像診断において用いられる画像再構成処理(本再構成処理という)よりも処理負荷が少なく、簡易的な再構成処理である。例えば、本再構成処理として逐次近似再構成法が用いられるとすると、逐次近似再構成法よりも処理が軽いFBP(Filtered Back Projection)法、CBP(Convolution Back Projection)法が仮再構成処理として用いられる。なお、仮再構成処理の代わりに、本再構成処理を行なってもよい。
【0021】
ステップS203では、圧縮機能22により処理回路2が、指定された圧縮率で生データを圧縮し、圧縮データを生成する。
圧縮処理は、具体的には、まず生データを所定サイズのブロックに分割し、ブロック単位で離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)を実行する。これにより、2次元配列された画素の集合(つまり画像)が、基底画像で表される周波数成分に分解される。各基底画像に関する基底成分の大きさをDCT係数とも呼ぶ。続いて、DCT係数を、量子化を表す量子化テーブルを参照して量子化する。量子化を大きくすることにより、削減する情報量を増加させることができる。続いて、量子化された値に対してエントロピー符号化処理または算術符号化処理を行なうことで、圧縮データが生成される。エントロピー符号化としては、例えばハフマン符号化を用いればよい。
【0022】
なお、直交変換として、離散ウェーブレット変換を用いてもよいし、他の直交変換処理が行なわれてもよい。なお、圧縮処理自体は一般的な手法を用いればよいため、詳細な説明は省略する。
【0023】
ステップS204では、復元機能23により処理回路2が、圧縮データを伸張し(復号し)、復元データを生成する。データの伸張処理(復号処理)としては、例えばステップS203に示すような圧縮処理が行なわれていれば、可変長符号化されたデータを復号し、逆量子化し、逆DCT処理を行なうことで復元データを生成する。なお、復元機能23によるデータの伸張処理は一般的な手法であるため、詳細な説明は省略する。
【0024】
ステップS205では、再構成機能24により処理回路2が、復元データに対して再構成処理を行ない、復元再構成データを生成する。ステップS205での再構成処理は、ステップS202と同じ再構成処理を行なう。すなわち、ここでは仮再構成処理が行なわれる。
【0025】
ステップS206では、決定機能25により処理回路2が、ステップS202で算出した再構成データとステップS205で算出した復元再構成データとの誤差を算出する。誤差としては、再構成データに基づく画像と復元再構成データに基づく画像との空間座標が同じ位置にある画素同士の差分でもよいし、最小二乗誤差であってもよい。または、L1誤差(L1正則化に基づく推定値)またはL2誤差(L2正則化に基づく推定値)を用いてもよい。
【0026】
ステップS207では、決定機能25により処理回路2が、ステップS206で算出した誤差とステップS203における圧縮処理の圧縮率とを関連づけて格納する。例えば、誤差と圧縮率とを対応付けたテーブルをメモリ8に格納すればよい。なお、圧縮率と当該圧縮率による圧縮処理を行なう場合のパラメータとをあわせて格納してもよい。誤差と圧縮率との関係はテーブルで管理することに限らず、誤差と圧縮率との対応関係を記憶できればどのような形式で格納してもよい。
【0027】
ステップS208では、決定機能25により処理回路2が、1つの生データに対して復元再構成データの生成処理を所定回数実行したか否かを判定する。すなわち、ステップS208では、異なる圧縮率による圧縮処理が所定回数実行されたか否かを判定する。これは、医用画像診断装置の種類および撮影対象部位などによって、生データと当該生データを圧縮したことによる再構成画像の劣化量との関係が異なると考えられるからである。判定方法としては、例えば、ステップS207の処理が完了するごとにカウンタをインクリメントして、所定値に達した場合に、復元再構成データの生成処理が所定回数に達したと判定すればよい。復元再構成データの生成処理が所定回数実行された場合(ステップS208のYES)、ステップS210に進み、所定回数実行されていない場合(ステップS208のNO)、ステップS209に進む。
【0028】
ステップS209では、圧縮機能22により処理回路2が、ステップS203における圧縮処理の圧縮率を変更する。圧縮率の変更は、例えば圧縮率の異なる複数の量子化テーブルを用意しておき、上述のステップに係る処理で適用された量子化テーブルと異なる、未だ適用されていない量子化テーブルを選択して量子化を行なうことにより、圧縮率を変更すればよい。
なお、量子化テーブルを変更することに限らず、圧縮率を変更可能な方法であれば、どのような方法を適用してもよい。
【0029】
ステップS210では、決定機能25により処理回路2が、所定回数実行した圧縮率と誤差との関係の組、言い換えれば、生データの圧縮率と再構成画像の画質との関係の組について、異なる圧縮率ごとに組を取得し、圧縮率と再構成画像の誤差との複数の組から、最適な圧縮率に関するパラメータを決定する。圧縮率の決定方法としては、例えば、再構成データと復元再構成データとの間の誤差が第1閾値以内かつ圧縮処理の圧縮率が第2閾値以上となる圧縮率に関するパラメータを選択すればよい。具体的には、圧縮率を優先するならば、再構成データと復元再構成データとの誤差が閾値以内でかつ圧縮率が閾値以上である圧縮率の中で最も高い圧縮率を、最適な圧縮率として決定すればよい。これにより、再構成画像においてもある程度画質が維持されつつ、高い圧縮効率でデータを圧縮することができる。また、再構成画像の画質を優先するならば、圧縮率が低いほど画質は高くなるため、再構成データと復元再構成データとの誤差が閾値以内でかつ圧縮率が閾値以上である圧縮率の中で最も低い圧縮率(言い換えれば、再構成データと復元再構成データとの誤差が最小となるときの当該誤差に対応する圧縮率)を、最適な圧縮率として決定すればよい。
【0030】
なお、決定機能25により処理回路2が、最適な圧縮率を決定してもよいが、圧縮率を優先するか再構成画像の画質を優先するかの優先基準は、適宜選択可能とされてもよい。例えば、通信インタフェース6を介して、例えばディスプレイなどに「圧縮率優先」「画質優先」のどちらかを選択させるような項目を表示し、ユーザにより選択された優先基準に応じて、最適な圧縮率を決定してもよい。
または、誤差と圧縮率との関係を入力データとし、最適な圧縮率を正解データとして学習した学習済みモデルに基づき、誤差と圧縮率との関係に対して学習済みモデルを適用することで、最適な圧縮率が決定されてもよい。
【0031】
ステップS211では、圧縮機能22により処理回路2が、ステップS210で決定された圧縮率で生データを圧縮する。以上でデータ圧縮装置1の動作を終了する。
【0032】
なお、図2の例では、量子化テーブルを変更することで圧縮率を変更する場合を想定するが、圧縮率を変更する際に圧縮処理の手法自体を変更してもよい。
【0033】
次に、再構成画像の誤差と生データの圧縮率との関係を示す概念図について図3を参照して説明する。
図3のグラフは、横軸が生データの圧縮率を示し、縦軸が再構成データと復元再構成データとの誤差を示す。当該グラフは、ステップS207で得られた誤差と圧縮率との関係をプロットし、プロットに対してフィッティング処理することで近似曲線を生成可能である。
なお、決定機能25により処理回路2が、上述のステップS210における決定方法で自動的に最適な圧縮率を決定することを想定するが、決定機能25により処理回路2が、図3に示すグラフを作成してユーザに提示してもよい。
【0034】
図3に示すように、圧縮率が高いほど誤差が大きくなるため、ユーザは、グラフを見ながら、再構成画像の劣化量として許容できる圧縮率を選択すればよい。例えば、ユーザが近似曲線または誤差のプロットを選択することで、復元再構成データに基づく復元再構成画像を表示してもよい。ユーザは、表示された再構成画像を見ながら、ユーザ自身が許容できる劣化量の再構成画像を選択することができ、当該劣化量に対応する圧縮率が最適な圧縮率として選択されうる。
【0035】
以上に示した第1の実施形態によれば、仮再構成後の再構成画像の誤差に基づいて生データの圧縮率に関するパラメータを決定することで、再構成画像の劣化量を考慮しつつ、データの圧縮効率を向上させることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、データ圧縮装置のランタイム時(利用時)に最適な圧縮率に関するパラメータを決定する場合を想定するが、第2の実施形態では、データ圧縮装置の利用時に圧縮データに対して、深層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN:Deep Convolutional Neural Network)などを学習させた学習済みモデルを適用する例を示す。
【0037】
第2の実施形態に係るデータ圧縮装置については、図1に示すデータ圧縮装置のブロック図と同様である。第1の実施形態に係るデータ圧縮装置1と比較して、第2の実施形態に係るデータ圧縮装置の復元機能23または再構成機能24において、学習済みモデルを利用する点が異なる。
【0038】
第2の実施形態に係る学習済みモデルの第1例について図4を参照して説明する。
学習済みモデルは、ディープニューラルネットワーク、ResNet(Residual Network)、DenseNetなどのDCNNに代表される多層ネットワークを、学習用データを用いて学習させたモデルである。
【0039】
学習時は、圧縮データを入力データとし、仮再構成処理ではなく、生データに対して実際の画像診断で利用する本再構成処理(例えば、逐次近似再構成)を行なうことにより得られる本再構成データを正解データとした学習用データを用いる。当該学習用データを用いて多層ネットワークを学習させ、学習済みモデルを生成する。
【0040】
図4に示すように利用時は、再構成機能24により処理回路2が、圧縮データに対して学習済みモデルを適用することで、本再構成画像が生成される。
【0041】
次に、第2の実施形態に係る学習済みモデルの第2例について図5を参照して説明する。
学習時は、圧縮データを入力データとし、圧縮処理前の生データを正解データとした学習用データを用いる。当該学習用データを用いて多層ネットワークを学習させ、学習済みモデルを生成する。
【0042】
図5に示すように利用時は、復元機能23により処理回路2が、圧縮データに対して学習済みモデルを適用することで、圧縮処理前の生データを生成する。その後、圧縮処理前の生データに対して本再構成処理を行なうことにより、本再構成データを生成することができる。
【0043】
次に、第2の実施形態に係るデータ圧縮装置1の動作について図6のフローチャートを参照して説明する。ステップS201、ステップS203、ステップS206からステップS211までの処理は同様であるため説明を省略する。また、学習済みモデルとして図4に示す学習済みモデルを用いる場合を想定する。なお、ステップS202における再構成処理は、学習済みモデルの学習時と同じ本再構成処理(逐次近似再構成法)を用いるものとする。
【0044】
ステップS601では、再構成機能24により処理回路2が、圧縮データに対して学習済みモデルを適用し、復元再構成データを生成する。なお、図5に示す学習済みモデルを用いる場合、つまり、復元機能23により処理回路2が、圧縮データに学習済みモデルを適用して圧縮処理前の生データを生成するような場合は、圧縮データに対して学習済みモデルを適用して生成される生データに対して、本再構成処理を行なうことにより、本再構成データを生成する。
【0045】
以上に示した第2の実施形態によれば、学習済みモデルを適用することで、圧縮データから復元再構成データを短時間かつ低コストで生成することができる。よって、第1の実施形態と同様に、再構成画像の劣化量を考慮しつつ、データの圧縮効率を向上させることができる。
【0046】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、データ圧縮装置1の処理回路を学習装置として機能させ、学習させた学習済みモデルをデータ圧縮装置として動作させる。
【0047】
第3の実施形態に係る学習済みモデルの学習時について図7を参照して説明する。
図7は、データ圧縮装置1の学習時のフローを示したブロック図である。
学習時のデータ圧縮装置1では、処理回路2の各機能が学習装置として動作する。
取得機能21が、生データを取得する。
【0048】
ステップS701では、圧縮機能22が、生データを圧縮処理することで圧縮データを生成する。具体的には、圧縮機能22が、生データを量子化して符号化することで圧縮データを生成する。
ステップS702では、復元機能23および再構成機能24が、本再構成処理(ここでは、逐次近似再構成法)に相当する処理をニューラルネットワークが適用されることにより実現する。すなわち、圧縮データにニューラルネットワークを適用して得られる再構成画像(以下、フル復元再構成画像と呼ぶ)を生成するようにニューラルネットワークを学習する。ステップS702に示すニューラルネットワークは、逆量子化処理、逆ラドン変換処理、およびディープニューラルネットワークを含む。なお、逆ラドン変換処理に限らず、逐次近似再構成を加えてもよい。
【0049】
ステップS703では、再構成機能24が、生データに対して本再構成処理を行ない、フル再構成画像を生成する。
ステップS704では、決定機能25により、ステップS702で生成されるフル復元再構成画像とステップS703で生成されるフル再構成画像との誤差を損失関数として、当該損失関数が最小になるような圧縮率が出力されるよう学習をおこなう。結果として、ステップS702で用いるニューラルネットワークの係数が学習され、学習済みモデルが生成される。よって、生データに対して、当該学習済みモデルを適用することにより最適な圧縮率のパラメータで圧縮された圧縮データを生成するデータ圧縮装置を実現できる。
【0050】
なお、生データと、ステップS703で得られる復元データとの誤差を損失関数としてもよい。例えば、フル再構成画像とフル復元再構成画像との誤差と、生データと復元データとの誤差との重み付け和を損失関数して評価すればよい。これにより、復元データが元の生データから大きくずれないという制約を加えつつ、フル再構成画像を生成できる。
さらに、圧縮データの絶対値の大きさを重み付け和として損失関数に加えてもよい。これにより、さらに圧縮率が小さくなる制約を加えることができる。
【0051】
以上に示した第3の実施形態によれば、生データを、より適した圧縮率に関するパラメータで圧縮した圧縮データを出力するようにネットワークを学習させることで、学習済みモデルを生成する学習装置を実現できる。
【0052】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第1の実施形態および第2の実施形態に係るデータ圧縮装置を医用画像診断装置に適用する。
第4の実施形態に係る医用画像診断システムについて図8のブロック図を参照して説明する。
【0053】
図8に示す医用画像診断システムは、データ圧縮装置1と医用画像診断装置10とを含む。
医用画像診断装置10は、例えば、CT装置、X線撮影装置、MRI装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single photon emission computed tomography)装置、超音波診断装置などの少なくともいずれか1つを想定する。医用画像診断装置10は、生データとなる医用データを取得する。具体的には、医用画像診断装置10が、CT装置であれば検出データまたはサイノグラムデータ、MRI装置であればk空間データ、サイノグラムデータ、またはある次元だけフーリエ変換されたハイブリッド空間データ、X線撮影装置であればX線撮影データ、PET装置であればPETデータ、SPECT装置であればSPECTデータ、超音波診断装置であれば超音波データ、といった医用データを生データとして取得する。
【0054】
データ圧縮装置1では、医用画像診断装置10から生データを取得し、最適な圧縮率で生データを圧縮する。
なお、図8の例では、医用画像診断装置10からデータ圧縮装置1までのデータ通信は生データのまま送信し、データ圧縮装置1から外部装置(例えば、ワークステーションおよびPACS(Picture archiving and communication system)など)までのデータ通信は圧縮データを送信することを想定するが、これに限られない。
例えば、医用画像診断装置10がCT装置であれば、データ圧縮装置1がDAS(Data Acquisition System)に搭載され、X線検出器で取得した生データとなる検出データを圧縮してコンソールに転送するようにしてもよい。
【0055】
以上に示した第4の実施形態によれば、各種医用画像診断装置で取得される生データに対して、再構成画像の劣化量を考慮して最適な圧縮率でデータ圧縮することで、生データのように膨大なデータ量でも効率的にデータを圧縮できる。
【0056】
すなわち、以上に示した少なくとも1つの実施形態によれば、効率的にデータを圧縮することができる。
【0057】
加えて、実施形態に係る各機能は、前記処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに前記手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 データ圧縮装置
2 処理回路
4 入力インタフェース
6 通信インタフェース
8 メモリ
10 医用画像診断装置
21 取得機能
22 圧縮機能
23 復元機能
24 再構成機能
25 決定機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8