(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231211BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20231211BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20231211BHJP
F24F 11/49 20180101ALI20231211BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20231211BHJP
F24F 11/83 20180101ALI20231211BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
F24F11/64
F24F11/63
F24F11/49
F24F11/70
F24F11/83
F24F5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2019162109
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂口 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 智
(72)【発明者】
【氏名】竹中 悠
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117033(JP,A)
【文献】特開平08-042933(JP,A)
【文献】特開2016-003805(JP,A)
【文献】特開2017-166799(JP,A)
【文献】特開平09-303893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24F 11/64
F24F 11/63
F24F 11/49
F24F 11/70
F24F 11/83
F24F 5/00
F24F 140/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源機を備えた熱源システムの制御装置であって、
強制的に前記熱源機をローテーション運転させる強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機及び運転対象の前記熱源機が運転中である場合に、いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至る前に停止対象の前記熱源機を停止させる熱源システムの制御装置。
【請求項2】
前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、
前記制御装置は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、
強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機及び運転対象の前記熱源機が運転中である場合に、停止対象の前記熱源機の前記熱媒入口温度および/または運転対象の前記熱源機の前記熱媒入口温度が第1閾値以下の場合、停止対象の前記熱源機を停止させる請求項1に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項3】
前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、
前記制御装置は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、
強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機及び運転対象の前記熱源機が運転中である場合に、
運転対象の前記熱源機の前記熱媒入口温度と前記熱媒出口温度との差である熱媒出入口温度差が第2閾値以上の場合、停止対象の前記熱源機を停止させる請求項1または請求項2に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項4】
前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、
前記制御装置は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、
強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機及び運転対象の前記熱源機が運転中である場合に、運転対象の前記熱源機の前記熱媒出口温度が、前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に対して前記熱媒出口温度設定値-第3閾値以上かつ前記熱媒出口温度設定値+前記第3閾値以下の場合、停止対象の前記熱源機を停止させる請求項1または請求項2に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項5】
前記第1閾値は、前記熱源機の前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値と、前記熱源機毎に設定される補正値と、前記熱源機の最小運転負荷率と定格温度差との積との和である請求項2に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項6】
複数の熱源機と、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制御装置とを備える熱源システム。
【請求項7】
複数の熱源機を備えた熱源システムの制御方法であって、
強制的に前記熱源機をローテーション運転させる強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機及び運転対象の前記熱源機が運転中である場合に、いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至る前に停止対象の前記熱源機を停止させる工程を有する熱源システムの制御方法。
【請求項8】
複数の熱源機を備えた熱源システムの制御プログラムであって、
強制的に前記熱源機をローテーション運転させる強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機及び運転対象の前記熱源機が運転中である場合に、いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至る前に停止対象の前記熱源機を停止させるステップを有する熱源システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱源システムにおいて、冬期や中間期など負荷が少なく熱源機1台で負荷が賄える状況では、熱源機の台数制御が発生しないことが多い。台数制御が発生しない場合、同一機が長時間運転し続けることとなる。熱源機の稼働時間に偏りが発生するのを回避するため、台数制御とは別に強制ローテーション制御が用いられることがある。強制ローテーション制御とは、強制的に熱源機の運転機を入れ替える制御である。
【0003】
強制ローテーション制御では、停止対象の熱源機から運転対象の熱源機へと運転機を入れ替える際に、一時的に複数台運転となる。負荷が低い状態で運転対象の熱源機が能力を発揮し始めると、熱源機複数台分の能力が負荷を上回る場合がある。熱源機側の能力が負荷を上回ると、負荷側の環水温度の低下や熱源機の冷水入口温度の低下につながる。これにより、熱源機が軽負荷停止となる虞がある。
【0004】
軽負荷停止を回避する方法として、例えば特許文献1には、負荷側の要求負荷が増段を判断する増段閾値を超えたことにより熱源機を増段させるシステムにおいて、増段前に増段後の各熱源機の負荷を演算することで各熱源機の負荷が所定の閾値以下の場合は増段しないことが開示されている。また特許文献2には、外部負荷からの環水温度が所定の値以下となると強制的に熱源機を停止させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-78522号公報
【文献】特開平8-261544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に開示された発明では、通常運転時の台数制御における軽負荷停止の回避を課題としているため、強制ローテーション制御における熱源機を入れ替える制御のように負荷が低い状態での軽負荷停止の回避が想定されていないという問題があった。
また、上記特許文献1及び特許文献2では、送水側から環水側へのバイパス流量が増加して、熱源機の熱媒入口温度が低下することにより軽負荷停止する場合があることも考慮されていない。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、強制ローテーション制御を行う熱源機において軽負荷停止となるのを回避する熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の熱源システムの制御装置は、複数の熱源機を備えた熱源システムの制御装置であって、強制的に前記熱源機をローテーション運転させる強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機及び運転対象の前記熱源機が運転中である場合に、いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至る前に停止対象の前記熱源機を停止させる。
【0009】
また本開示の熱源システムは、複数の冷凍機と、上述した制御装置とを備える。
【0010】
また本開示の熱源システムの制御方法は、複数の熱源機を備えた熱源システムの制御方法であって、強制的に前記熱源機をローテーション運転させる強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機及び運転対象の前記熱源機が運転中である場合に、いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至る前に停止対象の前記熱源機を停止させる工程を有する。
【0011】
また本開示の熱源システムの制御プログラムは、複数の熱源機を備えた熱源システムの制御プログラムであって、強制的に前記熱源機をローテーション運転させる強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機及び運転対象の前記熱源機が運転中である場合に、いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至る前に停止対象の前記熱源機を停止させるステップを有する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、強制ローテーション制御を行う熱源機において熱源機が軽負荷停止に至る前に停止対象の熱源機を停止させるので、軽負荷停止となるのを抑制し、負荷の急増に対しても能力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の幾つかの実施形態に係る熱源システムの一態様を示した概略構成図である。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態に係る熱源システムの制御装置の一態様を示したブロック図である。
【
図3】参考例としての強制ローテーション制御を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1には、本開示の幾つかの実施形態に係る熱源システムの一態様の概略構成が示されている。
図1に示されるように、熱源システム1は、冷凍機(熱源機)2と、ポンプ3と、サプライヘッダ4と、リターンヘッダ5と、外部負荷6と、バイパス弁7と、入口温度センサ8と、出口温度センサ9とを主な構成として備えている。
冷凍機2は、冷凍機2a、2b、2c及び2dから構成される。各冷凍機2a、2b、2c及び2dは、外部負荷6に対して各々並列に設置されている。
ポンプ3は、冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dとから構成される。
なお、以下の説明において、各冷凍機2a、2b、2c及び2dを区別する場合は、符号の末尾にa~dの何れかを付し、各冷凍機2a、2b、2c及び2dを区別しない場合は、a~dを省略する。また、他の部についても同様に、特に区別しない場合は、アルファベットを省略して示す。
【0016】
冷熱出力運転を行う場合の冷水(熱媒)流れからみた各冷凍機2a、2b、2c及び2dの上流側には、それぞれ、冷水を圧送する冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dが設置されている。これら冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dによって、リターンヘッダ5からの冷水が各冷凍機2a、2b、2c及び2dへと送られる。
【0017】
サプライヘッダ4には、各冷凍機2a、2b、2c及び2dを経由した冷水が集められる。サプライヘッダ4に集められた冷水は、外部負荷6に供給される。外部負荷6にて空調などに供され昇温した冷水は、リターンヘッダ5に送られる。冷水は、リターンヘッダ5において分岐され、上述したように各冷凍機2a、2b、2c及び2dへと送られる。
【0018】
またサプライヘッダ4に集められた冷水を外部負荷6を経由せず直接リターンヘッダ5へ送るバイパスライン上にバイパス弁7が設けられている。バイパス弁7の開度を調整することにより、外部負荷6へ供給する冷水量を調整することができる。
【0019】
冷水流れから見た各冷凍機2a、2b、2c及び2dの上流側には、それぞれ冷凍機2の入口側の冷水温度(熱媒温度)である冷水入口温度(熱媒入口温度)を検知する入口温度センサ8a、8b、8c及び8dが設置されている。また冷水流れから見た各冷凍機2a、2b、2c及び2dの下流側には、それぞれ冷凍機2の出口側の冷水温度(熱媒温度)である冷水出口温度(熱媒出口温度)を検知する出口温度センサ9a、9b、9c及び9dが設置されている。
【0020】
図2には、本開示の幾つかの実施形態に係る熱源システムの制御装置を示したブロック図が示されている。
図2に示されるように、各冷凍機2a、2b、2c及び2dの制御装置である冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dは、制御装置20と接続されている。制御装置20は、例えば熱源システム1全体を制御する装置である。制御装置20は、冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dを介して各冷凍機2a、2b、2c及び2dを制御する他、例えば冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dの回転数制御、入口温度センサ8a、8b、8c及び8dが検知した各冷水入口温度及び出口温度センサ9a、9b、9c及び9dが検知した各冷水出口温度の取得等を行う。
【0021】
制御装置20及び冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dは、例えばMPU(Micro Processing Unit)であり、各処理を実行するためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体を有しており、CPU(Central Processing Unit)がこの記録媒体に記録されたプログラムをRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置に読み出して実行することにより、各処理が実現される。コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。
制御装置20及び冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dは、一つのMPUによって具現化されてもよいし、個別のMPUによって具現化されてもよい。
【0022】
以下の説明において、運転中である停止対象の冷凍機2を冷凍機2a、停止中である冷凍機2を冷凍機2b、2c及び2d、停止中である運転対象の冷凍機2を冷凍機2bとする。本開示では停止対象の冷凍機2a及び運転対象の冷凍機2bはそれぞれ1台ずつであるとしているが、それに限らず複数台であってもよい。
【0023】
図3には、参考例としての強制ローテーション制御がフローチャートに示されている。
ステップS301にて強制ローテーション制御が開始されたかどうかを判定する。強制ローテーション制御は、長時間負荷が低い状態が継続した場合や同一冷凍機が長時間継続して運転されている場合等に行われる。強制ローテーション制御が開始されたと判定された場合はステップS302へ遷移する。強制ローテーション制御が開始されていないと判定された場合はステップS304へ遷移し、強制ローテーション制御を行わない通常制御が行われる。
【0024】
ステップS301にて強制ローテーション制御が開始されたと判定された場合は、制御装置20は停止中である運転対象の冷凍機2bの冷凍機制御装置10bに起動指令を行い、冷凍機制御装置10bは冷凍機2bを起動する(S302)。
【0025】
次に、外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したかどうかを判定する(S303)。外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したと判定された場合は、通常運転時の台数制御において2台運転が必要と判断される要求負荷が発生しているといえる。すなわち、要求負荷に対して適切な運転台数である現状の2台運転が好ましいと判断され、そのまま2台での運転が継続される。ここで、所定の閾値は、例えば前述の増段閾値が設定されるとし、その値は対象の冷凍機2の組み合わせ毎に決定される値である。また第1所定時間は、例えば300秒が設定され、その値は対象の冷凍機2の組み合わせ毎に設定されてもよいし、複数の組み合わせに対し一意の値が設定されてもよい。
【0026】
一方、外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したと判定されなかった場合は、ステップS305へ遷移し、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したか否かが判定される。
【0027】
ステップS305において、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定された場合、制御装置20は運転中である停止対象の冷凍機2aの冷凍機制御装置10aに停止指令を行い、冷凍機制御装置10aは冷凍機2aを停止する(S306)。ここで、第2所定時間は、例えば600秒が設定され、その値は対象の冷凍機2毎に設定されてもよいし、複数の冷凍機2に対して一意の値が設定されてもよい。
【0028】
一方、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定されなかった場合は、ステップS303へ遷移する。
【0029】
このように、参考例として従来の強制ローテーション制御では、停止対象の冷凍機2aの停止は、タイマー(第2所定時間の経過)を契機としたものであり、軽負荷停止についての検討がなされていなかった。
【0030】
図4には、本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御がフローチャートに示されている。
【0031】
ステップS401にて強制ローテーション制御が開始されたかどうかを判定する。強制ローテーション制御が開始されたと判定された場合はステップS402へ遷移する。強制ローテーション制御が開始されていないと判定された場合はステップS404へ遷移し、強制ローテーション制御を行わない通常制御が行われる。
【0032】
ステップS401にて強制ローテーション制御が開始されたと判定された場合は、制御装置20は停止中である運転対象の冷凍機2bの冷凍機制御装置10bに起動指令を行い、冷凍機制御装置10bは冷凍機2bを起動する(S402)。
【0033】
次に、外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したかどうかを判定する(S403)。外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したと判定された場合は、通常運転時の台数制御において2台運転が必要と判断される要求負荷が発生しているといえる。すなわち、要求負荷に対して適切な運転台数である現状の2台運転が好ましいと判断され、そのまま2台での運転が継続される。
一方、外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したと判定されなかった場合は、ステップS405へ遷移する。
【0034】
ステップS405において、制御装置20は冷凍機制御装置10aを介して入口温度センサ8aから冷凍機2aの冷水入口温度Tin(Tina)及び冷凍機制御装置10bを介して入口温度センサ8bから冷凍機2bの冷水入口温度Tin(Tinb)を取得し(S406)、冷水入口温度Tinのいずれかもしくは両方が軽負荷停止前温度(第1閾値)Tu以下であるか否かを判定する。ここで、軽負荷停止前温度Tuは、軽負荷停止に至る兆候があることを判定するための値であり、以下の(1)式で表される。
[数1]
Tu=Tset+Qmin×Td+α・・・(1)
【0035】
(1)式において、Tsetは冷凍機2の出口温度設定値[℃]、Qminは冷凍機2の最小運転負荷率[%]、Tdは冷凍機2の冷水入口温度と冷水出口温度との差である定格温度差[℃]、αは冷凍機2毎もしくは冷凍機2の機種毎に設定された補正値である。なお、補正値は正の値である。Tuの値は、冷凍機2毎または機種毎に設定される。
【0036】
強制ローテーション制御により停止対象の冷凍機2aと運転対象の冷凍機2bの2台の運転における運転能力が外部負荷6の要求負荷を上回ると、停止対象の冷凍機2aと運転対象の冷凍機2bのいずれかもしくは両方の冷水入口温度Tinが低下する。冷水入口温度Tinが下がりすぎると冷凍機2が軽負荷停止に至る虞があるため、冷凍機2が軽負荷停止となる温度に至る前に停止対象の冷凍機2aを停止させる制御を行う。
【0037】
すなわち、ステップS405において冷水入口温度Tinのいずれかもしくは両方が軽負荷停止前温度(第1閾値)Tu以下であると判定されると、冷凍機2が軽負荷停止に至る虞があるとし、制御装置20は停止対象の冷凍機2aの冷凍機制御装置10aに停止指令を行い、冷凍機制御装置10aは冷凍機2aを停止する(S408)。
【0038】
一方、冷水入口温度Tinの両方が軽負荷停止前温度(第1閾値)Tuより大きい値であると判定された場合は、冷水入口温度Tinが低下していないとし、ステップS407へ遷移する。ステップS407では、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したか否かが判定される。
【0039】
ステップS407において、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定された場合は、ステップS408へ遷移する。
【0040】
一方、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定されなかった場合は、ステップS403へ遷移する。
【0041】
以上説明した本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムが奏する作用および効果について説明する。
強制ローテーション制御により一時的に停止対象の冷凍機2と運転対象の冷凍機2とが同時に運転する期間が存在する。この期間に、負荷が少ない状態であると、いずれかの冷凍機2が軽負荷停止に至る場合がある。
本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20、熱源システム1、熱源システム1の制御方法、及び熱源システム1の制御プログラムによれば、冷凍機2の軽負荷停止を抑制しながら、停止対象の冷凍機2から運転対象の冷凍機2への入れ替え(ローテーション)を実施することができる。また、軽負荷停止からの復帰には復帰条件を満たす必要があり、早急に復帰へ至るのは困難である。しかし本開示によれば冷凍機2が軽負荷停止しないため、軽負荷停止による停止期間を経る必要が無い。さらに、冷凍機2の停止後の負荷の急増に対しても、停止中の冷凍機2を早急に復帰させ能力を発揮することができる。
【0042】
また本実施形態によれば、強制ローテーション制御により停止対象の冷凍機2と運転対象の冷凍機2とが同時に運転する期間において、停止対象の冷凍機2の冷水入口温度および/または運転対象の冷凍機2の冷水入口温度が軽負荷停止前温度以下の場合、停止対象の冷凍機2を停止させる。これにより、いずれかの冷凍機2の冷水入口温度が軽負荷停止前温度を下回り軽負荷停止に至る前に停止対象の冷凍機2を停止させることができる。よって、冷凍機2の軽負荷停止を抑制しながら、停止対象の冷凍機2から運転対象の冷凍機2への入れ替え(ローテーション)を実施することができる。
【0043】
また本実施形態によれば、冷凍機2の冷水入口温度の判定に用いる軽負荷停止前温度として、冷凍機2の冷水出口温度設定値と、冷凍機2毎に設定される補正値と、冷凍機2の最小運転負荷率と定格温度差との積との和を用いることから、冷凍機2が軽負荷停止に至る前に確実に停止対象の冷凍機2を停止することができる。
【0044】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では冷凍機の冷水入口温度と軽負荷停止前温度とに基づき停止対象の冷凍機の停止指令を行ったが、本実施形態では冷凍機の冷水出入口温度差と出入口温度差設定値とに基づき停止対象の冷凍機の停止指令を行うものとする。その他の点については第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0045】
図5には、本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御がフローチャートに示されている。
【0046】
ステップS501にて強制ローテーション制御が開始されたかどうかを判定する。強制ローテーション制御が開始されたと判定された場合はステップS502へ遷移する。強制ローテーション制御が開始されていないと判定された場合はステップS504へ遷移し、強制ローテーション制御を行わない通常制御が行われる。
【0047】
ステップS501にて強制ローテーション制御が開始されたと判定された場合は、制御装置20は停止中である運転対象の冷凍機2bの冷凍機制御装置10bに起動指令を行い、冷凍機制御装置10bは冷凍機2bを起動する(S502)。
【0048】
次に、外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したかどうかを判定する(S503)。外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したと判定された場合は、通常運転時の台数制御において2台運転が必要と判断される要求負荷が発生しているといえる。すなわち、要求負荷に対して適切な運転台数である現状の2台運転が好ましいと判断され、そのまま2台での運転が継続される。
【0049】
一方、外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したと判定されなかった場合は、ステップS505へ遷移する。
【0050】
ステップS505において、制御装置20は冷凍機制御装置10bを介して入口温度センサ8bから冷凍機2bの冷水入口温度Tin(Tinb)及び出口温度センサ9bから冷凍機2bの冷水出口温度Tout(Toutb)を取得し(S506)、冷凍機2bの冷水出入口温度差(Tin-Tout)が出入口温度差設定値(第2閾値)ΔTset以上であるか否かを判定する。ここで出入口温度差設定値ΔTsetは、任意で設定される値であり、例えば定格温度差が5℃の場合は1℃が設定される。
【0051】
強制ローテーション制御により運転対象の冷凍機2bの運転能力が発揮され始めると、外部負荷6の要求負荷に対して冷凍機2側の運転能力が過剰となる。これにより、冷凍機2の冷水入口温度Tinが低下し、冷凍機2が軽負荷停止する可能性がある。そこで、運転対象の冷凍機2bの冷水出入口温度差(Tin-Tout)が大きくなると運転対象の冷凍機2bが運転能力を発揮し始めたとして、冷凍機2が軽負荷停止となる前に停止対象の冷凍機2aを停止させる制御を行う。
【0052】
すなわち、ステップS505において冷凍機2bの冷水出入口温度差(Tin-Tout)が出入口温度差設定値ΔTset以上であると判定されると、軽負荷停止に至る虞があるとし、制御装置20は停止対象の冷凍機2aの冷凍機制御装置10aに停止指令を行い、冷凍機制御装置10aは冷凍機2aを停止する(S508)。
【0053】
一方、冷凍機2bの冷水出入口温度差(Tin-Tout)が出入口温度差設定値ΔTsetより小さいと判定された場合は、ステップS507へ遷移する。ステップS507では、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したか否かが判定される。
【0054】
ステップS507において、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定された場合は、ステップS508へ遷移する。
【0055】
一方、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定されなかった場合は、ステップS503へ遷移する。
【0056】
本実施形態において、運転対象の冷凍機2bが運転能力を発揮し始め外部負荷6に対して冷凍機2の運転能力が過剰となると、バイパス弁7が開方向へ制御され、サプライヘッダ4からリターンヘッダ5へバイパスする冷水のバイパス流量が増加する場合がある。この場合、バイパス弁7が閉弁されている場合と比べて冷凍機2の冷水入口温度は早く低下する。バイパス弁7を用いたバイパス制御を行う場合は、バイパス制御を行わない場合よりも出入口温度差設定値ΔTsetを小さい値とするとしてもよい。
【0057】
以上説明した本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムが奏する作用および効果について説明する。
本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20、熱源システム1、熱源システム1の制御方法、及び熱源システム1の制御プログラムによれば、冷凍機2の冷水入口温度と冷水出口温度との差である冷水出入口温度差が出入口温度差設定値以上の場合、停止対象の冷凍機2を停止させる。運転対象の冷凍機2が能力を発揮し始め、外部負荷6に対して冷凍機2側の生成能力が過剰となると、冷凍機2の冷水入口温度が低下していずれかの冷凍機2が軽負荷停止に至る場合がある。本開示によれば、いずれかの冷凍機2が軽負荷停止に至る前に停止対象の冷凍機2を停止させることができる。よって、冷凍機2の軽負荷停止を抑制しながら、停止対象の冷凍機2から運転対象の冷凍機2への入れ替え(ローテーション)を実施することができる。
【0058】
〔第3実施形態〕
第2実施形態では冷凍機の冷水出入口温度差と出入口温度差設定値とに基づき停止対象の冷凍機の停止指令を行うとしたが、本実施形態では冷凍機の冷水出口温度と冷水出口温度設定値とに基づき停止対象の冷凍機の停止指令を行うものとする。その他の点については第2実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0059】
図6には、本開示の幾つかの実施形態に係る強制ローテーション制御がフローチャートに示されている。
ステップS601にて強制ローテーション制御が開始されたかどうかを判定する。強制ローテーション制御が開始されたと判定された場合はステップS602へ遷移する。強制ローテーション制御が開始されていないと判定された場合はステップS604へ遷移し、強制ローテーション制御を行わない通常制御が行われる。
【0060】
ステップS601にて強制ローテーション制御が開始されたと判定された場合は、制御装置20は停止中である運転対象の冷凍機2bの冷凍機制御装置10bに起動指令を行い、冷凍機制御装置10bは冷凍機2bを起動する(S602)。
【0061】
次に、外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したかどうかを判定する(S603)。外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したと判定された場合は、通常運転時の台数制御において2台運転が必要と判断される要求負荷が発生しているといえる。すなわち、要求負荷に対して適切な運転台数である現状の2台運転が好ましいと判断され、そのまま2台での運転が継続される。
【0062】
一方、外部負荷6の要求負荷が所定の閾値以上の値を第1所定時間継続したと判定されなかった場合は、ステップS605へ遷移する。
【0063】
ステップS605において、制御装置20は冷凍機制御装置10bを介して出口温度センサ9bから冷凍機2bの冷水出口温度Tout(Toutb)を取得し(S606)、冷凍機2bの冷水出口温度Toutが冷水出口温度設定値Tsetから第3閾値βを減算した値以上かつ冷水出口温度設定値Tsetに第3閾値βを加えた値以下であるか否かを判定する。ここで冷水出口温度設定値Tsetは、冷凍機2の目標設定温度であり、例えばユーザにより設定された温度である。また第3閾値βは、冷水出口温度Toutが目標設定温度近傍の値となっていることを判定するために用いられる値であり、例えば1℃が設定される。
【0064】
強制ローテーション制御により運転対象の冷凍機2bの運転能力が発揮され始めると、外部負荷6の要求負荷に対して冷凍機2側の運転能力が過剰となる。これにより、冷凍機2の冷水入口温度Tinが低下し、冷凍機2が軽負荷停止する可能性がある。そこで、運転対象の冷凍機2bの冷水出口温度Toutが冷水出口温度設定値(目標設定温度)に近付くと運転対象の冷凍機2bが運転能力を発揮し始めたとして、冷凍機2が軽負荷停止となる前に停止対象の冷凍機2aを停止させる制御を行う。
【0065】
すなわち、ステップS605において冷凍機2bの冷水出口温度Toutが冷水出口温度設定値Tsetから第3閾値βを減算した値以上かつ冷水出口温度設定値Tsetに第3閾値βを加えた値以下であると判定されると、冷凍機2が軽負荷停止に至る虞があるとし、制御装置20は停止対象の冷凍機2aの冷凍機制御装置10aに停止指令を行い、冷凍機制御装置10aは冷凍機2aを停止する(S608)。
【0066】
一方、冷凍機2bの冷水出口温度Toutが冷水出口温度設定値Tsetから第3閾値βを減算した値以上かつ冷水出口温度設定値Tsetに第3閾値βを加えた値以下であると判定されなかった場合は、ステップS607へ遷移する。ステップS607では、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したか否かが判定される。
【0067】
ステップS607において、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定された場合は、ステップS608へ遷移する。
【0068】
一方、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定されなかった場合は、ステップS603へ遷移する。
【0069】
以上説明した本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムが奏する作用および効果について説明する。
本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20、熱源システム1、熱源システム1の制御方法、及び熱源システム1の制御プログラムによれば、運転対象の冷凍機2の冷水出口温度が、冷水出口温度設定値-第3閾値以上かつ冷水出口温度設定値+第3閾値以下の場合、停止対象の冷凍機2を停止させる。運転対象の冷凍機2が能力を発揮し始め冷水出口温度が冷水出口温度設定値近傍の値となり、さらにそのまま運転を継続すると外部負荷6に対して冷凍機2側の生成能力が過剰となる。そして、冷凍機2の冷水入口温度が低下していずれかの冷凍機2が軽負荷停止に至る場合がある。本開示によれば、いずれかの冷凍機2が軽負荷停止に至る前に停止対象の冷凍機2を停止させることができる。よって、冷凍機2の軽負荷停止を抑制しながら、停止対象の冷凍機2から運転対象の冷凍機2への入れ替え(ローテーション)を実施することができる。
【0070】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。例えば、上述した第1実施形態と第2実施形態を組み合わせて実施してもよいし、第1実施形態と第3実施形態を組み合わせて実施してもよい。
【0071】
第1実施形態と第2実施形態を組み合わせて実施する場合のフローチャートを
図7及び
図8に示す。
図7のステップS701乃至S706が
図4のステップS401乃至S406に相当する。ステップS705において冷凍機2aの冷水入口温度Tin及び冷凍機2bの冷水入口温度Tinのいずれかもしくは両方が軽負荷停止前温度Tu以下であると判定されると、冷凍機2が軽負荷停止に至る虞があるとし、制御装置20は停止対象の冷凍機2aの冷凍機制御装置10aに停止指令を行い、冷凍機制御装置10aは冷凍機2aを停止する(
図8のS710)。
【0072】
一方、冷水入口温度Tinの両方が軽負荷停止前温度Tuより大きい値であると判定された場合は、
図8のステップS708へ遷移する。
【0073】
ステップS708において、制御装置20は冷凍機制御装置10bを介して入口温度センサ8bから冷凍機2bの冷水入口温度Tin(Tinb)及び出口温度センサ9bから冷凍機2bの冷水出口温度Tout(Toutb)を取得し(S707)、冷凍機2bの冷水出入口温度差(Tin-Tout)が出入口温度差設定値ΔTset以上であるか否かを判定する。
【0074】
すなわち、ステップS708において冷凍機2bの冷水出入口温度差(Tin-Tout)が出入口温度差設定値ΔTset以上であると判定されると、軽負荷停止に至る虞があるとし、制御装置20は停止対象の冷凍機2aの冷凍機制御装置10aに停止指令を行い、冷凍機制御装置10aは冷凍機2aを停止する(S710)。
【0075】
一方、冷凍機2bの冷水出入口温度差(Tin-Tout)が出入口温度差設定値ΔTsetより小さいと判定された場合は、ステップS709へ遷移する。ステップS709では、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したか否かが判定される。
【0076】
ステップS709において、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定された場合は、ステップS710へ遷移する。
【0077】
一方、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定されなかった場合は、
図7のステップS703へ遷移する。
【0078】
第1実施形態と第3実施形態を組み合わせて実施する場合のフローチャートを
図9及び
図10に示す。
図9のステップS801乃至S806が
図4のステップS401乃至S406に相当する。ステップS805において冷凍機2aの冷水入口温度Tin及び冷凍機2bの冷水入口温度Tinのいずれかもしくは両方が軽負荷停止前温度Tu以下であると判定されると、冷凍機2が軽負荷停止に至る虞があるとし、制御装置20は停止対象の冷凍機2aの冷凍機制御装置10aに停止指令を行い、冷凍機制御装置10aは冷凍機2aを停止する(
図10のS810)。
【0079】
一方、冷水入口温度Tinの両方が軽負荷停止前温度Tuより大きい値であると判定された場合は、
図10のステップS808へ遷移する。
【0080】
ステップS808において、制御装置20は冷凍機制御装置10bを介して出口温度センサ9bから冷凍機2bの冷水出口温度Tout(Toutb)を取得し(S807)、冷凍機2bの冷水出口温度Toutが冷水出口温度設定値Tsetから第3閾値βを減算した値以上かつ冷水出口温度設定値Tsetに第3閾値βを加えた値以下であるか否かを判定する。
【0081】
すなわち、ステップS808において冷凍機2bの冷水出口温度Toutが冷水出口温度設定値Tsetから第3閾値βを減算した値以上かつ冷水出口温度設定値Tsetに第3閾値βを加えた値以下であると判定されると、冷凍機2が軽負荷停止に至る虞があるとし、制御装置20は停止対象の冷凍機2aの冷凍機制御装置10aに停止指令を行い、冷凍機制御装置10aは冷凍機2aを停止する(S810)。
【0082】
一方、冷凍機2bの冷水出口温度Toutが冷水出口温度設定値Tsetから第3閾値βを減算した値以上かつ冷水出口温度設定値Tsetに第3閾値βを加えた値以下であると判定されなかった場合は、ステップS809へ遷移する。ステップS809では、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したか否かが判定される。
【0083】
ステップS809において、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定された場合は、ステップS810へ遷移する。
【0084】
一方、運転対象の冷凍機2bが起動後第2所定時間経過したと判定されなかった場合は、
図9のステップS803へ遷移する。
【0085】
このように第1実施形態と第2実施形態を組み合わせて実施する、または第1実施形態と第3実施形態を組み合わせて実施することにより、1の実施形態のみを実施するよりも精度よく冷凍機2の軽負荷停止を抑止することができる。
【0086】
また、上述した各実施形態においては、冷凍機2a、2b、2c及び2dは、冷水を冷却するもの、すなわち冷熱出力の場合における説明としたが、冷水を加熱するもの、すなわち温熱出力の場合であってもよい。また、冷却機能と加熱機能とを兼ね備えるものであってもよい。また、熱媒は、冷水に代えてブラインなどの他の熱媒を冷却または加熱するシステムであってもよい。
温熱出力の場合は、温度の取り扱いが冷熱出力の場合の逆になる。
【0087】
以上説明した各実施形態に記載の熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムは例えば以下のように把握される。
【0088】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)は、複数の熱源機(2)を備えた熱源システム(1)の制御装置(20)であって、強制的に前記熱源機(2)をローテーション運転させる強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機(2)及び運転対象の前記熱源機(2)が運転中である場合に、いずれかの前記熱源機(2)が軽負荷停止に至る前に停止対象の前記熱源機(2)を停止させる。
【0089】
強制ローテーション制御により一時的に停止対象の熱源機(2)と運転対象の熱源機(2)とが同時に運転する期間が存在する。この場合に、負荷が少ない状態であれば運転対象及び停止対象のいずれかの熱源機(2)が軽負荷停止に至る場合がある。
本開示によれば、運転対象及び停止対象の熱源機(2)の軽負荷停止を抑制しながら、停止対象の熱源機(2)から運転対象の熱源機(2)への入れ替え(ローテーション)を実施することができる。また、軽負荷停止からの復帰には復帰条件を満たす必要があり、早急に復帰へ至るのは困難である。しかし、本開示によれば冷凍機2が軽負荷停止しないため、軽負荷停止による停止期間を経る必要が無い。さらに、熱源機(2)の停止後の負荷の急増に対しても、停止中の熱源機(2)を復帰させ能力を発揮することができる。
【0090】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)は、前記熱源機(2)の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ(8)及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサ(9)が前記熱源機(2)毎にそれぞれ設置され、前記制御装置(20)は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機(2)及び運転対象の前記熱源機(2)が運転中である場合に、停止対象の前記熱源機(2)の熱媒入口温度および/または運転対象の前記熱源機(2)の熱媒入口温度が第1閾値以下の場合、停止対象の前記熱源機(2)を停止させる。
【0091】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)によれば、強制ローテーション制御により停止対象の熱源機(2)と運転対象の熱源機(2)とが同時に運転する期間において、停止対象の熱源機(2)の熱媒入口温度および/または運転対象の熱源機(2)の熱媒入口温度が第1閾値以下の場合、停止対象の熱源機(2)を停止させることから、いずれかの熱源機(2)の熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回り軽負荷停止に至る前に停止対象の熱源機(2)を停止させることができる。よって、熱源機(2)の軽負荷停止を抑制しながら、停止対象の熱源機(2)から運転対象の熱源機(2)への入れ替え(ローテーション)を実施することができる。
【0092】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)は、前記熱源機(2)の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ(8)及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサ(9)が前記熱源機(2)毎にそれぞれ設置され、前記制御装置(20)は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機(2)及び運転対象の前記熱源機(2)が運転中である場合に、運転対象の前記熱源機(2)の前記熱媒入口温度と前記熱媒出口温度との差である熱媒出入口温度差が第2閾値以上の場合、停止対象の前記熱源機(2)を停止させる。
【0093】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)によれば、熱源機(2)の熱媒入口温度と熱媒出口温度との差である熱媒出入口温度差が第2閾値以上の場合、停止対象の熱源機(2)を停止させる。運転対象の熱源機(2)が能力を発揮し始め、外部負荷(6)に対して熱源機(2)側の生成能力が過剰となると、熱源機(2)の熱媒入口温度が低下していずれかの熱源機(2)が軽負荷停止に至る場合がある。本開示によれば、いずれかの熱源機(2)が軽負荷停止に至る前に停止対象の熱源機(2)を停止させることができる。よって、熱源機(2)の軽負荷停止を抑制しながら、停止対象の熱源機(2)から運転対象の熱源機(2)への入れ替え(ローテーション)を実施することができる。
【0094】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)は、前記熱源機(2)の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ(8)及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサ(9)が前記熱源機(2)毎にそれぞれ設置され、前記制御装置(20)は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機(2)及び運転対象の前記熱源機(2)が運転中である場合に、運転対象の前記熱源機(2)の前記熱媒出口温度が、前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に対して前記熱媒出口温度設定値-第3閾値以上かつ前記熱媒出口温度設定値+第3閾値以下の場合、停止対象の前記熱源機(2)を停止させる。
【0095】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)によれば、運転対象の熱源機(2)の熱媒出口温度が、熱媒出口温度設定値-第3閾値以上かつ熱媒出口温度設定値+第3閾値以下の場合、停止対象の熱源機(2)を停止させる。運転対象の熱源機(2)が能力を発揮し始め熱媒出口温度が熱媒出口温度設定値近傍の値となり、さらにそのまま運転を継続すると外部負荷(6)に対して熱源機(2)側の生成能力が過剰となり、熱源機(2)の熱媒入口温度が低下していずれかの熱源機(2)が軽負荷停止に至る場合がある。本開示によれば、いずれかの熱源機(2)が軽負荷停止に至る前に停止対象の熱源機(2)を停止させることができる。よって、熱源機(2)の軽負荷停止を抑制しながら、停止対象の熱源機(2)から運転対象の熱源機(2)への入れ替え(ローテーション)を実施することができる。
【0096】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)において、前記第1閾値は、前記熱源機(2)の前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値と、前記熱源機(2)毎に設定される補正値と、前記熱源機(2)の最小運転負荷率と定格温度差との積との和である。
【0097】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)によれば、熱源機(2)の熱媒入口温度の判定に用いる第1閾値として、熱源機(2)の熱媒出口温度設定値と、熱源機(2)毎に設定される補正値と、熱源機(2)の最小運転負荷率と定格温度差との積との和を用いることから、熱源機(2)が軽負荷停止に至る前に確実に停止対象の熱源機(2)を停止することができる。
【0098】
本開示に係る熱源システム(1)は、複数の熱源機(2)と、前述のいずれか一項に記載の制御装置(20)とを備える。
【0099】
本開示に係る熱源システム(1)の制御方法は、複数の熱源機(2)を備えた熱源システム(1)の制御方法(20)であって、強制的に前記熱源機(2)をローテーション運転させる強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機(2)及び運転対象の前記熱源機(2)が運転中である場合に、いずれかの前記熱源機(2)が軽負荷停止に至る前に停止対象の前記熱源機(2)を停止させる工程を有する。
【0100】
本開示に係る熱源システム(1)の制御プログラムは、複数の熱源機(2)を備えた熱源システム(1)の制御プログラム(20)であって、強制的に前記熱源機(2)をローテーション運転させる強制ローテーション制御により停止対象の前記熱源機(2)及び運転対象の前記熱源機(2)が運転中である場合に、いずれかの前記熱源機(2)が軽負荷停止に至る前に停止対象の前記熱源機(2)を停止させるステップを有する。
【符号の説明】
【0101】
1 熱源システム
2、2a、2b、2c、2d 冷凍機(熱源機)
3 ポンプ
3a、3b、3c、3d 冷水ポンプ
4 サプライヘッダ
5 リターンヘッダ
6 外部負荷
7 バイパス弁
8、8a、8b、8c、8d 入口温度センサ
9、9a、9b、9c、9d 出口温度センサ
10、10a、10b、10c、10d 冷凍機制御装置
20 制御装置